ゲーム学習分野の研究動向と今後の研究課題 / a survey on the status of...

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2017311日本デジタルゲーム学会年次大会@星城大学 ゲーム学習分野の研究動向と 今後の研究課題 A Survey on the Status of GameBased Learning Research 藤本 徹 東京大学 Toru FUJIMOTO , The University of Tokyo

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Page 1: ゲーム学習分野の研究動向と今後の研究課題 / A Survey on the Status of Game-‐Based Learning Research

2017年3月11日  日本デジタルゲーム学会年次大会@星城大学  

ゲーム学習分野の研究動向と  今後の研究課題  

A  Survey  on  the  Status  of  Game-­‐Based  Learning  Research

藤本 徹  東京大学  

Toru  FUJIMOTO  ,  The  University  of  Tokyo

Page 2: ゲーム学習分野の研究動向と今後の研究課題 / A Survey on the Status of Game-‐Based Learning Research

研究の背景

17/03/12 2

ゲーム学習(Game-­‐Based  Learning)研究:シリアスゲーム、ゲーミフィケーションへの関心とともに活発化

ゲーム学習を主軸とした研究センター/研究機構を設置する大学や、非営利組織、開発会社などとの  

連携:継続的に研究を進める体制が整備

国内外格差の存在:日本語の文献だけでは  研究の最新の知見を把握できない状況

近年の海外におけるデジタルゲーム学習研究の文献調査を行い、既に示されている研究成果を概観:今後この分野で取り組むべき研究課題を検討する  

Page 3: ゲーム学習分野の研究動向と今後の研究課題 / A Survey on the Status of Game-‐Based Learning Research

調査の概要

•  文献調査:Google  Scholar、ERIC、Science  Directなどの論文データベースで2005年以降に出版されたゲーム学習に関するレビュー論文を収集  •  収集した論文を軸としたsnowballing  methodの手法により対象となるレビュー論文を補完的に収集  •  「ゲーム学習」:教育ゲームや学習ゲーム、

シリアスゲームなどの「ゲームを用いた学習」(特にデジタルゲームを対象)

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調査結果の概要(1)

•  Vogelら(2006):32本の学習ゲーム・シミュレーションの効果に関する論文  – 認知的学習と態度的学習においてゲームは従

来の学習方法よりも優れている傾向を示す  – 性別や教師の介入の仕方、学習者の参加のさ

せ方が学習効果に影響

•  Ke(2009):89本のゲーム学習の効果に関する実証研究論文  – 過去の研究結果には効果の示されているものと

そうでないものが混在  – 研究方法や対象とする学習者、取り入れられた

教育方法やゲーム要素が影響

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調査結果の概要(2)

•  Woutersら(2013):39本のゲーム学習と一般的な教育方法を比較した論文  – 一般的な教育方法よりもゲーム学習の方が

知識学習や記憶定着の効果が高い  – ゲーム単独より講義やディスカッションなどの

教育方法と組み合わせた方が効果  – 一般的な教育方法より学習動機を高めている

わけではない  – 要因:ゲームに強制的に参加させられる、

ゲームと学習内容の不一致、選択の自由がないことが効果を損なう

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Page 6: ゲーム学習分野の研究動向と今後の研究課題 / A Survey on the Status of Game-‐Based Learning Research

調査結果の概要(3)

•  Youngら(2012):363本の学校教育への学習ゲームの導入と成績の関する論文  – 言語学習、歴史、体育(特にエクササイズ

ゲーム)に効果を示す証拠が存在  – 具体的な学習効果を示す研究は1割のみ  – 課題:多くの研究でゲーム要素の説明が不

十分学習に関する変数や成果の変数の説明も不十分

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Page 7: ゲーム学習分野の研究動向と今後の研究課題 / A Survey on the Status of Game-‐Based Learning Research

調査結果の概要(4)

•  Connollyら(2012):129本のゲーム学習の効果についての論文  – 知識習得や内容理解を目的としたゲームが最多  – 意欲や態度向上のためのゲーム利用でも効果を上

げている  

•  JabbarとFelicia(2015):2003〜2013年の91本のゲーム学習論文  – 学習者の意欲や関与を高めるゲーム要素の調査  – シンプルなゲームだけでなく複数のゲーム要素を組

み合わせた複雑なゲーム、学習者が挑戦したくなる状況を提供

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Page 8: ゲーム学習分野の研究動向と今後の研究課題 / A Survey on the Status of Game-‐Based Learning Research

調査結果の概要(5)

•  QianとClark(2016):2010〜2014年の137本のゲーム学習論文  – 29本の論文が21世紀型スキルを対象  – 古典的なクイズやドリル形式では学習意欲

を高める効果は見られない  – 協調や競争、探求やロールプレイなど多様

なデザインを組み合わせた複雑なゲームデザインによって効果を上げている  – 創造性の教育:学習者にゲームをデザイン

させる形式の方が有効

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Page 9: ゲーム学習分野の研究動向と今後の研究課題 / A Survey on the Status of Game-‐Based Learning Research

考察(1)

•  継続的にこの分野の実証研究が増加  •  一般的なゲーム学習の効果についての

研究から、特定のゲーム要素の効果を検証する研究へ  •  取り入れた教育手法やゲーム要素の説

明が不十分な研究も多い  

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ゲームの要素や諸変数を具体的に  定義した上で効果検証を進めること  

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考察(2)

•  ゲームのデザインや技術が高度で複雑化  •  シンプルな学習クイズや暗記ドリルゲーム

のような形式のゲームの効果は限定的  •  近年の関心はオンラインゲームや3Dゲー

ム、モーションコントローラーなど、技術的にも高度なゲームが対象  

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教育・学習ゲーム=単純ですぐ飽きるゲーム  という理解は時代遅れ

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まとめ・今後の展開

•  本研究:デジタルゲームに絞った教育分野のレビュー調査:アナログゲームの効果、ヘルスケアなどの分野での系統的調査も有用  

•  系統的調査、分野横断調査:複数の研究者がチームで連携して行うことで実現する  

•  継続的に研究を進めること、海外に向けた研究成果の発信が必要  

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