性別 男性 女性 年齢 30代 40代 50代 60代 ミサイルが飛ぶと女...

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ミサイルが飛ぶと女性候補者は評価されない? ージェンダーステレオタイプと投票行動ー 東北大学法学研究科博士後期課程 1 遠藤勇哉 背景 女性議員が少ない理由はジェンダーステレオタイプ? ジェンダーステレオタイプとは? e.g., Alexander and Andersen 1993; Huddy and Terkildsen 1993リサーチクエスチョン 1 どのような条件下で有権者のジェンダーステレオタイプが活 性化するのか? 2 そして、それがどのように投票行動に影響を与えるのか? 先行研究 ジェンダーステレオタイプは有権者の意思決定に影響を与え る。(e.g.,Bauer 2015; Egaly and Karau 2002; Iyengar et al. 1996; Ono and Yamada 2018)) 有権者はジェンダーステレオタイプや性別の影響よりも政党 の影響を受ける為、ジェンダーステレオタイプは有権者の意 思決定に影響しない。(e.g., Dolan 2014; Lewis and Baird 2011) 先行研究の検討 候補者以外の情報にも注目する必要性 先行研究は「女性らしい女性候補者」の様に候補者本人 の情報に焦点を当てている。 メディアや SNS による情報、有権者の感情 仮説 仮説 1:ミサイル発射に対する不安と景気停滞に対する不安 を煽る情報を受け取った有権者は、そうでない有権者よりも 女性候補者を支持しない。 仮説 2:男性有権者はジェンダーステレオタイプを手がかり に投票するが、女性有権者は手がかりに投票しない。 実験デザイン Yahoo!クラウドソージング(2019 11 26 日~2019 11 30 日) 被験者数 3000 処置群:北朝鮮のミサイル発射、景気の停滞の不安を煽る情 報を与える。 統制群:何も情報を与えない。 コンジョイント実験 属性 水準 性別 男性 女性 年齢 30 40 50 60 学歴 旧帝大卒 地方国立大卒 有名私立大卒 出身地 県外 地元 当選回数 0 1 2 3 元職 元タレント 元弁護士 元政治家秘書 元県議会議員 所属政党 無所属 自民党 立憲民主党 プロファイル:2 タスク:6 所属政党を提示するグループと提示しないグループに無作 為に分ける 分析結果 核ミサイル群は統制群よりも女性候補者への投票確率が低 下する。しかし、経済群と統制群の間で投票確率に差はある とはいえない。 男性有権者は核ミサイル発射に関する不安を煽る情報を受け 取ると女性候補者を支持しなくなる一方、女性有権者はそう した情報を受け取っても女性候補者を支持しなくならない。 結論 :ミサイルが飛ぶと女性候補者は評価されない? Yes! 特に男性有権者はミサイルが飛ぶと女性候補者を評価しない。 含意 1 女性候補者の選挙戦略 2 代表制民主主義 課題 1 不安の影響 or 情報に接触した影響か区別出来ない 2 不安の度合いが所与の前提

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ミサイルが飛ぶと女性候補者は評価されない?ージェンダーステレオタイプと投票行動ー

東北大学法学研究科博士後期課程1年 遠藤勇哉背景

女性議員が少ない理由はジェンダーステレオタイプ?

ジェンダーステレオタイプとは?

(e.g., Alexander and Andersen 1993; Huddy and Terkildsen 1993)

リサーチクエスチョン1 どのような条件下で有権者のジェンダーステレオタイプが活性化するのか?

2 そして、それがどのように投票行動に影響を与えるのか?

先行研究ジェンダーステレオタイプは有権者の意思決定に影響を与える。(e.g.,Bauer 2015; Egaly and Karau 2002; Iyengar et al. 1996;Ono and Yamada 2018))

有権者はジェンダーステレオタイプや性別の影響よりも政党の影響を受ける為、ジェンダーステレオタイプは有権者の意思決定に影響しない。(e.g., Dolan 2014; Lewis and Baird 2011)

先行研究の検討� �

候補者以外の情報にも注目する必要性先行研究は「女性らしい女性候補者」の様に候補者本人の情報に焦点を当てている。メディアやSNSによる情報、有権者の感情� �

仮説仮説1:ミサイル発射に対する不安と景気停滞に対する不安を煽る情報を受け取った有権者は、そうでない有権者よりも女性候補者を支持しない。

仮説2:男性有権者はジェンダーステレオタイプを手がかりに投票するが、女性有権者は手がかりに投票しない。

実験デザインYahoo!クラウドソージング(2019年11月26日~2019年11月30日)被験者数3000人処置群:北朝鮮のミサイル発射、景気の停滞の不安を煽る情報を与える。統制群:何も情報を与えない。

コンジョイント実験

属性 水準性別 男性 女性年齢 30代 40代 50代 60代学歴 旧帝大卒 地方国立大卒 有名私立大卒出身地 県外 地元当選回数 0回 1回 2回 3回元職 元タレント 元弁護士 元政治家秘書 元県議会議員

所属政党 無所属 自民党 立憲民主党

プロファイル:2

タスク:6

所属政党を提示するグループと提示しないグループに無作為に分ける

分析結果

核ミサイル群は統制群よりも女性候補者への投票確率が低下する。しかし、経済群と統制群の間で投票確率に差はあるとはいえない。

男性有権者は核ミサイル発射に関する不安を煽る情報を受け取ると女性候補者を支持しなくなる一方、女性有権者はそうした情報を受け取っても女性候補者を支持しなくならない。

結論問:ミサイルが飛ぶと女性候補者は評価されない?答:Yes! 特に男性有権者はミサイルが飛ぶと女性候補者を評価しない。

含意

1 女性候補者の選挙戦略2 代表制民主主義課題

1 不安の影響 or 情報に接触した影響か区別出来ない2 不安の度合いが所与の前提