日本の未来と大都市制度のあり方について-江澤孝太朗 2012/2/13

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世界のあるべき姿、日本の未来のあるべき姿とは?  あるべき姿を実現するための一つのカギが、大都市制度の改革である。 25歳の政治を志す著書による一冊。

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「日本の未来と、大都市制度のあり方について」江澤孝太朗

2012年2月10日(金)

<目次>第一章 2050年の地球のあるべき姿 1.戦争のない平和な世界 2.誰も飢えることのない助けあいの世界 3.地球と人類の持続的な共存 4.違いを前提としたお互いの尊重

第二章 新しい日本のビジョン1. 着実な経済成長と税収の増加2. 支出の削減、行政の効率化3. 世界への貢献で世界のリーダーとなる4. 国の未来である子供への投資を惜しまない5. 新エネルギーへの投資で新エネルギー大国へ6. 病後治療から、予防医療へ7. 生活保護費の削減8. 年金の制度の抜本的変革

第三章 大都市の抱える課題とその解決策  1.大都市制度3つの課題  2.新しい大都市制度の形  3.道州制について

第四章 最後に

<本文>まず、大都市制度のあり方を論ずる前に、私が描く地球、日本のあるべき姿を示したい。日本の大都市制度のあり方は、未来の地球はどうあるべきか、日本はどうあるべきかというビジョンが明確になってはじめて論じることが出来るからである。

第一章 2050年の地球のあるべき姿未来の地球はどうあるべきだろうか。例えば、今から38年後の2050年の地球はどうあるべきか。

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私は現在25歳なので、2050年には63歳だ、既に政治家を引退しているだろう。あっという間の人生で、後世に何を残せばよいのだろうか。

私が目指したい地球像を、4つに分けて示す。1.戦争のない平和な世界 2.誰も飢えない助けあいの世界 3.地球と人類の持続的な共存 4.違いを前提としたお互いの尊重

1つ1つ、述べていくこととする。

1.戦争のない平和な世界戦争は、全てを奪う。命を失い、家を失い、経済成長の機会を失い、食糧を失い、教育を受ける権利を失う。失うものが大きい一方で、得るものも少なくないという意見もある。しかし私は、失われていくものの大きさは、戦争によるいかなる対価をもってしても贖うことは出来ないと思う。だから、この地球から全ての戦争、紛争を無くすためのあらゆる努力をしたい。

もっとも重要なことは国連軍の機能強化だろう。各国が自国のみで防衛を行おうとすれば、敵国の状況を見ながらいつ戦争が起きても負けないようにと軍事力を増強せざるを得ず、軍拡競争に陥ってしまう。この状況を止めるには、世界の警察である国連軍の力を強化し、違反を犯した国は世界中から結集した国連軍から制裁を受けることとする。

このようにすれば、どんなに隣国を侵略出来るチャンスがあったとしても、それを行った瞬間に国連軍が制裁が加えられるため行動はできなくなる。国連軍が世界に睨みをきかせている状況では、1カ国の軍事力はそれほど重要でなくなる。各国は、国連軍へ自国の軍事力を提供し、自国には自衛のための最低限の軍事力を保持しておけばよいということになる。

日本もいずれは、世界の大国としてしっかりと平和への責任を担わなくてはならない。その際には、軍隊の保持、集団的自衛権の行使、を行えるようにする必要があるだろう。しかし、国連軍に日本人が参加するのであれば、その国連軍の行動ができるかぎり正しいものとなるよう、日本の意見をしっかりと反映出来る状況を作っておくことが重要であり、そのためには、常任理事国に加わることだ。

2050年の世界は、平和な世界、戦争による悲しみのない世界であるべきだ。

2.誰も飢えない助けあいの世界

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世界には、1日1ドル25セント以下で暮らしている人が約14億人いる。人類の4人に1人は貧困ライン以下の生活をしている。もちろん、一概に通貨のみで貧困かどうかを判断することは出来ない。気候、土地に恵まれた国で、果物や魚が豊富にとれて食料に困らず、紛争もないような地域では1日1ドル25セント以下の生活だから貧困だ、という判断はできないだろう。しかし貧困を判断する一つの基準としてはやはり有効である。

アフリカの貧しい地域の子どもの、痩せて、膨らんだお腹を見て、心に痛みを感じない人はほとんどいないのではないか。 貧しい国の人たちの状況を知る努力をし、自分たちに出来ることを考え、1つでも良いから一人一人が行動を起こせるような、そんな地球市民が沢山いる世界が理想である。

我々が、日本やアメリカに生まれたことは、偶然である。努力をして勝ち取ったものではなく、偶然豊かな国に生まれたのだ。同じように貧困地域で生まれた人は偶然その場所で生まれたのだ。特に先進国の国民は、偶然豊かな国に生まれたことに感謝をし、偶然貧しい国に生まれた人の支援を義務と考えるべきだ。

最近、日本に限らず、先進国全体の雰囲気として自国内の格差の問題にばかり注目が集まりすぎているように感じる。世界を見ればもっと自分よりも貧しい人がいるのに。世界の格差は、国内の格差と比べものにならないほど開いているのに。

2050年の世界は、豊かな国がしっかりと貧しい国に手を差し伸べ、誰も飢えることのない世界であるべきだ。

3.地球と人類の持続的な共存 地球の資源には限りがある。石油、石炭、森林、レアメタル、長年かけて作られた地球の資源を、人類は使い尽くそうとしている。同時に、産業活動によって有害物質を排出することで、地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨などの問題が地球規模で起きている。これらの問題は一カ国内の問題にとどまらない。

2050年の世界は、地球規模の環境問題に対して、協力して取り組む世界であるべきだ。

4.違いを前提としたお互いの尊重テロ対策、環境対策、金融危機への対策など、世界の国々で協力して取り組まなければならない課題は多い。しかし、民族、宗教、国の体制、気候、歴史、産業構造など、全く同じバックグラウンドの国など存在しない。

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例えば、先進国が地球温暖化を止めるためにCo2の排出を削減しようというルールを作ろうとすると、途上国からすれば今までCo2を排出して経済発展を遂げてきたのは先進国なのに、なぜこれから発展しようとする自分たちまで排出量の制限を設けなければいけないんだ、と納得がいかない。

絶対に正しい価値観、絶対に正しい宗教、絶対に正しい政策、このようなものは存在しない。だから、世界の国はお互いに違いがあることを前提に、互いを尊重しあい、地球の未来のためのルール作りをしていく必要がある。

2050年の世界は、互いを尊重し合いながらも、未来地球のために国同士が協力しあう世界であるべきだ。

第二章 新しい日本のビジョン次に、日本のあるべき姿について示す。日本は、不安の時代に突入している。

右肩上がりで国が成長している時代には、がむしゃらに働いていれば、毎年収入が増え、テレビを買い、冷蔵庫を買い、自動車を買い、家を買うことが出来た。街に出ればどんどん新しい建物が立ち、沢山の子供が外を遊び回っていた。企業はロックフェラービルを買い、海外旅行者をする人の数は大幅に増え、一人一人が豊かさを実感すると同時に、日本という国自体の、世界での影響力が強くなっていくことを感じることが出来た。それは、日本人であることの誇りや、未来への希望に繋がった。

高度経済成長終焉後、日本は停滞の時代に入った。1980年~1995年の15年間での経済成長率490%に対して、1995年~2010年の経済成長率は、15年間で4%である。一人あたりの名目GDPは1997年を頂点にむしろ下がっている。国も、個人も成長を感じられない中で、国の支出は増えていく。公的国債の累積額は1000兆円に達しようとしている。毎年の予算では税収の二倍の支出をし、さらに借金を増やしている。2011年には震災があり、東北地方だけでなく、日本中が大きな打撃を受けた。原子力発電所が爆発し、放射能という見えない恐怖が日本中を覆った。このような現状を打破する道筋を示すはずの政治家は、汚職や、政局ばかりで信頼ができない。かといって、一人一人が、何か行動を起こしたからといって国が良くなる実感もなく、政治に対しては、 不満、 諦め、無関心、という感情だけが大きくなっている。世界からは、何も決められない政治を揶揄してジャパナイゼーションとバカにされる。

今、変革の時である。新しい日本のあるべきビジョンを示し、実行する時である。

夢や希望に満ちた日本にするには、どうすればよいか。

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子どもたちが一生懸命に勉強し、礼節を学び、権利と義務について考え、自主自律の精神を持ち、日本の歴史に誇りを持ち、世界への貢献意識を持ち、将来への夢を語れるようにするには、どうすればよいか。貧困、人権、環境問題といった世界の問題を解決するためのリーダーシップを日本がとっていくにはどうすればよいか。物の豊かさだけでなく、心の豊かさを増やしていくにはどうすればよいか。

私は、以下に8つの道筋を示したい。

1.着実な経済成長と税収の増加まず、着実に経済成長をし、税収を増やすことが最重要である。教育、医療、年金、介護、何をするにも、収入以上のことはできないし、少しずつでも着実に成長をしているという実感は人に安心感を与える。マラソンは長い道のりだが、一歩ずつでも進んでいくことが、次の一歩を踏み出す活力となる。高度経済成長時のように、ダッシュをする必要はない。一歩一歩、確実に成長していくことが必要だ。

2012年以降の日本の経済成長の鍵は三つある。

①国内競争の促進、産業構造の変革第一に国内競争を促進し、産業構造を変化させる。戦後何もなかった時代には土建業が成長し、物の豊かさが重視された時代に安くて優秀な労働力を活かして製造業が成長した。しかしこのような産業は、途上国でより活きる産業であり、これからの日本はIT、金融、医療や介護等のサービス業、福祉産業などが中心となって成長していくべきだ。もちろん、リニア、電気自動車、医療機器など、最先端のモノづくりテクノロジーも重要である。

成長し続ける企業というのは、社内でのカニバリゼーションを歓迎する。新しい事業に投資し、社内での競争を歓迎し、古くなった事業を潰す。結果的に、市場での競争に負ける事なく、成長を続けることが出来る。アップルは、2011年には時価総額が世界一の企業になったが、ipadの販売が伸びる事によってmacの売上が下がることを歓迎しているし、iphoneによってipodの売上が下がることも歓迎している。国が特別に重点分野を決めて投資するというよりは、献金に対する見返りや、地方への利益誘導によって、一時代前の業界を支援することをやめるべきだ。

起業を増やす施策も検討する必要があるだろう。

②道州への権限、財源移譲により地方毎の産業戦略策定、実行を可能にする第二に、現在の都道府県を道州単位へ変更し、権限と財源を国から移譲し、人口1000万人単位で経済戦略を独自に策定、実行できるようにする。

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明治政府は、西洋諸国に追いつけ追い越せで、全国一律の文明化をするために廃藩置県をし、知事を任命制とし、国からの命令によって都道府県を動かせるように体制を変更した。明治時代、また戦後の時代はこの中央集権体制が機能した。明治時代は文明化というゴール、戦後は復興、物の豊かさをゴールに、国全体で同じ方向に走ることで成長することが出来た。

しかし100年以上続いた中央集権体制は、制度疲労を起こしている。明治時代に3千万人だった人口は1億3千万人近くなり、徒歩、馬での移動が中心だった時代から電車、自動車での移動が中心になった。情報革命後を機に世界の変化の速度は加速し続け、巨大な日本という国を、世界と同じスピードでコントロールすることは、もはや一つの場所からでは出来なくなった。中央集権で全てのことを決定するには、日本は大きすぎる。

成長する企業は、事業のスピードを重視する。任せられる人にはどんどん決定権を与え、事業の分社化をして意思決定のスピードを早める。分社化をし、事業単位での収支を明確にし、権限と責任を与えることで、結果的に事業の成長は加速する。

中央集権体制から、道州制への移行をし、道州への権限と財源と責任の移譲を行う。各道州が、道州ごとのビジョンを明確にし、収支に対する責任を負うことで、東京一極集中でそれ以外は衰退している状況の日本経済を活性化することが出来る。

③経済外交の強化第三に、経済外交を強化する。日本の国土は狭く、資源は少ない。経済を成長させるためには、世界中の国と親交を深め、人、物、金を日本に呼び込むことが必要だ。エネルギー保障、資源保障、食糧保障の観点からも、外交を強化せねばならない。希少な資源は奪い合いになっている。 世界の国々が、あらゆる面で競争をしている中で、単一民族であり島国である日本は、うかうかしていると世界から置いて行かれる。貪欲に、積極的に日本を売り込んでいくべきだ。

世界の全ての国とEPAを結ぶくらいの覚悟で臨みたい。

2.支出の削減、行政の効率化経済成長と同じくらい重要なことは、支出の削減である。今、支出が膨らんでいる原因は集約すれば、・ビジョンなき巨大組織である中央官庁・地元利益重視の政治家の2点であると思う。

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中央の官庁は、全体ビジョンが無いためセクショナリズムに陥り、単年度予算を確保するために尽力する。東京から見て考えた地方の振興策など、現実を反映していないものになるので無駄が発生する。どんなにダメな役人でも解雇されず、給与は下がらず、逆に国家一種の資格さえとってしまえばある程度の出世が約束され、逆に国家一種の資格を持っていなければ、どんなに優秀でもトップにはなれない。

地方官庁は、権限と財源を国に持たれているため国に依存し、自分たちで政策を立案する能力は低く、国からの交付金に頼っているため収支の感覚がなく無駄な支出を抑えることが出来ない。

国会議員は当選するために地方への利益誘導を約束し国会議員になる。国益を主張すべきはずの国会議員が地元の利益のために行動するため、日本全体として最適な予算配分が行われない。

この無駄が発生する構造は、道州制度に移行することで解消される部分が大きい。無論、同時に公務員の身分制度改革の改革を行い、優秀な人は資格や省庁にとらわれることなく登用され、民間からの中途採用も増やす。

中央官庁は財源、権限を道州へ移譲するため人員の削減が出来る。地方官庁は権限と財源を持つことで自分の地域に本当に必要な政策を考え、収入に応じた支出を行うようになる。

国の権限を道州に移行するため、国会議員は利益誘導をする必要がなく、国益だけを考えて行動することが出来るようになる。

自分の地域に合った政策が効率的に実行されることで経済は成長し、借金が減り、希望を見いだせるようになる。

3.世界への貢献で世界のリーダーとなる日本だけが幸せになれば良いかというと、決してそんなことはない。日本人は、自分たちだけが良ければいいとは考えていない、と私は信じる。世界では未だに紛争が毎日起きているし、飢えで死んでいく人たちがいる。環境問題や、核問題、金融経済の統制など、世界中の国が考え、コンセンサスをとっていかなければならないことが沢山ある。

日本は、世界第三位の経済大国であり、 資本主義、民主主義の国であり、武士道や、相互扶助の精神など世界に誇れる精神性を持ち、歴史・文化に優れ、環境問題に国民的関心を持っている国である。

戦争や紛争が起きぬよう、世界中の人の人権が確保されるよう、飢えや貧困が無くなるよう、世界の経済システムが崩壊しないよう、環境汚染を防ぎ地球のエコシステムを守れるよう、世界のために、未来地球のために、日本はリーダーシップを発揮すべきである。

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自国の成長、安心だけを考えていては決して世界から尊敬される国とはならない。リーダーシップを発揮し、世界から尊敬される国になることは、経済的にも軍事的にも重要であると同時に、日本人としての誇りを持つことに繋がる。

4.国の未来である子供への投資を惜しまない子供は国の未来である。教育への投資は最重要事項だ。子供が投票出来ないからといって、子供への投資を怠ってはいけない。

社会は望むと望まざるとに関わらず、競争社会である。日本国内だけの競争でなく、世界中の人が競争している。企業は少しでも優秀な人を採用しようと世界中で人材を探している。また、単純労働の場合は少しでも安い賃金で採用しようと、同じように世界中で人材を探している。

今の教育システムの問題は、ダメな先生を辞めさせられないこと、学校の経営目標を達成できなくても校長が責任を取らされないこと、根本的には、教育基本法によって国の関与が制限されていることによって、学校が治外法権のような状態になっていることである。

道州制へ移行する際に、教育関連の条例も自由に各地方毎に制定出来るようにし、各道州毎にどんな子供を育てたいか、といったビジョンを明確にし、政策に反映させ、それを学校が実行する。実行が出来ない校長や先生は解雇し、優秀な先生が評価されるような制度とすることが必要だ。

教育政策も自治体ごとに競う事で、より洗練されたものになっていくだろう。

5.新エネルギーへの投資で新エネルギー大国へ2011年に発生した原発の爆発は大きな衝撃を世界に与えた。我々が学んだことは、事故が起きた場合の対処が出来ない技術を使用することがいかに危険であるかということだ。絶対安全な技術というものは存在しない。宇宙船も、火力発電所も、家電のような身近なものでも、扱い方を間違えれば死に至る。しかし、原発事故が起きてしまった時の影響は、一国が扱いきれる規模のものではなかった。

今回の原発事故を受けて、日本の今後のエネルギー政策を再検討する必要がある。まず、事故の対処が出来ない原発は、現状では推進すべきではない。少しずつ、縮小の方向に向かうべきだ。そして、日本国の国策として、新エネルギーの開発に投資をする。太陽光、バイオ発電、蓄電池、自家発電など、原発事故を起こした日本だからこそ、安全で、環境に優しいエネルギーの開発に資本を投下し、世界のクリーンエネルギーの最先端を走るべきだ。

6.病後治療から、予防医療へ

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2025年には生産年齢人口の2人に1人で高齢者を支えなければいけない人口構成になる。年金、福祉、医療等を合わせた社会保障費は23年度実績で28兆円の支出となっている。これは、仮に税収内で全ての支出を賄おうとした場合、収入の68%を占める金額となる。しかもこの割合は、何もしなければさらに増え続ける。

こどもへの投資、新技術への投資、借金の返済も行うことを考えると、何らかの方法で社会保障費を削減しなければならない。

社会保障費を削減するための方策の第一は、医療費の削減である。24年度予算では医療費だけで8兆4千億円が計上されている。厚労省が出している22年度の一人あたりの医療費を見てみると年間平均で28万円、受診延べ日数は26日となっている。

医療費を減らすにはどうすればよいか。一番のカギは、病後治療から予防医療への転換である。病気にならなければ、病院に通う必要が無くなる。病院に通う必要がなくなれば、医療費は削減出来る。その方法としては、予防医療に関しては現在と変わらない低負担で医療を受けることが出来るように、病後治療に関しては負担率を上げる、という案が考えられる。

また、病後治療に関しても、風邪などの軽い病気であまり病院に行かないように、受診内容によって負担割合を変えることも検討する必要がある。さらには、薬の過剰支給もなくなるようにしなければいけない。私自身、時々病院に行き薬をもらうが、未だかつて一度も薬を飲みきったことがない。ほとんど薬を飲み切る前に治ってしまうのだ。

7.生活保護費の削減まず生活保護に関しては、支給条件が甘すぎるのではないか。大阪市の現状を見ると、23年度一般会計の17%となる2916億円が生活保護として支給されている。262万人の市民のうち、本当に13万人も働くことができないのか。生活保護は言うまでもなく最後のセーフティネットである。

原則は、働かざるもの食うべからずである。税収が多く、十分に養えますよ、という状況であれば問題視する必要はなかったかもしれないが、今の日本の財政状況では、少しでも働ける人は働いてもらい、自分で収入を得てもらわねばならない。コンビニで20日間働けば、12~13万円にはなるだろう。安い家賃の家に住めば、十分に生活可能だ。

人間も、動物も、生きるためには働くというのは自然の摂理である。生活保護の支給条件を厳しくする等の措置は必要だろう。

8.年金の制度の抜本的変革年金に関しては、まず制度の不具合が多すぎる。国民年金と厚生年金の不公平も大きく、世代間の格差も大きい。年金への不信感から、国民年金の未納率は50%を超えている。生活保護費の方が

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年金よりも場合によっては多くもらえる。私は昨年末で会社を辞めたため今年から国民年金に移行するが、正直、なぜ国に自分の老後のための資金運用を任せるのか、納得が出来ない。自分の積立分を国にとられずに自身で運用した方がよっぽど効率的に思える。年金の支払いは、今の高齢者を支えるためだと割りきって支払うつもりだ。

このような制度疲労を起こしている年金は、一度根本から制度を作りなおす必要がある。基本的には、以下のようなことを考えている。・年金をもらう必要のない高齢者には、支給しない・支給条件が少し緩い生活保護、のような位置づけとする・保険の役割は民間でまかなえるので年金制度から保険の概念を抜く・国民年金、厚生年金等の区分を統一し、間接税と直接税で年金分は全額徴収する

当然、過去に支払った分の年金はどうなるのか、という議論はあるがそのあたりは過去の支払い分を分割で返していくなどして解消すれば良いし、知恵を絞れば解決できると考えている。

8つの分けて日本のあるべき姿について述べたような内容をスピーディーに、且つそれぞれの地域の実情にあった形で実行するには、地域主権型の道州制への移行がカギとなってくるだろう。そして、道州制の前に通らねばならない関門が、大都市制度の改革である。

次の章では、改めて大都市制度改革とは何か、 なぜ道州制が必要なのか、 大都市制度改革と道州制はどのようにつながるのか、について述べていく。

第三章 大都市の抱える課題と、その解決策

大阪市、名古屋市、横浜市といった政令指定都市になっているような大都市は、日本経済の成長エンジンである。

ヒト、モノ、カネが集まる大都市の成長を加速させ、日本の経済成長を引っ張っていけるようにする必要がある。

しかし、大都市は三つの大きな課題を抱えている。

1.大都市制度3つの課題①二重行政・二元行政一つ目は都道府県との二重行政・二元行政の問題だ。

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政令指定都市になると、都道府県に近い権限を与えられるのだが、一部の権限(水道事業など)は都道府県に残っているため、行政範囲が重複する事態が起こる。

また、政令指定都市は都道府県内にあるにも関わらず、大きな権限を有しているため、産業政策、インフラ整備等も行うことが出来る。

その結果、大都市は大都市での戦略を策定し、都道府県は都道府県の戦略を策定し、同じ都道府県にであるにも関わらず互いの政策に協調性がなく、全体としての最適な成長が阻害される、という自体も起こっている。

これが二元行政の問題である。

②基礎自治行政を行うには大きすぎる規模二つ目は、現在の大都市の規模が、基礎自治行政を担うには大きすぎるという問題だ。

保育、教育、福祉、環境といった分野は地域ごとにニーズが異なるため、しっかりと住民の声を聞いてサービスを提供していくべきだ。しかし、大都市は住民サービスを行うには規模が大きすぎる。

一番小さい政令指定都市でも70万人程度の規模になり、一人の市長、一つの行政組織が丁寧にサービスを提供することの出来る規模ではない。もちろん、政令指定都市には行政区が存在するが、区長は公選ではないく議会も無い。必然、権限は少なく、住民ニーズに素早く、柔軟に対応出来る体制ではない。

③都市間競争に勝つには小さすぎる規模三つ目は、政令指定都市のが都市間競争に勝つためには規模が小さすぎるという問題だ。リニアや、LLCによって、世界の都市間の距離(移動時間・移動コスト)は、ますます縮まってきており、否応なしに世界の都市間で産業政策を競い合う時代に入っている。

このような時代において、政令指定都市の規模というのは小さすぎるのではないか。ソウルは970万人、上海は2,300万人、台湾2300万人、シンガポール500万人に対して、政令指定都市は人口が最も多い横浜でも370万人、最も少ない岡山市は71万人である。

世界の都市との競争に勝つためには、同程度の人口の地域でまとまり、産業政策、インフラ整備を行う必要があるのではないか。

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2.新しい大都市制度の形一つ目の二重行政・二元行政の問題、二つ目の基礎自治行政の問題を解決するためには、国が決めた一律の政令指定都市制度、都区制度のみでなく、それぞれの地方が自ら都市の制度を設計できるようにすることが必要である。

例えば大阪であれば、大阪府と大阪市を解体し、一つの大阪都とする。同時に、大阪市を8、9つの特別自治区に分割して区長を公選で選出し、区議会を設けて基礎自治行政を担当する。

大阪都は産業政策、インフラ整備などの広域行政を担当して、主にお金を稼ぐための施策を実行していき、特別自治区は住民からの要望を吸い上げて、福祉、保育、教育等を担当して、地域に合った住民サービスを提供していく。

大阪市はこのような形態が望ましいと考えられるが、都市に合った行政の形が存在するはずであり、それぞれの地方が自ら都市の制度を設計できるようにすることが必要である。

3.道州制について三つ目の、産業政策を実施する都市の規模に関しては、やはり世界のライバル都市に勝てるような体制づくりが必要だ。

それには、現在の都道府県という単位よりも大きい単位、アジアの大都市や、ヨーロッパの小国と同じ程度の規模で産業政策、インフラ整備を行い、ヒト、モノ、カネを呼び込みたい。

しかしその道州制を実現するためにも、まず、大都市の制度を現在の政令指定都市という一律の制度から、大都市の形をより柔軟に、地域ごとに変えられるような制度を作る。

それと同時に、国と都道府県で道州制実現のための議論を重ね、国と道州の関係、道州と都道府県の関係、道州の分け方、実現方法、等をしっかりと決めていく必要があるだろう。

第四章 最後に

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現在の私のビジョン、考えを述べました。今後さらに様々な方と議論をしながら、実現すべきことを明確にしていきたいと思います。一緒に、未来を創っていきましょう。

お読みいただいた全ての方に、感謝申し上げます。

2012年2月10日

著者江澤孝太朗(kotaro ezawa)1986年3月生まれ 25歳 A型現在の職業:フリーのWEBディレクター

twitter,facebook: kotaroezawablog: 『いつも心にsmileを。』http://ameblo.jp/passion100/

mail: [email protected]

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