傑作『the resistance』より3年 世界が待ち焦がれていた傑作『the...

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傑作『The Resistance』より3年 世界が待ち焦がれていた MUSE最新作が遂に姿を現す――― Matthew Bellamy (Vo/Key/Gt) Christopher Wolstenholme (Ba) Dominic Howard (Dr) -『The 2nd Law ~熱力学第二法則』はMUSEのこれまでのアルバムとどこが違うのでしょうか? Dominic:これまで僕たちが作ってきた中でも確実に最も多様な作品だと思う。それは僕たちの 持つ奇妙で入り混じった影響の全てがバンドの中に出たところから発しているんだ。たとえば オーケストラ音楽だったりクラシック調のピアノ音楽、あるいはロック、古典的なロック。それにメ タル、部分的にはエレクトロニック音楽だってある。ファンクもだ。だからまあ、本当にあらゆる ものからちょっとずつって感じなんだ。自分たちの好きなものなら何だってそこからすべて影響を 吸収したいし、それをバンドに持たらすっていう。 Chris:どのアルバムをやる時も、その作品がどの方向に向かうのか自分たち自身必ずしも分かっ ていない、というものだと思う。それでも大切なのは自分たちにある“何か新しいことにトライし なければ”という考え、そこなんだよね。僕たちは延々と同じ場所に留まり続けようとする、決して そういうバンドじゃなかったわけで。今回スタジオに入った時点では、たしか18、19くらいの候補 曲群があったと思うけど、最終的にアルバムに入ることになった12、13曲の決め手になったのは それらの楽曲が前作には入り得なかったであろう曲ということだった。僕たちは本当に色んなこ とで実験し、かなりの時間をそこに費やした。特にサウンド面で時間をかけたし、だからだと思う よ、このアルバムになんというかフレッシュさがあるのは。というのもどの曲にもそれぞれ個性が あるし、音楽的にどれもまったく違うし、音響面でもかなり違いがある。僕たちは間違いなく、新 鮮な響きがあって高揚する作品を作りたかったし、そこはこのアルバムで達成できたんじゃない か、僕は本当にそう思ってる。 Matthew:うん。このバンドは3人として始まって、ギター/ベース/ドラムスの、いわゆるシンプ ルなスリーピースだったわけだよね。だから自分たちの書いている曲のいくつかにはいずれ他の 楽器も必要になってくる、そこはすぐにはっきりしたわけ。ピアノやシンセといった他の楽器、エレ クトロニックな要素を組み入れるという意味で音楽に多様性を持たせるのが重要になってくるだ ろう、というのはかなり早い時点で気づいていたんだ。だからその面で実験することに常に興味 があったし、僕たちの音楽的影響は非常に多岐にわたっている。僕は昔から映画音楽が好きだっ たし、クラシック音楽はもちろんダンスミュージックやR&Bも好きで。だから根本は伝統的な、 MUSEのかなりトラディショナルなロックバンドの編成の中にいかにしてそれらの影響を組み込 むか、その方法を探るのにいつだって興味をそそられてきた。アルバムを通じて、それらのスタイ ルがなんというか、それぞれ顕著になり、バラバラに出てきたんじゃないかと僕は思う。このアル バムではそれらがほとんどもう、3つの異なるジャンルになったんじゃないかな。このアルバムに はエレクトロポップに近いものだってある。一方で古典的なロックもあるし、かなりオーケストラ 調でほとんどサントラってスタイルの音楽もあって、それら3つの要素が今回のアルバムではかな り分離している、そこはグレイトだと僕は思っていて。ほとんどもう、自分は異なる3つのバンドで プレイしているんじゃないか、そんな気がするからさ。一緒にやり始めて以来僕たちは3人とも音 楽に対してとてもオープンマインドだったと思うし、そこなんじゃないかな、僕たちがこれまで続 けてこれて自分たちでも興味を維持できている、そのキーのひとつというのは。 -タイトルである『The 2nd Law(熱力学第二法則)』とはどういった意味があるのでしょうか? Matthew:このアルバムを作っている頃、僕が色んなニュース番組を見るたび、金融恐慌あるい は経済危機についての報道がしょっちゅう目に入ってきて。そこになんというか、成長/増大に関 する強迫観念のパラダイムがあるように思えてね。金融に関するニュースはいつだって成長に執 着しているような感じだし、僕はその理由は何なのか深く理解したいと思った。そこで少し調べ始 めたところ、90年代の終わり頃に読んだ石油ピーク論(石油の産出量が最大値に達する時期。そ れを過ぎると産出量は減少する一方であるとの論)やエネルギー依存の構造、経済の暴落や崩壊 そして成長もまたエネルギーとエネルギー生産とにかなり密接に関わっている、というのを思い 出してね。それでエネルギーについての本を読み始めたんだけど、熱力学の法則そしてその第二 法則というのはエネルギーと、エネルギーがいかに作用するかを説明するものなんだ。で、熱力学 第二法則というのは基本的に“エネルギーは減少していくものだ”と説いていてね。残念ながら至 るところでエネルギーは減少しているらしい。宇宙は広がっていて、同時に冷えていってる。だか ら僕達の体内エネルギーも、地球も太陽も星々なんかも、すべてはやがて温度を下げて冷えてい くみたいなんだ。そこで僕は、その意味するところのより哲学的な面に興味を抱いたっていうのか な。というのも進化そして人類は、その第二法則に真っ向からぶつかっていくようなものだから さ。僕たちは成長し進化する生き物で、発展と前進を求めているようだし、それ(成長と減少の葛 藤)はいわば僕たちにとっての闘いみたいなものじゃないか、と。その闘いは僕たち個人の人生に も存在する。経済の中にも存在するし、そうした思いが哲学的な考えやメタファーになっていき、 それを僕はアルバム全体を通して広げていったということだね。 -アルバム収録曲の中でもより先鋭的な楽曲である「The 2nd Law ~熱力学第二法則」を作る ことで何を学びましたか。 Chris:アルバムごとに多くを学び、新しい何かに乗り出すんだと思う。だから、今回学んだことは 必ずしも今後の僕たちが活用するものじゃないっていう。僕たちにとって音楽は常に教育なんだ。 インタビューの続きは 激ロックウェブサイトをチェック!!>> GEKIROCK.COM 分かるよね。他に音楽はいくらでも存在する。過去から引っ張って来れるもの、聴くべきものはた くさんあるし、好きな音楽であれ嫌いな音楽であれ、音楽を聴くといつだって何かしら学ぶことに なる。それが音楽ってものなんだ。音楽作りにおいて頂点を究められる人はいないんだよ。楽器 の腕前を上げるのでも、歌唱力でも、あるいは曲作りでもプロデュースでも、常に上達することが できる。改善の余地は常にあるし、僕たちが音楽作りをエンジョイしているのもそこなんじゃない かな、その、決して頂上に達した気がしないってところが。いつだってもうちょっと良くする余地が ある、そう感じるわけで。他の人間がどう思おうが関係ないんだ。僕個人としてはそれが音楽作り の美しいところだと思うね、というのも何であれ頂点に達してしまったら“これで上がり、おしま い”みたいな感じになるし、そう感じるのはとても困難なことだから。“さて、これからどこに向か おうか?”みたいな。これ以上、もう登る対象がないっていう。でも、音楽を作っている限りそんな 風に感じることは絶対にないと思う。 Dominic:アルバムを1枚作るたび、実に多くのことを学ぶ。メンバー同士、お互いをよく知ること になるんだ。互いにどんな風にプレイし合うかについてね。とにかく音楽だとか色んなことについ て学ぶっていう。で、アイディアに対してオープンで新しいことを試すのを自分たちは今でも怖 がっちゃいない、そこを僕たちは学んだんだと思うな。その点はいつだってこのバンドの大きな推 進力のひとつみたいなものだったし、僕たちのアルバムに対するアプローチはとにかく本当に、新 たなアイディアを見つけていこうとしながら自分たちにとって楽になり過ぎないようにしようとす るってもので。互いに自分たちを安全圏から押し出そうとするってのは僕たちが常にスタジオで やろうとしていることだし、それは素晴らしいことなんだよ、それを通じて新しいアイディアが見 つかるわけだから。でも、と同時に自分たちとしてはかなり嬉しいんじゃないかな、こうして自分 たちでもう1枚アルバムをプロデュースすることができて。だからプロダクションという役割につ いての自信という点も今回僕たちは更に学んだろうし、自分たちでかなり上手くやれるのを実感し たんじゃないかな、願わくは。僕にはそう聴こえるし、うん、とにかく音楽の素晴らしい点は学ぶ ものが常にあるってこと。発見し学ぶことはいくらでも出て来るし、音楽をやるプロセスを心待ち にできるんだよ。 Matthew:今回のアルバムを作る過程で、本当に多く学んだと僕は思ってる。プロデューサーと して本当に多くを学んだな、と。たとえば僕は今回ブラスセクション、それに合唱隊向けの譜の書 き方を学んだ。僕にとっては初体験だったし、色んな奏者達とその異なる音域、ダイナミクスの違 いを知り、持ち味を活かすべく彼らと仕事するのは素晴らしかった。あれは本当に大きな学びの プロセスだったと思う。それに何にでもオープンに接する姿勢、それは僕たちが常に持ってきたも のだと思うけど、その素晴らしさは今回のアルバムで本当に証明されたんじゃないかな。というの も僕たちはあそこでこれまで自分たちがやってきたものとはほとんどもう、まったく異なるジャン ルみたいなものをクリエイトしてみせたわけで。Chrisが彼自身の書いた曲をやる点については、 ああやって彼が進んでバンド内のソングライターを任じてくれたのは素晴らしいし、しかも自分で 歌いたい、と。それは僕にとってもグレイトなんだよ、ちょっと引っ込んで自分のギタープレイに 集中できる、(Chrisが歌う間)任せられるからね。だから新規な事柄も多く、素晴らしい学習プ ロセスの経験だったね。 -なぜMUSEはこんなに成功を収めてきたのでしょうか? Matthew:僕たちは3人全員とにかくとてもオープンマインドな連中だ、そこに尽きるね。ほん と、それだと思う。僕たち3人をひとつにしてきた、自分たちにとって音楽をエキサイティングなも のにしてきた、そのもっとも重要なファクターというのはそこなんだ。たとえば前作 『Resistance』の時に僕は3部構成のクラシック調な曲、交響楽っぽい作品を持ち込んだんだ けど、僕が“ヘイ、これやってみないか”と声をかけたら彼らは“クール、すごいじゃん。やってみよ うぜ”って調子で。どのバンドもそういう反応をしてくれるとは思わないし、自分はなんてラッ キーだろうと感じるよ。他のふたりもきっとそう思ってくれてるはずだ。とにかく僕たちは全員と ても運がいいんだ、何だってトライすることを怖がらない、そういう広い心の持ち主たちと同じバ ンドにいるからね。 94年結成、イギリスはデヴォン州ティンマスで結成された、稀代のカリスマ・ アーティスト、Matthew Bellamy率いるMUSEが3年ぶり通算6枚目とな る『The 2nd Law』を放つ。6月末にリリースされた先行シングルである Track.5「Survival」は今年行われたロンドン・オリンピックのオフィシャ ル・ソングとして制作、起用されたのは記憶に新しいだろう。またトレーラー で使用されていたTrack.12「The 2nd Law: Unsustainable」はMatthew のフラッシーなギター・ソロが大胆にダブステップと絡むという、MUSE流 にダブステップを料理した先進的なトラックとなっている。また、“これぞ! MUSEの真骨頂”と叫びたくなるドラマティック且つオペラティックなトラッ クから、先ほど挙げたダブステップやEDMテイストのもの、80年代のどこ か懐かしいポップスを思わせるようなものまで、非常にバラエティに富んだ 作品となっている。何やら来年初旬に来日という噂も聞こえてきているので 期待して彼らの動向をチェックしていていただきたい。 ムラオカ MUSE The 2nd Law NOW ON SALE!! LABEL : WARNER MUSIC JAPAN GENRE : ROCK, ALTERNATIVE FOR FANS OF : FALL OUT BOY, LINKIN PARK

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  • 傑作『The Resistance』より3年世界が待ち焦がれていたMUSE最新作が遂に姿を現す―――

    Matthew Bellamy (Vo/Key/Gt)Christopher Wolstenholme (Ba)Dominic Howard (Dr)

    -『The 2nd Law ~熱力学第二法則』はMUSEのこれまでのアルバムとどこが違うのでしょうか?

    Dominic:これまで僕たちが作ってきた中でも確実に最も多様な作品だと思う。それは僕たちの持つ奇妙で入り混じった影響の全てがバンドの中に出たところから発しているんだ。たとえばオーケストラ音楽だったりクラシック調のピアノ音楽、あるいはロック、古典的なロック。それにメタル、部分的にはエレクトロニック音楽だってある。ファンクもだ。だからまあ、本当にあらゆるものからちょっとずつって感じなんだ。自分たちの好きなものなら何だってそこからすべて影響を吸収したいし、それをバンドに持たらすっていう。

    Chris:どのアルバムをやる時も、その作品がどの方向に向かうのか自分たち自身必ずしも分かっていない、というものだと思う。それでも大切なのは自分たちにある“何か新しいことにトライしなければ”という考え、そこなんだよね。僕たちは延々と同じ場所に留まり続けようとする、決してそういうバンドじゃなかったわけで。今回スタジオに入った時点では、たしか18、19くらいの候補曲群があったと思うけど、最終的にアルバムに入ることになった12、13曲の決め手になったのはそれらの楽曲が前作には入り得なかったであろう曲ということだった。僕たちは本当に色んなことで実験し、かなりの時間をそこに費やした。特にサウンド面で時間をかけたし、だからだと思うよ、このアルバムになんというかフレッシュさがあるのは。というのもどの曲にもそれぞれ個性があるし、音楽的にどれもまったく違うし、音響面でもかなり違いがある。僕たちは間違いなく、新鮮な響きがあって高揚する作品を作りたかったし、そこはこのアルバムで達成できたんじゃないか、僕は本当にそう思ってる。

    Matthew:うん。このバンドは3人として始まって、ギター/ベース/ドラムスの、いわゆるシンプルなスリー•ピースだったわけだよね。だから自分たちの書いている曲のいくつかにはいずれ他の楽器も必要になってくる、そこはすぐにはっきりしたわけ。ピアノやシンセといった他の楽器、エレクトロニックな要素を組み入れるという意味で音楽に多様性を持たせるのが重要になってくるだろう、というのはかなり早い時点で気づいていたんだ。だからその面で実験することに常に興味があったし、僕たちの音楽的影響は非常に多岐にわたっている。僕は昔から映画音楽が好きだったし、クラシック音楽はもちろんダンス•ミュージックやR&Bも好きで。だから根本は伝統的な、MUSEのかなりトラディショナルなロック•バンドの編成の中にいかにしてそれらの影響を組み込むか、その方法を探るのにいつだって興味をそそられてきた。アルバムを通じて、それらのスタイルがなんというか、それぞれ顕著になり、バラバラに出てきたんじゃないかと僕は思う。このアルバムではそれらがほとんどもう、3つの異なるジャンルになったんじゃないかな。このアルバムにはエレクトロ•ポップに近いものだってある。一方で古典的なロックもあるし、かなりオーケストラ調でほとんどサントラってスタイルの音楽もあって、それら3つの要素が今回のアルバムではかなり分離している、そこはグレイトだと僕は思っていて。ほとんどもう、自分は異なる3つのバンドでプレイしているんじゃないか、そんな気がするからさ。一緒にやり始めて以来僕たちは3人とも音楽に対してとてもオープン•マインドだったと思うし、そこなんじゃないかな、僕たちがこれまで続けてこれて自分たちでも興味を維持できている、そのキーのひとつというのは。

    -タイトルである『The 2nd Law (熱力学第二法則)』とはどういった意味があるのでしょうか?

    Matthew:このアルバムを作っている頃、僕が色んなニュース番組を見るたび、金融恐慌あるいは経済危機についての報道がしょっちゅう目に入ってきて。そこになんというか、成長/増大に関する強迫観念のパラダイムがあるように思えてね。金融に関するニュースはいつだって成長に執着しているような感じだし、僕はその理由は何なのか深く理解したいと思った。そこで少し調べ始めたところ、90年代の終わり頃に読んだ石油ピーク論(石油の産出量が最大値に達する時期。それを過ぎると産出量は減少する一方であるとの論)やエネルギー依存の構造、経済の暴落や崩壊そして成長もまたエネルギーとエネルギー生産とにかなり密接に関わっている、というのを思い出してね。それでエネルギーについての本を読み始めたんだけど、熱力学の法則そしてその第二法則というのはエネルギーと、エネルギーがいかに作用するかを説明するものなんだ。で、熱力学第二法則というのは基本的に“エネルギーは減少していくものだ”と説いていてね。残念ながら至るところでエネルギーは減少しているらしい。宇宙は広がっていて、同時に冷えていってる。だから僕達の体内エネルギーも、地球も太陽も星々なんかも、すべてはやがて温度を下げて冷えていくみたいなんだ。そこで僕は、その意味するところのより哲学的な面に興味を抱いたっていうのかな。というのも進化そして人類は、その第二法則に真っ向からぶつかっていくようなものだからさ。僕たちは成長し進化する生き物で、発展と前進を求めているようだし、それ(成長と減少の葛藤)はいわば僕たちにとっての闘いみたいなものじゃないか、と。その闘いは僕たち個人の人生にも存在する。経済の中にも存在するし、そうした思いが哲学的な考えやメタファーになっていき、それを僕はアルバム全体を通して広げていったということだね。

    -アルバム収録曲の中でもより先鋭的な楽曲である「The 2nd Law ~熱力学第二法則」を作ることで何を学びましたか。

    Chris:アルバムごとに多くを学び、新しい何かに乗り出すんだと思う。だから、今回学んだことは必ずしも今後の僕たちが活用するものじゃないっていう。僕たちにとって音楽は常に教育なんだ。

    インタビューの続きは激ロックウェブサイトをチェック!!>>GEKIROCK.COM

    分かるよね。他に音楽はいくらでも存在する。過去から引っ張って来れるもの、聴くべきものはたくさんあるし、好きな音楽であれ嫌いな音楽であれ、音楽を聴くといつだって何かしら学ぶことになる。それが音楽ってものなんだ。音楽作りにおいて頂点を究められる人はいないんだよ。楽器の腕前を上げるのでも、歌唱力でも、あるいは曲作りでもプロデュースでも、常に上達することができる。改善の余地は常にあるし、僕たちが音楽作りをエンジョイしているのもそこなんじゃないかな、その、決して頂上に達した気がしないってところが。いつだってもうちょっと良くする余地がある、そう感じるわけで。他の人間がどう思おうが関係ないんだ。僕個人としてはそれが音楽作りの美しいところだと思うね、というのも何であれ頂点に達してしまったら“これで上がり、おしまい”みたいな感じになるし、そう感じるのはとても困難なことだから。“さて、これからどこに向かおうか?”みたいな。これ以上、もう登る対象がないっていう。でも、音楽を作っている限りそんな風に感じることは絶対にないと思う。

    Dominic:アルバムを1枚作るたび、実に多くのことを学ぶ。メンバー同士、お互いをよく知ることになるんだ。互いにどんな風にプレイし合うかについてね。とにかく音楽だとか色んなことについて学ぶっていう。で、アイディアに対してオープンで新しいことを試すのを自分たちは今でも怖がっちゃいない、そこを僕たちは学んだんだと思うな。その点はいつだってこのバンドの大きな推進力のひとつみたいなものだったし、僕たちのアルバムに対するアプローチはとにかく本当に、新たなアイディアを見つけていこうとしながら自分たちにとって楽になり過ぎないようにしようとするってもので。互いに自分たちを安全圏から押し出そうとするってのは僕たちが常にスタジオでやろうとしていることだし、それは素晴らしいことなんだよ、それを通じて新しいアイディアが見つかるわけだから。でも、と同時に自分たちとしてはかなり嬉しいんじゃないかな、こうして自分たちでもう1枚アルバムをプロデュースすることができて。だからプロダクションという役割についての自信という点も今回僕たちは更に学んだろうし、自分たちでかなり上手くやれるのを実感したんじゃないかな、願わくは。僕にはそう聴こえるし、うん、とにかく音楽の素晴らしい点は学ぶものが常にあるってこと。発見し学ぶことはいくらでも出て来るし、音楽をやるプロセスを心待ちにできるんだよ。

    Matthew:今回のアルバムを作る過程で、本当に多く学んだと僕は思ってる。プロデューサーとして本当に多くを学んだな、と。たとえば僕は今回ブラス•セクション、それに合唱隊向けの譜の書き方を学んだ。僕にとっては初体験だったし、色んな奏者達とその異なる音域、ダイナミクスの違いを知り、持ち味を活かすべく彼らと仕事するのは素晴らしかった。あれは本当に大きな学びのプロセスだったと思う。それに何にでもオープンに接する姿勢、それは僕たちが常に持ってきたものだと思うけど、その素晴らしさは今回のアルバムで本当に証明されたんじゃないかな。というのも僕たちはあそこでこれまで自分たちがやってきたものとはほとんどもう、まったく異なるジャンルみたいなものをクリエイトしてみせたわけで。Chrisが彼自身の書いた曲をやる点については、ああやって彼が進んでバンド内のソングライターを任じてくれたのは素晴らしいし、しかも自分で歌いたい、と。それは僕にとってもグレイトなんだよ、ちょっと引っ込んで自分のギター•プレイに集中できる、(Chrisが歌う間)任せられるからね。だから新規な事柄も多く、素晴らしい学習プロセスの経験だったね。

    -なぜMUSEはこんなに成功を収めてきたのでしょうか?

    Matthew:僕たちは3人全員とにかくとてもオープン•マインドな連中だ、そこに尽きるね。ほんと、それだと思う。僕たち3人をひとつにしてきた、自分たちにとって音楽をエキサイティングなものにしてきた、そのもっとも重要なファクターというのはそこなんだ。たとえば前作『Resistance』の時に僕は3部構成のクラシック調な曲、交響楽っぽい作品を持ち込んだんだけど、僕が“ヘイ、これやってみないか”と声をかけたら彼らは“クール、すごいじゃん。やってみようぜ”って調子で。どのバンドもそういう反応をしてくれるとは思わないし、自分はなんてラッキーだろうと感じるよ。他のふたりもきっとそう思ってくれてるはずだ。とにかく僕たちは全員とても運がいいんだ、何だってトライすることを怖がらない、そういう広い心の持ち主たちと同じバンドにいるからね。

    94年結成、イギリスはデヴォン州ティンマスで結成された、稀代のカリスマ・アーティスト、Matthew Bellamy率いるMUSEが3年ぶり通算6枚目となる『The 2nd Law』を放つ。6月末にリリースされた先行シングルであるTrack.5「Survival」は今年行われたロンドン・オリンピックのオフィシャル・ソングとして制作、起用されたのは記憶に新しいだろう。またトレーラーで使用されていたTrack.12「The 2nd Law: Unsustainable」はMatthewのフラッシーなギター・ソロが大胆にダブステップと絡むという、MUSE流にダブステップを料理した先進的なトラックとなっている。また、“これぞ!MUSEの真骨頂”と叫びたくなるドラマティック且つオペラティックなトラックから、先ほど挙げたダブステップやEDMテイストのもの、80年代のどこか懐かしいポップスを思わせるようなものまで、非常にバラエティに富んだ作品となっている。何やら来年初旬に来日という噂も聞こえてきているので期待して彼らの動向をチェックしていていただきたい。 ムラオカ

    MUSEThe 2nd LawNOW ON SALE!!

    LABEL : WARNER MUSIC JAPANGENRE : ROCK, ALTERNATIVEFOR FANS OF : FALL OUT BOY, LINKIN PARK