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05M17088 片渕 和啓 渋谷に見る建築群のファサードに関する研究 Study on the facades of commercial buildings in Shibuya 図 2. 分析例 表 2. 透過面パタン 広告要素:r+wu+e 広告パタン:A3 透過面要素:ガラス 透過面パタン:T1 広告面 b01 b02 b03 b04 資料 No.b04 西村フルーツ b05 建築群資料 No. Gb01 建築資料番号 構成タイプ Ⅰ,Ⅲ b04 A3 T3 b05 A1 T3 b03 A3 T5 b02 A1 T3 b01 A1 T5 広告パタン 透過面パタン 構成パタン Gb01 Gb02 Gb03 Gb04 図 1. 建築群のファサード(文化村通り) 図 4. 上下の分割 表 1. 透過面の性格 図 3. 調査範囲 開放 ガラス ショーウィンドウ e e e e e r au wu au au wu wu r r r 透過面 T1 全面 T3 下部全面 T2 上部 + 下部 分割線の上・下 T4 下部複数 T5 下部部分 分割線よりも下 T6 なし 表 1 註 ) 表内の数字は該当する建築の数を示す。 下部 上部 : 開口の形式が 下部と異なる。 24 66 32 71 15 121 69 22 14 D:道玄坂 B:文化村通り C:センター街 I :井の頭通り K:公園通り J:神南 分割線 1. 序 日本の現代都市における代表的な繁華街では、 道に沿って建物が密に建ち並び、明確な街路空間を形成 している。この街路空間は様々な情報 を発信する要素や 形態で構成される建築の集合したファサードによって性格づ けられている(図1)。そこで、本研究では東京における代 表的な繁華街である渋谷を取り上げ、建築単体のファサード 構成を分析し、それらの集合体となる建築群についても 考察を加え、渋谷の街並みの特徴の一端を明らかにする ことを目的とする。 2. 建築のファサードの構成 本研究では、「広告面」と「内 部の活動が見える開口面(以下、透過面)」 という視点か ら建築のファサードを分析する。例えば、分析例の資料 No.b04 は屋上看板 r、壁看板 wu、店舗のエントランスを示す看板 e 透過面の組合せによりそのファサードが構成されている。一 方、 No.b03 は透過面を持たず、広告のみを持つのに対し て、 No.b05 の建築は広告面の中に、透過面が包含されて いる。このように、渋谷の繁華街における建築のファサード透過面と広告面の組合せにあてはまり様々な表情をつ くり出していると考える。 2-1. 透過面 透過面は商業建築の内部の情報を直接 知るための重要な情報源の一つであり、繁華街の風景を 活性化している重要な要素の一つでもある。本研究で は、図 3 に示す、6 つの主要街路沿いに建つ 229 面の建 築のファサードを対象に分析を行った。透過面の分析に際し ては、建築のファサードを上下に分割して考えることとした。 建物の上部と下部において、面の凹凸や開口の形式の差 異等が生じる場合、その境界線を分割線として基準とし た ( 図 4)。透過面として抽出する要素は、1 階店舗等な どによく見られる形式である「開放」、透過性が高く内部 の活動を見ることができる「ガラス」、内部の商品を展示す る「ショーウインドウ」とした(表1)。なお、その中では「ガラス」が最 も多く、全資料数のうち半数超の 121 件で見られた。全 体としては 229 資料のうち 205 件で透過面が見られた。 そのうち全面大開口のようにファサードのほぼ全面に透過面 が見られるもの T1、分割線を挟んで上下面に透過面を持 つもの T2、分割線よりも下に透過面を持つもの T3T4T5 が見られた。また、透過面を持たないもの T6 も全体の 約1割程度見られた (表2)。 1) 2) 3)

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Page 1: 05M17088 片渕 和啓 - 東京工業大学05M17088 片渕 和啓 渋谷に見る建築群のファサードに関する研究 Study on the facades of commercial buildings in Shibuya

05M17088 片渕 和啓

渋谷に見る建築群のファサードに関する研究 Study on the facades of commercial buildings in Shibuya

図 2. 分析例

表 2. 透過面パタン

広告要素:r+wu+e広告パタン:A3透過面要素:ガラス透過面パタン:T1

広告面

b01 b02 b03 b04

資料 No.b04 西村フルーツ

b05 建築群資料No. Gb01建築資料番号 構成タイプ

Ⅰ,Ⅲ

b04 A3 T3

b05 A1 T3 Ⅰ Ⅰ

b03 A3 T5 Ⅲ

b02 A1 T3 Ⅰ

b01 A1 T5 Ⅰ

広告パタン 透過面パタン 構成パタン

Gb01 Gb02 Gb03 Gb04

図 1. 建築群のファサード(文化村通り) 図 4. 上下の分割 表 1. 透過面の性格

図 3. 調査範囲

開放 ガラス ショーウィンドウ

e e e e

e

r

au

wu

au

au

wu

wu

r

r r

透過面

T1 全面 T3 下部全面 T2 上部 +下部 分割線の上・下

T4 下部複数 T5 下部部分 分割線よりも下

T6 なし

表 1註 ) 表内の数字は該当する建築の数を示す。

下部

上部 : 開口の形式が    下部と異なる。

24 66 32 71

15 121 69

22 14

D:道玄坂

B:文化村通り

C:センター街

I :井の頭通り K:公園通り J:神南

分割線

1. 序  日本の現代都市における代表的な繁華街では、道に沿って建物が密に建ち並び、明確な街路空間を形成している。この街路空間は様々な情報 を発信する要素や形態で構成される建築の集合したファサードによって性格づけられている(図 1)。そこで、本研究では東京における代表的な繁華街である渋谷を取り上げ、建築単体のファサード構成を分析し、それらの集合体となる建築群についても考察を加え、渋谷の街並みの特徴の一端を明らかにすることを目的とする。2. 建築のファサードの構成  本研究では、「広告面」と「内部の活動が見える開口面(以下、透過面)」 という視点から建築のファサードを分析する。例えば、分析例の資料 No.b04

は屋上看板 r、壁看板 wu、店舗のエントランスを示す看板 eと透過面の組合せによりそのファサードが構成されている。一方、No.b03は透過面を持たず、広告のみを持つのに対して、No.b05の建築は広告面の中に、透過面が包含されている。このように、渋谷の繁華街における建築のファサードは透過面と広告面の組合せにあてはまり様々な表情をつくり出していると考える。

2-1. 透過面  透過面は商業建築の内部の情報を直接知るための重要な情報源の一つであり、繁華街の風景を活性化している重要な要素の一つでもある。本研究では、図 3に示す、6つの主要街路沿いに建つ 229 面の建築のファサードを対象に分析を行った。透過面の分析に際しては、建築のファサードを上下に分割して考えることとした。建物の上部と下部において、面の凹凸や開口の形式の差異等が生じる場合、その境界線を分割線として基準とした ( 図 4)。透過面として抽出する要素は、1 階店舗等などによく見られる形式である「開放」、透過性が高く内部の活動を見ることができる「ガラス」、内部の商品を展示する「ショーウインドウ」とした ( 表 1)。なお、その中では「ガラス」が最も多く、全資料数のうち半数超の 121 件で見られた。全体としては229資料のうち205件で透過面が見られた。そのうち全面大開口のようにファサードのほぼ全面に透過面が見られるもの T1、分割線を挟んで上下面に透過面を持つもの T2、分割線よりも下に透過面を持つもの T3、T4、T5が見られた。また、透過面を持たないもの T6も全体の約 1割程度見られた (表 2)。

1)

2)

3)

Page 2: 05M17088 片渕 和啓 - 東京工業大学05M17088 片渕 和啓 渋谷に見る建築群のファサードに関する研究 Study on the facades of commercial buildings in Shibuya

下部部分 (pd)

上部全面 (au) 上部

下部

上部壁面 (wu)

下部壁面 (wd)

階層対応 (s) 屋上看板 広告塔  (r)

エントランス上部 (e) 下部全面 (ad)

40 21 79 59

22 17 14

22

45

35

12

19

26

54

183

表 3. 広告面要素

表 4.ファサード内の広告パタン

A4

A3

A2

A1

A5

A7

A6

下部全面

上部 +下部

階層

上部全面

下部複数

なし

下部部分

r au wu s pd ad wd e 上部 資料

番号 下部

表 3註 ) 表内の数字は建築の数を示す。

c32 c53 d12 k03 k14

他20例

他7例

他11例

他33例

他11例

他8例

他25例

d15 ○ ○ i41 ○ ○ k08 ○ ○ k11 ○ ○ b20 ○ k07 ○ c37 ○ d07 ○ d13 ○ i02 ○ i25 ○

c36

c15 b08

b12

c38 ○ ●

○ ●

i08 ○ ● ● i11

d28 ●

c50 ○ c47

c14

○ ○

k16 ○

d43 ○ ○ k18 ○ ○

k10 c31 ●

● ●

c31 ●

k17 ● d32 ● i12 ●

d50 ○ ○ ○ b07 ○ ○ d48 ○ ○ j16 ○ ● ○ b05 ○ ○ c03 ○ ○

○ ○

c05 ○ ○ c06 ○ ○ c11 ○ ○ c23 ○ ○ i13 ○ ○

b24 ○ ○ ● i39 ○ ● b09 ○ ○ ○ b11 ○ ○ b32 ○ ○ ○ b34 ○ ○ ○

d51 ○ ○ ○ j08 ○ ○ ○ j10 ○ ○ ○

b18 ○ ○ b23 ○ ○ b27 ○ ○ b28 ○ ○ b29 ○ ○ b35 ○ ○ c02 ○ ○ d04 ○ ○ d05 ○ ● c26 ○ ○ c51 ○ ○ k05 ○ ○

b44 ○ ○ ○ ○ b03 ○ ○ ○ i06 ○ ○ ● d49 ○ ○ ○ i04 ○ ○ ●

c29 ○ ○ d44 ○ ○ ○

d46 ○ ○ ○ ○ c46 ○

d16 ○ ○ d08 ○ ○ j19 ○ ○ i38 ○ ○ k06 ○ ○ k13 ○

b19 ○ b33 ○ b36 ○ b37 ○ b43 ○ c21 ○ c22 ○ c18 ○ c35 ○ c40 ○ c41 ○ c52 ○ d25 ○ d37 ○ d41 ○

表 4 註 ) ●は複数あることを示す。

2-2. 広告面  広告は透過面よりもさらに、多くの人々に情報を伝達する手段であるとともに、建築のファサードを彩る要素の一つでもある。ここでも透過面と同様に、分割線を広告の位置を示す指標の一つとして用いる。広告はその添付する位置と分割線を基準にすると大きく分けて8つの要素に分けることができる(表 3)。分割線の上方に位置する広告のうち、屋上看板や広告塔 rはそれ単独で設置されることは少なく、上部全面広告au等ともに設置され、その結果、ファサードの領域をさらに強調しているものが多く見られた。上部壁面 wu は au と性質や添付される位置は変わらないが、その大きさにより区別した。階層に対応する sはファサード上での鉛直方向への商業空間の広がりを表現するのに使用されるもので、開口等の建築部材の反復と同調しての使用が多く見られた。下部全面 adはペイントや装飾などにより、下部全体が強調されているために広告と見なせるものである。一方、下部部分 pdは部分的に強調されているものである。下部壁面wdはビルの案内等のように地上に近いところに設けられるもので、エントランス上部 eは通常エントランスに設けられるもので、最も多くの建築で使用されている要素である。これらの要素を用い全資料の広告の配列を分析した結果、ファサードの広告面を表 4 に示す 7 つのパタンに分類することができた。A1は上部を全て広告が覆うものであり、auを含むものである。A2は、上部と下部に複数の広告要素を持つものであり、全資料の中で最も多く見られたものである。一方 A3は階層性に対応していない広告のパタンであり、wuを含むものが多く見られた。A4は adのみによる広告のパタンであり、下部のファサード全体が広告として認識されることで、街路に対して連続的に情報を提供する形式のパタンである。A5は pd、wd、eのなかの複数からなるパタンで、街路に対して断続的に情報を提供するものである。一方、A6は下部に部分的に単一の広告を持つパタンで、e を伴う建築が最も多く見られた。また、広告要素を一つも持たない広告パタンA7も 12事例みられた。2-3. 透過面と広告面の組合せ  前章までの分析から、透過面の性格と広告面の性格を 2軸としてマトリクスを作成することで、渋谷の主要街路沿いのファサードの構成を検討し、資料数の多いまとまりから 8の類型を抽出した( 表 4)。類型あ、い、う、おは透過面が下部全面を占めているもので、あは透過面と広告面のみに建築のファサードが形成されているものであり、ファサード全体が情報源として作用しているものである。い、う、おはあと同様に下部の全面を透過面が占めるもので、い、う、おと至るとともにファサード上部を広告面が占める割合が小さくなっていく。それに伴い、下部に広告が出現してくる傾向が見られる。広告の占める領域があでは隣接関係にあったのに対して、い、うでは相互貫入、おでは透過面が広告の領域を包含する形になっている。えはいと比較すると広告のパタンは同じであるが、透過面が下部を占める面積が少なくなっているものであり、1 階に透過面のある店舗と階段室を持ち、上階にも店舗を持つような形態の建築に見られる構成である。きは透過面の下部を占める割合が部分的であることに対して、広告面が断続的に展開しているものである。これは、下部に複数のエントランスを有するものの、その中で内部の活動を見せている店舗が少なく広告による情報に依存していることが理由の一つであると考えられる。一方、対照的にかでは広告と透過面の形態が同一であることから、透過面と広告が相関関係を持つものといえる。また、くは透過面が部分的であるのに対し、広告も部分的に対応している建築であることがみられた。

4)

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告による情報に依存していることが理由の一つであると考えられる。一方、対照的にかでは広告と透過面の形態が同一であることから、透過面と広告が相関関係を持つものといえる。また、くは透過面が部分的であるのに対し、広告も部分的に対応している建築であることがみられた。3. 要素の組合せによる建築群のファサード構成

前章で扱った建築のファサードの構成パタンは大きく 4 つの領域

に分けることができる。Ⅰはファサードの上部に広告の領域が

広がり、下部全面に透過面が見られるものである。Ⅱは

上部に広告の領域がなく、下部全面に広告の領域が広が

る建築である。Ⅲは上部に広告の空間が広がり、下部の

一部に透過面が見られるもので、Ⅳは上部に広告の領域

が見られず、下部には部分的に透過面が見られるもので

ある。このように、パタンⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの間には広告的およ

び透過的な相関性があり、この組合せで建築群を評価す

ることは都市の繁華街を評価する指標の一つになるとい

える。本章では、その組合せで建築群のファサードの構成を

検討することから7つの建築群のファサードの構成タイプを得

た。個で構えを成している①は下部に部分的に透過面が

見られるものである。②は上部が広告で覆われ、下部に

は透過面が連続して繋がる建築群である。渋谷駅の周辺

などに集中的に見られる建築群で情報の発信量の大きさ

が特徴的な構成を持っていると考える。③は上部におい

て広告を持つ建築と、持たない建築が断続的にと現われ、

下部においても透過面が断続的に現れる建築群である。

センター街や道玄坂および公園通りなどの駅から最も離れた

地域に見られる建築群で、都市的な賑わいがこの周辺で

薄れてきていると考えることができる。④は下部にのみ

広告をもち、透過面が断続的もしくは疎の状態で現れ

【隣接】

【相互貫入】 【隣接】 【隣接】

【同調】

【相互貫入】 【相互貫入】 【透過面が広告を包含】

表5. 広告・透過面パタン広告の配置

I II

III IV

上部全面A1

T1

T2

T3

T4

T5

T6

A2 A3 A4 A5 A6 A7

auau+eau+rau+e+r

wu+rwu+ad/pd/wdr+e

ade

pdwd vi

ss+r/wus+pd/wd/ed pd+wd

全面

上部 +下部(14)

(22)

d24d26

b04c46j06i38j06k13

d15k11

i14 c15c30c50i43

c22d22d37

j12 b36b45d25

k02

j14

b25c10i07

c04c05c09d14d16i01i34i45j19k06

k12

b09b15d21d26i18i19i20i40

b05b07i13

b02b31c03c11c17c48c49d41d48d50 c06 d30 b42

d49c37c42

b01c12c19c23j09j16

b10b11b26b29b30b34c24c25d09d23

d36d40d42i09i19i26i30i31i36i39

j07j10k09

b14b07b44c29

b13b20d07d13i02

b22c27c33c38c43c44c47d20d32i11

i12i22

b21c34c01c20c35c40c41c52d27d33

i05i17i29i32

c32c53d12k15

i37 b17b23b24d05d11d35

b03d08

i25k08

c13c28d10k17

c21c39i28

d17j03j04j05k03k14

b06b08b12b40c07c14c31c36c45d01

d28d52i04i10i15i23j06i42j01j15

k16k01k10

b43d19d29

b39d31d38d43d45i41k07

d18i08k18

b16b19b33b37b38c08c18d39d41i24

i16 b18b27b28b32b35b41c02c26c51d03

d04d06d34d46d51i21i27i35j08j11

j13k04k05

(22) (61) (32) (19) (47) (36) (12)

(66)

(32)

(71)

(24)

なし

下部全面

下部部分

下部複数

上部 +下部 下部全面 下部部分階層 なし下部複数

透過面の配置

あ おい

き く

広告:上+下透過面:密

広告:上 +下透過面:疎

広告:下透過面:密

広告:下透過面:疎

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る建築群であり、これはセンター街や文化村通りの奥に位

置する建築群に見られる傾向だといえる。⑤および⑥は

下部においては透過面と非透過面が繰返して現われ、上

部では広告の有無が生じている建築群であるといえる。

⑦はⅠとⅣという対比を成す要素同士の建築により構成

される。このように、類型により得られた 6 つの建築

群に関して、個で構えを成す①を除くと、②と③、④は

群を形成する個々の建築が類似性を持っているという

ことがいえる。これは、センター街や公園通りにみられる

商業と非商業が混在する地域に位置する建築群に共通

に見られる特徴である。⑤と⑥は多様性を成す建築群で

あるということができる。これは、公園通りに沿って

長く連続する建築群のような地理的な要因によるもの

と、センター街のような地域的な差異を意図的につくり出

すという 2 つの理由に起因しているといえる。また、⑦

は群の中の建築が対比を成すものである。これは、センター

街などに見られる新旧の建物が混在する建築群に共通

の特徴である。

4. まとめ  渋谷という代表的な日本の現在都市にお

いて、主要街路に面する建築を対象に分割線という建築

の上部と下部と規定する基準をもとに、透過面および広

告面というファサード上における情報の配置の組合せから

個々の建築のファサードの構成パタンを導いた。さらに、上部、下

部における広告と透過面の組合せを、建築群においても

適用することで、それぞれの建築群がもつファサード上の情

報の配置のされ方の特性を導き出すことができた。ま

た、各建築群に関してはいくつかの建築はそれぞれが類

似性を持っており、その他対比と多様性を持っている場

合があり、その性格によって建築群の属する通りが特徴

づけられることが示された。

1) 情報とは「ある事柄についての知らせ。判断を下したり、行動を起こしたりするために必要な、種々の媒体を介しての知識。」『広辞苑』より。2) 広告とは「広く人に知らせること。特に顧客を誘致するために、商品や興行物などについて、多くの人に知られるようにすること。また、その文書・放送など。」『広辞苑』より。3) 透過面の大きさの基準は幅及び高さに内部の様子をうかがうのに十分な大きさを有するものを資料として採用した。4) 袖看板に関しては上部・下部というきり分けがしにくいことと、透過面との立面的な関連性があまり見られないことから、本論文では調査対象からは除外した。

表 6. 建築パタンの組合せによる建築群の構成タイプ建築群No.Gk03 k12 I IGd04 d21 III IIIGd07 d30 III IIIGc09 c42 IV IVGc11 c45 IV IVGd12 d52 IV IVGk01 k01 IV IVGj06 j18, j19 I 2I

Gi08 i30 - i33 I,II 3I+IIGj03 j12 - j15 I,II I+II

Gb07 b27 - b39 I,II,III 5I+5II+3IIIGc05 c25 - c27 I,II,III I+II+IIIGd10 d39 - d45 I,II,III 2I+4II+IIIGb05 b15 - b21 I,II,IV 2I+3II+2IVGd06 b22 - b26 I,II,IV 2I+II+3IVGk02 jk02 - k11 I,II,IV 4I+3II+2IVGb01 b01 - b05 I,III 3I+2III

Gb01

Gc02

群の中の建築が類似性を示す

 広告:上 +下透過面:密 /疎

 広告:上 / 下透過面:疎

 広告:上 +下 ↔ 下透過面:密 ↔ 疎

 広告: 下透過面:疎

群を成さない

群の中の建築が多様性を示す

群の中の建築が対比をなす

Gc09

Gd02

Gc12

Gc06

Gc08

Gb02 b06 - b07 I,III I+2IIIGb03 b09 - b12 I,III I+IIIGc01 c01 - c06 I,III 4I+2IIIGd11 d46 - d51 I,III 5I+III

Gd02 d05 - d10 I,III,IV I+2III+IVGi05 i11 - i16 I,III,IV I+III+4IVGi06 i17 - i22 I,III,IV 2I+2III+2IVGi10 i38 - i41 I,III,IV 2I+III+IVGj02 j04 - j11 I,III,IV 2I+3III+3IVGc12 c46 - c49 I,IV 3I+IVGc13 c50 - c53 I,IV I+3IVGd01 d01 - d04 I,IV 2I+2IVGi01 i01,i02 I,IV I+IVGi03 i05,i06 I,IV I+IVGj01 i01 - i03 I,IV I+2IV

Gc06 c28 - c32 III,IV III+4IVGd05 d22,d23 III,IV III+IVGi02 i03,i04 III,IV III+IVGk04 k13 - k16 III,IV III+3IVGk05 k17,k18 III,IV III+IVGb04 b13,b14 IV 2IVGc07 c33,c36 IV 4IVGc08 c37 - c41 IV 5IVGc10 c43,c44 IV 2IV

Gd08 d31,d32 II,IV II+IVGi11 i42,i43 II,IV II+IVGj04 j14 - j15 II,IV II+IVGj05 j16,j17 III 2III

Gb06 b22 - b26 II,III II+4IIIGc04 c20 - c24 II,III,IV II+2III+2IV

Gi09 i34 - i37 I,III 2I+2III

Gb08 b40 - b43 I,II,III,IV I+II+2III+2IVGc02 c07 - c13 I,II,III,IV 3I+II+III+2IVGc03 c14 - c19 I,II,III,IV I+II+2III+2IVGd03 d11 - d20 I,II,III,IV 2I+3II+III+4IVGd09 d33 - d38 I,II,III,IV 2I+2II+III+IVGi04 i07 - i10 I,II,III,IV I+II+III+IVGi07 i23 - i29 I,II,III,IV I+II+III+4IV

建築 No. パタン組合せ

パタン構成 IV

IV

IV

IV I

I

III

III

IV

IV

I

II I

IIIIII

III

III

IV

IVIV

IV IV

IV

IVIII

I

IIII IIII