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1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 2010 年度版) 2011 6 16 負団法人東洋文庫 【事業全体の目的】 1. 拠点形成の目的 21 世紀に入ると、ニューヨークとワシントンでの同時多発テロ(2001 9 月)をかわきりに、米英軍 の空爆によるターリバーン政権の崩壊(同年 12 月)や同じ米英軍の侵攻によるフセイン政権の崩壊(2003 4 月)など、世界を揺るがす重大事件が相次いで発生した。これらの事件や戦争の背後には、「イスラ ームのグローバル化と先鋭化」という事実が存在する。21 世紀における世界の動向、石油資源の問題、 地域紛争の性格などを正しく理解するためには、この新しい現実をふまえたうえで、イスラームと各地 域社会との関係を多様なディシプリン研究を活用して具体的に明らかにすることが不可欠である。新研 究計画の実行によって、創成的基礎研究「イスラーム地域研究」プロジェクト(1997-2002 年)を継承し、 これをさらに発展させることによって、日本におけるイスラーム研究・教育の拠点形成をめざす。具体 的には、以下の 3 点を为要な課題として設定する。 (1) 現地の研究者を含む国際的な共同研究を実施し、「他者」と「当事者」双方の目を通して「イスラー ムと地域」の係わりを分析することにより、現代イスラーム世界について実証的な知の体系を築く と同時に、その理解の深化をはかる。また、この研究を積み重ねることによって、イスラーム地域 研究に固有な研究手法を開発する。 (2) 各研究拠点における研究の基盤となる文献資料を収集、整備し、創成的基礎研究「イスラーム地域 研究」で開発されたアラビア文字による情報検索システムを整備して、蓄積された史資料のデータ ベース化、情報の公開、史資料利用の全国化・国際化をさらに促進する。同時に、書誌学的研究を 進めることにより、イスラーム史資料学の開拓をめざす。 (3) 各研究拠点の活動が、イスラーム地域研究に関する大学院教育の充実につながるよう配慮するとと もに、国内・国外の若手研究者が本イスラーム地域研究へ参加することを積極的に奨励し、国際的 な活動を通じて次世代のイスラーム研究を担う若手研究者を養成する。

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Page 1: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

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「イスラーム地域研究」研究実績報告書

(2010 年度版)

2011 年 6 月 16 日

早 稲 田 大 学

東 京 大 学

上 智 大 学

京 都 大 学

負団法人東洋文庫

【事業全体の目的】

1. 拠点形成の目的

21 世紀に入ると、ニューヨークとワシントンでの同時多発テロ(2001 年 9 月)をかわきりに、米英軍

の空爆によるターリバーン政権の崩壊(同年 12 月)や同じ米英軍の侵攻によるフセイン政権の崩壊(2003

年 4 月)など、世界を揺るがす重大事件が相次いで発生した。これらの事件や戦争の背後には、「イスラ

ームのグローバル化と先鋭化」という事実が存在する。21 世紀における世界の動向、石油資源の問題、

地域紛争の性格などを正しく理解するためには、この新しい現実をふまえたうえで、イスラームと各地

域社会との関係を多様なディシプリン研究を活用して具体的に明らかにすることが不可欠である。新研

究計画の実行によって、創成的基礎研究「イスラーム地域研究」プロジェクト(1997-2002 年)を継承し、

これをさらに発展させることによって、日本におけるイスラーム研究・教育の拠点形成をめざす。具体

的には、以下の 3 点を为要な課題として設定する。

(1) 現地の研究者を含む国際的な共同研究を実施し、「他者」と「当事者」双方の目を通して「イスラー

ムと地域」の係わりを分析することにより、現代イスラーム世界について実証的な知の体系を築く

と同時に、その理解の深化をはかる。また、この研究を積み重ねることによって、イスラーム地域

研究に固有な研究手法を開発する。

(2) 各研究拠点における研究の基盤となる文献資料を収集、整備し、創成的基礎研究「イスラーム地域

研究」で開発されたアラビア文字による情報検索システムを整備して、蓄積された史資料のデータ

ベース化、情報の公開、史資料利用の全国化・国際化をさらに促進する。同時に、書誌学的研究を

進めることにより、イスラーム史資料学の開拓をめざす。

(3) 各研究拠点の活動が、イスラーム地域研究に関する大学院教育の充実につながるよう配慮するとと

もに、国内・国外の若手研究者が本イスラーム地域研究へ参加することを積極的に奨励し、国際的

な活動を通じて次世代のイスラーム研究を担う若手研究者を養成する。

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2. 研究対象

現代のイスラームは、地域を越える共通の問題と同時に、地域の歴史や文化と結びつく地域の個性に

関わる問題を抱えている。イスラーム地域研究では、この双方の問題に取り組み、イスラームの知と文

明、イスラームの宗教・思想と政治運動、イスラームの社会と文化、イスラーム関係史資料の収集と書

誌的研究、イスラーム世界の国際組織などの側面から総合的に研究する。対象となる地域は、中東、北

アフリカ、中央アジア、单・東单アジアばかりでなく、必要に忚じてアフリカ、ヨーロッパ、中国、さ

らにはアメリカや日本にも及ぶことになろう。

3. 研究方法

対象となる地域の規模は、中東や中央アジアなど従来の地域概念に縛られることなく、課題に忚じて

中小の地域を設定し、地域を越える共通の問題と同時に、イスラームと地域の個性との関わり方を追究

する。イスラーム地域研究は、宗教学、政治学、経済学、歴史学、社会学、文化人類学などのディシプ

リン研究を基礎とし、それらの研究成果を総合することをめざす。この総合を実現するために、(1) い

くつかの地域をとりあげ、それらを比較する地域間比較の手法と、(2) 現代の問題ではあっても、歴史

をさかのぼって解明する歴史的アプローチの手法とを採用する。このような研究手法を活用することに

よって、国際的な共同研究を実施し、現代イスラーム世界に関する実証的な知の体系を築くことがねら

いである。

4. 研究組織

イスラーム地域研究は、早稲田大学イスラーム地域研究所を中心拠点とし、東京大学大学院人文社会

系研究科次世代人文学開発センター、上智大学アジア文化研究所、京都大学大学院アジア・アフリカ地

域研究研究科、負団法人東洋文庫研究部に置かれる 5 拠点を結ぶネットワーク型の研究組織をつくり、

人間文化研究機構との共同研究として実施される。各拠点の研究領域・テーマは以下の通りである。

なお、2010 年度は国内外から研究分担者 64 名、研究協力者 269 名(のべ人数)の参加がみられた。

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早稲田大学拠点(中心拠点):

早稲田大学イスラーム地域研究機構・イスラーム地域研究所・現代イスラーム地域研究

センター

[総括責任者]:佐藤次高(現代イスラーム地域研究センター長、早稲田大学イスラーム地

域研究機構長・同文学学術院教授)

[中心テーマ]:「イスラームの知と文明」

(2006 年 5 月 1 日 イスラーム地域研究に関する研究協力協定締結)

東京大学拠点 :東京大学大学院人文社会系研究科次世代人文学開発センター・イスラーム地域研究部門

[総括責任者]:小松久男(イスラーム地域研究部門の長、東京大学大学院人文社会系研究

科教授)

[中心テーマ]:「イスラームの思想と政治:比較と連関」

(2006 年 6 月 14 日 イスラーム地域研究に関する研究協力協定締結)

上智大学拠点 :上智大学研究機構・イスラーム研究センター

[総括責任者]:私市正年(イスラーム地域研究拠点の長、上智大学外国語学部教授)

[中心テーマ]:「イスラームの社会と文化」

(2006 年 7 月 1 日 イスラーム地域研究に関する研究協力協定締結)

京都大学拠点 :京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・附属イスラーム地域研究センター

[総括責任者]:小杉 泰(附属イスラーム地域研究センター長、京都大学大学院アジア・

アフリカ地域研究研究科教授)

[中心テーマ]:「イスラーム世界の国際組織」

(2006 年 12 月 1 日 イスラーム地域研究に関する研究協力協定締結)

東洋文庫拠点 :負団法人東洋文庫研究部・イスラーム地域研究資料室

[総括責任者]:三浦 徹(イスラーム地域研究資料室長、お茶の水女子大学文教育学部

教授)

[中心テーマ]:「イスラーム地域研究史資料の収集・利用の促進とイスラーム史資料学

の開拓」

(2006 年 7 月 18 日 イスラーム地域研究に関する協力協定締結)

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早稲田大学・NIHU

現代イスラーム地域研究センター

上智大学・NIHU

イスラーム研究センター

(負)東洋文庫・NIHU

イスラーム地域研究資料室

東京大学・NIHU

イスラーム地域研究部門

人間文化研究機構(NIHU)

地域研究推進委員会・地域研究推進センター

京都大学・NIHU

附属イスラーム地域研究センター

中心拠点

拠点ネットワーク

【組織図】

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【2010 年度事業の目的と活動内容】

1. 事業の推進

イスラーム地域研究は、2010 年度で第 1 期最終年度の 5 年目を迎えた。早稲田大学を中心拠点にして、

東京大学拠点、上智大学拠点、京都大学拠点、東洋文庫拠点を結ぶネットワーク組織はしだいに強固なも

のとなりつつあるが、研究推進と若手育成のための拠点づくりをさらに押し進めていかなければならない。

今年度の研究計画を立案するに当たっては、この基本目標を見据えて具体的な計画を策定し、実施するこ

とが必要であろう。本事業は、国際的な共同研究の一環として、2008 年 11 月にクアラルンプルで大規模な

国際会議を開催し、2009 年 12 月にはカイロで第 2 回目の国際会議を開催した。本年度は本研究プログラム

第1期の総括として、第3回目の国際会議New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity, Contestations and the

Future を 2010 年 12 月 17-19 日に国立京都国際会館にて開催した。さらに、イスラーム地域研究全体の研究

成果を公表するために、すでに昨年度から刊行を開始した「イスラームを知る」シリーズの続刊の準備を

行ったほか、原典注解シリーズから『預言者ムハンマド伝』(全 4 巻)の刊行を開始し、英文論文集シリー

ズから The Moral Economy of the Madrasa: Islam and Education Today の刊行を行った。

(湯川武)

2. 拠点の整備、拠点ネットワークの活動

ネットワークで結ばれた 5 つの拠点、早稲田大学中心拠点:早稲田大学イスラーム地域研究機構(イ

スラーム地域研究所)、東京大学拠点:東京大学大学院人文社会系研究科付属次世代人文学開発センタ

ー・イスラーム地域研究部門、上智大学拠点:上智大学イスラーム研究センター(2010 年 4 月 1 日改組)、

京都大学拠点:京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科・イスラーム地域研究センター、東洋文庫拠

点:東洋文庫研究部・イスラーム地域研究資料室は、当初の事業目的に沿って第 1 期の活動のまとめに

入った。事業の中核となる研究事業については、早稲田大学が「イスラームの知と文明」、東京大学が「イ

スラームの思想と政治」、上智大学が「イスラームの社会と文化」、京都大学が「イスラーム世界の国際

組織」、東洋文庫が「イスラーム地域研究史資料の収集・利用の促進とイスラーム史資料学の開拓」を为

要課題に定め、研究会・読書会・国際ワークショップ・海外調査などを通じて、拠点間の連携を緊密に

とりながら、特色ある拠点形成をめざす。

(湯川武)

3. 地域研究推進センター研究員の派遣

イスラーム地域研究推進事業の実施に伴い、人間文化研究機構地域研究推進センターでは、本事業の

推進に必要な研究者を「地域研究推進センター研究員」として採用し、各拠点へ派遣している。研究員

は、派遣先の拠点において、拠点の形成と運営のための実務及び共同研究の推進を担うものである。本

事業における研究員の総数は 5 拠点へ 6 名である。派遣先の拠点においては、受け入れる研究員に相当

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職を兼務させている。

事業 5 年次(第 1 期最終年次)である今年度は、全ての研究員がそれぞれの拠点運営の責任者として

の位置を確立し、活発な研究活動を支持し続けるとともに、研究者個人としての論文及び著書等を数多

く発表した(詳細は、各拠点の研究成果の箇所を参照)。

また、12 月 17 日から 19 日にかけて国立京都国際会館で開催された国際会議では、6 名中 5 名の研究

員が参加し、会議の中心的な運営を担うとともに、各セッションを担当する等、重要な役割を果たした。

さらに、1 名の研究員が常勤研究職を得ることができ、若手研究者の育成を目的とする地域研究推進事

業にとって大変大きな成果といえる。

拠 点 名 称 氏 名 職 名 派遣期間

早稲田大学イスラーム地域研

究機構イスラーム地域研究所

現代イスラーム地域研究セン

ター

佐藤 健太郎

地域研究推進センター研究員

早稲田大学イスラーム地域研究機構研究

院准教授

18.6.16~

23.3.31

早稲田大学イスラーム地域研

究機構イスラーム地域研究所

現代イスラーム地域研究セン

ター

湯川 武

地域研究推進センター上級研究員

早稲田大学イスラーム地域研究機構研究

院教授

19.4.1~

23.3.31

東京大学大学院人文社会系研

究科次世代人文学開発センタ

ー・イスラーム地域研究部門

濱本 真実

地域研究推進センター研究員

東京大学大学院人文社会系研究科附属次

世代人文学開発センター・イスラーム地

域研究部門研究員

19.4.1~

23.3.31

上智大学研究機構

イスラーム研究センター 高橋 圭

地域研究推進センターPD 研究員

上智大学アジア文化研究所客員所員

18.10.1~

23.3.31

京都大学大学院アジア・アフリ

カ地域研究研究科附属イスラ

ーム地域研究センター

仁子 寿晴

地域研究推進センター研究員

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研

究研究科客員准教授

19.5.1~

23.3.31

負団法人東洋文庫研究部

イスラーム地域研究資料室 柳谷 あゆみ

地域研究推進センターPD 研究員

負団法人東洋文庫研究員

18.10.1~

23.3.31

(中尾正義)

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早稲田大学イスラーム地域研究機構・イスラーム地域研究所

・現代イスラーム地域研究センター

代表:佐藤次高(現代イスラーム地域研究センター長、

早稲田大学イスラーム地域研究機構長・同学文学学術院教授)

テーマ 『イスラームの知と文明』

イスラームの長い歴史と文明を視野に入れたうえで、刻々と変容するイスラームに固有な知と権威の

ありかた、さらにはアジアのムスリム・ネットワークを多角的に考察することにより、現代イスラーム

の理解をいっそう深めることをめざす。

【研究事業名】

① 総括班

② 研究グループ 1「イスラームの知と権威:動態的研究」

代表:湯川武(人間文化研究機構地域研究推進センター上級研究員、早稲田大学イスラーム

地域研究機構研究院教授)

③ 研究グループ 2「アジア・ムスリムのネットワーク」

代表:桜井啓子(早稲田大学イスラーム地域研究所現代イスラーム地域研究センター研究員、

早稲田大学国際学術院教授)

【拠点形成の目的と意義】

当研究センターは、前記の 5 拠点を結んで行われる共同研究の調整・とりまとめを行うことにより、

中心拠点としての役割を果たす。各拠点が特色ある研究の拠点を形成し、これらをネットワークで結ぶ

ことにより、全体としてイスラーム地域研究の重要拠点を形成することがねらいである。

当研究センターに和文・英文のホームページを立ち上げ、5 拠点全体の研究計画、研究活動、研究成果、

教育カリキュラム、国際交流の企画などについて新情報を提供する。また、現地の大学・研究所と提携

することにより、イスラームに関する共同研究の実施、研究・教育に関する情報の収集と発信などを通

じて、国際的な共同研究、学術交流における中心拠点を形成する。

早稲田大学における研究は、研究センターのスタッフを中心に「イスラームの知と文明」に関わる 2

つの研究グループを編成する。具体的には(1)「イスラームの知と権威:動態的研究」と(2)「アジア・

ムスリムのネットワーク」である。

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【組織】

(研究拠点構成員)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

佐藤 次高

現代イスラーム地域研究センター長、早稲田大学

イスラーム地域研究機構長、同学文学学術院教

授、

研究拠点代表

(総括)

湯川 武

人間文化研究機構地域研究推進センター上級研

究員、早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院

教授

研究グループ 1 代表

(ムスリム知識人問題)

桜井 啓子 現代イスラーム地域研究センター研究員、

早稲田大学国際学術院教授

研究グループ 2 代表

(イラン・日本のムスリム)

佐藤健太郎

人間文化研究機構地域研究推進センター研究員、

早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院准教

研究グループ 1 研究分担者

(マグリブ・アンダルス地域)

深見奈緒子 現代イスラーム地域研究センター研究員、早稲田

大学イスラーム地域研究機構研究院准教授

鈴木 恵美 現代イスラーム地域研究センター研究員、早稲田

大学イスラーム地域研究機構研究院准教授

日下部達哉 現代イスラーム地域研究センター研究員、

広島大学教育開発国際協力研究センター准教授

貫井 万里 現代イスラーム地域研究センター研究員、

早稲田大学イスラーム地域研究機構研究助手

野田 仁 現代イスラーム地域研究センター研究員、

早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院講師

錦田 愛子 現代イスラーム地域研究センター研究員、東京外

国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所助教

店田 廣文 現代イスラーム地域研究センター研究員、

早稲田大学人間科学学術院教授

研究グループ 2 研究分担者

(イスラーム世界の都市)

中町 信孝 現代イスラーム地域研究センター研究員、

甲单大学文学部准教授

研究グループ 1 研究分担者

(マムルーク朝史)

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保坂 修司 現代イスラーム地域研究センター研究員、

日本エネルギー経済研究所研究理事

砂井 紫里 現代イスラーム地域研究センター研究員、

早稲田大学イスラーム地域研究機構研究助手

研究グループ 2 研究分担者

(中国の回族社会)

Abdul-Karim

Rafeq

現代イスラーム地域研究センター研究員、ウィリ

アム&メアリ大学教授、早稲田大学客員研究員

Ahmad H. Sa'di 現代イスラーム地域研究センター研究員、

ベングリオン大学講師、早稲田大学客員研究員

Mohamed Afifi 現代イスラーム地域研究センター研究員、

カイロ大学教授、早稲田大学客員研究員

【2010 年度事業の目的と活動内容】

1.今年度事業の目的

イスラーム地域研究は、2010 年度で第 1 期の最終年である 5 年目を迎える。早稲田大学を中心拠点と

して、東京大学拠点、上智大学拠点、京都大学拠点、東洋文庫拠点を結ぶネットワーク組織は年々強固

なものとなりつつあるが、研究計画の推進と若手研究者育成のための拠点づくりをさらに強力に推進し

ていかなければならない。「私たち他者」と「現地の研究者」とを含む国際的な共同研究を実施し、双方

の目を通してイスラームと地域との関わりを分析することにより、現代イスラーム世界について「実証

的な知の体系を築くこと」、これが本プログラムの基本目標である。今年度の事業計画を立案するに当た

っては、この基本目標を見据えたうえで、共同研究の今後の目標を考慮に入れながら、綜合的なとりま

とめの計画を策定することが必要であろう。今年度の全体的な目標は以下の通りである。

1.基本目標の実現に向けて、研究事業の推進と若手研究者育成のための「特色ある拠点づくり」をさ

らに推進する。

2.5 拠点を結ぶネットワークを充実させるために、年 2 回の合同集会と年 6 回のイスラーム地域研究

推進連絡会議、さらに 2008 年のクアラルンプル国際会議および、2009 年度のカイロ国際会議を踏

まえたうえで、今年度は京都国際会議を開催し、研究の目標と方法について意識の共有をはかる。

3.京都国際会議の開催により、日本のイスラーム研究の国際化をはかると共に、現地研究者を含む外

国人研究者との連携を強化する。なお、京都国際会議は、第 1 期 5 年の事業を総括すると同時に、

今後の共同研究事業を展望することをめざしている。

4.第 1 期の研究事業の成果とりまとめとして、原典の訳注シリーズと英文論文集の刊行を開始し、さ

らに一般向けのイスラーム解説シリーズ「イスラームを知る」の刊行を継続する。

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5.2008 年度、文部科学省はネットワーク型のイスラーム地域研究を将来における人文・社会科学のあり

方を示すモデルとして認定し、本研究をさらに整備・強化する事業を開始した。それに伴って 5 拠点を

結ぶネットワークは全国の共同利用・共同研究拠点としても認定された。人間文化研究機構との共同研

究を土台として、文科省事業によってこれをさらに発展させていくことが求められるであろう。

(湯川武)

2.今年度事業の内容

(1)拠点整備

前年度に引き続き 2010 年度も、NIHU 派遣研究員や大学経費による雇用を含むイスラーム地域研究機

構専任の研究員を中心に、拠点として充実した陣容で活動した。早稲田大学 120 号館および 9 号館に、

個人研究室・共同研究室・資料室・機構長室・事務室の計 12 室の研究スペースを確保している。大学の

経費により雇用された 3 名の事務職員の存在も、研究活動を大きく支えている。

また、中心拠点としてイスラーム地域研究の 5 拠点全体の情報集約・連絡調整を引き続きおこなった。

メーリングリスト([email protected])を運営し、イスラーム地域研究全体の周知広報活動につとめ

た。「NIHU プログラム イスラーム地域研究」のポータルサイト(http://www.islam.waseda.ac.jp)は、5

拠点全ての活動が見渡せるような形で運用するとともに、英文での国際的な情報発信にもつとめた。ま

た、京都国際会議のような事業全体の大規模な活動については特設ページを用意して対忚した。

(佐藤健太郎)

(2)研究会活動

総括班では、2008 年度のクアラルンプル国際会議、および 2009 年度のカイロ国際会議に続き、第 3 回

イスラーム地域研究国際会議 New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity, Contestations and the Future

(京都国際会議)を国立京都国際会館において開催した。これにより 5 年間の第 1 期事業の研究活動を

国際的な場で総括すると共に、第 2 期事業に向けての展望をはかることができた。また、年度末に生じ

た中東諸国での民为化の動きに対忚して、イスラーム地域研究が蓄積してきた知見を社会一般に発信す

るため緊急パネル・ディスカッション「地域の激動と地域研究」を東大拠点の協力を得て開催した。例

年同様、イスラーム地域研究全体の展望と総括をおこなうため 7 月に合同集会を実施したが、12 月に京

都国際会議を開催するため、通例となっていた 3 月の合同集会は実施せず、京都国際会議をもって 5 年

間の研究事業のまとめとした。また、わが国のイスラーム地域研究の成果を国際的な場で発信するため

に日本中東学会と連携して 7 月にスペインで開催された第 3 回中東研究世界大会においてパネルを組織

した。若手研究者の育成をはかるためにおおむね月 1 回程度、「イスラーム地域研究・若手研究者の会」

を開催した。イスラーム地域研究の成果を一般社会に還元するため、かわさき市民アカデミーと連携し

て全 12 回の市民講座を開いた。

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グループ 1 では、前年度のカイロ国際会議で築いた国際的な研究者ネットワークを活用して第 3 回中

東研究世界大会においてパネルを組織した。この他、2 回の研究会・シンポジウム等を開催して、「イス

ラームの知と権威」について多方面から検討した。また、原典資料に即してイスラームの知について検

討するため、3 つの原典講読会(合宿を含む)を計 23 回実施した。

グループ 2 では、マドラサ班の研究成果が Routledge 社からの英文叢書シリーズ New Horizons in Islamic

Studies の一冊として出版された。NGO 班を中心に京都国際会議においてセッションを組織した。また、

4 つの研究班がそれぞれの観点から「アジア・ムスリムのネットワーク」について検討するため、研究会・

ワークショップ・原典講読会等を計 8 回開催した。

詳細については、各グループの研究会活動等の項目を参照されたい。

(佐藤健太郎)

(3)海外派遣・調査

グループ 2 において、アジア・ムスリムのネットワークに関する現状を調査するため、4 回の国内調査・

海外調査を実施した。

詳細については、グループ 2 の海外派遣・調査等の項目を参照されたい。

(佐藤健太郎)

(4)外国人研究者の招聘

総括班では、京都国際会議のために 16 名の外国人研究者を招聘した(海外在住の日本人研究者は除く)。

なお、他拠点予算や他資金での招聘を加えると、京都国際会議での海外からの外国人研究者の参加は 34

名にのぼった。

(佐藤健太郎)

(5)社会への研究成果還元

①「イスラームを知る」シリーズ

イスラーム地域研究の成果を広く社会に還元するため、イスラームに関する入門書シリーズである「イ

スラームを知る」を 2009 年度より開始し、本年度も新規刊行を継続した。第 1 期 12 冊のうち、2010 年

度は以下の 2 冊が刊行された。次年度以降も刊行の継続を予定している。

菅瀬晶子『新月の夜も十字架は輝く 中東のキリスト教徒』(イスラームを知る 6)、山川出版社、2010 年

松本ますみ『イスラームへの回帰 中国のムスリマたち』(イスラームを知る 7)、山川出版社、2010 年

(佐藤健太郎)

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(5)研究成果・発表(各拠点発行物)

〔論文〕計( 9 )件

著 者 名 論 文 標 題

間野 英二 バーブル文字に関する覚え書き

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム地域研究ジャーナル』 3 2011 11-23

著 者 名 論 文 標 題

岡井 宏文(研究グループ 2 研究協力者)

石川 基樹(研究グループ 2 研究協力者)

地域住民におけるムスリム・イスラームに対する意識・

態度の規定要因

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム地域研究ジャーナル』 3 2011 36-46

著 者 名 論 文 標 題

橋爪 烈(研究グループ 1 研究協力者)

原山 隆広(研究グループ 1 研究協力者)

吉村 武典(研究グループ 1 研究協力者)

イブン・ハルドゥーン自伝 3

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム地域研究ジャーナル』 3 2011 47-72

著 者 名 論 文 標 題

小林 春夫(研究グループ 1 研究協力者)

仁子 寿晴(京都大学拠点研究分担者)

加藤 瑞絵、倉沢 理

イブン・スィーナー著『治癒』形而上学訳註(第一巻第

一章および第二章)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム地域研究ジャーナル』 3 2011 73-117

Page 13: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

13

著 者 名 論 文 標 題

Fariba Adelkhah

(研究グループ 2 研究協力者)

Religious dependency in Afghanistan: Shia madrasas as a religious

mode of social Assertion?

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

The Moral Economy of the Madrasa: Islam and Education

Today, Routledge.

2011 103-129

著 者 名 論 文 標 題

Keiko Sakurai

(研究グループ 2 代表)

Women‘s empowerment and Iranian-style seminaries in Iran and

Pakistan

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

The Moral Economy of the Madrasa: Islam and Education

Today, Routledge.

2011 32-58.

著 者 名 論 文 標 題

Humayun Kabir

(研究グループ 2 研究協力者)

Contested notions of being ‗Muslim‘: Madrasas, ulama and the

authenticity of Islamic schooling in Bangladesh

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

The Moral Economy of the Madrasa: Islam and Education

Today, Routledge.

2011 59-84

著 者 名 論 文 標 題

Matsumoto Masumi and Shimbo Atsuko

(研究グループ 2 研究協力者)

Islamic education in China: Triple discrimination and the challenge of

Hui women‘s madrasas

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

The Moral Economy of the Madrasa: Islam and Education

Today, Routledge.

2011 103-129

Page 14: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

14

著 者 名 論 文 標 題

Fariba Adelkhah

(研究グループ 2 研究協力者)

SAKURAI Keiko

(研究グループ 2 代表)

Introduction: The Moral Economy of the Madrasa: Islam and

Education Today

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

The Moral Economy of the Madrasa: Islam and Education

Today, Routledge.

2011 1-10

なお、『イスラーム地域研究ジャーナル』第 3 号所収の私市正年(上智大学拠点代表)論文、貫井万里(上

智大学拠点グループ 1 研究協力者)論文については、上智大学拠点の該当項目を参照されたい。

〔図書〕計( 4 )件

著 者 名 出版社

イブン・イスハーク著

イブン・ヒシャーム編註

後藤明、医王秀行、高田康一、高野太輔

(研究グループ 1 研究協力者)訳

岩波書店

書 名 発 行 年 ページ

『預言者ムハンマド伝 1』 2010 22, 570

著 者 名 出版社

イブン・イスハーク著

イブン・ヒシャーム編註

後藤明、医王秀行、高田康一、高野太輔

(研究グループ 1 研究協力者)訳

岩波書店

書 名 発 行 年 ページ

『預言者ムハンマド伝 2』 2011 18, 616

Page 15: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

15

著 者 名 出 版 社

Fariba Adelkhah

(研究グループ 2 研究協力者)

SAKURAI Keiko

(研究グループ 2 代表)

Routledge

書 名 発 行 年 ページ

The Moral Economy of the Madrasa: Islam and Education Today 2011 164

著 者 名 出 版 社

松本ますみ

(研究グループ 2 研究分担者)

山川出版社

書 名 発 行 年 ページ

『イスラームへの回帰 中国のムスリマたち』 2010 113

なお、同じく「イスラームを知る」シリーズの菅瀬晶子(東京大学拠点グループ 1 研究協力者)の図書

計 1 点については、東京大学拠点の該当項目を参照されたい。

〔ジャーナル〕計( 1 )件

雑 誌 名

『イスラーム地域研究ジャーナル』

発 行 巻・号 発 行 年 ページ

共同利用・共同研究拠点 イスラーム地域研究拠点

早稲田大学イスラーム地域研究機構 3 2011 164

今年度、早稲田大学拠点で発表した研究成果は以上である。その他、本事業実施に伴い、本拠点所属

研究者・関係者が発表した研究成果の詳細については、各研究グループの項目を参照されたい。

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16

総 括 班

【2010 年度の研究・教育活動】

1. 今年度の研究・教育活動の概要

今年度は「NIHU プログラム イスラーム地域研究」の 5 年度目に当たっている。研究事業のまとめを

目指して、以下の項目を本年度事業の为要目的に定め、実施した。

1. 基本目標の実現に向けて、研究推進と若手育成のための特色ある拠点づくりをさらに推進する。

2. 5 つの拠点を結ぶネットワークを充実させるために、合同集会を 1 回と京都国際会議を開催し、研究

成果の取りまとめと、第 2 期の目標設定について意識の共有をはかった。また、和文・英文のウェブ

サイトを充実し、ネットワークの強化をはかった。

3. 京都国際会議の開催により、日本のイスラーム研究の国際化をはかると共に、現地研究者を含む外国

人研究者との協力・提携に努めた。

4. 研究成果を和文叢書、英文叢書として刊行すると同時に、一般向けのイスラーム解説シリーズ「イス

ラームを知る」を刊行した。

(湯川武)

2. 研究活動の記録

(1)研究会活動

①2010 年度合同集会

日時:2010 年 7 月 3 日(土) 13:30~17:30

場所:早稲田大学 22 号館 202

概要:

毎年度、各拠点持ち回りで開催している 7 月の合同集会は、2010 年度は東洋文庫拠点との共催により

開催した。東洋文庫拠点が企画を担当して、「イスラーム史料:原典が語りかけるもの」と題した公開講

演会を実施した。間野英二、山中由里子、後藤明、大河原知樹というイスラーム地域各地の原典史料に

精通した 4 名の講演者から、原典の世界とその愉しみについて、一般向けに分かりやすく語っていただ

いた。

今年度は 12 月の京都国際会議に人的・金銭的資源を集中するために 3 月の合同集会を取りやめたので、

この合同集会が通常の形態で行われる最後の合同集会となった。イスラーム地域研究の研究分担者・研

究協力者はもちろん、多くの一般聴衆も集めて盛会となった。

本合同集会の詳細については、企画にあたった東洋文庫拠点の報告を参照されたい。

(佐藤健太郎)

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17

②イスラーム地域研究・若手研究者の会 4 月例会

日時:2010 年 4 月 24 日(土) 14:00~18:00

場所:東京大学(本郷キャンパス)法文1号館 317 教室

報告者:富樫耕介(東京大学大学院総合文化研究科後期博士課程)

報告題目:「ロシア・グルジア戦争後の北コーカサス地域の不安定化とその背景―イングーシ共和国に

おける危機と連邦の対忚を事例として―」

コメンテーター:吉村貴之(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員)

概要:

本研究会は、長らく親しまれてきた「イスラム国家論研究会」の名称を 2010 年度より「イスラーム地

域研究・若手研究者の会」と改称した。これまで本研究会は、歴史学を専門とする若手研究者に多くの

発表の機会を提供してきた。しかし今回の名称変更とともに、イスラーム地域研究・若手研究者の会は、

多様化する我が国の研究状況に対忚するべく、国際関係論、政治学、経済学あるいはイスラーム学など、

より幅広い分野を専攻する若手研究者たちに積極的に報告してもらい、同時に分野横断的な議論を活発

に行うことを会の目的の一つとして打ち出すことにした。この意味において、現在のコーカサス情勢を

めぐる今回の富樫氏の報告は、非常に刺激的かつ興味深いものであるとともに、会の新たな出発点とし

て意義深いものとなった。

富樫氏は、我が国において、ひとくくりに論じられることが多い北コーカサス地域に分布する各共和

国のなかから、イングーシ共和国を例にあげつつ、実際には各々に異なる各共和国の実情を丁寧に踏ま

えて議論を展開していくことの必要性を強調した。アルメニアを専門とする吉村氏のコメントにつづい

て、20 名を越える参加者からは多くの質疑がなされ、また富樫氏の忚筓を受けて積極的な議論が繰り広

げられた。

今回は、報告の内容が現代のコーカサス地域ということもあって、これまでの月例会に比べると参加

者の多様化が見られた一方で、他の研究会と重なったこともあってか歴史学プロパー参加者はやや尐な

く感じられた。とりわけ大学院に在籍する若手研究者は、より幅広い研究の視野と研究上不可欠な基礎

的知識とを獲得するためにも、狭い研究領域や自らが研究対象とする時代にいたずらに閉じこもること

なく、積極的かつ定期的に参加し、議論してもらうことを期待して、イスラーム地域研究・若手研究者

の会の最初の報告を締めくくりたい。

(澤井一彰)

③イスラーム地域研究・若手研究者の会 5 月例会

日時:2010 年 5 月 22 日(土) 14:00~18:00

場所:東京大学(本郷キャンパス)法文 1 号館 317 教室

報告者:守田まどか(東京大学大学院人文社会系研究家博士課程)

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報告題目:「イスタンブルにおける「街区共同体」の成立―16 世紀の『ワクフ調査台帳』に見られる

イマームへの寄進の数量的検討を通して―」

コメンテーター: 清水保尚(東京外国語大学外国語学部非常勤講師)

概要:

本発表の論旨は、16 世紀にオスマン朝の首都イスタンブルにおいて作成された 2 点の『ワクフ調査台帳』の

分析・比較を通じて、モスクを中心とする行政卖位としての「街区」が、コミュニティーとしての性格を備え

る「街区共同体」へ変容していく過程を明らかにするものであった。守田氏は、街区の中心に位置づけられた

モスク(「街区モスク」)のイマームが受益者や管負人となるワクフの増加に着目し、寄進者としての街区住民

と街区の求心力となるイマームとのワクフを通じたつながり、さらには街区に対する住民の帰属意識の形成に

ついて考察を行った。発表では、GIS(地理情報システム)を用いた街区モスクの建設とそのイマームへの寄進

の分布状況や、分析対象としたワクフにおける寄進者層やその負源、受益の条件などが、詳細な統計図表によ

って示された。

報告者と同時代のオスマン朝史を専門とする清水氏からは、同朝史における文書史料の伝世状況や、対象時

期のイスタンブルの都市概要等が補足された。これを受け、会場では参加者全体で活発な議論が展開された。

今回の報告では新たに「街区共同体」という分析概念が用いられたが、最終的には「街区共同体」が一体何

であるのか、という点に若干の不明瞭さが残った。守田氏が提唱したこの概念は、既往研究で語られてきた「街

区」の概念を進展させ、人的結合の集合体として都市を把握する、という新たな問題提起となるものである。

報告者の今後の研究展開が期待されるところである。

以上、多忙な学会シーズンであるにも関わらず、様々な研究領域から多くの参加者が集まり、活気のある研

究会となったことをここに報告する。

(奥美穂子)

④イスラーム地域研究・若手研究者の会 6 月例会

日時:2010 年 6 月 20 日(日) 14:00~18:00

場所:東京大学(本郷キャンパス)法文 1 号館 317 教室

報告者:白谷望(上智大学大学院グローバルスタディーズ研究家博士後期課程)

報告題目:「現代モロッコにおける反体制勢力『取り込み』の政治―国王とイスラーム为義政党

『公正開発党』の競合―」

コメンテーター:鈴木恵美 (早稲田大学イスラーム地域研究機構・为任研究員/研究院准教授)

概要:

本報告では、国王がイスラームに支配の正統性を依拠するモロッコにおいて、1997 年に法的認可を得、

イスラーム为義を掲げて既存の支配構造に挑戦した「公正開発党」に焦点を当て、同党がなぜ、そして

どのように権威为義体制に組み込まれていったのかという点を、国王の支配戦略と公正開発党の政治戦

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略の分析を通じて検討した。その結果、公正開発党の政治参加は、モロッコの権威为義体制を持続させ

るメカニズムである、「政治アクターの分断型統治」という支配構造にうまく符合するばかりでなく、む

しろ、このメカニズムが機能することに寄与しており、モロッコ国王の現出する支配構造を強化するも

のであったと、白谷氏は結論づけた。この報告を受け、現代エジプト政治を専門とする鈴木氏は、中東

各国の様々な事例を挙げつつ報告内容(モロッコの政治的自由化・民为化の経緯、二院制の内実、新政

党法の内容など)に対して疑問点を提示するとともに、モロッコの独自性をさらに強調すべきとの要望

を提示した。これに続いて、参加者から多くの質疑がなされ、活発な議論が行われた。

今回の報告は、「イスラーム」に支配の正統性を求める国王と「イスラーム为義」政党の政治戦略を分

析したものであったため、国王側の依拠する「イスラーム」の内容および公正開発党の掲げる「イスラ

ーム为義」とは何か、という点に関して議論が集中した。今後は、アラビア語文献の精読や現地調査を

行い、それぞれの立場の定義や分析概念を精緻化することで、より汎用性の高い政治学理論を適用した

モロッコ地域研究となることを期待したい。

最後に、今回の 6 月例会も地域研究・政治学からのアプローチということで、報告のテーマや参加者

に研究会の広がりを感じた。本研究会を通じて、今後もより多くの分野の方々と交流できることを期待

し、6 月例会の報告とする。

(野口舞子)

⑤イスラーム地域研究・若手研究者の会 7 月例会

日時:2010 年 7 月 25 日(日) 14:00~18:00

場所:東京大学(本郷キャンパス)法文 1 号館 317 教室

報告者:中西悠喜(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程・日本学術振興会 DC)

報告題目:「タフターザーニー=ファナーリー論争における〈関係〉―存在をめぐる 論争と基底形‐

派生形問題の接点―」

コメンテーター:小野純一 (東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)

概要:

中西氏の報告内容はおおよそ二つの部分から構成されていた。前半では哲学的神学者の代表格である

タフターザーニーによる、イブン・アラビー学派の「存在一性論」批判とそれに反駁を加えたファナー

リーの、両者の議論に見える〈関係〉理解についての考察が行われた。中西氏によれば、この論争は、

絶対存在と存在者の間に〈関係〉を認めるか否かの対立であるが、どちらの議論が優勢であるかを判断

するのではなく、『両者の論理の食い違い』にこそ注目すべき点であるとする。

後半では、上記の〈関係〉の是認・否認という対立の思想的背景を探るため、〈関係〉論とつながりの

深い論理学(特に述語付け論)における「基底形 muwāṭa‘ah‐派生形 ishtiqāq 問題」に焦点を当てて考察

がなされた。中西氏はイブン・スィーナーに由来する「基底形‐派生形問題」と彼の説を批判的に考察

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したバグダーディーおよびラーズィーの見解を提示するとともに、この問題がタフターザーニー=ファ

ナーリーの〈関係〉をめぐる为張のへだたりに影響を及ぼしている可能性を指摘した。

コメンテーターの小野純一氏からは、イブン・アラビー学派やファナーリーその人について、あるい

は存在一性論の説明など、本報告を補完する情報の提示がなされ、また「存在をもつ」という表現に関

連した質問がなされた。

その後、参加者からは〈関係〉という訳語があてられるアラビア語の二種の言葉(nisbah と iḍāfī)の

ニュアンスの違いや「存在 wujūd」の不定詞についてなど、アラビア語文法に関する質問に始まり、本

報告全体を貫くテーマである「〈関係〉」の意味や「論争」という言葉について、あるいは発表形式から

は判然としなかった報告の研究史上・思想史上の位置付けなどに疑問が呈され、議論が行われた。

本例会も多数の参加者に恵まれ盛況であったが、内容が難解な上、前提となる情報の提示がほとんど

なかったため、参加者の多くにとって理解しにくい報告であったと推察する。そのため質問のほとんど

が内容ではなく、発表形式やディシプリンに関するものとなった。報告者、聴衆ともに異分野理解ため

のよりよい方法を探るためにも、本会が担う役割はよりいっそう重視されるべきだろう。

(橋爪烈)

⑥イスラーム地域研究・若手研究者の会 10 月例会

日時:2010 年 10 月 30 日(土) 14:00~18:00

場所:東京大学(本郷キャンパス)法文 1 号館 317 教室

報告者: 和崎聖日(日本学術振興会特別研究員 PD/京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

報告題目:「ウズベキスタンの村落住民はいかに背景音を知覚しているのか:ホウリ(hovli)における

空間と社会性」

コメンテーター:澤井充生(首都大学東京助教)

概要:

和崎氏の研究は、公共空間論に人間の聴覚という視座を導入することで、視覚偏重で進められてきた

従来の研究を批判的にとらえ直そうとする点に特徴がある。今回の研究報告は、そうした立場から中央

アジア・オアシス定住地域のホウリと呼ばれる中庭式の伝統的住居に注目し、ホウリをめぐる空間認知

のあり方を再検討するものであった。

分析データには、ウズベキスタン共和国ナマンガン州ポプ地区サング村に所在するホウリの敶地内で

タイム・サンプリング法によって採取された背景音(自然と人間生活の営みのなかで発せられ聞こえる

あらゆる音)が用いられた。和崎氏は現地人調査助手とともにこの背景音を分析にかけ,107 の音源種を

特定したが、それは「動植物に関わる音」と「人の社会生活に関わる音」に大別される。音源種の分類・

整理作業には,調査助手の認識と部分的にはホウリ居住者の発話とが直接介在したため、そこにはすで

に村落住民の社会・文化的な生活知が反映されており、たとえば家の改築音が「祝宴(結婚式)への準

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21

備」という意味で「祝宴」の音としても分類されている点などは興味深い。

背景音の分析を通じて、村の一日の社会生活が日照や気温の変化、住民の性差や年齢差と連動・相関

しながら展開している様子が明らかにされたほか、動物の鳴き声の聞き分けや隣人生活に関する推測、

ホウリ外の道へと方向づけられた聞く姿勢などへの考察をもとに、住民が体得している常識的論理が「発

見」されたことが指摘された。そして、ホウリは決して閉じた空間ではなく、道との関係において居住

者の想像力がいかんなく発揮・喚起される社会性を有する空間であると結論づけられた。

これに対して、和崎氏とおなじく人類学を専門とする澤井氏が、全体の構想、研究方法,学問的背景

という点から本研究の研究史上の位置と特色を評価・解説したうえで、インフォーマントの過尐、視覚

による参与観察の必要性、調査村落の歴史的背景や社会・経済的条件への配慮不足、社会性・公私・空

間・場所などの概念の整理不足といったいくつかの問題点を指摘するとともに、導き出された知見の新

しさに若干の疑問を呈した。

人類学の方法論に立脚した水準の高い研究報告と、コメンテーターの的確な批評・問題提起に触発さ

れるかたちで活発な議論が行われ、本例会は総じて有意義なものとなった。

(木村暁)

⑦イスラーム地域研究・若手研究者の会 11 月例会

日時:2010 年 11 月 13 日(土) 14:00~18:00

場所:早稲田大学 120-1 号館 201 会議室

報告者: 角田紘美(早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程)

報告題目:「「コルドバの殉教運動」にみる、9 世紀アンダルスのイスラーム法と社会」

コメンテーター:辻明日香 (東京大学東洋文化研究所助教)

概要:

後ウマイヤ朝の首都コルドバで、850 年代の約 10 年間にキリスト教徒が 50 名ほど殉教した。この事件

は、後に自身も殉教者となる同時代人のエウロギウスにより殉教者録『聖人たちの記録』として变述化

され、また後代に「コルドバの殉教運動」として知られるようになった。報告者はこの殉教運動が当時

のカーディー法廷やイスラーム法の規定を逆手に取り、預言者ムハンマドを誹謗することで殉教を行っ

た点に注目し、当時のアンダルス社会へのイスラーム法の浸透、適用の状況からこの事件を捉え直し、

この殉教運動の背景と意義を当時のより実態的な社会状況から再検討すること試みた。

まず報告者は史料の紹介に続き先行研究の整理を行い、それまでの殉教運動の分析がエウロギウスの

殉教者録のみを取り上げ、キリスト教史の視点のみに偏ったものであり、イスラーム王朝支配下という

社会状況について何ら考慮されていないことを指摘し、イスラーム側の視点を取り入れることの必要性

を为張した。9 世紀の後ウマイヤ朝がマーリク派法学を積極的に採用し、カーディー法廷を統治機構の一

部として整備していった経緯を説明し、この殉教運動とイスラーム法との関連として、アラビア語史料

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に現れる改宗ムスリムとエウロギウスの殉教録に現れる殉教者の双方が預言者ムハンマドの誹謗を行う

ことで罰せられているという共通点を挙げた。殉教運動の起点とされるイサークの殉教がイスラーム法

とカーディー法廷を利用した自発的なものであったが、そこには政治、社会的な死罪を宗教的な殉教と

する「死の価値の転換」が見られるとした。

コメンテーターの辻明日香氏は、専門とするマムルーク朝時代エジプトのズィンミー研究との比較か

ら、アンダルスのズィンミー研究がキリスト教史に偏重してしまう特殊性をふまえながらもカーディー

法廷を切り口として、社会の仕組みから史料を再検討する取り組みを評価した。また、弱者がいかに強

者のイデオロギーを利用したかという視点が最近のマイノリティー研究の一つの動向としてあげる一方

で、ズィンミーを端的にマイノリティー、異邦人、移民として見てはならず、特に当時のアンダルスで

はズィンミーが人口ではマジョリティーであり先住民である実情をふまえて分析を行う姿勢の重要性を

示した。また、辻氏からは、1:イスラーム支配下におけるアラブ化(言語・文化・社会)したキリスト

教徒への内部批判の有無について。2:カーディー法廷が実際に利用可能になった時期や場所について。

3:ムスリムに改宗した人々がキリスト教へ再改宗することがあったのか、その場合はコミュニティへの

再加入はどのようにして行われたか。4:イスラーム勢力がやってくる直前のマグリブ社会の状況につい

て、つまり一様にキリスト教世界であったと考えてよいか否か等の質問が発せられた。

コメントに引き続き、会場からも限定されたラテン語史料、アラビア語史料からどれほど実態的な社

会状況をくみとることができるか、エウロギウスの殉教者録の執筆意図や著述傾向はどのような社会的

背景を持っているのか、他の「殉教者録」との差異、イスラーム法の施行とカーディー法廷の機能につ

いて、ズィンミーの置かれた状況のマグレブとマシュリクの異同、など発表者とコメンテーターにたい

して多くの質問、コメントがなされ活発に議論が行われた。概して盛況な月例会となった。

(吉村武典)

⑧イスラーム地域研究・若手研究者の会 12 月例会

日時:2010 年 12 月 5 日(日) 14:00~18:00

場所:東京大学(本郷キャンパス)法文 1 号館 317 教室

報告者: 籠田のぞ実(早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程)

報告題目:「アラブ・イスラームの「騎士道」―フルーシーヤの分析を中心に―」

コメンテーター:中村妙子(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科研究院研究員)

概要:

フルーシーヤは、中世イスラーム世界において、騎馬戦士が体得すべきと考えられてきた知識の集成

である。その内容は、騎馬戦闘技術や、獣医学など馬に関する知識全般であった。

報告者の籠田のぞ実氏は、フルーシーヤは、イスラーム世界における「アラブ・イスラーム騎士道」

としてしばしば認識されており、この「騎士道」という言葉が西洋史研究における術語として定着して

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23

いるため、西洋騎士道との何らかの関連や類似性を想像させることを指摘した。籠田氏はまず、西洋騎

士道とフルーシーヤの実際の接触があった十字軍遠征期について、それぞれの発展や本質に何らかの相

互影響がなかったかどうかを検討した。その結果、武器、武具、戦略レベルにおいては、相互影響―特

にフルーシーヤが西洋騎士道に対して与えた影響は存在するものの、その逆や、本質的な影響はほとん

どないことを示した。その上で、本発表の本題として、籠田氏はフルーシーヤの本質を、西洋騎士道と

の比較の観点からではなく、マムルーク朝時代のフルーシーヤの手引書を直接検討することによって明

らかにしようとした。その上で、果たして「アラブ・イスラーム騎士道」という術語が、フルーシーヤ

を示すのに適当であるのか検討し、より相忚しい訳語を与えようと試みた。

発表では、手引書の内容である、フルーシーヤの実践的側面が多く紹介され、その実践的側面は大い

に明らかになったものの、適切な訳語については、結論に至らなかった。

コメンテーターの中村妙子氏は、専門である十字軍遠征期のイスラーム諸王朝と十字軍諸国家との戦

史を詳細に紹介し、戦術や投石機などの武器の改良について、十字軍側がイスラーム側に影響を与えた

例についても付言した。そして、フルーシーヤと西洋騎士道がその本質においては相互影響がないため、

比較が難しいという点について籠田氏に同意した。しかし、フルーシーヤが本当に手引書のまま実践さ

れていたかどうかについては疑問があるとして、フルーシーヤも実践一辺倒ではなく、儀式的、政治的

側面も見る必要があるのではないかと意見を述べた。

会場からは、西洋騎士道とフルーシーヤの比較は、比較対象となる側面が多すぎることにその難しさ

があるものの、論点を絞れば分析は可能であり、よりフルーシーヤの特性を理解する助けとなる、とい

う意見が出た。西洋騎士道といえども、はじめから定まった形があった訳ではなく、騎士道としての在

り方が固定されたのは 15 世紀頃であり、それ以前の様相は地域ごと様々であったという指摘がなされた。

そのため、西洋騎士道とフルーシーヤは完全に類似性がないとは言い切れないことが分かった。また、

訳語についても、現段階で固定的な言葉を与えるのではなく、より研究が深まり適切な言葉を考えるこ

とができた時に与える方が、関連の研究全体に寄与するところが大きいとの指摘がなされた。興味深い

テーマであったがゆえに、会場は非常に盛況で多くの質問で賑わった。

(角田紘美)

⑨イスラーム地域研究・若手研究者の会 1 月例会

日時:2011 年 1 月 22 日(土) 14:00~18:00

場所:早稲田大学 120-1 号館 201 会議室

報告者: 渡辺大作 (東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程)

報告題目:「ラッフィの小説における「郷土」」

コメンテーター:秋山徹 (日本学術振興会特別研究員 PD)

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概要:

従来、アルメニア・ナショナリズムすなわちアルメニア人社会におけるネーション形成をめぐる研究

において、ロシア帝国領内のアルメニア人の、オスマン帝国領内の「同胞」についての認識に触れられ

ることはなかった。また、東西アルメニアの民族的一体性が前提とされるなかで、アルメニア解放運動

のイデオローグとされて、東部アナトリアのアルメニア人に対するムスリムの不断の迫害が強調されて

きた。このような研究動向を踏まえつつ、渡辺氏はアルメニア近代文学史上最大の小説家とされるラッ

フィ(Raffi 1835-1888)の代表作『狂人』をとりあげ、ロシア帝国のアルメニア人が領域的なアイデンテ

ィティを形成するうえで、国境を隔てたオスマン帝国領東部アナトリアの同胞の存在が、一定の意味を

有していたことを明らかにした。

コメンテーターの秋山徹は、近年、アルメニアに限らず、ディアスポラ研究が盛んになっているが、

渡辺氏が敢えてカフカース現地に根を張ったアルメニア知識人ラッフィの言説に着目した点を評価した。

また、オスマン帝国の存在感に着目することで、中心―周辺、支配―抑圧、それに対する民族解放史観

という卖純な二項対立的な構図が強調されがちな旧来のロシア帝国辺境民族史に陥ることなく、それを

克服する意味においてもたいへん意義のある作業であると評価した。他方で、今後の課題として、ラッ

フィの記事が掲載された新聞、雑誌といった原典史料に当たり、それらのおおまかな論調、発行部数、

発行人・編集人の思想傾向などの全体像を把握し、それをふまえて、ラッフィの記事を全体のなかに位

置づける作業が求められることを指摘した。

報告とコメントを経て、参加者からはさまざまなコメントや質問がよせられた。今回の報告ではもっ

ぱら『狂人』という特定の作品に焦点が当てられたが、ラッフィ自身の思想の全体像とその変遷を把握

する必要性が指摘された。また、小説資料を歴史研究の史料としてどのように扱うのか、という根本的

な方法論上の問題も投げかけられ、議論はおおいに盛り上がった。総じて、渡辺氏の報告は、歴史研究

に限らず、文学、ナショナリズム論など様々なインプリケーションに富むものであり、本研究会に集う、

様々な関心をもつ参加者の知的好奇心を刺激してやまないようすであった。今後、渡辺氏はアルメニア

への留学を予定しているとのこと、現地経験を活かして、研究の一層の飛躍を期待したい。

(秋山徹)

⑩イスラーム地域研究・若手研究者の会 3 月例会

日時:2011 年 3 月 6 日(日) 14:00~18:00

場所:東京大学(本郷キャンパス)法文 1 号館 317 教室

報告者: 栃堀 木綿子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程)

報告題目:「アブドゥルカーディルを巡るジハード観―『諸階梯の書』から―」

コメンテーター:渡邊 祥子(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)

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概要:

栃掘氏の報告は 19 世紀アルジェリアにおける武装闘争指導者かつスーフィー、アブドゥルカーディ

ル・ジャザーイリーの著作『諸階梯の書』における小ジハードと大ジハードという概念に注目し、彼の

ジハード観を明らかにした。特に、抗仏運動の前後でアブドゥルカーディルの生涯に断絶を見る先行研

究に対して批判的に検討を加えた。

まず問題の背景として、フランスによるアルジェリアの植民地化とアブドゥルカーディルの出自と生

涯に関して説明がなされ、アブドゥルカーディルのスーフィー指導者としての出自と抗仏武装闘争の経

過、武装闘争放棄後のダマスカスでの活動などについて議論の土台となる情報が提示された。その後、『諸

階梯の書』の具体的記述からアブドゥルカーディルのジハード観が検討された。小ジハード、大ジハー

ド、双方に共通するものとしてのジハード、について『諸階梯の書』における定義、目的、要件の比較

を行った。一連の分析から栃掘氏は、アブドゥルカーディルの思想においてジハードこそが宗教の根幹

であり、小ジハードと大ジハードは関連し不可分であったとした。ジハード観がアブドゥルカーディル

の実際の行動に与えた影響については、前半生と後半生における彼の行動の根幹には一貫してジハード

思想があり、ジハードすなわち宗教の実践と捉えられていたことを提示した。また、アブドゥルカーデ

ィルはジハードとともにヒジュラを为張し、両者は彼の思想、行動において表裏一体の関係にあった。

コメンテーターの渡邊祥子氏からは、思想書といわれてきた『諸階梯の書』に政治思想を読み取ると

いう本報告の新しさとアルジェリア史研究における意義が示された上で、先行研究における『諸階梯の

書』の解釈、イブン・アラビーなどとの比較におけるアブドゥルカーディルのジハード観の思想史上の

位置付け、史料解釈の方法と論証過程等について質問がなされた。また、本報告と植民地史による理解

との相似性とアブドゥルカーディルの抗仏闘争に社会・政治史からのアプローチを行うことの必要性が

指摘された。

続いて会場の参加者からは、後半生に書かれた『諸階梯の書』を为史料としてアブドゥルカーディル

の生涯を通じた思想を分析することの限界および前半生も含めた史料状況、『諸階梯の書』の出版背景と

時代状況、他地域との関連、防衛ジハード概念との関わり等について質問とコメントが出され、意見が

交わされた。イスラーム思想史と植民地における独立運動史の接点を扱った報告が行われた本例会では、

思想研究、歴史研究双方の立場から具体的な問題について活発な議論が行われた。方法論についての議

論も行われ、報告者、聴衆にとって有意義な例会となった。

(植田暁)

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(2)国際会議

①IAS Third International Conference ―New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity, Contestations and the

Future‖ (京都国際会議)

日時:2010 年 12 月 17 日(金)~12 月 19 日(日)

場所:国立京都国際会館

概要:

人間文化研究機構(NIHU)プログラム「イスラーム地域研究」は、2010 年 12 月 17 日から 19 日まで

3 日間にわたり、京都国際会議場において、京都国際会議 The IAS Third International Conference ―New

Horizons in Islamic Area Studies: Continuity, Contetations and the Future‖を、文部科学省事業共同利用共同研究

拠点「イスラーム地域研究」、文部科学省科研費「比較研究:ユーラシアの地域大国」、人間文化研究機

構総合地球環境学研究所、マラヤ大学アジア・ヨーロッパ研究院の共催を得て開催した。

この会議は NIHU プログラム「イスラーム地域研究」が为催する 3 回目の国際会議であるとともに、

本プログラムの第 1 期の掉尾を飾るものとして企画された。「イスラーム地域研究」の各研究拠点が行っ

てきた第 1 期(2006-2010)の研究活動の成果を広く世界に発信していくとともに、研究者間の世界規模

でのネットワークを形成、拡大していくことを第一の目標とした。

それとともに、2011 年度から始まる第 2 期(2011-2015)の「イスラーム地域研究」の研究活動のしっ

かりとした基礎を、会議における学術的な新しい所見や議論を通じて築くことも目的とするものであっ

た。

会議には三日間で延べ 500 名を超える人々が参加した。全セッションでの発表者は 108 名で、海外か

らの参加者は 24 か国から 42 名に及んだ。

セッションの構成は、全体セッション(plenary session)が 2 つ、並行セッション(parallel session)が

13、ポスターセッション(poster session)が 1 である。

会議初日にはまず開会式が開かれ、(以下スピーチの順)金田章裕人間文化研究機構長、赤松明彦京都

大学副学長、立本成文総合地球環境学研究所長、佐藤次高早稲田大学イスラーム地域研究機構長が挨拶

の言葉を述べた。

そして開会式に続いて 6 名の発表者(および議長 1)から構成される Plenary Session ―Continuity,

Contestations and the Future‖が開催された。このセッションは会議のテーマそのものをタイトルとするもの

で、イスラーム地域研究の基礎的な諸問題に関する示唆に富んだ発表が次々と行われた。その後、ポス

ターセッションの発表者の自己紹介に続いて、それぞれの発表者が自分のポスター前に立って説明を繰

り広げた。その夜には、歓迎レセプションが開かれた。

二日目は、午前 9 時から昼食と 2 回のコーヒーブレイクをはさんで午後 7 時まで、7 つの並行セッショ

ンが開かれた。三日目には 1 回のコーヒーブレイクと昼食をはさんで、午前 9 時か午後 4 時半まで、6 つ

平行セッションが開かれ、休憩後に、会議を締めくくる全体の閉会セッションが開かれて会議を締めく

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くった。

最後の閉会セッションでは国外からの参加者の「イスラーム地域研究」に対する批判や要望、あるい

は励ましのスピーチをもらい、関係者一同、第 2 期に向けて意欲を大いに高められた。

翌 20 日は、希望者を募りバスを借り切っての京都市内観光を行ったが、国外からの参加者たちは初冬

の京都を大いに楽しんだようであった。

京都国際会議は「イスラーム地域研究」の第 1 期のさまざまな成果を検討し発信し、次のステップに

進むための基礎を固めるという点で大きな意義をもつものであった。新しい視点や方法、あるいは新し

い問題点の提示など、今後の研究の発展のための多くの材料が提供された。

また、これまで 2 回の国際会議を通じて交流を深めてきた国外の研究者・機関との関係をさらに強化

しただけではなく、新しい交流関係が生まれ、それを今後伸ばしていく基礎を築けたことも大きな成果

と言える。

これらに加えて、前 2 回の国際会議に続き、京都会議においてもポスターセッションを設け、多くの

参加者から高い評価を得た。ポスターセッションは博士課程の学生、ポスドク、若手研究者に国際会議

への参加と発表の機会を提供する貴重な機会ともなった。

(湯川武)

②第 3 回中東研究世界大会(WOCMES)パネル Diversity and Uniformity in the Muslim West

日時:2010 年 7 月 19 日(月) 14:30~16:30

場所:Universitat Autònoma de Barcelona

Organizer: KISAICHI Masatoshi (Sophia University, Japan)

Chair: Abdelahad Sebti (Université de Mohammed V, Morocco)

Speakers:

1. KURODA Yuga (Waseda University, Japan)

The Views of Muslims held by Iberian Peninsula Christians

2. SATO Kentaro (National Institutes for the Humanities / Waseda University, Japan)

Yannayr and Ansara: Seasonal Festivities in the Muslim West

3. KISAICHI Masatoshi

Andalusian People in Ulema Societies of the 12th and 14th Century Maghreb Cities

概要:

我が国のイスラーム地域研究の成果を広く国際的な場で公表するため、日本中東学会と連携して第 3

回中東研究世界大会(World Congress for Middle Eastern Studies, WOCMES)において Pre-Organized Panel

を組織した。スペインにおいて開催されるという地理的条件を勘案して、日本におけるマグリブ・アン

ダルス研究の現状を伝えるという意味も込め、パネルのテーマはマグリブ地域とアンダルス地域との歴

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史的なつながりを一体性と多様性の両側面からとらえるものと設定した。

第一報告者の黒田祐我氏(早稲田大学)は、中世キリスト教徒が残した史料を通じてムスリムの多様

な表象のあり方をとりあげ、アンダルスのムスリムとマグリブのムスリムとを区別して捉える見方とあ

る程度までは関連していることを論じた。第二報告者の佐藤健太郎氏(人間文化研究機構/早稲田大学)

は、太陽暦の新年祭と夏至祭というジブラルタル海峡の両岸に共通してみられる祝祭の事例を通して、

西方イスラーム世界(Muslim West)という地域概念の有効性と限界を論じた。第三報告者の私市正年氏

(上智大学)は、マグリブ地域とアンダルス地域との間に見られる知識人(ウラマー)の交流をとりあ

げ、人の移動という点においては両地域がきわめて緊密な一体性を有していたことを論じた。さらに司

会をつとめたアブドゥルアハド・セブティー氏(ムハンマド 5 世大学、モロッコ)からパネル全体に対

するコメントと論点の提示があった。

質疑忚筓においては、スペインやチュニジアなど様々な国から集まったギャラリーから盛んな発言が

あり、これまで国際的にはあまり知られることのなかった我が国のマグリブ・アンダルス研究の存在感

を示すことができたと思う。とりわけ、パネリストの中に西洋史出身の黒田氏がいたことは、日本のイ

スラーム地域研究が実に多様な専門分野の研究者とネットワークを築いているという点で強い印象を与

えていた。

(佐藤健太郎)

③京都国際会議 Session 1: Continuity, Contestations and the Future

日時:2010 年 12 月 17 日(金) 13:00~16:30

場所:国立京都国際会館

Convenor: Omar Farouk (Hiroshima City University)

Chairperson: Omar Farouk

Speakers:

1. Michael Gilsenan (New York University, USA)

Problems and Approaches in Anthropologies of Islam and Society

2. Leif Manger (University of Bergen, Norway)

One Religion, Two Decades, Three Problems: Reflections on the Study of Islam by an Anthropologist

3. Abdulkader Tayob (University of Cape Town, South Africa)

Taking Religion Seriously: Understanding Islam in Society

4. Hood Salleh (The National University of Malaysia, Malaysia)

Islam on the Margin: Ethnographic Perspectives

5. KOSUGI Yasushi (Kyoto University, Japan)

Islamic Area Studies: Japanese/Global Perspectives

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6. Nelly Hanna (American University in Cairo, Egypt)

Some Future Perspectives for the Study of Ottoman Courts of Law

Discussant:

Osman Bakar (Institute of Advanced Islamic Studies, Malaysia)

概要:

The above six scholars from different countries and continents were invited to present their thoughts on the

theme of the conference, namely, ―New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity, Contestations and the Future‖.

The session was convened and chaired by Omar Farouk of Hiroshima City University. This plenary session was

primarily intended to take stock of the state of scholarship of Islamic Area Studies within the NIHU-IAS framework

as well as its broader contexts and to project future prospects. One special feature of the session was that the

speakers approached the subject from their respective disciplines which included history, anthropology,

comparative religion and science. At the last minute, due to health reasons, Emeritus Professor Dr. Hood Salleh of

the National University of Malaysia, was not able to attend the conference. He, however, submitted his paper for

distribution during the conference. We were also lucky to have got the kind consent of Emeritus Professor Dr.

Osman Bakar, the Deputy Executive Director of the Institute of Advanced Islamic Studies, Kuala Lumpur, who was

participating in another session of the conference, to serve as a discussant for the panel. Based on the responses of

the audience during the plenary session itself as well as in informal interactions that followed it was obvious that

the panel was well-received and the issues that were raised attracted considerable attention and made an impact on

the discussions that followed even in other sessions. Although the session was originally scheduled to end at 16:30

hours, it went on until 17:00 hours to accommodate more comments and discussions. On account of the importance

of the topic and the great interest that it had aroused all the speakers agreed to submit their revised papers for

publication in a volume which will be edited by Omar Farouk, Yasushi Kosugi and Leif Manger. Professor Osman

Bakar also agreed to expand his comments into a full paper for inclusion in the volume. Although the time-frame

for the publication has not been decided the general expectation was that it would be undertaken in the immediate

future with the support of IAS-NIHU.

(オマール・ファルーク)

④京都国際会議 7A Socio-economic Dimensions of Palestine Question

日時: 2010 年 12 月 19 日(日) 11:30~13:30

場所:国立京都国際会館

Convenor: NAGASAWA Eiji (University of Tokyo, Japan)

Chairs: NAGASAWA Eiji

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USUKI Akira (Japan Women‘s University, Japan)

Speakers:

1. TAKAIWA Nobutada (Hitotsubashi University, Japan)

Waqf in Modern History of Palestine

2. Raja Khalidi (UNCTAD, Switzerland)

The economic dimensions of prolonged occupation: Continuity and change in Israeli policy towards the

Palestinian economy

3. Ahmad H. Sa‘di (Ben-Gurion University, Israel)

The Palestinians in Israel: Socio-economic Conditions

概要:

本セッションは、これまでイスラーム地域研究プロジェクトにおいて東京大学拠点のパレスチナ研究

班が組織してきたパレスチナ問題に関する一連のワークショップ・シンポジウムの一環として開催され

た。まず、同研究班のリーダーである共同司会者の臼杵が 2007 年 12 月のワークショップ「国連パレス

チナ分割決議案<再考>60 周年を機に」(京都)、2008 年 12 月国際シンポジウム「ナクバから 60 年―パ

レスチナと東アジアの記憶と歴史」(東京・広島・京都)<いずれも京都大学拠点と共催>、2009 年 12 月

カイロ国際研究集会「ディアスポラのパレスチナ人」などの研究活動を紹介し、同じく長沢が本セッシ

ョンの趣旨を説明した。本セッションがパレスチナ問題の継続的なセミナー開催に対する中心拠点の理

解によって開催された経緯について説明するとともに、これまで日本の研究では重点が置かれてこなか

ったこの問題の経済的な側面がもつ重要性を指摘し、「パレスチナ経済」という概念の占領地経済にとど

まらない広義の意味をもつこと(イスラエル内やディアスポラ状態のパレスチナ人の経済を含む)につ

いて問題提起を行なった。第一の高岩報告では、社会経済史の視点からイスラーム社会において重要な

意味をもつワクフが委任統治期以後のパレスチナの変転する歴史の中でどのような位置づけをもってき

たかを概観し、とくに現在、イスラエル支配下にある東エルサレムの不在者所有負産問題として争点と

なっている点を分析し、イスラーム的制度がパレスチナ経済開発において果たす役割について、その可

能性を言及した。第二のハーリディ報告では、イスラエルとパレスチナの「経済的和平」の失敗を跡づ

けるために、1967 年の占領開始以降のイスラエルの占領地経済政策の一貫性と変化についての具体的な

分析が示された。とくに 1980 年代に進められた「慎重な経済統合」から、第一次インティファーダと湾

岸戦争を画期に分離政策に転換したこと、その後「統合と分離の歪んだ選択的な政策」に移行した点、

その延長線上に現在の経済和平プロセスがあるという考察を示した。第三のサアディ報告は、政治社会

学の立場から、パレスチナ人経済がイスラエル経済の周縁部に編入される過程を概観した後、社会経済

統計データを用いて、貧困(所得水準)と労働市場における差別的対忚に関してパレスチナ人の社会経

済状況を具体的に考察した。こうしたイスラエル内のパレスチナ人の限界状況の再生産の背景には、教

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育機会・インフラや資源(灌漑水など)へのアクセス・雇用機会などの差別と、パレスチナ居住地のゲ

ットー化政策があると分析し、パレスチナ問題の経済的解決のための重要な問題を提起した。

(長沢栄治)

⑤京都国際会議 Poster Session

日時:2010 年 12 月 17 日(金)~19 日(日)

場所:国立京都国際会館

Presenters;

1.KUMAKURA Wakako (Ochanomizu University)

An Analysis of Iqṭā„ Holdings during the Late Mamlūk Period in Egypt Based on the Ottoman Military

Register Daftar Jayshī

2. MASHINO Ito (Keio University)

Socioeconomic and Political Transformation of Urban Baghdad through the latter half of the 19th century

to the beginning of the British Mandate

3. Laurent A. Lambert (University of Oxford) and SATO Shohei (Waseda University)

„The Political Ecology of Abu Dhabi and the History of Qasr al-Hosn‟

4. ASADA Akira (Kyoto University)

Hadhrami Network and the Holy Lineage

5. IMAI Makoto (Keio University)

“Authoritarian Party Competition and Cooperation around the World: Whether can Islamist parties be

junior partners in coalition governments or originators of cross-ideological opposition coalitions under

authoritarian regimes, and under what conditions?”

6. KAWAKUBO Kazumi (Tsuda College)

The Egyptian Tobacco Market in the 1920s : The Local Market, Trade, and Diplomacy

7. KOKAKI Aya (Tokyo University of Foreign Studies)

Islamic Intellectuals‟ Discourses on the “Politicization of Islam” in Turkey

8. TORIYA Masato (Sophia University)

The Political Activity of Pashtuns at the First Half of the 20th Century

9. LEE Yong Bin (Hallym University of Graduate Studies)

China‟s Middle East Policy in Transition: History, Images, and Future

10. Adam Taib Acmad (Sophia University)

Ideas on Social Reform of a Philippine Liberal Ulama: Views of Abdulmajeed Ansano in His Book,

Guidance

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11. OGAWA Hisashi (National Museum of Ethnology)

Some Aspects of the Progress of Dawa:Tablighi Jama‟at and Muslim Society in Southern Thailand

12. SHIRATANI Nozomi (Sophia University)

The Impact of Islamist Political Participation in Morocco: The Strategies of the King and the Dilemmas of

the Party of Justice and development

13. Shofwan Al Banna Choiruzzad (Ritsumeikan University)

Remapping Indonesian Islam(s): Political Genealogy

14. SUNAGA Emiko (Kyoto University)

Urdu Literature after the Islamization Era

15. UNO Yoko (Tsuda College)

Demarcating the borders of “Turkey”: The Lausanne Treaty (1923) and the building of the Turkish

nation-state

16. CHIBA Yushi (Kyoto University)

The Arab Information Order in the Transitional Era

17. IMAI Shizuka (Kyoto University)

Citizenship and State Administration in Contemporary Jordan: Focusing on the Conferral of Rights on

Palestinians

18. TOCHIBORI Yuko (Kyoto University)

The Transformable Images of al-Amīr „Abd al-Qādir al-Jazā‟irī

19. HOSODA Kazue (Chuo University)

Nakbah and Palestinian Arabs in Galilee as Depicted in Anton Shammas‟ Arabesques

20. TOBINA Hiromi (Kyoto University)

“City Planning and Development” in East Jerusalem: The Case of Silwan/ City of David.

21. Md. Humayun Kabir and Momotaj Begum (Hiroshima University)

Reflections on the Islamic Reformist Ideals in Female Madrasas in Bangladesh: Muslim Womanhood and

Changing Gender Role in Religious Spheres

22. Muhammad Hakimi Bin Mohd Shafiai (Kyoto University)

The Suitability of Islamic Financial Principles in Activating Idle Land in Malaysia

23. TAKEDA Toshiyuki (Kyoto University)

Emergence of Modern Arabic and the Role of Arabic Language Academies

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概要:

京都国際会議では、2008 年度クアラルンプル国際会議や 2009 年度カイロ国際会議に引き続き、若手研

究者の発表の機会を確保するためポスターセッションが設けられた。ポスター発表は、専門領域以外の

参加者と、短時間で気軽に質疑をやり取りできるという利点がある。若手研究者にとって、多くの分野

の研究者と英語により一対一で意見を交換できる場でもある。イスラーム地域研究では、理科学系の研

究では一般的な発表形式であるポスター発表を、人文社会の分野としていち早く取り入れてきた。3 年目

となる京都国際会議では、若手研究者の間でこの発表形式が広く周知されるようになった印象をもった。

その意味で、最初の国際会議であるクアラルンプル国際会議時に指摘された課題の多くは解決されたと

いえる。

京都国際会議のポスターセッションは、初日に実施された。セッションの開始の前には、各発表者が 2

分で概要を口頭で説明するショート・トークが設けられ、その後、会場を移してポスターセッション(コ

アタイム)が実施され、発表者と閲覧者の間で議論がやりとりされた。なおポスター自体は 3 日間の会

議の間、通して会場に展示された。

今回のポスターセッションでは、日本人をはじめ、バングラデシュ人、マレーシア人、インドネシア

人、パキスタン人、韓国人などが発表に参加した。これまで行われた NIHU イスラーム地域研究国際会

議のなかで、最も多くの分野の発表者が参加することとなった。また、それぞれのポスターが対象とす

る地域も、日本、エジプト、マレーシア、パレスチナ、ヨルダン、パキスタン、中国、バングラデシュ、

インドネシア、フィリピンなど地域、アプローチともに多岐に亘った。

発表者への事務連絡等は、事務局が置かれた早稲田大学イスラーム地域研究機構が中心となったが、

ポスターの印刷は、運搬の利便性や緊急時の対忚を考慮して京都大学拠点が担当した。印刷はこれまで

同様、A0 サイズ・フルカラーでプリントアウトされ、会場となったホテルが用意した板のボードに直接

画鋲で張り付けた。ポスターが張り付けられたボードが設置され、ポスターセッションの場所となった

のは、研究発表が行われる二つの会場の間にあるスペースであった。この場所は、会議参加者が会場を

移動する際には必ずポスターの前を通るため、参加者は常時ポスターの閲覧ができるという利点があっ

た。発表者のなかには、閲覧者が自由に持ち帰ることができるレジュメやポスターの縮小版を事前に用

意してポスター脇に置くなど、それぞれ工夫をこらしてポスター発表に臨んだ。

カイロ国際会議の時も同様であったが、今回のポスターセッションも閲覧者からの評判が非常に高く、

1 時間という発表時間では足りず、発表者・閲覧者ともにコアタイムの時間の延長を求める意見が多数聞

かれた。人文社会科学分野におけるポスターによる発表形式は、今後は NIHU イスラーム地域研究によ

る国際会議だけでなく、他の公開シンポジウムや公開会議においても実施されるだろう。

(鈴木恵美)

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(3)社会への研究成果還元

①かわさき市民アカデミー「世界の宗教①イスラーム」

社会への研究成果還元を目的として、NPO 法人かわさき市民アカデミーと協力して全 12 回の連続講座

を新百合 21 ビル多目的ホールにおいて実施した。内容と担当者は以下のとおりである。

第 1 回(4/14) イスラームの誕生 佐藤次高(早稲田大学)

第 2 回(4/21) イスラームとは何か 佐藤次高(早稲田大学)

第 3 回(5/12) 世界史のなかのイスラーム 佐藤次高(早稲田大学)

第 4 回(5/19) イスラームとイスラーム文明における「知」 湯川武(人間文化研究機構/早稲田大

学)

第 5 回(5/26) イスラームにおける「知」の伝達と体系化 湯川武(人間文化研究機構/早稲田大学)

第 6 回(6/2) 近・現代における「知」の変容 湯川武(人間文化研究機構/早稲田大学)

第 7 回(6/16) イスラームとキリスト教 前近代の地中海世界 佐藤健太郎(人間文化研究機構/早

稲田大学)

第 8 回(6/23) イスラームの暦と祭 信仰の時間、生活の時間 佐藤健太郎(人間文化研究機構/早

稲田大学)

第 9 回(6/30) ムスリムの言語と文化 アラビア語とその他の言語 佐藤健太郎(人間文化研究機構

/早稲田大学)

第 10 回(7/14) イスラームの祈りの空間 モスクと墓建築 深見奈緒子(早稲田大学)

第 11 回(7/21) イスラームの宮廷生活 トプ・カプ宮殿 深見奈緒子(早稲田大学)

第 12 回(7/28) 伝統的都市の住まい方 ミニアチュールとの比較 深見奈緒子(早稲田大学)

いずれも 200 人近い受講生を集め、きわめて好評であった。

(佐藤健太郎)

②パネル・ディスカッション「地域の激動と地域研究」

日時:2011 年 3 月 2 日

場所:東京大学本郷キャンパス法文 2 号館 2 階 1 番大教室

概要:

2011 年 1 月のチュニジアの「ジャスミン革命」以来、エジプト・イエメン・ヨルダン・アルジェリア・

バハレーンなどで抑圧的な政府に対する民衆の抗議の反政府デモが頻発した。チュニジアとエジプトで

はそのような民衆の運動がついには長期にわたる独裁的な政権を倒してしまうところまで行った。これ

ら一連の現象は、一面では、各国に固有の事情や歴史的社会的背景があるのは当然ではあるが、他方で

は「中東の民为化」という形で地域の問題として捉えられるべき共通性、一般性も有している。

このような観点に立ち、中心拠点である早稲田大学拠点総括班は、東京大学拠点が为催する『中東の

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民为化』を考える公開セミナー」に引き続き、第 2 部の「地域の激動と地域研究」という公開のパネル・

ディスカッションを行った。

このパネル・ディスカッションにおいては、見方によっては地殻変動とでも呼ぶべき大きな社会変動

に直面して、我々「地域研究」の研究者としてはどう事態を捉え、どのように反忚すべきかを論じるこ

とを目指した。

最初に、私たち研究者は、なぜこの大きな変化を予見することができなかったのだろうかという問題

提起がなされた。議論はそこからさらに専門家集団として、また個々の研究者として、この事態にどう

対忚すべきか、政策決定とどう関わるべきか、メディアにどう対忚すべきか、現地の人々との関係はど

うすべきかなど、多岐にわたる問題に議論は広がっていった。

結論から言うと、地域研究のあり方について、どんなに議論を続けても、これが正解というものがない

ことを語り合う機会を得たことは、「イスラーム地域研究」のメンバーたちにとって貴重な機会であった

だけでなく、ある意味ではマスコミ的な見方ではない世界の見方もあるのだということを多くの聴衆に

知ってもらえるよい機会でもあった。

(湯川武)

(4)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔図書〕計( 1 )件

著 者 名 出 版 社

佐藤 次高

(早稲田大学拠点代表)

山川出版社

書 名 発 行 年 ページ

『イスラームの歴史 - 1』「宗教の世界史」11

2010 296

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研究グループ 1:「イスラームの知と権威:動態的研究」

【組織】

(研究グループ 1 メンバー)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

湯川 武

人間文化研究機構地域研究推進センター上級研

究員、早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院

教授

研究グループ 1 代表

(ムスリム知識人問題)

栗田 禎子 千葉大学文学部教授 研究グループ 1 研究分担者

(アラブ近現代史)

佐藤健太郎

人間文化研究機構地域研究推進センター研究員、

早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院准教

研究グループ 1 研究分担者

(マグリブ・アンダルス地域)

清水 和裕 九州大学大学院人文科学研究院准教授 研究グループ 1 研究分担者

(アッバース朝史)

中町 信孝 甲单大学文学部准教授 研究グループ 1 研究分担者

(マムルーク朝史)

S.Humphreys Professor, University of California Santa Barbara 研究グループ 1 研究分担者

(イスラーム史)

(研究グループ 1 研究協力者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

青山 弘之 東京外国語大学外国語学部地域・国際講座准教授 現代シリア・レバノン政治、アラ

ブ民族为義思想

赤坂 恒明 早稲田大学非常勤講師 モンゴル帝国史

阿久津正幸 東洋大学国際地域学部非常勤講師

(早稲田大学拠点グループ 2 研究協力者)

イスラームの歴史における教育

と社会

飯山 陽 東京女子大学非常勤講師 イスラーム思想史

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五十嵐大介 イスラーム地域研究東京大学拠点特任研究員

(早稲田大学拠点グループ 2 研究協力者) 中世アラブ史

大川 玲子 明治学院大学准教授 イスラーム学、クルアーン(コ

ーラン)研究

岡 真理 京都大学大学院人間・環境学研究科教授 現代アラブ文学

勝沼 聡 一橋大学 COE 研究補助員 近代エジプト社会史

菊地 達也 神田外語大学外国語学部国際言語文化学科准教授 シーア派思想史

木村 伸子 早稲田大学大学院文学研究科博士課程 マムルーク朝研究

黒田 祐我 早稲田大学大学院文学研究科助手 スペイン中世史、特に中世盛期

(11 世紀~13 世紀)

高野 太輔 大東文化大学国際関係学部准教授 初期イスラーム史

後藤 絵美 日本学術振興会特別研究員 地域研究、イスラーム文化研究

小林 春夫 東京学芸大学教授 イスラーム思想史

近藤 真美 龍谷大学文学部准教授 中世シリア史

酒井 啓子 東京外国語大学大学院地域文化研究科教授 イラク近現代政治

塩尻 和子 筑波大学理事・副学長 イスラーム神学思想、宗教学、

比較宗教学、中東地域事情

杉山 雅樹 京都大学大学院文学研究科博士課程 イラン史 14~16 世紀

鈴木 恵美 早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院准教授

(東京大学拠点グループ2研究協力者) 現代エジプト政治

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谷口 淳一 京都女子大学文学部准教授 中世シリア史

千代崎未央 千葉大学大学院文学研究科博士課程 中東近現代史

塚田絵里奈 慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程 中世アラブ社会史

辻 明日香 東京大学東洋文化研究所助教 イスラーム史、イスラーム期以

降のコプト史

中村 妙子 お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科

研究院研究員 中世シリア史

西村 淳一 九州大学非常勤講師 モンゴル侵入前のイスラーム世

界の歴史地理

橋爪 烈 日本学術振興会特別研究員 アッバース朝研究

原山 隆広 負団法人東洋文庫研究部 研究員 アッバース朝研究

平野 淳一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科

博士課程

(京都大学拠点ユニット 1 研究協力者)

近代イスラーム政治思想、中東

地域研究

細田 和江 中央大学政策文化総合研究所準研究員 中東地域研究(イスラエル文学)

堀井 聡江 桜美林大学リベラルアーツ学群専任講師

(東洋文庫拠点研究協力者) イスラーム法、エジプト民法

前田 弘毅 首都大学東京人文科学研究科准教授 コーカサス地域研究、イラン・

グルジア史

松永 泰行 東京外国語大学大学院准教授 イランの政治と宗教

茂木 明石

上智大学アジア文化研究所リサーチ・アシスタン

(上智大学拠点グループ 3、京都大学拠点ユニット

4 研究協力者)

歴史学、中世エジプトの聖者信

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森山 央朗

日本国際問題研究所研究員

(上智大学拠点グループ 3 研究協力者、京都大学

拠点ユニット 4 研究協力者)

歴史(10~12 世紀マシュリク地

域におけるハディース学者の社

会的・文化的活動)

山尾 大 九州大学大学院比較社会文化研究院講師

(京都大学拠点ユニット 2 研究協力者) 現代イラク政治、中東地域研究

山本 芳久 東京大学大学院総合文化研究科准教授 哲学

横内 吾郎 京都大学文学部非常勤講師 ウマイヤ朝史

吉村 武典 早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程 中世アラブ史、中世エジプト・

ナイル治水行政

渡部 良子 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所

非常勤研究員

前近代イラン・イスラーム史、

ペルシア語書記術

【2010 年度の研究・教育活動】

1. 今年度の研究・教育活動の概要

「イスラーム地域研究」の第 1 期の最終年度である本年度は、12 月の京都国際会議に向けた集約と総

括を活動の中心として研究活動を行った。

それに加え 2009 年 12 月のカイロ国際会議におけるパネル “ Re-Discovering the Richness of al-Turath”

(知の「伝統」の再発見をめざして)を継承する形で、グループ 1 研究分担者の栗田禎子をオーガナイ

ザーとして、スペイン、バルセロナで開催された第 3 回中東研究世界大会(WOCMES)に派遣し、イス

ラーム世界と「他者」との知的交流と「オリエンタリズム」の克服と新たな中東研究の展望を探ること

をめざすことをテーマにセッション “Beyond Orientalism: Wilfrid Scawen Blunt (1840-1922) and his

Networks”(オリエンタリズムを越えて)を 7 月 21 日に開催した。

また、1 月 29 日にグループ 1a「イスラームにおける知の理念と実践」研究会を開催し、中央アジアに

おける前近代と近代におけるマドラサにおける教育カリキュラムについて報告が行われた。以上につい

ては、各研究会の報告を参照されたい。

また、グループ 1 では上記の研究活動以外に 3 つの原典講読会を为催しているが、内 2 つは 10 回前後

の読書会を開催し、翻訳・出版に向けた準備を着実に前進させた。年度末に計画されていたフサイン・

ムルーワ読書会については震災の影響を考慮し中止を決定した。

(湯川武)

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2. 研究活動の記録

(1)研究会活動

①早稲田拠点グループ 1「イスラームの知と権威:動態的研究」九州史学会共催シンポジウム「蔵書目録:

知の表象の世界」

日時:2010 年 12 月 11 日(土)

場所:九州大学箱崎キャンパス文系地区講義棟 101 教室

概要:

九州史学会と共催で行われた本シンポジウムは、蔵書目録という史料類型を手がかりに、日本史、東

洋史、西洋史、イスラーム史を横断的に取り扱いつつ、「知と権威」「知の理念と実践」のテーマを深化

させたものである。これまで、3 年にわたって行ってきたイスラーム地域の知と知識人に関する研究成果

を、世界史的、歴史学方法論的な視野から取り扱い、その新たなる展開を図ったシンポジウムであった。

そもそも書物というものは、卖体ではなく集積と蓄積によって、複合体となることによって、さらに

より大きく総合的な「知」を体現するようになる。図書館・蔵書といった書物コンプレックスは、それ

が形成された環境と形成した個人や集団の「知」の表象そのものであると言って良い。本シンポジウム

は、そのような「知の総体」としての蔵書の諸特性を明らかにする手がかりとして、蔵書目録や書籍目

録・書籍リストなどを、人文学的な史料類型として取り扱ったのであり、これらの目録類から、その記

載する情報に即して、各蔵書の基本諸元や分類、内容などが明らかとなった。さらに近代的な蔵書につ

いては蔵書の形成過程、蔵書の管理体制、貸し出しや利用のあり方なども知ることが可能である。こう

いった「蔵書目録」という史料を通して、各地域を対象とする「知」の研究が、それぞれのフィールド

や学問領域から、いかなる知的世界を構築可能であるか。その方法論と実態研究を比較し、この史料類

型の可能性を探ったのである。

岩崎義則(九州大学)は、日本近世史の立場から、肥前平戸松浦家藩为松浦静山が平戸に創設した楽

歳堂文庫およびその文庫目録について報告した。日本近世の「蔵書」と「蔵書目録」から、どのような

事実を明らかにすることが可能であるか、という興味深い事例を提供するとともに、近世文人大名にお

ける知の蓄積と交流に関する問題を提起した。

大渕貴之(九州大学)は、中国学研究の立場から、中国における官撯蔵書の伝統の意味とそれらにみ

られる分類の変遷を概観し、その上で唐代の蔵書目録に、時代的なタイムラグが存在する事実を指摘し、

そこから「蔵書目録」という史料の性格を検討した。中国の知的分野における「官」の存在と、そこか

ら展開する研究のあり方は、イスラーム社会に比して、大いに注目される。

岡崎敤(九州大学)は、西欧中世史の立場から、西欧前近代の蔵書の特徴、およびそのような蔵書に

関する研究史の動向を報告した。教会と大学を中心として形成されたヨーロッパの蔵書は、特に宗教的

世界との関わりにおいて、イスラーム社会のマドラサの蔵書のあり方などとは、また大きく異なった展

開を示したようである。

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伊藤隆郎(神戸大学)は、中世イスラーム史の立場から、イスラーム世界の蔵書目録・書籍目録の類

型を明らかにし、また先行研究の動向を示すことにより、他地域との比較研究の可能性を明らかにした。

質疑においては、本プロジェクトのイスラーム研究者を中心とした参加者から、蔵書の分類と各社会

における知のあり方の関連などについて議論がなされた。

(清水和裕)

②早稲田拠点グループ 1「イスラームの知と権威:動態的研究」グループ 1a「イスラームにおける知の理

念と実践」研究会

日時:2011 年 1 月 29 日(土) 13:00~17:30

場所:早稲田大学 120-1 号館 2 階 201 会議室

概要:

「イスラームにおける知の理念と実践」2010 年度研究会は、これまでの議論の展開を受けて、イスラ

ーム社会における教育機関としてのマドラサにみられる教育プログラムそのものを取り扱うこととした。

報告者としては、この問題ついて精力的に研究を行ってきた磯谷健一(追手門大学)、磯谷真澄(神戸大

学)両氏を迎えて、中世以降の中央アジアにおけるマドラサ教育について、通時的に検討していただく

とともに、近代オスマン帝国におけるマドラサ教育プログラムに関して造詣の深い秋葉淳(千葉大学)

に、同じテュルク語世界の視点から、共通性と差違についてのコメントをお願いした。

まず磯谷健一氏による「前近代中央アジアのマドラサにおける教育カリキュラム」は、16 世紀末ブハ

ラのキョケルタシュ・マドラサのワクフ文書に収録されているワクフ物件としての寄贈図書目録と、19

世紀後半に作成された「学生の心得」のふたつを比較検討した。その結果、前近代中央アジアのカリキ

ュラムが直線的な構造をもち、ほぼ一定の段階を経て、アラビア語文法から法学に至る順番を持って習

得されていたことを明らかにした。また、为要な「教科書」については時代を経ても変化がないのに対

して、副読本としての「注釈書」には時代によって変化がみられることを指摘した。

次に磯谷真澄氏による「19 世紀後半ロシア帝国ヴォルガ・ウラルのマドラサ教育」は、いわゆる西欧

化の影響を受けたジャディード方式が普及する以前のマドラサ教育の重要性に目を向け、その意義をは

かったものである。そこで同時期のウラマーであるリザーエッディーン・ブン・ファフレッディーンが

書き残した、自らの受けた教育カリキュラムを再現すると、その教育内容は磯谷健一氏の提示したトゥ

ルキスタンのものと非常によく一致していた。これは、「教科書」「注釈書」のみならず、教育課程とそ

の展開自体にみられることであった。

以上の報告を受けて、秋葉淳氏は、オスマン帝国の事例から、マドラサ教育が 14 世紀までのテキスト

を古典として引き継ぐ保守性をもちつつ、注釈を時代によって変化させることで教育の革新性を留保し

ていた可能性を指摘し、また硬直した制度の外側で、独学や読書サークルなどによる柔軟な知の習得形

成が行われていたことを示した。またオスマン帝国のカリキュラムは、7 から 8 割のテキストが共通する

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など、中央アジアのものと際だった同質性を持っており、両者に何らかの知的交流が存在したことを指

摘した。

またその他のコメントとして、カリキュラムを最後まで終えない人々が非常に多かったのではないか

という指摘がなされた。実際の社会においては、これらのマドラサのカリキュラムを最後まで習得せず

とも、多くの人々が必要十分な実践的能力を身につけ社会で活動することができたものと思われる。

以上のような議論から、本研究会の为要な課題である「イスラームにおける知の理念と実践」につい

て、教育面における検討がなされた。

(清水和裕)

(2)国際会議

①第 3 回中東研究世界大会(WOCMES)パネル Beyond Orientalism : Wilfrid Scawen Blunt ( 1840-1922 ) and

His Networks

日時:2010 年 7 月 21 日(水) 14:30~16:30

場所:Universitat Autonoma de Barcelona

Organizer : KURITA Yoshiko ( Chiba University, Japan )

Chair : KURITA Yoshiko

Speakers :

1. Riad Nourallah ( University of Westminster, UK) (代読)

Presenting Islam to the West : The Case of Wilfrid Scawen Blunt

2. Roger Owen ( Harvard University, US )

Wilfrid Scawen Blunt and Evelyn Baring (Lord Cromer) : Same Class, Same Intellectual Formation

but Growing Differences over Empire

3. KURITA Yoshiko ( Chiba University, Japan)

Wilfrid Scawen Blunt, His Middle Eastern Friends, and the Discovery of ―Imperialism‖

4. Mansour Bonakdarian ( University of Toronto, Canada)

Wilfrid Scawen Blunt and Global Networks of Anti-Colonial Resistance

概要:

第 3 回中東研究世界大会(WOCMES)の Pre-Organized Panel として、グループ 1c 班研究分担者の栗

田禎子が ―Beyond Orientalism‖と題するパネルを組織した。これは、19 世紀末~20 世紀前半のイギリス

の知識人 W. S. Blunt の活動を素材に、イスラーム世界と「他者」との知的交流、「オリエンタリズム」

の克服と新たな中東研究の展望を探ることをめざしたもので、2009 年 12 月のカイロ国際会議における

パネル ―Re-Discovering the Richness of al-Turath‖ (知の「伝統」の再発見をめざして)の延長線上に位

置づけられるものである。このパネルには、カイロ国際会議にも参加した Riad Nourallah 氏(レバノン

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出身)に加え、新たにグループ 1 の研究協力者となった Mansour Bonakdarian 氏(イラン出身)、さら

に英米における中東近代史研究を牽引してきた Roger Owen 氏(英国)の参加も得られ、国際色豊かな

陣容となった。

第一報告者の Riad Nourallah 氏のペーパーは、アフガーニーやムハンマド・アブドゥフのようなイス

ラーム改革思想家と親交があり、「非オリエンタリズム」的なイスラーム像をヨーロッパに紹介しよう

とした W. S. Blunt の活動を、「民間外交」の先駆けとして位置づけ、高く評価するものであった。第二

報告者の Roger Owen 氏は、出身階層の面でイギリス帝国のエスタブリッシュメントに属した Blunt がな

ぜ「帝国」批判の思想を持つに至ったかを、植民地官僚クローマー卿の経歴と比較・対照することで検

討した。第三報告者の栗田は、Blunt と中東の知識人との交流の過程で育まれた侵略戦争反対・植民地

批判の思想が、ヨーロッパにおける「帝国为義」概念の形成にも影響を与えた可能性を検証した。第四

報告者の Mansour Bonakdarian 氏は、Blunt がエジプト・イラン・トルコ、さらにはインド、アイルラ

ンド等の反帝国为義運動のネットワーク形成に大きな役割を果たしたことを指摘した。

総じて、中東・イスラーム研究の中に残る植民地为義的傾向を払拭し、新たな民为的中東研究の展望

を探るべきだという問題意識が世界の諸地域の研究者によって広く共有されていることが明らかにな

った点で、意義のあるパネルであった。また、その中で日本の中東研究が大きな役割を果たし得ること

も確認することができた。

(栗田禎子)

(3)原典講読会

①イブン・ハルドゥーン自伝読書会

日時:2010 年 4 月 3 日(土)、5 月 1 日(土)、6 月 5 日(土)、7 月 10 日(土)、9 月 11 日(土)、10 月 2 日(土)、

11 月 6 日(土)、12 月 4 日(土)、2011 年 1 月 8 日(土)、2 月 5 日(土)、3 月 5 日(土)、

13:00~18:00

場所:早稲田大学 120-4 号館 4-309-2 会議室

担当者:茂木明石、中村妙子、柳谷あゆみ、阿久津正幸、中町信孝、橋爪烈

概要:

4 年目を迎えたイブン・ハルドゥーン自伝読書会では、これまでと同様、毎月 1 回ずつ定例読書会を実

施し、担当者が作成した訳稿の検討を進めた。今年度に扱った箇所は、ビスクラの支配者の庇護の下で

暮らしながら、周辺のアラブ遊牧民とともにザイヤーン朝やマリーン朝の中央マグリブ経営に協力した

時期にあたる。また、親交のあったグラナダの文人宰相イブン・ハティーブのマグリブ亡命の逸話もあ

り、その関連でイブン・ハティーブからグラナダの君为ムハンマド 5 世に宛てられた書簡の引用なども

含まれる。前年度同様、イブン・ハティーブと交わした交換書簡の訳出作業は難航したが、読書会参加

者は彼らの修辞の技法にも徐々に慣れてきている。今後、イブン・ハティーブの獄死に関連して彼にま

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つわる様々な美文調の文章が現れるが、それに対忚する用意はできているといえるだろう。

また、定例読書会の他に、別に述べるように 2 回の合宿読書会によりすでに訳出した訳稿の再検討を

おこなった。さらに橋爪烈・原山隆広・吉村武典の 3 人の訳稿に、訳者 3 人と佐藤健太郎による詳細な

註を付したものを『イスラーム地域研究ジャーナル』第 3 号に掲載した。

2007 年 10 月よりはじまったこの読書会では、2010 年度末時点で 155 頁程度の訳出を完了した。第 1

期 5 年間のうちに全テキストを訳出することはかなわなかったが、イブン・ハルドゥーンというイスラ

ーム史上きわめて重要な知識人の前半生や彼の自己認識はかなりの程度明らかとなった。今後もまた別

の形でもって読書会を継続し、最終的には自伝全体の出版を目指したい。

(佐藤健太郎)

②イブン・ファドル・アッラー・ウマリー原典講読会

日時:2010 年 4 月 24 日(土)、5 月 29 日(土)、6 月 26 日(土)、7 月 17 日(土)、10 月 9 日(土)、11 月

20 日(土)、12 月 25 日(土)、2010 年 2 月 11 日(金)、3 月 8 日(火)、 13:00~18:00

場所:京都女子大学 J 校舎 3 階谷口研究室(J303-1)/龍谷大学大宮学舎单黌 101 教室

担当者:谷口淳一、近藤真美、伊藤隆郎、二宮文子、篠田知暁、田中悠子、法貴遊、清水和裕

テキスト範囲:124 頁 2 行目~138 頁 6 行目

概要:

2007 年度より、ほぼ月に 1 回のペースで行われているイブン・ファドル・アッラー・ウマリー原典講

読会は、本年度は 9 回の例会を実行し、例年通り着実にその翻訳・分析を進めている。また本年度も昨

年度に引き続き、その成果として本書の第 1 部後半の訳注を、谷口淳一編「アフマド・イブン・ファド

ル・アッラー・ウマリー著『高貴なる用語の解説』訳注(2)」『史窓』第 68 号 pp. 51-94 として公刊した。

これまでの報告書にもあるように、本講読会は、14 世紀のマムルーク朝官僚イブン・ファドル・アッ

ラー・ウマリー(1349 年没)が晩年に著した官僚の手引き書 al-Ta„rif bi al-Mustalah al-sharif(『高貴なる

用語の解説』)を対象とした、中世アラビア語史料講読会である。(底本は Samir al-Droubi 校訂、モータ

大学(ヨルダン、カラク)から 1413/1992 年に出版)。昨年度までに、为にマムルーク朝から諸外国勢力

に対して発行される文書形式をあつかった第 1 部の検討を終了。昨年度から本年度にかけて、当該箇所

の訳注公刊を京都女子大学文学部紀要『史窓』において進めている。

昨年度後半からは、第 2 部としてマムルーク朝内部の任命文書・授与文書形式を扱う部分の検討にう

つり、本年度においては、各種任命文書における職務命令の形式の記述の検討を続けた。当該箇所とし

ては、「ワズィールへの職務命令」「城塞のナーイブへの職務命令」「ウスターズダールへの職務命令」「マ

ムルーク筆頭への職務命令」「厩舎長への職務命令」「戦争のワーリー(警察長官)への職務命令」「ムジ

ャーヒドたちのアタベクへの職務命令」などが扱われたが、これらはいずれもマムルーク朝における様々

な役職の具体的な職務のあり方や、その職務に関する理念を明らかにするきわめて重要な記述である。

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これらを通して、通常の史料からはうかがい知ることのできない、些尐な役職のあり方と、それらをめ

ぐるマムルーク朝政府と知識人の認識のあり方を知ることができるのである。

特に、「ムジャーヒドたちのアタベクへの職務命令」に関する記述は、マムルーク朝が、過去において

敵対的であったイスマーイール派のいわゆる「暗殺者集団」を、最終的な攻撃手段として内部に取り込

み、公的な職務として維持に努めていたことを明らかにしている。この事実は、イスマーイール派集団

がマムルーク朝指導部と明らかに異なる宗教理念を抱く人々であることを念頭におけば、当時の「知」

の理念と現実の「統治」との間の齟齬や、その調整に関する非常に興味深い問題を投げかけてくるので

ある。

このように、本書の記述は、中世シリア・エジプト社会における政治的「権威」が、宗教的・社会的

「知」を用いることによって、その権威を社会の隅々に浸透させていこうとする意志のあり方をはっき

りと示すと同時に、これらの「知」と現実的な社会の要請の間の矛盾の実態をも明らかにするのである。

本研究会の参加者は、当初から大きく変わらず、関西を中心とした若手のアラブ研究者、ペルシア研

究者よりなり、この時代に関する高度な専門知識を有している。2011 年度においても、この活動を継続

するとともに、本年度にさらに引き続き、第 1 部後半最終部の公刊を進めることになる。この公刊の準

備作業はすでに一部進行中であり、確実な成果を見込むことができよう。

(清水和裕)

③フサイン・ムルーワ『アラブ・イスラーム哲学における唯物論的諸潮流』第 12 回読書会

日時:2010 年 8 月 4 日(水) 14:00~17:30

会場:早稲田大学 120-4 号館 3 階 4-309-2 会議室

参加者:長沢栄治、阿久津正幸、平野淳一、小林春夫、清水学、勝沼聡、ホサム・ダルウィーシュ、

栗田禎子(計 8 名)

概要:

テキスト(1)166~171 頁(「序論」のまとめの部分)に関する阿久津正幸氏による報告、(2)177

~184 頁(第 1 章「ジャーヒリーヤについて」)に関する平野淳一氏による報告があったのち、全員でテ

キスト内容の検討・議論を行なった。中東のマルクス为義者である著者によって「アラブ・イスラーム

文明」というものがどのように定義されていたかが確認された。また、「ジャーヒリーヤ」(=イスラ

ーム以前の時代)という概念の多義性をめぐる議論が交わされた。

なお、第 13 回読書会を 2011 年 3 月 15 日に開催すべく準備を進めていたが、震災の影響により中止し

た。

(栗田禎子)

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④イブン・ハルドゥーン自伝読書会合宿

日時:2010 年 7 月 31 日(土)~8 月 2 日(月)、2010 年 12 月 26 日(日)~12 月 28 日(火)

場所:早稲田大学軽井沢セミナーハウス、早稲田大学伊豆川奈セミナーハウス

担当者:高野太輔、五十嵐大介、阿久津正幸、中町信孝

概要:

夏の第一回合宿では、例年同様、一旦作成した訳稿を再検討し日本語としてより読みやすいものとす

ることを目的として実施した。高野太輔および五十嵐大介の訳稿がその対象となった。これにより暫定

的な翻訳として、次年度以降の『イスラーム地域研究ジャーナル』に掲載する準備が整った。

一方、冬の第二回合宿では、訳出作業の進行の都合上、再検討ではなく新たな訳稿の検討をおこなっ

た。

いずれの合宿も集中的に訳稿の検討をおこなうことで、訳出作業の効率的な進行に非常に財献するこ

とができた。

(佐藤健太郎)

(4)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔論文〕計( 5 )件

著 者 名 論 文 標 題

谷口 淳一(共訳・編)

(研究グループ 1 研究協力者)

アフマド・イブン・ファドル・アッラー・ウマリー著『高貴なる

用語の解説』訳注(2)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『史窓』 68 2011 51-94(377-420)

著 者 名 論 文 標 題

橋爪 烈

(研究グループ 1 研究協力者)

ブワイフ朝初期の「ダイラム」

―イラーク政権とジバール政権の比較から

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラム世界』 75 2010. 8 77-110

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著 者 名 論 文 標 題

HIRANO Junichi

(研究グループ 1 研究協力者)

Tajdid al-Fikr al-Islami fi al-‗Alam al-Islami al-Hadith: Dirasa ‗an

Jamal al-Din al-Afghani wa Afkaruhu ‗an al-Imbiriyaliya wa

al-Istishraq wa al-Tafahum bayna al-Adyan (Arabic)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1 2011. 3 採録決定済

著 者 名 論 文 標 題

平野 淳一

(研究グループ 1 研究協力者)

近代中東・イスラーム世界におけるプリント・メディアの歴史

と構造

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『情報処理学会研究報告 2011- IFAT102DD80』 2011. 3 採録決定済

著 者 名 論 文 標 題

吉村 武典

(研究グループ1研究協力者)

バフリー・マムルーク朝後期の治水事業

―ジスル・マンジャク建設の経緯を中心に―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『史滴』 32 2010.12 1-16

〔学会発表〕計( 5 )件

発 表 者 名 発 表 標 題

西村 淳一

(研究グループ 1 研究協力者)

12 世紀ホラーサーンにおけるウラマーの「よそ者」観

― サムアーニーの記述を手掛かりに ―

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

平成 22 年度九州史学会大会

イスラム文明学部会

2010 年 12 月 12 日 九州大学

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発 表 者 名 発 表 標 題

橋爪 烈

(研究グループ 1 研究協力者)

王冠の書にみるアドゥド・アッダウラの王統観

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 52 回オリエント学会 2010 年 11 月 7 日 国士舘大学

発 表 者 名 発 表 標 題

前田 弘毅

(研究グループ 1 研究協力者)

グルジア武人とサファヴィー朝権力

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

九州史学会大会イスラム文明学部会 2010 年 12 月 12 日 九州大学

発 表 者 名 発 表 標 題

MORIYAMA Teruaki

(研究グループ 1 研究協力者)

The Traditionalists from the East: The Intellectual Activities of

Khurasanian Hadith Scholars and the Spread of Their Scholastic

Mantle into Iraq and Syria between the 10th and 13th Centuries

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 3rd World Congress for Middle Eastern

Studies (WOCMES3)

2010 年 7 月 20 日 Universitat Autònoma de Barcelona,

Barcelona, Spain

発 表 者 名 発 表 標 題

YOSHIMURA Takenori

(研究グループ 1 研究協力者)

An Analysis of Local Administrative Systems during 14th Century

Mamluk Egypt: Establishment and Development of wālī, kāshif

and nā‟ib

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 3rd World Congress for Middle Eastern

Studies (WOCMES3)

2010 年 7 月 22 日 Universitat Autònoma de Barcelona,

Barcelona, Spain

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研究グループ 2:「アジア・ムスリムのネットワーク」

【組織】

(研究グループ 2 メンバー)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

桜井 啓子 現代イスラーム地域研究センター研究員、早稲田

大学国際教術院教授

研究グループ 2 代表

(比較社会学、地域研究)

黒岩 高 武蔵大学人文学部准教授 研究グループ 2 研究分担者

(中国ムスリム社会史)

店田 廣文 現代イスラーム地域研究センター研究員、早稲田

大学人間科学学術院教授

研究グループ 2 研究分担者

(社会学・アジア社会論)

子島 進 東洋大学国際地域学部准教授 研究グループ 2 研究分担者

(文化人類学、单アジア地域研究)

Omar Farouk 広島市立大学国際学研究科教授 研究グループ 2 研究分担者

(比較政治)

砂井 紫里 現代イスラーム地域研究センター研究員、早稲田

大学アジア研究機構研究助手

研究グループ 2 研究分担者

(文化人類学、食文化研究)

(研究グループ 2 研究協力者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

青木 隆 日本大学文理学部准教授 中国哲学

青木 武信 日本大学生物資源科学部非常勤講師 文化人類学

阿久津正幸 東洋大学国際地域学部非常勤講師

(早稲田大学拠点研究グループ 1 研究協力者)

イスラームの歴史における教育と

社会

五十嵐大介 イスラーム地域研究東京大学拠点特任研究員

(早稲田大学拠点グループ 1 研究協力者) 中世アラブ史

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石川 基樹 早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程 高齢社会論・社会調査論

大足 恭平 早稲田大学イスラーム地域研究所研究員/早稲

田大学大学院文学研究科博士課程 イラン近現代史

大澤 広嗣 文化庁文化部総務課専門職 宗教学、日本近現代宗教史

岡井 宏文 早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程 日本のイスラーム

金光 淳 京都産業大学経営学部准教授 社会ネットワーク分析

北爪 秀紀 早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了 日本のモスク研究

木村 友香 桜美林大学大学院国際学研究科博士後期課程

(上智大学拠点グループ 1 研究協力者) 社会開発

日下部達哉 広島大学教育開発国際協力研究センター准教授 比較教育学

小島 宏 早稲田大学社会科学総合学術院教授 人口政策論

小林 寧子

单山大学外国語学部教授

(上智大学拠点グループ 1・グループ 3、京都大

学拠点ユニット 4 研究協力者)

インドネシア近現代史

佐藤 規子 ラホール経済大学客員研究員 シーア派女性マドラサ研究(地域

研究、单アジアのシーア派研究)

佐藤 実 大妻女子大学比較文化学部助教 中国イスラーム思想

清水 直美 テヘラン大学外国語学部日本語学科非常勤講師 イスラーム倫理学

新保 敤子 早稲田大学教育・総合科学学術院教授 中国教育史、中国ムスリム研究

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杉山 隆一 慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程 サファヴィー朝史

鈴木 康郎 大阪成蹊短期大学児童教育学科講師 比較教育学

田島 大輔 立命館大学文学研究科人文学専攻博士後期課程 中国ムスリム近代史

中西 竜也

日本学術振興会特別研究員 PD(京都大学アジ

ア・アフリカ地域研究研究科)

(上智大学拠点グループ 3、京都大学拠点ユニッ

ト 4 研究協力者)

中国のイスラーム

中村 光男 千葉大学名誉教授 インドネシアにおけるムスリム市

民社会組織

細谷 幸子 東邦大学医学部看護学科助教 イラン地域研究、文化人類学、看

護学

松本ますみ 敬和学園大学人文学部教授 中国近現代史、近代中国イスラー

ム史、中国の国民統合論

矢島 洋一

京都外国語大学非常勤講師

(上智大学拠点グループ 3、京都大学拠点ユニッ

ト 4 研究協力者)

スーフィズム史

吉澤誠一郎 東京大学人文社会系研究科准教授 中国近代史

Fariba

Adelkhah

Seignior Researcher at Centre for Internationals

Researches and Studies (France) Anthropology

Kabir MD

Humayun 早稲田大学イスラーム地域研究機構客員研究員 Cultural Anthropology

Sarkar Arani

Mohammad

Reza

名古屉石田学園法人本部中等教育研究部 Comparative and International

Education

Shirine Jurdi 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究

所研究生

レバノン史、ジェンダー論、平和

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【2010 年度の研究・教育活動】

1. 今年度の研究・教育活動の概要

本年度グループ 2 の目標は、過去に実施した現地調査、研究会、ワークショップ、国際会議などを通

じて得た知見を総括し、その成果を世に送り出すことである。マドラサ研究班では、序章、論文(5 本)、

エピローグから成る英文論文集出版のために、4 月に原稿をルートリッジ社に入稿した。10 か月にわた

るルートリッジ社とのやり取りや校正を経て 2011 年 3 月に The Moral Economy of the Madrasa: Islam and

education today を上梓した。イスラーム的 NGO に関する調査研究班は、京都国際会議 において、

Faith-Based NGOs in the Muslim World と題するセッションを開催し、海外からスピーカーも交えて、これ

までの研究成果を発表した。また研究会を 2 度開催し、研究成果の出版に向けて研究活動を前進させた。

中国におけるムスリム知識人研究班は、「原典シリーズ」にむけての中間報告の場となる『中国伊斯蘭

思想研究』第 3 号を発行し、最終的な翻訳出版にむけた訳注作業を前進させた。

滞日ムスリム調査研究班は、次年度、富山県射水において実施予定のムスリム・コミュニティを中心

とする「外国人に関する意識調査」のための予備調査を実施したほか、本年度で 3 度目となるモスク代

表者会議を開催し、日本におけるムスリム・コミュニティに関する現状認識を深化させた。

(桜井啓子)

2. 研究活動の記録

(1)研究会活動

① 第 3 回モスク代表者会議

日時:2011 年 3 月 6 日(日)

場所:早稲田大学国際会議場(18 号館)第 1 会議室

概要:

2009 年 2 月 11 日および 2010 年 3 月 7 日の第 1 回および第 2 回モスク代表者会議に引き続き、「日韓ム

スリム・コミュニティの現状と展望」というテーマで開催した。今年は、前々回の「日本におけるムス

リム・コミュニティ」、前回の「日本におけるムスリム・ネットワークと日本人ムスリム」とは異なり、

日本人イマームと韓国人ムスリムのイマームという日韓の代表者の方、お二人に基調講演をしていただ

き、その後、基調講演のお二人とパネリストを加えて、パネル・ディスカッションを行うという形式で

企画をおこなった。

両国のムスリム・コミュニティが抱える問題点や将来展望について講演をお願いして、まず韓国人イ

マームから韓国のムスリム・コミュニティの現状と展望が紹介され、日本社会に匹敵する規模のムスリ

ム・コミュニティが活動している状況が伝えられた。日本人イマームからは、为に、日本語を話すムス

リムに焦点を絞って、次世代教育のあり方や、日本のムスリム・コミュニティにおける世代交代の問題

などが提議された。その後のパネル・ディスカッションでは、北海道から福岡までのモスク代表者を交

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えて、韓国との比較や各地の日本人ムスリムの活動状況や次世代教育の問題、ボーンムスリムと日本人

ムスリムの連携した活動のあり方など、多方面に関する議論が行われた。

プログラムは、以下の通りであり、モスク代表者 12 名、一般参加のムスリム・ムスリマ約 20 名、そ

の他の一般参加者約 20 名、为催者側参加者 8 名で開催された。なお、当日の会議の様子は、その一部が、

下記のウェブサイトにて報道された。

*Japan's Muslim Leaders Meet in Tokyo's Waseda University*

Link: http://www.presstv.ir/detail/168533.html(2011 年 3 月 7 日参照)

なお、本会議の報告書は、議事内容を中心として 2011 年度刊行予定である。早稲田大学が为催するモ

スク代表者会議は、2008 年度の本研究グループの滞日ムスリム調査研究の過程で発議され、日本のムス

リム・コミュニティにとって、いわば早春の恒例行事となって来たような感もある。来年度以降は、会

議の性格や内容に関連して、日本の地域社会との関係や墓地問題および次世代教育などの为要課題につ

いて、改めて検討を加え、ムスリム・コミュニティにとっても、为催するわれわれにとっても、意義の

ある会議として開催していくことが求められる。

プログラム「日韓ムスリム・コミュニティの現状と展望」

13:30-13:40 開会の挨拶 早稲田大学アジア・ムスリム研究所長 小島宏

基調講演

13:40-14:20 「韓国におけるムスリムの現状」

韓国イスラーム教中央会・事務総長、イマーム アブドゥル・ラフマーン・リー

14:20-15:00 「次の人へ―日本語人ムスリムとしての挑戦」

イスラミック・サークル・オブ・ジャパン(ICOJ)日本人部代表 前野直樹

15:00-15:30 休憩と礼拝 (15:10 サラート(ASR))

15:30-17:00 パネル・ディスカッション 「基調講演を受けて」

総合司会:モハッマド・アンワル・メイモン(補佐:小島宏)

パネリスト:モスク代表者の方々

17:00-17:25 総合討論

17:25-17:30 閉会の挨拶:早稲田大学人間科学学術院 店田廣文

参考: サラート MAGHRIB 17:40 ; ISHA 19:01

礼拝室: 国際会議場市島記念会議室(3F)(男女仕切り有)

(店田廣文)

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②イスラーム的 NGO 研究班 2010 年度第一回研究会

日時:2010 年 7 月 24 日(土) 12:00~16:00

場所:東洋大学白山第 2 キャンパス B103 教室

概要:

今回の研究テーマは、前近代のイスラーム社会における慈善であった。Singer, Amy (2008) Charity in

Islamic Societies, Cambridge: Cambridge University Press を取り上げ、子島進と阿久津正幸が報告を行った。

アミー・ジンガー氏は、オスマン朝におけるワクフ施設の研究者であり、多くの著作を上梓している。

12 月に京都で開催された京都国際会議の分科会にも参加していただいた。同氏は上記の著作において、

イスラーム世界の慈善の伝統、慈善文化について、広範囲にわたって論じている。歴史学の知見は、価

値観と制度の継承(あるいは断絶)という観点から、現代の NGO を考察するうえでも重要である。同書

からは、さまざまな知見を得ることができたが、ここでは 2 点指摘しておきたい。

1)慈善の観点からクルアーンやハディースを読んでいくと、さまざまな言及がなされていることに気

づかされる。神からの報奨を求めるならば善行=慈善に励むよう、イスラームという宗教は強く信者に

求めているのである。この点を反映して、イスラーム社会においては、慈善の機会が定期的に設けられ

ている。一週間ごとの金曜礼拝、一年の周期とするイードなどのお祭り、あるいは誕生、割礼、結婚、

葬儀など人生儀礼において、慈善を施すことが奨励されている。これらに加えて、地域の祭りなどにお

いても、しばしば持てる者が持たざる者が、お金や食べ物、衣服などを与えている。

2)この慈善の伝統は、近代化の過程で弱体化した部分もあったが衰退してしまったわけではなく、現

代まで連綿と受け継がれている。後半部においてジンガーは、具体的な NGO の例を挙げながら、この点

を強調している。

1)の点を豊富な具体例から確認したことで、研究班として取り組んでいる 2)の部分の分析視角につ

いて、より深く検討することが可能となった。

(子島進)

③イスラーム的 NGO 研究班 2010 年度第二回研究会

日時:2011 年 1 月 23 日(日) 12:30~15:30

場所:東洋大学白山第 2 キャンパス

概要:

今回は、中世ヨーロッパの慈善の研究者である河原温氏を講師として招聘した。キリスト教的な慈善に

ついて学ぶことで、比較の観点からイスラームの慈善についての理解を深めることがその趣旨であった。

まず、河原氏は、中世初期から 14、5 世紀までの流れを追い、ヨーロッパの中世都市における慈善 caritas

と救貧活動の概要を提示した。その後、慈善の具体的な担い手や活動内容について詳述した。すなわち、

施療院・らい施療院、「貧民の食卓」「精霊の食卓」などと呼ばれる教区レベルでの貧民救済、兄弟団(特

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定の守護聖人に帰依した市民の自発的集団)、モンテ・ディ・ピエタ(托鉢修道会士による低利の貸し付け)

などが具体的な事例として取り上げられた。富める者が救済されるために貧しい者が必要とされるとの観

点から、貧者自身の魂の救済への視点の移行などきわめて示唆に富んだ内容であった。

(子島進)

(2)国際会議・国際ワークショップ

①寧夏社会科学院研究員来日特別国際ワークショップ

日時:2010 年 5 月 21 日(金)

場所:早稲田大学早稲田キャンパス 9 号館 9 階 917 会議室

概要:

本ワークショップでは、訪日中の寧夏社会科学院回族イスラーム研究所・所長の馬平氏と寧夏回族自治区

民政庁・副所長の瀋克尼氏をお招きし、研究報告と研究員の交流が実施された。中国寧夏回族自治区は中国

の内陸部に位置する。寧夏回族はイスラームを信仰する 10 の尐数民族のひとつであり、自治区レベルでは唯

一の回族自治区である。本ワークショップは、人間文化研究機構(NIHU)プログラム・現代中国地域研究幹

事拠点である早稲田大学現代中国研究所との共催で実施した。なお、ワークショップの開催に当たっては準

備から当日含め、高橋健太郎氏(駒沢大学)の協力をえた。

ワークショップに先立ち、イスラーム地域研究共同研究室および現代中国研究所の研究室において、両事

業の紹介とイスラーム地域研究・現代中国地域研究に関わる日中の研究状況について意見交換が行われた。

ここでは馬平氏の報告を中心に報告したい。

ワークショップでは、両拠点の研究分担者、研究協力者のほか、学外からの参加者が参集して意見交換が

行われた。馬平氏からは「当代中国イスラームの宗教経済と慈善事業」と題し、イスラームの慈善事業が回

族の紐帯としての機能しつつ、宗教経済を支えていることが議論された。報告では、中国におけるイスラー

ム経済の実態について、西北内陸と東单沿海、都市と農村を比較しながら、信仰の程度、地域差、居住形態

による多様性が明らかにされた指摘した。現在の慈善事業に加え、清真寺(モスク)の碑文にもとづく歴史

的な清真寺(モスク)への乜貼(寄進)や、宗教教育の支援などの事例が紹介され、現在の急速な経済発展

と経済格差拡大にともなう社会福祉・公益事業へのニーズの増大において、政府に対する宗教慈善メカニズ

ム保管的役割の重要性が指摘された。そのためにも経済発展とともに宗教慈善事業をさらに活発化させるこ

と、政策や法律法規の整備において、宗教慈善事業が発展する余地を与え、宗教慈善が機能しやすくするこ

とが提言された。

馬平氏の報告に対し、コメンテーターの青木隆氏(日本大学)からは近代以前の中国イスラーム思想との

比較の視点から、回民経済、回民概念の変化についても指摘があった。また、中国イスラームの慈善事業に

ついて、近年の養老院の事例から、行政と民間の協働による社会福祉の充実に向けた可能性が指摘された。

会場からは、かつてはよしとされなかった私事への投資など回族の経済活動に変化が生じていることが指摘

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された。

「歴史における旧日本軍兵要地誌図略説」と題した瀋克尼氏の報告では、日中戦争期の日本軍の兵用地図

の詳細な分析とともに、日本軍の撤退時に大部は焼却されたが、一部は国民党軍、共産党軍によって手を加

えられ活用されたことが示された。コメンテーターの弓野正宏氏から指摘があったように、こうした兵要地

誌は、図書館や檔案館などの公的機関にはほとんどなく、民間から収集された貴重な資料であり、また軍事

学、地理学のみならず、歴史認識と日中関係の観点からも兵要地図の重要性が指摘された。

以上、本ワークショップでは、イスラームの経済活動と慈善事業、兵要地誌という異なるトピックについ

てそれぞれイスラームと中国の地域研究の両観点からの議論があり、興味深いものであった。本ワークショ

ップは、人間文化研究機構の地域研究推進事業の中心/幹事拠点共催による初めてのワークショップでもあり、

今後の研究事業の連携の可能性においても有意義な会であった。

(砂井紫里)

②京都国際会議 Session 5A Faith-Based NGOs in the Muslim World

日時:2010 年 12 月 17 日(金) 13:00~16:30

場所:国立京都国際会館

Convenor: NEJIMA Susumu (Toyo University, Japan)

Chair: Omar Farouk (Hiroshima City University, Japan)

Speakers

1. NEJIMA Susumu

Hamdard Foundations in India and Pakistan

2. HOSOYA Sachiko (Toho University, Japan)

Caregiving Volunteer Activities in Kahrizak Charity Care Center in Iran

3. Amy Singer (Tel Aviv University, Israel)

Waqfs: faith-based Islamic institutions before modern NGOs

4. Erica Bornstein (University of Wisconsin, USA)

Religion, Charity, and Law in India: Historical and Contemporary Reflections

概要:

京都国際会議での分科会は、これまでの NGO 研究会の総まとめ的な意味を持つものであった。NGO

の中には、宗教的な価値観に根ざして、社会的活動に取り組むものが存在する。

イスラーム圏各地においても、ザカート(喜捨)やワクフといった善行=慈善の伝統を、現代に継承

する民間組織を見出すことができる。これらの NGO について、活動の動機づけとなる価値観、活動の内

容、そして負源といった観点から報告した。

第一に、子島は「インドとパキスタンのハムダルド負団」の歴史的展開について報告した。20 世紀初

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頭のデリーに起源をもつハムダルド製薬は、その名称(ハムダルド=痛み分かち合うこと、同情)が示

すように、病人や弱者への奉仕を志していた。より具体的には、伝統的なイスラーム医学(ユーナーニ

ーと呼ばれる)を近代化し、その普及を通して社会に財献することを目指していた。現在の用語で言え

ば、「社会的起業」とすることもできるだろう。父親が興した薬局を、長男がインドで、そして次男がパ

キスタンで大きく発展させていった。1964 年、企業としての収益をワクフ負源として、より制度的に医

療・教育・文化等の分野の社会事業を推進するためにハムダルド負団は設立された。医科大学、病院、

薬局、診療所を擁し、無料あるいは低額で庶民を治療するなど、教育及び社会福祉の分野で慈善事業を

実施している。ワクフとユーナーニーを二本柱とするハムダルドは、価値観、活動内容、そして負源の

いずれにおいても、イスラーム的な特徴を有している。

細谷幸子は「女性介護ボランティア」について報告した。イランのキャフリザーク福祉センターは、

1972 年に設立された障害者・高齢者を対象とする施設である。中東有数の規模と設備を有するキャフリ

ザーク福祉センターでは、多くの女性ボランティアが無償で、入浴介助などの仕事に従事している。興

味深いのは、ここでボランティアをする人々の多くが「神の恩寵(ご利益)」を求めるという宗教的信念

に動機づけられている点である。あれこれの願いがかなったという、彼女たちの口コミによる奇跡譚が、

キャフリザークを神の恩寵に満ちた宗教的な場所に変えている。また、イランでは、1979 年のイスラー

ム革命の結果、「イスラーム」は深い政治的な意味合いを帯びることとなった。このため、センター自体

は、自分たちの活動をイスラーム的な文脈のもとに提示することを注意深く避けているという点も、国

家と NGO の関係を考えるうえで重要な指摘である。

アミー・ジンガーは、「慈善事業の持続性」と題し、オスマン帝国期に発展したエリート層の慈善事業、

特にワクフが、1923 年のトルコ政府成立後も、政府の公共サービスを補完する形で存続したことを取り

上げた。帝国期の慈善事業は、スルタンや政府高官によるワクフを負源としたモスクや学校や病院等の

建設・運営が中心であり、これらの建築物が都市の景観を形成することともなった。現代では、コチュ

負閥やサバンジュ負閥など経済的エリートが慈善事業を担っているが、ムスリムとして、富を広く社会

に還元するという意識は、帝国期から存続している。

エリカ・ボーンスタインの発表「インドにおける宗教と慈善と法」は、比較の視点に基づくものであ

った。ヒンドゥー教における慈善事業、特に寄付行為に関する法制度の変遷を取り上げた。イギリス信

託法を反映した植民地時代の法律は、対象の公私、あるいは宗教か世俗かの区分を明確にできない寄付

行為を恣意的に区分するものであった。現代インドの法規定も、変化を遂げながらもこの点をひきずっ

ているとの指摘がなされた。

近年、宗教的な価値観に根ざした NGO による活動に注目が集まり、キリスト教団の活動に関する研究

は蓄積されつつある。これまでの NGO 研究会の成果を英語論文集として刊行することで、イスラーム研

究にも新たな視点を提供することができるだろう。

(子島進)

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(3)原典講読会

①劉智『天方性理』読書会(回儒の著作研究会)

日時:2010 年 4 月 25 日(日)、5 月 23 日(日)、7 月 4 日(日)、7 月 25 日(日)、9 月 18 日(土)、10 月 9

日(土)、11 月 6 日(土)、12 月 26 日(土)、2011 年 1 月 8 日(土)~9 日(日)、2 月 4 日(金)、2 月

25 日(金)~26 日(土)、3 月 28 日(月)~3 月 30 日(水)

場所:日本大学文理学部青木研究室/大妻女子大学比較文化学部佐藤研究室/京都大学アジア・アフ

リカ地域研究研究科仁子研究室/静岡県伊豆市下白岩1436 六寿館

担当者:青木隆、佐藤実、田島大輔、中西竜也、仁子寿晴、矢島洋一

概要:

本年度の読書会では、劉智著『天方性理』巻5後半および巻3前半部分の訳文確定、語釈項目選定、解

説執筆に向けた検討等の作業を参加者全員で行った。また、3月28日~3月30日の合宿読書会では、巻3「概

言」「胚胎初化」の解説原稿の検討と巻3「内外体竅図説」D、E、黒氏按語の箇所についての、訳文検討、

語釈検討、内容検討等の作業を参加者全員で行った。

本年度の活動の総括:『天方性理』の訳注作業を慎重に消化し、「原典シリーズ」にむけての中間報告の

場となる『中国伊斯蘭思想研究』第 3 号、第 4 号の編集作業をすすめ、『中国伊斯蘭思想研究』第 3 号を

発行した。これにより、最終的な翻訳出版に受けての訳注作業が大きく前進した。

(黒岩高)

(4)国内海外派遣・調査

①中国福建省单部における国内外ムスリムの交流についての調査

期間:2010 年 2 月 9 日(水)~2010 年 2 月 22 日(火)

国名:中国

参加者:砂井紫里(早稲田大学イスラーム地域研究機構・研究助手)

概要:

本調査の目的は、福建の回族コミュニティとムスリムの現状、とくに宗教活動およびハラール料理店につ

いてアクターとしてのアラビア語学習経験者の役割、ハラール料理店の形態を明らかにすることである。

調査地は、福建省の泉州近郊の A(鎮)、B(市区)、C(郷)、D(市区)、E(市区)である。報告者はこれ

まで为に A の回族集団を中心に調査を行ってきている。A に隣接する B、D から車で 20-30 分ほどの C 郷は

省内で唯一の回族郷であり、かつては 1 時間以上の距離であったが、近年の道路整備によってAからも車で

15 分程度となり、A に居住しながら、C で工場を経営する人びともある。E も A から車で 20 分程度であり、

公共バス、車で通勤圏内である。

为なインフォーマントは、アラビア語学習班に参加した経験をもつ地元回族青年ムスリムおよび非ムスリ

ム信仏的本地的、内陸出身ムスリム回族/ウイグル外地的、外国人ムスリム老外、および漢族である。

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以下の項目について聞き取り調査と参与観察を行った。

1) アラビア語学習経験者の帰郷後の日常生活

2) 公式/非公式の宗教活動場所における宗教実践および参加者

3) 清真(ハラール)および西北地方料理店/食品の分布と運営、消費

1) については、宗教実践を継続している場合と継続しない場合がある。A の清真寺での活動は、内陸出身

の招聘アホン(教長、イマーム)と帰郷後も宗教実践を継続するアラビア語学習経験者が中心となっており、

長期海外留学経験者と国内での学習者とで清真寺(モスク)での活動において役割分担がみられる。今回の

調査で重点的に行ったのは、アラビア語学習経験者の地元回族ムスリムが副業として行う清真食品の卸と小

売りで、地元のムスリムや、清真料理店への仲介状況、取引先などが明らかになった。厦門や広州の清真食

品卸市場、臨夏や内蒙古、河单などからの買い付けのほか、アラビア語学習経験における人的つながりを活

用した仕入れが行われている。

2) について調査地には二つの清真寺(A、D)に加え、内陸出身のアホンが滞在する礼拝場所(C、E)が

ある。今回初めて C、E の礼拝場所を訪問することができた。C、E の礼拝場所はいずれも外に表示はない。

C の礼拝場所では各地を旅する回族ムスリムが、アホンを頼って礼拝所を訪問、滞在し、周辺各地の清真寺

を訪れていた。E の礼拝場所は高層マンションの 2 フロアを礼拝場所とし、集団礼拝には内陸出身回族、外国

人ムスリムら 100 人以上が参集する。礼拝場所での活動に参加するムスリムは礼拝場所を「私たちの清真寺」

と呼ぶが、公式には清真寺と呼ばれず、アホンなど公の立場に近い人びとは、礼拝場所を清真寺と呼ぶこと

を避け、ときに戒める。こうした配慮は、ムスリム・コミュニティとネットワークの核となる場所である清

真寺と礼拝場所の維持と活動にとって重要である。

3) 清真料理店の所在は、幹線道路沿いあるいは为要道路の交差点、工場、大学、病院、バスターミナルの

近くなど、内陸出身ムスリムのアクセスのよい場所にある。清真料理店の所在情報は清真寺にチラシが置か

れているほか、清真寺のアホンに集約されている。インターネット上の掲示板でも情報の交換がなされてい

る。1) で述べた卸/小売りの回族ムスリム青年も総括的な情報をもっている。A は、B は、中東料理(エジ

プト、イエメンなどメニューが設定されている)、寧夏料理、新疆料理に加え、ここ 1、2 年で急速に青海回

族によるラーメン店が開店している。C では、清真料理店は 0 軒である。D では、国内各地の清真料理店があ

るが、外国料理としての清真料理店はない。E では、今回の調査では外国料理としての清真料理店についての

情報に限られたが、トルコ、エジプト、パレスティナ料理の店があり、これらはすべて外国人がオーナーで

あるが、料理と出身国は必ずしも一致しない。また回族ムスリムも従業員として働いている。顧客は、外国

料理店では外国人ムスリムが中心で、地方料理の清真料理店では内陸出身ムスリム、地元の回族、漢族とな

っている。

今後は、それぞれの地域におけるアラビア語経験者、宗教実践、清真料理店について、調査を継続し、そ

の形態と役割について比較検討をすすめたい。

(砂井紫里)

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②富山県射水市におけるインタビュー調査

期間:2011 年 2 月 25 日(金)~2011 年 2 月 27 日(日)

国名:日本

参加者:岡井宏文(早稲田大学多民族・多世代社会研究所客員研究員)

手塚智之(早稲田大学人間科学研究科修士課程)

概要:

本調査の目的は、来年度に予定されている「外国人に関する意識調査」の実施に向けた予備的調査の

実施である。「外国人に関する意識調査」は、質問紙を用いた調査であり、2008 年度に第 1 回目の調査を

岐阜県岐阜市にて実施している。第 1 回調査の分析結果では、特徴の異なる他地域との比較の必要性が

示唆された為、新たな調査候補地として富山県射水市周辺を選定し、地域の状況に関するヒアリングを

実施した。

本調査におけるヒアリング内容は、質問紙調査実施地域の選定と関連して、为にイスラームコミュニ

ティの現況を中心とした。为な調査内容は下記のとおりである。

①来年度に予定している「外国人に関する意識調査」にかかる予備調査の実施。

具体的には、富山県射水市における富山モスクおよびその周辺におけるイスラームコミュニティの現

況を、ヒアリング調査にて伺った。来年度実施予定の質問紙調査設計における尺度の検討を为眼に置き、

コミュニティの活動状況および、地域(非ムスリム)住民・社会との関係性に係る質問群についてご協

力いただいた。

②富山県射水市周辺に位置する中古車輸出業者を対象としたインタビュー調査の実施。

上記①の内容と関連して、当地のコミュニティの特性を踏まえた予備調査を実施した。これまで日本

のイスラームコミュニティを下支えしてきた当業種における景気後退以降の動向や滞日意識、今後の展

望、イスラームコミュニティに対する影響・関係性についても複数の方にインタビューを実施した。本

項目においては長期にわたり当地に居住している複数のムスリムにお願いし、景気後退以前・以後にお

ける状況の変化を御教示頂いた。

③イスラームに基づく諸活動に関するヒアリング。

また、射水市のコミュニティだけでなく、留学生によるコミュニティ、および隣接県におけるコミュ

ニティの現況や交流についてもお話を伺うと共に、タブリーギー・ジャマーアトの活動についても重点

的にご教示いただいた。これらについては、当地の居住者のみならず隣接および関東圏からの来訪者も

交え、活動状況および活動に対する意識についてお話いただいた。

本調査の調査結果は、第 2 回「外国人に関する意識調査」の実施に向けた尺度および、質問項目の再

検討に使用される。次年度以降、地域住民、行政側へのヒアリング、調査票の再構成を経て、当該地域

における調査の実施、結果の分析、および第 1 回調査との比較分析を実施予定である。

(岡井宏文)

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(6)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔論文〕計( 12 )件

著 者 名 論 文 標 題

青木 隆(研究グループ 2 研究協力

者)、佐藤 実(研究グループ 2 研究

協力者)、中西 竜也(研究グループ

2 研究協力者)、仁子 寿晴(京大拠

点ユニット 4 研究分担者)

訳注 『天方性理』巻二 その二

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中国伊斯蘭思想研究』 3 2010 83-395

著 者 名 論 文 標 題

五十嵐大介

(研究グループ 2 研究協力者)

あるマムルーク軍人の生涯と寄進:

キジュマースの事例に見るワクフの多面的機能

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『史学雑誌』 120:3 2011 印刷中

著 者 名 論 文 標 題

小島 宏

(研究グループ 2 研究協力者)

中東・北アフリカ:イスラームと人口

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

早瀬保子・大淵寛編『世界为要国・地域の人口問題』 2010 127-159

著 者 名 論 文 標 題

砂井 紫里

(研究グループ 2 研究分担者)

アジアのイスラームへのアプローチ:

食文化研究のフィールドから

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『アジア学のすすめ』(村井吉敬編、弘文堂) 2 2010 147-172

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著 者 名 論 文 標 題

砂井 紫里

(研究グループ 2 研究分担者)

都市の食と中国ムスリム

―回族の「清真」その民族・宗教・地域の交渉から

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『全球都市全史研究会報告書第 4 回 食から見た都市―

地域と歴史を縦断して―第 5 回 单アジアのメガ・シテ

ィ研究(1)ムンバイの歴史的形成と現在』

2011 32-47

著 者 名 論 文 標 題

新保 敤子

(研究グループ 2 研究協力者)

改革開放政策下での中国ムスリム女性教師

―進路選択・生活実態・アイデンティティに焦点を当てて

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『社会教育学会紀要』 46 2010 41-50

著 者 名 論 文 標 題

店田 廣文

(研究グループ 2 研究分担者)

日本におけるムスリムの子ども教育に関する調査

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『人間科学研究』(早稲田大学人間科学学術院) 23:2 2010 249-255

著 者 名 論 文 標 題

細谷 幸子

(研究グループ 2 研究協力者)

イランにおけるイスラームと慈善活動-貧困者支援をおこなう

福祉事業体に対する寄付の内訳から-

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『社会環境学会』 3 2011 45-55

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著 者 名 論 文 標 題

細谷 幸子

(WIAS グループ 2 研究協力者)

イラン・イスラーム共和国「死亡した患者あるいは脳死が確

定した患者の臓器の移植に関する法律」と施行規則

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 423-431

著 者 名 論 文 標 題

細谷 幸子

(WIAS グループ 2 研究協力者)

イラン・イスラーム共和国「総合的な障害者権利支援法」

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 432-437

著 者 名 論 文 標 題

松本 ますみ

(研究グループ 2 研究協力者)

グローバリゼーションと新しいムスリム・ネットワークの形

成:浙江省義烏市における移民を中心に

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中国单北の国境地域における多民族のネットワーク構

築と文化の動態』 (平成 19~21 年度科学研究費補助金

基盤研究(B)研究成果報告書 研究代表者:国立民族学

博物館教授 塚田誠之)

2010 9-30

著 者 名 論 文 標 題

松本 ますみ

(研究グループ 2 研究協力者)

見知らぬ民を「知る」ことと「仲間」と考えること:

『良友』画報に見る西北尐数民族の表象

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『近きにありて』 58 2010 2-18

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〔図書〕計( 8 )件

著 者 名 出 版 社

Fariba Adelkhah

(研究グループ 2 研究協力者)

SAKURAI Keiko

(研究グループ 2 研代表)

Science-Po, Centre d‘Études et de Recherches Internationales.

書 名 発 行 年 ページ

Les madrasas chiites afghans à l‟aune iranienne: anthropologie d‟une

dépendance religieuse.

2011 38

著 者 名 出 版 社

五十嵐 大介

(研究グループ 2 代表)

刀水書房

書 名 発 行 年 ページ

『中世イスラーム国家の負政と寄進:後期マムルーク朝の研究』 2011 330

著 者 名 出 版 社

新保 敤子

(研究グループ 2 研究協力者)

(園田茂人と共著)

岩波書店

書 名 発 行 年 ページ

『教育は不平等を克服できるか』 2010 176

著 者 名 出 版 社

店田 廣文

(研究グループ 2 研究分担者)

岡井 宏文

(研究グループ 2 研究協力者)

早稲田大学人間科学学術院アジア社会論研究室

書 名 発 行 年 ページ

『外国人に関する意識調査・岐阜市報告書』 2011 113

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著 者 名 出 版 社

店田 廣文

(研究グループ 2 研究分担者)

岡井 宏文

(研究グループ 2 研究協力者)

早稲田大学人間科学学術院アジア社会論研究室

書 名 発 行 年 ページ

『滞日ムスリムの子ども教育に関する調査報告書』 2010 143

著 者 名 出 版 社

店田 廣文

(研究グループ 2 研究分担者)

岡井 宏文

(研究グループ 2 研究協力者)

早稲田大学人間科学学術院アジア社会論研究室

書 名 発 行 年 ページ

『全国モスク代表者会議Ⅱ ―第 2 回会議の記録 2010 年 3 月 7 日

―』

2010 99

著 者 名 出 版 社

細谷 幸子

(研究グループ 2 研究協力者)

ナカニシヤ出版

書 名 発 行 年 ページ

『イスラームと慈善活動

―イランにおける入浴介助ボランティアの語りから―』

2011 189

著 者 名 出 版 社

吉澤 誠一郎

(研究グループ 2 研究協力者)

岩波書店,

書 名 発 行 年 ページ

『清朝と近代世界』 2010.6 232

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〔学会発表〕計( 9 )件

発 表 者 名 発 表 標 題

小島 宏

(研究グループ 2 研究協力者)

ムスリム移民におけるイスラーム信仰・実践の規定要因

――日欧比較分析――

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

KOJIMA, Hiroshi

(研究グループ 2 研究協力者)

Cross-Border Marriage and Work Behavior among Male Muslim

Migrants in Japan

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Asian Population Association Conference 2010 2010 年 11 月 17 日 Vigyan Bhawan, New Delhi

発 表 者 名 発 表 標 題

KOJIMA, Hiroshi

(研究グループ 2 研究協力者)

Variations in Islamic Faith and Practice among Muslim Immigrants: A

Comparative Analysis of Europe and Japan

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

105th Annual Meeting of the American

Sociological Association

2010 年 8 月 14 日 Atlanta

発 表 者 名 発 表 標 題

KOJIMA, Hiroshi

(研究グループ 2 研究協力者)

Determinants of Islamic Religiosity among Muslim Immigrants in

Japan and Europe

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

World Congress for Middle Eastern Studies 2010 年 7 月 23 日 Barcelona

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発 表 者 名 発 表 標 題

砂井 紫里

(研究グループ 2 研究分担者)

都市の食と中国ムスリム―回族の「清真」その民族・宗教・地

域の交渉から

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

全球都市全史研究会報告書

第 4 回 食から見た都市

2010 年 7 月 29 日 東京大学生産技術研究所

発 表 者 名 発 表 標 題

店田 廣文

(研究グループ 2 研究分担者)

日本のムスリム・コミュニティと地域社会

-岐阜市における「外国人に関する意識調査」より-

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学多摩キャンパス

発 表 者 名 発 表 標 題

細谷 幸子

(研究グループ 2 研究協力者)

イラン・イスラーム共和国と日本における脊損者国際交流・支

援活動~「ミントの会」の活動から~

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

東邦看護学会 2010 年 12 月 19 日 グランドプリンスホテル新高輪

国際館パミール

発 表 者 名 発 表 標 題

松本 ますみ(真澄)

(研究グループ 2 研究協力者)

佐久間貞次郎対中国伊斯蘭的活動和上海穆斯林:

圍繞着一個亜州为義者的考察

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Nanjing University-Harvard-Yenching, Fourth

Dialogue between Chinese and Islamic

Civilizations, Nanjing University

2010 年 6 月 12 日 Nanjing Grand Hotel, China

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発 表 者 名 発 表 標 題

松本 ますみ

(研究グループ 2 研究協力者)

中国西北とイスラーム世界を結ぶ結節点、義烏の移民ムスリム

たち

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 6 回 CIAS 談話会「移動がうみだす地域を

考える―Asian Muslim の視点から」

2011 年 1 月 21 日 京都大学地域研究統合情報センタ

ーセミナー室(稲盛負団記念館 2

階 213 号室)

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東京大学大学院人文社会系研究科

次世代人文学開発センター・イスラーム地域研究部門

代表:小松久男(イスラーム地域研究部門の長、東京大学大学院人文社会系研究科教授)

テーマ 『イスラームの思想と政治:比較と連関』

中央ユーラシアと中東を为要な研究対象とし、18 世紀以降の近現代における思想と政治の動態にみち

た相互関係を比較と連関の視点から実証的に研究することを目的とする。研究班は次の 2 つの研究グル

ープからなり、両グループは、比較と連関の視点から 5 年間をとおして連携して研究を進める。

【研究事業名】

① 研究グループ 1「中央ユーラシアのイスラームと政治」

代表:小松久男(次世代人文学開発センター流動教員、東京大学大学院人文社会系研究科教

授)

② 研究グループ 2「中東政治の構造変容」

代表:長沢栄治(次世代人文学開発センター流動教員、東京大学東洋文化研究所教授)

【拠点形成の目的と意義】

本研究科は、これまでアジア文化研究専攻を中心として西アジア・中央アジア地域の歴史およびイス

ラームの思想と文化を研究する大学院生を育成し、日本のイスラーム研究を支える多くの若手研究者を

送り出してきた。当該分野に関する博士論文も質量ともに確実に向上している。今回の拠点形成は、こ

のような実績をふまえた上で、これまでになかった現代性を意識したイスラーム地域研究を立ち上げる

ことにより、新しい研究領域の開拓をめざすとともに、従来の歴史、思想、文化研究に新たな展望を開

くことを目的とする。そのために次世代人文学開発センター内に創設されるイスラーム地域研究部門に

研究科の内外から専門研究者を招き、具体的な研究プロジェクトを実践・展開する中で若手研究者の育

成をめざしたい。プロジェクト研究の成果を大学院教育に還元することも計画している。また、英語そ

の他の言語による成果の国際的な発信に努めたい。

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【組織】

(研究拠点構成員)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

小松 久男 次世代人文学開発センター流動教員、東京大学

人文社会系研究科教授

研究拠点・研究グループ 1 代表

(研究の総括)

長沢 栄治 次世代人文学開発センター流動教員、東京大学

東洋文化研究所教授

研究グループ 2 代表

(総括、パレスチナ問題の総合的

研究)

大稔 哲也 次世代人文学開発センター流動教員、東京大学

大学院人文社会系研究科准教授

研究グループ 2 研究分担者

(中東における基層社会の変容)

臼杵 陽 次世代人文学開発センター客員教員、日本女子

大学文学部教授

研究グループ 2 研究分担者

(パレスチナ問題の総合的研究)

新免 康 次世代人文学開発センター客員教員、中央大学

文学部教授

研究グループ 1 研究分担者

(ウイグル人ナショナリストの思

想と活動に関する総合的研究)

ティムール・

ダダバエフ

次世代人文学開発センター客員教員、筑波大学

大学院人文社会科学研究科准教授

研究グループ 1 研究分担者

(ソ連時代の記憶プロジェクト)

濱本 真実 人間文化研究機構地域研究推進センター研究

員、次世代人文学開発センター研究員

研究グループ 1 研究分担者

(近現代中央アジアにおける再イ

スラーム化の展開)

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【2010 年度事業の目的と活動内容】

1.今年度事業の目的

研究グループ 1

1. 研究とりまとめの一環として国際会議における研究成果の報告:

2010 年 12 月 17-19 日の京都国際会議では、「ソ連時代の記憶プロジェクト」のメンバーのほか、海外

の研究協力者を招いてセッションを組む。また、「近現代中央アジアにおける再イスラーム化の展開」

について研究を重ねてきた研究協力者の吉田世津子(四国学院大学)が、米国ミシガン州立大学で 2010

年秋に開催される中央ユーラシア研究学会(Central Eurasian Studies Society)の年次大会でセッション

を組む。

2. 国際共同研究の深化と拡大:

中央ユーラシア地域研究を遂行する上で現地の研究者との共同研究は不可欠であり、また重要な目標

でもある。過去 4 年間の活動で培ってきたウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、ロシア、トル

コなどの研究者あるいは研究機関との共同研究をさらに深化、拡大する。

3. Central Eurasian Research Series その他の研究成果の刊行:

昨年度までに刊行した同シリーズの創刊号~第 4 号や史料の刊行は、幸いに内外の研究者から高い評

価を受けることができた。今年度も引き続き、日本と海外とのバランスを取りながら、重要な史料の

刊行を質量ともに充実させ、合わせて成果の刊行を実現させたい。

研究グループ 2

最終年度に当たる今年度はこれまでの成果を踏まえ、研究計画にある 3 つの研究課題、1. パレスチナ

問題の総合的研究、2. 中東の民为化と政治改革の展望、3. 中東における基層社会の変容、それぞれの研

究活動を下記にある計画を通じてさらに深めるとともに、その内容をとりまとめ、成果公表に向けての

準備を行う。また、これも研究とりまとめの一環として上記の京都国際会議で、海外の研究者と共同し

てセッションを組む。

(小松久男)

2.今年度事業の内容

(1)拠点整備

研究事業の拠点は、事業の始動以来、東京大学文学部アネックス内に置いて 3 室のスペースを確保し、

多様な研究資料をそこに蓄積しつつ、内外の研究者に利用の便を図っている。研究の進捗状況や研究集

会などに関する情報は、専用のウェブ上で(http://www.l.u-tokyo.ac.jp/tokyo-ias/)つねに提供している。

本拠点は、人間文化研究機構との共同設置によるイスラーム地域研究部門として発足したが、その活

動が評価された結果、文部科学省による「特色ある共同研究の整備の推進事業」の支援を受け、拠点整

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備をさらに進めることができた。とりわけ、2008 年度後半から 2 名の特任研究員を得たことは大きな意

味を有しており、これにより拠点の研究機能をさらに充実させることができた。

(小松久男)

(2)研究会活動

グループ 1 では、IAS 京都国際会議 2010 においてセッション 5B「中央アジアにおけるオーラル・ヒス

トリーの発見」を担当した他、計 6 回、若手研究者による研究報告を中心とする中央ユーラシア研究会

を開いた。また、シンポジウムを 1 回、講演会を 1 回共催した。

グループ 2 では、中東民为化研究班が IAS 京都国際会議 2010 においてセッション 8A「アラブ諸国に

おける政治改革とその帰結」を担当した他、「「中東の民为化」を考える公開セミナー」を開催した。ま

た、パレスチナ研究班は、講演会やワークショップを含む 6 回の研究会と読書会および打ち合わせ会を、

中東社会史班は 4 回の研究会を、それぞれ開催した。

詳細については、各研究グループの研究会活動の項目を参照されたい。

(河原弥生)

(3)海外派遣・調査

グループ 1 では、第 11 回中央ユーラシア学会年次大会にパネル参加するため、研究協力者等 4 名をア

メリカ合衆国に派遣した。また、グループ 2 では、イギリス民族音楽学会の年次大会および「バッシャ

ール・アルアサドの最初の 10 年:過渡期」学会参加のため 1 名をイギリスおよびスウェーデンに、また

中東学会世界大会参加のため 1 名をスペインに派遣した。詳細については、各研究グループの海外派遣・

調査の項目を参照されたい。

(河原弥生)

(4)外国人研究者の招聘

今年度は、拠点としての外国人研究者の招聘は実施しなかった。

(河原弥生)

(5)資料収集

グループ 1 では、『トルキスタン文化史』1-2(バルトリド著、小松久男監訳、平凡社)をはじめとする

中央ユーラシア関連の研究書を購入した。グループ 2 では、パレスチナ専門事典をはじめとする中東関

連の研究資料を購入した。詳細については、グループ 2 の資料収集の項目を参照されたい。

(河原弥生)

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(6)研究成果・発表(各拠点発行物)

〔図書〕計( 5 )件

著 者 名 出 版 社

B.M. Babadzhanov

(研究グループ 1 海外共同研究者)

NIHU Program Islamic Area Studies Center at the University of

Tokyo / Institut vostokovedeniia Akademii nauk Respubliki

Uzbekistan

書 名 発 行 年 ページ

Kokandskoe khanstvo: vlast‟ politika, religiia 2010 744

著 者 名 出 版 社

Shimada Shizuo and Sharifa Tosheva(校

訂・解題)

Department of Islamic Area Studies, Center for Evolving

Humanities, Graduate School of Humanities and Sociology,

the University of Tokyo

書 名 発 行 年 ページ

Sadr al-Din „Ayni, Bukhara inqilabining ta‟rikhi (TIAS Central Eurasian

ResearchSeries, No.4)

2010 lxxxvi+300

著 者 名 出 版 社

Zainabidin Abdirashidov Department of Islamic Area Studies, Center for Evolving

Humanities, Graduate School of Humanities and Sociology,

the University of Tokyo

書 名 発 行 年 ページ

Annotirovannaia bibliografiia turkestanskikh materialov v gazette <Tarzhuman>

(1883-1917) ( TIAS Central Eurasian ResearchSeries, No.5)

2011 234

著 者 名 出 版 社

松本弘(編)

(研究グループ 2 研究分担者)

東京大学大学院人文社会系研究科次世代人文学開発センタ

ー・NIHU プログラム イスラーム地域研究 東京大学拠

書 名 発 行 年 ページ

『中東民为化ハンドブック 2009』(TIAS Middle East Research Series no. 5) 2010 374

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著 者 名 出 版 社

و زيغا ن أب د در ال عماد ب

‗Imād Badr al-Dīn Abū Ghāzī

東京大学大学院人文社会系研究科次世代人文学開発センタ

ー・NIHU プログラム イスラーム地域研究 東京大学拠

書 名 発 行 年 ページ

صور ع ال ة ف عرب ضارة ال ح سة ال ق ودرا ائ وث سطى ال و ال

Archives and Study of Arab Civilization in the Middle Age,(TIAS Middle East

Research Series no. 6)

2011 182

今年度、東京大学拠点として発表した研究成果は以上である。その他、本事業実施に伴い、本拠点所

属研究者・関係者が発表した研究成果の詳細については、各研究グループの項目を参照されたい。

(河原弥生)

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研究グループ 1:「中央ユーラシアのイスラームと政治」

【組織】

(研究グループ 1 メンバー)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

小松 久男 次世代人文学開発センター流動教員、東京大学

人文社会系研究科教授

研究グループ 1 代表

(研究の総括)

新免 康 次世代人文学開発センター流動教員、中央大学

文学部教授

研究分担者

(ウイグル人ナショナリストの思

想と活動に関する総合的研究)

Stéphane A.

Dudoignon

Researcher, The National Centre for Scientific

Research(Paris)

研究分担者

(近現代中央アジアにおける再イ

スラーム化の展開)

ティムール・ダ

ダバエフ

次世代人文学開発センター客員教員、筑波大学

大学院人文社会科学研究科准教授

研究分担者

(ソ連時代の記憶プロジェクト)

濱本真実 人間文化研究機構地域研究推進センター研究

員、次世代人文学開発センター研究員

研究分担者

(近現代中央アジアにおける再イ

スラーム化の展開)

(研究グループ 1 海外共同研究者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

Bakhtiyar

Babadjanov ウズベキスタン東洋学研究所为任研究員

近現代中央アジアにおける再イス

ラーム化の展開

Aftandil S.

Erkinov ウズベキスタン東洋学研究所研究員

近現代中央アジアにおける再イス

ラーム化の展開

İlhan Şahin キルギス・トルコ・マナス大学教授 ソ連時代の記憶プロジェクト

Güljanat

Kurmangaliyeva トルコ・マルテペ大学准教授 ソ連時代の記憶プロジェクト

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(研究グループ 1 研究協力者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

今堀 恵美 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究

所ジュニアフェロー ソ連時代の記憶プロジェクト

宇山 智彦 北海道大学スラブ研究センター教授 ソ連時代の記憶プロジェクト

岡 奈津子 アジア経済研究所研究員 ソ連時代の記憶プロジェクト

小沼 孝博 東北学院大学文学部講師 近現代中央アジアにおける再イス

ラーム化の展開

河原 弥生

日本学術振興会特別研究員(中央大学)

(京都大学拠点ユニット 4、上智大学拠点グルー

プ 3 研究協力者)

近現代フェルガナ地方の動態に関

する総合的研究

木村 暁 日本学術振興会特別研究員(東洋文庫) 近現代中央アジアにおける再イス

ラーム化の展開

坂井 弘紀 和光大学表現学部准教授 近現代中央アジアにおける再イス

ラーム化の展開

澤田 稔 富山大学人文学部教授 近現代フェルガナ地方の動態に関

する総合的研究

清水由里子 次世代人文学開発センター客員研究員 ウイグル人ナショナリストの思想

と活動に関する総合的研究

長縄 宣博 北海道大学スラブ研究センター准教授 近現代中央アジアにおける再イス

ラーム化の展開

野田 仁 早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院講師 近現代中央アジアにおける再イス

ラーム化の展開

吉田世津子 四国学院大学社会学部教授 ソ連時代の記憶プロジェクト

吉村 貴之 東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所

非常勤研究員

近現代中央アジアにおける再イス

ラーム化の展開

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【2010 年度の研究・教育活動】

1. 今年度の研究・教育活動の概要

今年度は 5 年間の活動を総括する年であり、それにふさわしい下記の成果を得たことを特記しておき

たい。

まず第一に、ソ連時代の記憶については、京都国際会議において Discovering Oral History in Central Asia

と題するセッションを組み、総括的な報告を行った。あわせて、日本語の卖行本として、ティムール・

ダダバエフ『記憶の中のソ連:中央アジアの人々の生きた社会为義時代』筑波大学出版会、2010 年、270

頁を刊行し、インタビュー調査に基づいた現代史研究に新たな可能性を切り開いた。このアプローチは、

方法論をさらに吟味した上で第 2 期でも継続したいと考えている。

第二に、2008 年 9 月、ロシア連邦共和国のカザン大学と共催した国際会議の報告を基にしたロシア語

論文集『18-20 世紀の帝国空間におけるヴォルガ・ウラル地方』モスクワ、2011 年、342 頁を北海道大

学スラブ研究センターの支援を受けて刊行することができた。これはイスラーム地域研究東京大学拠点

のイニシアティブによる国際共同研究の成果であり、今後の研究の展開にとっても画期となる出版事業

である。

第三に、これまでの活動を通して培ってきた国際的な、とりわけ中央アジア現地との研究ネットワー

クを活用して、研究協力者のバフティヤール・ババジャノフによるロシア語の卖著『コーカンド・ハン

国:権力・政治・宗教』東京-タシュケント、2010 年、744 頁を刊行することができた。これは 19 世紀

中央アジアにおける政治権力とイスラームとの相互関係を分析した、世界で初めての本格的な研究であ

り、今後の研究に裨益するところはきわめて大きい。さらに、近現代中央アジア史に関する重要な史料

の刊行(2 点)を実現したことも付記しておきたい。

第四に、現代中央アジア社会におけるイスラームに関する、現地調査に基づいた人類学的研究の成果

を北米の中央ユーラシア研究学会大会で報告し、活発な議論を呼び起こしたことを特記しておきたい。

これもまた 3 年間にわたる地道な調査研究の成果であり、英語によるすみやかな刊行を実現したいと考

えている。

(小松久男)

2. 研究活動の記録

(1)研究会活動

①第 21 回中央ユーラシア研究会特別講演会

日時:2010 年 4 月 5 日(月) 15:00~17:00

場所:東京大学本郷キャンパス法文 1 号館 3 階、317 教室

講師: Dr. Bahrom A. Abduhalimov ( Director, al-Biruni Institute of Oriental Studies, Academy of

Sciences,Republic of Uzbekistan)

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演題:‖The ‗Bayt al-Hikma‘ and scientific activity of the Central Asian scholars in Baghdad (9th-11th centuries)‖

[英語・通訳なし]

概要:

イスラーム文明に対する中央アジア出身者の財献については、日本でも近年、濱田正美『中央アジア

のイスラーム』(世界史リブレット 70, 山川出版社, 2008)において分かりやすく解説されており、その

研究の重要性は日本人研究者の間でも認識されているといっていいだろう。しかし、講演者のアブドゥ

ハリモフ氏が本講演で指摘したように、中央アジアの科学史は、日本だけでなく、世界全体で見ても研

究が十分に進んでいるとは言い難い分野である。今回の講演は、イスラーム文明の黄金期に活躍した中

央アジア出身の科学者たちの活動について、科学史の盛んなウズベキスタンの研究者による解説を聞く

ことができる貴重な機会であった。

アブドゥハリモフ氏によれば、中央アジアのサマルカンド、ブハラ、ヒヴァ、メルヴといった都市は、

中世においては多くの図書館を擁する教育の盛んな地であり、これらの都市から、当時の学問の中心で

あったバグダードの「知恵の館」で活躍する多くの著名な科学者が輩出した。「知恵の館」に中央アジア

出身者が多かった理由の一つは、アッバース朝の第 7 代カリフ、マームーンがその治世の最初の 6 年間

をメルヴの町で過ごし、そこで中央アジアの学者と知り合って、のちにバグダードに彼らを招いたため

である。諸文献からは、20 名ほどの中央アジア出身者が「知恵の館」で活動していたことが判明する。

中でも有名な学者として、数学・天文学・地理学に大きな足跡を残したムハンマド・フワーリズミー、

天文学者であり数学者でもあるアフマド・ビン・アブドゥッラー・アル・マルワズィー、数学者として

有名なアブドゥル・ハミド・ビン・テュルク・アル・フッタリー、天文学者ヤフヤー・ビン・アブー・

マンスールとアフマド・アル・フェルガーニー、医学者アリー・ビン・ラッバーン・アル・タバリー、

百科全書的な博学者アブー・バクル・アル・ラーズィーとアブー・ナスル・アル・ファーラービーの名

が挙げられ、それぞれの事績について分かりやすく解説がなされた。

このほか、中央アジア出身の学者が、ハディース学や言語学等々、上記以外の様々な分野でも活躍し

たことに触れられ、中央アジア出身者がイスラーム文明の発展に果たした役割が改めて強調された。

(濱本真実)

②第 22 回中央ユーラシア研究会特別講演会

日時:2010 年 4 月 23 日(金) 15:00~17:00

場所:東京大学本郷キャンパス法文 1 号館 3 階、314 教室

講師:バフティヤール・ババジャノフ氏(ウズベキスタン国立東洋学研究所为任研究員)

演題:‖A long road from ―Dar al-Harb‖ to ―Dar al-Islam‖: The first discourse on the relationship with Russians

in Turkestan(英語・通訳なし)

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概要:

講演者であるバフティヤール・ババジャノフ氏は、ウズベキスタンの気鋭のイスラーム研究者であり、

特に近年は中央アジアにおけるスーフィズムの動向や、現代のイスラーム復興などに関して優れた研究

を次々と発表している。2009 年 11 月から 2010 年 4 月までの半年間、日本学術振興会外国人研究員とし

て東京大学に滞在し、コーカンド・ハーン国期におけるイスラームをテーマとして研究を行った。氏は

滞在中の研究成果として『コーカンド・ハーン国:政権、政治、宗教』と題する著書を完成させ、ロシ

アの出版社から出版している。本講演の内容は、氏の日本滞在中の研究成果であると同時に著書の一部

でもあった。

講演では、コーカンド・ハーン国がロシア帝国に併合される際に、現地の知識人が、異教徒であるロ

シア人によるトルキスタン支配をどのように受け止め、理解しようとしたのかが論じられた。鍵となる

のは、知識人たちがロシア帝国支配下のトルキスタンを「ダール・アルハルブ」と「ダール・アルイス

ラーム」のいずれと見なしたかという問題である。氏によると、中央アジアで優勢なハナフィー派法学

においては、「ムスリムの居住地が異教徒に政治的に支配されたとしても、そこにイスラームの規定が尐

しでも残されているのなら、そこはダール・アルイスラームである」とする思想が为流であるという。

さらに、氏は、この議論がすでに中央アジアがモンゴル帝国に征服された際、13 世紀の法学者たちによ

ってなされていたことを指摘した。

ロシア軍による中央アジア征服に際し、ムスリムたちは当初は異教徒に対する「聖戦」としてこれを

戦った。しかし、モンゴル帝国期と同様に、シャリーア法廷、金曜礼拝、ザカートなどのイスラームの

規定が保持されることがロシア人によって約束されると、地元知識人は、征服地をダール・アルイスラ

ームと見なそうとし、ロシア軍に対して抵抗運動を行う者たちを批判し、彼らの運動は「聖戦」とは見

なされないと为張したことが一次史料を提示しながら解説された。

氏は、しかし、ムスリム知識人たちは、ロシア人に対して、住民自身のムスリムとしてのアイデンテ

ィティを保つための具体的な要求を行う段階には至っていなかったとの見解を示して締めくくった。こ

のような要求が行われるのは、この後現れるジャディード運動家たちの時代においてであり、知識人た

ちの思想の変化についてより後の時期を視野に入れて検討する必要性が指摘された。

氏の講演に対して、聴講者からは、中央アジアの知識人が、同じく西欧列強の植民地となっていた周

辺諸国、イランやインドの知識人と何らかの思想的繋がりを持っていたのか否か、中央アジアのこのよ

うな知識人の活動に対して、ロシア人東洋学者たちはどの程度理解していたのか、何らかの反忚をした

のかといった質問が寄せられた。モンゴル帝国期における法学者の議論が 19 世紀後半に繰り返されたこ

とを指摘する氏の思想研究のスケールの大きさを示した今回の講演は、学界の最先端をゆく研究に触れ

る良い機会となった。

(河原弥生)

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③第 23 回中央ユーラシア研究会

日時:2010 年 6 月 5 日(土) 15:00~17:00

場所:東京大学本郷キャンパス法文 1 号館 2 階、217 教室

報告者:島田志津夫(東京外国語大学非常勤講師)

題目:「サドリッディーン・アイニー著『ブハラ革命史』の写本について:その概要と校訂出版に向けて」

概要:

サドリッディーン・アイニーの『ブハラ革命史』(1921)は、ファイズッラ・ホジャエフの『ブハラ革

命史によせて』(1926)とともに、1920 年のブハラ革命に至る 20 世紀初頭ブハラにおける改革運動の歴

史を知るための基本史料である。この作品には何種類かの刊本が存在するが、これまでの研究では刊本

間の異同についてほとんど議論されることなく利用されてきた。報告者は、ウズベキスタン共和国科学

アカデミー東洋学研究所に所蔵される本作品の写本の校訂出版を計画中であり、今回は本作品の執筆の

経緯および写本と刊本間の異同について報告を行った。

アイニー(1878-1954)は、ソ連時代のタジキスタン成立(1924)以降、文学作品や詩、文学研究の執

筆活動を通して「タジク・ソヴィエト文学の父」として名声を得たが、ジャディード運動に参加した自

身の体験にもとづいて著された本作品は、彼の著作の中でも異色の重要性を持つ。

これまでの研究からは、本作品は革命後の新生ブハラ共和国政府の依頼により執筆されたことが明ら

かになっているが、本報告ではアイニー自身の記述から彼が本作品に先立ち、『ブハラ思想革命史』(1918)

をタジク語で著していたことを確認した。また、写本テキストと『ブハラ思想革命史』の比較検討によ

り、ウズベク語で著された本作品は、先行するタジク語作品の卖なる翻訳ではなく、大幅に増補し、一

部記述の削除がなされた別の著作であることが明らかとなった。

本作品は、完成後にブハラ政府出版局に手渡されたが、そこでは出版されず、結局 1926 年にモスクワ

で出版された。ただし、写本テキストとの照合の結果、このモスクワ版には原文の大幅な削除やテキス

トの移動が見られ、不完全な版であることが判明した。削除箇所は原文の至る所に見られ、その総量は

全体の 25%にも及ぶ。このような大幅な削除の理由は、当時の時代背景によりソヴィエト政権下で出版

するにふさわしくない記述を削除したことにあると思われる。

1960 年代には、アイニーのウズベク語著作集の一部として、モスクワ版を底本としてタシュケントで

再版された。しかし、このタシュケント版では、ジャディード運動にかんする記述などがさらに削除さ

れている。

1987 年には、タシュケントに所蔵される写本の写真版をもとに、アイニーの弟子であるラヒーム・ハ

ーシムによりタジク語訳がドゥシャンベで出版された。一部テキストの欠落があり、また時代の要請に

より宗教的な内容の一部の表現が削除されているが、訳文は原文を一字一句ほぼ正確に翻訳したもので

ある。

以上のことから、翻訳とはいえ、これまでの刊本の中ではタジク語訳が原文をもっとも忠実に反映し

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ていることが明らかになった。しかし、それでも欠点が残るものであり、写本にもとづく完全な校訂テ

キストの出版の必要性が確認された。

なお、報告者とウズベキスタンの研究者シャリーファ・タシェヴァ氏との共同研究により、本写本の

校訂テキストは東京大学拠点「中央ユーラシアのイスラームと政治」研究グループの刊行物 Central

Eurasian Research Series の第 4 号として出版された。

(島田志津夫)

④第 24 回中央ユーラシア研究会特別セッション「中央アジアにおけるイスラーム実践の社会・文化的持

続と変化:人類学的アプローチ」

日時:2010 年 9 月 26 日(日) 13:00~18:00

場所:東京大学本郷キャンパス法文 1 号館 2 階、217 教室

報告者・題目:

藤本透子(国立民族学博物館)「カザフスタン北部における死者供養の再活性化―イスラーム実践を

再考する」

菊田悠(北海道大学)「ウズベキスタンにおけるイスラーム守護聖者崇敬の持続と変容――ポスト・

ソヴィエト時代のフェルガナ州の事例から――」

今堀恵美(東京外国語大学)「ハラール食品の展開に見るウズベキスタンのイスラーム復興」

吉田世津子(四国学院大学)「モスクの両義性――クルグズスタン(キルギス)北部農村から見たイ

スラーム復興と社会秩序――」

概要:

本セッションは、2010 年 10 月 28 日から 31 日かけてアメリカ合衆国ミシガン州立大学で開催される

CESS 第 11 回年次大会パネルに先立ち、国内報告会として、問題点や参考意見、コメントなどを広く寄

せていただき、パネルに効果的に活かそうとする意図も合わせて持っていた。

本研究会では、中央アジア 3 ヶ国(ウズベキスタン、クルグズスタン、カザフスタン)で各発表者が

行った人類学的フィールドワークから収集されたミクロなデータに基づき、中央アジアのイスラーム実

践について、その持続的側面、変化などに関心を払いながら論じられた。

カザフスタン北部パヴロダル州でフィールドワークを行った藤本の報告は、カザフ人の宗教複合をめ

ぐる Privratsky の学説「アヤン複合」に対し、自身のフィールドデータに依拠しつつ「アルワク複合」概

念の可能性を示唆した。藤本によれば、「アルワク」の重要性は、系譜、「祖先の土地」と結びついたも

のであり、カザフ人のアイデンティティを示すものである。報告では「アルワク複合」の動態的な側面

に着目し、カザフ人が重視する儀礼、犠牲祭をめぐり多様な解釈がなされたことを指摘した。ここから

独立後のカザフスタンでイスラーム復興が経験されても、それは教義としてのイスラームの浸透だけで

はなく、アルワクやモルダ、コジャの重要性を核として宗教実践が復興されていることを結論づけた。

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ウズベキスタン東部フェルガナ州リシトン市でフィールドワークを実施した菊田の報告は、陶業の街

として有名なリシタン市で職業別の守護聖者であるピールがいかに崇敬を集めるかが取り上げられ、ソ

連時代に変容しつつも、現代まで継続されている理由について取り上げた。中東地域など他の地域では

守護聖者崇敬が衰退していく一方、ウズベキスタンでピール崇敬が未だに盛んな理由として、ソ連にお

ける産業構造の特殊性、ソヴィエト政権の対イスラーム、民族文化に関する政策、ピールがもつ独自の

魅力が指摘された。

ウズベキスタンの首都タシュケント市でフィールドワークを実施した今堀の報告は、2000 年代以降、

ウズベキスタンのハラール食品という「もの」に着目し、「もの」を通じてウズベキスタンのイスラーム

復興を捉える見方を示した。今堀はハラール食品の消費者として漸増する新しい信仰者のカテゴリー「ナ

マーズ・ハーン(礼拝する者)」の存在を指摘し、彼らが政治活動を目指すイスラーム为義者でもなく、

卖に慣習的イスラームを守るムスリムでもない、日常生活の中で「正統」なるイスラームを目指そうと

する人々であるとした。結論として、ハラール食品という「もの」を媒介とすることでナマーズ・ハー

ンたちは肉加工品を消費しつつ、「正統」なるイスラームも実践できるという豊かな「もの」を媒介に結

びつくイスラームと人間のあり方について示唆された。

クルグズスタンのナルン州コチコル地区で 10 年以上に亘りフィールドワークを継続してきた吉田の報

告は、調査地に建立された中央モスクに集まる人々、なかでもイスラーム宣教活動(davat)家に着目し、

彼らに対して隣人たちが抱く両義的な感情について論じた。吉田によれば、イスラーム宣教活動は地域

の深刻な社会問題である「飲酒」を抑制する効果があり、村に秩序をもたらす存在とされる一方、活動

に熱心になるあまり、葬式、墓碑建立忌に参加しないなど地域で重視されるつきあいをせず、秩序を乱

す存在―社会秩序―ともされる。結論として、吉田はモスクに集まる人々というイスラーム復興の最前

線を担う人びとのみを見て、地区にあまねくイスラーム復興が生じていると断ずることは出来ないと論

ずる。モスクという「正統」なるイスラームのあり方を表立って批判する人はいないが、実はローカル

な脈絡では「つきあい」を基盤にした別の社会秩序があり、イスラームを名目に秩序を乱す存在に対し、

批判的な目を向ける人々の存在も忘れるべきではない。ローカルな脈絡を丁寧に見ていくことで、イス

ラーム復興をめぐる価値観が拮抗する様子が明らかにされた。

本研究会では、中央アジア研究でも新しい分野である人類学の発表を集めたものであり、フィールド

ワークを基に収集したデータで分析する手法が全発表に共通していた。人類学的アプローチとは「正統」

なるイスラームのあり方に照らして正誤を判断するのではなく、たとえ矛盾が生じても現地の人々が「イ

スラーム」と考える信仰実践に着目し、その信仰実践が地域社会の中でいかなる意味を獲得しているの

か、を解明することに特徴がある。この課題は歴史学・地域研究といったマクロな研究ともリンクしつ

つさらに深化させていく必要があろう。

(今堀恵美)

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⑤第 25 回中央ユーラシア研究会特別講演会

为催:NIHU プログラム・イスラーム地域研究東京大学拠点

共催:北海道大学スラブ研究センター

日時:2010 年 10 月 2 日(土) 14:30~18:00

場所:東京大学本郷キャンパス法文 1 号館 2 階、217 教室

講師・演題:

Alexander Morrison (University of Liverpool / Slavic Research Center, Hokkaido University)

―This particularly painful place‖ - the failure of the Syr-Darya Line as a frontier, 1845-1865

Beatrice Penati (JSPS Postdoctoral Fellow / Slavic Research Center, Hokkaido University)

Land-tax and cotton in the Turkestan krai (ca. 1870-1916)(英語・通訳なし)

概要:

本講演会の講演者は両氏ともに、現地資料に基づき綿密に中央アジアの近代史を研究し、次々と興味深

い論考を発表されている気鋭の研究者であり、講演においては、彼らの最新の研究成果が披露された。

モリソン氏の講演は、1840 年代から始まったロシアによるシルダリヤ防衛線の建設が、その後、ロシア

政府による中央アジア侵攻の決定に果たした役割を、丹念に跡付けるものだった。

氏によれば、カザフの小・中ジュズに対するロシアの支配を脅かす、1830 年代後半から 40 年代にかけて

起こったカザフのケネサル反乱その他の要因により、1847 年からシルダリヤ防衛線の建設が始まった。こ

の防衛線では、周囲の遊牧民によってロシア軍の軍事的優位が脅かされることはなかったものの、防衛線

の城塞を維持するのは容易なことではなかった。40 度以上にもなる暑さと砂嵐のため、城砦に駐屯する人々

は厳しい条件の中での生活を強いられたし、また、城塞周辺での農耕の試みは成功せず、食料のほとんど

を遠方のオレンブルグから輸送してこなければならなかったからである。この防衛線の維持には莫大な費

用がかかった。

このため、政府はシルダリヤ防衛線を放棄するか、或いは、中央アジアのオアシス地域にまで進出する

かの二者択一を迫られた。前者を为張する者もいたが、結局はロシアの国際社会における名誉のために、

後者が選択された。

そしてモリソン氏は、ロシアの中央アジア征服の理由は複合的なものだが、これまでほとんど言及され

たことがなく、また、非常に重要な理由の一つは、1840 年代から 50 年代にかけて行われたシルダリヤ防衛

線の建設とその運営の失敗である、と結論した。

ペナティ氏は講演冒頭で、ロシアの中央アジア征服の理由の一つとして、一般に綿花の供給地の確保が

挙げられることに疑問を呈し、この通説を問い直す必要性を強調した。彼女の講演は、この問題意識に基

づきながら、ロシア領トルキスタンにおける綿花栽培の発展と、政府の地租政策との密接な関係を明らか

にするものであった。

ペナティ氏は、それぞれの地租政策が綿花栽培に与えた影響を、一次史料に基づいて分析したうえで、

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中央アジアにおける綿花栽培の拡大に政府が注意を払うようになるのは、すでに綿花栽培が経済的な理由

により進展していた 1890 年代前半より前ではないこと、さらに、綿花栽培を支援するために採用された方

策の数々は、個々の要求に対忚したもので、秩序だったものではなかったことを指摘する。そして、綿花

栽培の拡大という事実自体が、政府による様々な政策の原因となっていく、という構図を描いて見せた。

両氏の講演はともに、ロシアの中央アジア征服というテーマを新たな視点からとらえなおす刺激的なも

のだった。これらの講演が論文の形で発表されるのを楽しみに待ちたい。

(濱本真実)

⑥内陸アジア史学会 50 周年記念シンポジウム「内陸アジア史研究の課題と展望」

为催:内陸アジア史学会

共催:NIHU プログラム・イスラーム地域研究東京大学拠点、

早稲田大学文学学術研究院創設 120 周年記念事業

日時:2010 年 11 月 13 日(土) 13:00~17:30

場所:早稲田大学小野記念講堂

【プログラム】

13:00-13:10

開会宣言・趣旨説明:梅村坦(中央大学)

13:10-14:30 基調講演

森安孝夫(大阪大学・教授)「モンゴル時代までの東部内陸アジア史:実証研究から世界史教育

の現場へ」

堀川徹(京都外国語大学・教授)「モンゴル時代以降の西部内陸アジア史:実証研究の深化と展開

の可能性」

14:45-16:00 パネル報告

林俊雄(創価大学・教授)「考古学研究の 20 年:中央アジア・シベリア・モンゴル」

稲葉穣(京都大学・教授)「モンゴル征服以前の西トルキスタン:テュルク・イラン・アラブのフ

ロンティア」

森川哲雄(九州大学・名誉教授)「ポストモンゴル時代の北アジア研究について」

小松久男(東京大学・教授)「近現代史研究の眺望と課題:イスラーム地域を中心に」

中見立夫(東京外国語大学・教授)「近現代モンゴル・チベット・中国東北研究の特質」

16:03-16:35

総合コメント 桃木至朗(大阪大学)

16:50-17:30

討論

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概要:

内陸アジアの悠久の歴史のなかでも、1991 年のソ連崩壊は劇的な変化をもたらした重要な一画期であ

ると言える。ソ連の崩壊にともなって、旧ソ連領中央アジアやロシア極東部、モンゴル、さらには中国

においても現地調査と学術交流が活発になり、それらの諸地域では新たに発見された、あるいは再認識

された史料の公開が大幅に進んだ。そのような研究環境の変化は新しい潮流を生み出し、内陸アジア史

研究もまた新たな段階に入った。それから現在にいたるまで、20 年が経った。ひるがえって、「オリエン

タリズム」批判はアジア研究の立場を支える柱のひとつでもあるが、日本においてこの思潮が広く議論

され始めてからほぼ四半世紀が経過した。この 20 ないし 25 年が内陸アジア史研究の動向を大きく動か

したことは確かであろうと考えられる。

今年、内陸アジア史学会が 50 周年を迎えるにあたって、NIHU プログラム・イスラーム地域研究東京

大学拠点との共催で開催した、50 周年記念シンポジウム「内陸アジア史研究の課題と展望」では、上記

のような問題関心にもとづいて、とくにここ 25 年前後の期間における内陸アジア史研究の成果と課題に

焦点をあてるものであった。シンポジウムでは 2 つの基調講演と 5 つのパネル報告がおこなわれ、新し

い研究のテーマや史・資料研究の具体的な課題が示されるとともに、内陸アジア史研究の存在意義や後

継者育成の必要性についても活発な議論がおこなわれた。当シンポジウムは、内陸アジア史研究の将来

への展望を提示するとともに、清新な発想を導き出す格好の機会となるものであったといえよう。

(清水由里子)

⑦第 26 回中央ユーラシア研究会

日時:2011 年 2 月 5 日(土) 14:00~17:00

場所:東京大学本郷キャンパス法文 1 号館 2 階、217 教室

報告者:桜間瑛(北海道大学大学院文学研究科博士後期課程)

題目:「現代ロシアにおける民族的祭りの変遷と多層性―タタルスタン共和国における事例より―」

概要:

桜間氏はこれまで、ヴォルガ・ウラル地方のタタール人の一グループで、ロシア正教を信仰する「ク

リャシェン」と呼ばれる集団について研究してきた。今回の報告は、氏が 2008 年 9 月から 2010 年

10 月までの約 2 年間におよぶ現地でのフィールドワークの中で得られた豊富な知見にもとづくもの

であった。

本報告で氏が着目したのは祭りである。現代タタールのシンボリックな祭りとなっている「サバン

トゥイ(ジエン)」とそれを流用した、クリャシェンの祭り「ピトラウ」の歴史的な変遷とその多様

な相貌を、祭りを企画する側・受け止める側の認識の多様性に着目しつつ、そこに反映した、「民族」

「文化」観を析出するという手法がとられた。

まず第一部ではロシア帝政期からソ連時代末期に至るサバントゥイとジエンの歴史的な変遷が概

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観された。革命以前のサバントゥイは代表的な「民族的な祭り」として位置づけられ、イスラーム、

正教とのアンビヴァレントな関係にあった。ところが、ソ連期において、とくにサバントゥイはソ連

権力による、そのイデオロギーに対忚した変容の要請を背景に、「タタール民族」の文化のシンボル

として明確に位置づけられていったことが明らかにされた。

第二部では、現代のタタール、タタルスタン共和国におけるサバントゥイの位置づけについて、筆

者の村落でのフィールドワークに基づく考察が示された。現代タタルスタンにおけるサバントゥイは

ソ連期以来の形式の踏襲している。「タタールあるところ、サバントゥイあり」という言葉が示すよ

うに、現代タタール、タタルスタン共和国にとってサバントゥイはタタールの存在証明であり、タタ

ルスタン共和国における民族文化政策の中枢であるとの指摘がなされた。

第三部において、上述の考察を踏まえたうえで、現代クリャシェンの運動におけるピトラウ実践と

その受容が検討された。クリャシェンにおいてサバントゥイ(ジエン)とは、古代からの民族的要素、

正教的要素およびソ連期の変容が混在する多層的なものである。ママディシュ郡ジュリ村での事例に

よれば、同村落のピトラウにおいて「クリャシェン」という存在が顕示されており、現代タタルスタ

ンにおける民族文化政策を利用しての、「民族文化」の宣伝が行われている。このなかでピトラウは

サバントゥイとのアナロジーと、その差異化の努力が認められ、「民族文化」とその知識を重視する

方向性が指摘された。最後に、ピトラウに対する人々の反忚について言及され、彼らがピトラウに、

過去の「本来の」姿との乖離や宗教的な要素を強く意識している点が指摘された。総じて、本報告は

タタール、クリャシェンという集団の夏の祭りを例に、それが時代とともに変化をしつつ、様々な要

素を内包しながら現在にいたっていることを提示するとともに、そこには、民族認識の多様性も反映

していることを示した。

報告に対して、参加者たちからは、サバントゥイの歴史的起源、構成および地域差について、クリ

ャシェンがサバントゥイに対して抱く違和感が果たして実際に経験したものなのか、あるいは知識と

して習得したものなのか、サバントゥイの開催には生活習慣のロシア化への危機意識が反映されてい

るのか、サバントゥイを見せる対象は誰なのか、またサバントゥイと地方政治との関わりの如何とい

った、多岐にわたる質問やコメントが寄せられた。また、ロシア全体でのアイデンティティ・ポリテ

ィクスとの関わりにおいて、タタルスタン以外の地域における祭りの活性化の有無についてのコメン

トが参加者から寄せられたが、今後、博士論文の執筆作業を進めるに当たっては、イスラームおよび

スラブ・ユーラシア地域研究、ロシア・ソ連史、あるいは文化人類学といったより大きな文脈への位

置づけが重要な鍵になってくるように思われた。今後の研究の進展におおいに期待したい。

(秋山徹)

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⑧Aftandil Erkinov 氏講演会

为催:中東イスラーム研究拠点/基幹研究「中東イスラーム圏」・イスラーム地域研究東京大学拠点

日時:3 月 21 日(月) 16:00~18:00

場所:東京外国語大学本郷サテライト 7F 会議室

講師:Aftandil Erkinov (Tashkent State Institute of OrientalStudies)

演題:‖Alisher Navai and his influence on development Chaghatay literature(15th - beg 20th C.)‖

概要:

アリー・シール・ナヴァーイー(1441-1501)は中央アジアにおけるテュルク語文学―いわゆるチャ

ガタイ文学-の確立者として名高い。しかし、民族を代表する文学者ゆえに、彼に関する研究はナショ

ナリズム的色彩を強く帯びる場合が多い。エルキノフ氏の議論は可能な限りこうしたバイアスを避けて、

ナヴァーイーの作品の意義を 15 世紀から 20 世紀という長いタイムスパンで論じたものであった。

ナヴァーイーの作品の特徴をエルキノフ氏は、「マキシマリズム」(極端为義)と捉える。彼は、当時

盛んであったペルシア語文学に並ぶようなテュルク語文学を確立するために、あらゆる手段を採った。

話し言葉とは異なったある意味人工的な言葉を、アラビア語やペルシア語の言葉を大量に取り込むこと

で、生み出した。作品の分量も膨大であり、用いられている語の数も、世界の文豪と比較しても上回る

とされているくらいである。いわば、強引な手段によって生み出された彼の作品は、後代の人々には極

めて難解なものであり、理解のための辞書が必要なほどであった。

一度はほぼ死語のようになっていたチャガタイ文学が復興してくるのは 19 世紀に入ってからである。

特に、コーカンド・ハーン国のウマル・ハーン(位 1810-27)は自らの政権の正統性を担保すべく、い

くつかの手段を講じた。一つは「金のゆりかご」(Altun Bishik)説話であり、自らの先祖をティムール朝の

王子でムガル朝の祖であるバーブル(1483-1530)の落胤であるとした。また、ナヴァーイーの活躍し

たティムール朝のヘラート宮廷を模倣し、自らもナヴァーイーを模倣してチャガタイ語の韻文作品を著

し、さらに 80 名の宮廷詩人に自分を模倣させて、これらの作品を収めた『詩人集成』を作らせた。

一方、ヒヴァ・ハーン国では、ロシアの保護国となったのち、ムハンマド・ラヒーム・ハーン 2 世(雅

号フェールーズ、1864-1910)がチャガタイ文学の復興に力を注いだ。やはりティムール朝のヘラート宮

廷を模した彼の宮廷には、35 人から 40 人のチャガタイ詩人がおり、3 つの詩選集が編纂され、一部は石

版で出版された。ロシア支配下で政治的活動が制限されている中で、ムハンマド・ラヒーム・ハーン 2

世は文化活動に価値を見いだし、尽力したが、そのときモデルとなったのはナヴァーイーと彼が活躍し

たティムール朝ヘラート宮廷だったのである。

チャガタイ文学はナヴァーイー以降、直線的に発展したものではなく、さまざまな政治状況に忚じる

形で復興を遂げたのである。文学は政治と切り離すことはできず、当時の政治的・社会的状況を考慮し

ながら、分析する必要がある。

(近藤信彰)

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(2)国際会議

①京都国際会議 Session 5B: Discovering Oral History in Central Asia

日時:2010 年 12 月 18 日(土) 17:00~19:00

場所:国立京都国際会館

Convenor: KOMATSU Hisao (The University of Tokyo, Japan)

Chairperson: KOMATSU Hisao

Speakers:

1. Güljanat Kurmangaliyeva Ercilasun (Kwangwoon University, Korea; Maltepe University, Turkey)

Islam in the Soviet Kyrgyzstan: Practices in an Atheist State

2. KAWAHARA Yayoi (Japan Society for the Promotion of Science (JSPS)/Chuo University, Japan)

The Uyghurs of the Ferghana Valley and Their Recollections of Crossing the Border

3. Timur Dadabaev (University of Tsukuba, Japan)

Nostalgia for Soviet Times in Central Asia: The Case Study of Post-Soviet Uzbekistan and Kyrgyzstan

Discussant:

KONAGAYA Yuki (National Museum of Ethnology, Japan)

概要:

本セッションでは、中央アジア近現代史をオーラル・ヒストリーの手法を用いて研究した成果が

報告された。報告は 3 本とも、オーラル・ヒストリーの特徴を生かし、中央アジアに居住する一般

の人々の日常生活や、そのなかで形成される彼らの意識に焦点をあわせるものであった。

まず司会の小松が、次のように本セッションの意図と意義を解説した。ソ連邦解体から 20 年が

経過した現在、中央アジア近現代史は見直しを迫られている。ソ連期、中央アジアの社会は、ソ連

共産党が「遅れた」中央アジアに社会为義を確立することに成功したとするイデオロギーの影響下

にあった。一方で、ソ連解体後の中央アジア諸国における歴史变述では、独立後の発展が強調され、

ソ連時代が否定的に描かれる傾向がある。従って、現在、歴史認識・变述がこうした極端な傾向を

持つことを避ける、より有効な歴史研究の手法を確立し、近現代史の再検討を行なうことが急務で

ある。このような問題意識に基づく本セッションは、中央アジアの人々を対象とし、ソ連時代の記

憶を口述記録として収集し分析するオーラル・ヒストリー研究のプロジェクトの成果である。

Ercilasun による報告は、ソ連期クルグズスタンにおけるイスラームの様態を分析するものであっ

た。Ercilasun は、65 歳以上の人々をインフォーマントとした調査に基づき、公定イデオロギーが無

神論であったソ連期クルグズスタンにおいて、特にインフォーマントの祖父母や父母の世代は、日

常生活のなかでイスラームの信仰をさまざまに実践していたことを、詳細に示した。しかしインフ

ォーマントの世代が子どもの頃にはイスラームに対する政治的圧力が強まり、無神論を標榜する

人々は増加した。こうした記憶を語るインフォーマントのほとんどは現在、自らについて信仰心が

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強まったという認識を持っており、無神論の立場をとる者はきわめて尐ない。Ercilasun の報告は特

に、多くの具体的な口述記録資料を提示するものであった。

河原の報告は、2003-2006 年にクルグズスタンとウズベキスタンで行なった、63-95 歳のウイグル

の人々をインフォーマントとする聞き取り調査の記録を为要資料とし、彼らや彼らの祖先がカシュ

ガル地方からフェルガナ渓谷に移住した過程と、彼らのエスニックな自己認識を明らかにした。報

告において河原はまず文献史料に依拠し、18-19 世紀にはさまざまな歴史的事件を契機とし、カシ

ュガルからフェルガナへの移住現象が数度にわたり生じていたことを確認した。次に上述の聞き取

り調査により、カシュガルとフェルガナのあいだの人々の移動は、尐なくとも中ソ間の越境が困難

になる以前は何ら特別なことではなく、両地域それぞれ出身の男女の婚姻も一般的であったことを

指摘した。また、インフォーマントたちが強いウイグル人アイデンティティを持っていることを紹

介したうえで、その認識がソ連期に培われたことを指摘し、他の諸集団のアイデンティティの確立

との関連も含め、さらなる検討の必要性を示した。

Dadabaev の報告は、2005-2009 年にウズベキスタンで、2006-2009 年にクルグズスタンで行なっ

た聞き取り調査から、特に 15 名のライフ・ストーリーをポストモダンもしくはポスト構造为義の

視点により分析し、誰が、なぜ、ソ連期のどのような事象について、ノスタルジーを感じたり、あ

るいは否定的な評価を下したりするのかを解明しようとした。この作業により Dadabaev は、現在

のウズベキスタンとクルグズスタンの人々がソ連に対して抱くノスタルジー感情が、過去と現在に

ついてのさまざまな、しばしば相矛盾するイメージの共存と選択により成立すること、そして特に

ごく一般的な人々にとっては日常生活における経験や生活水準がソ連時代を評価する際の判断基

準となっていることを指摘した。

3 名の報告者による研究発表の後、特定討論者の小長谷有紀氏からの質疑に対する忚筓と議論が

行なわれた。本セッションは、文献史料と口述記録資料を組み合わせるという研究手法が、中央ア

ジア近現代史を検討し直すうえで十分に有効であることを示すことに成功しただろう。しかし小長

谷氏が指摘したように、フィールドワークはさまざまな条件を考慮に入れた専門的な方法によらな

ければならないことは今後の課題として残された。本セッションは、今後フィールドワークの専門

家である社会学/文化人類学研究者と、文献史料分析の専門家である歴史研究者の有機的な共同が

ますます必要となることが確認されたという点で、特に有意義であった。

(河原弥生)

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(3)海外派遣・調査

①アメリカ出張報告

期間:10 月~11 月

国名:アメリカ合衆国

参加者:藤本透子(国立民族学博物館)、菊田悠(北海道大学)、今堀恵美(東京外国語大学)、吉田世

津子(四国学院大学)

参加学会:第 11 回 Central Eurasian Studies Society 年次大会(10 月 28~31 日、ミシガン州立大学)

参加パネル:Socio-Cultural Continuity and Change of Islamic Practices: Anthropological Approaches

報告者・報告題目等

司会:Jeanne Féaux de la Croix(Zentrum Moderner Orient)

報告 1:藤本透子 ―The Revitalization of Commemorative Rituals: Reconsidering Islamic Practices in

Post-Soviet Kazakhstan‖

報告 2:菊田悠(北海道大学) ―Veneration of Patron Saints by Muslim Artisans in Modern Uzbekistan‖

報告 3:今堀恵美(東京外国語大学) ―Halal and Haram in Post-Soviet Uzbekistan‖

報告 4:吉田世津子(四国学院大学)‖Order, Disorder and Mosques in Rural Kyrgyzstan: Rethinking the

Revitalization of Islam‖

ディスカッサント:John Schoeberlein(Harvard University)

概要:

本パネルは、イスラーム地域研究プロジェクトによる成果の海外報告であり、2010 年 9 月に東京大学で

開催された第 24 回中央ユーラシア研究会での国内報告をふまえたものであった。

本パネルでは、中央アジアで長期の人類学調査を実施した発表者 4 人が、フィールドデータをもとにイ

スラーム実践の持続と変容を論じた。中央アジア研究で人類学は新たに発展しつつある分野である。歴

史や政治・経済分野の研究報告が多かったなか、本パネルは数尐ない人類学分野のパネルであった。

藤本の報告では、カザフスタン北部パヴロダル州村落部での調査に基づき、カザフ人のイスラーム実践

の持続と変化の特徴を捉える概念として、死者の霊魂(アルワク)の観念を中核とする「アルワク複合」

が提示された。

菊田の報告では、ウズベキスタン東部フェルガナ州リシトン市での調査から、ソビエト時代を経た陶工

たちのピール(守護聖人)崇敬の持続と変容について論じられた。

今堀の報告は、ウズベキスタンの首都タシュケント市におけるハラール食品の展開に着目してイスラー

ム復興をとらえたユニークな研究であった。

吉田の報告は、クルグズスタン北部ナルン州のクルグズ人村落での調査から、イスラーム宣教活動ダヴ

ァット(davat)に着目して、モスクが社会的秩序と反秩序という両義性をもつことを明らかにするもの

であった。

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4 報告の後、ディスカッサントの John Schoeberlein 氏から、コメントと質問が寄せられた。コメントと

質問は各報告者に対して個別にもなされたが、パネル全体の特徴として、ポスト・ソビエトという文脈

でイスラームをあつかった諸研究であったことが指摘された。その上で、イスラームにおける「正統」

とは何かという問題をめぐり、イデオロギーだけに着目するのではなく、日常生活におけるイスラーム

実践に焦点をあてた研究であったことが評価された。また、民族誌的方法から歴史をあつかうのは難し

いことだが、それにあえて挑んだチャレンジングな報告であったと総括された。

その後、欧米、トルコ、中央アジアなど多地域から 30 名を越す参加者から、さかんな質問が寄せられ

た。人類学的アプローチという方法論に関する質問があったほか、個別報告については特に吉田に多く

の質問が寄せられた。人類学的アプローチの特徴は、教義に照らして正誤を判断するのではなく、現地

の人々がイスラームとみなす信仰実践に焦点をあてて地域社会の動態のなかで分析する点にある。今回

の藤本と菊田の報告は、ソ連成立以前からポスト・ソビエト時代にいたるローカルなイスラーム実践の

持続と変容をとらえたものであり、今堀と吉田の研究はソ連崩壊後の 20 年間に新たに生じた現象に焦点

をしぼった報告であった。歴史学や地域研究などともリンクしつつ、今回の発表の成果を活かし、中央

アジアのイスラームに関する人類学研究をさらに進展させていくことが望まれる。

(藤本透子)

(4)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔論文〕計( 25 )件

著 者 名 論 文 標 題

今堀 恵美

(研究グループ 1 研究協力者)

カシュタが人をうごかす―ウズベク刺繍がもつものの力

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

床呂郁哉・河合香吏(編)『ものの人類学』 2011 117-122

著 者 名 論 文 標 題

今堀 恵美

(研究グループ 1 研究協力者)

ウズベク女性の手が生み出す刺繍 カシュタ

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『Field+』 5 2011 30-31

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著 者 名 論 文 標 題

UYAMA Tomohiko

(研究グループ 1 研究協力者)

The Roles of Small Regions in Intercultural Relations and

Conflicts: The Bökey Horde, Gorno-Badakhshan and Abkhazia

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Anita Sengupta and Suchandana Chatterjee, eds., Eurasian

Perspectives: In Search of Alternatives (Delhi: Shipra Publications)

2010 64-77

著 者 名 論 文 標 題

Уяма Томохико (宇山智彦)

(研究グループ 1 研究協力者)

Взгляды казахской интеллигенции на суд биев, русский суд и

шариат (конец XIX—начало XX вв.)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Древний мир права казахов: материалы, документы и

исследования в десяти томах (Алматы: Жетi жаргы)

10 2010 296-301

著 者 名 論 文 標 題

Уяма Томохико (宇山智彦)

(研究グループ 1 研究協力者)

Проблемы религии и просвещения в работах казахской

интеллигенции: Машхур-Жусип и его современники

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Материалы международной научно-практической конференции

«VII чтения Машхур-Жусипа» (Павлодар: Павлодарский

государственный университет)

2010 28-33

著 者 名 論 文 標 題

岡 奈津子

(研究グループ 1 研究協力者)

同胞の「帰還」――カザフスタンにおける在外カザフ人呼

び寄せ政策

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『アジア経済』 51:6 2010 2-23

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著 者 名 論 文 標 題

OKA Natsuko

(研究グループ 1 研究協力者)

Neither Exit nor Voice: Loyalty as a Survival Strategy for the

Uzbeks in Kazakhstan

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

IDE Discussion Paper 286 2011 17

著 者 名 論 文 標 題

小沼 孝博

(研究グループ 1 研究協力者)

1770 年代における清-カザフ関係

―閉じゆく清朝の西北辺疆―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東洋史研究』 69:2 2010 1-34

著 者 名 論 文 標 題

小松 久男

(研究グループ 1 研究代表)

中央ユーラシアの変動と波動

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

小杉泰編『イスラームの歴史 2 イスラームの拡大と変容』 2010 131-164

著 者 名 論 文 標 題

小松 久男

(研究グループ 1 研究代表)

中央アジアのムハージル

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

宮地美江子編『中東・北アフリカのディアスポラ』(叢書 グロ

ーバル・ディアスポラ 3)

2010 102-125

著 者 名 論 文 標 題

KOMATSU Hisao

(研究グループ 1 研究代表)

From Holy War to Autonomy: Dār al-Islām Imagined by

Turkestani Muslim Intellectuals

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Le Turkestan russe: Une colonie comme les autres?

Cahiers d‟Asie Centrale

17/18 2009 449-475

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著 者 名 論 文 標 題

坂井 弘紀

(研究グループ 1 研究協力者)

バシュコルトの神話的世界観

-英雄变事詩『ウラル・バトゥル』から-

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『和光大学表現学部紀要』 11 2010 73-93

著 者 名 論 文 標 題

坂井 弘紀

(研究グループ 1 研究協力者)

書評「山中 由里子著『アレクサンドロス変相 ―古代から

中世イスラームへ―』」

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東洋史研究』 68:4 2010 97-105

著 者 名 論 文 標 題

SAWADA Minoru

(研究グループ 1 研究協力者)

Three Groups of Tadhkira-I khwājagān: Viewed from the

Chapter on Khwāja Āfāq

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Studies on Xinjiang Historical Sources in 17-20th Centuries edited by

James A. MILLWARD, SHINMEN Yasushi et al., Toyo Bunko

2010 9-30

著 者 名 論 文 標 題

清水 由里子

(研究グループ 1 研究協力者)

『新生活』紙にみる「ウイグル」民族意識再考

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中央大学アジア史研究』 35 2011 45-69

Page 95: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

95

著 者 名 論 文 標 題

Amanbek JALILOV and SHINMEN Yasushi

(研究グループ 1 研究分担者)

Addendum to the Turkic Translation of Tarikh-i Rashidi by

Khwaja Muhammad Sharif

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Studies on Xinjiang Historical Sources in 17-20th Centuries edited by

James A. MILLWARD, SHINMEN Yasushi et al., Toyo Bunko

2010 31-47

著 者 名 論 文 標 題

新免 康

(研究グループ 1 研究分担者)

新疆におけるスウェーデン伝道団の活動とムスリム住民

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中央ユーラシアの文化と社会』

(中央大学政策文化総合研究所研究叢書 12)中央大学出版部

2011 123-162

著 者 名 論 文 標 題

Timur Dadabaev

(研究グループ 1 研究分担者)

Power, Social Life, and Public Memory in Uzbekistan and

Kyrgyzstan

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Inner Asia, (Department of Social Anthropology, University of

Cambridge/Global Oriental)

12 2010 25-48

著 者 名 論 文 標 題

Timur Dadabaev

(研究グループ 1 研究分担者)

Remembering Soviet Past: Recording and Compiling

Audio-Video Materials on Everyday Life Experiences and

Public Memory in Post-Soviet Kyrgyzstan

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Report of the JFE 21 Century Foundation Funded Projects, Tokyo:

JFE 21Century Foundation

2010 51-57

Page 96: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

96

著 者 名 論 文 標 題

Timur Dadabaev

(研究グループ 1 研究分担者)

Discourses on Integration in Central Asia: From Rhetoric to

Practice

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Regional Cooperationin Central Asia: Obstacles, Incentives and

Proposals, Madrid:

OPEX/Alternativas

2010 25-35

著 者 名 論 文 標 題

Timur Dadabaev

(研究グループ 1 研究分担者)

―Official‖ Historical Discourses and Living Histories in Central

Asia: Recollecting Collectivization and Stalinist Repressions

in Uzbekistan and Kyrgyzstan

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Colonial Rule and National Integration in the Modern Period 2010 97-33

著 者 名 論 文 標 題

KHAMAMOTO Mami

(研究グループ 1 研究分担者)

Russifikatsiia musul'manskoi verkhushki i russkaia aristokratii a

(na primere rodosloviia Narbekovykh)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Nauchnyi Tatarstan 2 2010 213-223

著 者 名 論 文 標 題

KHAMAMOTO Mami

(研究グループ 1 研究分担者)

Sviazuiushchaia rol' tatarskikh kuptsov Volgo-Ural'skiogo

regiona v tsentral'noi Evrazii: zveno ―Shelkovogo puti‖

novogo vremeni (vtoraia polovina XVIII–XIX vv.)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Hamamoto, N. Naganawa, D. Usmanova (eds.) Volgo-Ural‟skii region

v imperskom prostranstve XVIII-XX vv., Moskva.

2011 39-58

Page 97: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

97

著 者 名 論 文 標 題

吉村 貴之

(研究グループ 1 研究協力者)

古い移民、新しい移民―アルメニアからの移民

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

宮治美江子編『中東・北アフリカのディアスポラ』(叢書グロー

バル・ディアスポラ 3)明石書店

2010 75-100

著 者 名 論 文 標 題

吉村 貴之

(研究グループ 1 研究協力者)

「アルメニア人虐殺」をめぐる一考察

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

石田勇治編『ジェノサイドと現代世界』勉誠出版 2010 165-194

〔図書〕計( 6 )件

著 者 名 出 版 社

V.V.バルトリド著、小松 久男監訳

(研究グループ 1 研究代表)

平凡社

書 名 発 行 年 ページ

『トルキスタン文化史』1-2 2011 1:314

2:379

著 者 名 出 版 社

James A. MILLWARD,

SHINMEN Yasushi et al. (ed.)

(研究グループ 1 研究分担者)

Toyo Bunko

書 名 発 行 年 ページ

Studies on Xinjiang Historical Sources in 17-20th Centuries 2010 317

Page 98: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

98

著 者 名 出 版 社

梅村 坦、新免 康[編著]

(研究グループ 1 研究分担者)

中央大学出版部

書 名 発 行 年 ページ

『中央ユーラシアの文化と社会』

(中央大学政策文化総合研究所研究叢書 12)

2011 344

著 者 名 出 版 社

ティムール・ダダバエフ

(研究グループ 1 研究分担者)

筑波大学出版会

書 名 発 行 年 ページ

『記憶の中のソ連:中央アジアの人々が生きた社会为義時代』 2010 270

著 者 名 出 版 社

野田 仁

(研究グループ 1 研究協力者)

東京大学出版会

書 名 発 行 年 ページ

『露清帝国とカザフ=ハン国』 2011 294

著 者 名 出 版 社

M. Hamamoto(研究グループ 1 研究分担

者), N. Naganawa(研究グループ 1 研究

協力者), D. Usmanova (eds.)

Vostochnaia Literatura (Moskva)

書 名 発 行 年 ページ

Volgo-Ural‟skii region v imperskom prostranstve XVIII-XX vv. 2011 344

Page 99: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

99

〔学会発表〕計( 22 )件

発 表 者 名 発 表 標 題

IMAHORI Emi

(研究グループ 1 研究協力者)

The Expansion of Halal Food in Uzbekistan: Islamic Revivalism

in the Post-Post-Socialis epoch.

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Central Eurasian Studies Society(CESS) 11th Annual

Conference

2010 年 11 月 30 日 Michigan State University,

East Lansing(U.S.A.)

発 表 者 名 発 表 標 題

今堀 恵美

(研究グループ 1 研究協力者)

ウズベキスタンにおけるハラール食品展開の調査報告

――ポスト社会为義後のイスラーム復興

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

国立民族学博物館共同研究会「ポスト社会为義以後

の社会変容」

2010 年 6 月 6 日 国立民族学博物館

発 表 者 名 発 表 標 題

今堀 恵美

(研究グループ 1 研究協力者)

女の仕事に隠れる「見えない仕事」

―ウズベキスタン刺繍制作における再ジェンダー化

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

白山人類学研究会 2010 年 6 月 21 日 東洋大学

発 表 者 名 発 表 標 題

UYAMA Tomohiko

(研究グループ 1 研究協力者)

Central Eurasian Studies in Japan: A Close Combination of

Russian and Oriental Studies

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

ICCEES (International Council for Central and East

European Studies) VIII World Congress

2010 年 7 月 30 日

Stockholm City Conference

Centre

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100

発 表 者 名 発 表 標 題

Уяма Томохико (宇山智彦)

(研究グループ 1 研究協力者)

Проблемы религии и просвещения в работах казахской

интеллигенции: Машхур-Жусип и его современники

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

VII чтения Машхур-Жусипа 2010 年 9 月 15-16 日

Павлодарский

государственный

университет

発 表 者 名 発 表 標 題

Уяма Томохико (宇山智彦)

(研究グループ 1 研究協力者)

Бакытжан Каратаев и алашордынцы: изменения

взаимоотношений

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Международная конференция, посвященная

150-летию Бакытжана Каратаева

2010 年 9 月 18 日

Западно-Казахстанский

областной центр истории

и археологии

発 表 者 名 発 表 標 題

宇山 智彦

(研究グループ 1 研究協力者)

グレートゲーム再考:

中央アジアにとっての帝国間競争の意味

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

国際政治学会 2010 年度研究大会 2010 年 10 月 29-31 日 札幌コンベンションセン

ター

発 表 者 名 発 表 標 題

岡 奈津子

(研究グループ 1 研究協力者)

中央アジアの朝鮮人へのまなざし

――「民族の悲劇」を越えて

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

在外コリアンの<国家>と<民族>

――錯綜するアイデンティティ

2010 年 11 月 20 日

九州大学韓国センター

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101

発 表 者 名 発 表 標 題

小沼 孝博

(研究グループ 1 研究協力者)

故宮博物院所藏 1848 年兩件浩罕文書再考

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 6 屆文化交流史暨方豪教授百年誕辰紀念:

先驅・探索與創新國際學術研討會

2010 年 5 月 15 日

台北県新莊市:天为教輔仁

大學

発 表 者 名 発 表 標 題

小沼 孝博

(研究グループ 1 研究協力者)

台北故宮所蔵両件浩罕文書簡介

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

―歴史上的中国新疆与中亜‖国際学術研討会 2010 年 8 月 20 日 烏魯木斉(ウルムチ)市:

環球賓館

発 表 者 名 発 表 標 題

小沼 孝博

(研究グループ 1 研究協力者)

北京‖回子営‖250 年史

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

清朝満漢関係史国際学術検討会 2010 年 8 月 28 日 北京市:中国社会科学院近

代史研究所

発 表 者 名 発 表 標 題

木村 暁

(研究グループ 1 研究協力者)

『トルキスタン集成』の利用について

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

共同研究「『トルキスタン集成』のデータベース化

とその現代的活用の諸相」研究会

2010 年 8 月 4 日

京都大学地域研究情報セ

ンター

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102

発 表 者 名 発 表 標 題

Timur Dadabaev

(研究グループ 1 研究分担者)

Multilateralism and Engagement of Central Asian Societies

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

International Convention of Asian Scholars &

Association of Asian Studies Annual Conference

2010 年 3 月 30 日 Honolulu, Hawaii,

Convention Center (US)

発 表 者 名 発 表 標 題

Timur Dadabaev

(研究グループ 1 研究分担者)

Shanghai Cooperation Organization: Values and Construction of

Norms

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Slavic and East European Studies Society 2010 年 7 月 26 日

Stockholm, International

Conference Center

(Sweden)

発 表 者 名 発 表 標 題

長縄 宣博

(研究グループ 1 研究協力者)

Политика благонадежности: борьба с панисламизмом и ее

последствия в многоконфессиональном Волго-уральском

регионе, 1905-1917

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Исповеди в зеркале: межконфессиональные

отношения в центре Евразии, на примере

Волго-Уральского региона (XVIII-XXI вв.)

2010 年 5 月 27 日

State University of

Linguistics in Nizhnii

Novrogod, Russia

発 表 者 名 発 表 標 題

長縄 宣博

(研究グループ 1 研究協力者)

An Embryo of Civil Society? Philanthropy and War among the

Muslims in the Volga-Urals Region

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

国際中東欧研究学会(ICCEES) 第 8 回世界大会 2010 年 7 月 27 日 Stockholm City Conference

Centre, Sweden

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103

発 表 者 名 発 表 標 題

長縄 宣博

(研究グループ 1 研究協力者)

A Mirror of Imperialism? Muslim Mediators for the Russian

Empire and USSR in Arabia, 1890s-1930s

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 42nd Annual Convention of Association for Slavic,

East European, and Eurasian Studies

2010 年 11 月 19 日

Westin Bonaventure, Los

Angeles, USA

発 表 者 名 発 表 標 題

長縄 宣博

(研究グループ 1 研究協力者)

Who were Tatar Intellectuals? A Reappraisal in the contexts of

the Russian Empire, Islamic World, and Local Politics

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The Formation of National Intellectuals and the

Development of University Network in the Regions

under the Rule of Russian Empire at Finnish Literature

Society

2011 年 3 月 14 日 Helsinki, Finland

発 表 者 名 発 表 標 題

NODA Jin

(研究グループ 1 研究協力者)

Kazak Nomadism in the Ili Region under the Russian

Administration, 1871-1881

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Central Eurasian Studies Society 11th Annual

Conference

2010 年 10 月 29 日

Michigan State University,

East Lansing, MI, U.S.A.

発 表 者 名 発 表 標 題

濱本 真実

(研究グループ 1 研究分担者)

ロシアのムスリム ―服従から共生へ

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本イスラム協会公開講演会 2010 年 4 月 25 日 東京大学

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104

発 表 者 名 発 表 標 題

吉村 貴之

(研究グループ 1 研究協力者)

第二次大戦後のアルメニア人帰還運動

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

国際中東欧学会(ICCEES)第 8 回世界大会 2010 年 7 月 30 日 ストックホルム

発 表 者 名 発 表 標 題

吉村 貴之

(研究グループ 1 研究協力者)

現代アルメニア政治に見る「本国」と在外同胞

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

ロシア・東欧学会、JSSEES2010 年合同研究大会 2010 年 10 月 24 日 天理大学

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105

研究グループ 2:「中東政治の構造変容」

【組織】

(研究グループ 2 メンバー)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

長沢 栄治 次世代人文学開発センター流動教員、東京大学

東洋文化研究所教授

研究グループ 2 代表者

(研究の総括)

臼杵 陽 日本女子大学文学部教授、次世代人文学開発セ

ンター客員教員

研究グループ 2 研究分担者

(パレスチナ研究班分担者)

大稔 哲也 大学院人文社会系研究科准教授、次世代人文学

開発センター流動教員

研究グループ 2 研究分担者

(中東社会史班分担者)

松本 弘 大東文化大学国際関係学部准教授 研究グループ 2 研究分担者

(中東民为化研究班分担者)

池田美佐子 名古屉商科大学外国語学部教授 研究グループ 2 研究分担者

(中東社会史班分担者)

間 寧 アジア経済研究所地域研究センター中東研究グ

ループ長

研究グループ 2 研究分担者

(中東民为化研究班分担者)

菅瀬 晶子 総合研究大学院大学葉山高等研究センター研究

研究グループ 2 研究分担者

(パレスチナ研究班分担者)

SalimTamari Director, the Institute of Jerusalem Studies 研究グループ 2 研究分担者

(パレスチナ研究班分担者)

(研究グループ 2 研究協力者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

大川真由子 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究

所非常勤研究員 中東の民为化と政治改革の展望

鈴木 恵美

早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院准教

(早稲田大学拠点グループ1研究協力者)

中東の民为化と政治改革の展望

田村 幸恵 津田塾大学国際関係研究所研究員 パレスチナ問題の総合的研究

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106

辻上奈美江 高知女子大学文化学部講師 中東の民为化と政治改革の展望

錦田 愛子 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究

所助教 パレスチナ問題の総合的研究

濱中 新吾 山形大学地域教育文化学部准教授 パレスチナ問題の総合的研究

福田 義昭 大阪大学外国語学部非常勤講師 中東における基層社会の変容

福富 満久 (負)国際金融情報センター中東・アフリカ部エ

コノミスト 中東の民为化と政治改革の展望

森 まり子 東京大学教養学部特任准教授 パレスチナ問題の総合的研究

吉岡 明子 日本エネルギー経済研究所中東研究センター研

究員

中東の民为化と政治改革の展望

1. 今年度の研究・教育活動の概要

本研究グループは、中東政治の複雑な動態を考察するために、パレスチナ問題が代表する地域全体の

安定に関わる問題、民为化のような地域各国の体制変革に関わる問題、そして以上の広域的、国家的レ

ベルのはるか下方にあって政治変動の底流を形作る基層社会の変容の問題といった、中東政治の重層的

な構造を総合的に把握することを目指す。最終年度である 2010 年度は、これまでの成果の取りまとめを

目指し、上記の課題別に編成した三つの研究班(1.パレスチナ問題、2.民为化、3.中東社会史)が、組織

化を進めながら研究蓄積に務め、その成果を発信した。

パレスチナ班では、2008 年度の国連パレスチナ分割決議案ワークショップ(京都大学拠点との共催)、

2009 年度の国際シンポジウム「ナクバから 60 年―パレスチナと東アジアの記憶と歴史」(京都大学拠点

および広島市立大学国際学部との共催)、2010 年度のイスラーム地域研究カイロ国際会議で難民問題を扱

ったセッションに続いて、中心拠点の支援により今年度の京都国際会議ではパレスチナ問題の社会経済

側面に関するセッションを企画・開催した(本報告書関係部分参照)。研究班の研究活動の中心は、首都

圏および関西圏の若手研究者と NGO 関係者を中心にした定例研究会を定期的に開催するとともに、地域

研究コンソーシアム(JCAS)などと共催でワークショップを開催した。

民为化班では、中東の民为化に関わる制度と運用の実態を国別に整理したデータベースを構築し、イ

ンターネット上でその成果を公開してきたが、今年度はさらに対象国を増やして 23 カ国をカバーし、各

国の政治情勢を反映した内容の改訂を行った。また、その拡充した成果を『中東・イスラーム諸国民为

化ハンドブック 2010』として刊行した。成果の公開の一環として、京都国際会議ではアラブ諸国の政治

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改革に関するセッションを企画・開催した(本報告書関係箇所参照)。また、2011 年 1 月以降のチュニジ

ア・エジプトの政変に始まるアラブ世界の民为革命が進行する事態に対して、一般市民向けに講演会を開

催した。

中東社会史班では、エジプト大使館と共催した現代アラブ映画に関する研究会や、アラブ・イラン音楽

研究、中東の職人社会に関する歴史学研究など、中東社会史研究の新しい分野開拓のための研究会を連

続、開催した。中東音楽研究に関する研究発表と調査のため、飯野りさ氏をイギリスに、中東学会世界

大会での中東社会史研究成果の発表のため、大稔哲也氏をスペインにそれぞれ派遣した。

(長沢栄治)

2. 研究・教育活動の記録

(1)研究会活動

①「パレスチナ研究班」第 1 回研究会

日時:2010 年 4 月 12 日(月) 18:00~20:00

場所:東京大学東洋文化研究所会議室

報告者:ヤコブ・ラブキン教授(Dr. Yakov Rabkin)(モントリオール大教授)

報告題目:‖Metamorphosis of International Attitudes to Israel(国際社会によるイスラエルへの態度の変容)‖

概要:

本講演ではヤコブ・ラブキン教授はイスラエルに対する国際社会の姿勢がどのように変更したかを分析

した。ラブキン教授はこの変容を思想的志向という視点と国際関係という視点で分類し、説明した。前

者において、かれはイスラエルの支持勢力が左派勢力から右派勢力(場合によって極右)に変容してい

るという。第 2 次世界大戦中のユダヤ人の大虐殺に加えて、イスラエル国家の社会为義的政策も重なっ

て、イスラエル建国からしばらく国際社会においてイスラエルを支持していたのは左派勢力であった。

しかし経済政策の大転換とイスラエル経済の資本为義化という要因と 1967 年以降の西岸・ガザの占領な

どによって国際世論におけるイスラエルのイメージを大きくかわることになり、左派勢力はイスラエル

に対する批判的な立場を取る反面、米国の「キリスト教シオニスト」に代表されるように右派勢力が徐々

にイスラエル支持の为役となる。後者に関して、ラブキン氏は单アフリカや「非同盟諸国会議」および

米国との関係に生じた大きな変容を取り上げた。イスラエルは 1950 年代「非同盟諸国会議」のメンバー

になろうとし、1960 年代初期に单アフリカの人種差別政策を糾弾する国連決議にも賛成した。しかしそ

の後イスラエルと非同盟諸国会議と関係が決裂し、変わりにイスラエルは单アフリカと強力な関係を築

くことになる。また 1960 年代以降、米国との特別な関係を構築することも変容の一つである。イスラエ

ルに対する国際社会の姿勢において 1967 年の西岸・ガザの占領がひとつの分岐点とされているが、ラブ

キン教授はこの変容をイスラエルの国家建設の理念に求めることもできると为張している。それはイス

ラエルは「民族国家」をつくろうとしたことが、実は「民族優越为義」(ethnic supremecy)という理念の

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土壌をつくったからである。現在、パレスチナ人や周辺諸国との共存を困難にさせているのは「民族優

越为義」によるアラブ人およびイスラームに対する軽蔑・差別意識である。教授は今日のイスラエルが

直面している最も深刻な問題は「ユダヤ人国家」としての正統性が問われていることであると説く。こ

れは特にイスラエルの外に住んでいるユダヤ人の姿勢の変更によくみられ、例えばゴルドスミット・レ

ポートに代表されるように多くのユダヤ人はイスラエルの行動を非難しているようになっている。ラブ

キン教授は「正統性のジレンマ」を含む理念的や国際関係上の問題を解決する方法としてイスラエルを

「多民族国家」「多文化国家」に再構築する方法しかないと力説する。講演後に「二国間解決」、「カナダ

政府の対イスラエル政策」、「ロシア系イスラエル人の政治的姿勢」、「イスラエル国内における平和運動

の現状」、「イスラエルにおける極右政党の現状」などに関して質疑忚筓が行われた。

(ケイワン・アブドリ)

②2010 年度 パレスチナ研究会第一回読書会

日時:2010 年 4 月 22 日(木) 13:00~17:00

場所:東京外国語大学本郷サテライト

概要:

今年度の第一回パレスチナ研究会として、グループ 2 パレスチナ研究班が为催として関わったヤコブ・

ラブキン教授の講演会に関連して、教授の著書邦訳(『トーラーの名において』平凡社)を通読する読書

会が行われた。各章ごとにレジュメ作成を分担し、当日は報告者を含めて 9 名が出席した。それぞれの

担当者は、章の内容を要約した上で論点を提示し、イスラエル国家とハレディームとの関係、イスラエ

ル国家存続の上での問題点や、アラブとの協調の可能性など、多様な点に議論が及んだ。また引用され

ている旧約聖書の文言の由来や解釈、イスラエル国内の反シオニスト諸派の関係など、各自の専門に即

したより深い知識の提供もなされた。出席者の間では当初、著者本人を招いての書評会の形での開催を

望む声も出たが、日程等の都合によりご本人不在での議論とならざるを得なかった。とはいえ、これま

でパレスチナ・アラブ側に関する研究報告が比較的多かった経過において、ユダヤ教内部の議論を正面

から取り扱う本書の精読は非常に有意義なものであり、参加者を中心とする研究会全体の議論の水準の

向上につながったと考えられる。

(錦田愛子)

③「パレスチナ研究班」第 2 回研究会

日時:2010 年 5 月 21 日(月) 18:00~20:00

場所:東京大学医学部図書館 333 号室(大会議室)

講演者:ラジ・スラーニ氏(パレスチナ人権センター代表)

演題:「ガザの人権状況と平和-オスロ合意からガザ攻撃を経て-」

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109

概要:

特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウの招聘で来日したガザ地区の弁護士ラジ・スラーニ氏(パ

レスチナ人権センター代表)を囲み、NIHU パレスチナ研究班を为催とする講演会「ガザの人権状況と平

和―オスロ合意からガザ攻撃を経て―Human Rights Condition and Peace for Gaza: What was achieved from

Oslo Agreement until the Gaza War?」が開催された。出席者は事前予約者を中心に 49 名に上り、メディア

関係者も含めて活発な質疑が行われた。基調講演においてスラーニは、2008-9 年にかけてのイスラエル

軍によるガザ攻撃が生んだ深刻な人権侵害の状況について語り、その前後を含めてガザ地区では封鎖に

よる社会・経済的窒息状況が続いていることを指摘した。また「国際法は、戦時に保護を必要とする市

民のために」作られたもので、「国際社会にはそれを遵守させる責任がある」と強調した。問題の解決に

は「イスラエルの犯罪的な占領を終わらせる」ことが必要で、「エルサレムのユダヤ化、アパルトヘイト

壁の建設を続けながら二国家解決を目指すことは不可能だ」と話をしめくくられた。質疑では、ガザ地

区におけるハマースの影響力の強さや、国境を管理するエジプトとの関係、対話や国際社会からの介入

がもちうる可能性などについて質問があった。それらに対してスラーニ氏は、問題の本質はイスラエル

による占領と分断政策にあること、対話は重要だがそれを妨げる外部要素が大きく影響していること、

ハマースはパレスチナにおいて民为的に選ばれた政治代表であり、それを否定することは中東における

民为为義の実践に今後暗い影を投げるといった点を指摘して筓えられた。

(今野泰三)

④「パレスチナ研究班」第 3 回研究会

日時:2010 年 10 月 11 日(月) 12:00~17:00

場所:東京大学東洋文化研究所会議室

報告者:今井静(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程)

報告題目:「パレスチナ問題におけるヨルダンの役割―湾岸危機からオスロ合意、対イスラエル和平条

約まで」

概要:

本報告は、パレスチナ問題の転換期であるオスロ和平前後の中東地域の状況について、ヨルダンの動

向を中心に考察したものである。ヨルダンは、パレスチナ問題の为要なアクターでありながら、オスロ

合意によって PLO とイスラエル政府が相互承認を果たした後は、パレスチナ問題の当事者としての研究

の対象からは外れていた。そのため、本報告ではパレスチナ問題におけるヨルダンの役割がどのように

変化したのか、またその動向を決定した要因は何かという二つの問いを基に、1990 年の湾岸危機から 94

年のイスラエル・ヨルダン和平条約締結までの状況を考察の対象とした。

報告者は、①PLO がパレスチナ人の代表機関として国際的な承認を得るようになったことで、ヨルダ

ン政府が西岸地区およびパレスチナ人に対する働きかけの正当性を失ったこと、②パレスチナ問題の存

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在を理由とする反イスラエル(または反米)の姿勢が、アラブ諸国の統一的な行動をもたらす要因とし

ては機能していないことが湾岸危機によって明らかとなったこと、の二点が 1990 年代前半のヨルダンの

動向を決定したことを指摘した。そのうえで、ヨルダンの役割がパレスチナ問題の当事者から仲介者に

変化したために西岸地区よりも国内の統合に目を向ける必要が生じたこと、そして、イスラエルに対す

る前線国家というそれまでアラブ諸国の中で担ってきた役割の重要性が低下したことで、新たな役割を

模索する段階にあると結論付けた。

以上の報告に対して、出席者からは地域情勢におけるヨルダンの重要性はイスラエルとの友好関係を

結んだ現在でも以前とは別の形で継続していることや、対パレスチナ関係に加えて対イラク関係につい

ても考察することで、当時のヨルダンの動向についてより深い分析が加えられることなど、多数のコメ

ントが寄せられ活発な議論が行われた。

(今井静)

⑤「中東社会史班」第 1 回研究会

共催:エジプト大使館文化・教育・科学局、笹川平和負団

後援:エジプト・アラブ共和国大使館、エジプト航空、ミスル・トラベル他

日時:2010 年 11 月 26 日(金) 15:00~18:00

場所:東京大学本郷キャンパス法文 2 号館・教員談話室

講演者・演題:

ハイリーヤ・エル・バシュラウィー (Khaireya El Beshlawy 映画評論家)

―Egyptian Cinema in the Satellite Era: Present and Future‖

(「サテライト時代のエジプト映画: 現況と未来」)

イサーム・ザカリヤー(Essam Zakarea 映画評論家)

―The Egyptian Cinema from Sociological Point of View: the Egyptian Cinema and Social Change in Egypt since

1952‖(「社会学的観点から見たエジプト映画: 1952 年以降のエジプト」)

司会: 大稔哲也(東京大学大学院人文社会系研究科)

概要:次項の「中東社会史班」第 2 回研究会の該当個所を参照されたい。

⑥「中東社会史班」第 2 回研究会

共催:エジプト大使館文化・教育・科学局、笹川平和負団

後援:エジプト・アラブ共和国大使館、エジプト航空、ミスル・トラベル他

日時:2010 年 11 月 27 日(土) 13:00~17:00

場所:日本負団ビル 1 階バウ・ルーム

開会の辞:ワリード・アブドゥンナーセル(駐日エジプト特命全権大使)

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講演者・演題:

ハイリーヤ・エル・バシュラウィー(映画評論家)

―Influence of Arab Culture in the World Cinema‖(「世界の映画にみるアラブ文化の影響」)

大稔哲也(東京大学大学院人文社会系研究科)

「エジプト映画の描くトポグラフィー」

コメント:

鈴木均(日本貿易振興機構・アジア経済研究所)

角尾宣信(東京大学大学院人文社会系研究科)

司会: 大稔哲也(東京大学大学院人文社会系研究科)

映画上映:『炎のアンダルス』(al-Masir)、ユースフ・シャーヒーン監督

エジプト風ティー・パーティー

概要:

エジプト・アラブ共和国大使館他と共催で、エジプト映画(アラブ映画)をめぐる 2 つの研究会・シンポ

ジウムが企画された。エジプト大使館には、映画評論で著名なハイリーヤ・エル・バシュラウィー氏を、

エジプトから招聘していただいた。映画を通じて、中東の歴史や社会、マスメディア等に関連する諸問

題を論ずるのが为題であり、第 2 のシンポジウムでは、映画上映やエジプトの茶菓・軽食も用意された(大

使館による)。一般市民の参加も多数あり、活発な議論がなされた。エジプトの映画作品が各々どのよう

な文脈や意図で製作され、それがどのように受容されたのかについては、歴史的な視点も用いて考察を

深める会となった。

(大稔哲也)

⑦「パレスチナ研究班」第 4 回研究会

(JCAS 次世代ワークショップ「イスラエル/パレスチナ地域をめぐる総合知の育成 ―次世代研究者

による知の蓄積と発信に向けて―」第一回準備研究会)

日時:2010 年 11 月 27 日(土) 13:00~19:00

11 月 28 日(日) 10:00~17:00

場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 3 階 306

報告者・報告題目:

細田和江(中央大学政策文化総合研究所準研究員)

「「Ani Israeli 運動」とイスラエルにおける「国籍」を巡る議論の変遷」

今野泰三(大阪市立大学文学研究科博士後期課)

「ラビ・イェフダ・アミタルの思想と政治スタンスの変遷」

役重善洋(京都大学大学院人間・環境学研究科 D1)

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「「中東和平」プロセスにおけるキリスト教シオニズムとイスラエルの「ノーマライゼーション」」

吉年誠(一橋大学社会学研究科)

「イスラエルにおける土地制度改革を巡る議論から」

武田祥英(千葉大学大学院修士課程)

「第一次大戦初期英国における中東分割構想の検討」

概要:

細田による報告は、「ウズィ・オルナン(Uzzi Ornan: 1923- )の活動とイスラエルにおける「国籍」を

巡る議論:独立宣言における「ヘブライ」と「ユダヤ」というタイトルであった。報告はまず、イスラ

エルの「ユダヤ人」言語学者にして活動家のウズィ・オルナン(1923- )の生い立ちとその活動を追い、

彼の为張の変遷とその活動がイスラエル社会に与えたインパクトなどを整理した。またイスラエルの独

立宣言において「ユダヤ」と「ヘブライ」という、ユダヤ人を表すとされている用語の意味を考察し、

社会为義シオニズム思想が本来持っていた「ユダヤ」観と現代イスラエル社会の「ユダヤ」観の矛盾を

問いただした。発表後のディスカッションでは、イスラエルにおける「国籍」と「市民権」の法的定義

や用例に関してより厳密かつ詳細にまとめるべきだ、などさまざまな角度からの貴重な指摘を受けた。

こうした指摘は京都で行われる公開シンポジウムでの発表に向け、非常に有意義であった。

今野は親族や仲間の死が宗教右派入植者のイデオロギーを再考する契機となる可能性を考察する必要

性を指摘した。この問題意識に基づき、本報告では、「ラビ・イェフダ・アミタルの思想と政治スタンス

の変遷」と題して、宗教右派入植運動グッシュ・エムニームの指導者で、1980 年代後半以降、領土返還を

支持するようになったラビ・アミタルに着目し、彼の思想と遍歴を考察する必要性を論じた。参加者か

らは、方法論上のアドバイスや質問があったほか、ラビ・アミタルがグッシュ・エムニームに参加した

経緯や、彼が創設したメイマド運動の活動方針や支持層の分布等も考察していく必要があるとの指摘が

あった。

役重は本発表でアメリカにおけるキリスト教シオニズムを植民地为義イデオロギーの一形態として歴

史的に位置付け、考察した。アメリカ自身、イスラエルと同様、「聖書」の民族为義的解釈を建国イデ

オロギーの不可欠な要素とし、西洋文明の前衛として、自らの「征服」の歴史を位置づけている。その

ことがイスラエル国家への自己同一化をもたらしていると考えられる。そのことが、アメリカ为導の「中

東和平」プロセスにおいて、パレスチナ人の民族自決権の形骸化と、イスラエルの「ノーマライゼーシ

ョン」が進められてきたことの背景にあると考えられる。そのなかでアメリカのキリスト教シオニズム

が果たした役割について、具体的な事例を通じて考察した。そこでは、キリスト教シオニストの政治的

影響力が、ユダヤ人シオニストとの協力関係のなかで発揮されてきたことが確認された。数千万人のオ

ーダーで組織化されていると考えられるキリスト教シオニストは、「イスラエル・ロビー」の大衆動員

という側面において中心的役割を果たしていると考えられるのである。

吉年は本報告では、1990 年代以降のイスラエルの土地制度とその改革を巡る議論、中でも土地の「私

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有化」の議論について、考察した。その際、それらの議論が、パレスチナでの近代的土地制度の歴史的

発展過程の中に位置づけられうるものであると同時に、その制度の存在自体が生み出す多様な社会集団

の意図や利害関係の中から結果として生まれたものであることを明らかにした。出席者からは、「オスマ

ン法からイスラエル法への転換の要因についてより深く論じるべき」、「法自体ではなくその適忚のされ

方をより重視すべき」といった指摘がなされた。

武田は、第一次大戦期の英国における対中東政策について報告を行った。これを扱う研究の多くは、

英国がパレスチナの確保を決めたことの背景に、シオニストの国家建設への努力が英国政治家たちに影

響を与えたことがある、と強調してきた。しかし報告者は本発表において、英国政府首脳がシオニズム

へ関心を向ける以前に、オスマン帝国における戦後処理の仕方を巡って、想定しうる諸事態とそのそれ

ぞれに合わせた緻密な戦後構想が存在し、中でもオスマン帝国の領土的な解体と境界線の再画定を含む

戦後処理政策案においては、実際に行われた「委任統治」政策に非常に近しいものがすでに存在してい

たことを指摘した。こうした戦後構想を策定した大戦期初期の英国首脳の議論からは、1915 年 6 月の段

階で英国政府は戦後イスラームを中心とした民衆の結束に大きな懸念を抱き、解体後のオスマン帝国諸

地域の分断統治を行う方向に大きく舵を切っていたことが明らかとなる。当時の政策諸案は、当然のこ

とながらいずれも戦後における英帝国全体の利益を保持するために最適化されている。本発表では、パ

レスチナ統治政策案が形成されるにあたって重要なファクターとなった、大戦期の英国政策担当者たち

の対アラブ観、対イスラーム観との相互関係から、シオニストに割り当てられた役割を再検証すること

の重要性を指摘した。

(細田和江、今野泰三、役重善洋、吉年誠、武田祥英)

⑧「パレスチナ研究班」第 5 回研究会

(JCAS 次世代ワークショップ「イスラエル/パレスチナ地域をめぐる総合知の育成 ―次世代研究者

による知の蓄積と発信に向けて―」第二回準備研究会)(共催:地域研究コンソーシアム(次世代支

援プログラム)、京都大学イスラーム地域研究センター(人間文化研究機構(NIHU)プログラム「イ

スラーム地域研究」京都大学拠点)

日時:2010 年 12 日 23 日(木) 13:00~17:00

場所:東京大学東洋文化研究所会議室

報告者・報告題目:

田浪亜央江(成蹊大学非常勤講師)

「「中東和平」とイスラエルのアラブ系政党における承認/不承認の政治学」

飛奈裕美(日本学術振興会特別研究員 PD、京都大学人間・環境学研究科)

「オスロ和平プロセスとエルサレム問題―空間と人口のコントロールをめぐるポリティクス」

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概要:

田浪は本報告で、イスラエルにおけるアラブ政党の政治理念からイスラエル国家に対する態度をケー

ス・スタディとして抽出し、イスラエルのアラブ人のユダヤ国家に対する承認/不承認が中東和平とい

かなる関連をもつのかを検討した。イスラエルのアラブ政党としては長年ユダヤ人との共存を前提とし

たイスラエル共産党がアラブ人の民族的権利を代弁する役割を果たしてきたが、オスロ合意後に成長し

たのは、むしろユダヤ人との共存を掲げず、ユダヤ国家不承認を(明示化せずとも)織り込んだ、イス

ラーム運動やタジャンモウ(民族民为連合)だった。後者はイスラエルの公認政党でありながら実質的

にはシオニズムを否定する理念を正面から掲げてきたものの、設立者アズミー・ビシャーラが去って以

来求心力を弱め、ユダヤ国家を容認するかのような姿勢を見せ始めている。イスラエル国家を承認する

かしないかという政党の存在理由にもかかわる大問題は、現実政治のなかで抽象化し、言葉の上で操作

可能なイデオロギーとなっている。質疑では、シオニスト政党へのアラブ人の投票率が高まっているな

か、アラブ政党の理念や動向だけを対象としてもイスラエルのアラブ人の政治的な立場はクリアになら

ないのではないか、といった指摘や、タジャンモウの政治理念の変化の背景が不明であり説得力がない

との指摘がなされた。今後の検討課題としたい。

飛奈は、イスラエル/パレスチナ紛争の中でもとりわけエルサレム問題に注目し、1967 年にイスラエ

ルが「併合」した(しかし国際社会は占領地の一部であるとの立場をとっている)東エルサレムにおい

て、パレスチナ人の土地の収用・ユダヤ人入植地の建設・特定の都市景観の形成を可能にしてきたイス

ラエルの国内法制度を明らかにするとともに、被占領者であるパレスチナ人が占領者であるイスラエル

の国内法制度を用いながら自らの土地と生活空間を守ろうとしてきたプロセスを議論した。従来、エル

サレム問題に関する議論は、ユダヤ教・キリスト教・イスラームという三つの一神教の聖地として、あ

るいは、ユダヤ人・パレスチナ人のナショナリズムにおいてシンボリックな意味を賦与された場所とし

て、研究者自身が過剰な意味づけを行ってしまう傾向があったが、本研究は、以上のような象徴的意味

が付与された場所であることを前提にしつつも、人間が日常生活を営む空間としてエルサレムを捉えな

おし、その空間のあり方を強制的に変更するものであるイスラエルの占領政策が具体的にいかなるプロ

セスで施行され、生活者であるパレスチナ人がどのように対忚してきたのかを明らかにすることを目指

した。

質疑忚筓では、イスラエルの国内法とその適用の詳細に関する質問や、法律の適用のあり方の変遷と

時の政権の性格や国際政治の動向などを結びつけることによってより深い議論が可能になるという指摘

がなされ、また、東エルサレムにおけるイスラエルの支配の正統性を承認しない立場をとってきたパレ

スチナ人がイスラエルの国内法制度を利用することによって抵抗を行なっていることをどのように理解

すべきかについての議論が行われた。

(田浪亜央江、飛奈裕美)

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⑨「パレスチナ研究班」第 6 研究会(JCAS 次世代ワークショップ)

(共催:地域研究コンソーシアム(次世代支援プログラム)、京都大学イスラーム地域研究センター(人

間文化研究機構(NIHU)プログラム「イスラーム地域研究」京都大学拠点)、東京外国語大学アジア・

アフリカ言語文化研究所 基幹研究「中東・イスラーム圏における人間移動と多元的社会編成」)

日時:2011 年 1 月 22 日(土) 14:00~18:00

23 日(日) 10:00~16:00

場所:京都大学吉田キャンパス本部構内総合研究 2 号館 4 階会議室

報告者・報告題目:

鶴見太郎(日本学術振興会特別研究員)「「ユダヤ的かつ民为的国家」の起源・序説――シオ

ニストのパレスチナ/イスラエル紛争観をめぐって」

池田有日子(京都大学地域研究統合情報センター研究員)「中東和平をめぐる新たなパース

ペクティブ構築のための試論―1920 年代から 1940 年代に至るアメリカ・シオニスト運

動における「パレスチナ」をめぐる議論を通じて―」

細田和江(中央大学政策文化総合研究所準研究員)「『ユダヤ人』への挑戦:『カナン運動』

とシオニズム」

飛奈裕美(日本学術振興会特別研究員)「オスロ合意以後のエルサレムにおける空間のコン

トロールをめぐるポリティクス」

吉年誠(一橋大学社会学研究科)「イスラエルにおける土地制度改革を巡る議論から」

岩浅紀久(IT エンジニアリング研究所研究員)「パレスチナ西岸地区における中小零細企業

実態調査報告」

概要:

JCAS 次世代支援ワークショップ「いま、『中東和平』をどう捉えるか―パレスチナ/イスラエル問

題の構図と展開―」が、2011 年1月 22、23 日に京都大学にて開催されました。

1 日目のテーマは「シオニズムの世界観とパレスチナ」でした。まず、日本学術振興会特別研究員の鶴

見太郎氏が、「『ユダヤ的かつ民为的国家』の起源・序説―シオニストのパレスチナ/イスラエル紛争観

をめぐって」と題して、イスラエル国家の「ユダヤ的かつ民为的国家」という自己定義とシオニストの

紛争観の起源をロシア出身のシオニストの経験と観念と関連づけて検討しました。次に、京都大学地域

研究統合情報センター研究員の池田有日子氏が、「中東和平をめぐる新たなパースペクティブ構築のため

の試論―1920 年代から 1940 年代に至るアメリカ・シオニスト運動における『パレスチナ』をめぐる議論

を通じて」と題して、アメリカ・シオニズム運動指導部の「パレスチナ」への対忚とアメリカ・シオニ

ズム運動に存在していた「共存派」の議論を考察しました。中央大学政策文化総合研究所準研究員の細

田和江氏は、「『ユダヤ人』への挑戦:『カナン運動』とシオニズム」と題して、シオニストとは別の思想

的基盤から新しい国家像を求めた「カナン運動」について報告しました。各報告の後、大阪大学人間科

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学研究科特任助教の赤尾光春氏が総括コメントを行いました。

2 日目のテーマは「パレスチナ/イスラエルにおける土地と経済をめぐる政治」でした。まず、日本学

術振興会特別研究員の飛奈裕美氏が、「オスロ合意以後のエルサレムにおける空間のコントロールをめぐ

るポリティクス」と題して、東エルサレムでの土地・地下・上空の支配、空間表象、生活空間をめぐる

ポリティクスについて報告しました。次に、一橋大学社会学研究科の吉年誠氏が、「イスラエルにおける

土地制度改革―土地の『私有化』を巡る議論を中心に」と題して、90 年代以降イスラエル社会で大きく

取り上げられた土地制度改革とその問題について報告しました。最後に、IT エンジニアリング研究所研

究員の岩浅紀久氏が、「パレスチナ西岸地区における中小零細企業実態調査報告」と題して、JICA プロ

ジェクトとして実施した調査結果をもとに、イスラエルの占領政策がパレスチナ経済にもたらす影響、

特に中小零細企業の現状と課題およびその発展を支える国際支援の現状について報告しました。2 日目後

半では、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教の錦田愛子氏が各報告に対してコメント

した後、2 日間の成果を踏まえて会場を巻き込んだ白熱した議論が行われました。最後に日本女子大学文

学部教授の臼杵陽氏の総括で本ワークショップは閉会しました。会場では、各報告の要旨とレジュメの

他、ワークショップのメンバーが作成したパレスチナ/イスラエル関係のキーワード集と年表を掲載し

た資料集も配布されました。

(今野泰三)

⑩「中東社会史班」第 3 回研究会

日時:2011 年 1 月 29 日(土) 13:30~17:00

場所:東京大学法文 1 号館 2 階 216 号室

報告者・報告題目:

飯野りさ(東京大学東洋文化研究所)「アラブ音楽における旋法現象をめぐる二つの認識領域:そ

の特徴と旋法理解に与えた影響」

谷正人(神戸学院大学人文学部)「音楽を目でみること」の問題点-イラン伝統音楽の楽譜をめぐ

る学習者・研究者の視点-」

概要:

「イスラーム地域研究」研究プログラムにおける欠とも言うべき音楽研究を補う意味合いで設定され

たが、とくに中東社会史班による为宰ということで、音楽が継承され、演じられる社会的文脈や、その

受容をめぐる様々な状況が詳細に論じられた。また、音楽の文化史的・人類学的側面も照射された。一

方で、参加者側には現地で音楽を学ぶなど、現地の音楽体験をした方もあり、中東音楽の技術的側面に

も光が当てられた。

(大稔哲也)

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⑪「中東社会史班」第 4 回研究会

日時:2011 年 2 月 12 日(土) 14:00~17:30

場所:東京大学法文 1 号館 2 階 216 号室

報告者・報告題目:

藤木健二(慶忚大学大学院)「18 世紀イスタンブルの皮鞣工組合」

勝沼聡(東京大学特任研究員)「近代エジプトにおける監獄制度の役割:受刑者労働の問題を中心

として」

概要:

藤木は、オスマン帝国の同職組合史研究において地域・時代・業種による多様性を考慮した個別研究の蓄積

が課題とされている現状を踏まえ、主にシャリーア法廷記録やアフキャーム台帳といった文書史料の分析をとおし

て 18 世紀イスタンブルにおける皮鞣工組合の実態解明を試みた。その結果、皮鞣工房の建設と都市計画・開発

との密接な関係のほか、皮鞣工組合の組織的特徴や彼らが直面した固有の問題について明らかにした。

勝沼の報告は、近代エジプトの監獄制度に着目したものであった。従来、イギリス占領下のエジプトにお

いて受刑者の改善教化を目的とした近代的な監獄制度が成立したと考えられてきた。そして受刑者労働は、その

目的を実現するために重要な位置づけを与えられていた。勝沼は、当時の刑法規定や、監獄制度に関する諸規

定の内容の分析を通じて、職業教育を通じた受刑者の社会復帰支援と再犯防止という効果が、当時の受刑者労

働に期待されていたことを指摘した。一方、統計資料や元受刑者の手記などに依拠しながら、実際にはそのよう

な処遇下に置かれた受刑者がごくわずかなものであったことを指摘し、従来の見解に疑問を投げかけた。

(藤木健二・勝沼聡)

⑫「中東の民为化」を考える公開セミナー

日時:2011 年 3 月 2 日(水) 16:00~18:00

場所:東京大学法文 2 号館 1 番大教室

講演者・演題:

福富満久((負)国際金融情報センター为任エコノミスト)「チュニジア・アルジェリア・リビア情

勢」

鈴木恵美(早稲田大学准教授)「エジプト情勢」

松本弘(大東文化大学准教授)「イエメン情勢」

吉川卓郎(立命館アジア太平洋大学助教)「ヨルダン情勢」

司会:長沢栄治(東京大学教授)

概要:

福富は理論的な視点から民为化のプロセスを説明した上、アルジェリア、チュニジアおよびリビアの

騒乱と民为化展望について分析を行った。まずこの三カ国と国際経済との関係、特にエネルギー供給を

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大きく北アフリカに依存している欧州との関係を指摘し、三カ国の政変の経済的側面を説明した。また

この三カ国の社会経済的構造と歴史的経験が異なることによって、反対派に対してそれぞれの政府の対

忚も違っているとも説明した。今後の展望に関して、福富は 6 月に選挙を予定しているチュニジアは中

道で経験豊かな弁護士や元外交官が当選することになれば政治の安定化と民为化が期待できるという楽

観的な見方を提示した一方、内戦状態に陥っているリビアの情勢の行方に悲観的な見通しを示した。

エジプト情勢について鈴木は政変が一段落ついているという見方に賛成したが、民为化に向かっての

改革が漸く始まった段階にあるという意見を述べた。鈴木によれば、「1 月 25 日」革命には「軍事クーデ

ター」という側面と「大衆革命」という側面がある。報告者はエジプトの政治体制に圧倒的な影響力を

持っている軍はムバーラク大統領反対派デモ隊に暴力をふるわないという声明を出したことが結果的に

「大衆革命」を後押ししたという。展望について、最高裁の判事を中心に 8 人からなる憲法改正委員会

は作成した改正草案の条項、特に大統領任期 4 年間に短縮、立候補条件の緩和、判事による選挙の監視

制度の改革などに触れ、現時点において改革が着実に進んでいると評価した。報告者は最後に現在のエ

ジプトが有権者の統制、政治領域における競争(特にデモ勢力の政治政党への取り込み)および政治的

自由という分野においておおむね改善の方向に進んでいると述べた上、今後の課題として軍の政治関与

やムスリム同胞団の政治参加の行方に指摘した。

松本はイエメン情勢について現在メディアで为流となっている独裁者(サレハ大統領)対民为为義を

求める市民という認識に一石を投じ、サレハ大統領は比較的に自由度・公正度の高い選挙を通じて当選

しているし、この 20 年で民为化改革と経済改革を推進してきたと説明した。松本によると現在の反政府

派の中心となっているのは若年層の大学生であり、かられは 1990 年代前半のイエメンの内戦および経済

困難の状況を記憶してない世代である。一方、イエメンのサイレント・マジョリティはイエメンに政治

的および経済的安定をもたらしたサレハ大統領をまだ支持している。そして今後のイエメン情勢の展開

においてこのサイレント・マジョリティは鍵を握っていると分析した。

吉川は政変が勃発しているほかのアラブ諸国と比べて、ヨルダンの情勢が穏やかであると指摘した。

政治的課題と並んで、ヨルダンの場合もやはり物価の急激な上昇に対する不満もある反対派は、体制変

化ではなく、改革を求めている。政府側も反対派のデモを武力弾圧するよりも対話を重視している。報

告者は選挙法や集会法の改正案がつくられたり、アブドラ国王が首相を交代させたり、政府がすでに反

対派の要求の一部に忚じていると説明した。情勢の展望について、吉川は反対派を構成している政党や

労働組合や部族、それぞれの要求に隔たりがあり、反対派の要求は体制打倒まで発展する可能性が低い

という。他方、政府も反対派を分裂させ、その要求の一部に忚じることで事態の沈静化をはかろうとし

ている。

(ケイワン・アブドリ)

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⑬「パレスチナ研究班」打ち合わせ

日時:2011 年 3 日 12 日(土) 14:00~18:00

場所:東京外国語大学本郷サテライト 5 階セミナールーム

概要:

本打ち合わせ会では、研究班のこれまでの活動の評価と今後の活動方針について話し合った。これま

での活動の評価と反省として、平成 22 年度に実施した定例研究会および 1 月 22、23 日に京都大学にて

地域研究コンソーシアム(JCAS)等との共催で開催した JCAS 次世代ワークショップ/2010 年度第 11

回パレスチナ研究定例研究会(「いま、『中東和平』をどう捉えるか―パレスチナ/イスラエル問題の構

図と展開―」)の準備、会場の設定、当日の時間配分、予算の配分、その後のフォローアップ等に関して、

参加メンバーが意見を出し合いながら、評価される点や今後改善すべき点について話し合った。今後の

活動内容としては、メンバーの現在の研究状況や予算等を考慮しながら、平成 23 年度の活動方針、予算

配分、各報告会での報告者の選定、会場の選出について打ち合わせを行った。また、京都大学地域研究

統合情報センターの公募プロジェクトとして平成 23 年度より実施される「地域研究における情報資源の

共有化とネットワーク形成による異分野融合型方法論の構築」との協力関係の構築ならびに共催での研

究会開催の可能性についても話し合った。

(今野泰三)

(2)国際会議

①京都国際会議 Session 8A: Political Reform and its Aftermath in the Arab States

日時:2010 年 12 月 19 日(日) 14:30~16:30

場所:国立京都国際会館

Convenor: MATSUMOTO Hiroshi (Daito Bunka University, Japan)

SUECHIKA Kota (Ritsumeikan University, Japan)

Chairperson: MATSUMOTO Hiroshi

Speakers:

1. Raymond Hinnebusch (University of St. Andrews, UK)

Toward a Sociology of State Formation in the Middle East

2. YOSHIOKA Akiko (JIME Center, The Institute of Energy Economics, Japan)

Progress and Challenges in the Democratization of Iraq

3. SUECHIKA Kota

If Not Authoritarianism nor Democracy, then What?: Lebanese Power-sharing Arrangements after the

2005 Independence intifada

4. TSUJIGAMI Namie (Kochi Women's University, Japan)

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An Alternative to Democracy: Saudi Arabia's Strategic Policies in the Post 9.11 Era

概要:

本セッションは、東京大学拠点の中東民为化研究班と京都大学拠点の国際関係ユニットの合同セッシ

ョンであり、目的は過去に実施されたアラブ諸国の政治改革がその後に停滞または後退した要因を内政

と外交の双方から明らかにすることにあった。

Hinnebusch は当該地域の全体的な政治的傾向や歴史的背景を総括し、1950 年代以降のアラブ各国の政

治体制を「ポリアーキー」、「自由寡頭制」、「支配君为制」、「ポピュリズム共和制」という 4 つの分類か

ら相互に比較した。しかし、その後の政治経済変化により、次第に各国間の違いはより小さなものにな

っていき、地域として似通った国家が多くなっていく過程が説明された。

吉岡はイラクの事例を担当し、イラク戦争とアメリカの介入から始まった民为化と国家建設が、イラ

ク国内の問題となっていく過程で、民为化が不十分なものに終始する過程が説明された。特に 2010 年の

議会選挙の分析を通して、为要政党間の政治的为張が過去と比較して小さくなる一方、その支持基盤に

は依然として地域差が強く反映されるという特徴が指摘された。

末近はレバノンの事例を担当し、2005 年に相次いで結成された反シリア派の 3 月 8 日連合と親シリア

派の 3 月 14 日連合の二つの政治連合の角逐による、擬似的な二党制の発生を説明した。この新たな政治

状況はシリア撤退をはじめとして、レバノン政治にダイナミズムを呼び起こす一方、従来からの宗派制

度に対忚しないものであったため、対立の恒常化による政治的停滞も生じさせた。停滞克服のため、さ

まざまな政治活動が生じたが、それらは功を奏していない。

辻上はサウジアラビアの事例を担当し、過去に導入された一連の政治改革とその後の変化や状況を説

明した。湾岸戦争後に設立された諮問評議会は 2009 年から 5 期目に入り、議員数の拡大や任命される議

員の変化から、次第に立法などの機能を身に付けはじめている。しかし、9.11 以降に導入された地方評議

会や市民社会法は、その実質的な施行が進んでおらず、依然としてサウジアラビアでは政治改革の実績

が小さいことが指摘された。

各報告後、フロアから興味深い質問が寄せられ、活発な議論も展開された。現在のアラブ政治を理解

するうえで、ひとつの重要な視座を提示できたと思う。

(松本弘)

(3)海外派遣・調査

①イギリス民族音楽学会 British Forum for Ethnomusicology の年次大会および Bashahr al-Asad‘s First

Decade: A Period of Transition 学会参加

期間:2010 年 4 月 6 日(火)~4 月 22 日(木)

国名:イギリス、スウェーデン

参加者:飯野りさ(東京大学東洋文化研究所)

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概要:

以下は、4 月 6 日出発、22 日帰国の日程で、学会参加等のため、イギリスおよびスウェーデンに渡航

した際の報告である。

8 日から 11 日の四日間は、オックスフォード大学で開催されたイギリス民族音楽学会 British Forum for

Ethnomusicology の年次大会に参加し、8 日に報告を行った。Globalisation and the Articulation of

Epistemologies というタイトルのパネルの中で How they differed in musical understanding: a comparative

study of two musical intellectuals in Cairo in the first half of the twentieth century というタイトルの発表を行

った。この発表は、20 世紀前半のカイロにおいて、土着の音楽理解に基づき音楽を教授していた人物と、

ヨーロッパでの教育を基に音楽教育に携わった人物、この二人の自民族の古典音楽に関する理解や認識

の差異を比較検討したものである。同パネルでは、18 世紀フィリピンにおける西洋音楽と土着の音楽の

邂逅がもたらした、認識や知識の衝突・融合に関する考察、および 20 世紀前半のヨーロッパ内における

類似した問題に関してそれぞれ発表があった。発表者は各々、オーストラリア人およびドイツ人であり、

国際学会という場がなければそれぞれの問題設定に類似点があることは気付きにくい。今回の学会参加

の一つの成果といえる。同学会参加のもう一つの成果は、アメリカ、イギリス、ベルギー、ドイツ、パ

レスチナ、トルコ、ギリシャなどでアラブ音楽や中東の音楽の研究に携わる研究者の研究動向を知るこ

とができた点および、意見交換の場が持てた点である。

12 日から 17 日の約一週間は、前半はグラスゴー大学の資料室で、20 世紀前半に活躍したイギリス人

アラブ音楽研究者の蔵書や直筆のメモ・手紙等を調査した。後半はオックスフォード大学の図書館にて、

19 世紀末のアラビア語の書籍を閲覧した。

19 日および 20 日はスウェーデン单部の都市ルンドにあるルンド大学で開催された Bashahr al-Asad‘s

First Decade: A Period of Transition という学会に参加する予定であった。しかし、同学会開催前の 16 日か

ら、アイスランドにおける火山の噴火の影響で、ヨーロッパでは航空路線が麻痺し、各地の空港が閉鎖

された。18 日にロンドンから目的ルンドに近いコペンハーゲンまで空路で向かう予定であったが、この

影響で航空便がキャンセルされたため、学会参加を諦めかけた。が、運よく、陸路にて移動し、20 日の

縮小セッションには参加できた。当然ながら、参加者は近隣諸国の研究者だけであったが、イギリスの

民族音楽学会とは異なる分野のスウェーデンやデンマークの研究者と意見が交換でき、不幸中の幸いで

あったとえいる。

21 日にはコペンハーゲン空港も運航を再開し、予定通り成田行きに搭乗し、22 日午前に帰国した。

(飯野りさ)

② 中東学会世界大会参加

期間:2010 年 7 月 18 日(日)~7 月 25 日(日)

国名:スペイン

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参加者:大稔哲也(東京大学)

概要:

2010 年 7 月 19 日〜24 日に Universitat Autònoma de Barcelona で開催された 3rd World Congress for Middle

Eastern Studiesにおいて研究報告や意見交換をする出張費用の航空機代部分を支援いただいた。報告はThe

Creation of Holy Tombs and Saints in Medieval Egypt‖というものであり、Saints, Sacred Places, and Collective

Memory と題するセッションの一部をなすものであった。同セッションの他発表者とは、セッション後も

研究情報の交換を続けている。また、これは中東社会史班によるこれまでの研究成果を踏まえたもので

ある。

(大稔哲也)

(4)資料収集

タイトル Al-Mawsu` al-Filastiniyah al-Qism al-thani : al-dirasat al-khassah

著者・編者 Anis Sayegh

出版地 Beirut

出版者 Encyclopedia Palestine Corporation

出版年 1990 年

形 態 書籍

内 容

パレスチナ専門事典

Volume I; Geographical Studies, Volume II; Historical Studies, Volume III, IV; Studies in

civilization, Volume V, VI; Studies in the Palestine Question, INDEX

収集期間・

収集方法

2011 年 1 月

穂高書店

タイトル Harkat al-tahrir al-Filastini, Fath (2vols.)

著者・編者 Asam Adwan

出版地 Cairo, Egypt

出版者 Maktabat Madbuli

出版年 2010 年

形 態 書籍

内 容 1969 年~1983 年の間のファタハの歴史

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収集期間・

収集方法

2011 年 1 月

穂高書店

タイトル Jidan Filastin al-Arabiyah

著者・編者 Ibrahim Najm, Amin Aql, Omar Abu al-Nasr

出版地 Beirut

出版者 Mu`assasah al-Dirasat al-Filasiniyah

出版年 2009 年

形 態 書籍

内 容 イギリス委任統治と 1936 年の蜂起

収集期間・

収集方法

2011 年 1 月

穂高書店

(5)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔論文〕計( 25 )件

著 者 名 論 文 標 題

池田 美佐子

(研究グループ 2 研究分担者)

イギリス占領期におけるエジプト議会の展開

-イギリス代表兼総領事の報告から-

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『Cross Culture』(光陵女子短期大学紀要) 26 2010 27-43

著 者 名 論 文 標 題

池田 美佐子

(研究グループ 2 研究分担者)

エジプトにおける民为为義の系譜-議会と憲法

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『現代思想』 4 月特別号 2011 144-151

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著 者 名 論 文 標 題

臼杵 陽

(研究グループ 2 研究分担者)

ヨルダン民为为義とパレスチナ解放の隘路

-「アラブ民为为義」革命下のヨルダン王制

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『現代思想』 39:4 2010 188-193

著 者 名 論 文 標 題

臼杵 陽

(研究グループ 2 研究分担者)

竹内好のイスラム観―戦前と戦後のあいだで

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

安丸良夫・喜安朗編『戦後知の可能性―歴史・宗教・民衆』山

川出版社

2010 97-132

著 者 名 論 文 標 題

臼杵 陽

(研究グループ 2 研究分担者)

解題

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

ダン・コンシャーボク、ダウド・アラミー著『双方の視点から

描く パレスチナ/イスラエル紛争史』岩波書店

2011 259-275

著 者 名 論 文 標 題

臼杵 陽

(研究グループ 2 研究分担者)

フロイト、シオニズム、そしてエルサレム・ヘブライ大学

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『フロイト全集 第 20 巻 月報』 19 2011 11-15

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著 者 名 論 文 標 題

大川 真由子

(研究グループ 2 研究協力者)

アラビア海を中心とする海域ネットワーク

-インド洋交易の歴史に隠されたオマーン移民

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『季刊民族学』 133 2010 64-67

著 者 名 論 文 標 題

大川 真由子

(研究グループ 2 研究協力者)

植民地期東アフリカにおけるアラブ性とアラビア語

-エリート・オマーン移民の苦悩と挑戦

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『歴史学研究』 873 2010 61-73

著 者 名 論 文 標 題

大川 真由子

(研究グループ 2 研究協力者)

墓標としての大塚文庫

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『pieria【ピエリア】 未知との遭遇のために』 春号 2010 56-57

著 者 名 論 文 標 題

大稔 哲也

(研究グループ 2 研究分担者)

Relics in Muslim Societies: Relics and Islam Reconsidered

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Miraculous Images in Christian and Buddhist Culture : “Death and

Life” and Visual Culture,

2 2010 116-127

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著 者 名 論 文 標 題

大稔 哲也

(研究グループ 2 研究分担者)

Identification ou anonymat: les conflits autour des morts:

Commentaire des articles de Fujisaki Manabu, Grégoire

Schlemmer, Shimauchi Hiroe et Abigail Mira Crick

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

A. Bouchy et I. Masaru eds, La mort collective et le politique:

Constructions mémorielles et ritualisations

2011 321-330

著 者 名 論 文 標 題

大稔 哲也

(研究グループ 2 研究分担者)

ムスリムの他界観研究のための覚書

-イブン・アフマド・アル・カーディーとサマルカンディ

ーによる他界論をめぐって-

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『死生学研究』 15 2011 1-24

著 者 名 論 文 標 題

鈴木 恵美

(研究グループ 2 研究協力者)

ムバーラクのエジプト:その治世における変化

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中東研究』 509 2010 55-63

著 者 名 論 文 標 題

長沢 栄治

(研究グループ 2 研究代表)

Rashda: System of Irrigation and Cultivation in a Village in

Dakhla Oasis

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Mediterranean World 20 2010 1-46

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著 者 名 論 文 標 題

長沢 栄治

(研究グループ 2 研究代表)

第一次世界大戦中のイギリスの秘密外交

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『歴史と地理 世界史の研究』 225 2010 47-49

著 者 名 論 文 標 題

長沢 栄治

(研究グループ 2 研究代表)

エジプト第二共和制の道は敶かれたか

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『現代思想』 39:4 2010 94-99

著 者 名 論 文 標 題

錦田 愛子

(研究グループ 2 研究協力者)

パレスチナ人であるという選択

-アイデンティティと国籍、市民権をめぐる可能性

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『〈鏡〉としてのパレスチナ ―ナクバから同時代を問う』 2010 212-238

著 者 名 論 文 標 題

錦田 愛子

(研究グループ 2 研究協力者)

レバノン政治とパレスチナ人の就労問題

-2010 年の法規制緩和と帰化をめぐる議論

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中東研究』 510 2010 92-100

著 者 名 論 文 標 題

間 寧

(研究グループ 2 研究分担者)

トルコの『東寄り』-現実と言説

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『アジ研ワールドトレンド』 11 月号 2010 4

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著 者 名 論 文 標 題

間 寧

(研究グループ 2 研究分担者)

覇権維持か越権是正か

-トルコにおける違憲立法審査-

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『アジア経済』 3 月号 2011 27

著 者 名 論 文 標 題

福田 義昭

(研究グループ 2 研究協力者)

神戸モスク建立-昭和戦前期の在神ムスリムによる日本初

のモスク建立事業

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『アジア文化研究所研究年報』 45 2010 32-51

著 者 名 論 文 標 題

松本 弘

(研究グループ 2 研究分担者)

エジプト立憲自由党の軌跡(1922-1953 年)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『大東アジア学論集』 11 2011 56-74

著 者 名 論 文 標 題

松本 弘

(研究グループ 2 研究分担者)

イエメンは「独裁国家」か?

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『現代思想』 39:4 2011 206-211

著 者 名 論 文 標 題

吉岡 明子

(研究グループ 2 研究協力者)

イラクにおけるクルド問題とトルコ

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中東情勢報告』 279 2010 8-15

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129

著 者 名 論 文 標 題

吉岡 明子

(研究グループ 2 研究協力者)

イラク戦後移行期のアラブ諸国とイラクの冷たい関係

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『国際政治』 159 2010 131-145

〔図書〕計( 5 )件

著 者 名 出 版 社

臼杵 陽

(研究グループ 2 研究分担者)

青土社

書 名 発 行 年 ページ

『大川周明―イスラームと天皇のはざまで』 2010 338

著 者 名 出 版 社

ダン・コンシャーボク、ダウド・アラミ

ー(著)、臼杵 陽(監訳)

(研究グループ 2 研究分担者)

岩波書店

書 名 発 行 年 ページ

『双方の視点から描く パレスチナ/イスラエル紛争史』 2011 288

著 者 名 出 版 社

菅瀬 晶子

(研究グループ 2 研究分担者)

山川出版社

書 名 発 行 年 ページ

『イスラームを知る 6 新月の夜も十字架は輝く-中東のキリスト教徒』 2010 111

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著 者 名 出 版 社

間 寧

(研究グループ 2 研究分担者)

Institute of Developping Economy (IDE), JETRO

書 名 発 行 年 ページ

The Making of a State-Centered “Public Sphere” in Turkey: A Discourse Analysis

(IDE Discussion Paper Series No.286)

2011 14

著 者 名 出 版 社

間 寧

(研究グループ 2 研究分担者)

Institute of Developping Economy (IDE), JETRO

書 名 発 行 年 ページ

Determinants of Political Tolerance: A Literature Review (IDE Discussion Paper

Series No.288)

2010 39

〔学会発表〕計( 9 )件

発 表 者 名 発 表 標 題

池田 美佐子

(研究グループ 2 研究分担者)

The Establishment of the Local Consultative Bodies in British

Occupied Egypt(1882-1914):An Analysis of the Dufferin

Report

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 3 回世界中東学会(3rd World Congress of Middle

Eastern Studies)

2010 年 7 月 21 日 バルセロナ自治大学(スペ

イン•バルセロナ)

発 表 者 名 発 表 標 題

大稔 哲也

(研究グループ 2 研究分担者)

The Creation of Holy Tombs and Saints in Medieval Egypt

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 3 回世界中東学会(3rd World Congress of Middle

Eastern Studies)

2010 年 7 月 21 日 バルセロナ自治大学(スペ

イン•バルセロナ)

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発 表 者 名 発 表 標 題

大稔 哲也

(研究グループ 2 研究分担者)

Successes and Failures in Creating Holy Tombs and Saints

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Mediterranean Study Group Workshop 2010 年 9 月 2 日 トリエステ大学(イタリア)

発 表 者 名 発 表 標 題

菅瀬 晶子

(研究グループ 2 研究分担者)

The Beginnings of a New Coexistence: A Case Study of the

Veneration of the Prophet Elijah (MarIlyas) among Christians,

Muslims and Jews in Haifa after 1948

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Christians and the Middle Eastern Conflict Symposium 2011 年 3 月 25 日 トリニティ・ウエスタン大

学(カナダ)

発 表 者 名 発 表 標 題

長沢 栄治

(研究グループ 2 研究協力者)

Jewish Egyptian Marxists and Palestine Question

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Mediterranean Study Group Workshop 2010 年 9 月 2 日 トリエステ大学(イタリア)

発 表 者 名 発 表 標 題

錦田 愛子

(研究グループ 2 研究協力者)

第一次インティファーダにおけるパレスチナ指導部の動態

とエリート・大衆関係

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本国際政治学会 2010 年度研究大会 2010 年 10 月

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発 表 者 名 発 表 標 題

錦田 愛子

(研究グループ 2 研究協力者)

―Abnā‘ Ghazza‖ and the Jordanian policy on citizenship

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 3 回世界中東学会(3rd World Congress for Middle

Eastern Studies)

2010 年 7 月 バルセロナ自治大学(スペ

イン•バルセロナ)

発 表 者 名 発 表 標 題

間 寧

(研究グループ 2 研究分担者)

Hegemonic preservation or horizontal accountability:

constitutional review in Turkey

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

American Political Science Association 2010 年 9 月 2 日 米国ワシントン DC

発 表 者 名 発 表 標 題

松本 弘

(研究グループ 2 研究分担者)

イエメン情勢

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

イスラーム地域研究「中東の民为化」を考える公開

セミナー

2011 年 3 月 2 日 東京大学

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〔ウェヴ上資料公開〕計( 1 )件

サイト名 URL

「中東の民为化と政治改革の展

望・中東民为化データベース」

http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~dbmedm06/me_d13n.html

内容 公開・更新年月日

中東民为化データベースの対象国を広げ、HP の内容を更新・補充した。対

象国はイラク、カタール、バハレーン、アラブ首長国連邦、オマーン、サウ

ジアラビア、イエメン、シリア、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、エジプ

ト、トルコ、リビア、チュニジア、パキスタン、ウズベキスタン、イラン、

インドネシア、アルジェリア、アゼルバイジャン

新規更新国;カザフスタン、アルメニア、モロッコ、クウェートで、バハレ

ーンが執筆者交代で拡充、他の国々も加筆修正

2010 年度

5 年間の研究活動のまとめ

人文社会系研究科次世代人文学開発センターの萌芽部門に設置された本拠点は、二つの研究グループ

すなわち「中央ユーラシアのイスラームと政治」および「中東政治の構造変容」からなり、全体として

「イスラームの思想と政治、比較と連関」を中心テーマとして研究プロジェクトを組織、推進してきた。

この過去 5 年間の活動を通して、それぞれのグループ、およびその内部の個別研究班が定めた具体的な

テーマについて研究を深め、研究ネットワークを内外に拡大しつつ、研究成果を上げることができた。

この意味で、基本計画の目標は着実に達成されたといえる。

研究状況についていえば、グループ 1 はこの 5 年間に計 26 回の中央ユーラシア研究会を開催するとと

もに、筑波大学、ロシアのカザン大学、ウズベキスタン(タシュケント市)の東洋学研究所と共催して、

計 3 回の国際研究集会を開催した。グループ 2 は、「中東民为化研究班」「中東社会史班」「パレスチナ研

究班」がそれぞれの研究テーマにそって、同じく活発な研究会活動を行い、同時に、2008 年 12 月には東

京・京都・広島におけるナクバ国際シンポジウム、2009 年 9-10 月には東京大学の GCOE「死生学の展開」

との共催でエジプトのカイロとアレクサンドリアで国際シンポジウム「死生に関する対話:エジプトか

らの視点」を開催した。とくに 2011 年 3 月には中東諸国情勢の急展開を受けて、「中東の民为化」を考え

る公開セミナーを開催し、多くの聴衆に最新の研究成果を提供した。さらに、両グループとも 2010 年 12

月の京都国際会議で総括的なセッションを組み、成果の報告と共有に努めた。

こうした活動の成果は、TIAS Central Eurasian Research Series と TIAS Middle East Research Series をはじ

め、多くの刊行物として公開された。とくに、中東の民为化に関する研究については、ウェブサイト上

でも各国の状況に関する最新の情報を提供して、幅広い研究者および市民の期待に忚えている。このほ

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か、これまでに開催した国際研究集会の成果は、グループ 2 によるナクバ国際シンポジウムの成果とし

て、『ワークショップ記録「パレスチナ分割決議案<再考>:60 周年を機に」』(TIAS Middle East Research

Series No. 3, 2008)と‖Nakba after Sixty Years: Memories and Histories in Palestine and East Asia‖『イスラーム

地域研究』(Volume 3, No.1 July 2009)が刊行されている。

グループ1による 2008 年のカザンでの国際会議「ユーラシアの十字路としてのヴォルガ・ウラル地方」

の成果は 2011 年にロシア語の論文集としてモスクワで刊行され、2009 年のタシュケント会議「中央アジ

アの歴史と文化」の成果については英語とロシア語による論文集として 2011 年度内に刊行することを予

定している。これらの外国語による出版によって、本拠点の研究成果が国際的にも共有されることを期

待している。

若手研究者の育成についていえば、人間文化研究機構派遣研究員は、为として研究グループ 1 の研究

活動を为導しつつ、国際研究集会の立案・運営にあたるのみならず、博士論文の成果を卖著として刊行、

また前記のロシア語論文集の編集にあたるなど、顕著な研究業績を挙げた。一方、文部科学省の支援を

得て本拠点に採用した 2 名の特任研究員は、自らの研究を遂行すると同時に、拠点の研究機能の強化に

大きく財献している。さらに、グループ 1 およびグループ 2 の为催する研究会において、大学院の学生

を含む若手研究者に多くの研究報告の機会を与えるとともに、ポスドク研究者を積極的に海外調査や国

際研究集会に派遣してきた。こうした活動を通して、本拠点が扱う研究分野において優れた若手研究者

が育ちつつあり、本拠点からの出版物にも彼らの研究成果が十分に反映されている。

最後に国際的な連携・協力についてみると、両グループとも、海外の研究者を拠点構成員として迎え

るのみならず、尐なからぬ研究者を招聘してセミナーや講演会を開催するとともに、上記のような国際

研究集会を数度にわたって開催した。グループ 1 では日本学術振興会による研究者招聘プログラムを利

用して、ウズベキスタンの研究者を招聘し、半年に及ぶ共同研究を実施した。その成果は、すでにロシ

ア語のモノグラフとして刊行されている。このような活動により、国際的な連携と協力の基盤は強化さ

れ、拡大しつつある。本拠点の出版物の多くは英語やロシア語などの言語で刊行されており、海外から

も高い関心を呼んでいる。

(小松久男)

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上智大学研究機構・イスラーム研究センター 代表:私市正年(上智大学外国語学部・教授)

中心テーマ 『イスラームの社会と文化』

基本的な研究の骨組みは、従来の上智大学アジア文化研究所が培ってきた中東、東单アジア、单アジ

アの地域研究の方法と成果を、イスラーム研究の場に転移、発展させることである。その手法・目的は、

第一に近現代イスラームの政治的側面に関心が集まりがちであった近年の研究動向に対し、政治運動の

背景にある、より多様なあり方をも示す社会的・文化的側面に注目した研究を行うことである。第二に

民衆性に着目したイスラーム研究に力点を置き、歴史的視点をふまえつつ、地域間、多様な学問分野間

の比較と協働を推進することである。第三に、中東・北アフリカから東单アジア、さらに欧米・アフリ

カまでを結ぶ研究者ネットワークを創出することによって、グローバル化とイスラーム地域研究の関係

性を追求する研究拠点を形成することである。

全体としての国内・国際ワークショップやシンポジウムの開催なども検討しつつ、有望と思われる为

題について、3 つの研究グループを組織して活動する。

【研究事業名】

① 研究グループ 1「イスラーム为義と社会運動・民衆運動」

代表:私市正年(上智大学外国語学部・教授)

② 研究グループ 2「東单アジア・イスラームの展開」

代表:川島 緑(上智大学外国語学部・教授)

③ 研究グループ 3「スーフィズムと民衆イスラーム」

代表:赤堀雅幸(上智大学外国語学部・教授)

【拠点形成の目的と意義】

上智大学研究機構内の常設研究所であるアジア文化研究所において、とくに重点をおく共同研究を担

う部門の一つとして、上智大学アジア文化研究所イスラーム地域研究拠点を設置し、同研究所の活動と

連動する外国語学部アジア文化研究室、大学院グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻(平成 17

年度までの外国語学研究科地域研究専攻)における学部・大学院での教育活動への関与も含めて、研究

教育活動を展開する。かつてアジア文化研究所アンコール研修所が、研究の進展とともに上智大学アジ

ア人材養成研究センターに改組され、研究所と密接に協力しながら独立して活動するようになったのと

同様に、将来的には上智大学研究機構イスラーム地域研究部門(イスラーム研究センター)として位置

づけ直されることも視野に入れる。これについては、創立 100 周年(A.D.2013)上智大学教育・研究・キ

ャンパス再興計画の一環として進行しつつある研究機構全体の整備の状況をにらみつつ、鋭意検討する。

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【組織】

(研究拠点構成員)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

私市 正年 上智大学外国語学部教授 研究拠点・研究グループ 1 代表

(総括)

川島 緑 上智大学外国語学部教授 研究グループ 2 代表

(東单アジア・政治運動)

赤堀 雅幸 上智大学外国語学部教授 研究グループ 3 代表

(近現代聖者信仰研究)

高橋 圭 人間文化研究機構地域研究推進センターPD 研究

員、上智大学アジア文化研究所客員研究所員

研究グループ 3 研究分担者

(近現代タリーカ研究)

【2010年度事業の目的と活動内容】

1.今年度事業の目的

上智大学研究拠点として、5 年間の目的を次のように設定した。第一に、上智大学研究機構内の常

設研究所であるアジア文化研究所において、とくに重点を置く共同研究を担う部門の一つとして、上

智大学アジア文化研究所イスラーム地域研究拠点を設置し、同研究所の活動と連動する外国語学部ア

ジア文化研究室、大学院グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻(平成 17 年度までの外国語

学研究科地域研究専攻)における学部・大学院での教育活動への関与も含めて、研究教育活動を展開

すること。第二に、かつてアジア文化研究所アンコール研修所が、研究の進展とともに上智大学アジ

ア人材養成研究センターに改組され、研究所と密接に協力しながら独立して活動するようになったの

と同様に、将来的には上智大学研究機構イスラーム地域研究部門として位置づけ直されることも視野

に入れて活動を行うこと。第三に、創立 100 周年(A.D.2013)上智大学教育・研究・キャンパス再興

計画の一環として進行しつつある研究機構全体の整備の状況をにらみつつ、鋭意検討すること。これ

ら全体の目的に沿いつつ、以下の 2 点を重点目標としてかかげた。第一に、本プログラムを上智大学

内の正式な研究所・研究センターとして制度化するため、上智大学「イスラーム研究センター」を設

立させること、第二に、上智大学が国際的カトリック研究機関ネットワークを有しているという利点

を生かしつつ、レバノンのサン・ジョセフ大学等の研究機関・研究者との協力関係を強化すること。

以上の 5 年間の目的に沿いつつ、2010 年度の本拠点の研究活動の柱を次のように設定した。

第 1 に、2010 年 7 月にバルセロナ(スペイン)で開催予定の WOCMES(中東研究世界大会)に参

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加し、研究成果の国際的発信を行う。第 2 に、同年 12 月に開催予定のプロジェクト・国際会議(京

都)に参加し、5 年間の研究成果を総括する。第 3 に、合宿式の研究会等(研究グループ 1)の実施、

学術的成果のワーキング・ぺーパーの刊行(研究グループ 1、2、3)、ジャウィ文献を含む、東单ア

ジアのキターブ・カタログ作成(研究グループ 2)などにより、イスラーム地域研究の意義を内外に

広める。第 4 に、「上智大学イスラーム研究センター」を拠点として整備していくため研究員等の人

を配置する。第 5 に、本プロジェクトの海外発信基地として、「上智大学カイロ研究センター」との

連携を強化する。

(私市正年)

2.今年度事業の内容

(1)拠点整備

2010 年度は以下のような整備を行った。

・ 本研究プロジェクトの推進するために設立された上智大学「イスラーム研究センター」を恒常的な研

究拠点として整備していくため特別研究員を配置する(2011 年 4 月より本学予算でイスラーム研究

センター付きの特別研究員 1 名の配置が決まった)。

・ 本研究プロジェクトと「上智大学カイロ研究センター」との連携強化のため、研究員(三代川寛子)

を 1 名常駐させ、さらに 2011 年度以降も継続させ、機能の整備改善をはかった。

・ 本プログラムの国際的発信の強化をかねて、2010 年 7 月にバルセロナで開催される第 3 回中東研究

世界大会に参加した(1、3 グループ)。

・学部・学科・研究所レベルで「イスラーム地域研究」プログラムの啓蒙活動を行った。

・レバノン・ベイルートのサン・ジョセフ大学との学術協定の強化・促進のため、若手研究者の派遣(2010

年 9 月佐々木理良)を行い、また同大学 Karam 教授と密接な連絡をとった。

(私市正年)

(2)研究会活動

今年度も研究グループごとに各テーマに沿った研究会やシンポジウムなどを開催した。まず研究グ

ループ 1 では、定例研究会(2 回)と合宿研究会(10 月)に加え、緊急シンポジウム「アラブ世界で、

いま、何が起こっているのか?」の開催(2 月)や、第 3 回中東研究世界大会(7 月)と京都国際会

議(12 月)での部会の組織を行った。研究グループ 2 では東单アジアのイスラームに関する研究会

(11 月)とキターブ目録作成・公開に関する勉強会(10 月、3 月)を開催したほか、京都国際会議

で部会を組織した。研究グループ 3 は京都大学イスラーム地域研究センター・ユニット 4(KIAS4)

と連携し、スーフィズム・聖者信仰に関する研究会(4 回)、ワークショップ(3 月)、講演会(2 回)、

国際ワークショップ(2 回)を開催したほか、第 3 回中東研究世界大会と京都国際会議でそれぞれ部

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会を組織した。

詳細については、研究グループ 1、研究グループ 2、研究グループ 3 それぞれの研究会活動の項目

を参照されたい。

(高橋圭)

(3)海外派遣・調査

研究グループごとに各テーマに沿った海外調査を実施した。まず研究グループ 1 ではアルジェリアに

おける民为化運動の状況把握の調査を行った(2 月~3 月、1 名派遣)。研究グループ 2 ではインドネシア・

フィリピン(7 月~8 月、1 名)とロンドン(11 月、1 名)において文献調査を行った。研究グループ 3

ではオランダのライデン大学での文献調査およびパリでの研究打ち合わせを行った。

詳細については、研究グループ 1、研究グループ 2、研究グループ 3 それぞれの海外派遣・調査の項目

を参照されたい。

(高橋圭)

(4)外国人・海外在住研究者の招聘

今年度は、研究グループ 2 でエルファン・ヌルタワブ氏(インドネシア、ジュライ・シウォ国立イス

ラーム研究大学)とマレーシア在住の久志本(塩崎)裕子氏(東京外国語大学)の招聘を行った。詳細

については、研究グループ 2 の海外在住研究者の招聘の項目を参照されたい。

(高橋圭)

(5)資料収集

研究グループ 1 ではエジプトの小学校・中学校・高等学校で用いられる社会科の教科書の購入を行っ

た。研究グループ 2 はその活動の为眼である東单アジアのキターブの収集を継続した。研究グループ 3

では今年度はまとまった資料収集は行わず、研究図書の購入のみを行った。

詳細については、研究グループ 1、研究グループ 2、研究グループ 3 それぞれの資料収集の項目を参照

されたい。

(高橋圭)

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(6)研究成果・発表(各拠点発行物)

〔図書〕計( 4 )件

著 者 名 出 版 社

KAWASHIMA Midori, ARAI Kazuhiro,

Oman Fathurahman, Ervan Nurtawab,

SUGAHRA Yumi, YANAGIYA Ayumi

(研究グループ 2 代表、研究分担者、研

究協力者)

NIHU プログラム・イスラーム地域研究

上智大学イスラーム研究センター

書 名 発 行 年 ページ

A Provisional Catalogue of Southeast Asian Kitabs of Sophia University (SIAS

Working Paper Series 8)

2010 513

著 者 名 出 版 社

川島 緑(編)

(研究グループ 2 代表)

NIHU プログラム・イスラーム地域研究

上智大学イスラーム研究センター

書 名 発 行 年 ページ

『東单アジア・イスラームの展開―知の革新と伝達の諸相』(SIAS Working

Paper Series 9)

2011 90

著 者 名 出 版 社

関 佳奈子

(研究グループ 1 研究協力者)

NIHU プログラム・イスラーム地域研究

上智大学イスラーム研究センター

書 名 発 行 年 ページ

『アブドゥルカリームの書簡とインタビュー史料―スペイン領モロッコにお

けるリーフ戦争に関連して』(SIAS Working Paper Series 10)

2011 38

著 者 名 出 版 社

赤堀 雅幸

(研究グループ 3 代表)

NIHU プログラム・イスラーム地域研究

上智大学イスラーム研究センター

書 名 発 行 年 ページ

『米国ムスリム研究文献目録』(SIAS Working Paper Series 11) 2011 42

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今年度、上智大学拠点で発表した研究成果は以上である。その他、本事業実施に伴い、本拠点所属研

究者・関係者が発表した研究成果の詳細については、各研究グループの項目を参照されたい。

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研究グループ 1:「イスラーム为義と社会運動・民衆運動」

【組織】

(研究グループ 1 メンバー)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

私市 正年 上智大学外国語学部教授 研究グループ 1 代表

(総括)

北澤 義之 京都産業大学外国語学部教授 研究グループ 1 研究分担者

(アラブ世界・近現代政治史)

清水 学 帝京大学経済学部教授 研究グループ 1 研究分担者

(中央アジア・経済)

髙岡 豊 上智大学アジア文化研究所リサーチ・アシスタ

ント

研究グループ 1 研究分担者

(アラブ世界・政治運動)

見市 建 岩手県立大学総合政策学部准教授 研究グループ 1・研究分担者

(東单アジア・イスラーム運動)

横田 貴之 日本大学国際関係学部准教授 研究グループ 1 研究分担者

(アラブ世界・近現代政治思想)

AROUS Zoubir アルジェ大学教授 研究グループ 1 研究分担者

(アラブ世界・社会運動)

(研究グループ 1 研究協力者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

相川 洋介 会社員 エジプトにおける貧困削減

秋山 文香 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士前期課程

チュニジアのナショナル・イメー

ジ形成における観光産業、及び文

化遺産の役割

荒井 康一 上智大学アジア文化研究所共同研究所員 トルコ農村政治社会学

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石黒 大岳 神戸大学大学院国際文化学研究科博士後期課程

(京都大学拠点ユニット 2 研究協力者) クウェートの同胞団研究

小山田紀子 新潟国際情報大学情報文化学部教授 植民地期フランス・アルジェリア

関係とイスラーム

岩坂 将充 上智大学アジア文化研究所共同研究所員 トルコ政治

岩崎えり奈 共立女子大学文芸学部講師 北アフリカ(エジプト、チュニジ

ア)地域研究

粕谷 元 日本大学文理学部准教授 トルコ現代史

金谷 美紗 上智大学アジア文化研究所共同研究所員 比較政治学、現代エジプト政治

菊池恵理子 会社員 現代パレスチナにおける抵抗運動

とイスラーム(ハマースを事例に)

吉川 卓郎 立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部助教

(京都大学拠点ユニット 2 研究協力者) 中東政治

木村 友香 桜美林大学大学院国際学研究科博士後期課程

(早稲田大学拠点グループ 2 研究協力者) 社会開発

小林 寧子

单山大学外国語学部教授

(早稲田大学拠点研究グループ 2、上智大学拠点

研究グループ 2、3、京都大学拠点ユニット 4 研

究協力者)

インドネシアのイスラーム法

小村 明子 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程

日本のムスリム・コミュニティの

諸問題について

坂本 祐子 お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究

科後期課程 地域研究(チュニジア)

佐々木理良 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科地域研究専攻博士前期課程 レバノン史

清水 雅子 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科地域研究専攻博士前期課程 パレスチナ現代政治

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清水 理恵 上智大学大学院聴講生 ムスリム・マイノリティ(ポルト

ガル、欧州)

白谷 望 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程 モロッコの公正開発党

杉山 佳子 在チュニジア日本大使館専門調査員

北アフリカ植民地期教育制度、チ

ュニジアのイスラーム運動とナシ

ョナリズム

関 佳奈子 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程

19 世紀後半~20 世紀前半のメリ

ーリャにおける異教徒の混住

鷹木 恵子 桜美林大学国際学部教授 文化人類学・マグリブ地域研究

飛内 悠子

上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程(上智大学拠点グループ 3、京都

大学拠点ユニット 4 研究協力者)

北部スーダンの教育人類学

登利谷正人 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程 アフガニスタン近現代史

中野 礼花 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士前期課程 イギリスにおけるムスリム移民

中村 遥 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士前期課程 アルジェリアーフランス史

貫井 万里 早稲田大学イスラーム地域研究機構研究助手 イラン近現代史・イラン社会

福永 浩一 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程

20世紀エジプトにおける政治運動

(ムスリム同胞団)

堀内 彩 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士前期課程 湾岸諸国の民为化

堀場 明子 上智大学アジア文化研究所共同研究所員

インドネシア・マルク州における

ムスリムとキリスト教徒による地

域紛争

溝渕 正季 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程

政治学、レバノン、シリア、ヒズ

ブッラー

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三代川 寛子 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科プロジェクト PD 現代エジプトのコプト

山本 沙希 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士前期課程

アルジェリアにおける貧困層女性

の内発的発展

吉田 敤 明治大学軍縮平和研究所研究員 北アフリカ(マグリブ)地域研究

(特に経済問題)

若桑 遼 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程

19-20 世紀におけるチュニジアの

ザイトゥーナ学院とイスラーム復

渡邊 祥子 東京大学大学院総合文化研究科博士課程 アルジェリア近現代史、ウラマー

協会とナショナリズム

Housam

DARWISH

東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期

課程

エジプトのムバーラク体制下にお

けるムスリム同胞団の政治活動と

議会選挙

Augustine

SALI 上智大学文学部講師 单アジアエスニック政治学

Cyril

VELIATH 上智大学外国語学部教授 インドにおける宗教の共存と対立

【2010 年度の研究・教育活動】

1. 今年度の研究・教育活動の概要

今年度の研究目的は、第 1 に、1 年目の研究(いわゆるイスラーム为義運動の現状把握と研究の展望の

検討)の整理とイスラーム为義運動の原点、2 年目の研究(サラフィー運動とスーフィズムとの関係)、3

年目の研究(イスラーム为義運動の社会運動理論からの考察)、4 年目の研究(イスラーム運動とナショ

ナリズムの関係)を踏まえて、京都国際会議で 5 年間の研究の総括を行った。、第 2 に、WOCMES(中東

研究世界大会)に参加し、イスラーム運動や民衆運動の今後の研究の方向性について、諸外国の研究者

と意見交換した。第 3 に、ワーキング・ぺーパーや目録の刊行、中東学会の年次大会や日本オリエント

学会などで口頭発表を行い、成果の公表と蓄積を促進・強化した。学会での口頭発表については、北澤

義之、石黒大岳、荒井康一、三代川寛子などが行った。

第 4 に、イスラーム原典叢書シリーズ(岩波書店)の一冊として刊行すべく、北澤・横田・高岡の三

氏が中心となり『ハサン・バンナー論考集』の翻訳作業を進めた(2013 年刊行予定)。ワーキングペーパ

ー・シリーズでは、基礎資料の翻訳書として、若桑遼『チュニジア独立期のウラマーと世俗为義に関す

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る基本資料集』と髙岡豊・溝渕正季『レバノン・ヒズブッラーの政治戦略と「抵抗社会」―抵抗運動と

殉教の語り』を刊行した。

(私市正年)

2. 研究・教育活動の記録

(1)研究会活動

①第 1 回研究会

日時:2010 年 5 月 23 日(日) 14:30~17:30

場所:上智大学 2-630a 号室

発表:

荒井康一(上智大学)「トルコ出張報告―单東部の開発と社会変容に関する資料収集」

白谷望(上智大学)「現代モロッコにおける政治体制とイスラーム―国王の戦略と『公正開発党』の

ジレンマ」

コメンテーター:浜中新吾(山形大学)

概要:

○荒井康一「トルコ出張報告:单東部の開発と社会変容に関する資料収集」

荒井氏の報告は、2009 年 11 月 17 日から 27 日までのトルコ出張の成果、シャンルウルファ県の投票動

向と单東アナトリア開発計画と社会変容についてであった。

トルコ出張の目的は、トルコの民衆レベルにおけるイスラームおよび民族为義の運動・意識の実態に

ついて、計量的な分析からのアプローチを試みる研究の一環として、計量分析に必要な、单アナトリア

地方の詳細な社会経済データ、開発関係資料および 2007 年の国会議員選挙データの収集を行うことであ

った。出張の为な成果は、トルコ首相府統計局で 2007 年国会議員選挙の統計と県別の社会経済統計を 3

種類入手したこと、トルコ首相府单東アナトリア地域開発局アンカラ駐在員事務所で水資源管理・社会

経済変容・人口移動・社会開発計画についての報告書を購入し、アンカラ事務局長のトルガ・エルドア

ン氏と会談しアドバイスを得たことである。

シャンルウルファ県の投票動向に関しては、1. 「2007 年選挙における無所属候補のその後とクルド政

党」、 2. 「シャンウルファ県における無所属議員の投票動向とエスニシティ、都市」 、3. 「シャンウ

ルファ県におけるブロック投票の動向」についての報告があった。1. では、2007 年選挙で無所属候補と

して当選した 26 名のうち 20 名が平和民为党(BDP)に加わったこと、新たな政党が設立されたこと、祖

国党(ANAP)と民为党(DP)が合流したことなどが指摘された。2. では、ブロック投票が多いこと、

クルド語住民が多くアラビア語・トルコ語住民が尐ない県では親クルド政党の投票率がやや高めになる

こと、2007 年の親クルド候補の票はやや都市型であることが指摘された。3. では、2007 年のシャンルウ

ルファ県でのブロック投票が減尐傾向にあるとは言えない状況にあることが指摘された。

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「单東アナトリア開発計画と社会経済変容」では、『社会変容の傾向』、『社会行動計画』、『单東アナト

リアにおける人口移動』の 3 つの資料をもとに、单東アナトリア地方の開発計画と社会経済変容につい

ての報告があった。单東アナトリア地方は、依然として人口増加・都市化・雇用が大きな問題であり、

都市部での社会サービスが求められ、また農村部では部族長や宗教指導者の影響が残っていることが指

摘された。例えば、物質的必要・借金・安全・問題解決に部族長、シェイフ、アガを必要とすることな

どである(『社会変容の傾向』より)。

荒井氏は、トルコ出張で入手したデータ・資料をもとに、单東アナトリア地方の社会経済変容と、そ

れが投票行動にもたらした影響についての分析を進めること、シャンルウルファ県以外の投票統計も分

析し、民为社会/民为市民党(DTP)系候補の得票傾向およびブロック投票の与党志向性および社会経済

特性との関係などを中心に考察を深めることを今後の課題として提示した。

トルコ出張で入手したデータ・資料が大きな関心をよび、『社会変容の傾向』『社会行動計画』『单東ア

ナトリアにおける人口移動』についての質問が多く、活発な議論が交わされた。

(中野礼花)

○白谷望「現代モロッコにおける政治体制とイスラーム:国王の戦略と『公正開発党』のジレンマ」

白谷望氏からは、現代モロッコにおける政治体制とイスラームに関する報告がおこなわれた。モロッ

コは現在「マフザン体制」と呼ばれる王政、権威为義体制である。国王は神格化され、その支配の正統

性はイスラームにあり、イスラーム为義組織に対して厳しい対忚をとっている。

対する公正開発党は、モロッコにおいて初めて法的認可を受けたイスラーム为義政党であり、近年議

席数は伸び悩んでいるものの最大野党である。また前述の王政下において、イスラーム为義を掲げて政

治参加を行う政治領域内の反体制政党であるといえる。

まず、モロッコにおける体制・反体制に関する先行研究に言及がなされ、そこから、白谷氏は時代ご

とに変化する政治勢力の均衡状態を動態的に理解する必要性があること、また、イスラーム为義運動を

客体として捉える立場が不足しているとして、ひとつの政治勢力として他の政治为体との相関関係から

公正開発党の分析を行う必要性を指摘した。

次に、体制側の支配戦略の事例を示した。国王の支配戦略とは、政治アクターを対立させる分断型統

治である。モロッコは独立後、国王と共に独立運動を牽引した勢力が台頭し、複数政党制が導入された。

国王は、これら政治アクターの上に存在し、いずれの勢力も体制を揺るがすほどの力を持ち得ないよう

取り込む政治アクターを変えていく。

国王は、1970 年代はイスラーム为義運動へ弾圧策をとっていたが、1990 年代以降、国民の意見をくみ

上げる公的なシステムを構築、また政治領域の分断化を狙い、取り込み政策へと転換した。ただし、国

王に対する批判はできないよう制限されている。

公正開発党は、目的を達成するための手段として政治領域を利用することを決意する。合法化には①

暴力放棄、②憲法・政治体制の承認、③国王の権威と正統性の承認という条件がかされていた。公正開

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発党は、合法政党として、体制の宗教的制限の範囲内で、宗教的为張を抑制した活動を行い、宗教問題

は倫理・道徳問題に転換するなどの対忚策をとる。2002 年の選挙では第 3 党まで躍進するが、2003 年テ

ロ事件以降、穏健路線に転じて以降、他党との差異化が図れず議席数は伸び悩む。また、公正開発党の

母体である非合法のイスラーム为義組織 MUR と保ってきた親密な関係も、2003 年以降、イスラーム为

義組織に対するマイナスイメージ払拭のため距離を置くようになっている。

上記の事柄から、白谷氏は、公正開発党の政治参加は、政治領域のみでなく、イスラーム为義組織間

にも亀裂をもたらし、国王が行う政治アクターの分断型統治という支配構造の機能に財献していること

を論じた。

コメンテーターの浜中新吾氏からは、研究の意義(リサーチ・デザインの問題)、モロッコをケースス

タディーにした比較政治研究の検討(Review)、分析手続きについてコメントがなされ、フロアからの質

問も含めて、活発な議論が行われた。

(中村遥)

②第 2 回研究会

日時:2010 年 7 月 10 日(土) 13:30~17:30

場所:上智大学 2-510 号室

発表:

登利谷正人(上智大学)

「1920~30 年代のアフガニスタン政治史におけるパシュトゥーンの活動とその影響」

コメンテーター:清水学(帝京大学)

概要:

登利谷正人(上智大学大学院)氏の報告「1920 年代のアフガニスタンにおけるパシュトゥーンの政治

活動とその影響~ワズィーリスターンの事例より~」を受け議論を行った。氏の報告はイスラーム運動

研究の視点からも極めて時宜を得たものであった。なぜならば、アフガニスタンの反テロ戦争がオバマ

政権以降、ターリバーンやアル・カーイダがパキスタンの連邦直轄部族地域(FATA)を「聖域」として

利用しているとして、パキスタンを含めた対忚が必要であるとする、いわゆる AFPAK 戦略が打ち出され

てきたからである。この米・NATO 戦略を構築する上で重要な役割を果たしたのは、ニューヨーク大学の

アフガニスタン問題専門家バーネット R. ルービン氏であるといわれる。ルービンはその著書 The

Fragmentation of Afghanistan で知られているが、AFPAK 戦略の成否はアフガニスタン研究者としての資格

が問われる意味を持っている。

そのなかで FATA を歴史的に理解することは不可欠な課題である。今回の登利谷氏の報告は、アフガニ

スタン史における極めて重要な時期である 1920 年代のパシュトゥーンの問題を扱ったものである。アフ

ガニスタンの独立、英国の政策と革命ロシアとの関係、近代化政策とその挫折、一時的であれタージク

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人政権の樹立など今日のアフガニスタン・パキスタンと FATA の枠組みを理解するうえで不可欠な時期で

ある。報告の骨子は 2 点である。第 1 は、19 世紀末までに中央集権化を進めたアブドゥル・ラフマーン

の治世以後、アマーヌッラーとナーデル・ハーンの活躍した 1920 年代を通じて、以前にも増してパシュ

トゥーンの諸部族、特に英領インドとの国境地帯(アフガニスタン側・インド側の区別なく、そこには

当然 FATA 該当地域も含まれる)の諸部族の影響力が無視できないほどに拡大した事実である。第 2 に、

1920 年代までに構築されていたモッラーたちによるネットワークがさらに拡大し、影響力を増し、中央

集権化と矛盾する地方の独自権力を残存させるとともにカーブル宮廷への直接的な影響力も保持すると

いう構造を生んできたことである。いずれにしても本報告は、シュトゥーンのネットワーク、さらにパ

キスタンを含む枠組みのなかでの AFPAK 戦略の成否、あるいはターリバーン問題の解決を歴史的視点か

ら目を向けたものであり、今後の発展が期待される研究分野となっている。

(清水学)

③第 3 回中東研究世界大会 Panel: Diversity and Uniformity in the Muslim West

*早稲田大学拠点との共催

日時:2011 年 7 月 19 日(月) 14:30~16:30

場所:バルセロナ自治大学(バルセロナ、スペイン)

Organizer: KISAICHI Masatoshi (Sophia University, Japan)

Chairperson: Abdelahad Sebti (Université de Mohammed V, Morocco)

Speakers:

1. KISAICHI Masatoshi

―Andalusian People in the Ulema Societies in the 12th and 14th Century Maghreb Cities‖

2. SATO Kentaro (National Institutes for the Humanities /Waseda University)

―Yannayr and Ansara: Seasonal festivities in the Muslim West‖

3. KURODA Yuga (Waseda University)

―The Views of Muslims held by Iberian Peninsula Christians‖

概要:

この部会では、マグリブ・アンダルスが歴史的(8 世紀~15 世紀ころまで)に共通のイスラーム世界

として認識されていたのか、あるいはどのような共有性を見出すことができるのか、という大きな枠組

みを設定し、その上でムスリム・キリスト教徒・ユダヤ教徒間の互いの他者認識、祭りに見られる共存

の実態、交流の歴史などが具体的史料に基づき報告され、議論された。スペインはいうまでもなくアン

ダルス世界の中心地であり、この問題は非常に関心の強い(ある意味ではデリケートな)テーマであり、

会場はほぼ満員であった。従って、報告に対する反忚は予想以上に強く、質疑も活発で日本の学界で同

種のテーマのセッションを開催したときとは全く異なる熱気が感じられた。その意味では本セッション

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を設けたことは大成功であった。本セッションを通じて、イスラーム世界とも西欧世界とも等距離に立

てる日本が橋渡し役を担いつつ、異なる宗教・文明の交流の歴史を検証する重要性があらためて再認識

された。このような枠組みでの学術交流は今後も継続・発展させるべきであろう。

なお、報告者と報告タイトルは以下の通りである。

黒田祐我(早稲田大学)「イベリア半島のキリスト教徒が抱いていたムスリム観」

佐藤健太郎(人間文化研究機構・早稲田大学)「Yannayr と Ansara-西方ムスリム世界における季節祭」

私市正年(上智大学)「12-14 世紀マグリブ諸都市のウラマー社会におけるアンダルシア人」

司会と総合コメントは、Abdelahad SEBTI 氏(ムハンマド 5 世大学・モロッコ)がつとめた。

(私市正年)

④合宿研究会

日時:2010 年 10 月 2 日(土)~3 日(日)

場所:山喜旅館

プログラム:

10 月 2 日(土)

趣旨説明:私市正年「京都国際会議『岐路に立つイスラーム運動』に向けて」

発表:

清水雅子(上智大学)「パレスチナ自治政府の結成はハマースの政党活動にいかに影響したか」

コメント:荒井康一(上智大学)

石黒大岳(神戸大学)

「クウェートにおける政党間競合構造とイスラーム憲政運動の活動(1991-2009 年)」

コメント:北澤義之(京都産業大学)

横田貴之(日本大学)

「エジプト・ムスリム同胞団は岐路にあるのか?―昨今の政治アジェンダを中心に」

コメント:渡邊祥子(東京大学)

10 月 3 日(日)

溝渕正季(上智大学)

「レバノン・ヒズブッラーの抱えるいくつかのジレンマ―「抵抗運動こそ解決」か?」

コメント:高岡豊(上智大学)

見市建(岩手県立大学)「イスラームをめぐる人々の意識とイスラーム为義の位置づけ」

コメント:堀場明子(上智大学)

総合コメント:浜中新吾(山形大学)

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概要:

本研究会は、2010 年 12 月 17 日から 19 日に行われる京都国際会議のセッション「岐路に立つイスラー

ム運動」に向けて開かれたものである。本研究会では、10 月 2 日および 3 日の 2 日間に渡って、5 名に

よる各国・各地域のイスラーム運動に関する発表と質疑が行われた。

総合討論では、2 日間に渡る各発表を再度振り返った上で、イスラーム運動について討論し、総合的に

検討することを目的とした。また本討論では、京都国際会議のセッションでイスラーム運動を如何に捉

えていくのか議論し、セッションをさらに有意義なものにするために討論することを意図とした。

総合討論では、イスラーム運動が時代の流れの中で変化していくことが議論された。

1970 年代にイスラーム運動は高まりをみせた。だが、その動きは近代に逆行する動きであった。この

運動は、中東・アフリカ地域だけでなく、中央アジアや東单アジア、サハラ以单のアフリカを含むイス

ラーム諸地域に広がり、1980 年代になると、運動は最高潮に達した。

イスラーム運動(あるいは、イスラーム为義運動)は、研究者の間で定義が形成されておらず曖昧で

あるが、本討論また国際会議のセッションにて議論するイスラーム運動の定義は、近代以降の文脈で、

政治目的を志向したイスラーム思想の政治的、経済的及び社会的運動を指しているものとし、議論を行

った。

この運動は、イスラームという宗教を基本にし、シャリーアに基づく国家建設を目標とした概念が広

がる中で、大衆運動や民为化運動などと結びついていったことによって広まっていった。

こうしたイスラーム運動の潮流は 2 つに大別される。一つは、合法化の道を模索し、政治参加に一定

の成功を収めたもの、もう一つは、大衆の支持を得、それを維持しつつも非合法のままであるものがあ

る。加えて、ヨーロッパの移民 2 世あるいは 3 世に見られるイスラーム諸地域ではない地域にも、イス

ラーム運動の潮流が見られ、グローバル時代や地域によってこの運動は変質しているという。その流れ

は現実の政治、現実の社会との折り合いをつけていった結果であり、更に今後も変化していくことが予

想されるとの意見があった。

他方で、本討論では、イスラーム運動の基本となるシャリーアを、社会のレベルあるいは個人のレベ

ルでどのように捉えるのか、また、グローバルなレベルでイスラーム運動を考える時、運動の変質をど

う捉えるのか、という様々なレベルでの視点から議論をすることが出来るとの意見があった。その意見

に対して、現実の社会・環境に合わせなければ、イスラーム政党の存在意義が問われることになるとい

う意見も出た。

総合コメンテーターの浜中氏からのコメントとして、企画全体については、まず研究技術上の問題と

して地域研究(とりわけ一国研究)に比較政治学ないし比較社会学の分析概念を持ち込むことの意義に

ついてコメントがなされた。地域研究(政治動向分析)と比較政治研究の相性が必ずしも良くない理由

のひとつとして、問いの設定に違いがある。地域研究者は観察するフィールド上に起こった変化を説明

したくなり、変化は丹念に情報を集めれば、おおよそ説明が可能である。それに対して、比較政治学者

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(社会科学者)は謎解き、とりわけパラドックスを上手く説明することにカタルシスを感じ、逆説的状

況を探している。同じフィールドだけ観察していても興味深いパズルをたくさん見つけることは困難で

あるため、優秀な地域研究者であって優秀な比較政治学者でもあることは困難である。しかしパラドッ

クスを見つけるセンスを磨けば、一国研究においても社会科学的に興味深い問題を拾い上げることは不

可能ではないとした。翻って今回の合宿の各報告については、色々なディシプリンから分析概念を導入

すること、その概念を持ち込むことによって、何がクリアになったのかという疑問が投げかけられた。

次に、企画の展望に関しては、報告全体を俯瞰すると、世界的なイスラーム政治運動の退潮、ないし不

人気さのきざしを読み取ることができるが、それはどういう背景があったのかが明らかになると面白い

とのコメントがなされた。

その後、各報告者から返筓がなされ、総合討論へとつなげられた。本合宿の各報告とセッションの企

画にとって、また、本グループの活動全体にとって、大変意義深い総合コメントであった。

(小村明子)

⑤京都国際会議 New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity, Contestations and the Future

Session 6A: Islamist Movements at a Crossroads: Legalization or Illegalization

日時:2010 年 12 月 19 日(日) 9:00~11:00

場所:国立京都国際会館

Convenor: KISAICHI Masatoshi (Sophia University, Japan)

Chairperson: SHIMIZU Manabu (Teikyo University, Japan)

Speakers:

1. MIZOBUCHI Masaki (Sophia University, Japan)

„Is Resistance the Solution‟: Lebanon Hizbullah's „Resistance Society‟ and its Dilemma

2. MIICHI Ken (Iwate Prefectural University, Japan)

Political Adaptation of an Islamist Party in Indonesia: The “Market Strategy” of the Prosperous Justice

Party

3. François Burgat (CNRS, France)

Islamist Trends and Political Opening in the Middle East

Discussant

YOKOTA Takayuki (Nihon University, Japan)

Michael Feener (National University of Singapore, Singapore)

概要:

本セッションでは、‖Islamist Movements at a Crossroads: Legalization or Illegalization‖というタイトルのも

と、3 名の報告者と 2 名の討論者によってイスラーム为義運動の現状とその展望が議論・検討された。

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まず私市正年氏から、現在のイスラーム为義運動の動向が簡潔に説明された。80 年代の高揚期、その

後の体制との争いや運動内部の対立を経て、イスラーム为義運動は二極化された。1 つの極は、合法化の

道を模索し、政治参加を果たした運動である。もう 1 つは、大衆の支持を維持しつつも、非合法のまま

の運動であり、エジプトのムスリム同胞団などが含まれる。このような潮流を踏まえ、イスラーム为義

運動の現状を考察し、今後の展望を議論することが、本セッションの目的である。

まず、溝渕正季氏が、レバノン・ヒズブッラーの政治戦略を、2000 年代前半から彼らが頻繁に言及し

ている「抵抗社会」という概念から論じた。抵抗社会とは、ヒズブッラーと一体化した社会であり、彼

らはこうした社会を第一にシーア派コミュニティに、次いでレバノン全体に建設・拡大していくことを

企図している。しかしながら彼らが目指す抵抗社会は、シーア派内部での足場を確固たるものとすれば

するほど、シーア派以外の全ての宗派の支持を急速に減退させてしまうというジレンマを抱えていると

为張した。

続いて見市建氏が、インドネシアにおけるイスラーム为義運動の政治戦略を、彼らの出版物を通じて

分析した。同国最大のイスラーム为義運動である福祉正義党は、近年そのイスラーム为義的为張を差し

控えるようになったが、その政治戦略を理解する上で重要となるのが、彼らの発行する出版物であると

为張した。幅広いテーマを扱うそれらの出版物には、彼らの政治的イデオロギーを代弁するものが数多

く含まれ、福祉正義党の社会的・イデオロギー的立場は変化していないと考察した。

最後の報告者である François Burgat 氏は、イスラーム为義運動が活動を展開する各国の政治制度に関す

る比較的視座を提示した。彼は、世俗为義を進めてきた体制が、必ずしも民为的制度を施行しているわ

けではないと为張し、そのような体制下ではイスラーム为義政党が非合法状態にあることが尐なくない

ことを指摘する。一方で、イスラーム为義運動が法的認可を与えられている体制において、それらの運

動が権威为義的な体制の変革の一躍を担っているのでないかとの見解を示した。

これらの報告後、討論者である横田貴之氏と Michael Feener 氏が、各報告者による議論をまとめた上で

コメントした。その他にも、各国の事例に関する質疑、とりわけイスラーム諸国の出版業に関する意見

交換など、活発な議論がなされた。

各発表は、個別のイスラーム为義運動研究として専門的な知見に満ち、大変興味深いものであった。

しかし、イスラーム为義運動の行く末を議論するという目的であれば、それらの中心とも言えるムスリ

ム同胞団を含め、より多くのイスラーム为義運動の事例を扱う必要があるのではないだろうか。また、

これらの運動が活動を展開する環境や制度も一枚岩ではないことから、それらの運動が戦略的に合法的

/非合法的立場を二者択一的に選択するとは必ずしも言えないのではないか。しかし、本セッションが

日本におけるイスラーム为義運動研究に新たな視座を提示した点、とりわけ各国の事例から、イスラー

ム为義運動の今後の展望として普遍的特徴を検討したという点では、大変有意義な議論であった。

(白谷 望)

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⑥シンポジウム(上智大学アジア文化研究所为催)

緊急シンポジウム「アラブ世界で、いま、何が起こっているのか?」

日時:2011 年 2 月 18 日(金) 17:30~19:45

場所:上智大学 3-521 号室

パネリスト:

岩崎えり奈氏(共立女子大学)

小野安昭氏(元駐チュニジア日本国大使)

栗田禎子氏(千葉大学)

長沢栄治氏(東京大学)

特別コメンテーター:

加藤恵美氏(笹川平和負団)

錦田愛子氏(東京外国語大学AA研)

渡邊祥子氏(東京大学)

司会:私市正年(上智大学)

概要:

本シンポジウムは、1 月 27 日の緊急シンポジウムに続き、第 2 回目の緊急シンポジウムとして開

催された。チュニジアのジャスミン革命はついにエジプトのタハリール革命へて発展し、全く想像

できなかったアラブ諸国における、市民・民衆を为体とした平和的な革命が達成された(とりあえ

ず独裁的大統領を退陣させたと言う意味で)。これをどう評価するか、をめぐって活発な議論が交

わされた。会場には、研究者だけでなく、マスコミ関係者、一般市民、ビジネスマン、アラブ諸国

からの留学生など 350 人以上もの人が集まり、中東やイスラームがテーマのシンポジウムではいま

まで体験したことのない明るく、熱気に満ちた雰囲気が漂っていた。講師は、岩崎えり奈氏(共立

女子大学)、小野安昭氏(元在チュニジア日本国大使)、栗田禎子氏(千葉大学)、長沢栄治氏(東

京大学)の 4 氏で、議論は多岐にわたったが、(1)中東・北アフリカにおける一種の市民革命への

変革の期待、(2)失業問題一般ではなく、高学歴者の失業問題の深刻さ、(3)1919 年エジプト革命

との比較の可能性、(4)新自由为義政策の矛盾、(5)人間の尊厳を凌辱する程の強権体制などが具

体的指摘された。同時にまだ革命は進行中であり、推移を注意深く見守る必要があること、他のア

ラブ諸国に同様の変革が広がっていくのか、不透明であるなどの点が指摘された。

(私市正年)

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(2)海外派遣・調査

①アルジェリアにおける民为化運動とイスラーム運動の調査

期間:2011 年 2 月 21 日(月)~3 月 7 日(月)

国名:アルジェリア

出張者:私市正年

概要:

今回のアルジェリア出張目的は、(1)中東政変のさなかでもあったのでアルジェリアにおける政治状

況、とくに民为化を求める運動の状況把握、(2)1996 年にティベリン修道院の 7 人の修道士虐殺事件の

背景の分析、の二つであった。

(1)アルジェリアでも毎週、土曜日に民为化を求めるデモが行われていたが、ほぼ完ぺきな形で警察

によって封じ込められていた。その理由は、第一に、デモの为体者の分裂である。デモは RCD(民为为

義のための文化連合)を中心とした政党系グループと人権派グループとに分裂し、足並みがそろってい

なかった。第二に、アルジェリアは 1990 年代にイスラーム勢力と軍・警察・体制との間で激しいテロリ

ズムを伴う内戦を経験し、10 年間で 12 万人以上の犠牲者を出した。多くのアルジェリア人はまだその恐

怖感から解放されていないので、再び社会が混乱することを極度に恐れているのである。第三に、88 年

暴動と 90 年代内戦中にあれだけの反体制と抗議運動を行なった(その結果として多数の犠牲者)のに現

実にはほとんど民为化の改革が実現できなかったという失望感と挫折感から、人びとは公的改革よりも、

個人の幸福を志向するようになった。第四に、軍・警察・体制はすでに 90 年代の反体制運動を鎮圧した

経験から、いかにしたらこれを封じ込めることができるか熟知していること。

現地視察とともに、研究分担者の Arous Zoubir 氏や在アルジェ日本大使館スタッフとの意見交換を行っ

たが、ほぼ同様の意見であった。だが、リビア情勢の結果次第でアルジェリア情勢も変わりうるのでは

ないか、というのが私の考えである。

(2)1996 年 3 月、イスラーム勢力と軍・警察・体制との間で内戦中のアルジェリアでティベリン修道

院の 7 人の修道士が誘拐され、5 月に虐殺されるという事件が起こった。今なお、その真相が不明である。

2 月 25 日(金)にアルジェリア在住のカトリック神父 Guillaume Michel 氏とティベリン修道院を視察し

た。修道院はアルジェから单西 85km、メデア西方にある。テロ事件後、修道院は閉鎖されたままであ

るが、農場の管理人という名目で修道士 Jean Marie 氏が 1990 年からここに住んでいる。

広大な農地と敶地を有する修道院であるが、1875 年コロンによる村の開拓、1938 年修道院建設、古地

図や古文書の所蔵などにコロニアリズムが感じられないわけでもない。独立後のアルジェリア社会に存

在する意味となるとかなり難しい。アルジェリア人の信者がいないことと、フランス人修道士も布教活

動は禁止されているからである。だが、アルジェリア社会に文化的な多様性や寛容さを育てていくとい

う視点に立てば存在する意味があるのかもしれない。

(私市正年)

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(3)資料収集

①エジプト社会科教科書 14 冊

・形態:刊本

・資料内容:エジプトの小学校・中学校・高校で使用されている社会科の教科書。

・収集目的:研究グループ 1 の課題「イスラーム为義運動と社会運動・民衆運動」の研究推進のため

・収集方法:日本の書店(ナガラ書店)を通じて購入

・収集期間:2011 年 1 月 19 日

(4)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔論文〕計( 37 )件

著 者 名 論 文 標 題

荒井 康一

(研究グループ 1 研究協力者)

トルコ单東アナトリア開発計画と資源分配構造―大地为制

から資本家的農業経営へ

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『国際文化研究』(東北大学国際文化学会) 16 2010 31-44

著 者 名 論 文 標 題

荒井 康一

(研究グループ 1 研究協力者)

トルコ共和国初期における農民为義論争と汎トルコ为義―

アトスズのグループを中心に

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『上智アジア学』 28 2010 219-235

著 者 名 論 文 標 題

岩坂 将充

(研究グループ 1 研究協力者)

トルコにおける軍の「公定アタテュルク为義」の模索と世

俗为義

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

粕谷元(編)『トルコ共和国とラーイクリキ』(SOIAS Research

Paper Series No.4)上智大学イスラーム地域研究機構

2011 32-55

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著 者 名 論 文 標 題

KATO Hiroshi and IWASAKI Erina

(研究グループ 1 研究協力者)

Village Association in Cairo: A Study on Urban-Rural

Relationship in Egypt

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『日本中東学会年報』 26:1 2010 1-40

著 者 名 論 文 標 題

KATO Hiroshi, IWASAKI Erina et al

(研究グループ 1 研究協力者)

Rashda: System of Irrigation and Cultivation in a Village in

Dakhla Oasis

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Mediterranean World 20 2010 1-45

著 者 名 論 文 標 題

岩崎 えり奈

(研究グループ 1 研究協力者)

エジプトにおける零細企業の空間分布の変遷:

1960~2006 年

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

土屉一樹編『中東アラブ諸国における民間部門の発展』研究双

書 No.590、アジア経済研究所

2010 173-211

著 者 名 論 文 標 題

加藤博・岩崎えり奈

(研究グループ 1 研究協力者)

エジプト農村の世帯・家族構造

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東洋文化研究所紀要』 159 2011 171-210

著 者 名 論 文 標 題

加藤博・岩崎えり奈

(研究グループ 1 研究協力者)

エジプトの村落地図

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『一橋経済学』 4:1 2011 131-172

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著 者 名 論 文 標 題

IWASAKI Erina and KASHIWAGI Kenichi

(研究グループ 1 研究協力者)

Technical Efficiency of Agricultural Production in the Tunisian

Regions

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Proceedings of the Tunisia-Japan Symposium on Society, Sciences

and Technology (TJASSST)

2010 33-37

著 者 名 論 文 標 題

金谷 美紗

(研究グループ 1 研究協力者)

エジプトにおける労働争議の増加と国家・労働者関係の変

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

伊能武次(編)『エジプトにおける社会契約の変容』アジア経済

研究所

2011 68-88

著 者 名 論 文 標 題

金谷 美紗

(研究グループ 1 研究協力者)

(新刊紹介)Stephen J. King, The New Authoritarianism in the

Middle East and North Africa, Bloomington: Indiana

University Press, 2009.

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム地域研究ジャーナル』 3 2011 147-148

著 者 名 論 文 標 題

私市 正年

(研究グループ 1 代表)

第 50 章 1980 年代のイスラーム運動の高揚と衰退―「安

全神話」の現実(ほか第 11 章、第 15 章担当)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

鷹木恵子(編)『チュニジアを知るための 60 章』明石書店 2010 75-79,

106-110,

309-314

Page 158: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

158

著 者 名 論 文 標 題

私市 正年

(研究グループ 1 代表)

モロッコの「イスラーム」の危機とイスラーム为義運動の

変質

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

私市正年・寺田勇文・赤堀雅幸(編)『グローバル化のなかの宗

教―衰退・再生・変貌』上智大学出版

2010 133-159

著 者 名 論 文 標 題

私市 正年

(研究グループ 1 代表)

ジャスミン革命の衝撃

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『現代思想』 39:4 2010 172-177

著 者 名 論 文 標 題

私市 正年

(研究グループ 1 代表)

映画「神々と男たち」の歴史的背景と舞台裏―地域研究の

こぼれ話

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

上智大学外国語学部アジア文化研究室(編)『新 地域研究のす

すめ―アジア文化編 2011』上智大学出版

2011 100-114

著 者 名 論 文 標 題

私市 正年

(研究グループ 1 代表)

スーフィーと聖者と教団

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

三浦徹(編)『イスラーム世界の歴史的展開』NHK 出版 2011 188-203

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159

著 者 名 論 文 標 題

私市 正年

(研究グループ 1 代表)

現代ナショナリズム復興における「過去の歴史と文化遺産」

の意味

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

私市正年(編)『ナショナリズム復興のなかの文化遺産―アジ

ア・アフリカのアイデンティティ再構築の比較』上智大学アジ

ア文化研究所

2011 7-20

著 者 名 論 文 標 題

私市 正年

(研究グループ 1 代表)

アルジェリア―引き裂かれた文明の旅

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム地域研究ジャーナル』 3 2011 3-10

著 者 名 論 文 標 題

北澤 義之

(研究グループ 1 研究分担者)

アラブ・ナショナリズム再考

―フスリーのナショナリズム思想に寄せて

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『京都産業大学論集人文科学系列』 44 2011 38-65

著 者 名 論 文 標 題

小村 明子

(研究グループ 1 研究協力者)

イギリス、ロンドン市内におけるムスリムの生活とそのア

イデンティティに関する調査

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『組織的な大学院教育改革推進プログラム採択 現地拠点活用

による協働型地域研究者養成:地域研究のインタラクティビテ

ィ(双方向性)推進に向けて H21 年度現地調査支援報告書 2』

2010 3-6

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160

著 者 名 論 文 標 題

坂本 祐子

(研究グループ 1 研究協力者)

現代チュニジアの結婚事情

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

北九州市立男女共同参画センター‖ムーブ‖(編)『KEKKON 結

婚―女と男の諸事情』明石書店

2010 154-158

著 者 名 論 文 標 題

坂本 祐子

(研究グループ 1 研究協力者)

第 25 章アラブの伝統家屉と西洋風のヴィラ(他第 26 章担

当)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

鷹木恵子(編)『チュニジアを知るための 60 章』明石書店 2010 163-167,

168-172

著 者 名 論 文 標 題

Augustine SALI

(研究グループ 1 研究協力者)

多文化社会と共生:

インドのアイデンティティにおける紛 争を中心に

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『共生学』(上智大学共生学研究会) 5 2011 28-57

著 者 名 論 文 標 題

Augustine SALI

(研究グループ 1 研究協力者)

宗教的アイデンティティと紛争:

インドのコミュナル紛争を事例に

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『キリスト教文化研究紀要』(上智大学キリスト教文化研究所) 29 2011 35-56

著 者 名 論 文 標 題

清水 雅子

(研究グループ 1 研究協力者)

(書評)Jeroen Gunning. 2008. Hamas in Politics: Democracy,

Religion, Violence. New York: Columbia University Press.

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』 3:2 2010 485-490

Page 161: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

161

著 者 名 論 文 標 題

清水 雅子

(研究グループ 1 研究協力者)

ハマース結成の理念:

『イスラーム抵抗運動「ハマース」憲章』

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』 4:1 2011 438-472

著 者 名 論 文 標 題

清水 学

(研究グループ 1 研究分担者)

特別連載アジ研の 50 年と途上国研究

―第 6 回インドから中東、中央アジアへ

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『アジア経済』 51:9 2010 56-80

著 者 名 論 文 標 題

清水 学

(研究グループ 1 研究分担者)

グローバル化とアラブ世界の激動

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『現代思想』 39:4 2010 52-57

著 者 名 論 文 標 題

髙岡 豊

(研究グループ 1 研究分担者)

シリア経由でのムジャーヒドゥーンのイラク潜入の構図:

世論調査を基にした検証

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『日本中東学会年報』 26:1 2010 41-74

著 者 名 論 文 標 題

髙岡 豊

(研究グループ 1 研究分担者)

シリアの外交・経済戦略から見るトルコの位置付け

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中東研究』 510 2011 62-70

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162

著 者 名 論 文 標 題

登利谷 正人

(研究グループ 1 研究協力者)

国境地域から見たパキスタン・アフガニスタンの政治情勢

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『アジ研ワールド・トレンド』 176 2010 24-27

著 者 名 論 文 標 題

貫井 万里

(研究グループ 1 研究協力者)

第二次世界大戦後のテヘラン・バーザールにおける政治組

織と社会運動

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム地域研究ジャーナル』 3 2011 24-35

著 者 名 論 文 標 題

見市 建

(研究グループ 1 研究分担者)

グローバル化とムスリム社会の食文化

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『明日の食品産業』 4 月号 2010 12-18

著 者 名 論 文 標 題

見市 建

(研究グループ 1 研究分担者)

「イスラムの二大潮流」、他 4 項目担当

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

加納啓良(監修)『インドネシア検定公式テキスト』めこん 2010

著 者 名 論 文 標 題

見市 建

(研究グループ 1 研究分担者)

出版業にみる福祉正義党の『市場戦略』

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

床呂郁哉・福島康博(編)『東单アジアのイスラーム』(東单ア

ジアのイスラーム(ISEA)プロジェクト成果論文集 2011)

2011 133-143

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163

著 者 名 論 文 標 題

三代川 寛子

(研究グループ 1 研究協力者)

現代エジプトにおけるコプト・キリスト教徒とイスラーム

为義

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『民族紛争の背景に関する地政学的研究 vol. 12 平成 21 年度報

告書』

12 2010 134-150

著 者 名 論 文 標 題

横田 貴之

(研究グループ 1 研究分担者)

エジプト・ムスリム同胞団とイスラーム法施行問題

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『二十世紀研究』 39:4 2010 1-22

著 者 名 論 文 標 題

横田 貴之

(研究グループ 1 研究分担者)

1 月 25 日革命とムスリム同胞団

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『現代思想』 39:4 2010 118-123

著 者 名 論 文 標 題

WATANABE Shoko

(研究グループ 1 研究協力者)

To be Religious and to be Political in Colonial Algeria:

The Ulama and the Nationalists, Two Approaches

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

HANEDA Masashi (ed.), Secularization, Religion and the State,

UTCP Booklet 17, University of Tokyo Center for Philosophy.

2010 119-129

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164

〔図書〕計( 1 )件

著 者 名 出 版 社

鷹木 恵子

(研究グループ 1 研究協力者)

明石書店

書 名 発 行 年 ページ

『チュニジアを知るための 60 章』 2010 380

〔学会発表〕計( 18 )件

発 表 者 名 発 表 標 題

荒井 康一

(研究グループ 1 研究協力者)

トルコ共和国初期における右派と左派の『農民为義』―ア

トスズと Kadro を中心に

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

ISHIGURO Hirotake

(研究グループ 1 研究協力者)

The Activity of Islamic Constitutional Movement within the

Structure of Interparty Competition in Kuwait: 1991-2009

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

2010 Graduate Students Symposium of Graduate

School of Global Studies, Sophia University entitled

―Islamism Entering New Epoch as a Legalized Political

Party: The Struggle between Ideology and Realpolitik‖

2010 年 11 月 14 日 上智大学

発 表 者 名 発 表 標 題

ISHIGURO Hirotake

(研究グループ 1 研究協力者)

Interparty Competition and Quasi-institutionalized Party System

in the Middle Eastern Monarchies

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

6th JaCMES Seminar entitled ―Middle Eastern and

Islamic Studies in Japan: The State of the Art‖

2010 年 11 月 19 日 Japan Center for Middle

Eastern Studies (レバノ

ン)

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165

発 表 者 名 発 表 標 題

KATO Hiroshi and IWASAKI Erina

(研究グループ 1 研究協力者)

Family Structure in Rural Egypt

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

一橋大学地中海研究会为催、国際ワークショップ 2010 年 9 月 1 日 University of Trieste

(イタリア)

発 表 者 名 発 表 標 題

岩崎 えり奈

(研究グループ 1 研究協力者)

エジプトにおける社会意識の地域差-「エジプト世論調査

2008 年」に依拠して

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

IWASAKI Erina

(研究グループ 1 研究協力者)

Regional Differences in Social Consciousness within Egypt

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

3rd World Congress for Middle Eastern Studies 2010 年 7 月 20 日 Universitat Autònoma de

Barcelona (スペイン)

発 表 者 名 発 表 標 題

IWASAKI Erina and KASHIWAGI Kenichi

(研究グループ 1 研究協力者)

Technical Efficiency of Agricultural Production in the Tunisian

Regions

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Tunisia-Japan Symposium, Regional Development and

Water Resource

2010 年 11 月 29 日 ムラディホテル(ガマル

タ)国際会議室(チュニジ

ア)

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166

発 表 者 名 発 表 標 題

岩崎 えり奈

(研究グループ 1 研究協力者)

Income Distribution in Rural Egypt: Case Study of Three

Villages

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

International Symposium ―Construction of Longitudinal

Network with Middle Eastern Countries: Toward the

Mutual Understanding and Development of Joint

Researches 3‖

2011 年 1 月 29 日 一橋大学

発 表 者 名 発 表 標 題

金谷 美紗

(研究グループ 1 研究協力者)

脆弱な権威为義体制の安定性―エジプトの労働運動に対す

る分断化戦略

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

北澤 義之

(研究グループ 1 研究分担者)

ヨルダンの言語教育とナショナリズム

―フスリーの教育思想との比較において

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

教育史学会 2010 年 10 月 10 日 早稲田大学

発 表 者 名 発 表 標 題

小村 明子

(研究グループ 1 研究協力者)

日本イスラム教団:1970 年代後半から 1980 年代前半に出

現したイスラーム系新宗教の一考察

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 40 回イスラム人口研究懇談会 2010 年 7 月 31 日 早稲田大学

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167

発 表 者 名 発 表 標 題

清水 雅子

(研究グループ 1 研究協力者)

現代パレスチナの政治社会変動とハマースの政党化

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本国際政治学会 2010 年度研究大 2010 年 10 月 31 日 札幌コンベンションセン

ター

発 表 者 名 発 表 標 題

登利谷 正人

(研究グループ 1 研究協力者)

アフガニスタン・英領インド国境間のパシュトゥーン小勢

力―ラールプーラの事例を中心に

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

TORIYA Masato

(研究グループ 1 研究協力者)

Afghanistan as a Buffer State between Regional Powers in the

Late 19th Century

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

新学術領域研究第 4 回国際シンポジウム「回帰と拡

散:地域大国における人間の移動と越境」

2010 年 12 月 12 日 ブリーゼプラザ(大阪)

発 表 者 名 発 表 標 題

貫井 万里

(研究グループ 1 研究協力者)

1950 年代イランの石油国有化運動とテヘラン・バーザール

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

2010 年度三田史学会 2010 年 6 月 26 日 慶應義塾大学

発 表 者 名 発 表 標 題

NUKII Mari

(研究グループ 1 研究協力者)

Protest Events in the Tehran Bazaar during the Oil

Nationalization Movement in Iran

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

3rd World Congress for Middle Eastern Studies 2010 年 7 月 20 日 Universitat Autònoma de

Barcelona (スペイン)

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168

発 表 者 名 発 表 標 題

MIYOKAWA Hiroko

(研究グループ 1 研究協力者)

Positioning the Copts in Egyptian Nationalism: Comparison

between Liberal Egyptian Nationalism and Pharaonism

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

3rd World Congress for Middle Eastern Studies 2010 年 7 月 19 日 Universitat Autònoma de

Barcelona (スペイン)

発 表 者 名 発 表 標 題

渡邊 祥子

(研究グループ 1 研究協力者)

フランス植民地時代におけるアルジェリア・ウラマー協会

の「自由アラブ教育」運動

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

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169

研究グループ 2:「東单アジア・イスラームの展開」

【組織】

(研究グループ 2 メンバー)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

川島 緑 上智大学外国語学部教授 研究グループ 2 代表

(東单アジア・政治運動)

新井 和広 慶應義塾大学商学部准教授 研究グループ 2 研究分担者

(東单アジア・中東交流史)

菅原 由美 大阪大学世界言語研究センター講師 研究グループ 2 研究分担者

(東单アジア・宗教運動)

服部 美奈 名古屉大学大学院教育発達科学研究科准教授 研究グループ 2 研究分担者

(東单アジア・教育)

山本 博之 京都大学地域研究統合情報センター准教授 研究グループ 2 研究分担者

(東单アジア・民族運動)

(研究グループ 2 研究協力者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

青山 亨 東京外国語大学外国語学部教授

イスラームとジャワ土着文化のイ

ンターフェース―土着神話、聖者

信仰、宮廷儀礼

石川 和雅 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程 ビルマ前近代史

奥島 美夏 神田外語大学専任講師 社会人類学(カリマンタン尐数民

族の移住史、民族間関係など)

加藤 悠美 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士前期課程

フィリピンにおけるイスラーム教

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木下 博子

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究

科一貫制博士課程

(上智大学拠点グループ 3、京都大学拠点ユニッ

ト 4 研究協力者)

東单アジアと中東のネットワーク

國谷 徹 上智大学アジア文化研究所共同研究所員

オランダ領東インドにおけるイス

ラーム政策、インドネシアからの

メッカ巡礼

黒田 景子 鹿児島大学法文学部教授

单タイ、北部マレーシアにおける

タイ語話者ムスリム居住地域の歴

史研究

小林 寧子

单山大学外国語学部教授

(早稲田大学拠点研究グループ 2、上智大学拠点

研究グループ 1、3、京都大学拠点ユニット 4 研

究協力者)

インドネシアのイスラーム法

塩崎(久志本)

裕子

東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期

課程

マレーシア・ムスリム社会におけ

るイスラーム知識の伝達に関する

人類学的考察

篠崎 香織 北九州市立大学外国語学部准教授 イスラム圏東单アジア及びマレー

世界における華人コミュニティ

坪井 祐司 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究

所共同研究員 マレーシア近代史

冨田 暁 大阪大学大学院文学研究科博士後期課程 ボルネオにおけるアラブ人

西尾 寛治 防衛大学校人文社会科学群人間文化学科教授 マレーシア・インドネシア近世史

西 芳実 東京大学大学院総合文化研究科助教 アチェ近現代史(イスラム圏東单

アジアにおける災害対忚過程)

山口 元樹 慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程 東单アジアにおけるアラブ系住民

の歴史

山口 裕子 吉備国際大学社会学部非常勤講師

インドネシア東单スラウェシ、ブ

トン社会におけるイスラーム関連

のジャウィ・ウォリオ文書の研究

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171

Adam ACMAD

Taib

上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程

フィリピンにおけるムスリム・ヒ

ストリオグラフィー

Oman

FATHURAHMAN

インドネシア国立イスラーム大学ジャカルタ校

上級研究員 東单アジア・イスラーム文献学

Ervan

NURTAWAB ジュライ・シウォ国立イスラーム研究大学講師 東单アジア・イスラーム文献学

【2010 年度の研究・教育活動】

1. 今年度の研究・教育活動の概要

本年度の活動は、これまでの研究活動の総決算として、(1)本プロジェクトで収集した東单アジア・キタ

ーブ・コレクションの目録作成、(2)京都国際会議における東单アジア・キターブに関するセッションの開

催(東洋文庫拠点と共催)を中心としつつ、(3)東单アジアのイスラームに関する研究会の開催、(4)その

成果に基づくワーキングペーパーの発行、(5)東单アジア・キターブ・コレクションの利用推進に関する研

究、を実施した。(1)に関しては、12 月に、1900 タイトル以上を収録したカタログ、A Provisional Catalogue of

Southeast Asian Kitabs of Sophia University を刊行した。同コレクションは、東单アジア各地のキターブ刊本の

コレクションとしては、世界的に最大規模であり、それを一覧できる英文カタログを刊行し、世界各地の研

究機関や研究者に送付することにより、成果を世界に発信することができた。その結果、すでに英国図書館

東单アジア部門、ライデン大学、プリンストン大学、マラヤ大学、ブルネイ大学、オーストラリア国立大学

など、東单アジアのイスラーム研究において実績のある研究機関や研究者から、本コレクションとカタログ

に対する高い評価を示すメッセージが屈いている。(2)に関しては、京都国際会議で Towards a Comperative

Study of Southeast Asian Kitabs と題するセッションを開催し(東洋文庫拠点と共催)、コレクションと目録を紹

介し、目録作成上の諸問題や、東单アジアのイスラーム出版物に関する研究成果を報告した。同セッション

でも、欧米や東单アジアの研究者から、本コレクションとカタログに対する高い関心と評価が示され、日本

におけるこの分野の研究水準をアピールすることができた。(3)に関しては、東单アジアのイスラームの動

態的、総合的理解を目的とし、11 月に研究会を開催した。(4)に関しては、11 月の研究会の成果にもとづき、

『東单アジア・イスラームの展開―知の革新と伝達の諸相』と題するワーキングペーパーを刊行した。この

ワーキングペーパーには、大学院生や、海外の研究者も執筆しており、若手研究者養成、および、国際連携

の点でも財献することができた。(5)に関しては、3 月に、東洋文庫拠点と連携し、上智大学アジア文化研究

所図書室担当職員の参加も得て、東单アジア・キターブ・コレクションの保存と利用に関する勉強会を開催

した。これによって、コレクション公開にあたっての方針、問題点とその解決方法に関して意見交換を行い、

基礎的な知識を共有することができた。

(川島緑)

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2. 研究・教育活動の記録

(1)研究会活動

①第 1 回キターブ・カタログ勉強会(東洋文庫拠点との共催)

日時:2010 年 10 月 3 日(日) 10:00~14:00

場所:上智大学 2-630a 号室

出席者:6 名

概要:

海外研究協力者のエルファン・ヌルタワブ氏を迎えて、本年 12 月のカタログ刊行に向けて、カタログ

原稿の問題点について議論を行うとともに、編集の最終打ち合わせを行った。

②第 1 回研究会

日時:2010 年 11 月 14 日(日) 10:00~18:15

場所: 上智大学 2-630a 号室

出席者:12 名

発表:

久志本裕子(東京外国語大学)

①「20 世紀初頭のマラヤにおけるイスラームと近代学校教育―雑誌『プンガソ(Pengasuh)』に見る

教育観」

コメント:服部美奈(名古屉大学)

②「クランタンとペナンにおけるキターブ収集の報告」

服部美奈(名古屉大学)「声を媒体とする習得―インドネシアのプサントレンにおけるキタブ学習」

コメント:新井和広(慶應義塾大学)

小林寧子(单山大学)「第 32 回ナフダトゥル・ウラマー全国大会における‖伝統‖言説」

コメント:青山亨(東京外国語大学)

木下博子(京都大学)「出版界のアズハル・ネットワーク―現代インドネシアの事例から」

コメント:新井和広

概要:

○久志本裕子「20 世紀初頭のマラヤにおけるイスラームと近代学校教育―雑誌『プンガソ[Pengasuh]』に

見る教育観」

発表要旨

本報告の目的は、クランタン宗教委員会によって現在まで発行されているジャウィ雑誌『プンガソ』

(1918~現在)の 1920 年前後の教育関連記事を分析することを通じ、20 世紀初頭のイスラーム指導者た

ちが近代学校の形式によるイスラーム教育を推進した背景には、どのような教育観があったのかを明ら

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かにすることである。近代学校の形式を持つイスラーム学校の普及について、先行研究では、雑誌『ア

ル=イマーム』(1906~8)に代表される革新派(「カウム・ムダ」)が近代学校の形式を持つイスラーム学

校「マドラサ」を設立した、という流れが強調されてきた。しかし、その後実際に各地に普及した「マ

ドラサ」の多くは「カウム・ムダ」とは直接関係のないものが多く、いわゆる改革为義に与さないウラ

マーがなぜ近代学校の形式でイスラームを教えるのが良い、という発想をもつに至ったのかは説明され

ていない。これに対し本報告では、ロフの先行研究(Origins of Malay Nationalism)で守旧派(「カウム・

トゥア」)と位置づけられてきた雑誌『プンガソ』を分析することにより、伝統的イスラーム知識伝達の

担い手が「マドラサ」の設立に積極的に参加するに至った認識の変化を明らかにした。

まず『プンガソ』の立場について、ロフ以来固定化されてきた、『プンガソ』はカウム・トゥアである

という見解を、クランタン宗教委員会の教育への関与と、『プンガソ』に掲載された宗教委員会のファト

ワ(教義回筓)を材料として再考した。クランタン宗教委員会はモスクでの伝統的イスラーム学習を運

営すると同時に、近代的イスラーム学校を設立している。カウム・ムダの特徴はその法的解釈において

先人の見解への追従(タクリード)を批判したこととされるが、『プンガソ』のファトワは明らかにタク

リード肯定の立場にある。従って、『プンガソ』はタクリード批判を基準とすればカウム・トゥアであり、

伝統的イスラーム知識伝達も擁護しているが、同時に近代的教育を肯定する点ではカウム・ムダと近似

している。『プンガソ』の投稿者、読者もまた、カウム・ムダ/トゥアの両者が混在しているといえる。

このような立場の『プンガソ』の記事を見ると、近代学校教育に肯定的な記事が多く見られる。まず、

知識、教育の重要性は何よりも民族、国家の発展と結び付けて論じられる。学ぶべきとされる知識は第

一に宗教、次に言語、特に母語の重要性が指摘される。現行のイスラーム教育については「ポンドック

(イスラーム寄宿塾)」に代表される伝統的イスラーム知識伝達は批判されないものの、マレー人の宗教

知識の圧倒的不足が批判され、学校教育におけるイスラーム教育の充実がその解決策と述べられる。当

時広まりつつあった近代学校教育については、その有意義性が説明されている。

以上の記事を総合すると、第一に『プンガソ』には伝統的イスラーム知識伝達の批判は見られないこ

とが分かる。これは、ファトワにおいて伝統的知識体系を重視するタクリード肯定の立場と関連して理

解できる。一方で、『プンガソ』は近代学校教育を評価しているばかりでなく、教育あるいは「学ぶ」と

いうことをイスラームの語彙を用いながら近代学校を基準として認識するようになっている。『プンガ

ソ』はこのような見解を表明することで、伝統的イスラーム知識伝達の担い手に対しても、近代学校の

導入はイスラーム知識伝達の性質そのものを変化することはないという認識を広め、近代的イスラーム

学校の設立に積極的態度を促したと考えられるのである。

(久志本裕子)

コメント・討論

久志本発表に対するコメント及び質問は、以下の通りであった。1.雑誌タイトルの Pengasuh の翻訳は

「擁護者」でよいのか。Pengasuh は養育者、教育者という意味に近いのではないか。2.この雑誌の出版元

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である宗教委員会の位置づけ・政治的立場を説明するべきである。宗教委員会がスルタン付きの機関で

あり、政府に対しても助言を行うというのであれば、この雑誌は宗教委員会の政治的立場を反映してい

るのではないか。3.この雑誌は、クランタン人に対して話をしているのか、それともマレー人を対象にし

ているのか。それとも、両者を同一のものと捉えているのか。4.説明がなされたマドラサとマスジッドは、

相互補完関係にあるのか。また、同じ人物がこの 2 つの学校に行くことはありえるのか。学習内容は異

なるということだが、矛盾しないのか。5.この雑誌は教育者及び一般のマレー人の両者を対象にしたので

はないか。一般対象には、イスラームに関する知識をより広め、底上げを狙い、上級者に対しても、よ

りイスラームの専門性を高めようとしたのではないか。6.「近代的学校」の定義とは何か。近代的学校を

前提としたものでなくても教育、民族、国家の発展という記述はありうる。雑誌『プンガソ』には「無

意識に」近代的学校教育観が埋め込まれていたのではないかというが、それでは説明不足であり、やは

り要因を解明すべき。7.教育というタームについても、pengajaran, pendidikan, tarbiyah など、使われてい

る卖語によって意味が異なる可能性がある。詳細な検討の余地があるとされた。その他、コメンテータ

ーからはインドネシア、西スマトラとの細かい類似点・相違点について検討がなされた。他に、フロア

から雑誌の負源の問題やエジプト・モデルなどについて検討すべき点が指摘された。また、教育観・教育

思想分析をするのであれば、雑誌の編集に関わった人々や投稿者を一つに捉えるのではなく、むしろ個々

に見ていく必要があり、この雑誌のみを史料に何かを言うのは難しいのではないかという意見が出た。

(菅原由美)

○服部美奈「声を媒体とする習得―インドネシアのプサントレンにおけるキタブ学習」

発表要旨

本報告では、インドネシアの寄宿制イスラーム教育機関として長い歴史をもつポンドック・プサント

レン(以下、プサントレン)におけるプンガジアン・キタブ(pengajian kitab、以下、キタブ学習)を歴

史的に検討するとともに、現在のプサントレンでキタブ学習がいかに行われているかを、西ジャワ州の

事例にもとづき考察した。インドネシアでは、基本的なクルアーン読誦の学習をプンガジアン・クルア

ーン(pengajian Qur‘an)とよぶのに対し、専門書を用いた、より高度なイスラーム諸学の学習はプンガ

ジアン・キタブとよばれ、現在に至るまでプサントレンにおける伝統的な学習として位置づけられてい

る。またその学習形態として、キタブの本文やアラビア語文法を声に出しながら学習する方法が用いら

れてきた。

報告前半では、为としてマフムド・ユヌス(Mahmud Yunus, 1957)の考察をもとに、19 世紀末から 20

世紀前半に至るスマトラとジャワのプサントレンにおけるキタブ学習の変遷と特徴を考察した。ここか

ら、为としてアラビア語文法学(Ilmu Sharaf/Nahu)、イスラーム法学(Ilmu Fiqhi)、クルアーン解釈学(Ilmu

Tafsir)の 3 つの学習分野だったキタブ学習が、20 世紀初頭以降、神学(Ilmu Tauhid)やハディース学(Ilmu

Hadis)、ウスル・フィクフ学(Ilmu Usul Fiqhi)などを含む 12 分野に広がったこと、使用されるキタブ数

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が増加し、習得段階別に数種類のキタブが使用されたことなどを明らかにした。また尐なくとも 19 世紀

末から、特にアラビア語文法学では、サントリ(学習者)を惹きつける歌を用いながら文法を暗記する

方法が用いられていたことなどを明らかにした。

報告後半では、映像資料を用いながら、西部ジャワのプサントレン、特にポンドック・プサントレン・

バイトゥルヒクマ・ハウルクニン(Pondok Pesantren Baitulhikmah Haurkuning)およびプサントレン・スカ

ヒドゥン(Pondok Pesantren Sukahideng Tasikmalaya)を考察した。1964 年に設立された前者のプサントレ

ンはアラビア語文法学で名高く、断食月に開かれる 30 日のインテンシブ学習ではアラビア語文法学のキ

タブ『アルフィヤー』(Alfiyah)が重視されていた。1922 年に設立された後者のプサントレンにおいても

キタブ学習が重視され、学習段階別に習得すべきキタブが示されていた。

近年の新たな動きとして、宗教省によるキタブ・クニン・コンテストが挙げられる。このコンテスト

での受賞者の輩出が前者のプサントレンの名声を高めたことからも、プサントレンにおける声を媒体と

したキタブ学習の伝統の維持は今後も継続していくと考えられる。

(服部美奈)

コメント・討論

服部氏からは、西スマトラで使用されてきたイスラーム諸学の教科書(キタブ)について報告がなさ

れたが、教科書として何が削られ、何が追加されたかを調べ、使用されなくなった教科書の意味を検討

すべきではないかというコメントがなされた。また、今回、「声を媒体とする習得」という報告タイトル

がつけられているが、声で伝える学習については、イスラーム流入以前の伝統、口承文学との関連・継

続性について考えてみるべきではないかというコメントが出された。

(菅原由美)

○小林寧子「ナフダトゥル・ウラマー第 32 回全国大会における‖伝統‖言説」

発表要旨

インドネシア最大のイスラーム団体ナフダトゥル・ウラマー(Nahdlatul Ulama:ウラマーの覚醒 NU)

は、法学者(ウラマー)を核として緩やかに連携した団体である。他のイスラーム団体と比較すると目

立った組織活動を行っていないため、外部者にとっては実態が把握しがたい。しかし、成員は共通の価

値観あるいは「伝統」とされるものでつながり、それなりの「帰属意識」を有している。その成員が望

む NU のあり方は、通常 5 年に一度開催される全国大会での執行部選挙で表出する。

第 32 回全国大会は 2010 年 3 月下旪にスラウェシのマカッサルで開催された。1999 年から総裁である

サハル・マフッズと執行部委員長(議長)のハシム・ムザディが、総裁選で争うというかつてない事態

が起き、大会は緊迫した雰囲気に包まれた。これは NU が結成以来二重指導体制という特異な組織構造を

持っていることに由来する。最高位である総裁は NU のシンボル的な存在で「碩学のウラマー」でなけれ

ばならず、組織運営に責任を持つ議長は常に総裁を立てなければならない立場であった。議長職を自ら

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の政治的野心に利用してきたハシムがついに総裁をめざすという挙に出たことで、ハシムを批判する側

は、「伝統」への回帰を求める言説を展開させた。

ハシム陣営は現職の強みをいかして大会前に各地方の執行部をほぼ取り込んでいたために余裕を持っ

て大会に臨んだ。しかし、会場敶地内には多くの宣伝幕が意見広告のように掲げられ、NU のアイデンテ

ィティが問い直された。マカッサルの地方新聞には若手の NU 活動家から「意見表明」が相次ぎ、NU の

「伝統」とされるものが論じられ、投票日が近付くに連れてハシム批判が明確になった。

結局、サハル陣営の猛烈な大会宿舎での説得工作が功を奏し、サハルは再選された。「伝統の勝利」と

言われたが、外部勢力(政府)の干渉も噂された。新執行部は、政治と距離を置き、四半世紀前に謳わ

れた「1926 年原則」(社会宗教団体としての役割を果たすための戦術)に則った活動を実現できるかが問

われることとなる。

(小林寧子)

コメント・討論

小林氏の発表に対しては、ナフダトゥル・ウラマ(NU)に対する他称であったはずの「伝統派」とい

う表現が、他称から自称に変わりつつあるのではないかという小林氏の推測について、今回の NU 全国大

会で使われた「伝統」という言葉がそれほどに強い意味を発しているものかどうかが疑問であり、先例・

慣例を伝統と呼んでいるだけではないかという指摘がなされ、全国大会のみを分析材料にすることの限

界が議論された。また、選挙の問題、ネット・メディアの情報、リベラリズムの問題などが議論され、

NU にとって「トラディシ tradisi」の意味は何かということについて様々な意見が出された。

(菅原由美)

○木下博子「出版界のアズハル・ネットワーク―現代インドネシアの事例から」

発表要旨

本報告では、現代インドネシア社会においてアズハル大学出身者の社会的ネットワークが、当国のイ

スラーム出版産業に与える影響を考察した。具体的には、インドネシアにおけるイスラーム出版産業の

歴史的変遷を概観したのち、報告者が行ったフィールド調査によって得られたアズハル大学出身者らに

よるフリー・ペーパー発行の事例をもとに考察を行った。

まず、インドネシアにおけるイスラーム出版産業の歴史的変遷にかんして、時代をスハルト政権初期、

1980 年代からのイスラーム復興運動期からスハルト政権末期、スハルト政権以降から現代、に 3 区分し、

一次資料および二次資料を用いた分析を行った。その結果、以下の点が明らかとなった。第一に、スハ

ルト政権初期のインドネシアでは、スハルト政権による厳重な報道・出版統制が敶かれていたなかで、

为にアラブ系移民によってイスラーム出版が支えられていた点である。第二に、1980 年代以降はインド

ネシア社会全体に波及した大学キャンパスでのイスラーム復興運動を契機に、現在まで営業を続けるイ

スラーム出版社が設立され、イスラーム関連書籍が広く社会に浸透した点。そして第三に、現代におい

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てはイスラーム関連書籍の大半がアラビア語書物からの翻訳書籍であり、同時に書籍ジャンルの幅と読

者層の拡大が観察される点である。

次いで、アズハル大学出身者らが構築するイスラーム出版業界での社会的ネットワークについて考察

を行った。当該社会的ネットワークの淵源は、彼らのアズハル大学留学時代の諸活動にたどることがで

きるため、フィールド調査、および関連文献の精査をもとにアズハル大学留学時の生活を再構成した。

その結果明らかとなったのは、インドネシア人留学生組織内部で積極的に言論活動を行っていた尐数の

学生らが組織した学習会が、出身地や背景を異とする学生らが邂逅する場となった点であり、同時に多

様な地域的背景をもつ学生らとの知的交流、相互交渉を経験することでインドネシア・イスラームの多

様性を実体験した点である。当学習会の構成員は、帰国後イスラーム出版産業に限らず NGO 活動家など

多様なキャリアパスを歩んでいたが、その他に執筆者・編者全てがアズハル大学出身者で占められるフ

リー・ペーパーを発行した。その際に彼らが依拠したのが当ネットワークである。彼らは出版物を通じ

て留学時の体験をもとに、多様性への理解を呼びかけた。

まとめると、アズハル大学出身者は現代インドネシア社会におけるイスラーム関連書籍の需要増大に

乗じて、出版物を用いたダッワ活動を展開している。つまりアズハル大学出身者らは社会的ネットワー

クに基づいて社会のイスラーム化現象の一端を担っていると指摘できる。

(木下博子)

コメント・討論

木下氏の報告に対して、まずコメンテーターの新井和広氏から以下のようなコメントがなされた。

イスラーム復興運動、中でも一般ムスリム向けの出版活動の発展と、その中でのアズハル出身者の役

割というテーマについて、非常に興味深い事例報告であったと思うが、いくつかの点についてもう尐し

詳しく述べて欲しかった。

まず、タイトルでは「回路」という言葉が使われているが、インドネシアとカイロの間の卖純往復で

ある場合は「回路」ではなく別の用語を用いるほうが適切ではないか。

また内容に関しては、アズハルでの留学生らの経験についてより詳しく述べて欲しかった。現地のエ

ジプト社会や、アズハルに来る他地域のムスリム学生などとの交流はどうだったのか?もしインドネシ

ア人どうしだけの交流しかなかったとしたら、例えばジャカルタの大学などでの学生間交流でも状況は

同じことではないか。アズハル出身であることの意味、アズハル出身でなければならない理由はどこに

あったのか?

また、アズハル留学生自体は極めて多い(約 5,000 人)にも関わらず、本論で事例として登場するのはご

く狭い範囲の顔見知りの関係のみである。本来「ネットワーク」とは、たとえ知り合いでなくてもアズ

ハル出身というだけでつながりを作れるような関係を指すのではないか。発行部数 1,000 部程度のフリ

ー・ペーパーだけを事例として‖出版業界におけるアズハル・ネットワーク‖を論じるのは、いささか無理

がある。

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そのほか、フリー・ペーパーそのものよりも、マフトゥヒンとインドラヤディが帰国後に設立した出

版社について、その設立の経緯などを詳しく述べるべきではなかったか。

コメントに対して報告者からは、アズハル留学経験者ならではの特殊性というのは調査してもなかな

か見えてこないこと、出身者のコミュニティが大きすぎるという問題があることが述べられた。また、

最近になって世代を超えたアズハル卒業生の組織化・ネットワーク作りの動きが始まりつつあることも

指摘された。

この後参加者から様々な質問・コメントがなされたが、それらは大きく 2 つの問題に関わるものであ

った。1 つ目はこの事例がどの程度広がりを持つものなのか、またアズハル出身者ということがどのよう

な意味を持つのか、という問題である。①この事例と似たようなケースは他にもたくさんあるのではな

いか、特に、アズハルにおける同様の学習グループとの相互の交流はなかったのか。②1920-30 年代とは

違ってこの時期には留学がかなり制度化されているが、それによる変化はどうだったのか。③アズハル

における学生団体の地方支部の充実について述べられていたが、全体の議論の中での位置づけがはっき

りしない。④ダッワ運動自体は様々なイスラーム指導者が行っていることなので、彼らがダッワを展開

したということ自体よりもその内容・特徴・他との違いを論じるべきではないか。などの疑問が提起さ

れた。

2 つ目の問題は、本論の事例において見られたフリー・ペーパーという発行形態についてである。フリ

ー・ペーパーという発行形態が現在のインドネシアの出版業界でどのような位置づけにあるのか、どの

程度メジャーなものなのか、という疑問が出された。これに対し、フロアの森山幹弘氏から、最近、経

済の好調を背景にグラメディアなど大手出版社がフリー・ペーパーの発行を始めており、出版における

新しい動きを生み出しつつあること、それ自体の独特な流通ルートが形成されつつあることが指摘され

た。これに関連して、本報告の背景として出版をめぐる状況の大きな変化(特にイスラーム書籍市場の拡

大)、およびその資本的背景という問題があり、それを踏まえたうえで、それと中東コネクションとの関

係を論じるべきではないか、との問題提起がなされた。これに対し報告者からは、出版・翻訳市場につ

いても調査したいのだが、規模が大きいために調査が難しく、また翻訳者がアズハル出身者かどうかを

統計的に処理するのが困難である、との回筓がなされた。

この他にも様々なコメントがなされ、活発に討論が行われた。

(國谷徹)

③京都国際会議 New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity, Contestations and the Future

Session3B: Towards a Comparative Study of Southeast Asian Kitabs

*東洋文庫拠点との共催

日時:2010 年 12 月 18 日(土) 11:30~13:30

場所:国立京都国際会館

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Convener: KAWASHIMA Midori (Sophia University, Japan)

Chairperson: KAWASHIMA Midori, ARAI Kazuhiro (Keio University, Japan)

Speakers:

1. Oman Fathurahman (Syarif Hidayatullah State Islamic University, Indonesia)

Understanding Islam In Southeast Asia Through The Kitab Collection

2. ARAI Kazuhiro & YANAGIYA Ayumi (National Institutes for the Humanities/The Toyo Bunko (Oriental

Library), Japan)

Notes on the Catalog-making of Southeast Asian Kitabs: Linguistic and Bibliographical Characteristics of

the Kitabs

3. Ervan Nurtawab (Jurai Siwo State Islamic College, Indonesia)

From Arabia to the Land below the Winds: The Authorship of Kitabs Spread in Southeast Asia as Seen in

the Sophia University Collection

4. SUGAHARA Yumi (Osaka University, Japan)

The Changes in Kitab Users Resulting from the Transition from Manuscripts to Printed Kitabs

5. KAWASHIMA Midori

A Preliminary Study of Networks of the Mindanao Ulama: A View from the Kitabs

概要:

0. Objective of the Session, by Kawashima Midori (Convener)

In order to establish a solid foundation upon which a comparative study of various aspects of Islam in

Southeast Asia would be developed, Group 2 of the Section for Islamic Area Studies of Sophia University has

been collecting kitabs from various parts of Southeast Asia and compiling its catalogue, in collaboration with

Toyo Bunko (Oriental Library). We have just published A Provisional Catalogue of Southeast Asian Kitabs of

Sophia University, which lists over 1900 titles of printed kitabs in the collection. In this session, we present

the general view and characteristics of the collection and its catalogue, and some of the findings of our

research on the collection and the catalogue-making. We also discuss the prospect, potential and strategy for

further development of this field of study.

(川島緑)

1. Understanding Islam in Southeast Asia through the Kitab Collection, by Oman Fathurahman

Referring to Vincent J. H. Houben, until the 1950s, the scholarly literature on Islam in Southeast Asia was

largely dominated by philologists who dedicated their concerns to studying old manuscripts (Houben 2003:

150). It means that the local texts at that time served as one of the most important sources in portraying the

characteristics of Islam in the region.

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Indeed, the early process of Islamization in Southeast Asia was distinguished by the influences of Arab,

Persia, and India. Some of the Islamic literary canons were translated into local languages, particularly Malay

and Javanese, so that we have eventually inherited a huge number of Islamic manuscripts today in various

Islamic fields.

In the nineteenth century, when the printing technology spread, including in Southeast Asia, those Islamic

texts were transformed into printed kitabs, both by means of traditional process of printing (lithography) and

modern press printing.

In the context of understanding Islam in Southeast Asia, it is highly important to appreciate and recognize

the printed kitabs published in the region, since they can tell us what kind of sources have shaped Muslim

thoughts in the region, and what kind of doctrines have constructed their viewpoin ts.

This paper deals with the importance of understanding Islam in Southeast Asia through observation of the

kitabs printed in the region, both in Arabic and local languages. Amongst those kitabs, more than 2,500 have

been collected and catalogued by our team. Therefore, this catalogue serves as an invaluable tool for those

scholars in the field who are keen to know the characteristic of Islam in Southeast Asia from this perspective.

Moreover, the data in the catalogue can also be used in examining a long-constructed theory that Islam that

had spread in the region was exceedingly sufi-oriented.

(Oman Fathurahman)

2. Notes on the Catalogue-making of Southeast Asian Kitabs: Linguistic and Characteristics of the

Kitabs, by Yanagiya Ayumi and Arai Kazuhiro

In preparing this catalogue, we attached great importance to the following two points;

a) To follow the Romanization tables and cataloging rules based on international standards.

b) To enable it to be useful for conducting research on the kitabs.

That is to say, this catalogue should be general and specialized at the same time. Cataloguing is to arra nge

and describe the bibliographical data of material, according to a consistent rule. If we can do it successfully,

we will be able to provide necessary and well-organized information to the readers.

In this kitab catalogue we adopted the Anglo-American cataloging rules 2nd edition (AACR2) and as

Romanization rules, the ALA-LC Romanization tables (for Arabic and Jawi), which are internationally

adopted in major bibliographical utilities, including NACSIS-Cat run by the National Institute for Informatics

in Japan.

This kitab collection, which consists of printed books, may not be regarded as especially unique material,

from the viewpoint of catalogue-making. However, in cataloguing this collection, we should recognize certain

characteristics of these materials, with regards to (1) the publication practices unique in Islamic areas, and (2)

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the linguistic characteristics in Arabic and Jawi.

First, regarding the publication practices in Islamic areas, generally speaking, the meanings of ―revised

editions‖ and ―reprints‖ seem to be somewhat different from those in the western countries and Japan. For

example, we see some books published in Islamic areas, in which the publishers describe them as ―2nd

Edition‖ but which are in fact just additional printings of the same book. In cataloguing the ordinary material,

we must distinguish a revised edition from the original, but in dealing with publication in Islamic areas, we

should take into consideration the above-mentioned situation and try to find out and describe the actual

condition of tits publication. When find the words such as ―munaqqahah‖ (revised) or ―muzayyadah‖

(enlarged) in the material, or the number of times of ―revisions‖ written on the book seem to be too frequent to

be real (i.e., three times in two years), they might be reprints, rather than revisions.

Furthermore, there are cases in which books are made just by binding the materials which are copied from

the original Arabic book, with a new cover added by the new publisher. In this catalogue, you ma y find some

books which are almost the same except for the names of publishers.

In such cases we have to check the book carefully in taking the publication data, by examining not only the

title page but also the cover pages, the texts and so on.

Another matter concerning the publication style in Islamic areas that requires special attention is the case

in which a single volume contains one or more related but different works in its margin. We often find this

complex style of composition in kutub al-turāth, or books of Islamic classics. In such cases, we should

comprehend this complex style of composition of the book, and understand the relationship among all the

works included in the book, in order to fully describe its bibliographical information.

Second, let us move to the linguistic discussion. The books in this collection are written in the Arabic

script, and in this catalogue we Romanized most of the bibliographical data according to the ALA -LC

Romanization tables. The transliteration method used in the ALA-LC Romanization tables is not the same as

the one which is commonly used by researchers. Although we do not have difficulty in reading the catalogue

in which the ALA-LC Romanization method is used, the cataloguers must sufficiently understand this me thod

and its rules.

In addition to it, many Arabic-loan words are found in the local languages in Southeast Asia. According to

the ALA-LC Romanization method, Arabic-loan words in Southeast Asian languages should be Romanized

following the rule for each language, and not in the same way for Arabic words, even if the spellings in the

Arabic script are the same. Hence, the cataloguers are required to have sufficient knowledge of both languages

and must be able to read the titles written in Arabic and other Southeast Asian languages.

(柳谷あゆみ・新井和広)

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3. “From Arabia to the Land below the Winds: The Authorship of Kitabs spread in Southeast Asia as

seen in the Sophia University Collection‖, by Ervan Nurtawab

This article examines the authorship of kitabs produced and/or circulated in Southeast Asia collected at

Sophia University. The author takes a look at both brief biographies of the authors and their intellectual

positions as well as works based on the subjects. He also focuses on the role of Southeast Asian ulamas who

adapted Arabic kitabs through the production of terjemah and penjelasan, or any other works written in either

Arabic or local languages. Finally, he brings all these facts to see to what extent the ulamas in the region have

attempted at connecting their networks and Islamic discourse to the global Islamic world.

(Ervan Nurtawab)

4. The Changes in Kitab Users Resulting from the Transition from Manuscripts to Printed Kitabs,

byYumi Sugahara

The nineteenth and twentieth centuries witnessed a fresh wave of Islamization in Southeast As ia, marked

by both a considerable increase in the number of pilgrims to Mecca and the emergence of Islamic schools

(pesantren, surau, and dayah) in local villages. The business of publishing Islamic textbooks called ―kitabs,‖

also flourished in Southeast Asia during this time. Many Arabic Islamic books were compiled and translated

into local languages such as Malay (Jawi) and Javanese (Pegon), and began to be published in the early

twentieth century in Java. They have supplied Islamic knowledge from the bas ic level to the highest level to

Muslims in Southeast Asia.

Many of these translations first prevailed in Southeast Asia as manuscripts. These manuscripts were very

limited in number and accessibility, because they were spread throughout the Islamic schoo ls scattered over

the Islands, but to some extent closed to the outside. Through publishing these writings in Southeast Asia and

abroad however, the number of copies increased rapidly, and these works became more accessible because

they were sold at shops in the towns, although the literacy of the society had not significantly improved.

Islamic textbooks that rapidly increased in number have supplied Islamic knowledge from the basic level

to the highest level to Muslims in Southeast Asia. The Jawi and Pegon used in Islamic textbooks have served

to present the indigenous people in Southeast Asia with opportunities to study Arabic knowledge. They have

utilized the textbooks in their struggles to follow the religion and become ideal Muslims. It could be said that

the image of the ideal Muslim, for them, began to be established by textbooks that prevailed in Insular

Southeast Asia.

(菅原由美)

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5. A Preliminary Study of Networks of the Mindanao Ulama: A View from the Kitabs, by Kawashima

Midori

This paper highlights the significance and potentialities of the comparative study of Southeast Asian kitabs

by examining networks of the Mindanao ulama, using kitabs written or published by them as the main source

material.

Despite an abundance of studies on the political movements of the Philippine Muslims since the late 1960s,

and the upsurge of attention with regard to contemporary Islamic movements, virtually no adequate studies

have been made on the intellectual dynamism of the Philippine Muslim society before the 1960s. The period

from the late 19th to the first three-quarters of the 20th century is crucial regarding the development of Islamic

movements in the Philippines, and deserves greater attention, because it was during this period that various

networks of the Mindanao ulama were formed, transformed, and consolidated. This phenomenon occurred not

only within the colonial state/nation-state boundaries, but also across the neighboring area of Southeast Asia,

and even further beyond in the Middle East. The creation of such networks enabled the Mindanao ulama to

interact with each other and their counterparts outside Mindanao, and this in turn facilitated their formulation

of new ideas, by introducing fresh elements and integrating them with the existing ones.

By focusing on the Islamic writings and publications of the ulama of the Lanao area in central Mindanao

during the 19th and 20th centuries, this paper identifies several important kitabs produced or used in the area,

and examines their authors or translators and the organizations involved in producing and distributing them. It

seeks to cast light on both the emergence of the intellectual networks of the Mindanao ulama, and the process

of transformation of these networks, as a preliminary attempt to place the Islamic movements in the

Philippines within a historical perspective.

(川島緑)

④第 1 回キターブ・コレクションの公開・利用促進に関する勉強会(東洋文庫拠点との共催)

日時:2011 年 3 月 7 日(月) 13:30~15:30

場所:上智大学アジア文化研究所図書室(中央図書館 612 号室)

出席者:5 名

概要:

上智拠点で収集した東单アジア・キターブ・コレクションの公開にあたっては、①積極的利用推進、

②資料の紛失や破損を防ぎ大切に保管、という二つの必要性を満たす、適切な管理・保存・公開体制

を考え、事前に確立しておく必要がある。その準備作業として、研究者と事務部門で意見・情報交換

を行い、現状と課題について情報を共有し、問題点の解決方法を考えるために、本勉強会を開催した。

同コレクションの管理を担当するアジア文化研究所職員 2 名も出席した。

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まず、川島緑(上智大学)が、キターブ・コレクションの現状を説明した。これまでにカタログ化

したキターブは、重複本も含め、すべてカタログ番号順に並べ替え、中央図書館アジア文化研究所図

書室の書架に仮置きしている。それらのうち、破損の恐れが高いキターブ 24 点を選び、マイクロフ

ィルム撮影とそのデジタル化を依頼した。これらの図書は、2011 年度に入ってから、順次、中央図

書館にて受け入れ手続きを依頼する予定である。

次に、破損しやすい図書や貴重資料の保管や閲覧の方法について、柳谷あゆみ氏(人間文化研究機

構地域研究推進センターPD 研究員/東洋文庫研究員(併任))より専門的なアドバイスを受けつつ、

意見交換を行った。

今後も、事務部門と研究者との間で密接に連携するとともに、必要に忚じて専門家の助言を得つつ、

適切な保存・管理・利用体制を確立することとした。

(川島緑)

(2)海外派遣・調査

①インドネシア・フィリピンにおける文献調査

期間:2010 年 7 月 29 日(木)~8 月 8 日(日)

国名:インドネシア・フィリピン

出張者:服部美奈

概要:

今調査は、前半(2010 年 7 月 29 日~8 月 3 日)をフィリピン、後半(2010 年 8 月 4 日~8 月 8 日)

をインドネシアで、両国のイスラーム教育に関する調査を行った。

フィリピンでは、マニラ首都圏キアポ市にあるイクラ・キディー統合学習センターおよび单ラナオ

州マラウィ市にあるムスリム・ミンダナオ学院を訪問し、関係者へのインタビューおよび授業風景の

観察をした。イクラ・キディー統合学習センターは就学前教育段階と初等教育段階をもつ学校である。

また宗教教科に加えて一般教科も教える全日制の学校(グレード・スクール)の他に、土日に開かれ

るマドラサをもつ。宗教教師の多くは单ラナオ州のムスリム・ミンダナオ学院や中東での学習経験が

ありアラビア語の能力が高い。次に訪問した单ラナオ州マラウィ市にあるムスリム・ミンダナオ学院

は、就学前教育から高等教育までを擁する総合学園である。英語部門とアラビア語部門に分かれ、英

語部門は就学前教育から中等教育段階がある。英語部門では、イクラ・キディー統合学習センターと

同様、国家カリキュラムを用いて宗教教科だけでなく一般教科も教えられる。教育システムの調整に

より、一般教科と宗教教科およびアラビア語と英語の統合が目指されており、フィリピンにおけるイ

スラーム教育の発展の方向性が理解された。

インドネシアでは、西ジャワ州にある2つのイスラーム寄宿学校におけるキタブ学習を調査した。

最初の訪問地は、西ジャワ州タシクマラヤ県サロパ郡にあるポンドック・プサントレン・バイトゥル

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ヒクマ・ハウルクニン(Pondok Pesantren Baitulhikmah Haurkuning)である。このプサントレンは、1964

年に設立され、現在およそ 1,100 人を越えるサントリが学ぶ。特にアラビア語文法関連のサラーフ学

とナフ学に重点を置いている。1994 年までは学校制度を導入していなかったが、1994 年に中学校段

階のマドラサ・サナウィヤー(Madrasah Tsanawiyah)、1998 年に高校段階のマドラサ・アリヤー(Madrasah

Aliyah)を導入した。これらのマドラサでは、国が定めた標準カリキュラムが採用され、それぞれ中学

校段階、高校段階の卒業資格取得が可能になっている。しかしそれと同時に、学校以外の時間帯では

キタブ学習を充実させ、寮生活を通じて宗教に関する知識や信仰実践が深められるようになっている。

キタブ学習は朝 7 時から 11 時まで行い、ズフルの礼拝の後、マドラサ・サナウィヤーやマドラサ・

アリヤーへ通う。また逆に朝、マドラサへ通い、午後にキタブ学習をするサントリもいる。プサント

レンでのキタブ学習は 3 段階に分かれており、このプサントレンでは多くのキタブを修得するよりも、

尐数のキタブをより深く修得することに重きが置かれる。キタブ学習の伝統が色濃く残るプサントレ

ンである。次の訪問地は、ポンドック・プサントレン・プルグルアン・KHZ.ムスタファ・スカヒド

ゥン (Pondok Pesantren Perguruan KHZ.Musthafa Sukahideng)である。このプサントレンは 1922 年、ズ

ナル・ムフシン(Zenal Muhsin)というキヤイによって設立された。ここでは年齢によるクラス編成で

はなく、サントリの修得状況に忚じて段階別に学習されるキタブが決められる。前者のプサントレン

に比べ、様々な分野のキタブが学習されている。

キタブ研究の一分野として、キタブが実際に現代のプサントレンでどのように使われているのか、

具体的な学習方法をより詳細に考察することは、キタブの現代的意味を探る上で不可欠であり、今回

の調査はその一部をなすものである。また、今回の調査から、キタブ学習に対する宗教省の関与と意

義づけを分析することの重要性を感じた。

(服部美奈)

②イギリスにおける文献調査

期間:2010 年 11 月 22 日(月)~28 日(日)

国名:イギリス

出張者:新井和広

概要:

本出張では、20 世紀前半の東单アジアにおけるアラブ・コミュニティーの状況、特に東单アジアにお

けるイスラームの展開にアラブ系が果たした役割と、アラブ系による出版活動に関する情報の収集を目

指した。その際注目したのは、海峡植民地や蘭領東インドにおいて英国当局や在バタヴィア英国領事館

が作成した報告や通信などである。東单アジア在住のアラブ系は、单アラビアのハドラマウト地方(旧

アデン保護領)出身者が大部分を占めるため、文書調査は以下の二ヶ所で行った。

1. 大英図書館(The British Library):インド省文書(India Office Record)中の、アデン統治に関する

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文書(R/20/A-G)

2. 国立公文書館(The National Archives):植民地省文書中の、アデンに関する文書(CO725)と、海

峡植民地に関する文書(CO273)

このうち国立公文書館では史料の撮影が可能で、撮影のためのスタンドも用意されていたため、調査中

は史料を読むことよりも撮影に時間を割いた。撮影することができたのは以下のファイルである。

CO273/660/8 Messrs Alkaff and Company 1940

CO323/1626/13 Nationality laws in the Hadhramaut 1939

CO725/11/2 Political intelligence summary 1926

CO725/23/17 Status of Hadhramaut 1932-33

CO725/59/15 Education in the Hadhramaut 1938

CO725/79/13 Political intelligence summaries (Eastern) Hadhramaut 1942

CO725/84/20 Loan to the Al Kaf family 1943

FO369/4542 Indonesia- arrest of Mr Saleh Alatas, British protected person. Code KG file 16210 1950

FO371/83743 Remittances from Indonesia to the Hadhramaut in the Eastern Aden Protectorate. Code FH file

1113

J77/2429 Court for Divorce and Matrimonial Causes

一方、大英図書館では文書の撮影が不可能だったため、インド省文書の中からファイル数点を選び、

以下のファイルの調査を行った。

IOR/R/20/A/1409, File 47/2 Pt. III Hadhramaut: Miscellaneous 1916-1922

IOR/R/20/A/3874, File 1472 Hadhramaut. Information regarding will of the late Seiyid S. Al Kaf of

Hadhramaut and Singapore etc. 1937

IOR/L/PS/11/193 - P 444/1921 Activities of the Alkaff family in the Hadramaut [no ref.] 4 Dec 1920-19 Jan

1921

私が今まで調査してきたのはアラブ系の中でもアッタースという家系であったが、今回はカーフ家

に焦点を移して調査を行った。カーフ家は東单アジアで最も裕福な家系のひとつであり、慈善活動や

宗教教育にも熱心であったため、その活動を追うことによってアラブ系による宗教活動の一端が見え

てくる。一方、アラブ系による出版活動に関しては、当初予想していたほどの情報を得ることはでき

なかった。英国が東单アジアにおけるアラブ・コミュニティーの動向を調べる際に、アラブ系による

出版物を情報源のひとつとしていたことは分かっているので、大英図書館と国立公文書館双方にまと

まった形で残されている、アデン保護領情報要約書(Aden Protectorate Intelligence Summary)等を精

査する必要があろう。

(新井和広)

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(3)外国人・海外在住研究者の招聘

①エルファン・ヌルタワブ Ervan Nurtawab 氏招聘

所属:ジュライ・シウォ国立イスラーム研究大学(インドネシア)

期間:2010 年 9 月 30 日(木)~10 月 7 日(木)

活動概要:

東单アジア・キターブ目録の編集作業を行うとともに、10 月 3 日に東洋文庫拠点との共催により、上

智大学で開催された第 1 回キターブ・カタログ勉強会に参加し、目録作成にあたっての最終打ち合わせ

を行った。

(川島緑)

②久志本(塩崎)裕子氏招聘

所属:東京外国語大学大学院地域文化研究科

期間:2010 年 11 月 12 日(金)~17 日(水)

活動概要:

マレーシアのマラヤ大学に長期留学中で、コタバルとペナンでのキターブ収集を担当した久志本氏を

招聘した。久志本氏は、 11 月 14 日に上智大学で開催された研究会「東单アジアのイスラーム」でキタ

ーブ収集活動の報告、および、「20 世紀初頭のマラヤにおけるイスラームと近代学校教育:雑誌『プンガ

ソ(Pengasuh)』に見る教育観」と題する報告を行うとともに、他の報告に関する議論に参加した。さらに、

上智大学や東京外国語大学等において、関連分野の研究者との学術交流を行った。

(川島緑)

(4)資料収集

①東单アジアのキターブ

・タガログ語、英語、マラナオ語等のイスラーム書約 20 点と、イスラーム関係の DVD 約 10 点。

・形態:冊子、DVD.

・収集目的:東单アジア各地のキターブのコレクションを構築する。

・収集方法:上智大学の在外研究によりフィリピン滞在中の川島が、マニラ市、および、单ラナオ州マ

ラウィ市のイスラーム書店で購入した。

・収集期間:2010 年 8 月、10 月。

・現在、整理中。順次、目録化予定。

(川島緑)

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(5)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔論文〕計( 15 )件

著 者 名 論 文 標 題

青山 亨

(研究グループ 2 研究協力者)

サンスクリット化

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

奈良康明・下田正弘(編集委員)、林行夫(編集協力)『静と動

の仏教』(新アジア仏教史 04 スリランカ・東单アジア)佼成出

版社

2010 260-264

著 者 名 論 文 標 題

青山 亨

(研究グループ 2 研究協力者)

(翻訳)レムコ・ラーベン「オランダの植民地の過去とポ

スト・コロニアルの倫理」

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

今井昭夫・岩崎稔(編)『記憶の地層を掘る―アジアの植民地支

配と戦争の語り方』御茶ノ水書房

2010 181-202

著 者 名 論 文 標 題

青山 亨

(研究グループ 2 研究協力者)

(訳注)①「ジャワの元寇(13 世紀末)―『パララトン』

(15 世紀頃)」②「アーディティヤヴァルマン王のマラ

ユ王国―不空羂索観音像銘文(1347 年)」③「ラージャ

サナガラ王治世下のマジャパヒト王国(14 世紀後半)―

『デーシャワルナナ』(1365 年)」

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

歴史学研究会(編)『世界史史料 4 東アジア・内陸アジア・東单

アジア II』

2010 377-379,

379-381,

384-386

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著 者 名 論 文 標 題

新井 和広

(研究グループ 2 研究分担者)

東单アジアにイスラームをもたらしたのは誰か?

―ワリ・ソンゴの起源をめぐる問題とアラブ系住民

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

永原陽子(編)『生まれる歴史,創られる歴史―アジア・アフリ

カ史研究の最前線から』刀水書房

2010 153-179

著 者 名 論 文 標 題

ARAI Kazuhiro

(研究グループ 2 研究分担者)

The Media, Saints and Sayyids in Contemporary Indonesia

(Special Issue: Sufis and Saints Facing the Government and

the Public)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Orient 46 2011 51-71

著 者 名 論 文 標 題

堀井聡江(訳)・川島緑(解説)

(研究グループ 2 代表)

『新しい黎明』―1960 年代カイロのフィリピン・ムスリム

学生論文集邦訳・解説(5)

書 名 巻 発 行 年 ページ

『上智アジア学』 28 2010 171-193

著 者 名 論 文 標 題

堀井聡江(訳)・川島緑(解説)

(研究グループ 2 代表)

『回想録―アズハル大学および神護の都マッカのフィリピ

ン人留学生に寄せて』:邦訳・解説(中)

雑 誌 名 巻 発 行 年 ページ

『上智アジア学』 28 2010 195-217

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著 者 名 論 文 標 題

KAWASHIMA Midori and A. Annabel

(研究グループ 2 代表)

Conservation of the Islamic Manuscripts of Mindanao: A Case of

the Qur‘an of Bayang. With Notes by Annabel Teh Gallop

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

私市正年(編)『ナショナリズム復興のなかの文化遺産―アジ

ア・アフリカのアイデンティティ再構築の比較』上智大学アジ

ア文化研究所

2011 99-118

著 者 名 論 文 標 題

小林 寧子

(研究グループ 2 研究協力者)

東单アジア・イスラームの展開

書 名 巻 発 行 年 ページ

小杉泰(編)『イスラームの歴史 2』山川出版社 2010 203-240

著 者 名 論 文 標 題

KOBAYASHI Yasuko

(研究グループ 2 研究協力者)

Ulama‘s Changing Perpsetives on Women‘s Social Status:

Nahdlatul Ulama‘s Legal Opinions

雑 誌 名 巻 発 行 年 ページ

OTA Atsushi, OKAMOTO Masaaki, and Ahmad Suaedy (eds.), Islam

in Contention: Rethinking Islam and State in Indonesia

2010 285-318

著 者 名 論 文 標 題

菅原 由美

(研究グループ 2 研究分担者)

オランダ領東インドにおける植民地化とイスラーム

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

和田春樹ほか(編)『東アジア世界の近代―19 世紀』(岩波講座

東アジア近現代通史 1)岩波書店

2010 336-351

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著 者 名 論 文 標 題

菅原 由美

(研究グループ 2 研究分担者)

キターブにみる東单アジア島嶼部のイスラーム受容

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

床呂郁哉・福島康博(編)『東单アジアのイスラーム』(東单ア

ジアのイスラーム(ISEA)プロジェクト成果論文集 2011)

2011 38-48

著 者 名 論 文 標 題

服部 美奈

(研究グループ 2 研究分担者)

高等教育の一大市場を形成する底力,先を見据えた人材育

成戦略―インドネシアの高等教育戦略

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『リクルート カレッジマネジメント』 165 2010 42-45

著 者 名 論 文 標 題

山口 裕子

(研究グループ 2 研究協力者)

たくさんの「ブトン王国史」―現代インドネシア地方社会

における歴史語りの対話空間とその創造過程

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

歴史学研究会(編)『由緒の比較史』(シリーズ歴史学の現在 12)

青木書店

2010 259-302

著 者 名 論 文 標 題

YAMAMOTO Hiroyuki

(研究グループ 2 研究分担者)

K. Bali: Sino-Thai Peranakan in Search of Sabah Nationhood

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Caroline S. Hau & Kasian Tejapira. (eds.) Traveling Nation-Makers:

Transnational Flows and Movements in the Making of Modern

Southeast Asia, Kyoto University Press.

2011 233-247

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〔図書〕計( 5 )件

著 者 名 出 版 社

Oman Fathurahman, AOYAMA Toru, ARAI

Kazuhiro, SUGAHARA Yumi, Salman Abdul

Muthalib (eds)

(研究グループ 2 研究分担者・研究協力

者)

Tokyo University of Foreign Studies

書 名 発 行 年 ページ

Katalog Naksah Dyah Tanoh Abee Aceh Besar 2010 374

著 者 名 出 版 社

KAWASHIMA Midori and L. Riwarung, P.

Salivio

(研究グループ 2 代表)

Institute of Asian Cultures, Sophia University

書 名 発 行 年 ページ

A Catalogue of the Maisie Van Vactor Collection of Maranao Materials in the

Arabic Script at the Gowing Memorial Research Center (Monograph Series No. 6)

2011 98

著 者 名 出 版 社

山口 裕子

(研究グループ 2 研究協力者)

世界思想社

書 名 発 行 年 ページ

『歴史語りの人類学―複数の過去を生きるインドネシア東部の小地域社会』 2011 408

著 者 名 出 版 社

YAMAMOTO Hiroyuki, Anthony MILNER,

KAWASHIMA Midori, ARAI Kazuhiro

(eds.)

(研究グループ 2 代表・研究分担者)

Kyoto University Press

書 名 発 行 年 ページ

Bangsa and Umma: Development of People-Grouping Concepts in Islamized

Southeast Asia

2011 270

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著 者 名 出 版 社

MURAKAMI Yusuke, YAMAMOTO

Hiroyuki, KOMORI Hiromi (eds.)

(研究グループ 2 研究分担者)

Kyoto University Press

書 名 発 行 年 ページ

Enduring States in the Face of Challenges from Within and Without 2011 299

〔学会発表〕計( 14 )件

発 表 者 名 発 表 標 題

AOYAMA Toru

(研究グループ 2 研究協力者)

Program Katalogisasi Naskah-naskah Aceh, dan Peluncuran

Katalog Naskah Dayah Tanoh Abee

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Simposium Internasional Pernaskahan Nusantara XIII:

―Naskah, Akses, dan Identitas,‖ Manassa

2010 年 7 月 27 日 Sahid Kusuma Prince Hotel,

Surakarta(インドネシア)

発 表 者 名 発 表 標 題

AOYAMA Toru

(研究グループ 2 研究協力者)

Program TUFS untuk Restorasi dan Katalogisai Naskah Aceh

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Seminar Internasional: Revitalisasi Manuskrip Aceh

Pemeliharaan dan Pelestarian Manuskrip Aceh sebagai

Warisan Budaya Masa Lau

2011 年 3 月 5 日 Institut Agama Islam Negeri

Ar-Raniry, Banda Aceh

発 表 者 名 発 表 標 題

ARAI Kazuhiro

(研究グループ 2 研究分担者)

Genealogy as History: Hadhrami Families in Southeast Asia

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

―Rihlah –Arabs in Southeast Asia‖ Conference 2010 2010 年 4 月 10 日 National Library Building

(シンガポール)

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発 表 者 名 発 表 標 題

ARAI Kazuhiro

(研究グループ 2 研究分担者)

The Media, Saints and Sayyids in Contemporary Indonesia

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

3rd World Congress for Middle Eastern Studies 2010 年 7 月 20 日 Universitat Autònoma de

Barcelona (スペイン)

発 表 者 名 発 表 標 題

石川 和雅

(研究グループ 2 研究協力者)

コンバウン朝バドン王治世(1782-1819)の統治理念につい

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

ビルマ研究会 2010 年 5 月 15 日 亜細亜大学

発 表 者 名 発 表 標 題

KAWASHIMA Midori

(研究グループ 2 代表)

The Role of Islamic Intellectuals in the Formation of Moro

Nationalism: Reflections on the Ulama of Lanao during the

1950-60s.

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Second International Philippine Studies Conference of

Japan

2010 年 11 月 13 日 International Congress

Center Epochal Tsukuba,

Ibaraki, Japan

発 表 者 名 発 表 標 題

小林 寧子

(研究グループ 2 研究協力者)

ナフダトゥル・ウラマー再考

―第 32 回全国大会における「伝統」の表象と言説

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

東单アジア学会九州地区例会 2010 年 5 月 29 日 九州大学

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発 表 者 名 発 表 標 題

小林 寧子

(研究グループ 2 研究協力者)

日本のイスラーム・プロパガンダとインドネシア・ムスリ

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

東单アジア学会中部地区例会 2010 年 10 月 9 日 名古屉大学

発 表 者 名 発 表 標 題

服部 美奈

(研究グループ 2 研究分担者)

流動性の高い社会における知の伝達と定着

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

東单アジア学会 2010 年度春季大会 2010 年 6 月 6 日 愛知大学

発 表 者 名 発 表 標 題

服部 美奈

(研究グループ 2 研究分担者)

ジャウィからみるマレー世界と知の伝播

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本比較教育学会第 46 回大会 2010 年 6 月 27 日 神戸大学

発 表 者 名 発 表 標 題

西野節男、服部美奈

(研究グループ 2 研究分担者)

価値多元化社会におけるイスラーム高等教育機関-インド

ネシアとマレーシア

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本比較教育学会第 46 回大会 2010 年 6 月 27 日 神戸大学

発 表 者 名 発 表 標 題

HATTORI Mina, NISHINO Setsuo

(研究グループ 2 研究分担者)

Function of Islamic Higher Education toward Multi-cultural

society: Comparative Analysis of Indonesia, Malaysia, United

Kingdom, and Netherlands

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

14th World Congress of Comparative Education Society 2010 年 6 月 14 日 Istanbul(トルコ共和国)

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発 表 者 名 発 表 標 題

YAMAGUCHI Motoki

(研究グループ 2 研究協力者)

Transformation of the Identity of Al-Irsyad: From a Hadhrami

Organization to an Indonesian Muslim Organization

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

International Workshop on the Emergence and Dynamic

of Various Islamic Variants in Indonesia (Bilateral

Program: Joint Research Project, JSPS-LIPI)

2010 年 7 月 30 日 東京外国語大学

発 表 者 名 発 表 標 題

山口 元樹

(研究グループ 2)

オランダ領東インドにおけるアラブ人協会『イルシャード』

の教育活動―アフマド・スールカティーの改革为義思想

とその影響

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

セミナー「東单アジアのマイノリティ・ムスリム」 2011 年 3 月 1 日 单山大学

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研究グループ 3:「スーフィズムと民衆イスラーム」

【組織】

(研究グループ 3 メンバー)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

赤堀 雅幸 上智大学外国語学部教授 研究グループ 3 代表

(近現代聖者信仰)

後藤 明 東洋大学文学部教授 研究グループ 3 研究分担者

(前近代聖者信仰)

高橋 圭 人間文化研究機構地域研究推進センターPD 研究

員、上智大学アジア文化研究所客員研究所員

研究グループ 3 研究分担者

(近現代タリーカ)

三沢 伸生 東洋大学社会学部准教授 研究グループ 3 研究分担者

(前近代タリーカ)

森本 一夫 東京大学東洋文化研究所准教授 研究グループ 3 研究分担者

(預言者一族崇敬)

(研究グループ 3 研究協力者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

朝田 郁

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究

科一貫制博士課程

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

東アフリカにおけるハドラミーお

よびアラウィー教団

新井 一寛

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究

科研究員

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

地域研究・宗教学・宗教社会学・

映像人類学(現代エジプトのスー

フィー教団)

今松 泰 同志社大学神学部非常勤講師

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者) オスマン朝史(宗教史・文化史)

加藤 瑞絵 成蹊高校非常勤講師

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者) イスラーム思想史

鎌田 繁 東京大学東洋文化研究所教授

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者) シーア派イスラーム思想

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河原 弥生

日本学術振興会特別研究員(中央大学)

(京都大学拠点ユニット 4、東京大学拠点グルー

プ 1 研究協力者)

中央アジア史

川本 正知 奈良産業大学ビジネス学部教授

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者) 中央アジア史

木下 博子

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究

科一貫制博士課程

(上智大学拠点グループ 2、京都大学拠点ユニッ

ト 4 研究協力者)

東单アジアと中東のネットワーク

小林 寧子

单山大学外国語学部教授

(早稲田大学拠点グループ 2、上智大学拠点グル

ープ 1、2、京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

インドネシア近現代史

小牧 幸代 高崎経済大学地域政策学部准教授

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

社会人類学(单アジア・ムスリム

社会)

斎藤 剛 神戸大学大学院国際文化学研究科准教授

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

社会人類学、モロッコ研究、ムス

リム聖者信仰、タリーカなど

坂井 信三 单山大学人文学部教授

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者) 西アフリカのイスラーム

澤井 真 東北大学文学研究科博士後期課程

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

宗教学・初期スーフィズム、神秘

为義方法論

篠田 知暁 京都大学文学研究科博士後期課程

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

シャリーフ王朝期モロッコにおけ

る諸社会集団の形成と変容

高尾賢一郎 同志社大学大学院神学研究科博士後期課程

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

現代シリアにおけるシャイフ・ア

フマド・クフターローのイスラー

ム理解、スーフィズム思想

IDIRIS

Danismaz

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究

科非常勤講師

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

トルコにおけるスーフィズム、ス

ーフィーによるクルアーン解釈

外川 昌彦 広島大学大学院国際協力研究科准教授

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

文化人類学(单アジアのイスラー

ム研究)

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飛内 悠子

上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究

科博士後期課程

(上智大学拠点グループ 1、京都大学拠点ユニッ

ト 4 研究協力者)

北部スーダンの教育人類学

中西 竜也

日本学術振興会特別研究員 PD・京都大学大学院

アジア・アフリカ地域研究研究科

(早稲田大学拠点グループ 2、京都大学拠点ユニ

ット 4 研究協力者)

中国イスラーム史

二宮 文子

日本学術振興会特別研究員 PD・京都大学人文科

学研究所

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

中世インド文化史

平野久仁子 上智大学大学院外国語学研究科博士後期課程

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

インド思想、宗教社会学(スワー

ミー・ヴィヴェーカーナンダの思

想と実践)

藤井 千晶

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究

科一貫制博士課程

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

東アフリカのイスラーム

丸山 大介

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究

科一貫制博士課程

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

イスラームの聖者論と聖者信仰

水野 裕子 広島大学大学院国際協力研究科博士後期課程

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

文化・宗教人類学(パキスタンの

イスラーム聖者信仰)

茂木 明石

上智大学アジア文化研究所リサーチ・アシスタ

ント

(早稲田大学拠点グループ 1、京都大学拠点ユニ

ット 4 研究協力者)

歴史学、中世エジプトの聖者信仰

守川 知子 北海道大学大学院文学研究科准教授

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者) イラン・イスラーム史

森山 央朗

日本国際問題研究所研究員

(早稲田大学拠点研究グループ 1、京都大学拠点

ユニット 4 研究協力者)

歴史(10~12 世紀マシュリク地域

におけるハディース学者の社会

的・文化的活動)

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矢島 洋一 京都外国語大学非常勤講師

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者) スーフィズム史

安田 慎

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究

科一貫制博士課程

(京都大学拠点ユニット 4 研究協力者)

スーフィズム・聖者廟研究

吉田 京子

東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研

究専攻イスラム学講座助教

(京都大学拠点ユニット 4 協力者)

初期シーア派思想

若松 大樹

日本学術振興会特別研究員(PD)/上智大学ア

ジア文化研究所客員研究所員

(京都大学拠点ユニット 4 協力者)

現代トルコにおけるアレヴィー集

団のオジャク(タリーカ)・聖者

【2010 年度の研究・教育活動】

1. 今年度の研究・教育活動の概要

新たに設立された上智大学イスラーム研究センターの活動の一環として、本研究グループはスーフィ

ズムと民衆イスラームをテーマに研究活動を継続発展させた。例年実施の研究会、講演会に加え、昨年

同様に 2 回の若手研究者国際ワークショップを実現して、本研究グループ共同研究の基本的な活動の一

部とし、多くの学生から効果的なトレーニングとして歓迎されると共に、本グループの活動の将来を支

える人材の発見と養成に寄与することができた。同じく毎年度実施の研究合宿については、会場確保の

点から合宿形式を取ることができなかったものの、京都大学を会場に 2 日にわたるワークショップとし

て開催した。予算上の制限から今年度は共同調査を実施することができなかったが、代わって二つの国

際会議において部会を組織して、研究発表を行い、国際的な場においても本グループの研究の進展に一

定の評価を得た。成果刊行については、文献目録 1 冊(『北米ムスリム研究文献目録』)を SIAS Working

Papers として、また、英文プロシーディング 2 冊、学会欧文誌での特集 1 本(日本オリエント学会 Orient

46 号、特集‖Sufis and Saints Facing the Government and the Public‖)を刊行した。

研究会については、4 回(2 回を上智大学、2 回を京都大学)を実施し、その際には一昨年度来の京都

大学拠点ユニット 4(KIAS 4「広域タリーカ」)との連携だけではなく、上智大学拠点研究グループ 1、

上智大学アジア文化研究所、東長靖(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授)を代表

とする文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(B))「オスマン朝期イスラーム思想研究」との協力も継

続し、また若手研究者支援の意味から京都を基盤とする私的研究会である「現代中東イスラーム世界・

フィールド研究会」との共催も試みた。講演会 2 回についても同様に、上智大学アジア文化研究所、「オ

スマン朝期イスラーム思想研究」と 1 回ずつの共催により、実施した。2 日にわたる研究ワークショップ

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では、若手研究者の最新の研究成果発表 3 本に、基本文献に立ち戻っての文献研究 3 本を組み合わせて 3

月に実施し、後者の文献研究は参加者の共通理解をさらに高め、研究動向への認識を深めるためにも、

2011 年度以降も継続することとした。

7 月にはバルセロナで開催された第 3 回中東研究世界大会に、第 1 回、第 2 回大会に続き参加し、日本

中東学会为催の‖Meeting Place of Two Oceans (Majma‘al-Bahrayn): Multi-Dimensional Understanding of

Middle East‖と題して組織された連続部会の一部として、‖Sufis and Saints Facing the Government and the

Public‖を为題に 2 部会からなる共同研究発表を行った。残念ながら今大会での聴衆の数は過去の 2 回に

及ばなかったが、全般に聴衆が尐なかった今年度の大会の中では相対的には多数の聴衆を集めたともい

える。なお、この部会の実施にあたっては、8 名に及ぶ派遣者、招聘者の旅費等確保の必要から、NIHU

イスラーム地域研究の予算以外にも、国際交流基金から獲得した外部資金の他、研究分担者の個人研究

費等を充てて実施した。また、年度内に実施した 4 回の研究会のうち、第 1 回と第 2 回は本部会の予行

練習を兼ねて、それぞれの発表内容をより高度化し、また全体の共通为題をより明確にする目的でもっ

て、実施している。その成果は上述の学会誌 Orient 上の特集として刊行された。

12 月京都開催の NIHU イスラーム地域研究国際会議‖New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity,

Contestations and the Future‖では、‖Emerging Approaches to the Phenomena around Sufism and Saint Veneration‖

と題する部会を組織し、若手研究者を中心とした 4 名の発表に研究分担者他が司会、ディスカッサント

を務めた。

若手研究者養成の観点から、昨年度同様 KIAS4 との共催により 2 回の国際ワークショップ(6 月に京

都大学、2 月に上智大学)を開催した。すべて英語により、上智大学、京都大学の大学院学生に加えて、

滞日中の外国個人若手研究者の発表のべ 20 本(第 1 回 9 本、第 2 回 11 本)を行い、招聘外国人研究者延

べ 4 名(第 1 回、第 2 回とも 2 名)をディスカッサントに招いたワークショップの質は、昨年度よりさ

らに向上しており、高い教育的効果と共に、本グループの研究分担者等にとっても、若手研究者の開拓

する新しい研究の動向に接することができた点で有意義であった。その成果は前述した英文プロシーデ

ィング 2 冊として刊行された。

外国人研究者招聘については、本グループの予算による招聘は実施しなかったが、協力関係にある機

関等が招聘した研究者や、京都大学、上智大学が客員として招聘した研究者で、本グループの研究に関

連した分野の専門家に積極的に参加を請い、これまでも連携を深めてきた CNRS(フランス国立科学研究

センター)からの 3 名他、国際バタム大学(インドネシア)、カイロ・アメリカン大学(エジプト)、ア

ルジェ大学(アルジェリア)から来日の 3 名などが今年度の研究活動に積極的な役割を果たした。

CNRS との緊密な協力は、2011 年度以降各年に日本とフランスで交互に国際ワークショップを開催す

るという合意へと発展し、本年度末には研究分担者である高橋を、オランダでの文献調査収集を兼ねて、

打ち合わせのためにフランスに派遣した。

2011 年度には、本研究グループは解消されて、上智大学拠点は全体として「イスラーム近代と民衆の

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ネットワーク」という为題を追求していくが、本グループの研究分担者、協力者はこれまでの研究成果

を発展的に継承して新たな为題の中で活かしつつ、京都大学拠点および CNRS 他との連携も強化して、

拠点の研究活動に財献する予定である。同時に、2011~2014 年度科学研究費補助金(基盤研究(B))に

内定した「近現代スーフィズム・聖者信仰複合の動態的研究」(研究代表者:赤堀雅幸)が個別事例調査

および共同調査推進の役割を担う形で積極的に連動し、いっそうの研究実績の蓄積を進める予定である。

(赤堀雅幸)

2. 研究・教育活動の記録

(1)研究会活動

①第 1 回研究会(京都大学拠点ユニット 4 との連携)

日時:2010 年 5 月 30 日(水) 15:00~18:45

場所:上智大学 2-630a 号室

発表:

高尾賢一郎(同志社大学)

「スーフィズムを巡る为張と評価の諸展望―シャイフ・アフマド・ クフターローの事例から」

高橋圭(人間文化研究機構/上智大学)

「近代エジプトにおけるタリーカ再評価―タリーカ改革(1895-1905)の目指したもの」

新井和広(慶應義塾大学)

「インドネシアにおけるイスラーム定期刊行物とアラブ・コミュニティー―アル=キッサ(alKisah)

の事例から」

三沢伸生(東洋大学)

「戦前期の日本におけるイスラーム受容―神道とイスラームの習合の模索」

コメント:東長靖(京都大学)

概要:

本研究会は、2010 年 7 月にバルセロナで開催される WOCMES におけるパネル報告‖Sufis and Saints

Facing the Government and the Public‖へ向けた研究発表の場であった。

まず高尾氏からは、シリアのナクシュバンディー教団指導者であり、最高ムフティーでもあったシャ

イフ・アフマド・クフターローの教団ネットワークに関する報告が行われた。高尾氏は、同教団がダマ

スカスで構築してきたネットワークをクフターローの父祖の代にまで遡り検証を行った。資料の精査を

通じて、クフターローは父祖の後継として引き継いだ教団において中心的人物であり続け、同時に最高

ムフティーの職位にもあったことから、クフターローと彼を取り巻く教団関係者らのネットワークが、

現代の宗教発エスタブリッシュメントに財献したことが明らかにされた。

次に高橋氏からは、近代エジプトにおけるタリーカのあり方にかんして、タリーカの制度化を通じた

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政府と民衆の反忚にかんする報告がなされた。報告では、第 1 に、1895 年以降のタリーカ改革によって、

タリーカが行政機構の一部として再編成されると同時に、タリーカ自身の組織化が達成されたこと、第 2

に、タリーカのシャイフらは改革後教育者としてエジプト社会における指導的役割を全うし、近代社会

への自発的な関与がみられた点が指摘された。

後半は新井氏と三沢氏による報告が行われた。新井氏からは、インドネシアのサイイドを取り上げた

定期刊行物である『アルキッサ(alKisah)』と同雑誌の出版を取り巻くサイイドらの営為にかんする報告

が行われた。新井氏は、同雑誌が昨今のイスラームの商品化の潮流に上手く乗じており、他の競合雑誌

のなかで発行部数が最多、かつ若年層の読者を多く獲得している点を指摘した。またこのことから、イ

ンドネシア・イスラームにおけるサイイドの重要性が読み取れることが指摘された。他方、同雑誌にお

けるサイイドの表象方法や、大成していない若手知識人らを取り上げることなど、雑誌の方向性をめぐ

り同じサイイドらの間でのコンフリクトが生じている事例が紹介された。

最後の三沢氏による報告では、戦前期日本におけるイスラーム受容にかんする報告がなされた。三沢

氏は軍属の日本人ムスリムではない田中逸平と有賀文八郎に着目し、神道とイスラームの習合について

の言説を分析した。具体的には、田中が神道に親近感をもち、イスラームと神道の習合を達成した上で

の大アジア为義を为張したのに対して、有賀は、仏教、儒教を含む神道への懐疑的志向を持ち合わせて

はいたものの、キリスト教への理解を示し、白色人種に対抗するための大アジア为義を为張したという

両者の相違点が指摘された。

会場を交えた質疑忚筓では、パネルでのそれぞれの持ち時間を考慮し、発表内容を精査する必要性が

提言され、次回研究会に向けた修正点などの指摘もあった。

(木下博子)

②第 1 回若手研究者国際ワークショップ(京都大学拠点ユニット 4 との連携)

*‖Inner Ideal and Outer Movement in the Islamic World‖

日時:2010 年 6 月 19 日(土) 13:00~18:50

場所:京都大学 AA401 号室

プログラム:

13:00-13:10 Opening Remarks (TONAGA Yasushi)

13:10-14:40 1st session: Middle East Politics (Chair: TONAGA Yasushi)

FUKUNAGA Koichi (Sophia University)

―A Study on the Islamist View of the Era of the Early Muslim Conquests: Through the Critical Analysis

of Majmū‗a Rasā‘il al-Imām al-Sharīf Hasan al-Bannā‖

SHIMIZU Masako (Sophia University)

―Founding Hamas: The Transforming National Agenda in the Islamist Movements‖

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MIZOBUCHI Masaki (Sophia University)

―Struggle for Lebanon: How and Why does the Small State Fall into the Battlefield of the Middle East?‖

14:55-16:25 2nd Session: Islamic Thought and Society (Chair: TAKAHASHI Kei)

TOCHIBORI Yuko (Kyoto University)

―The Dialogue between Muslim and Christians: In the Case of ‗Abd al-Qādir al-Jazā‘irī‖

ISHIDA Yuri (Kyoto University)

―The Latā‘if Theories in Sufi Formative Period‖

OKADO Masaki (Sophia University)

―Formation of Social Network by Upper Egyptian Construction Workers in Alexandria: Human

Relationship over Ahwa (Coffee shop) as the Base‖

16:40-18:10 3rd Session: Islam in Global Network (Chair: AKAHORI Masayuki)

ASADA Akira (Kyoto University)

―Blood and Migration: Hadhrami Network in Zanzibar, Tanzania‖

KINOSHITA Hiroko (Kyoto University)

―Islamization Led by al-Azhar Graduates in Contemporary Indonesia‖

TORIYA Masato (Sophia University)

―The Political Movement of Pashtun in the Pak-Afghan Border Area‖

18:10-18:30 Comment (Sanaa MAKHLOUF)

18:30-18:50 General Discussion (Chair: AKAHORI Masayuki)

概要:

「イスラーム世界における内なる理念と外なる運動」と題した本ワークショップは、本グループの为

題に関わる研究(ただし、今回はやや为題とは距離のある分野の者についても、広く機会を与える意味

で発表を認めることとした)を実践している京都大学、上智大学の大学院学生、若手研究者を中心に、

英語による研究発表のスキル向上を兼ねて、最新の研究成果を披露し、たがいに批判することで相互理

解と研究の質の向上を図ることを目的としている。

2008 年度来、通算では第 4 回になる今回のワークショップは、京都大学を会場とし、京都大学がカイ

ロ・アメリカン大学(エジプト)から客員として招聘したサナア・マクルーフ教授、同じく上智大学が

国際バタム大学(インドネシア)から招聘したリナ・シャフルッラー教授をディスカッサントに迎えて、

9 名の大学院学生が発表を行った。

第 1 部「中東の政治」では、ハサン・バンナーの政治思想研究を専門とする福永浩一氏がまず、従来

の研究にバンナーの歴史観の全体をみる視点が欠けていたとの認識から、書簡集の記述に基づいて初期

イスラームの征服運動に対するバンナーの理解の特徴と、それが彼の近現代エジプト理解とどのように

関わるかを論じた。続いて、清水雅子氏が、パレスティナのムスリム同胞団から別れ出たハマースにつ

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いて、イスラーム为義運動の枠組みの中でパレスティナ民族为義との関わりをどのように見定めていっ

たかについて持論を展開した。溝淵正季氏は、レバノンにおける宗教、宗派、民族などをからめた紛争

の展開を、中東における数々の紛争の象徴とも言える構造が見られるとの視点から分析した。近年、若

手研究者の間では、現代中東およびイスラーム世界政治への関心が高まっているが、これらの発表もそ

うした流れを汲んだ課題意識に基づく発表であると同時に、この分野でより新しい視点と取り組みによ

る研究が欲されている現状をよく表すものであったと言えるだろう。

第 2 部「イスラームの思想と社会」では、まず栃堀木綿子氏が、シリア時代のアブドゥルカーディル・

ジャザーイリーを取り上げて、彼をはじめとするムスリム知識人が、近代国家成立の時代にどのように

キリスト教徒知識人との間に対話をなそうとしていたのかを、資料に基づいて発表した。石田友梨氏は

イスラームの霊魂論のうちでも、スーフィズム形成初期におけるラターイフ論に注目してこれを広大の

展開を視野に入れて紹介した。岡戸真幸氏は、現代のアレクサンドリアにおける出稼ぎ建設労働者が、

社会的なネットワークを形成する場として、伝統的なアフワ(茶店)に注目し、人類学の視点から調査

成果を発表した。時代も分野も異なる 3 本の発表であるが、それぞれの意欲的な取り組みに、活発な質

疑忚筓がなされた。

第 3 部「グローバル・ネットワークのなかのイスラーム」では、中東以外の地域を舞台に、地域の枠

を超えたイスラーム関連の運動が取り上げられた。朝田郁氏はザンジバルにおけるハドラマウト出身者

のネットワークを、移民史と血統観などを軸に紹介した。木下博子氏は、現代のインドネシアにおいて、

アズハル大学の卒業生たちが为導したイスラーム改革運動がどのように進行しているかを紹介し、「留学

仲間」のネットワークがどのように機能しているかを論じた。登利谷正人氏は、アフガニスタン=パキ

スタン国境地域でのパシュトゥーン系住民の近年の政治運動について、国境をまたぐ形でのその活動の

あり方を、同地域での長期現地調査によって収集した資料に基づいて報告した。こうした、地域越境的

なスリムの活動のありようは、今日のイスラームを語る上で、欠かすことのできない視点であり、他の

参加者にも学ぶところは多く、多大な刺激を得られた部会であった。

回を重ねて、すでに本ワークショップや他の国際会議等での発表経験を積んだ学生もふえ、研究とそ

の成果発表に向けた意欲の高まりや発表技術について、顕著な向上が見られたことは、非常に喜ばしか

ったが、簡潔な受け筓えを旨とした質疑忚筓の発展的な展開などについてはよりいっそうの研鑽が必要

であると見受けられた。また、自分の専門とは異なる分野の研究についても、意欲的に耳を傾け、積極

的に理解し質問、意見を述べて、他者の研究をサポートしようとする姿勢が必ずしも充分とはいえない

参加者がいないではなかったこともやや残念に思われた。この点は、ワークショップを組織する研究分

担者たちにも責任があり、今後のワークショップでは対策を講じていきたいと考える。

(リーム・アハマド、赤堀雅幸)

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③第 2 回研究会(京都大学拠点ユニット 4 との連携)

日時:2010 年 6 月 20 日(日) 10:00~12:00

場所:京都大学 AA401 号室

発表:

TAKAHSHI Kei (NIHU/Sophia University)

―Revaluating Tariqas for the Nation: Muhammad Tawfiq al-Bakri and his Tariqa Reform 1895-1905‖

ARAI Kazuhiro (Keio University),

―The Media, Saints and the Sayyids in Indonesia and Hadramawt‖

TAKAO Kenichiro (Doshisha University)

―Shaykhs facing to Orthodoxy and ‗Aggiornamento‘‖

MISAWA Nobuo (Toyo University)

―Shintoism and Islam in Interwar Japan‖

Commentator:

Sanaa Makhlouf (The American University in Cairo)

TONAGA Yasushi (Kyoto University)

概要:

7 月 20 日にバルセロナで開催される第 3 回中東研究世界大会での部会発表に向けて、在外の 2 名を除

く発表者 4 名が発表予定の内容を披露し、それぞれの発表内容について相互の理解を深めると共に、質

疑忚筓を通して、残された期間に内容のさらなる充実を図り、全体の整合性について検討する機会とし

た。発表の完成度はこの時点では様々であったが、それぞれの発表の鍵となる概念などに精細な検討を

加えることができた。なお、この研究会は本グループの実施するものとしてはまれであるが、積極的な

広報活動は行わず、为として中東研究世界大会での発表者、司会、討論者に参加を限った半ば非公開の

研究会として実施した。

(赤堀雅幸)

④第 1 回講演会

*京都大学拠点ユニット 4 との連携、科研費 B「オスマン朝期イスラーム思想研究」との共催

日時:6 月 20 日(日) 14:00~16:00

場所:京都大学 AA401 号室

講演:Sanaa Makhlouf (The American University in Cairo, Egypt)

タイトル:Challenging the Reform Narrative: A Comparative Study of Abd al-Rahman al-Kawakibi and Abd

al-Qadir al-Jaza'iri

概要:詳細は京都大学拠点の該当箇所を参照されたい。

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⑤第 3 回中東研究世界大会 Panel: Sufis and Saints Facing the Government and the Public I & II

*京都大学拠点ユニット 4 との連携

日時:2011 年 7 月 20 日(火) 9:00~13:30

場所:バルセロナ自由大学(バルセロナ、スペイン)

Organizer: AKAHORI Masayuki (Sophia University, Japan)

Chairperson: AKAHORI Masayuki

Speakers:

1. TAKAHASHI Kei (National Institute for the Humanities/ Sophia University, Japan)

―Revaluating Tariqas for the Nation: Muhammad Tawfiq al-Bakri and his Tariqa Reform 1895-1905‖

2. MARUYAMA Daisuke (Kyoto University, Japan)

―Sufism and Tariqa Facing the State: A Case Study of the Contemporary Sudan‖

3. Marc Toutant (CETOBAC, EHESS-CNRS, France)

―Materialist Ideology Facing a Great Sufi Poet: The Case of Ali Shir Nawâ‘î in Soviet Uzbekistan; From

Concealment to Patrimonalisation‖

4. ARAI Kazuhiro (Keio University, Japan)

―The Media, Saints and Sayyids in Contemporary Indonesia‖

5. TAKAO Kenichiro (Doshisha University, Japan)

―Shaykhs facing to Orthodoxy and Aggiornament‖

6. MISAWA Nobuo (Toyo University, Japan)

―Shintoism and Islam in Interwar Japan‖

Discussants:

TONAGA Yasushi (Kyoto University, Japan)

Sanaa Makhlouf (The American University in Cairo, Egypt)

概要:

本研究グループが为催し、NIHU プログラム・イスラーム地域研究の開始以前から数えれば、14 年に

わたって継続されている「スーフィズム・聖者信仰研究会」は、マインツでの第 1 回、アンマンでの第 2

回に続き、第 3 回大会でも 2 パネルからなる発表を組織した。

今回はとくに、近現代に時代を限定し、スーフィーや聖者が、近代国家やそのなかで形成された新た

な民衆である「大衆」とどのように向かい合おうとしているかを、異なる地域について歴史学、宗教学、

人類学の立場から検討する 6 本の発表を用意し、思想研究を専門とする 2 名の専門家によるコメントを

踏まえて議論を深めた。为題設定は、近現代イスラームと公共圏をめぐる議論を折り合わせていく可能

性の探求を意識しており、前半のパネルには为として国家や政府との関係を論じる 3 本の発表、後半の

パネルには大衆との関係を検討する 3 本の発表を配した。

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具体的には、高橋氏は 19 世紀エジプトにおけるタリーカ改革を为導したムハンマド・タウフィーク・

バクリーの思想を分析し、丸山氏は現代スーダンにおけるタリーカと国家との関係、とくに国家为導で

創設されたスーフィーの組織を取り上げて論じ、トゥタン氏はウズベキスタンの国民的詩人であるアリ

ー・シール・ナワーイーが、スーフィズムとの関わりについて、ソビエト政権下においてどのように扱

われたかを、‖patrimonialisation‖(父祖性付与とでも訳すべきか)という概念を用いて説明した。新井氏

は現在、インドネシアの宗教誌として広範に読者を獲得している『アルキッサ』が、ハドラマウト出身

のサイイドを素材に取り上げることに多角的な分析を加え、口承伝統の代替としての機能をそこにみる

結論を導いた。高尾氏は、現代シリアのアミーン・クフタールーの多彩な活動を取り上げ、元来はカト

リックにおける現代化を意味する aggiornamento の概念を援用して、スーフィズムの現代的なありようを

示した。三沢氏は、日本人改宗ムスリムである田中逸平の生涯を軸に、近代日本における宗教状況とそ

のなかでイスラームが受容される過程を、とくに神道との関わりに注目しながら論じた。氏の発表は直

接にスーフィーや聖者信仰に関するものではないが、本大会において日本におけるイスラームの受容状

況を外国人研究者に知らしめることの意義を考慮してこれを最後に置き、結果的にはイスラームにおけ

る信仰の複合性を、広い視野から問題とする効果的な締めくくりとすることができた。

今回大会は全般に聴衆の数が尐ない印象があったが、第 1 回、第 2 回大会の発表の場ですでに交流を

結んだ研究者を含め、比較的多数の聴衆を得ることができ、活発な議論を招くことができた。前回に引

き続き、同様の为題で研究を推進してきた CNRS からの参加者であるトゥタン氏を含め、比較的若手の

研究者による発表を盛り込んだことで、世代に関しても幅の広い共同研究を実現していることが示せた

のも収穫であった。

本パネル以外に大会では、スーフィズム関係では 4 パネル、聖者信仰関係では 1 パネルが組まれ、関

連するパネルも複数あって、私たちのパネルの参加者はそれらにも積極的に参加して議論に加わったが、

かなり異なる視点からの取り組みも多く、それらパネルの参加者を巻き込んでさらに協力を拡大してい

くという点では、今ひとつ確たるものをつかめなかったのはやや残念に思われた。

本パネルの発表内容については、これをさらに充実した論文として書き改め、Orient 46 号誌上に特集

企画‖Sufis and Saints Facing the Government and the Public‖として発表した。

(「第 3 回中東学会世界大会(WOCMES-3)参加報告」『日本中東学会ニューズレター』122 号、15-16 頁

より転載、一部改稿)

(赤堀雅幸)

⑥第 2 回講演会

*上智大学アジア文化研究所との共催

日時:2010 年 12 月 7 日(火) 15:15~16:45

場所:上智大学 2-630a 号室

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講師:Mohamed Kacimi El-Hasani (アルジェ大学・社会学部教授、CREAD 研究員)

タイトル:「アルジェリアの女性のスーフィー、Lalla Zaynab(d.1904)」

概要:

本講演会では、アルジェリアのスーフィー教団(ラフマニーヤ教団)の導師の家系に属するムハンマ

ド・カースィミー氏(アルジェ大学社会学部教授)を講師に迎え、19 世紀末から 20 世紀初頭に活躍した

女性のスーフィー指導者ラーラ・ザイナブに焦点を当てながら、近現代アルジェリア社会とスーフィズ

ムとの関わりについての講演がなされた。

ラーラ・ザイナブは、1897 年から 1904 年までラフマニーヤ教団のザーウィヤ(スーフィー修道場)の

一つエル・ハーミルの指導者を務めたスーフィーとして知られる人物である。女性がザーウィヤの指導

者として活躍する珍しい例であると言えるが、氏によれば、ラーラ・ザイナブ以前にも北アフリカでは

女性スーフィーが指導者として活躍する事例がいくつも見られたという。

カースィミー氏は、ラーラ・ザイナブの受けた教育や指導者としての活動を紹介しながら、彼女がい

かにしてスーフィズムの伝統を継承しながら、植民地支配下のアルジェリア社会でスーフィー教団の活

動を展開していったのかを解説した。彼女の指導者としての活動の中でも特に重要なものが、先代から

引き継いだモスク建設事業であり、彼女は寄進に頼らず自身の負産のみでモスクの建設を進めたという。

そして、ドームの形状や内部の装飾など、モスクの随所にラーラ・ザイナブは彼女独自の様々な意匠を

凝らしていた。カースィミー氏はこうした意匠の象徴する意味について解説を行った上で、ラーラ・ザ

イナブが、先代から継承したスーフィズムの理念と女性としての美徳を兼ね備えた「生きる」模範を体

現する存在であったと結論付けた。

(高橋圭)

⑦京都国際会議 New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity, Contestations and the Future

Session8B: Emerging Approaches to the Phenomena around Sufism and Saint Veneration

*京都大学拠点ユニット 4 との連携

日時:2010 年 12 月 19 日(日) 14:30~16:30

場所:国立京都国際会館

Convener: AKAHORI Masayuki (Sophia University, Japan)

Chairperson: TAKAHASHI Kei (National Institute for the Humanities/ Sophia University, Japan)

Speakers:

1. NINOMIYA Ayako (Japan Society for the Promotion of Science (JSPS)/Kyoto University, Japan)

Towards Theoretical Analysis of Tariqa: Structural Models of Tariqa in Medieval India

2. Alexandre PAPAS (CNRS, France)

Islam and Sufism in Eastern Tibet: A Minority Approach

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3. FUJII Chiaki (Japan Society for the Promotion of Science (JSPS)/Kyoto University, Japan)

Successive Knowledge of the Prophet in Medical Treatment: The Case of East Africa

4. WAKAMATSU Hiroki (Sophia University, Japan)

The Ocak of Kurdish Alevis in Turkey: the Relationship between the Ritual Practice and the Veneration for

the Ehl-i Beyt

Discussants

Thierry ZARCONE (CNRS, France)

AKAHORI Masayuki

概要:

本セッションでは、高橋圭氏(上智大学)の司会の下、4 人のスピーカーが発表を行なった。まず、赤

堀雅幸氏(上智大学)がスーフィズム・タリーカ(スーフィー教団)・聖者崇敬という枠組みから、セッ

ションの目的と意義について説明し、続いて各スピーカーが研究発表を行なった。

二宮文子氏は、中世インドで展開したタリーカであるチシュティー教団の形成過程を、歴代シャイフ

の論考を中心に考察した。文献の読解を通して、二宮氏は同教団が 12 世紀のインドへ進出した後、14~

15 世紀の組織的展開や体系化、さらに一貫性のある世代間の継承を経て、近代的なタリーカへ展開した

ことを明らかにした。

Alexandre Papas 氏は、チベットのアムド(amdo)地区に居住するサラール族(Salar)におけるスーフ

ィズムを、ナクシュバンディー教団の指導者たちを手がかりに考察した。Papas 氏は、この地域における

ムスリムを、マイノリティーという視点に立って理解するとき、イスラームやスーフィズムが集団的記

憶を留めるための大きな役割を果たしたと結論づけた。

藤井千晶氏は、タンザニアに見られる伝承の医学を考察した。実際の治療映像とともに、この医学で

は ―jinni‖(ジン)が重要な役割を果たしていることが説明された。さらに藤井氏は、1980 年代以降、伝

承の医学を取り巻く言説の変化を通して、クルアーンやハディースとの親和性が強調されてきたことを

明らかにした。

若松大樹氏は、トルコのクルド系アレヴィーを、オジャク(ocak)の視点から考察した。オジャクとは、

聖なる系譜に連なる預言者一族であると同時に、師弟関係から成る儀礼集団であるという点で、二つの

側面をもっている。結論において、若松氏はアレヴィーの聖者崇敬が、これら両側面が密接に結びつく

ことで行なわれていることを指摘した。

各スピーカーの発表後、Thierry Zarcone 氏と赤堀氏が発表へのコメントと質問を行なった後、フロアを

交えて全体討議が行なわれた。紙面の制限のため、各スピーカーへの個別的質問には触れないが、全体

討議のなかでも特筆すべきは両氏のコメントであった。彼らのコメントは、時代と地域の異なった各発

表を大きな枠組みに位置づけ、複合概念としてのスーフィズム・タリーカ・聖者崇敬へと議論を収斂さ

せていた。こうしたセッションは、ともすれば地域性を強調したものへ陥りがちである。しかしながら、

セッション8B

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各スピーカーも両氏のコメントの意図と研究動向を十分に理解しており、全体として非常にまとまりの

ある討議となった。このことは地域研究に根ざしつつも、スーフィズム・タリーカ・聖者崇敬という共

通の枠組みから議論を行なうための土台が、着実に形成されつつあることを示唆するものであると言え

よう。

(澤井真)

⑧第 3 回研究会

*京都大学拠点ユニット 4 との連携、「現代中東イスラーム世界・フィールド研究会」との共催

日時:2011 年 2 月 12 日(土) 13:30~17:00

場所:京都大学 AA401 号室

発表:

石田友梨(京都大学)

「フジュウィーリー『隠されたるものの開示(Kashf al-Mahjub)』における実体(‗ayn)―人間の構成

要素としての我欲(nafs)と精気(ruh)」

コメンテーター:二宮文子(日本学術振興会/京都大学)

高尾賢一郎(同志社大学)

「西洋のスーフィズム認識に見る諸問題―宗教と近代を巡る言説の変遷を通して」

コメンテーター:仁子寿晴(人間文化研究機構/京都大学)

概要:

○石田友梨「フジュウィーリー『隠されたるものの開示(Kashf al-Mahjub)』における実体(‗ayn)―人

間の構成要素としての我欲(nafs)と精気(ruh)」

本発表では、石田氏が今年提出した「初期スーフィズムにおける霊魂論―クシャイリー『クシャイリ

ーの論攷』およびフジュウィーリー『隠されたるものの開示』における我欲と精気―」をもとに、特に

フジュウィーリーの霊魂論を中心に議論がなされた。

発表者の関心の背景には、キリスト教の「Spirit」とイスラームの「霊魂」を一元的に捉え、西洋哲学

の分析概念から霊魂論を捉えてきたオリエンタリストへの批判がある。これに対し、ムスリム自身の描

く霊魂論を、原典から再考するのが本発表の目的であった。

具体的な霊魂論の分析にあたり、発表者はフジュウィーリーのペルシア語による著作『隠されたるも

のの開示』を精読した。フジュウィーリーは著作の中で、まず精気が実体であるか偶有であるか、永遠

であるか否かを問い、また精気の段階を追うことにより、被造物かつ目視可能であることの傍証を行っ

ている。発表者が取り上げたのは、この中で精気が実体であるか偶有であるかという議論であり、精気

を実体や生命などと照らし合わせた意見に対し、クルアーンやハディースを用いたフジュウィーリーの

反駁をまとめた。考察では、肉体と霊魂の対比を行い、我欲と精気が物質的な存在であることを示した

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上で、初期スーフィズムが正統派教義に基づいていることを結論づけた。

本発表に対し、コメンテーターの二宮氏からは、臨終の人間の重さを計測し、死ぬ瞬間に軽くなった

分から魂の重さを測ったという実験が紹介された上で、魂と物質、物質と質量に関する質問がなされた。

これに対して、フジュウィーリーの言うところの物質と、現代の私たちが考える物質は次元を異にする

概念であり、物質は質量で測定できないという前提が確認されて上で、原子論と偶有の関係が議論され

た。

また、原典に出てきた「必然の知識」というペルシア語の語義的な解釈を皮切りに、神学と哲学、も

しくはペルシア語とアラビア語の概念の差異と共存などに話題が広がった。フジュウィーリーはペルシ

ア語で書を残しているが、自身はアラビア語の書物も読み、アラビア語でのイスラームの語りに使用さ

れる概念や語彙を多分に引用している。このように、この時代のイスラーム思想を理解するためには、

神学やギリシア哲学の知識だけでなく、多くの配慮が必要となる。当時のペルシア語の社会で、どのよ

うに概念が理解されていたのかも考えなければいけない問題としてあげられた。さらに、これを日本語

でどのように表現するか、日本で一般化されている哲学の語義との差異化を図りながらどのように理解

するのかという課題も指摘された。

フロアからは、発表で用いられた「偶有」や「属性」といった概念に対する定義付けの脆弱性が指摘

されたものの、スーフィズムの神学と哲学の違いから空間性の把握まで幅広い議論が展開され、多くの

コメントが寄せられた。イスラーム科学の臨床現場で行われている伝統的霊魂論の再解釈など、現代的

な需要も大きい分野でもあり、研究の発展が期待される。

(須永恵美子)

○高尾賢一郎「「西洋のスーフィズム認識に見る諸問題―宗教と近代を巡る言説の変遷を通して」

本発表の目的は、近年の西洋の研究におけるスーフィズム認識に見られる問題点を、西洋における近

代と宗教との関係を巡る言説の変遷を参照しつつ明らかにすることであった。

近現代におけるスーフィズム認識の再検討において、まず、宗教研究の分野において研究されてきた

スーフィズムは、世俗为義政策、イスラーム復興の議論が为要 なイスラーム研究において周辺的立場に

あり、この点において両学問領域における分断が生じている。次に「世俗的」「スピリチュアリティ」

「ポップカル チャー」と呼び習わされる昨今のスーフィズムの潮流は、著作、メディア、カルチャース

クール等の世界規模での「スーフィズム市場」を作り出している。発表 者はこのような近年の西洋にお

けるスーフィズムの潮流に対し、以下の 2 点において問題を提起した。

第 1 に、近年では西洋にとっての脅威の象徴として「イスラーム」が引き合いに出されやすい言説の

中で、スーフィズムは一種の偏向した期待を担って着目されて いる。第 2 に西洋の分析概念におけるレ

トリック、ラベリングの持つ問題がある。たとえば、「原理为義」は、スーフィズムに対してはほとん

ど用いられず、時 には聖典为義的であり武装民兵組織としての役割を担う点が無視されている。

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本発表に関してコメンテーターの仁子氏からは、本発表が提起する西洋の言説批判が示す展望、西洋

の言説についての一般化の問題について指摘があった。また参加者からは、イスラーム研究は、イスラ

ームは教義の宗教にとどまらないとする为張によって、結果として宗教学研究から自らを遠ざけてしま

った、宗教学におけるスーフィズム等現代宗教の動向に関する成果を、イスラーム研究が取り入れられ

ていないといった意見が出された。

本発表はイスラーム研究に内在的な問題点、活発な議論を喚起する刺激的な発表であった。

(栃堀木綿子)

⑨第 4 回研究会

*京都大学拠点ユニット 4 との連携、上智大学アジア文化研究所との共催

日時:2011 年 2 月 26 日(土) 15:00~17:00

場所:上智大学 2-630a 号室

発表:

Marc Toutant (CETOBAC, EHESS-CNRS, France)

‖Approaches to the Literary Imitation Process in Timurid Central Asia: ‗Ali Shir Nawa‗i‘s Khamsa and the

Persian Tradition‖

概要:

バルセロナにおける第 3 回中東研究世界大会で、本グループが为催した部会で発表を行ったトゥタン

氏は、中東アジアのスーフィー文学、とくにアリー・シール・ナヴァーイーの文学活動を専門とする研

究者であり、さらに研究協力を推進すべく上智大学アジア文化研究所が同氏を招聘したところから、研

究所および KIAS4 との共催により、氏の中心的なテーマについて研究発表をお願いした。

アリー・シール・ナヴァーイーはペルシア語による文学表現を为流とするディムール朝期にあって、

チャガタイ文学の確立者として知られるが、トゥタン氏はペルシア語で書かれた先行する五書(ハムサ)

ナヴァーイーのそれとの関係の考察から、ナヴァーイーには脱ペルシア語を狙った民族为義的な意図が

あったわけではなく、むしろ言語を変更しつつも知的伝統の継続に重きが置かれていたという新たな解

釈を提起した。

残念ながら、本グループの研究への参加者には文学を専門分野とする研究者の数が尐ないが、幸いに

して複数の専門家の参加を得ることができ、グループ参加者にとっては新たな視点からノンスーフィズ

ムへのアプローチについて知るよい機会となると同時に、トゥタン氏の解釈の斬新さと論証面での問題

点を中心に当該分野の研究をめぐる議論としても深みのある研究会とすることができた。

(赤堀雅幸)

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⑩第 2 回若手研究者国際ワークショップ(京都大学拠点ユニット 4 との連携)

*‖Aspects of Life and Beliefs of People in the Islamic World‖

日時:2011 年 2 月 28 日(月) 9:30~19:00

場所:上智大学 2-508 号室

プログラム:

09:30-09:50 Opening Remarks (AKAHORI Masayuki)

09:50-11:40 Part 1 Sufism: Ideas and Practices (Chair: AKAHORI Masayuki)

Idiris Danismaz (Kyoto University/Turkey Japan Cultural Dialog Society)

―Sufism in Contemporary Turkey: Interpretation of Ibn Arabi‘s Thought in ‗Kalbin Zumrut Tepeleri

(Emerald Hills of the Heart)‘‖

ISHIDA Yuri (Kyoto University)

―The Concept of Spirit (Rūh) in Hujwīrī‘s Unveilling the Veiled (Kashf al-Mahjūb)‖

Eloisa Concetti (Durham University)

―Mujaddidi Branches among Hui People of Gansu, Qinghai and Ningxia: A Preliminary Account‖

12:40-13:40 Part 2 Saint Veneration: Past and Present (Chair: FUJII Chiaki)

MOTEKI Akashi (Sophia University)

―The Genealogy (nasab) of Imam Shafi‗i through the Analysis of Hagiographic Sources‖

UCHIYAMA Akiko (Kyoto University)

―The Actual Conditions of Women in Contemporary Iran: Through their Visit to ―Emamzadeh‖―

13:50-15:40 Part 3 Encounters with Different Faiths (Chair: TAKAHASHI Kei)

TOBINAI Yuko (Sophia University)

―The Role of Christianity among Kuku in Khartoum: Function and Management of Communities‖

Reem Ahmad (Sophia University)

―The Problems That Muslims Face in Japan‖

TOCHIBORI Yuko (Kyoto University)

―The Discourses about al-Amīr ‗Abd al-Qādir al-Jazā‘irī among French and English People‖

15:50-17:20 Part 4 Politics, Society, and People (Chair: ARAI Kazuhiro)

SHIMIZU Masako (Sophia University)

―The Socio-Political Transformations of Contemporary Palestine and the Electoral Participation of

Hamas: The Process of Change of Organizational Structure and Political Opportunities‖

OKADO Masaki (Sophia University)

―Mindful of their Origins while Residing in the City: The Experience of Migrants and their Descendants

from Upper Egypt in Alexandria‖

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AKIYAMA Fumika (Sophia University)

―Developing Tourism Industries for Formation of Tunisian National Image‖

17:40-18:00 Comment

Rina Shahriyani Shahrullah (Universitas Internasional Batam/UIB, Indonesia)

Marc Toutatnt (CETOBAC, CNRS-EHESS, France)

18:00-19:00 General Discussion

概要:

本ワークショップは、Rina Shahriyani Shahrullah 氏(Universitas International Batam/UIB, Indonesia)

と Marc Toutant 氏(CETOBAC, CNRS-EHESS, France)をコメンテーターに迎えて開催された。ワー

クショップは 4 セッションで構成されており、様々な地域とディシプリンに基づいて研究を進める若

手研究者 11 名が発表を行った。

第 1 部は「スーフィズムの理念と実践」と題され、3 名の研究者が報告を行った。イディリス・ダ

ニスマズ氏は、ギュレンの解釈によるイブン・アラビー思想を分析し、現代トルコのスーフィズムに

ついて論じた。そして、1925 年以降、スーフィー教団の活動は禁止されたが、その伝統は脈々と受

け継がれてきたことを明らかにした。石田友梨氏は、フジューイリーの著作 Unveiling the Veiled (Kashf

al-Mahjūb)における rūh の概念を考察し、その概念が実体を持つものであることと、永遠ではないこ

とを指摘した。エロイザ・コンチェッティ氏は、中国北西部のムジャッディディー教団ついての報告

をおこない、19 世紀から 20 世紀初頭にかけて、教団が地元における改革と発展に寄与してきたこと

を指摘した。

第 2 部の「過去・現代における聖者信仰」と題されたセッションでは、2 名が発表を行った。茂木

明石氏は、イマーム・シャーフィイーの血統について 2 つの聖者伝を分析し、これらの著作の中でシ

ャーフィイーと預言者の血統的な近しさが強調されている点を指摘した。内山明子氏は、イラン女性

のエマームザーデ参詣に焦点を当て、インタビューをとおして明らかになった、女性達の抱える問題、

エマームザーデの様々な特徴と機能、役人と一般女性達では異なるエマームザーデの捉え方、年齢や

社会的地位を問わず、多くの女性達が参詣する点、エマームザーデに祀られているイマームの子孫の

みでなく、神に祈る女性達の事例を報告した。

第 3 部の「異なる信条の遭遇」と題されたセッションでは、3 名が発表を行った。飛内悠子氏は、

ハルツームにおけるクク人の宗教実践を取り上げ、多民族都市であるハルツームにおいて、クク人が、

自分達のアイデンティティを保持しながらも、バランスを取りながら生活している点を明らかにした。

リーム・アフマド氏は、日本で生活するムスリム達が直面している問題について、実体験を交えなが

ら報告した。氏は、様々な問題を挙げながらも、ムスリムと日本人にみられる共通の慣習(清潔好き、

勤勉性、年長者に対する尊敬)に触れ、アメリカやヨーロッパ諸国に比べると、日本はムスリムにと

って住みやすい環境である点にも言及した。栃堀木綿子氏は、フランスとイギリスにおけるアミー

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ル・アブドゥルカーディル・ジャザーイリー像の言説を比較分析し、フランスにおけるアブドゥルカ

ーディル像が、アルジェリアとフランスの同化の象徴として捉えられているのに対し、イギリスでは、

フランス軍との戦いにおける指揮官として捉えられていることを指摘した。

第 4 部の「政治・社会・人」と題されたセッションでは、3 名が発表を行った。清水雅子氏は、パ

レスチナにおける社会・政治的変遷とハマースの選挙への参加について報告し、ハマースの選挙への

参加がムスリム同胞団の時代から始まっていた点を指摘した。岡戸真幸氏は、アレクサンドリアにお

ける上エジプト出身の労働者達に着目し、彼らが同郷者の葬式に参加することで、互いの絆を再確認

していることを報告した。そして岡戸氏は、様々なバックグラウンドを持った同郷者との関係を構築

しておくことは、彼らの将来的な可能性を広げることにも繋がる、と結論づけた。秋山文香氏は、チ

ュニジアにおける観光産業の歴史的変遷について報告し、JICA のレポートから現在直面している課

題を指摘した。中東・アフリカ諸国の中では経済的に発展しているように思われるチュニジアである

が、2011 年 1 月 14 日に起こった革命もあり、今回浮き彫りになった問題点の解決は、さらに困難を

極める状況にあることが指摘された。

本ワークショップでは、イスラーム世界の多様な地域やテーマ、ディシプリンに基づいた研究に触

れることができ、国内外の若手研究者の層の厚さを感じる有意義なものとなった。定期的に開催され

ている本ワークショップの新しい試みとして、従来の 30 分の発表(質疑忚筓を含む)に加え、50 分

の発表が 2 本組み込まれた。従来の発表時間は、限られた時間内で、英語でいかに聴衆に分かりやす

く要点を伝えるか、というスキルを磨く点で有効であったが、議論をする上ではやや物足りない印象

が否めなかった。そのような中で、今回実施された 50 分の発表では、発表内容も掘り下げられ、質

疑忚筓でも十分に議論をすることができた。今回は時間的な制約もあり、1 日で 11 名が発表を行う

プログラムが組まれたが、今後、より各発表の内容と議論を充実させるために、2 日間の日程を検討

することも課題としてあげられた。

(藤井千晶)

⑪「スーフィー・聖者研究会」ワークショップ(京都大学拠点ユニット 4 との連携)

日程:2011 年 3 月 1 日(火)~2 日(水)

場所:京都大学 AA447 号室

プログラム:

2011 年 3 月 1 日(火)

13:30-15:30 研究発表 1

苅谷康太(日本学術振興会/東京大学東洋文化研究所)

「アラビア語著作から見る西アフリカ・イスラームの宗教的・知的連関網―アフマド・バンバに至

る水脈を中心に」

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コメンテーター:赤堀雅幸(上智大学)

16:00-18:00 研究発表 2

Marc Toutant(CETOBAC, CNRS-Collège de France-EHESS, Paris)

―Materialist Ideology Facing a Great Sufi Poet: The Case of ‗Ali Shir Nawa‘i in Soviet Uzbekistan‖

コメンテーター:矢島洋一(京都外国語大学)

2011 年 3 月 2 日(水)

09:30-10:20 文献発表 1

茂木明石(上智大学)‖Chapter 3: Saints and Sainthood.‖

(文献発表は Carl W. Ernst, Shambhala Guide to Sufism, Boston & London: Shambhala, 1997 を使用)

10:30-12:30 研究発表 3

澤井真(東北大学)

「タバリーのタフスィールにおける生と死―クルアーン解釈の形成期における伝承(ハディース)

の役割」

コメンテーター:東長靖(京都大学)

13:30-14:20 文献発表 2

栃堀木綿子(京都大学)‖Chapter 8: Sufism in the Contemporary World.‖

14:30-15:20 文献発表 3

二宮文子(日本学術振興会(京都大学))‖Chapter 5: The Sufi Orders: Mastery, Discipleship, and Initiation.‖

15:30-16:30 総合討論

概要:

本ワークショップは、スーフィー・聖者研究会で毎年開催されている研究合宿に当たり、本年度は

3 月 1 日から 2 日にかけて京都大学を会場に行なわれた。なお、本年度は研究発表と課題書籍の読書

会の 2 本立てであった。会議の冒頭に当たり、赤堀雅幸教授から全体の趣旨説明が行なわれ、その後、

参加者の自己紹介が行なわれた。1 日目は 2 つの研究発表を中心に行なわれた。

苅谷康太氏(日本学術振興会)の「アラビア語著作から見る西アフリカ・イスラームの宗教的・知

的連関網―アフマド・バンバに至る水脈を中心に」は、バンバを中心に西アフリカに広がっていた連

関網を描き出す発表であった。アラビア語写本や彼の著作を読み解きながら、同地域におけるタリー

カが集団の枠を越えて展開していたことが明らかにされた。コメンテーターの赤堀雅幸氏(上智大学

教授)からは、知的側面のみならず根気のいる作業が評価された一方、論の構成に関する意見が出さ

れた。さらに、討論では「労働の教義」とバンバの関係性などについて、議論が行なわれた。

Marc Toutant 氏(CETOBAC, CNRS-Collège de France-EHESS, Paris)の‖Materialist Ideology Facing a

Great Sufi Poet: The Case of ‗Ali Shir Nawa‘i in Soviet Uzbekistan‖は、ナクシュバンディー教団を代表す

るナヴァーイーの詩や、彼の詩に影響を受けた諸研究者の議論を分析しながら、ナヴァーイーの業績

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とスーフィズムの関係性を明らかにした。さらに、タリーカやスーフィズムが、近代化の波の中で科

学的無神論から攻撃に直面した状況について考察した。コメンテーターの矢島洋一氏(京都外国語大

学非常勤講師)からは、スーフィズムが危険視されていたことが補足された後、よく知られているジ

ャーミーの詩が、ソビエト占領下のタジキスタンで果たした役割に関する質問などが寄せられた。ま

た、討論では同じくウイグルのケースへと議論が展開するなど、様々な質問が寄せられた。

2 日目には、澤井真(東北大学)が「タバリーのタフスィールにおける生と死―初期クルアーン解

釈における伝承(ハディース)の役割」と題して、クルアーン解釈の形成期を代表するタバリーのク

ルアーンの注釈を考察した。そこでは、2 つの生と死をどこに置くのかという注釈(Q2:28-29)を通

して、初期スーフィズムの代表的テーマである「原初の契約」(Q7:172)も論じられた。コメンテー

ターの東長靖氏(京都大学准教授)は、初期イスラームのハディース収集やタフスィールの議論を整

理した後、タフスィールとタアウィールの語における訳語やその問題点を指摘した。質疑忚筓では、

タバリーの注釈のスタイルや用語に関する質問などが寄せられた。

こうした研究発表と共に、スーフィー・タリーカ研究を代表する概説書である、Carl Ernst の The

Shambhara Guide to Sufism(1997)の読書会が行なわれた。今回は、茂木明石氏(上智大学)が‖Saints

and Sainthood‖(3 章)を、栃掘木綿子氏(京都大学)が‖Sufism in the Contemporary World‖(8 章)を、

二宮文子氏(日本学術振興会)が‖The Sufi Orders: Mastery, Discipleship, and Initiation‖(5 章)をそれ

ぞれ担当した。報告者は、聖者崇敬やタリーカに関する知識がほとんどなかったため、これらの領域

を専門とする担当者や参加者の知見から学ぶところが多かった。

最後の総合討論では、为に来年度以降の取り組みについて話し合われた。若手研究者のための研究

発表の場と共に、研究成果の国際的発信というこれまでの方向性に加えて、今回は読むことのできな

かった残りの章を読書会として継続して通していくことなどが決められた。それは、スーフィズムや

タリーカの研究者同士が共通の土台から議論できるようにという意図からである。SIAS と KIAS を

中心に進められてきた研究プロジェクトが、次のステップへ展開するための大きな展望を企図しなが

らも、読書会などの身近な足元の議論から進めることが確認された。今回のワークショップは、討論

のための十分な時間が取られていたために、お互いの意見交換や情報交換を行なうことができた。こ

のことは、参加者のほとんどが共有した感想であったように思われる。

(澤井真)

(2)海外派遣・調査

①ライデンにおける文献調査

期間:2011 年 3 月 23 日(水)~31 日(木)

国名:オランダ、フランス

出張者:高橋圭

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概要:

本出張では(1)ライデン大学図書館に所蔵されている近代エジプト・スーフィー教団関連の写

本・文書の調査、および(2)来年度以降に上智大学拠点と京都大学拠点が連携して、CNRS と共催

する予定の合同ワークショップの打ち合わせを行った。

(1)ライデン大学は、近代エジプト・スーフィー教団の研究者として著名なフレデリック・デ・

ヨング博士が教べんをとっていた大学であり、当該大学図書館にはデ・ヨング博士が収集した近代

エジプト・スーフィー教団関連の写本・文書のコレクションが所蔵されている。今回の調査の目的

は、このコレクションの内容を網羅的に確認したうえで、特に出張者の研究テーマに関わるいくつ

かの文書・写本を読解・収集することにあった。なお、本コレクションの概要をつかむうえでの参

考となるのが、ライデン大学から出版されている所蔵アラビア語史料のカタログであり、この中に

上記のコレクションの情報も掲載されている。出張者はこのカタログを利用しながら調査を行った。

調査の結果は以下のとおりである。まず、コレクションの内容は大きく分けて、1. バクリー家所蔵

文書群、2. トルコ系カーディリーヤ教団関連文書群、3. ワファーイーヤ教団関連文書群、4. ベク

タシー教団関連文書群、5. エジプトのスーフィー教団一覧を掲載した写本 2 点、6. その他のスー

フィー教団関連文書群に分類することができる。上記の様々な文書の中でも特に目を引くのがベク

タシー教団関連文書群であり、この中には 1965 年までカイロにテッケを構えて活動を行っていた

ベクタシー教団に関する多数の文書が収録されている。この文書群は、一般にその実態の把握が困

難なスーフィー教団の社会経済的な側面を伝える文書を数多く含む貴重な史料であることが分か

った。ただし他方で、ベクタシー教団はエジプトではほとんど影響力を持たなかったごく小規模の

教団であり、またその文書の多くがトルコ語で書かれていることから、エジプトのスーフィー教団

の事例というよりは、トルコや他の地域のベクタシー教団との関連で研究を進める際の材料として

利用する方が適切であるとも思われた。なお、出張者自身は上記の分類のうち、特に 5 と 6 を参照

し、その内容の読解を行った。

(2)来年度以降、上智大学拠点では、京都大学拠点と連携をし、CNRS との共催で合同ワークシ

ョップを開催する予定となっており、出張者はオランダからの帰国に際して、パリに一泊滞在をし

てそのための打ち合わせを行った。なおそのついでアラブ世界研究センターを訪問し、若干の資料

の閲覧を行った。

(高橋圭)

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(3)資料収集

タイトル 『誤りから救うもの―中世イスラム知識人の自伝』

著者・編者 アブー・ハミード・ガザーリー(中村廣治朗訳)

出版地 東京

出版者 筑摩書房

出版年 2003 年

形 態 卖行本

内 容 中世最大のスーフィー思想家ガザーリーの自伝の日本語訳。スーフィズム研究の基本史

料として、イスラーム研究センターに保管し、研究者たちの利用に供するために購入。

収集期間

収集方法

収集期間:2010 年 4 月 26 日

収集方法:小本館より購入

(高橋圭)

(4)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔論文〕計( 28 )件

著 者 名 論 文 標 題

AKAHORI Masayuki

(研究グループ 3 代表)

Alexander the Great and Alexandria Today:

Infusing Greco-Roman Tradition into Egyptian Nationalism

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

私市正年(編)『ナショナリズム復興のなかの文化遺産―アジ

ア・アフリカのアイデンティティ再構築の比較』上智大学アジ

ア文化研究所

2011 50-63

著 者 名 論 文 標 題

赤堀 雅幸

(研究グループ 3 代表)

中東人類学の過去、現在、未来

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

上智大学外国語学部アジア文化研究室(編)『新 地域研究のす

すめ―アジア文化編 2011』上智大学出版

2011 88-99

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著 者 名 論 文 標 題

赤堀 雅幸

(研究グループ 3 代表)

イスラームとグローバル化、イスラームのグローバル化

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

私市正年・寺田勇文・赤堀雅幸(編)『グローバル化のなかの宗

教―衰退・再生・変貌』上智大学出版

2010 65-90

著 者 名 論 文 標 題

赤堀 雅幸

(研究グループ 3 代表)

第 3 回中東学会世界大会(WOCMES-3)参加報告

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

日本中東学会ニューズレター 122 2010 15-16

著 者 名 論 文 標 題

加藤 瑞絵

(研究グループ 3 研究協力者)

「神の威厳(‗azamat Allāh)」のイメージ―クルアーンと神

名注釈より

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『国士館哲学』 15 2011 70-87

著 者 名 論 文 標 題

KAMADA Shigeru

(研究グループ 3 研究協力者)

System of Knowledge in Islam and its Transformation

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

ISHRAQ: Yearbook of Islamic Philosophy (Russian Academy of

Sciences Institute of Philosophy & Iranian Institute of Philosophy)

1 2010 141-147

著 者 名 論 文 標 題

KAMADA Shigeru

(研究グループ 3 研究協力者)

(Book Review) Mohamed Haj Yousef, Ibn „Arabī:

Time and Cosmology, London & New York: Routledge, 2008

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Journal of Islamic Studies 21 2010 418-420

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著 者 名 論 文 標 題

鎌田 繁

(研究グループ 3 研究協力者)

メシア・メシアニズム

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

星野英紀・池上良正・氣多雅子・島薗進・鶴岡賀雄(編)『宗教

学事典』

2010 316-317

著 者 名 論 文 標 題

鎌田 繁

(研究グループ 3 研究協力者)

解題

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

井筒俊彦『アラビア哲学―回教哲学』慶應義塾大学出版会 2011 247-264

著 者 名 論 文 標 題

KAMADA Shigeru

(研究グループ 3 研究協力者)

Mullā Ṣadrā‘s imāma/walāya: An Aspect of His Indebtedness to

Ibn Arabī

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Journal of Islamic Philosophy 6 2010 65-76

著 者 名 論 文 標 題

鎌田 繁

(研究グループ 3 研究協力者)

シーア派神秘思想とスーフィズム:その連続性とクルアー

ンの役割

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

小林春夫、阿久津正幸、仁子寿晴、野元晋(編)『イスラームに

おける知の構造と変容―思想史・科学史・社会史の視点から―』

早稲田大学イスラーム地域研究機構発行

2011 263-271

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著 者 名 論 文 標 題

KAWAHARA Yayoi

(研究グループ 3 研究協力者)

<Svyatye semeistva> Margerana v Kokandskom khanstve v XIX

v.

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Pax Islamica 1:4 2010 121-139

著 者 名 論 文 標 題

後藤 明

(研究グループ 3 研究分担者)

ムハンマドの生涯とイスラーム

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

佐藤次高(編)『イスラームの歴史 1』山川出版社 2010 47-85

著 者 名 論 文 標 題

澤井 真

(研究グループ 3 研究協力者)

イスラームの死生観―タバリーのクルアーン解釈における

二つの生と二つの死

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東北宗教学』 5 2010

著 者 名 論 文 標 題

SAWAI Makoto

(研究グループ 3 研究協力者)

Izutsu‘s Hermeneutical Perspectives of the Qur‘anic

Interpretation

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Anis Malik Thoha (ed.), Japanese Contribution of Islamic Studies:

The Legacy of Toshihiko Izutsu Interpreted

2010 99-110

著 者 名 論 文 標 題

澤井 真

(研究グループ 3 研究協力者)

ジュナイドの『原初の契約』におけるファナーとバカー

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『オリエント』 54:2 2011 115-132

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著 者 名 論 文 標 題

TAKAO Kenichiro

(研究グループ 3 研究協力者)

Epistemological Critique on Today‘s Sufi Discourses

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

東京大学・バルイラン大学共催国際シンポジウム報告書:平成

18〜21 年度科学研究費補助金基盤研究(B)課題番号 18310158

(研究課題:近代ユダヤ文化論の学際的総合研究)

2010 69-74

著 者 名 論 文 標 題

高尾 賢一郎

(研究グループ 3 研究協力者)

西洋のスーフィズム認識に見る諸問題

―宗教と近代を巡る言説の変遷を通して

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『一神教世界』 2 2011 30-42

著 者 名 論 文 標 題

TAKAO Kenichiro

(研究グループ 3 研究協力者)

Shaykhs Facing ―Orthodoxy‖ and ―Moderation‖: The Case of

Ahmad Kuftārū in Modern Syria (Special Issue: Sufis and

Saints Facing the Government and the Public)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Orient 46 2011 97-117

著 者 名 論 文 標 題

高橋 圭

(研究グループ 3 研究分担者)

近代エジプトにおけるタリーカ批判の転換点

―1881 年ダウサ禁止をめぐる議論から

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『オリエント』 53:1 2010 58-81

著 者 名 論 文 標 題

TAKAHASHI Kei

(研究グループ 3 研究分担者)

Preface (Special Issue: Sufis and Saints Facing the Government

and the Public)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Orient 46 2011 1-4

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225

著 者 名 論 文 標 題

TAKAHASHI Kei

(研究グループ 3 研究分担者)

Revaluating Tariqas for the Nation of Egypt: Muhanmmad

Tawfiq al-Bakri and the Tariqa Reform 1895-1905 (Special

Issue: Sufis and Saints Facing the Government and the

Public).

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Orient 46 2011 73-95

著 者 名 論 文 標 題

堀川 徹

(研究グループ 3 研究協力者)

イスラーム世界の拡大と深化

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

佐藤次高(編)『イスラームの歴史 1』山川出版社 2010 196-237

著 者 名 論 文 標 題

三沢 伸生

(研究グループ 3 研究分担者)

戦間期のイスタンブルにおける日本の経済活動(5)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東洋大学アジア文化研究所研究年報』 45 2011 181-192

著 者 名 論 文 標 題

駒井義昭・石井隆憲・三沢伸生

(研究グループ 3 研究分担者)

在日トルコ(タタール)系イスラーム教徒に関連する視覚

史料のデータベース化事業

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東洋大学アジア文化研究所研究年報』 45 2011 171-180

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226

著 者 名 論 文 標 題

MISAWA Nobuo

(研究グループ 3 研究分担者)

Shintoism and Islam in Interwar Japan:

How did the Japanese come to believe in Islam ? (Special

Issue: Sufis and Saints Facing the Government and the

Public)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Orient 46 2011 119-139

著 者 名 論 文 標 題

MORIMOTO Kazuo

(研究グループ 3 研究分担者)

The Earliest ‗Alid Genealogy for the Safavids: New Evidence for

the Pre-dynastic Claim to Sayyid Status

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Iranian Studies 43:4 2010 447-469

著 者 名 論 文 標 題

Kazu‘u Murimutu

(研究グループ 3 研究分担者)

Darkhwast-i shakhsi: Ahammiyyat-i intishar-i athar-i Ibn-i

Funduq dar zaminih-i adabiyat-i `Arabi

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Guzarish-i mirath 39 2010-2011 74-76

〔図書〕計( 3 )件

著 者 名 出 版 社

私市正年・寺田勇文・赤堀雅幸(編)

(研究グループ 3 代表)

上智大学出版

書 名 発 行 年 ページ

『グローバル化のなかの宗教―衰退・再生・変貌』 2010 216

著 者 名 出 版 社

後藤 明・木村喜博・安田喜憲編

(研究グループ 3 研究分担者)

朝倉書店

書 名 発 行 年 ページ

『西アジア 朝倉世界地理講座―大地と人間の物語 6』 2010 465

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227

著 者 名 出 版 社

MISAWA Nobuo

(研究グループ 3 研究分担者)

Istanbul Ticaret Odasi (Istanbul, Turkey)

書 名 発 行 年 ページ

Turk-Japon Ticari Iliskileri 2011 180

〔学会発表〕計( 20 )件

発 表 者 名 発 表 標 題

AKAHORI Masayuki

(研究グループ 3 代表)

Alexander the Great and Alexandria Today:

Infusing Greco-Roman Tradition into Egyptian Nationalism

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

上智大学アジア文化研究所プロジェクト「ナショナ

リズム復興のなかの文化遺産」(日本私立大学振

興・共済事業団平成 22 年度学術研究振興資金学術

研究)シンポジウム ―Cultural Heritage in the

Resurgence of Nationalism‖

2010 年 11 月 21 日 上智大学

発 表 者 名 発 表 標 題

鎌田 繁

(研究グループ 3 研究協力者)

イスラームにおける理性(‗aql)と伝承(naql)―スンニー

派とシーア派

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

同志社大学一神教学際研究センター私立大学戦略

的研究基盤形成支援事業 2010 年度第 1 プロジェク

ト第 1 回研究会

2010 年 6 月 5 日 同志社大学

発 表 者 名 発 表 標 題

KAMADA Shigeru

(研究グループ 3 研究協力者)

Unitive Experience of Islamic Mystics and their Discourses:

Early Sūfīs and Mystical Philosophy in Islam

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 20th World Congress of the International

Association for the History of Religions

2010 年 8 月 19 日 University of Toronto

(Canada)

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228

発 表 者 名 発 表 標 題

河原 弥生

(研究グループ 3 研究協力者)

ワリー・ハーン・トラの「聖戦」に関する一考察―ロシア

帝国併合期コーカンド・ハーンにおける一スーフィーの

抵抗運動とその評価について

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

後藤 明

(研究グループ 3 研究分担者)

ムハンマドとユダヤ教、そしてキリスト教

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本オリエント学会公開講演会 2010 年 5 月 22 日 東京天理教館

発 表 者 名 発 表 標 題

澤井 真

(研究グループ 3 研究協力者)

イスラームにおける『原初の契約』

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

印度学宗教学会第 53 回学術大会 2010 年 5 月 30 日 大阪国際大学

発 表 者 名 発 表 標 題

SAWAI Makoto

(研究グループ 3 研究協力者)

The Concept ‗dīn‘ and Its Meaning in Religious Studies:

Toshihiko Izutsu‘s Interpretation

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 20th World Congress of the International

Association for the History of Religions

2010 年 8 月 19 日 University of Toronto

(Canada)

発 表 者 名 発 表 標 題

澤井 真

(研究グループ 3 研究協力者)

ジュナイドの神秘为義と『原初の契約』

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本宗教学会第 69 回学術大会 2010 年 9 月 5 日 東洋大学

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229

発 表 者 名 発 表 標 題

澤井 真

(研究グループ 3 研究協力者)

ジュナイドの『原初の契約』とその意味

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本オリエント学会第 52 回大会 2010 年 11 月 7 日 国士舘大学

発 表 者 名 発 表 標 題

高尾 賢一郎

(研究グループ 3 研究協力者)

「イスラーム研究」における「世俗化」考察の背景、意義、

可能性(テーマセッション『現代社会における宗教社会

学の可能性―「世俗化論」以後の課題と忚筓』内報告)

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

「宗教と社会」学会第 18 回学術大会 2010 年 6 月 6 日 立命館大学

発 表 者 名 発 表 標 題

TAKAO Kenichiro

(研究グループ 3 研究協力者)

Sufi Implications in the West Today: Speculating Otherness and

Sameness

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 20th World Congress of the International

Association for the History of Religions

2010 年 8 月 19 日 University of Toronto

(Canada)

発 表 者 名 発 表 標 題

TAKAO Kenichiro

(研究グループ 3 研究協力者)

Epistemological Critique on Modern Sufi Discourses

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Monotheism in Asia: held by Bar Ilan University and

The University of Tokyo

2010 年 8 月 31 日 東京大学

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230

発 表 者 名 発 表 標 題

高橋 圭

(研究グループ 3 研究分担者)

20 世紀エジプトの「新しい」スーフィー・タリーカ

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

高橋 圭

(研究グループ 3 研究分担者)

ウンマの恥―19世紀末エジプトにおけるタリーカへの批判

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

2010 年度三田史学会 2010 年 6 月 26 日 慶應義塾大学

発 表 者 名 発 表 標 題

高橋 圭

(研究グループ 3 研究分担者)

1890 年代エジプトにおけるタリーカ批判とナショナリズム

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本オリエント学会第 52 回大会 2010 年 11 月 7 日 国士舘大学

発 表 者 名 発 表 標 題

飛内 悠子

(研究グループ 3 研究協力者)

ハルツーム在住クク人のネットワーク形成と機能―

聖公会を介して

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本中東学会第 26 回年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

堀川 徹

(研究グループ 3 研究協力者)

モンゴル時代以降の西部内陸アジア史―

実証研究の深化と展開の可能性

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

内陸アジア史学会 50 周年記念公開シンポジウム 2010 年 11 月 13 日 早稲田大学

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発 表 者 名 発 表 標 題

堀川 徹

(研究グループ 3 研究協力者)

中央アジア文化における連続性について

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

関西大学 3 研究所合同シンポジウム

(分科会:東西学術研究所)

2010 年 12 月 3 日 関西大学

発 表 者 名 発 表 標 題

MISAWA Nobuo

(研究グループ 3 研究分担者)

Birinci Dunya Savasi‘ndan Sonraki Turkiye-Japonya İliskileri

(第一次世界大戦後の日本・トルコ関係)

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

XVI. Turk Tarih Kongresi 2010 年 9 月 20 日 Ankara

(トルコ共和国)

発 表 者 名 発 表 標 題

WAKAMATSU Hiroki

(研究グループ 3 研究協力者)

Alevılık‘te Kadınların Yeri: Baba Mansur Ocağı Örneği

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

II.Uluslararası Tarihten Bugüne Alevilik Semposyumu 2010 年 10 月 24 日 Ankara: Dedeman Hotel

Konferans Salonu

(トルコ共和国)

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京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラーム地域研究センター

代表:小杉 泰(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授)

テーマ 『イスラーム世界における国際組織』

中東・单アジアを中心として、イスラーム世界に広がるさまざまな形態の国際組織について、その史

的形成、思想潮流、組織間の関係やネットワーク、指導者などについて、基礎研究と実証的な動向研究

を合わせておこなうことを目的とする。また、これらの国際組織の背景となっているウンマ論などの基

本的な研究をおこなうとともに、現在進行形の動向を把握し、諸地域間の比較も視野に入れて、現代イ

スラーム世界の理解を総合的に深めることをめざす。

【研究事業名】

研究グループ「イスラーム世界における国際組織の基礎研究」(ユニット 1「国際関係」、2「中道派」、3

「急進派」、4「広域タリーカ」、5「イスラーム経済」)

代表:小杉 泰(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授)

【拠点形成の目的と意義】

本研究科は、これまで研究領域の一つとして「イスラーム世界論」を設定し、西アジア、中東、北ア

フリカ、中央アジア地域の政治・経済・社会・思想・文化をめぐる研究・教育をおこない、2004 年から

は修了生を新世代の研究者として世に送り出し始めた。博士論文、学術ジャーナル掲載の論文、学術書

の刊行も順次なされて、研究成果も蓄積されつつある。また、種々の研究プロジェクトの実施により、

1998 年以来きわめて精力的に資料収集をおこない、アラビア語文献については国内最大の蔵書を有して

いる。また、京都大学における地域研究は、本研究科、東单アジア研究所、地域研究統合情報センター、

その他の部局において 100 名におよぶ専門家を擁し、文理融合による総合的地域研究を発展させ、地域

間比較の方法を開拓してきた。

今回の拠点形成は、このような実績に立脚して、総合的地域研究の理論と手法を用いたイスラーム地

域研究の深化と発展をはかることを目的としている。理論・原典研究・臨地研究(フィールドワーク)

の結合による地域研究によって、イスラーム地域に関する理解の飛躍的発展をめざすと共に、地域研究

の方法論一般の開拓についても財献するべく努めたい。

また、大学院では若手研究者の育成は本来の責務であるが、さらに、拠点形成によって研究プロジェ

クトと教育プロジェクトの緊密な展開をおこない、有為な研究者を輩出することをめざす。

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【組織】

(研究拠点構成員)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

小杉 泰 イスラーム地域研究センター・センター長、

アジア・アフリカ地域研究研究科・教授

研究総括・中東コーディネータ

ー・ユニット 5「イスラーム経済」

責任者

東長 靖 イスラーム地域研究センター・副センター長、

アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授 ユニット 4「広域タリーカ」責任者

足立 明 イスラーム地域研究センター・研究員、アジ

ア・アフリカ地域研究研究科・教授 单アジア・コーディネーター

岡本 正明 イスラーム地域研究センター・研究員、東单

アジア研究所・准教授 東单アジア・コーディネーター

帯谷 知可 イスラーム地域研究センター・研究員、地域

研究統合情報センター・准教授 中央アジア・コーディネーター

澤江 史子 イスラーム地域研究センター・研究員、東北

大学大学院国際文化研究科・准教授 ユニット 2「中道派」研究分担者

末近 浩太 イスラーム地域研究センター・研究員、立命

館大学国際関係学部・准教授 ユニット 1「国際関係」責任者

飛奈 裕美

イスラーム地域研究センター・研究員、京都

大学大学院人間・環境学研究科所属日本学術

振興会特別研究員(PD)

ユニット 1「国際関係」研究協力者

長岡 慎介

イスラーム地域研究センター・研究員、京都

大学東单アジア研究所所属日本学術振興会特

別研究員(PD)

ユニット 5「イスラーム経済」研究

協力者

藤井 千晶

イスラーム地域研究センター・研究員、アジ

ア・アフリカ地域研究研究科所属日本学術振

興会特別研究員(PD)

ユニット 4「広域タリーカ」研究協

力者

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235

山尾 大 イスラーム地域研究センター・研究員、九州

大学大学院比較社会文化研究院講師 ユニット 2「中道派」研究協力者

山根 聡

イスラーム地域研究センター・研究員、大阪

大学世界言語研究センター・准教授、京都大

学・非常勤講師

ユニット 2「中道派」責任者

サナア・

マクルーフ

イスラーム地域研究センター研究員、アジ

ア・アフリカ地域研究研究科客員教員(研究

科の招聘枠による)

ユニット 4「広域タリーカ」

イディリス・

ダニシマズ

イスラーム地域研究センター・研究員、アジ

ア・アフリカ地域研究研究科・非常勤講師

ユニット 4「広域タリーカ」研究協

力者

メフブーブ・

ウル・ハッサン

イスラーム地域研究センター・研究員、アジ

ア・アフリカ地域研究研究科・日本学術振興

会外国人特別研究員

ユニット 5「イスラーム経済」研究

協力者

仁子 寿晴

人間文化研究機構地域研究推進センター・研

究員、アジア・アフリカ地域研究研究科・客

員准教授

ユニット 4「広域タリーカ」研究分

担者

【2010 年度事業の目的と活動内容】

1.今年度事業の目的

今年度はイスラーム地域研究第 1期の最終年度にあたるため、5つのユニットがそれぞれ行ってきた活

動を有機的に連関させながら、「イスラーム世界の国際組織」に関する研究成果を総合し、公表してい

くことを为な目標とする。とは言え、今後「イスラーム世界の国際組織」の研究を継続して推進してい

くためには、拠点整備を充実させ、また新たな形での研究形態を模索し、ユニット構成改変を見据えた

研究会活動を実施することが不可欠である。そのため拠点整備に関してはデータ収集・分析、紙媒体・

電子媒体によるデータの公表(「知のインフラ整備」)、研究プロジェクトと連動した教育を継続して

おこなう。個々のユニットの研究活動に関しては該当項目を参照されたい。

2010 年度は、12 月にイスラーム地域研究京都国際会議、7 月には WOCMES-3(第三回中東研究世界大

会)が企画されているので、京都拠点の研究成果発表の場としてそれらを全面的に活用する予定である。

そのため、拠点独自の大きな企画は、ユニット 5「イスラーム経済」が英ダラム大学と共催で行う国際シ

ンポジウムだけにとどめる。前記 IAS 京都国際会議では、会議運営を含め全面的に早稲田中心拠点と協

力し、三つのセッション(ユニット 1「国際組織」と TIAS グループ 2 の合同セッション、ユニット 2「中

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道派」とユニット 3「急進派」の合同セッション、ユニット 4「広域タリーカ」と SIAS グループ 3 の合

同セッション)を受け持ち、WOCMES-3 にはユニット 5「イスラーム経済」とユニット 4(SIAS グルー

プ 3 と合同)がセッションを提供する。

データ収集・データ公開に関しては、継続しておこなってきた急進派データベース、広域タリーカデ

ータベースの構築を完成させ、ホームページ上で公開する予定である。各ユニットの研究成果を効率的

に公表するために刊行している『イスラーム世界研究』(年 2 回発行)に加え、2008 年度から刊行をは

じめたブックレット(Kyoto Series of Islamic Area Studies)を最大限活用し、成果の蓄積を目に見えるかた

ちで公表する。

(小杉泰)

2.今年度事業の内容

(1)拠点整備

アジア・アフリカ地域研究研究科東に隣接する旧高分子別館 2 階にイスラーム地域研究センター事務

局、データ解析室および編集制作室を設置し、計 3 部屉を本拠点の事業に使用し、データベース作成、

学術誌、ブックレットの編集などを効率的に行った。さらにワークショップ・研究会等の会場について

は、アジア・アフリカ地域研究研究科および連携する諸部局(東单アジア研究所、地域研究統合情報セ

ンターなど)が保有する諸設備を適宜用い、同研究科のアジア地域研究専攻図書室と緊密に連携し、資

料の収集・保管を行った。

同研究科が为管した京都大学 21 世紀 COE「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成――フィールド

ステーションを活用した臨地教育・研究体制の確立」および「魅力ある大学院教育」イニシアティブ「臨

地教育研究による実践的地域研究者の養成」で蓄積されてきたイスラーム地域研究に関する成果を継

承・発展させ、今 2009 年度からに発足した、当センターが附属する大学院アジア・アフリカ地域研究研

究科の「グローバル地域研究専攻」内の特に「イスラーム世界論講座」と密接に結びついたイスラーム

地域研究に関わる研究・教育活動を行った。「グローバル地域研究専攻」は「持続型生存基盤論講座」「イ

スラーム世界論講座」「单アジア・インド洋世界論講座」の三講座からなり、京都大学が目指す総合的

な地域研究の最先端として機能している。また昨年度と同じく、文部科学省科学技術試験研究委託事業

「人文学及び社会科学における共同研究拠点の整備の推進事業」を受託し、「イスラーム地域研究」京都

大学拠点を共同利用・共同研究拠点にふさわしいものとすべく、研究課題「イスラーム世界の国際組織」

の研究体制を拡充し、データベース構築体制や出版体制を整えるなど拠点の整備強化を行った。

加えて、ITP「地域研究のためのフィールド活用型現地語教育」、Global COE「生存基盤持続型の発展を

目指す地域研究拠点」、大学院教育改革支援プログラム「研究と実務を架橋するフィールドスクール――

社会に財献するアジア・アフリカ地域専門家の養成コース」といった同研究科が関わるプロジェクトと

実質的な連携を図り、研究・教育活動を充実させた(こうした研究・教育活動の結果として、昨年度の 3

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本に続いて今年度も 3 本の博士論文が提出された)。Global COE とは国際ワークショップの開催など研究

活動において積極的に連携したほか、ITP とは大学院生の海外派遣で連携し、『イスラーム世界研究』な

ど当センターの発表の場で、その成果を積極的に公表した(『イスラーム世界研究』第 4 巻 1-2 号に 2 本

の報告がある)。また同じく ITP や大学院教育改革支援プログラムと連携し、現地語に関する地域研究教

材開発を共同で行った(今年度は KIAS 地域言語シリーズとして二種の教材を開発した)。

海外連携研究の拠点として学術交流協定(MOU)を締結しているカイロ大学アジア研究所および政経学

部、あるいはイスラーム経済、湾岸研究において研究協力を行ってきた英ダラム大学、広域タリーカ研

究において特に関係の深いフランス国立科学研究センターとは引き続き交流を行った。今年度は、新た

に 2010 年 11 月 1 日にマレーシア国立大学イスラーム文明研究センターと正式に基本合意書(Letter of

Intent)を交し、また同大学経済ビジネス学部とは連携研究をすすめるべく、基本合意書を交わす準備を

行った。

(東長靖)

(2)運営委員会

運営委員会は例年通り二回行われた。詳細は以下のとおりである。

①平成 22 年度第一回京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラーム地域研究セン

ター運営委員会

日時:2010 年 11 月 5 日(金)14:00-15:00

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階第 2 講義室(AA415)

②平成 22 年度第二回京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラーム地域研究セン

ター運営委員会

日時:2011 年 2 月 9 日(水)14:00-15:00

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階第 2 講義室(AA415)

今年度は京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラーム地域研究センター・センタ

ー長の改選の年にあたり、センター長の任期が 11 月で切れるため、平成 22 年度第 1 回運営委員会はそれ

に合わせて 11 月 1 日に開催した。第 1 回運営委員会ではセンター長の再任を確認するとともに、今年度

の拠点整備および研究計画の進捗状況の確認と第 1 期イスラーム地域研究を終えるにあたり、第 2 期イ

スラーム地域研究でどのような活動をするのかが議題となった。2 月に行われた第二回運営委員会では、

今年度平成 22 年度の活動を点検し、第 1 期イスラーム地域研究の五年間にわたる活動を総括した。

(仁子寿晴)

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(3)IAS 京都国際会議

2010 年 12 月 17 日、18 日、19 日に京都国際会館で行われた IAS 京都国際会議(IAS Third International

Conference 2010 ―New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity Contestations and the Future‖)に際して、負

団法人京都大学教育研究負団に会議開催助成を申請して、助成を受けるとともに、早稲田大学中心拠点

と協力して運営および設営にあたった。IAS 京都国際会議の詳細は早稲田大学中心拠点の当該箇所を参照

のこと。また京都大学拠点が関わった三つのセッション(Session 3A: Islamic Discourse in Media: Papers,

Computers, and Satellites; Session 8A: Political Reform and its Aftermath in the Arab States; Session 8B: Emerging

Approaches to the Phenomena around Sufism and Saint Veneration)については以下の国際ワークショップ/シ

ンポジウム欄を参照されたい。

(仁子寿晴)

(4)海外派遣・調査

①小杉泰(KIAS 拠点代表者、KIAS ユニット 5 責任者)が 2010 年 7 月 12 日、13 日に英ダラム大学で開

催された 4th Kyoto-Durham International Workshop in Islamic Economics and Finance ―New Horizons in Islamic

Economics: Country Case Studies-Developments in Islamic Economics and Finance‖およびスペイン・バルセロ

ナで 2010 年 7 月 19 日~24 日に開催された第三回世界中東学会に出席するため、7 月 9 日~24 日の日程

で英国とスペインに海外出張をした。

②長岡慎介(KIAS ユニット 5 研究協力者)が 2010 年 7 月 12 日、13 日に開催された 4th Kyoto-Durham

International Workshop in Islamic Economics and Finance ―New Horizons in Islamic Economics: Country Case

Studies-Developments in Islamic Economics and Finance‖およびスペイン・バルセロナで 2010 年 7 月 19 日~

24 日に開催された第三回世界中東学会に出席するため、7 月 2 日~31 日の日程で英国とスペインに海外

出張をした。

③三沢伸夫(KIAS ユニット 4 と SIAS グループ 3 の連携研究「スーフィー・聖者研究会」所属、SIAS グ

ループ 3 研究分担者)がスペイン・バルセロナで 2010 年 7 月 19 日~24 日に開催された第三回世界中東

学会に出席するため 7 月 18 日~26 日の日程でスペインに海外出張をした。

④新井和広(KIAS ユニット 4 と SIAS グループ 3 の連携研究「スーフィー・聖者研究会」所属、SIAS グ

ループ 3 研究分担者)がスペイン・バルセロナで 2010 年 7 月 19 日~24 日に開催された第三回世界中東

学会に出席するため 7 月 18 日~26 日の日程でスペインに海外出張をした。

詳細は研究グループ「海外派遣」欄を参照されたい。

(仁子寿晴)

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(5)外国人研究者の招聘

①Sanaa Makhlouf (カイロ・アメリカン大学上級講師)4 月~7 月に招聘

②Touraya Guaaybess(ブレーズパスカル大学准教授)7 月~10 月に招聘

③Gary Bunt(ウェールズ大学上級講師)2010 年 12 月 15 日~20 日に招聘

④Raymond Hinnebusch(セント・アンドリュース大学教授)2010 年 12 月 16 日~20 日に招聘

⑤Miyagi Yukiko (英ダラム大学講師)2010 年 12 月 16 日~20 日に招聘

⑥Thierry Zarcone(フランス国立科学研究センター・上級研究員)2010 年 12 月 15 日~23 日に招聘

⑦Alexandre Papas(フランス国立科学研究センター・研究員)2010 年 12 月 15 日~23 日に招聘

詳細は、研究グループ「外国人研究者の招聘」欄を参照されたい。

(仁子寿晴)

(6)データベースの構築と公開

京都大学拠点では数種類のデータベース構築を進めているが、そのうちイブン・アラビー学派文献目録

データベース(Catalog Database for the Printed Books of the School ot Ibn ‗Arabī Collected in Japanese Libraries:

CDSIA)が完成し、11 月 1 日より Web 上で公開した。CDSIA は、イスラームの代表的スーフィーである

イブン・アラビーおよび彼の影響を受けた人々の著作に関する情報を学術調査・学術研究の振興及び教

育活動のために提供する目的で作成された。データベースの対象は、为に日本国内の公的機関に所蔵さ

れているイブン・アラビー学派関連の刊本(校訂・翻訳・研究書)である。CDSIA は学術的データベー

ス・書誌目録として以下の特徴をもつ。

・「学派」という見えづらい対象を刊本という具体的なもので視覚化した。

・研究者の立場からデータベースが構築されており、刊本・所蔵情報だけでなく、研究に資する、

著者や作品の情報にもアクセスできる。

・複数の言語をまたぐ分野のデータベースで実現例の尐ない現地語表記方式を採用し、多言語デー

タベースを構築した。

・刊本を著者に直接帰属させるのではなく、著者の作品がもつ各種属性(自著、注釈、翻訳)によ

って分類することで、作品相互の関係にもとづく刊本間の相互参照を可能にした。

・従来の書誌目録は刊本ベースで整理を行うため、刊本に複数作品が含まれている場合に、その個々

の作品に関する情報を扱うことが困難であった。CDSIA は作品に刊本を帰属させることによってこ

の難点を克服した。

・上記のような多層的データ(著者→作品→刊本→所蔵)の相互参照を可能にするために MediaWiki

を使用した。

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・CDSIA は従来のオンライン型データベースと書籍型書誌目録の中間を狙っている。従来のオンラ

イン型データベースは検索に強みを持つが前後の情報に全くアクセスできなかった。それに対して

書籍は前後の情報を見やすいが検索に難がある。CDSIA では、検索能率を上げるとともに前後の情

報(ある著者の作品群、およびある作品をあつかった刊本群)が目に入るよう工夫している。これ

はユーザーである研究者の立場からの要請にもとづく。

なお、CDSDIA は昨年度に Kyoto Series of Islamic Area Studies 4 として刊行された『イブン・アラビー学

派文献目録』のデータをもとに作成されたが、イブン・アラビー学派に関する文献は次々と刊行され、

日本でもさまざまな公共機関で収蔵されつつあるので、今後も随時、データをアップデートしていく。

(仁子寿晴)

(7)研究成果・発表(各拠点発行物)

〔論文〕計( 35 )件

著 者 名 論 文 標 題

Moinuddin Aqeel

(元 KIAS 拠点構成員)

Commencement of Printing in the Muslim World: A View of Impact

on Ulama at Early Phase of Islamic Moderate Trends

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

山根聡(編)『单アジア・イスラームの多角的解明にむけて――

歴史・思想・文学・政治――』京都大学イスラーム地域研究セン

ター

2010.11 2-17

著 者 名 論 文 標 題

Anwaar Ahmad & Zazi Abdul Rehman

Abid

(Bahauddin Zakariya University)

Ideological Perceptions of Pakistani Establishment and Cultural

Acceptance of the Rebels in the Context of Urdu Literature

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

山根聡(編)『单アジア・イスラームの多角的解明にむけて――

歴史・思想・文学・政治――』京都大学イスラーム地域研究セン

ター

2010.11 34-46

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241

著 者 名 論 文 標 題

石田 友梨

(ユニット 4 研究協力者)

スーフィズムにおけるラターイフ(laṭā‟if )論の再定義

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 359-370

著 者 名 論 文 標 題

泉 淳

(東京国際大学経済学部・准教授)

イスラーム復興と米国のイスラーム地域政策略

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4: 1-2 2011 92-113

著 者 名 論 文 標 題

井上 あえか

(ユニット 2 研究協力者)

カシミール問題の現在

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

山根聡(編)『单アジア・イスラームの多角的解明にむけて――

歴史・思想・文学・政治――』京都大学イスラーム地域研究セン

ター

2010.11 48-65

著 者 名 論 文 標 題

井上 あえか

(ユニット 2 研究協力者)

パキスタンにおけるイスラーム復興――1977 年以降の政治の

局面にそくして――

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4: 1-2 2011 279-288

著 者 名 論 文 標 題

井上 貴智

(ユニット 1 研究協力者)

各地域における「科学のイスラーム化」の議論と国際ネット

ワーク

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 371-382

Page 242: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

242

著 者 名 論 文 標 題

Intissar Iedan Faraj

(Tokyo University of Foreign Studies)

Forced Internal Displacement: As a result of political

mobilization in Iraq post 2003

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 187-234

著 者 名 論 文 標 題

岡本 正明

(KIAS 拠点構成員)

インドネシアのイスラーム为義政党、福祉正義党の包括政党化

戦略

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4: 1-2 2011 289-313

著 者 名 論 文 標 題

川村 藍

(ユニット 5 研究協力者)

中東湾岸諸国のイスラーム金融をめぐる法制度とその問題

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 383-398

著 者 名 論 文 標 題

木下 博子

(ユニット 4 研究協力者)

現代インドネシアにおけるアズハル大学留学経験者のダイナ

ミズム――社会的ネットワーク、社会関係資本の観点から

――

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 343-358

著 者 名 論 文 標 題

ONO Motohiro

(負団法人中東調査会)

Reconsideration of the Meanings of the Tribal Ties in the United

Arab Emirates: Abu Dhabi Emirate in Early ‗90s

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 3:2 2010 165-185

Page 243: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

243

著 者 名 論 文 標 題

KURODA Kenji

(ユニット 2 研究協力者)

Methodological Note on the Intellectual Landscape in the

Contemporary Twelver Shīʻa

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』 Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4: 1-2 2011 28-45

著 者 名 論 文 標 題

Zahid Munir Amir

(Azhar University)

Religious, Fear and Terror: A Study of Muhammad Iqbal‘s Religious

Philosophy

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

山根聡(編)『单アジア・イスラームの多角的解明にむけて――

歴史・思想・文学・政治――』京都大学イスラーム地域研究セン

ター

2010.11 18-33

著 者 名 論 文 標 題

A. D. Wahba al-Zuḥaylī

(Damascus University)

al-Ijtihād fī „Aṣrinā hādhā min ḥayth al-Naẓarīya wa-al-Taṭbīq

(Islamic Legal Independent Judgement from contemporary theories

and practices)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 1-9

(from right to left)

著 者 名 論 文 標 題

TAKEDA Toshiyuki

(ユニット 1 研究協力者)

al-Naḥt fī al-Lugha al-„Arabīya bayna al-Aṣāla wa al-Ḥadātha:

Taqaddum al-„Ulūm wa Waḍ„ al-Muṣṭalaḥāt al-Ḥadītha fī

al-„Ālam al-„Arabī al-Mu„āṣir (Blend Words in Arabic between

Tradition and Reform: the Development of Science and Creation

of Technical Terms in the Modern Arab World)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 10-21

(from right to left)

Page 244: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

244

著 者 名 論 文 標 題

千葉 悠志

(ユニット 2 研究協力者)

現代アラブ世界におけるメディア史年表

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 551-592

著 者 名 論 文 標 題

東長 靖

(ユニット 4 責任者)

クシャイリー『クシャイリーの論攷』より「聖者の奇蹟」章解

題・翻訳ならびに訳注

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 548-550

著 者 名 論 文 標 題

Muhammad Hakimi Bin Mohd Shafiai

(京都大学)

Theory of ―Sharecropping‖ from an Islamic Economic Perspective:

A Study of al-Muzāra„a & al-Musāqāt

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 235-254

著 者 名 論 文 標 題

Khalijah Mohd Salleh et al.

(Institute Islam Hadhari/Faculty of

Science and Technology, Universiti

Kebangsaan Malaysia)

Teachers‘ Concerns, Perception and Acceptance toward Tauhidic

Science Education

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 122-152

著 者 名 論 文 標 題

HIRMATSU Aiko

(ユニット 1 研究協力者)

The Changing Nature of the Parliamentary System in Kuwait:

Islamists, Tribes, and Women in Recent Elections

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 63-74

Page 245: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

245

著 者 名 論 文 標 題

HIRANO Junichi

(ユニット 2 研究協力者)

Tajdīd al-Fikr al-Islāmī fī al-‗Ālam al-Islāmī al-Ḥadīth: Dirāsa ‗an

Jamāl al-Dīn al-Afghānī wa l-Afkāruhu ‗an al-Imbiriyālīya

wa-al-Istishrāq wa-al-Tafāhum bayna al-Adyān (Reforming

Islamic Thought in the modern Islamic world: Jamāl al-Dīn

al-Afghānī‘s Thoughts on Imperialism, Orientalism, and Mutual

Understanding of Religions)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 22-44

(from right to left)

著 者 名 論 文 標 題

FUJII CHIAKI

(ユニット 4 研究協力者)

Comparative Studies of the Medicine of the Sunna and Uganga

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 153-186

著 者 名 論 文 標 題

HOSAKA Shuji

(ユニット 3 責任者)

Japan and the Gulf: A Historical Perspective of Pre-Oil Relations

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 3-24

著 者 名 論 文 標 題

HORINUKI Koji

(ユニット 5 研究協力者)

Controversies over Labour Naturalisation Policy and its Dilemmas:

40 Years of Emiratisation in the United Arab Emirates

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 42-62

Page 246: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

246

著 者 名 論 文 標 題

MATSUO Masaki

(宇都宮大学)

Ethnocracy in the Arab Gulf States: Preliminary Analysis of Recent

LaborMarket

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 165-185

著 者 名 論 文 標 題

松村 耕光

(ユニット 2 研究協力者)

「サーキー・ナーマ」――イクバールのウルドゥー詩(4)――

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 473-479

著 者 名 論 文 標 題

萬宮 健策

(ユニット 2 研究協力者)

パキスタンにおける政党の現状

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

山根聡(編)『单アジア・イスラームの多角的解明にむけて――

歴史・思想・文学・政治――』京都大学イスラーム地域研究セン

ター発行

2010.11 98-121

著 者 名 論 文 標 題

Mehboob ul-Hassan

(ユニット 5 研究協力者)

Meeting with History: A Conversation with Prof. Khurshid Ahmad:

An Islamic Economist and Activist

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 75-121

著 者 名 論 文 標 題

守川 知子・

ペルシア語百科全書研究会

(ユニット 4 研究協力者)

ムハンマド・ブン・マフムード・トゥースィー著『被造物の

驚異と万物の珍奇』(4)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 480-547

Page 247: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

247

著 者 名 論 文 標 題

山尾 大

(ユニット 2 研究協力者)

曖昧なナショナリズムが生んだイラク政治の「分極化」

――2010 年3 月7 日イラク国政選挙の分析――

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 399-422

著 者 名 論 文 標 題

山根 聡

(ユニット 2 責任者)

対テロ戦争下におけるパキスタン情勢について

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

山根聡(編)『单アジア・イスラームの多角的解明にむけて――

歴史・思想・文学・政治――』京都大学イスラーム地域研究セン

ター発行

2010.11 66-96

著 者 名 論 文 標 題

山根 聡

(ユニット 2 責任者)

ポスト・ムシャッラフ体制における政治的権力構造の変容

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

山根聡(編)『单アジア・イスラームの多角的解明にむけて――

歴史・思想・文学・政治――』京都大学イスラーム地域研究セン

ター発行

2010.11 122-131

著 者 名 論 文 標 題

山根聡(ユニット 2 責任者)、東長靖(ユニ

ット 4 責任者)

知の先達たちに聞く(4)――加賀谷寛先生をお迎えし

て――

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 314-343

Page 248: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

248

著 者 名 論 文 標 題

山本 薫

(東京外国語大学)

Tarjamat al-Adab al-„Arabī al-Mu„āṣir fī al-Yābān: malāmiḥ „amma

wa-tajriba shakhṣīya (Japanese Translation of Modern Arabic

Literature: General Features and Personal Experiences)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラーム世界研究』Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 4:1-2 2011 45-49

(from right to left)

なお、『イスラーム世界研究』第 4 巻 1-2 号所収の細谷幸子氏(早稲田大学グループ 2 研究協力者)によ

る二本の翻訳の詳細は早稲田大学拠点グループ 2 の該当箇所を参照されたい。また同巻所収の清水雅子

氏の翻訳は上智大学拠点グループ 1 の該当箇所を参照されたい。

〔図書〕計( 3 )件

著 者 名 出 版 社

山根 聡編

(ユニット 2 責任者)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラーム

地域研究センター(KIAS)

書 名 発 行 年 ページ

『单アジア・イスラームの多角的解明にむけて』

(Kyoto Series of Islamic Area Studies 5)

2010.11 131

著 者 名 出 版 社

東長 靖

(ユニット 4 責任者)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラーム地域

研究センター(KIAS)

書 名 発 行 年 ページ

『スーフィズム・タリーカ・聖者信仰用語集――ローマ字配列――』

(KIAS 地域言語シリーズ)

2011.3 vi+90

著 者 名 出 版 社

東長 靖

(ユニット 4 責任者)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラ

ーム地域研究センター(KIAS)

書 名 発 行 年 ページ

『アラビア文字で引くスーフィズム・グロッサリー』

(KIAS 地域言語シリーズ)

2011.3 vii+88

Page 249: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

249

〔ジャーナル〕計( 1 )件

雑 誌 名

『イスラーム世界研究』

Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies

発 行 巻・号 発 行 年 ページ

共同利用・共同研究拠点 イスラーム地域研究拠点

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラ

ーム地域研究センター

4:1-2 2011 xxix+698

Page 250: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

250

研究グループ:「イスラーム世界における国際組織の基礎研究」

【組織】

(研究グループメンバー)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

小杉 泰 イスラーム地域研究センター・センター長、

アジア・アフリカ地域研究研究科・教授

研究総括・中東コーディネータ

ー・ユニット 5「イスラーム経済」

責任者

東長 靖 イスラーム地域研究センター・副センター長、

アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授

ユニット 4「広域タリーカ」責任

足立 明 アジア・アフリカ地域研究研究科・教授 单アジア・コーディネーター

澤江 史子 東北大学大学院国際文化研究科・准教授 ユニット 2「中道派」研究分担者

末近 浩太 立命館大学国際関係学部・准教授 ユニット 1「国際関係」責任者

濱田 正美 大学院文学研究科・教授 ユニット 4「広域タリーカ」研究

分担者

保坂 修司 負団法人日本エネルギー経済研究所・研究理事

(早稲田大学拠点・拠点構成メンバー) ユニット 3「急進派」責任者

森 伸生 拓殖大学海外事情研究所・教授・同大イスラー

ム研究所・所長

ユニット 5「イスラーム経済」研

究分担者

山根 聡 大阪大学世界言語研究センター・教授、京都大

学・非常勤講師 ユニット 2「中道派」責任者

仁子 寿晴

人間文化研究機構地域研究推進センター・研究

員、アジア・アフリカ地域研究研究科・客員准

教授

ユニット 4「広域タリーカ」研究

分担者

Page 251: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

251

(研究グループ海外共同研究者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

サルマ・

サイラリー モーリシャス負務省・経済分析官

ユニット 5「イスラーム経済」研

究分担者

ティエリ・

ザルコンヌ フランス国立科学研究センター・为任研究員

ユニット 4「広域タリーカ」研究

分担者

ムハンマド・

セリーム カイロ大学政経学部・教授

ユニット 1「国際関係」の研究分

担者

アッザーム・

タミーミー イスラーム政治思想研究所・所長

ユニット 2「中道派」の研究分担

メフメト・

バイラクダル アンカラ大学神学部・教授

ユニット 4「広域タリーカ」研究

分担者

(研究グループ研究協力者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

井上 貴智 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程 ユニット 1、現代イスラーム科学論

井上ひかり 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

ユニット 1、イスラームにおける生

命倫理

今井 静 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程 ユニット 1、パレスチナ研究

後藤裕加子 関西学院大学文学部・准教授 ユニット 1、イラン研究

竹田 敏之 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

ユニット 1、アラビア語文法学、現

代アラブ文化論

飛名 裕美 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程 ユニット 1、パレスチナ研究

平野 淳一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(早稲田大学拠点グルー

プ 1 研究協力者)

ユニット 1、近代イスラーム政治思

Page 252: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

252

平松亜衣子 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

ユニット 1、クウェートの政治と社

石黒 大岳 神戸大学大学院国際文化学研究科・博士課

程(上智大学拠点グループ1研究協力者) ユニット 2、比較政治学

伊藤 寛了 東京外国語大学大学院地域文化研究科・博

士課程

ユニット 2、トルコ近現代史、トル

コ地域研究

小倉 智史 京都大学大学院文学研究科・博士課程 ユニット 2、カシミール史、中央ア

ジア・インド関係史

吉川 卓郎

立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学

部・助教(上智大学拠点グループ 1 研究協

力者)

ユニット 2、ヨルダン、国際関係

黒田 賢治 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

ユニット 2、シーア派、イスラーム

地域研究

幸加木 文 東京外国語大学大学院地域文化研究科・博

士後期課程 ユニット 2、現代トルコ政治思想

佐々木拓雄 久留米大学法学部・准教授 ユニット 2、インドネシア・イスラ

ーム研究

須永恵美子 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程 ユニット 2、パキスタン政治研究

多和田裕司 大阪市立大学大学院文学研究科・教授 ユニット 2、文化人類学、マレーシ

ア地域研究、東单アジア研究

千葉 悠志 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程 ユニット 2、中東メディア研究

松村 耕光 大阪大学世界言語研究センター・准教授 ユニット 2、ウルドゥー文学、イク

バール研究

萬宮 健策 大阪大学世界言語研究センター・講師 ユニット 2、スィンディー語、パキ

スタン・アフガニスタン情勢

山尾 大 九州大学大学院比較社会文化研究院講師

(早稲田大学拠点グループ 1 研究協力者)

ユニット 2、現代イラク政治、中東

地域研究

黒田 恵子 鹿児島大学法文学部・教授 ユニット 3、地域研究、東单アジア

Page 253: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

253

西野 正巳 防衛省防衛研究所研究部 ユニット 3、近現代政治思想

樋口 征治 中東調査会・嘱託 ユニット 3、中東の政治と社会

宮坂 直史 防衛大学校国際関係学科・教授 ユニット 3、安全保障

朝田 郁

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4、東アフリカにおけるハ

ドラミーおよびアラウィー教団

石田 友梨

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4、イスラーム思想史

新井 一寛

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・研究員(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4、地域研究・宗教学・宗

教社会学・映像人類学(現代エジプ

トのスーフィー教団)

内山 明子

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4、イラン・イマームザー

デ研究

遠藤 春香

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4、イスラーム思想史

木下 博子

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

(上智大学拠点グループ 2 研究協力者、上

智大学拠点グループ 3 研究協力者)

ユニット 4、東单アジアと中東のネ

ットワーク

イディリス・

ダニシマズ

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・非常勤講師、イスラーム地域研究

京大拠点研究員(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4、スーフィズム、スーフ

ィーによるクルアーン解釈

栃堀木綿子

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4、マグレブにおける近代

とスーフィズム

Page 254: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

254

西山 愛実

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4、トルコ・タリーカ研究

藤井 千晶

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4 および上智大学拠点グ

ループ 3、東アフリカにおけるイス

ラーム知識人

丸山 大介

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4 および上智大学拠点グ

ループ 3、イスラームの聖者論と聖

者信仰

安田 慎

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程(上智大学拠点グループ 3

研究協力者)

ユニット 4 および上智大学拠点グ

ループ 3、現代シーア派と聖者廟参

川村 藍 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

ユニット 5、イスラーム法学、イス

ラーム金融論

川畑亜瑠真 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

ユニット 5、イスラーム法、ハラー

ル研究

長岡 慎介 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

ユニット 5、イスラーム金融論、イ

スラーム経済学

萩原 淳 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

ユニット 5、湾岸アラブ諸国の政治

と宗教

堀拔 功二 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究

研究科・博士課程

ユニット 5、中東地域研究、湾岸ア

ラブ諸国の政治と社会

メフブーブ・ウル・

ハッサン

アジア・アフリカ地域研究研究科・日本学

術振興会外国人特別研究員、イスラーム地

域研究京大拠点研究員

ユニット 5、イスラーム経済

なお上記以外のユニット 4 研究協力者、浅田郁、新井一寛、今松泰、加藤瑞絵、鎌田繁、河原弥生、川

本正知、木下博子、小林寧子、小牧幸代、斎藤剛、坂井信三、澤井真、篠田知暁、高尾賢一郎、Idris Danismaz、

戸川昌彦、二宮文子、中西竜也、平野久仁子、藤井千晶、丸山大介、水野裕子、茂木明石、守川知子、

森山央朗、矢島洋一、安田慎、吉田京子、若松大樹については上智大学拠点グループ 3 研究協力者欄を

参照されたい。

Page 255: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

255

【2010 年度の研究・教育活動】

1. 今年度の研究・教育活動の概要

2010 年 2 月 4 日に開催された平成 21 年度第二回運営委員会で確認された 2010 年度活動計画にもとづい

て今年度の研究・教育活動が行われた。2009 年度の研究活動は 2010 年最終年度にむけて、各ユニットの

研究成果をできるだけ目に見えるかたちで発表し、「イスラーム世界の国際組織」という全体のテーマに

関する研究成果について総合的にまとめる準備をすることを中心として行われた。それを享けて、最終

年度である今年度の活動は、五つのユニット(ユニット 1「国際関係」、ユニット 2「中道派」、ユニット

3「急進派」、ユニット 4「広域タリーカ」、ユニット 5「イスラーム経済」)個々の活動よりも、全体とし

て成果を、特に、海外に向けて発信することに力を注いだ。

2010 年度研究計画でも述べたように、研究成果発信の中心となったのは 7 月にスペイン・バルセロナ

で開催された第 3 回中東研究世界大会(The 3rd World Congress for Middle Eastern Studies : WOCMES 3)と

12 月に京都で行われた IAS 京都国際会議(IAS Third International Conference 2010 ―New Horizons in Islamic

Area Studies: Continuity, Contestations and the Future‖)である。第 3 回中東研究世界大会ではユニット 4 と

ユニット 5 がそれぞれ ―Frontier of the Islamic Economics and Finance: New Challenges‖ ―Sufis and Saints

Facing the Government and the Public‖と題してパネルを構成し、IAS 京都国際会議ではユニット 2 とユニッ

ト 3 が合同で Session 3A ―Islamist Discourse in Media: Papers, Computers, and Satellites‖を、ユニット 1 とユ

ニット 4 がそれぞれ Session 8A ―Political Reform and its Aftermath in the Arab States‖を、Session 8B ―Emerging

Approaches to the Phenomena around Sufism and Saint Veneration‖を組織した。京都大学拠点内部では五つの

ユニットが全体として、この二つの国際会議を有効に利用することができたと評価することができよう。

加えて、ユニット 4 はどちらの会議においても上智大学拠点グループ 3 と協力し、ユニット 1 は IAS 京

都国際会議で東京大学拠点グループ 2 と協力するなど、拠点間の研究連携が第 1 期イスラーム地域研究

でうまく機能したことを証するものであり、二つの国際会議はそうした連携研究の集大成となった。

それ以外に研究会を 4 回、国際ワークショップ/シンポジウム・国内ワークショップを 9 回、講演会

を 2 回行い、第 2 期イスラーム地域研究に第 1 期イスラーム地域研究の研究成果を継続して発展させる

よう努めた。

京都大学拠点では研究活動とともに教育活動は大きな柱となっている。为な教育活動は以下のとおり

である。

・本拠点の教育活動は、上記の研究活動と密接に関係する。2009 度に開設された京都大学大学院アジア・

アフリカ地域研究研究科グローバル地域研究専攻と連動して以下、11 件の授業を提供した。

①「イスラーム世界論研究」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)/

講師 小杉泰/後期 火曜日 5 時限

②「イスラーム思想研究」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)/講

師 東長靖/前期 火曜日 2 時限

Page 256: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

256

③「スーフィズム・タリーカ論」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)

/講師 東長靖/前期後期 月曜日 5 時限

④「イスラーム社会経済論」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)/

講師 小杉泰、長岡慎介/後期 月曜日 3 限

⑤「中央アジア地域研究論」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)/

講師 帯谷知可(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)/後期 金曜日 4 時限

⑥「イスラーム国際関係論」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)/

講師 小杉泰/後期 火曜日 6 時限

⑦「熱帯乾燥域生存基盤論」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)/

講師 小杉泰、長岡慎介/9 月 13 日(月)3-5 時限、9 月 14 日(火)3-5 時限、9 月 15 日(水)3-5

時限、9 月 21 日(火)3-5 限、9 月 22 日(水)3-5 時限

⑧「单アジア・イスラーム論」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)

/講師 山根聡(大阪大学教授)/6 月 4 日(金)3-5 時限、6 月 11 日(金)3-5 時限、6 月 25 日(金)

3-5 時限、7 月 2 日(金)3-5 時限、7 月 23 日(金)3-5 時限

⑨「国際機構・国際 NGO 論」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)

/講師 子島進(東洋大学准教授)/7 月 26 日(月)3-5 時限、27 日(火)1-4 時限、28 日(水)

1-4 時限

⑩「国際エネルギー論」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)/講師 遠

藤昌雄(岩手県立大学・教授)/8 月 25 日(水)2-4 時限、8 月 26 日(木)2-4 時限、8 月 27 日(金)

2-4 時限、8 月 30 日(月)2-4 時限 、8 月 31 日(火)2-4 時限

⑪「中東地域研究論」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科との連動講義)/講師 臼

杵陽(日本女子大学・教授)/1 月 24 日(月)2-5 時限、1 月 25 日(火)2-5 時限、1 月 26 日(水)

2-5 時限、1 月 27 日(木)2-4 時限

・大学院生を中心とする拠点セミナーを 9 回開催した。詳細は「2. 研究活動の記録」中「(5) 院生向けセ

ミナー」の項目を参照されたい。

・京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科に京都大学拠点研究協力者三名(平野淳一、堀拔功

二、黒田賢治)の博士論文が提出され、同研究科で受理された。詳細は「(7) 研究成果・発表(各拠点発

行物以外)」の該当箇所を参照されたい。

・地域言語教材開発の一環として昨年度に設けられた KIAS 地域言語シリーズで以下二冊の教材、『スー

フィズム・タリーカ・聖者信仰用語集――ローマ字順配列――』『アラビア文字で引くスーフィズム・グ

ロッサリー』を開発、発行した。

(小杉泰)

Page 257: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

257

2. 研究活動の記録

(1)研究会活動

①第 1 回スーフィー・聖者研究会(ユニット 4 と上智大学拠点グループ 3 の連携)

日時:2010 年 5 月 30 日(水) 15:00~18:45

場所:上智大学四谷キャンパス第 2 号館 6 階 2-630a 号室

発表 1 高尾賢一郎(同志社大学)

「スーフィズムを巡る为張と評価の諸展望――シャイフ・アフマド・ クフターローの事例から――」

発表 2 高橋圭(人間文化研究機構/上智大学)

「近代エジプトにおけるタリーカ再評価――タリーカ改革(1895-1905)の目指したもの――」

発表 3 新井和広(慶應義塾大学)

「インドネシアにおけるイスラーム定期刊行物とアラブ・コミュニティー――アル=キッサ(alKisah)

の事例から――」

発表 4 三沢伸生(東洋大学)

「戦前期の日本におけるイスラーム受容――神道とイスラームの習合の模索――」

コメント:東長靖(京都大学)

概要:

第 3 回中東研究世界大会に向けて行われた準備研究会。発表・コメントおよび議論の詳細については

上智大学拠点グループ 3 の該当箇所を参照されたい。

(仁子寿晴)

②第 2 回スーフィー・聖者研究会(ユニット 4 と上智大学拠点グループ 3 の連携)

日時:2010 年 6 月 20 日(日) 10:00~12:00

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階 AA401 号室

発表 1 TAKAHSHI Kei (NIHU/Sophia University)

―Revaluating Tariqas for the Nation: Muhammad Tawfiq al-Bakri and his Tariqa Reform 1895-1905‖

発表 2 ARAI Kazuhiro (Keio University),

―The Media, Saints and the Sayyids in Indonesia and Hadramawt‖

発表 3 TAKAO Kenichiro (Doshisha University)

―Shaykhs facing to Orthodoxy and ‗Aggiornamento‘‖

発表 4 MISAWA Nobuo (Toyo University)

―Shintoism and Islam in Interwar Japan‖

コメント Sanaa Makhlouf (The American University in Cairo) & TONAGA Yasushi (Kyoto University)

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概要:①の第 1 回スーフィー・聖者研究会につづいて第 3 回中東研究世界大会での発表を睨んで組織

された研究会。内容の詳細は上智大学拠点グループ 3 該当箇所を参照されたい。

(仁子寿晴)

③第 3 回スーフィー・聖者研究会(ユニット 4 と上智大学拠点グループ 3 の連携、および「現代中東イ

スラーム世界・フィールド研究会」との共催)

日時:2011 年 2 月 12 日(土) 13:30~17:00

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階 AA401 号室

発表 1 石田友梨(京都大学)

「フジュウィーリー『隠されたるものの開示(Kashf al-Mahjub)』における実体(‗ayn)――人間の構

成要素としての我欲(nafs)と精気(ruh)――」

コメント:二宮文子(日本学術振興会/京都大学)

発表 2 高尾賢一郎(同志社大学)「西洋のスーフィズム認識に見る諸問題――宗教と近代を巡る言説

の変遷を通して――」

コメント:仁子寿晴(人間文化研究機構/京都大学)

概要:

中世期古典文献読解にもとづく発表と現代スーフィズムを巡る言説を取り扱った発表の二本からなる

研究会。二つの発表はともにスーフィズムに対する我々の認識の再検討を迫るものであり、古典研究と

現代研究をともに扱うイスラーム地域研究にふさわしい内容だった。この研究会の詳細については上智

大学拠点グループ 3 の該当箇所を参照されたい。

(仁子寿晴)

④第 4 回スーフィー・聖者研究会(ユニット 4 と上智大学拠点グループ 3 の連携、および上智大学アジ

ア文化研究所との共催)

日時:2011 年 2 月 26 日(土) 15:00~17:00

場所:上智大学四谷キャンパス第 2 号館 6 階 2-630a 号室

発表:Marc Toutant (CETOBAC, EHESS-CNRS, France) ―Approaches to the Literary Imitation Process in

Timurid Central Asia: ‗Ali Shir Nawa‗i‘s Khamsa and the Persian Tradition‖

概要:

中央アジアのスーフィー文学を専門とする Toutant 氏の発表を中心に行われた研究会。日本のスーフィ

ズム研究において文学的なアプローチはもっとも手薄なところであり、その意味で貴重な示唆が得られ

た研究会だった。

(仁子寿晴)

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⑤劉智『天方性理』読書会(回儒の著作研究会、早稲田大学拠点研究グループ 2 と共催)

日時:2010 年 4 月 25 日(日)、5 月 23 日(日)、7 月 4 日(日)、7 月 25 日(日)、9 月 18 日(土)、10

月 9 日(土)、11 月 6 日(土)、12 月 26 日(土)、2011 年 1 月 8 日(土)~9 日(日)、2 月 4

日(金)、2 月 25 日(金)~26 日(土)、3 月 28 日(月)~3 月 30 日(水)

場所:日本大学文理学部青木研究室/大妻女子大学比較文化学部佐藤研究室/京都大学アジア・アフ

リカ地域研究研究科仁子研究室/静岡県伊豆市下白岩1436 六寿館

担当者:青木隆、佐藤実、田島大輔、中西竜也、仁子寿晴、矢島洋一

この読書会の詳細については、早稲田大学拠点研究グループ 2 の該当箇所を参照されたい。

(仁子 寿晴)

(2)国際会議

① The 3rd World Congress for Middle Eastern Studies(第 3 回中東研究世界大会)

日時:2010 年 7 月 19 日(月)~24 日(日)

場所:スペイン・バルセロナ自治大学

すでに述べたように京都大学拠点ではユニット 4「広域タリーカ」とユニット 5「イスラーム経済」が

スペイン・バルセロナ自治大学で開催された第 3 回中東研究世界大会でパネルを組織した。それぞれの

セッション名は ―Sufis and Saints Facing the Government and the Public-I & II‖と ―Frontier of the Islamic

Economics and Finance: New Challenges‖である。以下それぞれ項目を立てて説明を加えておく。

(a) Panel ―Sufis and Saints Facing the Government and the Public-I & II‖(ユニット 4 と上智大学拠点グルー

プ 3 との連携)

日時:2010 年 7 月 20 日(火) 9:00~13:30

セッション構成:

Organizer: AKAHORI Masayuki (Sophia University, Japan)

Chairperson: AKAHORI Masayuki

Speaker1: TAKAHASHI Kei (National Institute for the Humanities/ Sophia University, Japan)

―Revaluating Tariqas for the Nation: Muhammad Tawfiq al-Bakri and his Tariqa Reform 1895-1905‖

Speaker 2: MARUYAMA Daisuke (Kyoto University, Japan)

―Sufism and Tariqa Facing the State: A Case Study of the Contemporary Sudan‖

Speaker 3: Marc Toutant (CETOBAC, EHESS-CNRS, France)

―Materialist Ideology Facing a Great Sufi Poet: The Case of Ali Shir Nawâ‘î in Soviet Uzbekistan; From

Concealment to Patrimonalisation‖

Speakers 4: ARAI Kazuhiro (Keio University, Japan)

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―The Media, Saints and Sayyids in Contemporary Indonesia‖

Speakers 5: TAKAO Kenichiro (Doshisha University, Japan)

―Shaykhs facing to Orthodoxy and Aggiornament‖

Speaker 6: MISAWA Nobuo (Toyo University, Japan)

―Shintoism and Islam in Interwar Japan‖

Discussants:

TONAGA Yasushi (Kyoto University, Japan)

Sanaa Makhlouf (The American University in Cairo, Egypt)

概要:上智大学拠点グループ 3 の該当箇所を参照されたい。

(仁子寿晴)

(b) Panel ―Frontier of the Islamic Economics and Finance: New Challenges‖

日時:2010 年 7 月 22 日(水) 17:00~19:00

セッション構成:

Chair: KOSUGI Yasushi (Kyoto University)

Speaker 1: Mehmet Asutay (Durham University, UK)

―Conceptualizing the Social Failure of Islamic Banking and Finance: Modeling the Second Best Solution‖

Speaker 2: NAGAOKA Shinsuke (Kyoto University)

―Coorinating Sharia Legitimacy with Economic Feasibility in Islamic Finance: Explaining the Divergence from

the Multiple Diversities Perspecive‖

Speaker 3: Shifa Mohd Nur (Durham University, UK)

―Integrating Moral in a Dynamic Model of Corporate Social Responsibility in Islamic Economics and Finance‖

Speaker 4: Shehan Marzban (Durham University, UK)

―Modeling the Analysis of Sharia Compliance Process: An Empirical Attempt‖

概要:

Aim of the panel: The relentless efforts made toward the restructuring of the economic system according to

Islamic principles commenced in the middle of the twentieth century. The ultimate objective was to implement an

alternative economic and financial system that was different from the modern capitalist standard. These efforts

resulted in the development of the independent academic discipline called ―Islamic Economics,‖ The fruits of such

endeavors were materialized by the launching of the commercial practive of Islamic finance in the 1970s. Thus far,

however, the practive of Islamic finance, in reality, has not necessarily reflected the theoretical proposals of Islamic

economics. In order to eliminate this gap, all serious proposals for alternatives or alterations must be considered.

From this perspective, this panel session primarily aims to 1) re-evaluate the achievements of Islamic economics

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that have been influenced by the conflict and coorination between theory and practive in Islamic finance, and

sucsequently, to 2) consider the role of Islamic economics in this age of globalization in relation to the current

economic situation.

Dr. Mehmet Asutay introduced the basic principles of Islamic economics and finance, and then attempted to

provide a comprehensive picture regarding the achievements and reality of Islamic economics. He indicated that the

Islamic finance industry does not necessarily share the aspirations of Islamic economics. After highlighting and

analyzing the areas of tension between the Islamic finance industry and Islamic economics, he argued that Islamic

finance and to create added value for capacity building and social justice.

Dr. NAGAOKA Shinsuke focused on the gap between the ideas of Islamic economics and the practice of

Islamic finance in terms of the development of Islamic financial products. In order to be commercially successful in

a situation where its practice coexists with conventional finance, Isalmic finance must not only be compliant with

the idea of Islamic economics, but it also needs to provide competitive financial products. As such, the practice of

Islamic finance must maintain a balance between the two aforementioned conditions in order to survive as a

financial practice. Dr. NAGAOKA used case studies to illustrate, however, that most Islamic finance practices do

not necessarily satisfy both conditions.

Shifa Mohd Nur and Dr. Shehab Marzban discussed new issue related to Islamic economics and finance.

These issues have a tremendous amount of potential to solve the current problems of Islamic economics and

finance.

Shifa Mohad Nur focused on corporate social responsibility (CSR) in Islamic economics and finance. The

escalating social and economic problems during the current financial crisis have raised new questions as well as

expectations in regard to corporate governance, ethical, and social responsibilities. Commentators have rased

―ethics‖ as the missing link in financing and also in running financial institutions. CSR has emerged and developed

with the aim of constructing and directing the social rsponsibilities of economic and financial institutions. The main

objective of her paper was to examine the concept of CSR from an Islamic perspective. Importanly, Islamic banks

are criticized for not considering the social dimensions related to development, which is an essential distinguishing

point of Islamic moral economy.

Dr. Shehab Marzban focused on Sharia-compliant investments. Sharia-compliant investments are generally

considered to be exosed to higher financial vulnerability compared to conventional investments that have a much

larger asset universe to invest in. His paper aimed to question this general consideration and to empirically explore

how Sharia-compliant investments performed during the last year compare to conventional investment.

(NAGAOKA Shinsuke)

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②IAS Third International Conference 2010 ―New Horizons in Islamic Area Studies: Continuity, Contestations and

the Future‖

日時:2010 年 12 月 17 日(金)~19 日(日)

場所:国立京都国際会館

ここでは「イスラーム地域研究」が为催した京都国際会議で組織されたパネルのなかで、京都大学拠

点が関わるものだけを挙げておく。

(a) Session 3A ―Islamist Discourse in Media: Papers, Computers, and Satellites‖

日時:2010 年 12 月 18 日(土) 11:30~13:30

パネル構成:

Convenor: HOSAKA Shuji (JIME Center, the Institute of Energy Economics, Japan)

Chair: TANAKA Koichiro (JIME Center, the Institute of Energy Economics, Japan)

Speaker 1: Gary R. Bunt (University of Wales, United Kingdom)

―E-jihad: a Brief History‖

Speaker 2: Zahid Munir Amir (al-Azhar University, Egypt; University of Punjab, Pakistan)

―Iqbal's Rationale of an Independent Homeland for the Muslims of South Asia‖

Discussants

HOSAKA Shuji

ABE Ruri (Sophia University, Japan)

YAMANE So (Osaka University, Japan)

概要:

このパネルはユニット 2「中道派」とユニット 3「急進派」の合同企画である。第 1 期イスラーム地域

研究ではユニット 2 とユニット 3 は個々に研究を蓄積してきた。しかし、二つのユニットは期せずして、

研究を進めるうえで重要な要素としてメディアに行きついた。これが今回の合同企画の発端である。イ

クバールと、Bunt 氏が言う現代の e-Jihad が同じ土俵の上で論じられるのはいささか奇異に感じられるか

もしれないが、メディアがイスラーム世界で持つ役割を改めて考えてみるには、極端かもしれないが、

メディアをこれくらい大きく捉えておくことも必要ではないかと思われる。

「メディアにおけるイスラミストたちの言説――出版物・コンピューター・衛星――」と題された本

セッションは、二つの発表および、各討論者らによる中東各国のメディア状況に関する報告がおこなわ

れた。まず企画者である保坂修司氏が、イスラーム世界(とりわけアラブ世界)におけるマスメディア

の発達について、とくに権力との関係に着目して概観した。一般に、マスメディアの歴史を論じる際に

は、その起源を一五世紀のグーテンベルクの印刷革命に求めることが多い。しかし、多くのアラブ諸国

では、当時の社会経済状況、権力関係などにより、印刷技術が実際に導入されるのは、それから約三世

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紀を経てのことであった。ひとたびそうした技術が社会にもたらされてのちも、多くの国々では、時々

の権力者らが、メディアを体制のイデオロギー装置として、国家の占有物とする傾向が強かった。イス

ラーム世界のメディアを考察する際には、メディアをとりまく社会状況や、権力関係といったものをよ

り詳しくみていく必要がある。

Zahid Munir Amir 氏は、パキスタンの国民的詩人であるイクバールをとりあげて、イクバールの作品が、

どのような新聞や雑誌などに発表されてきたのかを、具体的な冊子名などを挙げながら論じた。また、

イクバールの思想の一端を明らかにする目的から、彼がパキスタンの独立に対して、いかなる見解を示

していたのかを考察された。そこでは、イクバールが、早い時期からパキスタンがインドから分離独立

することを必要不可欠であると見做していたこと、さらには、そうした両者の分離が、卖にインド・パ

キスタン間で生じる感情的な摩擦問題の回避のみならず、両者間の平和構築にあたっても重要となる点

が強調された。

Gary R. Bunt 氏は、インターネットにおけるイスラーム的な言説空間(氏はこれを Cyber Islamic

Environment/CIE と呼ぶ)、とりわけ急進派による「電子ジハード (e-jihad) 」の活動をとりあげて、その

実態を論じた。報告では、はじめにインターネット空間における、イスラーム的傾向の強いホームペー

ジが、いくつかの事例とともに示された。例えば、ソーシャルネットワークサイトの大手 facebook は、

若者を中心とした言論空間を形成する傾向が強いが、それは、しばしば政治的・急進的なメッセージを

帯びた別のウェブサイトにつながっていることが多い、次に、そうした急進的なウェブサイトが作成さ

れているのは、情報統制が強いアラブ世界ではなくて、むしろイギリスのような言論が保証された空間

であるとうことが指摘された。さらに氏は、インターネット上で展開されている、イスラミストたちの

活動を、彼らが用いる様々なシンボルの提示を通じて紹介された。

以上、二つの報告に続き、討論者である山根聡氏、阿部るり氏、また司会者である田中浩一郎氏によ

り、パキスタン、トルコ、イランという三つの国のメディア状況がそれぞれ紹介された。各国のメディ

ア状況の比較を通じて得られる視点は有益であるのみならず、イスラーム世界におけるメディアの特徴

を明らかにしていくための必要不可欠な作業である。情報化が進む今日のイスラーム世界を考えるうえ

で、社会変容と密接に関わるメディアの役割を考察する意味は大きい。本セッションは、今日のイスラ

ーム世界のメディア事情を知るための有益な機会になったに違いない。

(千葉悠志)

(b) Session 8A ―Political Reform and its Aftermath in the Arab States‖

日時:2010 年 12 月 19 日(日) 14:30~16:30

パネル構成:

Convenors:MATSUMOTO Hiroshi (Daito Bunka University, Japan) & SUECHIKA Kota (Ritsumeikan

University, Japan)

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Chair: MATSUMOTO Hiroshi

Speaker 1: Raymond Hinnebusch (University of St. Andrews, UK)

―Toward a Sociology of State Formation in the Middle East‖

Speaker 2: YOSHIOKA Akiko (JIME Center, The Institute of Energy Economics, Japan)

―Progress and Challenges in the Democratization of Iraq‖

Speaker 3: SUECHIKA Kota

―If Not Authoritarianism nor Democracy, then What?: Lebanese Power-sharing Arrangements after the 2005

Independence intifada‖

Speaker 4: TSUJIGAMI Namie (Kochi Women's University, Japan)

―An Alternative to Democracy: Saudi Arabia's Strategic Policies in the Post 9.11 Era‖

概要:

ユニット 1「国際関係」と東京大学拠点グループ 2「中東政治の構造変容」の合同セッション。このセ

ッションの詳細は東京大学拠点グループ 2 の該当箇所を参照されたい。

(仁子寿晴)

(C) Session 8B ―Emerging Approaches to the Phenomena around Sufism and Saint Veneration‖

日時:2010 年 12 月 19 日(日) 14:30~16:30

パネル構成:

Convenor: AKAHORI Masayuki (Sophia University, Japan)

Chair: TAKAHASHI Kei (NIHU/Sophia University, Japan)

Speaker 1: NINOMIYA Ayako (Japan Society for the Promotion of Science (JSPS)/Kyoto University, Japan)

―Towards theoretical analysis of Tariqa: Structural Models of Tariqa in Medieval India‖

Speaker 2: Alexandre PAPAS (CNRS, France)

―Islam and Sufism in Eastern Tibet: a Minority Approach‖

Speaker 3: FUJII Chiaki (Japan Society for the Promotion of Science (JSPS)/Kyoto University, Japan)

―Successive Knowledge of the Prophet in Medical Treatment: The Case of East Africa‖

Speaker 4: WAKAMATSU Hiroki (Sophia University, Japan)

―The Ocak of Kurdish Alevis in Turkey: the Relationship between the Ritual Practice and the Veneration for the

Ehl-i Beyt‖

Discussants: Thierry ZARCONE (CNRS, France) and AKAHORI Masayuki

概要:ユニット 4「広域タリーカ」と上智大学拠点グループ 3 との合同セッション。このセッションの

詳細は上智大学拠点グループ 3 の該当箇所を参照されたい。

(仁子寿晴)

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(3)国際ワークショップ/シンポジウム・国内ワークショップ

① ユニット 1 シンポジウム

日時:2010 年 6 月 13 日(日) 13:00~17:00

場所:京都大学人間環境学研究科棟地下講義室

特別シンポジウム「パレスチナ問題とユダヤ人の起源――神話の歴史化に抗して――」

プログラム:

・基調講演1 板垣雄三(東京大学名誉教授)

「考え方の組み換えを争う場としてのパレスチナ問題」

・基調講演2 シュロモー・サンド(テルアビブ大学歴史学教授)

「ザ・ヒストリアン――記憶から神話へ――」

・パネル・ディスカッション(司会:岡 真理)

板垣雄三×シュロモー・サンド×広河隆一(Days Japan)

詳細:ユニット 1「国際関係」の大きな柱の一つであるパレスチナ問題に関するシンポジウム。今回は

イスラエル在住の歴史研究者シュロモー・サンド氏を迎え、イスラエルおよびユダヤ人の側を問いなが

らパレスチナ問題を採りあげた。サンド氏の『ユダヤ人の起源』(ヘブライ語原題は「ユダヤ人はどの

ようにしてつくりだされたか――聖書からシオニズムまで――」)が日本で発売されたのを機に、広く

社会にむけてパレスチナ問題を問う目的で開催された。なおこの催しに先立ち、6 月 7 日(月)、6 月8

日(火)、6 月 9 日(水)、6 月 10 日(木)に広河隆一監督『NAKBA パレスチナ 1948』(アーカイブ

ス版)よりサンド氏へのインタビュー部分を上映した。

(仁子寿晴)

②ユニット 1~5 合同国際ワークショップ Joint International Workshop ―Inner Ideal and Outer Movement in

the Islamic World‖(京都大学拠点と上智大学拠点グループ 3 との連携)

日時:2010 年 6 月 19 日(土) 13:00~18:50

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階会議室

プログラム:

13:00-13:10 Opening Remarks (TONAGA Yasushi)

13:10-14:40 1st session: Middle East Politics (Chair: TONAGA Yasushi)

FUKUNAGA Koichi (Sophia University)

―A Study on the Islamist View of the Era of the Early Muslim Conquests: Through the Critical Analysis of

Majmū‗a Rasā‘il al-Imām al-Sharīf Hasan al-Bannā‖

SHIMIZU Masako (Sophia University)

―Founding Hamas: The Transforming National Agenda in the Islamist Movements‖

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MIZOBUCHI Masaki (Sophia University)

―Struggle for Lebanon: How and Why does the Small State Fall into the Battlefield of the Middle East?‖

14:55-16:25 2nd Session: Islamic Thought and Society (Chair: TAKAHASHI Kei)

TOCHIBORI Yuko (Kyoto University)

―The Dialogue between Muslim and Christians: In the Case of ‗Abd al-Qādir al-Jazā‘irī‖

ISHIDA Yuri (Kyoto University)

―The Latā'if Theories in Sufi Formative Period‖

OKADO Masaki (Sophia University)

―Formation of Social Network by Upper Egyptian Construction Workers in Alexandria: Human Relationship

over Ahwa (Coffee shop) as the Base‖

16:40-18:10 3rd Session: Islam in Global Network (Chair: AKAHORI Masayuki)

ASADA Akira (Kyoto University)

―Blood and Migration: Hadhrami Network in Zanzibar, Tanzania‖

KINOSHITA Hiroko (Kyoto University)

―Islamization Led by al-Azhar Graduates in Contemporary Indonesia‖

TORIYA Masato (Sophia University)

―The Political Movement of Pashtun in the Pak-Afghan Border Area‖

18:10-18:30 Comment (Sanaa MAKHLOUF)

18:30-18:50 General Discussion (Chair: AKAHORI Masayuki)

概要:一年に二度行われる上智大学拠点と連携しての若手中心のワークショップ。このワークショッ

プの詳細は上智大学拠点グループ 3 の該当箇所を参照されたい。

(仁子寿晴)

③ユニット 5 国際ワークショップ 4th Kyoto-Durham International Workshop in Islamic Economics and

Finance ―New Horizons in Islamic Economics: Country Case Studies –Developments in Islamic Economics and

Finance (Kyoto University Global COE Program: In Search of Sustainable Humanosphere in Asia and Africa およ

び Durham Islamic Finance Programme, Durham University, UK と共催)

日時:2010 年 7 月 12 日(月)、13 日(火)

場所:School of Government and International Affairs, Durham University, UK

プログラム:

12th July 2010-Monday

11:30-11:45 OPENING REMARKS

Professor KOSUGI Yasushi & Dr. Mehmet Asutay

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11:45-12:45 KEYNOTE SPEECH

Professor KOSUGI Yasushi, ―Tasks and Prospects of Islamic Economics as a Frontier Science‖

Professor Habib Ahmed, ―Financial Crisis and Lessons for Islamic Finance‖

12:45-14:00 BREAK

14:00-15:30 SESSION I Chairperson: Professor KOSUGI YASUSHI

1.1 Rodney Wilson, ―Development in Islamic Banking and Finance in Europe and the UK‖

1.2. Mehmet Asutay, ―Political Economy of Islamic Banking and Finance in Turkey‖

1.3. NAGAOKA Shinsuke, ―Islamic Finance in Jordan: A Pioneer of an Emerging Market?‖

15:30-15:45 BREAK

15:45-17:15 SESSION II Chairperson: Professor Asyraf Wadji Dusuki

2.1. Zarinah Mohd Yusoff and Zurina Shafii, ―The Application of Bay„ al-„Inah in Malaysia‘S Islamic

Consumer Financing Products: Its Validity and the Way Forward‖

2.2. Rifki Ismal, ―Depositor‘s Withdrawal Dehavior in Islamic Banking: The Case of Indonesia‖

2.3. Rahmatina A. Kasri, ―Islamic Banking Competition: Case Study of Indonesia‖

17:15-17:30 BREAK

17:30-19:00 SESSION III Chairperson: Dr. NAGAOKA Shinsuke

3.1. Muhammad Hakimi bin Mohd Shafiai, ―A Study on the Applicability of Islamic Finance in Activating Idle

Agricultural Land in Malaysia‖

3.2. Tawat Noipom, ―Islamic Microfinance Initiative in Thailand: A Case Study on Pattani Islamic Saving

Cooperative Ltd.‖

3.3. Nazimah Hussin, ―Where is the Market for Malaysian Islamic Credit Cards Heading for After the

imposition of the Service Tax‖

13th July 2010-Tuesday

9:30-11:00 SESSION IV Chairperson: Professor Rodney Wilson

4.1. Sadiq Abul, ―Development of Islamic Finance in Kuwait‖

4.2. KAWAMURA Ai, ―Islamic Finance in Bahrain: A Missing Component in its Legal System‖

4.3. Zurina Shafii and Supiah Salleh, ―Shariah Parameter Issuance by Bank Negara Malaysia: Is It a Signal for

Forthcoming Mandatory Shariah Audit in Islamic Financial Institutions?‖

11:00-11:30 BREAK

11:30-13:00 SESSION V Chairperson: Professor Habib Ahmed

5.1. Muhammad Syahmi Mohd Karim, ―Malaysian Depositors: ―Say no to Profit-Sharing Concept in Banking

Deposits Product!‖

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5.2. Elena Platonova, ―Developments of Islamic Banking and Finance in Russia‖

5.3. Sabri Mohammad, ―Emergence of Islamic Banking in Syria: Recent Progress‖

13:00-14:30 LUNCH

14:30-16:00 SESSION VI Chairperson: Dr. Zurinah Shafii

6.1. NIk Muhamad Hafiz Nik Hassaan, ―Reconciliation of Islamic Banking and Social Banking Models in

Realizing Social and Economic Justice‖

6.2. Mohd Nizam Barom, ―Social Resposibility Dimension in Islamic Investment: A Survey of Investors

Perspective in Malaysia‖

6.3. Shifa Mohd Nor, ―Growing Demand for CSR in Islamic Banks in Malaysia‖

16:00-16:30 BREAK

16:30-18:30 SESSION VII Chairperson: Mehmet Asutay

7.1. Dian Masyita, ―A Comprehensive Concept of Waqf management: A Theoretical Approach‖

7.2. Shafi Jan, ―Conceptualising Islamic Development Process through the Actualisation of Justice‖

7.3. The Role of Iman in Islamic Development Methodology‖

7.4. Maszlee Malik, ―Pious Way to Development: Perubuhan Jamaah Islah Malaysia (JIM) and Ihsaani Social

Captial‖

18:30-18:45 Closing Remarks

概要:

Participants in this workshop were not only from Durham and Kyoto but also from Malaysia, Gulf countries,

and other parts of Britain. The participants who presented on the new academic views of Islamic Finance had a

wide variety of theses and specialized backgrounds. This workshop involved eight sessions held over two days.

Each session included an active discussion with various participants engaging in the topic.

Following the opening remarks, the first session was held with two keynote speeches. These speeches were

given by representatives from the Center for Islamic Area Studies at Kyoto University (KIAS) and the Durham

Islamic Finance Programme of Durham University. The first keynote speech was presented by Professor KOSUGI

Yasushi (Kyoto University) and Professor Habib Ahmed (Durham University). Professor KOSUGI discussed the

historical developments of Islamic economics, beginning with the Manar school trends in the nineteenth century.

He explained Islamic economics had entered the academic field as a new science. As Islamic economic theory and

framework for analysis is currently at a developing level, he mentioned some topics that would be focused on in the

future, for example, legal disputation, Waqf, and the environmental industry.

The next speaker was Professor Habib. He described the process of how the financial crisis had been caused

on three levels: regulation, organization, and product. He pointed out that the financial crisis could have been

avoided from an Islamic financial point of view. He then mentioned that the future issues of Islamic finance would

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be related to financial stability, learned from the lessons of the financial crisis.

The first session clarified the current conditions and issues of Islamic finance in Europe, Turkey, and Jordan.

Professor Rodney Wilson presented on the performance of Islamic banks performance in the UK and the status of

Islamic banks from the Gulf countries business in Europe. He introduced wealth management that applied Islamic

finance in Geneva. He then discussed the future perspective of Islamic banking in Europe. Dr. Mehmet Asutay

presented on the trends and development of Turkey‘s Islamic banks. He pointed out that Islamic banks are not

understood in terms of Islam, because of the Turkish nationality and their assigned character of ―Anatolian

Calvinism‖ has been avoiding the real understanding. He also painted a picture of the political composition, as the

government is willing to increase its national income by promoting foregn investment and it is targeting Islamic

banking as one of the industries that will fulfill its political needs. The third speaker, Dr. NAGAOKA Shinsuke,

presented on the Jordanian Islamic finance historical developments. He pointed out that Islamic finance in Jordan

continues to be an emerging market even though its business began early on.

The second session strove to find a solution to manage the Islamic financial market in a reasonable way.

Zarinah Mohd Yusoff presented on the issues of the legal interpretation of Bay„ al-„Inah. She argued that, rather

than applying Bay„ al-„Inah, it would be preferable to apply Tawaruq. Next, Rifki Ismal presented an analysis of the

withdrawal behavior of Islamic banking depositors in Indonesia using chronological data and a statistic model.

Rahmatina A. Kasri discussed the competition of the market had been high competitive in the Indonesian market.

The third session explored the new Islamic financial market in Malaysia and Thailand. Muhammad Hakimi

bin Mohd Shafiai discussed how Islamic finance could be used to activate idle agricultural land in Malaysia by

using Muzara„a and Musaqat. Nazimah Hussin presented her survey on Islamic and conventional credit cards in

which she investigated users and other related parties. The last speaker, Tawat Noipom, discussed the circumstances

of Islamic Micro Finance Institutions (IsMFIs). He noted that IsMFIs valid as Muslims in Thailand are politically

and economically week.

On the second day of the workshop, the forth session deals with issues of the Islamic financial system in

Kuwait, Bahrain, and Malaysia. Sadiq Abul explained the role of the Economic Research Department of Islamic

Banking (ERDIB) in Kuwait. He discussed the importance of realizing the ERDIB. KAWAMURA Ai presented on

the historical background of Islamic finance in Bahrain. She discussed the legal system of Bahrain Islamic finance,

which needs to be improved. Next, Zurina Shafil introduced the Sharia audit in the Islamic financial institution in

Malaysia. She noted that the guidelines for the Sharia audit.

The fifth session explored the current situation of Islamic finance in Malaysia, Russia, and Syria. Muhammad

Syahmi Mohd Karim had analysed customer attitude in regard to Islamic financial products and discussed the

importance of accountability for Islamic banks. The second speaker, Elena Platonova, presented on the current

situation of Islamic banking in Russia using the cases of Waqf and Zakat. She noted that the future prospect of the

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Islamic financial market in Russia has high potential. Sabri Mohammad presented a general view of the historical

development and clarified that many foreign Islamic banks had taken part in the Syrian market. He also noted that

the Islamic banking market has benn expanding.

The sixth session examined Islamic finance from a social perspective. Nik Muhamad Hafiz Nik Hassan

presented the reconciliation of Islamic finance and social economic justice, discussed the difference in charity bank

and social banks, and clarified the features of Islamic social banks. He then discussed how business should deal

with social ethics and the environment. The next speaker, Mohd Nizam Barom, presented the social responsibility

dimension in Islamic investment. He described the importance of Islamic investment in promoting social ethics on

the basis of his survey. Shifa Mohd Nor explained that the expectation of Islamic financial institutions to apply

Corporate Social Responsibility (CSR) is increasing in Malaysia. Therefore, Islamic financial institutions will need

to consider charity, charitable work, opening charitable accounts and the environment in the future.

The seventh session explored the conceptual and philosophical perspective of Islamic finance. Dian Masyita

examined the component of Waqf from the historical transition of the concept in order to capture its characteristics.

Shafiullah Jan presented on justice in Islam. Islam is to move from the darkness to the light ―Noor.‖Any factor that

gets into the processes of ―Noor‖ is considered ―Zulm,‖ and must be removed as part of Islamic justice. Nazim

Zaman presented the role of Iman by structuring the integrated model that shows that Iman and trust are necessary

for the stability of society and that each of the parties is interrelated with Iman. Maszlee Malik presented the

ontological concerns of social capital and described Islamic social capital in terms of the case of Perubuhan Jamaah

Islahh Malaysia.

Each session had active discussion and comments from the floor, which provided ample feed back to the

participants. Because we hosted participants from various academic fields and countries, it was a great opportunity

to see how Islamic finance has been developing as a new frontier science.

(KAWAMURA Ai)

④ユニット 1~5 合同国際ワークショップ ―Technology, Economics and Political Transformation in the Middle

East and Asia‖ (Humanosphere: In Search of Sustainable Humanosphere in Asia and Africa (G-COE)、 Conflict,

Collapsed State, and Social Movements in the Contemporary Middle East and Asia (Grant-in-Aid forScientific

Research(A), JSPS: Tokyo University of Foreign Studies) と共催)

日時:2010 年 10 月 9 日(土) 10:00~18:15、10 日(日) 10:00~17:30

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階会議室

プログラム:

The Day 1st: 9th October 2010

10:00 - 10:30 OPENING REMARKS

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Prof. Keiko SAKAI (Kyoto University)

Prof. Yasushi KOSUGI (Tokyo University of Foreign Studies)

10:30 - 12:30 SPECIAL LECTURE by Dr. Tourya Guaaybess (Blaise Pascal University)

―Transnational TV in Arab countries: Geographical Considerations‖

12:30 - 13:30 LUNCH

13:30 – 15:45 SESSION 1

1.1. IMAI Shizuka (Kyoto University)

―Jordanian Iraqi Relations: A Historical Review‖

1.2 Nicolas BALLESTEROS (TUFS)

―Implications of the International Court of Justice Statement about Kosovo ―non Illegality‖ in a Local, Regional

and International Level‖

1.3. CHIBA Yushi (Kyoto University)

―Changing Media Landscape in the Arab World after the 1970s‖

15:45 -16:00 BREAK

16:00-18:15 SESSION 2

2.1. Omed Ghyar (TUFS)

―The Prospect of the Application of Federalism in Iraq post 2003 ―

2.2. Parwana Paikan (TUFS)

―Afghanistan Parliamentary Electoral System‖

2.3. Ascana GURUSINGA (TUFS)

―Post-Conflict Peacebuilding in Aceh: The Process in Sustaining Peace after the Signing of Memorandum of

Understanding 2005‖

Day 2nd : 10th October 2010

10:00 - 12:15 SESSION 3

3.1. KAWABATA Aruma (Kyoto University)

―The Emergence of Global Halal Food Market: A Preliminary Survey‖

3.2. INOUE Takatomo (Kyoto University)

―Concepts and Activities of ―Islamization of Science‖: Capturing the Overview through Classification of the

Tendency‖

3.3. SUNAGA Emiko (Kyoto University)

―Mapping the Urdu Literature in Contemporary Pakistan‖

12:15-13:15 LUNCH

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13:15-15:30 SESSION 4

4.1. Maryam Shariatzadeh (TUFS)

―Post Revolutionary Transformation in Iranian Women Movement‖

4.2. HAGIHARA Jun (Kyoto University)

―Change and Tradition of Saudi Society‖

4.3. HIRAMATSU Aiko (Kyoto University)

―Where should Kuwait‘s Oil Wealth be Invested? : Islamists' Demands in Kuwaiti National Assembly‖

15:30 -15:45 BREAK

15:45-17:15 SESSION 5

5.1. KAWAMURA Ai (Kyoto University)

―Systematic Development of Islamic Finance in Bahrain‖

5.2. Muhammad Hakimi (Kyoto University)

―Islamic Agricultural Finance in Malaysia: Prospects and Challenges‖

17:15-17:30 CLOSING REMARKS

概要:

東京外国語大学と共催で年二回行われる若手研究者中心の国際ワークショップのうちの一つ。

本ワークショップでは、2 日間にわたり、基調講演および 5 つのセッションという構成で行われた。冒

頭では、フランスのアラブ・メディア研究者である Tourya Guaaybess 博士(Blaise Passcal University)に

より、基調講演として近年のアラブ世界を理解するうえで極めて重要な意味をもつと考えられる衛星放

送の問題が論じられた。講演の内容は、大きく「理論の部」と、「分析の部」の 2 つに分けられる。(1)

理論の部では、20 世紀半ば以降の国際コミュニケーション理論の変遷が紹介されたのち、1990 年代半ば

に Sinclair らにより提唱された「中間理論」に基づき、アラブ世界のメディアを、「国際レヴェル」、「地

域レヴェル」、「ローカル・レヴェル」の 3 層において考察していくことが、同地域のメディアをよりよ

く理解するために有用のみならず、不可欠であることが述べられた。(2)分析の部では、こうして示さ

れた「国際レヴェル」「地域レヴェル」「ローカル・レヴェル」の 3 層から、今日の情報化の動態として

具体的事例が示され、そうした新たなテクノロジーの登場がもたらした変化に対して、権威为義的とい

われるアラブ世界の諸国家がいかなる対忚を試みているのかについても論じられた。多くの国家は、衛

星放送という超領域的なメディアの登場に対して、「衛星受信機の禁止」、「検閲」、「国家間協定を結ぶ」

などして、対忚しようと試みている。同時に、今日ますます商業色を強めるアラブ・メディアの登場は、

既存の国家の思惑を超えて、新たな社会的・政治的状況の創出に深く関わっている。講演後の質疑忚筓

では、(a) 新たなメディアの出現が、それまでの対面的なコミュニケーション体系にいかなる変容を与え

ているのか、(b)テレビとインターネットの関係、(c)衛星放送やインターネットなどの登場と、政治的

運動(あるいは動員)とがいかなる関係にあるのか、(d)メディアの内容に、宗派性・党派性などがど

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のように反映されているのか(あるいはいないのか)などの問いをめぐって活発な議論がおこなわれた。

(千葉悠志)

第 1 セッションの冒頭では、今井静氏(京都大学)によって、1920 年代から 1950 年代までのヨルダン

とイラクの 2 国間関係についての発表がおこなわれた。これら 2 カ国がハシミテ王国から派生し、周辺

のアラブ諸国との関係を構築しながら、互いの関係を深化させていった歴史的経緯が論じられた。続い

て、Nicolas Ballesteros 氏(東京外国語大学)は、国際司法裁判所(ICJ)が、コソボの独立を合法とする

判決を出したことから、オスマン帝国領の一部であったコソボがセルビアをはじめとするヨーロッパ諸

国との関係が変容していったことを取り上げて論じた。本セッションの最後の発表者である千葉悠志氏

(京都大学)は、20 世紀半ば以降のアラブ諸国における情報秩序を、そのなかで中心的な役割を担って

いたエジプト・メディアを中心に概観したのち、とくに 70 年代以降が、周辺のアラブ諸国が通信社の設

立やテレビ放送の国有化など、次々とメディアの自国化を進めた「情報上の独立期」であったことを論

じた。

(川村藍)

第 2 セッションでは、東京外国語大学の学生 3 人によるプレゼンテーションが行われた。1 人目の発表

者である Omed Ghyar 氏(東京外国語大学)は、アメリカとの戦争後のイラクでクルド人がなぜ独自のア

イデンティティを強調しながらも重要な地位を占めることができたのか、また戦後の連邦制の中で成功

することができたのかについて、歴史的背景をもとに発表した。これに対して、参加者からは連邦制と

いう用語の妥当性やクルド地域の自立性について、国内的な文脈のみならずイランやトルコの影響を考

慮すべきとの意見が出された。2 人目の発表者である Parwana Paikan 氏(東京外国語大学)は、2005 年の

アフガニスタンにおける議会選挙についての調査結果から、有権者の間でエスニック・グループ、宗教、

部族的な区別に基づく投票行動が見られたことや、現在の選挙制度は和平継続や民为为義の促進よりも

現状への対忚を志向したものであることを明らかにした。3 人目の発表者である Ascana Gurusing 氏(東

京外国語大学)は、インドネシア・アチェ州における紛争解決について、2005 年にヘルシンキで締結さ

れた和平協定が和平状態の継続にどのような役割を果たしているのかについて報告を行った。

(今井静)

第 3 セッションでは、川畑亜瑠真氏(京都大学)による「グローバル・ハラール市場の登場」、井上貴智氏

(京都大学)による「科学のイスラーム化の概念と活動」、須永恵美子氏(京都大学)による「現代パキスタン

におけるウルドゥー文学のマッピング」という 3 つの報告がなされた。川畑氏の発表では、現代におけるハラ

ール食品をめぐる市場の形成について、マレーシアを事例とした報告がなされた。マレーシアは、多くのムス

リム人口を抱える多民族国家である。本発表の冒頭で、川畑氏は、1960—1970 年代に加工食品の普及や食料輸

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送技術の発展を背景として、グローバルな食品市場が形成されはじめたことを指摘した。その後、非ムスリム

諸国から多くの食品が輸入されるような状況が生じたため、1980 年代には食品がハラール(イスラーム法にお

いて許されたもの)であるかについての関心が高まった。このような現象について、本発表では、とりわけ、

ハラール食品の認証ロゴの登場、食品の宣伝に使われるキャッチフレーズの変遷に着目した分析を試みている。

ハラール認証制度は 1970-1980 年代にかけて登場するが、このような制度は、食料品の輸入が増加したことによ

って、「顔の見えない生産者」の生じたことがその発端になっていると考えられる。さらに、食料品の広告に用

いられるキャッチフレーズに注目してみると、1970 年代には「健康」といったフレーズが为に用いられてきた

が、近年では「ハラール」「タイイブ(善い)」といったフレーズが多く用いられているという。質疑忚筓では、

東单アジアにおけるイスラーム復興運動など、食品市場以外の政治・社会的な背景と連動させた分析が有効な

のではないか、ハラール市場はムスリムが多く居住する国だけでなく、むしろヨーロッパ諸国などムスリムが

尐数派である地域において重要である、ハラール食品市場は中東諸国ではどのような展開をみせているのか、

といった議論が展開された。井上氏の発表では、「科学のイスラーム化」という概念を提示するために、このよ

うな为張および活動の傾向における3つの傾向を示し、それらの比較・検討の試みがなされた。本報告は、「科

学のイスラーム化」には、「ネオ・ムゥタズィラ派」傾向、「忚用スーフィズム」傾向、「イスラーム文明復興運

動」傾向という 3 つの傾向があることを提示する。そして、自由意志、タウヒード、西洋的近代、政治的側面、

宗教と哲学の関係という5つの問題に対して、それぞれどのような立場に立っているのか、比較検討がなされ

た。質疑忚筓では、「科学のイスラーム化」をどのように定義すべきか、ここでいう 3 つの傾向がどのように選

択されたのか、といった質問がなされた。それに対して発表者は、一人の思想家に対して一つの傾向、あるい

は一つの学派に対して一つの傾向があるのではなく、これらの思想家や学派はいくつかの傾向を持っているこ

と、そして「科学のイスラーム化」を定義づけるために、これらの傾向の整理を行うことによって「科学のイ

スラーム化」の全体像を描くことが目的であった、といった返筓を行った。また、このような動きが生じた社

会的背景は何かといった議論もなされた。須永氏による発表では、独立以降のパキスタンにおける文学作品の

年代別の傾向や、近年のメディア技術の発展に伴う文学を発信/受信する媒体の多様化に関する報告がなされ

た。パキスタンでは、ウルドゥー語がイスラームを理解するための媒介言語として機能し、ウルドゥー語とい

う言語が持つ政治的な意義は非常に大きかった。本発表では、独立以降のウルドゥー語を媒介とした様々な文

学作品を提示し、1970—1980 年代には「イスラーム文学」が数多く発表されたこと、1990 年代以降は、パキス

タンの民为化とその停滞などを背景に、文学作品を発表する媒体の多角化と共に作品の内容そのものも多角化

するといった現象がみられることを指摘した。本セッションでは、東单アジアや单アジアといった中東以外の

ムスリム諸国における、ハラール食品市場の台頭、「科学のイスラーム化」運動、文学とイスラームをめぐる状

況といった、イスラーム復興運動の幅広い側面に関する報告がなされ、今日のイスラーム化の地域的・分野的

広がりを示すセッションとなった。

(平松亜衣子)

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第 4 セッションでは、はじめに、Maryam Shariatzadeh 氏(東京外国語大学)によって、「革命後のイラ

ンにおける女性運動の変容」と題された発表がおこなわれた。発表では、「なぜ革命後のイラン女性運動

は、改革为義者と近代为義者の間でギャップがあるのか」という問題が問われた。このイランのきわめ

て現代的な問題に対して、報告者は「Zana(Women)」という雑誌を取り上げ、この雑誌の中で取り上げ

られている議論の変化について、実証的に分析を行った。この発表に対し、「女性を研究することの意義」

や、イラン研究全般に関わる「革命」という時代区分を研究に用いることについて、さらに、「イスラー

ム为義者」「反宗教的」「セキュラリズム」といった用語の使用法に対する議論が投げかけられ、活発な

議論が交わされた。次に、萩原淳氏(京都大学)によって、「サウジ社会における伝統と変容」と題され

た発表がおこなわれた。発表では、サウジ社会がどのように変化していたのか、伝統と進化を明らかに

することが目的とされた。ファイサル国王の为導のもと、「西洋化をともなわない近代化」を掲げてきた

サウジアラビアは、一定程度その成功を収め発展を遂げてきた。発表では、まずアラビア語、部族社会、

イスラームという、サウジアラビアの根幹を成す 3 要素について、それぞれ詳細な検討がなされたあと

で、経済発展に議論が進んだ。長年の現地経験に基づいた、インターネットや携帯電話の使用状況、情

報化・通信技術の向上による若年代の変化、土地計画など、幅広くさまざまなサウジ社会について説明

がなされた。この発表に対し、アラブの部族の起源や定義について、また原典や研究資料についてなど

の質疑が交わされた。最後に、平松亜衣子氏(京都大学)による、「クウェートの石油へはどこで投資さ

れるべきか-クウェート国民議会におけるイスラーム为義者の需要」と題された報告では、クウェート

の投資に伴う「シャリーア・コンプライアンス」の議論について、クウェート投資局に着目して分析さ

れた。これに対し、コメンテーターとはイスラーム为義者のほうから投資を促進させるような動きがあ

るのかなど、込み入った議論が交わされた。

(須永恵美子)

第 5 セッションでの報告は、イスラーム金融にかんして 2 つの報告がなされた。第 1 の報告は、川村

藍氏(京都大学)による、バハレーンにおけるイスラーム金融の歴史的な展開、現在の状況、法律体勢、

そして現在抱えている問題にかんしての報告であった。歴史的展開について、70 年代にレバノン内戦の

影響でベイルートからイスラーム金融の拠点が移動してきたことで盛んになったことが述べられた。ま

た 80 年代には多国籍企業のイスラーム金融部門の進出があったと報告された。現在では、完全なイスラ

ーム銀行、従来の方式の銀行、多国籍企業のイスラーム金融部門の 3 種類銀行があり、イスラーム金融

の取引額は全体としては尐ないものの、年々増加している。法律体系、現在の問題にかんしては、法的

処理より仲裁が問題であることに言及された。第 2 の報告では、Muhammad Hakimi 氏(京都大学)によ

って、マレーシアにおいてイスラーム金融に基づく農家への融資をいかにすべきかという報告がなされ

た。農家は融資を受けることが多い一方で、すべてのイスラーム銀行が必ずしも農業セクターに融資し

ているわけではないという現状が述べられた。そこで、有効なシステムを考案しイスラーム金融に基づ

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く農家への融資を促進させていくべきであると为張がなされた。そこで本報告では、さまざまなイスラ

ーム金融の理論を合わせながら用いて、4 種類の農業金融のモデルが提示された。この報告に対して、他

の地域に適用できるような汎用的な議論であるのかという質問、農業融資にイスラーム金融が必要であ

るのかといった質問が出された。

(井上貴智)

⑤ユニット 3 国際ワークショップ International Workshop ―Media in the Middle East: Latest Issues‖

日時:2010 年 10 月 16 日(土) 13:30~18:00

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階第1講義室(AA401 号室)

プログラム:

13:30-14:00 OPENING REMARKS

KOSUGI Yasushi(Professor,Kyoto University)

14:00-14:45

SPEAKER 1. Tourya Guaaybess (Visiting Associate Professor, Kyoto University)

―Egypt channels must enter the Arab transnational broadcasting arena, or die: the case of Nile TV international‖

14:45-15:30

SPEAKER 2. HOSAKA Shuji (Senior Research Fellow, Assistant Director, JIME Center, the Institute of

Energy Economics, JAPAN)

―Middle Eastern Cyberspace: A New Public Sphere or the Wild East?‖

15:30-15:45 BREAK

15:45-16:30

SPEAKER 3. ABE Ruri(Lecturer, Sophia University)

―Media, Islam and Gender in Turkey‖

16:30-17:15

SPEAKER 4. CHIBA Yushi (Ph.D Student, Kyoto University)

―Arab Terrestrial Nework in the Satellite Era: The Case of Media City‖

17:15-18:00 DISCUSSION

概要:

「情報化社会」の呼称が定着して久しいが、中東における社会・政治・文化などを理解するうえでも、

その変容・発展と深く結びついているメディアの分析は不可欠であるといえる。とくに出版、ラジオ、テ

レビといったマスメディア、そしてインターネットのような双方向メディアの分析は、既存の中東地域研

究において新たな視座をもたらす可能性を秘めている。その意味で、「中東におけるメディア――研究の最

前線――」(Media in the Middle East: Latest Issue)と題された本ワークショップは、今日の中東メディア事情

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を知る機会を提供し、さらに発表者・参加者らの知を結び付けるメディア(媒体)の役割を果たしたに違

いない。ワークショップの冒頭では、司会者である小杉泰氏により、本ワークショップの趣旨説明がおこ

なわれ、中東におけるメディアの歴史が通観されるとともに、今日の中東社会を理解するうえでのメディ

アの重要性が力説された。次に 4 名の報告者により研究報告がおこなわれ、最後に総合討論がおこなわれ

た。以下、各報告および総合討論の内容要約をおこなう。

最初の報告者である Tourya Guaaybess 氏は、1993 年に開始されたエジプトの衛星放送チャンネル Nile TV

を、競争が著しい近年のアラブ世界のメディア市場のなかに位置づけながら分析をおこなった。エジプト

は 19 世紀末のナフダ以降、こと放送分野に限って言えば 20 世紀半ば以降に、アラブ世界で中心的な役割

を果たしてきた。しかしながら、1990 年代以降にサウディアラビアやレバノンの私有系放送局、あるいは

カタルのアルジャジーラ放送といった放送局が台頭してくるなかで、エジプトは次第に放送分野における

プレゼンスを喪失せざるをえなくなった。エジプト政府は他の有力な衛星放送局に遅れをとっている

NileTV に対して、いかなる改革を試み、そしていかなる困難に直面しているのか。この問題に対して、

Guaaybess 氏はとくにエジプトのテレビ放送がかかえる国営体質やその経路依存性が、放送内容自体を刷新

するにあたっても大きな障害となっていること、そして他の有力な放送局が、ある特定の国の視聴者のみ

ならず、広くアラブ世界の視聴者をも対象としているのに対して、エジプトの NileTV が、放送内容やその

表象からも、いまだナショナル・メディア的な性格が強いことを指摘した。2009 年、NileTV は、「新たな

放送局として生まれ変わる」ことを目指して、それまでの総合的な番組編成から、ニュース番組に特化し

た放送へと移行した。しかし、本報告からは、今日ますます商業为義的な傾向を強め、より魅力的なテレ

ビ放送が増えつつあるなかで、国営体質を抜け切れないエジプトの放送局が直面している極めて深刻な問

題が浮き彫りとなった。質疑忚筓では、通常、マス・メディアが商業的な傾向を強めると、娯楽番組を多く

放送する傾向が強くなるにもかかわらず、なぜ NileTV はニュース番組へと内容を特化させたのか、という

質問がなされたが、この問題については、今日の中東地域における衛星放送番組の、役割文化・細分化状

況について見て行く必要があることが示唆された。

二人目の報告者である保坂修司氏は、今日のイスラーム世界における電子メディアをめぐる状況を概観

したのち、とくにイスラーム为義者らによってインターネット(サイバースペース)をどのように利用し

ているのかを論じた。保坂氏は報告の冒頭で、一般のメディア利用者から見た場合に今日の生じているメ

ディアの変容が、いかなる意味を持つのかを述べた。一例を挙げると、Brill 社から出版されていた

Encyclopedia of Islam や Index Islamicus などは、以前では紙媒体でのみ閲覧が可能であったが、それらは近

年では同社のホームページ上で閲覧が可能となっている。すなわちインターネットの登場は、紙媒体の文

献を持つことの意味が何かという問いを改めて利用者に提起しているといえる。また、今日のイスラーム

とインターネットをめぐる問題については、9.11 以降、インターネット上に設置された言論フォーラムが、

言論の自由が抑圧されている権威为義政権下にあるとくに若者たちにとっての、議論の場として機能して

いる状況が述べられた。ただし、そうした空間は、ハーバーマスが想定したような理性的な議論が交わさ

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れる市民的公共圏とは大きく様相を異にしている。それは、急進的な傾向を有するイスラーム为義者らが、

その言論活動を欧米や自国政府の監督が屈き難い「避難所」へと移し、そうした活動を積極的に展開して

いる状況が顕著であるためだ。さらに、報告ではインターネットという非物理的な空間での活動が、しば

しば実際の物理的な空間と接続的であることも論じられた。本報告は、新たなメディアの可能性を示唆す

るものであると同時に、現時点におけるそれら新たなメディアの貟の側面についても言及するものであっ

た。

三人目の報告者である阿部るり氏は、トルコにおけるイスラーム系メディアが、ムスリム女性(具体的

には氏の調査地となったトルコ单東部に位置するアンテップの女性)のアイデンティティ形成にどのよう

に関係しているのかを考察した。報告の冒頭では、トルコにおけるメディア状況、およびイスラーム系メ

ディアの展開が概観された。トルコでは 1968 年にテレビ放送が開始され、近代的・欧米的価値観を強く反

映した番組が放送されてきた。そこでは、「政府の文化」が「中心文化」と看做される一方で、Arabesk/ Yesil

Cam と言われるような「実際の文化」は「周辺の文化」として位置づけられるというねじれの構造が存在

してきた。こうした状況に変化が現れてくるのは 1990 年代以降のことである。1991 年に衛星放送を経由し

て、ドイツからトルコ語放送がおこなわれるようになって以降、私有放送局が増加した。また、イスラー

ム系メディアと呼ばれる、イスラーム的な番組を多く放送する放送局も急速にその数を増やし、それらの

メディアは、これまで「周辺の文化」として位置づけられてきた文化に、代替的な言説空間を付与するも

のとなった。こうしたメディアの変化は、社会的にも地理的にも「周縁」と位置づけられてきた、アンテ

ップのムスリム女性に対しても、大きな変化をもたらした。つまり、近年のメディアの発達は、彼女らに

それまでの「世俗的=政府=中心文化」とは異なる、イスラームについて語れる代替的な空間を付与し、

また「周縁」である自らのアイデンティティを再肯定すること、さらには国家の境界線を越えて、トルコ

人ムスリムの想像された共同体を共有せしめることに資するものとなった。本報告後には、イスラーム系

メディアへの資金提供元について、あるいはトルコのメディアと、アラブ世界におけるメディアにおける

イスラーム的番組/世俗的な番組の違いになどついて、質疑忚筓がおこなわれた。

四人目の報告者千葉悠志氏は、1990 年代以降のアラブ世界における衛星放送に焦点をあてて、その変容

をとくに地理的な側面から考察した。上述のとおり、多くのアラブ諸国では今なお言論の自由が抑圧され

ている国が多い。そのため、1990 年代以前のアラブ世界には、比較的「自由」な報道をおこなうためには、

その報道の拠点をアラブ域外に移すことが必要であるという前提が存在してきた。具体的には、1970 年代

半ば以降のシャルク・アウサトや、アルハヤート、またクドゥス・アラビーなどの、「汎アラブ新聞」がそ

うであったし、またそうした傾向は、衛星放送が登場した 1990 年代の半ばまで踏襲されていた。つまり、

アラブ域内に拠点を置く国有メディアと、アラブ域外に拠点を置く私有メディアという二重構造が、アラ

ブ・メディアには存在した。しかしながら、2000 年代以降に、それまでアラブ域外に拠点を置いていた为

要なメディア企業(たとえば、MBC や ART、また Orbit など)が、次第にアラブ域内へとその拠点を移す

傾向が顕著になり、アラブ・メディアをめぐり地理的な二重構造が消失していった。報告ではこうした地

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理的な変容が明らかにされたが、さらにそうした変容を生じさせた理由が大きく以下の 2 点から説明され

た。1 点目は、96 年に設立されたアルジャジーラ放送がアラブ域内において、尐なからず報道の自由を獲

得することができる先例的な役割を果たしたことであり、2点目は2000年代以降の衛星放送局急増に伴う、

メディア市場の寡占化および商業为義化の強まりであった。さらに、報告では 2000 年代以降に急増しつつ

ある放送局がそれらの拠点を置いているメディア・シティについても論じられ、今日のメディア・シティ

の建設が、アラブ・メディアの多様化・商業化を加速させるものとなっていることが述べられた。報告後

には、地理的な二重性の解消においては、アルジャジーラの意義よりも、むしろ経済的な要因により焦点

をあてて検討を進めていくべきではないかとのコメントが寄せられた。

これに続き、総合討論がおこなわれ、そこではとりわけアルジャジーラの問題、および商業的な傾向を

強める今日のアラブ・メディア(とくに衛星放送)についての議論が中心となった。今日の放送局の多く

は、強まりくる商業为義的傾向のなかにあり、ますますポピュリスト的な傾向を強めつつあるのではない

かとの疑問が提起され、これについて活発な議論がおこなわれた。

(千葉悠志)

⑥ユニット 1 共催ワークショップ「いま、「中東和平」をどう捉えるか――パレスチナ/イスラエル問題

の構図と展開――」(次世代ワークショップ/2010 年度 第 11 回パレスチナ研究定例研究会)(TIAS グル

ープ 2「中東政治の構造変容」为催、地域研究コンソーシアム(次世代支援プログラム)、KIAS ユニット

1「国際関係」、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所基幹研究「中東・イスラーム圏におけ

る人間移動と多元的社会編成」共催)

日時:2011 年 1 月 22 日(土) 14:00~18:00、23 日(日) 10:00~16:00

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階会議室

プログラム:

第一日目(シオニズムの世界観とパレスチナ) 2011 年 1 月 22 日(土)14 時-18 時

司会:今野泰三(大阪市立大学文学研究科博士後期課程)

14:00-14:10 趣旨説明 長沢栄治(東京大学東洋文化研究所教授)

14:10-15:20 報告:鶴見太郎(日本学術振興会特別研究員)

「「ユダヤ的かつ民为的国家」の起源・序説――シオニストのパレスチナ/イスラエル紛争観をめぐ

って」

コメンテーター:西村木綿(日本学術振興会特別研究員/京都大学大学院人間

・環境学研究科博士後期課程)

15:20-16:30 報告:池田有日子(京都大学地域研究統合情報センター研究員)

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「中東和平をめぐる新たなパースペクティブ構築のための試論―1920 年代から 1940 年代に至るアメ

リカ・シオニスト運動における「パレスチナ」をめぐる議論を通じて―」

コメンテーター:役重善洋(京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程)

16:30-17:40 報告:細田和江(中央大学政策文化総合研究所準研究員)

「『ユダヤ人』への挑戦:『カナン運動』とシオニズム」

コメンテーター:菅瀬晶子(総合研究大学院大学 学融合推進センター特別研究員)

17:40-18:00 総合コメント:赤尾光春(大阪大学人間科学研究科特任助教)

第二日目(パレスチナ/イスラエルにおける土地と経済をめぐる政治)2011 年 1 月 23 日(日)10 時

-16 時

司会:鶴見太郎(日本学術振興会特別研究員)

10:00-10:05 挨拶:錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教)

10:05-11:15 報告:飛奈裕美(日本学術振興会特別研究員)

「オスロ合意以後のエルサレムにおける空間のコントロールをめぐるポリティクス」

コメンテーター:高岩伸任(一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程)

11:15-12:25 報告:吉年誠(一橋大学社会学研究科)

「イスラエルにおける土地制度改革を巡る議論から」

コメンテーター:今野泰三

12:25-13:30 昼食休憩

13:30-14:40 報告:岩浅紀久(IT エンジニアリング研究所研究員)

「パレスチナ西岸地区における中小零細企業実態調査報告」

コメンテーター:鈴木啓之(東京大学大学院総合文化研究科博士前期課程)

14:40-15:10 総合コメント:錦田愛子

15:10-15:40 総合議論

15:40-16:00 総括:臼杵陽(日本女子大学文学部・同大学院文学研究科教授)

概要:このワークショップの概要に関しては東京大学拠点グループ 2 の該当箇所を参照されたい。

(仁子寿晴)

⑦ユニット 1~5 合同国際ワークショップ ―Science, Institutions and Identity in the Middle East and Mulim‖

(東京外国語大学・文部科学省世界を対象としたニーズ対忚型地域研究推進事業「中東とアジアを繋ぐ

新たな地域概念・共生関係の模索」と共催)

日時:2011 年 2 月 12 日(土) 11:00~17:50、13 日(日) 10:00~18:00

場所:東京外国語大学府中キャンパス研究講義棟 4 階 401-3

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プログラム:

Day 1, February 12

11:00-11:10 OPENING REMARKS: Prof Sakai (TUFS)

11:10-12:40 KEYNOTE LECTURE

Prof. Nabil al-Tikriti (University of Mary Washington)

―The State of Middle East Studies in the American Academy‖

14:10-15:50 SESSION 1

INOUE Takatomo (Kyoto University)

―Practical Activities for Islamization of Science: Cases of IIIT andInstitute of Islam Hadhari‖

KAWAMURA Ai (Kyoto University)

―Civil Disputes in Islamic Finance: A Study on Double Legal Constraints between the Islamic and the Western‖

16:10-17:50 SESSION 2

Patrick Mason (TUFS)

―Webs of Contention: A network-based analysis of the insurgency in Afghanistan‖

HAGIHARA Jun (Kyoto University)

―Development of Saudi political institutions and governmental structure‖

Day 2, February 13

10:00-12:30 SESSION 3

IMAI Shizuka (Kyoto University)

―Jordanian Iraqi Trade in the 1980s: Reflection on Internal and External Factors‖

Muhammad Duhoki (TUFS)

―The Kurdish ethno-nationalism and Identity in Turkey‖

MASHINO, Ito (Keio University, Graduate School of Letters)

―Nation-Building and the Development of Iraqi Identity under Monarchy‖

12:30-14:00 LUNCH

14:00-15:40 SESSION 4

KAWABATA Aruma (Kyoto University)

―Islamic Law and Modern Methods of Slaughtering: A study of Halal Meat‖

Muhammad HAKIMI (Kyoto University)

―Farmers‘ Life in Malaysia and their Land Use Problems: Can Be an Islamic Solution?‖

16:00-16:50 SESSION 5

Ladislav Lesnikovski (TUFS)

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―The politics of Muslim identities in the Balkans‖

Nicolas Ballesteros (TUFS)

―The Roma minority: Analysis of the exclusion in the post-conflict Kosovo (1999 - 2009)‖

17:40-18:00 CLOSING REMARKS

Prof. Yasushi Kosugi (Kyoto University)

概要:

④と同様、東京外国語大学と共催で行う若手研究者中心の国際ワークショップ。

本ワークショップではナビール・アルティクリーティ博士(米メリーワシントン大学)を迎え、2 日間

で 5 つのセッションが組まれた。まず、ナビール博士による基調講演では、米国の中東研究が 1960 年代

からオリエンタリストが台頭したことを契機とし、1980 年代から 1990 年代にかけて中東研究が急速に拡

大してきた反面、米国の政策方針と反する中東研究が逆境に立たされた背景や 2001 年以降中東研究の需

要が大幅に増えたとする一連の潮流について説明された。

第 1 セッションでは、科学のイスラーム化とイスラーム金融に関する発表がなされた。最初の報告で

は、「科学のイスラーム化」に大きく財献している International Institute of Islamic Thought (IIIT)とマレー

シア国民大学の Institute of Islam Hadhari の方針や活動を紹介し、「科学のイスラーム化」の現状を報告し

た。次の報告は、イスラーム金融における民事紛争が、西洋法の法制度とイスラーム法の法制度という

二つの法制度が同時に適用される状態にあることを、バハレーンの金融法制度の事例として示した。

第 2 セッションでは、2 つのアフガニスタンとサウディアラビアに関する発表がなされた。最初の発表

は、アフガニスタンで生じている内乱を理論的な枠組みで捉えるために、権力と安全保障体制のネット

ワークの構造を示し、権力関係の変容によって、市民と行政のネットワークが脆弱し内乱に発展すると

した理論的構造について、アフガニスタンを事例として論じた。続く報告では、建国当初 2 つしか行政

機関が存在しなかったにもかかわらず、現在では 200 以上の行政機関を抱えるようになったサウディア

ラビアにおける行政機関の変遷をたどり、サウディアラビア政府の発展について報告された。

第 3 セッションでは、ヨルダンとイラクの貿易関係に関する発表、トルコにおけるクルド人のアイデ

ンティティ、イラク人のアイデンティティに関する報告がなされた。最初の発表は、外部的要因で内情

が左右されるヨルダン情勢を、1980 年代のイラクとの対外貿易に焦点をあてて報告がなされた。イラク

との交易が発展したことにより、ヨルダン单部の交易路が発展し、特に单部のアカバ港が発展したこと

により、その後のヨルダン経済に大きく影響してくることが説明された。続く発表では、トルコにおけ

るクルド人のアイデンティティをめぐる問題が、民族としての位置づけよりも、宗教的な位置づけが争

点であることが論じられた。続く発表は、イラクの近代国家建設とこれに伴ってイラク人アイデンティ

ティがどのように構築されていったのか論じた。

第 4 セッションでは、ハラール食品に関する報告とマレーシアの農業にイスラーム金融がどのように

財献できるかについて発表がなされた。最初の発表では、ハラール食品の認定や、ハラール肉がどのよ

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うに生産されているのかを紹介し、近年ハラール食品をめぐる議論について報告した。続く発表は、マ

レーシアの農村開発において、マレーシア政府の掲げる農業政策と、フィールドワークを通じて得た農

業に関わる負政と土地の問題をまとめ、これに対し、イスラーム金融取引のムザーラーやムサーカーを

採用することで解決できることを理論的に示した。

第 5 セッションでは、バルカン半島に関する発表が 2 つなされた。最初の発表は、マケドニアを宗教

や民族で分類することが歴史的に不可能であることを述べ、歴史的な流れによってマケドニアのアイデ

ンティティが変容し一定でないことを示した。続く発表では、コソボ紛争以降、ロマ族の社会的位置づ

けが激変したことを取り上げ、1989 年から 1999 年のミロシェビッチ時代には政治的影響力が強かったに

も関わらず、1999 年のコソボ紛争を契機として政治・経済から排除される存在になったロマ族の社会的

位置づけを示した。

中東地域に限定されない幅広い地域やテーマに触れ、多様なディシプリンを持つ報告者がナビール教

授をはじめとする研究者からコメントを受けることができ、非常に有意義なワークショップとなった。

(川村藍)

⑧ユニット 1~5 合同国際ワークショップ KIAS/SIAS Joint International Workshop ―Some Aspects of Life and

Beliefs of the People in the Islamic World‖(上智大学拠点グループ 3 と共催)

日時:2011 年 2 月 28 日(月) 9:30~19:00

場所:上智大学 2-508 号室

プログラム:

09:30-09:50 OPENING REMARKS (AKAHORI Masayuki)

09:50-11:40 PART 1 SUFISM: IDEAS AND PRACTICES (Chair: AKAHORI Masayuki)

Idiris Danismaz (Kyoto University/Turkey Japan Cultural Dialog Society)

―Sufism in Contemporary Turkey: Interpretation of Ibn Arabi‘s Thought in ‗Kalbin Zumrut Tepeleri (Emerald

Hills of the Heart)‘‖

ISHIDA Yuri (Kyoto University)

―The Concept of Spirit (Ruh) in Hujwiri‘s Unveilling the Veiled (Kashf al-Mahjub)‖

Eloisa Concetti (Durham University)

―Mujaddidi Branches among Hui People of Gansu, Qinghai and Ningxia: A Preliminary Account‖

12:40-13:40 PART 2 SAINT VENERATION: PAST AND PRESENT (Chair: FUJII Chiaki)

MOTEKI Akashi (Sophia University)

―The Genealogy (nasab) of Imam Shafi‗i through the Analysis of Hagiographic Sources‖

UCHIYAMA Akiko (Kyoto University)

―The Actual Conditions of Women in Contemporary Iran: Through their Visit to ―Emamzadeh‖

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13:50-15:40 PART 3 ENCOUNTERS WITH DIFFERENT FAITHS (Chair: TAKAHASHI Kei)

TOBINAI Yuko (Sophia University)

―The Role of Christianity among Kuku in Khartoum: Function and Management of Communities‖

Reem Ahmad (Sophia University)

―The Problems That Muslims Face in Japan‖

TOCHIBORI Yuko (Kyoto University)

―The Discourses about al-Amir ‗Abd al-Qadir al-Jaza‘iri among French and English People‖

15:50-17:20 PART 4 POLITICS, SOCIETY, AND PEOPLE (Chair: ARAI Kazuhiro)

SHIMIZU Masako (Sophia University)

―The Socio-Political Transformations of Contemporary Palestine and the Electoral Participation of Hamas: The

Process of Change of Organizational Structure and Political Opportunities‖

OKADO Masaki (Sophia University)

―Mindful of their Origins while Residing in the City: The Experience of Migrants and their Descendants from

Upper Egypt in Alexandria‖

AKIYAMA Fumika (Sophia University)

―Developing Tourism Industries for Formation of Tunisian National Image‖

17:40-18:00 COMMENT

Rina Shahriyani Shahrullah (Universitas Internasional Batam/UIB, Indonesia)

Marc Toutatnt (CETOBAC, CNRS-EHESS, France)

18:00-19:00 GENERAL DISCUSSION

概要:②と同様、上智大学拠点と共催で行う若手研究者中心の国際ワークショップ。このワークショ

ップの詳細は上智大学拠点グループ 3 の該当箇所を参照されたい。

(仁子寿晴)

⑨スーフィー・聖者研究会ワークショップ(ユニット 4 と上智大学拠点グループ 3 の連携)

日時:2011 年 3 月 1 日(火)~2 日(水)

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階 AA447 号室

プログラム:

2011 年 3 月 1 日(火)

13:30-15:30 研究発表 1:苅谷康太(日本学術振興会/東京大学東洋文化研究所)「アラビア語著作から

見る西アフリカ・イスラームの宗教的・知的連関網――アフマド・バンバに至る水脈を中心に――」

コメント:赤堀雅幸(上智大学)

16:00-18:00 研究発表 2:Marc Toutant(CETOBAC, CNRS-Collège de France-EHESS, Paris)‖Materialist

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Ideology Facing a Great Sufi Poet: The Case of ‗Ali Shir Nawa‘i in Soviet Uzbekistan‖

コメント:矢島洋一(京都外国語大学)

2011 年 3 月 2 日(水)

09:30-10:20 文献発表 1:茂木明石(上智大学)‖Chapter 3: Saints and Sainthood‖(文献発表は Carl W. Ernst,

Shambhala Guide to Sufism, Boston & London: Shambhala, 1997 を使用)

10:30-12:30 研究発表 3:澤井真(東北大学)「タバリーのタフスィールにおける生と死――クルアーン

解釈の形成期における伝承(ハディース)の役割――」

コメント:東長靖(京都大学)

13:30-14:20 文献発表 2:栃堀木綿子(京都大学)‖Chapter 8: Sufism in the Contemporary World‖

14:30-15:20 文献発表 3:二宮文子(日本学術振興会(京都大学))‖Chapter 5: The Sufi Orders: Mastery,

Discipleship, and Initiation‖

15:30-16:30 総合討論

概要:

研究発表 3 本と文献発表 3 本からなる二日間にわたるワークショップ。前者が新たな分野、新たな方

法論の模索であるとすれば、後者は共通認識の醸成を目的とする。共同研究には常にこの両面が必要で

あることは論を俟たない。

(仁子寿晴)

(4)講演会

①KIAS 講演会「知の先達たちに聞く――加賀谷寛先生をお迎えして――」

日時:2010 年 4 月 24 日(土) 14:00~17:00

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階会議室

講演:加賀谷寛「私のイスラーム研究の回顧」

インタビュー:山根聡(大阪大学世界言語研究センター)、東長靖(京都大学大学院アジ

ア・アフリカ地域研究研究科)

概要:

「知の先達たちに聞く」は京都大学拠点が発行している『イスラーム世界研究』の連載企画の一つで

ある。イスラーム地域研究それ自体は新たな分野の開拓であるとしても、どんな研究であれ、先達の恩

恵によって成り立っていることを忘れてはならないだろう。そうした問題意識から立案された企画であ

る。加賀谷氏は現代单アジア研究とイスラーム思想史研究双方の先達として稀有な存在である。加賀谷

氏が生きてこられた時代を考えるとそのうちの一つを行うだけでも大変な苦労があったと推察されるが、

加賀谷氏は二つの研究を同時に行うというレベルを超えて、二つが分裂することなく加賀谷氏の研究の

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なかで見事に融合していることに驚かざるをえない。まだ地域研究がなかった時代に行われていたがゆ

えに、地域研究として名指されることはない加賀谷氏の研究が現代研究と思想史研究を一つの目的とす

る地域研究と同等のことを体現していると言い換えてもいいだろう。この講演会では、そうした加賀谷

氏の先見性と多面性を理解するために、現代单アジア研究の専門家である山根氏と、イスラーム思想、

特にタサウウフ研究の専門家である東長氏によるインタビューが設定された。講演会およびインタビュ

ーの模様は、そこで行われた議論はもちろんのこと、加賀谷氏の軽妙な受け筓えが醸し出す雰囲気も含

めて『イスラーム世界研究』第 4 巻 1-2 号で再現されているので、一読することをお勧めする。

(仁子寿晴)

②スーフィー・聖者研究会为催講演会(ユニット 4 と上智大学拠点グループ 3 との連携、科研費 B「オス

マン朝期イスラーム思想研究」との共催)

日時:6 月 20 日(日) 14:00~16:00

場所:京都大学本部構内総合研究 2 号館 4 階 AA401 号室

講演:Sanaa Makhlouf (The American University in Cairo, Egypt) ―Challenging the Reform Narrative:

A Comparative Study of Abd al-Rahman al-Kawakibi and Abd al-Qadir al-Jaza‘iri‖

概要:

講師の Sanaa Makhlouf 氏はエジプトでは珍しく、アルジェリアの活動家であり、イブン・アラビー

(d. 638/1240) の影響を受けて思想を展開したアブドゥルカーディル・ジャザーイリー (d. 1300/1883)

を専門とする研究者である。この講演会では、中世から近現代への転換期に生きたアブドゥルカーデ

ィルの思想的位置づけとともに、イスラームにとって近現代とは何だったのかというより大きな問い

が投げかけられた。西暦 19 世紀の末から 20 世紀にかけて、西洋のインパクトを受けて、イスラーム

改革運動が起こる。その中心人物としてアフガーニー、ムハンマド・アブドゥ、カワーキビーなどの

名がよく挙がる。Makhlouf 氏によると、彼らよりも若干前の時代に属するアブドゥルカーディルはそ

うしたイスラーム改革運動と全く異質な思想を持つ。

イスラーム改革为義者はイスラームの内部に弱さを見出し、真のイスラームと偽なるイスラームを

区別する。西洋の植民地为義に屇しているのは偽なるイスラーム、偽なる信仰が原因であり、そうし

た偽なるイスラームを真なるイスラームへと変えることが植民地为義を脱する唯一の手段であると

する論である。このとき偽なるイスラームとは、伝統的な神学者、法学者、スーフィーなどであり、

神学者のみるイスラーム、法学者のみるイスラーム、スーフィーのみるイスラームといったかたちで

イスラームが分裂していること、それが偽なるイスラームだと見なされる。対仏闘争を行ったアブド

ゥルカーディルは一見、西洋に対して闘うイスラーム改革为義者と同じように見える。しかし、にも

関わらず、アブドゥルカーディルはイスラームに関してそうした真/偽の区別を行わないという点で

彼らと一線を画すのである。

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アブドゥルカーディルは为著 Mawāqif のなかで神よりもむしろ預言者ムハンマドに注目して、預言

者が持つさまざまな顔/側面を提示する。神(al-Ḥaqq)という鏡に映し出される側面、預言者の顔に

为が映し出される側面、預言者を見る人間に(預言者が)映し出される側面、預言者という鏡に人間

が映し出される側面がそれである。人間はこうした多面性を持つ預言者をモデルとして生きるべきで

あるという思想と大まかにまとめることができよう。彼の思想は区別ではなく多様性を重視しており、

そこには真なるイスラームと偽なるイスラームという区別は存在しない。

ここにイブン・アラビーの影響を見ることはたやすいが、アブドゥルカーディルの生きた時代、中

世から近現代への転換期、を考え併せるならば、以上のラフスケッチからでも、Makhlouf 氏が投げか

けたものの大きさがうかがい知れるだろう。イスラームにとって近現代とは何だったのか。そこで伝

統的な思考方式がどのように働いていたのか。Makhlouf 氏の講演はこうしたことを問いなおすきっか

けを与えてくれた。

(仁子寿晴)

(5)海外派遣・調査

①京都大学―英ダラム共催国際ワークショップ、第 3 回世界中東学会

期間:2010 年 7 月 9 日(金)~2010 年 7 月 24 日(土)

国名:イギリス、スペイン

参加者:小杉泰(KIAS 拠点代表者、KIAS ユニット 5 責任者)

概要:

2010 年 7 月 12 日、13 日に英ダラム大学で開催された 4th Kyoto-Durham International Workshop in Islamic

Economics and Finance およびスペイン・バルセロナで 2010 年 7 月 19 日~24 日に開催された第 3 回世界

中東学会に出席するため、7 月 9 日~24 日の日程で英国とスペインに海外出張した。具体的には、(3)国

際ワークショップ/シンポジウム・国内ワークショップ③にあるようにユニット 5 国際ワークショップ

に参加し、4th Kyoto-Durham International Workshop in Islamic Economics and Finance ―New Horizons in

Islamic Economics: Country Case Studies –Developments in Islamic Economics and Finance でキーノートスピ

ーチ・司会等を務め、スペイン・バルセロナで行われた第 3 回世界中東学会では、Panel ―Frontier of the

Islamic Economics and Finance: New Challenges‖に司会として参加した((2)国際会議①(b))。

(仁子寿晴)

②京都大学―英ダラム共催国際ワークショップ、第 3 回世界中東学会

期間:2010 年 7 月 2 日(金)~2010 年 7 月 31 日(土)

国名:イギリス、スペイン

参加者:長岡慎介(KIAS ユニット 5 研究協力者)

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概要:

2010 年 7 月 12 日、13 日に開催された 4th Kyoto-Durham International Workshop in Islamic Economics and

Finance ―New Horizons in Islamic Economics: Country Case Studies-Developments in Islamic Economics and

Finance‖およびスペイン・バルセロナで 2010 年 7 月 19 日~24 日に開催された第 3 回中東研究世界大会に

出席するため、7 月 2 日~31 日の日程で英国とスペインに海外出張した。具体的には、(3)国際ワークシ

ョップ/シンポジウム・国内ワークショップ③にあるようにユニット 5 国際ワークショップに参加し、

4th Kyoto-Durham International Workshop in Islamic Economics and Finance ―New Horizons in Islamic

Economics: Country Case Studies –Developments in Islamic Economics and Finance で―Islamic Finance in Jordan:

A Pioneer of an Emerging Market?‖の発表を行い、スペイン・バルセロナで行われた第 3 回中東研究世界大

会では、Panel ―Frontier of the Islamic Economics and Finance: New Challenges‖に参加して、‖Coorinating Sharia

Legitimacy with Economic Feasibility in Islamic Finance: Explaining the Divergence from the Multiple Diversities

Perspecive‖の発表を行った((2)国際会議①(b))。

(仁子寿晴)

③第 3 回世界中東学会

期間:2010 年 7 月 18 日(日)~2010 年 7 月 26 日(月)

国名:スペイン

参加者:三沢伸夫(KIAS ユニット 4 と SIAS グループ 3 の連携研究「スーフィー・聖者研究会」所属、

SIAS グループ 3 研究分担者)

概要:

スペイン・バルセロナで 2010 年 7 月 19 日~24 日に開催された第 3 回中東研究世界大会に出席するた

め 7 月 18 日~26 日の日程でスペインに海外出張した。第 3 回中東研究世界大会では Panel ―Sufis and Saints

Facing the Government and the Public-I & II‖にて‖Shintoism and Islam in Interwar Japan‖という題目で発表を

行った((2)国際会議①(a))。

(仁子寿晴)

④第 3 回世界中東学会

期間:2010 年 7 月 18 日(日)~2010 年 7 月 26 日(月)

国名:スペイン

参加者:新井和広(KIAS ユニット 4 と SIAS グループ 3 の連携研究「スーフィー・聖者研究会」所属、

SIAS グループ 3 研究分担者)

概要:

スペイン・バルセロナで 2010 年 7 月 19 日~24 日に開催された第三回世界中東学会に出席するた

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め 7 月 18 日~26 日の日程でスペインに海外出張した。詳細は研究グループ「海外派遣」欄を参照さ

れたい。第 3 回中東研究世界大会では Panel ―Sufis and Saints Facing the Government and the Public-I & II‖

にて‖The Media, Saints and Sayyids in Contemporary Indonesia‖という題目で発表を行った((2)国際会議

①(a))。

(仁子寿晴)

(4)外国人研究者の招聘

①Sanaa Makhlouf 氏招聘

所属:カイロ・アメリカン大学(エジプト)

期間:4 月~7 月

活動概要:

アジア・アフリカ地域研究研究科で 4 月~7 月に招聘。ユニット 1~5 合同国際ワークショップ Joint

International Workshop ―Inner Ideal and Outer Movement in the Islamic World‖( (3)国際ワークショップ/シン

ポジウム・国内ワークショップ②)および第 2 回スーフィー・聖者研究会((1)研究会活動②)でコメン

テーターを務め、スーフィー・聖者研究会为催講演会((4)講演会②)では―Challenging the Reform Narrative:

A Comparative Study of Abd al-Rahman al-Kawakibi and Abd al-Qadir al-Jaza‘iri‖と題して講演を行った。

②Touraya Guaaybess 氏招聘

所属:ブレーズパスカル大学(クレルモン第 2 大学)(フランス)

期間:7 月~10 月

活動概要:

アジア・アフリカ地域研究研究科で 7 月~10 月に招聘。ユニット 1~5 合同国際ワークショップ

―Technology, Economics and Political Transformation in the Middle East and Asia‖((3)国際ワークショップ/シ

ンポジウム・国内ワークショップ④)で特別講演―Transnational TV in Arab countries: Geographical

Considerations‖を行うとともにコメンテーターを務め、ユニット 3 国際ワークショップ International

Workshop ―Media in the Middle East: Latest Issues‖((3)国際ワークショップ/シンポジウム・国内ワークシ

ョップ⑤)で―Egypt channels must enter the Arab transnational broadcasting arena, or die: the case of Nile TV

international‖と題して発表を行った。

③Gary Bunt 氏招聘

所属:ウェールズ大学(イギリス)

期間:2010 年 12 月 15 日(水)~20 日(月)

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活動概要:

IAS Third International Conference 2010 の Session 3A‖Islamist Discourse in Media: Papers, Computers, and

Satellites‖で―E-jihad: a Brief History‖と題して発表を行った((2)国際会議②(a))。

④Raymond Hinnebusch 氏招聘

所属:セント・アンドリュース大学(イギリス)

期間:2010 年 12 月 16 日(木)~20 日(月)

活動概要:

IAS Third International Conference 2010 の Session 8A ―Political Reform and its Aftermath in the Arab States‖

で―Toward a Sociology of State Formation in the Middle East‖と題して発表を行った((2)国際会議②(b))。

⑤Miyagi Yukiko 氏招聘

所属:英ダラム大学(イギリス)

期間:2010 年 12 月 16 日(木)~20 日(月)

活動概要:

IAS Third International Conference 2010 に参加し、特に Session 8A ―Political Reform and its Aftermath in the

Arab States‖において積極的に発言し、関係者と意見交換を行った((2)国際会議②(b))。

⑥Thierry Zarcone 氏招聘

所属:フランス国立科学研究センター(フランス)

期間:2010 年 12 月 15 日(水)~23 日(木)

活動概要:

IAS Third International Conference 2010の Session 8B ―Emerging Approaches to the Phenomena around Sufism

and Saint Veneration‖で Discussnat を務めた((2)国際会議②(c))。

⑦Alexandre Papas 氏招聘

所属:フランス国立科学研究センター

期間:2010 年 12 月 15 日(水)~23 日(木)

活動概要:

IAS Third International Conference 2010の Session 8B ―Emerging Approaches to the Phenomena around Sufism

and Saint Veneration‖で―Islam and Sufism in Eastern Tibet: a Minority Approach‖と題して発表を行った((2)国

際会議②(c))。

(仁子寿晴)

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(5) 院生向けセミナー

以下、院生向けセミナー(拠点セミナー)を列挙し、発表の題目のみを記しておく。

①第 41 回拠点セミナー(2010 年 5 月 26 日)発表 5 本:「イスラーム世界におけるハラール食品市場と

認証制度」「現代トルコのタリーカ研究動向」「女性による聖者廟参詣に関する研究サーベイ」「地域社会

と聖者――チュニジア・タタウィン県の事例――」「イブン・アラビーの研究サーベイ――完全人間論を

中心にして――」

②第 42 回拠点セミナー(2010 年 6 月 16 日)発表 3 本:「聖者廟参詣に関する先行研究サーベイ」「各

地域の「科学のイスラーム化」の動き」「イスラーム世界における聖性の物質性」

③第 43 回拠点セミナー(2010 年 6 月 23 日)発表 2 本:「ティルミズィーの霊魂論」「アブドゥルカー

ディル像の多様性」

④第 44 回拠点セミナー(2010 年 6 月 30 日)発表 4 本:「完全人間論および聖者の封印論に関する先行

研究サーベイ」「現代タリーカに関する研究動向」「東单アジアと湾岸諸国におけるハラール認証機関と

認証制度」「1970 年代以降の新たなアラブ・メディア秩序形成をめぐって」

⑤第 45 回拠点セミナー(2010 年 10 月 6 日)発表 2 本:「サウジアラビアの近代化と石油」「アラブ・

メディアに関する理論的考察」

⑥第 46 回拠点セミナー(2010 年 10 月 20 日)発表 10 本:「ハラール認証制度の発展とグローバル化」

「イラン女性のエマームザーデ参詣に関する考察――夏期調査から――」「中期存在一性論学派の思想的

系譜――アフマド・スィルヒンディーを中心に――」「フジュウィーリーの霊魂論」「フィールド調査報

告と博士予備論文の進捗状況」「イスラーム金融をめぐる民事紛争研究の進捗状況」「パキスタンにおけ

るウルドゥー文学の概観」「中東の国際関係におけるヨルダンの位置づけに関する予備的考察」「アミー

ル・アブドゥルカーディル・ジャザーイリーの表象――その言説に注目して――」「現代クウェートにお

けるイスラーム为義運動と議会政治――湾岸アラブ産油国における政治・経済のダイナミクス――」

⑦第 47 回拠点セミナー(2010 年 12 月 1 日)発表 2 本:「現代トルコのタリーカおよびジェマート組織

をめぐる言説――世俗派による批判に注目して――」「ヨルダンをめぐるモノ・資本の流れと産業構造の

変化」

⑧第 48 回拠点セミナー(2010 年 12 月 8 日)発表 4 本:「アフマド・スィルヒンディーの思想背景の

考察――アクバル皇帝の時代を中心に――」「イラン女性とエマームザーデ参詣」「サウジアラビアの政

治制度と政府機構の変遷について」「通信社・通信組織からみるアラブ世界の情報独立の動き」

⑨第 49 回拠点セミナー(2010 年 12 月 15 日)発表 4 本:「サウジアラビアの政治制度と政府機構の変

遷について」「マレー世界におけるハラール意識の覚醒――1960-80 年代――」「フランスにおけるアル

ジェリア出身者によるアブドゥルカーディル観」「ジュベリーヤにとってオリーブの意味とは何か――

フィールド報告とそこからの考察――」

(仁子寿晴)

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(7)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔論文〕計( 69 )件

著 者 名 論 文 標 題

OGURA Satoshi

(ユニット 2 研究協力者)

Transmission Lines of Historical information on Kashmir: From

Rajataranginis to the Persian chronicles in the Early Mughal

Period

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Journal of Indological Studies 23 2011 未定

著 者 名 論 文 標 題

木下 博子

(ユニット 4、SIAS グループ 2、SIAS グ

ループ 3 研究協力者)

イスラーム出版界のアズハル・ネットワーク―現代インドネ

シアの事例から―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

川島緑編『東单アジア・イスラームの展開――知の革新と伝達の

諸相――』(SIAS Working Paper Series 9)

2011 45-70

著 者 名 論 文 標 題

KINOSHITA Hiroko

(ユニット 4、SIAS グループ 2、SIAS グ

ループ 3 研究協力者)

―Discovering the Diversities of IndonesianIslam in Contemporary

Cairo: The Case of the Indonesian Azharis‘ Community‖

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

The Mediterranean Review 3-1 2010 79-99

著 者 名 論 文 標 題

小杉 泰

(拠点代表者、ユニット 5 責任者)

中東における戦争・内戦と政治変容

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中東研究』 509 2010 29-41

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著 者 名 論 文 標 題

小杉 泰

(拠点代表者、ユニット 5 責任者)

イスラームとは

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

サウジアラビア大使館文化部編『日本に生きるイスラーム――過

去・現在・未来――』

509 2010 15-33

著 者 名 論 文 標 題

小杉 泰

(拠点代表者、ユニット 5 責任者)

近代と邂逅するイスラーム

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

小杉泰編『イスラームの歴史 2――イスラームの拡大と変容――』

山川出版社

2010 3-36

著 者 名 論 文 標 題

小杉 泰

(拠点代表者、ユニット 5 責任者)

イスラームの再構築

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

小杉泰編『イスラームの歴史 2――イスラームの拡大と変容――』 2010 37-67

著 者 名 論 文 標 題

SUECHIKA Kota

(ユニット 2 責任者)

Arab Nationalism Twisted?: The Syrian Ba‗th Regime‘s Strategies

for Nation/State-building

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Yusuke Murakami, Hiroyuki Yamamoto and Hiromi Komori (eds.),

Enduring States: In the Face of Challenges from Within and Without,

Kyoto: Kyoto University Press

2011 84-98

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著 者 名 論 文 標 題

黒田 賢治

(ユニット 2 研究協力者)

ハーメネイー指導体制下における法学界支配の構造―ホウゼ

の運営組織改革と奨学金制度を中心に―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『日本中東学会年報』 26.1 2010 75-97

著 者 名 論 文 標 題

黒田 賢治

(ユニット 2 研究協力者)

ハーメネイー体制下における法学権威と学知システムの変容

―国家による宗教制度への政治的影響力をめぐる考察―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『アジア・アフリカ地域研究』 10.1 2010 13-34

著 者 名 論 文 標 題

黒田 賢治

(ユニット 2 研究協力者)

12 イマーム・シーア派における法学知と聖性をめぐる現代イ

ラン的展開

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イラン研究』 7 2011 179-201

著 者 名 論 文 標 題

黒田 賢治

(ユニット 2 研究協力者)

現代イランにおけるイスラーム国家と法学界の研究

-イスラーム指導体制下の宗教と政治をめぐって-

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

博士論文

著 者 名 論 文 標 題

幸加木 文

(ユニット 2 研究協力者)

研究動向:現代トルコにおけるフェトゥッラー・ギュレンと

その運動の位置付け

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラム世界』 76 2011 33-50

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著 者 名 論 文 標 題

幸加木 文

(ユニット 2 研究協力者)

現代トルコにおけるラーイクリキ概念の再解釈の試み―フェ

トゥッラー・ギュレンの言説を一例に―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

粕谷元編『トルコ共和国とラーイクリキ』(SOIAS Research Paper

Series 4)上智大学イスラーム地域研究機構

2011 56-66

著 者 名 論 文 標 題

佐々木 拓雄

(ユニット 2 研究協力者)

イスラム为義とその限界―インドネシアの事例から―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

松井康浩編『グローバル秩序という視点―規範・歴史・地域』法

律文化社

2010 258-273

著 者 名 論 文 標 題

佐々木 拓雄

(ユニット 2 研究協力者)

中道派イスラームの政治―インドネシア・ユドヨノ政権とア

フマディヤ問題―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『久留米大学法学』 64 2010 17-53

著 者 名 論 文 標 題

SASAKI Takuo

(ユニット 2 研究協力者)

The Politics of Moderate Islam: From the Rise of Yudhoyono to the

Ahmadiyah Decree

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Ota Atsushi, Okamoto Masaaki, and Ahmad Suaedy eds., Islam in

Contention: Rethinking Islam and State in Indonesia, Kyoto: Center for

Southeast Asian Studies; Jakarta: Wahid Institute; Taipei: Center for

Asia-Pacific Area Studies

64 2010 17-53

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著 者 名 論 文 標 題

末近 浩太

(ユニット 1 責任者)

巨星墜つ、ファドルッラー師逝去

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『季刊アラブ』 134 2010 26-27

著 者 名 論 文 標 題

須永 恵美子

(ユニット 2 研究協力者)

单アジア・イスラームのメディアと思想潮流―1947 年~1970

年のウルドゥー語出版を中心に―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『越境するメディアと社会変容に関する比較研究』大学院教育改

革支援プログラム「研究と実務を架橋するフィールドスクール」

(メディア班)

2011 23-32

著 者 名 論 文 標 題

千葉 悠志

(ユニット 2 研究協力者)

アラブ世界の衛星放送市場化をめぐる一考察:多チャンネル

化の進展とアクセシビリティの変化に着目して

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『越境するメディアと社会変容に関する比較研究』京都大学大学院ア

ジア・アフリカ地域研究研究科大学院教育改革支援プログラム支援

2011 3-11

著 者 名 論 文 標 題

千葉 悠志

(ユニット 2 研究協力者)

ナショナル・メディアの時代―1950~80 年代のエジプトにお

けるメディア政策の変容―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『日本中東学会年報』 26.2 2011 57-88

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著 者 名 論 文 標 題

CHIBA Yushi

(ユニット 2 研究協力者)

The Transformation of Contemporary Arab Media: Regional and

Grobal Competition

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

IPSJ SIG Technical Report Vol.2011-DD-80 No.10 2011 6p

著 者 名 論 文 標 題

東長 靖

(ユニット 4 責任者)

スーフィズムの成立と発展

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

佐藤次高編『イスラームの歴史 1――イスラームの創始と展開

――』山川出版社

2010 155-195

著 者 名 論 文 標 題

東長 靖

(ユニット 4 責任者)

スーフィー教団の革新と再生

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

小杉泰編『イスラームの歴史 2――イスラームの拡大と変容――』

山川出版社

2010 62-91

著 者 名 論 文 標 題

東長 靖

(ユニット 4 責任者)

民間信仰としてのスーフィズム―聖者信仰をめぐって―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

小林春夫、阿久津正幸、仁子寿晴、野元晋(編)『イスラームに

おける知の構造と変容――思想史・科学史・社会史の視点から

――』早稲田大学イスラーム地域研究機構

2011 285-306

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著 者 名 論 文 標 題

中西 竜也

(ユニット 4 研究協力者、

SIAS グループ 3 研究協力者)

One Giant Leap in the Study of the Chinese Crescent: a Superb

Annotated Translation of Liu Zhi‘s Nature and Principle in Islam

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

International Journal of Asian Studies 8.1 2011 63-71

著 者 名 論 文 標 題

NAGAOKA Shinsuke

(ユニット 5 研究協力者)

Reconsidering Mudarabah Contracts in Islamic Finance: What is

the Economic Wisdom (Hikmah) of Partnership-based

Instruments?

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Review of Islamic Economics 13.2 2010 65-79

著 者 名 論 文 標 題

NAGAOKA Shinsuke

(ユニット 5 研究協力者)

Kulliyyah Korner: On the Theoretical Dichotomy of Islamic

Finance

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Opalesque Islamic Finance Intelligence 6 2011 19-20

著 者 名 論 文 標 題

長岡 慎介

(ユニット 5 研究協力者)

ヨルダンにおけるイスラーム金融をめぐるポリティカル・エ

コノミー再考

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

濱田美紀・福田安志編『世界に広がるイスラーム金融―中東から

アジア、ヨーロッパへ』アジア経済研究所(アジ研選書)

2010 47-65

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299

著 者 名 論 文 標 題

吉田悦章・長岡 慎介

(ユニット 5 研究協力者)

イスラーム金融の現在と変容する多様性

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

濱田美紀・福田安志編『世界に広がるイスラーム金融―中東から

アジア、ヨーロッパへ』アジア経済研究所(アジ研選書)

2010 255-273

著 者 名 論 文 標 題

長岡 慎介

(ユニット 5 研究協力者)

中東アラブ諸国における民間部門発展の歴史的沿革―中東湾

岸諸国の銀行部門の分析から―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

土屉一樹編『中東アラブ諸国における民間部門の発展』アジア経

済研究所(アジ研双書)

2010 107-133

著 者 名 論 文 標 題

長岡 慎介

(ユニット 5 研究協力者)

中東における多国籍銀行の歴史的展開と現――アラブ・コン

ソーシアム系多国籍銀行の分析から―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

土屉一樹編『中東アラブ諸国における民間部門の発展』アジア経

済研究所(アジ研双書)

2011 20-42

著 者 名 論 文 標 題

仁子 寿晴(ユニット 4 研究分担者) イブン・スィーナー『治癒の書』形而上学の構造―最高概念の

把握と学問構造―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

小林春夫・阿久津正幸・仁子寿晴・野元晋編『イスラームにおけ

る知の構造と変容――思想史・科学史・社会史の観点から――』

共同利用・共同研究拠点 イスラーム地域研究拠点早稲田大学イ

スラーム地域研究機構

2011 93-111

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300

著 者 名 論 文 標 題

NISHINO Masami

(ユニット 3 研究協力者)

Al-Qaida Trends After the 9-11 Terrorist Attacks

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

NIDS Security Reports No.11 (October) 2010 45-64

著 者 名 論 文 標 題

二宮 文子

(ユニット 4 研究協力者、

SIAS グループ 3 研究協力者)

ムガル朝の知識人アブドゥルカーディル・バダーユーニー

の経歴とその評価

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

小林春夫、阿久津正幸、仁子寿晴、野元晋(編)『イスラームに

おける知の構造と変容――思想史・科学史・社会史の視点から

――』早稲田大学イスラーム地域研究機構

2011 147-156

著 者 名 論 文 標 題

平野 淳一

(ユニット 1 研究協力者、

SIAS グループ 3 研究協力者)

近代中東・イスラーム世界におけるプリント・メディアの

歴史と構造

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

情報処理学会研究報告 2011 IFAT102DD80 2011 未定

著 者 名 論 文 標 題

平野 淳一

(ユニット 1 研究協力者、

SIAS グループ 3 研究協力者)

近現代イスラーム世界におけるイスラーム連帯と宗教的融

-アフガーニー思想からその現代的展開まで-

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

博士論文

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301

著 者 名 論 文 標 題

保坂 修司

(ユニット 3 責任者)

記憶の名残―湾岸危機と湾岸戦争の現場から―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中東研究』 508 2010 38-46

著 者 名 論 文 標 題

保坂 修司

(ユニット 3 責任者)

サウジの対シリア外交

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『季刊アラブ』 133 2010 10-11

著 者 名 論 文 標 題

保坂 修司

(ユニット 3 責任者)

ホルムズ海峡沖日本タンカー襲撃事件に関する一考察

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『国際情勢』 81 2011 307-325

著 者 名 論 文 標 題

保坂 修司

(ユニット 3 責任者)

Socio-Economic Hitory of Mummies

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラム科学研究』 7 2011

著 者 名 論 文 標 題

保坂 修司

(ユニット 3 責任者)

ソマリアの歴史

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『ソマリア問題と紅海・アラビア海の安全保障研究』平成 22 年度

笹川平和負団委託調査報告書

2011 29-51

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著 者 名 論 文 標 題

堀拔功二

(ユニット 5 研究協力者)

湾岸諸国における国境と国家の存立構造―UAE の国境問題の

展開を事例に―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『国際政治』 162 2010 56-69

著 者 名 論 文 標 題

堀拔功二

(ユニット 5 研究協力者)

北部首長国における開発戦略と独自性の模索―シャルジャと

ラアス・アル=ハイマ首長国を事例に―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『UAE』 49 2011 22-25

著 者 名 論 文 標 題

HORINUKI Koji

(ユニット 5 研究協力者)

Administrative Reform and the Globalisation Strategy in Dubai: A

Study of Double-Edged Development from 1990 to 2009

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Annals of Japan Association for Middle East Studies 26.2 2011 1-32

著 者 名 論 文 標 題

堀拔功二

(ユニット 5 研究協力者)

アラブ首長国連邦における国家運営と社会変容

-「国民マイノリティ国家」の形成と発展-

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

博士論文

著 者 名 論 文 標 題

MARUYAMA Daisuke

(ユニット 4、SIAS グループ 3 研究協力

者)

Sufism and Tariqas Facing with the State: Their Influence on

Politics in the Sudan

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Orient 56 2011 5-28

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303

著 者 名 論 文 標 題

宮坂 直史

(ユニット 3 研究協力者)

米国によるテロとの戦い―脅威認識の形成―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『防衛法研究』防衛法学会編 34 2010

著 者 名 論 文 標 題

Mehboob ul Hassan

(ユニット 5 研究協力者)

Searching for Customers‘ Perceptions and Behaviours towards

Islamic & Conventional Banking in Pakistan

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Review of Islamic Economics 14.1 2010 77-102

著 者 名 論 文 標 題

Mehboob ul Hassan

(ユニット 5 研究協力者)

Islamic and Conventional Banking: Analysis of Patronage Behaviour and

Perceptions of Pakistani Customers

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

The Islamic Culture 22 2010 77-102

著 者 名 論 文 標 題

メフブーブ・ウル・ハッサン

(ユニット 5 研究協力者)

イスラーム銀行およびパキスタン金融業界の概要

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

濱田美紀、福田安志『世界に広がるイスラーム金融――中東から

アジア、ヨーロッパへ――』(アジ研選書)

2010 141-164

著 者 名 論 文 標 題

森 伸夫

(ユニット 5 研究分担者)

イエメン・ホウスィー派紛争の要因

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『シャリーア研究』 7 2010 21-42

Page 304: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

304

著 者 名 論 文 標 題

森 伸夫

(ユニット 5 研究分担者)

クルアーン解釈 第 5 章食卓章第 1 節~7 節

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『シャリーア研究』 7 2010 235-262

著 者 名 論 文 標 題

森 伸夫・飯森 嘉助

(ユニット 5 研究分担者)

拓殖大学における中東学研究の潮流

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『海外事情』 2010 年

11 月号

2010 2-19

著 者 名 論 文 標 題

山根 聡

(ユニット 2 責任者)

单アジアのムスリムと近代―ウルドゥー語資料を中心に―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラームにおける知の構造と変容―思想史・科学史・社会史

の視点から―』早稲田大学イスラーム地域研究機構

2011 159-186

著 者 名 論 文 標 題

山根 聡

(ユニット 2 責任者)

单アジア・イスラームの動態

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『イスラームの歴史 2―イスラームの拡大と変容―』山川出版社 2010 165-202

著 者 名 論 文 標 題

YAMANE So

(ユニット 2 責任者)

The Rise of News Madrasas and the Decline of Tribal Leadership

in FATA, Pakistan

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

The Moral Economy of the Madrasa-Islam and Education Today , New

Horizons in Islamic Studies, Routledge

2011 19-60

Page 305: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

305

著 者 名 論 文 標 題

YAMANE So

(ユニット 2 責任者)

Qawmii Sho'ur kii Takmiil men Adab kaa Kirdaar(国民意識の形

成における文学の役割)(ウルドゥー語)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Adab aur Qawmii Sho'ur, Haidarabad: Shah Abdul Latif University 2010 6-20

著 者 名 論 文 標 題

山根 聡

(ユニット 2 責任者)

最近のパキスタン政治における権力構造の変容

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『パーキスターン』 234 2011 4-11

著 者 名 論 文 標 題

山根 聡

(ユニット 2 責任者)

パキスタン政治における権力構造の変容―行政と軍のバラン

スを崩した司法―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『国際情勢紀要』 81 2011 161-173

著 者 名 論 文 標 題

YAMANE So

(ユニット 2 責任者)

Aazaadii kii Inshaa-pardaazii- Jadiid Urdu Nathar ke Imkaanaat(ム

ハンマド・フサイン・アーザードの散文と現代ウルドゥー散

文の可能性)(ウルドゥー語)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Al-Aqriba (Islamabad) 2010 178-183

Page 306: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

306

著 者 名 論 文 標 題

山尾 大

(ユニット 2 研究協力者)

イラク覚醒評議会と国家形成――紛争が生み出した部族の非

公的治安機関をめぐる問題―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

佐藤章編『アフリカ・中東における紛争と国家形成』(調査研究

報告書)アジア経済研究所

2010 19-48

著 者 名 論 文 標 題

山尾 大

(ユニット 2 研究協力者)

イラク国会選挙(2010 年 3 月 7 日)と分極化するイラク政治

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中東研究』 508 2010 60-74

著 者 名 論 文 標 題

山尾 大

(ユニット 2 研究協力者)

多数派形成ゲームとしてのイラク選挙後危機―2010 年 3 月国

会選挙後の権力分有をめぐる合従連衡―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『中東研究』 510 2010 76-91

〔図書〕計( 5 )件

著 者 名 出 版 社

小杉 泰

(拠点代表、ユニット 5 責任者)

山川出版社

書 名 発 行 年 ページ

『イスラームの歴史 2――イスラームの拡大と変容――』 2010 279+70

著 者 名 出 版 社

竹田 敏之

(ユニット 1 研究協力者)

白水社

書 名 発 行 年 ページ

『ニューエクスプレス アラビア語(CD 付)』 2010 153

Page 307: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

307

著 者 名 出 版 社

長岡 慎介

(ユニット 5 研究協力者)

名古屉大学出版会

書 名 発 行 年 ページ

『現代イスラーム金融論』 2010 258

著 者 名 出 版 社

保坂 修司

(ユニット 3 責任者)

平成 22 年度笹川平和負団委託調査報告書

書 名 発 行 年 ページ

『ソマリア問題と紅海・アラビア海の安全保障研究』 2010 168

著 者 名 出 版 社

広瀬 圭一、宮坂 直史編

(ユニット 3 研究協力者)

ミネルバ書房

書 名 発 行 年 ページ

『対テロ国際協力の構図――多国間連携の成果と課題――』 2010 220

〔学会発表〕計( 28 )件

発 表 者 名 発 表 標 題

石田 友梨

(ユニット 4 研究協力者)

イスラーム世界の霊魂論―初期スーフィズム文献からの考

察―

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

「宗教と社会」学会 2010 年度関西地区大会 2011 年 2 月 26 日 関西学院大学

発 表 者 名 発 表 標 題

井上 あえか

(ユニット 2 研究協力者)

パキスタン研究におけるウルドゥー語資料の役割

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

「民族紛争の背景に関する地政学的研究」プロジェクト为催

セミナー「地政学的研究における現地語資料の重要性につい

て―ウルドゥー語資料について」

2010 年 11 月 2 日 東京外国語大学

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308

発 表 者 名 発 表 標 題

KINOSHITA Hiroko

(ユニット 4、SIAS グループ 2、SIAS グ

ループ 3 研究協力者)

Intellectual Pilgrimages and Construction of the Network:

Al-Azharites in an Islamic Higher Education Development in

Contemporary Indonesia

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

3rd World Congress of Middle Eastern Studies (WOCMES 3) 2010 年 7 月 21 日 Universitat de

Autonoma Barcelona,

Barcelona

発 表 者 名 発 表 標 題

SUECHIKA Kota

(ユニット 1 責任者)

Changing and Unchanging Face of Post-Syria Lebanese Politics:

Power-sharing Arrangements, National Integration, and

International Relations

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Panel ―Transformation from Politics based on Communal

Identities to Cross-communal National Parties through Electoral

System: Cases of Iraq and Lebanon,‖ World Congress for Middle

Eastern Studies (WOCMES 3)

2010 年 7 月 21 日 Universitat de

Autonoma Barcelona,

Barcelona

発 表 者 名 発 表 標 題

末近 浩太

(ユニット 1 責任者)

中東地域のポスト紛争国における SSR:イラクとレバノン

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)研

究プログラム「新しい平和学にむけた学際的研究拠点の形

成:ポスト紛争地域における和解志向ガバナンスと持続可能

な平和構築の研究」公開シンポジウム「新しい平和学のパラ

ダイム構築を目指して:ポスト紛争国と民为化移行国におけ

る治安部門の再建課題と国際協力の展望」

2010 年 11 月 5 日 立命館大学

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309

発 表 者 名 発 表 標 題

須永 恵美子

(ユニット 2 研究協力者)

パキスタンの教科書に見られる歴史言説―ウルドゥー語と

イスラームの視点から―

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 26 回中東学会年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

SUNAGA Emiko

(ユニット 2 研究協力者)

South Asian Muslims and Cultural transformation in the era of

Print Media: Pakistan and its Urdu Publications

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Kyoto-Chula International Media Workshop, ―International

Media and Social Changes: Regional Debate in the Arab World

and East Asia‖

2011 年 1 月 7 日 Chulalongkorn

University, Bangkok

発 表 者 名 発 表 標 題

千葉 悠志

(ユニット 2 研究協力者)

現代エジプトにおける放送メディアの変容―「汎アラブ・

メディア」から「ナショナル・メディア」へ―

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 26 回日本中東学会年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

CHIBA Yushi

(ユニット 2 研究協力者)

Transformation of the Media Industries in the Arab Countries:

From the Socio-Economical Approach

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

International Workshop ―International Media and Social Changes:

Regional Debate in the Arab World and East Asia‖

2011 年 1 月 7 日 Chulalongkorn

University, Thailand

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310

発 表 者 名 発 表 標 題

TOCHIBORI Yuko

(ユニット 4、SIASグループ3研究協力者)

al-Amīr ‗Abd al-Qādir al-Jazā‘irī and His Images‘ Transition

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 8th AFMA (Asian Federation of Middle East Studies

Associations) Conference ―the Middle East Security and East

Asia‘s Roles‖

2010 年 9 月 25 日 Beijing

発 表 者 名 発 表 標 題

TOCHIBORI Yuko

(ユニット 4、SIASグループ3研究協力者)

The Dynamics of the Transformation of Images about al-Amīr

‗Abd al-Qādir al-Jazā‘irī

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

British Society for Middle Eastern Studies Graduate Conference

2011

2011 年 1 月 14 日 University of

Manchester

発 表 者 名 発 表 標 題

TONAGA Yasushi

(ユニット 4 責任者)

Ambiguity in Context‘ according to Islamic Thought: Bridging

Theory and Actuality around the Saints in Islam

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

International Workshop ―Pilgrimage and Sanctuaries: Ambiguity

in Context‖

2010 年 11 月 13 日 Monte Verità,

Ascona, Switzerland

発 表 者 名 発 表 標 題

中西 竜也

(ユニット 4、SIASグループ3研究協力者)

スーフィズムとタオイズム―19 世紀中国西北部における

対話―

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

東洋史研究会大会 2010 年 11 月 3 日 京都大学文学部新

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311

発 表 者 名 発 表 標 題

仁子 寿晴

(ユニット 4 研究分担者)

イブン・スィーナー『治癒』形而上学―最高概念の把握と

学問構造―

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

イスラーム地域研究共同利用・共同研究拠点ワークショッ

プ「イブン・スィーナー『治癒の書』を巡る比較思想史」

2010 年 11 月 20 日 早稲田大学

発 表 者 名 発 表 標 題

平松 亜衣子

(ユニット 1 研究協力者)

現代クウェート議会における投資のイスラーム適格性をめ

ぐる議論

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 26 回日本中東学会年次大会 2010 年 5 月 9 日 中央大学

発 表 者 名 発 表 標 題

HIRAMATSU Aiko

(ユニット 1 研究協力者)

Overseas Investments and ―Shari‘a Compliance‖ in the Arab

Gulf Countries: A Case of Study on Kuwait Investment

Authority

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 8th AFMA Conference ―The Middle East Security and East

Asia‘s Role‖

2010 年 9月 25-26 日 Beijing

発 表 者 名 発 表 標 題

藤井 千晶

(ユニット 4、SIAS グループ 3 研究協力者)

東アフリカ沿岸部における伝統医療の変遷―「預言者ム

ハンマドの医学」を事例として―

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科次世代研

究者ワークショップ「生きる力としての『コモンズ』とグロ

ーバリゼーション:人の『治す営み』を問い直す」

2010 年 12 月 11 日 上智大学

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312

発 表 者 名 発 表 標 題

HORINUKI Koji

(ユニット 5 研究協力者)

The Dynamics of Human Flow, Control, and Problems in the

UAE: The Relationship between Labour-Sending and

Receiving Countries

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 2010 Exeter Gulf Studies Conference 2010 年

6 月 30 日-7 月 3 日

University of Exeter,

United Kingdom

発 表 者 名 発 表 標 題

HORINUKI Koji

(ユニット 5 研究協力者)

International Labour Mobility and Institutional Change in the

Gulf Countries

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

International Workshop ―Overseas Filipino Workers in UAE:

Transformation of Policies and Actual Conditions‖

2011 年 3 月 3 日 Crowne Plaza Abu

Dhabi, UAE

発 表 者 名 発 表 標 題

MATSUMURA Takamitsu

(ユニット 2 研究協力者)

Hindi Elements in Urdu Poetry

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

国際ヒンディーセミナー2010 2010 年 11 月 29 日 大阪大学

発 表 者 名 発 表 標 題

森 伸夫

(ユニット 5 研究分担者)

家畜章 1 節から 26 節の解釈研究

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

拓殖大学公開タフスィール研究会 2010 年 5 月 29 日 拓殖大学 C 館

発 表 者 名 発 表 標 題

森 伸夫

(ユニット 5 研究分担者)

最近のサウジアラビア情勢――王位継承、民为化、治安、

宗派問題――

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

拓殖大学国際塾 2010 年 6 月 5 日 拓殖大学S館

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313

発 表 者 名 発 表 標 題

山尾 大

(ユニット 2 研究協力者)

イラク総選挙の分析と今後の展望

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

第 35 回中東情勢研究会 2010 年 4 月 21 日 日本エネルギー経

済研究所

発 表 者 名 発 表 標 題

山尾 大

(ユニット 2 研究協力者)

イラク戦争後の紛争と国家形成―部族の非公的治安機関を

めぐる問題―

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

『日本比較政治学会』 2010 年 6月 19-20 日 東京外国語大学

発 表 者 名 発 表 標 題

YAMAO Dai

(ユニット 2 研究協力者)

Changing Roles of Sectarianism as Cleavage: An Inquiry into the

Elections in Post-war Iraq

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Panel ―Transformation from Politics based on

CommunalIdentities to Cross-communal National Parties through

Electoral System: Cases of Iraq and Lebanon,‖ World Congress

of the Middle East Sturdies (WOCMES 3)

2010 年 7 月 20 日 Universitat de

Autonoma Barcelona,

Barcelona

発 表 者 名 発 表 標 題

YAMAO Dai

(ユニット 2 研究協力者)

Ṣādiq al-Ṣadr and his Social Movement under the Authoritarian

Regime in the 1990s Iraq

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Iraqi-Japanese Symposium 2010 年 9 月 21 日 University of Salah

al-Din, Erbil, Iraq

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314

発 表 者 名 発 表 標 題

山尾大・溝渕正季

(ユニット 2 研究協力者)

イラクとレバノンの世論調査について

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本行動計量学会第 38 回大会 2010 年 9 月 25 日 埼玉大学

発 表 者 名 発 表 標 題

YAMAO Dai

(ユニット 2 研究協力者)

Sectarianism Twisted: Changing Cleavages in the Elections of

Post-war Iraq

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Developing Environment of the Middle East Peace and Rearing

Young Researchers

2010 年 11 月 2 日

the Japan Institute for

International

Affairs, JIIA, Tokyo

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315

負団法人東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室

代表:三浦徹(東洋文庫・研究員/お茶の水女子大学・文教育学部・教授)

テーマ 『イスラーム地域研究史資料の収集・利用の促進とイスラーム史資料学の開拓』

【拠点形成の目的と意義】

イスラーム地域の政治・社会・文化を、その内側に立ち入って理解し研究するためには、現地語

で書かれた史資料が必要となる。東洋文庫は、いちはやく 1960 年代より中東の現地語史資料の本

格的な収集に着手した。現在日本では、大学や研究所など約 90 の図書館がアラビア文字で書かれ

たものだけで約 7 万タイトルのイスラーム地域の現地語史資料を所蔵するが(2007 年の NACSIS

登録数による)、東洋文庫は質量ともに最大の所蔵機関である(アラビア語 14100 タイトル、ペル

シア語 10700 タイトル、オスマントルコ語 1500 タイトル、トルコ語 13000 点、2007 年調査)。しか

し、欧米の大学では卖独で 10 万点をこえる現地語史資料を所蔵するところもあり、現地語史資料

の体系的な収集は急務である。

現在は、東京大学、京都大学、上智大学、東京外国語大学、アジア経済研究所など、現地語史資

料を大量に収集する機関が増加しており、これらの機関が連携し、体系的な収集と相互利用を進め

ていく必要がある。「イスラーム地域研究」プロジェクトにおいて東洋文庫班は、アラビア文字に

よる書誌データ検索システムを国立情報学研究所と連携して完成し、これによって現地語史資料の

書誌データの統一的な検索・利用が可能となっている。

(負)東洋文庫研究部に「イスラーム地域研究資料室 Documentation Center for Islamic Area Studies」

を設置し、ここを中心として、研究資料所蔵機関のネットワークをつくり、現地語史資料の体系的

な収集と利用を進める。また、これまでの体系的な研究がなされていなかった史料学・文献情報学

の分野を開拓することによって、研究者とライブラリアンの双方をサポートする。この意味で、東

洋文庫の拠点形成は、ネットワーク型のイスラーム地域研究全体をサポートする役割を果たし、次

世代のイスラーム地域研究の飛躍を準備する基盤となる。

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316

【組織】

(研究拠点構成員)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

三浦 徹 東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室室長、

お茶の水女子大学文教育学部教授 研究代表者

堀川 徹 東洋文庫研究部研究員、京都外国語大学外国語学

部教授 文書史料の比較制度研究

磯貝 健一 東洋文庫研究部研究員、追手門学院大学アジア学

科准教授 中央アジア史資料の収集・研究

大河原知樹 東洋文庫研究部研究員、東北大学大学院国際文化

研究科准教授 アラブ史資料の収集・研究

秋葉 淳 東洋文庫研究部研究員、千葉大学文学部准教授 トルコ史資料の収集・研究

柳谷あゆみ 人間文化研究機構地域研究推進センターPD研究

員、東洋文庫研究部研究員

アラブ史資料の収集・文献情報ネ

ットワーク形成

(研究分担者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 役 割 分 担 等

(担当研究テーマ)

三浦 徹 東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室室

長、お茶の水女子大学文教育学部教授 研究代表者

堀川 徹 東洋文庫研究部研究員、京都外国語大学外国語

学部教授 文書史料の比較制度研究

磯貝 健一 東洋文庫研究部研究員、追手門学院大学アジア

学科准教授 中央アジア史資料の収集・研究

大河原知樹 東洋文庫研究部研究員、東北大学大学院国際文

化研究科准教授 アラブ史資料の収集・研究

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317

秋葉 淳 東洋文庫研究部研究員、千葉大学文学部准教授 トルコ史資料の収集・研究

柳谷あゆみ 人間文化研究機構地域研究推進センターPD 研究

員、東洋文庫研究部研究員

アラブ史資料の収集・文献情報ネ

ットワーク形成

近藤 信彰 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究

所准教授 イラン史資料の収集・研究

渡辺 浩一 人間文化研究機構国文学研究資料館教授 文書史料の比較制度研究

Stefan KNOST Orient-Institut Beirut 研究員 文書史料の比較制度研究

Randi

DEGHUILHEM

CNRS (Centre National de la Recherche

Scientifique) 教授 文書史料の比較制度研究

(研究協力者)

氏 名 所 属 機 関 ・ 職 名 担当研究テーマ

伊藤 知義 中央大学法科大学院教授 「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

上野雅由樹 東京大学大学院総合文化研究科博士課程 オスマン帝国史料の総合的研究

江川ひかり 明治大学文学部教授 「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

小笠原弘幸 負団法人政治経済研究所研究員

「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

オスマン帝国史料の総合的研究

奥田 敤 慶應義塾大学総合政策学部教授 「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

佐々木 紳 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程 オスマン帝国史料の総合的研究

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318

澤井 一彰 負団法人東洋文庫・日本学術振興会特別研究員 オスマン帝国史料の総合的研究

田崎 博美 町田シビック法律事務所弁護士 「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

中田 考 同志社大学神学部教授 「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

長谷部圭彦 明治大学文学部・日本学術振興会特別研究員

「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

オスマン帝国史料の総合的研究

浜本 一典 同志社大学神学研究科博士後期課程 「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

藤波 伸嘉 東京大学東洋文化研究所・日本学術振興会特別

研究員

「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

オスマン帝国史料の総合的研究

堀井 聡江 桜美林大学リベラルアーツ学群専任講師

(早稲田大学拠点グループ1研究協力者)

「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

前野 直樹 日本サウディアラビア協会事務局長補佐 「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

松尾有里子 上智大学外国語学部非常勤講師 「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

松山 洋平 東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期

課程、日本学術振興会特別研究員

「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

黛 秋津 広島修道大学経済科学部准教授 オスマン帝国史料の総合的研究

宮下 修一 静岡大学大学院法務研究科准教授 「シャリーアと近代」オスマン民法

典研究

吉田 達矢 明治大学文学部兼任講師 オスマン帝国史料の総合的研究

Page 319: 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 - Waseda …...1 「イスラーム地域研究」研究実績報告書 (2010 年度版) 2011 年6 月16 日 早 稲 田

319

【2010 年度事業の目的と活動内容】

1.今年度事業の目的

現地語史資料の所蔵・整理・利用環境に関するアンケート調査の結果を踏まえ、現地語史資料の体系

的収集を継続し、共同利用を促進する。調査や司書連絡会等で得た情報や要望に基づき、現地語史料の

整理・書誌データ作成のための補助ツールの作成と公開、「日本における中東・イスラーム研究文献デー

タベース」の編集をはじめとする関連データベースの拡充を進める。また、史料研究について、原典講

読会および国内研究機関との連携による研究活動を実施し、研究情報の共有と若手研究者の育成を図る。

これらによって、史料および研究文献の収集と整理(情報化)と利用の 3 つの局面を連結したサイクル

を築き、国際的な共同利用にむけた環境改善をはかる。

(三浦徹)

2.今年度事業の内容

(1)拠点整備

①収集資料 DB の公開(URL: https://www.tbias.jp/php/book_search.php)

本 DB は多言語に対忚しており、アラビア文字及び翻字(ローマ字)いずれでも検索が可能である。2010

年度は新規入力を精力的に推し進め、2011 年 3 月現在、4168 件を公開している。書誌データ入力も順調

に進行している。収集雑誌コンテンツサービスでは、アラビア語雑誌『シュメール』のコンテンツを新

規に公開し、他雑誌についてもデータの更新を行った。

②中東研究文献 DB の公開(URL: http://www.tbias.jp/document_research.cgi)

日本中東学会と提携してデータ整備を進めている「日本における中東研究文献 DB」は、新規入力分と

して新たに 2000 件を追加公開した。

③イスラーム地域資料館・研究機関ガイドの公開

(URL: http://www.tbias.jp/researchguide_detail.html)

イスラーム地域各地の資料館・図書館、研究機関の利用環境情報を調査・公開することで学生や研究

者の現地調査の一助とすることを目的とした「イスラーム地域資料館・研究機関ガイド」を拠点サイト

に作成した。2010 年度はクロアチア、トルコ(イスタンブルおよびアンカラ)、タンザニア共和国ザンジ

バル、モロッコの 4 地域の機関利用情報を公開した。適宜内容を更新し、また掲載範囲の拡大を図って

いきたい。

(柳谷あゆみ)

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(2)資料収集

アラビア語・ペルシア語・オスマントルコ語を中心に現地語史資料の体系的収集を実施した。国内機

関の所蔵が尐なく、有益性が高いと思われる資料、また散逸の可能性が高い資料を優先する方針を採っ

ている。アラビア語では新刊資料を中心に、ペルシア語では政党や学生組織によって発行された新聞を

収集し、オスマントルコ語では昨年度に続いてイスタンブル以外の都市で出版された法学・文化・歴史

など多分野の資料を収集した。

①アラビア語資料

・形態と冊数:雑誌 9 冊(3 タイトル)、図書 215 冊

・収集目的:イスラーム地域現地語史資料の体系的収集

・収集方法:図書の大部分は、Leila Books(エジプト・カイロ)よりブランケット・オーダー方式と個別

注文の併用により購入。雑誌及び図書の一部は、Dar Ubadah 書店(シリア・ダマスカス)にて研究分担

者が収集した。

・資料内容:雑誌は、史学雑誌『マウリド』『シュメール』『マスクーカート(貨幣雑誌)』の補充を行っ

た。図書は、中東・アフリカ地域における歴史・地理・文学・宗教・文化分野の新刊研究書を中心に収

集したが、国内所蔵が尐なく、資料的価値が高いと思われるものは新刊以外でも収集対象とした。为な

資料は以下の通り。

Ibn Taghrī Birdī, al-Nujūm al-zāhirah fī mulūk Miṣr wa-al-Qāhirah, al-Qāhirah: Dār al-Kutub wa-al-Wathā‘iq

al-Qawmīyah, 2005-2006.

・収集期間:2010 年 4 月~2010 年 12 月

②ペルシア語資料

・形態と冊数:雑誌 15 冊(15 タイトル)

・収集目的:イスラーム地域現地語史資料の体系的収集

・収集方法:ドイツのイラン口承歴史研究所(RAIOH)より購入。

・資料内容:イラン国内では入手が難しい 20 世紀の政党および学生組織が刊行した新聞のリプリントを

収集した。为な収集資料は以下の通り。

Daneshjou: Tihran, 1950-1952.

・収集期間:2010 年 6 月

③オスマントルコ語資料

・形態と冊数:図書のみ 40 冊

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・収集目的:イスラーム地域現地語史資料の体系的収集

・収集方法:トルコ国内 Turkuaz 書店より購入。

・資料内容:イスタンブル以外で出版された資料も含め、法学・文学・史学分野を中心に収集した。オ

スマントルコ語資料は国内他機関での所蔵が尐ない状況を勘案し、網羅的な収集を心がけている。为な

収集資料は以下の通り。

Arrian, Tarih-i İskender bin Pilpos: Būlāq, Dār al-Ṭibā‗ah al-‗Āmirah, [1838].

・収集期間:2010 年 9 月

(柳谷あゆみ)

(3)文献情報ネットワークの構築・拡充

文献情報ネットワークの構築・拡充については、文献資料の整理・利用環境の実態調査を進め、環境

改善に向けて情報共有のための連絡会を開催した。また補助ツールの作成・公開を行った。

①アラビア文字図書 DB 連絡会(司書連絡会)

日時: 2011 年 3 月 4 日(金) 13:00~16:00

場所:負団法人東洋文庫 2 階講演室

参加機関:アジア経済研究所図書館/大阪大学外国学図書館/京都大学アジア・アフリカ研究科図書室/

国立国会図書館関西館アジア情報課/国立情報学研究所/東京外国語大学附属図書館/東京大学文学部図書

館人文社会系研究科図書室/東北大学附属図書館情報管理課/大学図書館支援機構/東洋文庫研究部イスラ

ーム地域研究資料室

概要:

本連絡会は、国内の为要アラビア文字資料所蔵機関の担当司書が集まり、アラビア文字図書整理環境の改善

と書誌の質の向上を目指して情報や問題点を共有し、協議するために開催されているものである。今年度はNPO

法人大学図書館支援機構を招き、図書館での为要整理業態となりつつある(広義での)外部委託までも対象に

含めた、整理支援のあり方を中心に以下の通り協議を行った。

1.昨年度報告 / 東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室 柳谷あゆみ

昨年度連絡会開催以降の活動について、①アラビア文字資料整理担当者ミーティング(2010 年 3 月 5 日)及

び情報共有を目的とした「アラビア文字資料整理メーリングリスト」の設立と、②イスラーム地域研究資料検

索・利用環境の調査(2010 年 1 月~2 月実施)の二つが報告され、補足として、報告者が 2010 年 3 月に参加し

たエジプトの司書ポータル Cybrarian による MARC21 研修が紹介された(詳細は昨年度報告を参照されたい)。

この研修の特色はFacebookでのCybrarianグループ参加者であれば所属や国籍を問わず参加可能である点である。

本報告後、イスラーム地域研究東洋文庫拠点の三浦徹代表が、1月以降のチュニジアやエジプトでの革命によ

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って高まっている中東への関心を持続させる為にも資料の組織的利用及びデータベース目録を進める必要があ

ることを強調し、来年度から二期目に入るイスラーム地域研究事業について、新たな課題を掲げつつ推進して

いく意向を述べた。

2.外部委託による図書整理作業者を含めた、図書整理支援について

アラビア文字資料の、非常勤職員、特に外部委託による整理について報告が行われた。自館スタッフ以外に

よる整理といっても、業務委託・派遣など業態はさまざまであり、さらに館外整理か館内整理かによっても状

況は異なるが、それぞれのケースにおける問題点が具体的に挙げられ、対忚が協議された。概要は以下のとお

りである。

業務委託によって館外で図書整理を行った場合、搬出入の作業的な困難、資料返還後の点検作業にかかる労

力が問題となる。また、業務委託は、委託者(図書館)と受託者(委託業者)間のやり取りでなければならな

いため、館内での整理の場合、委託業者から派遣される作業者に図書館側が(委託業者を介さず)直接指示を

与えると、偽装委託となってしまうという問題がある。

さらに、業者の担当者が行った作業にミスが見つかるというケースも存在する。整理者個人の語学・目録作

成能力が作業の成果を左右するため、図書館側が整理業務担当者を委託先に紹介し、その人材が委託先と契約

を結ぶ方法が対策として考えられるものの、これも偽装委託として法に触れる恐れがある。

派遣という形で非常勤職員に整理を任せる場合は職員が直接指示を出せるが、司書業務が(労働者派遣法に

おいて無期限で派遣可能とされている)専門的 26 業種に含まれない為、(長期雇用などで)法に抵触する可能

性がある。また、委託と同様、派遣されてくる作業者の能力水準が一定でないという欠点が存在する。

現在の状況で、アラビア文字資料整理の委託を行う際、精度の向上の為に図書館側ができることは、仕様書

を的確にすることである。今後、状況を改善する為には、仕様書に記載可能なように作業者のレベル認定が一

般化することが望ましいと考えられる。

各館報告及び協議ののちに、幅広い層を対象とした整理支援の一つとして、 NPO 大学図書館支援機構(IAAL)

による大学図書館業務実務能力認定試験についての報告に移った。

【報告】大学図書館業務実務能力認定試験について / NPO 大学図書館支援機構

大学図書館業務実務能力認定試験とは、NPO 大学図書館支援機構による図書館業務専門能力の検定試験で、

「総合目録-図書」と「総合目録-雑誌」の二部門に分かれている。現在は、「総合目録-図書」では検索・同定・

所蔵登録について検定する初級と書誌登録について検定する中級の二階級、「総合目録-雑誌」では初級のみ試験

が実施されている(今後、分野ごとの専門知識の評価基準を上級として作っていくことも検討されている)。こ

の試験の目的は、客観的な職業能力評価の指標の一つを提示することにある。

客観的に職業能力のレベルが証明されることで、採用者側ではこれを採用の際の参考資料と出来、図書館業務

に就く側には、レベル認定が専門的知識の獲得・向上に向けた学習意欲に結び付き、また将来的にはこれを待

遇の根拠とすることも考えられることから、人材確保・待遇改善の両面で効果が期待される。

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最後に、この試験は国立情報学研究所の後援を受けているが、継続・発展に向けては、個々の図書館におい

ても意義が認知されるとありがたいとの期待が述べられ、報告が締めくくられた。

その他の議題として、アラビア語雑誌遡及入力と収書の問題が取り上げられ、体系的収集にむけて特殊言語

資料を収集する図書館間で、何らかの共通認識は持てないかとの提起がなされた。

国立情報学研究所に対する質問が二点寄せられ、回筓があった。

(1)2009 年に募集された特殊文字、特殊言語資料の案に対するパブリックコメントについてその後の展開はど

のようになっているか。

回筓:意見募集時点の案に対する大幅な変更はおそらくない。確定の時期については現時点で明確な期日を

以っては筓えられないが、本件は継続して検討されている。

(2)遡及入力事業の進行について

回筓:現在第三期の一カ年目であり、第三期の計画は通っているが、その後については現時点では予測がつ

かない。

(大野佑衣)

②「アラビア文字資料整理簡易ガイド(改訂版)」公開(サイト公開)

2008 年度に刊行した「日本におけるアラビア文字資料の所蔵及び整理状況の調査」の付録として作成

したアラビア文字資料整理簡易ガイドに適宜修正を加え、拠点サイトにて公開した(URL:

http://www.tbias.jp/pdf/result.pdf)。

(柳谷あゆみ)

(4) TBIAS・SIAS2 連携研究会

東单アジアのアラビア文字資料の整理法の確立と目録作成を目的として「東单アジアのキターブ目録

勉強会」を開催し、京都国際会議にて Towards a Comparative Study of Southeast Asian Kitabs をテーマとし

たセッションを行ったほか、成果報告書として A Provisional Catalogue of Southeast Asian Kitabs of Sophia

University を刊行した。

この 5 年間の活動の結果として、目録刊行によって東单アジアのキターブ群を体系的に俯瞰すること

が可能になり、東单アジア研究において有用性の高い資料を提供する基盤が出来つつある。以後はコレ

クションの公開・利用を視野に入れ、目録のさらなる質的向上と利用環境整備を図っていく必要がある。

詳細は SIAS2 の報告を参照されたい。

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①第 1 回キターブ・カタログ勉強会

日時:2010 年 10 月 3 日(日) 10:00~14:00

場所:上智大学アジア文化研究所共用会議室(2 号館 630a)

概要: SIAS2 の報告を参照。

②キターブ・コレクションの公開・利用促進に関する勉強会

日時:2011 年 3 月 7 日(月) 13:30~15:30

場所:上智大学アジア文化研究所図書室(中央図書館 6 階 612 号室)

概要:SIAS2 の報告を参照。

(柳谷あゆみ)

(5)資料研究セミナー

国内の機関で進行中の文書研究プログラムと連携して資料研究についてのセミナーを開催し、若手研

究者らによる研究ネットワークの拡大及び研究者の育成に努めた。今年度は、前年度から継続してのセ

ミナー(中央アジア古文書セミナー、中央アジアの法制度研究会、オスマン文書セミナー)に加え、新

たにパーレン研究会を共催にて開催した。

①「中央アジア古文書セミナー」(前年度より通算第 8 回・第 9 回)

「中央アジア古文書セミナー」は、当該地域のイスラーム法廷文書読解技術を若手研究者に伝承する

という所期の目的を達成しつつある。また、「中央アジアの法制度史研究会」では、様々な専門分野の研

究者が定期的に顔を合わせ、所有、裁判等一定のテーマにつき議論を積み重ねたことにより、個々の参

加者の知見が学際的観点からより一層深化することとなった。

(磯貝健一)

第 8 回研究会

为催:京都外国語大学国際言語平和研究所

共催:NIHU 研究プログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点

日時:2010 年 4 月 3 日(土) 10:30~17:30(懇親会 18:00~19:30)

場所:京都外国語大学 11 号館 2 階会議室

概要:

中央アジア古文書セミナーは今回 8 回目を数える。今回は、中央アジアにおける古文書調査の拠点で

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もあり、ウズベキスタンにおいて堀川教授と共同研究を行っている、ウズベキスタン共和国東洋学研究

所(ビールーニー研究所)所長、アブドゥハリモフ博士の来日にあわせての 4 月開催となった。年度始

めの時期ではあったが、関西、関東、北海道から参加者を得て、また、上記東洋学研究所の研究員で、

現在日本学術振興会の招聘研究員として日本で研究活動に従事されているバフティヤール・ババジャー

ノフ博士も参加され、参加者は約 30 人を数えた。

午前中は、プロジェクトの責任者である堀川徹教授(京都外国語大学)による趣旨説明が行われたあ

と、来日されたウズベキスタン東洋学研究所所長のアブドゥハリモフ博士が紹介され、続いて博士自身

が ―Research on the historical documents in the al-Biruni Institute in Tashkent and its perspectives‖と題する講演

を行った。

アブドゥハリモフ博士の講演の内容は二部に分かれる。

第一部は、これまでの中央アジア史研究を概観した後に、現在のウズベキスタン東洋学研究所(ビー

ルーニー研究所)で行われている外国の学術機関との共同研究についての説明がなされた。帝政時代以

来、ソヴィエト時代を中心とした、ロシア系研究者による文書研究の歴史、その成果などが簡潔に概観

された。続いて東洋学研究所による積極的な外国学術機関との共同研究が紹介された。堀川教授率いる

本プロジェクトの他、ドイツのハッレ大学との共同研究、トルコのハジテペ大学との共同研究にも話は

及び、同研究所がウズベキスタンを代表する学術機関として独自の研究活動だけでなく、外国研究者に

積極的に便宜を供与し、中央アジア史研究の発展のために尽力している事情を知ることが出来た。

第二部として、同研究所が所蔵するナサフィー Abū Ḥafṣ al-Nasafī による 12 世紀末のアラビア語の百

科書的文献 Maṭla„ al-nujūm wa Majma„ al-„ulūm(1364 年書写)を紹介した。同書参照により 14 世紀中央

アジアでどのような法廷文書が作成され世の中で利用されていたのかを知ることが出来ると述べられた。

質疑においては、ドイツ・ハッレ大学の研究プロジェクトと日本側の研究プロジェクトの間にある研

究傾向の違いや、所蔵するワクフ文書には、設定文書、運用文書、会計文書など複数の種類が存在する

のかといった質問が上った。また紹介された写本について、これは「シュルート shurūṭ」と呼ばれる文献

ではないか、との問い合わせに対し、同書が、今回紹介した部分だけでなく、法学 feqh や科学天文学な

ど極めて多様な分野の情報を含み、百科辞典的な作品であることが改めて確認された。

アブドゥハリモフ博士自身はアラブ科学史の研究者であるが、本セミナー参加者の興味関心にあわせ

て、古文書研究に関する貴重な報告をいただけたことに感謝したい。

午後からは、例年通り、磯貝健一氏と矢島洋一氏による古文書講読の講習が行われた。今回矢島氏が

取り上げた資料は、帝政崩壊後のホラズム人民ソヴィエト共和国時代の文書であり、現在ヒヴァのイチ

ャン・カラ博物館に所蔵されている。

今回特に「請願 ʻarz」という種類の文書を講読した。これまでプロジェクトで発見された「請願」文書

数百点にはワクフ関係の請願が多い。これらを網羅的に分析すると、ホラズム共和国時代のワクフにつ

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いて飛躍的に研究が進むであろうことが明らかにされた。

同文書は为としてアラビア文字のチュルク語で書かれる。ワクフ関係の文書は教育委員会の管轄にさ

れており、同委員会に対する請願という形式をとる。多くは表に請願が書かれ、裏に請願に対する回筓

が記されるが、時折、表面に色違いのインクで重ねて記されたりもするため、判読しづらいことが多い

という。実際の文書を通して、基本的な書式の確認をはじめ、解読する際のポイントなど、この新史料

に関する貴重な成果がふんだんに披露された。講読した文書は、イマームの資格認定試験に関する請願

やコーラン朗誦者とムタワッリーの関係に関する請願など、20 世紀初頭の帝政崩壊後のワクフ行政に拘

わる重要な情報が見られる。

矢島氏の講習に続き、磯貝氏による中央アジアのファトワー文書の講読・講習が行われた。今年扱わ

れたファトワー文書は、ホラズム、ブハラ、フェルガナという所謂「三ハン国」各地からサンプルをそ

ろえ、形式上の類似性を確認した上で、講読を行った。ホラズムからのファトワー文書は、同地がチュ

ルク語化していたためにチャガタイ語(アラビア文字チュルク語)であり、ブハラ、フェルガナのファ

トワー文書はペルシア語(タジク語)により記されている。ファトワー文書は「定型句+状況説明+見

解」という組み合わせから構成され、文書の端に、事案に該当する法学書から抜き書きが記される。

講読した順に簡卖に説明しておきたい。ホラズムのファトワー文書はワクフ設定後数十年後にワーキ

フの子孫が私有地としてムタワッリーに返還要求をしたことに対する反訴のためのものである。フェル

ガナのファトワー文書は、数十年前に占有された土地の返還にたいする反訴のためのものである。ブハ

ラのファトワー文書は、過去に売買された土地の大きさを巡り、売り手の子孫が買い手に対して土地の

一部の返却を求めたことに対する反訴のファトワーであった。講師の磯貝氏は、反訴の際には証拠とな

る証書が必要となるが、原告が訴えた際は、書かれた文書ではなく、証人が必要となる点が指摘された。

中央アジア古文書セミナーは、中堅・熟練の研究者と若手研究者が混じり、さらに中央アジア専門の

研究者に限らず、オスマン史、アラブ史、イラン史、インド史など多地域の専門家が集まり、有益な情

報を交換し、共有する恒例行事となっている。研究代表者としてプロジェクトの存続に尽力されている

堀川徹教授をはじめ、講師を務めた磯貝健一氏、矢島洋一氏、さらにウズベキスタン内で研究協力を惜

しまない東洋学研究所のアブドゥハリモフ博士やババジャーノフ博士に謝意を表しつつ、今後の継続・

発展を期待したい。

(阿部尚史)

第 9 回研究会

为催:京都外国語大学国際言語平和研究所

共催:NIHU プログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点

日時:2011 年 3 月 26 日(土) 11:00~17:50

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場所:京都外国語大学国際交流会館 4 階会議室(No.941)

概要:

約 2 週間前に、東日本大震災にみまわれたが、震災にもかかわらず参加者は 25 人を数えた。

今回第 9 回となる中央アジア古文書セミナーは、中央アジアのムスリムたちの遺産相続に特に焦点を

当てたものとなった。

まず午前中に、磯貝真澄氏が、「ロシア連邦ウファ市国立中央歴史文書館ムスリム遺産分割関係文書の

紹介」と題する報告を行った。18 世紀に創設されたオレンブルグ・ムスリム宗務協議会管轄下で作成さ

れ、現在ウファ市の文書館に所蔵されている行政文書フォンドの紹介の後、当該フォンドに含まれる遺

産相続文書の内容や書式などが明らかにされた。ここでは、従来あまり知られていない、帝政ロシア内

のムスリムの遺産相続と行政府の関わり合いなども垣間見ることができ、非常に意義深かった。こうし

た研究は、本プロジェクトで中心的に扱っているブハラ、ヒヴァ、コーカンドなどマーワラーアンナフ

ルにおける文書処理との比較を考える上でも重要な意味を持つと考えられる。

午後からは、例年通り、磯貝健一氏と矢島洋一氏による古文書講読の講習が行われた。今回矢島洋一

氏は、帝政期以前、帝政期、革命後という三つの時代から遺産分割に関するブハラ地方のタジク語文書

を取り上げた。まず、冒頭に分割対象(又は相続対象)となっている物件が記され、その後に、被相続

人と相続人が明記されている。相続人には遺産全体に対する取り分の比率も添えられる。最後に、相続

に関わる具体的な法的行為の説明がなされる。矢島氏によれば、大きな政治的な変化にもかかわらず、

基本的な文書のスタイルには大きな変化がみられないという。なお、こうしたスタイルは、実は 16 世紀

サマルカンドの遺産分割文書の写しにも確認できることも説明された。

今回講読した文書には、遺産として不動産のみならず、織物や金属製品など、動産も列挙されており、

当時の生活文化を知る上で重要な史料となることも明らかとなった。

矢島氏の講習に続き、磯貝健一氏による中央アジアのファトワー文書の講読・講習が行われた。今年

講読したファトワー文書は、セミナーの特集にあわせて、遺産分割に関連し、同一案件に関連する3通

の文書であった。なお、磯貝健一氏によれば、一つの案件を対象とするファトワーが複数発見されたケ

ースは極めて尐なく、非常に貴重なサンプルであるという。ファトワー文書は「定型句+状況説明+見

解」という組み合わせから構成され、文書の右端に、事案の可否を判断する論拠となる学説が、法学書

から引用されていることや、定型句に関する説明も行われた。

今回講読したファトワー文書は、遺産相続に際して、他の相続人から訴えられた被告が代理人を委任

すること、及びその代理人を通じて裁判の途中で原告に対して別訴訟を起こすことの是非を問うもので

あった。原告側と被告側の双方から求められ発給されたファトワー文書を講読したのであるが、その結

果論拠となっている法学書からの引用が実はファトワー要請者の意向に沿ってかなり恣意的に行われて

いることが明らかにされた。従って、ファトワー文書を用いて研究するものは、可能な限り、引用元の

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法学書原典に立ち返り確認するべきであるという。

中央アジア古文書セミナーは今回で 9 回目であり、例年、様々な地域時代を対象とする研究者が、多

様な世代から参加している。常に中央アジア古文書研究の最新の成果に触れることができるだけでなく、

他地域を対象とする研究者からの比較も含め活発な情報交換の場となっており、こうした研究プロジェ

クトが継続している意義は非常に大きい。震災の影響で首都圏では研究会等が軒並み中止または延期に

追い込まれている。そうした中で、比較的被害の尐ない関西圏だからこそ、と今回もセミナーの実現に

尽力された研究代表者の堀川徹教授をはじめ、講師を務めた磯貝健一氏、矢島洋一氏、磯貝真澄氏に敬

意と謝意を表しつつ、今後の一層の継続・発展を期待したい。

(阿部尚史)

②中央アジアの法制度研究会(前年度から通算第 7 回・第 8 回)

第 7 回研究会

为催:京都外国語大学国際言語平和研究所

共催:NIHU 研究プログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点

日時:2010 年 5 月 30 日(日) 10:30~17:00

場所:京都外国語大学 9 号館(国際交流会館)4 階会議室

概要:

第 7回の中央アジアの法制度研究会は、2名の報告者および報告者それぞれへの 2名のコメンテーター、

そして参加者の合計 25 名を迎えて行われた。今回は歴史学の専門家が 20 世紀初頭に至る中央アジアの

定住民地域、遊牧民地域それぞれの裁判制度について報告を行うこととなった。

堀川徹氏(京都外国語大学)の趣旨説明に続いて、磯貝健一氏(追手門学院学院大学)が 20 世紀初頭

中央アジアの裁判関連文書にもとづきながら、中央アジアの定住民地域における伝統的裁判制度を明ら

かにした。まずシャハト J. Schacht の提示する裁判の流れを確認し、中央アジアの各種裁判関連文書(訴

状、判決文、ファトワー)を実例にもとづきながら提示、さらに中央アジアにおける伝統的なイスラー

ム法裁判のながれの再構成を行った。加えて紛糾した裁判の実例と、その際にファトワーが果たした役

割についての検討が行われ、法学者たちが学説を取捨選択しつつファトワーの作成依頼者の要請に合う

ようなファトワーを作り上げていたという新事実が明らかにされ、ムフティーの実践的営みが浮き彫り

になった。そして結論として以下の二点が挙げられた。

①中央アジアの伝統的裁判制度は、かつてシャハトが提示したイスラーム法裁判制度と本質的に同一

のものであり、②中央アジアの伝統的裁判制度においては、ムフティーおよび彼が提出するファトワー

が重要な役割を果たしていた。

続いて堀井聡江氏(桜美林大学)が報告内容に対するコメントを行った。イスラーム法理論の研究を

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進める氏は、まずイスラーム法研究には、①法学者、法理論に関する研究、②文書・ファトワーに関す

る研究、の二つの研究対象があり、各地域においてイスラーム法がどの程度適用されていたか、カーデ

ィー、ムフティーの役割が地域において大きかったか否かという点が論じられる傾向にある、という解

説を行い、加えて磯貝氏の研究が、イスラーム法研究の空白地帯である中央アジアの実例を明らかにす

る貴重な財献であることを評価した。そしてムフティーの役割の解明、とくにムフティーのファトワー

がカーディーの判決にどのような影響を与えていたのか、という点を解明することが今後の課題となり

うることを指摘した。

午後は、野田仁氏(早稲田大学)が草原の「慣習法」、イスラーム法、ロシア法の交差するところに 19

世紀カザフ遊牧民に関する裁判・司法制度を位置づける報告を行った。まず研究史および 19 世紀に至る

カザフにおける法、裁判の概観がなされたのち、1822 年、1867・68 年のロシアの統治規程に反映された

カザフの裁判・司法制度を明らかにし、最後に文書史料に現れる事例およびイリ地方における実態を指

摘した。その結果、19 世紀カザフの法制度は、ロシア法の影響を受けて変化する過程にあったことが示

されるとともに、「慣習法」、イスラーム法、ロシア法それぞれで用いられる用語が混用されていたこと

が明確になった。

続いて萩原守氏(神戸大学)からの報告内容に対するコメントが続いた。18 世紀以降のモンゴル遊牧

民社会における裁判制度の研究を進める氏は、モンゴルとカザフが、それぞれ清朝とロシアの統治下に

あったことを踏まえ、比較の視点から両者の裁判制度についてコメントを行った。両者間の差異として

は、ビイとカーディーの存在/行政と司法は不可分、刑事と民事の別/刑事と民事は区別せず、ビイの

裁定は口頭で行われる/すべての判決を文書に記録する、現地の法と統治者の法との擦り合わせが行わ

れる/対象となる集団別に法典化されており擦り合わせの必要なし、といった点が挙げられた。また共

通点として、賠償による和解が存在したことが挙げられた。

2 名の報告およびそれに対するそれぞれ 2 名のコメントを受けて、最後に全体討論が行われた。その議

論は多岐にわたったが、とくに複数の参加者の間で議論を呼び起こした点は、制定法にもとづく行政的

司法の空間と慣習法の空間との二重構造が存在した可能性についてである。この大江泰一郎氏(静岡大

学)の提起に対し、吉田世津子氏(四国学院大学)はスタティックな二重構造論の危険性を指摘したが、

いずれにせよ行政の一部として司法が行われるのか、「民衆」が法を司るのか、という論点は、時間軸や

法の執行者たちの社会における位置づけを意識したうえで、中央アジアと他の地域との比較を行う際に

は有効な切り口となりうるかもしれない。

今回は日本や单アジアの事例への言及が僅尐であったが、19 世紀から 20 世紀初頭の中央アジアにおけ

る裁判制度の実態に関して、北部草原地帯の遊牧民カザフと单部オアシス地域の定住民との間の共通・

相違点が数多く指摘されたことは重要な成果であると考えられる。また、磯貝氏が紹介した 1870 年代の

サマルカンドにおいて第三者が原告と被告に和解を促すプロセス、また野田氏が指摘した 1830 年代遊牧

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民カザフの間での土地をめぐる係争に対する法廷の「調停的」性格は、それぞれの特質を有する社会に

おいて、裁判が人々の生活にどの程度の重みを占めていたのか、を知る上で示唆に富む。

(塩谷哲史)

第 8 回研究会

为催:京都外国語大学国際言語平和研究所

共催:NIHU 研究プログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点

日時:第 1 日:2010 年 12 月 4 日(土) 13:00~17:30 第 2 日:2010 年 12 月 5 日(日) 9:30~11:00

場所:静岡大学人文学部 A 棟 6 階大会議室(第 1 日)、静岡大学人文学部E棟 1 階E101 教室(第 2 日)

概要:

第 8 回を迎えた中央アジアの法制度研究会は、第 1 日が静岡大学人文学部 A 棟 6 階大会議室、第 2

日が静岡大学人文学部E棟 1 階 E101 教室にて開催された。今回は、中央アジア(モンゴルを含む)、

ロシア、中東の法学、歴史学の専門家 16 名が参加した。

報告は、地域としてはセルビア、モンゴル、ロシアとユーラシアの東西をカヴァーし、時代も 10

世紀や 15 世紀にさかのぼる言及がなされたが、それぞれの報告の話題の中心は 18-19 世紀を対象に

していたと言ってよいだろう。

それでは、個別の報告の紹介にうつりたい。伊藤知義氏の「近代前後のセルビアにおける伝統法と

イスラム法の影響」によれば、オスマン朝支配下のセルビアにおいては、イスラーム法(シャリーア)

と国家法(カーヌーン)、そのほかに各宗教共同体を卖位とした宗教法(ミッレト法)、場所によって

は慣習法が適用されていたという。1829 年の自治権獲得後、中世セルビア法の復活の試みはあった

ものの、西欧近代市民法の導入が図られていく。その過程でトルコ支配時代の影響は喪失していった

が、人々の法意識の転換による市民法の浸透は容易ではなかった。

本報告に対して、オスマン朝から独立したセルビアと、清朝から独立したモンゴルという比較の見

地から、後者において清朝の行政・法制度を担う階層(書記たち)がモンゴル近代国家を支え、そう

した制度が継承されえたのに対して、前者ではオスマン朝の支配制度を継承しうる階層が欠如として

いたためにオスマン朝期の制度が継承されなかった可能性、また、知識人層が従来から西欧とのつな

がりを保っていたため、制度の継承をせずに西欧近代法を導入しえたのではないか、といった指摘が

なされた。

またオスマン朝統治下の他地域との比較から、農村では優勢でありながらも都市では必ずしも優勢

ではなかったセルビア人の間に、どれほどシャリーアが浸透しえたのか、という点についての議論が

なされた。

額定其労氏の「清代ハラチン・モンゴルにおける裁判―ハラチン右翼旗を事例として―」は、清代

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モンゴルの行政区分「旗」ごとの個々の裁判の事例とその特質を検討することによって、その成果を

総合して清代モンゴルの裁判制度の全体像を明らかにするという精力的な研究の一端を報告するも

のであった。氏は、ハラチン右翼旗において、旗のザサク衙門に置かれた印務処が案件を審理し、そ

れを旗の長たるザサクに上申し、その後どこで処理が行われるかが決定されていたことを踏まえ、そ

のあり方が十戸長と村の連合体たる社の長との中間に位置していたダーマルに最初に訴訟が託され、

そこで処理されえない案件が印務処へと移送されたアラシャ旗の裁判のあり方と対照的であること

を指摘した。そしてこうしたあり方の違いが、それぞれの旗の社会編成のあり方の違いと密接に関わ

っていたのではないか、という展望を示す。氏の報告に対し、オスマン朝の事例を除いては、いわゆ

るイスラーム世界において刑事裁判の流れをこれほどまでに詳細に解明した研究はまだないのでは

ないか、という意見が出された。同時に、年ごとに裁判文書を保管していたという清朝司法行政の史

料の残し方との差異にも目が向けられた。それに関連して、保管されてきた裁判文書が判例として参

照されたのか、という質問もなされたが、清朝は判例参照を禁止しており、尐なくとも公には参照は

なされなかった点が指摘された。

大江泰一郎氏の「ロシアにおける民法典・民法学と法文化」は、ロシアへの西欧民法導入のあり方

に注目し、とりわけ 1832 年スペランスキー法典の編纂に際して、所有権の概念がプロイセンから受

容され、ロシアの社会に合わせて変容していくプロセスを明らかにしていく。氏が展開する、西欧法

と共通の法文化をもっていたロシアが、10 世紀東方キリスト教の受容、13-15 世紀のタタールの軛を

経て、その共通の要素のいくつかを失っていき、そうした法文化の基盤の上に、西欧近代法のロシア

的解釈がなされていったという議論は興味深い。

質問としては、ロシアと対置される「西欧」を共通の法文化をもつ一体として見なしてよいのか、

またコメントとしてモンゴルの支配は、近年の実証研究の成果により、概ね現地の支配機構、社会制

度を利用したものであったことが明らかにされてきているとのコメントがなされた。一方で、モンゴ

ル期にロシアの支配機構のあり方が変質した可能性も否定できないとの議論も行われている。

今回の報告では、近代移行期における法の継受という側面からの報告が引き続きなされる一方、清

代モンゴルについては個別具体的な裁判の様相が紹介された。

本研究会では当初、法学研究者と歴史学研究者とのアプローチの違いを踏まえて相互の議論の接点

を探るために、より大局的な報告を通して議論がなされてきたが、今回は個別事例に則した報告も行

われることになった。今後、時代における都市と農村における法文化の違い(慣習法の問題など)の

あり方、史料としての裁判文書の由来、保管のあり方を明らかにしたうえでの裁判の地域的特性の比

較といった視点をもとに議論が深められる可能性があるように思われた。

(塩谷哲史)

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③第 1 回パーレン研究会

为催:京都外国語大学国際言語平和研究所

共催:NIHU 研究プログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点

日時:2010 年 10 月 3 日(日) 13:00~17:30

場所:京都外国語大学 9 号館(国際交流会館)4 階会議室

概要:

第 1 回パーレン研究会は、京都外国語大学国際交流会館 4 階会議室で行われた。報告者は現在〔平成

22 年 10 月 3 日現在〕北海道大学スラブ研究センターに滞在中のアレクサンダー・モリソン Alexander

Morrison、ベアトリーチェ・ペナティ Beatrice Penati 両氏である。報告、質疑忚筓はともに英語で行われ

た。なお、本報告は同センターの宇山智彦氏のご尽力によって開催が可能となったことを付け加えたい。

パーレン Константин Константинович Пален (1861-1923) は、帝政ロシアの上院議員であり、1908 年 6

月から 1909 年にかけて当時ロシアの植民地であったトルキスタンの査察を行い、23 巻にのぼる膨大な報

告書を残した。本研究会は、この浩瀚なトルキスタンに関する査察報告書の検討と中央アジア古文書研

究への忚用を目指している。その上で、ロシアのトルキスタン統治の視点からパーレンの報告書を史料

として検討した両者の報告は、パーレン報告書の性格を踏まえた上で、その利用にはいかなる問題があ

るのか、どのような研究が可能か、といった基本的課題を整理する上で重要な意味を持つ。

モリソン氏は、―An Exercise in Futility? Some Reflections on Senator Count K. K. Palen‘s Commission of

Inspection in Turkestan, 1908-1911‖と題する報告を行った。氏には、ロシアのトルキスタン統治と英領イン

ド統治を比較した著書『ロシアのサマルカンド統治 1868-1910』(オックスフォード、2008 年)がある。

モリソン氏は、はじめにパーレン査察団の活動およびその報告書の全容、情報源、ロシア国立歴史文書

館のパーレンのフォンドにある史料が持つ可能性についての紹介を行い、パーレンの報告書から見える

トルキスタンの「民衆法廷 народный суд」ないしカーディー法廷および植民問題 переселенческое дело

の諸相についての報告を行った。パーレンの報告書の史料性について、その大半が先行する文献や州要

覧などに拠っており、二次文献とも言いうる性格を有しているという指摘は、今後本報告書を用いる際

に注意すべき点であろう。

質疑では、植民の増加には、鉄道の敶設など帝政の政策が背景にあったのではないか、現地ムスリム

知識人のカーディーたちに対する視座との関係はどうであったのか、パーレンの持っていた「イスラー

ム世界」ないしシャリーアの普及している地理的空間の広がりに関する認識はどのようなものであった

のか、中央アジアで広く普及していたイスラーム法学書ヒダーヤは、英領期インドのムスリム知識人た

ちにはどう受け入れられていたのか、といった点が議論された。また、本報告では、以上二つ―カーデ

ィー法廷と植民―を個々の事例は、ともに英領インドや仏領アルジェリアの事例との比較が可能である

という指摘がなされた。

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続いてペナティ氏は、―On the Context of Pahlen‘s Report: Some Debates about Land Settlement and Forestry,

1907-1910‖と題する報告を行った。氏は、ヨーロッパにおけるロシア・ムスリムの亡命者たちの活動、バ

スマチ運動に関する研究に加え、現在は帝政期からソ連期(1930 年代)にかけてのやや広いタイムスパ

ンで、トルキスタンの土地と水の問題についての研究を進めている。本報告は、パーレンの査察に前後

する 1907-1910 年の間に、ペテルブルグとトルキスタンで行われたトルキスタンの土地査定事業、土地整

理事業に関する議論を、余剰地や自然林の把握の問題などに注目して考察し、両者間の見解の齟齬を明

らかにする試みであった。本報告は、ハプスブルク帝国や清朝において注目されながらも、帝政ロシア

のトルキスタンにおいてはいまだ未開拓の森林政策を扱ったものとして評価された。

質疑では、薪など利用量を把握しにくい資源に対する課税問題はどうであったのか、ロシア語で「国

有地 государственная / казенная земля」と訳される土地の概念と、中央アジアで広く用いられていた「国

有地 mamlaka-yi pādshāhī」と呼ばれる土地の概念との差異を報告者はどう考えているのか、近年トルキ

スタンを含め、ロシア帝国全体の負政、土地、水の所有の問題を検討している E. Pravilova の研究に対す

る批判点はどこか、といった点についての議論がなされた。とりわけ余剰地 излишки の問題は、余剰水

свободные вода の問題と関連して論じられるべきであるという印象を受けた。

いずれの報告もロシアの植民地統治史料を为要史料として用いていたが、ともに現地人の視線、現地

語史料にもとづく研究成果への配慮がなされていた。参加者は 11 名と尐なめであったが、ボン大学で教

鞭をとられ、現在関西学院大学文学部客員教授として来日中である Ralph Kauz 氏(イスラーム圏と東ア

ジアとの関係史を専門とされる)が参加され、おもに比較の見地から有益なコメントをいただけたこと

は、本研究会の活動が国際的な学術財献に資し、かつ今後本研究会テーマに関心をもつ海外の研究者と

研究交流を行っていく上で重要な意味を持つと考えられる。

(塩谷哲史)

④中東イスラーム研究教育プロジェクトオスマン文書セミナー(前年度から通算第 3 回)

第 3 回オスマン文書セミナーは、12 月 22 日から 23 日に開催された。勅令枢機簿を取り上げ、時代の

異なる文書を講読した。3 年連続の開催により、20 名以上の参加者でセミナーが定着するとともに、毎

回異なった種類の文書を取り上げることで、さまざまな時代・形式の文書に慣れることができる。来年

以降には、シャリーア法廷台帳を取り上げることが検討されている。

(近藤信彰)

第 3 回セミナー

为催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所

共催:NIHU プログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点

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日時:2010 年 12 月 22 日(水)~23 日(木)

場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 3 階大会議室(303 号室)

講師:高松洋一(AA 研) 齋藤久美子(AA 研ジュニア・フェロー)

概要:

3 回目となる今回のオスマン文書セミナーは、12 月 22、23 日、東京外国語大学アジア・アフリカ研究

所で行われ、初日は 16 名、2 日目は 22 名が参加した。

今回は重要な勅令の抄録簿であるミュヒンメ・デフテリ、勅令作成過程で作成された勅令草稿やその

写しなどの文書群について報告、講読そして討議がなされた。

初日はまず、今回扱う史料について、髙松洋一氏が以下のような報告をされた。

ミュヒンメ・デフテリを明確に定義することは難しい。しかし 16-20 世紀の記載内容と作成保管状況の

歴史的変遷を検討すると、特定の事項に特化せず、様々な事項を勅令のフォーマットで記録し続けてい

ったことがうかがえ、この点がミュヒンメ・デフテリの大きな特徴と言える。

残存するミュヒンメ・デフテリは、为に首相府オスマン文書館に保管されており、年代的に切れ目な

く残存しているわけではないが、今後新史料が見出される可能性も否定できない。

ミュヒンメ・デフテリの機能と作成状態については、18 世紀以降の膨大な勅令草稿を利用検討し、さ

らに考察を深めることが望まれるが、ミュヒンメ・デフテリには、勅令正文テキストにはない、勅令を

持参する人物の名前、書記の名前やイニシャル、他の行政部局への通知などといった情報が含まれてお

り、オスマン帝国の最高決定を知るために不可欠の史料と位置づけられる。

勅令草稿およびその写しといった文書群は、これまで古文書学で取り上げられたことがなかったが、

検討の結果、残存するこれらの文書群は为に 18 世紀以降に作成されたものであり、ミュヒンメ・デフテ

リが現存していない勅令テキストに関わる事例も含まれていることが明らかになった。また、大宰相に

よる点検の記録、作成理由への言及などがみられることから、勅令正本と比較検討することで、これら

の文書群の機能はもちろん、勅令の作成過程も明らかになろう。

以上の報告を踏まえて、髙松氏の指導のもと 18 世紀のミュヒンメ・デフテリの講読がなされ、その後

の討議ではミュヒンメ・デフテリの日付、製本状態などについて議論がなされた。

2 日目は、前半は齋藤久美子氏の指導のもと 16-17 世紀の非ムスリムに関わるミュヒンメ・デフテリの

变述の講読が、後半は髙松洋一氏の指導のもと 18-19 世紀の勅令草稿の講読がなされた。

そして総合討論では、書記官長の役割、勅令の送付方法、文書作成保管部局の役割などについて活発

な討議が行われた。

髙松氏のように、16 世紀から 20 世紀までのミュヒンメ・デフテリを通事的に検討分析するとともに、

勅令の作成に関連する文書類を網羅的に検討した研究者は、世界でも希有であり、貴重な研究成果を開

陳していただき、大変刺激になった。

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また参加者全てが髙松、齋藤両氏の講読そして討議に積極的に参加されており、今回のセミナーが、

オスマン帝国史研究のみならず、他の分野の参加者にとっても興味深く、有益なものであったことがう

かがえた。今後もこのセミナーが続くことを切に望むものである。

(今野毅)

(6)原典講読会

文書史料による比較制度研究では、近現代を含む文書史料(とりわけイスラーム法廷文書)をもとに、

その地域間比較を通してイスラーム地域の社会制度・社会関係の研究を推進している。今年度は拠点内

の二研究班で下記の通り資料研究・翻訳作業が進められた。

①シャリーアと近代:オスマン民法典研究会

オスマン民法典(メジェッレ)アラビア語訳の講読および翻訳作成を目的として発足したシャリーア

と近代研究会は、8 回の研究会(第 14 回~第 21 回)を開催し、法学、オスマン朝史、文書研究など関連

諸分野の研究者の協力を得て史料翻訳を 223 条から 261 条まで進めた。8 回の研究会のわりに、検討した

条文が尐なくなったのは、200 条以降、一つ一つの条文が長文化したこと、またイスラーム地域研究第 1

期終了を前に、『序篇』100 条の成果刊行を目標として打ち出したために、後半をその条文再検討に振り

向けたことが理由である。

しかしながら、早めに出版計画が決まったため、100 条の訳文の他にメジェッレに関する付論の位置づ

けとなる論文 3 つを掲載することができた。この出版によって、本研究会の第 2 期における活動を考え

るうえで重要な方向性を確認することができた。

第 14 回研究会

日時:2010 年 4 月 10 日(土) 13:00~18:00

会場:東洋文庫イスラーム地域研究資料室

報告:メジェッレ翻訳案 第 223 条~第 229 条

概要:

8 名の参加者によってメジェッレ翻訳案の 223 条から 229 条までの検討を進めた。

第 15 回研究会

日時:2010 年 5 月 15 日(土) 13:00~18:00

会場:東洋文庫イスラーム地域研究資料室

報告:メジェッレ翻訳案 第 230 条~第 239 条

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概要:

10 名の参加者によってメジェッレ翻訳案の 230 条から 239 条までの検討を進めた。

第 16 回研究会

日時:2010 年 6 月 19 日(土) 13:00~18:00

会場:東洋文庫イスラーム地域研究資料室

報告:メジェッレ翻訳案 第 240 条~第 251 条

概要:

9 名の参加者によってメジェッレ翻訳案の 240 条から 251 条までの検討を進めた。

第 17 回研究会

日時:2010 年 7 月 25 日(日) 13:00~17:30

会場:東洋文庫イスラーム地域研究資料室

報告:メジェッレ翻訳案 第 252 条~第 261 条

概要:

7 名の参加者によってメジェッレ翻訳案の 252 条から 261 条までの検討を進めた。

第 18 回研究会

日時:2010 年 10 月 31 日(日) 13:00~17:30

会場:東洋文庫イスラーム地域研究資料室

報告:メジェッレ翻訳案 第 1 条~第 100 条

概要:

7 名の参加者によってメジェッレ翻訳案の 1 条から 100 条までを出版用に再検討するとともに、出版計

画の打ち合わせを行った。

第 19 回研究会

日時:2010 年 11 月 14 日(日) 13:00~17:30

会場:東洋文庫イスラーム地域研究資料室

報告:メジェッレ翻訳案 第 1 条~第 100 条

概要:

8 名の参加者によってメジェッレ翻訳案の 1 条から 100 条までを出版用に再検討するとともに、出版計

画の打ち合わせを行った。

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第 20 回研究会

日時:2010 年 12 月 12 日(日) 13:00~17:30

会場:東洋文庫イスラーム地域研究資料室

報告:メジェッレ翻訳案 第 1 条~第 100 条

概要:

6 名の参加者によってメジェッレ翻訳案の 1 条から 100 条までを出版用に再検討するとともに、出版計

画の打ち合わせを行った。

第 21 回研究会

日時:2011 年 2 月 24 日(木) 13:00~17:30

会場:東洋文庫 7 階会議室

報告:メジェッレ翻訳案 第 1 条~第 100 条

概要:

5 名の参加者によってメジェッレ翻訳案の 1 条から 100 条までを出版用に再検討するとともに、出版計

画の打ち合わせを行った。

シャリーアと近代研究会は、第 1 期途中の平成 20 年度から約 2 年半にわたって計 21 回開催され、全

体の 14%ほどにあたる 261 条を訳し終えた。シャリーアという、高度に難解な分野を社会に紹介し、こ

の分野に興味を抱く若手研究者等を増やす、という意味では、本研究会は一定の成果をあげたと言えよ

う。実際に、卖なるイスラーム研究の枠組みを超え、比較法学分野の研究者、現役の弁護士、シャリー

アを研究中の大学院生の参加を得て、学際的な研究環境を構築したうえで翻訳を進められたことは、本

研究会の重要な成果である。この体制を第 2 期においても継続し、改良をくわえていくことが望まれる。

なお、前述の『序篇』刊行は、本研究会の第 1 期における研究活動の成果であるとともに、第 2 期にお

ける活動の一つの指針となるものである。

(大河原知樹)

②オスマン帝国史料の総合的研究

今年度は一回の読書会(前年度から通算第 8 回)を開催し、ジェヴデト・パシャ著『覚書』の訳出を

進めるとともに、前年度入手した自筆手稿本との対照作業を行い、訳文を点検した。また、オスマン帝

国史料を利用した忚用的研究の報告会を一回開催した。

「オスマン帝国史料の総合的研究」研究班では、19 世紀オスマン帝国の官僚・知識人であるジェヴデ

ト・パシャの『覚書』を読解・翻訳することを通じて、オスマン帝国の政治・制度に関する理解の深化、

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訳語の確定並びに翻訳技術の向上において一定の成果が見られた。また、不定期の講演会、研究報告会

は、史料の忚用について知見を広めることに財献した。

(秋葉淳)

第 8 回研究会

日時:2011 年 3 月 9 日(水) 13:30~17:30

会場:東洋文庫七階第一会議室

翻訳担当者:吉田達矢・秋葉淳

概要:

ジェヴデト・パシャ『覚書 (Tezakir)』第 1 巻 45 頁以降を訳出し、訳文の検討・修正を行った。

(柳谷あゆみ)

③研究会「オスマン帝国の諸問題」

为催:NIHU 研究プログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点 東京大学東洋文化研究所(東文研セ

ミナー・班研究「オスマン帝国史の諸問題」)

日時:2010 年 11 月 13 日(土) 14:00~16:50

場所:東京大学東洋文化研究所・3 階大会議室

概要:

NIHU イスラーム地域研究東洋文庫拠点と東京大学東洋文化研究所との共催による本研究会では、オス

マン帝国近代史を専門とする秋葉淳氏(千葉大学/東洋文庫)と、同じくオスマン帝国の史学史を専門

とする小笠原弘幸氏(政治経済研究所)とが研究報告をおこなった。開催日が他の学会や研究会と重な

ってしまったにもかかわらず、当日は両氏を含めて 12 名の参加者を得ることができた。

司会の鈴木董氏(東京大学)からの趣旨説明に続いて始まった「タンズィマート初期改革の修正:郡

行政をめぐる政策決定過程(1841-42 年)」と題する秋葉報告は、1839 年に始まったオスマン帝国の国家

機構の再編成(タンズィマート)のなかで、改革の実質をなす地方の行負政制度の再編に注目し、郡行

政をめぐる政策決定過程を中心として、改革初期の軌道修正のプロセスを検討したものである。とくに、

1840 年に創設された徴税官制度における徴税官と中央政府とのやりとりを事例として、中央政府が各地

の地方官に意見を求めながら改革の軌道修正をおこなっていく様子を、行政文書史料を用いて具体的に

明らかにした点は、秋葉報告の最も独創的かつ有意義な点であろう。

氏は結論として、中央政府からの諮問に対する地方官の筓申は、結果として中央政府の当初の方針を

大幅に変更することはなかったものの、タンズィマート改革の早い段階で政策決定のプロセスに地方官

からの意見聴取という手続きがとられたことに重要な意義が見いだせる、とした。

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「トルコ共和国公定歴史学における高校用教科書『歴史』(1931 年刊)の位置づけ」と題する小笠原報

告は、1930 年代に入って急速に構築が進められたトルコ共和国の「公定歴史学」の研究の一環として、

これまで注目されることの尐なかった高校用教科書『歴史』の記述内容や編纂の背景を検討したもので

ある。

前身たるオスマン帝国の歴史やイスラームを否定することに国家存立のイデオロギー的基盤を見いだ

していたと説明されることの多い共和国初期にあって、『歴史』の記述内容はイスラームに敵対的なわけ

でも、またオスマン帝国史全般に対する否定的な態度に彩られていたわけでもなかったとの分析結果は、

氏がこれまで進めてきた近代オスマン帝国における歴史变述との連続性や、これも氏が現在進めつつあ

る新史料を用いた「公定歴史学」の分析とあわせて、「公定歴史学」の成り立ちを解明する実証的研究の

進展に大いに財献するものと思われる。

両氏の報告のあと、休憩をはさんで、オスマン帝国近代史を専門とする佐々木紳(東京大学)と藤波

伸嘉氏(日本学術振興会)とがコメントを述べた。秋葉報告に関して、佐々木は中央と地方の板挟みと

なった地方官たちの戦略に、また藤波氏は国家に対する社会の強さや政策上の優先順位に言及した。小

笠原報告に関して、佐々木からは教科書の記述とそれ以外の歴史变述とのかかわりについて、藤波氏か

らは『歴史』の読者たる当時の高校生の社会的位置づけについて、言及があった。

コメントに続いて、フロアも交えた総合討論がおこなわれた。参加者の大半はオスマン帝国史を専門

とする研究者であったこともあり、討論は極めて学術的かつ建設的なものとなった。数例を挙げれば、

秋葉報告について、行政文書の形式面に注意する必要性や徴税官のキャリアに関する貴重な指摘があり、

小笠原報告については、教師や生徒など「現場」の反忚や 1920 年代の教科書との比較に関する質疑忚筓

がおこなわれた。なお、今回の報告内容に基づく両氏の論文も収載されたオスマン史研究の論集が近々

刊行されるとのことである。本研究会での成果も加味された有意義なものとなることを期待したい。

(佐々木紳)

(7)合同集会

为催:イスラーム地域研究早稲田大学中心拠点(WIAS)・イスラーム地域研究東洋文庫拠点(TBIAS)

日時:2010 年 7 月 3 日(土) 13:30~17:30(開場 13:00)

会場:早稲田大学 22 号館 202

概要:

2010 年度 NIHU プログラム・イスラーム地域研究合同集会(早稲田大学中心拠点・東洋文庫拠点共催)

では「イスラーム史料:原典が語りかけるもの」をテーマとする公開講演会が開催され、四人の研究者

がそれぞれ専門とする原典史料に関する講演を行った。

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最初に開会の辞を兼ねて、本講演会の企画を担当した東洋文庫拠点の三浦徹代表より、現地語史資料

の体系的収集・文献情報データベースと司書ネットワークの構築・文書資料による比較制度研究の三本

柱からなる東洋文庫拠点の活動の紹介が行われ、その後に講演に移った。

①第一講演:「回想録は語る:『バーブル・ナーマ』の魅力」/ 間野英二(京都大学名誉教授)

16 世紀にムガル朝創設者バーブルによって書かれた回想録『バーブル・ナーマ』は、テュルク散文学

史上の傑作のひとつに数えられている。講演では、内陸アジア出身の君为自身が残した回想録でありイ

スラーム教徒の自伝には珍しく自己の内面をごく率直に吐露している稀有の文学として、本書の魅力が

豊富な事例と美麗な画像とともに紹介された。また、『バーブル・ナーマ』の研究史においては、底本と

なる校訂本を欠く状況での訳業や研究の難しさが指摘され、校訂本作成の重要性が改めて明らかにされ

た。現在、『バーブル・ナーマ』校訂本及び邦訳は絶版状況にあるが、読み物としても面白い史料である

だけに、より身近な形での再版が望まれる。

②第二講演:「文学書が語る歴史、歴史書が語る文学」/ 山中由里子(国立民族学博物館)

比較文化の観点から文学と歴史の関連性をとらえたこの講演では、イスラーム以前のアレクサンドロ

ス大王伝説が西アジアのさまざまな時代・地域において、宗教や政治的な文脈からどのように受容・伝

播されてきたかが扱われた。クルアーンなどイスラーム初期の史料においてアレクサンドロス大王は「二

本角(ズル・カルナイン)」として登場するが、史実を排した物語的な存在として伝承されており、また

その内容からは拡大していくイスラーム共同体の体験を象徴的に映す存在という性質も見ることができ

る。これらの記述は、口頭で伝承され、断片的・象徴的であったが、アッバース朝成立以降、紙の導入

や非アラブの地位の向上に伴い、知的環境が変化したことで、年代考証やイランの文化的要素を加味し

た形で変相していく。

講演の最後にはガズナ朝期の頌詩など文学が歴史を語る例、またその中でのアレクサンドロス大王の

扱いについても触れられた。

③第三講演:「伝記は語る:『ムハンマド伝』の魅力」/ 後藤明(東洋大学)

イスラーム最初期の書物であり、預言者ムハンマドの伝記であるイブン・イスハーク著『ムハンマド

伝』について、まもなく本書邦訳を刊行する講演者が、その文化的背景なども含めた概要と面白さを語

った。本書で現存するのは 9 世紀初めにイブン・ヒシャームが編注を加えた版であるが、講演ではまず

『ムハンマド伝』執筆の事情や、編注が後年成立した学問に基づいているといった成立状況が紹介され、

翻訳に際しては(編注者ではなく)著者イブン・イスハークの執筆意図を重視していることが述べられた。

『ムハンマド伝』は天地創造以来最大の出来事である、イスラームの成立(神がムハンマドを選び啓

示を授けたこと)とそれを巡るさまざまな要素を变述したものである。

本質的には本書は「物語」であり、歴史的真実をここから読み取ることは出来ないが、講演者はアラ

ブ人の名前の構造を引きながら父祖が個人の人格の一部と考えられていた背景を踏まえ、全体としてみ

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れば、神がムハンマドを、ひいては彼に連なる父祖、支援者らを選んだのであり、ムハンマドが生まれ

ながらに神に保護されていたことを述べる内容となっていることを指摘した。講演はさらに变述の基本

的な形式や、人名列挙へのこだわりが見られる点など特色を挙げ、締めくくられた。

④第四講演:「文書は語る」/ 大河原知樹(東北大学)

15 世紀以降、オスマン朝期に急増したイスラーム法廷文書は史料としての利用価値が注目されつつあ

る。講演では、イスラーム法廷及び文書についての概説と、文書をいかに読むかという実践的な内容が

ダマスカスの大法廷の例をもとに豊富な史料をひきつつ論じられた。

イスラーム法廷文書は、時代差・地域差はあるものの、ダマスカスの例で言えば、当事者に授与され

る証書と、証書の記録として保管される台帳の二種類に分けられる。また、イスラーム法廷の業務は、

訴訟に加えて、司法・公証、結婚・離婚・相続、宗教寄進負産や教育機関の監督、勅令の受領・記録、

上奏書の作成、徴税請貟・「国有地」の管理、軍役や自然災害への対忚、公定価格設定、ギルドの監督、

宗教行事の日程確定など、多岐にわたる。このような概要の説明の後、現代の意味での司法権力とイコ

ールではないことが指摘された。ついで「法廷文書の―語り‖」と題し、事例の紹介に移った。勅令・上奏

書などの「公的な―語り‖」、また、関連する複数の訴訟例が示され、これらからコミュニティや官吏たち、

そして家族の中の内紛や歴史が推測できることが具体的に説明された。

合同集会は、各拠点の分担者・協力者が一同に会して交流する機会であり、拠点外の研究者・学生や、

一般の方々にプログラムの研究事業及び研究内容を紹介する機能も持つ。この規模の交流の機会は限ら

れていることもあり、为催側としては集客状況も気にしていたが、当日は 150 人近くの聴衆が集い、講

演者の巧みな語りに笑い声があがる場面もたびたび見られた。

(柳谷あゆみ)

(8)国際会議

第 3 回イスラーム地域研究京都国際会議 Session2B Continuity and Change of Legal Institutions:

Modernization and the Sharia Courts in the 19th and 20th Centuries

日時:2010 年 12 月 18 日(土) 9:00~11:00

場所:京都国際会議場

Convener: MIURA Toru (Professor, Ochanomizu University, Japan)

Chair: OKAWARA Tomoki (Associate Professor, Tohoku University, Japan)

Speakers:

1.Paolo SARTORI (Senior Research Fellow, Martin Luther University, Germany), Nomads, Sharī‗a Courts and

Established Practices in the Tashkent Province, ca.1868-1919

2.AKIBA Jun (Associate Professor, Chiba University, Japan), Sharia Judges in the Nizamiye Court System in

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the Late Ottoman Empire, 1864-1908

3.Léon BUSKENS (Professor, Leiden University, Netherlands), The Genesis of the Modern Judicial System in

Morocco

概要:

本セッションは、19 世紀中葉から 20 世紀中葉にかけて、イスラーム世界の諸地域におけるイスラーム

法廷(シャリーア法廷)の変化を为題とした。この時期には、ヨーロッパ諸国の影響をうけ、法や裁判

制度の改革が進められ、国家制定法によって裁判をおこなうような新しい法廷の創設や既存の法廷の改

革がなされた。他方で、シャリーア法廷は、このような世俗法廷と平行して存続し、シャリーアそのも

のも、シャリーアに依拠した制定法に置き換えられ、その代表例はオスマン帝国における民法典 Mecelle

である。

セッションでは 3 名の研究発表により、オスマン帝国、中央アジア、モロッコの 3 つの地域における、

シャリーア法廷と他の法廷の機能の実態に光をあてる。その比較を通して、近代におけるシャリーアの

あり方を、シャリーア対国家制定法という二分法ではなく、より深い地点から理解することをめざす。

この意味で、東洋文庫拠点が進めている Mecelle およびその法典編纂の中核人物であるジェヴデト・パシ

ャについての研究活動と深く結びついている。

サルトリ氏は、タシュケントのカーディー法廷の記録から、カザフの遊牧民が馬の盗難事件を当該法

廷に訴え、6 名(ないし 7 名)の証人の証言と自らの宣誓を行うことによって、馬を取り戻す判決をえた

多数の事例を示した。証人の証言による立証という手続きはイスラーム法に依拠するものであり、しか

も同様の立証と裁判は、慣習法に立脚するとされるロシアの行政官が管轄する法廷においても行われて

いた。すなわち、遊牧民はカーディー法廷と行政法廷の双方を利用しており、とくにカーディー法廷が

自分たちの負産権を保証しそれに必要な証書を提供するものとみていた。

秋葉氏は、1860 年代に、オスマン帝国の各州において、シャリーア法廷とは別に国家制定法によって

審理を行うために設置されたニザーミーヤ法廷の裁判官のキャリアに焦点をあてた。当初は、シャリー

ア法廷の裁判官(ナーイブ)がニザーミーヤ法廷の裁判官に任じられたが、後者が司法省の管轄となり、

民事と刑事の法廷が分離されていくに従い、旧来のシャリーア法廷裁判官では任務を十分に果たせない

という問題が生じた。このため、スタッフの確保のため、司法省は新たに法律学校を設立し、またナー

イブ学校(1855 年設置)では時代の要請に忚えるべく、メジェッレや刑法や刑事訴訟法などの授業科目

を採り入れた。半世紀にわたるこれらの努力の積み重ねによって、ニザーミーヤ法廷が機能するように

なったことを指摘した。

ブスケンス氏は、モロッコの近代の法制度の変化を 5 つの時期にわけて概観した。第 1 期(19 世紀末

から 1912 年まで)は中世以来の伝統の近代化の過程、第 2 期(フランス・スペインの統治期)で、仏西

の近代法とモロッコ王朝の法(イスラーム法、マフザン法、ベルベル慣習法、ユダヤ法)との多元的法

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体制の時期、第 3 期(1956-99)は、近代国家形成期であり、多元的法体制が廃され国家法への統合が進

められる。第 4 期は現在のムハンマド 6 世時代であり、市民社会の実現にむけた法改革が議論されてい

る。これらの過程に共通する問題としては、イスラーム法のダイナミックな性格とその位置づけが政治

性を帯びること、また家族法や人権のもつ重要性などが指摘された。

3 つの研究発表ののち、堀井聡江氏(桜美林大学)から为にイスラーム法理論の観点からコメントがな

され、フロアからも多数の質問が出された。イスラーム法は、前近代であれ近代であれ、決して一元的

な法秩序として君臨するのではなく国家法(行政法)や慣習法と併存してきた。今後も、イスラーム法

やその適用の問題について、多元的な法体制や法秩序の観点から考察することが必要である。

(三浦徹)

(9)海外派遣・調査

①ダマスカスにおける資料調査・収集

期間:2010 年 8 月 20 日(金)~9 月 4 日(土)

国名:シリア・アラブ共和国

出張者:柳谷あゆみ(人間文化研究機構 / 東洋文庫)

概要:

本出張では、フランス近東研究所(IFPO)にてアラビア語史資料収集・調査を行い、またダマスカス

市内書店等で資料の収集を進めた。

出張期間はラマダーン(断食月)と重なったため、フランス近東研究所図書館を始め、銀行など国内

機関の多くが短縮業務時間を採用していた。また、毎年開催の国際ブックフェアはラマダーンを避けて

日程を組むので(今年は 7 月 28 日から 8 月 8 日まで開催された。なお、ラマダーンは 8 月 11 日から 9

月 11 日まで)ここ数年は開催時期が不定期となっている。本出張で新刊収集は为眼ではなかったので、

ブックフェアを予定からはずしたが、国際ブックフェア訪問を目的とする場合、事前に開催時期を確認

しておく必要がある。

本出張ではフランス近東研究所にて、資料読解・調査を進めたほか、ダマスカス市内の書店にて昨年

50 巻を一括収集したイラクの史学・考古学雑誌『Sumer』の続刊を購入し、同じく史学雑誌『Mawrid』

や『Maskūkāt』の続刊も補充した。加えて Muḥammad Kurd ʻAlī による新聞『Muqtabas』やイラクで発行

されたシリア語・アラビア語雑誌『Majmaʻ al-Suriyānī』など終刊した逐次刊行物資料も購入した。

これらの収集資料については、追って当資料室 DB 及び東洋文庫書誌 DB にて書誌情報が公開されるの

でご参照いただきたい。

また、滞在中にベイルートの東洋学研究所(Orient Institut in Beirut)研究員、シュテファン・クノスト

氏(東洋文庫拠点研究分担者)に会い連絡事項の確認を行ったほか、同研究所にて出版している Ṣafadī、

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al-Wāfī bi-al-wafāyāt の新刊及び東洋文庫未所蔵分を購入した。同書は本年 30 巻まで刊行され、未刊行分

はインデックスを残すばかりとなった。東洋学研究所出版物は、過去刊行分の再刊が続いており、入手

が容易になったとの由。

(柳谷あゆみ)

②トルコにおける資料所蔵機関調査

期間:2010 年 8 月 7 日(土)~8 月 26 日(木)

国名:トルコ共和国

出張者:吉田達矢(明治大学文学部兼任講師)

概要:

本出張では、トルコ共和国のイスタンブルとアンカラにある文書館・図書館の現状や利用方法などに

ついて調査を行った。トルコにある研究施設の幾つかは独自のウェブサイトを開設しているが、更新が

あまり頻繁ではないところもあり、具体的な利用方法が示されていない場合もある。このため、直接赴

いて最新の情報を入手することが本出張の目的であった。

今回調査した为な研究施設は以下のものである(各研究施設に関する情報はイスラーム地域研究東洋文

庫拠点(TBIAS)のウェブサイトを参照されたい)。

イスタンブル : 総理府オスマン文書館、アタチュルク図書館、ミッレト図書館、スレイマニエ図書館、

キョプリュリュ図書館、ヌール・オスマニエ図書館、ベヤズット国立図書館、イスタンブル大学希尐書

図書館、イスラーム研究センター(通称: ISAM)図書館、オリエント研究所図書室、フランス・アナト

リア研究所(通称: IFEA)図書室、アメリカ・トルコ研究所(通称: ARIT)図書室、ボアジチ大学図書館、

ヤプ・クレディ・セルメト・チフテル図書室 など

アンカラ : トルコ歴史協会図書室、トルコ言語協会図書室、国立図書館、総理府ワクフ総局中央図書室、

総理府共和国文書館、地券・地籍簿総局文書館、ビルケント大学図書館

各研究施設の利用方法は、出張者の留学時(2002-2004 年)と比べて大きく異なる所が多かった。一部

の文書館や図書館では、いまだ関係機関(文化・観光省や外務省など)へ事前に研究許可申請をしなけ

れば利用できないものの、多くは直接赴き、その場で研究許可申請書を記入して提出すれば、その日の

うちに調査を行うことが可能であった。 さらには、デジタル化も進行しており、検索や手稿本・文書

などの史料の閲覧はパソコン端末を通じて行う形式になっている場合が多くなっていた。

このような状況は、史料へのアクセスが容易になった反面、史料に直に触れる機会が減尐しているこ

とを意味する。史料の保存を考慮すれば仕方がない状況であるが、研究方法も今後このような変化に対

忚していかなければならないように思われる。

以上のように、トルコ共和国の各研究機関におけるデジタル化は継続中であり、今回の出張では調査

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ができなかった文書館・図書館も含め、今後も各施設の情報を継続的に調査していく必要がある。

(吉田達矢)

③英国、モロッコにおける図書館及び資料調査

期間:2011 年 2 月 10 日(木)~2 月 24 日(木)

国名:英国、モロッコ王国

出張者:柳谷あゆみ(人間文化研究機構 / 東洋文庫)

概要:

本出張の目的は、ロンドンでの写本 DB 調査及びモロッコの図書館・文書館調査である。

2 月 10 日にロンドンに到着し、大英図書館、ウェルカム・ライブラリーにて資料および資料 DB の調

査を行った。ウェルカム・ライブラリーは英国大手製薬会社の創立者である故ヘンリー・ウェルカム卿

が創設した医薬系図書館で、イブン・シーナー『医学典範』など、中世の自然科学に関するアラビア語

著作写本 87 点から成るハッダード・コレクションを所蔵している。このハッダード・コレクションを中

心としたアラビア語写本 500 点の DB が完成間近と聞いたので、開発者 ニコライ・セリコフ Nikoraj

Serikoff 氏より DB のプロトタイプを見せていただき、概要を伺った。

このデータベースの特色は、多様なユーザーに合わせた構造と写本の特性に合わせた検索システムに

ある。記述すべき書誌情報は、通常は英米目録規則の記述精粗レベルの三段階によって選択されるが、

本データベースでは、ライブラリアン向け・インテレクツ向けというように独自の区分を用いて整理し、

それぞれの層が関心をもつ書誌情報を分けて掲載している。

また、本データベースに収録されている写本は、誤字もそのまま転記したオリジナルのテキストと、

誤字等を修正してある校訂テキストの双方によって、卖語レベルでの全文横断検索が可能である。写本

の画像は、拡大・縮小が可能で、また画像ウィンドウ自体も拡大・縮小可能。ライブラリアン・研究者

双方のニーズに合わせた面白い設計で、このまま公開されれば幅広い層に有用な DB になるのではないか

と思う。セリコフ氏の話によれば、今年 5 月に本データベースは公開予定、無料で利用可能との由。ま

た、写本資料を保有する機関があれば、この DB にぜひ参加してほしいとの希望も伺った。現在は、自然

科学分野に関するアラビア語古典写本が中心だが、参加ジャンルは特に限定されず、将来的にはアラビ

ア語以外の言語の資料にも対忚可能だが、文章の構造上、文書よりは現時点では書籍を为対象としたい

とのことである。

2 月 14 日夜からモロッコに移り、ラバトにて図書館・研究機関の利用環境調査及び資料調査を行った。

預言者聖誕祭(2 月 15 日)が重なったものの、市内の国立図書館、王立図書館、オランダ・モロッコ研

究所(Netherlands Instituut in Marokko)にて調査を行い、またジャック・ベルク・センター、ラ・スルス

文書館を訪問した。王立図書館では写本目録の寄贈を受け、またオランダ・モロッコ研究所では Hoogland

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所長と面会して図書館施設の紹介のほか、研究・教育事業についても概要を伺った。

19 日から陸路でフェズへ移動し、旧市街にあるカラーウィーイーン図書館にて調査を行った。

モロッコ国内では、首都ラバトで 20 日に大規模なデモが行われ、21 日にはラバト以外の都市でもデモ

が発生した。21 日には、フェズ新市街でのデモのため、午後 2 時ごろから旧市街でもスークのほぼ全店

舗が閉店し、カラーウィーイーン図書館も閉館となったが、大きな混乱はなかった。図書館から出され

て街の人たちと一緒にぞろぞろ帰途についていると、棍棒を持っている人を何人も見かけたが、見られ

ているのが判ると皆「問題ない」と笑顔で棍棒を服の中に隠していた。

途中では「政府は好きではないが、良い国王なのでうまく計らってもらいたい」という話をよく耳に

したので、国王賛成内閣反対との印象を受けたが、デモそのものは見ていないので、詳細は判らない(な

お、18 日にはラバトで 10 数名のデモを見たが、見た限りでは正規雇用の拡大など経済的な要求を訴えて

おり、体制批判という印象は受けなかった)。22 日にはほとんどの店は通常通り営業を行い、カラーウィ

ーイーン図書館でも無事に調査が進められた。

モロッコ国内の図書館・文書館の利用環境の調査結果は東洋文庫拠点サイト中の資料館ガイドとして

公開しているが、全般的に以下の二点は共通して言えると思う。

①モロッコの休日である土曜・日曜日と祝日は休館、②原則としてパスポート提示による身分証明によ

り閲覧は可。

ただし、写本資料の閲覧・複写については、目録がネット上で十分に公開されていない機関も多く、

王立図書館のように複写不可の機関もあるので、十分な準備と期間が必要である。

(柳谷あゆみ)

(10)研究成果・発表(各拠点発行物)

〔論文〕計( 4 )件

著 者 名 論 文 標 題

「シャリーアと近代」研究会(編) 〔全訳〕オスマン民法典(メジェッレ)序篇

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

大河原知樹・堀井聡江・磯貝健一(編)『オスマン民法典(メジ

ェッレ)研究序説』 -- 東京 : NIHU プログラム・イスラーム地

域研究東洋文庫拠点

2011. 3 1-20

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著 者 名 論 文 標 題

大河原 知樹

(研究分担者)

オスマン民法典(メジェッレ)略史:起草から失効まで

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

大河原知樹・堀井聡江・磯貝健一(編)『オスマン民法典(メジ

ェッレ)研究序説』 -- 東京 : NIHU プログラム・イスラーム地

域研究東洋文庫拠点

2011. 3 21-34

著 者 名 論 文 標 題

堀井 聡江

(早稲田大学拠点グループ 1 研究協力者)

メジェッレ研究序説

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

大河原知樹・堀井聡江・磯貝健一(編)『オスマン民法典(メジ

ェッレ)研究序説』 -- 東京 : NIHU プログラム・イスラーム地

域研究東洋文庫拠点

2011.3 35-42

著 者 名 論 文 標 題

浜本 一典 Al-Qawāʻid al-Fiqḥīya –イスラームの法諺–

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

大河原知樹・堀井聡江・磯貝健一(編)『オスマン民法典(メジ

ェッレ)研究序説』 -- 東京 : NIHU プログラム・イスラーム地

域研究東洋文庫拠点

2011. 3 43-52

〔図書〕計( 1 )件

著 者 名 出 版 社

大河原知樹(研究分担者)・堀井聡江(研

究協力者)・磯貝健一(研究分担者)(編)

NIHU プログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点

書 名 発 行 年 ページ

『オスマン民法典 (メジェッレ) 研究序説』 2011. 3 iii + 55

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(11)研究成果・発表(各拠点発行物以外)

〔論文〕計( 20 )件

著 者 名 論 文 標 題

秋葉 淳

(研究分担者)

タンズィマート初期改革の修正―郡行政をめぐる政策決定

過程(1841-42 年)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東洋文化』 91 2011 印刷中

著 者 名 論 文 標 題

磯貝 健一

(研究分担者)

中央アジア・イスラーム法廷における裁判システム―20 世

紀初頭サマルカンドのファトワー文書を中心として―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『北海道大学スラブ研究センター共同利用・共同研究拠点公募

プログラム・シンポジウム 北西ユーラシア歴史空間の再構築

ロシア外部の史料を通じてみた前近代ロシア世界 報告書』

2010 147-185

著 者 名 論 文 標 題

大河原 知樹

(研究分担者)

第 14 章:現代国家の枠組み

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

後藤明・木村喜博・安田喜憲編『西アジア』

(立川武蔵・安田喜博監修『朝倉世界地理講座-大地と人間の物

語』第 6 巻)

2010 359-384

著 者 名 論 文 標 題

近藤 信彰

(研究分担者)

八〇〇年後の「復讐」――西单アジアにおける「ソームナ

ートの門扉」の歴史

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

永原陽子(編)『生まれる歴史、創られる歴史』刀水書房 2011 31-52

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著 者 名 論 文 標 題

近藤 信彰

(研究分担者)

トルコ・モンゴル系国家とペルシア語文化:13-18 世紀

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

三浦徹(編)『イスラーム世界の歴史的展開』放送大学振興協会 2011 87-99

著 者 名 論 文 標 題

MIURA Toru

(拠点代表者)

The Salihiyya Quarter of Damascus at the Beginning of Ottoman

Rule: The Ambiguous Relations between Religious

Institutions and waqf Properties

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

Syria and Bilad al-Sham under Ottoman Rule: Essays in Honour of

Abdul-Karim Rafeq, edited by Peter Sluglett, Leiden: Brill

2010 269-291

著 者 名 論 文 標 題

柳谷 あゆみ

(研究分担者)

読書案内「対十字軍」を読む

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『歴史と地理(No.634):世界史の研究』 223 2010.5 33-34

著 者 名 論 文 標 題

伊藤 知義

(研究分担者)

中央アジアにおける法解釈

—法整備支援事業の経験から—

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『社会体制と法』 11 2010 63-75

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著 者 名 論 文 標 題

上野 雅由樹

(研究協力者)

研究動向:ミッレト制研究とオスマン帝国下の非ムスリム

共同体

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『史学雑誌』 119:11 2010 64-81

著 者 名 論 文 標 題

上野 雅由樹

(研究協力者)

タンズィマート期アルメニア共同体の再編:

ミッレト憲法後のイスタンブル総为教座を中心に

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東洋文化』 91 2011 印刷中

著 者 名 論 文 標 題

江川 ひかり

(研究協力者)

徴税請貟制度に立ち向かう遊牧民―西北アナトリア、ヤー

ジュ・ベディルの事例から

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『歴史と地理(No.636):世界史の研究』 224 2010 1-15

著 者 名 論 文 標 題

江川 ひかり

(研究協力者)

19 世紀中葉西北アナトリア、バルケスィル地域における遊

牧民の経済状況―1840 年『資産台帳』の分析を中心に―

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『駿台史学』 142 2010 25-57

著 者 名 論 文 標 題

長谷部 圭彦

(研究協力者)

タンズィマート初期における対キリスト教徒教育管理構想

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東洋文化』 91 2011 243-262

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著 者 名 論 文 標 題

浜本 一典

(研究協力者)

シャリーア解釈における必要性の法理

――その意義と問題点――

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『一神教世界』 1 2010 27-38

著 者 名 論 文 標 題

堀井 聡江

(研究協力者)

生活の指針シャリーア

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

佐藤次高(編)『宗教の世界史 11 イスラームの歴史 1―イスラ

ームの創始と展開』(山川出版社)

2010 86-120

著 者 名 論 文 標 題

邦訳:堀井 聡江、解説:川島 緑

(研究協力者)

「新しい黎明」 1960 年代カイロのフィリピン・ムスリム

留学生論文集邦訳・解説(5)

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『上智アジア学』 28 2010 183-205

著 者 名 論 文 標 題

MATSUYAMA Yohei

(研究協力者)

Fiqh al-Aqalliyat: Development, Advocates and Social Meaning

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

AJAMES 26:2 2011 33-55

著 者 名 論 文 標 題

松山 洋平

(研究協力者)

現代におけるイスラーム圏域論を巡る諸言論

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『明日へ翔ぶ 2―人文社会学の新視点』松尾金藏記念奨学基金 2011 387-404

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著 者 名 論 文 標 題

黛 秋津

(研究協力者)

「黒海地域」という地域認識―歴史的視点からの一試論

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『ユーラシア研究』 42 2010 40-45

著 者 名 論 文 標 題

黛 秋津

(研究協力者)

オスマン帝国における中心=周辺関係の変容に関する一研

究―18 世紀後半のワラキア・モルドヴァとの宗为・付庸

関係

掲 載 誌 ・ 書 名 巻 発 行 年 ページ

『東洋文化』 91 2011 77-98

〔図書〕計( 2 )件

著 者 名 出 版 社

堀川 徹

(研究分担者)

山川出版社

書 名 発 行 年 ページ

『イスラームの歴史 1(共著)』 2010 196-237

著 者 名 出 版 社

三浦 徹

(拠点代表者)

放送大学教育振興会

書 名 発 行 年 ページ

『イスラーム世界の歴史的展開』(放送大学教材) 2010 243

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〔学会発表〕計( 16 )件

発 表 者 名 発 表 標 題

AKIBA Jun

(研究分担者)

Local Solidarity in the Ottoman Bureaucracy during the late 18th

and 19th Centuries: A Case of İbradı.

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

コチ大学アナトリア文明研究センター为催ミニ・シ

ンポジウム ‖Provincial Officials in the Ottoman

Empire during the Mid-18th and 19th Centuries:

Formation, Functions, Identities‖

2010 年 5 月 14 日

トルコ、イスタンブル、コ

チ大学アナトリア文明研

究センター

発 表 者 名 発 表 標 題

秋葉 淳

(研究分担者)

カーディーの町イブラドゥ:

アナトリアの一地方社会から見る 18 世紀オスマン帝国

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

九州史学会平成 22 年度大会 2010 年 12 月 12 日 九州大学文学部

発 表 者 名 発 表 標 題

KONDO Nobuaki

(研究分担者)

The Life of Qabālahs: Annotation, Transcription and Registration

of Documents in early modern Iran

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Colloque international ―Lecteurs et copistes dans les

traditions manuscrites iraniennes, indiennes et

centrasiatiques‖

2010 年 6 月 16 日 Université Sorbonne

nouvelle Paris 3

発 表 者 名 発 表 標 題

堀川 徹

(研究分担者)

モンゴル時代以降の西部内陸アジア史

――実証研究の深化と展開の可能性――

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

内陸アジア史学会 50 周年記念公開シンポジウム 2010 年 11 年 13 日 早稲田大学小野記念講堂

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発 表 者 名 発 表 標 題

堀川 徹

(研究分担者)

中央アジア文化における連続性について

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

関西大学 3 研究所合同シンポジウム

(分科会:東西学術研究所)

2010 年 12 月 3 日 関西大学以文館

発 表 者 名 発 表 標 題

MIURA Toru

(拠点代表者)

The Changing Role of Sharia Court in 18th and 19th Centuries:

The Salihiyya Court Records in Damascus

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 3rd World Congress for Middle East Studies 2010 年 7 月 19-24 日 Universitat Autònoma de

Barcelona

発 表 者 名 発 表 標 題

伊藤 知義

(研究協力者)

ロシア法における不動産の善意取得制度

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

「体制転換と法」研究会 2010 年 9 月 25 日 北海道大学

発 表 者 名 発 表 標 題

UENO Masayuki

(研究協力者)

Reforms Demanded: Eastern Anatolia in the Eyes of Istanbul

Armenians (1870-1877)

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

World Congress for Middle Eastern Studies 2010 年 7 月 19-24 日 Barcelona

発 表 者 名 発 表 標 題

UENO Masayuki

(研究協力者)

Speak Tanzimat in the Ottoman Armenian Case

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

Sohbet-i Osmani Seminar 2011 年 2 月 Cambridge, MA

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発 表 者 名 発 表 標 題

長谷部 圭彦

(研究協力者)

オスマン帝国における公教育法(1869)の制定-学制(1872)

の比較史的・世界史的理解にむけて

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

科学研究費基盤(B)「民衆の学びをめぐる史的交

渉についての実証的地域研究-就学告諭を結節点

に-」就学告諭研究会(第二次)第 4 回例会

2010 年 5 月 2 日 大東文化大学

発 表 者 名 発 表 標 題

長谷部 圭彦

(研究協力者)

オスマン帝国における留学政策

-放任・断行・支援・阻止・監督-

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

科学研究費基盤研究(S)「ユーラシアの近代と新

しい世界史变述」「旅と旅行記-場の共有とその普

及-」

2010 年 6 月 12 日

東京大学

発 表 者 名 発 表 標 題

長谷部 圭彦

(研究協力者)

オスマン帝国タンズィマート初期における対キリスト教徒

教育管理構想

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

神戸大学大学院人文学研究科大学院教育改革支援

プログラム「教育のポリシーとポリティクス-近代

中国・オスマン帝国・フランスにおける教育と政治

-」コロキウム

2010 年 11 月 13 日

神戸大学

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発 表 者 名 発 表 標 題

長谷部 圭彦

(研究協力者)

学制(1872)の世界史的位置

-竹中暉雄氏の学制研究に寄せて-

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

科学研究費基盤(B)「民衆の学びをめぐる史的交

渉についての実証的地域研究-就学告諭を結節点

に-」就学告諭研究会(第二次)第 8 回例会

2011 年 2 月 27 日

大東文化大学

発 表 者 名 発 表 標 題

浜本 一典

(研究協力者)

アブドゥラ・バダウィの文明的イスラーム論におけるジハ

ード

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

日本宗教学会 2010 年 9 月 5 日 東洋大学

発 表 者 名 発 表 標 題

堀井 聡江

(研究協力者)

イスラーム法と近代法

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

東京大学 UTCP イスラーム理解講座第 11 回 2010 年 6 月 10 日 東京大学駒場キャンパス

発 表 者 名 発 表 標 題

MIURA Toru

(拠点代表者)

A Comparison of Islamic and Chinese Societies:

Ownership, Contracts, and Market

学 会 等 名 発表年月日 発表場所

The 8th Asian Federation of Middle East Studies

Conference

2010 年 9 月 26 日 Beijing, Novotel Peace

Beijing Hotel