英語教育学における 「実態調査」の批判的検討

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質問・意見をフォームから寄せられます。フォームのリンクは 発表者(寺沢)のブログ「2016820日」のページにあります。 ・ブログタイトル:こにしき(言葉・日本社会・教育) URLhttp://d.hatena.ne.jp/TerasawaT/ ・検索ワード:TerasawaT 寺沢 拓敬(関西学院大学) [email protected] 英語教育学における 「実態調査」の批判的検討 * * * * * * * * * 本日の話の要点/結論 (1) 実態調査は原則としてフィールドワークですべきだ (2) アンケートで実態調査を行って良い場面はほとんどない

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質問・意見をフォームから寄せられます。フォームのリンクは発表者(寺沢)のブログ「2016年8月20日」のページにあります。 ・ブログタイトル:こにしき(言葉・日本社会・教育) ・ URL: http://d.hatena.ne.jp/TerasawaT/ ・検索ワード:TerasawaT

寺沢 拓敬(関西学院大学) [email protected]

英語教育学における 「実態調査」の批判的検討

* * * * * * * * *

本日の話の要点/結論 (1) 実態調査は原則としてフィールドワークですべきだ

(2) アンケートで実態調査を行って良い場面はほとんどない

定義 a. 英語教育の特定の現象に関与するアクターを対象

b. 一般化志向なし

c. ボトムアップ的な分析

実態調査の現状 1. 英語教育学における実態調査

2. 実態調査と教育研究

(a) 多変数が複雑に介在 (b) 新しい現象の宝庫 (c) 特定の事例の固有性

3. アンケート調査偏重

4. 他分野における「実態調査」

① 研究テーマは、学校現場の何らかの実態解明

No

Yes

② その研究は大部分が 自分のためだ

(例、学位取得、自分の成長)

No

Yes

実態調査自体をやめる (実態解明だけが研究ではな

い)

③ 「実態」に関して 明確な仮説がある

No

Yes

④ 緩やかな仮説ならある No

Yes

実態調査自体をやめる (文献研究・コーパス研究のような

非侵襲型の研究に変更する)

仮説検証を目指した 質問紙法による計量分析

⑤ 学校の責任者から、生徒や教師個々への接触を禁止された

No

Yes

⑥ 研究テーマは、その学校でしかできない。唯一無二

のフィールドだ

No

インタビュー調査 エスノグラフィー等

⑦ インタビューでもきちんとプライバシーは保護できると何度説明してもダメだった

No

Yes

別のフィールドを見つけてインタビュー調査・エ

スノグラフィー

Yes

Yes

現場に倫理規定の遵守をきちんと説明し、理解を得たうえでインタビュー調査・エスノグラフィー

⑧ なぜかアンケート調査なら許可されている No

⑨ アンケートの自由回答欄は本気を出せば人力で読みきれる量だ

アンケート自由記述の質的分析(必ず人間が解釈する)

Yes

No

テキストマイニング (ただし、学校調査で大量の自由記述を集めることは稀)

スタート

本日の話の要点/結論(再掲)

(1) 実態調査は原則としてフィールドワークですべきだ

(2) アンケートで実態調査を行って良い場面はほとんどない

References • 佐藤郁也著『社会調査の考え方 上巻』(東京大学出版会、2015)

• 寺沢拓敬著『「日本人と英語」の社会学』(研究社、2015)

• 樋口耕一著『社会調査のための計量テキスト分析』(ナカニシヤ出版、

2014)

• 前田拓也ほか編『最強の社会調査入門』(ナカニシヤ出版、2016)