1章・第2章...

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日本語の音声(2020.5.71 復習 1章・第2言語音を作るしくみ1 息が音になるまでの通路と加工 通路 加工 鼻腔 びこう 口腔 こうこう 咽頭 いんとう 声道 調音 喉頭 こうとう 発声 気管 気流の起こし *口蓋帆が鼻腔への通路を塞いでいれば、口腔のみ、 空いていれば鼻腔からも息が出る。 喉頭における発声 発音される音の名前 声帯の振動:無 声帯の振動音(=声)が無く息のみで作られる 無声音 声帯の振動:有 声帯の振動音(=声)が加わった息で作られる 有声音 出来上がる音の大別 発音される音の名前 息の妨害:有 息を口の中のどこかで妨害して作る。無声音も有声音もある。 子音 息の妨害:無 声が加わった息を妨害せず口の中(声道)で共鳴させる。有声音のみ。母音 課題解答例 日本語で通常用いられる音はすべて「肺からの呼気」で作られる。その「空気の流れ」対して、 (X:発声)と(Y:調音)という加工がなされ様々な音が作られる。その加工をするのが「調音器 官」である。 肺から出た息は、気管を経て(①:喉頭)に入る。①の中には1対の筋肉の塊である(②:声帯) があり、その隙間「声門」の状態が、ここで行われるX(発声)の違いをもたらす。 息が喉頭内の声帯を振動させなければ息だけが、声帯を振動させるときは声帯の振動の音である 「声」をともなった息が音声を作るのに使われる。声帯の振動音である声を伴った息で作られる音は 「有声音」、声を伴わない単なる息で作られる音は「無声音」と呼ばれる。 ①をでた呼気は(③:咽頭)に至る。口蓋帆を③の壁につけ、(④:鼻腔)への通路を塞ぐと(⑤: 口腔)のみ、通路を開けると④へ呼気が通る。 ①より上の呼気の通り道を(⑥:声道)という。舌や唇等の動きは、⑥の形を変えたり、気流を妨 害したりしてする様々な音を発音する役割を果たす。それによって様々な音声を作り出すことをY (調音)という。 調音において、呼気が声道で妨害されず、声を声道に共鳴させることによって作られる音が「母 音」であり、息がどこかで妨害されることによって作られる音が「子音」である。

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Page 1: 1章・第2章 言語音を作るしくみ1renatodaigo.daa.jp/tnfnsv/datum/ObOn_0507.pdf日本語の音声(2020.5.7) 1 復習 第 1 章・第 2 章 言語音を作るしくみ

日本語の音声(2020.5.7) 1

復習

第1章・第2章 言語音を作るしくみ1

息が音になるまでの通路と加工 通路 加工 鼻腔び こ う

口腔こうこう

咽頭いんとう

声道 調音 喉頭

こうとう

発声 ↑ 気管 ↑ 肺 気流の起こし *口蓋帆が鼻腔への通路を塞いでいれば、口腔のみ、 空いていれば鼻腔からも息が出る。

喉頭における発声 発音される音の名前 声帯の振動:無 声帯の振動音(=声)が無く息のみで作られる 無声音 声帯の振動:有 声帯の振動音(=声)が加わった息で作られる 有声音 出来上がる音の大別 発音される音の名前 息の妨害:有 息を口の中のどこかで妨害して作る。無声音も有声音もある。 子音 息の妨害:無 声が加わった息を妨害せず口の中(声道)で共鳴させる。有声音のみ。母音

課題解答例

日本語で通常用いられる音はすべて「肺からの呼気」で作られる。その「空気の流れ」対して、

(X:発声)と(Y:調音)という加工がなされ様々な音が作られる。その加工をするのが「調音器

官」である。

肺から出た息は、気管を経て(①:喉頭)に入る。①の中には1対の筋肉の塊である(②:声帯)

があり、その隙間「声門」の状態が、ここで行われるX(発声)の違いをもたらす。

息が喉頭内の声帯を振動させなければ息だけが、声帯を振動させるときは声帯の振動の音である

「声」をともなった息が音声を作るのに使われる。声帯の振動音である声を伴った息で作られる音は

「有声音」、声を伴わない単なる息で作られる音は「無声音」と呼ばれる。

①をでた呼気は(③:咽頭)に至る。口蓋帆を③の壁につけ、(④:鼻腔)への通路を塞ぐと(⑤:

口腔)のみ、通路を開けると④へ呼気が通る。

①より上の呼気の通り道を(⑥:声道)という。舌や唇等の動きは、⑥の形を変えたり、気流を妨

害したりしてする様々な音を発音する役割を果たす。それによって様々な音声を作り出すことをY

(調音)という。

調音において、呼気が声道で妨害されず、声を声道に共鳴させることによって作られる音が「母

音」であり、息がどこかで妨害されることによって作られる音が「子音」である。

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日本語の音声(2020.5.7) 2

音声データ・補助資料 掲載ホームページ 容量などの関係で課題などの音声データは以下のホームページに掲載する。 重要:例年ホームページへのアクセス及び、すべてのファイルはパスワード保護している。

今年は状況を鑑み、現状ではそれを省いている。 授業に関係無いものに以下の URL が知られることがないようにすること。 不正なアクセスなどが検知された場合は、かなり不便になるが例年のようにすべてパ

スワードで管理することになる。

http://renatodaigo.daa.jp/tnfxgb/datum.html

コピペ用音声記号(上記ページにも掲載) (下記には入れてあるが、アルファベットと同じものは普通に入力できる)

母音 CV1-8 CV9-16 17,18 その他 [ i e ɛ ɑ a ɔ o u y œ ø ɶ ɒ ʌ ɤ ɯ ɨ ʉ æ ə ] 子音(五十音イメージ) カガ サ ザ タダ ナ [ k ɡ ŋ ɣ s θ ɕ ʃ z ʣ ð ʑ ʥ ʒ ʤ t d ʦ ʨ ʧ n ɲ ] ハ パバ マ ヤ ラ ワ ン [ h ɦ ç ɸ f p b ß v m ɱ j ʝ ɾ r l w ɰ ɴ ʔ ː ʲ ʰ ]

ワードでのアルファベットにない音声記号の出し方。

挿入 ― 記号と特殊文字 ― 記号と特殊文字 ― その他の記号

フォント: Lucida Sans Unicord にする。(基本 Unicordなら OK ではある)

種類:IPA 拡張 (★ただし一部は、ラテン 1 補助、ラテン拡張 A、B、ギリシャおよびコプト等にある)

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日本語の音声(2020.5.7) 3

母音の分類 「母音は声を声道に共鳴させる音」なので「共鳴する声道の形や大きさで音が決まる」 「声道の形」を変えるのは「舌の前後の位置」、 「声道の大きさ」を変えるのは「舌の高さ(開口度)」 日本語では音の区別には関与しないが

「唇を丸めて突き出すかどうか(唇の丸めの有無)」も声道の形状に影響する。 舌の前後の位置:前舌・中舌・後舌(=奥舌) 舌の上下位置(開口度):高・中・低(狭・半狭・半広・広) 唇の丸めの有無:円唇(丸め・突き出しあり)・非円唇(丸め・突き出しなし)

基本母音(cardinal vowels)

舌は連続して動くため、調音の仕方による母音の記述の基準となるものとして、イギリ

スの音声学者ダニエル・ジョーンズによって提唱された。

前舌母音 後舌母音 舌の頂点が「硬口蓋」 舌の頂点が「軟口蓋」 上顎 =口蓋(こうがい)

歯茎 硬口蓋 軟口蓋 (前側) (後側)

参考

https://www.youtube.com/watch?v=6UIAe4p2I74 基本母音を聞いて、日本語で区別していない音の区別を意識して、口と耳に覚えさせること 第 1次基本母音 非円唇 前舌 狭母音 CV 1 [ i ] [ u ] CV 8 円唇 後舌 狭母音 非円唇 前舌 半狭母音 CV 2 [ e ] [ o ] CV 7 円唇 後舌 半狭母音 非円唇 前舌 半広母音 CV 3 [ ɛ ] [ ɔ ] CV 6 円唇 後舌 半広母音 非円唇 前舌 広母音 CV 4 [ a ] [ ɑ ] CV 5 非円唇 後舌 広母音 第 2次基本母(第 1次基本母音と舌の位置は同じで「円唇・非円唇」が逆の 8つと中舌狭母音 2つ) 非円唇 中舌 狭母音 CV 17 [ ɨ ] [ ʉ ] CV 18 非円唇 中舌 狭母音 円唇 前舌 狭母音 CV 9 [ y ] [ ɯ ] CV 16 非円唇 後舌 狭母音 円唇 前舌 半狭母音 CV 10 [ ø ] [ ɤ ] CV 15 非円唇 後舌 半狭母音 円唇 前舌 半広母音 CV 11 [ œ ] [ ʌ ] CV 14 非円唇 後舌 半広母音 円唇 前舌 広母音 CV 12 [ ɶ ] [ ɒ ] CV 13 円唇 後舌 広母音 ダニエル・ジョーンズの基本母音が聞る。 http://www.youtube.com/watch?v=6UIAe4p2I74 等 (The Cardinal Vowels with Daniel Jones)

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日本語の音声(2020.5.7) 4

重要な基本母音10個 (CV1~8:第1次基本母音 CV9~18 :第2次基本母音)

口を丸めたイ CV9 円唇 前舌 狭 [ y ] [ɯ ] 非円唇 後舌 狭 CV16) ウ

イ CV1 非円唇 前舌 狭 [ i ] [ u ] 円唇 後舌 狭 CV8 口を丸めたウ

狭いエ CV2 非円唇 前舌 半狭 [ e ] [ o ] 円唇 後舌 半狭 CV7 狭いオ

広いエ CV3 非円唇 前舌 半広 [ ɛ ] [ ɔ ] 円唇 後舌 半広 CV6 広いオ

前のア CV4 非円唇 前舌 広 [ a ] [ ɑ ] 非円唇 後舌 広 CV5 後ろのア 英語の母音(今井邦彦・外池滋生

『英語徹底口練』実務教育出版)

★強母音以外は弱化して曖昧な母音に音色が変わる。

bead [iː] bid [i] bed [e] long[ɔː] bad [æ] bud [ʌ] bum [ʌ] lung [ʌ]

bomb[ɑ] 母音の長さ ともに一音節。音色が異なりそれが意味の違いを生む。長さは後続する音に依存する。無声子音の前

は短く、有声子音の前は長い。★それ故母音の長さは次の子音の有声・無声の区別に関与する。 長母音 bee[biːˑ] bead[biːd] beat[biˑt] 短母音 bid [bɪˑd] bit [bɪt] ☆短母音以外に、二重母音(舌を動かしながら発音する一つの音)あり。ともに 1 音節。 イ 舌の高さ

i ←目標 e ←終わりの舌の位置「エ」に近い a

愛 ア[a] イ[i] I[ai]

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日本語の音声(2020.5.7) 5

母音の基本的分類 舌の前後位置 前舌 後舌 ([u]は円

唇) 舌 高(狭) イ[i] ウ[ɯ] 非円唇 の 中 エ[e] オ[o] ← 円唇 高 低(広) ア[a]

さ 前後の区別なし 『X 線映画による母音の発音の研究』1978(秀英出版)

国立国語研究所

母音発音時の 声道の形状

○:舌の頂点の位置

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日本語の音声(2020.5.7) 6

参考 母音音声比較表(英語・中国語・日本語)(http://www.xiuyin.jp/vowel.html) 国際音声記号の母音

★母音の記号の守備範囲

補助記号 母音に添えて舌の位置の微妙な変化を示す。 竹林滋『英語音声学』1996 研究社(pp.58-9)

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日本語の音声(2020.5.7) 7

課題1 適切な語句を書き込みなさい。(締め切り:5月11日(月)午前10:00)

母音は「声を口の中(声道)で共鳴させて作る音」で「声が共鳴する声道の形や大き

さ」で音が決まり、母音は基本的にそれによって分類される。

主に「声道の形」を変えるのは(①: )、主に「声道の大きさ(容

積)」を変えるのは(②: )である。

さらに日本語では意味を変えるような音の区別には関与しないが、母音の調音の際に

(③: )も声道の形状に影響し母音の分類に関与する。

母音(アイウエオ)を舌の位置で大まかに分類すると以下のようになる。

舌の前後位置 前舌 後舌 母音音声記号(聞き取り練習コピペ用)

舌 高(狭)( ) ( ) フォント(Lucida Sans Unicord)

の 中 ( ) ( ) [ i e ɛ ɑ a ɔ o u y œ ø ɶ ɒ ʌ ɤ ɯ ɨ ʉ ]

高 低(広) ( ) 課題の音声データはホームページ参照(p.2) さ 前後の区別なし

課題2 基本母音を聞き取り,音声記号で記し,調音の特徴を選びなさい。

唇の丸め 舌の前後位置 舌の高さ(開口度)

1 [ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広 2 [ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広 3 [ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広 4 [ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広 5 [ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広 6 [ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広 7 [ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広 8 [ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広 9 [ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広 10[ ] 円唇・非円唇 前舌・後舌 狭・半狭・半広・広