sdgs時代の 日本の教育に活かす - jica · グローバルな金融・経済危機...
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青年海外協力隊・日系社会青年ボランティア第二回 全国OV教員・教育研究シンポジウム
途上国経験をSDGs時代の日本の教育に活かす-協力隊を日本の文化にする
@JICA関西センター2018年12月23日
佐藤真久東京都市大学 教授[email protected]/[email protected]
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-第Ⅰ部-
これからの時代と
2030年の
ありうる日本社会
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気候変動
社会的公正
生物多様性喪失
自然災害
高齢化
エネルギー問題
ガバナンス
紛争
肥満
貧困格差
グローバルな金融・経済危機
教育の質
ユースの雇用問題
人工知能に奪われる職
グローバルで複雑な問題(Global Problematique)
水問題(質、量、アクセス)
これからの時代・・大加速化の時代
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“大加速化(Great Acceralation)”の時代
➡第二次世界大戦後に急速に進んだ人口の増加、経済のグローバリゼーション、工業における大量生産、農業の大規模化、大規模ダムの建設、都市の巨大化、テクノロジーの進歩といった社会経済における大変化は、二酸化炭素やメタンガスの大気中濃度、成層圏のオゾン濃度、地球の表面温度や海洋の酸性化、海の資源や熱帯林の減少といったかたちで地球環境に甚大な影響を及ぼしている。人口の急激な増加が、都市への人口集中(大都市化)などを促していることからも分かるとおり、個々の加速化が、更なる加速化を生み出している。
戦後の社会経済における大変化(第二次世界大戦後に急速に進んだ人口の増加、経済のグローバリゼーション、工業における大量生産、農業の大規模化、大規模ダムの
建設、都市の巨大化、テクノロジーの進歩など)
地球環境に甚大な影響(個々の加速化がもたらす更なる加速化)
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これからの時代:大加速化の時代~世界人口の加速度的増加
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/hakusyo.php3?kid=215
http://maholova.net/blog/wp-content/uploads/2015/03/
スクリーンショット-2015-03-11-14.18.19.png
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これからの時代:大加速化の時代~大都市化(メガシティ化)
https://www.bloomberg.com/graphics/infographics/global-megacities-by-2030.html
Source: United Nations World Urbanization Prospects
Bloomberg L.P. Published Sep. 9, 2014
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気候変動
社会的公正
自然災害
高齢化
エネルギー問題
ガバナンス
紛争
肥満
貧困格差
グローバルな金融・経済危機ユースの雇用問題
人工知能に奪われる職
http://10plus1.jp/monthly/2017/01/issue-09.php
グレート・アクセラレーション(大加速)とは、20世紀後半における人間活動の爆発的増大を指す言葉である。第二次世界大戦後に急速に進んだ人口の増加、グローバリゼーション、工業における大量生産、農業の大規模化、大規模ダムの建設、都市の巨大化、テクノロジーの進歩といった社会経済における大変化は、二酸化炭素やメタンガスの大気中濃度、成層圏のオゾン濃度、地球の表面温度や海洋の酸性化、海の資源や熱帯林の減少といったかたちで地球環境に甚大な影響を及ぼしている。J. R. McNeill, The Great Acceleration: An Environmental History of the Anthropocene since 1945, Belknap Press, 2016.
これからの時代:大加速化の時代~地球環境への大きい影響
これからの時代・・~地球惑星の時代(Torres, A. 2013)
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➡人間活動が全地球規模に影響を与えている今日において、惑星である地球を意識しなければならないという意味合いとして、「地球惑星時代」と呼ぶこととしたい。
地球惑星的市民性
➡貧困・社会的排除問題だけではなく、地球資源制約、環境問題への対応➡普遍的価値としての人権のみではなく、自然生存権への配慮➡グローバルな社会と共通する人間性への帰属意識(グローバルな連帯・主体性・責任性を有する感覚、行動を起こすこと、普遍的な価値に基づきその価値を尊重すること)
“地球惑星(Global Planet)”の時代
これからの時代・・~混成文化の時代(Torres, A. 2013)
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“混成文化(Hybrid Culture)”の時代
➡“混成文化”の時代においては、我々自身が、社会基盤や文化も常に変化をしていると自覚していないと、直面する問題を見誤ることがあることを認識する必要がある。近年の変化の激しい時代(大加速化の時代や、VUCAの時代)においては、目の前の変化を見落とすことにつながりかねない。
➡公益に対するコミットメント➡個人的考えに基づく、“民主的・多文化的市民性”➡多元的な地球市民性(ポスト国家の世界市民性)➡行動的な地球市民性➡既存枠組で捉えない、変化への対応能力
グローバルな移動と交流がもたらす文化の混成性
(社会基盤や文化の大きな変化)
これからの時代・・~外部のないグローバリゼーションの時代
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“外部のないグローバリゼーション(Globalization without Externality)”の時代
➡「外部のないグローバリゼーション」の時代においては、自然資源や産業・生活廃棄物のように、企業活動や生活から「外部化」し、自らの責任範囲外のものとして従来調達・処理してきたものも、全て「内部化」していかなければならない時代に入ったと言えよう。
1980年代中葉以降の“経済のグローバル化”
自然資源や産業・生活廃棄物のように、企業活動や生活から「外部化」し、自らの責任範囲外のものとして従来調達・処理してきたものも、全て
「内部化」していかなければならない時代
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これからの時代・・~VUCAの時代
“VUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)”時代Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)
➡現在のビジネスや社会が既存の枠組みでは捉えづらいことを象徴している。VUCA社会では、既存の枠組みにとって未知の状況が生じ、これまでの延長上では、予測できないことを意味している。従来の枠組みにとらわれず、社会の変化に合わせた状況的な対応力が、より求められていると言えよう。
既存の枠組に基づく対応の限界(リスク社会、レジリエンス社会、危険社会化、格差社会化、富過剰と
貧困蓄積と相互規定的対立)
従来の枠組みにとらわれず、社会の変化に合わせた状況的な対応力
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2030年の“ありうる日本社会”4つの大変化と国際秩序の変動
国家戦略本部(2014)「2030年の日本」検討・対策プロジェクト
①人口の変化• 少子化/長寿化/東京一極集中/世界の人口爆発
②技術の変化• 革新技術(生命工学・人工知能・ロボット・自動運転・IOT)
/情報通信/エネルギー
③環境の変化• 異常気象/災害/食糧
④時空の変化• サイバー/グローバル化/宇宙/海洋/時間
➡国際秩序の変動• 多極化/中国の台頭/シーレーン安全保障
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-第Ⅱ部-
MDGsとSDGs~異なる社会背景とその前提~
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「持続可能な開発目標」とはhttps://youtu.be/TZXKlPu9F2M?list=PLNe0pDYSfDivs2l1HA5rHXitm7NFPWy-G持続可能な開発目標の中心には、「誰も置き去りにはしない」という決意があります。https://www.youtube.com/watch?v=yEQJzdrYIcM&index=1&list=PLNe0pDYSfDiuQNIznz79p7iXQONRgADAr193カ国がプランを掲げた。すべての人はこのプランをしっかり知らなきゃならない。このプランは地球のためhttps://www.youtube.com/watch?v=3AjOAUg1dww&list=PLNe0pDYSfDivTDp_8z9WgoIYJnAYpsTZD&index=62持続可能な開発目標 - この1年https://youtu.be/klmRcrH0RUA#WhatIReallyReallyWant (わたしが本当に本当に欲しいもの)
https://youtu.be/VTgYnP3Avac?list=PLNe0pDYSfDivs2l1HA5rHXitm7NFPWy-G
持続可能な開発目標(SDGs)2016-2030
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MDGsとSDGs~異なる社会背景と問題認識
SDGs(2016-2030)開発・環境アジェンダ
地球資源制約・環境保全・自然生存権・人権・社会的公正・開発(経済・社会・人間)
MDGs(2001-2015)開発アジェンダ
人権・社会的公正・開発(経済・社会・人間)
貧困・社会的排除問題の解決 貧困・社会的排除問題/地球環境問題の解決
2000年代 今日気候変動、生物多様性喪失、自然災害、高齢化、
エネルギー問題、社会的公正、ガバナンス、肥満、紛争、貧困格差、教育の質、ユースの雇用問題、
人工知能に奪われる職、グローバルな金融・経済危機
貧困、飢餓、HIV/AIDS、南北問題、債務危機、紛争、衛生、水のアクセスと質、非識字、教育のアクセスと
男女格差、社会的公正、など
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「ありたい社会」×「ありうる社会」(持続可能な社会×レジリエントな社会)
「ありたい社会」(持続可能な社会)
2000年代 今日
気候変動、生物多様性喪失、自然災害、高齢化、エネルギー問題、社会的公正、ガバナンス、肥満、紛争、
貧困格差、教育の質、ユースの雇用問題、人工知能に奪われる職、グローバルな金融・経済危機
貧困、飢餓、HIV/AIDS、南北問題、債務危機、紛争、衛生、水のアクセスと質、非識字、教育のアクセスと
男女格差、社会的公正、など
MDGsとSDGs~その社会背景:ありうる社会への対応
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MDGsとSDGs~その前提:社会の“改善”から“変容”へ
人間開発/持続可能な開発(1990年代以降)
▲経済開発・社会開発
(1940年代→1980年代)
持続可能な開発(1990年代以降)
同じ社会の中での“諸課題の解決”が前提
(例:MDGs)
現在社会とは異なる“社会の変容(transformation)”が前提
(例:パリ協定/SDGs)
※パリ協定:2015年12月、産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満の抑える、さらに1.5度未満を目指す。
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①「誰一人取り残されることがない」(No one left behind)→貧困の「削減」ではなく、「根絶」が目標
②「環境」「社会」「経済」の統合的目標→新分野:エネルギー、防災
③全ての国に適用される普遍性→例:持続可能な消費と生産、ライフスタイルと教育
④15年にわたりフォローアップ&レビュー→実施状況を体系的にフォローアップ&レビュー
©国連広報局
持続可能な開発目標(SDGs)2016-2030
SDGsの特徴
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持続可能な開発目標(SDGs)2016-2030
http://www.stockholmresilience.org/images/18.36c25848153d54bdba33ec9b/1465905797608/sdgs-food-azote.jpg
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持続可能な開発目標(SDGs)2016-2030
http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/
国際連合広報局
21北村(2016)に基づき、筆者作成
持続可能な開発目標(SDGs)2016-2030
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途上国経験をSDGs時代の日本の教育に活かす
-第Ⅲ部-
SDGs時代の教育ニーズに対応する
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•コミュニケーションの質とスピードが高まる。•グローバル社会・地域社会への個人の関与が強まる。•個人が双方向メディアに直接参加する機会が増える。•背景の違う多様な人々と協働する機会が増える。•知識・技能の活用力が重要になる。•生涯楽しく学び続ける学習継続力が重要になる。•情報を吟味する力・合理的思考力が重要になる。•予想外の変化に即座に対応する臨機応変力が重要になる。•自分の目標を自分で見出して実践する「主体性」が重要になる。
安西祐一郎 (2014)「未来に生きる子どもたちのために」 、ESDユネスコ世界会議ステークホルダー会合
これからの時代・・
調査研究のプロジェクト構成
《課題研究代表》佐藤真久(東京都市大学)
《研究顧問》斉藤泰雄(国立教育政策研究所)
《研究協力者》竹内啓三(関西大学)村松 隆(宮城教育大学)久保田賢一(関西大学)丸山英樹(国立教育政策研究所)小路克雄(国際協力機構青年海外協力隊事務局)白井健道(国際協力機構青年海外協力隊事務局)
《研究協力組織》国際協力機構(JICA)全国都道府県の全教育委員会(47組織)政令指定都市の全教員委員会(18組織)筑波大学教育開発国際協力研究センター(CRICED)宮城教育大学鳴門教育大学筑波大学附属小学校兵庫OV教員研究会関東教育支援ネットワーク
文部科学省 平成21年度 国際開発協力サポートセンター・プロジェクト
青年海外協力隊「現職教員特別参加制度」による派遣教員の社会貢献と組織的支援・活用の可能性
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多様な場面での還元・貢献
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経験教員自身の変化
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教員による多様な場面での還元と貢献
技術協力隊
経験共有隊 経験活用隊
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求めれるニーズ
・外国籍児童生徒の増加・多言語化、集住化・散在化・定住化・状況的な対応能力を有した教員の資質・能力の向上(アクティブ・ラーニング、カリキュラム・マネジメント、社会に開かれた教育課程)・地球市民教育、多文化共生、ESDの重要性・1990年代のグローバル化、地球規模の課題(貧困・社会的排除問題、環境問題)への対応・混成的文化、地球惑星時代、VUCA時代への対応・リスク社会化、格差社会化時代への対応・援助目的のMDGから(国際援助)、学び合い・力を合わせるSDGs(国際協力)へ
求められるニーズ・・※現職教員特別参加制度15周年
特別シンポジウム論点、2016年12月23日
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途上国経験をSDGs時代の日本の教育に活かす
-第Ⅳ部-
人間的な成長と豊かな経験の獲得へ
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験深く交流する
場の力を活かした異文化交流、心と心の交流
深く交流する(Deep / Slow Communication)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
①対人関係・コミュニケーション
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験相手の立場で考える
相手目線・自己中心性からの脱却
相手の立場で考える(Assertion)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
①対人関係・コミュニケーション
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験少数の立場を理解する
マイノリティ・社会的に脆弱な立場の経験
少数の立場を理解する(Understanding the meaning as Minority)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
①対人関係・コミュニケーション
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験多様性を理解する
異文化理解、多様性の理解
多様性を理解する(Diversity Worldview)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
②システム思考(多様性・相互性)
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験関係論的世界観を獲得する
つながり、かかわり、相互依存と共生
関係論的世界観(Relations Worldview)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
②システム思考(多様性・相互性)
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験異なる視座と寛容性をもつ
完璧主義・努力偏重主義からの脱却べき論から自分の心を自由にする
異なる視座と寛容性をもつ(Avoiding Irrational Belief, Tolerance)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
②システム思考(多様性・相互性)
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験状況に応じて臨機応変、危機に対応する
状況的な対応・融通性をもつリスクを察知し、リスクに対応する
臨機応変・危機対応(Flexible Response / Risk Management)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
③戦略・協働(状況的な対応・チャレンジ精神)
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験受援力を身に着ける
相手の力を借りる、助け合う自己責任のプレッシャーから解き放つ
受援力(Help Seeking Attitude)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
③戦略・協働(状況的な対応・チャレンジ精神)
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験価値を共創する
チャレンジ精神・主体性をもって、他者と協働し、価値を共に創る
価値を共創する(Co-Creation of Values)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
③戦略・協働(状況的な対応・チャレンジ精神)
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験欲求不満耐性を獲得する
思いどおりにならない・忍耐力を身に着ける
欲求不満耐性(Frustration Tolerance)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
④自己管理・自己認識・主体性
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験深い孤独、深い自己肯定
精神性の深みを生きる、人生の自己点検自分らしい生き方、承認欲求からの脱却
深い孤独・深い自己肯定(Focusing / Self Esteem)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
④自己管理・自己認識・主体性
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験人生の使命・幸福↔共同体感覚
世の中・地球のために生きること地球市民性、主体性とチャレンジ精神
人生の使命・幸福↔共同体感覚(Mission/Happiness ↔ Sense of Solidarity)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
④自己管理・自己認識・主体性
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途上国経験が育む人間的成長と豊かな経験五感を活かした現在・現場志向性
五感を活かして、今・ここに向き合う
現在・現場の志向性(Mindfulness)
佐藤(2010)、佐藤(2013)、文部科学省(2010)、諸富(2017)に基づき、筆者作成
④自己管理・自己認識・主体性
①対人関係・コミュニケーション
③戦略・協働(状況的な対応・チャレンジ精神)
②システム思考(多様性・相互性)