urban real estate market504.8 497.4 521.8...

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URBAN REAL ESTATE MARKET.01 2009年1月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。 ※上記のグラフおよびコメントは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。 ※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。 200920102011201220132014201520162017201820192020 (1~7月) 600 500 400 300 200 100 0 0 800 700 600 500 400 300 200 100 高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成 約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る と、2 0 1 3 年 以 降は2 0 1 9 年まで成 約 件 数 、坪 単 価 ともおおむね右肩上がりで推移していることがわか る。2013年はアベノミクスがスタートし、黒田日銀 総裁による異次元金融緩和が始まった年でもある。 価格帯別では1億円未満の物件のシェアが低下 しており、2012年には全体の8割を超えていたが、 2019年には52.0%までダウン。逆に1億円以上の 価格帯は伸びており、特に2億円以上の高額物件の シェアは2012年の1.7%から2019年には7.1%に アップした。 2020年も価格帯別のシェアは前年とほぼ同様 の比率で推移している。高額物件のシェアが高まっ ているため坪単価も上昇傾向が続いており、2020 年は7月までの平均が510.1万円と、前年(506.1 万円)を上回る水準だ。 ■価格帯別成約件数・成約平均坪単価年次推移 (GRANTACT取扱マンション) ~5,000万円未満 5,000~10,000万円未満 10,000~15,000万円未満 15,000~20,000万円未満 20,000万円以上 成約平均坪単価 ※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区における GRANTACT 取扱マンション 右肩上がりの展開を続けてきた都心の不動産マーケットも、 新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを避けることはできなかった。 だが、市況の落ち込みは一時的なもので、すでに回復の動きは顕著に表れている。 ウィズコロナの状況が長期化するといわれる中、この先も堅調な市況が続くのか。 成約物件と経済のデータから現状と今後を読み解いてみよう。 データから読み解く都心不動産マーケット コロナ禍で成約件数・坪単価が落ち込むも、 直近では回復へ Pick Up 1 05

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Page 1: URBAN REAL ESTATE MARKET504.8 497.4 521.8 高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成 約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

URBAN REAL ESTATE MARKET.01

2018年7月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記の表・グラフは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年1月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記のグラフおよびコメントは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020(1~7月)

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2018年

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474.9474.9497.4497.4504.8504.8

497.4497.4

521.8521.8

高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く

 GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成

約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

と、2013年以降は2019年まで成約件数、坪単価

ともおおむね右肩上がりで推移していることがわか

る。2013年はアベノミクスがスタートし、黒田日銀

総裁による異次元金融緩和が始まった年でもある。

 価格帯別では1億円未満の物件のシェアが低下

しており、2012年には全体の8割を超えていたが、

2019年には52.0%までダウン。逆に1億円以上の

価格帯は伸びており、特に2億円以上の高額物件の

シェアは2012年の1.7%から2019年には7.1%に

アップした。

 2020年も価格帯別のシェアは前年とほぼ同様

の比率で推移している。高額物件のシェアが高まっ

ているため坪単価も上昇傾向が続いており、2020

年は7月までの平均が510.1万円と、前年(506.1

万円)を上回る水準だ。

緊急事態宣言の解除後は成約件数が増加に転じる

 2020年に入っても坪単価は高水準で推移しているが、成約件数にはコロナ禍の影響が表れている。3月に成約件数が前年比

マイナス20.3%にダウンし、特に1億円以上の価格帯が同マイナス32.4%と大きく減少したことから、市場を牽引してきた高額

物件の売買の落ち込みが懸念された。

 4月にはいったん成約件数が前年比で4割強増えたが、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出し営業活動が自粛されたことか

ら、5月には成約件数が同4割強減少。宣言が解除された5月25日以降も影響は続き、6月には同20.0%減となった。だが、6月以

降は売買の相談件数が回復してきたこともあり、7月には成約件数も前年比2.4%の増加に転じている。

 月ごとの成約坪単価は5月に470万円台に落ち込んだのを除いて、500万円台を維持している。7月には1億円以上の価格帯

もほぼ前年並みの成約件数に回復し、坪単価も523.9万円と1月(530.1万円)以来の高い水準となった。

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価年次推移 (GRANTACT取扱マンション)

価格帯別成約件数(件)

成約平均坪単価(万円)

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価月次推移(GRANTACT取扱マンション)

~5,000万円未満 5,000~10,000万円未満 10,000~15,000万円未満15,000~20,000万円未満 20,000万円以上 成約平均坪単価

10,000万円以上~10,000万円未満 前年同期(坪単価) 直近1年(坪単価)

価格帯別成約件数(件)

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

右肩上がりの展開を続けてきた都心の不動産マーケットも、

新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを避けることはできなかった。

だが、市況の落ち込みは一時的なもので、すでに回復の動きは顕著に表れている。

ウィズコロナの状況が長期化するといわれる中、この先も堅調な市況が続くのか。

成約物件と経済のデータから現状と今後を読み解いてみよう。

データから読み解く都心不動産マーケット

コロナ禍で成約件数・坪単価が落ち込むも、直近では回復へ

Pick Up 1

GRANTACT | 0605

M_200922_Lv_Grantact_P5P6_07.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.01

2018年7月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記の表・グラフは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年1月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記のグラフおよびコメントは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020(1~7月)

600

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2019年

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2019年

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2019年

2020

4月年

523.9523.9527.1527.1

512.5512.5510.0510.0

474.0474.0

496.2496.2

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481.5481.5

2019年

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2019年

2020

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2019年

2020

1月年

2018年

2019

12月年

2018年

2019

11月年

2018年

2019

10月年

2018年

2019

9月年

2018年

2019

8月年

2018年

2019

7月年

504.6504.6

514.1514.1501.7501.7

501.2501.2

530.1530.1

478.2478.2

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489.6489.6

527.1527.1

474.9474.9497.4497.4504.8504.8

497.4497.4

521.8521.8

高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く

 GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成

約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

と、2013年以降は2019年まで成約件数、坪単価

ともおおむね右肩上がりで推移していることがわか

る。2013年はアベノミクスがスタートし、黒田日銀

総裁による異次元金融緩和が始まった年でもある。

 価格帯別では1億円未満の物件のシェアが低下

しており、2012年には全体の8割を超えていたが、

2019年には52.0%までダウン。逆に1億円以上の

価格帯は伸びており、特に2億円以上の高額物件の

シェアは2012年の1.7%から2019年には7.1%に

アップした。

 2020年も価格帯別のシェアは前年とほぼ同様

の比率で推移している。高額物件のシェアが高まっ

ているため坪単価も上昇傾向が続いており、2020

年は7月までの平均が510.1万円と、前年(506.1

万円)を上回る水準だ。

緊急事態宣言の解除後は成約件数が増加に転じる

 2020年に入っても坪単価は高水準で推移しているが、成約件数にはコロナ禍の影響が表れている。3月に成約件数が前年比

マイナス20.3%にダウンし、特に1億円以上の価格帯が同マイナス32.4%と大きく減少したことから、市場を牽引してきた高額

物件の売買の落ち込みが懸念された。

 4月にはいったん成約件数が前年比で4割強増えたが、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出し営業活動が自粛されたことか

ら、5月には成約件数が同4割強減少。宣言が解除された5月25日以降も影響は続き、6月には同20.0%減となった。だが、6月以

降は売買の相談件数が回復してきたこともあり、7月には成約件数も前年比2.4%の増加に転じている。

 月ごとの成約坪単価は5月に470万円台に落ち込んだのを除いて、500万円台を維持している。7月には1億円以上の価格帯

もほぼ前年並みの成約件数に回復し、坪単価も523.9万円と1月(530.1万円)以来の高い水準となった。

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価年次推移 (GRANTACT取扱マンション)

価格帯別成約件数(件)

成約平均坪単価(万円)

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価月次推移(GRANTACT取扱マンション)

~5,000万円未満 5,000~10,000万円未満 10,000~15,000万円未満15,000~20,000万円未満 20,000万円以上 成約平均坪単価

10,000万円以上~10,000万円未満 前年同期(坪単価) 直近1年(坪単価)

価格帯別成約件数(件)

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

右肩上がりの展開を続けてきた都心の不動産マーケットも、

新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを避けることはできなかった。

だが、市況の落ち込みは一時的なもので、すでに回復の動きは顕著に表れている。

ウィズコロナの状況が長期化するといわれる中、この先も堅調な市況が続くのか。

成約物件と経済のデータから現状と今後を読み解いてみよう。

データから読み解く都心不動産マーケット

コロナ禍で成約件数・坪単価が落ち込むも、直近では回復へ

Pick Up 1

GRANTACT | 0605

M_200922_Lv_Grantact_P5P6_07.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.02

株価上昇が続く中、米国のインフレ懸念から円高傾向へ

 ここ数カ月間の経済マーケット

の動きを確認しておくと、まず日経

平均株価はコロナ禍の影響を受け

て2月下旬から急落した。世界保健

機関(WHO)がパンデミックを宣

言した8日後の3月19日には1万

6500円台まで下落したが、その後

は回復し、6月中旬以降は 2 万

2000円台前後で推移した。8月に

入ると米株式市場で新型コロナワ

クチンの開発期待やハイテク株の

上昇などからダウ工業株30種平

均が上昇基調となり、連動して日

経平均も上昇する局面が増えてい

る。

 一方、ドル円レートはコロナ禍の

影響で3月に大きく上下したが、4

月以降は108円前後の落ち着いた

動きになっていた。だが、7月下旬以降はドル安円高にふれる局面が目立ち、8月以降は106円を挟む展開となっている。円高の背

景には米国でのコロナ対策に伴う大規模な金融緩和や財政出動でインフレ懸念が高まり、ドル売り円買いにつながる流れがある

ようだ。円高は日本の景気を下押しするリスクがあるため、今後の展開に注意が必要となるだろう。

コロナ禍で都心マンションへの根強いニーズが浮き彫りに

 コロナ禍を受けて米連邦準備制度理事

会(FRB)は3月に2度にわたり大幅な利下

げを実施し、政策金利を4年3カ月ぶりに

ゼロに戻した。また日銀も上場投資信託

(ETF)の購入額拡大など追加的な金融緩

和を打ち出し、4月には国債購入の上限撤

廃に踏み切った。こうした日米中央銀行に

よる追加緩和により長期金利は安定を

保っているのが現状だ。さらに米国では9

月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で

フォワードガイダンス(政策の先行きに関

する指針)の強化による低金利の長期化を

打ち出す可能性があり、日米ともに今後し

ばらくは長期金利の低水準での推移が続

くと見られる。

日米の金融緩和強化で低金利は長期化の見通し強まる

 住宅ローン金利などの基準となる長期金利はコロナ禍による世界的な景気後退懸念から2月下旬にはマイナス1%を割り込

んだが、その後は落ち着きを取り戻し、0%前後で推移した。8月に入りワクチンの開発期待などから上昇する場面も見られるが、

0.05%以内での小幅な動きとなっている。

住宅ジャーナリスト。住宅専門のシンクタンク・オイコス代表。『都心に住む』「SUUMOジャーナル」「AllAbout」などの情報誌やwebで取材・執筆活動を行う。近著に『まるわかり!不動産活用』(共著・日本経済新聞出版社)『マンション管理 修繕・建替え徹底ガイド』(同)などがある。

大 森 広 司お お も り ひ ろ し

P R O F I L E

 コロナ禍の第1波に見舞われていた時期には、都心部の不動産マーケットの先行きを悲観する見方も少なくなかった。すなわ

ち3密が発生しやすい都心部が敬遠され、郊外の広めの住宅に需要がシフトするとの予測だ。だが実際にはそうした動きは一部

に限られ、データが示すように6月以降は都心のマンション市場でも成約件数の回復が見られる。7月以降も第2波が発生してい

るといわれるなか、都心不動産へのニーズは根強さを維持しているようだ。

 コロナ対策としてリモートワークが普及しても、通勤がゼロになるわけではない。だとすれば通勤ラッシュのリスクを避ける意

味でも都心マンションへの需要はむしろ高まると考えられる。むろん、ホテルや商業ビルの需要回復には時間がかかるとみられ、

都心の不動産相場に下押し圧力がかかることでマンション価格も大幅な上昇とはならないだろう。だが、超低金利にも後押しさ

れた都心居住への堅調なニーズが、マンション相場を支えていく状況は今後も続くと予測できそうだ。

※上記グラフは日経平均株価(株式会社日本経済新聞社)、円ドル相場(日本銀行)について、 月次データ推移を東急リバブルにて作成しました。※日経平均と円相場は月末における中心相場の数値

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10年国債金利

米国10年国債金利 10年国債金利 金利ギャップ

※上記グラフは米国10年国債金利はFRB、10年国債金利は財務省より2008年からの データ抽出の上、東急リバブルにて作成しました。 ※月平均の数値

ドル安のリスクを抱えつつもマーケットは落ち着いた動きに

Pick Up 2

日経平均株価(円)

日経平均 為替(円ドル)

円ドル(円)

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GRANTACT | 0807

M_200922_Lv_Grantact_P7P8_06.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.02

株価上昇が続く中、米国のインフレ懸念から円高傾向へ

 ここ数カ月間の経済マーケット

の動きを確認しておくと、まず日経

平均株価はコロナ禍の影響を受け

て2月下旬から急落した。世界保健

機関(WHO)がパンデミックを宣

言した8日後の3月19日には1万

6500円台まで下落したが、その後

は回復し、6月中旬以降は 2 万

2000円台前後で推移した。8月に

入ると米株式市場で新型コロナワ

クチンの開発期待やハイテク株の

上昇などからダウ工業株30種平

均が上昇基調となり、連動して日

経平均も上昇する局面が増えてい

る。

 一方、ドル円レートはコロナ禍の

影響で3月に大きく上下したが、4

月以降は108円前後の落ち着いた

動きになっていた。だが、7月下旬以降はドル安円高にふれる局面が目立ち、8月以降は106円を挟む展開となっている。円高の背

景には米国でのコロナ対策に伴う大規模な金融緩和や財政出動でインフレ懸念が高まり、ドル売り円買いにつながる流れがある

ようだ。円高は日本の景気を下押しするリスクがあるため、今後の展開に注意が必要となるだろう。

コロナ禍で都心マンションへの根強いニーズが浮き彫りに

 コロナ禍を受けて米連邦準備制度理事

会(FRB)は3月に2度にわたり大幅な利下

げを実施し、政策金利を4年3カ月ぶりに

ゼロに戻した。また日銀も上場投資信託

(ETF)の購入額拡大など追加的な金融緩

和を打ち出し、4月には国債購入の上限撤

廃に踏み切った。こうした日米中央銀行に

よる追加緩和により長期金利は安定を

保っているのが現状だ。さらに米国では9

月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で

フォワードガイダンス(政策の先行きに関

する指針)の強化による低金利の長期化を

打ち出す可能性があり、日米ともに今後し

ばらくは長期金利の低水準での推移が続

くと見られる。

日米の金融緩和強化で低金利は長期化の見通し強まる

 住宅ローン金利などの基準となる長期金利はコロナ禍による世界的な景気後退懸念から2月下旬にはマイナス1%を割り込

んだが、その後は落ち着きを取り戻し、0%前後で推移した。8月に入りワクチンの開発期待などから上昇する場面も見られるが、

0.05%以内での小幅な動きとなっている。

住宅ジャーナリスト。住宅専門のシンクタンク・オイコス代表。『都心に住む』「SUUMOジャーナル」「AllAbout」などの情報誌やwebで取材・執筆活動を行う。近著に『まるわかり!不動産活用』(共著・日本経済新聞出版社)『マンション管理 修繕・建替え徹底ガイド』(同)などがある。

大 森 広 司お お も り ひ ろ し

P R O F I L E

 コロナ禍の第1波に見舞われていた時期には、都心部の不動産マーケットの先行きを悲観する見方も少なくなかった。すなわ

ち3密が発生しやすい都心部が敬遠され、郊外の広めの住宅に需要がシフトするとの予測だ。だが実際にはそうした動きは一部

に限られ、データが示すように6月以降は都心のマンション市場でも成約件数の回復が見られる。7月以降も第2波が発生してい

るといわれるなか、都心不動産へのニーズは根強さを維持しているようだ。

 コロナ対策としてリモートワークが普及しても、通勤がゼロになるわけではない。だとすれば通勤ラッシュのリスクを避ける意

味でも都心マンションへの需要はむしろ高まると考えられる。むろん、ホテルや商業ビルの需要回復には時間がかかるとみられ、

都心の不動産相場に下押し圧力がかかることでマンション価格も大幅な上昇とはならないだろう。だが、超低金利にも後押しさ

れた都心居住への堅調なニーズが、マンション相場を支えていく状況は今後も続くと予測できそうだ。

※上記グラフは日経平均株価(株式会社日本経済新聞社)、円ドル相場(日本銀行)について、 月次データ推移を東急リバブルにて作成しました。※日経平均と円相場は月末における中心相場の数値

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

10年国債金利

米国10年国債金利 10年国債金利 金利ギャップ

※上記グラフは米国10年国債金利はFRB、10年国債金利は財務省より2008年からの データ抽出の上、東急リバブルにて作成しました。 ※月平均の数値

ドル安のリスクを抱えつつもマーケットは落ち着いた動きに

Pick Up 2

日経平均株価(円)

日経平均 為替(円ドル)

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

GRANTACT | 0807

M_200922_Lv_Grantact_P7P8_06.PDF

Page 2: URBAN REAL ESTATE MARKET504.8 497.4 521.8 高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成 約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

URBAN REAL ESTATE MARKET.01

2018年7月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記の表・グラフは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年1月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記のグラフおよびコメントは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020(1~7月)

600

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2019年

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523.9523.9527.1527.1

512.5512.5510.0510.0

474.0474.0

496.2496.2

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232310101414

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4141

4343

515.0515.0

481.5481.5

2019年

2020

3月年

2019年

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2019年

2020

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2019

12月年

2018年

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2018年

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2019

9月年

2018年

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8月年

2018年

2019

7月年

504.6504.6

514.1514.1501.7501.7

501.2501.2

530.1530.1

478.2478.2

2323

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4242

40402121

2020

3131

2626

2525

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3131

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1919

2828

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2828

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2020

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3636

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3737

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3434

580.93580.93

520.5520.5504.0504.0

490.9490.9

512.2512.2

489.6489.6

527.1527.1

474.9474.9497.4497.4504.8504.8

497.4497.4

521.8521.8

高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く

 GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成

約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

と、2013年以降は2019年まで成約件数、坪単価

ともおおむね右肩上がりで推移していることがわか

る。2013年はアベノミクスがスタートし、黒田日銀

総裁による異次元金融緩和が始まった年でもある。

 価格帯別では1億円未満の物件のシェアが低下

しており、2012年には全体の8割を超えていたが、

2019年には52.0%までダウン。逆に1億円以上の

価格帯は伸びており、特に2億円以上の高額物件の

シェアは2012年の1.7%から2019年には7.1%に

アップした。

 2020年も価格帯別のシェアは前年とほぼ同様

の比率で推移している。高額物件のシェアが高まっ

ているため坪単価も上昇傾向が続いており、2020

年は7月までの平均が510.1万円と、前年(506.1

万円)を上回る水準だ。

緊急事態宣言の解除後は成約件数が増加に転じる

 2020年に入っても坪単価は高水準で推移しているが、成約件数にはコロナ禍の影響が表れている。3月に成約件数が前年比

マイナス20.3%にダウンし、特に1億円以上の価格帯が同マイナス32.4%と大きく減少したことから、市場を牽引してきた高額

物件の売買の落ち込みが懸念された。

 4月にはいったん成約件数が前年比で4割強増えたが、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出し営業活動が自粛されたことか

ら、5月には成約件数が同4割強減少。宣言が解除された5月25日以降も影響は続き、6月には同20.0%減となった。だが、6月以

降は売買の相談件数が回復してきたこともあり、7月には成約件数も前年比2.4%の増加に転じている。

 月ごとの成約坪単価は5月に470万円台に落ち込んだのを除いて、500万円台を維持している。7月には1億円以上の価格帯

もほぼ前年並みの成約件数に回復し、坪単価も523.9万円と1月(530.1万円)以来の高い水準となった。

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価年次推移 (GRANTACT取扱マンション)

価格帯別成約件数(件)

成約平均坪単価(万円)

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価月次推移(GRANTACT取扱マンション)

~5,000万円未満 5,000~10,000万円未満 10,000~15,000万円未満15,000~20,000万円未満 20,000万円以上 成約平均坪単価

10,000万円以上~10,000万円未満 前年同期(坪単価) 直近1年(坪単価)

価格帯別成約件数(件)

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

右肩上がりの展開を続けてきた都心の不動産マーケットも、

新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを避けることはできなかった。

だが、市況の落ち込みは一時的なもので、すでに回復の動きは顕著に表れている。

ウィズコロナの状況が長期化するといわれる中、この先も堅調な市況が続くのか。

成約物件と経済のデータから現状と今後を読み解いてみよう。

データから読み解く都心不動産マーケット

コロナ禍で成約件数・坪単価が落ち込むも、直近では回復へ

Pick Up 1

GRANTACT | 0605

M_200922_Lv_Grantact_P5P6_07.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.01

2018年7月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記の表・グラフは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年1月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記のグラフおよびコメントは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020(1~7月)

600

500

400

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2019年

2020

7月年

2019年

2020

6月年

2019年

2020

5月年

2019年

2020

4月年

523.9523.9527.1527.1

512.5512.5510.0510.0

474.0474.0

496.2496.2

1616

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515.0515.0

481.5481.5

2019年

2020

3月年

2019年

2020

2月年

2019年

2020

1月年

2018年

2019

12月年

2018年

2019

11月年

2018年

2019

10月年

2018年

2019

9月年

2018年

2019

8月年

2018年

2019

7月年

504.6504.6

514.1514.1501.7501.7

501.2501.2

530.1530.1

478.2478.2

2323

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2020

3131

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2222

2929

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2020

2929

2121

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3636

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2525

3434

580.93580.93

520.5520.5504.0504.0

490.9490.9

512.2512.2

489.6489.6

527.1527.1

474.9474.9497.4497.4504.8504.8

497.4497.4

521.8521.8

高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く

 GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成

約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

と、2013年以降は2019年まで成約件数、坪単価

ともおおむね右肩上がりで推移していることがわか

る。2013年はアベノミクスがスタートし、黒田日銀

総裁による異次元金融緩和が始まった年でもある。

 価格帯別では1億円未満の物件のシェアが低下

しており、2012年には全体の8割を超えていたが、

2019年には52.0%までダウン。逆に1億円以上の

価格帯は伸びており、特に2億円以上の高額物件の

シェアは2012年の1.7%から2019年には7.1%に

アップした。

 2020年も価格帯別のシェアは前年とほぼ同様

の比率で推移している。高額物件のシェアが高まっ

ているため坪単価も上昇傾向が続いており、2020

年は7月までの平均が510.1万円と、前年(506.1

万円)を上回る水準だ。

緊急事態宣言の解除後は成約件数が増加に転じる

 2020年に入っても坪単価は高水準で推移しているが、成約件数にはコロナ禍の影響が表れている。3月に成約件数が前年比

マイナス20.3%にダウンし、特に1億円以上の価格帯が同マイナス32.4%と大きく減少したことから、市場を牽引してきた高額

物件の売買の落ち込みが懸念された。

 4月にはいったん成約件数が前年比で4割強増えたが、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出し営業活動が自粛されたことか

ら、5月には成約件数が同4割強減少。宣言が解除された5月25日以降も影響は続き、6月には同20.0%減となった。だが、6月以

降は売買の相談件数が回復してきたこともあり、7月には成約件数も前年比2.4%の増加に転じている。

 月ごとの成約坪単価は5月に470万円台に落ち込んだのを除いて、500万円台を維持している。7月には1億円以上の価格帯

もほぼ前年並みの成約件数に回復し、坪単価も523.9万円と1月(530.1万円)以来の高い水準となった。

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価年次推移 (GRANTACT取扱マンション)

価格帯別成約件数(件)

成約平均坪単価(万円)

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価月次推移(GRANTACT取扱マンション)

~5,000万円未満 5,000~10,000万円未満 10,000~15,000万円未満15,000~20,000万円未満 20,000万円以上 成約平均坪単価

10,000万円以上~10,000万円未満 前年同期(坪単価) 直近1年(坪単価)

価格帯別成約件数(件)

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

右肩上がりの展開を続けてきた都心の不動産マーケットも、

新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを避けることはできなかった。

だが、市況の落ち込みは一時的なもので、すでに回復の動きは顕著に表れている。

ウィズコロナの状況が長期化するといわれる中、この先も堅調な市況が続くのか。

成約物件と経済のデータから現状と今後を読み解いてみよう。

データから読み解く都心不動産マーケット

コロナ禍で成約件数・坪単価が落ち込むも、直近では回復へ

Pick Up 1

GRANTACT | 0605

M_200922_Lv_Grantact_P5P6_07.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.02

株価上昇が続く中、米国のインフレ懸念から円高傾向へ

 ここ数カ月間の経済マーケット

の動きを確認しておくと、まず日経

平均株価はコロナ禍の影響を受け

て2月下旬から急落した。世界保健

機関(WHO)がパンデミックを宣

言した8日後の3月19日には1万

6500円台まで下落したが、その後

は回復し、6月中旬以降は 2 万

2000円台前後で推移した。8月に

入ると米株式市場で新型コロナワ

クチンの開発期待やハイテク株の

上昇などからダウ工業株30種平

均が上昇基調となり、連動して日

経平均も上昇する局面が増えてい

る。

 一方、ドル円レートはコロナ禍の

影響で3月に大きく上下したが、4

月以降は108円前後の落ち着いた

動きになっていた。だが、7月下旬以降はドル安円高にふれる局面が目立ち、8月以降は106円を挟む展開となっている。円高の背

景には米国でのコロナ対策に伴う大規模な金融緩和や財政出動でインフレ懸念が高まり、ドル売り円買いにつながる流れがある

ようだ。円高は日本の景気を下押しするリスクがあるため、今後の展開に注意が必要となるだろう。

コロナ禍で都心マンションへの根強いニーズが浮き彫りに

 コロナ禍を受けて米連邦準備制度理事

会(FRB)は3月に2度にわたり大幅な利下

げを実施し、政策金利を4年3カ月ぶりに

ゼロに戻した。また日銀も上場投資信託

(ETF)の購入額拡大など追加的な金融緩

和を打ち出し、4月には国債購入の上限撤

廃に踏み切った。こうした日米中央銀行に

よる追加緩和により長期金利は安定を

保っているのが現状だ。さらに米国では9

月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で

フォワードガイダンス(政策の先行きに関

する指針)の強化による低金利の長期化を

打ち出す可能性があり、日米ともに今後し

ばらくは長期金利の低水準での推移が続

くと見られる。

日米の金融緩和強化で低金利は長期化の見通し強まる

 住宅ローン金利などの基準となる長期金利はコロナ禍による世界的な景気後退懸念から2月下旬にはマイナス1%を割り込

んだが、その後は落ち着きを取り戻し、0%前後で推移した。8月に入りワクチンの開発期待などから上昇する場面も見られるが、

0.05%以内での小幅な動きとなっている。

住宅ジャーナリスト。住宅専門のシンクタンク・オイコス代表。『都心に住む』「SUUMOジャーナル」「AllAbout」などの情報誌やwebで取材・執筆活動を行う。近著に『まるわかり!不動産活用』(共著・日本経済新聞出版社)『マンション管理 修繕・建替え徹底ガイド』(同)などがある。

大 森 広 司お お も り ひ ろ し

P R O F I L E

 コロナ禍の第1波に見舞われていた時期には、都心部の不動産マーケットの先行きを悲観する見方も少なくなかった。すなわ

ち3密が発生しやすい都心部が敬遠され、郊外の広めの住宅に需要がシフトするとの予測だ。だが実際にはそうした動きは一部

に限られ、データが示すように6月以降は都心のマンション市場でも成約件数の回復が見られる。7月以降も第2波が発生してい

るといわれるなか、都心不動産へのニーズは根強さを維持しているようだ。

 コロナ対策としてリモートワークが普及しても、通勤がゼロになるわけではない。だとすれば通勤ラッシュのリスクを避ける意

味でも都心マンションへの需要はむしろ高まると考えられる。むろん、ホテルや商業ビルの需要回復には時間がかかるとみられ、

都心の不動産相場に下押し圧力がかかることでマンション価格も大幅な上昇とはならないだろう。だが、超低金利にも後押しさ

れた都心居住への堅調なニーズが、マンション相場を支えていく状況は今後も続くと予測できそうだ。

※上記グラフは日経平均株価(株式会社日本経済新聞社)、円ドル相場(日本銀行)について、 月次データ推移を東急リバブルにて作成しました。※日経平均と円相場は月末における中心相場の数値

-1.00

-0.50

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

10年国債金利

米国10年国債金利 10年国債金利 金利ギャップ

※上記グラフは米国10年国債金利はFRB、10年国債金利は財務省より2008年からの データ抽出の上、東急リバブルにて作成しました。 ※月平均の数値

ドル安のリスクを抱えつつもマーケットは落ち着いた動きに

Pick Up 2

日経平均株価(円)

日経平均 為替(円ドル)

円ドル(円)

-10

10

30

50

70

90

110

130

150

0

5000

10000

15000

20000

25000

2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

GRANTACT | 0807

M_200922_Lv_Grantact_P7P8_06.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.02

株価上昇が続く中、米国のインフレ懸念から円高傾向へ

 ここ数カ月間の経済マーケット

の動きを確認しておくと、まず日経

平均株価はコロナ禍の影響を受け

て2月下旬から急落した。世界保健

機関(WHO)がパンデミックを宣

言した8日後の3月19日には1万

6500円台まで下落したが、その後

は回復し、6月中旬以降は 2 万

2000円台前後で推移した。8月に

入ると米株式市場で新型コロナワ

クチンの開発期待やハイテク株の

上昇などからダウ工業株30種平

均が上昇基調となり、連動して日

経平均も上昇する局面が増えてい

る。

 一方、ドル円レートはコロナ禍の

影響で3月に大きく上下したが、4

月以降は108円前後の落ち着いた

動きになっていた。だが、7月下旬以降はドル安円高にふれる局面が目立ち、8月以降は106円を挟む展開となっている。円高の背

景には米国でのコロナ対策に伴う大規模な金融緩和や財政出動でインフレ懸念が高まり、ドル売り円買いにつながる流れがある

ようだ。円高は日本の景気を下押しするリスクがあるため、今後の展開に注意が必要となるだろう。

コロナ禍で都心マンションへの根強いニーズが浮き彫りに

 コロナ禍を受けて米連邦準備制度理事

会(FRB)は3月に2度にわたり大幅な利下

げを実施し、政策金利を4年3カ月ぶりに

ゼロに戻した。また日銀も上場投資信託

(ETF)の購入額拡大など追加的な金融緩

和を打ち出し、4月には国債購入の上限撤

廃に踏み切った。こうした日米中央銀行に

よる追加緩和により長期金利は安定を

保っているのが現状だ。さらに米国では9

月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で

フォワードガイダンス(政策の先行きに関

する指針)の強化による低金利の長期化を

打ち出す可能性があり、日米ともに今後し

ばらくは長期金利の低水準での推移が続

くと見られる。

日米の金融緩和強化で低金利は長期化の見通し強まる

 住宅ローン金利などの基準となる長期金利はコロナ禍による世界的な景気後退懸念から2月下旬にはマイナス1%を割り込

んだが、その後は落ち着きを取り戻し、0%前後で推移した。8月に入りワクチンの開発期待などから上昇する場面も見られるが、

0.05%以内での小幅な動きとなっている。

住宅ジャーナリスト。住宅専門のシンクタンク・オイコス代表。『都心に住む』「SUUMOジャーナル」「AllAbout」などの情報誌やwebで取材・執筆活動を行う。近著に『まるわかり!不動産活用』(共著・日本経済新聞出版社)『マンション管理 修繕・建替え徹底ガイド』(同)などがある。

大 森 広 司お お も り ひ ろ し

P R O F I L E

 コロナ禍の第1波に見舞われていた時期には、都心部の不動産マーケットの先行きを悲観する見方も少なくなかった。すなわ

ち3密が発生しやすい都心部が敬遠され、郊外の広めの住宅に需要がシフトするとの予測だ。だが実際にはそうした動きは一部

に限られ、データが示すように6月以降は都心のマンション市場でも成約件数の回復が見られる。7月以降も第2波が発生してい

るといわれるなか、都心不動産へのニーズは根強さを維持しているようだ。

 コロナ対策としてリモートワークが普及しても、通勤がゼロになるわけではない。だとすれば通勤ラッシュのリスクを避ける意

味でも都心マンションへの需要はむしろ高まると考えられる。むろん、ホテルや商業ビルの需要回復には時間がかかるとみられ、

都心の不動産相場に下押し圧力がかかることでマンション価格も大幅な上昇とはならないだろう。だが、超低金利にも後押しさ

れた都心居住への堅調なニーズが、マンション相場を支えていく状況は今後も続くと予測できそうだ。

※上記グラフは日経平均株価(株式会社日本経済新聞社)、円ドル相場(日本銀行)について、 月次データ推移を東急リバブルにて作成しました。※日経平均と円相場は月末における中心相場の数値

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

10年国債金利

米国10年国債金利 10年国債金利 金利ギャップ

※上記グラフは米国10年国債金利はFRB、10年国債金利は財務省より2008年からの データ抽出の上、東急リバブルにて作成しました。 ※月平均の数値

ドル安のリスクを抱えつつもマーケットは落ち着いた動きに

Pick Up 2

日経平均株価(円)

日経平均 為替(円ドル)

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

GRANTACT | 0807

M_200922_Lv_Grantact_P7P8_06.PDF

Page 3: URBAN REAL ESTATE MARKET504.8 497.4 521.8 高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成 約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

URBAN REAL ESTATE MARKET.01

2018年7月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記の表・グラフは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年1月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記のグラフおよびコメントは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020(1~7月)

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523.9523.9527.1527.1

512.5512.5510.0510.0

474.0474.0

496.2496.2

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515.0515.0

481.5481.5

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2018年

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8月年

2018年

2019

7月年

504.6504.6

514.1514.1501.7501.7

501.2501.2

530.1530.1

478.2478.2

2323

2424

4242

40402121

2020

3131

2626

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3131

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1919

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580.93580.93

520.5520.5504.0504.0

490.9490.9

512.2512.2

489.6489.6

527.1527.1

474.9474.9497.4497.4504.8504.8

497.4497.4

521.8521.8

高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く

 GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成

約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

と、2013年以降は2019年まで成約件数、坪単価

ともおおむね右肩上がりで推移していることがわか

る。2013年はアベノミクスがスタートし、黒田日銀

総裁による異次元金融緩和が始まった年でもある。

 価格帯別では1億円未満の物件のシェアが低下

しており、2012年には全体の8割を超えていたが、

2019年には52.0%までダウン。逆に1億円以上の

価格帯は伸びており、特に2億円以上の高額物件の

シェアは2012年の1.7%から2019年には7.1%に

アップした。

 2020年も価格帯別のシェアは前年とほぼ同様

の比率で推移している。高額物件のシェアが高まっ

ているため坪単価も上昇傾向が続いており、2020

年は7月までの平均が510.1万円と、前年(506.1

万円)を上回る水準だ。

緊急事態宣言の解除後は成約件数が増加に転じる

 2020年に入っても坪単価は高水準で推移しているが、成約件数にはコロナ禍の影響が表れている。3月に成約件数が前年比

マイナス20.3%にダウンし、特に1億円以上の価格帯が同マイナス32.4%と大きく減少したことから、市場を牽引してきた高額

物件の売買の落ち込みが懸念された。

 4月にはいったん成約件数が前年比で4割強増えたが、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出し営業活動が自粛されたことか

ら、5月には成約件数が同4割強減少。宣言が解除された5月25日以降も影響は続き、6月には同20.0%減となった。だが、6月以

降は売買の相談件数が回復してきたこともあり、7月には成約件数も前年比2.4%の増加に転じている。

 月ごとの成約坪単価は5月に470万円台に落ち込んだのを除いて、500万円台を維持している。7月には1億円以上の価格帯

もほぼ前年並みの成約件数に回復し、坪単価も523.9万円と1月(530.1万円)以来の高い水準となった。

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価年次推移 (GRANTACT取扱マンション)

価格帯別成約件数(件)

成約平均坪単価(万円)

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価月次推移(GRANTACT取扱マンション)

~5,000万円未満 5,000~10,000万円未満 10,000~15,000万円未満15,000~20,000万円未満 20,000万円以上 成約平均坪単価

10,000万円以上~10,000万円未満 前年同期(坪単価) 直近1年(坪単価)

価格帯別成約件数(件)

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

右肩上がりの展開を続けてきた都心の不動産マーケットも、

新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを避けることはできなかった。

だが、市況の落ち込みは一時的なもので、すでに回復の動きは顕著に表れている。

ウィズコロナの状況が長期化するといわれる中、この先も堅調な市況が続くのか。

成約物件と経済のデータから現状と今後を読み解いてみよう。

データから読み解く都心不動産マーケット

コロナ禍で成約件数・坪単価が落ち込むも、直近では回復へ

Pick Up 1

GRANTACT | 0605

M_200922_Lv_Grantact_P5P6_07.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.01

2018年7月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記の表・グラフは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年1月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記のグラフおよびコメントは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020(1~7月)

600

500

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2019年

2020

7月年

2019年

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6月年

2019年

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5月年

2019年

2020

4月年

523.9523.9527.1527.1

512.5512.5510.0510.0

474.0474.0

496.2496.2

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2018年

2019

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2018年

2019

10月年

2018年

2019

9月年

2018年

2019

8月年

2018年

2019

7月年

504.6504.6

514.1514.1501.7501.7

501.2501.2

530.1530.1

478.2478.2

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2929

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3636

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3737

2525

3434

580.93580.93

520.5520.5504.0504.0

490.9490.9

512.2512.2

489.6489.6

527.1527.1

474.9474.9497.4497.4504.8504.8

497.4497.4

521.8521.8

高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く

 GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成

約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

と、2013年以降は2019年まで成約件数、坪単価

ともおおむね右肩上がりで推移していることがわか

る。2013年はアベノミクスがスタートし、黒田日銀

総裁による異次元金融緩和が始まった年でもある。

 価格帯別では1億円未満の物件のシェアが低下

しており、2012年には全体の8割を超えていたが、

2019年には52.0%までダウン。逆に1億円以上の

価格帯は伸びており、特に2億円以上の高額物件の

シェアは2012年の1.7%から2019年には7.1%に

アップした。

 2020年も価格帯別のシェアは前年とほぼ同様

の比率で推移している。高額物件のシェアが高まっ

ているため坪単価も上昇傾向が続いており、2020

年は7月までの平均が510.1万円と、前年(506.1

万円)を上回る水準だ。

緊急事態宣言の解除後は成約件数が増加に転じる

 2020年に入っても坪単価は高水準で推移しているが、成約件数にはコロナ禍の影響が表れている。3月に成約件数が前年比

マイナス20.3%にダウンし、特に1億円以上の価格帯が同マイナス32.4%と大きく減少したことから、市場を牽引してきた高額

物件の売買の落ち込みが懸念された。

 4月にはいったん成約件数が前年比で4割強増えたが、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出し営業活動が自粛されたことか

ら、5月には成約件数が同4割強減少。宣言が解除された5月25日以降も影響は続き、6月には同20.0%減となった。だが、6月以

降は売買の相談件数が回復してきたこともあり、7月には成約件数も前年比2.4%の増加に転じている。

 月ごとの成約坪単価は5月に470万円台に落ち込んだのを除いて、500万円台を維持している。7月には1億円以上の価格帯

もほぼ前年並みの成約件数に回復し、坪単価も523.9万円と1月(530.1万円)以来の高い水準となった。

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価年次推移 (GRANTACT取扱マンション)

価格帯別成約件数(件)

成約平均坪単価(万円)

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価月次推移(GRANTACT取扱マンション)

~5,000万円未満 5,000~10,000万円未満 10,000~15,000万円未満15,000~20,000万円未満 20,000万円以上 成約平均坪単価

10,000万円以上~10,000万円未満 前年同期(坪単価) 直近1年(坪単価)

価格帯別成約件数(件)

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

右肩上がりの展開を続けてきた都心の不動産マーケットも、

新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを避けることはできなかった。

だが、市況の落ち込みは一時的なもので、すでに回復の動きは顕著に表れている。

ウィズコロナの状況が長期化するといわれる中、この先も堅調な市況が続くのか。

成約物件と経済のデータから現状と今後を読み解いてみよう。

データから読み解く都心不動産マーケット

コロナ禍で成約件数・坪単価が落ち込むも、直近では回復へ

Pick Up 1

GRANTACT | 0605

M_200922_Lv_Grantact_P5P6_07.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.02

株価上昇が続く中、米国のインフレ懸念から円高傾向へ

 ここ数カ月間の経済マーケット

の動きを確認しておくと、まず日経

平均株価はコロナ禍の影響を受け

て2月下旬から急落した。世界保健

機関(WHO)がパンデミックを宣

言した8日後の3月19日には1万

6500円台まで下落したが、その後

は回復し、6月中旬以降は 2 万

2000円台前後で推移した。8月に

入ると米株式市場で新型コロナワ

クチンの開発期待やハイテク株の

上昇などからダウ工業株30種平

均が上昇基調となり、連動して日

経平均も上昇する局面が増えてい

る。

 一方、ドル円レートはコロナ禍の

影響で3月に大きく上下したが、4

月以降は108円前後の落ち着いた

動きになっていた。だが、7月下旬以降はドル安円高にふれる局面が目立ち、8月以降は106円を挟む展開となっている。円高の背

景には米国でのコロナ対策に伴う大規模な金融緩和や財政出動でインフレ懸念が高まり、ドル売り円買いにつながる流れがある

ようだ。円高は日本の景気を下押しするリスクがあるため、今後の展開に注意が必要となるだろう。

コロナ禍で都心マンションへの根強いニーズが浮き彫りに

 コロナ禍を受けて米連邦準備制度理事

会(FRB)は3月に2度にわたり大幅な利下

げを実施し、政策金利を4年3カ月ぶりに

ゼロに戻した。また日銀も上場投資信託

(ETF)の購入額拡大など追加的な金融緩

和を打ち出し、4月には国債購入の上限撤

廃に踏み切った。こうした日米中央銀行に

よる追加緩和により長期金利は安定を

保っているのが現状だ。さらに米国では9

月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で

フォワードガイダンス(政策の先行きに関

する指針)の強化による低金利の長期化を

打ち出す可能性があり、日米ともに今後し

ばらくは長期金利の低水準での推移が続

くと見られる。

日米の金融緩和強化で低金利は長期化の見通し強まる

 住宅ローン金利などの基準となる長期金利はコロナ禍による世界的な景気後退懸念から2月下旬にはマイナス1%を割り込

んだが、その後は落ち着きを取り戻し、0%前後で推移した。8月に入りワクチンの開発期待などから上昇する場面も見られるが、

0.05%以内での小幅な動きとなっている。

住宅ジャーナリスト。住宅専門のシンクタンク・オイコス代表。『都心に住む』「SUUMOジャーナル」「AllAbout」などの情報誌やwebで取材・執筆活動を行う。近著に『まるわかり!不動産活用』(共著・日本経済新聞出版社)『マンション管理 修繕・建替え徹底ガイド』(同)などがある。

大 森 広 司お お も り ひ ろ し

P R O F I L E

 コロナ禍の第1波に見舞われていた時期には、都心部の不動産マーケットの先行きを悲観する見方も少なくなかった。すなわ

ち3密が発生しやすい都心部が敬遠され、郊外の広めの住宅に需要がシフトするとの予測だ。だが実際にはそうした動きは一部

に限られ、データが示すように6月以降は都心のマンション市場でも成約件数の回復が見られる。7月以降も第2波が発生してい

るといわれるなか、都心不動産へのニーズは根強さを維持しているようだ。

 コロナ対策としてリモートワークが普及しても、通勤がゼロになるわけではない。だとすれば通勤ラッシュのリスクを避ける意

味でも都心マンションへの需要はむしろ高まると考えられる。むろん、ホテルや商業ビルの需要回復には時間がかかるとみられ、

都心の不動産相場に下押し圧力がかかることでマンション価格も大幅な上昇とはならないだろう。だが、超低金利にも後押しさ

れた都心居住への堅調なニーズが、マンション相場を支えていく状況は今後も続くと予測できそうだ。

※上記グラフは日経平均株価(株式会社日本経済新聞社)、円ドル相場(日本銀行)について、 月次データ推移を東急リバブルにて作成しました。※日経平均と円相場は月末における中心相場の数値

-1.00

-0.50

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

10年国債金利

米国10年国債金利 10年国債金利 金利ギャップ

※上記グラフは米国10年国債金利はFRB、10年国債金利は財務省より2008年からの データ抽出の上、東急リバブルにて作成しました。 ※月平均の数値

ドル安のリスクを抱えつつもマーケットは落ち着いた動きに

Pick Up 2

日経平均株価(円)

日経平均 為替(円ドル)

円ドル(円)

-10

10

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

GRANTACT | 0807

M_200922_Lv_Grantact_P7P8_06.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.02

株価上昇が続く中、米国のインフレ懸念から円高傾向へ

 ここ数カ月間の経済マーケット

の動きを確認しておくと、まず日経

平均株価はコロナ禍の影響を受け

て2月下旬から急落した。世界保健

機関(WHO)がパンデミックを宣

言した8日後の3月19日には1万

6500円台まで下落したが、その後

は回復し、6月中旬以降は 2 万

2000円台前後で推移した。8月に

入ると米株式市場で新型コロナワ

クチンの開発期待やハイテク株の

上昇などからダウ工業株30種平

均が上昇基調となり、連動して日

経平均も上昇する局面が増えてい

る。

 一方、ドル円レートはコロナ禍の

影響で3月に大きく上下したが、4

月以降は108円前後の落ち着いた

動きになっていた。だが、7月下旬以降はドル安円高にふれる局面が目立ち、8月以降は106円を挟む展開となっている。円高の背

景には米国でのコロナ対策に伴う大規模な金融緩和や財政出動でインフレ懸念が高まり、ドル売り円買いにつながる流れがある

ようだ。円高は日本の景気を下押しするリスクがあるため、今後の展開に注意が必要となるだろう。

コロナ禍で都心マンションへの根強いニーズが浮き彫りに

 コロナ禍を受けて米連邦準備制度理事

会(FRB)は3月に2度にわたり大幅な利下

げを実施し、政策金利を4年3カ月ぶりに

ゼロに戻した。また日銀も上場投資信託

(ETF)の購入額拡大など追加的な金融緩

和を打ち出し、4月には国債購入の上限撤

廃に踏み切った。こうした日米中央銀行に

よる追加緩和により長期金利は安定を

保っているのが現状だ。さらに米国では9

月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で

フォワードガイダンス(政策の先行きに関

する指針)の強化による低金利の長期化を

打ち出す可能性があり、日米ともに今後し

ばらくは長期金利の低水準での推移が続

くと見られる。

日米の金融緩和強化で低金利は長期化の見通し強まる

 住宅ローン金利などの基準となる長期金利はコロナ禍による世界的な景気後退懸念から2月下旬にはマイナス1%を割り込

んだが、その後は落ち着きを取り戻し、0%前後で推移した。8月に入りワクチンの開発期待などから上昇する場面も見られるが、

0.05%以内での小幅な動きとなっている。

住宅ジャーナリスト。住宅専門のシンクタンク・オイコス代表。『都心に住む』「SUUMOジャーナル」「AllAbout」などの情報誌やwebで取材・執筆活動を行う。近著に『まるわかり!不動産活用』(共著・日本経済新聞出版社)『マンション管理 修繕・建替え徹底ガイド』(同)などがある。

大 森 広 司お お も り ひ ろ し

P R O F I L E

 コロナ禍の第1波に見舞われていた時期には、都心部の不動産マーケットの先行きを悲観する見方も少なくなかった。すなわ

ち3密が発生しやすい都心部が敬遠され、郊外の広めの住宅に需要がシフトするとの予測だ。だが実際にはそうした動きは一部

に限られ、データが示すように6月以降は都心のマンション市場でも成約件数の回復が見られる。7月以降も第2波が発生してい

るといわれるなか、都心不動産へのニーズは根強さを維持しているようだ。

 コロナ対策としてリモートワークが普及しても、通勤がゼロになるわけではない。だとすれば通勤ラッシュのリスクを避ける意

味でも都心マンションへの需要はむしろ高まると考えられる。むろん、ホテルや商業ビルの需要回復には時間がかかるとみられ、

都心の不動産相場に下押し圧力がかかることでマンション価格も大幅な上昇とはならないだろう。だが、超低金利にも後押しさ

れた都心居住への堅調なニーズが、マンション相場を支えていく状況は今後も続くと予測できそうだ。

※上記グラフは日経平均株価(株式会社日本経済新聞社)、円ドル相場(日本銀行)について、 月次データ推移を東急リバブルにて作成しました。※日経平均と円相場は月末における中心相場の数値

-1.00

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

10年国債金利

米国10年国債金利 10年国債金利 金利ギャップ

※上記グラフは米国10年国債金利はFRB、10年国債金利は財務省より2008年からの データ抽出の上、東急リバブルにて作成しました。 ※月平均の数値

ドル安のリスクを抱えつつもマーケットは落ち着いた動きに

Pick Up 2

日経平均株価(円)

日経平均 為替(円ドル)

円ドル(円)

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

GRANTACT | 0807

M_200922_Lv_Grantact_P7P8_06.PDF

Page 4: URBAN REAL ESTATE MARKET504.8 497.4 521.8 高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成 約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

URBAN REAL ESTATE MARKET.01

2018年7月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記の表・グラフは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年1月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記のグラフおよびコメントは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020(1~7月)

600

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2019年

2020

7月年

2019年

2020

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2019年

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5月年

2019年

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4月年

523.9523.9527.1527.1

512.5512.5510.0510.0

474.0474.0

496.2496.2

1616

2525

2222

3636

1919

232310101414

3535

3030

2929

2323

4242

4040

4141

4343

515.0515.0

481.5481.5

2019年

2020

3月年

2019年

2020

2月年

2019年

2020

1月年

2018年

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2018年

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9月年

2018年

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8月年

2018年

2019

7月年

504.6504.6

514.1514.1501.7501.7

501.2501.2

530.1530.1

478.2478.2

2323

2424

4242

40402121

2020

3131

2626

2525

2727

3131

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1919

2828

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3636

3737

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3434

580.93580.93

520.5520.5504.0504.0

490.9490.9

512.2512.2

489.6489.6

527.1527.1

474.9474.9497.4497.4504.8504.8

497.4497.4

521.8521.8

高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く

 GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成

約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

と、2013年以降は2019年まで成約件数、坪単価

ともおおむね右肩上がりで推移していることがわか

る。2013年はアベノミクスがスタートし、黒田日銀

総裁による異次元金融緩和が始まった年でもある。

 価格帯別では1億円未満の物件のシェアが低下

しており、2012年には全体の8割を超えていたが、

2019年には52.0%までダウン。逆に1億円以上の

価格帯は伸びており、特に2億円以上の高額物件の

シェアは2012年の1.7%から2019年には7.1%に

アップした。

 2020年も価格帯別のシェアは前年とほぼ同様

の比率で推移している。高額物件のシェアが高まっ

ているため坪単価も上昇傾向が続いており、2020

年は7月までの平均が510.1万円と、前年(506.1

万円)を上回る水準だ。

緊急事態宣言の解除後は成約件数が増加に転じる

 2020年に入っても坪単価は高水準で推移しているが、成約件数にはコロナ禍の影響が表れている。3月に成約件数が前年比

マイナス20.3%にダウンし、特に1億円以上の価格帯が同マイナス32.4%と大きく減少したことから、市場を牽引してきた高額

物件の売買の落ち込みが懸念された。

 4月にはいったん成約件数が前年比で4割強増えたが、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出し営業活動が自粛されたことか

ら、5月には成約件数が同4割強減少。宣言が解除された5月25日以降も影響は続き、6月には同20.0%減となった。だが、6月以

降は売買の相談件数が回復してきたこともあり、7月には成約件数も前年比2.4%の増加に転じている。

 月ごとの成約坪単価は5月に470万円台に落ち込んだのを除いて、500万円台を維持している。7月には1億円以上の価格帯

もほぼ前年並みの成約件数に回復し、坪単価も523.9万円と1月(530.1万円)以来の高い水準となった。

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価年次推移 (GRANTACT取扱マンション)

価格帯別成約件数(件)

成約平均坪単価(万円)

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価月次推移(GRANTACT取扱マンション)

~5,000万円未満 5,000~10,000万円未満 10,000~15,000万円未満15,000~20,000万円未満 20,000万円以上 成約平均坪単価

10,000万円以上~10,000万円未満 前年同期(坪単価) 直近1年(坪単価)

価格帯別成約件数(件)

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

右肩上がりの展開を続けてきた都心の不動産マーケットも、

新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを避けることはできなかった。

だが、市況の落ち込みは一時的なもので、すでに回復の動きは顕著に表れている。

ウィズコロナの状況が長期化するといわれる中、この先も堅調な市況が続くのか。

成約物件と経済のデータから現状と今後を読み解いてみよう。

データから読み解く都心不動産マーケット

コロナ禍で成約件数・坪単価が落ち込むも、直近では回復へ

Pick Up 1

GRANTACT | 0605

M_200922_Lv_Grantact_P5P6_07.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.01

2018年7月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記の表・グラフは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年1月~2020年7月におけるGRANTACT取扱中古マンションの価格帯別成約件数と平均坪単価の推移。※上記のグラフおよびコメントは公益財団法人東日本不動産流通機構データを元に当社にてGRANTACT取扱マンション成約データを抽出の上、作成しました。※上記グラフは、2020年8月6日時点で成約登録済みのデータを抽出し、作成しました。 データ抽出後に追加登録されたデータにより、次回グラフ作成時に過去の実績が変動する場合がございます。予めご承知おきください。

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020(1~7月)

600

500

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2019年

2020

7月年

2019年

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6月年

2019年

2020

5月年

2019年

2020

4月年

523.9523.9527.1527.1

512.5512.5510.0510.0

474.0474.0

496.2496.2

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515.0515.0

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2018年

2019

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2018年

2019

10月年

2018年

2019

9月年

2018年

2019

8月年

2018年

2019

7月年

504.6504.6

514.1514.1501.7501.7

501.2501.2

530.1530.1

478.2478.2

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2525

3434

580.93580.93

520.5520.5504.0504.0

490.9490.9

512.2512.2

489.6489.6

527.1527.1

474.9474.9497.4497.4504.8504.8

497.4497.4

521.8521.8

高額物件のシェアアップによる坪単価の上昇が続く

 GRANTACTが取り扱う都心7区のマンション成

約物件データを示したのが右グラフだ。これを見る

と、2013年以降は2019年まで成約件数、坪単価

ともおおむね右肩上がりで推移していることがわか

る。2013年はアベノミクスがスタートし、黒田日銀

総裁による異次元金融緩和が始まった年でもある。

 価格帯別では1億円未満の物件のシェアが低下

しており、2012年には全体の8割を超えていたが、

2019年には52.0%までダウン。逆に1億円以上の

価格帯は伸びており、特に2億円以上の高額物件の

シェアは2012年の1.7%から2019年には7.1%に

アップした。

 2020年も価格帯別のシェアは前年とほぼ同様

の比率で推移している。高額物件のシェアが高まっ

ているため坪単価も上昇傾向が続いており、2020

年は7月までの平均が510.1万円と、前年(506.1

万円)を上回る水準だ。

緊急事態宣言の解除後は成約件数が増加に転じる

 2020年に入っても坪単価は高水準で推移しているが、成約件数にはコロナ禍の影響が表れている。3月に成約件数が前年比

マイナス20.3%にダウンし、特に1億円以上の価格帯が同マイナス32.4%と大きく減少したことから、市場を牽引してきた高額

物件の売買の落ち込みが懸念された。

 4月にはいったん成約件数が前年比で4割強増えたが、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出し営業活動が自粛されたことか

ら、5月には成約件数が同4割強減少。宣言が解除された5月25日以降も影響は続き、6月には同20.0%減となった。だが、6月以

降は売買の相談件数が回復してきたこともあり、7月には成約件数も前年比2.4%の増加に転じている。

 月ごとの成約坪単価は5月に470万円台に落ち込んだのを除いて、500万円台を維持している。7月には1億円以上の価格帯

もほぼ前年並みの成約件数に回復し、坪単価も523.9万円と1月(530.1万円)以来の高い水準となった。

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価年次推移 (GRANTACT取扱マンション)

価格帯別成約件数(件)

成約平均坪単価(万円)

■価格帯別成約件数・成約平均坪単価月次推移(GRANTACT取扱マンション)

~5,000万円未満 5,000~10,000万円未満 10,000~15,000万円未満15,000~20,000万円未満 20,000万円以上 成約平均坪単価

10,000万円以上~10,000万円未満 前年同期(坪単価) 直近1年(坪単価)

価格帯別成約件数(件)

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

※港区・千代田区・新宿区・文京区・渋谷区・目黒区・品川区におけるGRANTACT 取扱マンション

右肩上がりの展開を続けてきた都心の不動産マーケットも、

新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを避けることはできなかった。

だが、市況の落ち込みは一時的なもので、すでに回復の動きは顕著に表れている。

ウィズコロナの状況が長期化するといわれる中、この先も堅調な市況が続くのか。

成約物件と経済のデータから現状と今後を読み解いてみよう。

データから読み解く都心不動産マーケット

コロナ禍で成約件数・坪単価が落ち込むも、直近では回復へ

Pick Up 1

GRANTACT | 0605

M_200922_Lv_Grantact_P5P6_07.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.02

株価上昇が続く中、米国のインフレ懸念から円高傾向へ

 ここ数カ月間の経済マーケット

の動きを確認しておくと、まず日経

平均株価はコロナ禍の影響を受け

て2月下旬から急落した。世界保健

機関(WHO)がパンデミックを宣

言した8日後の3月19日には1万

6500円台まで下落したが、その後

は回復し、6月中旬以降は 2 万

2000円台前後で推移した。8月に

入ると米株式市場で新型コロナワ

クチンの開発期待やハイテク株の

上昇などからダウ工業株30種平

均が上昇基調となり、連動して日

経平均も上昇する局面が増えてい

る。

 一方、ドル円レートはコロナ禍の

影響で3月に大きく上下したが、4

月以降は108円前後の落ち着いた

動きになっていた。だが、7月下旬以降はドル安円高にふれる局面が目立ち、8月以降は106円を挟む展開となっている。円高の背

景には米国でのコロナ対策に伴う大規模な金融緩和や財政出動でインフレ懸念が高まり、ドル売り円買いにつながる流れがある

ようだ。円高は日本の景気を下押しするリスクがあるため、今後の展開に注意が必要となるだろう。

コロナ禍で都心マンションへの根強いニーズが浮き彫りに

 コロナ禍を受けて米連邦準備制度理事

会(FRB)は3月に2度にわたり大幅な利下

げを実施し、政策金利を4年3カ月ぶりに

ゼロに戻した。また日銀も上場投資信託

(ETF)の購入額拡大など追加的な金融緩

和を打ち出し、4月には国債購入の上限撤

廃に踏み切った。こうした日米中央銀行に

よる追加緩和により長期金利は安定を

保っているのが現状だ。さらに米国では9

月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で

フォワードガイダンス(政策の先行きに関

する指針)の強化による低金利の長期化を

打ち出す可能性があり、日米ともに今後し

ばらくは長期金利の低水準での推移が続

くと見られる。

日米の金融緩和強化で低金利は長期化の見通し強まる

 住宅ローン金利などの基準となる長期金利はコロナ禍による世界的な景気後退懸念から2月下旬にはマイナス1%を割り込

んだが、その後は落ち着きを取り戻し、0%前後で推移した。8月に入りワクチンの開発期待などから上昇する場面も見られるが、

0.05%以内での小幅な動きとなっている。

住宅ジャーナリスト。住宅専門のシンクタンク・オイコス代表。『都心に住む』「SUUMOジャーナル」「AllAbout」などの情報誌やwebで取材・執筆活動を行う。近著に『まるわかり!不動産活用』(共著・日本経済新聞出版社)『マンション管理 修繕・建替え徹底ガイド』(同)などがある。

大 森 広 司お お も り ひ ろ し

P R O F I L E

 コロナ禍の第1波に見舞われていた時期には、都心部の不動産マーケットの先行きを悲観する見方も少なくなかった。すなわ

ち3密が発生しやすい都心部が敬遠され、郊外の広めの住宅に需要がシフトするとの予測だ。だが実際にはそうした動きは一部

に限られ、データが示すように6月以降は都心のマンション市場でも成約件数の回復が見られる。7月以降も第2波が発生してい

るといわれるなか、都心不動産へのニーズは根強さを維持しているようだ。

 コロナ対策としてリモートワークが普及しても、通勤がゼロになるわけではない。だとすれば通勤ラッシュのリスクを避ける意

味でも都心マンションへの需要はむしろ高まると考えられる。むろん、ホテルや商業ビルの需要回復には時間がかかるとみられ、

都心の不動産相場に下押し圧力がかかることでマンション価格も大幅な上昇とはならないだろう。だが、超低金利にも後押しさ

れた都心居住への堅調なニーズが、マンション相場を支えていく状況は今後も続くと予測できそうだ。

※上記グラフは日経平均株価(株式会社日本経済新聞社)、円ドル相場(日本銀行)について、 月次データ推移を東急リバブルにて作成しました。※日経平均と円相場は月末における中心相場の数値

-1.00

-0.50

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0.50

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1.50

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2.50

3.00

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

10年国債金利

米国10年国債金利 10年国債金利 金利ギャップ

※上記グラフは米国10年国債金利はFRB、10年国債金利は財務省より2008年からの データ抽出の上、東急リバブルにて作成しました。 ※月平均の数値

ドル安のリスクを抱えつつもマーケットは落ち着いた動きに

Pick Up 2

日経平均株価(円)

日経平均 為替(円ドル)

円ドル(円)

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

GRANTACT | 0807

M_200922_Lv_Grantact_P7P8_06.PDF

URBAN REAL ESTATE MARKET.02

株価上昇が続く中、米国のインフレ懸念から円高傾向へ

 ここ数カ月間の経済マーケット

の動きを確認しておくと、まず日経

平均株価はコロナ禍の影響を受け

て2月下旬から急落した。世界保健

機関(WHO)がパンデミックを宣

言した8日後の3月19日には1万

6500円台まで下落したが、その後

は回復し、6月中旬以降は 2 万

2000円台前後で推移した。8月に

入ると米株式市場で新型コロナワ

クチンの開発期待やハイテク株の

上昇などからダウ工業株30種平

均が上昇基調となり、連動して日

経平均も上昇する局面が増えてい

る。

 一方、ドル円レートはコロナ禍の

影響で3月に大きく上下したが、4

月以降は108円前後の落ち着いた

動きになっていた。だが、7月下旬以降はドル安円高にふれる局面が目立ち、8月以降は106円を挟む展開となっている。円高の背

景には米国でのコロナ対策に伴う大規模な金融緩和や財政出動でインフレ懸念が高まり、ドル売り円買いにつながる流れがある

ようだ。円高は日本の景気を下押しするリスクがあるため、今後の展開に注意が必要となるだろう。

コロナ禍で都心マンションへの根強いニーズが浮き彫りに

 コロナ禍を受けて米連邦準備制度理事

会(FRB)は3月に2度にわたり大幅な利下

げを実施し、政策金利を4年3カ月ぶりに

ゼロに戻した。また日銀も上場投資信託

(ETF)の購入額拡大など追加的な金融緩

和を打ち出し、4月には国債購入の上限撤

廃に踏み切った。こうした日米中央銀行に

よる追加緩和により長期金利は安定を

保っているのが現状だ。さらに米国では9

月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で

フォワードガイダンス(政策の先行きに関

する指針)の強化による低金利の長期化を

打ち出す可能性があり、日米ともに今後し

ばらくは長期金利の低水準での推移が続

くと見られる。

日米の金融緩和強化で低金利は長期化の見通し強まる

 住宅ローン金利などの基準となる長期金利はコロナ禍による世界的な景気後退懸念から2月下旬にはマイナス1%を割り込

んだが、その後は落ち着きを取り戻し、0%前後で推移した。8月に入りワクチンの開発期待などから上昇する場面も見られるが、

0.05%以内での小幅な動きとなっている。

住宅ジャーナリスト。住宅専門のシンクタンク・オイコス代表。『都心に住む』「SUUMOジャーナル」「AllAbout」などの情報誌やwebで取材・執筆活動を行う。近著に『まるわかり!不動産活用』(共著・日本経済新聞出版社)『マンション管理 修繕・建替え徹底ガイド』(同)などがある。

大 森 広 司お お も り ひ ろ し

P R O F I L E

 コロナ禍の第1波に見舞われていた時期には、都心部の不動産マーケットの先行きを悲観する見方も少なくなかった。すなわ

ち3密が発生しやすい都心部が敬遠され、郊外の広めの住宅に需要がシフトするとの予測だ。だが実際にはそうした動きは一部

に限られ、データが示すように6月以降は都心のマンション市場でも成約件数の回復が見られる。7月以降も第2波が発生してい

るといわれるなか、都心不動産へのニーズは根強さを維持しているようだ。

 コロナ対策としてリモートワークが普及しても、通勤がゼロになるわけではない。だとすれば通勤ラッシュのリスクを避ける意

味でも都心マンションへの需要はむしろ高まると考えられる。むろん、ホテルや商業ビルの需要回復には時間がかかるとみられ、

都心の不動産相場に下押し圧力がかかることでマンション価格も大幅な上昇とはならないだろう。だが、超低金利にも後押しさ

れた都心居住への堅調なニーズが、マンション相場を支えていく状況は今後も続くと予測できそうだ。

※上記グラフは日経平均株価(株式会社日本経済新聞社)、円ドル相場(日本銀行)について、 月次データ推移を東急リバブルにて作成しました。※日経平均と円相場は月末における中心相場の数値

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2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1 2016/1 2017/1 2018/1 2019/1 2020/1

10年国債金利

米国10年国債金利 10年国債金利 金利ギャップ

※上記グラフは米国10年国債金利はFRB、10年国債金利は財務省より2008年からの データ抽出の上、東急リバブルにて作成しました。 ※月平均の数値

ドル安のリスクを抱えつつもマーケットは落ち着いた動きに

Pick Up 2

日経平均株価(円)

日経平均 為替(円ドル)

円ドル(円)

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