wto/fta - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(ustr)2005...

45
©JETRO 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易 貿易 貿易 貿易の概要 概要 概要 概要 2004 1,620 2003 1,241 380 2004 347 2003 22.4 2004 1,967 29.0 5 2003 59 39 2002 34 1 2500 FDI 2003 119 2002 105 FDI 2003 WTO 2003 12 2004 4 (JCCT) 2003 2004 WTO 7 2 2004 WTO * WTO/FTA Column Japan External Trade Organization International Economic Research Division Vol. 037 2005/8/9

Upload: others

Post on 15-Sep-2019

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

1

米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳)

* ~~~~中国中国中国中国にににに関関関関するするするする部分部分部分部分をををを抜粋抜粋抜粋抜粋~~~~

貿易貿易貿易貿易のののの概要概要概要概要 米国の対中貿易赤字は2004年に1,620億ドルとなり、2003年の1,241億ドルから380億ドル増加した。米国の商品の対中輸出は2004年に347億ドルとなり、2003年から22.4%増加した。また、米国の対中輸入は、2004年は1,967億ドルとなり、29.0%増加した。中国は現在、米国産品の第5位の輸出市場となっている。 米国の民間商業サービス(すなわち、軍事と政府以外)の対中輸出は2003年(入手可能な最新データ)に59億ドル、輸入は39億ドルであった。2002年(入手可能な最新データ)の米国が過半数を所有する企業の中国でのサービス売上高は34億ドルであったが、中国が過半数を所有する企業の米国でのサービス売上高は1億2500万ドルだった。 米国の中国向け対外直接投資(FDI)の残高は、2003年が119億ドルで、2002年の105億ドルを上回った。米国の対中FDIは、製造業,卸売り,鉱工業部門に集中している。 米国政府は2003年、米中二国間で貿易摩擦が急増していることを認めた。この貿易摩擦は一つには中国のWTO約束履行のモメンタムが衰えたことによるものであった。この流れを食い止めようと2003年に米国が努力した結果、12月にブッシュ大統領と温家宝首相との間で会談がもたれた。この会談で、米中貿易関係における問題を解決するために、経済対話のレベルを引き上げ、二国間対話の集中プログラムに着手することを両首脳は約束した。この新しいアプローチは、非常に建設的であった2004年4月の通商合同委員会(JCCT)の会合で実証された。この会合の中国側代表は呉儀副首相、米国側代表はエバンス商務長官、ゼーリック米国通商代表であり、農業問題に関してはベネマン農務長官がリーダーシップを取った。この会合、及び会合に続いてもたれた2003年後半から2004年前半の広範な問題を網羅する一連の率直な意見の交換で、双方は中国のWTO約束遵守に関する少なくとも7つの問題を解決した。 米国の利害関係者は、過去2年間に比べると2004年は中国のWTO約束履行に満足しているが、重大な課題はまだ残されており、多くの米国ビジネスマンが中国市場で機会を最大限に活用することができないでいる。知的財産権、サービス、農業、及び産業政

* 2005 年 3月 30 日に発表された米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書のうち,中国部分を抜粋してジェトロで仮訳しました。なお,本文はあくまで仮訳であり,本仮訳を参照した結果生じた,いかなる損害に関しても責任は負いかねます。正確を期すためには原文をご参照ください。原文はhttp://www.ustr.gov/Document_Library/Reports_Publications/2005/2005_NTE_Report/Section_Index.html にて閲覧できます。

WTO/FTA Column

Japan External Trade OrganizationInternational Economic Research Division

Vol. 0372005/8/9

Page 2: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

2

策の4分野で、引き続き重大な問題が発生している。 知的財産権の分野では、中国は法律や規則の枠組みを大きく改善してきたものの、効果的な知的財産権のエンフォースメントが欠如していることが大きな課題として残っている。2004年4月のJCCT会合で、呉儀副首相は中国における知的財産権問題に対処するための「行動計画」を公表した。「知的財産権の侵害を大幅に減らす」ことを目指し、この行動計画は知的財産権違反の刑事訴追を促進し、エンフォースメント活動を増やし、また国家教育キャンペーンを行うための法的措置を改善することを提唱する。米国はこの行動計画の実施状況を監視しており、米国通商法スペシャル301条の規定に従って2005年初頭に不定期の調査を行い、中国の知的財産権遵守の実施状況を評価する予定である。 サービス分野では、主に透明性の問題、立法措置の発行の遅れ、及び国際基準を超える中国の参入要件のために、多くの部門で引き続き懸念がある。確かに、中国の行政当局は、保険、流通、電気通信及びその他の米国のサービス供給業者が中国において市場での潜在力を十分に実現しようとする努力を阻害し続けている。 農業分野では、特にバイオテクノロジーの認可及び問題の多かった衛生植物検疫障壁の撤廃などいくつかの市場問題で米国は進展を見ることができたものの、大きな懸念は数多く残っている。中国との農業貿易は世界中の主な市場の中で、引き続き、最も不透明で予測しがたいものとなっている。中国の税関職員及び検疫官の一貫性のない業務により、農作物の中国への出荷が遅れ、足止めを食うとともに、科学的根拠の疑わしい衛生植物検疫基準と全般的に不透明な規制に農作物貿易業者はしばしば悩まされている。 中国はまた、中国産以外の工業製品の市場アクセスを制限し、外国の権利保持者から技術及び知的財産を引き出すことを目指した産業政策をますます講じるようになっている。こうした政策は、中国の現在の労働集約型工業よりも経済価値の高い工業の発展を支えること、あるいは単に競争力の弱い国内産業を守ることを目的としているようである。 一方、透明性に関する懸念は様々な分野にわたる。中国の様々な規制は体系的に不透明であり、中国のWTO加盟の恩恵を得ようとする外国及び国内のビジネス努力を妨げている。中国はさまざまな国家の規制当局及び州の規制当局、特に商務部(MOFCOM)において、透明性を改善する上で大きく前進しているものの、その他の省庁の多くで透明性を改善するための目立った努力は見られない。 総じて中国は25年前に比べて、より開放的で競争力のある経済になり、中国のWTO加盟は、さらなる貿易障壁の撤廃につながったが、相当数の貿易障壁が撤廃されないままとなっている。さらに、一部の機関では新たな貿易の技術的障壁を生み出す動きが現れ始めている。多くの分野で、輸入障壁、不透明かつ整合性のない法規定の適用、外国直接投資の制限などが相まって、外国企業による中国での操業を困難なものとしている。中央政府は引き続き、産業政策を実施し、競争力が乏しい、又は新興の経済分野を外国との競争から保護している。省及び下級レベルの政府は、地元の既得権益の脅威にならない外国投資家の市場アクセスは支持するものの、地元企業に資する保護市場の開放や管轄区域内の雇用や収入減につながる改革には強い抵抗を示している。 中国は、WTO加盟約束を履行し、市場志向の改革を実施するのであれば、政府当局者が市場原理に反して経済介入を認める制度を存続する誘惑を断ち切らなければならないであろう。中国は過去四半世紀にわたって著しい変化を遂げてきたが、計画経済の

Page 3: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

3

遺産に苦しみ続けている。その結果、中国市場において米企業の潜在能力は、中国の経済政策決定により抑制されている。中国はまた、継続中のWTOドーハ開発アジェンダ交渉の中で、特にサービス部門において、より大きな市場アクセスを認める必要がある。 輸入規則輸入規則輸入規則輸入規則 中国はこれまで高関税と内国税、割当制、その他非関税障壁、貿易権の制限を通じて、輸入を制限してきた。2002年、中国はWTO加盟初年に、多くの製品の関税率と輸入割当対象の商品数を大幅に削減し、中国企業の貿易権を拡大し、認可手続きの透明性を高めた。しかし、2003年、WTO加盟2年目の中国は、関税引き下げをスケジュール通りに継続し、その他の実施についても進展させたものの、官僚主義的惰性やセンシティブな産業保護の要望により、WTO加盟1年目に生まれた推進力が大きく損なわれた。2004年、中国は前進を見せ、情報技術協定(ITA)への参加継続に関わるものを含め、要求された関税引き下げの実施をスケジュール通りに進め、スケジュールよりほぼ6ヶ月先行して7月に貿易権に関する約束を完全実施した。 貿易権貿易権貿易権貿易権 中国は、WTO加盟前は、貿易権を持つ企業の種類・数を制限しており、貿易権を有する内外企業しか商品の輸出入に携わることができなかった。貿易権保有企業の種類と数の制限は、非効率的な貿易権制度につながり、密輸やその他の不正慣行に関与する大きな動機となっていた。 貿易権制度の自由化は1995年以降、段階的に進められ、1999年に商務部の前身である対外貿易経済合作部(MOFTEC)が、年間輸出額が1000万ドルを超す中国企業に幅広く貿易権登録を認める新ガイドラインを発表したことから、この動きに弾みがついた。

2001年8月には、中国は外資企業に完成品の輸出を認めることで、この規制を緩和した。外資企業の輸入権はまだ、製造・加工事業に直接関係する原材料、設備、その他産品の輸入に限定されていた。中国に製造拠点を持ち、中国国外で生産された製品の輸入を目指す外資企業も含めて、貿易権のない企業や個人は、国内代理店を用いなければならなかった。 中国はWTO加盟議定書で、貿易権の分野での大幅な自由化を約束した。特に、加盟3年以内、すなわち2004年12月11日までに、貿易権の審査・許可制度を廃止し、中国企業、中国・外資合弁企業、完全な外資企業、外国の個人(個人経営の企業を含む)全てが貿易権を自動的に取得できるようにすることを約束した。これは、流通サービス分野におけるほとんどの規制撤廃に関する期限と同一のものとなっている。中国はさらに、加盟後3年間で、合意したスケジュールに従い、貿易権の取得を段階的に緩和していくことも約束した。 中国はWTO加盟後2年で、義務づけられていた国内企業に関する貿易権の自由化を完全に実施した。しかし、2003年12月11日までにすべての外資合弁企業に完全な貿易権の取得を認めるという期限は守らなかった。むしろ、中国は、当該企業の資格に条件(最低登録資本金、輸入水準、輸出水準、過去の実績に関する要件を含む)を課すことで、外資合弁企業の貿易権の取得を制限し続けた。 中国は2004年1月、新たな対外貿易法案を意見聴取のため閲覧に供した。新法には自動的な貿易権制度を導入し、中国が外国との合弁企業、完全な外資企業及び外国個人のすべてに貿易権を与えるというWTO約束の完全実施を意図する条項が含まれた。米国からの要請によるいくつかの修正を加え、新対外貿易法は2004年7月1日に発効した。この法律により、ビジネスライセンスを有するすべての個人及び組織は、登録の後、政

Page 4: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

4

府が禁止したもの及び国営貿易に留保されたものを除き,商品及び技術の輸出入をできるようになった。 2004年12月、WTO加盟議定書に示されたスケジュールに従って、中国は、鉄鋼、天然ゴム、羊毛、アクリル、合板の輸出入の権利を指定企業にのみ与えるという慣行を廃止した。これらの製品は今では、国内企業、外国企業、個人のいずれもが取引できる。 中国のWTO加盟議定書の条件に基づき、穀物、綿花、植物油、石油製品、砂糖、肥料、ニュース出版物及び関連製品などの一部商品の輸入は、国家貿易企業にもっぱら留保することができる。しかし、穀物、綿花、野菜油、肥料については、非国家貿易企業による輸入に、一部の関税割当(10%から90%)を利用できるようにすると中国は約束した。非国家貿易企業が利用できる割合が、毎年増加している事例もある。 輸入代替政策輸入代替政策輸入代替政策輸入代替政策 中国は1990年代を通じて、正式な輸入代替政策については段階的に廃止した。中国はWTO加盟議定書で、競合する国内供給業者が存在するかどうかを輸入承認や投資承認の条件にしたり、その他のパフォーマンス要求を課したりしないと約束した。中国はこの約束を見越して、2000年と2001年に、外国からの投資に対するローカルコンテンツ要求を廃止する法改正を成立させた。しかし現行の規則では、投資家は今なお、以前の強制的な慣行の一部に従うよう「推奨されて」いる。中国政府が輸入代替政策を取っていると伝えられる例には、次のものが含まれる。 半導体半導体半導体半導体 中国の第10次5ヵ年計画は、中国の半導体生産を2000年の20億ドルから2010年に240億ドルまで引き上げるよう求めている。この政策を進めるため、中国はとりわけ、差別的なVAT政策を通じて、国内集積回路(IC)産業の育成を進めてきた。特に中国は一連の施策を通じて、国内製造業者が国産ICに支払う17%のVATの相当部分を還付してきた。一方、中国は輸入ICに対し、中国で設計されたものでない限り、17%のVATを全額課していた。数回にわたる二国間協議で中国の政策を転換させることに失敗した後、

2004年3月に、米国は中国に対する初めてのWTO提訴を行った。続く協議で、中国は解決策を話し合う用意があるとの姿勢を示した。2004年7月、米中は合意に達し、中国が国内のIC生産者あるいは製品を新たにVAT還付の対象として加えることを直ちにやめること、そして、2004年11月1日までにVAT還付を全廃する規則を公布し、2005年4月1日までに発効させることを約束した。中国はまた、2004年9月1日までに、中国で設計され海外で生産されたICに対しVAT還付を可能にする関連の実施規則を廃止し、2004年10月1日までに発効させることも約束した。中国は2004年9月及び10月に約束の措置を公布した。 肥料肥料肥料肥料 中国は2001年、リン酸2アンモニウム(DAP)を除くすべてのリン酸肥料にVATの控除を与え始めた。米国の対中輸出品であるDAPは中国で生産される他のリン酸肥料、特にリン酸1アンモニウムと競合する。米国の生産者は、中国がVAT政策を使って国内肥料生産に便益を与えていると不満を訴えてきた。 自動車投資自動車投資自動車投資自動車投資ガイドラインガイドラインガイドラインガイドライン 中国の自動車産業政策は、高い水準で現地調達を活用する外資系工場に、大きな優遇措置を与えてきた。中国の国家経済貿易委員会(SETC)は2001年、WTO加盟国として新たな義務が生じるにあたって、自動車現地調達率のための優遇政策はWTO加盟後直ちに廃止されると定めた官報13号(Bulletin No. 13)を発した。しかし米自動車メーカ

Page 5: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

5

ーは、一部の地方政府当局者が引き続き、ローカルコンテンツ要求を課し、古い自動車政策の基準を引き合いに出していると報告している。中国はまた、WTO加盟から2年以内、すなわち2003年12月11日までに、自動車産業政策の改定版を発布すると約束したが、期限を守ることができなかった。2003年半ば、中国は新自動車産業政策の草案を,見直しのために特定の国内企業の閲覧に回した。外国自動車メーカーは後日、合弁相手から写しを入手したが、米国政府のコピーの請求は退けられた。2004年5月、中国は新自動車産業政策の最終版を公布した。最終版では、国産車と輸入車には別々の流通経路を用いなければならないとする問題となった要件は削除されたが、自動車部品の輸入を抑え、国内技術の利用を奨励する規定は盛り込まれたままであった。また、完全組み立て自動車(CKD)の分野などにあいまいな規定が多く残り、その実施は厳密に精査する必要がある。 電気通信機器電気通信機器電気通信機器電気通信機器 信息産業部(MII)と中国電信が、輸入部品・機器の使用を抑制する政策を採用するとの報告が相次いでいる。例えばMIIは今なお、国内で部品や機器を仕入れるよう情報通信企業に指示した1998年の内部通達を撤回していないと伝えられている。 関税及関税及関税及関税及びびびび輸入課徴金輸入課徴金輸入課徴金輸入課徴金 中国はWTO加盟条件に基づき、関税率を毎年大幅に引き下げることを約束した。その大半は中国のWTO加盟から5年以内に実施される。最大の引き下げは2002年、中国がWTOに加盟してすぐに行われ、全体の平均で関税率は15%超から12%になった。 中国のWTO加盟後の関税率は「拘束力を持つ」、すなわち中国はWTO貿易相手国に「代償」(関税譲許のリバランシング、もしくは、WTOの規則に従い、他のWTO加盟国による実質的に同等の譲許の撤回)をしないまま、譲許税率を超えて関税率を引き上げることができない。「拘束力を持つ」関税率は、輸入業者に、より予測可能性の高い環境を与える。中国はまた、政府が重要産業の育成に必要と認めた産品の場合、WTOで義務づけられた率を大きく下回る関税率を適用している。例えば、中国の海関総署(税関)はしばしば、自動車、鉄鋼、化学産業を中心に、重要経済部門にプラスになる品目の優遇関税率を発表している。 中国のWTO加盟に伴う約束は、米国にとって重要な多くの製品の関税率に劇的な影響を与えている。一部の乗用車の関税率は、加盟前に100%超だったものが、2006年7月1日までに25%に引き下げられる。中国はさらに、自動車部品の関税率も2006年7月1日までに約17%から9.5%に引き下げる予定である。情報技術協定(ITA)に含まれる製品(半導体及び半導体製造装置、コンピュータ及びコンピュータ部品、ソフトウエア、情報通信機器、コンピュータを元にした分析機器)の中国の関税撤廃は、加盟直後に着手し、2005年1月1日までに完了する予定である。米国のITA製品の対中輸出は、2004年も増え続け、同年1月から9月までに、2003年の同時期に比べて45%増え、2004年末までに60億ドルを超すと予想された。 中国はまた、別の重要な関税対策をも適時に実施したが、これには化学品も含まれた。中国は、2004年のWTO化学品関税引き下げハーモナイゼーション合意で取り上げられた1,100種以上の化学品の3分の2以上について要求された関税の引き下げを続けており、大きな成果を上げている。本協定の対象となる米国の化学品輸出は2004年1月から9月までに36%増え、2004年末までには2003年の総額39億ドルを遙かに超え、53億ドルに達すると予想された。 中国の関税引き下げの恩恵を受けた他の工業製品の多くも、2004年に大きく成長し

Page 6: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

6

た。例えば、工作機械、ガスタービン、冷却機械用のコンプレッサーを含む米国の機械輸出は、2004年1月から9月までに42%増え、2004年末までには総額65億ドルに達すると予想された。米国の医療・光学機器輸出は2004年1月から9月までに34%増加し、2004年末までには総額21億ドルに達すると予想された。 一方、2004年1月1日までに、米国にとって重要な農産物の関税が、平均31%から14%に引き下げられた。中国による関税率の引き下げは、2004年におけるいくつかの米国農産物の対中輸出増加に大きく貢献したが、需要の伸びにも助けられた。いくつかの大量取引農産物の輸出、特に綿花(2004年1月から9月までに13億ドルに達し、2003年の同時期の記録的水準から270%の伸びを示した)と小麦(2004年1月から9月までに4億

1,400万ドルに達し、2003年の同時期からほぼ1,600%の伸びを示した)の輸出は劇的に増えた。米国の大豆輸出は好調を持続し、中国のWTO加盟から2倍以上に伸びた(ただし、2003年1月から9月までの12億ドルから、2004年の同時期は9億2,900万ドルに減少した)。消費者向け農産物の輸出は2004年1月から9月までに2003年の同時期に比べ20%増え、2004年末までには5億2,600万ドルに達する見込みである。木材などの林産品輸出も好調で、2004年の前半の9ヶ月でほぼ60%増え、2004年末には4億ドルを超えると予想された。一方、魚介類の輸出は2001年の1億1,900万ドルから2002年には1億3,500万ドル、2003年には1億7,600万ドルになり、2004年の前半の9ヶ月でさらに55%増え、2004年末には2億7,400万ドルになると予想された。 しかし中国は、センシティブな国内産業と競合する一部製品に対しては高関税を維持する方針で、例えば、大型二輪車の関税率は60%から45%の引き下げにとどまった。同様に、大半のビデオ、デジタルビデオ、音響録音再生機器には30%前後、干しブドウには35%の関税が依然として課せられている。 関税関税関税関税のののの分類分類分類分類 中国の税関当局者は、個別の輸入品の分類に幅広い裁量を有している。外国企業は時に、より低率な輸入関税分類に割当ててもらえるよう交渉することにより恩恵を受けることもあるものの、統一性の欠如は、関税額の予測を困難にしている。 2004年末、国家発展改革委員会(NDRC)は、完成車の特徴を有する自動車部品の輸入に対する行政措置 (Administrative Measures for the Import of Automobile

Components Fulfilling the Characteristics of a Whole Vehicle)の草案を作成中であった。米国は、主要な自動車部品の関税分類の変更が検討されているか否かを決定する草案作成の過程をつぶさに監視する予定である。 関税評価関税評価関税評価関税評価 輸入業者は、税関当局者が不適切な関税評価方法を使い、しばしば必要以上の関税額を課すことがあるとの報告を寄せてきている。中国は2002年初め、評価慣行をWTO関税評価協定に合わせるため、新たな関税評価条例を発表した。 新関税評価条例が公布されたにもかかわらず、多くの税関当局者が現実の取引価格ではなく、「参考価格」リストを使って関税を算定し続けていると輸入業者は報告している。これは、時には輸入課徴金を下げる結果になり得るものの、しばしば課税価格を引き上げる結果になる。中国は2004年、参考価格を用いる慣行を廃止する努力を行ったが、多くの港湾でこの慣行が引き続き散見される。

さらに、中国の新条例が、ロイヤリティやソフトウエアの対価は、輸入関連のものであり、かつ関税評価の対象製品の販売条件である場合に限って関税の課税対象額に加算

Page 7: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

7

することができると正当に規定しているにもかかわらず、多くの税関当局者は、自動的にそれらを関税の課税対象額に加算している。いくらか改善は見られたものの、2004年末までには、新条例によってもこの分野における中国の税関当局者の統一的でWTO整合的な実施をもたらすまでには至っていない。 中国はWTO加盟約束に基づき、2003年12月11日までに「データ処理機器用ソフトウエアを組み込んだキャリアメディアの関税評価に関するWTO決定」を実施することを約束した。この決定は、フロッピーディスクやCD-ROMに保存されたデータを含むコンテンツの帰属価値ではなく、キャリアメディア(例えばフロッピーディスクや

CD-ROM)の価値をもとに関税が評価されるべきであることを明確にしている。二国間の高官級の会合を受けて、中国は2003年12月にWTO決定を実施する最終規則を公布し、キャリアメディア本体の価値をもとに、関税を課し始めている。2004年、米輸出業者数社が、中国のこれら規則の実施は統一的でなく、個々の税関当局によって特定の製品の取り扱いが異なると報告している。 米輸出業者はまた、2004年に、類似の問題に対する税関当局の対応にも不満の声をあげている。DVDのような複数のコピーを制作する取り扱い説明書を含むデジタルメディアの輸入に関し、税関当局が、まだ制作していないコピー分の概算値をもとにした輸入税を不当に課税しているというのである。米国は中国に対し、ソフトウエアを組み込んだキャリアメディアに適用している原則に従い、キャリアメディア本体の価値をもとに課税するよう求めている。 原産地原産地原産地原産地規則規則規則規則 2004年も、中国は輸出入品の原産地決定のために1980年代に策定された条例をまだ用いている。しかし、中国税関は新条例案作りにもたついてはいたものの、輸入業者からは原産地規則の不適切な適用から生ずる問題は報告されなかった。2004年8月の輸出入品の原産地に関する条例(Regulations on the Origin of Imported and Exported

Goods)、及び2004年12月の非特恵原産地規則のもとでの実質的変更基準に関する規則(Rules on the Substantial Transformation Criteria under the Non-Preferential Rules of Origin)の公布により、中国は輸出入に関する原産地規則をWTOルールに合致させるための措置をついに公表した。これらの措置は、意見聴取のため前もって閲覧に供されなかったが、2005年1月1日発効の予定である。 越境取引越境取引越境取引越境取引 中国の越境取引政策は引き続き、MFN(最恵国待遇)等の懸念を引き起こし続けている。中国は、GATT第24条に規定される国境貿易の範疇に入らない製品の場合にも、主にロシアからの特定の産品に対して、優遇的な輸入税及びVAT待遇を供している。2003年6月、中国はホウ酸及びその他の19の品目に関する優遇措置を廃止して、こうした懸念に対処し始めた。しかし、大手業者はいまだに越境取引政策を利用し、中国の内陸国境を抜けて、有利な税率でばら荷を輸入している模様である。また、中国は引き続きロシア製木材の輸入を有利に扱う越境取引政策を継続しており、米木材輸出業者に損害を与えている。 アンチダンピングアンチダンピングアンチダンピングアンチダンピング・・・・相殺関税相殺関税相殺関税相殺関税・・・・セーフガードセーフガードセーフガードセーフガード措置措置措置措置 WTO加盟以来、中国はアンチダンピング措置を頻繁に利用しており、現在18ヵ国を対象に全部で59件のアンチダンピング措置を適用しており、また35件のアンチダンピング調査を継続中である。2004年も、アンチダンピング法を積極的に適用し続け、新たにいくつかの調査を開始し、5件が米国の輸出に絡んでいる。化学製品は最も頻繁に中国のアンチダンピング調査の対象になっている。

Page 8: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

8

商務部がアンチダンピング調査を行う際に拠り所とする条例や規則のほとんどが、商務部の前進である対外貿易経済協力省と国家経済貿易委員会が中国のWTO加盟直後に暫定措置として発したものである。条例や規則は主に、関連するWTO加盟約束を履行し、WTO加盟前の措置を改善するための誠実な努力であるが、曖昧な文言を含み、実行の部分で差があり、過度の裁量権を与えるものである。また、中国のアンチダンピング調査・審査のやり方は透明性や適性手続(due process)などの点で懸念を引き起こし続けている。情報へのアクセスを含む透明性に関する懸念は、特に損害調査に関して深刻な問題となっている。米国は二国間及び多国間で、こうした問題を明確にし、対処するよう求めている。 中国は今日まで、相殺関税の調査は始めていない。中国は2003年末に、2年弱適用されていた中国の唯一のセーフガード措置を撤廃した。 最高人民法院は、アンチダンピング及びその他の貿易救済措置の決定に対する見直しに関する司法解釈を発表した。しかし、いまのところ裁判所に提訴された事件はまだない。

非関税障壁非関税障壁非関税障壁非関税障壁 中国のWTO加盟議定書は、歴史的に貿易制限に使われてきた非関税障壁の多くを解消するよう中国に義務づけている。例えば中国は、輸入割当制の段階的廃止、検査と規格管理への国際標準の適用、ローカルコンテンツ要求の廃止、ライセンス・登録制度の透明性向上を義務づけられている。国レベルでは、中国はWTO加盟を受けて、検査制度の改革、現地調達を義務づけた条例の改正、ライセンス分野を含む規制全体の透明性を改善し進展を見せた。しかし中国の貿易自由化努力が進む中でこうした進展はあるものの、一部の非関税障壁は残り、あまつさえ2004年に強化されたものもある。 中国のWTO加盟後3年が経過し、多くの米企業が、大きな非関税障壁に直面していると不満を述べている。この点については以下いくつかの項で詳述する。そうした障壁には、銀行や保険などのサービス部門に高い参入基準を定めた条例、輸入農産物への選別的かつ不当な検査義務、輸入量を抑える目的での疑問のある衛生植物検疫措置の活用などが含まれている。多くの米企業はさらに、国内産業を優遇する中国の技術規格の設定にも不満を述べている。

輸入割当輸入割当輸入割当輸入割当 中国は以前、割当量や割当の配分過程を公表しないことが多かった。政府は、中央と地方の政府当局者が毎年末に行う交渉を通じて、割当量を定めていた。大半の製品に対する割当は、中国のWTO加盟約束に従い、すでに撤廃されたか、段階的に廃止される予定である。中国のWTO加盟議定書は、加盟後直ちに米国の最優先製品に対する従来の割当を撤廃し、残りの割当も概ね加盟後2年以内、遅くとも5年以内に、段階的に廃止するよう中国に義務づけた。中国は2004年1月1日、WTO加盟約束のスケジュールに従って、原油、製油、天然ゴム、及びタイヤの輸入割当を廃止した。それ以前に、中国はスケジュール通りに、エアコン、音響映像記録装置、カラーテレビ、カメラ、時計の輸入割当を廃止し、前倒しでクレーン車、シャーシ、二輪車の輸入割当を廃止した。2005年1月1日に自動車の輸入割当が正式に廃止されれば、中国の輸入割当は全廃されることになる。 関税割当関税割当関税割当関税割当 中国は1996年、小麦、トウモロコシ、コメ、大豆油、綿花、大麦、植物油の輸入に、

Page 9: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

9

関税割当(TRQ)制度を導入したと発表した。割当量は公表されず、割当の申請と配分過程は不透明で、輸入は国家貿易企業を通じて行われた。中国は後に、肥料の輸入にも関税割当制度を導入した。この制度の下で、中国は、「割当内」の低い関税率で通関できる商品に数量制限を課し、その量を超過する輸入にはすべて、例外的な高関税を課している。 WTO加盟約束の一環として、中国は小麦、トウモロコシ、コメ、綿花、羊毛、砂糖、野菜油、肥料の輸入に、大半は割当内関税率を1%から9%の範囲内として、漸増する大型の関税割当を設定することとなっていた。各関税割当の一部は毎年、非国家貿易企業を通じた輸入のため留保されなければならない。中国の加盟議定書では、透明性の向上と、輸入に関心を持つ最終消費者向けの未使用分関税割当の再割当を含む、関税割当の手続きについて特定の規定が設けられている。

しかし中国の関税割当制度の実施には、WTO加盟以来問題がある。関税割当制度の運用に関する条例の発表が遅れ、必要な透明性を実現せず、負担の重いライセンス手続きを課した。2002年の関税割当の配分も遅延に悩まされた。中国当局者は、関税割当を運用する官庁でそのような困難な作業を実施する体制が整っていないため、今回だけ配分が遅れると何度も主張した。中国の状況は2002年に一部改善し、2003年は、関税割当がほぼ定められたスケジュールどおりに発行された。しかし、最も大きな問題である透明性の欠如、関税割当の下位区分、小規模な配分実績、負担の重いライセンス手続きは2003年も引き続き課題として残っていた。 2003年6月には米中高官協議を受け、中国は農産物に関するこれらの問題の大部分に対処する措置を取ることに同意した。中国は2003年10月に一部を実行し、国家発展改革委員会が2004年1月1日以降の積荷に対する新条例を策定した。この条例による重要な変更には、一般貿易と加工貿易を区別した配分の廃止、いくつかの不要なライセンス要求の撤廃、配分受益者を明確にする新制度の創設が含まれている。2004年、国家発展改革委員会の関税割当の運用は明らかに改善された。国家発展改革委員会は一般貿易と加工貿易を区別した配分の廃止を義務づけた条例を履行し、割当配分を増やし、再配分の仕方を改善した。しかし、関税割当の対象となるいくつかの商品についてはいくらか改善が見られたが、透明性は引き続き問題であり続けた。また、こうした体系的な変化とともに、米国からの大量取引農作物の輸出は大きく増加したが、これは主に市場の情勢によるものだった。特に、国家発展改革委員会による綿花の関税割当の取り扱いに対する懸念はあったものの、米国の綿花輸出は2004年の1月から9月までの間に総額13億ドルに達し、2003年の同時期の記録的水準から270%の伸びを示した。さらに、米国の小麦輸出は2004年の1月から9月までの間に総額4億1,400万ドルに達し、2003年の同時期からほぼ1,600%の伸びを示した。 国家経済貿易委員会及びその後商務部により行われてきた中国の肥料に対する関税割当制度の運用は改善を見せ始め、米輸出業者は中国市場に進出してきた。しかし、米輸出業者は透明性が欠如していることや地方政府による関連規則の解釈に一貫性がないことに引き続き不満の声をあげている。

輸入輸入輸入輸入ライセンスライセンスライセンスライセンス 中国は1990年代初頭から、輸入ライセンスの対象となる品目数を大幅に削減した。中国は2001年12月のWTO加盟に伴い、公正かつ無差別的なライセンス手続きの適用を約束した。とりわけ中国はWTO加盟後直ちに、取引業者がライセンス取得時に提供しなければならない情報を限定し、ライセンスが不必要に重い負担にならないようにし、かつライセンス手続きの透明性と予測可能性を高めることを約束した。

Page 10: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

10

旧対外貿易経済合作部(MOFTEC)は中国加盟後すぐに、ライセンス手続きを容易にする新条例と実施規則を公布した。しかしライセンス申請者は、単純な輸入監視には不必要なセンシティブ情報まで提供しなければならなかったと報告した。輸入業者はさらに、一部の分野では、旧MOFTECは企業に対して、複数回の積荷にライセンスを与えるのではなく、「1積荷1ライセンス制」を取っていると報告しており、この制度が貿易の障害となった。旧MOFTECは、米国の介入を受けて2002年末から、1つのライセンスに複数の積荷を認め始めたが、「1積荷1ライセンス制」を認める措置は、一見したところまだ存在し続けている。 中国の検査・検疫機関である国家質量監督検験検疫総局(AQSIQ)は、一部の米農産物に輸入抑制効果をもたらす検査関連の要件を課している。特に、2002年に発令されたAQSIQの2つの措置は、家畜、家禽、穀物、脂肪油脂、栽培用種子、園芸用製品、皮革など多くの農産物について、輸入前の輸入検査許可証、もしくは検疫許可証の取得を輸入業者に義務づけている。米輸出業者は、AQSIQが一部輸入品のペースと数量を統制するため、これらの措置により規定された手続きを活用しており、中国の市場アクセスと輸入ライセンスの約束に反すると懸念していた。米輸出業者はまた、これらの手続きが重い負担を課す性質を持つと懸念し、AQSIQが選別的に法を執行していると報告した。 米国の複数回に及ぶ介入により、2003年初めに一定の進展をみて、中国は家禽と豚肉の積荷に対する恣意的な制限を廃止した。しかし、米国の懸念の多くは、まだ解消されていない。2004年に中国はさらなる進展を見せた。2004年6月にAQSIQは、法令73の名で知られる新法令を公布した。これは動植物産品の検疫許可証の有効期間を3ヶ月から6ヶ月に延ばし、輸入業者が有効期間内に貨物の購入、輸送、陸揚げをする機会を増やすことにより、検疫許可証をより有効にするものである。中国はまた2004年8月、通関前、もしくは輸入契約調印前の、検疫許可証の取得を義務づける要件を15種類の動植物産品に関しては免除することを公表した。 2004年のこうした動きはどちらも前向きなものであったが、法令73は要求される契約条件及び商業リスクに関して新たな懸念を引き起こした。AQSIQが警告をほとんどあるいは全く出さずに規則を変更するような環境の中では、米国の出荷業者の多くが、法令73は中国に物品を輸出する業者により大きな商業的リスクを背負わせると不満を述べている。中国は繰り返し米国に対し、法令73は新しい要件を導入することを意図するものではなく、特に米国の大豆輸出業者が影響を受けることはないと保証している。

2004年も終盤が近づき、法令73のために大豆市場での中国が買い手となるのかどうかがはっきりせず、世界の大豆価格を全般的に押し下げる要因となった可能性があると思われる。しかし、米国の対中大豆輸出業者は引き続き進展を続け、法令73の影響を受けるその他の穀物、飼料もマイナスの影響は受けていないようである。 国内政策国内政策国内政策国内政策 税制税制税制税制 全国人民代表大会(全人代)常務委員会は2001年4月、中国の税務手続きの透明性を標準化し高める目的で、待望の徴税法改正を可決した。国務院は2002年9月、同法の実施規則を公布した。中央政府はさらに、「市場秩序を正し」、国内商取引における省間障壁を解消するための広範なキャンペーンの一環として、地方政府が地元企業に有利な差別的税制を適用することを禁止する措置を実施した。

Page 11: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

11

広がりつつある都市部と農村部の収入格差を縮めるために、中国共産党中央委員会、及び国務院は2004年の公文書1(Document No.1)を公布した。これはあらゆるレベルの政府に、たばこ以外の特別農作物にかけられている税金をすべて撤廃するとともに、8.4%の農業税率を2004年に1%ずつ下げることを指導するものであった。公文書1は、農業税率をさらに引き下げ、5年以内に全廃することをも求めている。財政上可能な場合は、政府は、農業税の削減、撤廃の時期を早めることをも求められた。2004年末までに、中国の31の省レベルの政府のうち、22の政府が農業税を撤廃した。 中国国内市場への参入拠点として投資してきた者も含めて、外国投資家は投資インセンティブの恩恵を受けてきた。例えば、免税期間や猶予期間の設定は税負担の大幅軽減を可能にした。国内企業は長い間外資系企業が享受する税の還付などの優遇税制に反感を抱いてきておりこうした特典は段階的に廃止されるだろう。 中国において最重要歳入源であるVAT(製品により13%から17%に分類されている)の適用には不平等が見られる。輸入品への税が国境で確実に徴収されるため、国内競争相手がしばしば払わなくて済むVATの適用を受けなければならない、と幅広い業種の輸入業者から報告が寄せられている。輸入代替政策の項で上述した通り、米国は、国産の半導体を優遇する差別的なVAT政策を撤廃するという約束を中国から取り付けることに成功した。しかし、一定の肥料産品に対しても中国は選択的にVATを免除しており、米国製の輸入品に不利に働いている。中国はさらに、輸出品への積極的なVAT還付計画も維持しているが、還付の支払いは遅れることが多い。中国は2003年、輸出品のVAT還付を3%削減すると発表した。これは、人民元の過小評価に対する外国の不満に対応した面がある。国家税務総局当局者は、税収増加策として還付を最終的に廃止する予定だが、当局は国内景気を刺激するためこの慣行を続けている。例えば、2004年12月、中国財務省(MOF)及び国家税務総局は、集積回路、独立コンポーネント、移動体通信装置及びターミナル、コンピュータ及び周辺機器、数値制御工具を含むIT製品の輸出に対するVAT還付率を13%から17%に引き上げるとする通達を公布した。 中国の1993年消費税制も、米輸出業者の懸念をもたらし続けている。中国は、国内製品と輸入製品の消費税額算定で、大きく異なる課税基盤を用いるため、アルコール飲料から化粧品、自動車に至るまでの輸入消費財にかかる税負担は、競合する国内製品より大きくなっている。 任意規格任意規格任意規格任意規格・・・・強制規格強制規格強制規格強制規格・・・・適合性評価手続適合性評価手続適合性評価手続適合性評価手続きききき WTO加盟約束において、中国は規制当局が輸入品と国産品の両方に同じ任意規格、強制規格、適合性評価手続きを適用し、輸入品と国産品の両方に同じ手数料、処理期間、不服申立手続きを用いると約束した。また、不必要な貿易障壁をなくすために、複数あるいは二重の適合性評価手続きをなくし、輸入品にのみ要件を課すことはしないとも約束した。さらに、規格開発者、規制当局、及び適合性評価機関が透明性をもって業務を行うことを確保することを約束し、提案された任意規格、強制規格、適合性評価手続きに適正な意見聴取の機会を設けることを約束した。 こうした約束を見越して、中国はWTO加盟に備えて、基準、検査、認証制度の改革に大きなエネルギーを費やした。中国は2001年4月、国内の基準および適合性評価機関、入出口検査・検疫機関を1つの新組織、国家質量監督検験検疫総局(AQSIQ)に統合した。中国当局者は統合について、製品が国産ではなく輸入品だという理由だけで複数の検査が義務づけられるといった輸入品の差別的取扱いを解消することを目的としていると説明した。中国は、行政上はAQSIQの下にある半独立機関を2つ設置した。同国の適合性評価制度の統一作業に責任を負う国家認証認可監督管理委員会(CNCA)と、国

Page 12: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

12

内の基準の設定、中国の製品規格の統一的運用、WTOの「貿易の技術的障害に関する協定」(TBT協定)に基づく中国の約束並びに国際慣行と任意規格や強制規格に関する条例との整合性確保に責任を負う国家標準化管理委員会(SAC)である。 AQSIQが2002年1月に国際基準採用を促進するための規則を発表してから、中国は、

WTO加盟5年以内に、約20,000もある強制規格の70%を国際基準に基づいたものにするという目標に向けて大きく前進した。しかし、自動車、自動車部品、電気通信機器、無線LAN(無線LAN暗号化基準の項、参照)、高周波識別タグ技術、AVコーディング、ウイスキー及びその他の蒸留酒を含む多くの分野で、十分に確立された国際基準があるにもかかわらず、中国が独自の技術要件の策定を目指しているという懸念が生じてきている。このような中国固有の基準は、しばしば科学的根拠が乏しいように映り、外国企業にとっては遵守するコストが大きいため、中国市場への大きな参入障壁となる恐れがある。 中国の基準策定過程に透明性が欠けることも多くの外国企業を悩ませている。基準認証機関のほとんどが、外国からの参加に対して完全には開かれておらず、外資企業が会員になるのを拒むケースや、外資出資率が過半数を超える企業に投票参加を認めないケースもある。また、外資企業が投票権のないオブザーバーの資格を与えられても、投票権のある会員よりも高額の会費を要求されることもある。 中国はWTO加盟と同時に、国産品と輸入品に同じ任意規格と手数料を用いると約束したにもかかわらず、多くの米国企業は、中国が国内産業を優遇する強制規格及び任意規格を用いていると訴えている。事実、SACは2004年9月に、関税率の低下に伴い、国内産業を守る手段として任意規格及び強制規格の策定を促進する戦略レポートを公表した。準国家レベルで、輸入業者は、地方の役人が中国のWTO約束を理解しておらず、地域産業を守るために恣意的な強制規格及び任意規格を適用しているとの懸念を表明した。AQSIQとその新しい下位組織CNCA及びSACの間の連携が取れておらず、さらにこれらの機関と中国税関及び強制規格及び任意規格に関する責任を有する中央政府や地方政府のその他の省庁との間の連携も取れていないという事実がこうした問題をさらに難しいものにしている。 一方、輸入業者からは、差別的取り扱いや強制規格及び任意規格の不統一な実施の報告が寄せられている。例えば外国企業の製品は、所定の研究所でしか検査を受けられない。検査及び認証の処理能力が限られていることで、評価に国際的なベストプラクティスが適当であるとするよりもずっと長い時間がかかることがある。需要に合わせて検査及び認証の処理能力を拡張し、経験の浅い検査官が世界的に影響を及ぼす可能性のある否定的な決定を下すことに対して、複数の国で操業している米国企業は懸念を抱いている。また、米国企業、特に化粧品、新化学品、医薬品、医療機器、携帯電話及びその他の電気通信製品、家電製品の米国企業は、不必要な検査義務に悩まされ続けている。

2004年12月、SACは環境機器、遺伝子組み換え生物、新種の動植物を検査する基準を策定する技術委員会を作り、これらの産業についても外国企業にはさらなる要件が課されることを示唆した。 米国企業はまた、認証の過程に透明性がないこと、基準機関の間で連携が取れていないこと、重い負担となる要件、許可されるまでの長い処理時間といった点を問題としている。義務的な品質検査のためにハイテク製品のサンプルを提出すれば、知的財産が競争相手に流れる恐れがあると懸念を示す企業もある。ライセンス及び認証のために製品を評価する技術委員会の委員は、企業側が競争相手との関係が近すぎると懸念する政府、大学、産業界の専門家の中から選ばれる。輸入品検査を担当する研究所が、国内の競争

Page 13: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

13

相手企業の傘下にある例もいくつかあり、そのような流出のおそれが一層強まっている。 中国が指定した基準通報機関である商務部は、WTOのTBT協定が義務づける通り、提案された強制規格、適合性評価手続きをWTO加盟国に通報している。しかし、この通報されたTBT措置のほとんどが、AQSIQまたはSACにより発布されたものであり、他機関が起草した措置は含まれていない。また、意見聴取期間が短かったことも問題である。その他の多くの事例で、中国の規制当局は、規制を採択する前に利害関係者に意見を検討する期間を十分与えなかった。 2004年、SACは現在の基準を幅広く見直すために機関間の連携を強め、中国は国際基準策定機関への参加を増やした。SACはまた、強制規格、任意規格の策定に際し、透明性と機関間の連携の大切さをテーマにした戦略レポートを2つ発表した。こうしたレポートは、外国の知的財産権保持者に支払うロイヤルティをできるだけ少なくし、中国企業に有利な条件での技術移転を促進し、国家の威信を高めるために、強制規格及び任意規格を使用することをほのめかしている。

無線無線無線無線LANLANLANLAN暗号化基準暗号化基準暗号化基準暗号化基準((((WAPIWAPIWAPIWAPI)))) 十分に確立された国際基準があるにもかかわらず、中国が独自の技術要件を策定していることを具体的に示すような例が2003年5月に起きた。中国は無線LAN(WLAN、別名Wi-Fi)の暗号化で、WLAN技術を搭載する国産・輸入機器に適用される2つの強制規格を発表した。これらの規格は、2004年6月に完全実施される予定で、通信の安全性確保のために無線LAN暗号化技術(WAPI)を導入することを規定する。規格の中のこの部分は、国際的に認められた規格と大きく異なる。さらに中国は、限定的な数の中国企業だけに必要なアルゴリズムを供与し、WAPIの使用を強制している。従って、米国などの外国メーカーは、一部は競争相手でもあるそのような企業とともにまたは企業を通じて営業せざるを得ず、そうした企業に製品技術仕様を与えざるを得なくなっている。高官級の二国間の取組みを受けて、AQSIQ、SAC、及びCNCAは共同で、中国は無線暗号の強制基準としてWAPIを実施することを無期限に延期すると発表した。また、中国企業や外国企業から寄せられた意見を参考にWAPI基準を改定すること、コンピュータ・ネットワーク全般のWAPI及び無線暗号に取り組む世界基準機関に参加することを発表した。 新化学品規制新化学品規制新化学品規制新化学品規制 2003年9月、中国国家環境保護局(SEPA)は、新化学品の製造業者及び輸入業者に対し、

SEPAの化学品登録センター(CRC)に認可申請をし、新化学品の物理的特性、消費者の安全性、及び環境への影響を立証する詳しいデータを提供することを義務づける規則を公布した。米国企業は主に、CRCにはまだタイムリーに新化学品の承認をする能力がないということに懸念を表している。業界は、米国企業が2003年10月15日から今までに、35件から40件の新化学品の申請を提出したと見積もっている。CRCから得られる最新の情報によると、これらの申請のうちおよそ10件が承認された。米国企業は申請には、中には規則に定めるスケジュールである120日を過ぎても保留のままであるものもあると言う。また、要件の変更や実施措置の変更に対しても苦情が出されている。例えば、最近、生態毒性検査要件が拡張されたが、特定の生態毒性検査(魚類の生態毒性調査及び生分解調査)は中国国内のSEPA公認の6試験所のうちの一つで行うことを命じるものである。こうした公認試験所はすべて2004年の夏以降に(規則に対応して)設立されており、産業界は、経験不足のせいでこうした新しい試験所で製品が安全ではないとされた場合に、全世界での販売に影響が及ぶことを恐れている。また、中国には少量品の控除(ある化学品の取引量が基準となる年間取引量に満たない場合の控除)がないために、米国の化学品、特に少量販売される高価なスペシャリティケミカルズの輸入

Page 14: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

14

を阻んでいる。 スクラップスクラップスクラップスクラップののののリサイクルリサイクルリサイクルリサイクル 2003年後半に、中国のAQSIQは海外のスクラップ材料の輸出業者にAQSIQに登録することを求める通知を出した。この新要件は、過去に海外から危険廃棄物や不法物質が持ち込まれることが多かったために、中国へのスクラップ輸送の監視を強めることを目的とするとされている。2004年5月になってようやく、AQSIQは実施規則を公布した。この規則は、2004年7月1日を申請期限とすることを含む登録手続きを規定し、実質的な要件を定めた。申請期間が短すぎるという米国及びその他のWTO加盟国の懸念に応えて、AQSIQは申請期限を2004年8月1日までに延長し、申請書類に不備があった企業には必要な書類を補足することを認め、新要件の発効日を2004年11月1日から2005年1月1日に延期した。 AQSIQは、10月半ばと新しい登録が発効するほんの数日前の12月末の二回、中国へのスクラップ輸送を認められた海外輸出業者の名前をホームページ上で公開した。世界中からの申請者のうち、全部で約85%が認可されたが、これには数百の米国の輸出業者も含まれている。AQSIQは、認可されなかった申請者に通知を出すとし、これらの輸出業者は申請却下の通知を受け取ってから6ヶ月後に再申請できるとしている。しかし、

AQSIQは、最初の期限に間に合わなかった輸出業者や新しい荷主に対し、いつ申請手続きを再開するか、正式な通知を出していない。 品質品質品質品質・・・・安全認証安全認証安全認証安全認証 中国の「中国強制認証(CCC)」マーク制度は、15ヵ月間の移行期間の後、2003年8月1日に完全実施された。この新しいCCCマークは、以前の「長城」マークと「CCIB」マークに取って代わるもので、電気機器、IT機器、家電製品及びその部品のような130以上のカテゴリーの製品について義務づけられている。こうした好ましい変更にもかかわらず、一部業種の米企業は、認証が依然として、困難で時間がかかり高コストなプロセスだと不満を述べている。認証のプロセスには中国国外の生産施設の実地調査が含まれ、その費用は生産者が負担している。一部の米企業は、CCCマークが義務づけられていない輸入品の積荷に対しても税関が通関を拒否するなど、中国がCCCマークの要件を一貫性なく適用しているとも報告している。さらに、中国にプレゼンスを持たない米中小企業にとっては、CCCマークの例外扱い(交換及び再輸出のためのものを含む)を申請することが大きな負担となっている。なぜなら、中国はCNCAの北京事務所で本人が申請するよう義務づけているからである。米国企業はまた中国に対し、低リスク製品や部品などのような、もはや認証を必要としない製品についてCCCマークを義務づけないよう要請している。 2004年2月、AQSIQは海外の認証マーカーの保持者に国の認証当局に申請することを求める措置を公布した。AQSIQはまた2004年6月に、検査・認証所に対して強制認証の対象となる製品に関するビジネスに携わる前にCNCAの指定を公式に受けることを義務づける措置を公布した。中国は66社の中国企業にCCCマーク認証のための検査を行う認可を与え、5社の中国企業に産品に認証を与える認可を与えた。適格の外資適合性評価機関に認定資格を与えるというWTO約束があるにもかかわらず、中国はこれまでに外資企業には一社にも認定を与えていない。 重複重複重複重複するするするする検査検査検査検査 米企業は、特に化粧品、医薬品、医療機器、携帯電話などの通信機器、家電製品で、過剰な検査が求められ続けていることに懸念を表明してきた。例えば、情報通信機器は、

CNCAの品質・安全検査を受けるが、その後MIIがCNCA検査と重複する機能テストを

Page 15: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

15

実施する。 衛生植物検疫措置衛生植物検疫措置衛生植物検疫措置衛生植物検疫措置 中国のWTO加盟に先立ち、米国及びWTO加盟国は、信頼性の低い科学的原則に基づくと思われ、必ずしも首尾一貫して適用されていない種々の中国の動植物検疫輸入基準に懸念を表していた。中国はWTO加盟を進める取組みとして、1999年4月、米中農業協力協定(ACA)に署名したことにより米国産の穀物、柑橘類、食肉、家禽の輸入を解禁することに合意し、米農産物輸入に対して長い間障壁となっていた衛星植物検疫措置をある程度緩和した。中国は特に、食肉について米国の認証システムを認めることに同意し、あらゆる米農務省公認工場からの米国産牛肉、豚肉、鶏肉を受け入れると約束した。また、米国からの柑橘類の輸入を解禁し、アリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、テキサス州の大半の郡からの柑橘類輸入を許可した。さらに中国は、米北西部太平洋岸からの小麦などの穀物輸入を解禁し、TCK菌に対する一定の基準値を満たす米国産小麦の輸入を許可すると約束した。しかし、中国のACAの実施状況は一貫していない。 未調理の家禽及び肉に関し、中国は科学的根拠に基づかないように思われる基準を適用し続けており、それが米国からの輸入を遅らせてきている。特に、中国は2002年、輸入された未調理の家禽及び肉の病原体にゼロ基準値を設けた。調理によって感染を減らすことができるが、未調理の家禽及び肉から病原体を完全に取り除くことは、合理的に実現できるはずがなく、科学的にも正当化できない。さらに、明らかに中国はこの同じ基準を国産の未調理の家禽及び肉には適用しておらず、これはWTOの内国民待遇の原則に反する。 中国は2004年、米国からのチェリーの輸入を妨げる新しい植物検疫措置を公布した。 柑橘類については、中国は引き続き、フロリダ州の4郡からの輸入承認を差し控えている。その他いくつかの米国製品の輸入についても、様々な植物検疫措置を用いて、これを妨げ続けている。その中には、核果、数種類のリンゴ、洋ナシ、生ジャガイモ、一定の食品添加物を含む加工食品が含まれている。2004年末までに、中国はフロリダの柑橘類の輸入を解禁すると約束した。また、カリフォルニア産以外のチェリーの輸入も解禁した。 1999年のACA協定が米国産小麦のTCK菌の許容基準を設定し、中国はTCK菌を根拠に米北西部太平洋岸からの米国産小麦の輸出を阻むことはもはやなくなったが、セレンに関して国際基準以下の最大残留基準(MRL)を課し、すべての米国産小麦の対中輸出に脅威を与えている。さらに、中国は小麦のボミトキシンについても、国際基準が全くないにもかかわらずMRLを課している。こうした措置には問題があるものの、実施はしていない模様で、米国産小麦の対中輸出は2004年に劇的に増加した。 一方、2003年12月に、カナダから米国に輸入された牛に牛海綿状脳症(BSE)が発見されたことを受けて、中国及びその他の国々は米国産の牛製品輸入を禁止した。中国の禁止には、牛肉だけでなく、危険性の低い牛製品、すなわち、牛の精液及び胚、タンパク質を含まない獣脂、並びに反芻動物系でない飼料及び脂肪など、BSEの危険がなく、現行の国際基準の下で禁止すべきでないものも含まれていた。二国間協議及び専門的議論を重ね、中国の食料安全担当官による米国の牛肉関連施設訪問も行った後、中国は、2004年9月下旬になって、危険性の低い反芻動物の牛製品に対するBSE禁止令を解除した。しかし、中国は解禁において、危険性の低い輸入牛製品に関して技術的及び認可のパラメータを設定する議定書の交渉に入ることを条件とした。2004年11月、米国及び中国の当局者は、反芻動物系でない飼料及び脂肪と共に、米国産牛の精液及び胚について、輸出再開を可能にする議定書を最終決定し、調印した。牛の精液及び胚の輸出は、中国規制当局の施設認可を条

Page 16: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

16

件とするものだった。米国及び中国の当局者は、米国産のタンパク質を含まない獣脂の中国向け輸出再開を可能にする規定については合意に達することができず、2004年12月末までに危険性の低い牛製品の貿易は、再開されなかった。 2004年 2月、中国は、デラウェアで発病性の低い鶏インフルエンザ(AI)が数件発見されたことに反応して米国産鶏肉を全国的に輸入禁止とし、その後テキサスで発病性の高い

AIが 1件発見された時点でもこの全国的禁止を修正しなかった。2004年を通し、米国は中国に米国の AI事情について専門的情報を提供し、8月には高官級の中国代表団が米国における AI根絶努力の状況について調査をおこなった。米国は、国際基準に基づいて発病性の高い AIがないと認められたことを強調した。2004年 11月、中国は米国産鶏肉に対する全国的禁止を解除し、コネティカット及びロードアイランド両州についての禁止のみを続行した。米国はまもなく、両州における AIの状況に関して要求された情報を中国に提供する予定である。 2004年を通し、中国が全般的に透明性を欠いているということが引き続き問題であった。中国は数多くの食品安全措置についてWTOへの届け出を怠ったり、遅れて届け出たりした。そのため、他のWTO加盟関係国からの意見を聞かずに措置が採用されることになった。採用された措置は、あまりにも負担が重かったり、科学的根拠に欠けていたり、重大な内国民待遇の懸念を引き起こしたりするものである場合もあった。米国がWTOにおいて又は二国間で、技術援助を提供するなど中国に関与したことで、2004年には中国の透明性に関するWTO義務の遵守状況には一定の改善が見られた。しかし同時に、大豆、バイオテクノロジー関連製品、果物などの米国の輸出は未公表の入国・検査・ラベル要件に繰り返し振り回された。 中国中国中国中国ののののバイオテクノロジーバイオテクノロジーバイオテクノロジーバイオテクノロジー規制規制規制規制 農業部(MOA)は2002年1月、農業バイオテクノロジーの安全・検査・ラベルに関する

2001年6月の条例の新実施規則を発表した。最も影響を受けた産品は大豆であったが、トウモロコシやその他の産品も影響にさらされ続けた。しかし、2002年3月20日の実施規則の発効までに、必要な安全性評価を完了するだけの時間は与えられなかった。米国の介入により中国は、当局が遺伝子組み換え作物の安全性評価を実施している間は貿易を認める「暫定規則」を発表した。この暫定規則は2回延長されたが、2004年4月に失効することになった。2003年12月の協議では、農業部当局者は、ラウンドアップレディ大豆の恒久承認は暫定規則の切れる60日以上前に完了し、貿易面の混乱は防げる筈だと約束した。中国はこの約束を守り、2004年2月にラウンドアップレディ大豆及び綿花2品種、トウモロコシ2品種を承認した。2ヶ月後、中国はさらに、トウモロコシ5品種とセイヨウアブラナ7品種の最終安全承認を出し、最終承認を待つのはトウモロコシ1品種のみとなった。農業部は残りの1品種のトウモロコシについても2005年初頭には承認が出るだろうとしている。 中国のバイオテクノロジー条例と実施規則をめぐる米国の懸念は根強いものがあり、特にリスク評価(実地試験の運営を含む)、ラベル貼付、バイオテクノロジー政策の官庁間の調整に関する懸念は大きい。中国は生物多様性条約に加入しているが、「バイオセイフティ議定書」はまだ批准していない。 ラベルラベルラベルラベル表示表示表示表示 米国の加工食品業界は、中国向けの輸出品に対する数多くの基準やラベル表示義務に懸念を表明している。食肉業界は特に、2002年末に発表された新たな食肉ラベル表示条例が、他国の基準を上回る要件を含むことを懸念している。彼らは、こうした義務は不要で、高コストだと主張している。

Page 17: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

17

農産物輸入業者や加工食品輸入業者も、大豆やトウモロコシなど遺伝子組み換え作物を含む製品のラベルを義務づけた新たな措置に懸念を表明している。農業部が公布した2001年6月のバイオテクノロジー条例は、特に大量取引商品のラベル表示を義務づけているが、実施状況は限定的で一貫していない。これらの措置の将来的な実施には不確実性が残る。 蒸留酒業界も、製品が既存のすべての食品ラベル表示義務を守るよう中国が義務づける予定であることを懸念している。業界は、蒸留酒を食品とはみなさないため、こうした義務の一部を不当であると考えている。

輸出規制輸出規制輸出規制輸出規制 輸出輸出輸出輸出ライセンスライセンスライセンスライセンスとととと割当割当割当割当 中国は過去数年間、何らかの種類の輸出ライセンスが必要な製品の数を段階的に減らしてきた。中国は2004年もこの傾向を維持し、2つの製品カテゴリー(ニンニクと炭素綱板)を新たにこの要件を外した。反面、50の製品カテゴリー(HSコード8桁における319品目)では依然として、さまざまな種類の輸出ライセンスを義務づけている。輸出ライセンスがまだ必要な製品の中には、一部穀物、綿花、家畜、原材料及び金属、致死性化学物質、食料品が含まれる。加えて、中国はいまだに戦略的にセンシティブな商品に、新たな輸出ライセンス要件をしばしば課している。 溶鉱炉用コークス、ホタル石のような一部製品についての輸出ライセンス制度は、一般に輸出制限を禁じるWTOルールに照らすと、強い懸念を引き起こすものであった。これら2つの製品の輸出ライセンスは輸出割当をも伴い、時に輸出ライセンス制度の行政コストを超える手数料の支払いを求めるものであった。 2004年、鉄の生産の重要な原材料である溶鉱炉用コークスについての中国の輸出制限が、米国の総合鉄鋼メーカー及びその顧客に対して重大な悪影響を及ぼし始めた。

2004年4月、ワシントンで開かれた高官級会議で、米国は中国のコークス輸出制限について懸念を表明した。米国は中国に対し、コークスだけでなく、他の製品についても輸出制限の実施を見合わせるよう求めた。中国は2004年7月、コークスの2004年度分割当量を1,230万トンに引き上げ、最終的には2003年レベルの1,430万トンにまで引き上げると表明した。その直後、商務部は輸出ライセンスの売買は違法であるとの緊急通達を出した。その後数ヶ月、中国のコークス供給量が増え、輸出ライセンスの売買の取り締まりがあったために、中国産コークスの輸出価格は大きく下落した。米国業界は2004年に、2003年よりもかなり多い量の中国産コークスを手に入れることができた。 中国はまた、WTOに加盟する以前からホタル石の輸出にも数量割当と高いライセンス料を課してきた。これは一見したところ、同様の制限を何ら受けない中国国内のホタル石利用者を援助することを目的としていた。中国は、度重なる米国の要請にもかかわらず、この分野での慣行を改めることを拒否してきている。 さらに中国は、外国市場でアンチダンピング税の対象となった製品にも、輸出ライセンスを義務づけている。中央政府は、以前の中央計画経済時代に生産を統轄していた官庁に代わり新設された準政府系業界団体に許可権を委譲している。外国の投資家は、業界団体が輸出許可権を利用して、団体が支持する活動へ参加するよう企業に強制していると報告している。例えば、鉄鋼メーカーの業界団体は、アンチダンピング対抗基金に献金しない企業には、輸出ライセンスを出そうとしない。

Page 18: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

18

世界的な繊維割当撤廃の期限である2005年1月1日が近づき、2004年12月に中国は、繊維及びアパレル製品の一部に輸出税を課す計画を発表した。この計画の詳細はまだ明らかではないが、中国は貿易相手からの懸念に応えて、これらの製品の輸出の伸びを管理しようとしていることを示すものと思われる。 輸出補助金輸出補助金輸出補助金輸出補助金 中国は公式には1991年1月1日に、直接的な財政支出による鉱工業品の輸出に向けた補助金を廃止した。中国は、2001年12月のWTO加盟後直ちに、鉱工業品と農産物に対するあらゆる形での輸出補助金を含む、WTOの補助金及び相殺措置に関する協定の第3条で禁止されているすべての補助金を廃止することで合意した。 中国の補助金制度は透明性を欠いており、中国政府が提供する輸出補助金を特定し計算するのは困難と言えよう。中国の補助金プログラムは、往々にして内部の行政措置の結果であり、公表されない。多くの補助金は輸出量に応じた法律上のあるいは事実上の所得税の減免あるいは控除の形を取る。補助金は、信用割当、低利融資、債務免除、貨物手数料の減額などの制度を含めて、さまざまな形態を取る可能性もある。米企業は、中国の輸出品が米国の物価を押し下げ市場シェアを得ている重要な原因は補助金にあると主張してきた。中国の補助金の慣行は、鉄鋼、石油化学、ハイテク製品、林産品、紙製品、機械、銅、その他非鉄金属産業に加え、繊維産業で特に懸念されている。 米国の補助金専門家は現在、輸出補助金を与えている可能性のある中国のプログラムや政策について、より多くの情報を求めている。しかし、中国は3年前のWTO加盟以来、補助金通報の義務を怠っており、専門家の努力は限定されたものになっている。2004年11月のWTO物品貿易理事会の会合で、中国は2005年に、期限を大きく過ぎた補助金通報を提出すると約束した。 中国のWTO加盟直後に、米国のトウモロコシ輸出業者は、中国がトウモロコシに輸出補助金を供しているとの懸念を表明した。中国のトウモロコシ輸出は、2002年と2003年にかなりの量に達したが、中国政府在庫の放出分も含めて、中国国内相場を15-20%下回る価格で輸出されたようだ。その結果、米トウモロコシ輸出業者が韓国やマレーシアなどのアジア市場のシェアを失う一方で、中国が記録的な量のトウモロコシを輸出した。しかし、2004年、貿易アナリストは国内価格と世界価格との関係における変化を含むいくつかの経済的要因により、中国が現在、トウモロコシの純輸入国になる方向に向かっていると結論づけるようになってきている。

知的財産権知的財産権知的財産権知的財産権のののの保護保護保護保護 法や条例、実施規則の枠組みをWTOルールに整合させる取組みで中国は大きな進展を見せてきたものの、特に、知的財産権のエンフォースメントに関して深刻な問題が残されている。2004年を通じて、米国にとって、中国のエンフォースメントへの取組みに関する改善の必要性は最優先課題であった。というのは、中国内に模倣品、海賊版が蔓延し、米国ビジネスのすべての経済部門に重大な経済的損害を引き起こしているからである。2004年4月、米国の懸念に応えて、中国の呉儀副首相が、中国における知的財産権問題に対処する「行動計画」を発表した。「知的財産権侵害を大きく減らす」ことを目指し、この行動計画は、知的財産権侵害に対する刑事訴追の増加を促進するための法的措置の改善、エンフォースメント活動の増加、そして国家教育キャンペーンの実施を要求している。米国はこの行動計画の実施状況を監視し、米国通商法スペシャル301条の規定に従って2005年初頭に不定期の調査を行い、中国の知的財産権約束の実施状況を評価する予定である。その調査の結果に基づき、米国は、中国がWTOの知的財産権の貿易

Page 19: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

19

関連の側面に関する協定(TRIPS協定)に従い確実に知的財産権エンフォースメントの効果的システムを策定し実施することを確保するために必要なあらゆる手段を講じる予定である。こうした取組みを補うものが組織的海賊行為に対する戦略(Strategic Targeting Organized Piracy = STOP!)と呼ばれる2004年10月に打ち出された米国の全政府を挙げてのイニシアチブである。これは、米国企業に海外市場で自らの知的財産権を確保・執行する権限を与え、米国国境で偽物を食い止め、国際的な模倣品・海賊板の製造者を明らかにし、国際的な供給網から侵害製品をなくし、米国の知的財産を盗む犯罪的企業を除去し、同じ考えを持つ米国の貿易相手国に対し、世界規模で模倣品や海賊版を食い止めるための国際的な連合を形成することを目的とするものである。 法的枠組法的枠組法的枠組法的枠組みみみみ WTO加盟に先立って、中国はTRIPS協定に準拠するよう、特許・商標・著作権関連を含むあらゆる知的財産権に関する法・条例・実施規則の修正を開始した。2001年末までに、中国は特許・商標・著作権法を改正し、併せて特許法に関する条例、及びコンピューター・ソフトウエア保護、及び集積回路の回路配置デザイン保護に関する条例も改正した。WTO加盟後に、中国は商標法に関する条例、及び著作権法に関する条例を公布した。中国はまた、特許・商標・著作権に関する一連の実施規則及び司法解釈をも公布した。全般に、特に行政エンフォースメント及び刑事エンフォースメントに関してはまだまだ努力が必要であるものの、中国が行った法律上の変更は、ほとんどの重要な分野で中国を国際基準に沿った方向に進ませる大きな改善であった。さらに一部の「最先端」分野では、新しい法律の制定が必要であろう。 商標分野では、2003年6月に著名商標に関する実施規則が公布されてから1年以上経って、2004年に外国の著名商標の認知に関していくらかの進展が見られた。少数の外国の商標が中国商標局によって著名であると認知されたが、それはすべて昨年のことであった。国家工商行政管理局は地域の工商当局による効果的な商標権のエンフォースメント及び保護を促進するため、商標の行政エンフォースメントに関する条例

(Regulation on Trademark Administrative Enforcement)を改定する計画を発表した。しかし、商標に関する行政エンフォースメント制度は米国企業からは一般に抑止効果はないと思われている。罰金は非常に低額なままであり、罰金の算定法、模倣品・海賊版の破棄及びそれらの製造に用いた機器の破棄に関するものを含む、行政罰を科すための条件を明確にするための新しい措置が必要である。 現行条例・実施規則の未整備により、中国ではインターネット上の著作権侵害が拡大しつつあるが、中国は2004年末までに2つのWIPO条約、すなわち、WIPO著作権条約

(WIPO Copyright Treaty)、及びWIPO実演・レコード条約(WIPO Performances and Phonograms Treaty)に加盟していない。これらの条約は一般に「WIPOインターネット関連条約」の名で知られ、2002年に発効し、多くの先進国・開発途上国により批准されている。米国はWIPO条約をインターネットにおける著作権保護を提供する国際規範を反映するものとみなしている。中国の現行の条例、実施規則、及び司法解釈は一定のインターネット関連の著作権問題に対処するようになってきており、またインターネットにおける著作権保護を向上させるさらなるインターネット関連条例をも策定中ではあるが、中国はWIPO条約に加入し、現行条例や実施規則を国際規範に整合させる必要がある。中国はインターネット利用者数で世界第2位の規模を誇り、かつ中国内にブロードバンドが急速に広まりつつあることで、ボーダーレスなインターネットの特性により、中国市場のみならず外国市場にまで影響が拡大している。そのため、WIPO条約への中国の加盟は米国や多くの他の国々にとって、ますます重要な優先事項となっている。

Page 20: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

20

海関総署は2004年、新規則及び実施規則を公布し、中国は、侵害製品の輸出入を防ぎ、権利保持者が国境において効果的なエンフォースメントを確保することが容易になるよう、国境措置を改善するための措置を取った。こうした措置は海関総署の義務に対応するものであり、税関の知的財産権記録メカニズムの実施に関する手引きを分かりやすくするものである。しかし、侵害製品の貯蔵、処分、刑事訴追事件の付託などの分野では、これらの措置は明確さに欠け、さらなる変更が望まれる。 エンフォースメントエンフォースメントエンフォースメントエンフォースメント 中央政府は、WTO約束に整合するよう中国の知的財産権法規の全面的な改訂を効果的に実施したものの、エンフォースメント面に関しては引き続き極めて不十分である。

2004年も引き続き、中国での知的財産権侵害は、映画・音楽・出版・ソフトウエア・医薬品・化学品・情報技術・繊維織物及び床仕上げ材・消費財・電気機器・自動車部品・工業製品を含む幅広い産業の製品・ブランド・技術に影響を及ぼしている。2003年7月の国務院発展研究中心の報告によると、中国における模倣品の市場価値は2001年に190億ドルから240億ドルにのぼり、知的財産権の権利者の莫大な損失につながっているとされている。不十分なエンフォースメントにより、中国では2004年も、著作権の全領域における海賊版の占める割合が90%を超える結果となっているとも報告されており、著作権製品の海賊版によるものだけで米国の損失は年間25億ドルから38億ドルになると見積もられている。こうした状況は経済的な影響が大きいだけでなく、中国国民の健康及び安全性、そして模倣品・海賊版が中国からますます大量に輸出されていることから、世界中の人々の健康及び安全性に影響する製品を規制する能力を問われるという直接的な難問を中国に突きつけてもいる。 中国の知的財産権法規は、そのエンフォースメント面において行政機関によるエンフォースメント、刑事訴追、損害賠償あるいは差し止めによる救済のための民事訴訟の3つの異なる手段を供する。しかし、その取組みは、中央官庁間の調整不足、地方の保護主義と汚職、捜査開始や起訴のための要件が厳しいこと、不十分で不透明な行政罰などにより阻まれている。 米国は繰り返し中国に効果的なエンフォースメント手段の実現を図るために迅速かつ実質的な方策を講じるよう要請し、様々な技術支援プログラムにより改善の促進に努めている。一連の高官級会議に続き、中国は2004年4月に知的財産権エンフォースメントに関し、全国で侵害を大きく減らす明確な目標を伴った、包括的行動計画を発表した。中国は具体的に、以下を行うと約束した――(1)知的財産権侵害のレベルを大幅に引き下げる、(2)2004年末までに、刑事捜査の対象となる侵害の範囲を拡大し、海賊版又は模倣品の輸入、輸出、貯蔵、流通に対しても刑事的制裁を科し、オンラインによる侵害行為に対しても刑事的制裁を科すことで、知的財産権侵害の罰則を増やす措置を取る、(3)全国的なエンフォースメント活動を実施し、税関のエンフォースメント活動を強化することで、知的財産権侵害者を取り締まる、(4) WIPOインターネット関連条約をできる限り速やかに批准・施行し、そして現存の政府機関における海賊版ソフトウエアの使用禁止措置を拡大することで、電子的作品の保護を高める、(5)全国的な知的財産権教育キャンペーンを立ち上げる。中国はまた、中国の知的財産権行動計画に述べられた問題のすべてにわたって、JCCT会議のもとで米国と協議・協力する機能を担う知的財産権作業部会の設置にも同意した。 こうした公約をして数ヵ月後、呉儀副首相は、中国が知的財産権保護の制度改善に必要な立法措置及び司法措置を推し進めることを約束した。呉儀副首相はまた、中国が消費者の教育と、既に施行されている法の執行に注意を向けることも明らかにした。2004年8月、呉儀副首相は、中国はまもなく、輸出入活動、見本市並びに展示会、卸売市場、ブランド商品加工業、出版及び複製業を含む「重要分野」に重点を置き、知的財産権侵害に狙いを定めた1年間のキャンペーンを立ち上げると宣言した。このキャンペーンは、エンフォース

Page 21: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

21

メントと教育の両方を目的とし、優先的活動の対象として指定された15の省及び都市で知的財産権侵害を撲滅するために複数政府機関の業務を統合することを目指し、以下の3段階、(1)計画策定及び開始(2004年9月)、(2)実施(2004年10月から2005年6月)、(3)まとめ(2005年7月から8月)で進められることになっている。一方、2004年12月、最高人民法院及び最高人民検察院は、中国における刑事エンフォースメントの様々な問題に対処するために司法解釈を発表した。 行政行政行政行政エンフォースメントエンフォースメントエンフォースメントエンフォースメント 中国は知的財産権侵害者に対し、数々の行政エンフォースメント措置を継続して実施しているものの、その一連の措置により知的財産権侵害が抑制されているようには見えない。 2004年、呉儀副首相主導のもとで、中央政府は反模倣・海賊版のキャンペーンを始めた。こうしたキャンペーンで、大量の侵害品を没収しているが、キャンペーンに関連して行政当局が起こす訴訟の結果は、通常極めて低い過料になることが多い。行政当局が過料を定める際、真正品の価値に基づき過料を算出せず、むしろ模倣品・海賊版の価額を基に過料を設定するため、人為的に罰金が低く抑えられている。さらに、侵害品を倉庫に保管しているとの証拠だけでは、それを販売する意図があるとはみなされない。この結果、行政当局は過料を決定する際、侵害品の評価に保管物を含めることもしない。行政当局は商業規模の模造・海賊版でさえ、ほとんど刑事捜査のために公安部に送達しないことから、罰金の抑止効果はさらになくなっている。その結果、侵害者は没収や過料は単に事業経費と考えており、通常簡単に操業を再開することができる。 2004年の中国との二国間協議において米国は、中国は十分により高い行政過料を科すために知的財産権の法的枠組みを改定する必要があり、過料に抑止効果を持たせるよう、行政当局はエンフォースメントのプロセス全般の透明を高め、文書による決定の通報、結果の公表を行う必要があることを強調した。また米国は、刑事訴追のために、公安局及び最高人民検察院に事件を付託するための明確な基準を確立することは、行政当局にとって非常に重要なことであることも強調した。 刑事刑事刑事刑事エンフォースメントエンフォースメントエンフォースメントエンフォースメント 効果的な刑事エンフォースメントは海外及び国内企業双方に被害を与えている知的財産権侵害の横行への対応に着手するうえで中国に必要な抑止力を提供する。しかし、現在のところ、刑事上のエンフォースメントは事実上侵害者に対して抑止効果を持っていない。中国当局の刑事訴追はわずかにとどまり、商標に関する訴追は増えつつあるが、著作権に関しては、ほとんど刑事訴追は行われていない。また、刑事訴追が行われても、透明性が欠如しているために、有罪か否か、そして有罪であればどんな刑罰が科されるか、刑罰が猶予されるか否かを知るのが難しいことがある。 2004年12月の刑事エンフォースメントに関する司法解釈の発表に先立って、米国はいくつかの重要な法改正を求めた。米国にとって重大な懸念材料は、刑事責任の適用基準であるが、その適用基準のハードルは極めて高く、ほとんどの場合基準は満たされなかった。著作権侵害容疑者に対して刑事事件を提訴するには、企業では20万元(24,100米ドル)、個人では5万元(6,030米ドル)の総売上を証明する証拠を示す必要がある。この販売証明要件は販売前に倉庫で発見された模倣品・海賊版には適用されず、また侵害者は一般に領収書を発行したり、また販売の明細書を保存したりはしないことから、この要件は有効ではなかった。さらに米国は、中国の法規の適用範囲にも懸念を抱いていた。中国の法規は、販売が立証された場合に限らず、模倣品・海賊版の故意の製造、保管、流通、使用にも適用されればさらに効果が高まるであろう。また、刑事法で商業

Page 22: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

22

規模の模倣品・海賊版の輸出は犯罪行為とみなされていないという点も問題があった。 2004年12月末に最高人民法院及び最高人民検察院が発表した司法解釈では一見したところ、商標、特許の模倣、著作権侵害の刑事訴追の基準額が引き下げられ、オンラインの著作権侵害、及び模倣品の輸出入を含む共犯責任に対処する新しい規定が盛り込まれた。こうした司法解釈が中国の刑事エンフォースメントの記録をどれだけ効果的に改善するかはまだわからない。草案にあるように、司法解釈は、中国の不完全な刑事エンフォースメント制度を是正する最初のステップに過ぎない。司法解釈に示された変更自体は、侵害のレベルを大きく引き下げるものではない。中央政府はまた、裁判所だけでなく、公安局、最高人民検察院、海関総署、及びその他の知的財産権エンフォースメント機関に明確な指令書を公布し、各々の調査・訴追のガイドライン及び慣行を個々の機関で司法解釈に合わせて改定することを求めなくてはならない。行政制度から刑事制度への付託の基準も明確にし、司法解釈に合わせる必要がある。さらに、中央政府は、知的財産権エンフォースメント機関がエンフォースメント活動を調整し、効果的に調査・訴追をして知的財産権侵害者を有罪にする能力を高めるよう、厳しく監視する一方、これらの機関に適切に資源や専門家を割り振らなければならない。 民事民事民事民事エンフォースメントエンフォースメントエンフォースメントエンフォースメント 中国において行政及び刑事エンフォースメント手段が効果を挙げないことが一因となって、損害賠償又は差し止めによる救済を求める民事訴訟の件数が増加している。それらの訴訟のほとんどは中国の権利者によるものであった。この民事訴訟件数の増加は、司法制度を改良するよう尽力し続ける過程での中国の知的財産権裁判所の高度化と符合する。しかしこうした努力はいまだ進行中であり、米国企業は2004年も、裁判において知的財産権法規が一貫して、かつ公正に執行されていないと批判し続けており、さらに、多くの裁判官に必要な技術的な訓練が不足していること、そして、証拠、鑑定人、機密情報の保護に関する裁判所規則が曖昧もしくは効果がないことを指摘している。さらに、特許分野では、民事訴訟によるエンフォースメントが特に重要であるものの、一つの案件の解決に4年から7年かかるため、TRIPS協定を遵守するために取り入れた新たな損害賠償規定があまり意味を持っていない。

サービスサービスサービスサービスにににに対対対対するするするする障壁障壁障壁障壁 中国がWTOに加盟するまでは、中国のサービス部門は、同国経済の中で最も規制が強く、保護された分野の一つであった。外国のサービス提供業者はおおむね、限定的な「試験的」ライセンスの条件のもとでの事業に制限されていた。しかし、中国は政策上の問題と、WTO加盟約束による結果の両面から、サービス部門において外国からの投資を大幅に開放することにした。サービス市場は現在のところは、政府のこれまでの姿勢と政策のせいで未発達だが、短期的にも長期的にも大きな成長の可能性を持つ。 WTO加盟約束により、中国は米国のサービス提供業者に意味のあるアクセスを提供しなければならない。中国は加盟議定書の中で、広い範囲のサービス部門を大幅に開放すると約束した。それは、市場アクセスに対するすべてのレベルの政府による既存の多数の制限を撤廃することを通じて行われ、特に銀行、保険、電気通信、専門職サービスなど米国にとって重要な部門が対象となる。これらの約束は、特に他の多くのWTO加盟国におけるサービス部門の取組みに比べると、広範囲にわたっている。 中国はさらに、サービス譲許表に取り上げられたすべての業種に適用される、一定の「水平的な」約束も行った。こうした横断的な約束のうち、最も重要なものが、既得権とライセンスの交付手続きの二つである。既得権をめぐる約束に基づき、個別の契約ま

Page 23: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

23

たは出資契約、もしくは既存の外国のサービス供給業者によるサービスの営業または供給を設立・認可するライセンスにおいて規定されている外国企業の所有、事業、活動範囲の条件は、中国がWTOに加盟した日の条件よりも制限的なものとはならないということに中国は合意した。言い換えれば、もし外国企業が、サービスに関する約束表において中国がした約束を超えるWTO加盟前の権利を持っていたなら、その企業はそうした権利に基づき営業を継続することができるということである。ライセンスについては、多くの業種の外国企業は、中国のWTO加盟前には中国での営業免許を申請する無条件の権利を持っていなかった。外国企業は、関連する中国の規制当局から最初に招待を受けた場合のみライセンスを申請できた。さらに、申請がなされた場合でも決定過程は透明性を欠き、異例の遅れや裁量にさらされた。中国は加盟議定書で、ライセンス手続きを合理化し、透明性を高め、より予測可能なものにすることを約束した。 中国は2004年、いくつかの分野で前進を見せた。例えば、中国はスケジュール通りにあるいはスケジュールより先行して、銀行・保険部門の地理的制限を撤廃した。さらに、ライセンス交付の過程は多くの部門で手際がよくなった。事実、中国市場への参入を申請した米国の保険業者はすべてライセンスを手にし、ノンバンクの自動車金融部門では米国及び他の外国機関にライセンスが与えられた。中国はまた、WTO約束を越えて、米国との間で二国間の航空及び海上協定を結んだ。 しかし、中国のサービスに関する約束の恩恵を確保するには多くの難問が残っている。中国はWTO加盟議定書で求められる開放に名目上は対応し続けているが、しばしば非常に高く煩雑な参入条件を維持・設定しており、多くの外国のサービス供給業者が市場アクセスを得るのを阻んでいる。例えば、いくらかの進歩は見られるが、高い出資要件が、保険、銀行、電気通信、ノンバンクの自動車金融などのような多くの分野で、外国のサービス供給業者の市場参入を制限し続けている。さらに、保険や法律サービスの分野で、支店開設の制限が行われており、これはサービス約束表での中国の約束上疑義がある。その他の分野、特に速達便や建設サービスの分野で、問題の多い措置が、既得の市場アクセス権を脅かし続けている。 保険保険保険保険サービスサービスサービスサービス 中国の保険市場は着実に成長しているが、潜在的な成長力を十分発揮するほど急速ではない。中国保険監督管理委員会(CIRC)によると、2004年の保険料収入は520億ドルで、2003年から11.3%増えている。全保険会社の資産は1,420億ドルに達し、前年から30%近く増えている。2004年、外国保険会社の中国における営業は拡大を続けている。外国保険会社の保険料収入は45%以上増えて12億ドルに達し、保険料全体の2.3%を占める。外国保険会社は国内市場ではまだ比較的シェアが少ないが、市場シェアが増えている地域もある。CIRCによると、2004年には、中国内の37社の外国保険会社は上海で15.3%、広州で8.2%の市場シェアを占めている。 中国はWTO加盟議定書で、ほぼ加盟後3年の間に、段階的に外国企業による会社保有を拡大することに合意した。中国のWTO加盟と同時に、外国生命保険会社は合弁企業の持ち株比率50%を保有することを認められ、加盟後2年以内に、外国の動産保険会社、損害保険会社、及びその他の非生命保険会社は、支店、合弁事業体あるいは100%外資の子会社として開設することが認められることになった。また、加盟後3年以内、すなわち2004年12月11日までに、大規模な商業リスク、海上・航空・交通保険、ならびに再保険を取り扱う外国の保険会社は、合弁企業の51%の外国企業による出資比率を認められることになった(さらに2年後には100%外資の子会社として開設する権利を得る)。中国はさらに、すべての外国の保険会社に、2004年12月11日までに、活動の範囲を、グループ保険、健康保険及び年金を含めるよう拡大することを認めることに同意した。また、2004年12月11日までに、

Page 24: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

24

あらゆる種類の保険業務について地理的制限を撤廃することにも同意した。 中国保険監督管理委員会(CIRC)は、WTO加盟後まもなく、外国保険会社に関するものを含む、いくつかの新たな保険条例を発表した。こうした条例は、中国の約束の多くを実現したが、資本要件、透明性、支店開設の3つの重要な領域で、問題を引き起こしている。特に、中国の資本要件は他の人口過密な国に比べて極端に厳しく、必要な合弁協定を結ぶ外国保険会社の力を制限している。また、条例は引き続き官僚の大幅な裁量を認めており、中国市場で営業しようとする外国保険会社にとっての不確実性を高めている。支店開設については、中国は、加盟と同時に非生命保険会社が中国内に支店として開設することを認め、中国の地理的制限の撤廃に合わせて国内の支店開設を認めていくことを約束した。さらに中国は、既に中国内に開設している外国保険会社で、支店や営業所の開設を望むものは、中国市場への参入ライセンスを求めようとしている外国保険会社に適用される要件を満たす必要はないということにも合意した。しかし、外国保険会社の支店開設権に関する中国の条例は曖昧なままであり、中国保険監督管理委員会は、支店として既に市場に参入している非生命保険会社が、支店や営業所の開設を望む場合、まず子会社を設立しなければ開設できないと主張し続けている。これは費用がかさむ条件である。さらにこの問題をさらに複雑にしているのは、中国保険監督管理委員会は明らかに少なくとも1つの外国非生命保険会社に対してこの要件を放棄したが、他の外国保険会社はどのようにしたら要件放棄を申請できるのか、あるいはそもそも申請することができるのかどうかを説明していないということである。 中国保険監督管理委員会は2004年5月、外資保険会社の管理のための条例に係る実施細則 (Detailed Rules on the Regulations for the Administration of Foreign-Invested

Insurance Companies)を公布し、中国の高い資本要件に関する懸念に対処する措置をとった。これらの新規則は、国家ライセンス取得のための資本要件を5億元(6,030万ドル)から2億元(2,410万ドル)に、支店事務所開設のための資本要件は5千万元(603万ドル)から2千万元(241万ドル)にまで引き下げた。これらの変更は、米国の保険会社数社によって歓迎されたが、その他の会社はいまだこれらの要件は高すぎると考えている。新規則はまた、いくつかの手続きはいまだ不明瞭であるものの、ライセンス交付手続きを簡素化し、承認にかかる時間を短縮した。他方、新規則は、支店開設権に十分に対処しておらず、この問題の多くの側面が曖昧なままである。 中国は2004年12月、WTO約束に合わせて、予定通り外国保険会社に関する地理的制限を撤廃した。中国はまた、外国保険会社に、年金・企業年金とあわせ、健康保険及びグループ保険の提供を許し、合弁企業の保険仲介手数料の外国側の所有上限を50%から51%に引き上げた。 中国の地理的制限撤廃は歓迎すべきことであったが、米国及びその他の外国保険会社は支店開設承認における明らかな差別が、彼らの事業を拡張する力を制限するのではないかと危惧している。実際、既存の中国の保険会社は新しい支店開設を同時に、つまり一度に2店以上承認してもらっているようだ。対照的に、これまでのところ、外国保険会社は連続的に、つまり一度には1店ずつしか承認されていない。一方、多くの米国投資家が、中国の保険市場にアクセスする手段として、中国の主要保険会社において少数派とはいえ無視できない数の持合株を保有している。 銀行銀行銀行銀行サービスサービスサービスサービス及及及及びびびび証券証券証券証券サービスサービスサービスサービス 中国はWTO加盟から3年以内に、銀行サービス及び証券サービスに対するWTO約束を果たす上で必要な法律と条例を導入した。それでも、外国の銀行や証券会社は、制約の多い規制環境に直面し続けている。

Page 25: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

25

中国はWTO加盟約束の一部として、外国銀行が中国企業とはWTO加盟から2年後に、中国の個人とは5年後に、元建てで取引することを認めることで合意した。また中国政府は、外国銀行が現地通貨での業務に従事できる都市を毎年新たに4都市増やすことを約束した。外国銀行に対する非プルデンシャル市場アクセス制限と内国民待遇に対する制限は、中国のWTO加盟から5年以内に全廃されることになっている。 中国は引き続き、特に外国銀行の現地通貨建て取引への参入に厳格な制限を置いており、これは中国人民銀行(PBOC)によって規制されている。こうした制限は徐々に緩和されつつあるが、個人との現地通貨建ての取引は2006年12月11日まで禁止されている。外国銀行が銀行間市場で人民元を調達する権利に対する制限は、外国銀行が中国事業で利益を上げるのに必要な元建て融資ポートフォリオを組めなくしている。一方、外貨建て取引は外国、国内を問わず、いかなる顧客とも自由に行えるが、限られた数の中国銀行にしか為替予約取引は認められていない。 2001年12月に出された条例のもとでは、外国銀行は、中国で支店を開設する際に200億ドルの総資産を持っていることといった厳しい基準を満たさなくてはならない。中国は2003年12月に外国銀行の支店に対する資本要件を引き下げたが、それでもまだ高すぎるため、外国銀行にとっては現地資本コストが高くなっている。外国銀行の支店はまた、経営資本の30%を中国人民銀行が指定した利子付き資産に振り分けなければならない。外銀支店の流動資産(現金、現地銀行に預けた要求払預金、中国人民銀行への預入)も、顧客預金残高の25%を超えなければならない。さらに、外国銀行の外貨建て顧客預金の中国国内の外貨建て資産に対する比率は、以前定められていた40%から引き上げられたものの、70%を超えてはならない。中国は、銀行の世界全体の資本ベースではなく、外銀支店の現地資本に基づいて、慎重性(prudential)の比率や上限を計算するが、中国の北東部及び西部の指定都市ではもっと甘い規則を適用している。 中国政府は2003年12月、一人の外国投資家が中国の銀行に出資できる比率を15%から20%に引き上げ、外国投資家全体として合計24.9%の枠を認めた。それ以来、米国を含むいくつかの外国銀行及び金融機関が、中小の中国銀行においてかなりの量の持合株を取得した。2005年、大手の国有銀行2行が上場すると、同様の投資が期待される。2004年12月現在で、中国は昆明、北京、廈門、西安、瀋陽の5都市を現地通貨建ての取引をしようとする外国銀行に対して開放し、これで開放された都市の総数は18都市になった。 中国の加盟議定書に従い、外国証券会社は、中国がWTOに加盟した後直ちに、資産運用の合弁会社を設立する権利を与えられることになり、また、加盟後3年以内に、証券引き受けのための合弁会社が許可されることになっていた。中国証券監督管理委員会は、中国のWTO加盟後まもなく、資産運用会社の合弁設立と、中国と外国の合弁による証券引き受けに関して、条例を発布した。しかし、これらの合弁事業に対する外国パートナーの出資比率を49%以下に制限するという中国の決定が、大手外国企業にとっての魅力を削ぎ続けている。さらに中国は、証券引き受け合弁企業をA株の引受業務と、国債・企業債、B株、H株の引受業務及び取引業務に制限し続けている。 2002年12月以降、中国は、指定証券保管銀行に開設した特別口座を通してA株を取引することを指定国外機関投資家(QFII)に対して認めている。厳しい基準があるために、外国機関が指定国外機関投資家の資格を得るのは難しく、またその他の要件により指定国外機関投資家がA株を取引する範囲が制限されている。 自動車金融自動車金融自動車金融自動車金融サーサーサーサービスビスビスビス 中国のWTO加盟議定書は、中国がノンバンクの金融機関に対し、加盟後直ちに、市

Page 26: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

26

場アクセスへの制限なく、自動車金融を手がけることを認めるように義務づけている。 二国間交渉と、WTOでの会合の両方の場で米国が繰り返し要求したことを受け、中国は2003年10月と11月に条例を公布し、外国のノンバンクの金融機関に自動車金融を行うことを認めた。こうした条例で定められた資本要件は、登録資本の最低額が3億元

(3,620万ドル)、払込資本の最低額が5億元(6,030万ドル)と比較的高いものであった。2004年8月、中国銀行業監督管理委員会(CBRC)は、米国の自動車会社1社と他の外国自動車会社2社にノンバンクの自動車金融機関を設立するライセンスを与えた。 卸売販売卸売販売卸売販売卸売販売サービスサービスサービスサービス及及及及びびびび仲買仲買仲買仲買サービスサービスサービスサービス 中国は、WTO加盟議定書の中で、加盟から3年以内(すなわち2004年12月11日まで)に、一定の製品については例外とするものの、卸売サービスと仲買サービス、また修理や保守管理などの関連サービスを提供したい外国企業に対して、内国民待遇を与え、市場アクセス制限を廃止することを約束した。またその間に、こうしたサービスに対する扱いを所定のスケジュールに従って徐々に自由化することにも合意した。これらのサービスの段階的な自由化は、2002年12月11日までに外資少数の合弁企業を認めることから始まり、続いて2003年12月11日までに外資過半数の合弁企業について行う予定だった。 WTO加盟直後から、要求された段階的な自由化の実施は約束通りには進まず、外国企業は様々な制限に直面し続けた。2004年半ばになってようやく、高官級の米国の働きかけを受けて、中国は自由化に向けた措置を取り始めた。商務部は、卸売サービスと仲買サービスを提供する合弁企業に対して、内国民待遇を与え、市場アクセス制限を廃止する条例を公布した。条例はまた、この自由化を100%外資企業にまで広げる期限を

2004年12月11日と定めた。しかし、商務部が必要な承認を取得する手続きを明確にしなかったため、外国企業によるこうしたサービスの提供は遅れている。 小売小売小売小売サービスサービスサービスサービス 中国政府は1999年、小売部門の外国投資の範囲を拡大した。新条例は、大手国際小売業者(ハイパーマーケットや倉庫型店舗など)の中国参入を奨励した。中国のWTO加盟約束は、対象を大幅に拡大することで、外国の小売業者が市場参入する可能性を一層拡大することを目的としている。小規模の小売事業、いくつかの大規模小売店、ガソリンスタンド、さらには自動車販売店までもが、2001年12月の中国のWTO加盟から3年ないし5年以内に、100%外資でも手がけられるようになる。ただし、ある種の大規模小売業については、外資規制が残される予定。また、フランチャイズ経営は、加盟から3年以内、すなわち2004年12月までに認められる。 卸売分野と同様、WTO加盟直後から、要求された段階的な自由化の実施は約束通りには進まず、外国企業は様々な制限に直面し続けた。2004年半ばになってようやく、中国は自由化に向けた措置を取り始めた。商務部は小売サービスを提供する合弁企業に対して、内国民待遇を与え、市場アクセス制限を廃止する条例を公布した。条例はまた、この自由化を100%外資企業にまで広げる期限を2004年12月11日と定めた。しかし、商務部が必要な承認を取得する手続きを明確にしなかったため、外国企業によるこうしたサービスの提供は遅れている。 固定立地固定立地固定立地固定立地からからからから離離離離れたれたれたれた販売販売販売販売 いくつかの内外企業が直接販売のテクニックを用いて、マルチ商法など合法性に乏しい営業を展開したため、中国は1998年にあらゆる直接販売(固定立地から離れた販売)を禁止した。米国ならびに他の外国の大規模直販企業の中には、事業形態を変えて、操業

Page 27: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

27

を続ける許可を得た企業もあった。中国はWTO加盟約束で、2004年12月までに直接販売を全面的に再開することを約束した。しかし2004年末の時点で、中国はまだ必要な実施規則の草案を作成中であった。しかも、直接販売に関する措置の最終草案にはいくつか問題のある規定が含まれているようである。例えば、国内で作られた物品の直接販売は認める一方で、輸入品は固定立地で販売することを義務づける規定は、重大な内国民待遇の懸念を引き起こすものである。また、直接販売を商業的に引き合わないものにするような操業要件を課す規定もある。 速達便速達便速達便速達便サービスサービスサービスサービス 国家郵政局(並びに旧MOFTEC及びMII)は2001年12月から、外資の速達便会社(中国の提携先との合弁で操業しなければならない)が中国の加盟まで享受してきた市場アクセスを危機に陥れかねない新たな制限的措置を発した。「既得権」に対する中国の分野横断的な約束があるにもかかわらず、この措置は、中国のWTO加盟以前に免許を受けた外国速達便会社の事業範囲を縮小させる恐れがある。特に、2001年12月に出された通達629号は、書状配達の実施を希望する企業に、チャイナ・ポストからの業務委託を申請するよう義務づけた。2002年2月に出された通達64号は、民間企業の書状配達に重量・料金制限を課すことで、チャイナ・ポストの独占を拡大した。米国の高官級の介入を受けて、2002年9月の通達472号は、書状配達の重量・料金制限を撤廃し、委託申請手続きを簡素化した。米国の大手速達便会社2社がその後、チャイナ・ポストに業務委託状を申請し、取得した。 しかし中国は、2003年7月に郵便業法の改正案を配布し、これは米国企業の間でただちに二つの懸念を引き起こした。第一に、この改正案では500グラム以下の書状の配達に関する独占権をチャイナ・ポストに与えることが主張されており、これは中国の分野横断的な「既得権」の約束とは裏腹に、既存の外資系速達便会社の活動の範囲に対する新たな制限を構成する。第二に、この改正案は独立した規制当局を設置する必要性に対処していない。2003年の9月、10月、そして11月に、中国は新たに数種類の改正案を公表した。それぞれの改正案ごとにチャイナ・ポストの独占権の範囲は異なっているものの、直近の改正案では、500グラム以下の書状に対する独占権を再びチャイナ・ポストに与えている。この改正案にはこれ以外にも問題のある規定が含まれていた。例えば、改正案ではより負担の大きい新たな免許手続きを創設し、国際速達便から得られた収入の一定の歩合をユニバーサルサービス基金に支払うよう国際速達便会社に要求しているものと思われる。 呉儀副首相は2004年4月に、WTO加盟前に与えられていた外資系速達便会社の活動範囲を狭めないようにとの米国の高官級の働きかけを受けて、重量制限などの古い問題が新しい問題として再び浮上することはないと約束した。しかし、2004年7月、国務院は郵便業法の別の改正案を配布した。呉儀副首相の約束にもかかわらず、こうした改正案には、500グラムを350グラムに引き下げたものの重量制限が含まれており、その他の米国の懸念についてもほとんど対処されていなかった。2004年の7月以降、新しい改正案は配布されておらず、米国は働きかけを継続している。 建設建設建設建設・・・・エンジニアリングエンジニアリングエンジニアリングエンジニアリング・・・・建築建築建築建築・・・・請負請負請負請負サービスサービスサービスサービス 中国のWTO加盟前から、米国の建設・エンジニアリング・建築会社、及び工事請負業者は、中国政府との間で、比較的協力的でオープンな関係を保ってきた。これらの会社は中国市場で、合弁契約を通じて操業し、他のサービス部門に比べて規制問題にあまり影響されなかった。それでも、彼らも制約に直面している。外国企業は、プロジェクトごとでなければ、サービスを行う免許を取得しづらかった。また外国企業は提携や入札でも、厳しく制約されている。

Page 28: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

28

2002年9月、建設部と旧MOFTECは共同で法令113および法令114を発令し、これにより建設業とこれに関係する建設設計業務を外資が過半数を超える合弁事業に対して開放し、また100%外資企業にも約束表の予定よりも2年前倒しで開放した。しかし同時にこれらの法令は、米国及びその他の外国企業に、建設部の定めた規則に従ってプロジェクト単位で中国国内の業務を行うことが認められていた中国のWTO加盟前の状況よりも厳しい条件を新たに課すことになり、こうした企業の懸念を招いている。とりわけこれらの法令は、外国企業に対して初めて資格証明を取得するよう義務づけ、この規定は2003年10月1日に発効するとした。さらにこれらの法令は初めて、建設サービスを提供する外資系企業に対して現地法人を中国で設立するよう義務づけ、また多くの外国企業にとって満たすことが困難な高い最低登録資本金要件と外国人職員居住要件を課している。米国は米国の建設業界と協議し、高官級の介入の中で法令113および法令114に対する懸念を強く訴え、これらの法令の問題のある要件の発効を遅らせるよう努めた。建設部は2003年9月に施行日を2003年10月1日から2004年4月1日に延期することに同意し、このため、外国企業にとっての懸念について分析する時間ができた。 2004年4月に法令113が発効したが、2004年9月に建設部と商務部(MOFCOM)は通達159号を出し、建設業とこれに関係する建設設計業務を行う外国の建設サービス業者に2005年7月1日までプロジェクトごとに業務を行うことを認め、現地法人に関する要件の発効日を延長した。2005年7月1日以降は、米国及びその他の外国企業は中国でのプロジェクトに参加しようとする際に大きな不確実性に直面することになるだろう。 建設部は2004年11月末、建設プロジェクト管理のための暫定措置 (Provisional

Measures for Construction Project Management、法令200として知られる)を公表し、2004年12月1日に発効するよう計画した。とりわけ法令200は、ある会社が同じプロジェクトに対してプロジェクト管理サービスを提供している場合、同じ会社に建設サービス及び建設関連設計サービスを提供させないようにするものであると思われる。米国企業はしばしば、外国市場でプロジェクトに従事するときに、こうしたサービスのすべてを組み合わせて提供するため、法令のこの側面が懸念を引き起こしている。 一方、外国企業は、エンジニアリング・建築サービスを提供するために、免許を取得した専門家として中国人を雇うことができない。現在、中国の建築・エンジニアリング会社は建設前に、すべての図面の認可と署名を受けなければならない。また、米建築会社が、中国のプロジェクト用に米国で用意した設計について、中国の国内税を払わなければならなかった例がある。中国はまた、設計料を極端に低く設定し、市場に価格を決めさせていない。さらに中国には、エンジニアリング、建築会社の権利を不払いから保護するための担保に関する適切な法律がない。 運輸運輸運輸運輸およびおよびおよびおよび物流物流物流物流 運輸および物流部門は以前、厳しい規制面の制約、高コスト、政府出資機関による支配、許可される活動の制限に直面していた。この分野に対しては複数の政府機関が監督権を有しており、通信部、鉄道部、商務部、国家発展改革委員会(NDRC)、中国民用航空総局が含まれる。管轄権の重複、複数の認可要件、そして不透明な条例が、市場アクセスを阻害している。ある地域では、国内企業は、政府の人脈や資金を使って同部門を独占している。 それにもかかわらず、中国の改革政策と同様、中国のWTO約束は、運輸および物流部門を外国のサービス提供者に段階的に広く開放することを支持している。WTO加盟から部門に応じて3年ないし6年以内に、外国企業は、倉庫保管、道路輸送、鉄道輸送、

Page 29: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

29

貨物輸送の各会社に、自由に投資できることになっている。 2002年7月、商務部の前身である旧MOFTECは、試験区域での外資系物流企業の設立に関する通達(Notice on Establishing Foreign-Invested Logistics Companies in

Trial Regions)を発表した。この通達は、外資物流企業(外資の出資比率が最大50%、登録資本金額が500万ドル)を、いくつかの指定都市に創設することを容認するものであった。米企業は、高い資本要件と50%の外資出資上限に懸念を表明した。これは、一部のタイプの物流サービスに関しては、中国のWTO約束に反する可能性がある。 中国は2002年11月、WTO加盟から1年以内に実行することが義務づけられていた道路輸送会社の外資による過半数所有を認める条例を出した。中国はまた、外資過半数の合弁企業が梱包サービス、貯蔵および倉庫保管、貨物輸送の分野に参入することを認める条例を加盟1年後に発しなければならなかった。中国は期限に間に合わせて、外資が

75%を保有する合弁企業にこの事業分野への参入を認める条例を発した。 航空サービス分野に関するWTO約束は何もなかったが、中国は2004年7月に、米国の旅客及び貨物航空会社の市場アクセスを向上させる重要な措置を取った。中国は、中国において営業する米国航空会社の数を2倍以上とすること、そして今後6年間で2国間の旅客及び貨物サービスを提供する便数を5倍以上に増やすという画期的な航空協定を米国との間で結んだ。この協定はまた、それぞれの国の航空事業者に他方の国のどの都市でもサービスを提供することを認め、双方の間に制限なしの共同運行を提供し、チャーター便運行の機会を拡大し、そして2008年の時点で価格設定に関する政府の規制を撤廃することも規定している。米国の旅客及び貨物航空会社は以降、協定が想定するように、追加ルート及び便数増加を獲得してきた。 同様に2003年後半、WTO約束では何もなかったが、中国は海運サービス部門の自由化に乗り出した。米国及び中国は遠大な5ヶ年の相互海運協定に調印した。この協定は米国の登録企業に、中国における広範な追加的船舶輸送及び物流活動を行う法律上の柔軟性を与えるものである。米国の船舶輸送及びコンテナ輸送サービス企業はまた、その子会社、関連会社及び合弁企業とともに、地理的制限なしに、中国国内に支店事務所を設置することが可能となる。 インターネットインターネットインターネットインターネット・・・・コンテンツコンテンツコンテンツコンテンツのののの規制規制規制規制とととと暗号化暗号化暗号化暗号化・・・・複合化複合化複合化複合化のののの制限制限制限制限 中国当局は日常的に、政治・社会・宗教的理由から中国当局が好ましくないと判断するコンテンツに主に注目して、中国に入ってくるインターネット通信にフィルタをかけている。中国は2002年、大半の主要な西側ニュース・サイトへのフィルタを解除した。しかし、2002年に発表されたハーバード大学の調査研究によれば、中国はさまざまな機会に合計19,032のサイトをブロックした。中国は、台湾、法輪功、チベットおよびウイグル支援団体、中国を特に注視する人権団体の関連サイトをブロックしているのに加え、MITなどの大学の校友会、さまざまな教会その他の宗教的なテーマのサイト、そしてAlta Vistaなどの検索エンジンを繰り返しブロックしている。また2003年3月に行われた中国共産党第16回全人代の間、海外のニュース・サイトが数週間にわたってブロックされた。厳密に経済やビジネスの問題にしか関わらないサイトで規制されているのは、あっても非常に数が少ない。インターネットのフィルタの変更は、警告や世間への説明もなく行われ得る。例えば、人気のあるインターネット検索エンジンのGoogleは、2002年8月末から数週間、完全にブロックされた。Googleが2002年9月に再び利用できるようになっても、キャッシュされていたページの画面がブロックされたままだった。中国のユーザーは以前は、この機能によって、通常ブロックされているホームページの「スナップショット」にアクセスできるようになっていた。2002年のこうした展開以来、インターネット・コンテンツに関する中国の政策には大きな変化は見られない。

Page 30: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

30

インターネットのコンテンツは数多くの措置により規制されているが、そのすべてが公表されているわけではない。こうした措置の最も重要なものは、2000年9月に公布されており、インターネット・コンテンツのプロバイダ、電子商取引のサイト、アプリケーション・サービスのプロバイダをカバーする。信息産業部(MII)傘下で名目上は民間団体である中国互聯網協会(Internet Society of China)は2002年3月、中国インターネット産業の自主規制に関する公約(Public Pledge on Self-Discipline for the China Internet Industry)を設定した。これに署名した者は「国家の安全を危機に陥れ、社会の安定を覆し、法や条例を破り、迷信やわいせつを拡散しかねない、極めて有害な情報の創作、掲示、普及をしない」ことを約束させられる。少なくとも、米インターネット企業の中国子会社1社が、この公約に署名した。 中国は一般的に、外国で開発された暗号化および復号化の技術を禁じている。これまで、この禁止は、暗号化が単なる付随的な機能であるソフトウエアやハードウエアには適用されなかった。しかし、中国は、2003年12月にWLANの暗号化に関する基準を公布し、こうした前例を大きく変更したが、この基準は公布以来、保留されている(上述の「任意規格・強制規格・適合性評価手続き」の節を参照)。 電気通信電気通信電気通信電気通信 中国はWTO加盟議定書で、電気通信サービス分野で重要な約束をした。中国は、外国のサービス提供業者に対し、中国企業との合弁を通じて、広範なサービス提供を認めることで合意した。そこには、国内および国際有線サービス、携帯音声・データサービス、電子メールやボイスメール、オンラインの情報・データベース検索などの付加価値サービス、及びポケベルサービスが含まれる。合弁事業について認められた外資比率は今後引き上げられ、ほとんどの種類のサービスについて最高で49%に達することになる。さらに、地理的制限は、各サービス部門に応じて、中国の加盟から2年ないし6年以内に全廃される。 重要なのは、中国がWTO加盟時に、WTO参照文書の重要な規制原則を受け入れたことだ。その結果、中国は加盟後直ちに、MIIの規制機能と営業機能(同省は、中国の電気通信監督官庁であると同時に、中国電信の運営者でもあった)を切り離し、公平な方法で規制を行うことが義務づけられた。MIIは中国の加盟後、中国電信を切り離し、中国電信は現在、市場において他の電気通信事業者と競争している。規制機能と営業機能は公式に切り離されたが、運営者が(例えば、人事や規格に関連して)運営上の決定を下す際にMIIの影響をまだ受けていることから、規制機能の独立はまだまだ完成には程遠いことがわかる。現在の規制機関MIIは、未だに中国のIT産業及び電気通信製造産業の発展を助ける責任を負っていることから、そもそも独立の機関として構成されたものではない。 中国はまた、透明性のあるライセンス供与、費用ベースの料金設定、相互接続権など、外資系合弁会社が既存の事業者と競争するのに必要な、競争促進的な規制原則を採用する義務を負った。実際に市場参入した外国企業はなく、こうした約束の遵守状況を評価することは難しい。しかし、外国の参入がないということこそが、透明性が欠如していることもあって、ライセンス供与体制が外国の投資を促すようなものではないことを物語っている。 中国の外資系電気通信会社条例(Regulations on Foreign-Invested Telecommunications

Enterprises)は、2002年 1月 1日に発効した。これは、登録資本金要件、株式上限、中国側と外国側の提携企業の義務、ライセンス手続きを定めている。この条例は、外資系通信会社が、基本サービスまたは付加価値サービスを展開できると定めている。基本通信サー

Page 31: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

31

ビス(無線ポケベルサービスを除く)の場合には、外資比率が 49%を超えられない。付加価値サービス(無線ポケベルサービスを含む。ただし、これは通常基本サービスに分類されている)の場合には、50%を超えられない。新条例に基づいて、基本サービスに関する中国と外資の合弁企業を設立するためには、その手続き全体で平均して 9-12 ヵ月の長期間を要する。中国は、外国の申請者に合弁相手を選ぶ自由を与えるという約束をしたが、MII は技術的資格に関する要件を、現在の運営者以外を除外し、市場の競争の激化を妨げる形で解釈している。国際的なサービスの提供に関心を抱く外国のオペレータにとって、国有のオペレータによるゲートウェイを使うという要件は、法外で不当なものに映る。新規参入者に設定された資本金要件は 2 億ドルを超え、これも市場参入障壁となっている。特に施設を建設するのではなく借りようと考えている企業にとっては、そのような要件に正当性は全くなく、再販ベースのオペレータのための特定ライセンスは存在しないようである。一方 MII は、MII のライセンス要件を満たそうとしてきた数社の外資通信会社の申請の処理に時間をかけ続けている。 MIIは時々、適用法規を通知なしに、不透明な方法で変更してきた。例えば、MIIは

2003年2月に、一部の基本通信サービス及び付加価値通信サービスの分類の変更を発表し、2003年4月1日発効とした。パブリックコメントの期間は設けられなかった。このような動きは、米国企業が中国の電気通信市場に参入する力を制限するものであった。というのは、基本サービスの自由化スケジュールは付加価値サービスよりも遅く、外国出資比率上限もより低く、資本金要件はより高かったからである。 インターネット・サービスやコンテンツのプロバイダなど、付加価値サービスの市場開放では、ほとんど進展がなかった。MIIは、音声、動画、データサービスの収れんに向けた動きを2000年に発表したが、中国は情報コンテンツをセンシティブなものと見なしており、そのため外国企業は、インターネット・サービス分野で大きな障壁に直面している。中国で「com.cn」サイトを登録する外国企業の数は増えているものの、サイトがブロックされる場合もまだ多く、このことはこうした企業がインターネット上で安定して展開することを妨げている。インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)は要請に応じて、ユーザーのログイン情報やトランザクション記録を当局に提供するよう義務づけられているが、そのような行動を正当化する事情や状況に関する明確なガイドラインはない。このことは、消費者のプライバシー保護やデータの濫用防止に対する懸念をもたらしている。米国はこれまでのところ、付加価値サービス提供ライセンスの申請でMIIのライセンス供与のプロセスを完了したものをまだひとつも把握していない。 ISPとインターネット・コンテンツ・プロバイダ(ICP)に対する外資出資比率上限は、WTO加盟議定書の付加価値サービスに関する予定表を忠実に反映している(加盟後直ちに30%、加盟後1年以内に49%、加盟後2年以内に50%となっている)。しかし、

ICPは、外国資本を受け入れたり、外国企業と協力したり、内外の株式市場に上場できるようになる前に、サービスの地理的範囲に応じてMII及び/または現地電気通信監督官庁の承認を受けなければならない。 2004年、長く待たれた電気通信法の草案が中国の省庁間に配布され始めた。中国がイニシアチブを取れば、この法律は、現在の市場アクセス障壁及び中国の現在の電気通信体制が抱えるその他の問題点に対処する手段となるだろう。 一方、中国はWTO加盟議定書の中で、この分野のさらなる自由化については現在の

WTO新ラウンド中に話し合うと約束したが、サービスの改善オファーをいまだ提出していない。電気通信に関するWTO加盟議定書での中国の控えめな約束は、これまでのところ外国企業の市場参入を促進してきていないが、この部門の市場アクセスの可能性

Page 32: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

32

を改善するには、WTOの今ラウンドを通じたさらなる自由化が不可欠であると思われる。 オーディオビジュアルサービスオーディオビジュアルサービスオーディオビジュアルサービスオーディオビジュアルサービス((((映画輸入映画輸入映画輸入映画輸入をををを含含含含むむむむ)))) 中国のオーディオビジュアル製品管理条例と映画管理条例は2002年2月1日に発効した。条例は、映画およびオーディオビジュアル産業の秩序と透明性を高めるのが狙いで、国内の改革への取組みと、WTO加盟約束に沿って、商業面の効率を高める方向に進むことを目的としている。こうした前向きな動きはあるが、国有の映画および活字メディアの輸入販売業者があげる収益を守ろうとする欲求と、政治的にセンシティブな素材への中国の懸念のために、オーディオビジュアルサービスの制限は続いている。例えば、音楽レコーディング製品、ビデオ、映画、書籍、雑誌の販売は依然として強く制限されている。さらに、ニュース配信サービス業者は、政府が自分たちの活動に新たな規制を加えるのではないかとまだ警戒している。検閲規制の首尾一貫しない主観的な適用も、国内外の供給業者にとって同様に市場の成長を阻む原因となっている。 中国は2004年に、オーディオビジュアルサービス部門での市場アクセス拡大につながる多くの条例を公布した。7月に、中国国家広播電影電視総局(SARFT)は、映画制作における中国-外国協力の管理のための規則 (Rules for the Administration of

China-Foreign Cooperation in Filmmaking)を公布した。この規則によると、中国-外国の共同映画制作会社と中国国内の提携相手の双方にライセンス取得が義務づけられている。10月にSARFT及び商務部は映画のアクセス要件に関する暫定規則(Provisional Rules on the Access Requirements for Film)を公布した。この規則は、国内企業による映画制作、配給、上映、輸入と、外国企業が関わる映画制作及び上映に適用される。こうした業務に携わる企業はみなSARFTのライセンスを取得しなくてはならない。外国企業は、映画制作、技術、機器に関わる合弁企業及び協業企業を設立することを許される。合弁企業または協業企業は、登録資本500万元(60万3,000ドル)を所有していなくてはならず、外資は全体の49%を越えてはならない。10月にSARFTと商務部は、中国-外国合弁及び共同テレビ番組制作会社の管理のための暫定規則(Provisional Rules on the Administration of China-Foreign Joint Venture and Cooperative TV Program Production Firms)を公布した。この規則は、登録資本金要件を200万元(24万1,000ドル)とし、国内の提携会社の出資比率は51%以上とした。 中国は1994年、配給収入分配方式で外国映画を輸入し始めた。中国政府は、輸入することを認める外国映画の数を制限している。中国は、1990年代のほとんどの期間、毎年10本の外国映画しか輸入を認めなかったものの、最近ではWTO加盟約束に基づき、配給収入分配方式により年間20本の外国映画の輸入を認めている。しかし、中国はWTO約束を下限ではなく上限として扱っており、これにより海賊版に対する需要が人為的に高められている。また中国は映画館と映画の配給を外国からの投資に開放する義務を負っているものの、現在は、外国映画の公認配給会社は2社、国有のChina Film

Distribution CompanyとHuaxiaだけだ。さらに、中国当局による検閲に時間がかかるため、合法的に輸入した外国映画の中国国内での上映が遅れてしまう。また上映できるようになっても、国民の祝日には電力が供給されないために上映できない期間がある。市場アクセスに対するこうした制限は、合法的に許可された映画が存在しないために海賊版DVDに対する需要を生み出すだけでなく、映画館に外国投資を行うインセンティブを失わせている。このため、外国映画に対する中国の膨大なヤミ市場は成長を続けている。中国法を遵守する権利保有者は、合法的製品の販売を控え、映画需要がほぼ完全に海賊版で満たされるのを放置するしかない。映画館について認められた外国投資の割合を75%まで引き上げ、外国投資家による過半数の所有を認めるという中国の最近の方針による表面上の利益は、こうした状況により幾分損なわれている。2004年、商務部

Page 33: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

33

が米国資本の映画配給合弁事業を認め、映画を市場に出すのにかかる時間を短縮する措置を取ったことで、若干の進展が見られた。 観光観光観光観光・・・・旅行旅行旅行旅行サービスサービスサービスサービス 中国はWTO加盟直後、新たな旅行代理店条例を発した。新条例は、大手外資旅行代理店が、外国人旅行者の中国内の4大目的地、すなわち、北京、上海、広州、西安への外国からの観光旅行を促進するために、フルサービスの合弁旅行代理店を営業することを許可するものであった。中国は、外資系および100%外資旅行代理店の設立に関する暫定措置(Provisional Measures for the Establishment of Foreign-controlled and

Wholly Foreign-funded Travel Agencies)を発表し、これが2003年7月に発効した。代理店は今のところ、世界全体で年商4,000万ドル、現地の登録資本金が約50万ドルなくてはならない。ドイツのTouristic Union International(TUI)は2003年11月に、中国のWTO加盟後初めての外資系合弁旅行代理店を設立することで、中国観光局との同意書に調印した。また日本航空も、初めての100%外資旅行代理店を設立した。 しかし、外国企業は中国人海外旅行客市場での競争からは依然として締め出されている。中国は、すべての旅行代理店、航空会社、予約会社に、航空券の予約をする際に、国が所有し管理しているコンピュータ予約システムを使用あるいは接続することを義務づけている。外国のコンピュータ予約会社は中国のシステムに接続しないと予約業務ができない。米国への旅行を希望する中国人に発行されたビザの総数は2003年の約

85,000から2004年には27%増加して108,000になった。この増加のほとんどは2003年に中国でSARSが流行した後、通常の旅行パターンが戻ってきたためである。 一方、中国公用旅券の所持者は、2004年にはそのうちの約23,000人に米国ビザが発行されたが、中国の国有航空会社か共同運航の提携会社を利用しなければならない。こうした個人の大半は、国営企業の従業員であるが、大半の国では公務員とはみなされない。これは米航空会社にとっては、大きなビジネス上の損失であることを示している。

教育及教育及教育及教育及びびびび研修研修研修研修 中国では、資質のある教師が不足しており、内陸部では明らかに教育者が必要だ。しかし教育省(MOE)は、外国の教育者や研修指導者が参入することを拒否し続けている。中国は、教育省が監督する9年間の義務教育と競合しない非営利教育活動のみを許容し、教育部門で大いに必要とされる外国投資を阻んでいる。教育省は2000年4月、外国の企業や団体が衛星通信網で教育サービスを提供することを禁止した。外国の大学は非営利組織を設置できるが、プログラムが体制転覆を図る内容ではなく、輸入された情報を現地に適合させるよう、中国の大学を受け入れ先および提携先にしなければならない。一方、中国の研修市場は法令がないため、潜在的な投資家は市場参入を見送っている。 教育省は2004年6月、中国-外国協力教育プロジェクトのための実施規則

(Implementing Rules for China-Foreign Cooperative Education Projects)を公布した。2003年9月に公布された学校運営における中国-外国協力に関する条例(Regulations on China-Foreign Cooperation in Running Schools)を実施するためのものであったが、規則が適用されるのは、学問的資格を与える教育、補助教育、就学前教育を含む特定の活動だけである。こうした活動は教育機関の形を取ることができない。 法律法律法律法律サービスサービスサービスサービス 中国はWTO加盟前、法律サービスの分野にさまざまな規制を敷いていた。中国は、外国法律事務所の代表事務所が中国法を扱ったり、非中国法に関する活動で利益を上げたりするのを禁じていた。中国はまた、外国法律事務所が中国法律事務所と公式に提携

Page 34: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

34

するのに制約を課し、外国法律事務所は代表事務所を一つしか置けないこととし、地理的制限も維持した。一方、中国法律事務所は1996年以降、中国全土で自由に事務所を開けるようになった。 中国はWTO加盟約束として、加盟後1年以内に、外国法律事務所の代表事務所設立に対する数量的および地理的な制限を撤廃することで合意した。さらに外国の代表事務所は、営利活動に従事し、外国の法律問題で依頼人に助言したり、中国の法律環境による影響についての情報を提供したりすることもできるようになることとなっている。また、中国法律事務所と長期の「委託」関係を保ち、両事務所の合意に従って、中国法律事務所の弁護士を指導することもできる。 国務院は2001年12月に、外国法律事務所の代表事務所の管理に関する条例(Regulations

on the Administration of Foreign Law Firm Representative Offices)を公布し、2002年7月、法務省が実施規則を公表した。これらの新しい措置はいくつかの市場アクセスの障壁を撤廃する一方で、中国で事業を行う外国の法律事務所の間に懸念を引き起こした。多くの分野で、これらの措置はあいまいなものであった。例えば、これらの措置は、中国のGATS約束に反して、中国に事務所を設置したいと考える外国の法律事務所に対して経済需要テストを課していると思われた。これらの措置はまた、外国の法律事務所が提供する法律サービスの種類について過度に制限的な見方をとっているものとも思われた。さらに、新しい事務所または追加の事務所を設置するための手続きは不必要に時間のかかるものだった。例えば、外国法律事務所は、最も新しい代表事務所が3年続けて業務を行った後でなければ、次の代表事務所を設立できない。加えて、外国人弁護士は、中国の司法試験を受けることができず、中国の法曹界に登録されているメンバーを弁護士として雇ってはならない。2003年及び2004年に、数多くの米国及びその他の外国法律事務所が中国に2つ目の事務所を開くことができたものの、こうした措置のその他の問題の多い側面に関してはほとんど進展が見られなかった。 会計及会計及会計及会計及びびびび経営経営経営経営コンサルティングコンサルティングコンサルティングコンサルティング・・・・サービスサービスサービスサービス 中国のWTO加盟前は、外国監査法人が中国での合弁相手を自由に選ぶことはできず、そうした合弁事業を完全に統括する契約を結ぶこともできなかった。中国はWTO加盟議定書で、外国監査法人が希望する中国の監査法人と提携することを認めると約束した。中国はまた、外国監査法人の代表事務所の営利活動に対する制限を撤廃することにも合意した。外国監査法人は、税務や経営コンサルティング・サービスについてもこれに従事することが認められ、その場合、これらのサービスを個々に提供することを目指す新規法人に通常適用される設立時のより厳格な制限を満たす必要はない。 その一方で、財政部傘下の政府機関、中国公認会計士協会は、中国の会計の近代化を大きく進展させた。財政部は2002年、銀行間取引の確認、資本査定、収支見通し、商業銀行の財務諸表の監査を扱った、新たに改訂した4つの会計基準を発表した。財政部はさらに、投資、在庫、キャッシュフロー計算書、固定資産を含む広範な課題を横断的に規律する会計手続きの標準化に積極的に取り組んでいる。中国証券監督管理委員会では、公認の国際監査法人を指名し、国際標準に則って目論見書と決算報告書を監査するよう上場企業に義務づけた。具体的な数字は入手できないが、大半の関係者は、国際的な資格を持つ会計士の需要が、向こう数年間で急速に拡大するとの見方で一致している。こうした好ましい変化がある一方、さまざまな問題が残っている。相互に異なる複数の会計条例が存在するためデータの比較可能性が制限され、多くの国内企業が採用している会計手続きは国際慣行に合わない。

広告広告広告広告サービスサービスサービスサービス 国家工商行政管理総局(SAIC)は中国の1995年広告法の実施機関である。同法はと

Page 35: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

35

りわけ、「公衆を妨害したり、社会慣習に反したりする」メッセージを禁止する。同法の解釈権限はSAICにあり、すべての宣伝広告はSAICの認可を受けることになっている。さらに外国のメーカーだけでなく、外国の広告代理店にとっても難題であるのが、中国が比較広告のみならず、あるブランドが別のブランドより相対的優位にあると主張するいかなる広告も禁じる厳しい規制を敷いていることだ。このため、ある国で成功しているマーケティング戦略は、中国で非合法となる。 以前は、外資企業は、代表事務所か外資少数所有の合弁事業に制限されてきた。しかし中国はWTO加盟約束の一環として、合弁広告代理店の外資による過半数所有を2003年12月11日までに、完全子会社化を2005年12月11日までに認めることで合意した。

2004年3月、SAIC及び商務部は、合弁広告会社、協業広告会社、100%外資広告会社を管理する規則を発表した。支店を開設するためには、会社は登録資本を全額支払っていなくてはならず、年間の広告収入が最低2000万元(241万ドル)なくてはならない。外国企業は現在、合弁会社、協業会社の株の70%までしか取得できない。2005年12月には、100%外資の広告会社が許可されることになっている。 自由職業職自由職業職自由職業職自由職業職のののの移動移動移動移動 中国で働くことを希望する医師やエンジニアなどの米国人自由職業従事者の場合、一般に入国制限は課されていないが、米国人以外の外国人の自由職業従事者同様、国家外国専家局の認可を受けなければならない。米国人の就業申請見込者は入国前に、自由職業の資格証明書の証明付謄本と過去の職務経験の要約を提出するよう求められる可能性がある。資格証明書は、雇用者が当該米国人就業者の「外国人専門職在留許可」を申請するのに用いられる。「外国人専門職」の許可が下りると、就業見込者は中国大使館または領事館に労働ビザ(Zビザ)発給を要請できる。就業見込者が就業前に観光ビザ(Lビザ)で中国に入国する場合は、その就業見込者は通常、業務開始前に中国を離れ、外国の入国地点(通常は香港)で適切な労働ビザを申請するよう求められる。現地雇用者は、こうした「外国人専門職」が中国で雇用されている間の雇用税、所得税、その他の源泉徴収のすべてに責任を負う。最近の報道記事によると、中国は、外国人長期滞在者に対して「永住」ビザを発給することでアクセスを自由化する措置を検討しているとのことである。一方、外国人長期滞在者に対して、中国政府は「居住許可証」を「永住ビザ」と交換することでアクセスの自由化を図っている。 投資障壁投資障壁投資障壁投資障壁 外国の投資家は、大きな障壁があっても、中国に強い関心を示し続けている。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、中国は2004年に620億ドルのFDIを受けており、米国に次いで世界第2の投資先であった。中国への投資を妨げる一般的な障壁には、透明性の欠如、首尾一貫しない方法で適用される法と条例、知的財産権保護の不備、汚職、及び契約の不可侵性を守ることができない当てにならない法律制度が含まれる。とはいえ、中国指導部は、投資に対して中国を「一層開放」し、ルールが重んじられる経済に向けた動きを継続すると確認している。2004年、外国(及び国内)の企業は高い収益性を示した。これは、中国において事業を行う難しさはほぼ乗り越えられるものであることを物語っている。しかし、投資障壁を取り除こうとする明確な動きが早まれば、特に、新しい高付加価値の製造業及びサービス分野にさらなる投資を呼び込むことになるだろう。 投資要件投資要件投資要件投資要件 中国はWTOの貿易関連投資措置(TRIM)協定の義務を負うだけでなく、WTO加盟議定書の中で、輸出パフォーマンス要求、ローカルコンテンツ要求、外国為替均衡要件

Page 36: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

36

を法律および条例から削除すること、またこれらの要件を課す契約を強制しないことを約束した。中国はまた、投資(または輸入)の承認条件に、こうした要件や技術移転、輸出入均衡(offset)などの要件を課さないことにも合意した。 中国はこうした約束を想定して、輸出パフォーマンス、ローカルコンテンツ、外国為替均衡、さらには技術移転に関するWTO協定に反する要件を削除するために外資系企業に関する法律や条例を改正した。中国はまた、原材料および燃料の調達を規制した「バイ・チャイナ」政策を見直し、合弁企業及び100%外資企業が中国当局に生産/営業計画を提出するという要件を撤廃した。しかし、一部の措置では、技術移転を正式に要件とはしていないにもかかわらず、いまだ「奨励」している。米国企業は、とりわけ投資申請の審査に係る担当官の広範な裁量について考えると、こうした「奨励」は事実上の「要件」に他ならない場合が多いのではないかと懸念している。さらに米国企業によれば、一部の中国政府官吏が、投資を認めるか否かを決定する際に、あるいは、投資プロジェクトを成功させる上で必要不可欠な場合が多い中国の政策銀行からの融資認可を推薦するか否かを決定する際に、なお輸出パフォーマンスやローカルコンテンツなどを考慮に入れていることも指摘されている。2004年には苦情の件数は減ったが、外国の投資家は依然として、中央政府のWTO遵守措置の約束が地方の業務に反映されていないという潜在的な違反に警戒している。

投資投資投資投資ガイドラインガイドラインガイドラインガイドライン 外国から流入する投資は、引き続き管理され、国家開発目的に役立つ分野に誘導されている。中国は過去6年間に、投資ガイドラインを何度も改定してきた。度重なる改定は、潜在的な投資家を戸惑わせ、投資ガイドラインは事業計画立案の安定した基盤にならないとの印象を強めた。どの産業が投資目標として推奨されるか、またそのような指定がどの程度の期間にわたって有効なのかが不確実なため、投資環境に対する信頼感を損なっている。2005年1月1日に2002年4月のリストが差し替えられ、外国からの投資を奨励する業種、制限する業種、禁止する業種を挙げた新たなリストが発効した。リストに含まれない業種は、許可されていると見なされる。 奨励された業種には、インフラ設備の建設や運営など、中国が外国の支援や技術の恩恵を受けることのできるものが含まれている。さらに2002年4月のリストは、銀行、保険、石油採取、付加価値通信、そして流通を含む中国がWTO加盟議定書で約束した分野での開放の要素を実施している。新リストは、テレビ番組制作、流通、及び映画制作を、合弁企業に49%以下の出資を許すことを通して外国企業に開放している。また、大画面カラー映像管、自動車電子部品、工業ボイラーの部品製造及びコンパクトディスクメディアの製造を投資奨励リストに加えた。これらは、資本設備の輸入の非課税扱い及び投入財への増値税(VAT)還付を受けられる利点がある。 中国は過去5年間、特定の奨励部門への外国の投資に様々なインセンティブを導入してきた。外資系企業が系列でない研究開発(R&D)や教育機関に拠出した場合に税額控除を認める1999年11月に発布された条例のように、中国はハイテク産業の投資にインセンティブを導入した。中国は2001年12月、開発の遅れている同国中部および西部への投資に対する新たな包括的インセンティブについて発表した。 中国政府はまた1999年8月に、投資の認可に関する決定機関の地方分権を開始し、重要な業種や地域への投資に新たなインセンティブを生み出すような一連の措置を発表した。こうしたガイドラインは、省レベルの政府当局が「奨励された」外資プロジェクトを認可することを容認し、中央政府の認可が必要となる投資額を引き上げた。

Page 37: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

37

その一方で、中国政府は、「中国の国家経済開発の必要性」から外れたプロジェクトへの外国投資を制限している。こうした分野では、外国企業が中国市場に投資するには中国企業と合弁を形成し、株式少数保有の制約に甘んじなければならない。 また中国政府は、いくつかの分野に対する投資を禁止している。中国は、国家安全保障上の利益を挙げて、報道機関、放送への投資を禁じている。兵器生産と一定の鉱物の採鉱および加工も、引き続き投資が禁止されている分野である。米投資家は、中国が遺伝子組み換え種子の開発と生産への投資を禁じていることに、特に懸念を表明している。 中国は2005年の半ばに第11次5ヶ年計画を発表する予定である。この計画は2010年までの経済政策目標の概要を示すものである。 他他他他のののの投資問題投資問題投資問題投資問題 ベンチャーキャピタル 2003年3月に発効した新条例は、100%外資を含めた外資のベンチャーキャピタル会社の設立を認めたそれまでの暫定条例に置き換わるもので、外国投資に開放されている産業でのハイテクおよび新規技術にもとづいた新規開業に資金を供給することをその狙いとしている。新条例は資本金要件を引き下げ、これらの企業が海外から直接投資された資金を扱うことを認め、他の国々の合資会社に似た組織形態のベンチャーキャピタル会社を設立するという選択肢を用意している。2001年4月の条例は、(外資系を含めた)証券会社が未公開株式業務に参入することを禁止した。外国の未公開株式企業は、企業構造、株式の発行及び譲渡、投資引き上げオプションに制限が設けられている。投資引き上げの問題、特に中国の証券取引所に上場することの難しさは、海外上場に役所の認可が必要であることも重なって、中国に拠点を置くベンチャーキャピタル会社の設立や未公開株式投資への関心を押さえ込んでいる。その結果、中国における外国ベンチャーキャピタル及び外国未公開株式投資の大半は、実際はオフショアの投資機関で行われている。こうした形であれば、他のオフショアFDIの場合と同様、中国政府の認可を受けずに送金できるからである。 傘型企業 最低資本金要件があるため、いくつかの大規模な投資を扱っている法人にしか活用できないものの、傘型企業の事業範囲と営業に対する制限は多少緩和された。傘型企業は複数の傘下企業にまたがって人材を運用し、傘下企業に市場調査その他のサービスを提供することができる。しかし、傘型企業が提供するサービス、ならびに内部的に外国為替を均衡させる財務運営及びその能力に対する制限の一部は、WTO加盟約束の完全履行後も若干残っている。傘型企業内の損益通算も、引き続き禁止されたままだ。 資本市場へのアクセス 中国の外資系企業は依然、内外株式市場へのアクセス、社債の売り出し、ベンチャーキャピタルからの資本受け入れ、株式の売り出し、通常の合併・買収(M&A)や資産売却の活動に従事することがほとんどできない。資本勘定での外貨取引は、個別に当局の検査を受けて初めて行える。またこのような認可は、非常に厳しい規制管理を受けることになる。資本市場へのアクセスに対するこうした障壁は、中国のWTO加盟議定書では撤廃されることになっていないものの、中国は、外資系企業の上場に対して国内株式市場を開放するなど、試験的な自由化を始めたところだ。公認外国機関投資家(QFII)制度を通じ、外国証券会社は、中国政府にQFII資格を申請することで限定された形で元建てA株式市場にアクセスすることができる。2004年12月時点で、外国企業27社に

QFII資格が認められ、そのうちの24社が総額34億2,500万ドルの投資割当を発行されている。

Page 38: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

38

政府調達政府調達政府調達政府調達 中国はWTO加盟議定書の条件に従い、透明な方法で政府調達を行い、外国の供給業者に開かれた調達には、あらゆる外国の供給業者に参加の機会を平等に与えることで合意した。中国はまた、WTOの政府調達に関する協定のオブザーバー国になると約束し、これを2002年5月に実現した。さらにWTO政府調達協定への加入に向けて、「可能な限り速やかに」オファーを提出し、交渉を開始することを約束した。2003年後半に、財政部は協定加入交渉を開始する可能性について検討するための作業グループを設置したと報告されている。中国は、その間、中央及び地方行政機関が、WTO加盟議定書に示される通り、透明な方法でその調達を行うことに合意した。中国はまた、調達が外国の供給業者に開かれる場合、すべての外国供給業者に入札過程への参加の機会を平等に与えることにより、最恵国待遇を提供することにも合意した。 中国は2002年7月、初の政府調達法を発布した。これは部分的には、中国がWTO加盟議定書において商業ベースで行うことに合意した「国営企業」による購入を「政府調達」から切り離す必要性に対応している。中国はさらに、国営企業の商業的決定に政府が影響を及ぼさないことにも合意したが、実際において、これは一貫して行われてはいない。 政府調達法は、2003年1月1日に発効し、WTO政府調達協定の精神遵守を意図して、国連の商品調達に関するモデル法に含まれる条文を盛り込んでいる。しかし、この法律はまた、中央及び準中央行政機関に対し、限られた例外を除いて「中国の」財とサービスを優先するよう指示している。中国の構想では、この法律によって透明性が高まり、汚職が減り、政府のコストが削減される。さらに同法は、いずれ中国が政府調達協定加入国となる準備として、中国の政府調達システム改善に向けた不可欠なステップとみなされている。2004年8月に財政部が発布した実施規則では、例外的状況で認められる外国の財、工事、サービスの調達は財政部による審査と承認を条件とすることが規定されている。 2004年8月、財政部は政府調達に関する入札手続き、情報の公示、苦情処理などを扱った措置を発表した。入札規則では、一定金額を越えるすべての政府調達について公開入札で行うことを義務付けている。中央政府が資金源となった政府調達の2004年のリストによれば、公開入札の限度額は120万元、米ドルにして146,000ドルである。参加資格として、供給業者は国内業者で「国内の財とサービス」を提供しなければならない。財政部は「国内の財とサービス」の基準を作成中と報告されている。情報公開規則は、調達を行う組織とその機関に、すべての必要情報を財政部が指定した媒体で公開することを義務付けている。これらの規則では、この情報を政府調達に関する法令、データその他の資料と定義し、公募と入札に関する詳細情報の開示も要求している。苦情処理規則は、財政部と地元の財政当局に対し、調達実施に関する供給業者からの苦情に対応することを義務付けている。供給業者は、裁定を求めて行政審査を申請するか、又は裁判所で行政訴訟を提起することができる。 ソフトウエア製品とサービスの調達に適用される実施規則草案は、米国企業にとって深刻な懸念となっている。中国全体のソフトウエア市場が合計33億ドルに及び、さらに年間50%以上の成長が見込まれていた2003年に初めて起草されたこの規則は、中央及び地方行政当局に可能な限り中国で開発されたソフトウエアを購入するよう指示するガイドラインを含んでいたと報告されている。2004年11月に財政部と信息産業部が発表した施策草案の部分要約では、「国内ソフトウエア」を非常に限定的に定義し、その

Page 39: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

39

結果、外国のソフトウエアが調達の資格を得ることは困難になるものと思われた。米国は施策草案のこの点について深刻な懸念を示した。2004年末の時点で最終的措置は発表されていない。 電子商取引電子商取引電子商取引電子商取引 中国では1999年以降、インターネットの利用が急激に成長している。中国インターネット・ネットワーク情報センター(CNNIC)が最近発表した、年2回実施のインターネット調査第15回によると、中国でインターネットにアクセスできる人数はおよそ9,400万人で、年々18%増加しており、全ユーザー人口について言えば米国に次ぐ人口である。パソコン価格の低下と中国市場向けデバイスの登場により、インターネットのアクセスはさらに拡大すると思われる。 また中国では、電子事業の創業数も劇的に増加した。中国で現在運用されている中国語サイトのおよそ78%が「企業」により運営され、5%が「事業」により運営されている。2004年6月末には、中国にざっと626,600件の登録サイトがあった。その総数のうち、382,216件は“.cn”に登録されていた。しかし、こうした変化にもかかわらず、「電子商取引サービス」を提供しているのは、中国「企業」サイトの11%、中国「事業」サイトの45%に過ぎない。とはいえ、中国では、検索エンジン、ネットワーク教育、オンライン広告、オーディオ・ビデオサービス、有料電子メール、ショートメッセージ、オンライン求職活動、インターネット相談、オンラインゲームなど、オンラインビジネスが急速に発展している。 中国政府は、輸出振興と競争力強化に向けた電子商取引の可能性を認めており、持続可能な取引環境の確立に向けて一定の進展を見せた。しかし、電子商取引に責任を負う中国の官庁の中には、インターネットを過剰に規制し、電子商取引の繁栄に必要な情報の自由な移動や消費者のプライバシーを抑圧するところがある。コンテンツはいまだに管理され、暗号化は規制されている(この点については上述の「インターネット・コンテンツの規制と暗号化・複合化の制限」を参照)。 また数多くの技術的問題も、中国における電子商取引の成長を阻んでいる。政府が認可したインターネット・サービス・プロバイダの課す料金が高く、大半の中国人にとってインターネットのアクセスに費用がかかりすぎる。接続速度が遅いことももう一つの問題だが、これはブロードバンド接続がさらに容易に利用できるようになる中で変わりつつある。2004年には、中国のインターネット利用者の46%近くがブロードバンド接続可能となり、これは2003年から146%の増加を示している。中国テレコムは、いまや世界最大のDSLオペレータとされ、その契約者数は2004年に1000万人を超えると予想されている。 オンライン取引を行っている中国事業と消費者にとって、これ以外の障害として、クレジットカード決済システムの不足、オンライン取引に対する消費者の信頼感の不足、安全なオンライン決済システムの欠如、効率の悪い配達制度などがある。また中国では、電子商取引の急速な発展を助けるような法律上の枠組みがまだ開発されていない。「電子契約」ツールの有効性を認め、オンラインのプライバシーとセキュリティーの重要性について強調する法律も提案されているものの、まだ制定されてはいない。しかし、こうした障害があるにもかかわらず、2003年6月の調査では、中国のインターネットユーザーの40%超が、過去1年間にオンラインで買い物をしたことがあり、その約3分の1がオンラインで支払ったと答えている。

Page 40: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

40

明るい材料として、中国は2004年8月28日に電子署名法を可決し、これは2005年4月1日に発効する。中国はまた、データプライバシー法草案を作成中である。 競争制限的慣行競争制限的慣行競争制限的慣行競争制限的慣行 中国は、地方の保護主義、独占形成的な価格設定、産業全体にわたる独占企業の維持が生み出す経済の非効率と投資に対するマイナスのインセンティブに苦しみ続けている。中国の競争制限的な慣行には、いくつかの形態がある。一部のケースでは、独占もしくは独占に近い企業、または公認された寡占企業(電気通信業界など)として操業する産業コングロマリットが価格固定や契約分配などの方法で、内外供給業者の競争を制限することができる。省その他の地方当局の地域保護主義も、中国内での効率的な財とサービスの分配を妨げることが多い。このような慣行は、一定の輸入製品の市場アクセスを制限し、生産コストを引き上げ、中国の外資系企業にとって市場参入の機会を制限する恐れがある。 中国には競争問題に対応する既存の法律や条例もいくつか存在する。しかし、国内の協調体制がないことや、地方や省の法の執行に一貫性がないことから、そうした措置もほとんど機能しない。中国は新たな独占禁止法の草案を作成しており、早ければ2005年の半ばから後期に施行される可能性がある。 2002年11月以降、中国企業の売買可能株式、及び一部の指定された省については売買禁止株式を外国人が購入可能となっている。さらに、2003年4月に発効した条例では、外資が国内企業を買収・合併する際の手続きについて定めている。これらの条例では、買収前の事前通報を義務付け、一定の場合には独占禁止的な配慮から審査を行うことを認めている。この条例では、国内企業の全所有者の承認を得るよう義務付けることで、暗に敵対的買収を禁じている。通報を行う基準がはっきりしないため、官吏または国内の競合企業による濫用の危険性がある。この条例の下で、国内の競合企業には、買収の動きについて公聴会を開くよう要求する権利が与えられている。 また中国は外国投資を使って国営企業を再編する場合に関する暫定的な条例を2002年11月に発し、これが2003年1月に発効した。しかし、こうした組織再編を行うためには、その国内企業の労働組合の全面的な承認と完全な同意が必要になる。これらの要件は、こうした投資の魅力を薄れさせてしまう危険性がある。

そのそのそのその他他他他のののの障壁障壁障壁障壁 透明性透明性透明性透明性 中国でも国際貿易に直接影響する法律や条例が次第に公に入手し易くなりつつある。中国は1992年以降、定期購読できる『MOFCOM官報』ですべての通商法および条例を公開し、MOFCOMはインターネットサイト上に常に更新リストを掲示している。しかし、部が発令する条例や実施規則のレベルに達しない多くの措置は、一般には入手できないままだ。中国の官庁は日常的に、外国企業の手に入らないような内部の「指導」や「意見」をもとに政策を実行する。さらに、試験的あるいは非公式な政策や条例案は、内部の問題と見なされ、一般のアクセスは厳しく制限される。 中国は加盟議定書の中で、通商問題(輸入に影響するものを含む)に関連するあらゆる法、条例、その他の措置を公開し、原則としてこれを施行する前にWTO加盟国に対してコメントの機会を与えると約束した。中国はまた、新たな通商関連の法律、条例、その他の措置の写しをその施行後90日以内に、WTOの一つ以上の公用語(英語、フラ

Page 41: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

41

ンス語、スペイン語)に訳して、ジュネーブのWTO事務局に提出することにも合意した。中国はさらに、WTO加盟国や外国企業がこうした措置について情報を入手できるようにさまざまな照会窓口を設けることで合意した。 政府が保有する各種専門紙は日常的に、政府条例、実施細則、通知および告示の本文を掲載している。多くの官庁はさらに、これらの措置の要約や本文を掲載した官報を、文書とウェブサイトの両方で発行している。加えて、新たな法律や条例の最新情報とその本文を日常的に提供するオンラインニュースや情報サービスも急増している。一部のサービスは、定期購読すれば、法的な使用に耐える良質な英訳も提供している。 いくつかの点で前向きではあるものの、こうした措置の発表される場があまりに多く、利害関係者たちがその進展や発布について追跡できる手段を複雑にしている。その加盟議定書の中で、中国は通商関連措置の発表のための官報を創刊あるいは指定することに合意した。2002年の後半に中国は、「中国対外経済通商公報」(China Foreign Economic

and Trade Gazette)をこの目的のための官報に指定した。これはMOFCOMが発行元となり、「MOFCOM官報」に取って代わるものとして、2002年10月に試験的に発行され、2003年1月には正式に刊行された。しかし、意見を求める規則草案はこの官報に記載されず、またMOFCOM以外の官庁が作成する通商関連措置を一貫して記載するものでもない。包括的な官報を一つだけ創刊又は指定することで、WTO加盟各国は通商関連措置の草案作成、発布、実施の追跡がしやすくなると思われる。さらに、中国の加盟議定書の中で構想される通り、提案されている通商関連措置に対する意見を要請する上で官報を一つだけ使用することは、時宜を得た意見聴取期間の通知と意見の提出を可能にすると思われる。 国務院は2001年12月、意見聴取期間と公聴会をはっきりと容認する条例を発した。しかし中国の多くの官庁は引き続き、中国のWTO加盟前の慣行を踏襲している。法律や条例の新たな制定案や改正案を作成している官庁は通常、他の官庁、中国人専門家、影響を受ける中国企業と協議し、草案を提出する。時には、法案を作る官庁が、外国企業を選んで協議することもあるが、必ずしも草案の作成に関与させるとは限らない。その結果、新しく策定されたまたは改正された法律や条例のうち、これまでに意見聴取期間を経て発表されたのはごく一部に過ぎず、また意見聴取を経た場合でも、意見聴取に充てられる期間は一般に短かった。2004年にはいくらか改善が見られ、特にMOFCOMは、2003年11月に発布された行政の透明性に関する暫定条例に規定されるルールに従い始めた。この規則は、透明性を高めようとしている他の官庁に模範として役立つ可能性もある。しかしながら、中国が通知と意見聴取の約束を基本的に遵守するかどうかについては、引き続き一貫していない。例えば、中国は2004年にいくつかの重要な通商関連の法や条例を発布し、それには対外貿易法改正、保険条例、政府調達条例及び数種類の実施規則、新たな自動車産業政策、輸出入の原産地規則条例、知的所有権侵害に対する行政罰に関する税関条例などがあった。有望な点として、保険条例の草案とほとんどの政府調達に関する措置が一般の意見を求めて公開された。しかし、対外貿易法、自動車産業政策、原産地規則条例、税関条例については、草案の公開が限定的、あるいは全面非公開だった。2004年末に向けて、パブリックコメントのための公開はなされないままに、直接販売条例や政府ソフトウエア調達実施規則などを含む数々の重要な措置が最終決定されようとしている。 米国産業は、中国企業が中国の規制当局による非公式の指導を受けている事例について報告を続けているが、こうした指導は通常外国の企業が事前に入手することはできない。一部のケースでは、中国の当局者が未公開文書を利害関係者に提供したこともあるが、この配布は特別で、正式な手続きによるものではなく、個人的縁故に基づくものだ

Page 42: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

42

った。 MOFCOMの前身である対外貿易経済合作部(MOFTEC)は2001年末、通商や投資に関係する新たな法律、条例、その他の措置に関する情報を提供する照会窓口を設置した。ただし、この照会窓口が今も機能し続けているかどうかは明確でない。他の官庁も、公式または非公式に分野別の照会窓口を設置している。こうしたさまざまな照会窓口の創設以来、米国企業は一般にその対応が妥当で役に立つと感じ、一般に迅速に返答を得てきている。

法的枠組法的枠組法的枠組法的枠組みみみみ 法律と条例 中国の法律と条例は、他国より概括的で曖昧な傾向がある。こうしたアプローチにより、中国当局は法律と条例を柔軟に適用できるものの、適用方法が首尾一貫せず、混乱を招く結果にもなる。企業は、自分達の活動が何らかの法や条例に違反するかどうかを見極める上で、困難に直面することも多い。 中国では、中央、省、地方レベルの官庁や政府も条例を制定するため、出された条例が互いに矛盾している場合も珍しくはない。今では最終的な条例が中国で常時公表されるものの、単純な誤解によるものであれ、意図的なものであれ、しばしば恣意的な適用や相互に抵触する余地が残されている。実際、政府官僚は条例適用が選択的であると非難されることがある。中国には多数の厳格な規定が存在し、通常は無視されているにもかかわらず、個人や団体が当局の好意を失った途端にこれが適用されるという例も多い。政府当局は裁量権を行使して、外国の投資家や気に入らない投資家を「厳しく取り締まる」ことができるほか、そのような権限を行使すると脅すことで、そうした投資家に特別な要求を行うことができる。 このように法律や条例に明確かつ統一した枠組みがないことは、中国国内市場に外国企業が参入することに対する障壁となり得る。包括的な法的枠組みがあり、しかも法律や条例の変更案について事前に適切に通報され、変更に対して意見を述べる機会が与えられれば、事業環境が大幅に改善され、商取引を促進し、汚職の機会を減らすことができる。米国政府は、中国の法律および条例の起草手続きの改善を促すため、中国の中央および地方レベルで政府に技術支援を行っている。 中国はWTO加盟議定書で、通商関連の法律、条例、司法決定、行政裁定の実施に関するあらゆる行政行為の審査を行うための裁判所の設立を約束した。この裁判所は中立で、問題の行政処分を任された政府当局から独立していなければならず、審理の手続きには控訴権が含まれていなければならない。中国はまた、政府の全レベルで、財やサービスの取引に関連した法律、条例、その他の一切の措置を、経済特区を含めた中国全土で統一的かつ公正な方法で適用、実施、運用すると約束した。この約束に絡み、中国は

2002年にさらに、不統一な法律適用の事例に対処するための内部審査メカニズムを設置し、これは現在MOFCOMのWTO担当部門が監督している。しかしながら、このメカニズムの実際の活動については、いまだに不明確である。 商事紛争解決 中国の裁判所制度の独立性や専門的能力、裁判所の判決や判断の執行力に対する疑いが根強いため、外国企業も国内企業も、中国の裁判所を通じた執行処分を回避することが多い。裁判官、特に中国の大都市以外の裁判官は地元の政財界の圧力に影響されやすいとの見方が広がっている。ほとんどの裁判官は、法学の訓練や高等教育、あるいはその両方を受けていない。ただし、こうした問題も司法制度の上位ほど緩和される。

Page 43: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

43

同時に中国政府は、裁判官や弁護士に適用される倫理規定を改善し、かつ法令の適用の一貫性と予測可能性についていっそう重視することで、整合的かつ信頼性の高い紛争解決メカニズムの確立に向けて動いている。全人代常務委員会が1995年に公布した裁判官法は、裁判官が法律の学位、または専門的な法律知識を習得した他の分野で学位を持つよう義務付け、また同法の施行前に任用され、新しい基準を満たさない裁判官には、必要な研修を受けることを認めている。最高人民法院は1999年、裁判官任用は、政策や縁故によってではなく、能力、学歴、経験をもとにするよう要求し始めた。最高人民法院は2002年8月、財・サービスの国際取引、あるいは知的財産権に関連した行政裁定をめぐる事件の審理にあたる高等裁判所を指定する規則を発表した。最高人民法院によると、指定裁判所には中国において比較的経験豊富な裁判官を任命し、また地元の保護主義を最小限に抑える試みとして、これらの各指定裁判所の管轄下にある地理的範囲を拡大したという。この規則では、国際取引問題をめぐって中国行政機関の下した決定に対し、外国(または中国)企業や個人が行政訴訟法に従って指定裁判所に提訴し、裁判で争うことができると定めている。この規則ではまた、法律や条例をめぐって複数の合理的解釈が存在する場合、裁判所は、WTO協定など、中国が結んだ国際協定の条項と整合性のある解釈を選択すべきだと定めている。この規則は2002年10月に発効した。 当初の熱い期待にもかかわらず、外国の関係者は、貿易紛争を仲裁する場としての中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)に懐疑的な見方を強めてきている。外国企業数社は、CIETACから満足できる裁定を得ているものの、他の企業や法律専門家は、仲裁人の選任の制限や、事件を徹底的かつ秩序正しく公正に扱うために必要な手続き規則の不備について懸念を抱いている。 最後に、裁判または仲裁パネルが外資系企業に有利な判断を下した案件でも、そのような判断が執行されにくい場合も多い。執行に責任を負う当局者が地元の利害関係者に恩義を受けていて、地元の有力な企業や個人に不利な裁判所判決の執行を嫌がることも多い。

労働問題 中国は近年、国の労働法や条例の適用範囲を拡大し、それにより重要な労働分野の、すべてではないが、大半が網羅されている。中国は、こうした変革を行ってもなお、団結の自由権や団体交渉権など、国際的に認知されている一定の労働基準に準拠していない。加えて、評論家の主張によると、中国の世帯登録制度は、強要または強制労働の形態に等しく、また、中国が最低賃金、労働時間、労働の安全・衛生に関する法律または条例を執行していないとの報告も多数ある。また、囚人労働や児童労働の利用についても根強い懸念がある。 中国政府は、雇用者に多額の負担を要請する国全体の年金、失業保険、医療保険制度、そして労災保険制度を徐々に整備している。こうした制度はまだ整備段階にあり、多くの国内企業が遵守していないことも一因となって深刻な資金不足が問題となっている。また、外資系企業と中国企業の間で、労働法規の適用と執行に一貫性がない。 労働力、特に未熟練労働力の賃金は、中国各地で低い。農村部に余剰労働力が大量にあり、その多くが都市部で仕事を求めることが、未熟練労働力の賃金を抑える方向に作用している。賃金と労働条件が標準以下の一部企業は、未熟練労働力の不足に悩んでいる。中国沿岸部における技術、管理、自由職人材など、求人の競争が激しく、供給が乏しい領域では、労賃が比較的高い。しかし、労働力の流動性に対する制約が労働コストを歪めている。経済成長を持続するためには労働力の流動性が不可欠と認識されたこと

Page 44: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

44

も一因となり、中国では、労働者の国内移動をこれまで制限してきた世帯登録制度のもとでの制約を次第に緩和しつつある。 汚職 多くの人々が期待していたのは、関税の大幅引下げを義務づけるWTOに中国が加盟することで、密輸関連の汚職行為のインセンティブを減らすことにもつながるということだった。WTO加盟によって中国が国際的なベストプラクティスに触れる機会も増え、全体的な透明性の改善がある程度もたらされたものの、汚職は依然としてはびこっている。中国当局自身も汚職について、同国が直面する最も深刻な問題の一つであると認めている。中国の新指導部は国内反汚職闘争の加速を命じ、省レベル当局者の監視強化を重点とした。中国の国営報道機関によれば、2004年に中国検察当局が汚職その他の罪で捕らえた官吏は42,000人を超え、2003年から1%の増加となった。公務上の不正利得が最も多く、検察が回収した不正流用・横領された資金は、合計38億元(4億6000万ドル)となった。 中国は2004年7月に新たな行政認可法を施行した。この法律は、長い間公務員汚職の源となっていた領域であるライセンス手続きの透明性を高めるべきものである。同法の目的は、行政認可権限の合理的行使を確保し、企業と個人の利益を保護し、効率的な行政運営を促進することであり、そのために、ライセンスを発行する特別部署の設置と、申請は20日以内に対処することを行政機関に義務付けている。この法律の効果について判断するのは時期尚早だが、一部の報告によれば、すでに多数の不必要な行政ライセンス要件の廃止につながったことが示されている。 中国は1993年12月に不正競争に関する最初の法律を発布した。中国政府は引き続き政府の全レベルで自己規律や反汚職闘争の前進を呼びかけている。政府は商業的基準のみに基づいて契約を与えると約束したが、政府がどの程度の早さ、どの程度の範囲で、この約束を遂行できるかは分からない。米国の供給業者は、不正な入札慣行が中国に広く存在しており、自分達は競争上不利な立場に立たされていると不平を述べている。こうしたジレンマは、米国が明らかに技術的に優れ、費用面で優位に立っている分野では、それほど深刻ではない。それにもかかわらず、汚職は、中国市場における外国企業と国内企業の両方の長期的な競争力を損なっている。

土地問題 中国の憲法は、すべての土地が人民によって共同所有されていると定めている。実際には、農業共同体が地元の共産党委員長による確かな管理の下で農村の貧しい人々に農地を分配し、都市部行政当局が居住用や工業用に土地を分配する。国家と共同体は、企業に土地使用権を「譲渡(grant)」したり「割当(allocate)」てたりすることができ、その見返りに手数料の支払いを受ける。土地使用権を譲渡された企業に対しては、国家がその土地の収用権を主張した場合に補償を受ける権利が保証される一方、使用権を割当てられた企業には保証されない。もちろん、譲渡される土地使用権の対価は、割当てられる土地使用権より高い。しかし法律では、土地収用権が譲渡された土地使用権に優先した場合の補償基準を定めていない。このような状況は、外国の投資家が明け渡しを命じられた場合に大きな不確実性を生じさせる。加えて、計画されている公共事業に関する公聴会が開かれないため、外国投資家を含め、その影響を受ける当事者に事前警告がほとんど行われない。 工業と商業のいずれについても、外国投資家が企業用に取得できる土地使用権の期限は50年である。外国の投資家にとっての大きな問題は、土地使用権の取得可能性を規律する一連の条例だ。こうした条例の地方での実施は中央政府の基準と異なる場合があり、

Page 45: WTO/FTA - jetro.go.jp · ©jetro 2005 1 米国通商代表部(USTR)2005 年外国貿易障壁報告書(仮訳) 貿易のの概要概要 2004 1,620

©JETRO 2005

45

ある地域で禁じられている慣行が他の地域で実施されていることもある。大半の100%外資企業は、事業を最も確実に保護するために都市部国有地の使用権譲渡を求める。中国と外国の合弁企業は通常、現地提携先とのリース契約や贈与契約を通じて、譲渡使用権の取得を図っている。 中国の現行農地法は2003年に発効し、農民に30年から50年の期間で定期契約を与え、使用契約の有効期間中に農民が土地使用権を交換または賃貸することを認めている。今のところ、土地使用権が土地の直接所有に変更される見通しはない。しかし、2004年に指導部は、農地を農業用から工業用または居住用に転用するための法的手続きに関するさらに厳しい管理と併せて、農民の土地使用権強化を推進した。現在では、農民が直接、商業に使用する者と土地の代価について交渉できることになっているため、地方行政当局が商業用として土地を収用することはもはやないと考えられている。しかし、こうした規定の実施は遅れている。 (以上)