全体まとめ - graspp · 2014-12-17 ·...

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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】 全体まとめ *次々ページ以降に、16 本の各ガイドラインのまとめページ部分を、集めて掲載した。 8

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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

全体まとめ

*次々ページ以降に、16 本の各ガイドラインのまとめページ部分を、集めて掲載した。

8

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

1.全体まとめ □1 RH-PAC ガイドラインの作成体制と成果物

RH-PAC(地域医療計画実践コミュニティー)の「地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン」

は、図表 1 のような体制で行った。東京大学公共政策大学院医療政策教育・研究ユニットが運営する人

材育成講座「医療政策実践コミュニティー(H-PAC)」では、「医療を動かす」をミッションに掲げ、患

者・住民、政策立案者、医療提供者、メディアの 4 つの立場からリーダーシップを発揮する社会人が

集い、政策提言や事業計画作成を行ってきた。RH-PAC は、H-PAC(現在 4 期 4 年目)参加者、その

前身である東京大学医療政策人材養成講座(HSP。5 期 5 年間)参加者、都道府県医療計画担当者など、

地域医療計画に関心が高い約 100 人からなる有志の会である。

2014 年 4 月に開始した勉強会では、一線の専門家からの講義や議論を通じメンバー間で知見や認識

を共有した。6 月から機能・疾病・事業別など計 13 分科会を設定し、メンバーは関心に応じて参画し

た。各分科会では、47 都道府県の現行地域医療計画を通読し課題抽出を行い、意見集約を経ながらガ

イドラインを策定した。居住地が広く分布するため、分科会メーリングリストを活用し、意見交換・集

約・情報共有等を行った。都道府県から課題、ニーズ、好事例を把握する目的で、2014 年 9 月に地域

医療計画策定担当者へのアンケート調査を行った(40 県が回答)。得られた知見をガイドライン策定時

に活用した。

図表 1 RH-PACのガイドラインの構成と検討体制

9

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

2.まとめ(医療計画策定基本ガイドライン) □1 医療計画制度の大改正にどのように対応するか

・地域医療計画の考え方、策定プロセス等が大きく変わる。(1)病床機能報告制度、(2)地域医療ビジ

ョンの法定化、(3)協議の場の設定、(4)新たな財政支援制度としての基金の創設、(5)都道府県知

事の権限の強化―等、計画実現の手段が制度化された。 ・地域包括ケアシステムにおける医療のあり方を念頭に置いて、介護計画との連携が重要となった。 ・地域医療ビジョン、地域医療計画は、患者・住民、保険者、市町村職員など、多様なステークホルダ

ー(関係者)が参画して策定される。これらのステークホルダーがどのように対応すべきかを分かり

やすく示すことを目的としてこのガイドラインを策定した。 □2 プロセスとステップ

・医療計画の策定プロセスを 10 ステップに (1)策定体制の整備、(2)基本方針の作成、(3)既存施策の評価、(4)データの収集と分析、(5)住民の意見の聴取、(6)医療提供者の意見の聴取、(7)施策の作成、(8)評価指標の作成、(9)審議

会等での検討、(10)計画のとりまとめ ・関係者、関係団体からの意見聴取をアリバイ作りに終わらせてはいけない。意見をどのように反映さ

せるか意見が分かれたときは、患者・住民の立場、医療提供体制の効率化、医療の質の向上等につな

がるか総合的に判断する。 □3 含まれているべき内容

・あるべき医療提供体制の姿 (1)病床の機能分化と連携の推進、患者の状態に応じた質が高く効率的な医療提供の構築、(2)地

域包括ケアシステムを支える病床の整備や在宅医療の充実、(3)地域の中で医療と介護が一体的に提

供される体制の構築、(4)病床の機能に応じた医療人材の確保、(5)患者・住民が医療に関する選択

を適切に行うことができるよう、医療に関する情報提供の仕組み―等である。 ・「協議の場」の運営方針 ・あるべき医療提供体制の姿をどのように実現するか 今回の制度改正で示された政策手段を活用して、実現の具体策を医療計画に盛り込む。 ・データによる制御 地域医療ビジョン、地域医療計画作成に必要なデータの入手活用方法について記載する。 ・病床機能報告制度で報告される情報の公表のあり方 ・地域医療計画と予防活動 ・医療機関名公表にあたっての基準の明確化

10

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

3.まとめ(医療計画策定プロセスガイドライン) □1 趣旨

・地域医療計画の行政担当者は策定に負担と不安を感じている。審議会・分科会・圏域連携会議委員な

ど策定に関わる人は、策定プロセスと自分の役割が十分に理解できていない懸念がある。地域医療計

画の質を高めるには、標準的プロセスを共有し、策定を支援する仕組みをセットで整備する必要があ

ると考えられる。こうした支援のもと、策定プロセスの「年間スケジュール化」「定例化(ルーチン

化)」を進めることにより、過大な負担なく、医療計画の質を高める実質的な議論を行い、PDCA(計

画、実行、評価、改善)サイクルの向上を図ることができると考えられる。 ・地域医療計画策定にあたり、10 のステップを想定し、合計 13 の施策を推奨する。10 のステップはお

およそ順番に進められるが、並行して進められる部分もある。また、プロセスを円滑に進めるための

16 個のツールを添えた。これらにより、「やるべきことが、できる」「やりたいことが、できる」環境

を整えることが重要である。 □2 推奨施策(各施策の内容は本文を参照)

○ステップ 1 策定の体制の整備 ・施策 1 「地域医療計画策定人材養成講座」の運営と受講 ・施策 2 「地域医療計画策定支援サービス」の提供 ・施策 3 「地域医療計画サミット」の開催

○ステップ 2 基本方針の策定 ・施策 4 「地域医療計画策定基本方針・要項」の作成

○ステップ 3 既存施策の評価 ・施策 5 「施策・指標マップ」に基づいた施策効果に関する評価の実施

○ステップ 4 データの収集と分析 ・施策 6 「地域医療計画情報・指標サービス」の提供

○ステップ 5 住民等の意見の聴取 ・施策 7 審議会等への患者・住民参画の必須化 ・施策 8 「地域医療計画タウンミーティング」の開催

○ステップ 6 医療提供者の意見の聴取 ・施策 9 「医療提供団体中期計画」の策定

○ステップ 7 施策の作成 ・施策 10 「施策作成ツールキット」の使用

○ステップ 8 評価指標の作成 ・施策 6(再掲) 「地域医療計画情報・指標サービス」の提供

○ステップ 9 審議会等での検討 ・施策 11 「審議会等委員ミッションステートメント」の作成

○ステップ 10 計画のとりまとめ ・施策 12 「地域医療計画課(とりまとめ責任者)」の設置

◎ステップ 1~10 の全体 施策 13 「地域医療計画情報支援センター」の設置 11

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

4.まとめ(医療計画策定参画者研修ガイドライン)

地域医療計画の策定体制や研修の現状、都道府県のニーズなどを把握し、RH-PAC参加者で検討を行

った上で、以下のガイドラインを提案する。

□1 研修の対象、実施方法

○研修の対象者は、すべてのステークホルダー(関係者)、すなわち都道府県職員(行政職、専門職)、

患者・住民、医療現場・提供者、有識者、その他(議員、保険者、市町村職員、社会福祉協議会、消

防関係者など)とする。 ○二段構えの研修体系とする。 1) 個別専門研修のイメージ ○都道府県職員の政策知識・計画策定スキル向上に特化する。 ・都道府県職員対象の既存研修を拡充する形で中央集約型で実施し、定期的・継続的に開催。 ・受講者が職場に戻り、知見を伝達する仕組みを設ける。 ○都道府県で医療政策の中核的な人材を育成することも検討。 2) 共通研修のイメージ ○「協働」を体験し、互いを知る場とする ・地域のマルチステークホルダー(多様な立場の関係者)がともに政策立案・合意形成していくスキル

を習得する。 ・座学にとどまらずグループワーク等の実践的内容を含める。 ・各ステークホルダーからの好事例を共有する。 ・ステークホルダー間で人的つながりを得られる場とする。 ○都道府県内の既存の仕組みを活用し、地域分散型で実施する。 ・地域内の多様なステークホルダーが集まりやすい場で行う。 ・地元大学、地元医療機関、地域コミュニティ(自主勉強会)、NPO などが研修の場として想定される。 ・全国共通の内容と、地域特性を反映した内容の双方を学ぶ。 ・多忙な参加者向けに、座学部分は対面講義と e ラーニングを併用するなど、柔軟に対応する □2 カリキュラム

○政策知識、計画策定スキル、マネジメントスキル、リーダーシップの 4 要素の研修とする。 ○各学習テーマの基本的内容を、すべてのステークホルダーで共有することを目標とする。 ○研修受講者から知見を波及させる仕組みを作る。 ・初期の研修で育成された人材を中心にマルチステークホルダーのチームを形成し、地域・職場・自主

勉強会等で同等の研修を実施できるようにする。 ・受講内容が計画策定に役立ったかどうかを定期的に検証する。 ・受講者からのフィードバックを反映させて研修体系やカリキュラムを更新する ○「座長の育成」も念頭においた研修とする。

12

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

5.まとめ(機能分化と連携)

□1 これからの地域医療計画と機能分化と連携

・これからの地域医療計画は、需給ギャップを可視化し、医療機関の機能転換や統合再編を推進するこ

とで、分散・過剰・偏在を改善し、医療提供体制の効率化を図る。 ・診療内容の標準化等を通じて医療連携を推進することで、高度急性期、急性期、回復期、慢性期から

在宅に至るまで、質の高い連続的なケアを提供する。 ・各ステークホルダー(医療提供側・医療の受け手側、都道府県や市町村の職員)が参画し、合意形成

を図る。 □2 基本認識

・病院完結型から地域完結型の医療に向けて、医療提供体制の構造的な改革は不可欠である。 ・こうした改革は、医療提供側と患者・住民が一体となって実現される。 ・地域医療ビジョンや地域医療計画の策定プロセス自体も、機能分化と連携の上で重要である。 ・地域包括ケアを実現し、在宅医療を確立するためには、都道府県と市町村の関係者が 2 次医療圏等の

場で「顔の見える関係」をつくる必要がある。 □3 医療資源配分適正化の必要性と方策

・医療資源の偏在に対し、配分適正化が必要である。そのための方策を以下に示す。 ・地域における必要医療資源を試算して需給ギャップを可視化する方法を提示する。(医療・介護長期

推計の機能別病床数を将来推計人口で案分して現状の病床数と比較) ・人口や中核病院の状況、患者の流出入を踏まえた 2 次医療圏の再編案を提示する。 ・病院の機能について、病院のパフォーマンスを評価し住民に公開することを提案する。 ・2 次医療圏の課題と今後めざすべき方向性を類型化して提示する。 □4 都道府県アンケート結果

・2 次医療圏を類型化し、類型ごとに連携モデルを提示することが望ましい。 ・医療と介護の「顔の見える関係」づくりのための情報共有を図ることが課題である。 □5 機能分化と連携の具体的な実現手法

・患者・住民は「かかりつけ」医、訪問看護師など、身近に「かかりつけ」を持ち、「連携」を支える。

・病病連携、病診連携を図るため、都道府県職員や患者・住民、医療提供者への研修の実施、連携の核

となる人材育成、ナショナルデータベース(NDB)・人口動態などのデータ公表を提案する。

・地域包括ケアの確立と医療・介護の連携のため、地域ケア会議や住民等が参画する協議会の設置、医

療機関や訪問看護ステーションなどのネットワークの連結、高齢者に対するケアを管理・調整する看

護職等の育成を行う。

・地域医療ビジョンを実現する協議の場や都道府県の基金の配分を決める協議の場に、患者・住民など

多様な関係者を参加させる。

・患者に適切なサービスが効率的に提供されることを基本理念として、非営利ホールディングカンパニ

ー型法人の活用が図られるべきである。

13

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

6.まとめ(PDCA サイクルと指標)

□1 概要

・地域医療計画の進捗管理においては、目標と評価尺度と指標を設定することによって、PDCA(計画、

実行、評価、改善)サイクルを確立することとなっている。しかし、その方法に関しては関係者に十

分な理解がなされていない。また、地域医療計画策定担当者など関係者の間に「難解、困難」という

意識が強い。PDCA と指標に関しては、一定の学習を行わなければ、その意味や手法を理解するのは

難しい。しかし、一定の学習を経れば、多様な関係者の間で共通認識が可能となる。現状の課題を抽

出した上で、解決策として次の 5 つを推奨する。この実行によって、「個別の施策の実施が、患者・

現場・地域に意味のある成果の効果的な創出につながること」を目指す。まず、「施策・指標マップ」

(図表 1)を共通ツールとすることが有効であり、本ガイドラインの 5 疾病・5 事業・在宅医療の各

ガイドライン部分でも、これを使用した。 □2 推奨施策

推奨施策 1 「施策・指標マップ」に基づいた施策効果に関する評価の実施 推奨施策 2 PDCA サイクルと指標に関する研修の実施 推奨施策 3 「PDCA サイクル向上ツールキット」の提供 推奨施策 4 「地域医療計画評価指標データサービス」の提供 推奨施策 5 指標の開発、集計、表示に関する国と都道府県等の財源の確保 *推奨施策 2、3、4 は、推奨施策「地域医療計画情報支援センター」(「医療計画策定プロセスガイドラ

イン」参照)の設置によってカバーされる。 □3 各分野の施策・指標マップ(ひながた)

・本章後半に、5 疾病・5 事業・在宅医療に関する施策・指標マップを掲載した(施策や指標の内容に

ついては、各章を参照)。使い方のコツについては、「7.施策・指標マップ使用のポイント」の「マッ

プ活用 10 のポイント」を参照。 図表 1 各疾病・事業分科会が使用した施策・指標マップ

番号 C個別施策 指標 番号 B中間アウトカム 指標 番号 A分野アウトカム 指標

1

2 1

3 1

4

5 2

6 2

7

8 3

9

14

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

7.まとめ(がん) □1 がんの現状と課題 ・日本の死因 1 位であり、年間 36 万人が死亡、80 万人が罹患するがんに対し、がん対策基本法とがん

対策推進基本計画に基づき、地域特性を踏まえた対策が進められている。 ・がん医療提供体制、およびがん死亡率やがん検診受診率などの指標が示す格差は地域ごとに大きく、

対策を効果的に実践プロセスに導くことが、喫緊の課題といえる。 □2 計画・予算など対策の現状と課題 ・2 期目となるがん対策推進基本計画においては、がん対策推進協議会が設置され、患者・家族・住民

の視点に立ったがん対策の策定に向けた議論がなされている。 ・都道府県はがん対策推進計画を策定し、医療体制について都道府県がん診療連携拠点病院を中心に、

県全体あるいは医療圏ごとの役割分担や連携の議論がなされている。 ・都道府県のがん対策推進条例などにより予算は拡充傾向にあるが、予算の定義や領域が異なること、

国の補助事業の実施体制の整備、拠点病院機能強化事業との連携が課題。 □3 これまでの好事例 ・実態把握、目標設定およびプロセスのそれぞれについて明示されている取り組みに着目した。 ・千葉県:がんの循環型地域医療連携システム ・広島県:がん対策日本一に向けたネットワークの活用 ・大阪府:計画検証のサイクルによる着実ながん対策の推進 ・長崎県:がん患者・家族アンケート調査 □4 都道府県アンケート結果 ・がん領域の分野は予防・検診、医療、相談支援・情報提供と多岐にわたり、教育、就労、リハビリな

ど範囲が拡大しており、関係者の調整や各種施策との連携が難しい。 ・実施・評価プロセスで、指標を設定し調査・収集分析・解釈できる専門家が少ない。 □5 あるべき姿と推奨施策 ○分野アウトカム ・基本計画の全体目標(がん死亡の減、療養生活の質向上、安心して暮らせる社会の構築)に沿って領

域ごとのアウトカムを設定した。 ○中間アウトカム ・がん予防知識の普及、科学的根拠に基づくがん検診の実施、質の高いがん医療が提供されている ・緩和ケア・相談支援と情報提供体制の構築、がん患者の就労支援体制が充実している ○推奨施策 (1)がん予防に関する正しい知識の普及と実践 (2)がん検診の理解の促進および有効な検診の実施と精度管理 (3)がん診療連携拠点病院などがん医療体制の整備と人材育成、チーム医療の推進 (4)緩和ケアの推進およびがんになっても安心して暮らせる社会に向けた教育啓発 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

15

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 2-1 がん分野の施策と指標のマップ

【①がんの予防】

がんの予防知識の普及(住民の行動変容に向けた啓発)

がん予防習慣の実践や、予防策の実施状況

1

がん予防の普及によりがんの罹患率が減少する

指標 がん罹患率

指標

1

7

感染を原因とするがんに対する予防対策

指標

がんの原因となる感染への予防や治療を行う人の割合

指標

定期的な運動を実施していると回答する住民の割合

指標

未成年の喫煙率、未成年喫煙防止に向けた取り組み状況

4

がんを防ぐ食事習慣の普及

指標

がん予防に関わる食生活習慣に関する知識の普及・実践状況

2

がんを予防する習慣付けや必要な対策を実践している

6

感染を原因とするがんの知識の普及

指標

感染を原因とするがんに関する知識をもつ住民の割合

3未成年の喫煙防止対策

指標

がん予防プログラムの策定状況

5

がんを防ぐ運動習慣の普及と実践

1

がん予防に関する正しい知識の普及に向けた施策

指標

がん予防に関する教材の整備や講習の実施状況

2

たばこ対策、受動喫煙対策、喫煙がもたらす健康影響に関する知識の普及指標

喫煙率、受動喫煙防止に向けた取り組みの整備状況

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

16

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 2-2 がん分野の施策と指標のマップ

【②がんの早期発見】

指標

検診ガイドラインの策定状況・遵守状況のモニタリング

事業評価を行う協議会の実施状況

7

科学的根拠に基づくがん検診の実践と普及

精度管理された検診の実施率、普及率

6

都道府県内のがん検診事業の評価、PDCAサイクル実施に向けた施策

指標

がん検診による死亡率減少効果

指標

検診受診率(市区町村と職場での受診率)

2

がん検診の実施体制が整備される

5

検診事業の把握と改善に向けた施策

指標

要精検率・精検受診率・発見率、陽性反応的中度など

指標

指標

がん検診が正しく実施され、がん死亡が減少する

指標

クーポン、コールリコールによる個別勧奨による受診状況

4

がん検診の精度管理・事業評価の施策

3

検診受診に向けた個別勧奨

1

がん検診の必要性、意義が正しく理解される

2

がん検診受診率向上に向けた啓発や理解を深める施策指標

資材の作成やイベントなどの実施状況

1

がん検診に関する正しい知識の普及に向けた施策

指標

がん検診に関する教材の整備や講習の実施状況

1

指標

がん検診受診率理解の促進を測る住民調査

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

17

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 2-3 がん分野の施策と指標のマップ 【③がん医療】

7

心のケア、医科歯科連携、緩和ケア、小児、在宅などのチーム医療の推進

指標

チーム医療の活動実績

6

インフォームドコンセント、セカンドオピニオンなどの推進

指標

インフォームドコンセントの実施状況、患者満足度

専門医、専門看護師、認定薬剤師などの配置実績

専門職種の人材育成と教育研修の推進

3

指標

臨床試験・治験・先進医療の実施状況

指標

臨床試験・治験・先進医療の推進

指標

がん診療を担う専門職種が養成されチームでの診療を実践している

専門職種の養成数、従事する数、チームの活動実績

標準治療の実施率、診療ガイドラインの実施率など

標準治療が普及し安全に実施される

指標

がんの生存率、合併症発生率など

9

在宅医療および連携の推進

指標

紹介/逆紹介率、在宅移行率、地域連携パス導入率

8

指標

4

科学的根拠に基づく標準治療の実施の推進

指標

標準治療の実施割合、治療実績

25

キャンサーボードやチームによる多職種での診療方針検討の推進指標

キャンサーボードの開催・活動状況、多職種連携実績

がんの治療成績が向上する

2

クリティカルパス、レジメン管理などの普及に向けた施策指標

医療機関でのパス、レジメンの実施率

1

放射線療法および化学療法、手術療法の推進

指標

各種指導管理料、加算の取得割合

1

3

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

1

安心で安全な質の高い医療が提供できる

指標 生存率、患者満足度調査

18

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 2-4 がん分野の施策と指標のマップ 【④緩和ケア】

地域における緩和ケアの提供体制や連携が充実する

在宅看取り率グリーフケアの充実 指

指標 グリーフケアに関する満足度

8

指標

在宅緩和ケアへの移行、緩和ケアの連携(紹介率など)

7

地域の緩和ケアに関する情報提供と相談支援の充実

6

緩和ケア実施施設における緩和ケアの充実

指標

緩和ケア病棟・外来、緩和ケアチームの設置・活動状況

指標

3

指標

緩和ケアに関する情報の整備状況、活用状況

1

がんと診断された時期からすべてのがん患者が緩和ケアを受けられる2

がんと診断された時期から緩和ケアを受けられる体制が構築される

緩和ケアチーム、緩和ケア提供体制調査

在宅医療、在宅緩和ケアの推進

指標 緩和ケアに関する満足度

緩和ケアの専門技能を取得した各職種の人数、体制

4

治療の初期段階からの緩和ケアを提供する緩和ケアチーム設置の推進指標

緩和ケアチームの設置状況、活動状況調査

5

緩和ケアに関する正しい知識が普及する

2

住民・社会に向けた緩和ケアに関する正しい理解の促進指標

緩和ケア、医療用麻薬、看取りに関する理解

1

がん診療に携わるすべての医療従事者が緩和ケアの知識と技能の習得指標

研修受講修了者数、除痛率、医療用麻薬消費量など

1

3

緩和ケアを専門とする職種の育成と人材確保の取り組み

指標

緩和ケアの認知度、患者調査、住民意識調査

指標

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

19

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 2-5 がん分野の施策と指標のマップ 【⑤相談支援と情報提供】

9

家族・支援者向けの相談支援・情報提供の整備

指標

家族・支援者向け情報の整備や相談窓口の設置状況

いつでも、どこでも、誰でも信頼できる情報や相談窓口を利用できる

情報の整備状況、相談窓口の設置・活用状況

希少がん、高度医療など広域連携が必要な相談支援体制の整備

指標

指標

広域ブロックでの連携の場の活動状況

8

指標

地域の療養情報整備と活用・更新状況

7

都道府県内の相談支援体制の充実に向けた施策

6

患者会・支援団体など地域の資源の活用

指標

地域の相談支援窓口の把握と活用度

指標

3

指標

相談支援・情報提供部会などの活動状況、連携実績

1

住み慣れた地域で安心して苦痛や不安のない医療を受けられる2

地域における相談支援・情報提供体制が整備される

相談支援センターの活用度、情報の整備状況

地域における医療・療養に関する情報の整備と活用

指標

患者の満足度、住民の信頼度

心のケアを担当する専門職種の配置状況

4

がん相談支援センターの活用と認知の促進

指標

がん相談支援センターの認知度、活用度

5

療養生活を支える医療提供体制が整備される

2

診断された時期からの苦痛や不安を軽減させる相談対応や情報提供の施策指標

がん相談支援センターの整備状況、情報の充足状況

1

医療関係者の連携強化に向けた施策(チーム医療・連携推進)指標

【がん医療とチーム医療の推進】シート参照

1

3

心のケアを提供できる体制の整備

指標

医療提供体制や連携に関する指標

指標

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

20

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 2-6 がん分野の施策と指標のマップ 【⑥がんになっても安心して暮らせる社会の構築】

いつでも、どこでも、がん患者・家族を支える仕組みが構築される

患者・家族の安心感8

地域における支援の格差を解消する取り組み

指標

指標

地域のがん患者支援に関する充足感

指標

助成や支援策の整備と対応機関の活用状況

7

地域の実情に合わせた医療と介護福祉などの連携

6

家族・支援者の就業継続や経済的な支援策の充実

指標

支援者向けの就労を含めた相談窓口整備状況

指標

3

指標

医療・介護福祉関係者の連携状況

1

がんになっても安心して社会の一員としての尊厳を保つことができる2

がん患者・家族の経済的な困窮への対応がなされる

経済的な困難に関する指標(患者・家族実態調査など)

経済的な理由で治療継続を断念する人を減らすための支援の取り組み

指標 患者の安心度、信頼感など

がん患者・家族が社会生活を維持できていると感じる割合

4

就労を希望する患者が、働き続けられるための各種支援策の充実指標

就労相談窓口の設置状況がん患者の復職、就労率

5

がんになっても孤立しない成熟した社会が実現する

2

日常生活面での困りごとを相談できる場の充足

指標

生活者としての満足度、地域の相談窓口の設置状況

1がん教育・啓発の推進

指標

がん教育の実施状況、導入プログラムの普及

1

3

がん患者・家族が社会生活を維持することに寄与する取り組み

指標

がんに関する理解と共感、教育の実施状況

指標

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

21

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

8.まとめ(脳卒中)

□1 脳卒中医療の現状と課題

・要介護状態の原因として 1 位、死因の原因として 4 位である。

・脳卒中危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙等)の管理が予防のために重要。 ・発症後は急性期治療とリハビリテーションが適切に行われる必要があり、そのために急性期、回復期、

維持期の円滑な医療連携が重要。 □2 計画・予算など対策の現状と課題

・脳卒中の急性期、回復期から維持期に至るまでの各病期において求められる医療機能を医療計画に記

載し、ストラクチャー、プロセス、アウトカム指標による評価が推奨されている。 ・ストラクチャー、プロセス、アウトカム指標を適切に設定することに困難を抱えている。 □3 これまでの好事例(候補)

・滋賀県:医療圏ごとに医療提供体制について、詳細な評価がなされている。 ・長野県:ストラクチャー、プロセス、アウトカム指標により詳細に評価されている。 ・熊本県:地域連携クリティカルパス(専門病院と一般医療機関等が連携して用いる診療計画)が適切

に機能している。 ・千葉県船橋市:行政、医療機関、介護保険サービス事業所との連携が良好である。 □4 都道府県アンケート結果

・医療資源の地域偏在、医療機関等との連携の困難さ、データ分析を行う県職員の不足、実務的な協議

の場の不足などが医療計画策定にあたり、課題となっている。 □5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム ・脳卒中による年齢調整死亡率が低下している ・脳卒中に罹患した者の生活の質(QOL)が向上している ○中間アウトカム ・脳卒中危険因子が改善している ・脳卒中の急性期医療が充実している ・脳卒中のリハビリテーションが充実している ・医療機関等の円滑な連携が推進している ○推奨施策 (1)脳卒中の予防のための普及啓発、(2)特定健診受診率の向上および保健指導の推進のための取り

組み、(3)救急搬送体制の充実、(4)適切な急性期医療が提供可能な医療機関の適正配置、(5)回復期

リハビリテーション病棟の適正配置、(6)回復期リハビリテーションの質の向上、(7)維持期リハビリ

テーションが提供可能な医療機関の適正配置、(8)地域連携パスの利用促進、(9)医療機関と介護保険

サービスを提供する事業所との連携促進 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

22

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 3 脳卒中医療分野の施策と指標のマップ

8

9

医療機関と介護保険サービスを提供する事業所との連携促進指標 連携に係る会議等の実施度

地域連携クリティカルパスの利用率

指標

地域連携クリティカルパスの利用促進

6

維持期リハビリテーションの提供可能な医療機関の適正配置指標

維持期リハビリテーションの提供医療機関数

3

7

回復期リハビリテーションの質の向上

指標

回復期リハビリテーション入院基本料1,2,3の算定割合

4

1

脳卒中危険因子が改善している

指標 脳卒中危険因子の保有者数

脳卒中のリハビリテーションが充実している

指標

脳卒中に罹患した者の状態(ADL、IADL等)

急性期・回復期・維持期の医療機関、介護保険サービス事業所の連携が推進している

指標

医療機関、介護保険サービス事業所の連携の状況

2

脳卒中の急性期医療が充実している

指標

急性期病院退院時の患者の状態(死亡退院含む)

3

5

4

適切な急性期医療が提供可能な医療機関の適正配置指標

脳卒中に対応可能な急性期病院数

救急要請から医療機関への所要時間

指標

救急搬送体制の充実

回復期リハビリテーション病棟の適正配置

指標

回復期リハビリテーション病床数

1

脳卒中の予防のための普及啓発

指標 地域住民の脳卒中の理解度

2

特定健診受診率の向上及び保健指導の推進のための取組指標

特定健診受診率保健指導の実施率

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

2

脳卒中に罹患した者の生活の質(QOL)が向上している

指標 生活の質(QOL)

1

脳卒中による年齢調整死亡率が低下している

指標

脳卒中による年齢調整死亡率

23

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

9.まとめ(急性心筋梗塞)

□1 急性心筋梗塞の現状と課題

・急性心筋梗塞では発症 90 分以内の初期治療が死亡率に影響する。専門チームによる 24 時間体制の維

持には大きな医療資源の投入を要する。大都市圏では医療資源の効率的運用が、過疎県では連携と移

動手段を確保した上での施設集約化が、今後の課題である。 ・急性心筋梗塞の医療計画では、予防、急性期から回復期および維持期(在宅療養に対する支援等を含

む)までの有機的な医療連携が必要である。 □2 計画・予算など対策の現状と課題

・ほぼ全ての都道府県が、急性心筋梗塞の年齢調整死亡率の減少を最終目標に掲げ、医療計画を提示し

ているが、施策と指標の具体性と論理的連続性に欠けることが多い。 ・必須指指標や推奨指標の調査は、2 次医療圏単位で表記する最小限の作業にとどまっている都道府県

が多く、医療機関個別の指標の把握なしには有効な医療計画の作成は難しい。

□3 これまでの好事例(候補)

・兵庫県:実際の住民受診行動(鉄道や道路網を考慮)に基づいた医療圏の設定 ・兵庫県:施設別の緊急冠動脈形成術の施行実績を開示し、基幹施設の病院機能を明示 ・広島県:「地域心臓いきいきセンター」を設置し、慢性維持期の患者情報を集中管理 □4 都道府県アンケート結果

・多くの都道府県で実効性のある施策や指標作成の検討の場が不足 ・地域医療計画や指標を作成し評価する専門家が不足、予算が不足 ・国の具体的、専門的支援を求める □5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム ・急性心筋梗塞の年齢調整死亡率が減少している ・急性心筋梗塞の再発率が低下している ○中間アウトカム ・発症 90 分以内の緊急冠動脈形成術(血管の狭いところを風船拡張する手術)実施率が増加している ・専門医(インターベンション専門医)が複数名以上在籍する基幹施設が整っている ・地域連携クリティカルパスが整備されている(施設間心疾患患者紹介数が上昇している) ・維持期治療患者の情報共有が出来ている ○推奨施策 (1)施設ごとの専門医(循環器、心血管インターベンション)数の調査と公表 (2)施設ごとの急性心筋梗塞の搬入数と緊急冠動脈形成術の実施数の調査と公表 (3)施設ごとの心臓血管外科専門医数と緊急心臓手術実施状況の調査と公表 (4)急性心筋梗塞発生分布(予想)地図の作成 (5)施設間の連携強化 (6)長期維持期患者の情報共有手段の提供 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

24

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 3 急性心筋梗塞分野の施策と指標のマップ

3

47

生活習慣病に対する知識の啓発と早期発見

指標 健康診断受診率

6

維持期治療の患者の情報共有手段の提供

指標

維持期患者情報ネットワーク数

8

心臓リハビリテーション体制の整備

指標

心臓リハビリテーション施設数

1

施設ごとの専門医数の調査と公表

指標 施設ごとの専門医の配置

2

施設ごとの急性心筋梗塞の搬入数と緊急冠動脈形成術の実施数調査と公表指標

施設ごとの急性心筋梗塞と緊急冠動脈形成術の実数

5

指標 複数名専門医配置の施設数

4

急性心筋梗塞発生分布地図の作成

指標 急性心筋梗塞発生分布地図

2

専門医(心血管インターベンション専門医)が複数名在籍する基幹施設が整っている

施設ごとの心臓血管外科専門医数と緊急心臓手術実施数

指標

施設ごとの心臓血管外科専門医数と緊急心臓手術実施数の調査と公表

急性期基幹施設と他施設間の連携強化

指標 地域連携パスの作成数

3

番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

連携パスが整備されている

A 分野アウトカム

1

急性心筋梗塞発症90分以内の冠動脈形成術実施率が増加している

指標

急性心筋梗塞発症90分以内の冠動脈形成術の実施率

1

急性心筋梗塞による年齢調整死亡率が低下している

指標

急性心筋梗塞による年齢調整死亡率

2

急性心筋梗塞の再発率が低下している

指標 急性心筋梗塞の再発率

指標 連携パス利用数

維持期治療患者の情報共有ができている

指標

維持期患者情報が共有されている地域数

25

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

10.まとめ(糖尿病)

□1 糖尿病の現状と課題

・予備群を含め 2000 万人を超える生活習慣病・糖尿病。医療体制の整備に匹敵する治療の鍵は「患者

の行動変容」である。そのために必要なのが、(1)予防から合併症予防まで切れ目のない対策、(2)エビデンスに基づくチーム医療、(3)データを活用して様々なステークホルダー(関係者)と連携し

た対策、(4)患者会活動と連携した対策―などである。 □2 計画・予算など対策の現状と課題

・医療機関名の公表、病診連携の取り組みの状況には差がある。また、患者の行動変容のための、保険

者や教育機関などとの連携、役割分担の必要性に触れている地域医療計画はほとんどない。また、患

者団体を地域医療計画に位置づけている自治体もなかった。 □3 これまでの好事例(候補)

1.熊本県:医師の教育と患者の教育 2.奈良県:エビデンス(科学的根拠)に基づく医療に向けた取り組み 3.京都府:生活習慣の改善に様々なステークホルダーが参加

□4 都道府県アンケート結果

・地域医療計画の作成にあたっては、相談体制、単独でのデータ収集、医療保険者との連携などが課題

となっている。指標は「糖尿病性腎症による新規透析導入患者」が最も指標として有用だが、有用性

やデータ収集の点から疑問の残る指標もある。 □5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム ・糖尿病の発症患者数が減少している ・糖尿病患者の重症化を防ぐ ○中間アウトカム ・糖尿病予備群の数を減らす ・要治療と判定された人の受診率を向上させる ・糖尿病患者の治療中断者数が減少する ・初期・安定期におけるエビデンスに基づく医療を提供する ・患者の疾病知識が向上している ○推奨施策 (1)生活習慣の改善、知識の普及 (2)特定健康診査・保健指導の実施率の向上 (3)医療保険者によるデータヘルスの実施 (4)糖尿病専門医、糖尿病療養指導士の確保と連携 (5)初期・安定期治療を行う医師の質の向上 (6)役割別の医療機関の公表 (7)患者会活動 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

26

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 4 糖尿病分野の施策と指標のマップ

27

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

11.まとめ(精神疾患)

□1 精神疾患の現状と課題

・精神疾患は多様な疾患を対象としており、各疾患の特徴を踏まえた医療の提供が求められる。 ・精神疾患の患者数は近年大幅に増加しており、2011 年における患者数は約 320 万人と、医療計画に

記載される他の 4 疾病よりも多い。また、依然として入院期間が長く、長期入院患者(その多くが高

齢化し地域への移行が困難な状況)が多数存在していることが問題となっている。 ・疾病別では、統合失調症が減少傾向にある一方、認知症やうつ病が急増しているほか、不安障害、身

体合併症、精神科救急、児童・思春期精神、発達障害、アルコールや薬物依存など、対応すべき領域

の多様化・専門化が進んでいる □2 計画・予算など対策の現状と課題

・医療計画に精神科医療について記述することが決まってから間もないこと、精神科医療の分野は多数

の疾病を包含していること、アウトカムとして把握可能な指標が限られること等により、地域の現

状・課題に対する認識と取り組むべき施策(あるいは指標)が一致していない計画が散見される。 □3 これまでの好事例候補

・山梨県:全国平均値と比較し自殺率が高い状況をふまえ、対策に注力 ・群馬県:独自のプロセスに沿って課題を設定(特に地域化に注力) ・石川県:ストラクチャー、プロセス、アウトカムそれぞれにおいて目標を設定 □4 都道府県アンケート結果

・「複数の精神疾患を対象としているため、計画を作成するのが複雑」「実施・評価プロセスの設定が難

しい、データの収集・分析が困難」との意見が各 14 県と最も多かった ・次いで「精神科の医療資源が少ない・偏在している」という意見が 11 県あった。 □5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム ・精神疾患患者・家族の生活の質(QOL)が高く保たれている ○中間アウトカム ・地域・病院において質の高いケアが提供されている ・ケアのコーディネーション(多職種・多機関連携)が充実している ○推奨施策 (1)【統合失調症】中学校・高校における統合失調症対応力の向上 (2)【認知症】一般急性期病院における多職種・他診療科との連携の推進 (3)【うつ病】地域・職場におけるうつ病に関する認識の向上 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

28

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 5-1 精神疾患分野【統合失調症】の施策と指標のマップ

指標

精神科スーパー救急の病床数

2

指標

抗精神病薬処方量(クロルプロマジン換算)、抗精神病薬の単剤・2剤処方率

精神科救急において質の高い医療が提供されている

3

指標

精神科救急指定病院における在院日数

統合失調症関連研修の受講者数

8

7

【一般病院】 救命救急センターにおける統合失調症対応力の向上指標

統合失調症に関する研修会の実施回数・受講者数

【精神科病院】 退院支援に関わるスタッフの配置促進

指標 PSW配置数

9

【一般/精神科病院】 精神科救急体制の確立

1

統合失調症患者・家族のQOLが高く保たれている

5

【一般病院】 多職種・他診療科との連携の推進

指標 総合病院精神科の数

6

【精神科病院】 長期入院者の退院支援の促進

指標

精神障害者地域移行・地域定着支援事業件数

病院において質の高い統合失調症ケアが提供されている

4

【一般/精神科病院】 医療従事者における統合失調症に関する知識・理解の向上指標

指標

3か月以内における再入院率、在院期間5年以上かつ65歳以上の退院患者数

指標

地域において質の高い統合失調症ケアが提供されている2

【地域】 地域における精神障がい者のケアの体制整備指標 ACT実施件数(利用者数)

1

【地域】 中学校・高校における統合失調症対応力の向上(精神科CLとの連携含む)

指標

教職員や保護者への研修実施回数・受講者数

1

1年未満入院患者の平均退院率

3

【地域】 一般開業医の統合失調症に関する知識・理解の向上指標

一般開業医から精神科への紹介件数

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

29

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 5-2 精神疾患分野【認知症】の施策と指標のマップ

7

【精神科病院】 退院支援に関わるスタッフの配置促進

指標 PSW配置数

36

【一般病院】 多職種・他診療科との連携の推進

指標

多職種連携研修やカンファレンス実施回数・参加者数

認知症患者・家族の生活の質(QOL)が高く保たれている

5

【一般/精神科病院】 医療従事者における認知症に関する知識・理解の向上指標

認知症認定看護師数、認知症関連研修の受講者数

指標

緩和ケアチーム・精神科リエゾンチーム加算算定施設数、

指標

患者の望む場所で療養生活を送れている比率

4

【地域】 多職種・多機関連携の推進

指標

多職種・多機関連携研修の実施回数・受講者数

2

認知症ケアのコーディネーション(連携調整)が充実している

病院において質の高い認知症ケアが提供されている

指標

精神科病床の平均在院日数、抗精神病薬の処方量(クロルプロマジン換算)

地域において質の高い認知症ケアが提供されている

1

1

認知症ケアに関する多職種連携に関する質

1

【地域】 住民の認知症に関する知識・理解の向上

指標

住民向け認知症セミナー等の実施回数・受講者数

指標

3

【地域】 看護職・介護職の認知症対応力の向上

指標

認知症認定看護師数、認知症関連研修の受講者数

2

【地域】 認知症サポート医養成、かかりつけ医認知症対応力の向上指標 登録医・研修受講者数

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

30

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 5-3 精神疾患分野【うつ病】の施策と指標のマップ

救急において質の高い医療が提供されている(再自殺の予防)7

【一般病院】 救命センターでの専門スタッフの配置

指標

救命センターへの医療ソーシャルワーカーの配置数

6

【一般病院】 救命センターでの精神科へのアクセスの向上指標

救命センターへの精神科の設置数

3

指標

自殺企図患者の精神科医による診療比率、再自殺予防教育の実施件数

8

【一般病院】 救命センターのうつ病・自殺対応力の向上

指標

うつ病・自殺に関する研修会の実施回数・受講者数

1

うつ病患者・家族の生活の質(QOL)が高く保たれている

5

【一般病院】 総合病院での精神科へのアクセスの向上

指標

総合病院精神科の設置率、精神科リエゾンチームの設置数

指標

総合病院精神科のコンサルテーション件数、総合病院入院患者の抑うつを呈する割合

指標

うつ病患者の失職回避率・復職率

4

【一般病院】 総合病院医師・看護師のうつ病に対する知識の向上指標

総合病院医師・看護師に対する研修会の実施回数

2

病院において質の高いうつ病ケアが提供されている

指標

地域において質の高いうつ病ケアが提供されている

2

【地域】 職場、産業医のうつ病に対する技術向上

指標

産業医や産業保健師に対するうつ病研修の実施回数

1

【地域】 地域でのうつ病に関する知識の向上

指標

地域住民や開業医に対するうつ病研修の実施回数

1

うつ病患者の失職回避率・復職率

3

【地域】 多職種の顔の見える関係の構築

指標

多職種・多機関連携研修の実施回数・受講者数

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

31

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

12.まとめ(救急医療) □1 救急の現状と課題

・救急搬送患者は年々増加しており、高齢化の進展に伴いこの先 10 年は増加が予想されている。 ・主な課題として救急車の受け入れ状況の改善が挙げられ、消防・医療・介護が連携しながら地域の実

状に合わせた体制を整えていくことが急務となっている。 □2 計画・予算など対策の現状と課題

・47 都道府県の医療計画を精査した結果、多くの都道府県において(1)過去の医療計画に関する総括

(2)2 次医療圏ごとの現状分析・課題抽出(3)具体的施策の記載―が不十分であった。 □3 これまでの好事例(候補)

・東京都:救急医療の東京ルール

・岐阜県:救急医療搬送情報共有システム(通称「ETIS」)

・奈良県:奈良県救急医療管制システム(e-MATCH)

・大阪府:二次まもってネット、三次コーディネート □4 都道府県アンケート結果

・救急医療分野の医療計画策定に際し困っていることとしては、救急担当医師・救急医療機関など医療

資源の乏しさ、軽症での救急医療利用、指標分析の専門家不在、各機関の調整の難しさ、指標設定の

難しさが多く挙げられた。 □5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム (1)救命できる傷病者を社会復帰させている。 (2)救急診療を必要とする傷病者に適切な医療を提供している。 ○中間アウトカム (1)住民の救命活動への協力体制(発生時の早期対応による救命率の向上)を整備している。 (2)病院前救護体制(搬送時の対応による救命率の向上)を整備している。 (3)迅速に救急医療機関に搬送される体制を整備している。 (4)より高い水準の救急医療を効率的に提供している。 ○推奨施策 (1)住民対象の応急手当講習の実施。 (2)AED(自動体外式除細動器)の適切な配置。 (3)メディカルコントロール(医師による救急救命士活動の質の担保)の整備。 (4)救急現場から救急医療機関へのアクセスの整備。 (5)救急搬送選定困難時の搬送ルールの策定。 (6)2 次、3 次救急医療機関の集約化と機能分化の支援。 (7)救急医療機関での院内トリアージ(診療優先度判断)体制の整備。 (8)診療の検証体制の整備。 (9)住民対象の救急医療に関する情報の提供。 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

32

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 6 救急医療分野の施策と指標のマップ

4

より高い水準の救急医療を効率的に提供している

指標 救急医療機関救急診療件数

1

救命できる傷病者を社会復帰させている

指標 心肺停止社会復帰率

2

病院前救護体制(搬送時の対応による救命率の向上)を整備している

指標 病院前心拍再開率

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

3

特定行為検証件数指標

メディカルコントロール(医師による救急救命士活動の質の担保)の整備

指標 心肺蘇生術実施率

1

住民対象の応急手当講習の実施

指標 応急手当講習実施回数

1

住民の救命活動への協力体制 (発生時の早期対応による救命率の向上)を整備している

2

AED(自動体外式除細動器)の適切な配置

AED使用率

4

救急現場から救急医療機関へのアクセスの整備

指標 移動時間30分以上件数

5

救急搬送選定困難時の搬送ルールの策定

救急搬送選定困難率

9

住民対象に救急医療に関する情報の提供

指標 救急医療情報提供件数

8診療の検証体制の整備

指標 外傷データバンク登録数

2

救急診療を必要とする傷病者に適切な医療を提供している

指標

予測生存率>0.5の外傷傷病者死亡率

7

救急医療機関での院内トリアージ(診療優先度判断)体制の整備指標 院内トリアージ実施率

6

2次・3次医療機関の集約化と機能分化の支援

指標 救急医療機関集約度

3

指標

迅速に救急医療機関に搬送される体制を整備している

覚知後60分以上件数

33

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

13.まとめ(災害医療)

□1 災害医療の現状と課題

・災害時に「防ぎ得た死」を少なくするのが最大の課題だ。だが東日本大震災を受けた「災害医療等の

あり方に関する検討会報告書」が生かされているとは言いがたい。 □2 計画・予算など対策の現状と課題

・被災自治体だけでは対応できない大規模災害に備え、広域医療搬送を含めた都道府県の枠を超えた協

力体制の構築が課題となっている。 □3 これまでの好事例(候補)

・三重県:過去の教訓を踏まえた連絡協議会を設置して連携体制を構築 ・徳島県:他県との連携を見据えた相互協定と、分野別の災害医療コーディネーター □4 都道府県アンケート結果

・災害医療コーディネーターの機能、役割について理解できていない様子もうかがえる。 □5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム (1)災害発生直後に救命できるはずの被災者が救命されている

(2)災害発生後に 2 次的な原因による災害関連死がなくなっている (3)被災者の身体的・精神的負担ができるだけ少なくなっている ○中間アウトカム (1)平時から災害時に県内で必要な医療を調整できる体制を整えている (2)災害時に被災者に適切な医療を提供できる

(3)平時から災害時に県外に広域医療搬送できる体制を整えている (4)平時から災害時に自県以外と連携する体制を整えている (5)平時から訓練(住民、他県との合同訓練含む)を実施している ○推奨施策 (1)災害拠点病院の耐震化 (2)広域災害・救急医療情報システム(EMIS)の整備と、情報入力担当者を複数指名 (3)災害医療コーディネーターの任命と、それを支援する専属チームの整備 (4)災害医療派遣チーム(DMAT)と日本医師会災害医療チーム(JMAT)との連携整備 (5)災害弱者の状況把握 (6)心のケアチームや災害派遣精神医療チーム(DPAT)との連携体制を整備 (7)広域医療搬送のためヘリポート付近に(SCU)の整備 (8)ドクターヘリの配備 (9)他県との合同訓練の年1回以上実施 (10)住民参加の訓練の年1回以上実施 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

34

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 7 災害医療分野の施策と指標のマップ

1

災害発生直後に救命できるはずの被災者が救命されている

指標 「防ぎ得た死」の割合

3

被災者の身体的・精神的負担をできるだけ少なくなっている

指標

①介護度が上がった高齢者数②PTSDのある被災者数

2

災害発生直後に二次的な原因による災害関連死がなくなっている

指標 災害関連死の人数

2

4

指標

「住民参加訓練検証会議」(仮称)の開催件数

5

指標

災害時に県外に広域医療搬送をできている

3

平時から災害訓練を実施している

広域医療搬送実施率

災害時に被災者に適切な医療を提供できている

指標

①災害弱者安否確認率②DPATなど派遣率

平時から自県以外と連携する体制が整っている

指標

「合同訓練検証会議」(仮称)の開催件数

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

DMATとJMATの配置割合

1

災害拠点病院を耐震化する

指標 災害拠点病院の耐震化割合

1

災害時に県内で必要な医療を調整できている

2

EMISを整備し、災害拠点病院では事前に複数の入力担当者を決める指標

①EMISの整備率②複数入力担当者の指名率

災害医療コーディネーターの任命と、支援専属チームを整備する3

指標

①災害医療コーディネーター任命数②支援専属チームの有無

指標

①広域医療搬送拠点数②SCUの整備割合

6

心のケアチームやDPATとの連携体制を整備する

指標

心のケアチームやDPATとの提携の有無

10

住民参加の訓練を実施する

指標

住民参加の訓練の年間実施件数

他県と合同訓練を実施する

指標

他県と合同訓練の年間実施件数

4

DMATとJMATとの連携体制を整備する

指標

①DMATとの提携の有無②JMATとの提携の有無

9

5

災害弱者の状況を把握する

指標 災害弱者リスト化市町村率

8

ドクターヘリを配備する

指標 ドクターヘリの配備数

7

広域医療搬送拠点と、臨時医療施設(SCU)を整備する

指標

35

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

14.まとめ(へき地医療) □1 へき地医療の現状と課題

・過疎地域自立促進特別措置法の要件を満たす過疎地域は 2014 年 4 月現在、797 市町村あり、全国の

半数を占める。へき地診療所は 14 年 1 月現在、全国に 1038 カ所ある(注 1)。 □2 計画・予算など対策の現状と課題

・1人勤務の診療所が多く、外来診療と在宅診療の両方を行うことには限界がある。 ・都道府県が設置するへき地医療支援機構は、権限が十分ではなく限界がある。 □3 これまでの好事例(候補)

・新潟県:県立津川病院のバランスの取れた「出向く医療」と「集める医療」の提供 ・青森県:県の医学部生への修学資金制度と連動したキャリアパスの仕組み ・長崎県:県内の病院と診療所間での診療情報共有システム「あじさいネット」 ・富山県:富山県型デイサービス。 □4 都道府県アンケート結果

・へき地診療所の医師確保中心の地域医療計画づくりを見直す時期に来ている。 □5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム ・住み慣れた地域で外来や在宅の医療が受けられる。 そのためには、へき地診療所に代わり、医師3人が勤務して外来と在宅の両方の医療を多職種連携で

提供する機能強化型過疎地域診療所(仮称、以下仮称を省く)を新設し、整備・普及をする。 ○中間アウトカム (1)機能強化型過疎地域診療所を普及させるための設置・集約計画を設け、実行されている。 (2)機能強化型過疎地域診療所に勤務する医師のキャリア形成の仕組みが整っている。 (3)住民自らが予防や病状をセルフケアマネジメントしている。 (4)居住する地域外の病院に入院した患者が住み慣れた地域に戻ってこられている。 ○主な推奨施策 (1)過疎地域の医療機関における医師と看護師らの勤務見通しを調査して把握する。 (2)総合診療医を育成する指導医の確保と研修施設の整備で総合診療医を増やす。 (3)機能強化型過疎地域診療所や総合診療の普及や質の維持のための再研修をする。 (4)機能強化型過疎地域診療所と基幹病院で 3~4 年ごとの人事異動がある。 (5)訪問看護、訪問リハビリ、訪問歯科、訪問保険薬局の専門職を計画的に育成する。 (6)機能強化型過疎地域診療所は、訪問看護、訪問リハビリ、訪問歯科、訪問保険薬局と連携。 (7)医療機関間での電子カルテや画像診断の診療情報、患者情報の共有化を進める。 (8)医療機関と介護サービス事業者との患者情報の共有化を進める。 (9)地域外に入院が必要な救急患者を機能強化型過疎地診療所の医師が応急処置をしている。 (10)保健事業や介護事業と連携し、ウエアラブルの端末で過疎地域住民の健康管理を普及させる。 (11)交通政策担当部門と連携し、過疎地域の住民が通院のための交通手段や患者搬送手段を確保する。 (12)地方交付税の算定額分は医療施策に使う。 (13)機能強化型過疎地域診療所に、都道府県の修学資金を受けた医師を優先配置する。 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

36

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 8 へき地医療分野の主な施策と指標のマップ

1

2住み慣れた地域で外来や在宅の医療が包括的かつ安定的に受けられている

機能強化型過疎地診療所の整備率、受療率

指標

1

機能強化型過疎地診療所に勤務する医師のキャリア形成の仕組みが機能している

指標

指標

住民教育を受け、住民自らが予防や病状をセルフケアマネジメントしている

居住する地域外の病院に入院した患者が住み慣れた地域に戻ってこられている

健診(検診)や講習会の継続参加率と健診データなどの改善率

総合診療医のキャリア形成プログラムの有無、参加率

患者が入院前に暮らしていた市町村への帰宅率

指標

共有への患者同意率

6

機能強化型過疎地域診療所は、訪問看護、訪問リハビリ、訪問歯科、保険薬局と連携

指標

連携先名と実績の公表4

7

医療機関間での電子カルテや画像診断の診療情報、患者情報の共有化を進める

指標

10

ウエアラブル端末を利用して、過疎地域での住民の健康管理を普及させる

指標

実施自治体数、参加者数、参加率

8

医療機関と介護サービス事業者との患者情報の共有化を進める

指標

共有システムへの介護サービス事業者の参加率

9

地域外に入院が必要な救急患者を機能強化型過疎地診療所の医師が応急処置をしている

指標

救急患者への応急処置対応率

総合診療医養成の研修施設数、指導医数、専門医数

4

機能強化型過疎地診療所と基幹病院で3~4年ごとの人事異動がある

指標

プログラムに基づく定期異動の実施率

研修の実施数と修了者数指標

機能強化型過疎地域診療所や総合診療の普及や質の維持のための再研修をする3

指標

A 分野アウトカム番号 C 主な個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

機能強化型過疎地診療所を普及させるための設置・集約を含む計画、アクションプランを設け、実行されている

設置・集約計画の有無とアクションプランの進捗率

1

過疎地域の医療機関における医師の勤務見通しを調査して把握する

指標

過疎地域の医師、看護師らの勤務見通し意向調査

2

総合診療医を育成する指導医の確保と研修施設の整備で総合診療医を増やす

指標

35

訪問看護、訪問リハビリ、訪問歯科、保険薬局の専門職を計画的に育成する

指標

専門職の養成数と地元定着率

37

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

15.まとめ(周産期医療)

□1 疾病(事業)の現状と課題

・周産期医療においては、対象者に常に突発的な異常が生じる可能性があり、24 時間 365 日、母子双

方の急変に迅速に対応できる医療体制が各地域に必要である。近年、高度医療を提供する総合・地域

周産期医療センターの整備や、分娩に関連して脳性まひになった子に対する産科医療保障制度創設等

の施策が進められてきた。しかし、いまだ課題は多い。住民のニーズに応えるために、救命率だけで

なく、母子の合併症の率等に着目した現状評価や、医療・ケアの質向上が必要である。現在の大きな

課題としては人員不足、施設間の機能分化と連携の不足、医療の質の不透明性と質向上のための取り

組み不足の 3 点が挙げられる。 □2 計画・予算など対策の現状と課題

・医療計画の目的は「安心して子どもを生み育てることができる環境づくりの推進」である。計画策定

においては、現状と課題に適切に対応した施策や数値目標を設定できている都道府県は少なく、特に

評価指標・手法の設定に苦慮している状況が見受けられる。加えて、救急搬送体制整備以外の取り組

みが少ないことや母子保健や子育て支援政策との連携に触れられていないことも課題である。 □3 これまでの好事例(候補)

・「役割分担と連携を推進するシステム」と「すべての妊産婦が安心してケアを受けられるための体制

整備」の 2 点に着目して好事例を抽出した。 ・島根県:院内助産システムの推進 ・長野県:医療機関の連携のための情報の共有化 □4 都道府県アンケート結果

・医師不足が最大の課題だが、効果的な医師確保策は浮かんでいない。また、医療計画で用いる指標の

設定・分析ができる職員が少なく、外部有識者の協力も十分に得られていない。 □5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム 産みやすく、子育てしやすい状況になっている ○中間アウトカム (1)周産期医療を支える人的資源が充実している (2)緊急時に適切な対応が受けられる体制ができている (3)周産期医療の全体的な質が向上する ○推奨施策 ・(1)医療提供者の長時間労働を回避する労働環境整備、(2)分娩取扱い医、小児科医、助産師の新規

養成と復職支援、(3)限られた医療資源を前提とした効率化、(4)機能分化と役割分担・ネットワー

ク強化、(5)緊急時対応の研修等への支援、(6)社会的困難を抱える妊産婦への受診支援、(7)医療

処置に関する基礎的統計の把握、(8)産前産後の継続的指導および母乳育児や子育ての支援、(9)質

の高い医療を提供するための医療機関の体制整備の支援 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

38

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 9 周産期分野の施策と指標のマップ

8

産前産後の継続的指導、母乳育児支援、子育て支援指標

・母乳外来等の数・母乳育児率

9

質の高い医療を提供するための体制整備の支援

指標

・混合病床率・母児同室実施率

医療処置に関する基礎指標の把握

指標

指標

・陣痛誘発剤使用、会陰切開等の国際的基礎指標

指標

・健診助成金受給率・健診未受診分娩数

4

機能分化と役割分担・ネットワーク強化

指標

3

周産期医療の全体的な質が向上している

指標は多岐にわたるため、中村ら(2014)p.48参照【注6】

・新生児・妊産婦死亡率・脳性まひ等後遺症発症率

指標

・緊急時対応研修等予算・新生児蘇生法研修受講者数

・緊急時体制充実度

指標

6

社会的困難を抱える妊産婦への受診・受療支援

7

3

効率化による安全の担保と質の向上

5

緊急時対応の研修等への支援

指標

・院内助産、オープンシステムの導入率

2

緊急時に適切な対応ができる体制が整備されている

1

産みやすく、子育てしやすい状況になっている

指標

・出産、育児に関する(患者・医療従事者)総合地域評価

周産期医療を支える人的資源が充実している

2

分娩取扱医、小児科医、助産師の新規養成・復職支援指標

・養成施策予算・養成された医療従事者数

1

長時間労働を回避する医療従事者の労働環境の整備指標

・労基法遵守施設率・シフト勤務制導入率

1

指標

・産科医師充足率・助産師充足率

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

39

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

16.まとめ(小児医療) □1 小児医療の現状と課題 ○現状 ・小児救急医療の問題は、小児医療を担う医師不足のみならず、急性期の集中治療を担う NICU に長期

入院する乳幼児の在宅医療への移行が進まない事から生じる NICU の慢性的な病床不足の問題、軽症

にもかかわらず急性期病院を受診する事による急性期病床の不足等が挙げられる。そのため、重篤な

小児救急患者に対する医療提供体制について、搬送と受け入れ体制の整備、発症直後の重篤な時期(超

急性期)の救命救急医療を担う体制の整備、急性期の集中治療・専門的医療を担う体制の整備が求め

られている。 ○課題 ・小児医療体制等の確保。特に、2 次小児救急医療体制、高度小児専門医療の整備 ・小児科医療を行う人的資源の充実、確保 ・一般住民・保護者への啓発、特に小児救急医療に対する普及啓発活動の促進 ・その他小児がん対策、障害者(児)への医療提供、慢性疾患対応、小児在宅医療、移行期支援医療等

□2 計画・予算など対策の現状と課題

・実効性のある具体策というよりは、限られた医療資源の配分と医療連携を中心に進められている。

□3 これまでの好事例(候補) ・小児救急電話相談事業(#8000):全県で実施。一次救急の水際での情報提供として有用 ・新潟、石川、滋賀各県:小児救急冊子配布。適正受診誘導のための施策として有効 ・岩手県:テレビ会議による指導・助言を行う小児救急医療遠隔支援システム事業

□4 都道府県アンケート結果 ○小児医療に関する回答の概要(回答は 26県)

・小児医療の範囲の広さに、地域医療計画策定の難しさを指摘する声が多かった。策定プロセスへの課

題 16県、医師不足 5県、慢性疾患による長期療養や在宅療養に対しての合意形成や連携の難しさを

挙げる県もあった。

□5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム ・軽症疾患から重症疾患まで、安心して子育てができる小児医療体制が確立している ○中間アウトカム ・高度専門小児医療を実現する小児 2 次救急医療体制が確立している ・一般小児医療を支える医療体制が確立され、人的資源が充実している ・高度専門小児医療機関における時間外の患者数が減少している ○推奨施策 (1)2 次医療圏において 24 時間受け入れ可能な医療体制を整備する (2)NICU/PICU 病床数を拡大する。高度小児医療体制の整備 (3)小児医療を実施する人的資源の確保、小児救急医療地域研修事業の強化 (4)適正受診に関する普及啓発活動(小児救急電話相談事業等) □6 施策と指標のマップ (次ページ)

40

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 10 小児医療の施策と指標のマップ

指標

指標

指標

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

1

NICU病床の整備と救急利用率を上げる

指標

NICUを有する病院数・病床数救急医療に供した割合、長期入院児の退院割合

2

第2次医療圏において小児救急医療提供体制を整備する

8

小児救急電話相談事業を用いた支援を行う

指標

研修事業開催回数、参加人数

指標

人口10万人当りの2次救急医療機関の数と小児夜間・休日診療の届出医療機関数、救急外来にて院内トリアージを行っている医療機関数

5

小児科医療を行う医師数を確保する

人口10万人当たりの医師数

6

高度な医療を提供できるPCIU病床を整備する

3

7

適正受診に関する普及啓発活動を加速化する

健康相談教室等の開催回数

4

一般小児医療を担う診療所数を確保する

指標

小児救急医療地域研修事業の強化

小児の保護者への支援事業における、回線数と相談件数と深夜対応の可否

PCIUを備えた中核病院数・PCIU病床数、実入院数、入室者数

人口10万人あたりの小児科標榜診療所数

2

一般小児医療を支える医療体制が確立され、人的資源が充実している

指標

指標

医療機能情報公開率、小児入院医療体制

3

高度専門小児医療機関における時間外の軽症患者数が減少している

指標 時間外受け入れ患者数

指標

1

軽症疾患から重症疾患まで安心して子育てが出来る小児医療体制が確立している

高度専門小児医療を実現する小児2次救急医療体制が確立している

1

指標

小児2次救命率小児死亡率、乳児死亡率、乳幼児死亡率、

小児2次救急医療体制が確保されている第2次医療圏数高次病院への搬送件数、消防機関からの救急搬送受入要請に対して実際に受入れた患者の割合

41

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

17.まとめ(在宅医療) □1 在宅医療の現状と課題

・住み慣れた自宅や地域の中で、質の高い療養生活を人生の最期まで送りたいというニーズ(希望)は

多くの人が持っている。今後、人口の高齢化や疾病構造の変化、独居高齢者や認知症高齢者、医療

ニーズの高い患者の増加に伴い、医療や介護を必要とする人が増加していくが、医療と介護の連携

はいまだ不十分で、その提供体制は十分整っておらず、多様な関係者の合意形成による地域特性に

応じた課題の把握や解決策の検討も十分に行われていない。住民に身近な市町村を中心に、住民の

参画による地域包括ケアシステムを確立していくことが早急に求められている。

□2 計画・予算など対策の現状と課題 ・「地域医療介護総合確保基金」「地域支援事業」などのいくつかの財政支援制度があり、それらを活

用し、市町村の在宅医療施策を支援する体制を整えることが課題となっている。

□3 これまでの好事例(候補)

・京都府、広島県:市町村を組織的に支援する包括的な仕組み

・福岡県、福井県など:医療と介護の連携を促す仕組みの明確化と財源確保

・千葉県:在宅医療に取組む医師等を対象とした教育研修プログラムが開発され、全県へ普及させる仕

組みがある

・長野県、岩手県:地域住民の理解を促進させ、住民の参画を促進させる施策

□4 都道府県アンケート結果

・多くの都道府県が在宅医療の主体を市町村とし、都道府県が市町村の取組みを支援する体制を整備す

ることの必要性を認識していた。課題と指摘されたのは、在宅医療に必要になる資源の把握が難しい

こと、市町村における在宅医療施策の企画立案を支援するノウハウが少ないという点であった。

□5 あるべき姿と推奨施策

○分野アウトカム

・自分らしく最期まで生きられるまちで、住民・関係者の幸福・安心・満足度が改善する

・利用者及び家族の生活の質(QOL)が向上する

・本人が望んだ場所で安心した暮らしを継続できる社会が生まれる

○中間アウトカム

・住民の幸福・安心・満足を目標とする地域ネットワークができる

・暮らしの継続を可能とする医療・介護提供体制が整備されている

・ICT(情報通信技術)の活用や多職種連携により、24時間365日の安心が確保される

○推奨施策

(1)地域包括ケアシステムの構築に向けた市町村支援、(2)主体的住民との協働および住民を対象と

した意識調査、(3)多様な関係者による合意形成および目指す姿の共有、(4)包括的な看取りまで

行える在宅医療・介護連携体制の構築、(5)暮らしを支えるリハビリテーションおよび緩和ケア提

供体制と相談支援体制の確立、(6)地域特性に応じた医療・介護・福祉人材の育成と確保、(7)ICTの活用等で、生活を支え続ける多職種連携システムの確立、(8)認知症、がん、難病、小児など疾

患および事業別課題への対応、(9)災害時における在宅療養支援体制の構築 □6 施策と指標のマップ (次ページ)

42

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【全体まとめ】

図表 11 在宅医療分野の施策と指標のマップ

1

自分らしく最期まで生きられるまちで、住民・関係者の幸福・安心・満足度が改善する

指標

住民及び関係者の幸福・安心・満足度

指標 生活の質(QOL)の向上

利用者及び家族の生活の質(QOL)が向上する

6

地域特性に応じた医療介護福祉の人材の育成と確保

指標

在宅医療教育研修会 在宅医同士の連携数 看護・介護職が研修後に就労した率 機能強化型訪問看護事業所数

指標

患者の療養場所の選択及び家族の介護負担感の軽減

3

本人が望んだ場所で安心した暮らしを継続できる社会が生まれる

ICTの活用や多職種連携により、24時間365日の暮らしの安心が確保される

指標

7

24時間365日、生活を支える多職種連携システムの確立

指標

ICT活用数 巡回・随時対応型訪問介護看護事業所数 小規模多機能型居宅介護事業所数

指標

介護者の負担軽減のための支援体制個別研修数 相談窓口 医療的ケアができる介護職数

指標

訪問リハビリ数 無菌調剤薬室のある薬局のある医療圏数 往診をする施設数 相談窓口設置数

退院支援配置医療機関数 在宅医療従事者・介護従事者数、地域包括ケア病棟のある病院数、在宅医療・介護連携拠点数 看取り対応施設数

2

暮らしの継続を可能とする医療・介護提供体制が整備される

ICT活用等によるネットワーク数 災害支援体制構築数

3

指標

平均在院日数 在宅復帰率医療資源提供数 在宅医療の質の評価(急性期病院への再入院率、日常生活動作の改善率、在宅看取り率等)

指標

9

災害時における在宅療養支援体制の構築

指標 連携体制数 合同訓練数

8

認知症、がん、難病、小児など疾患および事業別課題への対応

住民の幸福・安心・満足を目標とする地域ネットワークができる2

主体的住民との協働および住民を対象とした意識調査

多様な関係者による合意形成および目指す姿の共有

意識調査 講習会開催数 住民組織数

1

4

A 分野アウトカム番号 C 個別施策

番号 B 中間アウトカム

番号

指標 支援組織 研修参加数

1

包括的な看取りまで行える在宅医療・介護連携体制の構築

地域包括ケアシステムの構築に向けた市町村支援

3

医療者参加の地域ケア会議数 在宅医療・介護連携推進協議会の設立数 地域包括ケアのある市町村数

指標

2

5

審議会の多職種数 地域ケア会議設立数

指標

暮らしを支えるリハビリテーションおよび緩和ケア提供体制と相談支援体制の確立

43