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太陽光発電設備と蓄電設備を組み合わせた給電システムの実証評価 ○森田祐志,尾本和夫,横地哲也,福島靖(株式会社きんでん) Evaluate the performance of hybrid power generation system combining solar power generation system with battery power system MORITA Hiroshi, OMOTO Kazuo, YOKOCHI Tetsuya, FUKUSHIMA Yasushi (Kinden Corporation) キーワード:太陽光発電,鉛蓄電池,グリッド管理装置 1.まえがき 環境省と国土交通省の連携事業「災害時にも効果的な 新宮港地域低炭素化推進事業」(代表実施者:新宮港埠頭 株式会社)の共同実施者として,システムの運転評価をお こなった。本事業の目的は,港湾地域での二酸化炭素削減 と災害等非常時における電源確保であり,これらを満足 すべく新宮港(和歌山県新宮市)に太陽光発電設備と蓄電 池設備を組み合わせたシステムを設置して評価を行った。 2.実証システム概要 2.1 システム構成 図1 に今回導入した設備の基本システム構成図を示す。 太陽光発電設備と鉛蓄電池設備は,グリッド管理装置を 介して,系統電源と連系されている。グリッド管理装置は, 双方向インバータを内蔵しており,太陽光発電と鉛蓄電 池の電力の潮流を制御することにより,負荷への系統電 源からの電力供給を一定値以下に制限する給電制御装置 である。また,災害等による系統電源の停電時においても 太陽光発電の電力と鉛蓄電池の電力により負荷へ電力供 給を継続することができる。 図 1 基本システム構成図 図中の矢印は電力潮流を示し,線の色は,それぞれ負荷 に対する太陽光発電電力の「電力余剰時」・「電力不足時」, 「系統停電時」の潮流である。例えば,「電力余剰時」は, 太陽光発電の電力は,負荷で消費されるとともに鉛蓄電 池に充電し,さらに系統電源へ逆潮流される。 2.2 システム仕様 太陽光発電設備,鉛蓄電池設備,グリッド管理装置から 構成されるシステムを新宮港内で負荷用途が違う2箇所 (管理棟,チップヤード)に設置した。 管理棟には,新宮港湾全体を管理するための管理事務 所および会議室などがある。このため,グリッド管理装置 の負荷として,管理事務所および会議室の冷暖房設備,照 明設備等とした。 表 1 に管理棟のシステム仕様を示す。 表 1 管理棟のシステム仕様 設備 仕様 太陽電池モジュール 多結晶シリコン太陽電池 10.32kW(215W×48 枚) 太陽電池用 PCS 10kW,入力:DC200~500V,出力:AC3φ3W200V グリッド管理装置 20kW,入力:AC3φ3W200V,出力:AC3φ3W200V 鉛蓄電池 制御弁式据置鉛蓄電池 DC288V,330Ah(10 時間率) チップヤードでは,夜間照明,電動フォークリフト,チ ップヤード操作室(事務所)の照明,空調設備の一部をグ リッド管理装置の負荷とした。 チップヤードは,貨物船により運搬される木材チップ を集積する場所であり,グリッド管理装置の主な負荷は, 作業用夜間照明である。このため管理棟と違い,太陽光発 電設備が発電している時間帯と負荷の消費時間帯が異な る特徴がある。表 2 にチップヤードのシステム仕様を示 す。 表 2 チップヤードのシステム仕様 設備 仕様 太陽電池モジュール 多結晶シリコン太陽電池 103.2kW(215W×480 枚) 太陽電池用 PCS 100kW,入力:DC200~500V,出力:AC3φ3W200V グリッド管理装置 100kW,入力:AC3φ3W200V,出力:AC3φ3W200V 鉛蓄電池 制御弁式据置鉛蓄電池 DC288V,1000Ah(10 時間率) 3.実証評価 グリッド管理装置には,系統電源から負荷への電力供 給を制限する「ピークカット運転モード」,系統電源から 負荷へ電力供給を行わず,鉛蓄電池と太陽光発電から電 力を供給する「自立運転モード」,災害等非常時に系統電 2015 年電気設備学会全国大会 Copyright © 2015 IEIEJ -81- B-9

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太陽光発電設備と蓄電設備を組み合わせた給電システムの実証評価 ○森田祐志,尾本和夫,横地哲也,福島靖(株式会社きんでん)

Evaluate the performance of hybrid power generation system combining solar power generation system

with battery power system MORITA Hiroshi, OMOTO Kazuo, YOKOCHI Tetsuya, FUKUSHIMA Yasushi (Kinden Corporation)

キーワード:太陽光発電,鉛蓄電池,グリッド管理装置

1.まえがき

環境省と国土交通省の連携事業「災害時にも効果的な

新宮港地域低炭素化推進事業」(代表実施者:新宮港埠頭

株式会社)の共同実施者として,システムの運転評価をお

こなった。本事業の目的は,港湾地域での二酸化炭素削減

と災害等非常時における電源確保であり,これらを満足

すべく新宮港(和歌山県新宮市)に太陽光発電設備と蓄電

池設備を組み合わせたシステムを設置して評価を行った。

2.実証システム概要

2.1 システム構成

図1に今回導入した設備の基本システム構成図を示す。

太陽光発電設備と鉛蓄電池設備は,グリッド管理装置を

介して,系統電源と連系されている。グリッド管理装置は,

双方向インバータを内蔵しており,太陽光発電と鉛蓄電

池の電力の潮流を制御することにより,負荷への系統電

源からの電力供給を一定値以下に制限する給電制御装置

である。また,災害等による系統電源の停電時においても

太陽光発電の電力と鉛蓄電池の電力により負荷へ電力供

給を継続することができる。

図1 基本システム構成図

図中の矢印は電力潮流を示し,線の色は,それぞれ負荷

に対する太陽光発電電力の「電力余剰時」・「電力不足時」,

「系統停電時」の潮流である。例えば,「電力余剰時」は,

太陽光発電の電力は,負荷で消費されるとともに鉛蓄電

池に充電し,さらに系統電源へ逆潮流される。

2.2 システム仕様

太陽光発電設備,鉛蓄電池設備,グリッド管理装置から

構成されるシステムを新宮港内で負荷用途が違う2箇所

(管理棟,チップヤード)に設置した。

管理棟には,新宮港湾全体を管理するための管理事務

所および会議室などがある。このため,グリッド管理装置

の負荷として,管理事務所および会議室の冷暖房設備,照

明設備等とした。表1に管理棟のシステム仕様を示す。

表1 管理棟のシステム仕様 設備 仕様

太陽電池モジュール多結晶シリコン太陽電池

10.32kW(215W×48枚)

太陽電池用PCS 10kW,入力:DC200~500V,出力:AC3φ3W200V

グリッド管理装置 20kW,入力:AC3φ3W200V,出力:AC3φ3W200V

鉛蓄電池 制御弁式据置鉛蓄電池

DC288V,330Ah(10時間率)

チップヤードでは,夜間照明,電動フォークリフト,チ

ップヤード操作室(事務所)の照明,空調設備の一部をグ

リッド管理装置の負荷とした。

チップヤードは,貨物船により運搬される木材チップ

を集積する場所であり,グリッド管理装置の主な負荷は,

作業用夜間照明である。このため管理棟と違い,太陽光発

電設備が発電している時間帯と負荷の消費時間帯が異な

る特徴がある。表 2 にチップヤードのシステム仕様を示

す。

表2 チップヤードのシステム仕様 設備 仕様

太陽電池モジュール多結晶シリコン太陽電池

103.2kW(215W×480枚)

太陽電池用PCS 100kW,入力:DC200~500V,出力:AC3φ3W200V

グリッド管理装置 100kW,入力:AC3φ3W200V,出力:AC3φ3W200V

鉛蓄電池 制御弁式据置鉛蓄電池

DC288V,1000Ah(10時間率)

3.実証評価

グリッド管理装置には,系統電源から負荷への電力供

給を制限する「ピークカット運転モード」,系統電源から

負荷へ電力供給を行わず,鉛蓄電池と太陽光発電から電

力を供給する「自立運転モード」,災害等非常時に系統電

2015 年電気設備学会全国大会

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源が停電した場合,鉛蓄電池と太陽光発電から負荷へ電

力を供給する「バックアップ運転モード」がある。

ここでは,管理棟における本システムの標準的な動作

のみ説明する。運転パターンは以下の通りである。

①昼間時間帯:ピークカット運転モード

(ピークカット電力値10%)

②夜間時間帯:自立運転モード

ピークカット電力値10%は,20kWのグリッド管理装置

の場合,2kW(20kW×10%)までを系統電源からの供給と

して,その他を太陽光発電,鉛蓄電池からの供給とするこ

とを意味する。

図2に太陽光発電電力(PV),傾斜面日射強度の2014年

1月27日(平日,晴天日)1日間の計測値の推移を示す。

PVの発電電力が日射強度と比例していることがわかる。

図2 太陽光発電電力,傾斜面日射強度の推移

図 3 に同じ日のグリッド管理装置入出力電力,蓄電池

電力の推移を示す。グリッド管理装置入力電力(系統側)

の「+」側は受電を示し,「-」側は逆潮を示す。蓄電池電力

の「+」側は放電を示し,「-」側は充電を示す。グリッド管

理装置の出力電力(負荷側)は,負荷合計電力と太陽光発

電電力との差を示すため,「+」側はPV不足を示し,「-」

側はPV余剰を示す。自立運転モードである0:00~7:00,

17:00~24:00 の時間帯はグリッド管理装置への入力電力

が 0kW となっており,系統電源から受電していない。こ

の時間帯は太陽光発電電力が 0kW であるため,グリッド

管理装置からの出力は負荷合計の電力のみを示しており,

負荷へは蓄電池からのみ電力供給されている。7:00~

17:00 の時間帯はピークカット運転モードとなっており,

PV だけでは足りない電力について,グリッド管理装置

(20kW)の定格の 10%である 2kW までは系統電源から受電

するようにしている。このため7:00~8:30頃にグリッド

管理装置入力電力が1kW程度受電している。

グリッド管理装置からの出力電力がPV余剰となってい

る時間帯では蓄電池に充電し,蓄電池へ充電してもさら

に余剰となった太陽光発電電力は,グリッド管理装置を

介して系統電力に逆潮している。

図 3 においては,グリッド管理装置の入力電力特性と

して示している。

図3 グリッド管理装置入出力電力,蓄電池電力の推移

図 4 に同じ日のグリッド管理装置出力電力,太陽光発

電電力,特定負荷合計電力の推移を示す。グリッド管理装

置の負荷は,3種類の特定負荷としている。グリッド管理

装置からの出力電力は特定負荷合計電力と太陽光発電電

力との差で表され,たとえば 11:00 において太陽光発電

電力が約8kW,特定負荷合計電力約3kWであり,その差約

5kWがグリッド管理装置の蓄電池に供給されている。また

16:00前後においては,負荷電力が太陽光発電よりも大き

いため,蓄電装置からの電力が供給されていることがわ

かる。

図4 グリッド管理装置出力電力,太陽光発電電力,

特定負荷合計電力の推移

4.まとめ

本稿では,新宮港に設置した太陽光発電設備,鉛蓄電池

設備,グリッド管理装置から構成されるシステムの実証

評価について,その概要と代表的な動作について述べた。

本稿では誌面の都合により割愛したが,本システムで

当初想定した系統電源停電時も含めた動作が,問題なく

できることを確認している。

謝辞:本研究は,環境省と国土交通省の連携事業「災害時

にも効果的な新宮港地域低炭素化推進事業」での研究成

果の一部であり,関係各位に感謝をいたします。

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電力

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グリッド管理装置出力電力 太陽光発電電力 特定負荷(1)(2)(3)合計電力

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X-means 法を利用したニューラルネットワークによる

ウィンドファームの短期発電出力予測 ○花田一磨(八戸工業大学),濱島高太郎(前川製作所)、宮城大輔、津田理(東北大学)、 槙田康博、新冨孝和(高エネルギー加速器研究機構)、谷貝剛、高尾智明(上智大学)、

辻上博司、藤川静一、岩城勝也(岩谷産業)、平野直樹(中部電力)

Short-Term Wind Power Forecasting by Artificial Neural Network using X-means HANADA Kazuma (Hachinohe Institute of Technology),

HAMAJIMA Takataro (Mayekawa MFG.Co.,Ltd.), MIYAGI Daisuke, TSUDA Makoto (Tohoku University),

MAKIDA Yasuhiro, SHINTOMI Takakazu (High Energy Accelerator Research Organization: KEK), YAGAI Tsuyoshi, TAKAO Tomoaki (Sophia University),

TSUJIGAMI Hiroshi, FUJIKAWA Shizuichi, IWAKI Katsuya (Iwatani Corporation) and HIRANO Naoki (Chubu Power Co.,Inc.)

キーワード:再生可能エネルギー、ニューラルネットワーク、短期出力予測、超電導磁気エネルギー貯蔵装置

1.はじめに

地球環境問題やエネルギー資源問題を背景として再生

可能エネルギー利用のさらなる拡大が求められているが、

太陽光発電や風力発電のように発電出力が天候に大きく

左右される再生可能エネルギー発電が大量導入されると

既存の電力システムを不安定にする可能性がある。そこ

で我々は再生可能エネルギー発電と超電導磁気エネルギ

ー貯蔵装置(Superconducting Magnetic Energy Storage:

SMES)および燃料電池と電気分解装置からなる水素エネ

ルギー貯蔵システムを組み合わせてシステムからの出力

を平準化する先端超電導電力変換システム(Advanced

Superconducting Power Conditioning System: ASPCS)の検討

をしている 1)。

本システムでは、変動する再生可能エネルギー発電の

出力平準化を行うにあたり、分オーダーのトレンドを燃

料電池-水電解装置(FC-EL)が分担し、それ以上の速い

出力は大電力の入出力応答性に優れた SMESが分担する。

このときFC-ELは分オーダーの遅れ時間で動作するので、

その遅れ時間に相当する将来の再生可能エネルギー発電

出力の平均値を予測することが SMES容量の最適化に重

要となる。これまでの研究において、出力のトレンドが

予測しづらく変動量も大きい風力発電に対してカルマン

フィルタやニューラルネットネットワーク(Artificial

Neural Network: ANN)を活用した風力発電出力の予測を

行っている 2), 3)。後者のニューラルネットワークの特徴と

しては、多数のサンプルデータを使って従属変数と独立

変数の間にある関係を学習により構築することができる

ため、従属変数と独立変数の間にある関係を記述しなく

ても良いという点が挙げられるが、サンプルデータに矛

盾するデータ(独立変数が(ほぼ)同じなのに従属変数

の値が異なるデータ)が含まれていると学習過程が完了

しない場合が多い。このため、クラスタリング手法の一

つであるk-means法 4), 5)を用い、学習用データをクラスタ

リングしてまとめることが考えられる。しかしながら

k-means法はクラスタリング後のクラスター数を決めて

からクラスタリングするため、適切なクラスター数を試

行錯誤的に決定しなければならない。このため、今回は

k-means法のクラスター数を自動決定する方法の一つで

あるx-means法 6)を用い、風力発電出力データをクラスタ

リングし、その結果を元に出力予測を行うこととした。

なお、本研究は科学技術振興機構先端的低炭素化技術

開発事業の助成を受けて実施されたものである。

2.k-means法とx-means法

2.1 k-means法:k-means法はデータ分類を行うクラ

スタリング手法の一つであり、与えられたデータをクラ

スターの平均を用いて k 個のクラスターに分類する。

k-means法の手順は次の通りである。

(i) クラスターの個数 kを定める。

(ii) 各データ xi (i = 1, 2, …, n)に対してランダムにクラ

スターを割り振る。

(iii) 割り振ったデータを元に、各クラスターの中心 cj (j

= 1, 2, …, k)を計算する。

(iv) 各データ xiと各クラスター中心 cjの距離を求め、

各データ xiを最も近い中心のクラスターに割り当

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て直す。

(v) 上記の処理ですべての xiのクラスターの割り当て

が変化しなかった場合は処理を終了する。それ以

外の場合は新しく割り振られたクラスターからク

ラスター中心 cjを再計算して上記の計算を繰り返

す。

2.2 x-means法:上述したk-meansは分類後のクラス

ター数 k を指定してクラスタリングを行うが、このクラ

スター数 kを自動決定する方法の一つにx-means法 があ

る。x-means法の手順は次の通りである。

(i) k = 2としてk-means法を適用する。

(ii) 分割してできた各クラスターについて k=2として

k-means法を適用する。

(iii) 各クラスターについて分割前と分割後のベイズ情

報量基準を計算する(分割前のそれを BIC、分割

後をBIC'とする)。

(iv) BIC>BIC'であるなら、クラスターを分割し、

BIC≦BIC'であるなら分割しない。

(v) (ii)~(iv)をクラスターが分割できなくなるま

で繰り返す。

3.x-means法の風力発電出力データへの適用

3.1 予測対象とする風力発電出力データ:図 1 に示

す時系列データ(10秒毎、8640個)を使用する。

3.2 ニューラルネットワークの構造の決定:過去の

方法 2), 3)に倣い5期(50秒)先の発電出力を予測すること

とする。カオス時系列予測の際にも用いられる誤り近傍

法を用いるため、遅れ時間を5期先と同じくτ = 5として

誤り近傍法 7)を適用する。その結果、次元数 m は m = 9

もしくは10となる。この結果から、x(n+τ)、x(n)、x(n – τ)、x(n – 2τ)、x(n – 3τ)、x(n – 4τ)、x(n – 5τ)、x(n – 6τ)、x(n – 7τ)、x(n – 8τ)、x(n – 9τ)と並べた時系列データはほぼ独立とな

るため、x(n)、x(n – τ)、…、x(n – 9τ)をニューラルネット

ワークの入力、x(n + τ)を出力とすることとした。

3.3 x-means法による風力発電出力データのクラスタ

リング:手元には図1のデータを含めて15日分(10秒毎、

8640個/日×15日=129,600個)のデータがあるため、予

測対象とする図1のデータを除いた14日分(120,960個)

のデータを x-means法を用いてクラスタリングする。そ

の結果、クラスター数は k = 5,125となり、各クラスター

中心を得ることができた。

3.4 ニューラルネットワークの学習と予測:3.3

で得られた 5,125個のクラスター中心を学習用データと

してニューラルネットワークを学習させ、図 1 の風力発

電出力データを予測した。予測にあたっては統計処理ソ

フトSPSS Statistics 20の「多層パーセプトロン」で①中間

層を1層のみの場合、②2層とした場合と、MATLAB の

Neural Network Toolboxで中間層を③1層で中間層ニュー

ロン数を30、④20、⑤中間層を2層1層目のニューロン

数を10、2層目のニューロン数を10としてレーベンバー

グ・マーカート法により学習させた。この結果を表1に、

また、参考までに 10,000~11,000秒のデータの予測の様

子を図2に示す。なお、比較のため、

5

)4()3()2()1()()5(

−+−+−+−+=+ nxnxnxnxnxnx

として⑥移動平均を用いて予測したものと、⑦以前

k-means法でクラスター数 k = 5,000としてニューラルネ

ットワークで学習・予測したものも示す。さらに、風力

発電出力を予測し実績値とのギャップを SMESで蓄積・

放出する場合に SMESに蓄積・放出されるエネルギーの

分布を図3に示す。

以上の結果より、x-means法を用いて学習用データをク

ラスタリングしたニューラルネットワークと移動平均に

よりトレンドを予測した結果を比較すると、時系列予測

に関する評価はほぼ同等であるが、SMESに蓄積・放出

するエネルギーを1割程度低減させることができており、

今回の提案手法は成功しているといえる。

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風力発電出力

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時間[10s]

図1 予測対象とする風力発電出力データ

図2 予測の例

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表1 予測結果

SPSS MATLAB

⑥移動平均 ⑦ k = 5000と

してANNで

予測 ①中間層

1層 ②中間層

2層 ③30 ④20 ⑤10, 10

最大差[%] 0.71 0.72 0.70 0.73 0.68 0.72 0.68

最小差[%] -0.69 -0.69 -0.71 -0.73 -0.70 -0.65 -0.66

平均差[%] 0.0077 0.0085 0.0107 0.0098 0.0108 -0.0007 0.028

分散[(%)2] 0.0269 0.0268 0.0262 0.0262 0.0261 0.0279 0.025

標準偏差[%] 0.16 0.16 0.16 0.16 0.16 0.17 0.16

最大絶対差[%] 0.71 0.72 0.71 0.73 0.70 0.72 0.69

平均絶対差[%] 0.13 0.13 0.13 0.13 0.13 0.13 0.13

蓄積 エネルギ ー[MJ]

最大 64.60 64.40 68.93 61.91 65.36 73.48 72.03

最小 -64.77 -68.66 -63.17 -61.39 -61.57 -83.41 -61.77

平均 0.35 0.37 0.48 0.44 0.48 -0.04 1.445

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(a) 予測結果① (b) 予測結果② (c) 予測結果③

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30

35

-100 -50 0 50 100

fre

qu

en

cy[%

]

charge/discharge power of SMES[MJ]

0

5

10

15

20

25

30

35

-100 -50 0 50 100

fre

qu

en

cy[%

]

charge/discharge power of SMES[MJ]

(d) 予測結果④ (e) 予測結果⑤ (f) 予測結果⑥

0

5

10

15

20

25

30

35

-100 -50 0 50 100

fre

qu

en

cy[%

]

charge/discharge power of SMES[MJ]

(g) 予測結果⑦ 図3 SMESの充放電エネルギーの分布

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4.今後の課題

今回はニューラルネットワークによるウィンドファー

ムの発電出力予測の際に x-means法を利用してニューラ

ルネットワークの学習用データをクラスタリングするこ

とで、学習の困難さを解消した。また、x-means法の特徴

により、学習用データが更新されてもクラスター数を自

動決定できるため、試行錯誤的な調整をしなくても済む

ようになることが期待される。

今後は従来手法であるカルマンフィルタで使用してい

るモデルの再検討および非線形カルマンフィルタの適用

やニューラルネットワーク手法の一つであるボルツマ

ン・マシン等の適用の検討を行っていく。

5.参考文献

1) T. Hamajima et al.: “Application of SMES and

Fuel Cell System Combined with Liquid Hydrogen

Vehicle Station to Renewable Energy Control”, to be

published in IEEE Trans. on Appl. Supercond. (2012)

2) 中山知紀他:「カルマンフィルタ予測による変動電

力補償用SMESの容量最適化の検討」,低温学会、Vol. 45,

No.3,pp.99-106 (2010)

3) 花田一磨他:「ニューラルネットワークを用いたウ

ィンドファームの短期発電出力予測(その2)」,2013年

(第31回)電気設備学会全国大会,B-18,(2013)

4) J. B. MacQueen, “Some methods of classification

and analysis of multivariate observations,” Proc. Of

5th Berkeley Symposium on Math, Stat. and Prob., pp.

281-297 (1967)

5) E. W. Forgy, “Cluster analysis of multivariate

data: efficiency vs. interpretability of classifications,”

Biometrics, Vol21, pp. 768-769(1965)

6) 石岡恒憲:「クラスター数を自動決定する k-means

アルゴリズムの拡張について」,応用統計学,Vol.29,No.3,

pp.141-149 (2000)

7) 合原一幸編:「カオス時系列解析の基礎と応用」,産

業図書 (2000)

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長期運用中の太陽電池モジュールの状態解析 ○鳥原 亮(宮崎県工業技術センター),深町 友(宮崎大学),林 則行(宮崎大学)

State analysis of a solar cell module during long-term use TORIHARA Ryo (Miyazaki Prefecture Industrial Technology Center),

FUKAMACHI Yu (University of Miyazaki) and HAYASHI Noriyuki (University of Miyazaki)

キーワード:太陽電池診断,電流電圧特性測定,EL測定,配線路探査

1.まえがき

太陽光発電システムは長期の運用において様々な環境

ストレスを受け,想定しない発電量の低下や火災などの

事故を引き起こす可能性がある。そのため,システムの

状態監視が必要となる。太陽電池モジュールにおいては

電流電圧特性測定(I-V特性測定)や配線路探査器によ

る通電チェックなど,現地で実施できる点検方法の他に,

モジュールを構成する太陽電池セルの微少なクラックを

画像で解析するEL測定などが知られている。本報では

運用開始から15年経過した多結晶シリコン太陽電池モ

ジュールの出力劣化状況等を把握するため,システム中

の1ストリングについて各種解析した結果を報告する。 2.実験装置と実験方法

2.1 I-V特性測定

対象の太陽電池ストリングは,多結晶シリコン太陽電

池モジュールが12枚直列接続されたものである(図1)。

屋外にてストリング一括及びモジュール1枚毎の I-V 特

性測定を行い,基準状態に換算した出力値と定格出力値

の比較を行った。

図1 実験した太陽電池アレイの構成

2.2 EL測定

2.1で測定した12枚の太陽電池モジュールを架台か

ら取り外し,図2のような暗室にてEL測定を実施した。

EL 測定とは太陽電池に電流を通電した時に放射される

近赤外光の発光状況を撮影する手法である 1)。太陽電池セ

ル間のはんだ不良や微少なクラック等が発生している場

合,その付近はモジュールに電流が流れないために,発

光せず暗く映る。

図2 EL測定環境

2.3 配線路探査器による通電状態の解析

太陽電池モジュール内部の通電状態を解析するため,

配線路探査器を用いて太陽電池モジュール内部の通電不

良箇所を調査した。具体的には,ストリングに送信器を

接続し,そこから発する微小な電気信号を太陽電池モジ

ュール側に近づけた受信器で受信するという手法で,加

藤2)によって報告されている。太陽電池モジュールのイン

ターコネクタに沿うように受信器を動かすことで,通電

状態を細かく観測することができる。

3.実験結果と考察

3.1 I-V特性測定の評価

表1に 12 枚の太陽電池モジュールそれぞれの最大出

力(Pm),最大出力動作電流(Ipm),最大出力動作電圧

(Vpm),短絡電流(Isc),開放電圧(Voc),曲線因子(FF)を示す。最も出力の高いモジュール№10で定格出力の約

86%,最も低いモジュール№9 で定格出力の 14%という

結果が得られた。ストリングの最大出力は 746W で,定

格値の57%であった。

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表1 太陽電池モジュール12枚の特性評価(定格出力108W) 番号 №1 №2 №3 №4 №5 №6 №7 №8 №9 №10 №11 №12

Pm(W) 88.4 79.5 84.0 16.8 79.0 50.1 84.6 66.3 15.0 93.5 71.5 77.9

Ipm(A) 4.14 3.46 3.67 3.13 3.30 2.76 3.64 3.13 0.91 4.40 3.29 3.43

Vpm(V) 21.3 23.0 22.9 5.37 23.9 18.1 23.2 21.2 16.6 21.2 21.7 22.7

Isc(A) 5.34 5.32 5.45 4.87 4.95 3.93 5.57 5.18 2.45 5.41 4.87 5.11

Voc(V) 30.5 31.7 30.9 9.09 31.1 34.8 30.9 33.2 24.7 30.6 29.8 30.9

FF 0.54 0.47 0.49 0.37 0.51 0.36 0.49 0.38 0.27 0.56 0.49 0.49

図3 モジュール№9のEL像 図5 モジュール№9の通電不良箇所

図4 モジュール№10のEL像 図6 モジュール№10の通電不良箇所

3.2 EL測定による評価

12枚のモジュールのうち,出力低下が最も著しかったモ

ジュール№9 と最も低かったモジュール№10 のEL画像

を図3および図4に示す。モジュール内部の54セルのう

ち,モジュール№10では暗転箇所が1箇所,モジュール

№9では21箇所見られた。 3.3 配線路探査器による評価

配線路探査器で得られたモジュール№9 とモジュール

№10の通電不良箇所をそれぞれ図5と図6に示す。図内

の斜線部が通電不良箇所で,おおよそ図3と図4で示し

たEL画像の暗転部とほぼ一致していることがわかる。

4.まとめ

長期運用中の太陽電池モジュールの状態解析を行い,

出力低下の状況やその原因を数値や画像として確認する

ことができた。しかしながら,このような解析を実際の

現場で行うことは容易ではない。今後さらなる解析を行

い,現場に有用な不良診断,不良検出法を追究していく。 本研究を遂行するにあたり,協力いただいたみやざき

新産業創出研究会 次世代エネルギー活用技術分科会の

メンバーに謝意を表する。

文 献 1) 冬木隆:「エレクトロルミネセンスを用いた結晶系シ

リコン太陽電池の欠陥検査法」,検査技術,第19巻第4号,日本工業出版,pp.17~20(2014) 2) 加藤和彦:「太陽光発電システムの不具合事例ファイ

ル」,日刊工業新聞社,pp.38~40(2010)

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大規模太陽光発電所におけるパネル洗浄と発電効率向上の取組み

○ 山中宗一,長 孝良(九電工)

石原 修(住環境計画研究所 熊本大学名誉教授),徳永多知男(メディオ総合設計)

Study on the Panel Cleaning and the Efficiency of Generation in a large-scale PV Generation Plant

YAMANAKA Soichi,CHO Takayoshi(Kyudenko.co), ISHIHARA Osamu(JYUKANKYO RESEACH INSTITUTE INC.

,Emeritus Professor of Kumamoto University)and TOKUNAGA Tachio(Medio design Ltd.) キーワード:大規模太陽光発電,散水システム,再生可能エネルギー

1.はじめに

東日本大震災,福島第一原発の事故以来,日本のエネ

ルギー供給体制は大きく変化し,とりわけ再生エネルギ

ーに大きな注目が集まっている。 平成24年7月より再生エネルギーの固定価格買取り制

度(FIT)が開始された。中でも太陽光発電施設の設置は

大きな役割を示した。九州地区の例を見れば,九州経済

産業局の集計で,平成 26 年 11 月末までに九州において

新たに運転を開始した設備出力は321万kWとなり,累

積の設備出力は629万kWに達した。これは,FIT開始

前の累積の設備出力308万kWに比べ2.0倍となった。 再生可能エネルギー発電システムは普及し,その発電

に対する依存が進むにつれ,太陽光発電システムの効率

についての改善策の多種の検討が行なわれている。 太陽光発電設備の発電効率は,日射環境を除くとモジ

ュール光電変換効率,パワコン変換効率のほかに,モジ

ュールの温度やモジュール表面の汚れ等にも大きく影響

を受ける。普及が進むにつれて,砂塵の除去等の清掃対

策が模索されている。一般にモジュール表面の汚れによ

る損出は約3%程度とされ,降雨による洗浄効果で問題に

ならないとされている。本項は,宮崎県内のメガソーラ

ー発電所内で太陽光パネル散水設備を導入し,「砂塵の除

去」と「散水によるパネル温度低下」による発電効率向

上を目指した取り組みについて紹介する。

2.計画の概要 メガソーラー発電所の計画に当たり,「砂塵除去清掃」

を目的にパネル表面の散水を計画した。大規模太陽光発

電所において,パネル設置数が広域になりその清掃は労

力を要する作業である。この清掃作業を自動散水設備に

置き換え,夏期等の太陽光発電パネルの表面温度を低下

させ,発電効率の向上をも併せて期待できるものとして

計画した。

2.1 散水設備の予備計画 太陽光パネル表面の砂塵の除去と表面温度の冷却を目

的とした散水のためには,パネル表面への均一な散水を

行なうことが重要となる。そのため次の確認を行った。 (1) 均一に流すためのノズルの選定

(2) ノズルの配置と適切な水量の確認

(3) 散水状況の確認 これらの事前検証のため,九電工アカデミーに設置さ

れた 10kW の太陽光発電設備を使用して,予備実験を行

なった。この時,パネル間の隙間にはテーピングを行な

い,散水した水が最下部のパネルまで流れ落ちるように

した。数種類のノズル形状を試し,1 個当り 5~6L/minの水量の「均等扇形ノズル」の採用を決定した。

写真1 に予備実験風景及び写真2 に散水風景を示す。 写真 3 に散水時のパネル表面温度を示す。散水開始約

2分後にはパネル表面温度は約15℃降下していることが

写真1 予備実験風景

写真2 散水風景

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写真3 散水前後の太陽光パネルの表面温度

分かる。これらの実験結果をもとに,宮崎県で「サン

グリーン・エコ株式会社」が計画されている数箇所の

大規模太陽光発電システムにおいて散水設備を計画し

た。 2.2 実施計画概要 サングリーン・エコ株式会社は,宮崎県内に数箇 所の

太陽光発電所を運営されているが,そのうちの1つ につ

いて散水設備概要を示す。 発電所名称:西都市清水メガソーラー発電所 建築場所:宮崎県西都市 施 主:サングリーン・エコ株式会社 設計監理:メディオ総合設計 発電設備:発電出力 1,803kW

モジュール 11,280枚(160W/枚) 種類 GIS Cell 効率 13%

散水設備:受水槽 呼称 144㎥ 加圧給水ポンプ 600L/min×53m 散水ノズル 1,128個(均等扇形ノズル)

2.3 散水設備計画 1)散水設備配置計画 太陽光パネルの表面温度上昇による効率低下を抑止す

るためには,少ない水を発電時間中は常時散水し,気化

熱による冷却を利用する方が有利である。しかし,砂塵

の除去のためにはある程度勢いを持った水の定期的散布

が必要になる。 一方で加圧ポンプ等を含む散水設備の消費動力も極力

減らしたいというそれぞれの課題がある。 それらの点と散水量ならびに清掃度(砂塵除去率)を

総合的に評価し,散水は図 1 に示すように散水ゾーンを

10の区画に分けた。その上で各区画のゾーンの散水量を

制限する時間を3分間として,順次10ゾーンの電磁弁を

開放し30分で全域に散水するようタイマー制御した。

写真4 発電所全景

図1 散水グループ計画

その結果,散水ポンプ容量の大きさを制限できた。ま

た,降雨センサーを設置し,雨天時には散水を行なわな

いようになっている。 2)散水ノズル配置設計 予備計画で確認した散水ノズルは,ノズルの散水角度

とパネル面の関係が重要であった。そこで,現地での施

工性を考慮しノズル角度の均一化を図るため,ノズルを

取り付ける先端の配管をSUS加工管とし,散水角度の均

一化と施工性を確保した。ノズルは3モジュールあたり2個配置し,ノズル角度を 90°,70°,60°の 3 種類を現地

で散水試験を実施し,流水の平滑性を確認した(図 2 ・写真5参照)。その結果,ノズル角度は70°に決定した。

図2 ノズル角度

写真5 SUS加工管とノズル 写真6 耐光性テープ

3.水噴霧中(2分経過)37.3℃ 4.水噴霧中(5分経過)37.9℃

1.水噴霧前 53.2℃ 2.水噴霧中(1分経過)46.3℃

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3)太陽電池パネル面への散水量 散水を効果的に行なうためには,少水量で散水された

水がパネル上部からパネル下部まで滑らかに流水させる

ことが必要である。しかし,一般に多くのパネルを並べ

て配置する場合,パネル間に 5~10mm 程度の隙間が必

要で,散水された水はその隙間から落下するため,下部

のパネル面へ散水を行なうにはこの課題を解決する必要

がある。当該発電所は宮崎の県産材の有効活用を挙げ県

産材である「飫肥(おび)杉」による架台を導入してい

る(写真 7)。パネル間隙間から流れ落ちる雨水による飫

肥杉材の腐食防止の観点からもパネル間の隙間を塞ぐた

めテーピングを行なっている(写真 6 参照)。 このパネル間を塞ぐことにより,散水された水がパネ

ルの最下部まで流れ,散水効果を高めている。

写真7 飫肥杉の架台

写真8 散水状況 3.散水効果の検証

3.1 太陽光パネルの付着物の除去効果 写真 8 に散水状況を示す。散水による砂塵等の付着物

の除去効果の確認を目視により行なった。写真 9,10 に

散水前と散水後の汚れの状況を示す。

写真9 散水前のパネル表面 写真10 散水後のパネル表面

写真11 上空より見た散水効果の違い(N発電所の例) また,散水設備を有したメガソーラー発電施設の上空

より撮影した散水前後の結果を写真 11 に示す。写真の

下半分は散水した部分であり,上半分は散水していない

部分である。

散水域と非散水域の結果の差は写真 9~11 より明らか

である。散水域パネル面では付着物が効果的に除去され

ていることが分かる。 参考文献 3)によると,宮崎市内において火山灰等の

影響により最大65%の発電出力の低下が見られたものが,

その後の降雨により火山灰は洗い流され,出力は回復し

たとの報告がある。本件においても,これらの効果も期

待される。 3.2 太陽光パネルの表面温度の変化 散水を始めてからのパネルの表面温度の変化の状況を

図3に示す。

30

35

40

45

50

55

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

経過時間[min]

表面

温度

[℃]

図3 散水時のパネル温度の変化

図 3 は 2013 年 7 月 8 日の太陽光パネル温度計測結果

を示す。天気は晴れ,13:45~14:15 の間の計測時刻の外

気温度は 33℃であった。温度はパネル背面(中央)に設置

したサーモにて計測した。太陽電池セル温度とは異なる。 散水開始前のパネル温度は 51.2℃であった。散水開始

後温度は1 分毎に48.8℃,46.2℃,3 分後に41.9℃とな

り開始前から9.3℃降下した。また,散水停止後3分後に

は33.8℃となり開始前の温度と比べ最大17.4℃の温度効

果を得た。しかし,散水開始から30分経過後には表面温

度が50.4℃となり,ほぼ散水開始時の温度まで戻った。 3.3 発電効率及び発電量 散水グループの 1 つの領域を非散水とし,散水域との

散水開始

散水停止

散水開始

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発電量の比較を行なった。表 1 にそのうちの 3 日間の発

電量と散水域と非散水域のパネルの発電量の増加率を示

す。比較はパネル 60 枚(約 9.6kW)の比較を示す。こ

れらの日はいずれも晴天日であった。 散水/非散水ゾーンの発電量の差は約4.2%で,散水ゾ

ーンが上昇している。試験は30分に1回,3分の散水で

あるが,それでも散水の結果の差は明らかである。詳細

については,既報参考文献(1)参照されたい。 表1 散水の有無による発電量の変化

2013年8月 27日 28日 29日 散水ゾーン 29,250 26,168 26,604 発電量

(W) 非散水ゾーン 27,998 25,116 25,536 増 加 率 4.47% 4.19% 4.18%

また,図 4 においてサングリーン・エコ事業協同組合

が所有する5ヶ所の発電所の2014年度の発電量の比較を

示す。発電所の規模・システム・日射環境が異なるので

10kW当りの各月の発電量の比較を表す。 このうちK発電所及びN発電所は,昨年散水を行なっ

ている。散水条件としては,K発電所10:00~16:00(但

し,約半数),N発電所10:00~16:00に1日に3回程度

散水している。同じ宮崎県内ではあるが,地域差もあり

散水設備の有無は 1 日 3 回程度の散水では,有益な結果

は確認できていない。

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

発電

量(kW

H発電所  【13,857kW】

S発電所  【12,634kW】

K発電所  【13,313kW】

O発電所  【13,279kW】

N発電所  【13,508kW】

凡例 【年間発電量】

図4 2014年度の各発電所の発電量(10kW モジュール当り)

4.散水設備の水源の課題

K発電所及びN発電所の散水は,良質で十分な水源の

確保の関係で2014年度では1日3回程度にとどまった。

ある程度パネルの温度を下げ発電効率を上げるためには,

図3に示したように30分程度で元のパネル温度まで戻る

ことから,30分に1度程度の散水が望ましい。散水設備

の水源としては,市水は安定的に確保できるものの水道

料金がかかるため,費用面で現実的でない。また,井戸

水は残留物等の水質の問題と量的な問題もあり,良質で

大量の散水源確保が課題として挙げられる。

5.散水設備の水源としての雨水利用の可能性 宮崎県の年間降水量を気象庁のホームページより示す

0.0

50.0

100.0

150.0

200.0

250.0

300.0

350.0

400.0

450.0

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

降雨

量(m

m)

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

外気

温度

(℃

降水量(mm)

最高気温(℃)

平均気温(℃)

図5 宮崎県の年間降水量(1981~2010年)と外気温度

(出典:気象庁ホームページ) と図5のようになる。 外気温が高い5~10月の平均降水量は約300mm/月と

なっている。特に外気温が高く,散水が有効な7,8月で

も約 300mm/月の降雨量がある。これらの雨水量を約

60%有効に回収出来ると仮定し,S 発電所のパネル面に

降った雨水を例に集水すると約 2,400㎥/月となる。散水

装置の稼動を月間 25 日使用するとした場合は約 100 ㎥/日となる。S発電所は現在30分に1度3分間散水し,約

208 ㎥/日の水を必要としており,確保できる雨水の量は

半日分に相当する。雨水利用の場合,散水した水を更に

回収できるため,約100㎥/日確保できる可能性のある雨

水は,水質の面からも十分有効な水源となり得る。今後,

これら雨水の確保の可能性についても検討したい。

まとめ 宮崎県内において実施した大規模発電所の概要と散水

による「砂塵の除去」と「発電効率」の上昇について報

告した。 得られた結果を要約すると以下のようになる。

① 散水システムの一例を紹介した。 ② 散水による砂塵の除去の状況について,目視及び航

空写真により有効性を確認した。 ③ 発電効率は,2013年8月27,28,29日の3日間の

データでは約4.2%アップすることが確認された。 ④ 散水設備の水源として,雨水利用の可能性について

言及した。 参考文献

1)石原修 他:「大規模太陽光発電システムにおける効率向上に

関する研究」,太陽/風力エネルギー講演論文集,

P257-260(2013)

2)吉永美香:「太陽電池パネルへの散水による蒸発冷却効果の

理論的研究」,空気調和衛生工学会論文集,№81,

pp31-38(2001.4)

3)西岡賢祐,太田靖之:「降灰が太陽光発電システム出力にお

よぼす影響」,電気設備学会誌,P348-353(2015.5)

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