rpa活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結...

31
1 RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共同研究結果報告 平成31年4月17日 北本市 株式会社両毛システムズ 株式会社 Blueship

Upload: others

Post on 03-Jan-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

1

RPA活用による業務効率化実証実験に係る

共同研究結果報告

平成31年4月17日

北本市

株式会社両毛システムズ

株式会社 Blueship

Page 2: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

2

目次

1.共同実証実験の概要 ......................................................................................................... 3

1.1 実証実験の目的.................................................................................................. 4

1.2 RPAの活用に当たっての課題 ........................................................................ 4

1.3 実証実験に当たっての技術的な制約条件 ......................................................... 4

1.4 (参考)RPA(Robotic Process Automation)とは .................................... 5

1.5 (参考)国産デスクトップ型RPA 「WinActor」とは ................................ 5

2.実証実験のスケジュール及び進め方 ............................................................................... 7

2.1 実証実験の実施スケジュール ............................................................................ 8

2.2 実証実験の進め方 .............................................................................................. 9

2.3 実証実験の体制................................................................................................ 10

3.実証実験の対象業務の概要 ............................................................................................ 12

3.1 候補業務の一覧................................................................................................ 13

3.2 ヒアリング ....................................................................................................... 14

4.RPA研修及びシナリオ作成 ........................................................................................ 16

4.1 操作研修 .......................................................................................................... 17

4.2 シナリオ作成支援 ............................................................................................ 19

5.RPA試験導入結果 ....................................................................................................... 20

5.1 ふるさと納税お礼状・返礼品発送依頼事務 .................................................... 21

5.2 職員作成のシナリオ作成概況 .......................................................................... 23

5.3 RPA試験導入時に発生した課題と対策 ....................................................... 25

6.実証実験結果の分析及び考察 ........................................................................................ 27

6.1 RPA本格導入時により期待される効果 ....................................................... 28

6.2 RPA本格導入時に向けた課題 ...................................................................... 29

7.今後の展望 ..................................................................................................................... 30

Page 3: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

3

1.共同実証実験の概要

Page 4: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

4

1. 共同実証実験の概要

1.1 実証実験の目的

近年、全ての自治体で人口減少と高齢化により、労働力の絶対量が不足すると言われてい

る。本市においても例外なくその影響を受けることとなる一方、行政サービスの質を維持す

る必要があり、これを支える職員の負担は大きい。特に自治体業務においては、これまで定

形的な業務に手作業で対応していたが、今日では、政策的課題の解決や、多様化する市民の

ニーズに個々に対応する能力が要求されるなど、定型業務以外にも職員の果たす役割が増

えてきている。

このような自治体が直面する課題に対し、職員の働き方改革のツールの1つとしてRP

A(ロボティック・プロセス・オートメーション)が注目されており、定型業務の自動化に

よる職員の負担軽減が期待されている。

しかし、RPAは、民間企業、県、政令市等での導入が進みつつあるものの、中規模以下

の自治体においてはまだその普及率は低い。本市の規模においても、RPAの導入で効果を

発揮するのか、本格的な導入に向けての効果の測定及び課題の抽出をするため、実証実験を

実施することとした。

1.2 RPAの活用に当たっての課題

上述のとおり、既にRPAを導入している自治体はあるものの、これを本市に当てはめた

ときに、次のような課題が浮かび上がった。

1 費用対効果が見込めるか。

2 職員が行う手作業とRPAの業務分担の程度。

3 職員によるシナリオ作成の実現性(コンサルの必要性)

4 RPAに向いている業務、不向きな業務は何か。

5 本格導入に当たってのRPAの普及方法。

1.3 実証実験に当たっての技術的な制約条件

実証実験にあたっては、実証実験後の本格展開や北本市の情報システムを見据え、①日本

国内で製造・販売が行われているソフトウェアであること、②ソフトウェアの起動・実行時

に認証等が行われる場合、通信不要で使用できるソフトウェアであること、③導入が段階を

経て行えるよう各職員の端末へ導入するタイプのソフトウェア(いわゆるデスクトップ型)

であることを重視し、当該条件をすべて満たす「WinActor」をRPA製品として採用しまし

た。

Page 5: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

5

1.4 (参考)RPA(Robotic Process Automation)とは

RPA(Robotic Process Automation)とは、主としてパソコン内の情報収集・転記・入

力・ダウンロード・アップロード等の作業を予め決められたシナリオに基づいて実行するツ

ール類の総称である。RPAツール内で人間の代わりに PC操作を行う事から、シナリオを

ロボットと称する事もある。

RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

る。近年では AIとの組み合わせにより、これらの判断を行う機能も持ちつつある。

一般的に作業の処理の起点が紙媒体などアナログ情報の場合も多くあり、OCR等のツール

と組み合わせ、紙情報の電子化、電子化された情報の処理と連携して動作を行わせる機会も

増加している。

1.5 (参考)国産デスクトップ型RPA 「WinActor」とは

WinActorは、以下 A~Eの 5つの特徴を有しているため、北本市の「事務の特性」だけで

なく、「システム環境の特性」も考慮した上で、本実証実験および本格導入にも最適である

と考える。

A Windows端末から操作可能な「あらゆるソフト」に対応

例えば、Internet Exprolerで検索した情報を Office製品(Excel等)に入力・計算し、

ファイルサーバに保存し、必要事項を個別業務システムに入力する、といった一連の動作を

シナリオ化し自動実行できる。そのため、職員の多種多様な定型事務処理に幅広く適用する

事が可能である。

B プログラミング知識等の無い職員でもシナリオ作成が可能

操作性が高く、グラフィカルな画面でシナリオを作成できるため、比較的短期間の操作研

修等を受講する事で、職員でもシナリオを作成できる。また、職員の異動や軽微な事務変更

が発生した場合にも、シナリオの修正や新規作成を柔軟に行える。

C 純国産/完全日本語対応

操作画面、マニュアル、サポート等のすべてが日本語に完全対応している。そのため、主

に日本語で業務を遂行されている職員にとってRPAの活用をよりスムーズに実施できる。

D デスクトップ型/外部との通信不要で、PC1台で動作可能

PC1 台でシナリオ作成とシナリオ実行が可能なスタンドアロンで動作するデスクトップ

型のRPAソリューションであり、外部との通信等は不要である。そのため、市民の個人情

報等の機密情報を扱う事務等においても情報流出等のセキュリティリスクへの懸念が少な

くなる。また、全庁ネットワークの強靭化によりインターネット接続用のネットワークが分

離される場合にも単独で動作可能である。

スモールスタートで費用対効果を検証しながら順次拡大しやすいため、本実証実験だけで

なく、本格導入時に初期投資のハードルも低くなる。

E シンクライアント環境(VDI方式)での動作実績

Page 6: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

6

シンクライアント(VDI方式)化された環境下でも動作実績のあるRPAソリューション

であり、本実証実験の目的のひとつを達成できると想定します。なお、詳細は「(3)シン

クライアント環境下における実証実験の可否」を参考とする。

【製品の導入実績】

「WinActor」は、様々な業界・業種において、定型業務の省力化と品質向上に貢献し、人

材を付加価値の高い作業へ最適配置する手段として、多数の評価を得ているRPAソリュ

ーションです。2018 年 2 月時点において 814 件の導入実績を有しており、9 月末時点では

約 1,200件を超える状況である。

Page 7: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

7

2.実証実験のスケジュール及び進め方

Page 8: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

8

2. 実証実験のスケジュール及び進め方

2.1 実証実験の実施スケジュール

当実験の実施スケジュールを下図に示す。

(図)実施スケジュール

多くの実証実験は、半年から1年掛けて行われる。当市では、平成30年10月に開催

された地方自治情報化推進フェア2018の視察後から、RPAの活用に向けた情報収集

が開始され、同年度内の結果報告を目指すこととなった。同年12月の下旬からスタート

したため、通常の半分以下の期間で終了させるための工夫と、リソースの注入が求められ

た。

スケジュール上の多くのタスクは並行で進められ、事前にRPAツールの知識を吸収

し、RPAツールで開発し易いようプロセス設計によって業務の見える化が行われた。

12月

下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬

1 共同研究実施計画書の提出

1-1  全体方針の決定、各種協議 市・共同研修者

1-2  共同研究実施計画書の作成 共同研究者

2 業務分析及び自動化対象範囲の確定

2-1  庁内RPA化対象候補業務リストアップ 市

2-2  自動化対象業務選定(優先順位付け) 市・共同研究者

2-3  業務ヒアリング 市・共同研究者

2-4  プロセス設計 共同研究者

3 シナリオ作成及び業務への適用

3-1  RPAツール(WinActor)に関する研修 共同研究者

3-2  RPAツール(WinActor)の各種技術サポート 共同研究者

3-3  シナリオ・フォローアップ 共同研究者

3-4  検証環境(端末、アカウント等)の準備 市

3-5  検証対象業務の実現性確認 市

3-6  業務シナリオの作成 共同研究者

3-7  業務への適用 市

3-8  データ収集、比較分析調査 市

4 効果検証及び報告書の作成

4-1  準備 市・共同研究者

4-2  効果検証及び報告書の作成 市・共同研究者

項番 タスク 主体

平成30年度(2018年度)

1月 2月 3月

環境準備本運用調

Page 9: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

9

2. 実証実験のスケジュール及び進め方

2.2 実証実験の進め方

2.2.1 対象業務の選定

今回は、実証実験ということもあり、直接市民に影響を及ぼさない内部の業務から選定することを

前提とし、煩雑で定例的な業務、多くの課で共通化できる業務等の視点を持ち、また他自治体で

実証実験が行われている業務も参考にしながら選定を行った。

2.2.2 研修

当市では、RPAツールが一過性のブームにならないよう、将来的には Excel や Word のように業

務に溶け込み、全庁に浸透することを目標とした。

研修は「機能のひとつひとつを理解すること」を目的に、ヒアリングは「仕事をプロセス単位に分解

し、業務の可視化が職員でもできる」ことを目的に実施した。

シナリオ作成では、メーカーやベンダーが1からシナリオを作成する他自治体もあるが、「ひとつ

ひとつのプロセスを、職員がRPAツールを使って実現できること」を念頭に、自前でシナリオ作成

ができることを目標にした。

Page 10: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

10

2. 実証実験のスケジュール及び進め方

2.3 実証実験の体制

当市では、RPAツールを全庁的に浸透させるためには、職員が主体となって実証実験を

実施していく必要があるという考えから、作業の主体は当市が担い、共同研究者が主体とな

る作業は最低限に留めることとした。

実証実験は、株式会社両毛システムズ(以降、両毛システムズと略す)と、株式会社

Blueship(以降、Blueshipと略す)に共同研究者として参加していただいた。

両毛システムズは、既に当市の住民情報などの基幹系情報システムを運用しており、また、

他市町村で財務会計などの情報系システムやLGWAN構築などの実績もあることから、

実証実験全体の進捗管理やプロセス設計といった範囲を主に担当した。

Blueship は、今回の実証実験で選定したRPAツールの教育から導入、サポートまでの

実績と、東京都庁での実証実験に参画するなどの経験から、技術サポートやふるさと納税業

務のシナリオ作成を主に担当した。

当実証実験の役割担当は下表のとおりです。

(表)北本市と共同研究者との役割分担

項番 作業内容 北本市 共同研究者

推進チーム 業務所管課 両毛システムズ Blueship

1 RPA活用調査のアンケート実施 〇

2 全体方針の決定 〇

3 キックオフ ミーティング 〇 〇 〇

4 協定書締結 〇 〇

5 庁内RPA化対象候補業務リストアップ 〇

6 自動化対象業務選定(優先順位付け) 〇 〇 〇

7 業務所管課へのヒアリング 〇 〇 △

8 運用上の課題抽出 〇 〇 〇

9 プロセス設計 〇

10 要件定義 〇 〇

11 RPAトレーニング用パソコンの準備 〇

12 RPAツールのトレーニング 〇 〇

13 RPAツールの技術サポート 〇

14 シナリオ作成のフォローアップ 〇

15 実証実験環境の準備 〇 △ △

16 検証業務の実現性確認 〇 △ △

17 RPAシナリオ作成 △ 〇 〇

Page 11: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

11

18 RPAシナリオを業務へ適用 △ 〇 〇

19 データ収集 〇 〇

20 検証前後の比較分析調査 〇 〇 〇

21 報告書の作成 〇 〇 〇

22 報告書のレビュー 〇 〇 〇

23 スケジュール管理 〇

凡例:〇は主担当、△は一部担当

Page 12: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

12

3.実証実験の対象業務の概要

Page 13: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

13

3. 実証実験の対象業務の概要

RPA化に資する業務の洗い出しを各課に呼びかけを行い、候補となる業務をリストア

ップした。

3.1 候補業務の一覧

企画財政部・総務部・市民経済部より8業務のRPA化に資する業務が挙げられた。業務

量・汎用性の観点から重点支援業務と職員による作成実践業務とに仕分けし、前者をAグル

ープ、後者をBグループとした。

Aグループの内、「ふるさと納税お礼状・返礼品発送依頼事務」を効果測定対象業務とし

て選定した。

部局名 課所名 事務名 グループ

業務概要

企画財政部 企画課 ふるさと納税お礼状・返礼品発送依頼事務 A

外部のふるさと納税サイトより納税者情報を収集し受付簿を整備。受付簿情報を基に寄付金

受領証明書印刷・返礼品業者への依頼用リスト作成等を行う。

総務部 総務課 通勤距離の算出 B

職員の通勤手当支給にあたり、届出記載の通勤距離について外部サイトを基に確認する。

総務部 総務課 臨時・非常勤職員の勤務実績登録 B

臨時・非常勤職員の給与支払いにあたり、各課に勤務実績ファイルを配布し、回答されたファ

イルを人事給与システムへ取り込む。

市民経済部 市民課 手数料の収納に係る伝票作成業務 A

市民課で取り扱う戸籍手数料等の収納8項目について歳入伝票・現金取扱印収納調書・収納報

告書・月計表・出納簿等を整備する。

総務部 税務課 手数料の収納に係る伝票作成業務 A

税務課で取り扱う入力閲覧等収納3項目について歳入伝票・現金取扱出納調書・収納報告書を

整備する。

総務部 総務課 情報セキュリティに係る eラーニングの受講促進 B

e ラーニングサイトより受講者情報を収集し、受講者一覧を整備。未受講者に対し未修了通知

を差し込み印刷する。

総務部 総務課 財務会計月次支払処理 B

財務会計システムより月次で支払う使用料・賃貸借料・保守委託料について起票し、印刷す

る。

総務部 総務課 複合機使用料集計事務 B

複合機の部署別・ユーザー別集計を行うために必要情報を収集・加工し、エクセル表に取りま

とめる。

Page 14: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

14

3. 実証実験の対象業務の概要

3.2 ヒアリング

ヒアリング手順の流れは下図の通りである。

・初めに、推進チームから業務主管課へ、RPAツール活用調書の作成を依頼した。

・集まったRPAツール活用調書は、共同研究者にも共有された。

・共同研究者は、RPAツール活用調査の内容から業務フローを作成し、その時に発生

した不明点や課題を、業務主管課に対してヒアリングを行った。

(図)ヒアリング手順

作成された業務フロー(仕事をステップごとに分解する作業)は、今後の当市職員でも作

成できる、分かり易いものとした。ふるさと納税に係る業務を例に、業務フローを以下に示

す。

(図)「ふるさと納税に係る業務」の業務フロー図

これだけでも大きな業務の流れは説明できるが、ひとつひとつのプロセスを説明するに

は、もう少し分解する必要がある。例えば「①受付データを抽出する」をさらに分解してい

RPA活

用調査を

作成

RPA活

用調査を

共有

業務フロ

ーを作成レビュー

不明点、

課題をヒ

アリング

業務フロ

ーを修正レビュー

Page 15: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

15

くと、以下の業務フロー図となる。

(図)「①受付データを抽出する」を分解する

一般的な業務マニュアルや引継ぎ書が、このレベルまで作成されていれば、ほぼ完成とな

る。しかし、ここまで細かく作成しても、RPAツールの機能には落しこめていないので「ふ

るさとチョイスからデータを抽出する」の手順をさらに細かくする。

(図)「ふるさとチョイスからデータを抽出する」を分解する

ここまでの分解することで、RPAツールの機能単位に落し込むことができる。この作業

を繰り返すことで、業務フロー図が完成する。

Page 16: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

16

4.RPA研修及びシナリオ作成

Page 17: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

17

4. RPA研修及びシナリオ作成

4.1 操作研修

実証実験に参加する職員に対し、RPAツールの操作方法習得を目的として操作研修を

開催した。

開催日時 平成31年1月29日(火) 10時~17時

開催場所 北本市役所内会議室1-A

受講者数 7名

受講者所属 総務課2名・市民課2名・財政課1名・企画課1名・環境課1名

研修概要 第1章 体験!実際に動かしてみましょう

第2章 記録操作について学習

第3章 文字入力について学習

第4章 画像マッチングについて学習

第5章 データ一覧、分岐と繰り返しについて学習

第6章 シナリオ作成の一助になる情報について学習

Page 18: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

18

操作研修受講後の職員の感想

肯定的な意見:

おおむね理解できた。研修を経て、未完成ではあるが、シナリオの形を作ることはできた。

否定的な意見:

難しかった。研修を終えてからすぐに自席で試してみたが、研修用の題材でできたこと

が、実際の環境だと同じようにはできなかった。

Page 19: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

19

4. RPA研修及びシナリオ作成

4.2 シナリオ作成支援

4.2.1 シナリオ作成

前章での業務ヒアリングに基づき、「ふるさと納税お礼状・返礼品発送依頼事務」のシナ

リオ作成を行った。

シナリオ作成にあたっては、庁内ネットワークの関係により、インターネット上のサイト

より情報を収集し、LGWAN環境端末に対しメールにてCSVファイルを連携する機能

と、LGWAN側でメール受信し、受付簿に起票する機能、受付簿情報をマクロにて加工す

る機能の3つに分割し、それぞれシナリオを作成した。

LGWAN側の2つの機能は1つのシナリオで実行する事も可能だったが、ヒアリング

時に現在の課題として「納税者が問合せをしてきた際に最大半月間受付簿に記載がないた

め即時対応が行えない」という課題が上がったことから、今回のRPAに伴い、日次作業と

して受付簿作成を行う事とした。

これにより、RPA化による業務効率化のみならず、納税者ファーストな対応が実現する

事となる。

シナリオ名 配置先 実行頻度 備考

元データ DL Internet 接続端末 日次単位 手作業時は半月単位

元データから受付簿へ LGWAN 接続端末 日次単位 手作業時は半月単位

転記 LGWAN 接続端末 半月単位

Page 20: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

20

5.RPA試験導入結果

Page 21: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

21

5. RPA試験導入結果

5.1 ふるさと納税お礼状・返礼品発送依頼事務

ふるさと納税お礼状・返礼品発送依頼事務のRPA導入前作業プロセスでは、1回あたり

の業務時間が約11分、年間では4.4時間相当となっている。

また、受付簿を日次で更新した場合(赤枠「日次対応範囲」)では、年間31.4時間相

当の業務量となります。

RPA導入後の作業プロセスは、以下の通りとなります。

Page 22: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

22

RPA導入における業務削減効果は90%以上が見込まれる予定である。

5.1.4 その他の得られた効果

RPA導入により純粋な業務削減効果は95.4%となるが、これまで課題となってい

た受付簿更新頻度をあげ、納税者からの問い合わせに即時に対応できる可能性がある事

が、RPA化の実験の中で明らかとなった。

受付簿更新を日次で行った場合でも職員の業務負荷は年間2時間程度と現業務に対して

54.5%の削減効果が見込まれ、また同様の業務を手作業で行った場合(年間31.4

時間)に対しては93.6%の効果が見込まれた。

このように、業務削減を行いながら納税者や市民の皆様に対する満足度向上を両立させ

られる可能性が明らかとなった。

Page 23: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

23

5. RPA試験導入結果

5.2 職員作成のシナリオ作成概況

職員による作成実践業務ごとに仕分けした B グループより、畜犬登録手数料収納事務・証明書

等手数料収納事務の2業務のシナリオを職員自ら作成し、次のとおり効果測定をした。

5.2.1 畜犬登録手数料収納事務

業務削減効果は、次のとおり。

RPA導入により純粋な業務削減効果は、96.7%となった。また、これまでは月に1度の集計作

業であったため、現金の保管について、安全面での懸念があった。RPAを導入することで作業時

間を大幅に短縮することができることから、今後は日ごとに収納処理を行い、現金保管の不安を解

消する。その場合でも、職員の業務負荷は、年間2.1時間程度であり、同様の業務を手動作業で

行った場合(62.4時間)に対して96.6%の業務削減効果が見込まれる。

5.2.2 見える化効果

シナリオ作成に当たって、業務フローを作成したことで、次のとおり副次的な効果が得られた。

・ これまでは伝票摘要欄に、登録した全ての犬の登録番号を入力していたが、伝票上では不

要なことがわかり、省略することとした。

・ 現金取扱員収納調書は、複写式のシートに、手書きで作成していたが、必ずしも同シートを

使用しなくてもよいことがわかり、エクセル化により集計表との紐づけを行い、作成の手間をゼロ

とすることができた。

Page 24: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

24

5.2.4 証明書等手数料収納事務

業務削減効果は、次のとおり。

RPA導入により業務削減効果は、96.2%となった。その他にも、当業務は、経験年数の違う職

員が、毎日交代で作業を行っていることから、作業時間にバラつきがあったが、RPA導入により、

業務量の平準化に寄与する効果もみられた。また、窓口対応の合間を縫って行う作業であるため、

途中で接客業務が入る等の理由から、ミスが目立っていたが、職員は、RPAを起動させる作業し

かなくなることから、ミスの軽減にもつながることが明らかになった。

見える化効果には、上記畜犬登録手数料収納事務と同様の効果が得られた。

Page 25: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

25

5. RPA試験導入結果

5.3 RPA試験導入時に発生した課題と対策

RPA導入実証実験を通じ、様々な課題も見て取れた。本節では課題を主として「ハー

ド視点」「人的視点」「制度的視点」に分類して記載する。また、同様の視点においてこれ

らの課題に対する対応策について記述を行う。

5.3.1 RPA試験導入時に発生した課題

〇 ハード視点

・ ネットワーク強靭化対応に伴い、Internet アクセス端末と LGWAN 端末とに物理的に分

けざるを得ず、これらの環境をまたぐシナリオ作りは職員では難易度が高く感じられる。

セキュリティ担保の観点から情報端末を隔離して設置せざるを得ないが、職員が端末

設置場所まで赴いてシナリオを都度実行するとなると、業務効率化が限定的なものとな

る。

Web ブラウザを介したシナリオはブラウザのレスポンスなど考慮するべき点が多く、

Exel操作等よりも格段に作成のハードルが高く感じられる。

申請書からシステムへの入力に苦労していることから AI-OCRの導入も併せて行えれば

より効果的に展開できる。

○職員の観点

・実証実験では若手職員を中心に参画したが、本導入においては中堅職員以上の参画も不

可欠となる。どのように巻き込んでいくかが重要である。

・シナリオ作成を行う時間や、業務棚卸しを行う時間をどのように捻出するのか、検討を

行う必要がある。

・研修等を通じてよりシナリオ作成に精通していく必要があるが、どのように職員に声か

けを行うのか課題である。

〇定着の観点

・システムへのログイン権限、共有フォルダへのアクセス権の付与等、シナリオを実行さ

せるにあたり権限付与の在り方をどのようにするべきか課題が残った。

・シナリオ作成にあたり共有化できるパーツの共有化、慣れない職員に対しては一からシ

ナリオを作るのではなく、パラメータ設定の変更程度である程度動作するシナリオを準備

するなどの工夫が必要。

・シナリオの実行にあたって、タイマー設定を行い自動的に実行させるのか、実行するシ

ナリオを次々指定させるのか等、実行面でのルール整備が必要。

Page 26: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

26

5.3.2 課題に対する対応策

〇ハードの観点

・ LGWAN系・インターネット系が分離・独立して存在する事から、それぞれにRPAツ

ールが必要となるが、主たる作業を行う LGWAN系には作成機能を持つフル機能版、イン

ターネット系は実行専用版を導入する等工夫を行う事で導入費用を抑えながら導入を行

うことが出来る。

・ セキュリティ担保などの運用面においては、各種のルール整備と共に、職員の自席か

らロボット動作を簡便に行えるような仕組みをシナリオ作成時に考慮する事でセキュリ

ティと利便性の両立を図る事が出来る。

〇職員の観点

・ Excelや Wordと同じように使いこなすためには、より実践的な研修やオンサイトでの

ベンダーサポートができる体制構築が必要。また、職員の ITリテラシー向上も必要だ

が、現時点でのスキル差があっても一定のRPA効果が享受できるよう、シナリオのパ

ーツ化、スタンダードシナリオの準備なども検討に入れておく。

〇定着の観点

・ ベンダーの支援も得ながら、ロボット開発標準・アカウントルール・運用ルールなど

のルール整備が不可欠。

・ 必ずしもタイマー設定を行わなくてもシナリオが暫時指定した順で動くような仕組み

作りが必要。

Page 27: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

27

6.実証実験結果の分析及び考察

Page 28: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

28

6. 実証実験結果の分析及び考察

6.1 RPA本格導入時により期待される効果

RPA導入により、職員の働き方改革の支援、業務の可視化・平準化、市民・納税者の満

足度向上が見込まれることが本実証実験より明らかとなった。

職員の働き方改革の観点では、これまで行っていた定型作業の9割程度を削減できるポ

テンシャルがある事が、本市の実証実験を始め、他市町村の実証実験でも明らかになってい

る。これらの業務削減効果時間をもって残業時間の抑制に繋げるとともに、業務内容の見直

しを図る事で、職員の働き方改革の道筋が見えてくると思われる。

業務の可視化・平準化の観点では、現在の業務実施にあたり同一業務であっても職員毎に

「ミスをしない」「効率を重視する」と着眼点が異なり、業務の手順にばらつきが生じてい

た。特に業務の運用ルールを取り決めた職員は、ミス防止のチェックポイントを把握して実

行する事で、確実性と効率の双方を最大化させる事が可能だが、指示を受けて業務を実行し

ている職員については、より慎重にミス防止のチェックポイントを設ける傾向があり、同一

業務でも業務実施の時間がかかっていた。RPA化を図る事で、これらのチェックポイント

が一元的に組み立てられる。また、RPAはその特性上、業務フローがそのままロボット動

作手順となっていることから、万が一手運用に切り戻しを行わなければならない事態とな

っても、RPAの動作手順を踏襲する事で、職員のスキル差に依存することなく同一手順を

行うことが可能となる。

市民・納税者の満足度向上の観点では、これまでは半月に一度しか行うことが出来なかっ

た業務を日次業務にすることで、より市民・納税者へサービス向上が図られる業務が存在す

ることが判明したほか、職員の作業時間を市民等への満足に資するよりクリエイティブな

業務へシフトする事で実現する事が可能となる。

Page 29: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

29

6. 実証実験結果の分析及び考察

6.2 RPA本格導入時に向けた課題

RPA本格導入に向けては、前処理工程として窓口対応にて主となる手書きの申請書等

の紙帳票の電子化が必要不可欠である。そこでAI-OCR等も併せて導入する事で、紙帳

票の電子化~RPAによる処理へと一元的に管理運用が行えることから、OCRの検討も

併せて行う必要がある。

グループウェアシステムを介したシナリオ作成については、ハードルが高いと感じる職

員が多い事から、ベンダーに当該部分のシナリオのパーツ化・ライブラリ化を委託する等、

一からシナリオを作らなくてもある程度既存パーツを組み合わせればシナリオが組み立て

られるような工夫も必要となる。

また、シナリオ作成やRPAツール習得のための研修等については、業務の一環としてこ

れを前向きに組み込むよう、市を挙げて支援する体制を構築する必要がる。

特に費用対効果を求める業務と職員がスキル向上を図るためのシナリオについては明確

に区分し、前者についてはベンダー等の支援を仰ぎながら速やかに稼働するシナリオを設

置する一方で、職員がスキル向上を図るためのシナリオについては費用対効果よりもむし

ろ効果は限定的でも「楽になった」と感じられる物を率先してRPA化する事で、ストレス

の軽減を図りながらスキル向上を行うと共に、職場全体でRPAの恩恵を部分的でも享受

する事で前のめりな取り組み姿勢となるよう導くことが重要である。

Page 30: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

30

7.今後の展望

Page 31: RPA活用による業務効率化実証実験に係る 共研究結 …...RPAツールは自ら判断を行う事はなく、決められたルールに基づいて動作が決定され

31

7. 今後の展望

今回の実証実験の結果を踏まえ、本市においてRPAの導入が職員の負担軽減に効果的で

あることを確認した。

平成31年度からは、同実験の対象となった業務はもちろん、全庁的にRPAの導入を展

開していきたいと考える。特に、窓口業務を担当とする部署の業務について導入を促進した

い。

これらの部署は、時間外勤務が常態化している場合が多い。RPAを活用し、業務の自動

化の推進を図ることで、職員は、市民との対話を中心とした窓口対応等、職員にしかできな

い仕事に注力することができ、市民サービスの向上につながることを期待したいと考える。

将来的には、RPAの対象業務が増え、1台のRPAパソコンが昼夜を問わず、常に稼働し

ている状態を目指したい。

そのためには、RPAを各部署で推進する中心的な職員が必要となる。RPAを理解し、

アイデアを持ち、様々な業務に応用できる力が必要で、そのような職員を育成するためにも、

職員研修やRPAに関する情報提供は欠かせないものとなる。

また、RPAの導入を推進するとともに、今後は紙媒体の情報をデータ化するAI-OC

Rの導入を同時に検討したい。今回の実験においても、RPAの実行前の準備作業として、

職員の手作業によるデータ入力がしばしばあり、これもまた職員の負担となっていた。AI

-OCRとRPAを組み合わせることで、業務の完全な自動化を図ることができ、作業効率

は、飛躍的に向上すると考える。

最後に、RPAの導入は、本市における業務改革を進める良い契機になった。RPAのシ

ナリオを作成するに当たって、業務フローの見える化が必須となってくるが、今回の実験に

おいて、この作業が多くの場面で、前例踏襲で長年行ってきた事務を見直す結果となり、業

務改善に大きく貢献した。RPAの導入の有無にかかわらず、業務の効率化を進める上で非

常に重要な作業であることに気づかされた。

こうしたことは、RPAの導入をきっかけに効率化を求める職員個人の意識改革にもつ

ながる副次的効果だと言えるだろう。

今後、RPAを含めたICTを率先して取り入れる積極的な働き方改革への取組が、行政

サービスの維持・向上にもつながっていくと考える。