1.プログラムの特⻑ - kansaih.johas.go.jp · 1)救急医療について ... ③...
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救急部
専⾨医制度が⼤きく変わろうとしています。それに伴い、どの科でも今後研修プログラムに修正を加え
ていかなければなりません。しかし関⻄労災病院救急部には、これまでも、そして今後も変わらない⼤
きな教育⽅針の柱があります。それは、救急の現場で⾼い臨床応⽤⼒を発揮する⼈材の育成、多彩な臨
床経験から実臨床に⽣かせる研究材料を⾒つけ出し真理を突き詰めていく能⼒を兼ね備えた⼈材の育成、
そして何よりも臨床医として患者さんを⼤切にする⼼を持った臨床医の育成です。後期臨床研修プログ
ラムを含めた救急研修プログラムは、上述した教育⽅針のもと以下のような概要となっています。
1.プログラムの特⻑
当施設の救急外来では基本的にはかかりつけ患者と救急搬送患者のみの対応を⾏っています。しかし救
急外来患者数は救急部だけでも 2,000 例を上回る搬送数があります。症例数もさることながら内容も軽
症から重症まで⾮常にバラエティーに富んでいるので、各々の症例に対する知識・⼿技はもちろん、治
療にあたる医療⼈としての⼈間性も必要とされています。すべてのことを机上のものだけではなく、臨
床から学び経験していただけるものです。
2. プログラムの内容
医師に求められる資質は、近年特に明確にされております。すなわち臨床の場で⾏う診療技術や知識は
もちろんのこと、チームを構築する能⼒、リーダーとしての⾏動⼒と統率能⼒、初療対応能⼒、緊急の
場⾯での臨床応⽤⼒などです。それらを 3 年程度のうちに普段の診療やカンファレンス、勉強会を通じ
て体得していってもらうものです。具体的には救急医学会や集中治療医学会などで挙げられている技術
や知識、現代の臨床医に求められている能⼒の獲得ができます。さらに豊富な症例の中から臨床研究を
少なくとも1つは計画の⽴案から研究成果の発表まで⾃分⾃⾝の⼒でやっていただけるようサポートし
ます。
3. 習得⼿技
1)救急医療について
学会認定の救急科専⾨医取得に必要な⼿技および経験症例を概ね 1〜2 年で網羅することができま
す。
A.必要な⼿技・処置
a.必修項⽬
① ⼆次救命処置
② 緊急気管挿管(⼼肺停⽌例を除く)
③ 外傷における FAST
(Focused Assessment with Sonography for Trauma)
④ 胸腔ドレーン挿⼊
⑤ ⾻折整復・牽引・固定
⑥ 汚染創への創傷処置
⑦ 中毒に対する消化管除染
⑧ 中⼼静脈カテーテル挿⼊
⑨ 動脈圧測定カテーテル挿⼊
⑩ 気管⽀ファイバースコピー(診断・治療)
⑪ 腰椎穿刺(腰椎⿇酔・検案を除く)
⑫ ⼈⼯呼吸器管理
⑬ 緊急⾎液浄化
b.経験が望ましい項⽬
① 気管切開(穿刺法は除く)
② 輪状甲状間膜(靭帯)穿刺・切開あるいは代替的緊急気道確保
③ 同期電気ショック
④ 緊急ペーシング(経⽪または経静脈ペーシング)
⑤ 開胸式⼼臓マッサージ
⑥ ⼤動脈遮断⽤バルーンカテーテル挿⼊
⑦ ⼼嚢穿刺・⼼嚢開窓術
⑧ 肺動脈カテーテル挿⼊
⑨ PCPS 導⼊・実施
⑩ IABP 導⼊・実施
⑪ イレウス管挿⼊
⑫ 腹腔穿刺・洗浄
⑬ 消化管内視鏡
⑭ SB チューブ挿⼊
⑮ 腹腔(膀胱)内圧測定
⑯ 頭蓋内圧(ICP)測定
⑰ 筋区画内圧測定
⑱ 減張切開
⑲ 緊急 IVR
⑳ 全⾝⿇酔
B.必要な知識
Ⅰ.救急検査
救急検査の選択と評価
救急⼼電図の解読
救急画像診断
Ⅱ.救急医薬品
救急薬剤の使⽤法
救急時の輸液・輸⾎療法
Ⅲ.救急症候
ショックの診断と治療
意識障害の診断と治療
失神の診断と治療
めまいの診断と治療
運動⿇痺の診断と治療
頭痛の診断と治療
痙攣の診断と治療
呼吸困難の診断と治療
胸痛の診断と治療
腰・背部痛の診断と治療
動悸(不整脈含む)の診断と治療
喀⾎・吐下⾎の診断と治療
腹痛の診断と治療
Ⅳ.重症病態
侵襲と⽣体反応
急性臓器不全の診断と治療
体液電解質・酸塩基平衡の診断と治療
敗⾎症の診断と治療
凝固・線溶異常の診断と治療
脳障害の診断と治療
脳死の診断
Ⅴ.集中治療管理の基本
Ⅵ.救急医療システム
救急医療体制
病院前救護
関連領域(周産期・⼩児科・精神科)
Ⅶ.災害医療システム
Ⅷ.救急蘇⽣法・救急処置の普及
BLS・AED
ICLS・ACLS
JATEC・JPTEC
ISLS
Ⅸ.救急医療に必要な法律
Ⅹ.医療安全管理
Ⅺ.⽣命倫理・医療倫理
C.必要な症例
Ⅰ.急性疾病
① 神経系疾患
② ⼼・⾎管系疾患
③ 呼吸器系疾患
④ 消化器系疾患
⑤ 代謝・内分泌系疾患
⑥ 泌尿器・⽣殖器系疾患
⑦ ⾎液・免疫系疾患
⑧ 運動器系疾患
⑨ 重症感染症
⑩ 多臓器障害
Ⅱ.外因性救急
1)外傷
① 頭部外傷
② 脊椎・脊髄外傷
③ 顔⾯・頸部外傷
④ 胸部外傷
⑤ 腹部外傷
⑥ ⾻盤・四肢外傷
⑦ 多発外傷
2) 重症熱傷(電撃症・化学損傷含む)
3) 急性中毒
4) 特殊感染症
5) 環境障害(熱中症・低体温症・減圧症等)
6) 異物・窒息・溺⽔・刺咬症
Ⅲ.ショック
Ⅳ. 来院時⼼肺停⽌(蘇⽣チームのリーダーを担当した症例)
2)集中治療について 学会認定の集中治療専⾨医取得に必要な⼿技および経験症例を概ね 1〜2 年で網羅することができ
ます。
Ⅰ.医療倫理
Ⅱ.救急蘇⽣法
Ⅲ.呼吸
① Difficult airway への対応
Ⅳ.循環
① ⼼臓超⾳波検査モニタリング(経胸壁、経⾷道)
② 各種⼼⾎管疾患の管理(急性冠症候群、急性⼼筋炎、⼼筋症、弁膜症、不整脈など)
③ 薬物療法(抗不整脈薬)
Ⅴ.中枢神経系
① せん妄の予防と治療
Ⅵ.腎
① HUS(hemolytic uremic syndrome)の診断と治療
Ⅶ.肝・胆道系
① 急性肝不全の治療(肝補助療法、栄養管理、肝移植の適応判断など)
Ⅷ.膵
① 重症急性膵炎の治療(輸液計画、鎮痛、栄養管理、外科的治療の適応判断など)
Ⅸ.消化管・その他腹部
① 出⾎・虚⾎・穿孔・イレウス・下痢の診断(NOMI、CD 腸炎など)
② 出⾎・虚⾎・穿孔・イレウス・下痢の治療(輸液輸⾎管理、⾎管内治療、外科的
⼿術の適応判断など)
③ 腹⽔・腹腔内出⾎・ACS(abdominal compartment syndrome)の診断
④ 腹⽔・腹腔内出⾎・ACS(abdominal compartment syndrome)の治療
(腹腔ドレナージ、⾎管内治療・外科的⼿術の適応判断など)
Ⅹ.⾎液凝固線溶系
① DIC の治療法の選択
② 肺⾎栓塞栓症の予防と治療の適応の判断
(下⼤静脈フィルター、PCPS、⾎栓溶解療法など)
Ⅺ.代謝・内分泌系の管理
① 糖代謝異常の診断(DKA、HHS、低⾎糖症など)
② 糖代謝異常の治療(インスリン治療など)
③ 甲状腺機能異常の診断(機能亢進症、機能低下症など)
④ 甲状腺機能異常の治療
⑤ 副腎機能異常の診断(褐⾊細胞腫、機能低下症など)
⑥ 副腎機能異常の治療
Ⅻ.感染
① 抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬の適切な使⽤(肝障害、腎障害、⾎液浄化療法
時、De-escalation、PK/PD 理論、治療薬物モニタリングなど)
② その他の重症感染症の診断、治療(破傷⾵・結核・病原性⼤腸菌・溶連菌群・イ
ンフルエンザウイルス感染症、感染性⼼内膜炎、胆道系感染症など)
XⅢ.多臓器障害
① 多臓器障害の管理
XIV.外傷
① 多発外傷患者の管理(呼吸、循環、感染、凝固線溶管理、保温、⼿術、⾎管内治
療の適応の判断など)
② 外傷治療のチーム医療リーダー
XV.熱傷
① 局所創部の管理(減張切開の適応判断、植⽪や⽪膚治癒の治療計画など)
② 周術期の管理(合併症の予防、デブリドマン、植⽪の時期の判断など)
XVI.急性中毒
XVII.体温異常
① 低体温症の診断(偶発的低体温症、甲状腺機能低下症など)
② 低体温症の治療
③ ⾼体温症の診断(熱中症、悪性⾼熱症、悪性症候群など)
④ ⾼体温症の治療
XVIII.妊産婦
XIX.⼩児
① 呼吸循環管理(年齢体格に応じた気道管理・⼈⼯呼吸管理・輸液管理・栄養管理
など
XX.移植
① 脳死判定
② 脳死ドナーの全⾝管理
③ レシピエントの周術期管理(免疫抑制剤副作⽤管理、拒絶反応の管理、感染対策
など)
XXI. 輸液・輸⾎、⽔電解質
① ⽔電解質異常の治療
② 病態に応じた適切な輸液療法(外傷、熱傷、⼿術、重症急性膵炎など)
③ 輸⾎関連有害事象への対応(TRALI、GVHD、異型輸⾎など)
XXII. 栄養
① 病態に応じた栄養投与(呼吸不全、腎機能障害、肝機能障害、熱傷など)
XXIII. 画像診断
XXIV. 院内での集中治療医の役割
① 院内の重症患者対応(ICU ⼊室に際して重症度の適切な評価、院内の呼吸不全患
者/循環不全/感染患者の評価、アドバイス、ICT など、院内発⽣の救急患者の適切
な管理、RRS など各部⾨と連携して治療、症例検討会など)
3)外傷について 学会認定の外傷専⾨医資格獲得に必要な ISS16 以上の症例数を概ね 1〜2 年で網羅することができ
す。
必須⼿技
① 輪状甲状靭帯穿刺・切開または気管切開
② 胸腔穿刺脱気または胸腔ドレナージ
③ 静脈切開、⾻髄穿刺または中⼼静脈確保
④ 外出⾎の⽌⾎を伴う創縫合処置
⑤ ⼼嚢穿刺または⼼膜開窓
⑥ 蘇⽣的開胸術
⑦ その他の胸部⼿術
⑧ 下⾏⼤動脈遮断(⼤動脈閉鎖バルンによる)
⑨ 緊急開腹⽌⾎術(damage control surgery)
⑩ その他の開腹⼿術、11.緊急穿頭または開頭⼿術
⑪ 鋼線牽引または創外固定
⑫ 経カテーテル動脈塞栓術(TAE)
⑬ 成傷器遺残の鋭的外傷に対する⼿術
Off-the-job の研修として FCCS、JATEC、ITLS、ATOM(資格獲得条件あり)などを受講していただ
きます。
週間スケジュール
通常業務は⽉曜⽇から⾦曜⽇。基本的に当直明けは昼上がりです。
⽉・⾦に全体回診を⾏います。また毎朝、ベッドサイドでの重症及び当直帯での搬送患者の申し送り
を⾏います。毎週⽔曜⽇に全体カンファレンスを⾏います。
当直は⽉ 4〜6 回程度です。
4. 医療設備
初療室
重症を同時 3 床、それに並⾏して中等症を複数受け⼊れ可能なスペースを確保しています。重症患者
を初療室から持続動脈圧ラインや EtCO2 モニタなどフルモニタリングできる環境を整えています。ま
た重症外傷患者に対する緊急室開胸・開腹術ができるように⼿術機器を揃えています。
ICU
病床は 10 床で運⽤しています。初療室同様、すべての病床で⼈⼯呼吸管理、フルモニタリングが可能
です。また敗⾎症プロトコール、⼼停⽌後症候群に対する体温コントロールプロトコールや ICU での
開腹管理プロトコールといった⾼度な集中治療にも応えてくれるスタッフの存在が皆さんの研修を強
⼒にバックアップしてくれることでしょう。
5.⽬標とする取得資格
⽇本救急医学会救急科専⾨医
⽇本集中治療医学会集中治療専⾨医
⽇本外傷学会外傷専⾨医
6.指導体制
臨床研修医 1 年⽬と2年⽬、レジデントと屋根⽡⽅式による研修指導体制で⾏います。
7.指導スタッフの⽒名および資格
救急部 HP スタッフ⾴をご覧ください。
http://www.kansaih.johas.go.jp/kakuka/section_list/kakuka31.html#kyukyubu_staff
8.研修終了後の進路
研修期間中に⼤阪⼤学医局に⼊局した場合には、⼤阪⼤学⼤学院博⼠課程(放射線腫瘍学)に進学、または
⼤学医局との協議により当院を含めた関⻄⼀円の⼤阪⼤学関連病院の放射線治療科または放射線科に勤
務して研鑽を積んでいただく。
9.学会認定
⽇本救急医学会 救急科専⾨医指定施設
⽇本集中治療医学会 集中治療専⾨医研修施設 (平成 28 年より)
⽇本外傷学会 外傷専⾨医研修施設 (平成 28 年より)
10.診療実績
救急部 HP 診療実績⾴をご覧ください。
http://www.kansaih.johas.go.jp/kakuka/section_list/kakuka31.html#kyukyubu_results
11.連絡先
救急部 部⻑ 髙松 純平
〒660-8511
尼崎市稲葉荘3丁⽬1番69号
独⽴⾏政法⼈労働者健康安全機構 関⻄労災病院
総務課 後期臨床研修医採⽤担当
電話:06-6416-1221(代)