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VoL.23 No.11 CHEMOTHERAPY 3365
Fosfomycin-Naの 呼吸器感染症 に対す る使用経験
大 山 馨 ・金 木 美 智 子
松 田 正 毅 ・清 水 隆 作
富山県立中央病院内科
さきにFosfomycin (FOM)の 基礎 と臨床について報告1)
したが,臨 床効果の検討は経 口投与に よるものであった.
今回はFOM-Naを 静脈内に投 与 して,そ の 臨床効果 に
ついて検索 を試みたので,結 果を報告す る。
1. 対 象 症 例
対象は当院内科 入院の11名 で,そ の 内訳は気管 支炎2
名,気 管 支拡張症3名,肺 感染症6名 の計11名 で,い ず
れ も入院時の最 初の抗 生物 質 としてFOM-Naを 選択 し
たが,こ れ らの症例には いわ ゆる重症感染症 は含 まれて
いない。
2. 投 与 方 法
使用 薬剤は静 脈注射用 のFOM-Naで あるが,1回 投
与量 は症例 に より1gま たは2gと して,12時 間間隔 で
静脈 内投与 を行な ったが,最 初の2回 までは予期 できな
い副作 用を考慮 して5%ブ ドウ糖250mlに 溶解 し,2時
間か けて点滴静注 を行 ない,異 常のな いことを確 かめ て,
3回 以降1g当 た り20%ブ ドウ糖20mlに 溶解 して静 脈
内注射 を行 な ったが,注 射速度 は1g5分 以上 をか けて
行 なった。
3. 成 績
治療 対象者,病 巣分離菌,FOM投 与量,症 状 の変化,
Table 1 Clinical trials with fosfomycin natrium (FOM-Na)
3366 CHEMOTHERAPY NoV.1975
治療効果,お よび副作 用についてはTable 1に 一括 表示
した。 なおFOMのMICは ホ スホマ イ シン小 委員 会法
に準 じて測定 した。
臨床効 果の判定は,臨 床症状 の消失 とと もに病 巣分離
菌 の 消 失 を も っ て 著 効(〓)と し,臨 床 症 状 の 改善 を もっ
て 有 効(+)と し,臨 床 症 状 が 変 わ ら な い で,病 巣 分離
菌 の 消 失 しな い もの,ま た は 前者 だ け の もの を 無効(-)
と し た の は 前 回 の 報 告1)と 同様 で あ る。
そ の 結 果,気 管 支炎2例 中1例 に,気 管 支拡 張症3例 中
2例 に 著 効 が み ら れ た 。 ま た肺 感 染 症(急 性 肺 炎)6例 中
4例 に 著効 が み られ,1例 は 有効 で あ っ た。す な わ ち,わ れ
Table 2 A case of acute pneumonia, T.S., 63y. M.
Table 3 A case of acute pneumonia, K.K.,
34 y. F.
Fig. 1 Case 6 (Sept. 15, 1974) Before treatment
Fig. 2 Case 6 (Sept. 23, 1974) 8th day of treatment
Fig. 3 Case 9 (Oct. 18, 1974) Before treatment
VOL.23 No.11 CHEMOTHERAPY 3367
わ れ の 試 み た11例 中 著 効7例(63 .6%),有 効1例
(9.1%),無 効3例(27.3%)で あ っ た。
次 に 著効 を示 した 主 な症 例 に つ いて 述 べ る。
症 例1 (CaSe 6)T.S., 63歳(Table 2)
臨床 診 断:急 性 肺 炎
主訴:発 熱,胸 痛
既 往 歴:特 記 す べ き もの な し
現 病 歴:昭 和49年9月12日,雨 に降 られ て帰宅 後,悪
寒 あ り,翌13日 に39℃ の 発 熱 を き た し近 医 を受 診,右
肺 の 広 い 陰 影 を指 摘 さ れ 入 院 をす す め ら れ た 。
入 院 時 現 症:体 温38.8℃,血 圧142/90,聴 診 上 胸 部 右 上
部 に ラ 音 を聴 取 し た。 胸 部x線 フ ィル ム(Fig.1)で は右
上 葉 全 般 に 広 く陰 影 を認 め た,血 沈 は1時 間 値99mm,
白血 球 数 は17,800で,入 院 当 日か らFOM-Nalgを1日
2回 投 与 した 。 なお 咳 漱 中 に 肺 炎 双 球 菌 を認 め た 。
経 過:FOM-Na投 与 後4日 目に は 下 熱 し,咳,疾 も消
失 し,い っぽ う,白 血球数,血 沈 も6日 後 に は 正常 値 に 近
づ き,9月23日,8病 日の 胸 部x線 フ ィ ル ム(Fig.2)で
は 陰 影 は ほ とん ど 消 失 し,起 炎菌 も認 め られ な くな っ た 。
12病 日に は 自他覚 的 所 見 は正 常 とな った 。
症 例2 (Case 9)K.K.,34歳 ♀(Table 3)
臨 床 診 断:急 性 肺 炎
主 訴:発 熱,全 身倦 怠
既 往 歴:26歳,肺 感 染 症
現 病 歴:昭 和49年10月14日 か ら 咳 と痰 が あ り38℃
の 発 熱 を き た し,次 第 に 全 身倦 怠 が 強 くな り,熱 もつづ く
の で10月18日 入院 した 。
入 院 時 現 症:体 温38.6℃,口 唇 に チ ア ノー ゼ を 認 め 血
圧120/86,胸 部X線 フ ィル ム(Fig.3)で は左 肺上 部 に 濃
厚 な 陰 影 が 広 くみ られ,右 上 中下 肺 野 に も散 在 す る 陰 影
が み られ た。赤 沈 は1時 間 値128mm,白 血 球 数 は19,800
を数 え た。
入 院1病 日か らFOM-Na2gを1日2回 投 与 した。熱
は 投 与 後3日 か ら下 降 し,自 覚 症 他 覚 症 状 と もに 漸 次 改
善 し,第14病 日 の 胸 部X線 フ ィ ル ム(Fig.4)で は 左
Fig. 4 Case 9 (Oct. 31, 1974) 14th day of treatment
Table 4 Liver function tests
Fig. 5 Case 9 (Nov.9, 1974) 23rd day of treatment
3368 CHEMOTHERAPY NOV.1975
上肺 野の陰影は よ く吸収 されてお り,さ らに23病 日の胸
部X線 フィルム(Fig.5)で は,全 般 に,さ らに陰影 の減
少がみ られ,白 血球数,赤 沈値 は ともに正常であ り,自 他
覚 症状 は安定 していた。
4. 肝機能検査(Table4)
FOMの 投 与に よりGOT, GPTの 上昇 がみ られ るこ
とが あ る2)と報 告 され て い るので,わ れ われ は と くに
FOM-Naの 投 与 を行 なった11例 の 肝機 能検 査 の 成績
を ま とめ てみ た。 その結 果,第5症 例 に お いてGOT,
GPTの 上昇がみ られ た。この症例 はFOM-Na投 与前に
GOT, GPTは それぞれ42,28で あったが,治 療1週
間後か ら上昇がみ られ,治 療終 了時 はGOT118, GPT
92で あった。この例 はFOM-Na投 与終 了後3週 間の検
査成績 ではGOT, GPTと も正常範 囲に落着 いた。
他 の10例 は全 く異常 を認めなか った。
5. 副 作 用
副作 用2)と しては,下 痢,発 疹,血 小板減 少,軽 度腎障
害,GOT, GPTの 上昇 な どが考慮 され ているが,わ れわ
れ の症 例 で は1例 にGOT, GPTの 上 昇 が み られ た以 外,
下 痢,発 疹,血 小 板 減 少,腎 障 害 な どは み られ な か っ た 。
ま た静 脈 注射 時 不 快 感 を訴 え る症 例 もあ る よ うな 報 告 も
あ っ た が2),わ れ わ れ は 注 射 に 比 較 的 時 間 をか け た ため
か,注 射 時 の 不快 感 を訴 え る もの は なか っ た。
ま と め
わ れ われ は11例 の 呼 吸 器 感 染 症 を対 象 と して,FOM
-Naの 臨 床 効 果 を検 討 した が,そ の結 果,著 効 の み られ た
の が7例(63.6%),有 効 で あ っ た の が1例(9.1%),無 効
3例(273%)で あ った 。
副 作 用 と して は1例 にGOT, GPTの 軽 度上 昇 が み ら
れ た。
文 献
1. 大 山 馨,日 比 輝 彦,福 田完 治,金 木 美 智 子,清 水
隆 作:Fosfomycin capsuleの 基礎 的,臨 床 的 検 討 。
Chemotherapy 23: 1733~1738, 1975
2. 第22回 日本 化 学 療 法 学 会 西 日本 支 部 総 会,ラ ウ ン
ドテ ー プ ル デ ィ ス カ ッ シ ョン 「静 注 用Fosfomycin
(FOM-Na)の 評価 」。Chemotherapy 23,: 3226~3231,
1975
CLINICAL STUDIES ON FOSFOMYCIN-NA
KAORU OYAMA, MICHIKO KANAKI,
MASAKI MATSUDA and RYUSAKU SHIMIZU
Toyama Prefectural Central Hospital
A new antibiotic, fosfomycin-Na (FOM-Na) was administered clinically at a daily dose of 2 •` 4 g for 5 •` 20
days to 11 cases in total consisting of respiratory tract infection.
The administration method was all of intravenous injection, which was performed twice a day.
The following results were obtained : FOM-Na was effective in 7 cases (63.6%), slightly effective in 1 case
(9.1%), and ineffective in the other 3 cases (27.3%).
As a side effect, slightly elevated GOT and GPT were observed in one case.