x ray reflectivity measurements for characterizing protein films...fig. 1 refraction and reflection...

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総説(Review Article):膜(MEMBRANE),38(2),64-69(2013) Xray Reflectivity Measurements for Characterizing Protein Films Yohko F. Yano Department of Physics, Kinki University 3-4-1, Kowakae, Higashiosaka City, Osaka 577-8502, Japan 1. はじめに ,X をベース した ある. 2 ける を, に,サブナノメータオーダー るこ きる. 体,液体を わず, ,セラミックス, ハードマテリアルから, ,液 (タンパク DNAソフトマテリアルま い対 ため, している ,大変 ツールだ われ る.また, する ,これま 30 から あったが, ,ミリ り, こる えるこ い,か い. ,X それを って 々が してきた「タンパク 」について する. 2. X 線反射率法 2.1 X 線反射率法とは X について 2009 刊されている 1たる するこ めしたい.ここ けに概 みを する. X 1 Å あるため, すれ るこ きる.一 X に対する り, わずかに 1 より さいこ から,Fig. 1 ように (α<α c ,α c 角) こす.こ き,X わずかナノメータオーダー るため,X するこ によって, きる. Tel: 06-6721-2332 4088 Fax: 06-6727-4301 E-mail: [email protected] X 線反射率法を用いたタンパク質の界面吸着膜の構造解析 矢野陽子 大学 学コース 577-8502 3-4-1 ●特集 生体膜・タンパク質機能解明の新しい切り口 Xray reflectivity is a nondestructive characterization technique for thin films. Either solids or liquids, inorganic or organic compounds can be analyzed. Although this technique has the disadvantages that relatively wide and flat samples are necessary, they are overcome by using synchrotron radiation sources. In this article, characterization of protein layers bound to supported lipid bilayers and timeresolved measurements for protein layers formed on a water surface are shown for examples. Key words : Xray reflectivity protein adsorption thin films lipid bilayers

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Page 1: X ray Reflectivity Measurements for Characterizing Protein Films...Fig. 1 Refraction and reflection of light and X–rays. Fig. 2 X–ray reflectivity measurements. (a) angle–dispersive

総説(Review Article):膜(MEMBRANE),38(2),64-69(2013)

X–ray Reflectivity Measurements for Characterizing Protein Films

Yohko F. Yano

Department of Physics, Kinki University3-4-1, Kowakae, Higashiosaka City, Osaka 577-8502, Japan

1. はじめに

X線反射率法とは,X線回折法をベースとした薄膜の構造解析手法である.具体的には,2つの相を分ける界面に垂直な方向の電子密度分布を,非破壊的に,サブナノメータオーダーの分解能で得ることができる.固体,液体を問わず,金属,セラミックス,半導体などのハードマテリアルから,高分子,界面活性剤,液晶,生体高分子(タンパク質,糖質,DNA)などのソフトマテリアルまで,幅広い対象への応用が可能なため,本学会の研究対象としている『膜』の構造評価には,大変有力なツールだと思われる.また,測定に要する時間は,これまで 30分から数時間程度であったが,現在開発中の光学系を用いれば,ミリ秒測定も可能となり,例えば,生体膜で起こる輸送現象を捉えることも夢ではない,かもしれない.

本稿では,X線反射率法とそれを使って我々が精力的に研究してきた「タンパク質の界面吸着膜の構造解析」について解説する.

2. X線反射率法

2.1 X線反射率法とは

『X線反射率法』の理論と実際については,2009年に国内初となる専門書が発刊されている 1)ので,実際測定に当たる際には,是非とも参照することをお薦めしたい.ここでは,初歩者向けに概念のみを説明する.

X線の波長は 1 Å程度であるため,回折現象を利用すれば,結晶中の原子配列を知ることができる.一方,X線の物質に対する屈折率は,可視光とは異なり,わずかに 1より小さいことから,Fig. 1のように斜入射条件(α<αc,αcは全反射臨界角)では全反射を起こす.このとき,X線の試料表面への侵入深さは,わずかナノメータオーダーとなるため,X線の反射現象を観測することによって,試料表層の構造を知ることができる.

Tel: 06-6721-2332 内線 4088Fax: 06-6727-4301E-mail: [email protected]

X線反射率法を用いたタンパク質の界面吸着膜の構造解析

矢野陽子

近畿大学 理工学部 理学科物理学コース〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1

●特集 生体膜・タンパク質機能解明の新しい切り口

X–ray reflectivity is a non–destructive characterization technique for thin films. Either solids or liquids, inorganicor organic compounds can be analyzed. Although this technique has the disadvantages that relatively wide and flatsamples are necessary, they are overcome by using synchrotron radiation sources. In this article, characterization ofprotein layers bound to supported lipid bilayers and time–resolved measurements for protein layers formed on awater surface are shown for examples.

Key words : X–ray reflectivity/protein adsorption/ thin films/ lipid bilayers

Page 2: X ray Reflectivity Measurements for Characterizing Protein Films...Fig. 1 Refraction and reflection of light and X–rays. Fig. 2 X–ray reflectivity measurements. (a) angle–dispersive

MEMBRANE,Vol. 38 No. 2(2013) 65

いまFig. 2(a)のように膜厚 dの薄膜試料の反射率の入射角依存性を観測すると,反射強度はλ/ 2dの関数で振動する.これは,Kiessigフリンジと呼ばれ,薄膜を挟む 2つの界面で反射したX線が干渉することによる.これに対し,Fig. 2(b)のように入射角αを固定し,X線の波長λを変化させると,2d sinαの関数で振動する.実際 X線反射率は,入射角と波長の両方を含む散

乱ベクトル qz= 4π(sinα) /λの関数で表すのが便利である.反射率R (qz)は,理想界面についてのフレネル反射率RFで割って,

(1)

と表される.ここでρ(z)は深さ zの電子密度,ρ∞は基板あるいはバルクの電子密度である.いま,簡単のためにρ(z)がFig. 3のような密度差Δρj( j= 0, 1,

Fig. 1 Refraction and reflection of light and X–rays.

Fig. 2 X–ray reflectivity measurements. (a) angle–dispersive method, (b) wavelength-disper-sive method.

…,N)の階段関数で表せるとすると,(1)式は,

(2)

となる.N=1すなわち一層膜の場合は,

(3)

となるので,フリンジの最初の極小値はFig. 3(c)のように,ρ1>ρ0ならば qz=π/d,ρ1<ρ0ならばqz= 2π/dとなる.いずれの場合もフリンジの周期は2π/dであるので,フリンジの周期からは膜厚,振幅からは膜密度を求めることができる.一方,実際の界面は平坦ではなく凹凸があるため,鏡面反射の割合は減少する.界面のラフネス(表面凹凸の標準偏差)をσとすると,観測される反射率はR(qz)exp(-σ2 qz2)となる.

Fig. 4に固体基板上の脂質二重膜についての測定例

Fig. 3 (a) Electron density profiles simplified by step func-tions; (b) derivatives of the electron density profilesof (a); (c) X–ray reflectivity normalized with theFresnel reflectivity.

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66 矢野:X線反射率法を用いたタンパク質の界面吸着膜の構造解析

を示す 2).Fig. 4(a)のような 20× 15 mm2のシリコン基板上に脂質二重膜を成膜し,その上に塩基性糖タンパク質アビジンを含む溶液を流した.アビジン溶液を流す前(A)と流した場合(B)のX線反射率曲線にはFig. 4(b)のような違いが出ている.Aのフリンジの周期は約0.12 Å–1であることから,脂質二重

膜の膜厚が約 52 Åであることがわかる.アビジン溶液を流すと,フリンジの形状が少し変化する(Fig. 4(b)).これはアビジンが脂質二重膜に結合したためである.フリンジの振幅は,界面を挟む膜の電子密度差に比例するため,アビジン/脂質膜の電子密度差は,シリコン基板/脂質膜の密度差よりも小さいことが読み取れる.実際にはFig. 4(c)のように,シリコン基板,シリコン基板上の酸化膜,リン脂質の親水部,疎水部,脂質二重膜内の疎水基間のギャップ,タンパク質,タンパク質と脂質二重膜の間のギャップを各々異なる層とみなし,多層膜からの反射率を計算して,実測値と比較した.フィッティングの結果,厚さ 40 Åのタンパク質と脂質二重膜の間には,8 Åのギャップがあることがわかった.このように,非破壊で高精度な断層構造を得ることができることが,この測定法の最大の魅力である.

2.2 どんな試料が適しているか

X線回折法をベースとした構造解析法では,試料中の電子によって散乱された X線の重ね合わせを観測している.したがって,試料が周期構造を持ち,その周期の数が多いほど散乱X線の強度が大きくなる.X線構造解析において試料に単結晶を用いるのは,結晶の方位を揃えるためだけではなく,微弱な散乱 X線強度を干渉によって増幅させるためである.できるだけ大きく結晶性の良い単結晶が得られれば,結晶構造を高分解能で決定することが可能である.一方,X線反射率法では,膜表面でX線が反射するので,できるだけ平坦で大きな「膜」を試料に用いることが,高精度な構造決定に必要となる.測定に適した試料の条件を以下に列挙する.(1)膜のサイズ

X線の照射面積より大きな膜であることが望ましい.X線の照射面積は,Fig. 5のようにX線のビーム

Fig. 4 (a) Schematic of the microfluidic chamber used tocharacterize a protein–coated supported lipid bilayer(SLB) on an imbedded SiO2 substrate using X–rayreflectivity and fluorescence microscopy. (b)Normalized reflectivity scans of bare (A) and pro-tein-coated (B) SLBs. (c) Electron density profilesof SLBs without protein (A) and with a protein layer(B) and extracted from the fitting of the reflectivity.Reproduced from Ref. (2). Copyright 2007 Ameri-can Chemical Society.

Fig. 5 X–ray irradiated area on a sample surface.

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サイズと入射角αで決まる.斜入射条件では,図中斜線のように X線進行方向にのみビームが広がる.例えば,典型的なサイズ h×w= 0.1 mm× 1 mmのX線ビームを試料に対して 0.1°で入射すると,照射長さは ( h / sinα)= 57 mm になり,1°で入射すると,5.7 mmになる.大きな膜が用意できない場合は,反射強度が弱くなるのを覚悟してビーム幅 hを狭めるか,低 qz側のデータをフィッティングに含めない,などの対策をとる必要がある.一方,膜が均一ではなくドメインが存在する場合

は,2種類の膜を仮定してフィッティングを行う.また,GISAXS (Grazing Incidence Small Angle X–rayScattering) 3)を併用すれば,ドメインサイズを求めることも可能である.(2)膜の厚さだいたい膜厚 1 nm~ 100 nmの薄膜試料を対象に

している.Kiessigフリンジの周期が膜厚の逆数に比例するため,観測できる最大膜厚は qzの分解能(主に X線ビームの平行性)によって決まり,最小膜厚は,最大 qzによって決まる.(3)膜の平滑性膜断面の電子密度分布をサブナノメータの分解能

で決定するのであるから,膜表面のラフネスが 1 nm以下であることが望ましい.ちなみにシリコンウエハの鏡面研磨された面や静置した水の表面のラフネスは約 0.3 nm程度であり,1原子程度の凹凸しかない.(4)膜の支持体固体基板上に形成した膜であっても水面上に形成

した膜であっても測定可能である.ただし水面は傾けられないという制約があるため,試料水平型の実験装置を用いる必要がある.一方,フリンジの振幅は界面を挟む膜の電子密度差に比例するから,支持体と膜の電子密度のコントラストが大きいほうが良い.

2.3 測 定

X線反射率測定は,市販のθ/2θ型の粉末X線回折装置を用いて測定することが可能である.大雑把に膜厚だけを知りたいならば,Kiessig フリンジの最初の極小値が観測できれば良い.支持体より膜の方が密度が高ければ sinαがλ/4d,低ければλ/ 2dの位置に最初の極小値が現れ,極小値間の間隔はいずれもλ/2dとなる.例えば,Fig. 4の例のようなシリコン基板上の膜厚 60 Åの脂質二重膜の場合,波長 1.54 ÅのX線を使うと,X線反射率の最初の極小値は0.73°,2番目は 1.47°に現れる.膜厚がもっと厚くなれば,極小値は低角度にシフトするので,回折系のスリッ

トを狭めて角度分解能を上げる必要がある.一方,Fig. 4の例のように電子密度分布を高精度で

決定したい場合は,できるだけ広い qz領域を測定する必要がある.ところがフレネル反射率RFは qz–4で減衰するため,少なくとも 6桁以上の強度変化を測定することが必要になる.一般的なX線検出器の計数率はそれほど幅広くないため,低角度ではアルミニウムの薄板を検出器前に置いて強度を弱めたり,高角度では測定時間を長くとるなどの工夫をすれば,実験室のX線源でも十分測定が可能である.しかしながら,試料の時間変化を追跡する場合や,

膜の面積が小さい場合,固液,液液界面のように液体の吸収による強度ロスが気になる場合などは,放射光のような高輝度 X線を使うと良い.SPring–8BL37XUの溶液界面反射率計を用いれば,気液あるいは液液界面の測定を分オーダーの時間分解能で行うことができる 4, 5).さらに現在開発中の「波長・角度同時分散型時分割 X線反射率計」を用いれば,測定中に入射角を走査する必要が無いため,ミリ秒という飛躍的な時間分解能の向上が期待される 6).

3. タンパク質の界面吸着膜の構造解析

タンパク質は,親水部と疎水部を持つ両親媒性分子であるため,界面活性剤と同様に気液界面に吸着する性質がある.タンパク質溶液がしばしば泡立つのは,気液界面に吸着したタンパク質が変性して凝集するためである.また,お菓子作りで欠かせないメレンゲも,卵白中のタンパク質が界面変性したものである(Fig. 6).このようにタンパク質の界面吸着膜形成には,タンパク質の構造変化(変性)を伴うことが多いが,条件によっては変性しない場合もある.タンパク質が界面に吸着する際に,変性を伴うかどうかは,人工膜の設計の際にも重要になると思われる.我々は,タンパク質の気液界面吸着過程を時分割 X線反射率測定によって追跡することによって,タンパク質の界面変性メカニズムを明らかにしたので 7),ここに報告する.

Fig. 6 Meringue is a denatured egg white protein.

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68 矢野:X線反射率法を用いたタンパク質の界面吸着膜の構造解析

3.1 吸着初期

吸着初期では,タンパク質が界面に吸着して,単分子膜を形成する.このとき,タンパク質と界面の相互作用が支配的となる.気液界面の場合は疎水性相互作用,固液界面の場合は,固体基板の性質による.水溶性のタンパク質は,疎水部を内側に親水部を外側にした立体構造をとっているため,疎水性界面に吸着する場合は,変性を伴い,親水性界面に吸着する場合は,ほとんど変性しない.Fig. 7はリゾチーム溶液を pH7のリン酸緩衝溶液に注入 1分後に測定したX線反射率から求めた電子密度である 8).リゾチームがネイティブの状態で吸着したと仮定したときの場合(破線)と比較すると,薄く,かつ気相付近が高密度になるように変性していることがわかる.FT–IRの結果と比較すると 9),ネイティブではαへリックスに富んだ構造をしているリゾチームは,βシート構造に富んだ構造に変化していることがわかった.またリゾチームの濃度が低いほど,吸着速度は遅くなり,変性度合いも大きくなる.

3.2 吸着中期

Fig. 8(a)は,リゾチーム濃度が1 mg/mlの場合の電子密度分布の時間変化である.z<10 Åのプロファイルは全く変化せずに,z>10 Åの密度のみが増加している.これは,吸着初期で形成された単分子膜にタンパク質が吸着して多層膜を形成していく過程であるとみなせる.第 2層の膜の密度は,第 1層よりも小さい.FT–IRスペクトルでは,再びαへリックスまたはランダムコイル構造を示唆するバンドの強度が増加していることから 9),第 1層とは異なる構造をとっていると考えられる.すなわち吸着中期では,タンパク質間の相互作用が支配的になるため,吸着初期に比べて変性の度合いが小さい(Fig. 8(a)).

Fig. 7 Electron density profiles at an air–water interfaceobtained from X–ray reflectivity measured 1 minafter the LSZ solution injection.

3.3 界面変性を抑制するためには

疎水性界面では,水溶性タンパク質の変性が顕著になることを述べた.変性を抑えるには,界面との疎水性相互作用を抑制すれば良い.Fig. 8(b)は,(a)と同じ濃度のリゾチーム溶液を高塩濃度のリン酸緩衝溶液に注入した場合の電子密度分布の時間変化である 10).塩添加なしの場合は,吸着膜の第 1層の密度は変化しなかったにもかかわらず,高塩濃度下では,第 1層の密度が徐々に減少していき,ネイティブの密度分布に近づいていった.リゾチーム分子はpH7では正に帯電しており,塩添加無しでは反発し合うが,高塩濃度下では,アニオンを介して引力が働くようになる.よって,疎水性界面との相互作用よりもタンパク質間の相互作用が打ち勝つため,リゾチームが再びネイティブ構造にリフォールドすると考えられる(Fig. 9(b)).

4. おわりに

以上見てきたように,X線反射率法は,膜の断層構造を非破壊で高精度に知ることができる有力な手法

Fig. 8 Time–resolved electron density profiles at an air-water interface obtained from X–ray reflectivitymeasured after the LSZ injection into buffer solu-tions with (a) and without NaCl (b).

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MEMBRANE,Vol. 38 No. 2(2013) 69

Fig. 9 Schematic pictures of the LSZ films formed at theair–buffer interface without (a) and with NaCl (b).

である.固体であれ液体であれ,無機材料,有機材料問わず測定が可能だというメリットがある.最大のデメリットはある程度大きくて平坦な膜試料が必要だということと,測定に時間がかかることだが,放射光源を利用すれば解決できる.本稿では,X線反射率法を用いた研究例として,固体基板上の脂質二重膜と水溶性タンパク質の界面吸着膜について取り挙げた.後者については,吸着膜形成の際に,タンパク質の変性を抑制するためには,疎水性相互作用を抑えることが必要であることを述べた.

文  献

1) 桜井健次編 :「X線反射率法入門」,講談社サイエンティフィク (2009)

2) Horton MR, Reich C, Gast AP, Radler JO, Nickel B :Langmuir, , 6263-6269 (2007)

3) Renaud G, Lazzari R, Leroy F : Surf. Sci. Rep., , 255-380(2009)

4) Yano YF, Uruga T, Tanida H, Toyokawa H, Terada Y,Yamada H : J. Synchrotron Rad., , 511-516(2010)

5) 矢野陽子,宇留賀朋哉,谷田 肇,豊川秀訓,寺田靖子,山田廣成 : 分析化学, , 437-445 (2010)

6) Matsushita T, Arakawa E, Voegeli W, Yano YF : J.Synchrotron Rad., , 80-88 (2013)

7) Yano YF : J. Phys. Condens. Matter., , 503101 (2012)8) Yano YF, Uruga T, Tanida H, Toyokawa H, Terada Y,

Takagaki M, Yamada H: Langmuir, , 32-35 (2009)9) Lad MD, Birembaut FJ, Matthew M, Frazier RA, Green

RJ : Phys. Chem. Chem. Phys., , 2179-86 (2006)10) Yano YF, Uruga T, Tanida H, Terada Y, Yamada H : J.

Phys. Chem. Lett., , 995-999 (2011)

(Received 7 January 2013 ;Accepted 8 January 2013)

著者略歴

矢野 陽子(やの ようこ)

1990年3月 学習院大学自然科学研究科博士前期課程修了

1992年9月 学習院大学理学部助手

2001年 8月~ 2002年 8月 ハーバード大学 客員研究員

2006年2月 立命館大学 COE推進機構 助教授

2011年4月 近畿大学理工学部理学科 准教授博士(理学)