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正常およびtetragastrin刺 激後 のラ ッ ト

胃壁細胞 の走査 および透過電子顕微 鏡的研究

岡山大学医学部第一外科教室(指 導:田 中早苗教授)

大 沢 亙

(昭和53年2月15日 受稿)

第1章  緒 言

哺乳 動 物 の 胃粘 膜 の上 皮 細 胞 は,既 に機 能 お よ び

形 態 学 的 に,表 在上 皮 細 胞,副 細 胞,壁 細 胞,主 細

胞, caveolated cellと,数 種 類 の 内分 泌 細 胞 よ り

な る こ とが近 年 明 らか とな った.そ の うち,特 に塩

酸 を分 泌 す る と い う特 有 の機 能 を持 つ壁 細 胞 は,光

顕 的お よ び電 顕 的 に も既 に諸 家 によ り多数 の報 告 が

み られ る.

す な わ ち,胃 の 壁 細 胞 の形 態 に関 す る研 究 は1870

年Heidenhainの 光 顕 的 観察1)に 始 ま り,電 顕 的 観

察 は1951年Dalton2)に よ りラ ット胃 腺 構 成 細胞 につ

いて な され た.

また ヒ トの 胃 壁 細 胞 につ い て は, Rubin3), Rosa4)

ら他 の 報告5) 6)が あ り,一 方 種 々 の 動物 を使 用 して,

histamine4) 6)-12), insulin9) 13), pentagastrin13),迷 走 神

経 刺 激9) 14),食餌15), atropine6) 13), reserpine13)等 投与 に

よ る 胃液 分 泌刺 激 あ る いは抑 制 後 の 壁 細 胞 の形 態 的

微 細 構 造 の変 化 も報 告 され て い る.

そ して これ ら諸 家 の 研 究 に よ り,塩 酸 を分 泌 す る

とい う特 有 の機 能 を有 し胃底 腺 領域 に広 く分 布 して

い る壁 細 胞 は,微 絨 毛 を有 す る細胞 内分 泌 細 管(sec

retory canaliculusあ るいはintracellular cana

liculus)が 胞 体 内 に よ く発 達 し,ま た 胞 体 内特 に こ

の分 泌 細 管周 辺 に は,細 い管 状 あ るい は球 状 構 造 の

小 孔,す なわ ちtubulovesicleが 存 在 し,ま た球 型

の 糸粒 体 が多数 存在 す る特 異 の 構造 を有 す るこ と が

明 らか とな った.そ して これ ら特 異 な構 造 と塩 酸 分

泌 との関 連,さ らに この 細 胞 内 分 泌細 管 とtubulov

esicleと の 関 係,特 に両 者 間 の 相互 の膜 の連 続 性 の

問 題 等 を明 らか にせ ん と して の 種 々 の研 究 が な され

て い る.す な わ ち, Sedar9)やLeeson15)は 透 過 電 顕

的 観察 に よ り, Leeson17)やIto & Schofield13)は 凍

結 エッチ法(freeze etch method)に よ り,さ らに

Ito & Schofield13)はtracer法 によ り研究 している

が, tubulovesicleと 細 胞 内分泌細管 の関連 に関 し

ては,未 だ決定的 な報告 はみ られていない.

一方 ,最 近 にな り細胞 内面 を三次元的 に観察す る

走査電顕観察 のための試料作製方法 の開発 がな され

てい る.す なわち,固 定標本 を引 きさいた り,割 断

の方 法 によ りSteinberg15)は1973年 網 膜 細胞 を,

Miller & Revel19)は1974年 小腸 ・胆嚢 な どの上皮

細胞を, Motta & Porter20)は1974年 肝細胞 の内面

を観察 した.ま た凍結割断法 によ り, 1970年Hag

gis21), 1971年Germinario & McAlear22)は 網膜 を,

1973年Brooks & Haggis23)は 肝細胞 を割断 す るこ

とに よ り細 胞 内面 を観察 し, 1972年 田中24)は凍結

樹脂割断法, 1974年 にはスチ レン樹 脂割断 法25)を,

1974年 徳永 ら26)はDMSOを 使 用 しての凍結割断法

を開発 し,報 告 した.

しか し,未 だ凍結割断法 による胃壁細胞の三次元

的な詳細な報 告はな く,著 者 らは既 に凍結割断法 に

よるラ ット胃腺細胞,特 に壁細胞の走査電顕的所見

を報告 して きた27)-31).そこで今回著者 は,この徳永 ら

による凍結割断法26)によ り,正 常 およびtetragas

trio胃 液分泌刺激剤 投与 後の ラット胃体部粘膜 を割

断 し,割 断 した壁 細胞 を電 界放射型走査電顕 で三次

元的 に観察 した結果,壁 細胞 内構 成要 素の形 態学 的

微 細 構造 の変化,細 胞内分泌細管 とtubulovesicle

の膜 の連続性 が形態学 的に明 らか とな ったので,ラ

ッ ト壁 細胞 の正常 所見 とと もに透 過電顕所見 と併せ

て詳細 に報告 す る.

第2章  実験材料 と実験方法

実験 材料 としては,平 均体重約250gのWistar系

雄 ラ ットを用 いた.ラ ッ トは24時 間絶 食 させ るが,

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662  大 沢 亙

水 分 は 自 由 に させ た.

この絶 食 ラ ッ トを正 常 群 と し,他 方 この24時 間 絶

食 ラッ トに 胃液 分 泌刺 激 剤 と してtetragastrin(日

水 製 薬 株 式 会 社 製)125μg/kgを 腹 腔 内 注射 後,夫

々30, 60, 90分 後 に エ ー テル麻 酔下 に て 開胸 ・開 腹

し たの ち,胸 部 大動 脈 よ り リン ゲル 液 にて還 流,次

い で2%グ ル タ ール アル デ ヒ ド, 2.5%パ ラア ル デ ヒ

ド固定 液, pH 7.4カ コ ジール 酸 緩衝 液 注 入 固定 後,

胃 を摘 出 した.

SEM用 標 本 として は,摘 出 した 胃 は,上 述 の 固

定 液 で数 日間 固 定 す る.固 定 した 胃体 部 粘 膜 は,徳 永

らの方法26)に 準 じ40% dimethyl sulfoxide (DMSO)

に浸 した の ち,液 化窒 素 中 で凍 結 した の ち割 断 した.

次 い で上 昇 ア ル コ ール 系列 に て脱 水,酢 酸 イ ソ ア ミ

ル で置 換後,日 立HCP-1型 臨 界点 乾 燥 機 を用 い て

臨 界点 乾 燥 した.な お一 部 の割 断 標 本 に はEIKOイ

オ ン コー ターIB-1型 で イオ ンエ ッチ ン グ を行 な っ

た が,エ ッチ ングを行 な わ な か っ た標 本 もいず れ も,

EIKOイ オ ン コー ターIB-3型 で 約20nmの 厚 さに金

蒸 着 を行 ない,電 界 放 射 型 走 査電 子 顕 微 鏡(Hitachi,

HFS-2)(FE-SEM)で 観 察 した。

ま た走 査電 顕 所 見 と比 較 検 討 す る 目的 で上 述 の 固

定 切 片 を, pH 7.4の0.2Mカ コ ジー ル酸 に て数 回 洗

浄 後,同 じ緩 衝 液 の2%オ ス ミウ ム酸 で1時 間 固定

し,ア ル コ ー ル脱 水 の 後, Epon 812に 包 埋 した.

thick sectionは トル イ ジン ブ ル ー で染 色 光 顕 し,

thin sectionは 酢 酸 ウ ラ ン鉛 に て重 染 色 し,日 立

HU-11型 電 子 顕微 鏡(TEM)で 観 察 した.

第3章  観 察 結 果

正 常 お よ びtetragastrin刺 激 剤 投 与 後 の ラ ッ ト

胃壁 細 胞 の 超 微 細形 態,す な わ ち細 胞 内 分 泌 細管,

微 絨 毛, tubulovesicleな どの所 見 は個 々 の壁 細 胞

に よ り多少 の 差 異 はみ られ た が,壁 細 胞 の 割 断像 に

よ る走 査 電 顕 的 お よ び透 過 電 顕 的 所 見 に よ り平 均 的

と考 え られ る所 見 を記 載 す る.

第1項  正 常 壁 細胞 の割 断 像

壁 細 胞 は,特 徴 的 な細 胞 内 分 泌細 管 の存 在 によ り,

他 の 胃腺 外 分 泌 細 胞 とはFE-SEM像 で も容 易 に鑑

別 し えた.

細 胞 内分 泌細 管 は,そ の内腔 に多数 の 長 さ約0.6μ,

巾約0.2μ の密 在 す る 微 絨 毛 を有 し,胞 体 内 に深 く

彎 入 して い る(図1).一 方,胞 体 内 特 に分 泌 細 管

周 辺 には, tubulovesicleに 一 致 す る と考 え られる

小 孔 が 多数 存 在 し,こ のtubulovesicleの 中 に は,

小微 絨 毛 を有す るもの も認め られ る(図1矢 印).

また直径 約4μ の楕 円形 の核,直 径約0.6μ の類球

型の糸粒体が多数堆積 して存在す る(図1).

なお割断後,イ オンエ ッチングを行 なった標本 と

行 なわなか った標本 の間 には差異 がみ られた.す な

わち,イ オンエ ッチングを行 なってない標本 では,

核 は一般 にその表面 に軽度 の凹凸 が観察 され るにす

ぎな いが,割 断表面 に軽度の イオンエ ッチ ングを行

な うと,核 の 表面 に は凹凸以外 に直径0.03-0.06μ

の多数 の小孔す なわ ち核 孔 が認 め られ る(図2).

さらに細胞 内分泌細管 およびその細管 内に存在す る

微絨毛 はイオンエ ッチングに対 して影響 を受 けてい

ないが,そ の他 の胞体 内成分 はかな りイオンエ ッチ

ドされ て い る(図2).な お この イオ ンエ ッチング

法の有効性 は,主 細胞 の観察 に際 して発 揮 され る.

すなわ ち割断 のみでは観察 は困難 であ るが,イ オン

エ ッチ ングを行な うと容 易に認 め られ る.約4μ の

楕円形 の核,そ の核の表 面 には凹凸以外に多数 の核

孔が認 められ るとと もに,こ の核 を取 り囲むかの ご

と く,巾0.07-0.1μ,そ の間隔 が約0.02μ の層 状構

造物,す なわ ちよ く発達 した粗面小胞体 が観察 され

る(図3).

細胞 内分泌細管 は,割 断 され る方向,部 位 によ り,

その大 きさ ・型 ・走 行が異 なって観察 される.細 胞

内分泌細管 が縦の方向 に割断 された場合 は,図4の

ごとく,細 胞 内分泌細管 は胃腺腔 に直接開 口 し,一

方では胞体 内に深 く彎入 し細胞 基底部近 くまで,途

中分岐 を しなが ら達 してい る.ま た細胞内分泌細管

が輪切 りの方 向に割断 された場合に は,図5の ごと

く,そ の割断面は原則 と して円型で ある.

なお細胞内分泌細管 は,塩 酸分泌のサ イクル等 と

呼応 して,そ の大 きさや微絨毛 の大 きさ等 に変化が

み られるよ うで ある.す なわ ち図6で 右下の細胞内

分泌細管 は密在す る長 い微絨毛 を有 し,こ の微絨毛

によ りその内腔 は閉鎖 されてい るが,中 央 の細胞 内

分泌細管 は微絨毛 も非常 に少 な く,細 管腔 の直径 も

広 くあたか もこの両者間 を分離 して いた隔壁 が消失

した結果,一 つの大 きな細胞内分泌細管 として観察

された と推定 され る.さ らに左上部 の細胞 内分泌細

管 は,数 個 の隔壁 によ り分割 された種 々の大 きさの

細胞 内分泌細管 に分割 され,あ たか も.「蜂 の巣」状

の外観 を呈す る.一 般 に分割 された比 較的大 きい分

泌細管 は微絨毛 も比較 的長 いが,中 程度の大 きさの

分泌細管 では微絨毛 の長 さも中程度 で ある.さ らに

小 さい分泌細管 では微絨毛 は よ り一層短か い.特 に

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正常およびtetragastrin刺 激後の ラッ ト胃壁細胞 の走査お よび透 過電子顕微鏡的研究  663

中央の太矢印 で示す直径 約0.2μ の非常 に小 さい細

胞内分泌細管 内には,胞 体 内のtubulovesicleが そ

の中 に有す る小微絨毛 と同 じ形態 を示す約0.12μ の

極 めて小 さい微絨毛 が存在 す る.ま た細胞 内分泌細

管 とこの細管 に隣接 したtubulovesicleが 融合 し,

相継 いで起 こる融合膜の消失 によ り,さ らに大 きい

細胞内分泌細管 が形成 されてい るかのごと く観察 さ

れた(図6矢 印).

一般 に細胞 内分泌細管腔には多数 の微絨毛がみ ら

れるが,そ の大 ききや方向,分 布密度等 は差異がみ

られ る.す なわち一般 に長 さは約0.5-0.6μ,そ の巾

は0.1-0.2μ であ り,先 端 に行 く程太 くな り,あ た

か も棍棒 状 を呈 する.し か し微絨毛 の大 きさにはか

な りの差 異がみ られ,走 行 も必ず しも一定 でな く,

先端が屈 曲 した り,途 中で枝 分れをする微絨毛 も存

在す る(図9).細 胞 内 分泌 細管 内に密在す る微絨

毛 を透 過電顕 で比較観察す ると,図8の ご とく,一

定方向 に走 る密在す る微絨毛 が観察 される.

一方,割 断 された壁細胞で細胞 内分泌細管の周辺

には,通 常の細胞 内分泌細管腔にみ られる微絨毛 よ

りや〓 小 さい微絨毛 が,密 に堆積 しているよ うな像

が観察 され ることがある.す なわ ち図10を みると,

細 胞 内分 泌細 管周辺 には長 さ約0.6μ,巾0.05μ の

や〓小 さい微絨毛様構造物が密 に配列,堆 積 し,そ

の先端 は丸味 を帯 びている像が観察 され る.ま たこ

の微絨毛様構造物の間 には間隙 も存在 す る.図10の

ごとく観察 され る細胞 内分泌細管周辺 の微絨毛様構

造物 を水平 に割断 し,そ の割断表面 を観察 した と考

えられる像が図11で ある.す なわ ち図11の 右下方 に

は,通 常の細胞内分泌細管 と微絨毛 が観察 されるが,

その周辺 の胞 体 内には直径 が約0.04-0.08μ の半球

形 の顆粒状構造物が密 に詰 まったかの ごとく観察 さ

れ るが,こ の顆粒状構造物 は図10で 示 した微絨毛様

構造物 が水平 に割断 された結果観察 され たものと推

察 され る.ま た図11の 矢印 で示す小孔は,図10で 示

した微絨毛構造物の間隙に一致す る所見 と考 えられ

る.こ のこ とよ り,細 胞 内分泌細管の周辺 には,細

胞内分泌細管腔 に突 出す る微絨毛 に生長す ると考 え

られ る正常微絨毛 よ りや1細 い小微絨毛が,比 較的

密 に堆積 して存在 してい ると推察 される.

一方,胞 体 内特 に細胞 内分 泌細 管周 辺 に直径約

0.05μ の多数の小孔がみ られるが(図1),そ の型,

大 きさ,分 布状態か らして透 過電顕 で報告 されて い

るtubulovesicleに 一致す ると考 えられ る.さ てこ

のtubulovesicleに ついて, FE-SEMの 三 次元的

観察 によ り極 めて興 味ある所見 がみ られた.す なわ

ち,ま ず このtubulovesicleは 細管腔 に直接開 口 し

てい ると考 え られ る像 が観 察 され た(図7).ま た

このtubulovesicleの 中 には,細 管腔 に直接突 出す

る小微 絨 毛 を有 す る もの も存在 す る.こ の所見 は

tubulovesicleのTEM像 で も観察 された.

なお透過電顕的 に壁細胞 の糸粒体 は小楕円形 で,

その 内にはcristaeが 観察 され るが,割 断像 による

観察 では,直 径約0.6μ のほ〓球形像 として観察 さ

れる(図12).

第2項  tetragastrin刺 激後 の壁 細胞 の超微細

構造 の変化.

胃液 分泌 刺 激剤 で あるtetragastrin投 与後の ラ

ッ ト壁細胞 を経時的 に観察 したが, tetragastrin投

与30分 後 に著明 な変化 が観察 された(図13, 14, 15).

すなわ ち,一般 に細胞内分泌細管腔の直径 は増 し,

微 絨 毛の長 さは約0.7μ とや ~長 くなる.正 常壁細

胞 の胞体 内に散在 していたtubulovesicleは,細 胞

内分泌細管 および糸粒体周辺 の胞体 内にその数 が非

常 に増加す る.ま たその大 きさは, 0.04μ よ り0.2μ

位 で,型 も球型 に近 い ものや全 く不規則 な もの もみ

られ る(図14)-一 方,細 胞 内分 泌細管 腔に接 した

胞体 内の増加 したtubulovesicleは,直 接細管腔 に

開口 してい る像 が認 め られ る(図14).

またtetragastrin刺 激後30分 の壁細 胞 を強 拡大

で観察 す ると, tetragastrin刺 激 によるtubulove

sicleの 膜 の動 態 と考 えられ る興 味あ る所見がえ ら

れた(図15).す なわ ち,隣接 したtubulovesicle間

に接近が起 こ り,そ の結果両者の膜の融合すなわ ち

膜 の五層 形 成(図15太 矢印),あ るい は,こ の過 程

を経過 して融合膜の消失 の結果起 こる膜の三層形 成

(図15小矢 印)を なして いる と推察 され る.こ れ ら

膜の融合,相 継 ぐ膜 の消失 の過程 の結果,さ らに一

層大 きくなったtubulovesicleや,こ の融合膜 が消

失 にはいた らず途 中で回転様屈曲 をお こした りす る

の も観察 される.た だ この所 見 を解釈 す る場合 これ

らのFE-SEMの 試 料表 面 は約20nm厚 の金蒸着 を

施行 してお り,こ の蒸着 膜の表面 を観察 して いるこ

とを忘 れてはな るまい.し か し,普 通,膜 の厚 さは

約5nmと され,蒸 着膜 が20nmと す ると,本 研究 で

は平均膜 の厚 きが25nmで 観察 された点 や, tetrag

astrin刺 激 を行 なって ない対照標本 では,膜 の融合

や消失 所見が乏 しい点 を考慮す ると,一応FE-SEM

像 を通 して膜の融合 ・消失 を強 く推定 す ることは可

能で あろ う.ま た,こ の拡大 したtubulovesicleに

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664  大 沢 亙

は 各 々0.08-0.12μ の小 微 絨 毛 が 存 在 し,こ の 小微

絨 毛 膜 とtubulovesicle膜 との 間 に は直 接連 続 性 が

存 在 す る.

上記 の ご と く, FE-SEM像 の み で は,膜 の 融 合

の 解釈 は 不十 分 で あ るの で 同時 期 のTEM像 を 観察

した.す な わ ち, tetragastrin刺 激30分 後 の 壁 細胞

を透 過 電 顕 で比 較検 討 して み る に,走 査電 顕 所 見 と

同 様,特 に細 胞 内分 泌 細 管周 辺 に 著 明 にtubulove

sicleの 数 や 大 き さが増 して い る(図16).さ らに,

図15で み られ たtubulovesicle膜 と,そ の 中 に 存 す

る小微 絨 毛 膜 の直 接 の膜 の 連 続 性 を透 過電 顕 で 観察

して も,図17の ご と く,明 らか に膜 の 連 続 性 が 証 明

され た.

刺 激30分 後 の 壁 細 胞 の 胞 体 内 に,既 に大 き くな

ったtubulovesicleに 二 つ の小 さなtubulovesicle

(V1とV2)が 接 近,融 合 して い る像 が 観 察 され る

(図18).す なわ ち, V1で 示 す 小 さなtubulovesicle

とV3で 示 す大 きなtubulovesicleと の 間 に は,お 互

い に接近 し膜 の融 合,す な わ ち五 層形 成 を な し,他

方V2とV3で 示 すtubulovesicle間 で は,膜 の 融 合

・消失 の 結 果 三 層 形 成,い わ ゆ るunit membrane

を形 成 して い るか の ご と く観 察 され る.こ の 隣 接 膜

の 融 合 ・消失,さ らに相 継 ぐ膜 の 消 失 の 結 果,さ ら

に大 きなtubulovesicleが 形 成 され る もの と推 定 さ

れ る.ま た,細 胞 内分 泌 細 管 周 辺 の 胞 体 内 に存 在 す

るtubulovesicleは 分 泌 細 管 に接 近 し,そ の 結 果 隣

接 膜 の 融 合 が起 こ り,続 い て起 こ る融 合 膜 の 消 失,

さらに 起 こ る膜 の 消 失 の結 果,こ のtubulovesicle

は細 胞 内 分 泌 細 管腔 に直 接 開 口す る よ うに な る(図

19).細 胞 内分 泌 細 管 と これ に隣 接 す るtubuloves

icleの 間 の 膜 の 融 合,相 継 ぐ膜 の 消失 に よ り開 口す

る場 合, "central knob"を 示 す こ とが あ る こ と も

観 察 され た(図20).

一 方,胞 体 内 の 糸 粒 体 の大 き さは,約0.6μ と正

常 群 と比 較 して 大 き さ ・型 の変 化 が認 め られ な い.

こ の所 見 よ りtetragastrin投 与 に よ り糸 粒 体 は影

響 を受 け な い と推定 され る(図13).

以 上,胃 液 分 泌 刺 激 剤tetragastrin投 与 後 の壁

細 胞 の 変 化 につ き述 べ た が, tetragastrin投 与 後 の

ラ ッ ト壁 細 胞 の 割断 像 に よ る走 査 電 顕 的 観 察 と透 過

電 顕 的 観 察 に よ り得 られ た 所 見 を模 式 図 で示 す と図

22の ご と くで あ る.す な わ ち,壁 細 胞 の胞 体 内 に存

在 す るtubulovesicleは,胃 液 分 泌 刺 激 が加 わ る と,

細 胞 内分 泌 細 管 膜 に移 行 し始 め る と同 時 にtubulo

vesicleは 大 き くな り,そ の 中 の あ る もの に は 小 微

絨毛 が出現 し,ま た隣接 したtubulovesicleの 膜 は

接近 ・融 合す るよ うにな る.そ して次第にtubulo

vesicleと 細 胞 内分泌細管膜が接近 し,そ の結果膜

融合,す なわち五層膜 を形成す る.続 いて起 こる融

合膜 の消失 の結果, tubulovesic1eと 細胞 内分 泌細

管膜 との間 に三層膜 を形成 し,次 いで起 こる膜 の消

失の結果, tubulovesicleは 細胞 内分泌細管 に開 口

し, tubulovesicleが 小微 絨 毛 を有 している場合 に

は分泌細管 内に新 しい微絨毛 が出現 し,微 絨毛 を有

しないtubulovesicleが 分泌細管 に開 口 した場合に

は,分 泌細管縁 の切 れ込 み として観察 される.さ ら

に胞体 内で数個 のtubulovesicleが 融合 した結果,

大 きく複 雑 な外観 を呈す るよ うになったtubulove

sicleが 細 胞 内分泌細管 に開口 した場合 には,既 存

の分泌細管 よ りも一層大 きく,微 絨毛 の数 も増 し,

分泌細管 は複雑 な切 れ込 みを有 した細胞 内分泌細管

として観察 され る.

第4章  考 察

走査電子顕微鏡 によ る組織の観察 は,初 期 の段階

では主 に表 面構造 に限 られていたが,次 第 に組織 や

細胞 の内部 の立体構 造の観察へ と進 んで きた.そ の

ため に工夫 きれた実質 性臓 器内部,細 胞 内構造 の剖

出法 には,組 織を安 全カ ミソ リの刃等 で切断 す る方

法,種 々な条件下 で割断 す る方 法,エ ッチ ング法の

三つがあ る.

この うち,固 定 組織 をカ ミソ リの刃 で切 った切断

面の構造は,組 織細胞の破 壊が大 き く良好な観察 面

が得 られ難 い欠点があり,ま た固定試 料を折 った り,

ひき さいた りす る方法 は,細 胞 あるいは細胞 内小器

官の境界面や膜面 に沿 った面が得 られ易 い長所が あ

る.

また割断法 と して 凍結 割 断 法 が 開発 され ている

が,こ の方法で は,凍 結乾燥後 の観察面 の氷晶形成

による障害 が問 題 とな って くる.こ のため,田 中24)

はCemedine 1500 (epoxy resin)を 利用 す る凍結

樹脂割断 によ り犬膵臓 を割断,観 察 し,ま た最近に

な り室温 で行 なえ るスチ レン樹 脂割断 法25)を報告 し

てい る.一 方,徳 永 ら26)は,凍 結 防 止剤dimethyl

sulfoxide (DMSO)を 使用 して の凍 結 割断 法 によ

り,ラ ッ トの腎臓 とヒ ト脾臓 を割断 し,観 察 した結

果, DMSOを 用 いての割断 は,細 胞 表 面や 細胞 内

の膜系 に沿 って割れ る傾 向が強 いと報告 してい る.

そ こで本研究 で は,徳 永 ら26)によ る凍結割断法 を

用いて,ラ ッ ト胃粘膜 を割断 し,外 分泌細胞 の一 つ

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正常 およびtetragastrin刺 激後の ラッ ト胃壁細胞の走査お よび透過電子顕微鏡的研究  665

である壁細胞 の三次元 的な微細構造 と, tubuloves

icle,微 絨 毛,細 胞内分泌細管 の関係 につ いて,特

に胃液分泌刺激剤投与後 の変化等 につ き,電 界放射

型走査電顕 を用 い高倍率 で観察 し,ま た透 過電顕に

よる観察 も同時 に行な った.

なお一部 の標本 には イオ ンエ ッチングを行な った

後観察 したが,壁 細胞 の割断面 に弱 いイオンエ ッチ

ングを行な うと,イ オ ンエ ッチングを行なわない場

合 に凹凸のみ観察 された核 の表面 に多数の核孔,あ

るいはイオンエ ッチ ング施行例 のみ主細胞が観察 さ

れるよ うにな る.こ れはイオン衝撃 によ り試料の局

所的な緻密 性や物質構成の差 による もので あ り32),細

胞 内の膜構造 がイオンエ ッチングに対 して比 較的抵

抗が強 く,細 胞質の方 は抵抗 が弱 くエ ッチ ングされ

やすいためであ る33)と考 えられる.

壁細胞の最 も大 きな形態学 的特徴 は,胞 体内に深

く入 りこんでい る細胞内分泌細管 とされて いる.こ

の細胞 内分泌細管 を走査電顕で三次元的 に観察 す る

と,細 管腔 に突 出 した密 在す る微絨毛 を有 し,胞 体

内に深 く,時 に細胞底部近 くまで,時 に分岐 しなが

ら彎入 し,一 方では胃腺腔に直 接開 口す る.

Bloom & Fawcett34)は,透 過電顕的観察 によ り,

この細胞 内分泌細管周辺の胞体 内に小 さい渦巻形 の

tubuleの 存在 を報告 して いるが,こ れ はItoら13)の

報告 したtubulovesicleに 相当す る.走 査電顕的 に

は,こ のtubulovesicleは 円形 や不 整形 の 直径 約

0.05aか ら0.1μ の小 孔 として胞体 内,特 に細胞内

分泌細管周囲 に多 く存在 して いた.本 研究 の走査電

顕的観察では,胃 液分泌刺激剤 を用いない正常の壁

細胞で もtubulovesicleが 細胞内分泌細管腔 に直接

開 口している像が少数認 め られたが,こ の問題 は後

で詳述 する.

なお,壁 細胞の走査電顕的観察で極 めて注 目すべ

き所 見 は, tubulovesicle内 にしば しば大 きさは細

胞内分泌細管中の微絨毛 に比較す ると小 さいが,形

態は全 く同様の小微絨毛の 出現が観察 された ことで

ある.一 般 にこの小微絨毛の 出現は,胃 液分泌休止

期では散発的で あるが,特 に胃液分泌刺激剤 であ る

tetragastrin投 与30分 後で は, tubulovesicleの 数,

大 きさが増 しその中の小微 絨 毛 の 出現頻 度 も増 す

(図15).こ のtubulovesicle中 の小微 絨 毛の出現

の観察 は,今 までのTEMの 論文で は全 く記載 され

てお らず,今 回の走査電顕 によ り初 めて明 らか とな

った ものであ る,た だRubinら3)は,ヒ ト胃壁細胞

のtubulovesicleの 中 に小顆粒の存在を観察 し,こ

れ は細 胞 間 質 と同 じ電 子密 度 を有 し, unit membrane

で 囲 まれてい る と報 告 して い るが,お そ ら くこれ は,

小 微 絨 毛 の 横 断 像 を観 察 した もの と推 定 され,本 研

究 のTEM像 で も,同 様 の 小 微 絨 毛 の 横 断 像 と考 え

られ る像 や,ま た 縦 断 と考 え られ る像(図17)も 観

察 され た.な お 今 回 の 走 査 電 顕 的 観 察 に よ り, tub

ulovesicle中 の小 微 絨 毛 膜 はtubulovesicle膜 と連

続 性 を有 し(図15),透 過 電 顕像(TEM)で もtub

ulovesicleの 中 に存 在 す る小 微 絨 毛 は,お 互 いの 膜

の 連続 性 を有 して い る こ とが 確 認 され た(図17).

Ito & Schofield13)に よ る と,胃 液 分 泌 刺 激剤 で

あ るpentagastrin腹 腔 内 注 射 後,そ の影 響 は40分

以 内 に起 こ り2時 間 持 続 し,細 胞 形 質 内 のtubule

は完 全 に,あ るい は殆 ど完 全 に 消失 し,細 胞 内 分 泌

細 管 は一 般 に著 明 に長 くな った微 絨 毛 で被 わ れ て い

る と述 べ て い る.著 者 の 研究 で は, tetragastrin投

与30分 後 で は, tubulovesicleの 増 加 が 観 察 され た

が, 45分, 60分 後 で はtubulovesicleが 減 少 して い

る こ とよ り,マ ウ ス と ラ ッ トの 実験 動物 の差 が あ る

に して も,瀬 尾 ら95)に よ りHeidenhain pouch dog

に お け るpentagastrinとtetragastrinの 連 続 投与

実 験 に よ る酸 分 泌 量 には差 が み られ な い と報告 して

い る こ とか ら,刺 激剤 投与 に よ る時 間 的影 響,す な

わ ち投 与 しば ら くはtubulovesicleが 増 加 す るが,

そ の後 は次 第 に減 少 す る もの と推 定 され た.

tubulovesicleと 細 胞 内 分 泌 細 管 の 関 係 は,現 在

な お不 明 で あ る が,特 に細 胞 の 塩 酸 分 泌 機 能 に お け

る両 者 の関 係 は重 要 な問 題 で あ り,そ の 解 明 の た め

に細 胞 内分 泌 細 管 とtubulovesicleの 関 係,膜 の連

続 性 に つ い て の研 究 が種 々 な され て い る.

Leeson17)は 凍 結 エ ッチ ング法(freeze-etch stu

dy)に よ り, tubulovesicleの 膜 面 は微 絨 毛 の膜 面

の逆 転 で あ る と し, tubulovesicleは 原形 質 膜 のin

versionに 由来 し,微 絨 毛 は細 胞 形 質 のcoreを 有

す る原形 質 膜 の管 状 のeversionで あ る と報 告 し,

さ らにtubulovesicleは 原形 質 膜 由 来 の ものであ り,

細 管 内 の微 絨 毛 と細 胞形 質 内 のtubulovesicleの 全

体 の 膜 の 表 面 は, ion-exchangeの た め に必 要 な広

範 な表 面 で あ ると報 告 して い る.さ らにLeeson16)は,

液体窒 素 を用 い た急 速 凍 結 に よ り分 泌 細 管 とtubu

lovesicleの 膜 の 間 の 連 続 性 を指 摘 し,こ の こ とは

tubulovesicleが 原 形 質 膜 由来 で あ り,壁 細 胞 の分

泌 サ イ クル 時tubulovesicleと 分 泌 細 管 の膜 の 流動

が 起 き て い る こ と を確 証 した と述 べ て い る.ま た

Helander & Hirschowitz8)は,透 過 電 顕 的 に犬 を

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666  大 沢 亙

使 用 しhistamine刺 激 に よ り, tubulovesicleの 膜

は分 泌 細 管膜 に結 合 され る こ と を観 察 し,酸 分 泌 は

主 に 分 泌 細管 表 面 で行 な われ るだ ろ う と報 告 して い

る. T. Forte & J. Forte36)は,組 織 化 学 的研 究 よ

り細 胞 形 質 内tubuleと 細 胞 内分 泌 細 管 表 面 の形 質

膜 に は 類似 性 が あ り,こ れ ら両 者 の 膜 の 間 には移 行

が あ る と述 べ て い る.

またIto & Schofield13)は,細 胞 内 分 泌 細管 膜 と

形質 内tubulovesicleの 膜 の 連 続 性 を見 つ け るた め

にlanthanumあ るい はperoxidaseを 用 い て の実 験

さらに 凍結 割 断 に よ るreplica法 で研 究 した が,こ

の 連 続 性 は 明 らか に され えな か った.ま た 彼 等 は

lanthanumをtracerと して用 い,細 胞 基底 部 層 と

同 様 に 細 胞 内 分 泌 細 管 腔 に存在 す る微 絨 毛 間 隙 に

lanthanumが 侵 入 す る こ と を示 した が, tubuloves

icleの 中 に入 る こ とは証 明 で きな か った. T. Forte

& J. Forte37)に よれ ば, lanthanumは 壁 細 胞 の管 腔

表 面,あ るい は浅 く表 面 と交 通 の あ る陥 凹 にお い て

の み 観察 され る と報 告 して い る.

Karpinski, Mueller & Ito38)は, lanthanum,

horseradish peroxidaseをtracerと して用 い た

研 究 の結 果,胃 腺 腔 と壁 細 胞 の細 胞 内分 泌 細管 腔 に

このtracerが 存 在 す るが,し か し これ らの 物 質 は,

細胞 形 質 内tubuleの 中 には観察 されず,ま たtubule

膜 と形 質 膜 は形 態 的 に類似 して い るが,こ のtracer

を用 い て の研 究 で は, tubule膜 と分 泌細 管 膜 とは直

接 の連 続 は な い こ と を示 唆 す る と報 告 して い る.

さ らにSedar39))は,両 生 動 物 の 壁 細 胞 に お いて,

peroxidase tracerは 胃腺 腔 か らsmooth surfaced

tubule,あ るい はvesicotubular systemに 侵 入 す

る が,必 ず し もsmooth surfaced tubuleは 細胞 の

胃 腺 腔 表 面 と は 連 続 性 が な い と して い る.さ らに

Rubin40)は,電 気 細 胞 化 学 的 に, tubulovesicleが

plasmalemmaに お け るendoplasmic reticulumか

否 か の問 題 につ いて 研 究 し た 結 果,分 泌 期 間 中 は

plasmalemmaを もったtubulovesicle膜 のever

sionで あ り,そ して 融 合 で あ り,分 泌 休 止 期 で は

plasmalemmaか ら起 こ るtubulovesicleの 再 生 で

あ る と して い る.

以 上, tubulovesicleと 細 胞 内 分 泌 細 管 との 関係

に つ き過 去 の業 績 を述 べ た が,何 れ の研 究 もこ の問

題 につ いて 決 定 的 な結 論 を う るに は至 っ て な い.

一 方,電 顕 的 に膜 の 融合 に つ い て は,既 に諸 家 に

よ り報 告 され て い る41)-46).この う ち, D. Lagunoff44)

は,ラ ッ トのmast cellの 分 泌時 の膜 の融 合 に つ い

て, Palade & Bruns42)は,ラ ッ ト舌 の毛細血管 お

よび リンパ細管 内皮細胞 の膜 の融合等 に関 して報告

している.す なわ ち,形質内空胞膜 とplasmalemma

の膜融合(五 層膜),二 つの 融合 膜 の連続す る膜の

消失(三 層 膜形成,す なわ ちasingle unit mem

brane),さ らに起 こる膜 の消失 によ り一層膜 に囲 ま

れた空胞 を形成す る.次 いで空胞 内容 と外面 の媒質

の間 の拡散す る障壁 を取 り除 くために層の破裂が起

こ り,こ の よ うな機転 によ り,空 胞 内容の放 出が行

なわれると推察す ると して いる.

本 研究 のSEM像 では, tubulovesicle膜 の厚 さ

は約25nmで あ り, DeRobertisら47)は 膜の厚 さを約

5nmと してい るが,こ れ は走査電顕観察標本の導電

性のために標本表面 に約20nmの 金蒸着 を施行 したた

め,そ の厚 さが追加 きれたため と考 えられ る. Hel

ander48)に よると,マ ウスの壁細胞で は細胞 内分泌

細管 とtubulovesicleの 膜の厚 さは概略同 じで ある

と報告 してい る.

本研究 では, FE-SEMの 高分解能 によ りtubulo

vesicle膜 の三次元 的構造,さ らにtetragastrin刺

激後 の膜移動 に関 しての機構 を推定 させ る結果が観

察 された.す なわ ち,特にtetragastrin刺 激30分 後

に, tubulovesicle相 互間の膜融合, tubulovesicle

膜 の細胞 内分泌細管腔への融合,そ して これ ら融合

膜 の相継 ぐ消失 が立体的 に認 め られ た(図15).

す なわち,二 つ の隣 接 した約25nmの 厚 さの膜 を

有す るtubulovesicleは,お 互 いに接近 し,つ いに

は融合 を起 こし,そ の結果厚 さ約50nmの 融合膜,す

なわち膜の五層形成 がな され ている ことを強 く示唆

す る所見,あ るいはこの融合 膜 の消 失の結果, unit

membrane,す な わち三層 膜 に移行 してい ると推定

させ る像 が観 察 され た(図15).上 述 の同様 の過程

は, TEMで もtubulovesicle膜 が細胞 内分泌細 管

膜 に明 らかに融合 し,次 いで この融 合膜の消失 が起

こってい る像 も認 め られた(図19).こ の隣 接 膜の

接近,融 合,消 失 の過程 は, Palade & Bruns42)に

よ り報告 された と同 じ過程 で ある.し か し既 述の ご

とく,観 察 標本 表面 に約20nm厚 の金蒸着 を施行 し

てい るため,膜 の五層形 成,あ るいは三層形成 をな

してい るとい う確実 な情 報所見 を得 るこ とは走査電

顕下 では困難 な問題 とな り,透 過電顕所見 との対比

等 が必要 とな って くる.

本研究 の透過電 顕お よび走査電顕所 見を総 合す る

と, tetragastrin刺 激 によ り隣 接膜 の接近 ・融合お

よ び融合膜 の相 継 ぐ消失 の過程 は,形 質 内の小 さい

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正常およ びtetragastrin刺 激後の ラ ット胃壁細胞 の走査お よび透 過電子顕微鏡的研究  667

tubulovesicle,あ る いは小 さいtubulovesicle同 士

の融 合,次 い で起 こ る融 合膜 の相 継 ぐ消 失 の結 果 大

き くな ったtubulovesicleが,細 胞 内分 泌 細 管 膜 に

接近,融 合 し,次 いで 融 合膜 の消 失,相 継 ぐ膜 の 消

失 が起 こ り,そ の結 果, tubulovesicleは 細 胞 内 分

泌細 管 と連 続 性 を有 し,新 しい微 絨 毛 を生 ず る よ う

にな る と推察 され た.

Ito & Schofield13)は, tracerと してlanthanum

を使 用 しての実験 で, lanthanumがtubulovesicular

systemに 侵 入 しなか っ た と報 告 して い るが, tubu

lovesicleが 細 胞 内 分 泌細 管 に開 口す る とい う著者

の結 果 に矛盾 す る が,こ の差 異 は,細 胞 内 分 泌細 管

と膜 融 合 の 状 態 に あ るtubulovesicleへ のlantha

numの 侵 入 は,な お残 存 して い る膜 によ り侵 入 を防

止 され るか,融 合 膜 の消 失 の後 で はlanthanumは

tubulovesicleの 中に 侵 入 す る.し か し,こ の よ う

なtubulovesicle腔 は,も は やtubulovesicle腔 と

して み な され ず,細 胞 内分 泌 細 管 の 一 部 と して み な

され た ため と考 え られ る.

ま た 胃液 分 泌刺 激 時 のtubulovesicle中 の小 微 絨

毛 の 出現 頻 度 の増 加,細 胞 内分 泌 細 管 内 の微 絨 毛 が

長 くな る とい っ た 所 見 の 重 要 性 は 不 明 で あ るが,

tubulovesicle膜 の 多 くは細 胞 内 分 泌 細 管 内微 絨 毛

の膜 に変 換 され,勿 論 その う ちの い くらか は 融 合膜

の相 継 ぐ消失 の過 程 で消失 す るが,そ れ 以外 のtubu

lovesicleの 膜 は,細 胞 内 分 泌 細 管 膜 と して維 持,

保存 され る もの と推 定 され る.そ して 酸 分 泌休 止 期

で は,お そ ら く微 絨 毛 膜 はtubulovesicleの 膜 に変

換 され るで あろ うが,こ の膜 の変 換 過 程 を示 す研 究

は,さ らに 今後 の詳 細 な検 討 を必 要 と しよ う.

この 研 究 に お いて, tubulovesicle相 互,あ る い

はtubulovesicleと 細胞 内分 泌 細 管 の膜 融 合,そ し

て この 融 合膜 の引 き続 い て起 こる膜 の 消失 に 関 して

報告 した.仮 にtubulovesicleが 塩 酸 を合 成 し,貯

臓 す る場 で あ るな らば,細 胞 内分 泌 細 管 へ 塩酸 を分

泌す る形 態 は,上 述 の 機構 に よ りな さ れ る と考 え ら

れ る。 もし この仮 説 が 真実 で あ る とす れ ば,塩 酸 排

出 の機 構 は,膵 分 泌 細 胞 に お け るzymogen顆 粒 の

よ うな蛋 白 分 泌 のexocytosisと 同 じ分 泌形 式 を示

す と考 え られ るが,今 後tubulovesicleの 内容 の解

析 等の さ らに詳 細 な研 究 が必 要 と な って こ よ う.

第5章  結 語

正常 およびtetragastrin刺 激 後の ラッ ト胃壁 細

胞 を凍結割断 し,三 次元 的微細構造 を電 界放射 型走

査電子顕微鏡 によ り観察し,ま た併 せて透過電 子顕

微鏡 で観察 し,次 の結果 をえた.

1) 正常 ラッ ト胃壁細胞 は,楕 円形 の核,多 数 の

球型の堆積す る糸粒体 のほか,胞 体 内に深 く彎 入す

る細胞 内分泌細管が存在 し,こ の細胞 内分泌細管腔

には,直 径約0.6μ,巾0.2μ の多数 の棍棒状 の微絨

毛が密 在す る.塩 酸分泌の サイ クル等 に呼応 して,

細胞内分泌細 管の大 きさや微絨毛 の大 きさ等 が異に

す ると推察 された.

2) 細胞 内分泌 細 管周 辺 の胞 体内 には,直 径約

0.05μ の円形 や不整形の小孔,す なわちtubulove

sicleが 存在す る.こ のtubulovesicleは 細 胞 内分

泌細管腔に直接開 口 し,ま たこのtubulovesicle中

には,出 現 す る頻度 は低 いが,小 微絨毛 の出現像 も

観察 された.

3) tetragastrin投 与 後30分 では,胞 体 内のtub

ulovesicleの 数,大 きさが増 し,そ の中 に出現 す る

小微絨毛の頻度 も増 してくる.さ らに隣接す るtub

ulovesicle同 士 の接近 および膜の融合(膜 の五層形

成)が 起 こり,次 いで起 こる融合膜の消失(膜 の三

層形 成,す なわ ちunit membraneの 形成),さ らに

相継 ぐ膜 の消失の結果,大 きなtubulovesicleと な

り,こ のtubulovesicleが さらに細胞内分泌細管膜

と膜 融合(膜 の五層形 成),融 合膜の消失(膜 の三層

形成),相 継 ぐ膜 の消失 の過程 を経 た結果,胞 体 内の

tubulovesicleは 細胞内分泌細管に直接開口す る.

4) 以上 の所見 よ り,胃 液分泌刺 激時に は, tubu

lovesicle膜 の多 くは細 胞 内分泌細管内の微絨 毛膜

に変 換 され,維 持,保 存 されるが,酸 分泌休止期で

は,細 胞 内分泌細 管内の微絨毛膜 はtubulovesicle

膜 に変換 され ることが推察 された.

謝 辞

稿 を終るにのぞみ,御 指導,御 校 閲を賜わった田中早

苗教授に感謝を棒げるとともに,本 研究に直接御指導下

さった緒方卓郎博士に深謝致 します.ま た電顕および走

査電顕撮影に協力頂いた林,中 村技官,標 本作製に協力

された山本,難 波,尾 崎,白 谷の諸嬢に感謝致 します.

本論文の要旨は,第7回 日本臨床電顕学会,第32回 日

本電顕学会及び第18回 日本消化器病学会秋季大会におい

て発表 した.

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668  大 沢 亙

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670  大 沢 亙

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附 図 説 明

図1:正 常 ラ ット壁細胞 の走査電顕像.胞 体内に は細 胞内分 泌細管 が存在,そ の内腔 には微絨毛 が密在 してい

る.細 胞内分泌細管周囲のtubulovesicleの あ るもの は小微絨毛が存在 してい る(矢 印). N:核M:

糸粒体L:胃 腺腔 ×15000

図2:正 常 ラ ット壁細胞 にイオンエッチ ング施 行後の走 査 電 顕像.核(N)の 表面 には凹凸以外 に多数 の核孔

(矢印)が 認め られ る.×11000

図3:正 常 ラ ット主細胞 の走査電顕像.イ オンエ ッチ ング施行例 で,核 の周囲の胞体内には粗面小胞体 が観察

され る.×15000

図4:縦 方向 に割断 された細胞内分泌細管 の走査電顕像.細 胞 内分泌細管 は一方で は胃腺 腔(L)に 直接開 口,

他方で は胞体 内に深 く彎入 してい る.矢 印: tubulovesicle×14000

図5:正 常 ラ ット壁細胞 の細胞内分泌細 管の横断像.円 形 として観察 され る.×11000

図6:種 々な外観を呈 する細 胞 内分 泌細管 の横断像(正 常 ラ ット).右 下の分泌細管は長い微絨毛 が密在 す る

が,中 央部の細管の直径 は広 く微絨毛 も非常 に少 ない.左 上部 の分泌細管 は膜様の隔壁によ り.あ たか

も蜂の巣状に分離 されてい る.×12000

図7:割 断 した細胞 内分泌細管の表面か らの観察像. tubulovesicleは 直接細胞内分泌細 管腔に開口 してい る

(正常 ラッ ト壁細胞).×25000

図8:正 常 ラ ット壁細胞 の細胞内分泌細 管内の微絨毛 の透過電顕像.微 絨毛 は密在 し,一 定方向に走 行 してい

る.×31000

図9:正 常 ラ ット壁細胞の細胞内分泌細 管腔に突 出 した微絨毛 の拡大像.先 端が屈曲 した り,途 中で枝 分れを

示す微絨毛 が観察 され る.×53000

図10:細 胞内分泌細管周辺の割断像.微 絨毛様構造物 が密 に配列,堆 積 して いるが,間 隙 も認め られ る(正 常

ラ ット壁細胞).×28000

図11:図10で 示 した微絨毛様構造物の水平方 向の割断像.細 胞 内分泌細管周辺の胞体内 には,あ たか も小石 を

敷いたかの ごとく印象 を与 える小顆粒構造物 が密 に並置 している.×73000

図12:正 常 ラッ ト壁細胞の糸粒体.球 形像 として観察 される.×7000

図13: tetragastrin投 与後30分 の壁細胞.胞 体内のtubulovesicleの 著 明な数 の増加が認 め られる.×22000

図14: tetragastrin投 与後30分 の壁細胞.細 胞内分泌細管周辺 のtubulovesic1eの 数の増加 とと もにその大 き

さが増 している.矢 印はtubulovesicleの 細胞内分泌細管腔への直接の開 口を示 す.×58000

図15: tetragastrin投 与後30分 の壁細胞.拡 大 したtubulovesicleの 中か ら各々小微絨毛 が出現 し,このtub

ulovesicle膜 と小微絨毛膜 は連続性 を有 して いる(白 矢印).太 矢 印は隣接 したtubulovesicle同 士 の

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正常 およびtetragastrin刺 激後 のラ ット胃壁細胞の走 査および透過電子顕微鏡的研究  671

融 合 の 結果 五 層 形 成,小 矢 印 は融 合 膜 の 消 失 の 結 果 三 層形 成 を示 して い る.×150000

図16: tetragastrin投 与30分 後 の 壁 細 胞 の透 過 電 顕 像.胞 体 内 のtubulovesicleは 大 き くな り数 も増加 して い

る.×42000

図17: tetragastrin投 与30分 後 の壁 細 胞 の透 過 電 顕 像. tubalovesicleと 小 微 絨毛 との 間 に は直 接 膜 の連 続 性

が認 め られ る.×85000

図18: tetragastrin投 与30分 後 の 壁細 胞 の 透 過 電 顕 像. V1で 示 すtubulovesicleとV3で 示 すtubulovesicle

には五 層 形 成 が, V2で 示 すtubalovesisleとV3で 示 すtubulovesicleの 間 に は三 層形 成 が起 きて い る.

×134000

図19: tetragastrin投 与30分 後 の壁 細 胞 の 透 過 電 顕 像. tubulovesicleが 細 胞 内 分 泌細 管 に 開 口 して い る(小

矢 印).融 合 膜 の 相 継 ぐ消 失(太 矢 印)も 認 め られ る.×76000

図20: tetragastrin投 与30分 後 の壁 細 胞 の透 過 電 顕 像. tubulovesicleが 細 胞 内 分 泌 細 管 に 開 口す る場 合 の

central knob (K)を 示 す.×160000

図21: tetragastrin投 与60分 後 の 壁 細胞 の走 査 電 顕 像. tubulovesicleは 著 明 に減 少 し,微 絨 毛 は短 か く,数

も減 少 し,直 径 も拡 大 して い る.×11000

図22: tetragastrin刺 激 に よ る壁 細 胞 の 変 化 の模 式 図.微 絨 毛 の左 側 は胞 体 内 の 一 つ のtubulovesicleが 細 胞

内分 泌 細管 に融 合,開 口す る過 程 を,右 側 に は小 さなtubulovesicle同 士 の 融 合 等 の経 過 を経 て大 き く

なっ たtubulovesicleが 細 胞 内分 泌 細 管 に 融 合,開 口す る過 程 を示 す.

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大 沢 亙 論 文 附 図

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正常 およびtetragastrin刺 激後の ラッ ト胃壁細胞の走査 および透過電子顕微鏡 的研究  673

大 沢 亙 論 文 附 図

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大 沢 亙 論 文 附 図

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正常お よびtetragastrin刺 激後の ラッ ト胃壁細胞 の走査 および透過電子顕微鏡的研究  675

大 沢 亙 論 文 附 図

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大 沢 亙 論 文 附 図

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正常 およびtetragastrin刺 激後の ラッ ト胃壁細胞の走査お よび透過電子顕 微鏡 的研究  677

大 沢 亙 論 文 附 図

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A scanning and transmission electron microscopic study

on the fractured rat parietal cells in resting state

and after tetragastrin stimulation

by

Wataru OSAWA

Department of Surgery, Okayama University Medical School, Okayama

(Director: Prof. S.Tanaka)

Parietal cells in the rat gastric mucosa fractured by freeze cracking method under conditions

of the control state and tetragastrin stimulation were observed by field emission scanning

electron microscopy. The structures thus revealed were compared with those by transmission

electron microscopy.

1) In the fractured cytoplasm, intracellular canaliculi lined by numerous microvilli invagi

nated deeply towards the basal cytoplasm.

Typically, microvilli had a club-like structure about 0.6ƒÊ in length and 0.2ƒÊ in thickness

with a bulbous tip and slightly narrowed base. Most of the tops of the microvilli tended to

grow up the direction of the canaliculi to the gland lumen, sometimes appearing bent or twist

ed. Intracellular canaliculi and microvilli differed in shape and size during secretory cycle.

2) Tubulovesicles appeared as many small holes of about 0.05ƒÊ in diameter and distributed

predominantly in the apical or pericanalicular cytoplasm. Some tubulovesicles directly opened

into the secretory canaliculi. Occasionally, tiny microvilli appeared in tubulovesicles.

3) Thirty minutes after tetragastrin stimulation the tubulovesicles increased in size and in

number, the small microvilli were more frequently found.

Furthermore, a close approximation of the membranes between adjacent tubulovesicles

occurred and a 5-layered diaphragm was formed by the fusion of the membranes and changed

to a 3-layered diaphragm as the result of the successive elimination of the fused 5-layered dia

phragm. In a similar procedure, the membrane of a tubulovesicle apparently fused to that

of the secretory canaliculi, and then the depletion of the fused membrane seemed to occur.

Tubulovesicles were thus believed to open into the secretory canaliculi and to contribute to

the formation of new microvilli.

4) In conclusion, in the stimulated state some amount of the membrane of tubulovesicles

was transformed to the membrane of the microvilli in the secretory canaliculi. Consequently,

the membrane of tubulovesicles would be preserved as the membrane of the secretory canali

culi, although some of them are believed to disappeare in the process of the depletion of

fused membrane.

Possibly after cessation acid secretion, the microvilli membrane would be retrieved to the

tubulovesicles, but further investigation would be necessary to demonstrate this process.