二次元粉体振動層の偏析現象の数値解析...1...

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1 二次元粉体振動層の偏析現象の数値解析 Numerical Simulation of Segregation in two dimensions vibrated bed of particles. 中央大学大学院理工学研究科物理学専攻 博士課程前期 清野 曉 指導教官 田口善弘 2004 2 27

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Page 1: 二次元粉体振動層の偏析現象の数値解析...1 二次元粉体振動層の偏析現象の数値解析 Numerical Simulation of Segregation in two dimensions vibrated bed

1

二次元粉体振動層の偏析現象の数値解析 Numerical Simulation of Segregation in two dimensions vibrated bed of particles.

中央大学大学院理工学研究科物理学専攻

博士課程前期

清野 曉

指導教官 田口善弘

2004 年 2 月 27 日

Page 2: 二次元粉体振動層の偏析現象の数値解析...1 二次元粉体振動層の偏析現象の数値解析 Numerical Simulation of Segregation in two dimensions vibrated bed

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1.粉体 3

1.1 粉体についての概要 ..................................................................................................3

1.2 対象とした粉体 .........................................................................................................4

1.3 粉体と砂丘 ................................................................................................................4

2.粉体鉛直振動層................................................................................................................6

2.1 充填性と流動性 .........................................................................................................6

2.1.1 充填性 ..............................................................................................................6

2.1.2 流動性 .................................................................................................................7

2.3 対流現象 ....................................................................................................................8

2.4 粉体振動層の数値計算モデル....................................................................................9

3.振動層の偏析 .................................................................................................................10

3.1 サイズ偏析現象 .......................................................................................................10

3.2 密度逆偏析現象 .................................................................................................... 11

3.3 偏析現象の数値計算 ................................................................................................13

4 相互作用と偏析現象.......................................................................................................15

4.1 相互作用と偏析現象 ................................................................................................15

4.1.1 数値計算法 .....................................................................................................16

4.1.2 相互作用の偏析に対する役割 ........................................................................18

5.粉体温度 ........................................................................................................................23

5.0 偏析現象での仮定....................................................................................................23

5.1 粉体温度の定義 .......................................................................................................23

5.2 数値計算による測定 ................................................................................................24

5.2.0 流れの計測 .....................................................................................................25

5.2.1 「流れの分散」の測定 ...................................................................................26

5.2.2 力によって励起された流れの計測 .................................................................27

5.2.3 温度の概算 .....................................................................................................28

5.4 考察 .........................................................................................................................37

6 まとめ ............................................................................................................................40

7 謝辞................................................................................................................................40

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1.粉体

1.1 粉体についての概要 世の中の物質は気体、液体、固体の状態で存在する。常温常圧下では無機物質のおよそ

75%、有機物質の約 60%が固体である。この固体は「流動性や圧縮性をもたない」という

性質がある。粉体は固体の存在形態の一つであり、「構成粒子間に適当な相互作用が働く

多数の固体粒子の集合体」と定義される。流動性や圧縮性のない固体ではあるが、構成粒

子間に隙間が存在するためにそれらの性質が現れるようになる。この流動性や圧縮性は粉

体の大きな特徴の一つで工業的な過程においては、混合、輸送などの処置をしやすくして

いる。

図 1 粉体とバルク([5]より抜粋)

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1.2 対象とした粉体 粉体と一口に言ってもさまざまで形があり、さまざまな性質がある。今回の研究で対象

にしたのは粒体や粉体といわれるもので、大きさは下限がおおよそ数百μmのものである。

数値計算では重力と直接触れたときの相互作用のみを考えている。この大きさよりも小さ

くなると表面の影響や、静電気力、極端なものになると分子間力(ファンデルワールス力)

などが無視できなくなる。それらの力は体積が小さくなるほど対象粒子の支配力を増すよ

うになるため、ある程度の大きさのものを想定いる。パチンコ玉を想像してもらいえると

イメージがつきやすいと思う。

1.3 粉体と砂丘 砂丘の研究は近年、計算機の発展とともに進化している。一見地球科学の分野のよう

だが、簡単なモデルで砂丘を計算機上で再現できるようになった[1]。

図 1.2 バルハン砂丘

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計算機上でのバルハン砂丘の再現(柴田[1]より抜粋)

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2.粉体鉛直振動層

粉体鉛直振動層は粉体を容器にいれ、それに垂直振動を加えたものである。

2.1 充填性と流動性 振動における充填は、タッピングなど粉体を最密に詰め込む時に利用され、逆に流動性

はホッパーなどの目詰まりに関係してくる。

2.1.1 充填性

粉体を振動層の上にのせる。ある程度振動を激しくすると粉体は浮き上がるだろう。浮

き上がった粉体は速度を持って落ちてくる。落ちてきて再び振動板に着地する瞬間、板が

上向きの速度をもっていたなら粉体層はぐっとつまることになる。この時、板と粒子の速

度差が大きければ大きいほど密になろうとするだろう。しかし逆に板がそれだけの速度を

持つにいたる過程で打ち出されようとしている粒子もあるだろう。容器の壁際の粒子は壁

の摩擦でそれほど飛び上がることはできない。大きな速度で飛び上がろうとする中央部分

の粒子との飛び上がり方との差が激しいほど、粒子はバラバラになる可能性が高くなる。

この二つの作用の動的平衡状態が充填である。したがって、充填がよい状態とはできるだ

け板との速度差を大きくし、粒子の飛び出す速度が小さいもののことになる。実験および

理論では振動強度G(振幅×角速度×角速度÷重力)≒2.5 の時の充填性が最高であると考

えられている。

図 2.1 充填率と振動強度

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2.1.2 流動性

充填とは逆に粒子をなるべくばらばらにし、流しやすい状態にすることを流動性をよく

するという。この流動性を見るために加振器に固定された容器に粉体を充填し、この粉体

層の底につるされた鋼球を振動が定常状態に達した時に、一定の重さをかけて粉体層から

引き上げるという実験がある。もし剛球に抵抗がなければ、力を加えて引き上げるのに抵

抗は加わらない。もしこの実験をして引き上げに時間がかかるのならそれは粉体粒子によ

るものであると考えられる。流動性がないのならこの抵抗は強くなるだろう。極端な例で

はもしまったく動かないのならば引き上げは不可能になる。よって引き上げ速度を比較し

て速度が大きいほど速度の流動性がよいと考えられる。結果は振動層の振動が低周波領域

の時、流動性がよいということがわかっている。

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図 2.3 上昇速度-振動強度

2.3 対流現象 粉体の対流の観測は大変難しいがその観測は古く、最初の公式な記録は 1831 年にファ

ラディによって行われている。

流体の対流は伝導では逃がしきれなくなった熱を逃すために起こると考えられている。

粉体振動層でも下から加えられる振動を、温度と考えればほぼ同じように考えることがで

きる。最下層の粒子が容器の振動で得た運動エネルギーは上部の粒子との衝突でより上部

へと伝わっていく。最下層の粒子が得るエネルギーが小さければ最上部までエネルギーは

届けられることなく途中で摩擦によって消されてしまうだろう。だが、あまりにも最下層

の粒子が得るエネルギーが大きければすべての粒子が飛び跳ねるような状態になるだろ

う。この中間に粉体の対流現象はあたる。充填性の項と同様の議論により容器との摩擦と

粒子同士の摩擦が大きいときは、中央部分がより盛り上がるように見えることになり、周

囲が沈み込むような、また後者が大きいときは周囲の方が盛り上がるようになり中央で沈

み込むような対流が起こることが想像され、実際に数値計算で再現されている。田口(1993)

は「粉粒体の対流運動の数値モデル」で粉粒体の対流について数値計算を行なっている。

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2.4 粉体振動層の数値計算モデル 田口の用いたモデルは、通常の離散要素法から回転の項を取り除き、粘弾性相互作用を

完全に等方的で線形、かつ粘性は接線方向のみとした。またクーロン摩擦の項は無視した

非常にシンプルなものである。この時運動方程式は、

∑=

−−+−

−−−−−−=

N

jji

ji

jijijii gvv

xx

xxrxxkxxr

mx

1)()2()2(1 rrr

rr

rrrrrrr

&& ηθ

である。

xは粒子の重心座標、θはヘビサイト関数、mは粒子の質量、kは弾性定数、ηは粘性

定数、rは粒子半径、gは重力加速度である。この方程式は粒子同士の衝突の間、相互作

用 の 式 と し て 扱 わ れ る 。 こ の モ デ ル で の 反 発 係 数 は )/exp( ωηπ me −= 、

221 ηω −= mkm

である。シミュレーションは粒子を円盤と考え、この式に従う粒子を

容器に詰め、振動を加えることとする。粒子半径は1、反発係数は 0.9、振動振幅=1.2 で

ある。周波数 0w を変化させることで加速度振幅Γを変化させる。

結果は図 が示すようにΓが 1を越えた辺りで急激に対流強度が上がっていく様子がわ

かるだろう。これにより加速度振幅2

0bw=Γ がΓ>g(gは重力加速度、b は振動振幅、 0w

は周波数)を満たすときに対流が生じることが解った。

図 2.4 振動層の対流の様子([5]より抜粋)

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図 2.5 対流強度と加速度振幅([5]より抜粋)

3.振動層の偏析

異なった種類の粉体を混ぜて容器に入れて振動を加えてみると、分離してしまうことが

ある。これを偏析と言う。

3.1 サイズ偏析現象 振動層におけるサイズ偏析はブラジルナッツセグリゲーションと呼ばれ、もっとも有名

な現象である。これは大きさの異なった 2 種類の粉体粒子を混合したものに鉛直振動を加

えることで大きな粒子が上昇するという現象である。

数値計算などでも再現されており、この機構は容器の振動で粒子が浮き上がるが、その

際に大きな粒子の下には小さな粒子が入り込みやすいが、小さな粒子の下には大きな粒子

が入り込みにくく、結果的に大きな粒子が上昇するいという表現で説明される。

図 3.1 サイズ偏析[5]より抜粋

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3.2 密度逆偏析現象 大山ほかは実験により鉛直粉体振動層における密度逆偏析現象を見出した。これは、振

動がある範囲の周波数帯、振幅においては、重い粒子が上に、軽い粒子が分離する現象の

ことである。その他の周波数帯、振幅では重いほうが下にいくような偏析になった。

資料には球形鉛粒子、および球状ガラス粒子のほぼ同形、同サイズが用いられ層高が同

じになるように詰まれ加振機でゆすった。その結果、混合したままの静止状態、混合・対

流状態、分離・対流現象の 3 つの状態があることを確認した。以上をまとめた図がある。

図 3.2 大山らが用いた実験装置の概要

図 3.3 順偏析 逆偏析

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図 3.4 周波数―変位振幅

図 3.5 周波数 加速度振幅

図 3.6 周波数―速度振幅(以上[5]より抜粋)

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図 3.4~3.6 の縦軸は加速度振れ幅Γと重力加速度gの比であるがこの図からも田口が

シミュレーションで示した「Γ≒gが対流現象を生じさせる目安」であることが理解でき

る。

3.3 偏析現象の数値計算 斉藤[5]は、偏析は粒子の反発係数の違いによるものと仮定し田口のモデルを拡張し数値

計算を行った。反発係数の中に大きさや質量を混ぜ込み抽象化してしまうことに成功して

いる。計算の結果、大山らの実験同様にある特定の周波数帯、振幅とそれ以外では逆偏析

が起こることを再現した。斉藤は田口の用いたモデルを拡張したものを使っている。

粒子の運動方程式は、

∑=

−−+

+−

−−−

+−−−=

N

jji

ji

ji

jiji

jijii gvv

xx

xxrxx

kkxxr

mx

1)(

2)2(

2)2(1 rrr

rr

rrrrrrr

&&ηη

θ

である。

xは粒子の重心座標、θはヘビサイト関数、mは粒子の質量、kは弾性定数、ηは粘性

定数、rは粒子半径、gは重力加速度である。この方程式は粒子同士の衝突の間、相互作

用の式として扱われる。異なる二粒子の衝突の際、k、ηはそれぞれの平均を取り2

ba kk +、

2ba ηη +としている。

このモデルでの反発係数は )/exp( ωηπ me −= 、221 η−= mk

mw である。シミュレ

ーションは粒子を円盤と考え、二次元空間で行なった容器と粒子の弾性相互作用時の容器

が持つ弾性定数kの大きさは、二種類の粒子が持つ弾性定数の大きさが小さい方の値と同

値にしてある。容器と粒子の粘性は底では作用させず、壁際では二種類の粒子の大きい方

の値を用いた。壁際の弾性と粘性の選び方は、壁との摩擦を粒子同士の摩擦よりも大きく

するために選んである。容器の振動は三角関数で、粒径r=1になっている。粒子のパラ

メータはそれぞれ e=0.95(k=2000、η=1.0)、e=0.66(k=30,η=2.0)である。

斉藤はこの数値計算で 1 層の対流として見えているものも、対流を総合的に判断した時

に、層の中間部で上下層の対流が打ち消されてしまうことで一層の対流と見えることがあ

ることを発見した。

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図 3.7 二粒子系の対流([5]より抜粋)

また振動振幅の値を変えることで実験を繰り替えした斉藤は異なる反発係数をもつ粒子が容

器に加わる振動により、対流および分離を起こすことを確認している。次の図は大山の結果で、

下図はその実験を元に斉藤が数値計算を行なった結果である。数値計算のモデルは大変単純で

あるが、特異な現象まで再現している様子がわかる。

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図 3.8 変移振幅-周波数と偏析の様子([5]より抜粋)

4 相互作用と偏析現象

ここまでの研究では特に外部の要素である変移振幅に注目をしてきていた。振動加速度

Γ=gを超えた時に対流が起こることがわかった。ここからは内部の要素となる粉体粒子

そのものを変化させることで偏析を見てみたい。

4.1 相互作用と偏析現象 これまでの実験により偏析現象には粒子同士の相互作用が重要な役割に果たしている

ことがわかっている。偏析の程度を数値化して相互作用の具合とを比較してみたい。しか

し偏析の様子を具体的な数値とすることは難しいので、ここでは高さ方向の重心の差と高

さ方向の分散の和の比較で調べてみる。偏析の度合いとして以下のように定義する

偏析の度合い=(重心の差)-(分散の和)

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4.1.1 数値計算法

数値計算では、田口が用い、斉藤が拡張したものを使用し、4次のルンゲクッタ法を用

いた。ルンゲクッタ法は差分近似を用いたオイラー法よりも精度は 2 桁程度よくなるが計

算手続きは同じ計算を 4 回するだけで済み、コードも別ルーチンで済ますことで簡略化で

きるなど、オイラー法の区切精度を上げるよりも効率的な計算ができる利点がある。今回

は1次と2次の微分方程式を同時に解く事になるが、これは1次と2次の項を別文字と考

えるとで多変数の連立微分方程式へルンゲクッタ法のあてはめですませることができる。

多変数でルンゲクッタ法を用いる際は公式に現れる変数をベクトル化して考えると同

じ公式が使える。

図 4.1 ルンゲクッタ法

粒子の運動方程式は、

∑=

−−+

+−

−−−

+−−−=

N

jji

ji

ji

jiji

jijii gvv

xx

xxrxx

kkxxr

mx

1)(

2)2(

2)2(1 rrr

rr

rrrrrrr

&&ηη

θ

である。

xは粒子の重心座標、θはヘビサイト関数、mは粒子の質量、kは弾性定数、ηは粘性

定数、rは粒子半径、gは重力加速度である。ヘビサイト関数の含まれる項は粒子同士の

衝突の間、相互作用の式として扱われる。異なる二粒子の衝突の際、k、ηはそれぞれの

平均を取り2

ba kk +、

2ba ηη +としている。

このモデルでの反発係数は )/exp( ωηπ me −= 、221 ηω −= mk

mである。シミュレ

ーションは粒子を円盤と考え、二次元空間で行なった容器と粒子の弾性相互作用時の容器

が持つ弾性定数kの大きさは、二種類の粒子が持つ弾性定数の大きさが小さい方の値と同

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値にしてある。容器と粒子の粘性は底では作用させず、壁際では二種類の粒子の大きい方

の値を用いた。壁際の弾性と粘性の選び方は、壁との摩擦を粒子同士の摩擦よりも大きく

するために選んである。容器の振動は三角関数で、粒径r=1になっている。これらの条

件は斉藤の条件と同じである。また重力加速度 g=98 としている。これからはηとkを次々

に変えていくことによってさまざまな条件の反発係数をだしている。

プログラミングの流儀として大きく分けて二つ、TimeStepDriven 型と EventDriven 型

の流儀がある。前者は積分の考え方に基づき差分計算を順次していく方式であり、後者は

Event(今回では粒子の衝突)がおきる順番のリストを作り、そのリストに基づき時間を

進め、Event 後にはリストの更新をするという方式である。粒子数が 1000 を超えるくら

いになると後者の方法が早いといわれているが、本質的にはどちらも粒子の衝突回数に比

例して計算時間がかかるようになる。今回は粒子数や、同時衝突などの性質があるために

前者の方式を採用している。

問題となる系は、粒子同士の衝突判定が非常に多くなってしまい、ここが計算の速度の

ボトルネックとなっている。すべての粒子間の衝突判定をすると粒子数nにたいして2n の

オーダーで計算時間が増えてしまう。これを解決するために、容器内をあらかじめサイト

に分けておき、判定粒子がいるサイトの周りのサイトの粒子とのみ、衝突判定をすること

にした(図 4.2)。したがって容器内をサイトに区切る際にはサイトの大きさは粒径よりも

むやみに大きくすることは適当ではない。今回は直径と同じサイズで容器内を区切った。

衝突すると判定された粒子はリストとして記録しておき、すべてのサイトで衝突判定終

了後に、衝突による影響を求める。

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図 4.2 衝突判定

4.1.2 相互作用の偏析に対する役割

異なった反発係数を持つ粒子を二種類(50 粒子ずつ)容器に入れて、斉藤の結果や、こ

れまでの数値計算から推測して、安定状態に達したであろうと思える時間(50 億ステップ

程度)実行する。その後に振動を止めてすべての粒子が静止してから粒子 A と粒子 B の重

心の高さと、縦方向の重心に対する分散を調べる。グラフ図 4.4~4.7 は縦横それぞれの軸

が 2 種類の粒子 A,B の反発係数であり、グラフ内の数値は上のグラフが重心差、下のグラ

フが(分散の和)である。ここで(重心の差)>(分散の和)が成り立っている場合は偏析が

起こっている場合と考えることが出来るだろう。

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図 4.3 粒子が固まって存在すれば分散は小さくなり、

それは偏析の度合いが強いことをあらわしている。

この実験を周波数を 0w =5.3~6.5 へ変えながら繰り返してみた。以下に周波数 0w =5.3、

6.2 の時の結果を掲げる。図 4.9 はそれぞれの場合の偏析の度合いを色別に分けたもので

ある。赤いほど偏析が起こり、青いほど混合状態と言える。振動加速度を上昇させても、

偏析の起こり具合そのものは激しくなるが、色の分布そのものの変化は少ないようである。

つまり、偏析は内部の粒子の相互作用のみで決定され、外部からの影響にはよらない

ことが確認された(図 4.10)。

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図 4.4 0w =5.3 の時の重心の差 両軸は異なる粒子の反発係数

図 4.5 0w =5.3 の時の分散の和 両軸は異なる粒子の反発係数

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図 4.6 0w =6.2 の時の重心の差 両軸は異なる粒子の反発係数

図 4.7 0w =6.2 の時の分散の和 両軸は異なる粒子の反発係数

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図 4.9 偏析の度合い

図 4.10 相互作用と偏析現象

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5.粉体温度

ここまでで偏析現象そのものは内部要因に大きく依存することがわかった。粉体の物理

ではこれまで物理的な概念の当てはめが困難であると考えられていた。その原因は平衡か

らのずれが大きく、これまでは平衡系を扱うことの多かった物理では捕らえ切れていなか

ったのが主因だと思われる。ここでは、平衡からのずれの大きさ、揺らぎの量を基準とし

た粉体温度という概念を用いて、偏析現象を見てみることにする。

5.0 偏析現象での仮定 2 粒子系の粉体の測定としては Makse[7]などの粉体温度の測定数値実験がある。これは

大小の粉体粒子を容器にいれシェアを加えると、この粉体温度は一定になったと言う結果

が出ている。そこでわれわれも粉体振動層の粉体温度は容器内で一定であるという仮定を

して計測を行なった。

5.1 粉体温度の定義 粉体温度は次のような式で定義される。 )()0( txx − がそのサイトの平均的な流れであ

る。

[ ]

)3.5(1)2.5()0()(

1.52)0()( 2

             

         

)       (

TkD

ftxtx

Dtxtx

B

=

=−

=−

µµ

以上をまとめて

[ ]f

xtxTxtx

)0()(2)0()( 2 −

=−

つまり

[ ] )4.5()0()(

)0()(

2

2

          xtx

xtxfT−

−=

となる。 (5.1)式は拡散に関する式で D は拡散係数。(5.2)式は平衡状態に力を加えたとき

の式でfが加える力、μはフガシティである。(5.3)式はアインシュタインの関係式であり

(5.1)、(5.2)式と温度との関係を表している。これらをまとめて(5.4)を導き、この温度を粉

体の温度とする。この温度定義は統計力学的な温度で、一般に使われる熱運動の温度と指

しているものは同じである。現実の物質には様々な、具体的な「形」が存在するが、反発

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係数も含めそれらの性質は D やμの中に丸め込まれ、この温度に反映されていると期待し

ている。

5.2 数値計算による測定 具体的な測定方法について説明する。粉体温度の測定を実際に行なったのは二種粒子

系(e1=0.67,e2=0.88 Γ/g=1.62)と単一粒子系(反発係数 e=0.78,Γ/g=1.51,)の二通りであ

る。 対流図で四角で囲まれた部分の温度を測っている。

図 5.1 実験の概要 1 囲まれた部分の温度を測った

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図 5.2 実験の概要 2

5.2.0 流れの計測

まず流れの測定について説明する。流れといっても対象が粉体であるために流体のよう

な速度ベクトルでの流れの表現はできない。4.1.1 数値計算の項では数値計算を速くする

ために容器内をサイトに区切るような説明をしていたが、この方法に便乗することで容器

内の局所的な流れの測定をすることもできる。容器内の各サイト間の出入りを計測し流れ

を計測している。粒子とサイトに番号をつけることで粒子の軌跡は追跡可能だが、同時に

そのサイトに来た粒子が次にどの方向へ行ったのかも、粒子の個数として統計が取れる。

この統計がそのサイトの流れになる。例えばあるサイトで、実験中の計測では、右方向の

サイトに 1800、左方向に 1600、上方向に 1000、下方向に 2000 個の粒子が移動したとす

る。この時このサイトの流れの方向は(200,-1000)として定義するようにする。つまりここ

まで用いてきた流れは「その場所に来た粒子の平均的な次の瞬間の移動方向」ということ

ができる。

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図 5.3 流れの方向の決定

粉体温度で使う(5.1)(5.2)式の左辺、または(5,4)式の右辺の分母分子に現れる量は流れに

対する揺らぎである。(5.1)式は流れの分散をはかり、(5.2)式では力を加えることで、基の

流れからのズレの増加量を測定しなければならない。(5.2)式((5.4)式の分母)では右辺に

加えた力に関する値がでてくるので力を加えた状態と、力を加えていない状態での測定が

必要である。

5.2.1 流れの2乗の測定

式(5.1)を粉体振動層に当てはめることを考える。(5.1)式はブラウン運動などで見られる

式で、場所依存性がない状態を想定している。粉体振動層は場所によって重力に対する流

れの向きが異なる、壁際が存在する、左右対称であるなどの場所依存性があるが、安定状

態になり、流れに乗った座標系ではそのような依存性が存在しないという仮定を行なって

いる。

この計測自体は、偏析の解析を行なってきた前章までの作業と同じことをする。流れの

方向を決める要素は、区切り時間を短く取れば上下左右のサイトの 4 方向への移動だけに

なるが。これは時間を十分短く区切ることで斜め方向の移動を考えないようにしているた

めである。

流れの2乗はサイトの左右、上下の二方向のみで考えることにする。

平均の流れとしてきた場合は右と左で打ち消しあうように足してきたが、2 乗になって

いるのでここではマイナスを考えずに足すだけである。

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図 5.4 流れの 2 乗をもとめる

これによって得られたx、y成分(左右、上下の移動頻度、図 5.4 の赤い方向)から

jι ><+>< 22 yx によって2乗の流れの方向を定義する(図 5.4 の緑方向)。

実際には必要になってくるのは、この流れの 2 乗の、平均的な流れにたいして垂直な方

向成分(図 5.4 の青緑方向)であるので射影をとる(図 5.4 の黄色)。これは次の項で図の

青緑の方向へ力を加え、この方向への流れのズレと成分をそろえるためである。

5.2.2 力によって励起された流れの計測

(5.2)式は、本来平均すると 0 になるものが力を加えるとその大きさに比例して、ずれが

大きくなることを示している。式にあるとおり本来は移動距離を平均したものだが、移動

距離と速度は比例し、速度とこの実験で測定している流れ、つまりサイト間の移動の頻度

も比例しているはずなので、ここではそれをもって代用する。振動層においては、1 度、

力を加えない状態で実験を行なう。そして各サイトの流れを計測してこれを「平均」の流

れと呼ぶことにする(図 5.5 の赤い方向)。この「平均」にたいして、同じ初期条件の基で、

温度を測定しようとしているサイトに入ってきた粒子が、そのサイトにいる限りずっと一

定の力を加えつづける(図 5.5 の青の方向)、という条件を加えて再度、時刻 0 から数値

計算を行なう。これによって平均からの「揺らぎ」を発生させ、その量を測定する。運動

方程式としては

∑=

+−−+

+−

−−−

+−−−=

N

jXji

ji

ji

jiji

jijii Fgvv

xx

xxrxx

kkxxr

mx

1)(

2)2(

2)2(1 σ

ηηθ

rrrrrr

rrrrrrr

&&

加える力 Fσは、流れに対して垂直方向に加えている。

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図 5.5 力を加えることで励起される流れの測定

こうすると流れはもとの方向から力の方向へずれる(図 5.5 の薄い青)。この「流れのズ

レ」の力方向性分(図 5.5 の黄色の部分)を計ることで(5.2)式としている。力の大きさは

できる限り小さいことが望ましいがあまりにも小さいと、計測が不能になってしまう。試

行錯誤の後に自重よりも 1 桁程度小さな値とすることにした( mgF / =0.1,0.2,0.4,0.5:

mg は自重)。なお、この作業は一度に多数の点に力を加えてしまうと系が崩れてしまうの

で 2,3 点ごとに何回にも分けて測定している。

5.2.3 温度の概算

加える力が小さすぎるともとの系との違いを測定することが大変困難になってしまっ

た。そこで、可能な限り小さな力を加えるが、ある程度の大きさの力を加え、その値ごと

に温度を計算する。加えられる力は計測可能な値から、容器内の対流がもとの変わらない

程度のできるできる限り大きな力の間を選ぶが、非常に小さな範囲になってしまった。求

められた温度と力の関係から最小二乗法を用いて、力が0での温度を外挿することにした。

以下の図は横軸に重力に対する力、縦軸に実測値をとり最小二乗法を用いて、力が無限

小での温度を決定しているものである。グラフ中に出てくる座標はサイトの座標である。

尚誤差はほぼ 5%をきっているので省略してある。

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図 5.6 実験 1 2 層の時、下から 2 層目の温度

図 5.7 実験 1 2 層の時、下から 3 層目の温度

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図 5.8 実験 1 2 層の時、下から 4 層目の温度

図 5.9 実験 1 2 層の時、下から 5 層目の温度

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図 5.10 実験 1 2 層の時、下から 6 層目の温度

図 5.11 実験 1 2 層の時、下から 7 層目の温度

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図 5.12 実験 1 2 層の時、下から 8 層目の温度

図 5.13 実験 1 2 層の時、下から 9 層目の温度

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図 5.14 実験 2 1 層時、下から 3 層目の温度計測

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図 5.15 実験 2 1 層時、下から 4 層目の温度計測

図 5.16 実験 2 1 層時、下から 6 層目の温度計測

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図 5.17 実験 2 1 層時、下から 7 層目の温度計測

図 5.18 実験 2 1 層時、下から 8 層目の温度計測

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図 5.19 実験 2 1 層時、下から 9 層目の温度計測

図 5.20 実験 2 1 層時、下から 10 層目の温度計測

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図 5.21 二粒子系の対流の様子と温度分布

図 5.22 一粒子系の対流の様子と温度分布

5.4 考察 得られた結果は、流れの向きが複雑な場所ほど温度が低くなっているように見られる。

もともと(5.1)(5.2)式は場所に拠らず、どこでも同じ条件であることを想定している。し

かし、今回対象にした系は非常に狭く場所依存性が高いものになっている。そのために場

所による影響、実際には周辺からの影響を排除できるように補正を加えてやる必要がある

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と思われる。補正式は

−+

+== ∑

=

8

10 )sin(1

211

jjkk ZZTT θθ 

とする。(kは座標の通し番号とすれば、 kZ は座標に固有の値のはずである。±は流れの

向きが邪魔する方向ならプラス、そうでないときにはマイナス)

基準温度 0T はできる限り壁などの周囲からの影響が少ないサイトを選んでいる。実験 1

ではサイトの座標(6,6)より 0T =4.32、実験 2 では(6,7)より 0T =4.46。そしてその温度を基

準にし、測定するサイトの周囲のサイトに番号を 1~8 とつける。流れの方向を右水平方

向を 0 としそこからのズレをそのサイトの角度と考え補正式に代入する。この補正式は対

象とするサイトの周囲のサイトの流れが対象とするサイトの流れと平行であるときには

影響は0で、衝突する方向ならば影響を取り除き、離れる方向ならばその分、加えるよう

に距離に応じて調整したものである。

結果のグラフを図 5.23、図 5.24 に示す。図の横軸は数値計算より出された温度 T、縦

軸は TZk である。実験 1 の平均値は 3.96 分散は 0.30。実験 2 では 平均値 3.99 分散

は 0.026 となりほぼ温度一様といえる。

図 5.23 結果 平均温度

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図 5.24 実験 1 二粒子系での実測値と温度一定

の仮定から補正式を用いて得られた温度

図 5.25 実験 2 一粒子系での実測値と

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補正式を用いて予想される温度

6 まとめ

前章の結果により「粉体振動層の粉体温度は一定」という仮定は正しいと結論付けるこ

とが可能だと思われる。

7 謝辞

この研究を行なうにあたり、中央大学理工学部物理学科田口善弘先生には大変お世話に

なりました。どんな時にも大変親身に相談に乗っていただき、安心して研究に打ち込むこ

とができました。東京大学工学部物理工学科伊藤伸泰先生にはさまざまな助言をいただき

ました。

中央大学理工学部物理学科竹山協三先生には学部のころより、公私にわたりお世話になり

ました。進学できたのも竹山先生の理解があってのことと思っています。ありがとうござ

いました。

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参考文献

[1] 柴田純 バルハン砂丘の形態と分布の数値計算モデル (2002 年度 修士論文 中央

大学大学院理工学研究科物理学専攻)

[2] 田口善弘 粉粒体の対流運動の数値モデル

粉体工学会誌 vol.30 No3 pp173-177,(1993)

[3] 田口善弘 砂時計の七不思議 中公新書 1268 中央公論社(1995)

[4] 大山恭史ほか、鉛直振動粉体層における密度逆偏析現象

粉体工学会誌 vol.35 No3 pp218-221,(1998)

[5] 斉藤信次 二種混合振動粉体層の数値計算 (2001 年度 修士論文 中央大学大学院

理工学研究科物理学専攻)

[6]Tetsuo Akiyama, Kooici Yamamoto and Shoko Okutsu, A solid-solid extraction,

Powder Technology vol.110 Issue 3 ,12 June (2000)

[7]Hernan A.Makse & Jorge Kurchan NATURE VOL.415 7 February 2002 p.614-617

[8] 早川尚男 物理と数理 4 散逸粒子系の力学 「岩波講座 物理の世界」 岩波書店

(2003)

[9] 神保元二 粉体の科学 講談社 (1985)

[10] 粉体工学会(編) 粉体シミュレーション入門、産業図書株式会社(1998)