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Page 1: R008 田原俊司・伊藤武彦 (1985). 助詞ハとガの談話機能の発達 心理学研究, 56,208-214

The Japanese Journal of Psychology

1985, Vol. 56, No.4, 208-214 原 著

助 詞ハ とガの談話機 能の発 達

東京大学 田 原 俊 司

和光大学 伊 藤 武 一彦

The development of discourse function in Japanese particles `wa•L and `ga•L

Shunji Tahara (Department of Educational Psychology, Faculty of Education,

University of Tokyo, Bunkyo-ku, Tokyo 113) and Takehiko Ito (Department of

Human Science, Faculty of Humanity, Wako University, Machida, Tokyo 194-d1)

Japanese postpositional particles `wa•L and `ga•L have discourse function; `wa•L conveys old informa-

tion and `ga•L marks new information. The purpose of this study was to examine experimentally

the development of differentiated use of `wa•L and `ga•L according to the discourse function . Ninety

subjects of 4, 5, 6, 8,10,12,14 years old and adults made and told stories by looking at pictures

in an elicited production task. Subjects at the age of 4 and 5 used only `ga•L regardless of

context. From 6 to 12 year old subjects began to use `wa•L for the referent which appeared

in the previous context, but not constantly. Fourteen-year-old subjects and adults systematically

differentiated `wa•L and `ga' according to the discourse function. `Wa•L and `ga•L appear in two-word

utterance stage, but our study suggests that the complete acquisition of these two particles is

very late.

Key words: language development, Japanese, discourse function, new information, old informa

tion, particles, anaphoricity, elicited production.

日本語における助詞ハ とガの用法の区別 は,日 本人成

人 に とって容易にみ}て も,多 くの外国人 日本語学習者

に とって困難である ことが広 く知 られてい る。 日本語学

や言語学において もハ とガの問題をめ ぐって,し ばしば

論 争がお こなわれて きてい るが,未 だ定説をみない よ う

である.こ の よ うに習得の困難や文法的論争をひ きお こ

す 要因 として,ハ とガの機能が多重的,す なわ ち1つ の

助 詞が複数 の機能をにな うことがあ ることが挙げ られ よ

う.文 の単位で両者の機能を構文論的にみ ると,ガ は主

格 を標示す るが,ハ は主題を表す とい う差異があ る。す

なわち,ガ は名詞旬を主 格 と標示する働 きがあるが,六

は必ず しも主 格にこあたる名詞句に付 くわけではな く(魚

は私が 食べた),動 詞に対す る格関係 か ら 独立 して文の

題 目を表す.ま た,六 には主題の他に対照の用法(Aが

泳いだのに, Bは 泳がなか った)が あ り,ガ には主格の

中立 叙述の他 に総記(ま たは排他)の 用法(〔 他 の 誰で

もな く〕私が社長 です)が あ る(久 野1973;吉 本,

1982).さ て本論文 で 問題 に しよ うとす るのは,ハ とガ

の使用が,文 と文 との関係す なわち談 話 とい うレベルに

基 づいて どのよ うに 区別 されるのか とい うことである.

談話 の観点か らみ る と,六 の付 いた名詞句は旧情報を表

し,ガ の付いた名詞句 は新情報を表す といえる1新 旧情

報 の定義 は言語学者 に よって 様 々 であ るが,本 論文 で

は, Chafe (1976)を 参考に して,旧 情報 を 場面 あるい

は先行文脈 な どに よって聞き手の意識 にす でに導 入され

ていると話 し手に仮 定され ている情報 新 情報 を発話 の

時点で 聞き手 の意識 に存在 しない と話 し手に仮定され て

い る情報,と 規定す る.場 面 よ り自明であった り先行文

脈に既 出の モノは旧情報 として処理 されやす く,場 面 よ

り自明でなか った り先行文脈に未 出のモ ノは新情報 とし

て処理 されやすい.こ の ように,ハ が 旧情報を,ガ が新

情報を標示す るとい う機能 に基 づいて使 いわ けが できる

か ど うかを 日本人につ いて発達的 に研究 し,さ らにそれ

をハ とガの他の機能 の獲得 と比較す る ことは興 味深 い.

助詞ハ とガが 日本語児の 発話に 初 出 す るのは 大久保

(1967),宮 原 ・宮原(1973, 1976),前 田(1977)の 観察

に よれば生後2年 目である.ガ は名詞旬+動 詞 の文型 で

名詞に付け られてい るが,六 は平叙文 の発話以 外に “名

詞+ハ?” の型で疑問文に も用い られ る.幼 児期 のガ と

六の使用の脱落率 について 調 べたMiyazaki (1979)に

よれば,ガ は2歳10ケ 月で脱落率が大人 の水準に まで

低下す るが,主 題のハにつ いて は5歳 児 でも脱落 率が 高

か った.模 倣完成課題を用いた秦野(1979)の 資料に よ

れば,新 情報の名詞句に ガを付け ることは5歳 群,旧 情

報の名詞句に六を付け ることは7歳 群 よ り優位に なって

い る.学 童期以降におけ るハ とガの新 旧情報に よる区別

について は林部(1979, 1983)と 近藤(1978)の 研究 が

ある.林 部 は非文脈的な刺激文に対 しハ とガを手がか り

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田原 ・伊藤:助 詞 ハとガの談話機 能の発達  209

として新 旧情報 を弁別 できるのは中学生 以降である とい

う結 果を得た.近 藤 はハ とガを新 旧情報 に基づいて文生

産 で きるか ど うかを幼稚園児 と小学校2, 4年 生 お よび

大学生について調べ,大 学生のみが旧情報に対 しハを付

ける ことがで きた ことを見 出した.

新 旧情報の表現の発達について外国の研究を参照 して

み よ う, Bates & MacWhinney (1979)は,さ ま ざま

な言語 の2語 文期に子 どもが新 旧情報にこ基づいて語順 を

決定す る傾 向がある ことを示 した. Clancy (ln press)

も日本語の初期発達 に お け る 語順 と省略の 規則性 にこつ

いて同様の傾向がある としている.新 旧情報 とい う談話

機 能にこ関連す る問題 と して,イ ン ド=ヨ ー ロ ッパ語族

(英,仏,独 語等)に は,先 行文脈に登場 した か 否 か に

よって定冠詞,不 定冠詞を使 い わ け る とい う文法規則

(文脈指示)が ある.英 語児で は定 ・不定 の区別 は3歳 児

よりお こなわれ(Maratsos, 1976), 9歳 頃に なって 正確

な区別が完成する(Warden, 1976). Karmiloff-3mith

(1979)は,フ ランス語児が正確に文脈指示に よって定.

不 定冠詞を使 いわけ られるの は8-9歳 以降 であ る と

してい る一

これ らの先行研究 よ り,新 旧情報の 区別 それ 自体 は発

達初期 よ り可能で あるが,そ の区別 を文法標識一 日本

語に おい てはハ とガ-を 正確 に用 いて表現す る ことは

発達 的に遅 い時期 である といえ よ う.し か し未だに,幼

児 期か ら成 人に達するまでの六 とガの談話機能の発達的

変化が明 らかにな った とはいい難 く,幼 児期 ・学童期 ・

青 年期 ・成人期の被験者に対 して先行文脈 との関連 でハ

とガの使用の区別を調べ る研究が必要 であ る.し たが っ

て本研究 は,近 藤 の用いた方法に改 良を加え,成 人 期ま

でに,六 とガの談話機能に 基づ く発 話がいつ頃か ら出現

し,ど の ような獲 得過程 を経 て,正 確な使 用がいつ頃完

成す るか を明 らかにす る ことを 目的 とする.

Fig. 1,  本 課 題 で使 用 され た絵 カ ー ドの一 例.

方 法

被 験 者  東 京 近 郊 の保 育 園 年 中,年 長 の 幼 児,小 学 校

1, 3, 5年 の 児 童,中 学 校1, 3年 の 生 徒 各10名,成

人20名,計90名.男 女 半 数.平 均 年 令 は1984年4

月 の 実 験 の 時 点 で,年 中:4歳8ケ 月,年 長: 5歳6ケ

月,小 学 校1年: 6歳7ケ 月,3年: 8歳6ケ 月, 5年:

10歳5ケ 月,中 学 校1年: 12才7ケ 月, 3年:14歳7

ケ 月,成 人: 22歳6ケ 月 で あ っ た.

実 験 材 料  Fig, 1に 示す4枚 の 絵 カ ー ド(a), (b), (c), (d)

の よ うに, (a), (b)で は そ れ ぞ れ 異 な る動 物 が 個 々に 何 ら

か の 行 為 を し, (c)で は(a), (b)の ど ち らか 片 方 の 動 物 が

他 方 の 動 物 に 何 らか の 行 為 を し, (d)で は(c)で 行 為 を 受

け た 動 物 が 何 らか の行 為 を す る とい うよ うに 設 定 され た

4枚1組 の 絵 カ ー ドを1課 題 とし,3課 題 具 体 的 に

は,第1課 題 の 絵 カ ー ドに は(a)に わ と りが エ サ を 食 べ

て い る, (b)犬 が 歩 い て い る, (c)犬 が に わ と りを 追 い か

け る, (d)に わ と りが 空 に 飛 んで 逃 げ る場 面 が,第2課

題 の 絵 カ ー ドに は(a)猫 が 歩 い て い る, (b)ネ ズ ミが 走 っ

て い る, (c)猫 が ネ ズ ミを 追 い か け る, (d)ネ ズ ミが 穴 にこ

逃 げ込 む 場 面 が,第3課 題 の絵 カ ー ドに はFig. 1で 示 さ

れ て い る よ うに(a)パ ン ダが 寝 て い る, (b)猿 が 逆 立 ち し

て い る, (c)猿 が パ ン ダにこか み つ く, (d)パ ン ダが 猿 を な

ぐ る場 面 が,そ れ ぞ れ 描 か れ て い る.そ の 他 の 実 験 材 料

と して,ぬ い ぐるみ の 人 形.お も ち ゃの 電 話 機2台.つ

い た て.電 線.

Fig. 2.  実 験 場 面.

手続 き Fig. 2に 示す実験場面 を 設定 し,“い まか ら

4枚 で1つ の話 になっている紙芝居 を見せるので,ぬ い

ぐるみの人形 にその話を教 えてあげて下 さい” と被験者

に求める.た だし実験中は,つ いたてを被験者 とぬい ぐ

るみの間に立てて しまい,ぬ い ぐるみの人形は絵を見 る

ことがで きな く な るので,電 話で話 を 教えてあげ るこ

と,実 験者が指 さした被指示物について話を順番にこつ く

ることを教示す る.な お教示 は 自然 な 日本語に よって お

こなわれ,六 や ガを強調す るこ とはなか った.実 験者が

被指示物を指 さして30秒 以上 して も物 語をつ くらない

場合 にこは “どうしているの” とい う発 話を促す 問いを与

え,課 題開始後には,実 験者は ガ ・ハを使わない よ うに

した.“ … してい るの” とい う返答 のみで 被指示物名の

欠如 した文の場合に は “ぬい ぐるみの人形 は絵が見 えな

いので,人 形にわか る ように教 えて あげ て"と い う教

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210  心 理 学 研 究  第56巻 第4号

示 を与 え,被 指示物が表現 され るまで この教示 を繰 り返

す.実 験 者の被指示物 の指 さ しの順番は, (a) (b) (c) (d)の順

に行い, (a) (b)ではそれぞれの動 物を, (c)では行為主の

動 物を, (d)で は(c)で 行為を受けた 動物を 指 さす.な

お, (b)に対す る被験者の言及が終わ った とき,実 験者

は(c)の被指示物 を指 さす 前に,“((c)の 行為主)が,((c)

で行為を受ける動物)を 見つけ ました"(括 弧 に は 動物

名が実験では入る)と い うナ レーシ ョンを入れ る.こ の

ナ レーシ ョンは,予 備実験をふ まえて, (b)か ら(c)へ の

移行をス ムーズにす るために用いた ものであ り,特 に ガ

を強調する ことは していない. 1つ の課題終了後,同 様

の手続 きで,残 り2課 題を行 う。

Table 1

客 被 験 者 譜 の 既 由 の ハ の 出現 回 数 の 平 均 値 の 差

n.s. Tukey法 ・Fisher法 と もに 有 意 で な い.

** Tukey法 ・Fisher法 と もに 有 意(p< .05).

無 印Tukey法 で は有 意 で あ る が, Fisher法 で は 有

意 で な い.

結 果

本研究の課題 はすでに記述 した ように1つ の課題が4

枚の絵 カー ドか ら構成 されて いるが, 1, 2枚 目 の絵 カ

ー ド(そ れ ぞれ(a), (b)のカー ド)は 被指示物 である動物

が 初 出 の もの, 3, 4枚 目の 絵 カー ド(そ れ ぞれ(c), (d)

の カ ー ド)は 被 指 示 物 が 既 出の もの に な って い る.

Fig. 3.  初 出 の被 指 示 物 の言 及 に 使 用 され る助 詞

ハ,ガ の各 年 齢 群 に おけ る使 用 率 の平 均.

初 出 の助 詞 ガ(ハ)の 使 用 率=

絵 カ ー ド(a)(b)に 対 し て 用い られ た ガ(ハ)の 総 数/

絵 カ ー ド(a)(b)の数(2)× 課 題 数(3)× 被験 者 数(10又 は20)

Fig. 3は 初出の被指示物を, Fig. 4は 既 出の被指示物

を言及する ときの助詞ハ,ガ の使用率を示 した ものであ

る。被指示物を言及す る際 ハ,ガ 以外 の助詞 はほ とん

ど用い られなか った. Fig. 3よ り,初 出の被指示物を言

及す るのに使用 され る助詞 は, 4歳 群を除 くとガの選択

率が93.3%以 上であ った。ただ し4歳 群が80%と 低

い のは,残 りの20%は 助詞が省略 されたた めである.

この ような省 略は他 の年齢群 ではほ とん ど見 られなか っ

た.六 はほ とん ど使用 されず,12歳 群(3.3%), 14歳

群(1.7%)の み にこ使用が 見 られた. Fig. 4が 示す,既

出の被指示物 を言及す るのに使 用される助詞ハ,ガ の分

布 は相補 的であるが,年 齢間 で差異が 見 られる.そ こ

で,既 出のハの使 用率に 関 す る 発 達的傾向 をみるため

に,以 下の ような分 析を行った.

Fig. 4.  既 出の被指示物 の言及 にご使用 され る助詞

ハ,ガ の各年齢群 における使用率 の平均.

Fig. 4.  既 出の被指示物 の言及 にご使用 され る助詞

ハ,ガ の各年齢群 における使用率 の平均.

(既出の助詞 ガ(ハ)の 使用率

=絵 カ ー ド(c)(d)に 対 して用 い られ た ガ(ハ)の 総 数

/絵 カ ー ド(c)(d)の数(2)× 課 題 数(3)×被 験 者 数(10又 は20) )

まず,既 出の被 指示物の言及に使用 され る助詞ハの使

用率に関 して,全 年齢群で1要 因の分散分析(Unweight

ed meansに よる)を 行 ってみる と,年 齢の 主効果が

有意であ った(F(7,82)=24.00, P<.001).次 に各年齢間

で平均値の差が 有意 であ るか ど うかを 比較 す るための

post-hock testをKeppe1 (1982)に 従 い, Tukey法

とFisher法 で算 出し, Table 1の 結果を得た. Keppel

に よれば両テス トで有意あ るい は有意でない場合に は統

計的に判断を下せ るが,一 方の テス トのみ有意な場合 こ

は判断を保留すべ きであ るとしてい る.こ の考 え方に従

ってTable 1の 平均値の差をみ る と, 14歳 群 は4-12

歳 のいずれの群 よ りも有意に使用率が高 く,成 人 も4-

12歳 のいずれの群 よ りも有意に使用率が高 い.ま た12

歳群 は4歳, 5歳 群 よ りも有意に使用 率が 高 く,8歳 群

も同 じく4, 5歳 群に対 して有意にこ使用 率が 高い。 しか

し,4歳 群 と5歳 群, 6歳 群 と10歳 群6, 8, 10歳 群 と

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田原 ・伊藤:助 詞ハ とガの談話機能の発達  211

12歳 群, 14歳 群 と成人 との間には有意な差 はなか った.

Table 2

4, 6, 8, 10, 12, 14歳 の 被 験 者 群 に お け る既 出 の

ハ の 使 用 率 に つ い て の 傾 向 分 析

*** p< .001

さ らに,既 出の 被 指 示 物 の 言 及 に 使 用 され る助 詞 ハ の

使 用 率 の 発 達 の ダ イ ナ ミッ クな 傾 向を 把 握 す るた め に

Fig. 4を み る と, 4歳 群 で は既 出の 被 指 示 物 の 言 及 に ハ

は 使 用 され な い こ と,既 出の 被 指 示 物 を 言 及 す るの に ハ

の 使 用 が は じ ま るの は5歳 群 か らで あ り, 8歳 群 まで 六

の 使 用 率 は上 昇 す る こ と,し か し10歳 群 で ハ の使 用 率

に 落 ち込 み が み られ,再 び12, 14歳 群 か ら成 人 に か け

て 上 昇 す る こ とが わ か る.こ の よ うな傾 向が 統 計 的 に 有

意 で あ るか ど うか 確 か め るた め,年 齢 が 等 間 隔 で あ る

4, 6 ,8, 10, 12, 14歳 の6群 に つ い て,直 交 多 項 式 に

よ る傾 向分 析(Trend Analysis)を 行 い, Table 2の

結 果 を 得た. Table 2よ り,一 次 の変 動(F(1,54)=35.26,

p<.001)と 三 次 の変 動(F(1,54)=16.46, p<.001)が 有

意 で あ る。 従 っ て94歳 群 か ら14歳 群 にか け て ハ の使

用 率 は増 加 す るが,そ れ は単 調 な もの で は な く,由(8

歳 群)と 谷(10歳 群)の あ る三 次 曲 線 の よ うな 変化 を

す る こ とが 統 計 的 に裏 づ け られ た 。

Tabie 3は1-4枚 目の絵 カ ー ドの被 指 示 物 に そ れ ぞ

れ 言及 して物 語 を つ くる 際 どの よ うな 助 詞 を 用 い た か

を 示 した もの で あ る. 1枚 目((a)), 2枚 目((b))の 絵 カ ー

ドの 被 指 示 物 を 言 及 す る の に ガを, 3枚 目((c)), 4枚 目

((d))を 言 及す る の に ハ を 使 用 した とす れ ば,“(a) (b) (c) (d)”

の 順 番 に “ガガ ハ ハ ” パ ター ン とな る。Table 3の 助 詞

使 用 パ ター ンに よれ ば, 4, 5歳 群 で は 被 指 示 物 が 初 出,

既 出 に か か わ らず ガを 用 い,ほ とん ど “ガ ガ ガ ガ” パ タ

ー ンに な って い るの に , 14歳 以 降 で は 初 出,既 出 を 弁

別 し,主 に “ガ ガハ ハ ” パ タ ー ン に な って い る. 6-12

歳 群 で は “ガ ガ ガ ガ” パ タ ー ンか ら “ガ ガハ ハ ” パ タ ー

ンへ の 移 行 を 示 す か の よ うに “ガ ガ ガハ ” パ タ ー ンの 割

合 が 高 くな って い る,そ れ に 対 して,“ ガ ガハ ガ” パ タ

ー ン はほ と ん ど見 い 出 され な い .

な お,助 詞 “モ” 反 応 は2枚 目の 絵 カ ー ドに 対 し て の

み観察 された.モ は品詞分類上,ハ と同じ係助詞(副 助

詞)で あるが,本 実験でのモは “同類事物の提示”の機

能に基づ く使用であ り(述 部が 旧情報 となる),主 部 を

新情報 とす る 点で は,む しろガと 共通 の 機能を もつの

で, Table 3で はガ(新 情報)の 反応 の内数 として分類

をお こな った。

Table 3

課 題 に お け る助 詞 の 使 用 パ タ ー ン

考 察

先行文脈に基 づいて物語 を伝達す る課題に おいて,ハ

とガの談話機能 に よる発話が いつ 頃出現 し,完 成す るの

かにつ いての結果 をま とめる と,以 下 の よ うな3つ の段

階 を設定す る ことが できる。

まず第1の 段 階は,被 指示物が 初出.既 出はこかか わ ら

ず,被 指示物 の言及 はこガを使用す る段階である.こ の段

階においては,被 指示物が 初出 ・既 出にかか わ らず,被

指示物 の言及 にガを用いている ことか ら,談 話機能に基

づ く助詞ハ ・ガの使い分 けは行われていない と考え られ

る.就 学前期(4歳 群,5歳 群)の 幼児がほぼ この段階

に相当す る.こ の結果は,既 出の名詞句にハをつけ るこ

とが就学前児では困難であ るとい う秦野(1979)の 結果

と一致する.な お,こ の時期の子 どもは六を全 く使用 し

ないわけではない.小 さい幼児で も “… は…であ る” と

い ういわゆ る判断文に対 して六の使用が観察 されてい る

(永野, 1959;大 久保, 1967参 照).し か し,本 実験 の

刺激文 は “…が(は)… す る” とい ういわゆ る叙述文 であ

り,主 部の新 旧情報に基づいて使い分 けを しなけれ ばな

らず,こ の段階の子 どもた ちは,そ の使 い分 けが できな

か った と考え られ る。

第2の 段階 は,被 指示物に言及す る際,初 出の被指示

物に ガを,既 出の被指示物にハを使 い分 けは じめるのだ

が,既 出の被指示物 に対 して完全 にハを用 いる ことが で

きない段 階である.従 ってこの段 階の被 験者は,談 話機

能に基 づいて助詞 ハ.ガ を使 い分 ける とはいえ,そ の使

い分 けが不完全 である と考 え られる.小 学校1年(6歳

群)か ら中学1年(12歳 群)が,ほ ぼ この 段階 に相当

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212  心 理 学 研 究  第56巻 第4号

す る.こ の時期 は,ま た 田原(1984)に よれ ば六の対照

用 法 の獲 得 とも一致 している。

第3の 段階 は,初 出 ・既 出に基 づいてガ ・ハを完全 に

使 い分 ける ようになる 段階で,中 学校後期(14歳 群)

一以降が ほぼ この段階に相当す る.

以上の ように六 とガの談話機能の出現 完成 の段階を

3つ に分 けた とき,第2段 階がハ ・ガの談 話機能の獲得

の 時期 と考 えられるが,こ の時期の特徴 として以下の よ

うな2つ の ことが明 らかになった.

(1)既 出の ものに対 する助詞ハの使用率は年齢の増加

に 従 って単調に増加するのではな く, 10歳 児群 でハの

使 用率が落ち込む.近 藤(1978)の 結果で も,小 学校4

年 生(平 均年齢10歳2ケ 月)は 小学校2年 生(平 均年

齢8歳3ケ 月)よ りも既 出のハの使用率が落ち込んでい

る.こ のいわば発達的 “後退”現象の説明 として,以 下

の2つ が考え られ る。

まず第1は,既 出のハの使用率が落 ち込む10歳 の頃

に,談 話機能以外の新たな助詞ハの機能の獲得がは じま

り,こ のために六の談話機能 とこの新たな機能 との間に

競 合が生 じ,六 の 使用率が 落 ち込 んだ とす るものであ

る.田 原(1984)に よれ ばハの対照用法が 正確に理解 さ

れ るよ うはこな るの は中学生後期以降であ るが,ど んな語

順で もこの対照用法の理解が はじまると考え られ るのが

ほぼ10歳 の頃で ある。従 ってハ の対照用法 の獲得に伴

って談話機能 との間に競合が生 じ,談 話機能 として のハ

の使用率が低下 したので はないか とい うこ とが考 え られ

る。

第2は,課 題に対す る被験者 の興味 と態度 に よる説 明

で ある.助 詞 ハ ・ガは単一 の機 能ではな く機 能が 多重的

(多重機 能)で ある ことはす でに 述べたが,ガ の 多重機

能 の1つ に “事 実の叙 述用法”(松 村, 1957)が ある.こ

の事 実の叙 述用法 とは,眼 前 の事 実をそのまま表現す る

場合,ガ が用 い られる とす る ものである.話 し手が 報告

者的 な態度 を とって事 象を記 述す る場 合,こ の用 法の ガ

が用 い られ る ことが多 くなる ことが予想 される.さ て,

本 課題に被 験者の取 り組む態度 を 見る と, 6-8歳 児で

は物 語の筋 に興味を示 し,物 語 として伝達す る ことに積

極 的であ ったのに対 して,10歳 以降では 筋 の展開に興

味を示 さな くな り,物 語の個々の事実を記述する とい う

態 度であ った.従 って, 6-8歳 児は ガとハ の 談話機能

に基づいて物語を伝達す る ことがで きるのに対 して, 10

-12歳 児においては物語の面白 さ の 欠如のため,報 告

者 的な話 し方に基づ くガの使用が増加 し,そ の結果 とし

てハの使用率が見かけの上では10歳 で低下 した と考え

る ことがで きる.し たが って, 6歳 児のハ ・ガの使用率

は10, 12歳 児 とほぼ同率であ り,統 計上有 意差がなか

ったが,両 者の反応には質的な差がある と考え られ る.

すなわち6歳 児の使用率の低 さは談話機能が獲得途上,

つ ま り上述の第1の 段階か ら第2の 段階への移行の時期

であるこ とを反映 してい るのに 対 して, 10, 12歳 児で

は,本 実験 の ような課 題 ・場面 で,す でに獲得 されてい

る六 とガの談話機能が用 い られず,む しろ “事 実の叙述

用法”が作用 した 結果 なのか もしれ ない.し か し, 14

歳 以降では物 語 としての面 白さの欠如 にもかかわ らず,

教示 の意 味や課 題を十分に理解 して物語 の伝達に ハ とガ

の談話機能 を導 入した と考 え られ る.

(2) Tabie 3か ら明 らか な ように,課 題における助詞

の使用 パター ンとして “ガガガハ”パター ンを用いてい

る子 どもの割合が,第2段 階では他 の段 階の子 どもに比

べて高い.こ のパター ンを用いる子 どもは,言 及す べき

既出の被指示物が2つ あるのに,そ の うち最初に言及 し

た もの(3枚 目の絵 カー ドの行為主)に はハを用いず,

ハを用いるのは,既 出の被指示物の片方の言及が終わっ

てか らである。

注 目すべ きことに,談 話機能に基づいてハ とガを使い

分けている と思われる成人群で さえ, 60例 中, 11例 に“ガガガハ”パ ター ンが現れてい る。

これに対 して “ガガハ ガ”パ ターン,す なわち既 出の

被指示物の うち, 3枚 目 の 絵 カー ドの 行為主 にハを用

い, 4枚 目の絵 カー ドの行為主に ガを用い る例は,第2

段階の子 どもにこのみ4例 見 られただけであ った.

それで は,ど うして “ガガガハ”パ ターンは見 られ る

のに対 して,“ ガガハ ガ”パ ターンは,ほ とんど 見 られ

ないのであ ろ うか.こ の説 明として,以 下の3つ が考 え

られ る.

まず第1は,ハ の対照用法に基づ く説 明である.本 課

題 にこおい て, 4枚 目の絵 カー ドの行為主 の述部 は3枚 目

の絵 カー ドの行為主 の 述部 と対 照的 な 関 係-例 えば

Fig. 1の 例 では, 3枚 目の絵 カー ドの行為主 “猿”が,

パ ンダに “かみつ く” はこ対 して, 4枚 目の絵 カー ドの行

為主 “パ ンダ” は,猿 を “な ぐる”一 に なってお り,

す べての被 験者が その ような意 味関係に基づ く反 応をお

こなった.従 って, 3枚 目の行為主 の行為 と4枚 目の行

為 主の行 為を対 照 ・比 較す る気 持を込めて, 4枚 目の絵

カー ドの被指示 物にハを使用 した のではないか と考え ら

れる.こ の対 照 ・比較 の文 を2文 に 分 ける とき,“ …は

…です .… は…です ”又は “…が…です.… は…です ”

とい う文 にす る ことはできて も,“…は…です.… が…

です” とす る と,文 として不 自然になる.例 えば “A組

は遠足に行 ったが, B組 は遠足に行かなかった” とい う

対照用法の文を2文 に分ける とき,“A組 は遠足に行 っ

た. B組 は遠足に行かなか った”“A組 が遠足に行 った。

B組 は遠足に行かなか った” とす る こ と は で きて も,“A組 は遠足に行 った. B組 が 遠足にご行かなか った”は

文 として不 自然であ る.こ の ことは,“ ガガ六 ガ”パ ターンよ り “ガガガハ”パ ターンが多い とい うことの1つ

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田原 ・伊藤:助 詞ハ とガの談話機能の発達  213

の説 明 となるであろ う.

第2は,課 題における登場動物 間の関 係にに基 づ く説 明

である.本 課題 では,す でに説 明した ように,各 々の登

場動物が1, 2枚 目の絵 カー ドでは初出, 3, 4枚 目で既

出 となるが,動 物 間の関係 ににつ いては3枚 目では じめて

示 され る.す なわ ち, 1, 2枚 目 では 各 々の動物-第

3課 題(Fib, 1)の 例 ではパ ンダ とサル が 単 独で 描

かれ てお り,そ れ らの動物が互 いに関係 し合 うとい うこ

とにつ いては3枚 目では じめ て示 され る.し たが って,

3枚 目では登場動物 の関係 とい う点 で初 出であるので,

3枚 目の動物 を 言及 す るのに ガが 使用 された のはに対 し

て, 4枚 目で は動物が 関係 し合 うこ とににつ いて, 3枚 目

ですでに既 出となってい るので, 4枚 目を言及す るのはに

六が使用 された とい うことが考 え られ る.こ の解 釈にによ

れ ば, 1, 2枚 目は登場す る動物 の紹介で あ り,物 語 は

3, 4枚 目で展開す るので, 3枚 目は物語 の始 ま りとして

2匹 の動物 とも 初 出 であ ると 被験者 がみ なした と考 え

る.こ の考 え方に基づけば,初 出に ガを,既 出に ハを用

い るとして,“ ガガガ六”パ ターンが 整合的 はに説 明され

る.し か し,こ の説 明で は “初 出=新 情報”かつ “既 出

=旧 情報” とい う考え方が前提 とな ってい る.さ らに2

枚 目と3枚 目の絵 カー ドの間に は “方法”で述 べた よう

に “…が…を見つけ ました"と い う実験者に よるナ レー

シ ョンが入 ってい るので, 3枚 目の絵 カー ドの動物 の関

係 は,こ のナ レーシ ョンにによって “既 出化” され ている

とい う反論 も成 り立つであ ろ う.

これに対 して第3は,新 一旧情報 の概念 と初 出一既 出の

概念 との差異 と共通点に基づ く説 明である.久 野(1973)

が指摘 した よ うに初 出一既 出の概念 と新一旧情報 の概念 は

別の ものであ り,“初 出一既 出” とは 先行す る 発話 の 中

に,こ れか ら言及 しよ うとす る事物が あったか否か で,

あ った場合に は既 出,な い場合に は初 出になる.こ れ に

対 して “新一旧情報” とは,場 面 あるいは 先 行文 脈 な ど

はによって,こ れか ら言及 しよ うとす る事物が 聞き手の意

識にすでにに導 入されてい ると話 し手に仮 定され ているか

否かで,話 し手が導 入され てい る と仮定 していれば旧情

報,仮 定 してい なけれ ば新情報に なる.

従 って,こ れか ら言及 し ようとす る事物が既 出であっ

て も,話 し手が 聞き手 の意識 にに,ま だその事物 が導入さ

れてい ない と仮定すれ ば新情報に なる.本 実験での “ガ

ガガハ”パ ターンの反応 は,ま さに既 出情報 を新情報 と

して扱 った結果であ る と考 え られ よう.し か し,既 出 と

旧情報 とは区別 されね ばな らない とはいえ,既 出の回数

が多けれ ば多いほ ど,よ り旧情報 として扱われやすい と

い う関係 は否定で きないで あろ う.

す なわ ち,本 課題 では3枚 目の絵 カー ドの被 指示物を

言及す る とき,そ の被指示物 に対す る言及 を被 験者はそ

れ 以前に は1度 しか行 ってい・ないのにに対 して, 4枚 目の

絵 カー ドの被指示物を言及する ときは,そ れ以前にに2度

行 っている.従 って,言 及 される回数の少ない3枚 目の

絵 カー ドの被指示物を,話 し手である被験者は 旧情報 と

して扱わず,言 及 される回数の多い4枚 目の絵 カー ドの

被 指示物を旧情報である としたのではないか.こ こで注

意 しなければな らない ことは,久 野(1973)が 指摘す る

よ うに,言 及す る事物が既出であ って も,そ れが新情報

な らば ガが 使用 される とい うことである.従 って,本 課

題はにおいて3枚 目, 4枚 目の絵 カー ドの被指示物はいず

れ も既出であるのだが,3枚 目の絵 カー ドの被指示物を

新 情報, 4枚 目の絵 カー ドの被指示物を 旧情報 と話 し手

である被験者が判断 したために “ガガガハ”パ ターンが

現 れた と考える ことが できる。 これに対 して,言 及 され

た 回数 の少ない3枚 目の絵 カー ドの被指示物を 旧情報 と

し,言 及 された 回数 の多 い4枚 目の絵 カー ドの被指示物

を新 情報 と被 験者が判断す る ことは,ほ とん どあ りえな

い.従 って “ガガハガ” パター ンはほ とん ど出現 しなか

った と考 える ことが できる。

こ こで研究 で明 らか はになった ことをま とめてみ よ う.

ハ とガは2語 文 の段 階です でにに使用が 開始 されるが,談

話機 能に基 づいて両 者の使 い分 けを獲 得す るのは遅 く,

中学校後期(14歳)に になってか らである.助 詞ハ とガの

談話機 能の獲 得が遅 くなるのは,両 者の機 能が多重的で

あるためである ことが示 唆される.す なわち,助 詞ハ と

ガの談 話機 能 と他 の機 能 との間に競合 が生 じ,そ の結果

として 談 話機 能の獲 得が 遅 れる とい うことが 考え られ

る.今 後 の課題 として,談 話機 能を も含むハ とガの複数

の機 能の獲 得順序,及 び相互関係を明 らかにする ことが

必要 である.ま た,“ 初出一既出” とい う文脈指示上の区.

別 と “新 情報一旧情報"と い う情報構造上 の 区別 とが密

接 な関係を持ちなが らも,同 一の もの として扱 ってはな

らない ことが本研 究において明 らかに された.談 話構造

を解明す る上で重要である新旧情報の概念を,文 脈指示

以外の視点か ら実証 的に検討す る ことも今後の課題であ

る.さ らに,本 実験では出現数 が少ないので分析 されな

か った “この”“その”等 の 指示詞や接続詞,接 続助詞

の使用 と六,ガ の使用 との関係をみてい くことも重要で

あろ う.

要 約

本研究は,先 行文脈にに基づいて物語を伝達す る課題にに

おいて,六 とガの談話機能にによる発話がいつ頃 出現 し,

どの よ うな習得過程を経て完成す るのかを明 らかはにす る

ことが 目的であ る.

ハ とガの談話機能の 出現 ・完成の段階 として,次 の よ

うな3つ の段階を設定 す る ことが で きる.第1の 段階

は,被 指示物が初出,既 出にかかわ らず,被 指示物の言

及はにガを使用する段階である.従 って,こ の段階は ガと

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214  心 理 学 研 究  第56巻 第4号

六が談話機能にに基 づいて使 い分 け られてい ない とす る こ

とが できる.就 学前期 の幼児が,ほ ぼ この段階に相当す

る.

第2の 段 階は,初 出の被指示物はにガを,既 出の被指示

物 に ハを使 い分 けは じめるのだが,既 出の被 指示物に必

ず しも六が用 い られない段階である.従 って,こ の段階

は談話機能に基 づ くハ とガの使 い分 けの獲 得期 と考える

ことがで きる.小 学校1年 一 中学校1年 が,ほ ぼ この段

階 にに相当す る.

この段階の特徴 として,既 出のものに対す るハの使用

率 は年齢の増加に従 って単調に増加す るので はな く, 10

歳 群で低下す るとい う,い わ ば発達的 “後退”現象 を示

す.

第3の 段階は初 出,既 出に基づいて ガとハを使い分け

る段階であ る.従 って この段階を談話機能に基づ くハ と

ガの使い分けの完成期 と考える ことがで きる.中 学校後

期 以降が,ほ ぼ この段階にに相当する.

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