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松浦良充研究会

2014年度 夏課題

教育の市場化の限界

〜家庭的背景から生じる教育格差に着目して〜

慶應義塾大学

文学部人文社会学科

教育学専攻4年(11105820)

久保千尋

1

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アブストラクト

 本研究は、日本の教育による階層間格差や格差拡大の発生源について明らかにし、政策的な知見を得

ることを目的とする。

 戦後の日本社会は、すべての人が等しく教育を受ける権利をもつという憲法26条の理念のもと、

すべての子どもに教育を受ける機会を提供し、充実させることを目標としてきた。現在では、国民の

90%以上が義務教育を受け、ほとんどの人が高等学校へ進学することが当たり前の社会となっている。日本の教育システムはある程度、教育の「機会の平等」を達成してきたように思われてきた。しかし、

1990年代後半から、当時推し進められていた「ゆとり教育」を背景として、学力低下や学力格差という問題が指摘されるようになった。2003年のOECDによる PISA調査によって、学力低下や学力格差の問題が決定的なものとなり、学校教育への不安は、塾や習い事といった学校外での教育需要を拡大

し、教育費負担を増幅させた。こうした背景から教育格差は、不平等を再生産するという点で貧困率

の拡大、教育費負担の増加という点で少子化問題など、単なる教育問題としてのみならず、社会問題

として考えられるようになった重要な課題であるといえる。

 文部科学省は、2008年にいわゆる「ゆとり教育」政策から方針を転換し、2013年度版文部科学白書では、「家庭の経済状況や発達の状況などにかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子供・若者

や社会人が質の高い教育を受け、一人一人の能力・可能性を最大限伸ばしてそれぞれの夢にチャレン

ジできる社会の実現」を目指し、「教育費負担の軽減」や「初等中等教育の充実」や「私立学校の振

興」を掲げている。筆者はそれが、格差是正策として機能するのかどうか疑問に感じた。経済学の視

点を交えながら、教育格差拡大のメカニズムを明らかにし、教育が市場化された状態では格差をゼロ

にすることはむずかしく、私的財」としてではなく、「公共財」として教育をとらえる必要性を示し、

文化資本の観点からの支援の必要性を主張したい。

 第1章では、まず日本における教育格差の実態を明らかにする。世代間の社会移動や社会階層の再

生産がどのようなメカニズムで生じているのかデータを用いながら説明していく。そして日本におけ

る教育費の家計負担は国際的にみて、非常に大きいことを示し、貧困家庭からの進学を困難にしてい

ることを示す。さらに、親の富と期待によって子どもの学力が規定される社会になりつつあるという

主張を紹介し、教育格差についてこれまで明らかにされてきたことを整理する。

 第2章では、前章をふまえて、日本における教育格差拡大の要因として考えられるものを提示し、

本研究の仮説とする。

 第3章において、今回の夏課題の反省および今後の進め方について記述した。

 

(本文中色付き文字は執筆中もしくは構想中の部分です。)

2

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目次

アブストラクト 2

序章  4

第1節 本研究の目的

第1章  5第1節 教育格差の実態

第1項 世代間の社会階層移動

第2項 社会階層の再生産

第3項 所得格差と教育格差

第2節 家庭的背景と教育格差 10第1項 日本の貧困率

第2項 教育投資の大衆化

第3項 学費負担と教育格差

第3節 教育需要と教育期待 19第1項 教育期待と教育投資

第2項 教育収益率

第4節 教育格差のメカニズム 20第1項 ウィスコンシン・モデル

第2項 文化資本論

第3項 相対的リスク回避説

第4項 トラッキング説

第5項 インセンティブ・ディバイド

第2章  24第1節 仮説提示24

第2節 目的と方法 24

第3章 夏課題の反省および今後の予定 25

3

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第4章 参考文献一覧 26序章第1節 本研究の目的

 かつて戦後の日本社会は、すべての人が等しく教育を受ける権利をもつという憲法26条の理念の

もと、すべての子どもに教育を受ける機会を提供し、充実させることを目標としてきた。国民の 90%以上が義務教育を受け、日本の教育システムはある程度、教育の「機会の平等」を達成してきたよう

に思われてきた。しかし、2000年代に入ると、学力低下や学力格差という問題が指摘されるように

なった。

 それらの問題の背景には、文部科学省が 1990年代前後に推し進めた「ゆとり教育」および完全学校

週5日制が要因のひとつであると考えられている。「ゆとり教育」の推進によって惹起された「公立

学校の教育への保護者の不安が学校外教育投資の階層差を拡大する方向に作用した可能性」と「学校週

5日制の導入に伴い自由な(学校外で過ごす)時間が増加する中で、学校外教育投資の多寡(あるいは

有無)による学力の格差が拡大した可能性」が指摘されているのである。 1同様に、耳塚2は、教育の市

場化のもとでは、メリトクラシー(業績主義)からペアレントクラシー、すなわちおやの経済力と教

育期待によって教育達成が規定される構造への変容がみられることを示した。つまり、家庭において

どれほど学校外教育への投資ができるかによって、子どもの学力および進学に影響する可能性が指摘

されはじめたことにより、日本における機会の平等性に疑問が投げかけられている。また、これまで、

研究者の間で、階層間において再生産されるものは、経済資本だけではなく、文化資本についても、

格差を拡大する要因として明らかにされてきた。

 文部科学省3は「教育の充実は一人一人の豊かな人生の実現のために必要不可欠なものですが、社会

全体に対しても、………、特に「少子化の克服」「格差の改善」「経済成長・雇用の確保」を解決する

上で、教育の質の向上や教育費負担の軽減といった方向性において重要な役割を果たす」と考えられ、

「教育の質の向上は、一人一人が持つ能力・可能性を国内外で最大限伸張させ、個々の人生を豊かにす

るとともに、生産年齢人口が減少する状況の中で、一人一人の生産性を向上させることで、社会全体

を一層発展させていくことにつながる」として、「家庭の経済状況や発達の状況などにかかわらず、

学ぶ意欲と能力のある全ての子供・若者や社会人が質の高い教育を受け、一人一人の能力・可能性を最

大限伸ばしてそれぞれの夢にチャレンジできる社会の実現」を目指すとしている。そして、改めて

「教育機会の平等」を達成するために、第2期教育振興基本計画において、教育費負担軽減を提言して

いる。しかし、一方で、第2期教育振興基本計画において、私立学校が学校教育の発展に大きく貢献し

1 鳶島修治「学力の階層差の拡大と家族の教育戦略——学校外教育投資による格差拡大説の再検討——」,『社会学研究』,第91号,2012年,pp.196-1972 耳塚寛明 「小学校学力格差に挑む だれが学力を獲得するのか」『教育社会学研究』第 80 号 ,2007年,p.333 文部科学省「平成25年度 文部科学白書 特集2 教育再生に向けた取組の加速」http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab201401/1350715_007.pdf(2014年9月7日取得)

4

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てきたとして、私立学校の振興も掲げている。

 「私立学校への入学」も家庭的背景によって差異が生じる「教育投資」のひとつである。それにも

かかわらず、なぜ「私立学校の振興」についてまでも、大きなトピックとして取り上げられているの

だろうか。

 今まで、教育費負担という問題については、重大な問題でありながら、あまり語られてこなかった。

教育基本法第十条4における「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するもので

あって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた

発達を図るよう努めるものとする。」という理念からくる、子どもの教育は家庭に親に責任があり、

親が学費を負担することは当然であるという教育観によるものである。このような教育観は、教育格

差や、社会階層格差の拡大というテーマについて語るとき、教育は学歴を獲得し、所得を得るための

手段として捉えられる点にも影響を与えていると考えられる。社会学的に、「階層」とは、「学歴・

職業・所得」の3つの観点から考察するということからもわかる。

 現在、貧困の拡大や、少子化などの社会問題の解決の糸口として、さらに教育格差の問題に注目する

必要があるといえる。そういった考えのもと、本研究では、「教育投資」「教育の収益率」「教育期

待」といったキーワードを用いて考察しながら、教育による階層格差の再生産、拡大についての実態

やメカニズムを明らかにし、政策的インプリケーションを得ることを目的とする。教育格差の問題は、

2000年代初頭から、教育に関する重要なテーマとして議論されてきた。それらをふまえて、教育を個

人が学歴を獲得し、所得を得るための手段として消費される「私的財」としてではなく、「公的財」

として捉え直すことで新たな知見を得ることを目的として本研究に取りかかった。

第1章第1節 教育格差の実態

この節では、日本において、どのようにして教育における格差が拡大していったのかという実態を明

らかにしていく。本来、社会階層の移動を可能にし、個人の社会生活のみならず、経済の発展につな

がると考えられ、すべての国民に教育の機会を与えることが目指され、達成されてきた。それにも関

わらず、教育において格差が生じるといわれるようになったのはなぜかということを以下で説明する。

第1項 世代間の社会階層移動

 戦後日本の教育は、「機会の平等」を目指し、国際的にみてもかなり早い段階で、9年間の義務教育

無償制を達成している。現在、高等学校への進学率は 98.4%であり、大学進学率(大学・短期大学の

通信教育学部含む)は 53.2%となっている5。高等学校卒業者のおよそ二人に一人が進学する「大学全

4 文部科学省「教育基本法条文」http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/06121913/06121913/001.pdf(2014年9月7日取得)5 文部科学省「学校基本調査—平成 25年度(確定値)結果の概要—」http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1342607.htm(2014年9月4日取得)

5

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入」時代といわれている。しかし、今日では学力の階層差の拡大が問題となっている。2000年代に推し進められた「ゆとり教育」の路線の教育改革や PISA2003の結果における順位の低下をきっかけと

して、学力低下や学力格差など、様々な問題が指摘され始めている。

  日本における階層とは、職業・学歴・所得という3つの指標を基本変数として、補助的な変数を加

えることで考えることが多い。戦後の日本では、教育の拡大とともに、高等教育がさまざまな階層出

身者の手に届くものとなり、世代間社会移動が高い水準で行われるようになった。

以下では、父親の階層を「上・中の上・中の下・下」の4つのカテゴリーに分けて、世代間の階層移

動に対する教育の影響をみる。「上」グループは、専門・管理的職業を中心とする上層ノンマニュア

ル、「中の上」というグループは事務販売従事者の下層ノンマニュアル (一部マニュアルを含んでい

る)、「中の下」は熟練及び半熟練の生産工程作業者を含む上層・中層マニュアル、「下」というグ

ループはサービス職業及び非熟練労働者を含む下層マニュアルと分類している。

 表1 1 父の威信階層と本人の学歴別による世代間上昇・下降移動(− SSM75)6

(単位:%)

父親の威信階層 本人の学歴 世代間の移動 計(標本数)

下降 停留 上昇

上 初等 100.0 0.0 0.0 100.0(5)中等 68.8 31.3 0.0 100.0(32)高等 56.4 35.9 7.7 100.0(39)

中の上 初等 64.1 29.7 6.3 100.0(64)中等 38.6 38.7 22.7 100.0(106)高等 26.1 46.4 27.5 100.0(69)

中の下 初等 22.7 60.2 17.2 100.0(274)中等 14.1 46.5 39.4 100.0(142)高等 2.2 22.2 75.6 100.0(45)

下 初等 3.3 22.5 74.2 100.0(151)中等 2.1 23.4 74.5 100.0(47)高等 0.0 42.1 57.9 100.0(19)

計 24.0 41.2 34.8 100.0(993)

一部の例外(父親が「下」のグループであるものの上昇移動者が、学歴が高くなるほど低くなってい

6 消費者庁「国民生活審議会 第二部参考資料」http://www.caa.go.jp/seikatsu/shingikai2/kako/spc07/houkoku_a/spc07-houkoku_a-2_II_4.html#1(2014年9月4日取得)をもとに作成

6

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る)をのぞいたすべてのグループにおいて、本人の学歴が高くなるほど、上昇移動者が多くなってい

る。また、「父親の威信階層が上:本人の学歴が高い」グループの下降移動者が、56.4%と停留者を上回っており、「父親の威信階層が下:本人の学歴が高い」グループの上昇移動者も同様に、57.9%と停留者を上回っている。このことから、1970年代から 80年代頃には、世代間移動が流動的に行わ

れていたことがわかる。

停留者の場合は、「上」「中の上」「下」の 3 グループで、本人の学歴が高いほど停留が多い。一方

で、「中の下」の停留者は、本人の学歴が低いほど停留者が多くなっている。これは、本来であれば、

停留者は「上」と「中の上」の場合には、「父親の威信階層が高い→本人の学歴も高い」状態である必

要があり、「中の下」と「下」の場合では「父親の威信階層低い→本人の学歴も低い」状態である必要

があり、「中の下」「下」のグループにおいて高学歴者は上昇してしまうことになるため、「中の

下」グループが例外的な数値を見せていると考えられる。

 以上のことから、下降移動者は本人の学歴が高くなるほど少ないということは、高い学歴が下降移

動をくいとめる作用を果たすことがわかる。逆に上昇移動者が、本人の学歴が高くなるほど多いとい

うことは、高い学歴が上昇移動を促進するからであると考えられる。

 教育機会が平等に与えられることによって、世代間の社会移動が可能となるというメカニズムにお

いて、教育は、社会階層差を是正する機能をもっていることがわかる。では、現在問題視されている

ような、教育による社会階層差の拡大はどのような要因で起こっているのか、次項において確認して

いく。

第2項 社会階層の再生産

 苅谷7によれば、「学校は社会の平等化に寄与するよりも、不平等を再生産する装置である———こ

うした教育のとらえ方は、もはや研究の世界では定説」であるという。

表1 2は、父親の職業と本人の学歴とを組み合わせ、初職=マニュアル職の構成比を示したもので−ある。

1926-1935年生では、農業出身の中卒(旧制初等教育を一部含む)とマニュアル出身の中卒が、マ

ニュアル職の主要な供給源となっていたのに対して、1936-1945年生では、農業出身の中卒が主流と

なる。この時期は、農業子弟の高校進学率が上昇するまえの時期であるため、高校へ進学しない農業

出身者が中卒学歴を手にマニュアル職に入っていた。しかし、1961年以降になり、高校進学率が急速

に上昇すると世代間の社会移動が活発に行われた結果、マニュアル職の主な供給源は、マニュアル出

身の高卒が占めるようになった。8

7苅谷剛彦『階層化日本と教育危機 : 不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』, 有信堂高文社,2001年 p.1178 前掲 p.40

7

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 表1 2− . マニュアル職(初職)への参入(父職・本人学歴・コーホート別:SSM95男性)910

父職 専門管理 事務・販売 マニュアル 農業

学歴/

出生年

中卒 高卒 高等

教育

中卒 高卒 高等

教育

中卒 高卒 高等

教育

中卒 高卒 中等

教育

1966-75

0.8 7.4 1.7 0.0 14.9 2.5 9.1 43.8 16.5 0.8 2.5 0.0

1956-65

0.0 7.1 2.1 0.7 10.6 2.1 7.1 43.3 6.4 3.5 15.6 1.4

1946-55

0.7 2.5 3.2 2.5 8.9 3.9 13.9 27.8 2.1 13.9 19.2 1.4

1936-45

2.1 4.2 1.2 8.8 8.8 0.8 13.4 21.0 0.8 23.1 15.1 0.4

1926-35

2.8 1.4 1.9 5.7 5.7 1.9 30.8 12.8 0.9 26.5 7.6 1.9

(上から順に n=121,141,281,238,211)

 戦後の日本では、1980年代までに、比較的学歴がものをいわない職業(つまり農業)に従事してい

た階層出身者が、教育機会の拡大によって学歴を手に入れたことで、ノンマニュアル職・マニュアル

職(つまりホワイトカラーやブルーカラー)といった学歴によって処遇に差異が生じるような階層に

移動していった。1980年代以降になると、教育の量的拡大がある程度達成され、社会移動における構

造移動の量も減少していったことにより、出身階層と同じ社会階層にとどまる、「再生産」がなされ

るようになった。

 つまり、ある程度教育の拡大が進み、社会階層間での移動が行われると、教育は「再生産」機能を

もつようになることがわかる。

 再生産されるものとして、「経済資本」「文化資本」「社会関係資本」がある。「経済資本」とは、

文字通り、家庭の経済力である。進学の際の学費や学習塾などに対して、どれほど投資することので

きる経済力をもっているのかということである。「文化資本」は、フランスの社会学者であるブル

デューが「経済資本」に対していったもので、三つに分類される。一つ目は、親の学歴や資格といっ

た目に見える制度化された文化資本。二つ目に、家庭にどれほどの蔵書があるか、どれほどの頻度で

美術館や博物館に訪れることがあるか、といったものとして所有することのできる客体化された文化

資本。三つ目が、立ち振る舞いやマナーなどの行動様式といった身体化された文化資本である。これ

9前掲 p.4010 網掛けは筆者による

8

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らは、経済資本をもつ家庭であれば、より獲得しやすいと考えられている。「社会関係資本」とは、

ソーシャルキャピタルともいわれるが、人とのつながりや地域でのつながりといったネットワークの

ことである。以下では、経済資本を中心に論じていく。

第3項 所得格差と教育格差

 日本が格差社会であるということがいわれ始めたのは、1990年代後半からである。2006年には「格差社会」という言葉が新語・流行語大賞のトップテンに入り、「一億層中流」という考え方が崩

れ、職業・学歴・所得という面で格差が生じているということが社会問題となった。

 事実、所得格差を示すジニ係数の値が年々上昇している。係数の範囲は、0から1で、係数の値が0

に近いほど格差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味する。日本におい

ては、再分配前が 0.462、再分配後も 0.329とOECD平均と比較してもやや高い数値を記録おり、国

際的にみても、先進諸国のなかで、格差が大きいことがわかる。

図1 1− .ジニ係数(所得再分配前×所得再分配後)11

 また、所得格差が教育格差につながることも明らかにされている。全国学力・学習状況調査におい

11 厚生労働省「平成 24年厚生労働白書」http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/dl/1-05.pdf(2014年9月7日取得)

9

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て、就学援助を受けている生徒数が多い学校ほど、平均正答率が下がることがわかっている。表1 4−では、修学援助を受けている生徒が在籍していない学校は 10%にも満たない。5%未満の割合の生徒

が在籍していると答えた学校での平均正答率が例外的に、在籍していないと答えた学校の平均正答率

を上回っているが、それ以上増えていくと、徐々に平均正答率がすべての問題において下がっていっ

ている。

表1 4− .就学援助を受けている生徒の割合と平均正答率12

選択肢 学校数 学 校

数の

割 合

(%)

平均正答率(%)

国語A(3

2問)

国 語 B

(9問)

数学A(3

6問)

数学B(1

5問)

1 在籍していない 954 9.4 80.4 53.5 68.7 61.3

2 5%未満 1,166 11.5 82.2 55.1 71.2 64.0

3 5%以上,10%未満 1,978 19.4 80.5 52.3 68.8 61.3

4 10%以上,20%未満 3,176 31.2 79.6 50.9 67.3 59.8

5 20%以上,30%未満 1,548 15.2 78.7 49.7 66.2 58.5

6 30%以上,50%未満 921 9.1 77.2 47.6 63.6 55.8

7 50%以上 286 2.8 72.1 43.1 56.2 47.7

その他(選択肢以外の回答

や複数回答されたもの),

無回答

144 1.4 - - - -

合計 10,173

100.0

79.6 51.2 67.4 59.8

 

 

12 国立教育政策研究所「平成 26年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料 【全国版/中学校】」http://www.nier.go.jp/14chousakekkahoukoku/factsheet/middle/(2014年9月6日取得)

10

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第2節 家庭的背景と教育格差

第1項 日本の貧困率

 ここまで、教育格差とはどのような状況であるかということをみてきた。能力があるのに、経済的

な理由で進学することができない(教育を受けられない)という状況は、格差が上(つまり、高学

歴・高収入)の層の出身者では起こらない。ここでは、親の経済的状況および家庭的背景が、進学に

際して深刻な問題となる貧困層が、現代日本においてどれほどいるのかということを確認する。

 現在、日本における子どもの相対的貧困率(社会のなかで何%の人が貧困であるか)は上昇傾向に

ある。「貧困」とは、1世帯あたりの可処分所得(あるいは手取りの所得)を家族人数で調整した値

(等価可処分所得)を、最高の人から最低の人まで順に並べて、その真ん中にいる人の所得を基準と

する。13また、子どもの貧困率とは、子ども(17歳以下)が属する世帯の可処分所得をもとに、子ど

も全体に占める等価可処分所得が基準に満たない子どもの割合を指す。14

図.1 2 1− − . 相対的貧困率15

昭和60_

x000d

_( 1985)

平成3_x

000d_( 199

1)

9_x00

0d_( 199

7)

15_x0

00d_( 200

3)

21_x0

00d_( 200

9)048

1216

全体子どもの貧困率

図1 2 2− − .先進諸国における貧困率16

13橘木俊昭『日本の教育格差』,岩波書店,2010年,p.16114 厚生労働省「国民生活基礎調査(貧困率)よくあるご質問」http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21a-01.pdf(2014年9月7日取得)15厚生労働省「平成 25年度国民生活基礎調査」http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/03.pdf(2014年9月6日取得)をもとに作成16 OECD東京センター「貧困率 (Poverty rate)」http://www.oecd.org/tokyo/statistics/(2014年9月6日取得)をもとに作成

11

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メキシコアメリ

カ 日本 カナダイギリスOEC

D平均 ドイツスウェ

ーデンフランスデンマ

ーク0

5

10

15

20

25

先進諸国の貧困率

 これらの図から、20年前と比較して貧困率が上昇していること、OECD諸国と比較しても、相当高

い数値を示していることを読み取ることができる。日本における貧困問題が深刻な状況にあることが

わかる。

 橘木17はこれほどまでに貧困率が高くなった要因を以下のように説明している。

第一に、日本経済が 1990年代から長期の大不況期に入ったことがあげられる。そのため、失業者が

増大し、賃金も上昇せず、年によっては下降することもあったのである。第二に、企業は生き残りを

かけて、労働費用の削減に走り、パート労働者や派遣労働者のような非正規労働者を増加したことで

ある。第三に、ここ 10年ほど、自民党政権が新自由主義による政策を推進し、規制緩和策などを実行

して、社会における「弱肉強食」の度合いを強めたことである。第四に、財政難の影響を受けた、年

金、医療、介護といった社会保障制度改革が、低所得層に大きな打撃を与える結果をもたらしたこと

である。第五に、最低賃金が依然として低いため低賃金の歯止めとなっていないことや、生活保護制

度が不十分で貧困者を救うためにうまく機能していないことなどもあげられる。

つまり、不況期において、非正規労働者が増加し、社会保障が十分でなかったために、さらに状況が

悪化していったと考えられる。非正規労働者が増加したことによる貧困率の上昇と、教育はどのよう

にして関わっているのだろうか。

以下の表は、学歴別にフリーターになった人の割合を示したものである。

表1 4− . 学歴別フリーター率18

学歴 1987 1992 1997 2002男性 小学・中学 9.1 12.3 15.6 21.7

17橘木俊昭『日本の教育格差』,岩波書店,2010年 p.16318 小杉礼子・堀有喜衣編『キャリア教育と就業支援』,勁草書房,2006年

12

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高校 4.4 4.9 7.2 10.7短大・高専 3.3 3.1 5.1 7.6大学・大学院 1.4 1.4 2.7 4.5全体 4.0 4.4 6.4 9.3

女性 小学・中学 27.2 32.1 42.4 50.2高校 10.7 11.1 20.0 30.4短大・高専 8.2 6.9 12.1 16.0大学・大学院 8.9 6.8 9.6 9.6全体 7.3 10.2 16.3 21.9

 中卒のフリーターは男性で 21.7%、女性で 50.2%に達しており、高卒のフリーターは男性で

10.7%、女性で 30.4%に達している。一方で、大卒の場合には、男女ともに 10%を下回っており、高

学歴であるほど、フリーターになる割合は低くなることがわかる。また、1987年に比べて、2002年のほうが、男女ともに、フリーターの割合が倍以上増えていることがわかる。

 以上のことから、親の経済的状況により、進学することができなかった子どもが、非正規労働者と

なることで、貧困の再生産がなされていることが考えられる。

 では、どのような親のもとにいる子どもが貧困になっているのだろうか。以下の図は、子どものい

る世帯をおとなが一人の世帯と、二人以上の世帯にわけた貧困率である。(「大人が一人」世帯には、

ひとり親家庭以外にも祖父母などの場合も含まれている。19

図1 2 3− − .子どもがいる現役世帯の貧困率20

19厚生労働省「国民生活基礎調査(貧困率)よくあるご質問」http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21a-01.pdf(2014年9月7日取得)20厚生労働省「平成 25年度国民生活基礎調査」http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/03.pdf(2014年9月6日取得)をもとに作成

13

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2009)

010203040506070

子どもがいる現役世帯(全体)大人が1人大人が2人以上

「大人が一人」世帯には、母子家庭・父子家庭以外の世帯も含まれているが、ひとり親家庭および母子

家庭がいかに経済的に不利な状況にあるかが推察できる。

 稲葉21は、母子家庭における子どもの教育達成について、「家庭の経済状況が子どもの進学に影響を

与える」ことを示した。社会保障制度が整備されていったことによって、貧困が個人の人生に及ぼす

影響が小さくなっているという仮説は、少なくとも母子家庭出身者にはあてはまらないとし、遺族年

金や児童扶養手当などの社会保障制度は、子どもの大学進学を想定していなかったため、社会全体の

高学歴化にともなって大きな格差が顕在化してきたと主張している。

第2項 学校外教育投資の大衆化

 広田22は、育児不安の要因について、快活で行儀が良いといったような望ましい子どもの理想像、

「完璧な子ども=パーフェクトチャイルド」を育てるための、細心の配慮や知識や判断力をもった

「パーフェクトペアレンツ」として、必要な情報をあつめ、選択し、気に入らなければ他の団体へ移

らせるといったように、外部の教育機会の選択・許可といったすべての責任を親が担うようになって

いることを指摘している。広田は、家庭教育を外部化することによって母親の負担が減り充分な時間

と配慮と金を教育に充てられるようになったとして好意的にみているが、一方で親と親の認めたもの

だけが子どもへの教育を許可されるという意味で家庭はより教育的配慮をせざるをえなくなっており、

家庭が子どもの教育に関する最終的な責任を一身に負わなければならなくなったとしている。

21 稲葉昭英「ひとり親家庭における子どもの教育達成」,『現代の階層社会』,p.25022広田照幸『日本人のしつけは衰退したか』講談社,1999年

14

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 文部科学省による調査23では、中学校3年生の通塾率は、1985年では 47.3%であったのに比べ、2007年の調査では、65.2%にまで上昇している。片瀬・平沢24は、自らが学校外教育を受けた経験を

持つ親ほど子どもへの教育投資意向が強いことを明らかにしている。また、学校外教育投資が大衆化

した現在では、「抜け駆け効果」はもたなくなっているが、大学進学率の上昇期には教育達成を直接

高めると同時に、中学3年時成績を経由して間接的にも教育達成を促進する効果をもつことも明らか

にしている。

第3項 学費負担と教育格差

 子どもが望んで努力をすれば、親の社会階層に関わらず進学することができた時代は、1980年代ま

で、つまり高度経済成長期まで続いていた。しかし、今日では、教育により親の社会階層が子どもの

教育達成に負の影響を与える、教育不平等の再生産が行われていることはここまでみてきた通りであ

る。その要因には、さまざまなものがあるが、ここでは家庭の学費負担の増大という視点から考えて

いく。

表1 5− .大学卒業までにかかる費用25

区分 学習費総額 合計

幼稚園 小学校 中学校 高等学校 大学

ケース

1高校ま

で公

立,

大学の

み国立

669,925 1,845,467 1,443,927 1,545,853

4,366,400(平均)

9,871,572

2,876,000(自宅)

8,381,172

5,332,000(下宿・アパート)

10,837,172

ケース

2すべて

669,925 1,845,467 1,443,927 1,545,853 3,920,000(平均)

9,425,172

2,680,400 8,185,572

23 文部科学省「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告」http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/08/__icsFiles/afieldfile/2009/03/23/1196664.pdf(2014年9月6日取得)24片瀬一男,平沢和司「少子化と教育投資・教育達成」,『教育社会学研究』,第82集,pp.43-59,2008年25 文部科学省「第 1 章 家計負担の現状と教育投資の水準」,『平成 21年度文部科学省白書』http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab200901/detail/1296547.htm(2014年9月6日取得)

15

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公立 (自宅)

4,870,000(下宿・アパート)

10,375,172

ケース

3幼稚園

及び大

学は私

立,

他は公

1,625,592

1,845,467 1,443,927 1,545,853

6,239,600(平均)

12,700,439

5,175,200(自宅)

11,636,039

7,905,600(下宿・アパート)

14,366,439

ケース

4小学校

及び中

学校は

公立,

他は私

1,625,592

1,845,467 1,443,927 2,929,077

6,239,600(平均)

14,083,663

5,175,200(自宅)

13,019,263

7,905,600(下宿・アパート)

15,749,663

ケース

5小学校

だけ公

1,625,592

1,845,467 3,709,312 2,929,077

6,239,600(平均)

16,349,048

5,175,200(自宅)

15,284,648

7,905,600(下宿・アパート)

18,015,048

ケース

6すべて

私立

1,625,592

8,362,451 3,709,312 2,929,077

6,239,600(平均)

22,866,032

5,175,200(自宅)

21,801,632

7,905,600(下宿・アパート)

24,532,032

※「学習費等」には授業料などの学校教育費や学校給食費,学校外活動費が含まれる

16

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大学卒業までにかかる学習費の総額は、すべて国公立でおよそ 1000万、すべて私立でおよそ 2300万ほどであることがわかる。義務教育である公立小中学校でも高額の学習費が必要となっていること

に注目したい。公立中学校3年間の学習費は、1,443,927円となっており、年額にすると、481,309円となる。この内訳26をみてみると、学校外教育費が 305,009円と 60%以上を占めている。学習塾やならいごとの普及により、家庭の教育費負担が増加していっていることが伺える。このような教育費

負担の増加が家庭および子どもの進学にどのような影響をあたえたのだろうか。以下の図は、高校卒

業後の進路を両親の年収別に表したものである。

図1 2 4− − .高校卒業後の予定進路(両親年収別)27

親の年収が 400万円以下の場合、就職と4年制大学への進学がほぼ同水準であるのに対して、親の年

収が 1000万円超の場合、4年制大学への進学が6割を超え、就職する人は 10%にも満たない。就職

と進学の動きが家庭の経済的背景によって左右されていることがわかる。また、同調査では、進路を

決めた要因についても明らかにしている。進路を決定した要因としては、「成績が進路を決める理由

になった」という回答が最も多く、全体の 67.3%を占める。以下、「地理的条件が、進路を決める理

由になった」(57.9%)、「経済的な条件が、進路を決める理由になった」(43.9%)と続く。家庭の経済的条件が、高校3年生が進学するかどうかを決定する際に、大きな一要因となっていることが認識で

きる。

26 文部科学省「平成 20年度子どもの学習費調査」http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/1289326.htm(2014年9月6日取得)27東京大学大学経営・政策研究センター「高校生の進路調査 第1次報告書」http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/crump/resource/crumphsts.pdf(2014年8月 26日取得)

17

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 教育費の家計負担の増加や、家庭の経済的条件が進学への障害となる背景に、教育の公費負担が抑制

されている現状がある。

図1 2 5では、− − OECD諸国において、対 GDP比で教育費をどれほど支出しているか示したデータ

である。日本の教育支出は 5.11%であり、OECD平均の 6.26%を下回り、OECD諸国の中でもかなり低い水準に位置していることがわかる。また日本の教育支出と経年比較しても、 2000 年の4.98%、2005年の 4.88%から、さほど変化はないことから、日本において公的教育支出の低さにそ

れほど関心がもたれてこなかったことが伺える。他のOECD諸国では、一部の国をのぞいて、ほとんどの国が、2005年度よりも教育支出の割合が増加していることがわかる。

図1 2 5− − .国内総生産に対する教育支出の割合28

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0123456789

2010 2005 2000

% of GDP

1. Public expenditure only (for Switzerland, in tertiary education only; for Norway, in primary, secondary and post-secondary non-tertiary education only; for Estonia, New Zealand and the Russian Federation, for 2000 only).Countries are ranked in descending order of expenditure from both public and private sources on educational institutions in 2010Source: OECD. Argentina: UNESCO Institute for Statistics (World Education Indicators programme). Table B2.1. See Annex 3 for notes (www.oecd.org/edu/eag.htm)

  

図1 2 5− − .高等教育における教育支出の公私負担割合29

28 文部科学省「図表でみる教育(Education at a Glance)OECD インディケータ 2013年度版」http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/index01.htm(2014年9月8日取得)29文部科学省「図表でみる教育(Education at a Glance)OECD インディケータ 2013年度版」http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/index01.htm(2014年9月8日取得)

18

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100

Tertiary education%

1. Some levels of education are included with others. Refer to “x” code in Table B1.1a for details.Countries are ranked in descending order of the proportion of public expenditure on educational institutions in primary, secondary and post-secondary non-tertiary education.Source: OECD. Argentina : UNESCO Institute for Statistics (World Education Indicators Programme). Tables B3.2a and B3.2b. See Annex 3 for notes (www.oecd.org/edu/eag.htm).

 さらに高等教育における教育支出は極端に抑えられていることが図1 2 5からわかる。家計の負− −担が 50%を超えているのは、チリ、イギリス、日本の3カ国のみである。また、日本では、アメリカ

やイギリスほど奨学金制度が充実していないという点を考慮すると、家計への負担はかなり大きいも

のだと考えられる。

 日本において、教育費の家計負担が多くなっている要因について、橘木 30は、「第一に、日本では、

教育は私的財とみなす考え方が支配的で、せいぜい準公共財であるとの考え方が少しあるにすぎない

からである。そのため、教育の費用は自己負担原則という思想がこれまで強かったのである。背後に

は、教育の利益を受けるのは、教育を受ける個人であるとする判断がある。第二に、戦後から今日ま

で、日本は経済発展を最も優先度の高い政策目標としてきたので、政府は公共事業やインフラ整備に

資金を多く投入すれば、どうしても教育費支出は残余にまわされる感が否めず、結果として教育費支

出が少なくなったのである。第三に、文部科学省をはじめ教育界は、教育の質を高めるには必ずしも

お金をかけて教育設備や教員の数を充実するのではなく、教員の熱意ある効率的な教育方法や、生

徒・学生の旺盛な勉強意欲に依存すると考えてきたからである。そのため、教育設備や教員の数を抑

えてきたので、公共部門の教育費支出を抑制できたのである。第四に、設立主体としての国公立校と

私立校に注目すると、学校数や生徒・学生数に関して高校、特に大学において私立の比重が非常に高

かった。私立校には国から私学助成金の支給はあるが、国公立校への支出額に比較するとはるかに少

なくてすむ。日本の教育がかなり私学に依存してきたことも、公共部門の教育費支出が少なかった理

由である。」と述べている。

また、志水31は 2001年と 2013年の子ども調査のデータを用いて、家庭の教育的環境と学力・学習意

30 橘木俊昭『日本の教育格差』,岩波書店,2010年31志水宏吉編『調査報告「学力格差」の実態』,岩波書店,2014年

19

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欲・学習行動の関係を探り、家庭の教育的環境の違いによる学力格差は縮まってきていることを明ら

かにした。

 家庭の教育的環境が「ふつう」あるいは「恵まれない」子どもたちの学習意欲と学習行動が以前

(2001年度調査)に比べて改善されたことが、学力格差が縮小したことの一要因であるとした。ただ

し、親の資本が多いか少ないかで子どもの学力が大きく違ってくるという現状は未だ解決されずにあ

り、文化資本>経済資本>社会関係資本の順に、学力に対する影響力が強くなっていることを示した

文化資本と経済資本の影響力がほぼ同程度であり、「文化」と「お金」とが子どもの学力に強い影響力

を与えていることがわかった。

第3節 教育需要と教育期待

第1項 教育期待と教育投資

 親の所得が高いと子どもの学力も高くなるという関係を説明するメカニズムには様々なものが考え

られる。一つの説として「学歴下降回避説」というものがある。もともとは、欧米において RRA 仮説

(相対リスク回避説)と呼ばれ、人は子どもが自分と同等以上の階層(教育・職業)に到達できるように、すなわち子どもが自分よりも下の階層になる確率を最小にするために子どもに高い教育を授けようと

する傾向が強いとする説であった。この RRA 仮説(相対的リスク回避説)を日本に即して提唱したの

が吉川による「学歴下降回避説」32である。「子どもの教育水準の決定において、親の教育水準より下

になることだけは避けたいという動機が、親子ともどもに強く作用するというものである。例えば、

親が高卒であれば、子どもの学歴は少なくとも中卒となることだけは避ける。親が大卒であれば、子

どもは高卒や短大卒で終了することは避けて大卒以上を望むということになる。」33

 

 親の教育期待が、子どもの教育達成に影響する関係を説明するメカニズムのひとつに、ペアレント

クラシーがある。耳塚34は、日本において、学力を獲得するのに特に大きな規定要因となるものは、保

護者学歴期待、学校外教育費支出、世帯所得であると明らかにした。ブラウンが、市場化した社会に

おいては、人々の選抜は「能力+努力=業績」というメリトクラシー方式ではなく、「富+願望=選

択」というペアレントクラシー方式に沿って行われる、という考えにあてはめ、親の富(学校外教育

費支出、世帯所得)と願望(保護者学歴期待)が子どもの学力を規定しているという意味で、日本社会

もペアレントクラシーへの道を歩んでいると推測できると主張した。

 教育の市場化は、子どもにより高いレベルでの教育達成を望む親を取り込み、学校外教育投資を増

幅させ、格差を拡大させる一要因となったのではないかと推測できる。

32 孫引き33橘木俊昭『日本の教育格差』,岩波書店,2010年, p.5634耳塚寛明 「小学校学力格差に挑む だれが学力を獲得するのか」『教育社会学研究』第 80 号 pp.23-39,2007年

20

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第2項 教育収益率

 教育収益率とは、人的資本論からくる考え方で、教育にかけた費用(進学したことにより得ること

ができなかった期間の所得も含む)が、就職後、高卒との賃金差として戻ってくると考えた場合の収

益率のことである35。具体的には、社会的収益率、私的収益率に分類される。社会的収益率は、教育に

かかった全費用(家計負担と公的負担のすべての教育費)と税引き前の所得のデータの差異を対応さ

せることで表すことができ、私的収益率は、家計負担分の教育費と税引き後の所得データの差異に

よって表すことができる。36

 

 以上のような、人的資本論からくる教育の収益率を求める考え方は、教育の費用対効果を求めるも

ので教育学においては敬遠されてきた。しかし、教育の収益率について考えることによって、教育に

投資すればするほど収益を得にくくなってしまうために、国が効果のわかりにくい教育という分野に

多くの予算を投じていないのではないかということが考えられる。

第4節 教育格差のメカニズム

 本節では、これまでみてきたような教育格差が生じるメカニズムについて、先行研究者による研究

において有力な説を取り上げる。

第1項 ウィスコンシン・モデル

 1970年代以降に、ウィスコンシン大学の研究者を中心に行われた地位達成モデルへの新しい試みで

ある。親や教師といった「重要な他者」が進学を希望したかどうかが、本人の教育アスピレーション

を媒介として、本人の学歴に影響するというモデルである。またウィスコンシン・モデルでは、認知

的能力も、本人の成績に影響する重要な要因であるとみなされた。

 (1)成績は認知的能力から本人学歴への影響を媒介する。(2)親の社会経済的地位(もしくはそこから

生じる教育期待)は重要な他者と教育アスピレーションを介して、本人学歴に影響する。 (3)重要な他

者は「親の社会経済的地位」と「成績」と「教育アスピレーション」を結びつける役割をもつ。

図.1 4 1 ウィスコンシン・モデル− − 37

35 内閣府「平成 17年度国民生活白書」http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/01_honpen/index.html(2014年 9 月8日取得)36 福田光宏「教育と経済・社会を考える 第2回経済学の基本」http://www7.ocn.ne.jp/~mfukuda/edec02.pdf(2014年 9 月3日取得)37鹿又伸夫『何が進学格差を作るのか 社会階層研究の立場から』,慶應義塾大学三田哲学会,2014年,p.35-36をもとに作成

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Page 22: matsusemi.saloon.jpmatsusemi.saloon.jp/.../2014/10/4aafb52beebc52416e… · Web view2014/10/04  · アブストラクト. 本研究は、日本の教育による階層間格差や格差拡大の発生源について明らかにし、政策的な知見を得る

片瀬・土場38は、このウィスコンシン・モデルをもとに、(1)親の教育期待は子どもの教育アスピレー

ションを加熱しようとする傾向があるが、普通科(非進学校)の女子においては教育アスピレーショ

ンの加熱と冷却に二極化する傾向がある、(2)女子の場合、成績は本人の教育アスピレーションに影響

するが、親の教育期待には影響を与えないということを明らかにし、男子と女子という性差によって、

親の教育期待や学業成績、高等教育のもつ意味が異なるということを示した。

第2項 家族構造研究

 きょうだい数やひとり親世帯など、家庭の構造から教育達成に与える影響を説明するモデルである。

 平尾39はきょうだい数が多い家族に生まれると、教育達成に関して女性は男性よりも大きな負の影響

をうけるものの、父学歴が高い場合には若干緩和されることを明らかにした。

片瀬・平沢40は、自らが学校外教育を受けた経験を持つ親ほど子どもへの教育投資意向が強いことを明

らかにしている。また、学校外教育投資が大衆化した現在では、「抜け駆け効果」はもたなくなって

いるが、大学進学率の上昇期には教育達成を直接高めると同時に、中学3年時成績を経由して間接的に

も教育達成を促進する効果をもつことも明らかにしている。そして、教育の市場化によって高騰する

教育費負担のもと、依然としてきょうだい数に応じて教育投資が希釈されている可能性も示唆した。

38片瀬一男,土場学「現代家族における教育アスピレーションの加熱と冷却——教育選抜は家族内部にどのように浸透しているか——」,『社会学研究』,第61号,pp.41-65,1994年39平尾桂子「教育達成ときょうだい構成—性別間格差を中心に—」,『第 2 回家族についての全国調査 (NFRJ03) 第 2 次報告書 No. 2: 親子、きょうだい、サポートネットワーク』(日本家族社会学会全国家族調査委員会),pp.17-27,2006年40片瀬一男,平沢和司「少子化と教育投資・教育達成」,『教育社会学研究』,第82集,pp.43-59,2008年

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Page 23: matsusemi.saloon.jpmatsusemi.saloon.jp/.../2014/10/4aafb52beebc52416e… · Web view2014/10/04  · アブストラクト. 本研究は、日本の教育による階層間格差や格差拡大の発生源について明らかにし、政策的な知見を得る

 

第3項 文化資本論

 ブルデューによれば、親の学歴や資格といった目に見える「制度化された文化資本」、家庭の蔵書

数といった所有することのできるものを指す「客体化された文化資本」、立ち振る舞いやマナーなど

の行動様式といった「身体化された文化資本」の3つに分類される文化資本は、学校教育を媒介とし

て、家庭内で相続される。これらは、経済資本をもつ家庭であれば、より獲得しやすいと考えられて

いる。つまり、階層における格差が、学校教育における学業成績を通して、能力や努力による格差

(メリトクラシーにおける格差)であるかのように正当化され、階層差が再生産される。

 本田41は、父母の学歴、家計の豊かさが子どもの中学校3年生時の成績に、プラスに影響しており、

中3時成績と家庭の社会階層は、子どもの最終的な教育達成つまり最終学歴を大きく規定する要因と

なっていることを明らかにした。家庭における文化資本、経済資本が潤沢であるほど、「きっちり」

「のびのび」バランスよく力をいれることができることから、子育ては家庭の社会階層から影響を受

けているということを示した。

 このように、家庭の経済的背景だけではなく、文化的背景からの影響は多くの先行研究者によって

明らかにされている。志水42は、「家の人はテレビでよくニュース番組をみる」「家の人が手作りのお

かしをつくってくれる」「小さいとき、家の人に絵本を読んでもらった」「家の人に博物館や美術館

に連れて行ってもらったことがある」などの家庭の文化的背景は、経済資本とほぼ同程度の影響力を

もち、「文化」と「お金」とが子どもの学力に強い影響力を与えていることを示した。さらに、社会

経済的背景が比較的に安定している地域では、社会関係資本が家庭環境の恵まれない子どもの学力に

対してポジティブに作用する可能性を示唆した。

 また、お茶の水女子大学・ベネッセ教育研究開発センター共同研究『教育格差の発生・解消に関する

調査研究報告書』43は、国語と算数の学力が高い子ども(小学校 5年生)の家庭では、家庭の文化的背景の優位性だけではなく、保護者との会話(特に、一日の出来事を話す、学校での勉強について話をする

こと)が多い傾向にあることを示し、「階層」→「家庭環境・生活」→「学力」といった影響関係があ

ることを示唆する結果が確認された。しかしその一方で、母学歴や父職業といった階層変数を統制し

ても、親の子どもへの働きかけや子どもの家庭学習は学力に有意な影響を及ぼしていることも明らか

になったと指摘している。

第4項 相対的リスク回避説

 第3節でも述べたように、人は子どもが自分と同等以上の階層(教育・職業)に到達できるように、すなわち子どもが自分よりも下の階層になる確率を最小にするために子どもに高い教育を授けようとす

41本田由紀『「家庭教育」の隘路―子育てに強迫される母親たち』,勁草書房,2008年42志水宏吉編『調査報告「学力格差」の実態』,岩波書店,2014年43お茶の水女子大学・ベネッセ教育研究開発センター共同研究「教育格差の発生・解消に関する調査研究報告書 [2007年~2008年]」http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=3210(2014年 9 月9日取得)

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Page 24: matsusemi.saloon.jpmatsusemi.saloon.jp/.../2014/10/4aafb52beebc52416e… · Web view2014/10/04  · アブストラクト. 本研究は、日本の教育による階層間格差や格差拡大の発生源について明らかにし、政策的な知見を得る

る傾向が強いとする説として、相対的リスク回避説がある。この説では、子どもが自分よりも下の階

層へと下降移動することを避けるために進学するというコストと進学することによる利益を考慮する、

親の合理的選択が前提とされている。鹿又44によれば、相対的リスク回避説では、本人の学歴に対する

出身階層の影響を進学意欲が媒介する関係から学歴格差という結果を説明しようとする。学歴に対し

て他の要因にくらべて最も強い直接的影響をもつのは進学意欲であり、進学意欲に対して他の要因よ

りも強い直接影響を及ぼすのは、親の職業であるということが明らかにされている。

第5項 トラッキング説

 トラッキングとは、陸上競技での「トラック」からきており、学校教育体系における選抜を通して

どのコースすなわちトラックに進むかということが、進学先や教育達成に大きな影響を与えていると

する説である。出身階層の影響を受けて、早い段階で分岐したトラックによって生じた格差が、その

後の進学先に強く影響することを強調している。中西45は、(1)中学3年時の学力は、世帯収入、父親

学歴に大きく規定され、本人の学習時間は有意ではない、 (2)世帯収入、父親学歴から規定された中学

3年時の学力は、小学6年時の学力からも影響される、(3)進学校の在籍は、小学6年時の学力と中学

3年時の学力の両方によって規定されている、ということから、早期に獲得された学力が累積的に作

用し、トラックの配分を規定していることを示した。

図.1 4 2 トラッキング説− − 46

 

 日本においては、学校教育におけるトラックを、私立/国公立といった学校種別や、高校のランク

から説明されており、高校入試における選抜によるトラッキングによって、格差が拡大するとする説

44鹿又伸夫『何が進学格差を作るのか 社会階層研究の立場から』,慶應義塾大学三田哲学会,2014年,p.42-4345中西啓喜「学力・社会階層とトラッキング 青少年期から成人期の以降についての追跡的研究(JELS)から」,『日本教育社会学会大会発表要旨集録 』,第 64巻, pp.10-11, 2012年46 鹿又伸夫『何が進学格差を作るのか 社会階層研究の立場から』,慶應義塾大学三田哲学会,2014年,p.46-47をもとに作成

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もある。47

第6項 インセンティブ・ディバイド

 苅谷48は、教育の不平等が生じるメカニズムとして、「インセンティブ・ディバイド」という概念

をあげている。「過度な受験戦争」や「詰め込み教育」の反省から、学業成績を基準として競争の圧

力を学校教育から取り除くことに全力をあげ、「ゆとり教育」や「AO 入試」の拡大などを取り入れた

結果として、やる気を引き起こす要因、インセンティブが見えにくくなってきたことを指摘している。

このことは、社会階層の比較的低い層において、「将来の生活への効果が勉強することによって得ら

れるとは限らない」と感じさせ、学校での成功をあきらめさせるという、学習意欲の低下を引き起こ

している。

(1)社会階層の比較的上位の家庭で育った子どもたちは、たとえインセンティブが見えにくくなっても、

その環境ゆえにそれを見抜き、意欲を維持している可能性 (2)社会階層・上位グループの子どもほど、

興味・関心をもちやすく、しかもそれを学習意欲に結びつける術を知っている、つまり、「内発的な

動機づけ」による学習が容易であるという可能性から、社会階層の上位と下位の子どもにおいて学習

意欲の二極化が進み、「意欲格差」が生じていると主張している。

第2章 仮説提示 社会階層による教育格差に関する研究について、様々な有力説があることを確認してきた。2000年以降から、日本においても教育格差という問題が重要視されるようになり、多くの研究がなされてき

たが、多くの要因が複雑に関係していることから、未だ、教育格差のメカニズムは説明され尽くした

とは言いがたい状況にある。

 また、どのような説においても、「親の経済資本」「親の教育期待」「本人の教育アスピレーショ

ン」によって本人の教育達成が規定されていることがわかる。しかし、日本の現状においては、教育

において私費負担が多いことから、所得格差が教育格差につながることは第1章で明らかにした通り

である。そのため、文化資本や社会関係資本と本人の教育達成との関係を明らかにすることで、教育

が市場化された状態において、教育格差を是正するための知見が得られるのではないか。

第1節 仮説提示

 仮説については、現在検討中です。

 先行研究において、「父母の学歴」「父母の教育期待」「きょうだい数」「学校外教育投資」

「学校教育システムにおける選抜」など、さまざまな要因が子どもの学力の規定要因としてあげ

47鳶島修治「教育期待の形成に関する国際比較—学力と出身階層の効果に着目して—」、『社会学年報』,第41号,pp.91-101,2012年48苅谷剛彦『階層化日本と教育危機 : 不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』, 有信堂高文社,2001年

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られてきた。

そのなかでも、親が子どもに対しての「教育期待」をもち、教育投資をどれだけすることができ

るかということが重要になってきていると筆者は考える。子どもの教育達成についての格差には

2段階あり、ひとつめに、「進学するかどうか」という段階、ふたつ目に「どのレベルの学校に

進学するか」という段階がある。このどちらの段階においても家計の負担を必要とし、親が子ど

もに対してより高い学歴を獲得してほしいと期待した場合、学校外教育投資の増幅できるかどう

かという点で格差が生じる。

 第1章でみてきたように、日本においては家計における教育費負担が多い。政府の公的資金に

おいても、教育にさかれている割合は、国際的な比較を通しても少ない。しかし、国がどれほど

家庭への経済的援助をしても、教育が市場化された状態では、このような格差をなくすことはで

きないのではないだろうか。

 そのため、現状を打破する解決案の一つとして、文化資本や社会関係資本の概念を取り入れた

い。文化資本が、どれほど、どのようにして学力に影響を与えるのかということを明らかにした

うえで、文化資本をもとにした支援の必要性を主張したいと考える。

第2節 目的と方法

<以下執筆中>

第3章 夏課題の反省と今後の予定 まず、自分の計画性の甘さ、夏課題への取り組む姿勢の甘さにより、読みにくく未熟な論文を

提出してしまったことを本当に申し訳なく思っています。

 前回の春課題での指摘をふまえて、自分のなかでとくに問題であると思う、関心のあるテーマ

に絞り込もうと考え、今回「社会階層格差と教育格差」というテーマにしました。しかし、先行

研究で明らかにされている要素も多様であり、うまく情報を整理することができませんでした。

課題へ取り組むために、個人的には、「教育投資」「教育費負担」「教育期待」「少子化」という

言葉をキーワードとして、「教育と市場化」について議論していきたいと考えました。

 また、「教育費負担」を考えるなかで、経済学的視点からの先行研究を読み、「私的財」「公

共財」という考え方や「教育収益率」という概念を用いて、今後論じていくことも考えています。

ただ、経済学についての知識が浅く、上記の概念の理解も浅いので、今回はあまり時間がとれな

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かったため、経済学について勉強することができなかったが、今後これらの理解を深め、論文の

なかに盛り込むべきかどうか検討していきたいと考えています。

 今後はまず、経済学的な視点を取り入れるべきかどうか、もう一度先行研究を整理したいと思

います。納得のいく卒論を提出できるように、卒業論文に取り組む姿勢をあらため、じっくりと

取り組みたいと思っています。

第4章 参考文献一覧【書籍】

・ 阿部彩『子どもの貧困』,岩波新書,2008年・ 安彦忠彦『「教育」の常識・非常識 : 公教育と私教育をめぐって』, 学文社,2010年・ 有田伸『韓国の教育と社会階層 : 「学歴社会」への実証的アプローチ』, 東京大学出版会,2006年・ 石田浩,近藤博之,中尾啓子編『現代の階層社会. 2, 階層と移動の構造』, 東京大学出版会,2011年・ 稲垣恭子編『教育文化を学ぶ人のために』, 世界思想社,2011年・ 上村敏之,田中宏樹『検証 格差拡大社会』,日本経済新聞出版社,2008年・ 苅谷剛彦『階層化日本と教育危機 : 不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』, 有信堂高文社,2001年

・ 苅谷剛彦『教育と平等 大衆教育社会はいかに生成したか』,中公新書,2006年・ 苅谷剛彦『学力と階層 教育の綻びをどう修正するか』,朝日新聞出版,2008年・ 苅谷剛彦,山口二郎著『格差社会と教育改革』,岩波書店,2008年・ 苅谷剛彦, 志水宏吉編『学力の社会学 : 調査が示す学力の変化と学習の課題』,岩波書店,2004年・ 神原文子『教育と家族の不平等問題 : 被差別部落の内と外』, 恒星社厚生閣,2000年・ 川村千鶴子『多文化社会の教育課題 : 学びの多様性と学習権の保障』, 明石書店,2014年・ 小杉礼子・堀有喜衣編『キャリア教育と就業支援』,勁草書房,2006年・ 佐藤嘉倫, 尾嶋史章編『現代の階層社会. 1, 格差と多様性』, 東京大学出版会,2011年・ 鹿又伸夫『機会と結果の不平等—世代間移動と所得資産格差—』,ミネルヴァ書房,2001年・ 鹿又伸夫『何が進学格差を作るのか 社会階層研究の立場から』,慶應義塾大学三田哲学会,2014年・ 志水宏吉編『調査報告「学力格差」の実態』,岩波書店,2014年・ 竹ノ下弘久『仕事と不平等の社会学』, 弘文堂,2013年・ 橘木俊昭『日本の教育格差』,岩波書店,2010年・ 中田雅敏『教育改革のゆくえ : 続・家庭は子どもの教育の原点』, 新典社,2014年・ 永谷敬三『経済学で読み解く教育問題』,東洋経済新報社,2003年・ 中村高康,藤田武志,有田伸『学歴・選抜・学校の比較社会学——教育からみる日本と韓国』 ,東洋館

出版社,2002年

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・ 西村和雄『拡大する社会格差に挑む教育』, 東信堂,2010年・ 広田照幸『日本人のしつけは衰退したか』,講談社,1999年・ 古松紀子『教育の公共経済学的分析』,岡山大学経済学部,2006年・ 本田由紀『「家庭教育」の隘路―子育てに強迫される母親たち』,勁草書房,2008年・ 南本長穂, 伴恒信編著『発達・制度・社会からみた教育学』,北大路書房,2010年・ 耳塚寛明編『教育格差の社会学』,有斐閣アルマ,2014年・ 八代尚宏『「健全な市場社会」への戦略』,東洋経済新報社,2007年・ 渡邊秀樹, 稲葉昭英, 嶋崎尚子編『現代家族の構造と変容 : 全国家族調査(NFRJ98)による計量分

析』, 東京大学出版会,2004年

【雑誌論文】

・ 荒牧草平「高校生の教育期待形成における文化資本と親の期待の効果 「文化資本」概念解体の提

案 」,『九州大学大学院教育学研究紀要』,第57集,14号,pp.97-110,2011年・ 石田浩「社会的不平等と階層意識の国際比較」,『JGSS研究論文集』,第3巻,pp.149-161,2004年・ 石田浩,藤原翔「大学選択の経済的格差とその変容」,『日本教育社会学会大会発表要旨集録 』,第

64巻, pp.196-197, 2012年・ 卯月由佳「《教育機会の平等》の再検討と《公共財としての教育》の可能性 : 公立学校からの退出

を事例として」,『教育社会学研究』, 第 74巻, pp.169-187, 2004年・ 尾嶋史章「社会階層と進路形成の変容———90年代の変化を考える」,『教育社会学研究』,第70

集,pp.125-142,2002年・ 片岡栄美「教育達成家過程における家族の教育戦略——文化資本効果と学校外教育投資のジェンダー差を中心に——」,『教育学研究』,第68巻,第3号,2001年

・ 片瀬一男「文化資本と教育アスピレーション—読書文化資本・芸術文化資本の相続と獲得 」−− ,『人間情報学研究』,第9巻,pp.15-30,2004年

・ 片瀬一男,平沢和司「少子化と教育投資・教育達成」,『教育社会学研究』,第82集,pp.43-59,2008年

・ 片瀬一男,土場学「現代家族における教育アスピレーションの加熱と冷却——教育選抜は家族内部に

どのように浸透しているか——」,『社会学研究』,第61号,pp.41-65,1994年・ 加藤真紀,安藤朝夫「教育投資と所得の因果関係及び投資効果発生に達する時間的遅れ」,『応用地

域学研究』,No12,pp.1-13,2007年・ 釜田公良,佐藤隆,二神律子「家族における子の数及び教育投資の選択と公的教育政策の効果」,『中京大学経済学論叢』,第 25 号,pp.37-56,2014年

・ 久保木匡介「イギリスにおけるキャメロン連立政権下の教育改革の動向——「民営化」政策と学校

査察改革との関係を中心に——」,『長野大学紀要』,第 34巻,3 号,pp.199-214,2013年・ 小林雅之「高等教育機会の格差と是正政策」, 『教育社会学研究』,第80集,pp.101-125,2007年

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Page 29: matsusemi.saloon.jpmatsusemi.saloon.jp/.../2014/10/4aafb52beebc52416e… · Web view2014/10/04  · アブストラクト. 本研究は、日本の教育による階層間格差や格差拡大の発生源について明らかにし、政策的な知見を得る

・ 近藤博之「社会空間と学力の階層差」,『教育社会学研究』,第 90巻, pp. 101-121,2012年・ 島「教育投資収益率研究の現状と課題 - 海外・国内の先行研究の比較から-」,『大学経営政策研究』,第3号,pp.15-35,2013年

・ 妹尾渉,日ノ下岳史「「教育の収益率」が示す日本の高等教育の特徴と課題」,『国立教育政策研究所紀要』,第 140 集,pp.249-263,2011年

・ 高野良一「アファーマティブ・アクションとしての実験学校 - チャータースクールの現実的な可能

性」,『教育學研究』,第 73巻,4)号,pp. 376-390, 2006年・ 伊達平和「親の学歴結婚パターンが子の教育達成に及ぼす影響に関する比較社会学 -EASS 2006・

2008 累積データによる日韓台の 3 地域比較 -」 ,『京都大学大学院教育学研究紀要』 ,第 59号,pp.207-219,2013年

・ 苫米地なつ帆「キョウダイの教育達成格差の生じるメカニズムの理論的考察」 ,『東北大学大学院教育学研究科研究年報』,第 62 集,第1号,pp.69-87,2013年

・ 苫米地なつ帆,三輪哲,石田憲示「家族内不平等の再検討——きょうだい構成に着目して——」,『社会学研究』,第90号,pp.97-116,2012年

・ 鳶島修治「学力の階層差の拡大と家族の教育戦略——学校教育投資による格差拡大説の再検討—

—」,『社会学研究』,第91号,pp.195-214,2012年・ 鳶島修治「教育期待の形成に関する国際比較—学力と出身階層の効果に着目して—」、『社会学年

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層の認知が責任帰属に与える影響の検討」,『社会心理学研究』,第28巻,1号,pp.13-23,2012年・ 平尾桂子「教育達成ときょうだい構成—性別間格差を中心に—」,『第 2 回家族についての全国調査

(NFRJ03) 第 2 次報告書 No. 2: 親子、きょうだい、サポートネットワーク』(日本家族社会学会全

国家族調査委員会),pp.17-27,2006年・ 平沢和司「きょうだい構成と教育達成 (2)」,『日本教育社会学会大会発表要旨集録』 ,第 64 集,

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・ 松原茂仁「株式会社形態による実践的学校経営の研究」,『日本経営教育学会全国研究大会研究報告集』, 第 58 集, pp.19-22, 2008年

・ 耳塚寛明 「小学校学力格差に挑む だれが学力を獲得するのか」『教育社会学研究』第 80 号

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・ 文部科学省「義務教育特別部会(第 2 回) 配付資

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・ 文部科学省「平成25年度 文部科学白書 特集2 教育再生に向けた取組の加

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・ 文部科学省「教育安心社会の実現に関する懇談会報告〜教育費の在り方を考える〜」http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/07/__icsFiles/afieldfile/2009/08/31/1281312_2.pdf(2014年9月6日取得)

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