tokushukai medical group news 大垣病院 心臓血管外科を … ·...

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西20 調01 18 21 33 12 18 11 より質の高い肺がん診療を提供するため、徳洲会 呼吸器部会が中心となって立ち上げ、運営している 「徳洲会肺がんキャンサーボード」の取り組みや成 果をまとめた論文が、米国臨床腫瘍学会(ASCO= American Society of Clinical Oncology)が発行 する『JCO CCI』(Journal of Clinical Oncology Clinical Cancer Informatics)という世界的に著名 なオンラインジャーナルに掲載された。筆頭著者 は宇治徳洲会病院(京都府)の竹田隆之・呼吸器 内科部長(現・京都第二赤十字病院呼吸器内科部 長)。数多くある掲載論文中、4月に最も多く閲覧 された論文となるなど国際的にも高い注目を集め ている。 論文タイトルは「Multidisciplinary Lung Cancer Tumor Board Connecting Eight General Hospital in Japan via a High-Security Communication Line」(セキュリティの高い通信回線で日本の8施 設の総合病院をつないで運営する集学的な肺が んキャンサーボード)。共同研究者として、このキ ャンサーボードに参加する八尾徳洲会総合病院 (大阪府)、千葉西総合病院、大隅鹿屋病院(鹿児 島県)、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)、名古屋 徳洲会総合病院の医師が名を連ねた。 キャンサーボードは複数の診療科の医師や多 職種が参加し、がん患者さんの最適な治療方針 を決定する会議。徳洲会グループは2017年4月に呼吸器部会の主 導により、セキュリティの強固なWEB回線を用い、複数施設が診療 録や検査画像などをリアルタイムに共有しながら検討する「肺がん キャンサーボード」をスタート。毎週火曜日の夕刻以降に1時間ほど、 治療方針の決定に難渋した症例を中心に検討している。 論文ではキャンサーボードの必要性や遠隔地の病院同士を結ん で開催する意義、徳洲会肺がんキャンサーボード立ち上 げの経緯や具体的な運営方法、さらに、これまでの検討 結果の集計データなどを紹介している。 17年4月から18年6月までの15カ月間で63回開催し、 合計202人の患者さんについて検討を行った。年齢の中 央値は70歳、男性136人、女性66人。原発性肺がんや悪 性リンパ腫、胸腺がん、転移性肺がん、隣接臓器からの 局所浸潤がんなど、さまざまな症例を含む。 キャンサーボードで検討した結果、202人のうち49人の 患者さんに関して、当初と異なる診断・治療戦略を推奨し た。これにより複数施設をつないで開催するキャンサーボ ードは、「がん患者さんと医療スタッフの双方にとって有 益」、「治療が難しい患者さんに関して多様な専門科の意見 を得ることができる」、「治療結果の改善に寄与する情報や 提案を得ることができる」などとメリットを強調している。 竹田部長は「それぞれ離れた場所にある病院を通信回 線でつないで運営するキャンサーボードの取り組みは、本 邦では他にほとんど例がなく先進的なものです。それを民 間病院グループが成し遂 げ、毎週1回、定期的に 開催して200件を超える討 議を続けていること、実際 に各病院の患者さんたち に恩恵がもたらされている ことなど意義は大きいと感 じています」と話している。 徳洲会呼吸器部会は5月11日、オンコロジー(腫瘍学)プロジェ クトの一環で、第11回肺がん研究会・第9回呼吸器部会症例検 討会を開催する。肺がんなど呼吸器疾患に対する徳洲会グルー プ全体の診療レベル向上が狙い。 症例検討会の演題は応募多数で募集を終了したが、引き続 き一般参加者を募集中(申し込み締め切り5月6日)。呼吸器診療 に携わる徳洲会グループの医療従事者すべてが応募可能だ。会 の終了後は同会場(他団体主催)で、国内外の最新の肺がん治療 のエビデンスに関する特別講演を予定。 ※ 参加無料。宿泊・交通費は各自負担。申し込み・問い合わせは徳洲会グループオ ンコロジープロジェクト事務局(☎ 03-3263-4801)まで。 第11回肺がん研究会・第9回呼吸器部会症例検討会 日時: 5月11日(土)午後1時半〜午後4時 会場: ホテル日航プリンセス京都(京都府京都市下京区) 他団体主催研究会 日時: 同日午後4時半〜午後6時 会場: プログラム: 一般講演(演者:内野順治・京都府立医科大学 大学院医学研究科呼吸器内科学准教授)、テーマ:肺がん 治療の最新の知見 特別講演(演者:髙山浩一・京都府立医 科大学大学院医学研究科呼吸器内科学教授)、テーマ:肺 がんのゲノム医療 意見交換会(午後6時半〜) 一般参加者を大募集! 徳洲会呼吸器部会 第9回症例検討会 10 大垣病院 心臓血管外科を再開 地域の医療水準向上に一層貢献 名古屋病院が全面支援 MICS 冠動脈バイパス手術の様子(写真は名古 屋病院) 昨年 12 月に名古屋病院と大垣病院のスタッフ が集まりキックオフミーティング 徳洲会グループの複数病院を結んで検 討(写真は宇治病院) 「地域の医療水準向上に 貢献していきたい」と大 橋総長 「東海地方を代表するハ ートチームへの成長が目 標」と大城部長 命だけは平等だ 平成 31 4 29 日 月曜日│No. 1182 429月曜日 発行:一般社団法人徳洲会 〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階 TEL:03-3262-3133 制作:一般社団法人徳洲会 広報部 〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階 TEL:03-3288-5580 FAX:03-3263-8125  Email:news@tokushukai.jp No. 1182 29/APR. 2019 TOKUSHUKAI MEDICAL GROUP NEWS ALL LIVING BEINGS ARE CREATED EQUAL

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Page 1: TOKUSHUKAI MEDICAL GROUP NEWS 大垣病院 心臓血管外科を … · その後、名古屋病院の循環器内科と同グループの体制充実にと心臓血管外科手術を実施するなど診療に尽力したものの、マンパワーの面で制約より実現した。大垣病院は2008年4月の開設後、約2年間で200例以上の屋徳洲会総合病院を中心とする「名古屋徳洲会心臓血管外科グループ」の支援に大垣徳洲会病院(岐阜県)は4月、心臓血管外科診療を本格的に再開した。名古

松原徳洲会病院(大阪府)

で心臓手術を開始したの

を皮切りに、野崎徳洲会

病院(同)、宇治徳洲会

病院(京都府)、東京西

徳洲会病院、葉山ハート

センター(神奈川県)で

も同様に人的支援を行い

ながら、手術を実施する

体制を構築してきまし

た」と説明する。続けて

「そこで育った医師たち

は、これら病院の心臓血

管外科で責任者を務めて

います。同グループ全体

で現在20人の心臓血管外

科医を擁するまでになり

ました」とアピール。

大橋総長は複数病院で

緊密に連携を取り合うグ

ループを組織するメリッ

トを強調する。ひとりの

医師が責任をもって診療

を担っていたとしても、

何らかの事情で不在とな

った場合、とたんに立ち

行かなくなってしまう。

しかし、緊密なグループ

を組むことによって迅速

な対応が可能になり、医

師の応援診療などを通じ

人員不足を補ったり、学

会発表などによる一時的

な不在時にも代診を行っ

たりすることができる。

さらに複数病院で症例

を集めることができるた

め、若手医師が成長する

機会に恵まれるという利

点もある。

するとともに、心臓血管

外科の若手医師の育成を

強化する一環で、01年に

上の心臓血管外科手術を

実施。18年は大動脈瘤り

ゅう

急手術、経カテーテル大

動脈弁置換術(TAVI)、

経皮的ステントグラフト

手術、末ま

梢しょう

血管手術など

が増加し、年間920例

と過去最多の手術総数を

達成した。

また、植え込み型補助

人工心臓治療、右肋ろ

っかん間

開胸による内視鏡下MI

CS(低侵襲)弁膜症手

術、手術支援ロボットに

よる左肋間小開胸バイパ

ス手術、同心臓手術、カ

テーテル型左心補助装置

(インペラ)治療など、

最新治療を東海地区で先

に人工心肺装置を用い全

身に血液を送り出す特殊

な技術が必要。名古屋病

院での研修を通じ、ME

はこうした手術に関連す

る機器の操作を習熟、手

術室看護師や術後の集中

管理を行う看護師もスキ

ルアップを図った。また、

大垣病院は8年前に休止

した集中治療室(ICU)

があった2階病棟を今年

4月に再開。名古屋病院

のICUナースの応援や

協力を経て、今後、IC

Uの再開も目指す。

名古屋病院の心臓血管

外科は今年21年目を迎え

(病院開設からは33年経

過)、通算8700例以

を行ってきた。

 

12月には本格再開に向

け、名古屋病院と大垣病

院のスタッフが集まり、

キックオフミーティング

を開催。資機材の整備や

マニュアル作成に加え、

大垣病院の看護師や臨床

工学技士(ME)が名古

屋病院で研修を行うなど

準備を進めてきた。

心臓手術では術中、心

臓の動きを止め、代わり

大垣病院心臓血管外科

の再開に合わせて、名古

屋病院の大城規和・心臓

血管外科医長が異動し、

大垣病院心臓血管外科部

長に就任した。大城部長

は沖縄県立中部病院で初

期研修を終え、湘南鎌倉

総合病院(神奈川県)に

入職、18年4月からは名

古屋病院で診療に従事。

昨年11月から非常勤医と

して大垣病院で外来診療

より質の高い肺がん診療を提供するため、徳洲会呼吸器部会が中心となって立ち上げ、運営している

「徳洲会肺がんキャンサーボード」の取り組みや成果をまとめた論文が、米国臨床腫瘍学会(ASCO=American Society of Clinical Oncology)が発行する『JCO CCI』(Journal of Clinical Oncology Clinical Cancer Informatics)という世界的に著名なオンラインジャーナルに掲載された。筆頭著者は宇治徳洲会病院(京都府)の竹田隆之・呼吸器内科部長(現・京都第二赤十字病院呼吸器内科部長)。数多くある掲載論文中、4月に最も多く閲覧された論文となるなど国際的にも高い注目を集めている。

論文タイトルは「Multidisciplinary Lung Cancer Tumor Board Connecting Eight General Hospital in Japan via a High-Security Communication Line」(セキュリティの高い通信回線で日本の8施設の総合病院をつないで運営する集学的な肺がんキャンサーボード)。共同研究者として、このキャンサーボードに参加する八尾徳洲会総合病院

(大阪府)、千葉西総合病院、大隅鹿屋病院(鹿児島県)、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)、名古屋徳洲会総合病院の医師が名を連ねた。

キャンサーボードは複数の診療科の医師や多職種が参加し、がん患者さんの最適な治療方針を決定する会議。徳洲会グループは2017年4月に呼吸器部会の主導により、セキュリティの強固なWEB回線を用い、複数施設が診療録や検査画像などをリアルタイムに共有しながら検討する「肺がんキャンサーボード」をスタート。毎週火曜日の夕刻以降に1時間ほど、治療方針の決定に難渋した症例を中心に検討している。

論文ではキャンサーボードの必要性や遠隔地の病院同士を結んで開催する意義、徳洲会肺がんキャンサーボード立ち上げの経緯や具体的な運営方法、さらに、これまでの検討結果の集計データなどを紹介している。

17年4月から18年6月までの15カ月間で63回開催し、合計202人の患者さんについて検討を行った。年齢の中央値は70歳、男性136人、女性66人。原発性肺がんや悪性リンパ腫、胸腺がん、転移性肺がん、隣接臓器からの局所浸潤がんなど、さまざまな症例を含む。

キャンサーボードで検討した結果、202人のうち49人の患者さんに関して、当初と異なる診断・治療戦略を推奨した。これにより複数施設をつないで開催するキャンサーボードは、「がん患者さんと医療スタッフの双方にとって有益」、「治療が難しい患者さんに関して多様な専門科の意見を得ることができる」、「治療結果の改善に寄与する情報や提案を得ることができる」などとメリットを強調している。

竹田部長は「それぞれ離れた場所にある病院を通信回線でつないで運営するキャンサーボードの取り組みは、本邦では他にほとんど例がなく先進的なものです。それを民間病院グループが成し遂げ、毎週1回、定期的に開催して200件を超える討議を続けていること、実際に各病院の患者さんたちに恩恵がもたらされていることなど意義は大きいと感じています」と話している。

徳洲会呼吸器部会は5月11日、オンコロジー(腫瘍学)プロジェクトの一環で、第11回肺がん研究会・第9回呼吸器部会症例検討会を開催する。肺がんなど呼吸器疾患に対する徳洲会グループ全体の診療レベル向上が狙い。

症例検討会の演題は応募多数で募集を終了したが、引き続き一般参加者を募集中(申し込み締め切り5月6日)。呼吸器診療に携わる徳洲会グループの医療従事者すべてが応募可能だ。会の終了後は同会場(他団体主催)で、国内外の最新の肺がん治療のエビデンスに関する特別講演を予定。

※ 参加無料。宿泊・交通費は各自負担。申し込み・問い合わせは徳洲会グループオンコロジープロジェクト事務局(☎ 03-3263-4801)まで。

第11回肺がん研究会・第9回呼吸器部会症例検討会日時:5月11日(土)午後1時半〜午後4時会場:ホテル日航プリンセス京都(京都府京都市下京区)

他団体主催研究会日時:同日午後4時半〜午後6時会場:同プログラム:●一般講演(演者:内野順治・京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学准教授)、テーマ:肺がん治療の最新の知見 ●特別講演(演者:髙山浩一・京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学教授)、テーマ:肺がんのゲノム医療 ●意見交換会(午後6時半〜)

一般参加者を大募集!徳洲会呼吸器部会第9回症例検討会

治療結果の改善など国際的に注目

徳洲会肺がんキャンサーボード

ASCOのジャーナルへ論文

駆的に取

り組んで

きた。

名古屋

徳洲会心

臓血管外

科グルー

プを統括

する大橋

壯樹・名

古屋病院

総長は

「より多

くの患者

さんの治

療に貢献

大垣徳洲会病院(岐阜県)は4月、心臓血管外科診療を本格的に再開した。名古

屋徳洲会総合病院を中心とする「名古屋徳洲会心臓血管外科グループ」の支援に

より実現した。大垣病院は2008年4月の開設後、約2年間で200例以上の

心臓血管外科手術を実施するなど診療に尽力したものの、マンパワーの面で制約

があり一時休止。その後、名古屋病院の循環器内科と同グループの体制充実にと

もない、人的支援が可能になったことから、10年ぶりに大垣病院の心臓血管外科

を再開できた。同院は今後一層、地域の医療水準の向上に貢献していく考えだ。

東海地方を代表するハートチームへ

大垣病院 心臓血管外科を再開地域の医療水準向上に一層貢献

名古屋病院が全面支援

(2面に続く)

MICS冠動脈バイパス手術の様子(写真は名古屋病院)

昨年12月に名古屋病院と大垣病院のスタッフが集まりキックオフミーティング

徳洲会グループの複数病院を結んで検討(写真は宇治病院)

「地域の医療水準向上に貢献していきたい」と大橋総長

「東海地方を代表するハートチームへの成長が目標」と大城部長

徳 洲 新 聞徳 洲 新 聞 生い の ち

命だけは平等だ❶ 平成 31年 4 月29 日 月曜日 │ No.1182

4月29日 月 曜 日

発行:一般社団法人徳洲会  〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階

TEL:03-3262-3133制作:一般社団法人徳洲会 広報部 〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階 TEL:03-3288-5580 FAX:03-3263-8125  Email:[email protected]

No.118229/APR. 2019

TOKUSHUKAI MEDICAL GROUP NEWS

ALL LIVING

BEINGS ARE CREATED EQUAL

Page 2: TOKUSHUKAI MEDICAL GROUP NEWS 大垣病院 心臓血管外科を … · その後、名古屋病院の循環器内科と同グループの体制充実にと心臓血管外科手術を実施するなど診療に尽力したものの、マンパワーの面で制約より実現した。大垣病院は2008年4月の開設後、約2年間で200例以上の屋徳洲会総合病院を中心とする「名古屋徳洲会心臓血管外科グループ」の支援に大垣徳洲会病院(岐阜県)は4月、心臓血管外科診療を本格的に再開した。名古

大垣病院では冠動脈疾

患や心臓弁膜症、大動脈

疾患のほか、末梢血管疾

患、透析用シャント造設、

PTA(経皮的血管形成

術)など幅広い疾患の治

療を推進。さらに今後は

ステントグラフト治療な

どの実施に必要な各種施

設認定を取得し、より高

度な治療を行う体制を整

備していく方針だ。

大橋総長は「大垣病院

が立地する西濃地区の医

療水準向上に貢献してい

きたいと考えています。

また、名古屋病院と大垣

病院は直線で約40㎞の位

置関係にあります。東海

地方にある徳洲会病院と

して連携を深めながら認

知度を高めていきたい」

と意欲的だ。

大城部長は準備段階か

ら地域の病院・診療所に

挨拶まわりを行うなど、

積極的に地域連携を推進。

「24時間緊急手術を断ら

ず、患者さんを大切にし、

地域の医療機関と協力し

ながら地域完結の医療を

目指したい。また、救急

医療にも尽力し、地域の

中核病院として役割を果

たし、東海地方を代表す

るハートチームに成長し

ていくことが目標です」

と大城部長は抱負を語っ

ている。

だけないはずです。

病院の隣に住んでいる方でも、

退院すると病院が遠くなり不安

になると言われます。そんな時、

職員の声かけが、どれほど患者

さんの不安を取り除いていると

思われますか。退院患者さん、

救急車で来院され帰宅された方

への電話訪問は大変喜ばれてい

ます。これからは職員が一人ひ

とりの患者さんに、もっと関心

をもって対応する姿勢が、さら

に大切になってきます。

私たちが患者さんに提供する

サービスには、中心的サービス

と補助的サービスとがあります。

たとえば中心的サービスは診療

放射線技師なら、患者さんのエ

ックス線被ばくを最小限にして、

診断のために質の良い画像を撮

ることです。また、外科医なら、

患者さんが早く退院できるよう

に合併症のない手術を安全に行

うことです。それぞれの職種に

よって、患者さんにとっては当

たり前で、最も大切な代用が効

かないサービスです。

一方、補助的サービスは職種

にかかわらず、患者さんに笑顔

で接したり、説明を十分にわか

りやすく行ったり、医師なら頻

繁に患者さんのベッドサイドに

行ったりするなど、足りなけれ

ば他で代用が効くものです。患

者さんにとって中心的サービス

は期待する当たり前のもので、

おろそかにすると不満になりま

す。その点、補助的サービスは

充実すればするほど患者さんに

喜ばれ、時に伝説のサービスと

なります。「ガソリンスタンド

で売っているのはガソリンだけ

ではない。道案内も重要な商品」

「私は、あなたが毎朝ここにい

るから、この病院に通っていま

す」︱︱ある患者さんがアンケ

ートに書き綴った文章の一部で

す。さて、誰のことかと職員に

尋ねてみると、きっと野崎さん

ではないかということで、「あ

なた」を見つけ出しました。約

1年半前から当院の玄関で交通

整理をしている女性でした。美

術大学を卒業し、当院でパート

の仕事をしているそうです。お

会いしたところ、彼女は目を輝

かせて、いろいろな患者さんと

の出会いと、たくさんの感動的

な話をしてくれました。自分に

とても合った仕事に巡り合えた

と喜んでいました。将来は、自

分の描いた絵で生計を立てたい

という希望もあるようです。

送迎の巡回バスを利用されて

いる年間60万人の患者さんをは

じめ、職員、お見舞いの方々な

ど、当院には毎日延べ8000

人の出入りがあります。いつも

ニコニコされ、ご高齢の方々に

優しく声をかけている野崎さん

を見ていると、病院が、こうし

た職員にも支えられていること

を、あらためて実感しました。

退院後の声かけにより

患者さんの不安を軽減

お褒めの言葉、お叱りの言葉

などアンケートに答えてくださ

った方は、病院への期待をもっ

ていただいているからと考えて

います。一般的に私たちが患者

さんを失う一番の原因は、患者

さんに対する職員の無関心と言

われています。いやな思いをさ

れ、もう二度と来ないと思った

方はアンケートにも答えていた

と言われるのも補助的サービス

の表現のひとつです。

理念を引き継いでリピーター

増やすのが生き残る必要条件

救急外来を受診された患者さ

んへの訪問診療、退院患者さん

や救急搬送され帰宅された方へ

の電話訪問、医師による公開講

座などもイノベーティブ(革新

的)な補助的サービスです。患

者さんやホームドクターに、い

つも選んでいただけるように私

たちは、これらのサービスの提

供のために、つねに勉強し、工

夫し、努力して、何を望まれて

いるか、患者さんのためになっ

ているのか、自分たちは地域で

必要とされているのか、自問自

答し続けなければなりません。

いわゆる伝説のサービスと言わ

れている多くのものは、作さ

話わ

されていますが、それは「あの

会社なら、これくらいやっても

不思議じゃない」、「あの会社な

らきっとこうするだろう」と思

われるほど、それらの企業はサ

ービスの提供をブランド化でき

ているからだと言われています。

つねに患者さんを思い、良質

な対応を提供し続けることで、

伝説のサービスが独り歩きする。

これこそが私たちに求められて

いるような気がします。健康と

生活を守る病院として、安心な

地域社会を目指し、徳洲会の理

念を引き継いでいくことが、リ

ピーターを増やし、徳洲会が長

く生き残る必要条件になります。

80歳の患者さんに、「私は、こ

の病院で生まれたんです」と言

われるような病院になることを

想像し、皆で頑張りましょう。

本選では、各院とも熱

のこもった発表を実施。

審査の結果、1位は湘南

鎌倉病院の「患者ケアの

充実を図るための入院時

看護記録の時間短縮の検

討」、2位は湘南藤沢徳

洲会病院(神奈川県)の

「日勤フリー業務を導入

した多重業務改善〜患者

ケア時間確保と時間外勤

務の短縮〜」、3位は福

岡徳洲会病院の「新規パ

ス作成で口頭指示ゼロ」

が選ばれた。

このうち1位の湘南鎌

倉病院の発表では、看護

記録に要する時間を短縮

するため、電子カルテ上

で効率的に記録できる方

法を検討、操作のスリム

化や全病棟共通のチェッ

クリスト作成など行った。

結果、記録時間が大幅に

短縮、「今後は患者ケア

に関する業務量調査の実

施などに生かしたい」と

課題も示した。

2位の湘南藤沢病院は

日勤業務を見直し、日勤

フリー業務のマニュアル

を作成。結果、午前中に

集中していた業務量が減

り、看護ケアの向上につ

ながったことを強調した。

3位の福岡病院は新規導

入した心房細動に対する

カテーテルアブレーショ

ン治療のパスを作成。運

用後はインシデント(事

故などの発生の恐れがあ

る事態)の要因になり得

る口頭指示が0件になり、

不要な確認作業が減った

ことで業務の簡素化がで

きたと報告した。

また、今回は一般社団

法人徳洲会の遊佐千鶴・

常務理事による「千鶴賞」

も設け、札幌東徳洲会病

院の「時間外勤務の削減

〜A病棟における申し送

りの改善を試みて〜」が

受賞。遊佐・常務理事は

参加者に向け「現場で日

々いろいろなことを考え

て業務していることがわ

かり感動しました。これ

からも患者さんのために

何ができるか、ずっと考

えていきましょう」とエ

ールを送った。

(1面から続く)

宇治徳洲会病院(京都府)はマーケティング活動に積極的だ。末吉敦院長は「急性期病院の生命線は毎月の新入院患者さん」と強調し①救急車、②紹介、③患者さんが選ぶ――という来院ルートをそれぞれ強化する必要性を説く。

同院は救命救急センターに指定されており、「救急車を断らない」ことが信頼を構築する最大のポイントという。さらに近隣の消防署で出張症例検討会、院内で救急懇話会など、病院機能を説明するための交流を定期的に実施している。

紹介患者数のアップには、病院全体または臓器別に開催する地域医療連携の会が効果を発揮。地域の医療機関と顔の見える関係づくりに力を入れている。

新規の患者さんを獲得するために、同院では医療講演を頻回に実施。昨年からショッピングモールで「健康フェスタ」(医療講演、健康相談、血圧測定など)をほぼ月1回のペースで開催、月に10回ほど老人会や自治会などからの依頼講演も受けている。昨年度の月平均医療講演回数は約42回。末吉院長も認知症、糖尿病、生活習慣病など15テーマをもち、月に3、4回ほど講演を行っている。「継続することで徐々に地域に浸透し、安定した参加人数を確保できるようになりました。より地域に信頼されるために医療講演は必要だと考えます」と意欲的だ。

徳洲会グループ看護部門

は2月9日、吹田徳洲会

病院(大阪府)で業務改

善発表会を開催した。グ

ループで課題を共有し、

看護サービスの向上を図

るのが狙い。全国6ブ

ロックから予選を通過し

た18病院が発表、湘南鎌

倉総合病院(神奈川県)

が1位を獲得した。

遊佐・常務理事を中心に受賞者らが集合

毎月開催している健康フェスタでの相談ブースの様子

マーケ活動 積極的地域に信頼される病院へ

宇治病院

患者さんにもっと関心をもつ姿勢が大切

つねに勉強・工夫・努力して自問自答質の高い対応を続け伝説のサービスを

業務改善発表会を開く

看護サービス向上へ

徳 洲 会看護部門

篠し の ざ き

崎 伸の ぶ あ き

明医療法人沖縄徳洲会副理事長湘南鎌倉総合病院(神奈川県)院長

徳 洲 新 聞生い の ち

命だけは平等だ 平成 31年 4 月29 日 月曜日 │ No.1182 ❷

Page 3: TOKUSHUKAI MEDICAL GROUP NEWS 大垣病院 心臓血管外科を … · その後、名古屋病院の循環器内科と同グループの体制充実にと心臓血管外科手術を実施するなど診療に尽力したものの、マンパワーの面で制約より実現した。大垣病院は2008年4月の開設後、約2年間で200例以上の屋徳洲会総合病院を中心とする「名古屋徳洲会心臓血管外科グループ」の支援に大垣徳洲会病院(岐阜県)は4月、心臓血管外科診療を本格的に再開した。名古

シンポジウムでは南部

徳洲会病院(沖縄県)の

比屋根寛看護師(集中ケ

ア認定看護師)が「早期

異常発見システム(ME

WS)による予期せぬ院

内心停止患者低減の試

み」と題し発表。MEW

Sはバイタルサインを電

子カルテに入力すると自

動的にスコアを算出し、

重症度別に3つのカテゴ

リーに区分化する。

これを運用するなかで

バイタルサイン、とくに

呼吸数の未入力が目立つ

と同時に、心肺蘇生を施

した患者さんのうち75%

が48時間以内に死亡して

いたことが判明。そこで

2015年1月から18年

7月までの予期せぬ院内

心停止とバイタルサイン

未入力との相関を探った。

その結果、「未入力が改

善され、適切なMEWS

の運用が可能になり、予

期せぬ院内心停止も減り

ました」。発表後、比屋

根看護師を含む7人のシ

ンポジストはRRS(院

内救急対応システム)に

ついて議論を展開した。

口演では名古屋病院と

札幌東徳洲会病院から、

それぞれ5演題の発表が

あり、グループ最多。こ

のうち大城医長の「当院

における心原性ショック

を伴う重症心不全に対す

る新たな治療戦略」が優

秀演題に選ばれた。

発表ではインペラ(カ

テーテル型左心室補助装

置)を使用した29症例

(17年12月~19年1月)

について報告した。イン

ペラは左心室から血液を

吸い出し、大動脈から全

身に血液を送り出すこと

で心臓を補助する装置。

小型カテーテルである特

徴から、簡便かつ迅速、

低侵襲に導入可能だ。

同院での単独導入は11

例、循環破綻例に対する

ECMO(別名PCPS)

とインペラを併用したエ

クペラの導入が18例あっ

た。インペラは短期間で

循環動態を改善させ、心

原性ショックをともなう

重症心不全からのリカバ

リーに有効であるなどポ

イントを解説、「今後は

短期、中期の成績を含め、

さらなる経験の蓄積が必

要」と課題を示した。

名古屋病院ではインペ

ラやエクペラに関する演

題を多職種で展開。永井

翔子・理学療法士は「エ

クペラで救命したCPA

蘇生後の患者に対して早

期リハビリ介入が有効で

あった1症例」、デヘス

ース・エミリオ瑞樹看護

師は「当院におけるイン

ペラ補助患者の体位変換

の実際と今後の課題」、

青山英和・循環器内科部

長は「心原性ショックに

対するエクペラの初期導

入経験」と題し、それぞ

札幌徳洲会病院はBS

ケアに注力している。こ

れは赤ちゃんの母乳吸き

ゅう

啜てつ

にならって実践する乳房

ケア。同院への導入は2

005年に東海林かち

子・看護師長(当時、現・

助産師)が外部のセミナ

ーに参加したのがきっか

け。「当時は痛いマッサ

ージが当たり前の時代だ

ったので、痛くない乳房

ケアは産婦さんのために

必要だと考えました」。

その後、09年から外部

の専門家を招し

ょう

聘へい

し、年に

1~2回程度、同院を会

場にセミナーを実施。こ

れはベーシックセミナー

から始まりアドバンスセ

ミナー、発展セミナーと

続く。そのなかで東海林・

看護師長はプレゼンター

(指導者)としてNPO

法人BSケア(寺田恵子

理事長)に登録した。

助産師の資格をもつ澤

田和美・看護師長もBS

ケアに精力的だ。「学校

では教わらない技術です

が、産婦さんのケアには

必要と考えています」と

言うように同院の助産師

は、ほぼ全員、ベーシッ

ク・アドバンスセミナー

を受講している。

現在、同院では母乳育

児に悩む母親に対しBS

ケアを実施。母親からは

「痛くなくて安心しまし

た」、「母乳が出るように

なり、赤ちゃんも喜んで

いるみたい」など好評だ。

スムーズに授乳できると、

母親の負担も減る。産後

の乳房ケアが丁寧だとい

うクチコミが評判を呼び、

第46回日本集中治療医学会学術集会が3月1日から

3日間、京都府内で開催された。徳洲会は口演、ポ

スターを含め28演題を発表。口演で名古屋徳洲会総

合病院の大城規和・心臓血管外科医長(現・大垣徳

洲会病院心臓血管外科部長)が優秀演題に選ばれた。

神奈川徳友会

車いすを寄贈

大和徳洲会病院は2月

8日、神奈川県の徳洲会

病院の協力企業で組織す

る神奈川徳友会から車い

すの寄贈を受けた。授与

式は同院の職員が見守る

なか、朝礼時に行った。

同会の吉岡貞朗会長と竹

内俊州・大和支部支部長

(本部副会長)が、川本

龍成院長に車いすを引き

渡すと、拍手に包まれた。

竹内支部長は「開院か

ら1年を迎えようとして

いる大和病院を徳友会と

共に盛り上げていきたい

です」と意気込みを語っ

た。川本院長は実際に車

いすに座り、職員の笑い

を誘った後、「有効に使

わせていただきます」と

感謝の言葉を述べた。

れ発表した。

札幌東病院の松本悠・

救急科医師は2演題を発

表した。このうち「未診

断の進行直腸がんによる

腸閉塞・多臓器不全症例

で経験した治療方針設定

についての考察」では、

家族の意思で治療介入を

開始し、状態回復後に本

人の意思決定により治療

を撤退した症例を報告。

患者さんは日頃より積極

的な治療を拒否していた

が、「重症患者さんの意

思確認で、十分な情報提

供がなされていない状態

での希望を文面とおりに

受け止めるのは、慎重に

なるべきと考えます」と

まとめた。

吹田徳洲会病院(大阪

府)の公文啓二・副院長

兼集中治療センター長は

3演題を発表。このうち

「新設病院ハイケアユニ

ット(HCU)における

培養同定菌の検討」では、

17年9月から院内で細菌

培養検査が可能になった

ため、HCUからの1年

分の検体に関し菌のデー

タベースを作成、検討し

た。「当HCUで同定さ

れる頻度の高い菌や感受

性パターンを把握するこ

とができるようになり、

より迅速で適正な抗生物

質投与が可能となりまし

た」と結論付けた。また、

ER(救急外来)からの

検体でも同様の研究を実

施、ERで適切な抗生物

質の選択が可能になった

と発表した。

別の発表ではHCUの

診療実績などを検討し、

特定集中治療室管理料加

算の取得に関する評価も

実施。適切であると判断

し、体制を整え18年10月

に同加算3を取得、同加

算1の取得も目指すこと

を報告した。今年4月に

は日本集中治療医学会専

門医研修施設を申請。

大和病院

東京西徳洲会病院は3

月14日、近隣の横田基地

空軍病院関係者の視察に

対応した。同院との連携

強化が狙い。

視察に訪れたのはコメ

ディカルを中心とする13

人。東京西病院の佐藤一

彦副院長、渕上ひろみ乳

腺腫瘍センター医師、J

CI(世界的な医療機能

評価)事務局の田嶋康宏

職員、山崎倫子職員、通

訳を務めた田中耕太郎・

国際医療支援室職員らが

ガイド役として院内を案

内し、訪れた先の各部署

のスタッフが詳しく説明

した。

宗像雅則事務長が徳洲

会グループや自院の特徴

を説明した後、一行は病

棟やHCU(高度治療室)、

ER(救急外来)、検査室、

放射線治療室などを順次、

見学。病棟で、電子カル

テを載せたカートが看護

師に1人1台割り当てら

れていることに「転記漏

れや記載漏れなどのリス

クが低い素晴らしいシス

テム」と細かい点にまで

関心を示した。

また「検査機器のメン

テナンスチェックはどの

くらいの頻度で行ってい

るのか」「機器が使用で

きなくなった時のバック

アッププランはあるの

か」、「ICU(集中治療

室)に専属の医師はいる

のか」、「救急を断らざる

を得ないケースはないの

か」、「違う病院では家族

の救急搬送を断られたが、

地域で救急を断る基準が

あるのか」など各部署で

矢継ぎ早に質問を浴びせ、

関心の高さがうかがえた。

最後に、佐藤副院長が

謝意を伝え、「これからは、

いつでも当院をご利用く

ださい」と呼びかけた。

札幌病院

産婦さんから好評

BSケアに注力

横田基地病院と連携強化

東京西病 院

米軍関係者が視察

同院で出産を希望する方

が増えたほどだ。今後は、

産後なるべく早い段階で

BSケアを実施し、乳腺

炎などを未然に防ぐのが

課題。澤田・看護師長は

「産後に不安を抱える母

親の相談に、気軽に乗れ

る助産師を育成していき

たい」と意気軒高だ。

鹿児島徳洲会病院は3月2日と6日にキャリアcafeを鹿児島市内の喫茶店で初開催した。キャリアcafeは就職・転職希望者がケーキやドリンクを楽しみ

ながら、業務内容や職場環境などについて気軽に質問・相談できるイベント。

同院の倉掛真理子・副院長兼看護部長は「当院では今回、採用が難航していた看護補助者に職種を絞って開催しました。すでに病院見学を終え、6月から入職が決まっている方もいます」と話す。

今回のキャリアcafeをフリーペーパーや新聞の折り込み広告で告知したところ、複数の面接希望者から連絡があるなど反響があったという。「予想以上の反響でしたので、今後も有力なリクルートのツールとして取り組んでいきたい」と倉掛副院長。キャリアcafeの当日は参加者が来場すると、倉掛副院長が看護補助者の業務内容や先輩スタッフの声などを紹介し、個別相談を行った。

なお同院は看護学生だけではなく看護師、介護福祉士、看護補助者を対象としたインターンシップの受け入れも行っており、職場の雰囲気や業務量などを感じることができることから好評で、インターンシップを経て入職したスタッフの満足度は高いという。

キャリアcafe初開催鹿児島病院

予想以上の反響で入職者も決定

大城医長が優秀演題

日 本 集 中治療医学会

名古屋

病 院

徳洲会から28演題

東海林・看護師長(当時、左)と澤田・看護師長はBSケアに注力

ERの説明に熱心に耳を傾ける視察団

寄贈した車いすと吉岡会長(左)と竹内支部長

比屋根看護師はシンポジウムでMEWSをテーマに発表

大城医師はインペラがテーマの口演で優秀演題

学会に参加した名古屋病院のスタッフ

参加者に業務内容などを説明する倉掛副院長(中央)と平山真吾・総務課係長

徳 洲 新 聞 生い の ち

命だけは平等だ❸ 平成 31年 4 月29 日 月曜日 │ No.1182

Page 4: TOKUSHUKAI MEDICAL GROUP NEWS 大垣病院 心臓血管外科を … · その後、名古屋病院の循環器内科と同グループの体制充実にと心臓血管外科手術を実施するなど診療に尽力したものの、マンパワーの面で制約より実現した。大垣病院は2008年4月の開設後、約2年間で200例以上の屋徳洲会総合病院を中心とする「名古屋徳洲会心臓血管外科グループ」の支援に大垣徳洲会病院(岐阜県)は4月、心臓血管外科診療を本格的に再開した。名古

札幌南病院 認知症対応を強化カンフォータブル・ケア導入

が多く、抗凝固薬のみで

治療を行うことがほとん

どだが、今回の研究で抗

凝固薬だけでは合併症を

防げない可能性を示唆。

海外のデータや自院のケ

ースをふまえ「治療方針

の選択については、その

ときどきで慎重に吟味す

る必要性」を指摘した。

このほか演題発表は湘

南鎌倉総合病院(神奈川

県)、東京西徳洲会病院、

札幌東徳洲会病院も行い、

今大会は熱気を帯びたま

ま終了。

藤原部長は「17年から

本格的に国際化に注力し、

海外からの参加人数も36

人、105人、154人

と順調に増えています。

とくにアジア圏の方が多

いのは嬉しい限り。循環

器内科医師のみならず、

心臓血管外科医師や放射

線科医師もバランス良く

参加してくださり、“国境、

診療科を超えて、より良

い医療を提供したい”と

いう目標に沿った形で、

当会が発展していると思

います」と手応えを実感

している様子だった。

の患者さんを分析した結

果、10・3%の患者さん

がDVTと診断、そのう

ち治療を受けたのは49%

だったことが判明。

DVT患者さんは入院、

寝たきり、症状(浮腫、

腫しゅ

脹ちょうなど)、肺塞栓を有

する順で有意に多く、ま

た自院でフォローした79

人のうち21人がDVTの

合併症であるPTS(血

栓後症候群)を発症して

いた。事前に抗凝固薬を

内服している患者さんの

群と内服していない患者

さんの群とでは有意差は

なかった。

現在、日本ではDVT

に対するインターベンシ

ョン治療は未承認のもの

って、さまざまな過程が

あると知りました。日本

では厳格な臨床試験など

をふまえ使用できるよう

になるため、安全性・有

効性が担保されている日

本の良さを再認識しまし

た」と振り返った。横井

副院長も数多くのセッシ

ョンで座長などを務めた。

一般演題発表では岸和

田病院の森下優・循環器

内科医師(当時)が徳洲

会関係者では初となる最

優秀賞を受賞。閉会式の

なかで表彰された。演題

のテーマは下肢静脈エコ

ーによる深部静脈血栓症

(DVT)の罹り

病びょう

率。自

院で1年間に下肢静脈エ

コーを行った1137人

JETは岸和田病院の

横井良明副院長が200

3年に立ち上げたJPI

C(Japan Peripheral In

tervention Conference

を前身とする末梢血管内

治療の学術集会。07年に

JETに改称し、その後、

一般社団法人化を経て09

年から現在の形で年1回

開催するようになった。

権威にとらわれず、若

手医師が積極的に発言・

発表。演題発表をはじめ

実際に患者さんを治療し

ている様子を病院から中

継し、供覧するライブセ

ッション、国内外の医師

が議論を交わすディベー

トセッションを多く設け

るなど、現場重視かつ“楽

しく学ぶ”をコンセプト

としている。国際化、グ

ローバリゼーションを目

指していることから、英

語によるセッションを増

やしているのも特徴だ。

今年2月に行われた11

回目の今回は、国内外か

ら2022人が参加。う

ち約1割がアジア圏を中

心とする外国人参加者で、

セッションの約半数が全

編英語となった。目玉の

ライブセッションでは全

国4病院で行った計30症

例の治療の様子をライブ

配信。21人の医師が手技

のポイントや工夫を解説

した。

ディベートセッション

では治療の効果や安全性

の向上のみならず、医療

コストなど多岐にわたる

視点で活発な議論を交わ

した。一般演題発表は1

30題に上り、多様な職

種が発表した。

「国境や診療科を超えて

より良い医療提供したい」

徳洲会グループからは

4病院が参加。なかでも

岸和田病院の藤原部長は

今大会の実行委員を務め、

企画・運営だけでなく、

12セッションに演者や座

長として登壇。

ライブセッションでは、

英語で行われるメインラ

イブの1例でオペレータ

ーを務めた。自院の矢津

優子・臨床工学技士を助

手とし、今年1月に保険

収載された石灰化に非常

に強い新たなステント(S

UPERA

ステント)を用

いて、複雑石灰化をとも

なう浅大腿動脈慢性完全

閉塞の治療を行った。

「同ステントのライブデ

モンストレーションは国

内初症例で、大変注目度

の高い治療でした」(藤

原部長)。

ディベートセッション

ではバルーンやステント

など医療機材が自国で使

用できるようになるまで

のプロセスをシンガポー

ル、中国、韓国、台湾か

らのパネリストなどと議

論。藤原部長は「日本と

まったく異なり、国によ

札幌南徳洲会病院が認知症患者さん対応の一環で、2017年から実施しているカンフォータブル・ケアの効果が表れつつある。同ケアは道内の旭山病院に勤務している南敦司・看護師長が考案した認知症ケアの手法。

①いつも笑顔、②いつも敬語、③目線を合わせる、④優しく触れる、⑤ほめる、⑥謝る態度を見せる、⑦不快なことは素早く終わらせる、⑧演じる要素をもつ、⑨気持ちに余裕をもつ、⑩相手に関心を向ける――の10項目を基本技術とし、これらを通じ心地良いと感じる刺激(快刺激)を提供することで、認知症の周辺症状(暴言、暴力、興奮、抑うつ、昼夜逆転、幻覚、

妄想、徘は い か い

徊、失禁など)を抑える。札幌南病院が同ケアを導入したきっかけは認知症の入院患者

さんの増加。認知症外来を開設した14年以降急増し、月平均で認知症高齢者生活自立度Ⅲ以上の患者さんが、ほぼ半数を占めた。同ランクは日常生活に支障を来すような症状・行動(着替え、食事、排便・排尿がうまくできない、徘徊、大声・奇声をあげる、火の不始末など)や意思疎通の困難さが見られ介護を要する状態を指す。

その結果、認知症の周辺症状の対応に苦慮する看護職員が増加。周辺症状への対応力向上が必要と考え、17年9月に同ケアの考案者である南・看護師長を招き院内で講演会を開いた。講演会を企画した札幌南病院の棟方千秋・看護師長は「道内の医療系新聞社が発刊している月刊誌に掲載されていた南・看護師長の記事を拝見し、ぜひ話を聞きたいと思い提案しました。すぐに実践できるものが多く、当院でも取り入れようと決めました」と振り返る。

同年11月に各師長が旭山病院を見学に訪れ、まずは同院で行っていた朝礼と終礼を自院で実践。朝礼では患者さんとのかかわり方を部署で共有し「私的感情を切り替える」、終礼では患者さんに見受けられた良かった点を発表し「負の感情をもち帰らない」ことに努めた。18年にも同ケアをテーマとした看護部必修の研修を複数回実施。他職種も参加できるようにし定着を図っていった。

その結果、周辺症状が激減。看護職員69人にアンケート調査を実施したところ、不穏時に用いる薬物の使用量が前年度から50%以上減少したことなどが判明。「効果がある」と回答した割合は76%に上り、「患者さんの拒否が減ったと思う。何より自分が楽しく働けている」、「病棟全体で当たり前のように敬語で話す環境が心地良い」、「相手の目線に合わせて接すると、スムーズにケアできるように感じられる」といった声が寄せられた。

棟方・看護師長は「すぐに実践できる技術のため看護部全体で取り組め、それがケアの向上につながっていると思います」と強調。「職員間のコミュニケーションも、より良くなったという声もあります」とシナジー効果も得られているという。

日高徳洲会病院(北海道)の井齋偉矢院長が理事長を務めるサイエンス漢方処方研究会が3月24日、都内で第8回シンポジウムを開催した。 医師や研究者など約70人が参加、会場は熱気 に 包 ま れ た。2012年に発足した同研究会は漢方薬の作用機序などを解明、医師の誰もが診療に取り入れられるようにし、現代医療の質向上を図るのが目的。

井齋院長の開会挨拶に続き、今回のシンポジウムでは4人の講師が漢方研究などに関する最新の知見を紹介。はじめに一般講演として、ツムラ漢方研究開発本部ツムラ漢方研究所漢方システムバイオロジー部の李慶湖・課長補佐が、単一患者さんを対象に治療効果を評価する試験法であるN-of-1 trialsの特徴などを解説した。

福山大学薬学部漢方薬物解析学研究室の髙山健人助教は、腸内細菌叢

そ う

と漢方薬のクロストーク(相互作用)を検討するために、便秘薬として用いられる大

だ い お う か ん ぞ う と う

黄甘草湯を例に、腸内細菌叢の変化や人体への影響などの研究結果を報告した。

続いて、特別講演として東京大学生産技術研究所の合

原一幸教授が、複雑系数理モデル学をもとに、未病状態を疾病前状態として数学的に定義し、健康状態と疾病前状

態を識別するためのDNB(Dynamical Network Biomarkers)という概念を提言し解説した。

この後、教育講演では、帝京平成大学薬学部薬学科の濃沼政美教授が、臨床研究を取り巻く近年の環境変化や統計学的因果推論の意義、疾患登録(レジストリ)データベースの必要性などに触れ、漢方臨床研究にふさわしい研究デザインをテーマに講演を行った。

最後に井齋院長が登壇し、漢方研究の将来的な方向性として、N-of-1 trialsなど精度の高い治療効果評価法の確立や、計算能力の高い量子コンピュータの実用化による究極の個別化医療などを提示した。井齋院長は「今回、参加者の皆さんと共有できた知見を土台として、漢方研究を新たなステージにステップアップしていきたい」と意気込みを語った。

第8回シンポジウムを開催

井齋・日高病院院長が理事長

サイエンス漢方処方研究会

作用機序解明など知見共有

今回も前回に続き国内外から参加者2,000人超と盛況

「漢方研究を新たなステージへ」と井齋院長

医師や研究者など約70人が参加

末梢血管内治療の学術集会「JET(Japan Endovascular Treatm

ent Conference

2019」が3日間、都内で開かれ、国内外から医師をはじめ2022人の医療

従事者が参加した。徳洲会からは4病院が参加し多様なプログラムで発表した。

次回は岸和田徳洲会病院(大阪府)の藤原昌彦・循環器内科部長が事務局長を務め、

2020年2月に大阪で行う予定。

国内外から2000人超参加

一般演題で最優秀賞を受賞

岸和田病院が徳洲会初

学 術 集 会「JET2019」

カンフォータブル・ケアの成果をアピールする棟方・看護師長

技術に基づき患者さんに対応する泉洋子看護師(左)と村瀨紗季看護師

職員間の意思疎通にも好影響

藤原部長は演者や座長を務め多くのプログラムで活躍

演者の発表スライドに見入る横井副院長(右)

最優秀賞を受賞した森下医師

徳 洲 新 聞生い の ち

命だけは平等だ 平成 31年 4 月29 日 月曜日 │ No.1182 ❹