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1 小規模鉱山向け鉱山保安マネジメントシステム普及ツール案(絵コンテ) 仮)「保安レベル向上のためのしくみを一緒に考えましょう~小規模鉱山向け~」 内容 ■登場人物 ................................................................................................................................... 1 1. 「現場を見せてください」................................................................................................... 1 2. 「何から対処しましょう」................................................................................................... 3 3. 「対策の検討・実施後には見直しが重要です」................................................................... 5 4. 「話し合いは重要です」 ...................................................................................................... 7 5. 「今後の方針をみんなに伝えましょう」 ............................................................................. 9 ※以下は今後マンガ版のツール案を作成するための絵コンテになります。 ■登場人物 このストーリーはすべて架空のお話ですが保安上重要な内容をお伝えしています。 A社長 現在 57 歳。 石灰石を採取している鉱山労働者数 5 名の小規模鉱山の社長。 13 年前に発生した重大災害を機に保安対策を強化し、それ以降無災 害であり、地域の保安研究会では対策指導をお願いされる。 創業者の父親から受け継ぎ、30 年以上保安統括者として従事。自分 も現場でプラントや重機をオペレートしている。 B社長 現在 58 歳。 A社長と同様、4 名の石灰石鉱山の社長である保安統括者。A社長同 様毎日重機をオペレートしている。 半年前忙しい時期に中堅の鉱山労働者がメンテナンス中にコンベア に挟まれて重症を負う。そのため意気消沈していた。 鉱山 労働者 B社長の部下 労働者 C(38 歳 経験年数 20 年)とその後輩である労働者D(25 経験年数3年)。 2 人共真面目であり、保安が重要であることは頭ではわかっている が、日々の生産に追われ、危険軽視や不注意でたまにヒヤリハットを 発生させている。 前振り 「A社長とB社長は地元でたまたま小学校からの幼なじみであり、たまに喧嘩はしてきたものの、ずっと助け 合ってきた仲である。ある日災害が発生して落胆しているB社長を心配して、A社長が立ち寄った時の話で ある」 1. 「現場を見せてください」 No 人物 シナリオ 備考 (解説、写真) 1. A社長 こんにちは。ちょっと寄ってみました。 いろいろと苦労されたようですが、お役に立てること があれば協力します。 2. B社長 ありがとうございます。まず現場を見てください。自 分は危険感受性が麻痺してしまったようで。 別冊 1

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Page 1: 1. · 合ってきた仲である。ある日災害が発生して落胆しているB社長を心配して、A社長が立ち寄った時の話で ある」 1. 「現場を見せてください」

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小規模鉱山向け鉱山保安マネジメントシステム普及ツール案(絵コンテ) 仮)「保安レベル向上のためのしくみを一緒に考えましょう~小規模鉱山向け~」

内容

■登場人物 ................................................................................................................................... 1

1. 「現場を見せてください」 ................................................................................................... 1

2. 「何から対処しましょう」 ................................................................................................... 3

3. 「対策の検討・実施後には見直しが重要です」 ................................................................... 5

4. 「話し合いは重要です」 ...................................................................................................... 7

5. 「今後の方針をみんなに伝えましょう」 ............................................................................. 9

※以下は今後マンガ版のツール案を作成するための絵コンテになります。

■登場人物 このストーリーはすべて架空のお話ですが保安上重要な内容をお伝えしています。

A社長

・ 現在 57 歳。 ・ 石灰石を採取している鉱山労働者数 5 名の小規模鉱山の社長。 ・ 13 年前に発生した重大災害を機に保安対策を強化し、それ以降無災

害であり、地域の保安研究会では対策指導をお願いされる。 ・ 創業者の父親から受け継ぎ、30 年以上保安統括者として従事。自分

も現場でプラントや重機をオペレートしている。

B社長 ・ 現在 58 歳。 ・ A社長と同様、4 名の石灰石鉱山の社長である保安統括者。A社長同

様毎日重機をオペレートしている。 ・ 半年前忙しい時期に中堅の鉱山労働者がメンテナンス中にコンベア

に挟まれて重症を負う。そのため意気消沈していた。

鉱山 労働者

・ B社長の部下 ・ 労働者 C(38 歳 経験年数 20 年)とその後輩である労働者D(25

歳 経験年数 3 年)。 ・ 2 人共真面目であり、保安が重要であることは頭ではわかっている

が、日々の生産に追われ、危険軽視や不注意でたまにヒヤリハットを発生させている。

前振り

「A社長とB社長は地元でたまたま小学校からの幼なじみであり、たまに喧嘩はしてきたものの、ずっと助け合ってきた仲である。ある日災害が発生して落胆しているB社長を心配して、A社長が立ち寄った時の話である」

1. 「現場を見せてください」

No 人物 シナリオ 備考

(解説、写真)

1. A社長 こんにちは。ちょっと寄ってみました。

いろいろと苦労されたようですが、お役に立てること

があれば協力します。

2. B社長 ありがとうございます。まず現場を見てください。自

分は危険感受性が麻痺してしまったようで。

別冊 1

Page 2: 1. · 合ってきた仲である。ある日災害が発生して落胆しているB社長を心配して、A社長が立ち寄った時の話で ある」 1. 「現場を見せてください」

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3. A社長 人数少ないのに現場はいつもきれいですね。路面が整

備されています。

切羽の法面も浮石もなくて安心ですね。

重機やプラントも毎日清掃して大事にメンテナンス

していますね!

※指導・助言する立場の人

は、まずは相手の取組を認

める事が重要です。

4. 鉱山 労働者

そう言ってもらえるとやる気が出ます! ありがと

うございます!!

5. B社長 みんなよくやってくれています。まだまだのところも

ありますが。

6. A社長 現場のリスクを見てみましょうか・・・。

一般に鉱山で多発していて重篤化しやすい挟まれ・墜

落リスクはとくに注意して見ていきましょう。

掃除が終わっているのにプーリーから保護カバーが

外されたままです。一部破損しているカバーも見られま

す。(挟まれリスク) ※経済産業省 HP で提供さ

れている「災害事例等の水

平展開」などの事例情報を

参考活用し、類似の災害が

起こらないよう、しっかり

リスクを洗い出すことが重

要です。

7. A社長 昇降器具が一部破損しています。(墜落リスク)

8. A社長 歩廊に石が落ちてますね。(飛来、転倒リスク)

9. A社長 プラント内で約7m くらいの箇所がチェーンだけで

防護されています。(墜落リスク)

10. A社長 プラント内でチェーンスプロケットが防護されてい

ない箇所があります。(挟まれリスク)

11. A社長 工場内の機器メンテナンス時に開口部付近で作業者

が作業してます。(墜落リスク)

12. B社長 改めて言われてみるとあああ恐ろしい・・・。

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13. A社長 現場を見て気になったのはこんなところでしょう

か・・・。

B社長、みなさんを責めないでくださいね。

お二人。最近ヒヤリハットはありましたか?

14. 鉱山 労働者

・・・・(社長の前では言いにくいなぁ)

15. B社長 また災害が起きるのはゴメンだ・・・責めないから言

っておくれ。

※現場で作業に従事してい

る従業員が感じている不安

はどこにあるのか、経営ト

ップがしっかり把握するこ

とはとても重要です。

16. 鉱山 労働者

ホイールローダーの後進時の目視確認不足で作業者

と激突しそうになりました。(激突リスク)

17. 鉱山 労働者

メンテナンス時の連絡不足によってコンベアが誤始

動されてしまい、挟まれそうになりました。(挟まれリ

スク)

18. A社長 言いにくかったでしょうが、よく教えてくれました

ね。ありがとうございます。

19. B社長 そんなことがあったのか・・・。知らなかった。でも

よく言ってくれたよ。ありがとう。

20. A社長 その他社長が気がかりなことはありますか?

21. B社長 バックホウで表土除去作業が始まりますが、慣れてい

る人が退職してしまって・・・。(墜落リスク)

22. A社長 そうですか・・・。

一旦事務所に戻って作戦を練りましょう!

2. 「何から対処しましょう」

No 人物 シナリオ 備考

(解説、写真)

23. B社長 なんだかやっぱり・・・いっぱい出てきちゃいます

ねぇ。

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24. A社長 現場でいろんなリスクを洗い出しましたね。

これからすこし頭を整理したり議論しやすくするた

めに3色のポストイットを使用します。

※整理のアイデアは他にもあ

ります。工夫してみましょう。

25. B社長 鉱山

労働者

なにをするんですか??

26. A社長 これから「赤(すごく心配)」、「黄色(心配)」、「青

(気になる)」に分けてリスクの内容をメモしていきま

すよ。

27. B社長 なんでそんな事をするんですか?

28. A社長 一言で言えば人間一度に複数のことはできませんか

ら!何からお金や時間、人をかけて対処するかまずは

感覚的で良いので、優先順位を決めるためです。

29. B社長 なるほど!まずはやってみよう!

優先順位を決めるときに気をつけることはあります

か?

30. A社長 感覚的で良いのですが、迷った場合には死亡や後遺

障害の重大性や、災害の発生可能性が高いと思われる

リスクの優先順位を上げてください。つまり赤のポス

トイットになります。

31. B社長 よしC君D君!何から対策するか一緒に優先順位を

決めよう!対策にかかるお金や時間のことはさてお

き、すごく心配なリスクから整理しよう!

32. 鉱山 労働者

できた!

※このポストイットのメモは

ノートに貼り付けたり、デジ

タルカメラで記録(もしくは

PCに打ち込み)すればRA

実施記録となります。

※ホワイトボードに書き込む

方法も一案です。

33. A社長 いい感じですね。

黄色信号や青信号も心配だったり気になるかもしれ

ませんが、まずは赤信号の「すごく心配」なものから

一つずつ対策を考えてみましょう!

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3. 「対策の検討・実施後には見直しが重要です」

No 人物 シナリオ 備考

(解説、写真)

34. B社長 最近とくに心配なホイールローダーの後進時の目視

確認不足による激突対策について考えてみるかなぁ。

35. A社長 「本質安全」「工学的」「管理的」「保護具」対策の順

に検討してポストイットに書いてみましょう!

36. B社長 なんですか?それは?

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37. A社長 例えばホイールローダーの激突対策で

「本質安全」対策は“重機を使用しない”

「工学的」対策は“衝突防止センサーを取り付ける”

「管理的」対策は“合図ルールの確立”

「保護具」対策は“ヘルメット着用徹底”

などが考えられます。

※対策例の補足

本質安全対策:重機を使用せずコンベアのみから製品積み込みを行

う。

工学的対策 :バックサイトモニターで人を検知した場合にアラート

もしくはブレーキをかける装置をオプションで取り付

ける。

管理的対策 :重機に近づくときには無線もしくは決められた合図を

交わすことにより、オペレータと確実にコンタクトを撮

ってから近接する作業ルールを見直し、業者にも注意喚

起する。

保護具対策 :ヘルメットの着用状況及び破損変形の有無をチェック

する。

※考え方は別表参照

38. B社長 「本質安全」「工学的」対策はすぐには難しいのでま

ずは「管理的」「保護具」対策として

・ 合図のルールを確立

・ ヘルメットの着用徹底

になるでしょうか。

39. A社長 ルールを作ったら周知するとともに無理なルールで

はないか現場で見直しを行うことも大事ですよ。

40. B社長 ・ 月1回以上、皆でルールを再確認

・ 社長自身が合図やヘルメット着用の状況を確認

といったところでしょうか。

41. A社長 できましたね!

※対策を検討するときにはで

きるだけ「いつまでに」「だれ

が」「どの程度」対策を実施す

るかもよく考えてみて下さ

い!

※容易に実施できて効果が大

きいものの他、効果が小さく

てもやりやすければ早期に実

施するのも一案です。

※実施困難であっても効果が

大きい対策は経営者が計画的

に資源配分することが重要で

す。

42. B社長 よし!少しずつ他の対策も考えてみよう!

43. A社長 設備対策でも同じように、対策を実施してみて本当

にその対策が意味があるか、無理がないか、継続でき

るか、見直しを行うことが大事ですよ。

ホイールローダー後進時の目視確認不足

(激突)

プラント内高所でチェーンのみ防護(墜落)

チェーンスプロケット未防護

(挟まれ)

機器メンテナンス時に開口部付近で作業

(墜落)

メンテ時連絡不足によるコンベア誤操作/起動

(挟まれ)

昇降器具が一部破損(墜落)

不慣れな作業者による表土

除去作業(墜落)

プーリー保護カバー放置・破損

(挟まれ)

歩廊上の石(転倒)

すごく心配 心配気になる

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44. B社長 そうか・・・対策は検討して実施するだけじゃない

ということですね!新しいルールや設備対策で作業が

やりにくくなることで違う災害の恐れが生じたらダメ

ですもんね!

45. A社長 そのとおり!

例えばポストイットをノートに貼っておいて、たま

に見直すようにしたら良いでしょう!

46. B社長 現場でしっかり確認することも大事ですよね。

47. A社長 そうですね!大事なことですね!

※事業環境の変化(社員の入

れ替わり、機械の新規導入)

で新しいリスクが生まれてい

ないかどうか評価することも

重要です。

【災害防止対策の進め方】

4. 「話し合いは重要です」

No 人物 シナリオ 備考

(解説、写真)

48. A社長 おさらいですが、現場に潜在するリスクを洗い出し

て、優先順位をつけながら対策を検討し、たまに見直し

をすることが大事です。

49. B社長 リスクへの対処方法はわかりましたが・・・もう何十

年も現場にいると危険感受性が低下しているのか、リス

クが洗い出せなくなっているようで。

50. A社長 社長も毎日現場に入っているかもしれませんが、今日

も「言われてみれば」って感じですよね。

51. B社長 そのとおりです。

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52. A社長 小さい鉱山であっても危ないと思われることは皆さ

んで話し合いながら洗い出すことが重要ですよ。

※実際にみなさんが話し合

いをする際にも以下の役割

をもった登場人物A~Dに

該当する人を確保すること

が望まれます。

A社長:専門家として助言

する。

B社長:資源配分やリスク

アセスメントの重要性を伝

えるとともに、意見をまと

める。

C君D君:実際作業をやっ

ている人として意見を出

す。

53. B社長 毎日生産の話しかしてなかったよなぁ・・・。

54. A社長 今日みたいにみなさんと現場をパトロールして洗い

出してもいいですね。

55. B社長 しばらくそんなことしてなかったよなぁ・・・他にど

んなアイデアがありますか?!

56. A社長 今までのヒヤリハット情報、保安規程、災害詳報等も

参考にみなさんと一緒に話し合いながら洗い出しては

どうでしょう。

57. B社長 よし、そういったものを参考にたまにはみんなで話し

合ってみます!

58. A社長 少人数ですし、あらたまらなくても会話の中で引き出

すようなやり方でも良いと思いますよ。頑張ってみて下

さい!

※鉱山災害では非定常的な

作業でのヒューマンエラー

災害が懸念されています。

起きやすい状況としては3

H(「はじめて」「変更」「久

しぶり」)とおぼえてそのよ

うな場面を想定しながらリ

スクを特定するのも一案で

す。(「複雑」をいれて4H

でも良いです。)

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5. 「今後の方針をみんなに伝えましょう」

No 人物 シナリオ 備考

(解説、写真)

59. A社長 私も苦い経験があるので・・・小さい鉱山であっても

保安対策をするには赤信号のリスクからお金や時間を

かけることを認識することが大事だと思っています。

60. B社長 いままでなんとなくは考えていたけど・・・今回は私

も身にしみてその重要性がわかりましたよ!

61. A社長 そしてメンバーに意思表明することが大事です。この

ような取り組みはメンバーみんなの作業環境を改善す

るためであることを伝えるのも大事ですね。

62. B社長 そんなこと考えてもいなかったよなぁ・・・メンバー

に意思表明してみんなと一丸となってやっていきま

す!