我が国のepa(経済連携協定)戦略1.11% インド 0.89% 韓国 gcc 6.11% 8.65% 豪州...

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我が国のEPA(経済連携協定)戦略 平成23年1月 外務省 経済連携課 塚田玉樹

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我が国のEPA(経済連携協定)戦略

平成23年1月

外務省 経済連携課 塚田玉樹

1

EPAの内容

伝統的なモノの貿易(関税撤廃)をはじめ、投資ルール(投資保護や外資規制の緩和等の自由化)、サービス貿易の自由化、人の移動(専門家・技術的職種での就労や短期滞在条件の緩和)、政府調達(無差別原則・透明性)、知的財産権の保護、競争政策、ビジネス環境整備(問題解決メカニズム)、様々な分野における二国間協力等をカバーする。

モノの貿易を規律するためには、輸入する産品が「相手国の産品」であると認定するための基準(原産地規則)が必要であり、輸入の急増に対処するための措置(セーフガード)も必要となる。さらに、貿易・投資にまつわる紛争が生じた場合の紛争解決手続、協定の実施・運用に係る規定も存在する。

(1)譲許表は、両国間で貿易の対象となる全品目毎に約束した関税率を記載したもの。全品目は、 上から6桁までが国際的に調和されたコード番号

によって分類され(HS分類)、現在、5051品目に細分化されている。より細かい分類については各国が必要に応じて行っている。なお日本の場合、9桁の統計番号では9035品目に分類されている。(2)約束表は、サービス・投資分野における自由化の内容や残存規制措置などを書き出したもの。

EPAは、日本と相手国との経済関係全般を規律する

EPAには、日本と相手国との経済関係を円滑にする手段も規定されている

EPAには、附属書として譲許表や約束表等が含まれる

第1章 総則第2章 物品の貿易第3章 原産地規則第4章 税関手続第5章 ペーパーレス貿易第6章 相互承認第7章 サービスの貿易第8章 投資

第9章 自然人の移動第10章 知的財産第11章 政府調達第12章 競争第13章 ビジネス環境の整備第14章 協力第15章 紛争の回避及び解決第16章 最終規定

(参考)日フィリピン経済連携協定の構成(165条からなる本文と、8の附属書により構成)

日・マレーシア経済連携協定

2

譲許表の例

自然人の移動

市場アクセス

MA

原産地規則

税関手続

SPS/TBT※1

相互承認

市場アクセス

MA

内国民待遇

NT

最恵国待遇

MFN

自然人の移動章及びサー

ビスの

貿易章における約束

内国民待遇

NT

最恵国待遇

MFN

特定措置の履行要求の禁止

PR

国対投資家の紛争解決

ISDS

欧州 スイス 2009.9.1 ○ ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○※20 - -

ベトナム 2009.10.1 ○ ○ ○ ○ - ○ ○※4

△ ○※5 △※7 ○ ○ ○ ○ -

フィリピン 2008.12.11 ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ ○

※4

※4

※8 ○ ○ ○ - △※9 ○ ○ ○ ○ -

ASEAN 2008.12.1 ○ ○ ○ ○ - - - △※11 △※11 △※11 ○ -

ブルネイ 2008.7.31 ○ ○ ○ - - ○ ○ ○ ○※12 ○ ○ ○ ○ △※7 △※13 - ○ ○ △※14

インドネシア 2008.7.1 ○ ○ ○ - - ○ ○ ○ ○※8 ○ ○ ○ ○ △※9 ○ ○ ○ ○ ○

タイ 2007.11.1 ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○※15 ○ ○ ○ ○ △※9 ○ ○ ○ ○ -

マレーシア 2006.7.13 ○ ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○※12 ○ ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ -

シンガポール 2002.11.30 ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ ○ - △※16 -

チリ 2007.9.3 ○ ○ ○ ○ - △※17 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △※18 -

メキシコ 2005.4.1 ○ ○ ○ ○ - △※17 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △※19 ○ ○ ○ -

※1 SPS:衛生植物検疫措置 TBT:強制規格、任意規格及び適合性評価手続 ※11 経済的協力章内の第53条に協力の分野として挙げられている。

※2 日本からの直接投資の出典:日本銀行「国際収支統計」平成19年中対外・対内直接投資 ※12 短期商用訪問者等の一時滞在についてサービス貿易章の下で約束。

※3 進出日系企業数の出典:外務省領事局政策課「海外在留邦人数調査統計」平成20年速報(平成19年10月1日現在) ※13 知財章はないが、ビジネス環境の整備章に知的財産の保護に関する制度の整備に係る努力義務規定等がある(第97条)。

※4 第三国に付与した待遇よりも不利でない待遇を付与することを考慮又は協議する旨の規定。 ※14 エネルギーのみを対象としている。

※15 介護福祉士候補者、タイ・スパ・セラピストの受入れの可能性については交渉継続。

※16 経済関係強化のための協力枠組みについて規定あり(第13~20章)。

※17 現地における拠点設置(LP)の規律により、市場アクセスの一部を約束。

※7 ビジネス環境整備章に言及がある。 ※18 税関手続章、TBT章及び競争章において、それぞれの分野における協力に関する規定あり。

※8 看護師・介護福祉士候補者等の受入れを約束。 ※19 知財章はないが、地理的表示に関する規定(第8条)等がある。

※9 内国民待遇又は無差別待遇に関する義務規定はない。 ※20 「経済関係の緊密化章」 を設けている。

※10 発効後1年以内に設置される小委員会で実体的な規定に関する交渉を継続する旨規定。

ビジネス環境の整備

協力

エネルギー

・鉱物資源

国名

発効年月日

知的財産

サービスの貿易 投資

政府調達

競争

中南米

※5 現行入管法令の範囲内で、看護師資格をもつ看護業務従事者の受入れを約束。ベトナム人看護師・介護福祉士候補者の受け入れ可能性については交渉継続。

ASEAN

- ※6

△※10 △※10

※6 日・ベトナム投資協定が必要な変更を加えた上で協定の一部となる旨規定(第9条4)。

物品の貿易

これまでの我が国のEPAの規定対象分野

3

・ASEAN諸国を中心に11カ国・地域とのEPAが発効。貿易額に占める割合は16.5%。・現在,豪州,GCCと交渉中。インド,ペルーとは交渉完了。韓国とは交渉が中断中。交渉の加速化と早期妥結を目指す。

日本の貿易総額に占める国・地域の貿易額の割合

ASEAN13.97%

メキシコ0.85% チリ

0.59%スイス1.11%

インド0.89%韓国

6.11%GCC8.65%

豪州4.14%

ペルー0.20%

中国20.51%

香港2.91%

台湾4.84%

米国13.48%

EU11.61%

その他10.14%

締結済 16.5%

交渉中20.0%

日本のEPAの現状

※GCC: 湾岸協力理事会(Gulf Cooperation Council)

【資料】財務省 統計

スイス

韓国

GCC

インド

オーストラリア

ASEAN

ベトナム

タイ

マレーシア

シンガポール

インドネシア

ブルネイ

フィリピン

メキシコ

ペルー

チリ

日本

締結済み 交渉段階4

2006年(以前)

2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

シンガポール

メキシコ

マレーシア

チリ

タイ

インドネシア

ブルネイ

ASEAN全体

フィリピン

スイス

ベトナム

準備協議

共同研究会

共同研究会

’02年11月 発効

’06年 4月見直し交渉開始

3月 改正議定書署名

6月 国会承認

9月 発効

’05年6月 追加議定書につき交渉開始

12月 国会承認

4月 追加議定書発効

’04年1月 交渉開始

4月 国会承認

7月 発効

2月 交渉開始 3月 署名6月 国会承認

9月 発効

’04年2月 交渉開始 4月 署名6月 国会承認

11月 発効

’05年7月 交渉開始 8月 署名 5月 国会承認

7月 発効

5月 国会承認

7月 発効

2月 6月 交渉開始

’05年4月 交渉開始4月 署名完了

6月 国会承認

’04年2月 交渉開始9月 署名

12月 国会承認

’05年4月 政府間共同研究会開始合意

準備協議

5月 交渉開始6月 国会承認

9月 発効

6月 国会承認

10月 発効

12月 署名1月 交渉開始

物品再協議(’08年~)

サービス再協議

(’11年~)

物品再協議(’11年~)

物品再協議(肉調整品等)(’10年~)

物品再協議(水産品等)(’11年~)

物品再協議(’11年~)

サービス・自然人の移動再協議

(’09年~)

自然人の移動再協議(’07年~) サービス

再協議(’10年~)

サービス、物品、投資

再協議(’11年~)

一般見直し(’13年~)

サービス再協議

(発効後2年後~)

物品再協議(自動車等)(’09年

~)

投資再協議(’09年~)

サービス・投資交渉(’10

年~)

鉄鋼再協議(’08年~3年ごと) 一般見直し

(’11年~)

一般見直し(’12年~)

一般見直し(’11年~)

一般見直し、物品再協議(’13年~)

一般見直し(’13年~)

物品再協議(’12年~)

:交渉 :国会審議 :発効済み協定に関する再協議等

物品貿易に関する一般見直し

(’14年)

物品再協議(バナナの関税割当)(’09年後~)

12月 発効

自然人の移動(発効から2年

以内目処)

サービスの貿易省(発効から2年

以内目処)

経済連携協定にかかるスケジュールのイメージ

5

韓国

GCC(※1)

2009年3月第4回中間会合

インド2010年9月

大筋合意 ※2

豪州2010年4月第11回交渉会合

ペルー2010年11月

大筋合意 ※2

日中韓

モンゴル

EU

2003年12月交渉開始

交渉

2006年 2007年 2008年 2009年

準備会合

2006年5月2006年9月交渉開始

交 渉

2005年7月共同研究会開始

共同研究 交 渉

2007年1月交渉開始

共同研究 交 渉

2007年4月交渉開始

2005年11月共同研究開始

準備会合

2009年3月

交 渉

5月 交渉開始

2004年2003年 2005年 2010年

交渉中断中

2004年11月交渉中断

共同研究

2010年5月共同研究開始

共同研究

2010年6月 共同研究開始

共同検討作業

2010年9月

交渉再開に向けた局長級事前協議

2010年4月、共同検討作業開始で一致。

※1 GCC=湾岸協力理事会:サウジアラビア、カタール、クウェート、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーンで構成。※2 インド、ペルーについては、交渉完了し、署名・発効に向け作業中。

二国間協定の進捗

6

○日タイEPAを「利用中」、「検討中」の企業は4割。

利用企業社数では、86社と最多。

○ 利用率は日インドネシアEPA(34.3%)、日タイEPA(32.9%)で高め。

○「利用を検討中」も含めると、日ベトナムEPAは44.1 %、日ASEAN・EPAが37.1%。将来的に更に利用率が高まる可能性あり。

出所:JETRO「平成21年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」

輸出企業 輸入企業

日本企業のEPAの利用率は上昇傾向。

「利用中」、「検討中」の企業割合は上昇 (08年度:27.5% → 09年度: 33.8%)。

EPAの利用率

7

・ 日タイEPAを使って、桃やイチゴを日本からタイに輸出。日本の高品質果実が富裕層に人気が高く、販売が増加している。

活用事例① 食品貿易・店頭小売会社

日タイEPAの原産地証明書の発給状況 タイへの果物の輸出額

・ 日タイEPA、日フィリピンEPA、日チリEPAを使って、日本から製品を出荷。・ 日チリEPAの利用による関税削減メリットは、年間約800万円(6%の関税が撤廃)。

活用事例② 医療機器メーカー

日タイEPAは、他のEPAに比べて果物の原産地証明書の発給が特に多い。「りんご」や「なし」の発給が目立つ。

EPAによるタイの関税率変化

07年 08年 09年

りんご 10% → 0% 36 144 173

なし 30% → 0% 12 38 69

イチゴ 40% → 6年目に0% 0 10 65

桃 40% → 0% 0 19 12

みかん 40% → 6年目に0% 0 1 3

※ 日タイEPAは、2007年11月発効。

※最近は、インドネシアやベトナムでも日本の高級りんごへの関心が高く、EPAを使った輸出が出てきている。

直近では金融危機の影響も見られるものの、EPA発効直後は総じて増加。特に「みかん」はEPA発効後に急増。

06年 07年 08年 09年

りんご 98,320 121,143 147,172 137,768

なし 3,518 5,577 4,445 6,311

イチゴ 209 663 1,557 962

桃 0 374 318 0

みかん 0 0 854 1,197

出所:財務省 日本貿易統計

新たな市場の開拓

8

・ 日アセアンEPAの発効により、アセアン域内で生地生産と衣類加工を行い、日本に輸出するビジネススタイルが有利に。

A社 : 日アセアンEPAで日本の関税が下がり、メリット享受。B社 : 中国での生産比率を9割から2/3に削減し、ベトナムでの事業を拡大。C社 : 生地を中国産のものからタイ産にシフトすることを検討中。

活用事例 : 衣類製造・小売会社

繊維製品の最終調達先がアセアン諸国へ

国名 回答企業数

中国 13

日本 3

ベトナム 1

インドネシア 1

国名 回答企業数

ベトナム 5

タイ 4

インドネシア 4

その他 5

EPA発効前 EPA発効後

出所:「日本繊維輸入組合報告書」

ベトナムにおける原産地証明書の発給状況

輸出相手国・地域 07年 08年 09年

日アセアンEPA - - 37,018

中アセアンFTA - 24,828 34,185

韓アセアンFTA - 24,617 33,300

AFTA - 17,794 24,454

日アセアンEPA - - 1,703.2

中アセアンFTA 210.4 446.3 1,065.0

韓アセアンFTA 358.7 1,189.8 1,651.3

AFTA 535.7 633.7 901.6

発給額(100万㌦)

発給件数(件)

CLMVからの繊維輸入が増加

発効後1年にも関わらず、件数・額ともに日アセアンEPAが最多。縫製品での発給が多い。

07年 08年 09年 (前年比)

ベトナム 98.0 104.6 111.4 +6.5%

ミャンマー 11.3 13.8 14.0 +1.4%

カンボジア 1.7 1.9 4.2 +121.1%

ラオス 0.3 0.5 0.7 +40.4%

全世界 3,451 3,278 2,901 -11.5%

出所:財務省 日本貿易統計

(単位:10億円)

出所:JETRO 通商弘報

アセアン諸国との分業・共生

9

04年 05年 08年 (04年比)

乗用車

総輸入額 8,141 9,268 12,705

シェア日本 58.9 55.1 46.5 -12.4

タイ 1.1 2.2 7.7 +6.7

商用車

総輸入額 2,556 3,040 5,364

シェア日本 43.8 29.9 26.8 -17.0

タイ 25.3 38.1 36.9 +11.6

(単位:100万ドル、%)

日本の自動車は、タイ工場で製造し、豪州へ輸出。

出所:豪州貿易統計

日本企業は、タイ-インド間でサプライチェーンを再構築。

A社 FTA実施とほぼ同時に、インドのテレビ工場を閉鎖。タイ工場からの輸出に切り替え。インドでのカラーテレビの販売が急増。

B社 高付加価値の冷蔵庫、洗濯機をタイからインドへ輸出開始。このうち、冷蔵庫はFTAを利用。

C社 インドで現地企業と合弁でエアコンを生産していたが、販売会社化。FTAを使って、タイからインドに輸出。

D社 FTAを利用して、タイからインドにカラーTV用ブラウン管を輸出。

E社 インドのバンガロールで生産したトランスミッションをタイに輸出。逆にタイからインドには乗用車の組み立て部品を輸出。そのうち、アーリーハーベストの対象品目は、FTAを利用している。

F社 FTAを使って、タイからインドにポリカーボネートを輸出。

G社 タイが世界向けの輸出拠点。製品の8割を東南アジア、北米、アフリカなどに輸出。中国工場は国内向け生産で精一杯。インドにも、バンガロールに工場があるが、国内需要がどんどん伸びている。生産が間に合わず、FTAを使ってタイから輸出できないか、検討中。

タイ ー 豪FTA (05年1月発効) タイ ー インドFTA (04年9月発効)

23.1

21.3

13.2

15.9

33.3

12.3

18.8

17.5

22.8

18.5

52.3

52.5

59.6

52.9

41.5

12.3

7.5

9.6

8.5

6.7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

タイ - 豪

タイ - インド

韓アセアン

中アセアン

AFTA

利用している 利用を検討中 利用していない 不明

出所:JETRO「平成21年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」

27.5

33.8

46.8

65

58.4

45.6

7.5

7.8

7.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

NZアセアン

豪アセアン

印アセアン

利用する予定 利用する予定なし 不明

発効予定(09年11月時点)FTAの活用予定AFTAは「利用を検討中」を含めると5割強。特に繊維・織物(80%)や自動車関連(53.8%)で利用率が高い。

日本企業の第三国間FTAの活用状況

印アセアンFTAは化学(84.6%)、自動車関連(70.0%)で特に積極的。

出所:JETRO「平成21年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」

日本企業の第三国間FTAの活用状況

10

・ 東アジア全域に生産・販売ネットワークを展開し、部品・完成品を融通。・ 社内に「FTA活用推進プロジェクト」を立ち上げるなど、EPAの利用体制を整備。日本のEPAだけでなく第三国間FTAも積極的に利用。

・ アセアン域内での売上げ約300億円のうち、関税削減メリットは約53億円。

活用事例① 電機・電子機器メーカー

・ 日本産の原料をタイでシートベルトに加工し、ASEAN域内、中国、インドに出荷。日タイEPA、AFTA、中アセアンFTA等、複数のFTAを利用。

・ インド市場における競争力を高めるため、印アセアンFTAの利用も検討中。

活用事例② シートベルト・メーカー

・ 日本やアセアンの機械や部品を使って、タイで自動車部品を製造。日タイEPAやAFTAを利用。・ 日タイEPA利用による関税削減メリットは、約3,300万円(経済危機前の目標値は、約6,600万円)。

活用事例③ 自動車部品メーカー

・ 日本や中国等の部品を使って、タイでエレベーターを製造。アセアン諸国、インド、中東をはじめ世界73ヶ国に出荷。日アセアンEPAやAFTAを利用。

・ FTA利用による関税削減メリットは、約1億円。・ 中アセアンFTA、印アセアンFTAにも関心あり。

活用事例④ エレベーター・メーカー

東アジアにおけるサプライチェーンの高度化

11

EPA/FTA取組状況:△交渉中、○署名済み、◎発効済み

FTA比率:FTA相手国(発効国及び署名済国)との貿易額が貿易総額に占める割合

EPA/FTAの数 *

FTA比率*

日本 韓国 中国 米国 EU

ASEAN

インド 豪 NZ カナダ メキシコ チリ ペルー スイス GCC各国との個別の取組

日本 11 16.5%

△(中断中)

◎7カ国

と発効済△※1

△ ◎ ◎ △※1

◎ △

韓国 8 36.2%

△(中断中)

○ ○ ◎1カ国

と発効済◎ △ △ △ △ ◎

○(仮署名)

◎EFTA

中国 9 22.0%

◎1カ国

と発効済△ ◎ ◎ ◎ △

米国※2 14 37.5

%○

1カ国と発効済

1カ国と交渉中

※2

◎※2

△※2

◎NAFTA

◎NAFTA

◎※2

◎※2

◎バーレーン、

オマーン

△UAE

EU※3 28 76.4

%○ △

2カ国と交渉中

△ △ ◎ ◎ △ ◎ △

・ 日本が主要貿易相手国(中国、米国、EU)とのEPA/FTAの取組が遅れているのに対し、韓国はこれらの国とのEPA/FTAを積極的に推進。・ 日本のFTA比率が16%であるのに対し、韓国は36%、米国38%、EU30%(対域外貿易)。

※1 交渉は完了。署名・発効に向け作業中。※2 米国はTPP交渉の枠組でこれらの国と交渉中。※3 EUのFTA比率「76%」は域内貿易を含む。域外貿易のFTA比率は30%。

FTAの進捗状況・国際比較

12

●EPA/FTA交渉相手候補国・地域については、「包括的経済連携に関する基本方針」に基づき、(1)アジア太平洋地域、(2)アジア太平洋地域以外の主要国・地域、(3)その他の国・地域、について、以下の外交戦略上の観点、経済的な観点から総合的に判断する。(注:2004年に策定された「今後の経済連携協定の推進についての基本方針」の基準をも考慮。)

1.政治・外交上の観点 -我が国の政治・外交上の課題への取組に資するか-相手国の国際場裡での位置づけ、当該地域における政治的状況-特にアジア太平洋地域の連携強化という観点からの重要性-相手国の政治、治安等の安定度、統治能力、民主化の程度-二国間関係強化の重要性(相手国からの要請の有無、強さを含む)

2.経済的な観点 -我が国が「国を開き」、「強い経済を作る」ことに資するか-我が国と相手国との貿易規模、貿易構造(センシティブ品目の有無)-相手国の経済規模、将来性-我が国へのエネルギー・鉱物資源・食料供給の観点からの重要性-我が国経済界のニーズ-他の主要国のFTA取組状況(我が国が劣後する状況の有無、可能性)-当該地域における地域経済連携などの進捗状況

EPA/FTA交渉相手候補国・地域の検討

13

韓国企業に対する関税は、FTA発効後10年以内で全廃

0%

5%

10%

15%

20%対日本

対韓国

韓 国 日 本

乗用車 10%→ 0% 10%

薄型テレビ 14% →0% 14%

電子レンジ 5% →0% 5%

韓国企業に対する関税は、FTA発効後5年以内で全廃

EUにおける主な高関税品目 EUにおける電気機械分野での国別シェア

出典:経済産業省資料

韓 国 日 本

乗用車 2.5%→ 0% 2.5%トラック 25%→ 0% 25%ベアリング 9% →0% 9%ポリスチレン、ポリエステル

6.5% →0% 6.5%LCDモニター、カラーTV、DTV

5% →0% 5%電気アンプ、スピーカー

4.9% →0% 4.9%

米国における主な高関税品目

・ 韓国による米・EUとのFTAが発効することにより、我が国の鉱工業品輸出が比較劣位におかれる可能性がある。

無税

40.9%

0000000

有税

59.1%

000000

一般機械

14.9%

電気機械

9.4%

化学工業製品

4.2%精密機械

3.0%鉄鋼及び

鉄鋼製品

2.4%輸送機器

(除く自動車)2.3%自動車 1.7%

その他無税品 3.2%

自動車

32.2%

化学工業製品

7.3%

電気機械

7.2%

一般機械

6.1%

精密機械

3.0%

金属製品 1.2%

その他有税品

2.1%

日本→米国8兆6492億円

(2009年)

無税

74.5%

0000000000

有税

25.5%

0000

一般機械

13.6%

農林産品

11.9%

電気機械

11.5%

化学工業製品

10.4%精密機械

10.2%

輸送機器

(除く自動車)7.1%

木・紙製品

2.2%

金属製品

(除く鉄鋼)1.8%

石油・燃料 1.8%

自動車 1.4%その他無税品

2.7%

農林産品

12.5%

化学工業製品

6.7%

魚・甲殻類

2.0%

金属製品(除く鉄鋼)1.4%

その他有税品

2.9%

日本←米国5兆3697億円

(2009年)

米国との貿易関係

先行する韓国との競争状態

14

●EU先進安全自動車技術指針、建築用木材基準、政府調達、医療機器、電子機器(含む通信端末機器)、航

空輸送、自動車、医薬品、化学品、化粧品、食品安全、酒類、投資、金融サービス等に関する非関税措置への対応。

●米国通信、情報技術、医療機器・医薬品、金融サービス、競争政策、商法及び司法制度改革、流通、保険分

野における制度等の見直し。SPS措置等の国際基準への調和に関する要望。

●中国農産物輸入解禁、食品検疫の基準(ポジティブリスト)の見直し。

●韓国のり(水産物)IQ制度の運用改善等、活魚車の日本国内乗り入れ、港運の事前協議等。

・ 関税以外にも各国から規制改革・国際基準への調和等につき要望がある。

規制改革等に関する主な要望の例

規制改革等に関する主な要望等

15

●インドネシア、フィリピン看護師・介護福祉士候補者受入れ制度の改善(滞在期間の延長、国家試験のあり方の見直し、 日本語

予備教育の実施)、等級制による看護師資格の付与等

●タイスパセラピスト・介護福祉士の受入れ

●ベトナム看護師・介護福祉士の受入れ

●インドフィリピン・インドネシアと同様の看護師の受入れ、資格相互承認(医師・歯科医師・看護師・会計士・建築士)

●韓国国家技術資格(放送通信技士、自動車整備技士、電算応用機械製図技能士等)の相互承認

●中国訪日査証発給の円滑化、技術実習生協力の推進

・ 関税以外にもASEAN諸国等より看護師・介護福祉士等の受入れにつき要望がある。

自然人の受入れに関する主な要望の例

自然人の受入れに関する主な要望

16

 米星 米チリ 米豪 米ペルー 米韓 韓EU EU・チリ 中チリ 中NZ 中星

(NZ側) (星側)

(米側) (星側) (豪側) (EU側)

(ペルー側) (米側)

・水産品 約 55 (米側) (韓側) (韓側) (チリ側) (チリ側)

・脱脂粉乳,ホエイ,バターなど乳製品 約110

・コメ,小麦,大麦,でんぷん等穀物 約 70 (中国側) (中国側) (中国側)

・てんさい糖など糖類 約 10

・穀物,ミルク等の調製品 約130 等   (米側)

約360タリフライン

農林水産品 約320タリフライン

・肉類(牛,豚,鶏等),肉調整品 約40 ・パイナップル・トマト等の調製品  約15

・チーズ等乳製品  約20 ・落花生,植物性油脂等  約30

・さけ,まぐろ等水産品  約40 ・糖類・調整食料品 約100

・とうもろこし,でんぷん,穀粉等 約25 ・合板  約30

農林水産品 約130タリフライン

・肉類(牛,豚,鶏等),肉調整品 約60

・パイナップル,トマト等の調製品  約15

・糖類・調整食料品 約10  等 (EU側)

日フィリピン

  日タイ (88.4%)

 (87.2%)

日インドネシア 日ベトナム

(86.6%) (86.5%)

日メキシコ  日チリ

(86.0%)  (86.5%)

日ブルネイ

(84.6%)

日シンガポール

(84.4%)

自由化率

日スイス

(85.6%)

日マレーシア

約450タリフライン

農林水産品 約400タリフライン

(2005年1月発効)

(2009年2月発効)

MFN無税(国家貿易,関税割当枠内無税を除く)

主要貿易国間の最近のFTA

日本のEPA(既存EPAにおける対応)

  約3,640タリフライン(鉱工業品 3,150タリフライン,農水産品約490タリフライン)

(2007年6月署名)

(20010年10月署名)

(2003年発効)

(2006年10月発効)

(2006年10月発効)

(2009年1月発効)

鉱工業品 55タリフライン

鉱工業品 40タリフライン

(86.8%)

「除外」以外の対応をしたことがない

自由化率

日本のEPAと米・EU等のFTAの自由化率(注)比較

常に関税撤廃

(米側) (チリ側)

関税撤廃をしたことがない(約940タリフライン)

「再協議」または「スタンドスティル」としたことがある

関税撤廃をしたことがある

関税削減,関税割当をしたことがある

(タリフライン数(HS9桁))

(2004年1月発効)

(2004年1月発効)

ただし、将来的に実質的に自

由化されるものも含めれば99.0%

100%

約95%

約90%

約73%

約40%

0%

約3,640

約6,580

約8,100

約9,000 100%

約95%

約90%

(注)

本表は,タリフラインベースの自由化率(10年以内に関税撤廃を行うタ

リフラインが全タリフラインに占める割合を示したもの)

但し,我が国のEPAについて,貿易額ベースの自由化率(10年以内

に関税撤廃を行う品目が輸入額に占める割合)を見ると概ね90%以

上を達成。日ブルネイ及び日スイスとのEPAでは,99%以上,日シン

ガポール,日マレーシア,日ベトナムとのEPAでは約95%。

日本のEPAと米・EU等のFTAの自由化率(注)比較

17

●新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)該当部分10.アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築を通じた経済連携戦略

アジア諸国を含めた主要国・地域との経済連携の進め方などの検討を行い,2010年秋までに「包括的経済連携に関する基本方針」を策定する。上記基本方針を踏まえて,国内産業との共生を目指しつつ,関税などの貿易上の措置や非関税措置(投資規制,国際的な人の移動に関する制限等を含む)の見直しなど,質の高い経済連携を加速するとともに、国内制度改革等を一体的に推進する。

特に,「東アジア共同体構想」の具体化の一環として,2010年にAPECをホストする機会を通じて,アジア太平洋を広く包含するFTAAPの構築のためのあり得べき道筋を探求するにあたって強いリーダーシップを発揮する。

●総理所信表明演説(平成22年10月1日)該当部分(東アジア地域の安定と繁栄に向けて)この秋は、我が国において、重要な国際会議が開催されます。生物多様性条約に関するCOP10では、議長国としての重要な役割を果たしま

す。また、私が議長を務めるAPEC首脳会議では、米国、韓国、中国、ASEAN、豪州、ロシア等のアジア太平洋諸国と成長と繁栄を共有する環境を整備します。架け橋として、EPA・FTAが重要です。その一環として、環太平洋パートナーシップ協定交渉等への参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指します。東アジア共同体構想の実現を見据え、国を開き、具体的な交渉を一歩でも進めたいと思います。

●「包括的経済連携に関する基本方針」(平成22年11月9日閣議決定)該当部分2 包括的経済連携強化に向けての具体的取組

我が国を取り巻く国際的・地域的環境を踏まえ、我が国として主要な貿易相手国・地域との包括的経済連携強化のために以下のような具体的取組を行う。特に、政治的・経済的に重要で、我が国に特に大きな利益をもたらすEPAや広域経済連携については、センシティブ品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指す。(1)アジア太平洋地域における取組

アジア太平洋地域においては、現在交渉中のEPA交渉(ペルー及び豪州)の妥結や、現在交渉が中断している日韓EPA交渉の再開に向けた取組を加速化する。同時に、日中韓FTA、東アジア自由貿易圏構想(EAFTA)、東アジア包括的経済連携構想(CEPEA)といった研究段階の広域経済連携や、現在共同研究実施中のモンゴルとのEPAの交渉開始を可及的速やかに実現する。

さらに、アジア太平洋地域においていまだEPA交渉に入っていない主要国・地域との二国間EPAを、国内の環境整備を図りながら、積極的に推進する。FTAAPに向けた道筋の中で唯一交渉が開始している環太平洋パートナーシップ(TPP)協定については、その情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。

「包括的経済連携に関する基本方針」をめぐる議論(経緯)

18

包括的経済連携に関する閣僚委員会

幹事会副大臣級会合

食と農林漁業の再生推進本部

行政刷新会議(規制・制度改革分科会)

協力・連携

FTAAP・EPAのための閣僚会合

(11月15日(月)閣僚委員会で開催決定予定)

人の移動に関する検討グループ

高いレベルの経済連携と国内改革の一体的実施

「包括的経済連携に関する基本方針」決定後の推進体制

19

■2006年11月、米国(ブッシュ大統領、当時)がアジア太平洋自由

貿易圏(FTAAP)構想を提案。以後、APECエコノミーの間で議論。

■2009年11月のシンガポールAPECにて、FTAAPを実現するための一連のあり得べき道筋を探求し、2010年に成果を首脳に報告することで一致。

■2010年11月の日本APECにおいては、FTAAPについては、AS

EAN+3、ASEAN+6、TPP協定といった現在進行している地域的な取組を基礎として更に発展させることにより、包括的な自由貿易協定として追求されるべきであることが確認され、その実現に向けた具体的な措置をとっていくこととなった。

TPP 2010年~ 交渉開始

日中韓

ASEAN

~2012年目処 共同研究

2015年 域内関税撤廃

交渉妥結

FTAAP

4つのテーマにつき作業部会ASEAN+3 (EAFTA), ASEAN+6 (CEPEA) 2009年~ 政府間での議論を開始

APEC全体のGDPにTPP交渉参加国が占める割合

50.65%49.35%

TPP交渉参加国

その他のAPEC参加国・地域

2010年:FTAAPにとって節目の年

これまでの経緯

アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想

20

・05年 4月 中国の提案により民間研究開始。

・09年10月 ASEAN+3首脳会議の結果を踏まえ,政府間での議論を開始。

・10年8月 ASEAN関連経済大臣会合にて、中国から、ASEAN+3の貿易円滑化に関するロードマップを提案。

東アジア自由貿易圏構想

(East Asia Free Trade Area (EAFTA))【ASEAN+3(日,中,韓)】

・07年6月 日本の提案により民間研究開始。

・09年10月の東アジア首脳会議の結果を踏まえ、政府間での議論を開始。

・10年8月 ASEAN関連経済大臣会合にて、日本から、ASEAN+6の経済統合に関するコンセプトペーパー(「イニシアル・ステップス」)を提案。

東アジア包括的経済連携構想(Comprehensive Economic Partnership in East Asia (CEPEA))

【ASEAN+6(日,中,韓,印,豪,NZ)】

ASEAN+3及び+6については、4つのワーキング・グループ(①原産地規則、②関税品目表、③税関手続、④経済協力)を設置し、まずはASEAN内部での議論が開始された。その後、2010年9月、ASEANと対話国(日、中、韓、印、豪、NZ)の間でまずは①と②についての議論が開始された。これらのワーキング・グループのレポートは、首脳に報告される予定。

米国

ニュージーランド

チリブルネイ

シンガポール

豪州ベトナム ペルー

環太平洋パートナーシップ協定

(Trans-Pacific Partnership (TPP) Agreement)

マレーシア

・10年3月 シンガポール、NZ、チリ、ブルネ

イ、米国、豪、ペルー、ベトナムの8カ国でTPP交渉開始。

・10年10月 第3回交渉実施(マレーシアが参加し、交渉参加国は9カ国に。

・10年11月 APECの際に交渉参加国が初の首脳会合を開催。日本はAPEC議長として招待を受け、オブザーバー参加。

・10年12月 第4回交渉会合実施。

パプア・ニューギニア等

米国

カナダ

メキシコ

ロシア

香港

台湾

ペルー

チリ

アジア太平洋の自由貿易圏構想

(Free Trade Area of the Asia-Pacific (FTAAP))

・06年11月、APEC首脳会議(ハノイ)にて、FTAAPの研究につき一致。

・09年11月、APEC首脳会議(シンガポール)にて、

FTAAPへのありうべき道筋を探求することにつき一致。

・10年6月、APEC貿易担当大臣会合にて、FTAAP

へのあり得べき道筋について11月に横浜で首脳に報告することを確認。

・10年11月、APEC首脳会議において、FTAAPの

実現に向けて具体的な措置をとっていくことにつき一致。

21

●環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement:シンガポール、NZ、チリ、ブルネイによる経済連携協定(通称P4協定)が2006年に発効。P4協定はAPEC参加メンバーに開放されている。

●物品貿易については、原則として全品目について即時または段階的関税撤廃。●サービス貿易、政府調達、競争、知的財産、人の移動等を含む包括的協定。

●2010年3月、上記4カ国に米国、豪州、ペルー、ベトナムを加えた8カ国でP4協定を発展させた広域経済連携協定を目指す 「環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership)協定」の交渉を開始。

●2010年10月4~9日に第3回交渉会合(於ブルネイ)を開催。同会合からマレーシアが新規参加し、現在9カ国。●2010年12月6~10日に第4回交渉会合(於NZ)を開催。

「P4」が拡大

P4協定とTPP協定交渉

交渉の現状(我が国が収集した情報)

●大半の分野においてテキストに基づく交渉が行われている。

●関税交渉については、現段階では「バイ方式」「マルチ方式」共並存して行われているが、最終的にいかなる形で一つの合意にまとめるかについては未定。

(注:「バイ方式」=二国間での自由化交渉を行う。「マルチ方式」=既存の二国間FTAとは関係なく多国間で自由化交渉を行う。)

●現在、24※の作業部会が立ち上げられ、議論が進められている模様。

※首席交渉官協議 /市場アクセス(工業)/市場アクセス(繊維・衣料品)/市場アクセス(農業)/原産地規則/貿易円滑化/SPS/TBT/貿易救済/政府調達/知的財産権/競争政策/越境サービス/金融 /電気通信/電子商取引/投資/商用移動(business mobility) /環境/労働/制度的事項/紛争解決/協力/横断的事項特別部会(中小企業,競争,開発,規制関連協力)

(注)我が国は様々な外交ルートや種々の協議の場を通じて情報収集を行っている。

環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership(TPP))協定

22

●国を開き、日本経済を活性化するための起爆剤。アジア太平洋の成長を取り込み、新成長戦略を実現。

品目、分野によりプラス・マイナスはあるが、全体としてGDPは増加。(参考) 実質GDP 0.48%~0.65%増(2.4 兆~3.2 兆円程度増)(川崎研一氏(内閣府経済社会総合研究所客員主任研究員)試算)

「国を開く」という強い意思を示すメッセージ効果 ⇒ 日本に対する国際的な信用及び関心の高まり

韓米FTAが発効すれば日本企業は米市場で韓国企業より不利に。TPP参加により同等の競争条件を確保。

(参考) 日本がTPP、EUと中国とのEPAいずれも締結せず、韓国が米国・中国・EUとFTAを締結した場合、自動車、電気電子、機械産業の3業種について、2020年に日本産品が米国・中国・EUで市場シェアを失うことによる関連産業を含めた影響試算) (経済産業省試算)

2020年の実質GDP 1.53%減(10.5 兆円程度減) この内 米国市場関連 1.88 兆円程度減※日本のTPP参加により、中国、EUとのEPA締結にプラスの影響があるとの仮定に基づき試算。

●TPPがアジア太平洋の新たな地域経済統合の枠組みとして発展していく可能性あり。また、 TPPの下での貿易投資に関する先進的ルールが、今後、同地域の実質的基本ルールになる可能性あり。

(注:カナダ、韓国、その他のASEAN諸国にも拡大する可能性。)

TPP交渉への参画を通じ、できるだけ我が国に有利なルールを作りつつ、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の推進に貢献。横浜におけるAPEC首脳会議の主要な成果。

逆にTPPに参加しなければ、日本抜きでアジア太平洋の実質的な貿易・投資のルール作りが進む可能性。

■TPPにおける交渉分野は、我が国のEPAと同様、市場アクセス分野のみならず、幅広い分野。

■我が国のEPAで独立した章を設けていない、「環境」、「労働」などの新規の分野も含まれる見込み。

■WTOドーハ・ラウンドを先取りし、日本企業の貿易・投資活動に有利なルールの策定に貢献し得る。

(予測される分野) 物品貿易(関税撤廃の例外を認める範囲、関税撤廃の経過期間等を含む)、原産地規則、貿易円滑化、動植物検疫、貿易救済措置、政府調達、知的財産権、競争政策、投資、サービス貿易、環境、労働、紛争解決等。

我が国がTPP協定に参加した場合の意義

我が国がTPP協定に参加した場合の意義と留意点

23

●予め特定セクターの自由化を除外した形の交渉参加は認められない可能性が高い。

●10年以内の関税撤廃が原則(除外は極めて限定的だが、最終的には交渉次第)

(参考)コメ、小麦等主要農産品19品目について、全世界を対象に直ちに関税を撤廃し、何らの対策も講じない場合の農業への影響試算

( 農水省試算 )

■農産物の生産額減少 → 年間 4.1 兆円程度

■食料自給率(供給熱量ベース) 40% → 14%程度に減少

■多面的機能の喪失額 → 3.7 兆円程度

■農業関連産業も含めた国内総生産への影響試算 → 年間 7.9 兆円程度。

●既存の二国間の懸案への対応を求められる可能性あり(特に米国からは、牛肉や非関税障壁等への対応が求められる可能性大)

●アジア太平洋の地域経済統合枠組み作りを日米が主導する政治的意義大。対中戦略上も対EU関係でも重要。

●アジア太平洋地域の貿易・投資分野のルール作りにおいて主導的役割を果たすことにより、国際的な貿易・投資分野の交渉や、ルール作りにおける影響力を高め、交渉力の強化に貢献。

TPP協定参加の留意点

24

既存のEPA ・ FTA TPP(EPA・FTAの一種)の特徴

自由化

対象

範囲

・期間

・ WTO協定上、「実質上すべての貿易(substantially all the trade)」の関税撤廃が必要((注2):GATT第24条8項)。

・ 「実質上すべての貿易」についてWTO協定上の基準は

ないが、少なくとも貿易の9割(貿易量又は品目数)につき、10年以内に関税撤廃することが必要との解釈が一般的。(注4)(注5)

・ 我が国が締結したEPAにおいては、双方向の貿易額の

9割以上(日本側は品目数では84~88%)を10年以内に関税撤廃。

・ なお、米国・EU等、先進国同士のFTAにおいては高い

自由化水準を約束している。(例:韓EUでは品目数98%以上を10年以内関税撤廃)(別添「参考資料集」参照)

TPP ・ P4協定等を踏まえ交渉中と考えられるが、どの程度の即時

撤廃が必要かは現段階では不明。いずれにせよ、原則10年以内の関税の撤廃が必要と考えられる。

P4協定等 ・ P4協定では、特段の定め等がない限り「全ての関税を撤廃」

(注6)。実際は、全品目の約8割が即時撤廃(注7)。その他は原則10年以内の関税の段階的撤廃。

・ 米国の既存FTAでは、約8~9割が即時撤廃。

自由化

例外

長期関税

撤廃

引き下げ含

む)

・ 長期(10年超)関税撤廃や除外を含む「“実質上すべての貿易”の例外」の扱いについて、WTO等で具体的要件が確立しているものではなく交渉次第。

・ 我が国が締結したEPAにおいては、自由化にカウントさ

れない1割程度の品目について、除外・再協議等の例

外的対応。(関税撤廃をしたことがないタリフライン数:9

40)

TPP ・ 交渉参加にあたって、自由化例外品目を提示しての参加は認

められない。 ・ P4協定等を踏まえ交渉中と考えられるが、どの程度の例外

が認められるかは、現段階では不明。 P4協定等 ・ P4協定では、( 1 )長期(10年超)関税撤廃は、チリの一部

乳製品(全タリフラインの0.4%を12年以内に撤廃)のみ。( 2 )関税撤廃の例外は、チリの砂糖・同調製品の一部(全タリフラインの0.1%は一定条件下でのみ撤廃)及びブルネイの酒・タバコ(以上、宗教的理由)、火器、花火等(全タリフラインの0.8%を除外)のみ。

・ 米国の既存のFTAでは、( 1 )10年超の関税撤廃は実質的に全品目数の0~3%程度、( 2 )除外は極めて限定的(米豪FTAの米側で実質的に1%の例が最大)。

(長期関税撤廃・引き下げ

を含む)

既存のEPA・FTAとTPPの特徴

25

GATT第24条及びGATS第5条は,一定の条件(「妥当な期間内」に「実質上のすべての貿易」を自由化する等)の下で,一部の加盟国の間のみの関税引き下げ等を例外的に認めている。(注1、注2、注3)

上記条件を満たしていれば,WTOの他の加盟国に均霑せずに,EPA・FTAの締約国間で関税引き下げ等の特恵的待遇が認められる。

(注1) GATT第24条 第5項(抄)

・・・この協定の規定は、締約国の領域の間で、関税同盟を組織し、若しくは自由貿易地域を設定し、又は関税同盟の組織若しくは自由貿易地域の設定のために必要な中間協定を締結することを妨げるものではない。

(注2) GATT第24条 第8項この協定の適用上、(a) 関税同盟とは、次のことのために単一の関税地域をもつて二以上の関税地域に替えるものをいう。(i) 関税その他の制限的通商規則(第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条及び第二十条の規定に基いて認められるもので必要とされるものを除

く。)を同盟の構成地域間の実質上のすべての貿易について、又は少くともそれらの地域の原産の産品の実質上のすべての貿易について、廃止すること。(ii) 9の規定に従うことを条件として、同盟の各構成国が、実質的に同一の関税その他の通商規則をその同盟に含まれない地域の貿易に適用すること。(b) 自由貿易地域とは、関税その他の制限的通商規則(第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条及び第二十条の規定に基いて認められるもので

必要とされるものを除く。)がその構成地域の原産の産品の構成地域間における実質上のすべての貿易について廃止されている二以上の関税地域の集団をいう。

(注3) GATS第5条 第1項

この協定は、いずれの加盟国についても、締約国間でサービスの貿易を自由化する協定の締約国であること又は当該協定を締結することを妨げるものではない。

(注4) WTOルール交渉における日本提案(TN/RL/W/190)より抜粋(2005年10月)1. Introduction(1) As regards RTAs’ consistency with WTO rules, many members have been involved in RTA negotiations under the general perception that duty

elimination needs to cover at least 90% of trade between the parties, that no exclusion of a major sector is allowed and that transition periodshould not exceed ten years.

(注5) 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第二十四条の解釈に関する了解 3項第二十四条5(c)に規定する「妥当な期間」は、例外的な場合を除くほか、十年を超えるべきでない。中間協定の締約国である加盟国が十年では十分でないと認

める場合には、当該加盟国は、一層長い期間を必要とすることについて物品の貿易に関する理事会に十分な説明を行う。

(注6) Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement(環太平洋戦略的経済連携協定) 第3.4条Article 3.4: Elimination of Customs Duties1. Except as otherwise provided in this Agreement, and subject to a Party’s Schedule as set out in Annex I, as at the date of entry into force of this

Agreement each Party shall eliminate all customs duties on originating goods of another Party.(仮訳:この協定に別段の定めがある場合を除くほか、

かつ、附属書Iの自国の表に定める条件に従って、本協定の発効の日に、各締約国は、全ての他方の締約国の原産品の関税を撤廃する。)

(注7) 各国において即時撤廃が全品目に占める割合は、NZ 82.3%、シンガポール 100%、ブルネイ 68.07%、チリ 74.5%(WTO事務局報告書(WT/REG229/1))。26

:全タリフラインについて原則として即時または10年以内の関税撤廃。

ステージング期間が比較的長い品目の例

ブルネイ 【10年】輸送用機器・同部品(838タリフライン・7.8%)石油製品、調整潤滑剤(29タリフライン・0.3%) ※酒、タバコ、小火器は除外(宗教上の理由)

チリ 【12年】乳製品(34タリフライン・0.4%)【10年】小麦(2タリフライン・0.03%)、油脂(29タリフライン・0.4%)、砂糖・同調整品(18タリフライン・0.2%※)、繊維類(124タリフライン・1.6%)、履物類(46タリフライン0.6%)※うち7タリフラインについて一定の条件を満たした場合のみFTA税率を適用する制度があり。※乳製品34タリフラインについて、FTA農業特別セーフガードがある(12年間で廃止)。

NZ 【10年】革製の衣類附属品(12タリフライン・0.2%)、繊維類(571タリフライン・7.9%)、履物(67タリフライン・0.9%)

シンガポール 全品目を即時撤廃

注:自由化率とは、10年以内に関税撤廃するタリフラインの割合。

自由化率 長期自由化の品目の例 除外(スタンドスティル)の例米豪

(2005年1月発効)

米国側 96.0% 【10年超18年以内】 123タリフライン(1.2%)牛肉、チョコレート、清涼飲料水、アスパラ、グレープフルーツ等【関税割当枠の継続的拡大等実質的自由化】188品目(1.8%)チーズ等乳製品、落花生、たばこ、綿等

・108タリフライン(1.0%)砂糖、シロップ、ブルーチーズ等

豪州側 99.9% ・なし ・中古車(8タリフライン)に対する従量税(12,000豪㌦/台)

米チリ(2004年1月

発効)

米国側 97.6% 【10年超12年以内】 241 タリフライン(2.4%)クリーム等乳製品、落花生、綿花、ワイン、タバコ等

・なし

チリ側 97.7% 【10年超12年以内】 133 タリフライン(2.3%)鶏卵、コメ、加工穀物、植物性油脂、砂糖・同調製品、ワイン等

・なし

米ペルー(2009年2月

発効)

米国側 98.2% 【10年超17年以内】 137タリフライン(1.3%)牛肉、乳製品、落花生、チョコレート等【関税割当枠の継続的拡大】 53品目(0.5 %)砂糖・同調整品

・なし

ペルー側 99.3% 【10年超17年以内】 51タリフライン(0.7%)牛・鶏肉、コメ、乳製品等

・なし

米韓(2007年6月

署名)

米国側 99.2% 【10年超15年以内】 82タリフライン(0.8%)チーズ等乳製品、特殊履物

・なし

韓国側 98.2% 【10年超20年以内】 167タリフライン(1.5%)大麦、コーンスターチ、チーズ、牛肉、果物、ニンニク等【関税割当枠の継続的拡大】 15タリフライン(0.1%)じゃがいも、オレンジ、食用大豆等※牛肉、豚肉、麦、でん粉等76タリフラインについて、FTA農業セーフガードを設置(7~23年間で廃止)。

・16タリフライン(0.1%)コメ・同調製品

:若干の自由化例外あり。

P4協定における各国の譲許状況

米国の締結済FTAにおける譲許状況

(注)タリフラインは関税分類上の細目。一般的に一つの物品と認識されている品目に対し、複数のタリフラインが割り当てられることがある。例えば、我が国の重要品目はコメで34タリフライン、麦で75タリフライン、乳製品で149タリフライン等となっている。

P4協定等における自由化の状況:高いレベルの自由化

27

背景韓国は,貿易に大きく依存する経済構造。世界的なFTAの趨勢に乗り遅れることを防ぎ,FTAを通じて韓国経済の構造改革を図るため,近年,急速にFTAを推進。2009年3月,李明博大統領は「新アジア構想」を発表し,アジアすべての国とのFTA締結を推進する旨発表した。

韓国のFTA

④ ⑤⑦

韓国

交渉中のもの⑪カナダ:2005年7月に交渉開始。⑫メキシコ: 2006年2月,戦略的経済補完協定(SECA)の交渉開始。2006年6月の第3回交渉を最後に中断。2007年8月,正式なFTAに格上げして交渉再開することに合意し,12月に交渉再開。⑬日本: 2003年12月に交渉開始。2004年11月の第6回会合以降中断。2008年4月21日の日韓首脳会談での合意を受け,交渉の再開に向けた検討及び環境醸成のための実務協議を2008年6月及び12月4日に実施。2009年1月12日の日韓首脳会談では,交渉再開に向けた検討を促進することで一致。2009年2月の日韓外相会談で首席代表レベルを審議官級に上げることで一致し,7月及び12月に審議官級の実務協議を実施。2010年5月の日韓首脳会談にて,交渉再開に向けたハイレベルの事前協議を行うことで一致。同年9月.交渉開始に向けた局長級事前協議を開催。⑭GCC:2008年7月,交渉開始。⑮豪州:2009年5月交渉開始。⑯ニュージーランド:2009年6月交渉開始。⑰コロンビア:2009年12月,交渉開始。⑱トルコ:2010年4月,交渉開始。

23 ⑮

22

21

交渉開始に向けた動きのあるもの⑲メルコスール:2005年5月,共同研究を開始。2007年10月,共同研究報告書を採択。

⑳日中韓:2009年10月の日中韓首脳会談にて産官学共同研究の必要性につき一致。2010年9月,第2回産官学共同研究開催。21中国:2007年3月,産官学共同研究開始。2010年4月,李明博大統領が韓中FTA推進検討を指示。

2010年5月,産官学共同研究終了に関する覚書署名。同年9月,政府間事前協議第1回会議を開催。22ロシア:2007年10月,二国間経済連携協定(BEPA)共同研究開始。23SACU:2008年12月,民間共同研究を開始することで合意。24イスラエル:2009年5月,民間共同研究を開始することで合意。25ベトナム:2010年6月,韓越FTA共同作業班第1回会議を開催。

24

発効・署名・妥結済みのもの①チリ:2004年4月1日発効。②シンガポール: 2006年3月2日発効。③EFTA:2006年9月1日発効。④ASEAN(基本協定,商品貿易協定等):2007年6月1日発効。⑤ASEAN(サービス貿易協定):2009年5月1日発効(インドネシア,カンボジア,ラオスを除く)。⑥米国:2007年6月30日署名。⑦ASEAN(投資協定): 2009年6月2日署名。⑧インド:2010年1月1日発効。⑨EU:2007年5月に交渉開始。2009年3月第8回交渉。2009年7月韓国大統領交渉妥結を宣言。2010年10月署名。⑩ペルー:2009年3月交渉開始。2010年8月妥結。 11月仮署名。

28

①⑦

発効・署名・妥結済みのもの①ASEAN:2002年11月に「中ASEAN包括的経済協力枠組み協定」に署名(2003年11月発効)。同協定は,2010年(ASEAN新規加盟国は2015年)までに中ASEAN自由貿易地域を創設することを規定。「枠組み協定」の下,農産品の一部については,2004年1月1日から関税引き下げを開始(アーリーハーベスト。中国の対ASEAN貿易額(輸出入,2005年)にしめる対象品目のシェアは1.5%)。物品貿易一般については,2004年11月に署名された「物品貿易に関する協定」に基づき,2005年7月より関税の削減を開始。2007年1月15日に「サービス貿易協定」に署名し,同年7月に発効。残る投資協定は2009年8月の中ASEAN経済大臣会議で署名。2010年1月に中ASEAN自由貿易地域が成立。②香港:2003年6月,中国と「経済連携緊密化取決め(CEPA)」に合意。2004年10月のCEPA2に続き,更なる規制緩和を盛り込んだCEPA3が,2006年1月から実施。③マカオ:2003年10月,「中国本土とマカオのより緊密な経済貿易関係のアレンジメント」に署名(2004年1月発効,2005年1月補充協定発効)。④チリ:2005年1月交渉開始,同年11月に署名。2006年10月1日発効。⑤パキスタン: 2006年11月署名。2007年7月より実施。⑥ニュージーランド 2004年12月に交渉開始。2008年4月7日署名。2008年10月発効。⑦シンガポール:2006年8月交渉開始。2008年10月署名。2009年1月発効。⑧ペルー:2008年1月交渉開始。2009年5月署名。2010年3月に発効。⑨コスタリカ:2009年1月交渉開始。2010年4月に署名。なお、台湾との間では「海峡両岸経済協力枠組取決め(ECFA)」を双方の窓口機関間で2010年1月交渉開始、同年6月署名、同年9月発効。物品・サービスの一部についてアーリーハーベストの合意が成立。物品、サービス、投資、紛争解決等の残りの事項については今後協議。

共同研究を実施中のもの⑮インド:2008年1月印首相訪中でフィージビリティスタディの終了が宣言され,印中地域貿易協定交渉開始の可能性を検討することに合意。⑯日中韓: 99年の日中韓首脳会議での合意を受け,2003年6月より民間研究機関間で共同研究を開始。2009年10月の日中韓サミット及び同貿易大臣会合を受け,2010年上半期の産官学の共同研究開始を目指すことで一致。 2010年1月産官学共同研究準備会合を実施,同5月,9月に会合を実施。⑰韓国: 2005年,研究機関間の共同研究を開始し,2006年11月に報告書をまとめた。2007年3月,産・学・官の共同研究を開始,2010年5月に同研究を終了。

背景中国のFTA推進の背景として,中国自身の経済発展,ASEANを中心とする周辺諸国・地域との経済関係の拡大,及び政治面での近隣諸国との関係重視といった点も指摘されている。また,中国は,最近,FTA交渉を開始するにあたり,相手国・地域に対し,中国の「市場経済国の地位」(中国が市場経済を確立していること)を認定するよう求めており,同認定によって,相手国・地域が,中国のWTO加盟時に約束された対中特別措置を適用しないよう働きかける狙いも窺われる。

交渉中のもの⑩豪州: 同年5月交渉開始。2010年2月に第14回交渉を実施。⑪湾岸協力理事会(GCC:サウジ,カタール,クウェート,ア首連,バーレーン,オマーン):2004年7月,GCCの経済代表団が訪中した際,「中国・GCC国家経済,貿易,投資及び技術協力枠組み」に署名,2005年4月交渉開始。⑫南部アフリカ関税同盟(SACU:ボツワナ,南ア,レソト,スワジランド,ナミビア):2004年6月,曽慶紅国家副主席が南アを訪問した際にFTA交渉の開始に合意。⑬アイスランド:2007年4月より交渉開始。⑭ノルウェー:2008年9月,オスロにてFTA交渉開始に合意。2010年3月に第7回交渉を実施。

中国のFTA

中国

⑪③

⑬ ⑭

29

米国の動向従来より米国政府は、FTAにおいて全ての貿易分野を対象に自由化を目指

すとの立場を取り,ブッシュ政権においては,自由貿易の推進を主要政策課題として掲げ,多国間,地域(米州自由貿易地域:FTAA),二国間の三方面の自由化促進を並行して追求。

オバマ大統領は2009年11月の東京での演説において,TPPへの関与(engage)を表明。2010年1月の一般教書演説では, 「国家輸出イニシアティ

ブ」を発表し,今後5年間での輸出倍増を目指すことを表明するとともに,署名済みFTAの批准を含めアジア地域及び韓国,パナマ,コロンビアなど主要貿易パートナーとの関係を強化する旨言及した。目下,米韓FTAに関する協議

及びTPP交渉が進められている。

発効・署名・妥結済みのもの①イスラエル:1985年発効。②NAFTA:1994年発効。③ヨルダン:2001年発効。④シンガポール:2003年5月署名。2004年1月発効。⑤チリ:2003年6月署名。2004年1月発効。⑥オーストラリア:2004年5月署名。2005年1月発効。⑦モロッコ: 2004年6月署名。2006年1月発効。⑧バーレーン:2004年9月署名。2006年8月発効。⑨中米(DR-CAFTA:エルサルバドル,コスタリカ,ドミニカ共和国,グアテマラ,

ホンジュラス,ニカラグア):2004年8月署名。エルサルバドル(2006年3月),ホンジュラス,ニカラグア(2006年4月),グアテマラ(2006年7月),ドミニカ共和国(2007年3月),コスタリカ〈2009年1月〉との間で発効。

⑩オマーン:2006年1月署名。2009年1月発効。⑪ペルー:2006年4月署名。2009年2月発効。⑫コロンビア:2006年11月署名。(未締結)⑬パナマ:2007年6月署名。 (未締結)⑭韓国:2007年6月署名。 (未締結)

交渉中のもの

⑮環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership:TPP)協定:シンガポール,チリ,ニュージーランド,ブルネイの4ヶ国(P4)の協定が,2006年に

発効。2008年2月に米国が積み残しの投資と金融サービス分野に関し参加を表明し,同年9月には全分野で交渉参加することにつき合意。豪州,ペルー及びベトナムも参加を表明。オバマ大統領は,2009年11月,東京での演説で,米国がTPPへ関与する(engage)旨表明。新たな協定締結を目指し、2010年3月に8ヶ国で第1回TPP交渉を豪州のメルボルンで,同年6月に第2回交渉を米国のサンフランシスコで開催。同年10月にはマレーシアを加えて,ブルネイで第3回交渉を開催。同年11月,横浜にてTPP交渉参加国による首脳会議が行われ,日本はAPEC議長国としてオブザーバー参加。今後は,同年12月にNZにて第4回交渉が開催される予定。

米国のFTA

米 国⑬

⑧⑩

その他

⑯南部アフリカ関税同盟(SACU:南アフリカ,ボツワナ,ナミビア,レソト,スワジランド):2003年6月交渉開始。2006年交渉中断。

⑰タイ:2004年6月交渉開始。2006年交渉中断。

30

EU

●発効・署名・妥結済み:28ヶ国・地域(欧州、中近東中心)※( )内は年スイス(73)、EEA(アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン)(73)、シリア(77)、フェロー諸島(97)、パレスチナ(97)、チュニジア(98)、南ア(00)、イスラエル(00)、メキシコ(00)、モロッコ(00)、ヨルダン(02)、チリ(03)、レバノン(03)、エジプト(04)、マケドニア(04)、アルジェリア(05)、クロアチア(05)、アルバニア(06)、モンテネグロ(08)、ボスニア-ヘルツェゴビナ(08)、セルビア(10)、韓国(10署名)、コロンビア・ペルー(10妥結)、中米(エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、ニカラグア、パナマ、ホンジュラス)(10妥結)、アフリカ・カリブ・太平洋諸国・地域(ACP)(うちCARIFORUM等28カ国と妥結)*、【以下、関税同盟】アンドラ(91)、サンマリノ(92)、トルコ(95)*EUが一方的に関税を即時完全撤廃するのに対し、相手国は15年から25年かけて市場開放を約束するなど、途上国の開発に重点を置いたEPA。

●交渉中(左図参照)①湾岸協力理事会(GCC)(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、ア首連):90年交渉開始。一時中断、2002年から交渉再開するも、再度中断中。②メルコスール(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ):1999年交渉開始。2004年10月中断するも、2010年5月交渉再開を決定。2010年10月第2回交渉。③インド:2007年6月交渉開始、2010年3月第10回交渉。④ASEAN: 2007年7月交渉開始、2009年3月に一時中断。EUはASEAN各加盟国とのバイ交渉にシフト。シンガポールとは、 2010年3月交渉開始、2010年9月第3回交渉。マレーシアとは、2010年10月交渉立ち上げ。⑤ウクライナ:2008年2月交渉開始。2010年10月第13回交渉。⑥リビア:2008年11月交渉開始。2010年6月第7回交渉。⑦カナダ:2008年10月共同研究の報告発出。2009年3月、協定のスコープに関する共同報告公表。2009年5月交渉開始、2010年10月第5回交渉。⑧アフリカ・カリブ・太平洋諸国・地域(ACP):48カ国と交渉中。

EUのFTA政策

EU

EUの動向

2010年11月、欧州委員会は、新成長戦略に関する報告書を発出し、WTO・DDA(ドーハ開発アジェンダ)を最優先課題としつつも、現在交渉中のFTAの締結に加え、ASEAN各国とのFTA及び、より包括的なFTAを追求することを提案。また、戦略パートナーである米国、中国、日本、ロシアとの貿易・投資関係を深めることを提案。また、これらに加え、ブラジル・インドにも特段の留意を払う必要がある旨記載。

●交渉開始に向けた動きASEAN諸国(ベトナム(交渉開始に合意)、ブルネイ、インドネシア、フィリピン)、エクアドル(2007年9月開始のアンデス共同体としての交渉が2008年6月に中断。EUとコロンビア・ペルーとのFTAに加入する可能性を含め協議中)、ボリビア、アルメニア、アゼルバイジャン、グルジア、モルドバ

31

注:日本のEPA/FTA取組状況:

日本EPA

貿易額割合

GDP順位

GDP割合

韓国FTA

新興国グループ

日本EPA

貿易額割合

GDP順位

GDP割合

韓国FTA

新興国グループ

※ 1 中華人民共和国(日中韓) 20.51% 3 8.44% ※ BRICs ◎ 32 チリ 0.59% 46 0.28% ◎

◎ - (ASEAN) 13.97% - 2.49% ◎ △ 33 オマーン(GCC) 0.50% 65 0.10% △

2 アメリカ合衆国(TPP) 13.48% 1 24.52% ○ ※ 34 アイルランド(EU) 0.48% 37 0.39% ○

※ - (EU) 11.61% - 28.19% ○ ※ 35 スペイン(EU) 0.43% 9 2.51% ○

△ 3 大韓民国 6.11% 15 1.43% - G20 36 ニュージーランド(TPP) 0.32% 53 0.22% △

4 台湾 4.84% - - ◎ 37 ブルネイ(ASEAN) 0.31% - - ◎

△ 5 オーストラリア 4.14% 13 1.59% △ G20 38 プエルトリコ(米) 0.28% - -

◎ 6 タイ(ASEAN) 3.37% 32 0.45% ◎ ※ 39 スウェーデン(EU) 0.28% 22 0.70% ○

△ 7 サウジアラビア(GCC) 3.05% 25 0.64% △ G20 40 ノルウェー 0.24% 24 0.66%

※ 8 ドイツ(EU) 2.95% 4 5.76% ○ ※ 41 デンマーク(EU) 0.23% 29 0.53% ○

9 香港 2.91% 38 0.37% ※ 42 ハンガリー(EU) 0.21% 51 0.22% ○

◎ 10 インドネシア(ASEAN) 2.75% 18 0.93% ◎ G20 ○ 43 ペルー 0.20% 52 0.22% ○

◎ 11 マレーシア(ASEAN) 2.61% 40 0.33% ◎ ※ 44 オーストリア(EU) 0.19% 23 0.66% ○

△ 12 アラブ首長国連邦(GCC) 2.57% 33 0.45% △ ※ 45 チェコ(EU) 0.19% 41 0.33% ○

◎ 13 シンガポール(ASEAN) 2.37% 43 0.31% ◎ ※ 46 フィンランド(EU) 0.18% 34 0.41% ○

△ 14 カタール(GCC) 1.55% 60 0.12% △ 47 トルコ 0.18% 17 1.06% △ G20

※ 15 英国(EU) 1.55% 6 3.74% ○ 48 イスラエル 0.17% 39 0.33% ※

※ 16 オランダ(EU) 1.50% 16 1.36% ○ ※ 49 ポーランド(EU) 0.16% 21 0.74% ○

17 カナダ 1.50% 10 2.30% △ 50 イラク 0.15% 62 0.11%

※ 18 フランス(EU) 1.35% 5 4.56% ○ 51 エジプト 0.15% 42 0.32% N-11

◎ 19 フィリピン(ASEAN) 1.29% 48 0.28% ◎ 52 リベリア 0.13% 174 0.00%

◎ 20 ベトナム(ASEAN) 1.19% 56 0.16% ◎ 53 バハマ 0.12% 131 0.01%

21 パナマ 1.15% 89 0.04% 54 パキスタン 0.11% 45 0.29% N-11

- (メルコスール) 1.12% - 3.88% ※ 55 アルゼンチン(メルコスール) 0.11% 30 0.53% G20

◎ 22 スイス 1.11% 19 0.86% 56 スーダン 0.10% 67 0.09%

23 ロシア 1.07% 12 2.12% ※ BRICs 57 コロンビア 0.10% 35 0.40% △

※ 24 イタリア(EU) 0.99% 7 3.63% ○ 58 ナイジェリア 0.10% 44 0.29% N-11

25 イラン 0.97% 26 0.57% N-11 59 バングラデシュ 0.09% 58 0.15% N-11

26 ブラジル(メルコスール) 0.93% 8 2.70% ※ BRICs △ 60 バーレーン(GCC) 0.08% 93 0.04% △

△ 27 クウェート(GCC) 0.90% 49 0.25% △ :

○ 28 インド 0.89% 11 2.23% ◎ BRICs : (60位以下の対象国)

◎ 29 メキシコ 0.85% 14 1.50% △ G20 ◎ 72 ミャンマー(ASEAN) 0.05% - - ◎

- (SACU) 0.68% - 0.54% ※ ◎ 87 カンボジア(ASEAN) 0.02% 119 0.02% ◎

30 南アフリカ共和国(SACU) 0.67% 31 0.49% ※ G20 ※ 108 モンゴル 0.01% 147 0.01%

※ 31 ベルギー(EU) 0.63% 20 0.81% ○ ◎ 112 ラオス(ASEAN) 0.01% 138 0.01% ◎

(出所:貿易額は財務省貿易統計、GDPは世銀世界開発指数データベースを参照(数値は2009年))

【新興国グループ】

【自由貿易地域・関税同盟】

・G20: G7(日、米、英、仏、独、伊、加)+BRIICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、インドネシア、南アフリカ)+メキシコ、アルゼンチン、サウジアラビア、トルコ+韓国、豪州、EU等

我が国のEPA/FTAの現状

・BRICs: ブラジル、ロシア、インド、中国の4か国。BRIICSはこの4か国にインドネシアと南アを加えたもの。

・Next Eleven(N-11): バングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、韓国、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナムの11か国。

貿易相手国(地域) 貿易相手国(地域)

・SACU(南部アフリカ関税同盟):ボツワナ、レソト、ナミビア、南ア、スワジランドで設立。EFTAとFTA締結済み。EUと交渉中。

・GCC(湾岸協力理事会): バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の6ヵ国から成る。

・TPP(環太平洋パートナーシップ)協定:シンガポール、NZ、チリ、ブルネイ(P4)に米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアが加わり9か国で交渉中。

・メルコスール(南米南部共同市場):ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイが関税同盟を中心とする共同市場を目指し、1991年に設立合意。95年に発足。ベネズエラが加盟承認待ち。

◎発効済 ○妥結済 △交渉中 ※共同研究(民間含む)段階。