神経を伸張したときの神経内の変化physiotherapy.web.fc2.com/hosoku.pdf• neurodynamic...

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1 1 神経を伸張したときの神経内の変化 Bodine, Lieber 1994Sunderland 19912 身体運動と神経系 16% 仙椎神経根 1020% 30%

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神経を伸張したときの神経内の変化

(Bodine, Lieber 1994)(Sunderland 1991)

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身体運動と神経系

16%仙椎神経根

10~20%脊 髄

30%髄 膜

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腕神経叢 筋皮神経

ミエリン鞘のレベルでの適応

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神経の連続性

神経系は機械的,電気的,化学的に連続している

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19.6mm5.6mm

3.4mm9.7mm

手関節背屈

手指伸展

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神経系の検査

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目的

• 診断を助ける

• 安全なマネージメント

• 患者への説明

• 治療

• 再評価項目の抽出

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臨床的に神経系の感受性,運動性・伸張性,健康状態をみるための検査

1. 末梢神経の触診

2. ニューロダイナミックテスト

3. 神経伝導性の検査

実習1

主な末梢神経の触診

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利用

• 末梢神経の解剖を再学習でき,理学療法において神経系をより意識するようになる

• 神経系の検査の一部– 病理学的変化の場所を特定するのに有用

– 神経系の感受性を評価できる

– 疼痛メカニズムの仮説に関する情報を供給

• 治療法の一手段

• 患者に末梢神経因性疼痛を説明するのに利用できる

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触診を進める上での注意(1)

• 神経走行のバリエーションに注意

個人差,欠損,破格など

• 中枢,末梢方向に神経を追跡

• 深部の神経では指腹を用い,小さな神経や皮神経では指先や爪で弾くようにする

• 皮下脂肪のために触診が困難な場所は神経の走行を意識

• 神経の外側への運動能力を評価する

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触診を進める上での注意(2)

• 表在の神経は腱よりも硬く,丸く触れる.腱よりも横断方向の弾性がある

• 神経を伸張して触診すると反応が大きい

• 症状の出現,左右差に注意

• 優しく,感受性豊かに

• 必ずしも反応が得られるとは限らない

• 間接的触診たとえば,手根管での正中神経

• 健常者における典型的な反応を把握する

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触診を進める上での注意(3)

• 末梢神経は同一神経でも走行中に構造が変化する(神経束の数と結合組織の量)

• 神経束の数が多いと結合組織量が増加し,触診では神経性の反応を得るためにはより圧迫が必要

例:尺骨神経

局所的な痛み多い多い手関節

神経性の反応少ない少ない肘関節

反応神経束数結合組織量触診部位

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主な末梢神経の触診①

• 総腓骨神経– 腓骨頭– 膝後面(大腿二頭筋腱の内側)

• 脛骨神経足根管膝窩部(軟部組織を介して)

• 浅腓骨神経– 足部の背側〜足関節上5cm

• 深腓骨神経– 第1,2中足骨の間

• 腓腹神経– 足部の外側,外果の後方,アキレス腱に沿って

• 坐骨神経– 坐骨結節-大転子を結ぶ線上で,坐骨結節から1/3,1/2の位置

注)触診は難しいが,走行を意識する

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主な末梢神経の触診②

• 橈骨神経浅枝– 橈骨の前外側で,手関節近位4〜5cm– 腕橈骨筋とECRL腱との間から出現

• 橈骨神経– 橈骨神経溝で(上腕三頭筋外側頭の下部)– 橈骨頭部で(軟部組織を介しての触診)

• 正中神経– 手根管で– 上腕二頭筋の内側で– 上腕内側– 上肢を外転すると触診しやすい– 手関節を動かしたときのスライドを触れる

• 尺骨神経– Guyon’s canalで(豆状骨の橈側で,有鈎骨鈎の尺側)

– 手関節– 尺骨神経溝– 上腕内側

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ニューロダイナミックテストNeurodynamic test

神経系の機械的感受性および病態力学を検査する方法

ニューロダイナミックテスト

Passive Neck Flexion (PNF)

Straight Leg Raise (SLR)

Prone Knee Bend (PKB)

Slump Test

Upper Limb Neurodynamic Test 1 (ULNT1)

Upper Limb Neurodynamic Test 2a (ULNT2a)

Upper Limb Neurodynamic Test 2b (ULNT2b)

Upper Limb Neurodynamic Test 3 (ULNT3)

•神経系の機械的・生理学的変化を起こす一連の身体運動•神経系の機械的パフォーマンスと感受性に関する情報

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PNFとSLR

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SLRによって影響を受ける構造

1)ハムストリングス

2)腰椎

3)股関節

4)仙腸関節

5)筋膜

6)神経系

→これらのどれかに問題があればSLRに対する反応に影響を与える

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SLRのバリエーション

1. 股関節内転

2. 腰椎・胸椎の非検査側への側屈

3. 頚椎屈曲(PNF)

4. 脛骨神経:足関節背屈・外がえし+SLR5. 腓骨神経:足関節底屈+内がえし+SLR6. 腓腹神経:足関節背屈+内がえし+SLR

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加える要素の順番の違いによるバリエーション

• 遠位から– 背屈/外がえし/SLR– 背屈/内がえし/SLR– 底屈/内がえし/SLR

• 近位から– SLR/底屈/内がえし

– SLR/背屈/外がえし

– SLR/背屈/内がえし

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ニューロダイナミックテストの方法

• 患者に何をしようとするのか,患者に何をしてもらいたのかを説明する

• 可能な限り最初は自動的行う

• 運動を阻害する要因に注意する(抵抗,痛みなど)

• 運動の質を評価する

• 開始位置は常に一定にする(たとえば,SLR時の枕)

• 痛みの場所,性質に注意

• テスト中の疼痛回避姿勢に注意(たとえば,SLR時の骨盤の挙上)

• 左右の対称性に注意

• テスト運動は,必要に応じて異なった順番で行ってもよい

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ニューロダイナミックテストに必要な情報

①出現した症状

-症状が最初に出現した可動域

-どんな症状が出現したか?(痛み,異常感覚など)

-出現した症状は患者が訴えている症状か?

-最終可動域における症状は?

-症状の可動域内における変化

②出現した抵抗

-抵抗が最初に出現した可動域

-最終的に抵抗が運動を制限した可動域

-抵抗の可動域内における変化

(急激に増加するか?あるいは徐々に増加するか?)

③それぞれの要素を加えた時あるいは除いたときの症状および抵抗の変化

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臨床で用いる際の注意

• すべての患者に共通するルチーン検査はない.– 基礎テストを変化させる必要がある

– 行う必要がない場合もある

• 他のリーズニングカテゴリーを考慮して行う.– 検査を行う前には,すべてのカテゴリーについての判

断がなされている必要がある

• 一貫した再評価項目となる.– たとえば,ROM改善を目的としたエクササイズを行っ

た場合,SLRに伴う症状とROMが一つの評価尺度となる.

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注 意

• Neurodynamic testsにより患者の訴える反

応を常に再現するわけではない

• 再現することが不適当または不可能である場合がある

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鑑別診断の概念Concept of structural differentiation

• 離れた部分から神経系への負荷を増減する操作を行って,誘発された痛みの反応が変化するかどうかをみる

→変化あり:症状の神経因性要素を支持

→変化なし:症状の非神経因性要素を支持

しかし,他の臨床データの支持が必要

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検査に対する反応の臨床的分類

神経因性

Neurogenic

非神経因性

Somatic

生理学的

神経組織Neural tissue

CNS 感受性CNS sensitivity

神経因性

Neurogenic

非神経因性

Somatic

臨床的

検査に対する反応

•実習2PNFとSLR・PNFとSLRを行い,反応の違いに注意する.

・鑑別診断の概念を理解する.・パートナーの反応を分析する.

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分析のポイント

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1.Sensitivity

1. 組織(体性構造および末梢神経組織)のsensitivity

2. CNSのsensitivity

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2.どんな場合に陽性と考えるか?

• テストが症状を再現した場合

• 構造鑑別が神経系を示唆したとき

• 左右で反応が異なる,あるいは正常反応と異なる

• 主観的データ(痛みの部位,病歴)が示唆する場合

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3.テストの陽性と関連性

• テストの陽性は必ずしもマネージメントの必要性を示唆しない

–疼痛メカニズム

–他の理学的所見

–患者の機能的要求

を考慮して決定

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4.新たな検査の必要性を示唆

• NDTが陽性の場合は,他の身体的検査の必要性を示唆する.

例:PNFが腰痛やSLR反応に影響する場合

→頭部から腰椎間を検査する必要がある

胸部やULNTなど

実習3スランプテスト

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実習4

1.ULNT12.ULNT2a 3.ULNT2b4.ULNT3

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化学的化学的(病態生理学的)(病態生理学的)問題問題 機械的機械的(病態力学的)(病態力学的)問題問題

痛み痛み

こわばりこわばり

ⅠⅠ ⅡⅡ ⅢⅢ ⅣⅣ

イリタブルイリタブル ノンノン--イリタブルイリタブル

急性期急性期 慢性期慢性期RICERICE →→ MICEMICE物理療法物理療法

モビライゼーション(生理学的変化・機械的変化を及ぼす)モビライゼーション(生理学的変化・機械的変化を及ぼす)

機能的トレーニング機能的トレーニング