プロセスチェーンマネジメント概説€™s not luck の世界...

21
1 Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 1 プロセスチェーンマネジメント概説 Part II TOC流営業強化法 2002126プロセスチェーン研究所 藤川博巳([email protected]) 中小企業診断士、技術士(情報工学)、CMfg/E(米国 SME) Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 2 本日の説明内容 1.制約条件理論 TOC とは “Theory Of Constraints” 2.スループット会計とは “Throughput Accounting” 3.思考プロセス法 TP とは “Thinking Process Method” 4.営業強化法「マフィアオファ」とは “Unrefusable Offers”

Upload: nguyenminh

Post on 27-May-2018

216 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

1

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 1

プロセスチェーンマネジメント概説

Part II

TOC流営業強化法

2002年 1月 26日

プロセスチェーン研究所

藤川博巳([email protected])中小企業診断士、技術士(情報工学)、CMfg/E(米国 SME)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 2

本日の説明内容

1.制約条件理論 TOC とは  “Theory Of Constraints”

2.スループット会計とは  “Throughput Accounting”

3.思考プロセス法 TP とは  “Thinking Process Method”

4.営業強化法「マフィアオファ」とは  “Unrefusable Offers”

2

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 3

1.制約条件理論 TOC とは

制約条件理論 TOC の原点“The Goal”が1984年に出版された。

“アレックスは工場の見える丘の上からピザを食べ、ビールを飲みながら工場の倉庫を何気なく眺めた。そこには製品在庫が山のように積まれている。

「そうだ、我々は倉庫を満杯にするために働いているのではない。ゴールとは売れること、販売にある。つまり、ゴールは儲ける(Making money now and in the future)ことだ。」・・・・・・・・・・その後、アレックスは恩師のジョナ教授の助けを借りながら、工場の部下達と苦境を必死に乗り越えていく。”

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 4

ゴールドラット博士のTOC書籍

• The Goal 1984年 1992年• The Race 1990年• Haystack Syndrome 1990年• Theory of Constraints 1990年• It’s Not Luck 1994年• Critical Chain 1997年• Necessary But Not Enough 2000年

3

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 5

TOCワールドの拡大

Haystack Syndromeの世界(資源制約下の経営支援)

サプライチェーン管理 (SCM)

OPT生産計画S/W

1979年

Critical Chainの世界(プロジェクト管理)

The Goalの世界(スループット最大/総投資・経費最小)

It’s Not Luckの世界(対立問題解決法)

スループット会計

思考プロセス

(TP)スループット営業

クリティカルチェーン(CC/PM)

クリティカルパス

CPMMRPⅡ

ERP

ドラムバッファーロープ

TOC改善5ステップ

PERTCPM

全体最適測定基準

アドバンスト生産計画

(APS)

物理制約

市場制約

方針制約

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 6

制約条件 “Constraints” とは(有名な鎖の比喩)

4

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 7

ドラム

ロープ

在庫バッファスペースバッファ

一番遅い兵隊

(制約工程)

先頭の兵隊

(入口工程)

最後の兵隊

(出荷)

彼のペースで歩かせ続ける

自分の都合でも、

前後の都合でも、

決して立ち止まらせない

一番遅い兵隊の

ペースで歩かせる

予防保全の重要性

ドラムバッファロープ DBR 法とは(有名な兵隊の行進の比喩)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 8

製造業でのDBR 法の導入が増加

出典: Synchronous Management by M. Umble et al.(一部、変更) 小林英三訳

MRP II 行進の意識なし。個別の稼働率、作業能率。→ 個別に前進。

リードタイム(最長)

TOC 歩調の乱れを前提。 一番、遅い兵士がころばない限り、そのペースで前進。

ドラム

リードタイム(最短)

バッファ

ロープ

JIT

リードタイム

カンバン カンバン カンバン カンバン カンバン

誰もころばないと前提。 歩調を揃え、前進。 しかし、一人がころぶと、皆、停止。

5

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 9

TOCの基本用語(T、I、OE)

売上高

Throughputスループット

Inventory総投資(在庫)

利益

Operating Expense経費

企業が販売しようとするモノの購入への投資額

総投資をスループットに転化させるために企業が支出する金

販売を通じて企業が生み出す金

増加

減少

減少

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 10

TOC流改善の5ステップ

ステップ1システムの制約条件を見つける

ステップ2制約条件を徹底的に活用する

ステップ3他の全てを

制約条件に従属させる

ステップ4制約条件を解消する

ステップ5惰性に注意してステップ1に戻る

6

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 11

制約条件“Constraints”とは何か

出典: Constraints Management Handbook by J.F.Cox and M.S. Spencer 小林英三訳

•製品Cの最大生産量は1時間あたり何単位か?  2単位

2単位

2単位、在庫増

作業20の後にスペースがなければ、8単位減

•作業25の生産性が向上し、1時間あたり10単位生産できるようになったらどうなるか? 

•作業10、および作業15に、1時間あたり2単位を超える原材料が投入されると製品Cの 生産量はどうなるか? 

作業20の前に在庫がなければ、8単位減•作業10が4時間停止したらどうなるか? 

•作業30が4時間停止したらどうなるか? 

構成部品 B

構成部品 A

製品C原材料 A

原材料 B

組立

(20単位/時)出荷

作業 25(4単位/時)

作業 20(2単位/時)

作業 30(5単位/時)

作業 35(5単位/時)

作業 15(10単位/時)

作業 10(5単位/時)

未利用キャパシティ

未利用キャパシティ

未利用キャパシティ

未利用キャパシティ

未利用キャパシティ未利用キャパシティ

各工程を別会社と考えればSCM 在

庫を置かない

在庫を置かない

 

在庫バッファ

 

スペース・バッファ

組立バッファ

出荷バッファ

(ここで質問です)

制約条件

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 12

スループット(T) = 売上高-在庫(I)システム(企業、生産等)が販売を通じて発生させるお金。

在庫(I): 直接材料費、コミッション、輸送費などの真の変動費。企業が製品に加工して販売するために購入した品目で、購入価格で評価。

業務費用(OE): 企業が在庫(I)をスループット(T)に変換するために消費する金額。

会計学の貢献利益= 売上高-直接材料費-直接労務費-販売直接経費-              変動製造間接費

(参考):貢献利益は、製品系列とか販売地区というセグメントごとの相対的な採算検討においても、より客観的に比較分析できるので、製品組合せ政策とか販売経路・促進政策や、各種の個別計画(内製か外注かなど)の決定に有効な資料を提供しうる。 (出典:会計学大辞典、中央経済社発行)

スループット会計の収益性判断は、制約を明示的に意識し、制約資源での単位時間あたりの金額(1分あたりのスループット・ダラー)を基に行う。

2.スループット会計 とは“Throughput Accounting”

7

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 13

スループット会計と伝統的会計の比較

スループット会計

 =スループット( T )  -業務費用( OE )

 =利益

伝統的な直接原価計算

 =貢献利益  -固定費

 =利益

   売上

 -直接材料費 -直接労務費

 -変動間接費*

直接労務費を固定費とした直接原価計算

 =貢献利益  -固定費

 =利益

   売上

 -直接材料費 

 -変動間接費*

簡易スループット会計

 =スループット( T )  -業務費用( OE )

 =利益

出典: The Theory of Constraints and its implementation for Management Accounting by Eric Noreen, et al. 小林英三訳

* 製造、非製造両方の変動間接費を含む

  売上 -原材料費( I )  

  売上

-真の変動費合計   ( I ) 

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 14

●Diecast社はGM社向けサプライヤ。  GM社への納入は同社の売上の70%~80%。  GM社は年間契約価格値下げの圧力。

●TP法を使ってGM社を説得し値下げを回避。   ○価格の切り下げがDiecast社を事業から撤退させること。   ○重要なトランスミッション部品製造の最後のメーカとして    Diecast社に依存していること。

●原価計算システムを変更することなく工場へDBR法を導入。  > この結果、製品があまり売れておらず、オーバーヘッドの大部分が

取りこまれている印象を与えた。(計算上で従来よりコスト高)

(次頁へ)

出典: http://www.goldratt.com/success.htm

TP法とスループット会計の事例Diecast Corp. (1996公表)

8

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 15

●スループット会計を採用。  > この結果、非常に少ないオペレーティング・キャッシュで利用できる    資源を十分に使用して、より多くのスループット・ダラーを創出。

●利用できる代替市場に進出。  市場機会は以前は会計システムによって隠されていた。  スループット会計は、製造ラインの反応性と結びついて、  有力なマーケティング手法(スループット営業)へ発展。

●TOCが明らかにした余剰の製造能力を売ることにより、  GM社との販売量を満足させながら、新市場への進出を可能にした。

TP法とスループット会計の事例Diecast Corp. (1996公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 16

3.思考プロセス法 TP とはThinking Process Method望ましいTOC流経営革新のステップ

問題解決(思考プロセス TP 法)

スループット会計・営業

生産計画(ドラム・バッファ・ロープ DBR 法)

プロジェクト管理

(クリティカルチェーン)

9

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 17

TOCの制約条件(Constraints)とは

問題解決(思考プロセス)

スループット営業

●根本原因●前提条件の

対立●方針制約●市場制約

生産計画・製造

●ボトルネック工程

●物理制約

プロジェクト管理

●リソース競合●クリティカルチェーン●方針制約

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 18

思考プロセスTP法の活用ステップ

現状問題構造ツリーCRT(Current Reality Tree)●UDE(問題・課題)を列挙●UDEの因果関係を整理●因果関係をツリー表示●中核問題を発見

①何を変えるか

対立解消図CRD(Conflict Resolution Diagram)●中核問題を反転=目的設定●目的達成の必要条件、前提条件  を展開

●対立を解消するブレークスルー  アイデアを注入

②何に変えるか

未来問題構造ツリーFRT(Future Reality Tree)●ブレークスルーアイデアの  シミュレーション

●マイナスの枝をチェックし刈り取り  のアイデアを注入

前提条件ツリーPRT(Prerequisite Tree)●目的達成の障害の整理●障害克服の中間目標の設定●中間目標の順序計画

③どうやって変えるか

移行ツリーTT(Transition Tree)

10

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 19

思考プロセスTP法の5ツリー図

出典: JMAM 加藤治彦資料

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 20

現状問題構造ツリー CRT の例

11

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 21

●1995年、Oregon社は1300万ドルの売上で赤字。  納期遵守率は60%、低い品質、労働者移動率は125%。  木製ドア市場の縮小により売上の25%が消える可能性があった。● 1996年4月よりTOCの導入を始めた。   ○DBR法: 工場内でのスループットと顧客サービスの改善。           納期通り出荷率を65%から99%へ改善。   ○TP法: 事業拡大のための営業プロセスへの応用。●スループットと在庫に焦点を絞った。  価格訴求ではなく、  顧客の生産性をいかに高めるか、  今だかって誰も考えなかった方法はないか。

●顧客にとっての問題はガラスの輸送方法だった。●顧客に共通する伝統的な梱包とラベル付けの問題 。

(次頁へ)

出典: http://www.goldratt.com/success.htm

TP法とDBR法の事例Oregon Glass (1999公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 22

●解決策は新しい輸送用ラックの開発(特許): ○顧客にとっては開梱と仕分け、コルクディスクやラベルの廃棄が不要。

    ○クリーニング工程も3回から1回に減少。   ○輸送コストもラック使用により最大30%削減。   ○顧客に50%の能力増強と内部的な破損を7%にする効果。●ガラスにひびが入っている場合の2時間サービスと相俟って、  価格を2倍にした。●Oregon社の焦点は顧客のスループットの増加と在庫低減の支援。顧客数は14%増加。

●次のオファーは顧客のガラス生産を改善して材料コストの低減に焦点。

(次頁へ)

TP法とDBR法の事例Oregon Glass (1999公表)

12

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 23

●顧客は大きなシート(102“ x 130”)から平均6平方フィートにガラスを  切り分けていた。ガラスの残りは廃棄されていた 。

●スクラップにしていたものを買い戻す提案。●これらの小さなガラスをドア産業に販売。

●これは最初の顧客のスクラップを14%も削減。

●真のwin-win関係を築いた 。

(次頁へ)

TP法とDBR法の事例Oregon Glass (1999公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 24

●今や営業担当者は、顧客の望まない効果( UDE)を集めること、  および彼らの発見を使って提案を創ることを仕事と考えている。

●これは、顧客がOregon社との関係を問題解決のパートナーの関係と  考える故に、製品にプレミアムを付加する革新的で創造的な企業で  あるという評判を得る結果となった。

●この結果、1年半でOregon社の価値は2倍となった。

●今やOregon社は競合企業により買収されている。

TP法とDBR法の事例Oregon Glass (1999公表)

13

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 25

●財務効率を改善するために在庫を削減するのが常道。●しかし、売上を増やし、顧客サポートを向上させるには在庫を増やす  必要があり、ここに対立問題がある。●Orman社は木製家具製造の中小企業。まさにこの対立問題に直面。●さらに加えて、消費者の需要に小売店の在庫を合せるためには小口の  頻繁な出荷と、これらの小口受注の出荷処理と割高な物流コストの間  で財務効率をどのようにバランスさせるかという対立問題もあった。

●家具業界では、リードタイムと(小売店での)在庫水準が  販売プロセスで最重要(critical)。●消費者は家具を選ぶときは、通常、直ぐその場で欲しい訳である。●在庫になければ、工場の出荷まで10週間のリードタイムが業界の常識。●このため、消費者は待つ代りに他メーカの製品を買う行動をとる。●小売店は無制限の在庫を持つ資金も保管場所も持たないため、  販売ロストが頻発している。

(次頁へ)

TP法と財務問題の事例Orman Grubb Furniture(1998公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 26

●Orman社のソリューションは、小口出荷は費用がかかる、リードタイム  は10週間でなければならない、頻繁な発注は小売店に多くの時間と  努力を強いるという業界常識を否定することから得られた。●小売店は「once-per-weekまたはevery-other-weekの再注文」  サイクルを与えられた。何をいつ発注するかを悩む代りに、 小売店は特定日に発注するようになり、そして前回の発注から売れた ものだけを発注するように言われた。

●このプログラムは頻繁な発注業務に関わる労働問題を解決した。●小口出荷処理のコストに関しては、運輸会社が好む混載便を中止。●この中止は、金の節約だけでなく、配達の信頼性を増し、損傷を減少。●定期サイクルが出荷の定期性(および予測可能)になることも貢献。●これらがあいまって、これらの変更は工場を流れる注文の流れを  安定化させる結果となった。

(次頁へ)

TP法と財務問題の事例Orman Grubb Furniture(1998公表)

14

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 27

●他のTOC改善策もあり、「2+2」(2週間と受注後2日)出荷を保証。●既存の小売店の売上はほとんど直ちに20%~100%増加。●Orman社がより少ない在庫投資でより大きな有効性をオファすることで、  少なくない小売店が競合他社の製品の取扱いを中止した。●「2+2」プログラムの力により、37の新しいディーラを獲得。●価格は今や主要な判断基準ではなくなった。●この強力なプログラムのお陰で、小売店は最早更なる割引、  協賛広告負担、および他の収入を低下させる要求を強要しなくなった。●Orman社の評判が高まるにつれ、ディーラを選別できるになった。  仕入が悪く、期日通りに支払いをしない信用度の劣る小売店を切る  ことができるようになった。

●当初は懐疑的であった競合企業も、その変化に驚嘆している。●競合企業が真似を始めても、Orman社は既に2つ以上の新プログラム  を用意しているので、急成長を維持できると考えている。

TP法と財務問題の事例Orman Grubb Furniture(1998公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 28

4.営業強化法「マフィアオファ」とは“Unrefusable Offers”

市場に制約がある(簡単に言えば売れなくて工場が遊んでいる状態)場合には、工場の生産性向上は効果が少なく(コストダウンは更なる価格の低下を誘導する)、営業強化策が必要である。

           TOC流の営業強化法

●対立問題を解消する問題解決法「思考プロセス TP法」。  特に「対立解消図」によるブレークスルーが重要。●「スループット会計」に基づく製品販売ミックス。●顧客とベンダーとの関係を強化する「マフィアオファ Unrefusable Offers」。

15

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 29

●南アフリカのMedia社が車の補修用ブレーキホース・アセンブリを扱う  前の顧客の悩み:

   >高品質の純正部品を車のディーラに発注し、2~3日待って高い     費用を負担する方法。

   >中古品同様な低品質のものを購入する方法。

●Media社の創業者は事業機会を見つけ、イタリアの高品質で有名な  メーカ CEF社と マフィアオファ「拒否できない取引」を結んだ。

(次頁へ)

出典: http://www.goldratt.com/success.htm

TP法とマフィアオファの事例Media Automotive (1999公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 30

●このマフィアオファは、CEF社が750,000 SAR (南アフリカの通貨)の価値の製品を南アフリカの指定倉庫に保管。必要なときにMedia社に販売し、在庫引き落とし後90日の支払い認め、為替リスクを避けるためにSARで支払いを行い、Media社に南アフリカでの独占販売権を認めるというもの。

●これは一方的にMedia社に有利に見える。

●しかし、CEF社の観点では取引に魅力があった。  つまり、これ以前にはCEF社の南アフリカでの売上はほとんどゼロ。  Media社は1年以内に200万SARの販売量を確約した。

(次頁へ)

TP法とマフィアオファの事例Media Automotive (1999公表)

16

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 31

●これを実現した方法はTP法。●鍵は全ての「望ましくない効果(UDE)」を特定化し、その根本原因である対立問題を明確化した。●TP法の現状問題構造ツリー図と対立解消ツリー図を使って、  基本的な対立問題を発見し解決した。  CEF社もこのオファーに合意。

●Media社は約束通り200万SAR以上を達成し、  補修用ホース市場を完全に掌握。

●既存ディーラも反撃: リードタイムを短縮。価格を劇的に値引き。                極東・南米製造の安価なCEF社製品を輸入。●Media社はCEF社と「Win-Win」関係を構築し、CEF社が簡単には拒否できないオファーで両社を連携した。Media社は成功を収め、市場のルールを完全に変えて市場を支配。

TP法とマフィアオファの事例Media Automotive (1999公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 32

●Allied社は英国に本社のある生命保険・年金基金の企業。●紙、金融、安全およびサービスの分野でTP法とDBR法を上手に使用。

●Allied社の売上の15%はクライアントに差し向けられた独立のファイナンシャル・アドバイザーから得る。

  残りの85%が社内の営業部隊。

●見込み客の名前が集められ、ふるいにかけられ、

  最初の訪問がなされ、  二度目の訪問。  それからペーパーワークが続き、最後に証券あるいは製品の発行。

(次頁へ)

出典: http://www.goldratt.com/success.htm

TP法とDBR法の事例Allied Dunbar (1995公表)

17

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 33

●DBR法を適用することにより、最初の訪問(appointment)がドラムであることが判明。

●改善策:   ○Allied社はアポイントの取付をテレマーケティング部門に移管。   ○獲得した各アポイントメントにコミッションを払う。●これは良かったが、十分ではなかった。  (理由)ベスト・セールスマンに対して厳しい競争があるため。●TP法はベスト・セールスマンのリクルートに応用。●成果: 売上を67%増加。

●スタッフにTOCを教育することで、市場にDBRを適用し、TPで分析。●彼らは市場を完全に分析する必要性を理解し、同時に製品を市場や競合に遅れをとることができないことを理解した。  そのために多くの改善の余地があることを理解した。

TP法とDBR法の事例Allied Dunbar (1995公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 34

●Alphamet社は複数の金属を扱うブローカ。1988年創業。  生き残るためには優れたサービスの提供が必要と考えた。

●TP法を使い、ベンダーと顧客に対してUnrefusable Offers(拒否できないオファー)を提案。

●現在および見込みの顧客に対してFAXで問題とニーズの調査。  48時間以内に市場調査結果を得る。

●顧客ニーズに応えるためにはベンダーのサポートが必要と判明。ベンダー3社に対して Unrefusable Offersを行った。

  2社が拒否し、1社が受諾。  この1社が市場に残った唯一の主要企業となった。

(次頁へ)

出典: http://www.goldratt.com/success.htm

TP法とマフィアオファの事例Alphamet (UK) Ltd. (1998公表)

18

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 35

●次に、見込み客に対してUnrefusable Offersを提案。

●オファーに盛り込まれた項目は全て「非常に単純」な交渉事であり、  顧客の欲求を顧客に与える内容であった。

●この時期に行った他の対策:   ○工場を更新し、市場の要求するように製品の幅を広げた。   ○動きの少ない在庫を損失として一括廃棄。   ○目標とする市場に資源を集中するために、衰退市場から撤退。   ○一旦決めたコースに固執し、他の邪魔者には目もくれない。

(次頁へ)

TP法とマフィアオファの事例Alphamet (UK) Ltd. (1998公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 36

●2年後の成果:   ○英国市場シェアがわずか15%から80%へ拡大。   ○税引き前利益が54倍。さらに増加中。   ○粗利率が29%から41%へ増大。   ○1998年度の税引き前利益は92.6倍へ。   ○その他、給与の増加、ボーナス支給、増力効果 等。   ○Y2K問題に備えてコンピュータの入れ替え。

●Alphamet社は、競合各社が自滅してくれたお陰であり、  生き残るためにUnrefusable Offersを戦略として用意していたため  と認識している。

●引き続き社内の対立と制約条件に本気になって取り組み中。

TP法とマフィアオファの事例Alphamet (UK) Ltd. (1998公表)

19

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 37

●TIM社は100年の歴史のあるオフィス・サプライ販売会社。  12億ドル市場に1800万ドルを売る。

●TOC導入前はbox pusherであったが、今ではサービス企業。  TIM社の「ゴール」は市場へのMafia Offerの適用。

●市場のUDE:    ○オフィス・サプライは必要なときに利用できない。   ○必要になったときに、「last minute ordering」は非常に高価。

(次頁へ)

出典: http://www.goldratt.com/success.htm

TP法とマフィアオファの事例Tim Voor Kantoor(1996公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 38

●Mafia Offer:    ○クライアントのオフィスにTIM社の保管庫を置き、在庫しておく。   ○毎週使用した品目リストを受け取る(Never Ending Store)。●運用の課題:    ○足の速いものと遅いものにバッファー管理を導入。   ○クライアントによってはTIM社から遠く離れているために、     在庫と補充を行うフランチャイズ組織を必要とした。   ○Mafia offerを売る方法を学ぶ必要があった。   ○Mafia offerの受入を決める意思決定者は購入エージェントよりも     組織の上位にいる。経営層に利益を感じさせるようにオフィスサプ     ライの課題を高めることが困難。   ○Never Ending Storeを使うクライアントがほとんどいなかったので、     フランチャイズ展開の開始が困難であった。

(次頁へ)

TP法とマフィアオファの事例Tim Voor Kantoor(1996公表)

20

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 39

●解決策:    ○フランチャイジ教育するインターナルマーケティング担当者を採用。   ○Never Ending Storeを売るためのTT(移行ツリー)を開発。

●成果:   ○クライアントのオフィスサプライ使用量が2倍~3倍。     以前は別の会社から購入していたものをTIM社から購入。   ○複写機やFAX機の注文を開始。     毎週TIM社の補充担当者が訪問するため注文しやすくなった。   ○くすねること(Pilferage)がほとんどゼロ(以前は10%~20%)。   ○今や量の削減に伴い、持っていける最大量がある。   ○会計も良好。

TP法とマフィアオファの事例Tim Voor Kantoor(1996公表)

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 40

企業組織の3コアプロセスへのTOCの適用

●カストマーリレーション業務: TPとマフィアオファ   顧客を見つけ出し、顧客とのリレーションシップを築く。   「範囲の経済」●イノベーション業務: TPとクリティカルチェーン   顧客・市場にとって魅力的な製品・サービスを考案し、   商品化する最善策を見出す。   「速度の経済」●インフラ管理業務: TPとDBR   日々繰り返される膨大な作業。   たとえば、ロジスティック、生産、流通等。   「規模の経済」

出典: 「アンバンドリング:大企業が解体されるとき」ヘーゲルⅢ&シンガー DHB2000年5月号

21

Copyright H.Fujikawa SCM研究会020126資料 41

ご清聴有難うございました。ご質問は下記にどうぞ。

プロセスチェーン研究所藤川博巳

[email protected]中小企業診断士、技術士(情報工学)、CMfg/E(米国 SME)