編者・執筆者一覧 esdマニュアル 巻 頭...

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iv iii ○編者(近畿内視鏡治療研究会 幹事) 梅垣 英次 大阪医科大学第2内科 准教授 / 大阪医科大学附属病院 消化器内視鏡センター長 道田 知樹 大阪厚生年金病院 内視鏡センター長 豊永 高史 神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部 部長・准教授 上堂 文也 大阪府立成人病センター 消化管内科 副部長 町田 浩久 医療法人弘仁会 まちだ胃腸病院 副院長 森田 圭紀 神戸大学医学部附属病院 消化器内科 講師 ○執筆者(執筆順) 町田 浩久 医療法人弘仁会 まちだ胃腸病院 副院長 永見 康明 大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科 病院講師 田渕 真彦 製鉄記念広畑病院 内科・消化器内科 道田 知樹 大阪厚生年金病院 内視鏡センター長 安田 明日香 大阪府立成人病センター 内視鏡室 看護主任 湯浅 淑子 大阪府立成人病センター 内視鏡室 師長 上堂 文也 大阪府立成人病センター 消化管内科 副部長 阿部 真也 大阪医科大学附属病院 消化器内視鏡センター 技師主任 梅垣 英次 大阪医科大学第2内科 准教授 / 大阪医科大学附属病院 消化器内視鏡センター長 森田 圭紀 神戸大学医学部附属病院 消化器内科 講師 若原 ちか 神戸大学医学部附属病院 消化器内科 豊永 高史 神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部 部長・准教授 吉村  兼 神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部 主任臨床工学技士 万井 真理子 藤田保健衛生大学 上部消化管外科 助教 藤永 早苗 大阪厚生年金病院 病棟看護師 編者 ・ 執筆者一覧 チーム医療のための ESD マニュアル 近年,消化器内視鏡による診断・治療技術の進歩には目を見張るものがあり,そ の普及はめざましい。しかし,その一方で消化器内視鏡関連の偶発症の報告は後を 絶たず,特に難易度の高い内視鏡治療による重篤な合併症も報告されている。 2006 年 3 月 に 保 険 認 可 さ れ た 内 視 鏡 的 粘 膜 下 層 剝 離 法(ESD;Endoscopic Submucosal Dissection)は従来の内視鏡治療法に比較して手技的難易度は高いも のの,その優れた治療成績より注目されている。各種学会・研究会では,ESD関 連のセッションはいつも満員御礼であり,その注目の高さが窺い知れる。ESDが 対象とする消化管は胃から食道,大腸へと広がりをみせ,ESDを導入する施設も 年々増える一方で,その導入から治療手技まで多くの問題点も指摘されている。 我々は2003年11月より,消化管内視鏡治療に関する手技やその治療成績を発表・ 討議すると共に,先端医療の情報を交換し,消化管内視鏡治療の発展と普及をはか ることを目的として,近畿内視鏡治療研究会を立ち上げ,今日では50回を越える 研究会を開催してきた。ESDの手技的なことはもちろん,ESDにおける教育,イ ンフォームドコンセント,コメディカルとの連携など,チーム医療としてのESD をあらゆる角度から討議してきた。 本書では,研究会の集大成とでも言うべき豊富な内容を盛り込んだ。病変の発見 から術前診断,ESDの導入から準備,治療手技,治療介助,合併症対策,術後管 理など,ESDに関するトータルマネージメントを解説し,さらにチーム医療とし て医師(指導医,レジデント,研修医)およびコ・メディカル(看護師,内視鏡技 師)など各立場からの視点に基づいた解説を行った。本書を通じて読者がESD の ノウハウを共有し,明日からの診療に役立てて頂ければ幸いである。 2013 年 9 月 近畿内視鏡治療研究会 幹事 梅垣 英次 道田 知樹 豊永 高史 上堂 文也 町田 浩久 森田 圭紀 チーム医療のための ESD マニュアル 巻 頭 言

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Page 1: 編者・執筆者一覧 ESDマニュアル 巻 頭 言€Œ3-3.ERBE社製ESU:ICCとVIOの特徴と違い」の内容を理解しておい ていただきたい。2 出力設定のコツと落とし穴

iv iii

○編者(近畿内視鏡治療研究会 幹事)

梅垣 英次 大阪医科大学第2内科 准教授/

大阪医科大学附属病院 消化器内視鏡センター長

道田 知樹 大阪厚生年金病院 内視鏡センター長

豊永 高史 神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部 部長・准教授

上堂 文也 大阪府立成人病センター 消化管内科 副部長

町田 浩久 医療法人弘仁会 まちだ胃腸病院 副院長

森田 圭紀 神戸大学医学部附属病院 消化器内科 講師

○執筆者(執筆順)

町田 浩久 医療法人弘仁会 まちだ胃腸病院 副院長

永見 康明 大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科 病院講師

田渕 真彦 製鉄記念広畑病院 内科・消化器内科

道田 知樹 大阪厚生年金病院 内視鏡センター長

安田 明日香 大阪府立成人病センター 内視鏡室 看護主任湯浅 淑子 大阪府立成人病センター 内視鏡室 師長

上堂 文也 大阪府立成人病センター 消化管内科 副部長

阿部 真也 大阪医科大学附属病院 消化器内視鏡センター 技師主任

梅垣 英次 大阪医科大学第2内科 准教授/

大阪医科大学附属病院 消化器内視鏡センター長

森田 圭紀 神戸大学医学部附属病院 消化器内科 講師

若原 ちか 神戸大学医学部附属病院 消化器内科

豊永 高史 神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部 部長・准教授

吉村  兼 神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部 主任臨床工学技士

万井 真理子 藤田保健衛生大学 上部消化管外科 助教藤永 早苗 大阪厚生年金病院 病棟看護師

編者・執筆者一覧 チーム医療のための ESDマニュアル

近年,消化器内視鏡による診断・治療技術の進歩には目を見張るものがあり,その普及はめざましい。しかし,その一方で消化器内視鏡関連の偶発症の報告は後を絶たず,特に難易度の高い内視鏡治療による重篤な合併症も報告されている。2006年3月に保険認可された内視鏡的粘膜下層剝離法(ESD;Endoscopic

Submucosal Dissection)は従来の内視鏡治療法に比較して手技的難易度は高いものの,その優れた治療成績より注目されている。各種学会・研究会では,ESD関連のセッションはいつも満員御礼であり,その注目の高さが窺い知れる。ESDが対象とする消化管は胃から食道,大腸へと広がりをみせ,ESDを導入する施設も年々増える一方で,その導入から治療手技まで多くの問題点も指摘されている。我々は2003年11月より,消化管内視鏡治療に関する手技やその治療成績を発表・

討議すると共に,先端医療の情報を交換し,消化管内視鏡治療の発展と普及をはかることを目的として,近畿内視鏡治療研究会を立ち上げ,今日では50回を越える研究会を開催してきた。ESDの手技的なことはもちろん,ESDにおける教育,インフォームドコンセント,コメディカルとの連携など,チーム医療としてのESDをあらゆる角度から討議してきた。本書では,研究会の集大成とでも言うべき豊富な内容を盛り込んだ。病変の発見

から術前診断,ESDの導入から準備,治療手技,治療介助,合併症対策,術後管理など,ESDに関するトータルマネージメントを解説し,さらにチーム医療として医師(指導医,レジデント,研修医)およびコ・メディカル(看護師,内視鏡技師)など各立場からの視点に基づいた解説を行った。本書を通じて読者がESDのノウハウを共有し,明日からの診療に役立てて頂ければ幸いである。

2013年9月近畿内視鏡治療研究会 幹事

梅垣 英次道田 知樹豊永 高史上堂 文也町田 浩久森田 圭紀

チーム医療のための ESDマニュアル 巻 頭 言

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x xi

KINKI ESD Live Seminar DVD

付録DVD チーム医療のための ESDマニュアル Case 4 : Early esophageal cancer, 0-Ⅱc, 25mm, Mt, Post. *Dr. Morita (6th, Case6)

Case 1 : Early gastric cancer, 0-Ⅱc, 35mm, U Less. *Dr. Machida (5th, Case6)

Case 5 : Gastric adenoma, 0-Ⅱa, 25mm, UL(-), U Post. *Dr. Umegaki (7th, Case4)

Case 2 : Early colon cancer, LST-NG (fl at elevated), 40mm, Sigmoid. *Dr. Toyonaga (6th, Case2)

Case 6 : Early gastric cancer, 0-Ⅱa+Ⅱc, 30mm, UL(+), L Less. *Dr. Uedo (7th, Case7)

Case 3 : Early gastric cancer, 0-Ⅱc, 20mm, UL(+), M Less. *Dr. Michida (6th, Case5)

本DVDには,下記に示す「Case 1~6」のライブ映像が,DVDビデオ形式にて収録されています。

*Demonstrator(Seminar NO, Case No)

〈Final diagnosis〉

Case 1: Adenocarcinoma, stomach, 0-llc + lla, 19x11mm, tub1, pT1a(M), ly0, v0, UL(-), pHM0, pVM0, pR0.Case 2: Adenocarcinoma in tubular adenoma, S-colon, LST-NG, 35x31mm, tub1, pT1a(M), ly0, v0, pHM0, pVM0, pR0Case 3: Adenocarcinoma, stomach, 0-llc, 13x13mm, tub1 > tub2, pT1b(SM;300μm), ly0, v1, UL(-), pHM0, pVM0,

pR0.Case 4: Squamous cell carcinoma, esophagus, 0-llc, 18x18mm, mod, pT1a-LPM(M2), ly0, v0, UL(-), pHM0, pVM0,

pR0. Case 5: Adenocarcinoma, stomach, 0-lla, 33x11mm, tub1, pT1a(M), ly0, v0, UL(-), pHM0, pVM0, pR0. Case 6: Adenocarcinoma, stomach, 0-lla + llc, 28x15mm, tub1 > tub2 > por2,sig, pT1b2(SM;2.6mm), ly1, v0, UL(+),

pHM0, pVM0, pR0.

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ChapterⅠ

40

総 

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Section5チーム医療としてのESD│スタッフの配置と役割│

5-1 術前オリエンテーションにおける コ・メディカルの関わり

ESDにおける看護師の役割は,患者が,①不安なく安全,安楽に治療を受けることができるようにすること,②治療の必要性と方法を十分理解し,治療に対する協力が得られるようにすることがある。当院(大阪府立成人病センター)では治療前日に病棟看護師による問診

~情報収集とは別に,内視鏡看護師が患者の病室を訪問しESD前のオリエンテーションを行っている。

1 術前訪問(オリエンテーション)の方法と内容a 情報収集カルテ・患者・家族から正確な情報を収集し,内視鏡看護記録に以下の

項目を記載する。□氏名,年齢,主治医□入院目的,病名,告知の有無,他院からの紹介内容,既往歴□感染者,血液型,検査データ(血液検査,胸部X線,心電図など)□内服状況□治療日の医師からの特別な指示内容の有無□転倒転落アセスメントスコア□疼痛の有無,程度,種類,緩和方法□義歯の有無□聴力障害・補聴器使用の有無□視力障害・眼鏡やコンタクトレンズ使用の有無□言語障害・コミュニケーションの方法□排泄状況,介助の必要性の有無・内容□更衣状況,介助の必要性の有無・内容□移動状況,介助の必要性の有無・内容□キーパーソン□アレルギー歴問診表に沿って情報を収集するが,特にブスコパン禁忌,抗凝固・抗血

Section

5チーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESDチーム医療としてのESD─スタッフの配置と役割─

小板薬内服状況,出血傾向の有無,咽頭麻酔を含む薬剤アレルギーには注意する。

b 治療の概要の説明(図1)●治療の流れがイメージしやすいようにパンフレットを用いて説明する。●実際の治療時の写真は恐怖感を抱かせたり気持ち悪がられる場合もある。希望を聞いてから必要に応じて内視鏡画像や治療中の部屋の写真,鎮静剤の投与やモニタリングなどについて図や写真を用いて説明し,治療への不安の軽減に努める。

●患者・家族の理解度をそのつど確認しながら説明し,適宜質問に応じる。●病棟との継続看護を目的に,問題点は病棟看護師や医師にも申し送り,看護記録に記載する。

c 術前訪問で実際にあった患者・家族からの質問と回答例(1)腰痛や足の痛みがあるので長時間同一体位でいられるか心配です…➡検査台に体圧分散用のウレタンフォーム製のマットを敷いている。足のマッサージを定期的に行っていることなどを説明する。

(2)頻尿なので長時間我慢できるか心配です…➡治療前に必ずトイレに行ってもらう。不安であれば医師と相談し,尿道カテーテルを挿入することも可能であることを説明する。

(3)治療に痛みは伴いますか? 普通の内視鏡でも飲むのが苦手なのに治療用の内視鏡を飲めるかどうか心配です…➡内視鏡挿入前から鎮静剤を使って眠った状態になってから治療を行う。適宜薬剤を追加しながら行うので,基本的に治療中の意識はない。

(4)血が止まらなかったらどうなりますか…➡適切に止血処置をしながら行っていくことを説明する。

(5)今日眠れなかったらどうしよう…➡不眠時の睡眠導入剤の指示がでているので,服用可能であることを説明する。

(6)開始時間や予想される治療時間を知りたいです…➡家族の来棟・待機時間も含めて,治療開始時刻,治療に要する時間,帰室時刻など時間に関する質問は予想以上に多い。

➡予定時間を説明し,予定を超えるようであれば逐次進行状況を内視鏡看護師が説明することを伝える。

(7)治療時に使用するものは何ですか…➡酸素用の経鼻カニュラ,パルスオキシメーターのセンサー,心電図モニターの電極,対極板などを持参して質問があれば具体的に説明している(図2)。

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ChapterⅠ

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総 

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Section5チーム医療としてのESD│スタッフの配置と役割│

5-2 臨床工学技士による高周波手術装置の出力調節内視鏡治療では欠かせないESU(electro surgical unit)であるが,日

常使用している出力に不満を抱いたことはないだろうか? 事実,ESUの出力を調節したくなる局面は幾度となくあるはずである。しかし,通電環境の変化に対応しようにも,ESUの出力として微調整するからには何らかの根拠が必要である。本項では,ESUの原理と根拠に基づいた出力設定と微調整のポイントを簡潔にまとめてみた。

1 出力の微調整に入る前にERBE社製ESUの各出力モードの設定と切り替えの理論に入る前に,

本書各論「3-2.高周波デバイスと切除部位に最適な出力構築のノウハウ」,「3-3.ERBE社製ESU:ICCとVIOの特徴と違い」の内容を理解しておいていただきたい。

2 出力設定のコツと落とし穴ERBE社製ESUにおける出力設定は,高周波デバイスを使用する環境

に最適な出力モード(出力波形)を選択し,出力波形の電圧をEff ectで,通電に伴う加熱の強さ(仕事量)を出力(W)で設定を行う(図3)。

a Eff ect…電圧選択の解釈ERBE社製ESUでは,放電の強さ(凝固深度)を電圧(Vp)で制御する。Eff ectで電圧(Vp)を選択することで,V=IRゆえに,放電の強さの

再現性は通電される電流量と組織の抵抗次第といえる。人体の抵抗は可変抵抗であり,抵抗の変化は避けられないとすると,実は熱源である電流が犠牲になりやすい。電圧はV=IRであり,同じ電圧(選択したEff ect)であったとしても

出力された電流(I)が2Aと4Aでは似て非なる熱作用となる。最大限の電流が通電されなければ,Eff ect(Vp)に相当する放電(200V以下では通電)には達しない局面も少なくはない。組織の抵抗が高まるにつれて通電される電流は乏しくなるため,放電の規模も弱まることは理論どおりである。放電の再現性が凝固深度の質として現れるため,最大限に電流が通電されることがきわめて重要である。

b Watts…出力設定の解釈出力波形と出力(W)によって通電に伴う発熱に緩急を付けている。

出力(W)は電圧と電流の積(W=VI)であり,V=IRのためW=I2Rで表すことができる。つまり,熱源である電流(I)が2倍になると仕事量(=熱量)は4倍となる。したがって,通電に伴って発生する熱量は,電力と通電時間(t)との積となるため,Wt=I2Rtとなり,設定が同じ出力(W)でも瞬間的に得られる熱量に差が出ることで,切開および凝固の熱作用に達する通電時間に差が生じることは理論どおりである。設定した出力(W)により,過不足のない電流が通電されないことには,

ある通電時間においてEff ect(Vp)に相当する放電(200V以下では通電)に達することが難しくなる。

c ここまでのまとめERBE社製ESUにおいて,状況に最適と思われる出力モードの選択(波

形の違いを理解した上での選択もしくは変更),それに伴うEff ect(Vp)の見極めと出力(W)の微調整が出力設定であり,これらの相乗効果として放電もしくは通電が再現されることが理想である。瞬時に電流を過不足なく引き出すことを意識した出力の構築でなければならない。

何の根拠もないEffect (電圧)を設定… Vp=1,100V

1,100V=4A X 257Ω

きわめて再現性の高い出力が可能…

何の根拠もないWatts (仕事量)を設定… 50W

自動出力制御型 ESUMAX 4A供給可能

電流 I 抵抗 R 患者の抵抗は可変抵抗…

高周波デバイスの違い(=電流密度,接触面積の違い)

出力モードの違い(=波形,制御の違い)

熱量は I2Rt ゆえに…中途半端な設定と通電時間では電流が犠牲になる50W=0.18A X 275Ω

熱量としてはかなり大きい

電流 I2

100W=0.36A X 275Ω

の高い parformance を引き出すことが最も重要

短時間の通電で切開もしくは凝固の作用を得るためにはEffect で深さを選択し,出力(W) には余裕をもたせておく

ERBE

通電するタイミングではより高い抵抗の可能性が高い

図3 ERBE社製ESUの出力設定

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Section5チーム医療としてのESD│スタッフの配置と役割│

5手先の通電が理想的な作用となるために,組織には過不足ない潤いを常に維持しておけるかが通電における極意といっても過言ではないのである。

11 ESUの出力モードの選択と微調整の実際ここでは,Flush KnifeとIT Knife 2使用時の出力モードの選択と微調

整を紹介する。粘膜切除時の切開速度の考え方(図12, 13),脂肪が多い,または線維化の強い場合の出力設定の考え方(図14, 15),出血しやすい症例時の出力設定の考え方(図16, 17),高周波デバイス先端水没時の考え方(図18)をそれぞれ図に示した。先に述べたように,通電環境の変化をPower displayのPmax(=最高値)

とPavg(=平均値)から読み取り,原因に対応するための微調整と同時にPower displayを通して出力の評価を行う。図14~18は,いずれも胃の症例時の通電環境の変化に対応するパターンであるが,食道および大腸においても微調整の考え方は基本的に同じである。ただし,食道および大腸では根本的に基本設定が異なるため,理論を応用していただきたい。

切開速度が超過しやすいエリア

切開縁の凝固層が浅い

マーキング

横方向の切開ではヒダやシワが邪魔をする 切開速度の著しい低下は炭化の原因に

切開縁の凝固層が深い

脂肪が多いまたは線維化の強いエリア

図12 気まずい…こんな切開は回避したい1例

ChapterⅠ

56

総 

12 SOFT COAGの出力調整ESDでは,200Vp以下の放電を伴わないSOFT COAGを選択し,止血

鉗子を用いた接触凝固で確実に止血処理を行う。

a SOFT COAGの出力特性SOFT COAGでは出力(W)を高くするほど止血完了までの通電時間

が短くなるため,凝固深度は浅くなる。逆に出力(W)低くするほど止血完了までの通電時間が長くなるため,凝固深度は深くなる。つまり,出力(W)の微調整は,通電に伴う熱量に緩急を付けることで出力の立ち上がりの速度調整が狙いといえる。SOFT COAG(接触凝固)における凝固深度は放電凝固の考え方とは

異なるため,特性の理解が必要である(図19)。

b SOFT COAGのEff ect選択⑴ SOFT COAGでEff ectをupする局面●体位変換では回避できない水没領域での止血●脂肪および線維化の影響で電流が流れにくい状況での止血●止血鉗子の電流密度が低い(または把持した面積が広い場合)

切開速度が超過しやすいエリア

切開縁の凝固層

縦方向,横方向を問わず均一な切開縁の凝固層を形成

マーキング

横方向の切開ではヒダやシワを慎重に処理する

横方向,脂肪の多い,線維化の強いエリアでは ESUの微調整も効果的

脂肪が多い…または線維化の強いエリア

切開縁の凝固層

図13 通電環境の再現性を高めた切開の1例

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ChapterⅡ

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各 

189

Section5ESDの実際

観 察

マーキング

切 開

図9 通常観察食道Mt 0-Ⅱc+Ⅱb 40mm

図10 NBI/ヨード観察後壁主体だが肛門側では左壁に張り出している。

図11 マーキング小さくシャープなマーキング。粘膜切開は,病変が水没する側を中心に「Cの字型」に口側より行う。

食道 図 4

図12  Flush Knifeによる粘膜切開

ストッパーが付いており,粘膜を固定することで,切開深度を一定に保つことが可能。

図13 粘膜切開ナイフを粘膜に刺入したまま方向やタイミングを見計らい,スコープを進めると一筆書きのように一連の操作で切開できる。

トリミング

剝 離

終 了

図14 トリミング切開に引き続きトリミングをしておく。

図15 トリミング途中切開線に沿って,スコープの捻りやアップアングルを利用しトリミングを進めると,比較的容易にトリミングできる。

図16 トリミング完了切開・トリミングが終了した状態。 食道 図 5

図19 視野の確保スコープとアタッチメント,シース先端で病変を固定。

図18 粘膜下層剝離アタッチメントとシース先端で拍動や呼吸性を抑えている。シース先端のエッジを筋層に沿わせるように操作する。スコープの軸を回転させると,シース先端が筋層の上を円盤が転がっていくようにコントロールできる。

図20 エンドポイントの剝離肛門側のトリミングがしっかりできているので,肛門側粘膜の辺縁をなぞれば剝離完了。

図21 剝離完了切除後の状態。剝離面は均一。

図17 追加局注Flush Knifeによる追加局注は有効。ほとんどの場合,トリミング以降の局注はナイフからの送水で十分。

ESDの手技食 道