ssc-ild診療 今後 の展望 リウマチ・膠原病内科の立...

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© 2019 Boehringer Ingelheim. All rights reserved. 主催 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 開催日 2019年9月26日(木) 開催地 宮城県仙台市 今後 展望 SSc-ILD診療 リウマチ・膠原病内科の立場から Future Prospects 全身性強皮症(SSc)は全身の臓器の線維化、血管障害を特徴とする自己免疫疾患です。 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)は、SScの肺病変で最も発現頻度が高く、 SSc患者の死亡原因の多くを占めることが報告されています 1) 今回は、東北大学病院 臨床研究推進センター 特任教授であり オフェブのSSc-ILDに関する アドバイザリーボードメンバーの1人である石井智徳先生に、 SSc-ILD治療の現状、SSc-ILDに対するオフェブへの期待と 適正使用のための工夫などについてお話しいただきました。 東北大学病院 臨床研究推進センター 特任教授 石井 智徳 先生 INDEX SSc-ILD のモニタリングと治療介入が必要な患者の見極め SSc-ILD 治療の今後の展望 SSc-ILD をとりまく診療科の連携の課題と対策 1)Elhai M, et al. Ann Rheum Dis 2017; 76: 1897-1905

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Page 1: SSc-ILD診療 今後 の展望 リウマチ・膠原病内科の立 …...SSc-ILDのモニタリングと治療介入が必要な患者の見極め 東北大学病院 臨床研究推進センター

© 2019 Boehringer Ingelheim. All rights reserved.

主催 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 開催日 2019年9月26日(木) 開催地 宮城県仙台市

今後の展望SSc-ILD診療 リウマチ・膠原病内科の立場から

Future Prospects

全身性強皮症(SSc)は全身の臓器の線維化、血管障害を特徴とする自己免疫疾患です。全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)は、SScの肺病変で最も発現頻度が高く、SSc患者の死亡原因の多くを占めることが報告されています1)。今回は、東北大学病院 臨床研究推進センター 特任教授でありオフェブのSSc-ILDに関するアドバイザリーボードメンバーの1人である石井智徳先生に、SSc-ILD治療の現状、SSc-ILDに対するオフェブへの期待と適正使用のための工夫などについてお話しいただきました。

東北大学病院 臨床研究推進センター 特任教授

石井 智徳 先生

INDEX

SSc-ILD のモニタリングと治療介入が必要な患者の見極め

SSc-ILD 治療の今後の展望

SSc-ILD をとりまく診療科の連携の課題と対策

1)Elhai M, et al. Ann Rheum Dis 2017; 76: 1897-1905

Page 2: SSc-ILD診療 今後 の展望 リウマチ・膠原病内科の立 …...SSc-ILDのモニタリングと治療介入が必要な患者の見極め 東北大学病院 臨床研究推進センター

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今後の展望SSc-ILD診療 リウマチ・膠原病内科の立場から Future Prospects

 当院の血液・免疫科では、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの膠原病患者を多数診て

おり、その中でSScの年間受診患者数は260例近くに上っています(図1)。我が国のコホート研究では、SSc患者の約50

%にILDが発現していることが報告されおり(表1)2)、当科のSSc患者におけるILDの割合も同程度です。他の医療機関

からの紹介例が多く、ILDと診断された後に膠原病疑いで紹介されSScが判明するケースもあります。また、紹介元の医

療機関は宮城県をはじめ、岩手県、山形県、福島県など広範囲にわたります。紹介例には、臓器障害を伴う症例が多く

含まれています。

SSc-ILD のモニタリングと治療介入が必要な患者の見極め

東北大学病院 臨床研究推進センター 特任教授 石井 智徳 先生

東北大学病院 血液・免疫科 2017年度受診患者数(リウマチ膠原病疾患)

東北大学病院「診療のご案内2019」より改変https://www.hosp.tohoku.ac.jp/pc/pdf/consultation2019.pdf

関節リウマチ, 833

全身性エリテマトーデス, 672

シェーグレン症候群, 505

全身性強皮症, 256

ベーチェット病, 202

高安動脈炎, 141

皮膚筋炎, 141

混合性結合組織病, 105

多発性筋炎, 88

抗リン脂質抗体症候群, 76

IgG4関連疾患, 73

成人発症Still病, 67肺高血圧症, 52 その他, 261

図1

2)Hashimoto A, et al. Mod Rheumatol 2012; 22: 272-279

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 線維化による肺の機能障害は不可逆性であることからも、予後不良の進行例を見極め、適切なタイミングで治療を

開始することが重要です。前述のとおり患者の約50%にILDが発現していることから2)、SScと診断された場合は、最初

に高分解能CT(HRCT)によるスクリーニングを実施することが大切です。さらに当科では、SSc-ILDに関しては、問診(自

覚症状の聞き取り)、血中酸素濃度測定、呼吸機能検査(FVC、DLcoなど)、胸部X線検査、血清マーカー(KL-6、SP-Dな

ど)の評価を患者の状態に応じて定期的に行っています。こうしたモニタリングによって、予後不良が予測される患者に

は、年齢なども考慮して治療介入を検討します。例えば、FVC年間低下率が2~3%程度であっても、30歳代の患者であ

れば数十年後の状態も考慮して治療導入を検討します。

石井 智徳 先生

病型別の臓器病変の発現頻度(405例、日本)

Hashimoto A, et al. Mod Rheumatol 2012; 22: 272-279.

消化管:胃食道逆流症(GERD)、嚥下障害、抗生物質を必要とする細菌増殖、麻痺性イレウスILD:X線検査もしくはCTにおける肺線維化所見PAH:右心カテーテル検査での直接測定で平均肺動脈圧が25mmHg以上、ドプラー心エコー法による三尖弁血流速度から推算した肺動脈圧が35mmHg以上心臓:左室駆出分画(LVEF)が40%未満、伝導ブロック、治療を必要とする不整脈、心不全腎臓:腎クリーゼの既往、タンパク尿、糸球体濾過量が60mL/分/1.73m2未満腎クリーゼ:悪性の動脈性高血圧、明らかな原因のない乏尿性の腎不全

臓器 lcSScn=270

dcSScn=135

全体n=405

消化管 39.6% 59.3% 46.2%

間質性肺疾患( ILD) 40.0% 71.1% 50.4%

肺動脈性肺高血圧症(PAH) 14.4% 19.3% 16.0%

心臓 13.0% 32.6% 19.5%

腎臓 10.7% 23.0% 14.8%

腎クリーゼ 0.74% 8.2% 3.2%

表1

2)Hashimoto A, et al. Mod Rheumatol 2012; 22: 272-279

© 2019 Boehringer Ingelheim. All rights reserved.

東北大学病院 臨床研究推進センター 特任教授

今後の展望SSc-ILD診療 リウマチ・膠原病内科の立場から Future Prospects

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Page 4: SSc-ILD診療 今後 の展望 リウマチ・膠原病内科の立 …...SSc-ILDのモニタリングと治療介入が必要な患者の見極め 東北大学病院 臨床研究推進センター

石井 智徳 先生東北大学病院 臨床研究推進センター 特任教授

© 2019 Boehringer Ingelheim. All rights reserved.

 これまで、急速に進行するSSc-ILDにはシクロフォスファミドなどの免疫抑制薬を中心とした治療を行ってきました。

一方、緩徐に進行するSSc-ILDに対しては、有効性、安全性の観点から事実上有効な治療法はなく、どのように治療を行

うのかが課題となっていました。このたび、SSc-ILDに対する治療薬として承認されるオフェブは、肺の線維化が進行す

る患者に対し有用な治療選択肢の1つとして期待しています。今後、臨床の場での長期投与のエビデンスなどが構築さ

れることで、より臨床での使用が広がり、SSc-ILD診療がより良いものになればと思います。

 また、進行が緩徐な場合、適切なタイミングによるモニタリングや患者の症状の訴えを細かに聞き取ることも重要で

す。SScは全身の臓器に線維化や血管障害が生じ、さまざまな症状を来たすこともあるため、経過観察中の患者が定期

受診の際には各種検査に加えて、「何か変わったことはないですか」などと常に問いかけるようにしています。患者が症

状などについて話しやすい雰囲気をつくり、「どのような訴えでも聞く医師」と認識してもらうことが、SSc-ILDに対する治

療介入においても重要になると考えています。

SSc-ILD 治療の今後の展望

今後の展望SSc-ILD診療 リウマチ・膠原病内科の立場から Future Prospects

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オフェブの患者向け冊子

図2

石井 智徳 先生東北大学病院 臨床研究推進センター 特任教授

 SScでは皮膚をはじめ、肺、消化管、心臓、腎など全身の臓器に病変が認められることから、さまざまな診療科との連

携が重要となります。連携においては、患者の服用する薬剤が多ければ多いほど、情報共有や治療方針の決め方などに

工夫が必要になります。例えば、当科でオフェブを処方した患者のさまざまな状態に対して、他の医療機関でも適切に

対処できるように本剤の情報を広く周知する必要もあると考えます。このような課題への対策の1つとして、オフェブ服

用に関する情報などが記載された冊子(図2)を患者に携帯してもらい、受診した医療機関の医師にも提示できるように

することも一案です。こうした工夫はオフェブの適正使用にもつながると考えています。

SSc-ILD をとりまく診療科の連携の課題と対策

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添付文書情報はこちら

今後の展望SSc-ILD診療 リウマチ・膠原病内科の立場から Future Prospects

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2019年12月作成