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TALKS18原原 1. 原原 原原( Tomoko IKEYA) 2. 原原原 原原原原原原原原原 (Department of Japanese Language and Culture) 3. 原原原 Aya KUTSUKI4. 原原原原原 原原原原 原Department of Psychology5. 原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原 原原 () —原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原— Study of KATAKANA for English Speakers Learning Japanese 原原 () 6. 原原原原原原原原原原原原原, 原原原原原, 原原原原原, 原原原原原原, 原原 English Speakers Learning Japanese, Gap of the meaning, Katakana, Non- Katakana, Learning 7. 原原原原原原 原原原原原 原原原原原原原原原原原原 () 8. 原原原 9. 原原原 1原 原 10. Word原原原 11. 原原原 [email protected] TEL/FAX 075-200-2662 原615-815 原原原 原原原原原原原 西 21-39 原原 原原 原原 原原原原 () 原原原原原原原原原原原原原原原原原原原 原原原原原原原原原原原原原原原原原原 「」。 原原原原原原原原原原原原原原原原原原55原原原原6原原原原原原原原原原原原 原原原原原原原原原原原原原原 原原原原 6原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原 原原原原原原原原 原原原原原原原 原原原原原原原原原原原原原原原原 原原原原原原原原原原原原原 原原原原原原原原原原原原原原原原原 、。 原原原原原 原原原原原原原原原原 <:> 原 原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原 原原原原原原原原原原原 原原原原原Glove 原原原原原原原 原原原原原Potato 原原原原原 原原原原原 原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原原 <:> 1

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TALKS18 原 稿

1. 池 谷   知 子 ( Tomoko IKEYA)

2. 文 学 部   日 本 語 日 本 文 化 学 科 (Department of Japanese Language and Culture)

3. 久 津 木   文 ( Aya KUTSUKI )

4. 人 間 科 学 部   心 理 学 科   ( Department of Psychology )

5. 英 語 を母 語 と する 日 本 語 学 習 者 にお ける カタ カナ 語 の 研 究 ( Ⅲ )

— カタ カナ 語 と 非 カ タカ ナ語 の使 い分 けと 日 本 語 レ ベル の関 係 —

Study of KATAKANA for English Speakers Learning Japanese ( Ⅲ )

6. 英 語 母 語 話 者 の日 本 語 学 習 者 ,   意 味 の ずれ ,   カ タカ ナ語 ,   非 カタ カナ 語 ,   習 得

English Speakers Learning Japanese, Gap of the meaning, Katakana,  Non-Katakana,

Learning                      

7. 日 本 語 学 習 者 ( 英 語 母 語 ) にお ける カタ カナ 語 の 研 究

8. 横 書 き

9. 別 刷 り  1 0 部

10. Word で作 成

11. メー ル  [email protected]     TEL/FAX 075-200-2662

〒 615-815 京 都 市 西 京 区 川 島 権 田 町 21-39   池 谷   知 子

要 旨 ( 日 本 語 )

日 本 語 を 学 ぶ 外 国 人 が 苦 労 す る も の と し て 「 日 本 語 の

中 の カ タ カ ナ 」 が 挙 げ ら れ る 。 本 研 究 は 英 語 母 語 和 話

者 の 日 本 語 学 習 者 55 人 に 次 の 6 組 の カ タ カ ナ 語 と 非 カ

タ カ ナ 語 の 使 い 分 け の 研 究 を 行 っ た 。 こ れ ら の 6 組 を

理 解 し や す い と 予 測 さ れ る も の 順 に 分 類 し 、 日 本 語 の

レ ベ ル ( 初 級 か 上 級 か ) が カ タ カ ナ 語 の 使 用 に ど の よ

う に 影 響 し て い る か を 確 認 し た 結 果 、 以 下 の よ う な こ

と が 明 ら か に な っ た 。

< タ イ プ Ⅰ : 理 解 し や す い タ イ プ >

1

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= カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 指 示 対 象 が 別 に な っ て

お り 、 カ タ カ ナ 語 が 有 標 な も の

カ テ ゴ リ ー 3   Glove グ ロ ー ブ と 手 袋  

カ テ ゴ リ ー 4   Potato ポ テ ト と 芋  

< タ イ プ Ⅱ : 使 い 分 け の 基 準 が わ か れ ば 理 解 し や す い

タ イ プ >

= 材 質 や 形 態 、 使 用 方 法 な ど で 使 い 分 け が さ れ て い る

も の

カ テ ゴ リ ー 1   Bottle ボ ト ル と 瓶  

カ テ ゴ リ ー 2   Brush ブ ラ シ と 筆

< タ イ プ Ⅲ : 理 解 し に く い タ イ プ >

= 一 見 、 非 常 に 意 味 が よ く 似 て い て 使 い 分 け の 基 準 を

規 則 化 し に く い も の

カ テ ゴ リ ー 5   Tea テ ィ ー と お 茶  

カ テ ゴ リ ー 6   Ticket チ ケ ッ ト と 券

要 旨 ( 英 語 )

Japanese learners as a second language find KATAKANA words difficult, as it is hard to

distinguish them from English words, and there are also Non-KATAKANA synonyms in

Japanese.

This study looks into 55 Japanese learners of the English mother tongue speaker for

their distinction of 6 pairs of KATAKANA word and Non-KATAKANA word. The following

results were obtained: these words were classified into three types by easiness to

understand.

< Type I: Easy to understand as KATANAKA words and Non-KATAKANA words in pairs have

their own denotations respectively. >

Category-3 Gloves “GUROBU” “TEBUKURO”

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Category-4 Potato “POTETO” “IMO”

< Type II: Need to realize standards of the usage. Correct words must be chosen by

materials, forms and situations. >

Category-1 Bottle “BOTORU” “BIN”

Category-2 Brush “BURASHI” “FUDE”

< Type III: Difficult to discern as KATANAKA words and Non-KATAKANA words in pairs

indicate almost the same thing. >

Category-5 Tea “THI” “OCHA”

Category-6 Ticket “THIKETTO” “KEN”

英 語 を 母 語 と す る 日 本 語 学 習 者 に お け る カ タ カ ナ 外 来

語 の 研 究 1 ( Ⅲ )

— カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 使 い 分 け と 日 本 語 レ ベ

ル の 関 係 —

池 谷 知 子 ・ 久 津 木 文

1   研 究 の 背 景 と 目 的

  鳥 飼 ( 2007 ) な ど で も 指 摘 さ れ て い る よ う に 、 日 本

語 を 学 ぶ 外 国 人 が 苦 労 す る も の と し て 「 日 本 語 の 中 の

カ タ カ ナ 」 が 挙 げ ら れ る 。 日 本 語 の 語 彙 の 中 に は 多 く

の カ タ カ ナ 語 が 入 っ て い る が 、 そ れ が 原 義 の 意 味 と イ

コ ー ル で は な い か ら で あ る 。 そ の 中 の 有 名 な 例 と し て 、

マ ン シ ョ ン が 知 ら れ て い る 。

マ ン シ ョ ン … 中 高 層 の 集 合 住 宅   1960 年 代 か ら 急

速 に 普 及 ( 広 辞 苑   第 五 版 よ り )

1この論文は日本私立学校振興共済事業団から平成 24 年度・25 年度・26 年度学術研究振興資金援助を受けた「日本語学習者におけるカタカナ外来語の理解についての研究」(研究代表者:久津木文)の調査結果の一部である。この調査では日本語母語話者と英語母語話者について同じような調査を行った。日本語母語話者については久津木が分析し、英語母語話者については池谷が分析した。

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Mansion……( 豪 華 な ) 大 邸 宅 、 屋 敷 ( ジ ー ニ ア ス 英

和 辞 典   第 四 版 よ り )

  ま た 、 カ タ カ ナ 語 と 原 義 の 意 味 の ず れ だ け で は な く 、

同 じ よ う な カ タ カ ナ 語 の 対 象 物 を カ タ カ ナ 語 で 呼 ん だ

り 、 非 カ タ カ ナ 語 で 呼 ん だ り す る こ と も あ る 。 そ の 例

と し て 、 「 鮭 ( サ ケ ) 」 と 「 サ ー モ ン 」 を あ げ る 。 イ

ン タ ー ネ ッ ト の 寿 司 屋 の 紹 介 ペ ー ジ か ら 「 鮭 = サ ー モ

ン 」 の よ う に 書 か れ て い る と こ ろ を 引 用 し て み る 。

【 お 寿 司 屋 さ ん の 歩 き 方   鮭 】

( http://www.sushiwalking.com/sake/ 2014 年 11 月 30 日 取 得 )

寿 司 ネ タ に さ れ る と き は サ ー モ ン と 呼 ば れ る こ と も 多

い サ ケ 。 ( 下 線 部 は 筆 者 )

脂 の ノ リ と い い 、 身 の う ま さ と い い ま さ に 絶 品 で す 。

特 に 秋 口 に 産 卵 を 控 え た サ ケ の 美 味 し さ は ぜ ひ 味 わ っ

て み て い た だ き た い 一 品 で す 。

サ ケ の 脂 と し ょ う 油 が 奏 で る ハ ー モ ニ ー を お 試 し く だ

さ い 。

  ま た 、 「 鮭 」 と 「 サ ー モ ン 」 を 辞 書 で 引 く と 以 下 の

よ う に 述 べ ら れ て い る 。

( 広 辞 苑   第 五 版 よ り )

さ け 【 鮭 】 … 広 義 に は サ ケ 目 サ ケ 科 の サ ケ ・ ベ ニ ザ

ケ ・ ギ ン ザ ケ ・ マ ス の 一 部 な ど の 総 称 。

サ ー モ ン 【 salmon】 … 鮭 ( さ け )

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  こ こ で 問 題 と な っ て く る の が 、 1 つ の 事 物 を 表 す 時

に カ タ カ ナ 語 の 「 サ ー モ ン 」 を 使 っ た り 、 非 カ タ カ ナ

語 の 「 鮭 」 を 使 っ た り し た 場 合 の 意 味 の マ ッ ピ ン グ

( 使 い 分 け ) で あ る 。 鳥 飼 ( 2007 ) な ど で も 指 摘 さ れ

て い る よ う に 、 日 本 語 を 学 ぶ 外 国 人 が 苦 労 す る も の と

し て 「 日 本 語 の 中 の カ タ カ ナ 」 が 挙 げ ら れ て い る 。

  カ タ カ ナ 語 を 説 明 す る こ と は 一 見 、 語 彙 の 問 題 で あ

り 単 純 に 見 え る が 、 ス ー パ ー で 同 じ 魚 が 「 サ ー モ ン 」

「 鮭 」 と い う 二 つ の 名 前 で 売 ら れ て い る の に 対 し て 感

じ る 日 本 語 学 習 者 の 素 朴 な 疑 問 、 つ ま り 、 い つ 「 サ ー

モ ン 」 と 呼 び 、 い つ 「 鮭 」 を 使 う の か 、 と い う こ と に

対 し て 明 確 に 答 え ら れ る 日 本 人 は 少 な い だ ろ う 。 な ぜ

な ら カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 使 い 分 け は 辞 書 に は

載 っ て い な い 問 題 だ か ら で あ る 。 ま た 、 こ の こ と は 英

語 の salmon≠サ ー モ ン 、 鮭 と い う こ と も 示 し て い る 。

  日 本 語 に は 、 固 有 語 と 外 来 語 と 2 つ の 語 種 に 分 類 さ

れ 、 か つ 、 外 来 語 の 中 に は 漢 語 と 、 カ タ カ ナ 語 に 分 類

す る こ と が 一 般 的 で あ る 。 つ ま り 、 漢 語 も 中 国 か ら の

借 用 語 で あ る が 、 こ こ で は 議 論 を 簡 単 に す る た め 、 い

わ ゆ る 、 カ タ カ ナ で 表 記 さ れ る 狭 義 の 外 来 語 の み を カ

タ カ ナ 語 と 呼 ぶ こ と に す る 。 ま た 、 原 義 と の ズ レ を 確

認 す る た め に 、 英 語 を 母 語 と す る 日 本 語 学 習 者 の み に

調 査 を 行 っ た の で 、 カ タ カ ナ で 表 記 さ れ る 外 来 語 の 中

で も 、 さ ら に 英 語 を 原 義 と す る 物 の み を 調 査 の 対 象 と

す る 。

  一 方 で 、 非 カ タ カ ナ 語 と し て は 、 単 な る 「 和 語 」 だ

け で は な く 、 「 和 語 」 と 「 漢 語 」 と の 両 方 を 含 む 広 義

の も の を 非 カ タ カ ナ 語 と 呼 ぶ こ と に す る 。

  < 本 発 表 に お け る カ タ カ ナ 語 の 定 義 >

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  主 に 英 語 を 母 語 と す る 日 本 語 学 習 者 を 研 究 対 象 と す

る た め 、 取 り 扱 う カ タ カ ナ 語 も 英 語 起 源 の カ タ カ ナ 語

の み と す る 。 よ っ て 、 本 発 表 で の カ タ カ ナ 語 と は

「 ( 英 語 に 由 来 し 、 カ タ カ ナ で 表 記 さ れ る ) 外 来 語 」

と 定 義 す る 。

  秋 元 ( 2002:P64 ) の 表 を 元 に 、 「 カ タ カ ナ 語 」 と

「 非 カ タ カ ナ 語 」 を 入 れ 、 再 構 成 し た も の が 表 1 で あ

る 。

< 表 1 > カ タ カ ナ 語 ( 英 語 由 来 の み ) と 非 カ タ カ ナ 語

の 位 置 関 係

 

  こ の 研 究 は 、 日 本 私 立 学 校 振 興 共 済 事 業 団 か ら 平 成

24 年 度 〜 平 成 26 年 度 に 学 術 研 究 振 興 資 金 援 助 を 受 け 、

「 日 本 語 学 習 者 に お け る カ タ カ ナ 外 来 語 の 理 解 に つ い

て の 研 究 」 ( 研 究 代 表 者 : 久 津 木 文 ) と し て 行 っ た 研

究 成 果 の 一 部 を ま と め た も の で あ る 。 こ の 調 査 で は 、

英 語 母 語 話 者 の 日 本 語 学 習 者 を 調 査 し 、 カ タ カ ナ 語 と

非 カ タ カ ナ 語 の 意 味 の マ ッ ピ ン グ を ど の よ う に お こ

な っ て い る の か を 調 査 し た 。

  こ れ ら の 調 査 の 詳 し い 報 告 に つ い て は 、 池 谷 ・ 久 津

借用語

外来語

カタカナ語

漢語

非カタカナ語

固有語

和語

非カタカナ語

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木 (2013) 、 久 津 木 ・ 池 谷 ( 2013 ) 、 池 谷 ・ 久 津 木 (2014)に 譲 る と す る が 、 こ れ か ら の 議 論 の た め に 、 ま ず 、 池

谷 ・ 久 津 木 (2014) の 結 果 を 簡 単 に 概 観 し 、 さ ら に 新 し

い 知 見 を 述 べ て い く 。

2   池 谷 ・ 久 津 木 ( 2014 ) の 調 査 概 要

3.1   調 査 の 目 的

  池 谷 ・ 久 津 木 (2014) の 調 査 の 目 的 は 、 英 語 を 母 語 と

す る 日 本 語 学 習 者 が カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 を ど の

よ う に 使 い 分 け て い る の か を 調 査 す る こ と で あ っ た 。

同 時 に 英 語 の 意 味 カ テ ゴ リ ー が ど の よ う に カ タ カ ナ 語

の 意 味 に 干 渉 し て い る の か を 調 査 し た 。 つ ま り 、 カ タ

カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 意 味 の マ ッ ピ ン グ の 傾 向 を あ

き ら か に す る こ と が 第 一 の 目 的 で あ る 。 前 回 の 調 査 の

方 法 と 概 要 を 簡 単 に ま と め て み る 。

3.2 調 査 の 概 要

  英 語 を 母 語 と す る 日 本 語 学 習 者 55 名 に 対 し て 、 6 つ

の カ テ ゴ リ ー か ら 成 る カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 使

い 分 け を 調 査 す る 。 1 つ の カ テ ゴ リ ー は 5枚 の 写 真 で

構 成 さ れ る 。 そ れ を 見 て 、 そ の 対 象 物 を 「 カ タ カ ナ

語 」 で 言 う の か 、 「 非 カ タ カ ナ 語 」 で 言 う か を 確 認 す

る 。 つ ま り 、 1枚 の 写 真 が カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語

で 2 回 使 わ れ る 。

  ま と め る と 、 1 つ の カ テ ゴ リ ー は 、 カ タ カ ナ 語 ( 写

真 刺 激 5枚 ) + 非 カ タ カ ナ 語 ( 写 真 刺 激 5枚 ) = 計 10 質

問 で 構 成 さ れ る 。 そ れ を 6つ の カ テ ゴ リ ー で 調 査 を 行

う 。 つ ま り 、 被 験 者 は 、 60 質 問 ( 1 カ テ ゴ リ ー 10 質 問

×6カ テ ゴ リ ー ) に 答 え る こ と に な る 。 調 査 し た カ テ ゴ

リ ー と 写 真 刺 激 は 以 下 の よ う に な っ て い る 。

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カ テ ゴ リ ー 1   Bottle ボ ト ル と 瓶

カ テ ゴ リ ー 2   Brush ブ ラ シ と 筆

カ テ ゴ リ ー 3   Glove グ ロ ー ブ と 手 袋  

カ テ ゴ リ ー 4   Potato ポ テ ト と じ ゃ が 芋  

カ テ ゴ リ ー 5   Tea テ ィ ー と お 茶  

カ テ ゴ リ ー 6   Ticket チ ケ ッ ト と 券

カ テ ゴ リ ー 1   Bottle ボ ト ル と 瓶  

1-1 1-2 1-3 1-4 1-5

カ テ ゴ リ ー 2   Brush ブ ラ シ と 筆

2-1 2-2 2-3 2-4 2-5

カ テ ゴ リ ー 3   Gloves グ ロ ー ブ と 手 袋

3-1 3-2 3-3 3-4 3-5

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カ テ ゴ リ ー 4   Potato ポ テ ト と 芋

4-1 4-2 4-3 4-4 4-5

 

  被 験 者 は こ れ ら の 写 真 を 見 て 、 そ れ を カ タ カ ナ 語 で

呼 ぶ か 、 非 カ タ カ ナ 語 で 呼 ぶ か を 、 直 感 に 従 い リ ッ

カ ー ト 法 に よ る 4 段 階 の 確 信 度 で 回 答 す る 。 非 カ タ カ

ナ 語 の 単 語 を 尋 ね る 時 に 、 そ れ を 英 語 の オ リ ジ ナ ル の

単 語 で も 呼 ぶ こ と を で き る の か も 確 認 し た 。 ア ン ケ ー

ト 用 紙 の サ ン プ ル は 、 文 末 に 参 考 資 料 と し て 載 せ て お

く 。

  回 答 の 選 択 肢 は 以 下 の よ う に な っ て い る 。

1   Never( ま っ た く * * を 使 わ な い )

2   Sometimes( ど ち ら か と い う と * * を 使 わ な

い )

3   Often ( ど ち ら か と 言 う と * * を 使 う )

4   Always ( 常 に * * を 使 う )

  つ ま り 、 1 や 2 が 多 い と 、 そ の 単 語 を 「 使 わ な い 」

と い う 否 定 的 な 傾 向 に な り 、 3 や 4 が 多 い と 、 そ の 単

語 を 「 使 う 」 と い う 肯 定 的 な 傾 向 に な る 。

  カ テ ゴ リ ー 1 の カ タ カ ナ 語 の 「 ボ ト ル 」 と 、 非 カ タ

カ ナ 語 の 「 瓶 」 を ど の よ う に 使 い 分 け て い る か を み る

設 問 を 例 に と っ て 、 説 明 し て い く 。

  「 ワ イ ン ボ ト ル 」 は 「 ワ イ ン の 瓶 」 の よ う に 「 ボ ト

ル 」 と 「 瓶 」 の 両 方 の 使 用 を 許 容 す る が 、 同 じ ガ ラ ス

製 品 で も 「 ビ ー ル 瓶 」 は 、 「 * ビ ー ル ボ ト ル 」 が 許 容

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さ れ な い 。 ま た 、 同 じ 飲 み 物 を 入 れ る も の で あ っ て も

プ ラ ス チ ッ ク 製 で あ る 「 ペ ッ ト ボ ト ル 」 は 「 ボ ト ル 」

の み 許 容 さ れ 、 「 瓶 」 は 許 容 さ れ な い 。

  つ ま り 、 「 瓶 」 は ガ ラ ス 製 の も の に 使 用 し 、 プ ラ ス

チ ッ ク 製 の も の は 「 ボ ト ル 」 と 呼 ば れ る こ と か ら 、 そ

の 材 料 が 使 い 分 け の 基 準 と な っ て い る こ と が 推 測 さ れ

る 。 し か し 、 問 題 な の 「 瓶 」 の 中 に も 「 ボ ト ル 」 と 呼

べ る も の と 「 ボ ト ル 」 と 呼 べ な い も の が 混 在 し て い る

こ と で あ る 。 < 表 2 > と し て 、 カ テ ゴ リ ー 1 の 刺 激 と

な っ た 写 真 を 再 掲 す る 。 < 表 3 > の グ ラ フ と 照 ら し 合

わ せ て 見 て ほ し い 。

< 表 2> カ テ ゴ リ ー 1   Bottle ボ ト ル と 瓶  

1-1 1-2 1-3 1-4 1-5

  写 真 を 解 説 す る と 1-1 「 飲 み 物 を 入 れ も の ( ペ ッ ト

ボ ト ル ) 」 、 1-2 「 シ ャ ン プ ー を 入 れ る も の 」 、 1-3

「 ワ イ ン を 入 れ る も の 」 、 1-4 「 ビ ー ル を 入 れ る も

の 」 、 1-5 「 洗 剤 を い れ る も の 」 で あ る 。 「 ボ ト ル 」

と 「 瓶 」 の 使 い 分 け に つ い て 、 以 下 の よ う な 結 果 と

な っ た 。

< 表 3 >   カ テ ゴ リ ー 1   Bottle 「 ボ ト ル 」 と 「 瓶 」 の

使 い 分 け

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写真1-1

使わない

写真1-1

使う写真1-2

写真1-3

写真1-4

使わない

写真1-4

使う写真1-5

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

1aボトル1b瓶

①ペットボトル

②ワインボトル

③ビール瓶

④ ⑤ ⑥

  カ タ カ ナ 語 「 1a ボ ト ル 」 を x 軸 上 、 正 の 値 と し て 取

り 、 数 値 を 対 照 さ せ る た め に 非 カ タ カ ナ 語 「 1b 瓶 」 を

負 の 値 と し て 、 反 転 さ せ て グ ラ フ に し た 。

  1 つ の 写 真 1-1 に 対 し て 、 そ こ で 得 ら れ た 4 つ の 回

答 を 左 端 か ら 「 1   Never ( ま っ た く * * を 使 わ な

い ) 」 「 2   Sometimes( ど ち ら か と い う と * * を 使 わ な

い ) 」 「 3   Often ( ど ち ら か と 言 う と * * を 使 う ) 」

「 4   Always ( 常 に * * を 使 う ) 」 の 順 に 並 べ て あ る 。

つ ま り 、 左 端 が 「 使 わ な い 」 と 答 え た 回 答 で 、 右 端 が

「 使 う 」 と 答 え た 回 答 に な っ て い る 。 そ れ が 写 真 1-1

か ら 1-5 ま で 並 ん で い る 。

カ テ ゴ リ ー 1 a 「 ボ ト ル 」 に つ い て 、 1-1 「 ペ ッ ト ボ

ト ル 」 を 常 に カ タ カ ナ 語 の 「 ボ ト ル 」 が 使 う と い う 回

答 者 は 67%(37人 ) お り ( 番 号 ① ) 、 群 を 抜 い て 高 か っ た 。

し か し 、 一 方 で 1-3 「 ワ イ ン ボ ト ル 29%( 16 人 ) 」 ( 番

号 ② ) 1-4 「 ビ ー ル 瓶 30%( 17 人 ) 」 で 「 ボ ト ル 」 を 使

う ( 番 号 ③ ) と い う 回 答 者 に は 差 が 無 い 。

  カ テ ゴ リ ー 1b 「 瓶 」 に つ い て 、 常 に 「 瓶 」 を 使 う と

い う 回 答 者 は 、 1-3 「 ワ イ ン ボ ト ル 20%( 11 人 ) 」 ( 番

号 ④ ) と 1-4 「 ビ ー ル 瓶 29%(16人 ) 」 ( 番 号 ⑤ ) の 間 で あ-40-30-20-10

010203040

1aボトル1b瓶

①ペットボトル②ワインボトル

③ビール瓶

④ ⑤⑥

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ま り 差 が な い 。 こ れ ら の こ と か ら 、 「 ワ イ ン ボ ト ル 」

と 「 ビ ー ル 瓶 」 の 使 い 分 け は 強 く 認 識 さ れ て い な い こ

と が わ か る 。 1-5 「 洗 剤 容 器 」 に 関 し て は 、 ど ち ら か

と い う と 「 瓶 」 使 わ な い と い う や や 否 定 的 な 回 答 ( 回

答 1 と 回 答 2 ) を 選 ん だ 回 答 者 が 合 計 65% ( 36 人 )

( 番 号 ⑥ ) い た 。 は っ き り し た 理 由 は わ か ら な い が 、

英 語 の bottle の 使 用 を み て み る と 、 他 の 写 真 刺 激 は 回 答

3 や 回 答 4 を 選 好 し て い た が 、 1-5 「 洗 剤 容 器 」 は 他 と

比 較 す る と 回 答 1 と 回 答 2が 多 く 、 合 計 す る と 29%( 16

人 ) が 使 わ な い 方 を 選 ん で い た 。

  こ こ か ら 仮 説 を た て る と 、 英 語 の bottle場 合 、 手 で 一

周 し て 握 れ る 筒 型 の 形 状 の も の が プ ロ ト タ イ プ で あ り 、

持 ち 手 が つ い て 持 ち 上 げ る 大 ぶ り の も の は bottle の プ ロ

ト タ イ プ か ら 外 れ る 可 能 性 が あ る 。

  日 本 語 学 習 者 の ボ ト ル と 瓶 の 使 い 分 け に 関 し て 、 日

本 語 学 習 者 は ペ ッ ト ボ ト ル の み 、 高 い 確 信 を も っ て

「 ボ ト ル 」 と 判 断 し て い る が 、 「 瓶 」 に 関 し て は 、 使

い 分 け の 基 準 に な る も の が 、 素 材 ( ガ ラ ス or プ ラ ス

チ ッ ク ) な の か 、 内 容 物 ( 飲 め る も の or 飲 め な い も )

な の か 、 形 状 ( 筒 型 or 持 ち 手 付 き ) な の か 等 、 は っ き

り し て い な い と 言 え る 。 こ れ は お そ ら く 、 ペ ッ ト ボ ト

ル は 「 ペ ッ ト ボ ト ル 」 と い う 名 称 を よ く 聞 く た め 、

「 ボ ト ル 」 で あ る と は っ き り 認 識 し て い る が 、 洗 剤 や

シ ャ ン プ ー の 容 器 の よ う に あ ま り 名 称 を と り あ げ ら れ

る こ と が な い も の は 、 「 ボ ト ル 」 な の か 「 瓶 」 な の か

判 断 が つ か な い こ と が 推 測 さ れ る 。 ま た 、 瓶 に つ い て

も 素 材 が ガ ラ ス 製 で あ る と い う こ と で 「 瓶 」 の 認 知 的

カ テ ゴ リ ー を 形 成 す る ま で に は い た っ て い な い の で 、

ガ ラ ス 製 の 1-3 「 ワ イ ン ボ ト ル 」 や 1-4 「 ビ ー ル 瓶 」 の

写 真 刺 激 で も 、 3 や 4 の 確 信 度 を も っ て 「 瓶 」 使 う と

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答 え た 人 は 半 分 に 満 た な い 数 に な っ て い る 。

  池 谷 ・ 久 津 木 ( 2014 ) で は 、 6 つ の カ テ ゴ リ ー す べ

て の も の に つ い て 、 英 語 を 母 語 と す る 学 習 者 が カ タ カ

ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 を ど の よ う に 認 識 し て い る か を 調

査 し た 結 果 を 明 ら か に し た 。 そ の 結 果 、 カ タ カ ナ 語 と

非 カ タ カ ナ 語 の 使 い 分 け に 以 下 の よ う な 5 つ の 傾 向 が

見 ら れ た 。

< 結 果 >

.① カ タ カ ナ 語 に 関 し て 、 非 カ タ カ ナ 語 に 対 応 す る 語

が な く 「 ペ ッ ト ボ ト ル 」 「 歯 ブ ラ シ 」 の よ う に 指

示 対 象 物 の 名 称 の 中 に そ の カ タ カ ナ 語 が 入 っ て い

れ ば 、 積 極 的 に カ タ カ ナ 語 を 選 び や す い 。

.② 「 筆 」 と 「 ブ ラ シ 」 の 使 い 分 け や 「 お 茶 」 と

「 テ ィ ー 」 の 使 い 分 け か ら 、 日 本 的 な も の は 非 カ

タ カ ナ 語 、 そ う で は な い も の は カ タ カ ナ 語 を 選 ぶ

傾 向 が あ る 。

.③ 対 象 物 を 表 す 時 、 カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の ど

ち ら を 使 え ば よ い の か 不 明 な 場 合 、 英 語 の 母 語 の

知 識 を 生 か し て 、 そ れ と 対 応 す る カ タ カ ナ 語 が 選

択 さ れ や す い 。

.④ 「 革 手 袋 」 を 「 グ ロ ー ブ 」 と 判 断 す る こ と か ら 、

材 料 や 形 態 な ど 、 独 自 の 使 い 分 け の 基 準 を 適 用 し

て 判 断 す る こ と が あ る 。 そ の 時 の 判 断 に 母 語 干 渉

が 現 れ る な ど 、 一 種 、 中 間 言 語 的 な 振 る 舞 い を 見

せ る 。

.⑤ 一 般 的 に 、 カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 使 い 分 け

は 辞 書 に 書 い て い な い こ と が 多 い こ と か ら 、 学 習

者 は 多 く の 例 か ら 帰 納 的 に そ の 意 味 カ テ ゴ リ ー を

形 成 し て い く 。 そ の た め 、 そ の 情 報 に ど の く ら い

13

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ア ク セ ス で き る か が 習 得 の 鍵 に な っ て い る 可 能 性

が あ る 。

  こ れ ら の 結 果 を 踏 ま え て 、 カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ

語 の 両 方 が 存 在 す る 場 合 、 ど の よ う な 使 い 分 け が 理 解

し や す く 、 ど の よ う な 使 い 分 け が 理 解 し に く い の か を

探 る こ と に し た 。

4. 被 験 者

  こ の 調 査 の 対 象 者 は 英 語 を 母 語 話 と す る 者 で 、 2013

年 の 7月 〜 9月 に か け て H 県 内 の 複 数 の 日 本 語 短 期 プ ロ

グ ラ ム の 学 生 を 対 象 と し て 行 っ た 。

  被 験 者 の 内 訳 は 男 性 が 18 人 、 女 性 が 37 人 で N =552 で

あ る 。 対 象 の 年 齢 は 10 代 が 13 人 、 20 代 が 39 人 、 30 代 以

上 が 4人 で 、 平 均 年 年 齢 は 21.6歳 で あ っ た 。 日 本 語 の レ

ベ ル は 自 己 申 告 で あ る が 初 級 が 12 人 、 中 級 が 32 人 、 上

級 が 9 人 で あ っ た 。 ア ン ケ ー ト に は 公 的 な 日 本 語 の テ

ス ト を 受 け た こ と が あ る 場 合 は 記 入 し て も ら っ た が 、

OPI3や JLPT4 な ど 様 々 で あ っ た 。 ま た 、 国 外 で 勉 強 し て

い る せ い か 、 資 格 が な い と い う 対 象 者 も か な り い た 。

  ア ン ケ ー ト は 対 面 で 用 紙 を 配 布 し て 行 っ た 。 な お 、

ア ン ケ ー ト で は 日 本 語 教 育 学 会 の 倫 理 規 定 に 基 づ き 、

個 人 情 報 に 配 慮 し て 行 い 、 そ れ を デ ー タ 化 し た 。

< 表 4 > 被 験 者 属 性 の ま と め     ( 2013 年 7 月 〜 9月に デ ー タ 採 取 )

2 項目によっては欠損があるため数が異なる。3 正式名称ACTFL-Oral Proficiency Interview 口頭能力を測るインタビュー形式の試験 4 正式名称 Japanese Language Proficiency Test或いは日本語能力試験、日本語を母語としない人を対象に日本語能力を認定する試験。N1〜N5まである。

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1   性 別 男 性 18 名   女 性 37 名   合 計 55 名

2   年 齢 10 代 13 名 、 20 代 39 名 、 30 代 4 名

平 均 → 21.6歳3   母 語 英 語

4   英 語 以 外

の 使 用 言 語

日 本 語 1 名   中 国 語 6 名   韓 国 語 2名   そ の 他 4名

6   日 本 語 レ

ベ ル

初 級 12 名   中 級 32 名   上 級 9名

7   日 本 語 学

習 時 間

0.5 年 〜 10 年   平 均 → 3.95 年

  あ る 対 象 物 に 対 し て 、 カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 が

存 在 す る 場 合 、 ど の よ う な 使 い 分 け が 理 解 し や す く 、

ど の よ う な 使 い 分 け が 理 解 し に く い の か を 探 る 手 が か

り と し て 、 学 習 者 の レ ベ ル に 注 目 し た 。 初 級 の 学 習 者

で も 使 い 分 け が 理 解 で き て い る も の と 、 上 級 に な ら な

い と 使 い 分 け が 理 解 で き な い 、 あ る い は 上 級 で も 使 い

分 け が 難 し い も の を 知 る こ と に よ っ て 、 理 解 が し や す

い も の と 理 解 し に く い も の を 分 類 で き る だ ろ う と 予 測

す る か ら で あ る 。

  初 級 の 被 験 者 は 12 名 で 、 日 本 語 学 習 歴 の 平 均 は 約

2.2 年 で あ っ た 。 JLPT4級 を 持 っ て い る 者 1名 い た が 、 そ

の 他 に 資 格 を 持 っ て い る 者 は い な か っ た 。

  上 級 の 被 験 者 は 9名 で 、 日 本 語 学 習 歴 の 平 均 は 約 4.7

年 で あ っ た 。 そ の 中 で 日 本 語 学 習 歴 が 最 も 長 い 者 は

8.5 年 で 、 最 も 短 い 者 は 1.5 年 で あ っ た 。 上 級 と い う の

は 、 あ く ま で 自 己 申 告 の レ ベ ル で あ る が 、 そ の 中 で

JLPT 1 級 を 持 っ て い る 者 が 1 名 、 1級 を 69%で き た と い

う 者 が 1 名 、 OPI 上 級 を 持 っ て い る 者 が 2 名 、 AP Japanese

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Language and Culture に 合 格 し た も の が 1名 で あ っ た 。 つ ま

り 、 9名 中 、 5名 は 何 ら か の 根 拠 が あ り 、 自 分 自 身 を 上

級 で あ る と 判 断 し て い る 。

< 表 5> 上 級 の 被 験 者 の 詳 し い 属 性

NO. 性

母 語 と そ の 他

の 使 用 言 語

学 習

日 本 語 の テ

ス ト

NO.1 女 16 英 語 ・ 韓 国 語 3年 AP Japanese

NO.2 男 27 英 語 8.5

JLPT N1   69%

NO.3 女 22 英 語 6年

NO.4 女 20 英 語 ・ 日 本 語 3年 JLPT N1

NO.5 女 21 英 語 ・ 中 国 語 1.5 OPI advanced

Level

NO.6 女 22 英 語 6年

NO.7 男 22 英 語 3年

NO.8 女 20 英 語 6年 OPI advanced

Level

NO.9 男 23 英 語 6年

5. カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 使 い 分 け と 日 本 語 レ ベ

ル の 関 係

  英 語 を 母 語 と す る 日 本 語 学 習 者 の カ タ カ ナ 語 と 非 カ

タ カ ナ 語 の 使 い 分 け に 、 日 本 語 の レ ベ ル ( 初 級 か 上 級

か ) が ど の よ う に 影 響 し て い る か を 分 析 し た 。 手 順 と

し て 、 初 級 と 上 級 の レ ベ ル に 分 け た 回 答 の 傾 向 を レ ー

ダ ー チ ャ ー ト で 表 し 、 そ の 傾 向 を 比 較 ・ 分 析 た し た 結

果 、 大 き く 以 下 の 3 つ の タ イ プ に 分 類 さ れ る こ と が わ

か っ た 。

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  詳 し い 分 析 は 後 で 述 べ る こ と に し て 、 ま ず 、 3 つ の

タ イ プ を 解 説 す る 。

  タ イ プ Ⅰ は 初 級 で あ っ て も 上 級 で あ っ て も 回 答 に 差

が 無 い タ イ プ で あ る 。 か つ 、 回 答 が 1 つ の ベ ク ト ル に

集 約 さ れ て お り 、 日 本 人 と 同 じ よ う な 回 答 パ タ ー ン を

示 す も の で あ る 。 つ ま り 、 早 い 時 点 に そ の カ タ カ ナ 語

の 使 い 分 け が 理 解 さ れ て い る と 考 え ら れ る も の で あ る 。

  タ イ プ Ⅱ は 初 級 と 上 級 の 回 答 が 大 き く 異 な る タ イ プ

で あ る 。 初 級 は 混 乱 し て い る が 、 上 級 に な る と 回 答 に

一 定 の 傾 向 が あ り 、 日 本 語 学 習 の 習 得 が 進 む に つ れ 、

カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 使 い 分 け の 規 則 を 理 解 し

て い た っ た と 考 え ら れ る も の で あ る 。

  タ イ プ Ⅲ は 初 級 で も 上 級 で も 回 答 が 混 乱 し て お り 、

一 定 の 傾 向 が な い も の で あ る 。 初 級 は も ち ろ ん で あ る

が 、 上 級 で あ っ て も 、 使 い 分 け の 規 則 性 が 捉 え に く く 、

回 答 に 確 信 が な い も の で あ る 。

  そ れ ぞ れ の タ イ プ と カ テ ゴ リ ー の 結 果 を ま と め る と

以 下 の よ う に な っ た 。

< タ イ プ Ⅰ   習 得 し や す い タ イ プ >

= カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 指 示 対 象 が 別 に な っ て

お り 、 カ タ カ ナ 語 が 有 標 な も の

カ テ ゴ リ ー 3   Glove グ ロ ー ブ と 手 袋  

カ テ ゴ リ ー 4   Potato ポ テ ト と 芋  

< タ イ プ Ⅱ : 使 い 分 け の 基 準 が わ か れ ば 習 得 し や す い

タ イ プ >

= 材 質 や 形 態 、 使 用 方 法 な ど で 使 い 分 け が さ れ て い る

も の

カ テ ゴ リ ー 1   Bottle ボ ト ル と 瓶  

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カ テ ゴ リ ー 2   Brush ブ ラ シ と 筆

< タ イ プ Ⅲ : 習 得 し に く い カ タ カ ナ 語 の タ イ プ >

= 一 見 、 非 常 に 意 味 が よ く 似 て い て 使 い 分 け の 基 準 を

規 則 化 し に く い も の

カ テ ゴ リ ー 5   Tea テ ィ ー と お 茶  

カ テ ゴ リ ー 6   Ticket チ ケ ッ ト と 券

以 下 、 そ れ ぞ れ の タ イ プ に つ い て 詳 し く 分 析 し て い く 。

5.1   タ イ プ Ⅰ : 習 得 し や す い タ イ プ

< タ イ プ Ⅰ   理 解 し や す い タ イ プ >

= カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 指 示 対 象 が 別 に な っ て

お り 、 カ タ カ ナ 語 が 有 標 な も の

カ テ ゴ リ ー 3   Glove グ ロ ー ブ と 手 袋  

カ テ ゴ リ ー 4   Potato ポ テ ト と 芋  

  ま ず 、 最 初 に 揚 げ ら れ る の が 、 カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ

カ ナ 語 が 相 補 分 布 な 関 係 に あ り 、 カ タ カ ナ 語 で 指 す も

の と 、 非 カ タ カ ナ 語 で 指 す も の の 指 示 対 象 が 異 な る も

の で あ る 。

  ま ず 、 レ ー ダ ー チ ャ ー ト の 見 方 を 解 説 す る 。 4 つ の

角 が 以 下 の そ れ ぞ れ の 回 答 に 対 応 し て い る 。

1   Never( ま っ た く * * を 使 わ な い )

2   Sometimes( ど ち ら か と い う と * * を 使 わ な い )

3   Often ( ど ち ら か と 言 う と * * を 使 う )

4   Always ( 常 に * * を 使 う )

  つ ま り 、 1 や 2 が 多 け れ ば 「 使 わ な い 」 と 判 断 が 強

く 、 3 や 4 が 多 け れ ば 「 使 う 」 と い う 判 断 が 強 い こ と

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に な る 。 初 級 の 被 験 者 は 12 人 で 、 上 級 の 被 験 者 が 9 人

で あ る た め 、 母 数 が 異 な る 。 母 数 が 異 な る が 、 レ ー

ダ ー チ ャ ー ト で 同 じ よ う な 図 形 に な れ ば 、 同 じ よ う な

回 答 の 傾 向 が あ る こ と が わ か る 。

  回 答 に ば ら つ き が あ れ ば あ る ほ ど 、 レ ー ダ ー チ ャ ー

ト の 中 の 四 角 の 空 間 が 大 き く な り 、 回 答 に ば ら つ き が

な く 、 1 つ の 回 答 に 集 約 さ れ る と 、 四 角 の 空 間 が な く

な り 、 フ ラ ッ ト な 1 本 の 線 の よ う な 形 に な る 。

< 表 6 > 野 球 の 道 具 (3-3) に 「 グ ロ ー ブ 」 を 使 う か と い

う 質 問 の 答 え

1  Never

2 Sometimes

3 Often

4  Always 0

5

10

初級上級

  野 球 の 道 具 (3-3) に 「 グ ロ ー ブ 」 を 使 う か と い う 質 問

の 答 え を み る と 、 上 級 は ほ ぼ 1 本 線 に な っ て お り 、 回

答 4 「 使 う 」 を 選 好 し て い る 。 初 級 も 回 答 3 「 ま あ ま

あ 使 う 」 と 回 答 4 「 使 う 」 を 選 好 し て お り 、 上 級 と 同

じ よ う な 傾 向 を 示 し て い る と い え る だ ろ う 。

  日 本 語 で は 「 グ ロ ー ブ 」 と い う と 、 野 球 や ボ ク シ ン

グ な ど の ス ポ ー ツ の 時 に 使 う 特 別 な 道 具 で あ っ て 、 普

通 の 手 袋 の こ と は 決 し て グ ロ ー ブ と は 言 わ な い 。 こ の

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よ う に 、 日 本 語 で は グ ロ ー ブ と 手 袋 は 指 示 対 象 が は っ

き り と 異 な っ て い る 。 一 方 で 、 英 語 の glove は 手 袋 の 総

称 で あ り 、 普 通 の 手 袋 に glove を 使 う が 、 手 に は め る も

の す べ て を 指 す 上 位 概 念 の 語 で あ る た め 、 野 球 の 道 具

の 場 合 、 単 に glove と 言 っ た だ け で は 、 言 葉 足 ら ず に な

る 。 き ち ん と 言 う に は 「 baseball glove 」 あ る い は 、

「 mitt 」 と 言 わ な け れ ば な ら な い 。 そ れ に も 関 わ ら ず 、

上 級 レ ベ ル の 被 験 者 の ほ と ん ど が 、 野 球 の 道 具 に 「 グ

ロ ー ブ 」 を 使 う と 回 答 し て お り 、 回 答 に ぶ れ が な い 。

興 味 深 い の が 、 初 級 の 被 験 者 も カ タ カ ナ 語 の グ ロ ー ブ

が 野 球 の 道 具 の み を 指 す こ と を 理 解 し て お り 、 初 級 と

上 級 の 学 習 者 の 回 答 が ほ ぼ 同 じ 傾 向 と な っ て い る こ と

で あ る 。

  ま た 、 カ タ カ ナ 語 で あ る 「 フ ラ イ ド ポ テ ト 」 の 中 に

は 「 ポ テ ト 」 が 入 っ て い る が 、 英 語 で は 一 般 的 に

「 French fry」 あ る い は 「 Frites」 と 言 わ れ 、 「 potato 」 が

そ の 名 称 に 入 ら な い こ と が 知 ら れ て い る 。 そ の こ と を

裏 付 け る よ う に 、 英 語 potato の 調 査 で は 「 フ ラ イ ド ポ

テ ト 」 に 関 し て potato を 使 わ な い ( 回 答 1 と 回 答 2) と

い う 回 答 者 が 合 計 40%( 22 人 ) い た 。 そ れ に も 関 わ ら

ず 、 日 本 語 で は そ の 対 象 物 に 「 ポ テ ト 」 使 う と い う 回

答 者 が 多 い こ と が < 表 7 > は 示 し て い る 。 つ ま り 、 英

語 で は あ ま り potato と 言 わ な い が 、 日 本 で は 細 切 り に

し た 油 で あ げ た 芋 が 「 ポ テ ト 」 と 呼 ば れ て い る こ と を

認 識 し て い る の で あ る 。 ア ン ケ ー ト は 日 本 に 来 て い る

留 学 生 達 に 行 っ た の で 、 フ ラ イ ド ポ テ ト の 実 物 を

フ ァ ー ス ト フ ー ド 店 な ど で よ く 見 る せ い な の か 、 か な

り は っ き り と し た 傾 向 が 見 ら れ た 。

< 表 7> 細 切 り に し た 揚 げ た 芋 (4-5) に 「 ポ テ ト 」 を 使

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う か と い う 質 問 の 答 え

1  Never

2 Sometimes

3 Often

4  Always 0

5

10

初級上級

5.2 タ イ プ Ⅱ : 使 い 分 け の 基 準 が わ か れ ば 習 得 し や す

い タ イ プ

< 使 い 分 け の 基 準 が わ か れ ば 理 解 し や す い タ イ プ >

= 材 質 や 形 態 、 使 用 方 法 な ど で 使 い 分 け が さ れ て い る

も の

カ テ ゴ リ ー 1   Bottle ボ ト ル と 瓶  

カ テ ゴ リ ー 2   Brush ブ ラ シ と 筆

  タ イ プ Ⅱ は 初 級 と 上 級 の 回 答 が 大 き く 異 な る タ イ プ

で あ る 。 議 論 の 都 合 上 、 カ テ ゴ リ ー 2 の 「 ブ ラ シ 」 と

「 筆 」 の 使 い 分 け か ら 見 て い く こ と に す る 。 習 字 の 筆

を 見 て 、 ブ ラ シ と い う か と い う 質 問 に 対 し 、 初 級 の 学

習 者 は 回 答 に ば ら つ き が あ り な が ら も 、 「 使 う 」 を 選

ん だ 回 答 が 多 い 。 そ れ は 、 英 語 で 筆 の こ と を 「 brush 」

呼 ぶ た め 、 よ く わ か ら な い 対 象 物 を 判 断 す る と き は 、

母 語 の 知 識 を 利 用 す る か ら だ と 考 え ら れ る 。

  一 方 で 、 上 級 で は ほ と ん ど の 人 が 「 使 わ な い 」 を 選

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ん で い る 。 こ の こ と か ら 、 上 級 の 被 験 者 達 は こ れ ま で

の 経 験 か ら 、 習 字 の 筆 に は 「 ブ ラ シ 」 で は な い 、 非 カ

タ カ ナ 語 を 使 用 す る こ と を 認 識 し て い る こ と が わ か る 。

< 表 8> 習 字 の 筆 ( 2-1 ) に 「 ブ ラ シ 」 を 使 う か と い う

質 問 の 答 え

1  Never

2 Sometimes

3 Often

4  Always 0

5

10

初級上級

 

  そ れ で は 、 「 筆 」 と 「 ブ ラ シ 」 の 使 い 分 け は 、 ど の

よ う に 認 識 し て い る の だ ろ う か 。 可 能 性 と し て は 2 つ

あ る 。 1 つ 目 と し て 、 日 本 的 な も の は 「 筆 」 、 そ の ほ

か の も の は 「 ブ ラ シ 」 と い う 使 い 分 け の ル ー ル を 適 応

し て い る 可 能 性 で あ る 。 2 つ 目 と し て 、 毛 先 を 下 向 き

に し て そ こ に 水 気 を 含 ま た 状 態 で 、 文 字 を 書 い た り 、

絵 を 描 い た り す る も の を 筆 と い い 、 毛 先 を 上 向 き し て 、

比 較 的 水 気 が 少 な い 状 態 で 使 用 す る も の を ブ ラ シ と し

て い る 可 能 性 で あ る 。

< 表 9> 絵 筆 ( 2-5 ) に 「 ブ ラ シ 」 を 使 う か と い う 質 問

の 答 え

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1  Never

2 Sometimes

3 Often

4  Always 0

5

10

初級上級

  < 表 9 > か ら わ か る よ う に 、 絵 筆 に 関 し て は 、 上 級

者 の 回 答 が レ ー ダ ー チ ャ ー ト で ほ ぼ 完 全 な 四 角 に な っ

た 。 無 回 答 が 1 名 い る た め に 、 N=8 に な り 各 回 答 が 2

名 ず つ で 、 す べ て の 回 答 に 分 散 し た か ら で あ る 。 そ の

た め < 表 9> は < 表 8> と は 全 く 異 な っ た 形 に な っ た 。

こ れ は つ ま り 、 絵 筆 に 「 ブ ラ シ 」 を 使 っ て も い い の か 、

使 っ て は い け な い の か わ か ら な い 状 態 で あ る こ と を 示

し て い る 。 久 津 木 ・ 池 谷 ( 2013 ) で 、 日 本 人 母 語 話 者

で は 100% が 「 筆 」 を 選 ん で お り 、 「 ブ ラ シ 」 を 選 ん だ

回 答 者 は 0% で あ っ た こ と を 考 え る と 、 英 語 を 母 語 と

す る 日 本 語 学 習 者 は 1 つ 目 の 可 能 性 で あ る 日 本 的 な も

の は 「 筆 」 、 そ の ほ か の も の は 「 ブ ラ シ 」 と い う 使 い

分 け の ル ー ル を 適 応 し て い る こ と が わ か る 。  

  一 方 で 日 本 語 母 語 話 者 は 2 つ 目 の 可 能 性 で あ る 、 毛

先 を 下 向 き に し て そ こ に 水 気 を 含 ま た 状 態 で 、 文 字 を

書 い た り 、 絵 を 描 い た り す る も の を 「 筆 」 と い い 、 毛

先 を 上 向 き し て 、 比 較 的 水 気 が 少 な い 状 態 で 使 用 す る

も の を 「 ブ ラ シ 」 と す る 使 い 分 け の ル ー ル を 適 応 し て

い る こ と が わ か る 。

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  日 本 人 母 語 話 者 と は 多 少 異 な り な が ら も 、 日 本 語 学

習 者 が そ れ ま で の 経 験 や 知 識 を 活 か し て 、 語 彙 に 関 し

て も 、 一 種 中 間 言 語 的 な 独 自 の ル ー ル を 編 み 出 し 、 判

断 し て い る こ と が こ れ ら の 結 果 か ら わ か る 。

  そ れ で は 、 次 に 「 ボ ト ル 」 と 「 瓶 」 の 使 い 分 け に つ

い て 見 て い く 。

< 表 10 > ワ イ ン の 容 器 (1-3) に 「 ボ ト ル 」 を 使 う か と い

う 質 問 の 答 え

1  Never

2 Sometimes

3 Often

4  Always 0

2

4

初級上級

初 級 の 学 習 者 は ワ イ ン の 容 器 に 対 し て 「 ボ ト ル 」 を

「 使 う 」 を 選 択 し た 回 答 者 が 多 い の に 対 し 、 上 級 の 学

習 者 は 「 使 わ な い 」 を 選 択 し た 回 答 者 が 多 い 。 こ れ だ

け 見 る と 、 初 級 の 学 習 者 の 方 が 正 し く 選 ん で い る よ う

に 感 じ ら れ る が 、 瓶 は 主 に ガ ラ ス ・ 陶 器 な ど で で き た

容 器 の こ と を 指 す 。 そ れ に 対 し て 、 ボ ト ル は プ ラ ス

チ ッ ク で で き た 容 器 を 指 す こ と が 多 い 。 そ の た め 、 一

般 的 に は 、 ビ ー ル 瓶 、 花 瓶 、 空 き 瓶 の よ う に 、 素 材 と

「 瓶 」 の 使 い 分 け が 対 応 し て い る 。 た だ し 、 そ の

「 瓶 」 の 中 に 、 ワ イ ン ボ ト ル の よ う に 、 慣 習 的 に 「 ボ

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ト ル 」 を 使 う 物 が 混 じ っ て い る 。 そ れ が 、 洋 酒 の 瓶 の

グ ル ー プ で あ る 。 こ れ ら は 、 「 * ワ イ ン 瓶 」 の よ う に

語 彙 化 は し て お ら ず 、 「 ワ イ ン の 瓶 」 の よ う に 合 成 的

な 形 で し か 言 う こ と が で き な い 。 し か し 、 飲 み 終 わ っ

た ワ イ ン ボ ト ル は 「 空 き 瓶 」 と な り 、 瓶 に な る 。 こ れ

ら を 「 ボ ト ル 」 と 呼 ぶ の は 慣 習 的 に 決 ま っ て い る も の

で あ り 、 ガ ラ ス 製 の も の は 瓶 と い う 原 則 か ら は 外 れ て

い る 。

  < 表 10 > を 見 る と 、 上 級 の 学 習 者 は ワ イ ン の 容 器 に

は 「 ボ ト ル 」 を 「 使 わ な い 」 を 選 ん だ 回 答 者 が 多 い 。

こ れ は 、 ガ ラ ス 製 の も の は 瓶 と い う 規 則 を 知 っ て お り 、

そ れ を 一 般 化 し た せ い だ と 考 え ら れ る 。 そ れ に 対 し て 、

初 級 の 学 習 者 は 「 瓶 」 と い う 単 語 に 対 し て 明 確 な イ

メ ー ジ が な い た め 、 英 語 の bottle と 同 じ よ う に 「 使 う 」

を 選 択 し た 回 答 者 が 多 く な っ て い る 。

  こ れ か ら わ か る こ と は 、 日 本 語 の 学 習 が 進 む に つ れ

て 、 学 習 者 が 語 彙 の 選 択 に 対 し て 独 自 の ル ー ル を 設 定

し 、 カ タ カ ナ 語 と 非 カ タ カ ナ 語 の 使 い 分 け を 判 断 し て

い る こ と が わ か る 。

  こ れ ら の カ テ ゴ リ ー は 現 在 は そ の 使 い 分 け が は っ き

り し て い な い が 、 日 本 語 に お い て そ の 対 象 物 に 対 す る

イ ン プ ッ ト が 増 え る と 伴 に 語 彙 の 認 知 カ テ ゴ リ ー が 修

正 さ れ 、 日 本 人 と 同 じ よ う な 意 味 の マ ッ ピ ン グ に な る

こ と が 予 測 さ れ る 。

5.3   タ イ プ Ⅲ : 理 解 し に く い カ タ カ ナ 語

< 習 得 し に く い カ タ カ ナ 語 の タ イ プ >

= 一 見 、 非 常 に 意 味 が よ く 似 て い て 使 い 分 け の 基 準 を

規 則 化 し に く い も の

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カ テ ゴ リ ー 5   Tea テ ィ ー と お 茶  

カ テ ゴ リ ー 6   Ticket チ ケ ッ ト と 券

  最 期 に 考 察 す る タ イ プ Ⅲ は 初 級 で も 上 級 で も 回 答 が

混 乱 し て お り 、 一 定 の 傾 向 が な い も の で あ る 。 初 級 は

も ち ろ ん で あ る が 、 上 級 で あ っ て も 、 回 答 に 確 信 が な

い 。

  タ イ プ Ⅲ と タ イ プ Ⅰ は 初 級 の 学 習 者 と 上 級 の 学 習 者

と は 同 じ よ う な レ ー ダ ー チ ャ ー ト に な る と い う 点 で は

共 通 点 が あ る 。 し か し 、 タ イ プ Ⅰ の 日 本 語 学 習 者 達 は

あ る 程 度 の 確 信 を も っ て 、 回 答 を 選 ん で い る の で 、 回

答 の ば ら つ き が な い 。 ま た 、 日 本 人 の 回 答 と も 一 致 し 、

1 本 の 線 の よ う な フ ラ ッ ト な 閉 じ た レ ー ダ ー チ ャ ー ト

と な る 。

  そ れ に 対 し て 、 タ イ プ Ⅲ は ど う い う 基 準 で カ タ カ ナ

語 を 選 ん だ ら よ い の か は っ き り し な い た め 、 上 級 で

あ っ て も 、 回 答 が そ ろ わ ず 、 か つ 、 ど ち ら の レ ベ ル も

母 語 で あ る 英 語 の 知 識 を 利 用 す る た め 、 結 果 と し て 初

級 と 上 級 の 学 習 者 が 同 じ よ う な レ ー ダ ー チ ャ ー ト と な

る 。

  飛 行 機 に 乗 る も の に 「 チ ケ ッ ト 」 を 使 う か と う 答 え

に 対 し て 、 日 本 語 学 習 者 は 初 級 で あ っ て も 、 上 級 で

あ っ て も 「 使 う 」 を 選 ん だ 回 答 者 が 多 い 。 こ れ は 英 語

で は 「 an airline ticket 」 と 呼 ば れ た り 、 「 boarding pass 」

と 呼 ば れ る も の で あ る 。

  日 本 語 で は 「 航 空 券 」 「 搭 乗 券 」 と 呼 ば れ る も の で

あ る が 、 「 券 」 は 「 チ ケ ッ ト 」 を 排 除 す る わ け で は な

く 、 「 飛 行 機 の チ ケ ッ ト 」 と も い う こ と が で き る も の

で あ る 。 つ ま り 、 「 チ ケ ッ ト 」 と 「 券 」 が 共 存 し て お

り 、 ど ち ら か 1 つ し か 言 え な い よ う な 排 他 的 な 関 係 に

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な っ て い な い 。 こ の よ う に 、 日 本 語 の 語 彙 と し て 使 い

分 け の ル ー ル が 確 定 し て い な い た め 、 基 準 が と り に く

い も の で あ る 。 そ の た め 、 日 本 語 学 習 者 は 英 語 の 知 識

を 利 用 し て 回 答 し て い る こ と が わ か る 。

< 表 11 > 飛 行 機 に 乗 る も の ( 6-5 ) に 「 チ ケ ッ ト 」 を

使 う か と い う 質 問 の 答 え

1  Never

2 Sometimes

3 Often

4  Always 0

5

10

初級上級

  そ れ で は 、 日 本 人 母 語 話 者 は ど う 判 断 し て い る だ ろ

う か 。 久 津 木 ・ 池 谷 ( 2013 ) で は 、 日 本 人 に 対 す る 予

備 調 査 の 中 で 、 自 由 記 述 の 中 で は 「 チ ケ ッ ト 」 と 使 っ

て も 良 い と い う 記 述 が 見 ら れ た が 、 実 際 に 写 真 を 見 て

選 ん で も ら う 質 問 で は コ ン サ ー ト の チ ケ ッ ト の み が

「 チ ケ ッ ト 」 の 使 用 に 優 位 な 差 が 見 ら れ 、 そ の 他 の も

の は 有 意 に は 許 容 さ れ な い と い う 結 果 が 出 た 。 つ ま り 、

「 チ ケ ッ ト 」 は 使 え な い わ け で は な い が 、 無 意 識 の 選

択 と し て 、 「 券 」 が 好 ま れ る こ と が わ か る 。

  更 に 複 雑 な の が 、 「 茶 」 と 「 テ ィ ー 」 の 使 い 分 け で

あ る 。 久 津 木 ・ 池 谷 (2013) の 調 査 で は 日 本 語 母 語 話 者

の 結 果 で は 「 茶 ⇒ 紅 茶 ⇒ 様 々 な タ イ プ の お 茶 ( =

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テ ィ ー ) 」 と い う 紅 茶 の 中 で の 意 味 の ヒ エ ラ ル キ ー が

指 摘 さ れ て い る 。 ま た 、 英 語 の tea に つ い て の 5-1 か ら

5-5 の 写 真 刺 激 は 、 常 に tea が 「 使 え る 」 を 選 択 し た 人

が 多 く 、 英 語 に お い て す べ て の 対 象 物 が 一 般 的 に tea

と 呼 ば れ る カ テ ゴ リ ー に 入 る も の で あ る 。

  冷 た い 紅 茶 を 何 と 呼 ぶ の か と う 質 問 に 対 し て は 、 初

級 、 上 級 の 学 習 者 と も に 「 テ ィ ー 」 を 「 使 う 」 を 選 択

し た 回 答 者 が 多 い が 、 タ イ プ Ⅰ の よ う に 、 レ ー ダ ー

チ ャ ー ト が 1 本 線 に な る よ う な 強 い 傾 向 を 示 し て い な

い 。 冷 た い 紅 茶 を 日 本 語 で は 「 ア イ ス テ ィ ー 」 と 呼 ば

れ 、 そ の 名 称 に 「 テ ィ ー 」 が 入 っ て い る の に も 関 わ ら

ず 、 確 信 を も っ て テ ィ ー を 選 ん だ 回 答 者 が 意 外 に 少 な

い 。

  そ の 理 由 と し て 、 「 テ ィ ー 」 の 持 つ 独 自 性 が あ る 。

日 本 人 母 語 話 者 で は 、 5-3 の 温 か い 紅 茶 に 関 し て は 、

非 カ タ カ ナ 語 の 「 お 茶 」 を 選 好 す る 傾 向 が あ っ た 。 そ

れ に 対 し て 、 同 じ 紅 茶 で も そ れ を 冷 た く し た も の は カ

タ カ ナ 語 で あ る 「 テ ィ ー 」 を 選 好 す る 傾 向 が あ る 。 つ

ま り 、 何 を テ ィ ー と い う の か は 、 そ の 対 象 物 ご と に 決

ま っ て お り 、 そ こ に は 明 確 な 規 則 が 見 い だ し に く い 。

な ぜ 、 こ の よ う な 振 る 舞 い を す る の か を 考 え て み る と 、

テ ィ ー は 1900 年 代 か ら 日 本 に 早 く か ら 外 来 語 と し て 輸

入 さ れ た こ と が 知 ら れ て い る 。

( 精 選 版   日 本 国 語 大 辞 典 2006 ) ( 下 線 は 筆 者 0

① 茶 。 特 に 紅 茶 を い う 「 レ モ ン テ ィ ー 」

* 風 俗 画 報 一 二 九 号 ( 19001 ) 食 堂 「 ラ イ ス

( 飯 ) と 呼 び チ ー ( 茶 ) を 叫 べ ば 、 盆 を 携 ふ る

給 仕 人 も 却 々 忙 し か り き 」

②   イ ギ リ ス の 習 慣 で 、 午 後 に 取 る 軽 食 。 ア フ タ ヌ ー

ン テ ィ ー 。

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  こ の よ う に 、 「 テ ィ ー 」 は 日 本 語 と し て 定 着 し て お

り 、 「 green tea 」 と い え ば 、 英 語 の 原 義 か ら 言 え ば 緑

茶 の こ と で あ る が 、 日 本 語 で は そ こ か ら 外 れ て 、 抹 茶

に 甘 い 味 を つ け 冷 や し て 飲 む も の に 、 「 グ リ ー ン

テ ィ ー 」 と 呼 ぶ な ど 、 語 と し て の 生 産 性 を 獲 得 し て い

る 。

  こ う な る と 、 単 に 洋 風 な お 茶 に 「 テ ィ ー 」 を 使 う と

い う ル ー ル で は 処 理 で き な く な り 、 結 果 と し て 、

テ ィ ー は 聞 い た ら 理 解 で き る が 、 使 い 分 け に 関 し て は

判 断 が 難 し く な る 。

< 表 12 > 冷 た い 紅 茶 ( 5-3 ) に 「 テ ィ ー 」 を 使 う か と

い う 質 問 の 答 え

1  Never

2 Sometimes

3 Often

4  Always 0

5

初級上級

  こ れ ま で の 議 論 を ま と め る と 、 同 じ カ タ カ ナ 語 と 非

カ タ カ ナ 語 で あ っ て も 、 そ の 使 い 分 け が 理 解 し や す い

も の と 、 理 解 し に く い も の が あ る こ と が わ か っ た 。

「 ポ テ ト と 芋 」 「 グ ロ ー ブ と 手 袋 」 の よ う に 、 カ タ カ

ナ 語 が 有 標 で 指 し 示 す 対 象 物 が 全 く 別 物 で あ る と き 、

最 も 理 解 が 簡 単 で あ る こ と が 証 明 さ れ た 。

  一 方 で 、 理 解 し に く い と 予 測 さ れ る の が 、 「 チ ケ ッ

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ト と 券 」 「 テ ィ ー と お 茶 」 の よ う に 、 一 見 、 非 常 に 意

味 が よ く 似 て い て 、 使 い 分 け の 基 準 を 規 則 化 し に く い

も の で あ る 。 非 カ タ カ ナ 語 と カ タ カ ナ 語 が 包 摂 関 係 に

あ る が 、 語 彙 カ テ ゴ リ ー の 境 界 が 融 合 し て い る た め 、

同 じ も の を 「 飛 行 機 の チ ケ ッ ト 」 や 「 飛 行 機 の 搭 乗

券 」 の よ う に 言 い 表 す こ と が で き 、 そ れ ら の 語 彙 は 排

他 的 で は な く 共 存 し て い る 。 そ れ ら は 慣 習 法 的 に 対 象

物 ご と に 言 い 方 が 決 ま っ て い る た め 、 完 璧 に 使 い 分 け

る こ と は 難 し い が 、 逆 に カ タ カ ナ 語 が 日 本 語 と し て 語

彙 化 し て い る た め 、 「 電 車 の 回 数 チ ケ ッ ト ( 回 数

券 ? ) 」 や 「 そ ば テ ィ ー ( そ ば 茶 ? ) 」 と 言 っ て も 、

コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 上 の 大 き な 弊 害 を 引 き 起 こ さ な い

の で あ る 。 日 本 人 で あ っ て も 揺 れ て い る こ れ ら の 使 い

分 け は 理 解 す る の が 難 し い こ と が 予 測 さ れ る 。

< 参 考 資 料 >

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文 献

秋 元 美 晴 ( 2002 ) 『 よ く わ か る 語 彙 ( 日 本 語 教

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す る 日 本 語 学 習 者 に お け る カ タ カ ナ 語 の 研 究 -Tea と

テ ィ ー と お 茶 は 同 じ な の か - 」 『 TALKS 』 16,21-36. 神

戸 松 蔭 女 子 学 院 大 学

久 津 木 文 ・ 池 谷 知 子 ( 2013 ) 「 日 本 語 母 語 話 者 の

カ タ カ ナ 使 用 に つ い て の 予 備 研 究 」

『 TALKS 』 16,37-50. 神 戸 松 蔭 女 子 学 院 大 学

池 谷 知 子 ・ 久 津 木 文 (2014) 「 英 語 を 母 語 話 者 と す る

日 本 語 学 習 者 に お け る カ タ カ ナ 語 の 研 究 Ⅱ - 習 得 し

や す い カ タ カ ナ 語 と 習 得 し に く い カ タ カ ナ 語 」

『 TALKS 』 17,28-45. 神 戸 松 蔭 女 子 学 院 大 学

佐 藤 弘 ( 1994 ) 『 外 来 語 と 英 語 の ズ レ - 英 語 を 学 び 、

使 う 人 の た め に - 』 八 潮 出 版 社

陣 内 正 敬 (1993) 「 『 さ じ 』 と 『 ス プ ー ン 』 : 外 来 語

化 と 命 名 の ゆ れ 」 『 言 語 文 化 論 究 』 4号 ,47-54. 九 州

大 学 言 語 文 化 部

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中 山 恵 理 子 ・ 桐 生 り か ・ 山 口 昌 也 ( 2008 ) 「 日 本

語 教 育 に お け る 『 カ タ カ ナ 教 育 』 の 扱 わ れ 方 」

『 日 本 語 教 育 』 138 号 ,83-91. 日 本 語 教 育 学 会

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松 村 明 ( 編 ) ( 1995 ) 『 大 辞 林   第 2 版 』 三 省 堂

新 村 出 ( 編 ) (1988) 『 広 辞 苑   第 5 版 』 岩 波 書 店

小 学 館 ( 編 ) (2006) 『 精 選 版   日 本 国 語 大 辞 典 』 小 学

小 西 友 七 ・ 南 出 康 世 ( 2006 ) 『 ジ ー ニ ア ス 英 和 辞 典

第 4版 』 大 修 館 書 店

ロ ン グ マ ン ( 編 ) (2003) 『 ロ ン グ マ ン 現 代 英 英 辞 典 4

訂 新 版 』 桐 原 書

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