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18 ARM PARTNERS SUCCESS ARM PARTNERS SUCCESS 19 Success STORIES ST マイクロエレクトロニクス株式会社 さまざまな生体センサーを駆使して 睡眠時の無呼吸を検出 今日は日本光電工業(以下、日本光電)の携 帯用無呼吸検査装置「SAS-3200」を持ってき ていただきましたが、これは何をする装置で すか? 根木:眠っている間に、10秒以上の呼吸停止 を繰り返す病態を「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」 と呼び、日本人の2%程度がこういった症状 を持っているといわれています。単に一時的 に呼吸が止まるだけならいいのですが、高血 圧や動脈硬化を引き起こすといわれているほ か、慢性的な睡眠不足から居眠り運転につな がる恐れもあると指摘されています。たとえ ば2003年に新幹線の運転士が居眠り運転を起 こしニュースでも取り上げられましたが、こ の運転士はその後の検査で睡眠時無呼吸症候 群の持ち主であることが判りました。それ以 後、旅客や運送の関係者にとって大きな問題の ひとつに挙げられています。この「SAS-3200」 は、センサーを体に装着した状態で被験者に一 晩寝てもらい、睡眠中に無呼吸症状が発生した かどうかを調べる装置です。 日本人の2%程度と聞くと自分も睡眠時無呼 吸症候群ではないだろうかと心配になってしま いますが、さて「SAS-3200」はどのように使う のでしょうか? 田口:睡眠時無呼吸症候群の検査装置には、 無呼吸や低呼吸を検出するための圧力や熱を感 知するセンサーを鼻腔付近、血液中に酸素がど のくらい含まれているかを計測するためのセン サーを指先、呼吸の努力の有無を検出するセン サーを胸や腹に装着して睡眠中のセンサーの データを「SAS-3200」で記録します。記録され たデータから 1 時間当たりの無呼吸や低呼吸の 「エレクトロニクスで病魔に挑戦」をモットーに数多くの医療用電子機器を展開する日本光電工業。街角や施設などで目にすることの 多いオレンジ色のAED(自動体外式除細動器)でも有名だ。今回APSでは、数ある同社製品の中から、睡眠中に一時的に呼吸が止まる「睡 眠時無呼吸症候群」の簡易検査装置「SAS-3200」を取り上げる。単三電池2本で24時間以上の動作を実現するためと、生体信号を高 精度で処理するために、ARM Cortex-M3プロセッサを搭載したSTマイクロエレクトロニクスの「STM32F103」を採用した。 進化を続けるST マイクロエレクトロニクスの STM32 ファミリ 注目を集めるメディカル分野でも実力を発揮 Success STORIES ST マイクロエレクトロニクス株式会社 回数を計測し、その値を参考にして被験者のそ の後のより精密な検査や治療の必要性を医師が 判断することになります。 なかなか装着が大変そうですね。 田口:基本的には専門の病院で検査技師また は看護師が扱うことを前提としています。 根木:弊社では、より簡便に睡眠時無呼吸検 査ができる「SAS-2100」という機種も販売して います。睡眠時無呼吸は循環器疾患との関連が あるということから、「SAS-3200」はホルター 心電図検査や呼吸努力の検出ができるように なっているため、センサーが増えています。 ローパワーかつ 32ビット演算対応を理由に ARM Cortex-M3プロセッサを選択 「SAS-3200」の内部の作りについて教えてく ださい。 田嶋:それでは私からハードウェアについて 説明します。「SAS-3200」には先ほど田口から あったようにさまざまな生体センサーが接続 されています。まず、それらセンサーの出力信 号を増幅するアンプや余分な信号成分を取り 除くフィルタ回路で構成されるアナログ段が あり、次にアナログデジタル変換器(A/Dコン バータ)を経由して、マイコンにデータを取り 込んで処理します。処理したデータは後処理 ができるようにSDカードに記録します。単三 電池2本で24時間以上の動作を目標にしたた め、消費電力をいかに抑えるかが課題でした。 生体信号は連続的にモニタしなければなりま せんのでアナログ段は常に電源オンの状態に し、その代わりマイコンは必要な処理をしたの ちは速やかにスリープモードに移行させるな どの工夫を行っています。マイコンにはARM Cortex-M3プロセッサを搭載したSTマイクロ エレクトロニクス(以下、ST)の「STM32F103」 を採用しています。 マイコンはどのように選定したのですか? 田嶋:ひとつはスリープ状態から通常状態 に切り替わるときの起動時間ですね。マイ コンのクロック源として水晶発振回路のみを 内蔵するタイプのマイコンでは、スリープか らの水晶発振安定に十数 ms もかかるのですが、 STM32シリーズは、RC発振器を内蔵しており、 1msを大幅に下回る起動時間であるため、無 駄な電力消費を抑えることができました。も ちろん「STM32F103」は通常動作でも消費電 力が少ない点も評価しました。 根 木:ARM Cortex-M3 プ ロ セ ッ サ で あ れ ば 32ビット演算ができるという点も採用理由の ひとつです。低消費電力を謳う他社のマイコン も検討したのですが、レジスタが16ビットし かありません。生体信号はダイナミックレンジ がとても広いので、フィルタ処理のような積和 演算を行おうとすると、16ビットでは演算時間 がかかり、消費電力が増えてしまいます。 野田:この「SAS-3200」で日本光電様は当 社のマイコンを初めて採用されたのですが、海 外ベンダーに対するアレルギーはなかったの ですか? 根木:私は、もともと国産・海外ベンダーも 含めて数種類のマイコンを使用してきたのです が、国産マイコンベンダーの場合は、リスクの 高くない医療機器であることを理解していただ くための手続きにかなり時間が必要だったと記 憶しています。日本光電はAED(自動体外式除 日本光電工業株式会社 医療機器技術センタ 第四技術部 次長 根木 潤 測定画面例 携帯用無呼吸検査装置「SAS-3200」 もとぎ

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Page 1: Success STORIES STマイクロエレクトロニクス株 …Success STORIES STマイクロエレクトロニクス株式会社 回数を計測し、その値を参考にして被験者のそ

18 ARM PARTNERS SUCCESS ARM PARTNERS SUCCESS 19

Success STORIESSTマイクロエレクトロニクス株式会社

さまざまな生体センサーを駆使して睡眠時の無呼吸を検出

今日は日本光電工業(以下、日本光電)の携

帯用無呼吸検査装置「SAS-3200」を持ってき

ていただきましたが、これは何をする装置で

すか?

根木:眠っている間に、10 秒以上の呼吸停止

を繰り返す病態を「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」

と呼び、日本人の 2%程度がこういった症状

を持っているといわれています。単に一時的

に呼吸が止まるだけならいいのですが、高血

圧や動脈硬化を引き起こすといわれているほ

か、慢性的な睡眠不足から居眠り運転につな

がる恐れもあると指摘されています。たとえ

ば 2003 年に新幹線の運転士が居眠り運転を起

こしニュースでも取り上げられましたが、こ

の運転士はその後の検査で睡眠時無呼吸症候

群の持ち主であることが判りました。それ以

後、旅客や運送の関係者にとって大きな問題の

ひとつに挙げられています。この「SAS-3200」

は、センサーを体に装着した状態で被験者に一

晩寝てもらい、睡眠中に無呼吸症状が発生した

かどうかを調べる装置です。

日本人の 2%程度と聞くと自分も睡眠時無呼

吸症候群ではないだろうかと心配になってしま

いますが、さて「SAS-3200」はどのように使う

のでしょうか?

田口:睡眠時無呼吸症候群の検査装置には、

無呼吸や低呼吸を検出するための圧力や熱を感

知するセンサーを鼻腔付近、血液中に酸素がど

のくらい含まれているかを計測するためのセン

サーを指先、呼吸の努力の有無を検出するセン

サーを胸や腹に装着して睡眠中のセンサーの

データを「SAS-3200」で記録します。記録され

たデータから 1 時間当たりの無呼吸や低呼吸の

「エレクトロニクスで病魔に挑戦」をモットーに数多くの医療用電子機器を展開する日本光電工業。街角や施設などで目にすることの

多いオレンジ色のAED(自動体外式除細動器)でも有名だ。今回APSでは、数ある同社製品の中から、睡眠中に一時的に呼吸が止まる「睡

眠時無呼吸症候群」の簡易検査装置「SAS-3200」を取り上げる。単三電池 2 本で 24 時間以上の動作を実現するためと、生体信号を高

精度で処理するために、ARM Cortex-M3 プロセッサを搭載した ST マイクロエレクトロニクスの「STM32F103」を採用した。

進化を続けるSTマイクロエレクトロニクスの

STM32ファミリ注目を集めるメディカル分野でも実力を発揮

Success STORIESSTマイクロエレクトロニクス株式会社

回数を計測し、その値を参考にして被験者のそ

の後のより精密な検査や治療の必要性を医師が

判断することになります。

なかなか装着が大変そうですね。

田口:基本的には専門の病院で検査技師また

は看護師が扱うことを前提としています。

根木:弊社では、より簡便に睡眠時無呼吸検

査ができる「SAS-2100」という機種も販売して

います。睡眠時無呼吸は循環器疾患との関連が

あるということから、「SAS-3200」はホルター

心電図検査や呼吸努力の検出ができるように

なっているため、センサーが増えています。

ローパワーかつ32ビット演算対応を理由にARM Cortex-M3プロセッサを選択

「SAS-3200」の内部の作りについて教えてく

ださい。

田嶋:それでは私からハードウェアについて

説明します。「SAS-3200」には先ほど田口から

あったようにさまざまな生体センサーが接続

されています。まず、それらセンサーの出力信

号を増幅するアンプや余分な信号成分を取り

除くフィルタ回路で構成されるアナログ段が

あり、次にアナログデジタル変換器(A/D コン

バータ)を経由して、マイコンにデータを取り

込んで処理します。処理したデータは後処理

ができるように SD カードに記録します。単三

電池 2 本で 24 時間以上の動作を目標にしたた

め、消費電力をいかに抑えるかが課題でした。

生体信号は連続的にモニタしなければなりま

せんのでアナログ段は常に電源オンの状態に

し、その代わりマイコンは必要な処理をしたの

ちは速やかにスリープモードに移行させるな

どの工夫を行っています。マイコンには ARM

Cortex-M3 プロセッサを搭載した ST マイクロ

エレクトロニクス(以下、ST)の「STM32F103」

を採用しています。

マイコンはどのように選定したのですか?

田嶋:ひとつはスリープ状態から通常状態

に 切 り 替 わ る と き の 起 動 時 間 で す ね。 マ イ

コンのクロック源として水晶発振回路のみを

内蔵するタイプのマイコンでは、スリープか

らの水晶発振安定に十数 ms もかかるのですが、

STM32 シリーズは、RC 発振器を内蔵しており、

1ms を大幅に下回る起動時間であるため、無

駄な電力消費を抑えることができました。も

ちろん「STM32F103」は通常動作でも消費電

力が少ない点も評価しました。

根木:ARM Cortex-M3 プロセッサであれば

32 ビット演算ができるという点も採用理由の

ひとつです。低消費電力を謳う他社のマイコン

も検討したのですが、レジスタが 16 ビットし

かありません。生体信号はダイナミックレンジ

がとても広いので、フィルタ処理のような積和

演算を行おうとすると、16 ビットでは演算時間

がかかり、消費電力が増えてしまいます。

野田:この「SAS-3200」で日本光電様は当

社のマイコンを初めて採用されたのですが、海

外ベンダーに対するアレルギーはなかったの

ですか?

根木:私は、もともと国産・海外ベンダーも

含めて数種類のマイコンを使用してきたのです

が、国産マイコンベンダーの場合は、リスクの

高くない医療機器であることを理解していただ

くための手続きにかなり時間が必要だったと記

憶しています。日本光電は AED(自動体外式除

日本光電工業株式会社医療機器技術センタ

第四技術部次長

根木 潤 氏

測定画面例

携帯用無呼吸検査装置「SAS-3200」

も と ぎ

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細動器)を日本で作っている唯一のメーカーで

もあるのですが、AED となると国産ベンダーは、

より慎重な対応をしているようです。その点は

海外ベンダーのほうが融通が利くというか。

野田:そういったところは我々はフレキシブ

ルかもしれませんね。当社の場合も使用でき

ないアプリケーションがないとは言えません

が、個別にしっかりとお話をお聞きした上で、

お使い頂けるか判断しています。今回の「SAS-

3200」は弊社内のルールに照らして問題ないと

判断しています。

根木:それと ST の技術サポートですね。た

とえば大学でプログラミングの勉強をしたか

らといって、入社してすぐにマイコンを使える

かというと、そういう話にはなりません。や

はり開発環境の使い方を含めた習熟が必要で

す。新人たちのトレーニングを含めて野田さん

にはずいぶん助けてもらいました。

先ほど単三電池 2 本で 24 時間動作が要件と

ありましたが、消費電力はどのように見積もっ

たのですか?

田嶋:基本的な回路を設計し、基板を試作し

て、電池がどれぐらい持ちそうかというところ

をハードウェアチームで評価しました。その結

果、ST の「STM32F103」を間欠動作させること

で問題ないという結論を得ました。

事前のトレーニングを通じてスムーズな開発立ち上げを実現

ソフトウェアの開発はどのように進めたので

すか?

田口:ST のトレーニングでサンプルプログ

ラムの使い方などを学んでから開発に着手しま

した。私自身は ARM アーキテクチャを扱うの

は初めてだったのですが、開発環境に利用した

IAR システムズの「IAR Embedded Workbench」

の使い方を覚えるのに少し時間がかかったぐら

いで、とくに難しいという印象はなく、スムー

ズに取り組めたと思います。ソフトウェアとし

ては、OS にイー・フォースのμC3(マイクロ・

シー・キューブ)を使用しています。生体情報

の計測アルゴリズムなどは他の機器から移植し

ていますが、ほとんどの部分はゼロベースで開

発しました。

マイコンをスリープモードと通常モードで

切り替えながら使用するということで、決めら

れた時間内に処理を終えなければならない、と

いった課題にはどのように対応したのでしょ

うか?

田口:生体データのフィルタリング処理が

もっとも重いのですが、「STM32F103」は性能

的にまったく問題なく、規定の時間内に処理を

完了しています。最終データを SD カードに書

き込むところは、消費電力をできるだけ抑える

ために、書き込むデータサイズを大きくするな

どのチューニングをしています。

野田:ST では浮動小数点演算が可能な ARM

Cortex-M4 プロセッサを搭載した「STM32 F4」

シリーズも提供しているのですが、先ほどのア

ルゴリズム処理などは浮動小数点演算器があれ

ばさらに高速化できますか?

田口:今回の「SAS-3200」の場合はそこまで

の性能は要りませんが、別の製品では期待した

いところです。

根木:一部の医療機器には、たとえば DSP を

積んでフィルタリング処理をする場合もあるの

で、そういったアプリケーションには浮動小数

点がメリットになるかもしれませんね。

そのほか、開発で苦労した点はありますか?

田口:液晶ディスプレイの画面デザインに

は少し苦労しました。「SAS-3200」を使い慣れ

ていない医師や検査技師が見たときでも、一

目で状況が把握できなければならないからで

す。測定データを適切に表示しつつ、センサー

の装着不具合が検出された場合はその箇所と

エラーメッセージを表示するように、社内の

デザイン専門部署とやりとりをしながら画面

設計を進めていきました。

根木:たとえば夜間に看護師が巡回してセン

サーの外れが起きていないか確認できるように、

バックライトが消えている状態でも懐中電灯を

Success STORIESSTマイクロエレクトロニクス株式会社

当てて見えるような特殊なカラー液晶パネルを

使っています。医療従事者が使う製品ではそう

いった工夫が結構重要なんです。

アナログ回路も取り込んで進化するSTのSTM32ファミリ

ところでメディカル市場およびヘルスケア市

場は、エレクトロニクス業界をはじめとして多

くの業界から注目されていますね。

根木:厚生労働省は「セルフ・メディケー

ション」(健康の自己管理)を推進していますし、

人口分布の高齢化もありますから、医療機器に

求められる要件もこれから変わっていくことが

予想されます。また、参入障壁の低いヘルスケ

ア市場には、さまざまなメーカーが製品を投入

してくるでしょうね。

田嶋:そうした機器のハードウェアとしては、

バッテリで長時間動作するハンディタイプがひ

とつの流れとしてあるので、アナログ部分もデ

ジタル部分も、性能を維持しながら、消費電力

をいかに抑えていくかが課題になると思ってい

ます。

田嶋さんから低消費電力の話が出ましたが、

ST のローパワーに対する取り組みを聞かせて

ください。

野 田: 日 本 光 電 様 の「SAS-3200」の 開 発

スケジュールには間に合わなかったのですが、

ST では ARM Cortex-M3プロセッサを搭載し

ながらも消費電力を徹底的に抑えた「STM32

L1」シリーズを展開しています。今後は ARM

Cortex-M4 プロセッサや ARM Cortex-M0 プ

ロセッサを搭載したマイコンでも同様のローパ

ワー品を提供していく予定ですので、ぜひご検

討いただければと。

田 嶋: 消 費 電 力 が 鍵 と な る 製 品 に 対 し て

「STM32 L1」シリーズが効果的かどうかをすで

に検討しています。

ところでSTから新しい製品が出たそうですね。

野田:はい。これまで STM32 ファミリは、

ARM Cortex-M0 プロセッサを搭載した「STM32

F0」シリーズ、「SAS-3200」にも採用していた

だいた ARM Cortex-M3 プロセッサの「STM32

F1」シリーズ、同じく ARM Cortex-M3 プロセッ

サを搭載して動作周波数を高めた「STM32 F2」

シリーズ、ローパワーを志向した「STM32 L1」

シ リ ー ズ、ZigBee を 内 蔵 し た「STM32 W」シ

リーズ、ARM Cortex-M4 プロセッサを搭載し

たハイエンドの「STM32 F4」シリーズを展開

してきました。これらに加えて、2012 年 7 月に、

ΔΣ型 16 ビ ッ ト A/D コ ン バ ー タ や 5MSPS の

SAR 型 12 ビット A/D コンバータなどのアナロ

グ機能を充実させた「STM32 F3」シリーズを発

表しました。これにはコンパレータやオペアン

プ も 搭 載 さ れ て い ま す。 プ ロ セ ッ サ は ARM

Cortex-M4 ベースで浮動小数点演算も使えるた

め、デジタル信号処理に最適と考えています。

田嶋:それは面白そうですね。A/D コンバー

タのチャネル数など、詳しいスペックをあとで

教えてください。

マスではない組込み用途にこそベンダーの柔軟な対応力が不可欠

いい機会なので、ST になにかリクエストがあ

ればお願いします。

田嶋:細かい話になってしまいますが、「SAS-

3200」の場合では SDIO が 2 チャネル欲しかった

というのはあります。もっとも当社製品は数量

が出ないので、そういう要望を反映していただ

くのは難しいでしょうけれど。

野田:SDIO の 2 チャネル化は珍しいケース

とは思いますが、全世界にいらっしゃる弊社の

お客様の中にも同じニーズを持っておられる可

能性があるので、どんなご要望であってもおっ

しゃっていただければと思います。偶然、別の

お客様からも同じようなご要望をいただいてい

ますので、田嶋さんのご意見も社内で共有して

おきます。

田口:STM32 シリーズにはペリフェラルのい

ろいろなバリエーションはありますが、自分た

ちが本当に欲しい組み合わせが選べるといいか

なと思います。数が少ない私たちのような業界

のニーズにも対応してもらえると嬉しいなと。

究極は、ウェブ画面でペリフェラルをセレク

トして注文ボタンをクリックすると、一週間後

ぐらいに特注マイコンが手元に届く、みたいな

感じでしょうか。

田口:それはすばらしい(笑)。

野田:めちゃくちゃ値段が高くなりますよ

(笑)。

今回は ARM Cortex-M3 プロセッサを使って

携帯用無呼吸検査装置「SAS-3200」を開発さ

れたわけですが、今後の展望をお聞かせくだ

さい。

根木:ARMマイコンって使う側からすると選

択肢がものすごく広がるんですよ。こう言って

しまうと野田さんには申し訳ないんですが、自

分たちの製品に最適なマイコンをST以外のベン

ダーも含めて選べるようになったと。その意味

ではSTには常にいちばんいい製品を出し続けて

もらいたいなと思っています。あと、たとえば

プログラム実行と消費電力との関係がわかるよ

うに、マイコンベンダーには開発ツールベンダー

との連携を深めて欲しいですね。そうしたデバ

イスや環境を利用しながら、これからも優れた

医療機器を提供していきたいと考えています。

野田:そのときどきのマーケットでベストな

デバイスを的確に選択しているところに、日本

光電様が医療機器業界をリードしている理由の

ひとつがあるのではないかと感じます。今後も

私たち ST の製品をベストとして採用していた

だけるように、製品開発やサポートに努めてい

きたいと思っています。

本日はどうもありがとうございました。

Success STORIESSTマイクロエレクトロニクス株式会社

日本光電工業株式会社医療機器技術センタ第四技術部 技術課

田嶋 健一 氏

STマイクロエレクトロニクス株式会社MMSグループ

Microcontroller製品部アシスタントマネージャー

野田 周作 氏

日本光電工業株式会社医療機器技術センタ第四技術部 技術課

田口 剛 氏