1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 ·...

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「教職大学院の『実習』『課題研究』等のカリキュラム(内容)の 点検・評価」の取組(第1WG) 浅野良一(兵庫教育大学:第1WG主査) 1.「課題研究」「実習」の評価システムに関する活動と成果 (1)「実習」の評価を実施 1 年先行して教職大学院のカリキュラムを実施した兵庫教育大学教職大学院におけるすべての 「実習」について、PDCAサイクルをまわし、特に、学生・教員・実習校の評価を行い、「実習 の手引き」の改訂と、その評価結果の改善点を集約し、外部評価委員会をはじめ、外部に発信した。 また、実習評価システムを開発しプログラム化した。 評価を実施し、評価システムをプログラム化した「実習」は下記のとおりである。 ●4コースの実習科目と評価の実施状況 コース名 実習名 2007 年度 入学 2008 年度 入学 2009 年度 入学 学校経営専門職インターンシップ 実施済 1 年実施済 2 年実施中 1 年実施中 学校経営 教育行政専門職インターンシップ 実施済 1 年実施済 2 年実施中 1 年実施中 メンタリング実習 実施済 実施済 実施済 教育実践研究開発プロジェクト実習 実施済 1 年実施済 2 年実施中 1 年実施中 授業実践 教育実践改善研究実習改善研究実習 実施済 1 年実施済 2 年実施中 1 年実施中 実地研究Ⅰ(学校における心の教育の実際) 実施済 実施済 実施済 実地研究Ⅱ(アクション・リサーチ) 実施済 1 年実施済 2 年実施中 1 年実施中 心の教育 実地研究Ⅲ(ケースカンファレンス) 実施済 1 年実施済 2 年実施中 1 年実施中 実地研究Ⅰ(基本実習) 実施済 1 年実施済 2 年実施中 1 年実施中 実地研究Ⅱ(発展実習) 未実施 1 年実施済 2 年実施中 1 年実施中 小学校 インターンシップ 未実施 1 年実施済 2 年実施中 1 年実施中 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発

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Page 1: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

「教職大学院の『実習』『課題研究』等のカリキュラム(内容)の

点検・評価」の取組(第1WG)

浅野良一(兵庫教育大学:第1WG主査)

1.「課題研究」「実習」の評価システムに関する活動と成果

(1)「実習」の評価を実施

1 年先行して教職大学院のカリキュラムを実施した兵庫教育大学教職大学院におけるすべての

「実習」について、PDCAサイクルをまわし、特に、学生・教員・実習校の評価を行い、「実習

の手引き」の改訂と、その評価結果の改善点を集約し、外部評価委員会をはじめ、外部に発信した。

また、実習評価システムを開発しプログラム化した。

評価を実施し、評価システムをプログラム化した「実習」は下記のとおりである。

●4コースの実習科目と評価の実施状況

コース名 実習名 2007 年度

入学

2008 年度

入学

2009 年度

入学

学校経営専門職インターンシップ 実施済 1 年実施済

2 年実施中

1 年実施中

学校経営

教育行政専門職インターンシップ 実施済 1 年実施済

2 年実施中

1 年実施中

メンタリング実習 実施済 実施済 実施済

教育実践研究開発プロジェクト実習 実施済 1 年実施済

2 年実施中

1 年実施中

授業実践

教育実践改善研究実習改善研究実習 実施済 1 年実施済

2 年実施中

1 年実施中

実地研究Ⅰ(学校における心の教育の実際) 実施済 実施済 実施済

実地研究Ⅱ(アクション・リサーチ) 実施済 1 年実施済

2 年実施中

1 年実施中

心の教育

実地研究Ⅲ(ケースカンファレンス) 実施済 1 年実施済

2 年実施中

1 年実施中

実地研究Ⅰ(基本実習) 実施済 1 年実施済

2 年実施中

1 年実施中

実地研究Ⅱ(発展実習) 未実施 1 年実施済

2 年実施中

1 年実施中

小学校

インターンシップ 未実施 1 年実施済

2 年実施中

1 年実施中

1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発

Page 2: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

(2)実習評価の5つのレベル

実習評価を評価する枠組みとして、レベル1から5を設定した。このモデルは、カークパトリッ

ク(Donald L. Kirkpatrick)の4段階のプラットフォームに、フィリップス(Jack J.

Phillips)のレベル5を参考にしている。

レベル 評価内容 評価方法

レベル 1 ●満足度評価(アウトプット評価)

カリキュラム、シラバス、授業内容、授業方法、担

当教員指導技術、教材等、授業を構成する各種要素

が、どの程度、期待に沿ったものであったかの評価

・学生からの授業や科目アンケート

による評価

・教員自己評価

レベル 2 ●目標達成度評価

それぞれの科目や授業で設定したねらいや目標を

どの程度達成したかの評価

・学生からの授業や科目アンケート

・教員自己評価

レベル 3 ●内容理解度評価(個人へのアウトカム評価)

それぞれの科目や授業の内容を、どの程度理解でき

たか、手法をどの程度マスターしたかの評価(効果

測定)

・学生からの授業や科目アンケート

・レポートや試験

・模擬演技

レベル 4 ●実践活用度(個人へのアウトカム評価)

それぞれの科目や授業の内容が、現任校をはじめと

する学校現場に、どの程度活用できるか、また学生

の資質能力の向上に役立ったかの評価(効果測定)

・学生からの授業や科目アンケート

・実習の評価(学生、実習校、教員)

・課題研究に対する評価

(学生、実習校、教員)

レベル 5 ●組織貢献度評価(組織へのアウトカム評価)

それぞれの科目や授業の内容を活用して、学生が行

動し、どの程度、現任校をはじめとする学校現場の

改善に貢献したかの評価(効果測定)

・実習の評価(学生、実習校、教員)

・課題研究に対する評価

(学生、実習校、教員)

・修了後の追跡評価

(学生、勤務校、教員)

(3)実習評価の構成要素

平成 19 年度に本学が受託した文部科学省からの委託研究「教員研修評価改善事業」では、調査

では、研修の総合評価(独立変数)を34問から38問で聞き、研修の総合評価(独立変数)に影

響を与えるウエイトについて、回帰係数をもとに算出したところ、下記の結果となったことを受け

て実習の設問項目を設定した。

構成要素群

総合評価の設問

事前準備

内容

環境

満足度 受講した研修は満足のいくものだった 5.98 73.25 20.77

理解度 受講した研修の内容は理解できた 9.42 67.49 23.09

実践度 受講した研修の内容は現場で活用できる 5.70 81.68 12.62

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(4)4コース共通の実習評価項目設定

教職大学院の4つのコースには、全部で11種類の実習があるが、それぞれの評価をすると同時

に、下記の共通した評価項目を設けた。質問項目は、「事前準備」「内容」「成果」「総合評価」の4

領域で、質問は全部で12問(自由回答含む)である。

学生用

【様式1】

実習校メンター用

【様式2】

教員用

【様式3】

(1)実習に際して、専攻

での事前指導は、実習の効

果的な実施に役立ちまし

たか。(オリエンテーショ

ン、アドバイス、情報提供、

実習校との調整等)

(1)実習に際して、大学

での事前指導は、学生の実

習の効果的な実施に役立

ったと思まれますか。(実

習校との調整、情報提供

等)

(1)実習に際して、指導

教員の事前指導は、実習の

効果的な実施に役立った

と思いますか。(オリエン

テーション、アドバイス、

情報提供、実習校との調整

等)

1 実習の

事前準

(2)実習に際して、自分

自身の事前の準備(課題の

焦点化、内容やスケジュー

ルの検討、実習校との事前

打ち合わせ等)は、適切な

ものでしたか。

(2)実習に際して、学生

自身の事前準備(課題の焦

点化、内容やスケジュール

の検討、実習校との事前打

ち合わせ等)は、適切なも

のだったと思われますか。

(2)実習に際して、学生

自身の事前準備(課題の焦

点化、内容やスケジュール

の検討、実習先との事前打

ち合わせ等)は、適切なも

のだったと思いますか。

(1)実習の内容や進め方

は、実習目的を達成するの

にふさわしいものでした

か。

(1)学生の実習の内容や

進め方は、実習目的に沿っ

た適切なものだったと思

いますか。

(1)学生の実習の内容や

進め方は、実習目的に沿っ

た適切なものだったと思

いますか。

(2)実習先での受け入れ

(メンターの指導等)は、

実習目的を達成するのに

ふさわしいものでしたか。

(2)貴校での受け入れ

(メンターの指導等)は、

実習目的を達成するのに

ふさわしいものだったと

思いますか。

(2)学生の実習先の受け

入れ(メンターの指導等)

は、実習目的を達成するの

にふさわしいものだった

と思いますか。

(3)実習中、大学からの

支援(教員訪問や中間報告

会等)は実習目的を達成す

るのに役立ちましたか。

(3)実習中、大学からの

支援(教員の実習校訪問

等)は、実習目的を達成す

るのに役立ったと思いま

すか。

(3)実習中の大学からの

支援(教員訪問や中間報告

会等)は、実習目的を達成

するのに役立ったと思い

ますか。

2 実習の

内容

(4)実習の期間や時期は

適切なものでしたか。

(4)実習の期間や時期

は、適切なものだったと思

いますか。

(4)実習の期間や時期

は、適切なものだと思いま

すか。

3 実習の

成果

(1)実習は、大学院での

授業科目で学んだ成果を

統合できるものでしたか。

(1)実習は、大学院での

授業科目で学んだ成果を

感じさせるものでしたか。

(1)実習は、学生が大学

院での授業科目で学んだ

成果を統合できるものだ

ったと思いますか。

Page 4: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

(2)実習では、実習先の

課題解決に役立つ提案や

具体的行動ができました

か。

(2)実習では、学生は、

貴校の課題解決に役立つ

提案や具体的行動ができ

たと思いますか。

(2)実習では、学生は、

実習先の課題解決に役立

つ提案や具体的行動をで

きたと思いますか。

(3)実習は、修了時に提

出する「特定の課題に対す

る研究成果」の充実に役立

ちましたか。

(3)実習は、学生のテー

マである課題解決に役立

ったと思いますか。

(3)実習は、修了時に提

出する「特定の課題に対す

る研究成果」の充実に役立

っていたと思いますか。

(4)実習は、将来のリー

ダー教員として、自分の資

質・能力の開発に役立ちそ

うですか。

(4)実習は、将来のリー

ダー教員として、学生の資

質・能力の開発に役立つと

思いますか。

(4)実習は、将来のリー

ダー教員として、自分の資

質・能力の開発に役立つと

思いますか。

(1)実習は、総合的に見

て満足のいくものでした

か。

(1)実習は、総合的にみ

て、貴校の期待や予想に沿

うものでしたか。

(1)実習は、総合的にみ

て、指導教員として満足の

いくものでしたか。

4 実習の

総合評

(2)その他、実習につい

て言いたいことがあれば、

自由にお書き下さい。

(2)その他、実習につい

て、ご意見等があれば、ご

自由にお書き下さい。

(2)その他、実習につい

て言いたいことがあれば、

自由にお書き下さい。

(5)修了生アンケート

また、教職大学院修了後の学生に対して、大学院での学びの成果を確認するため、2009 年度に、学

校経営コースでアンケート調査を実施し、そのまとめを公表する予定である。

【アンケート質問例:自分自身の成長】

2.スクールリーダーコース(学校指導職専攻)では職能開発の手段としてフィールドワークやイ

ンターンシップ(実習)の機会を設けています。これら現場での研修は、ご自身の成長の上でどの

ように役立ったと考えますか?

【アンケート質問例:特定の課題に係る研究成果への影響】

3.スクールリーダーコース(学校指導職専攻)ではインターンシップ(実習)等を含めた二年間

の研修の総括として「学校改善プラン」を作成することとなっています。この「学校改善プラン」

の活用について次の質問にお答えください。

(1)この「学校改善プラン」の活用について下記のうち当てはまるもの一つに○をつけてくださ

い。

a)直接活用された b)直接は活用されなかったが間接的に活用している c)活用していない

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2.「課題研究」の評価システムに関する活動と成果

(1)「課題研究」の評価を実施

1 年先行して教職大学院のカリキュラムを実施した兵庫教育大学教職大学院におけるすべての

「課題研究」について、学生・教員・実習校の評価を行い、「学びのプロセス」の作成と、その評

価結果と改善点を集約し、外部評価委員会をはじめ、外部に発信した。また、課題研究評価システ

ムを開発しプログラム化した。

(2)4コース共通の課題研究評価項目設定

P1学生用【様式1】 P2学生用【様式2】 教員用【様式3】

1 課題研究の1年次カリキュラ

ムは、満足のいくものであっ

たと思う。

課題研究のカリキュラムは、

満足のいくものであったと思

う。

課題研究のカリキュラムは、

学生にとって満足のいくもの

であったと思う。

2 課題研究の1年次カリキュラ

ムでは、ねらい(註1)を達成

する一里塚になったと思う。

課題研究のカリキュラムで

は、ねらい(註1)を達成でき

たと思う。

課題研究のカリキュラムで

は、ねらい(註1)を達成でき

たと思う。

3 課題研究の1年次カリキュラ

ムは、修了時に提出する「特

定の課題に対する研究成果」

の充実に役立つと思う。

課題研究のカリキュラムは、

修了時に提出する「特定の課

題に対する研究成果」の充実

に役立ったと思う。

課題研究のカリキュラムは、

P2学生の修了時に提出する

「特定の課題に対する研究成

果」の充実に役立ったと思う。

4 課題研究の1年次カリキュラ

ムは、将来のリーダー教員と

しての資質・能力の育成に役

立ったと思う。

課題研究のカリキュラムは、

将来のリーダー教員としての

資質・能力の育成に役立った

と思う。

課題研究のカリキュラムは、

将来のリーダー教員としての

資質・能力の育成に役立った

と思う。

5 課題研究の1年次カリキュラ

ムに対して、教員の指導は適

切であったと思う。

課題研究のカリキュラム全体

に対して、教員の指導は適切

であったと思う。

課題研究のカリキュラム全体

に対して、教員の指導は適切

であったと思う。

●課題研究のねらい

学校経営コース

(学校改善プラン・教

育行政改善プランの開

発)

他の講義や演習、課題研究での各種活動を通じて学習し、発見したことを

集約し、それらに基づいて、特色ある学校(魅力ある学校)づくりのため

のミッションと教育目標を創造し、それを実現するための経営方針、教育

課程・教育活動、組織体制などを考案する。また、それらを改善計画とし

て文書にまとめ、プレゼンテーションすることで、学校経営・教育行政の

実践と改善につながるトータルな計画の立案能力を養う。

授業実践リーダーコー

(教育実践課題解決研

究)

本科目では、現代的な教育実践課題を取り上げ、学生と教員が一緒に調査、

研究活動を行い、成果を出していく展開を図る。プロジェクト方式の学習

展開である。プロジェクトは、1年前期・後期、2年前期・後期の 4期に分

けて展開する。各期に5~6名のプロジェクトを立ち上げ、(中略)この学

習過程で、学生は、課題発見、仮説設定、検証過程、結果のまとめ方、プ

レゼンテーション技術等を習得し、教育実践課題の取り組み全体を体得す

る。このプロジェクトを 4回経験することにより、2年後期には学会発表で

きるレベルまで研究を深めることをねらいとする。

心の教育実践コース

(心の教育総合研究)

本科目では、共通基礎科目、専門科目及び実習科目を履修することによっ

て各学生が学び獲得してきた心の教育の諸課題に関わる知見を「心の教育

総合プラン」へと仕上げていく。(中略)期待される学習効果は、実践に適

用可能な実践的プランの作成のための力量形成であり、指導力量の獲得で

ある。

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1.2008 年度に実施した「実習」の評価結果概要(2009 年度は現在実施中)

実習の評価で際立っているのは、学生評価における実習校のメンターの指導で、学校経営コース

の2つの科目は 92.3%と 100%、授業実践リーダーコースは 80%、心の教育実践コースの3つの

科目は 100%、100%、57.1%、小学校教員養成特別コースは 71%が肯定的な回答(4 段階評価の

4と3)をした。いずれも「4:そう思う」の人数が「4:少しそう思う」を上回っている。

また、今後の実践への役立ち度合いも、肯定的な回答が多く、実習全体の学生の満足度としては、

学校経営コースの2つの科目は、92.3%と 100%、授業実践リーダーコースは 80%、心の教育実践

コースの3つの科目は 100%、85.7%、100%、小学校教員養成特別コースは 81.4%となり、学生

は実習に満足している様子がうかがえる。

ただ、ストレート学生に対する問題点が多く指摘されている。ストレート学生は、授業実践リーダ

ーコースと心の教育実践コースには一定の人数が所属し、小学校教員養成特別コースは全員がスト

レート学生である。問題点としてあげられるのは、①事前準備(テーマの焦点化や内容の検討等)

が不十分であることから、必ずしも、②実習目的に沿った実習内容となっていないケースも多くあ

るように思われる。したがって、③共同研究的な取り組みも満足のできるレベルにはいたらず、当

然、④実習校への貢献も十分できていない学生が多く見受けられる。(例:小学校教員養成特別コ

ースの学校貢献は 25.9%)実習校の評価も、学生の意欲や態度は評価しながらも、⑤大学院生の

実習内容のあり方に戸惑い、共同研究ができるレベルではないと感じている。

2.2009 年度に向けた「実習」の改善の方向性

ストレート学生に対する実習への取り組みを見直す必要がある。見直しの方向性としては、①入

学時の実習に対するオリエンテーション(手引き等を充実させ実習目的や内容をストレート学生

向けに別途作成する等)の充実や、②実習に入る際の個別指導と事前準備の支援、③実習中の学

生に対するモニタリングと現場指導、そして、④実習校や指導していただいているメンターとの

密なる連携が不可欠である。

3 2008 年度に実施した「課題研究」の評価結果概要(2009 年度は現在実施中)

(1)学校経営コース「学校改善プラン・教育行政改善プランの開発」

学生の満足度、ねらいや目標の達成度(達成目標)、学校改善プランへの役立ち度(短期)、将来

に向けた役立ち度(中長期)、教員の指導の適切性のいずれも設問に対しても、P1、M2学生、教

員は肯定的な回答をしており、概ね満足できるレベルにあると考える。ただ、M2に比べて、P1

の評価はやや辛めであり、課題研究全体のシラバスやステップを踏んだ学びのオリエンテーション

等の不足がうかがえる。また、2年間を通した単位認定のしくみや課題研究の時間等についての改

善が必要である。

(2)授業実践リーダーコース「教育実践課題解決研究」

P1学生の評価では、昨年度の学生評価を踏まえて、前期は教員及び院生のグループセッション,

後期は個別ゼミ形式によるものに変更した成果がうかがえる。P1の課題研究では,教員らが意図

2.「実習」「課題研究」の評価結果とFD活動

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したように、前期は、学生自らの研究課題を明確にし,研究の基礎を学び、後期は、2年次の実習

に向けて自らの研究課題を深めることができ、学生もおおむね満足している。

M2については、各自の研究テーマに即して,指導教員 2名と、研究テーマや実習における授業

実践と関連させたゼミを行うことを通して,研究内容の深化が図られたようである。また、特定の

教員が責任を持ち一貫した指導が行ったことが高い評価につながったようである。

一方、学生評価から課題を拾うと、ゼミ開始時期,運用方法,コース内教員および他コース教員

との連携,eポートフォリオシステムの活用に関する改善などがあげられる。また、学生評価を課

題研究のステップごとに行うなど、より具体的な改善課題を発見できるしくみが必要である。

(3)心の教育実践コース「心の教育総合研究」

学生評価では、総合プランとの関連性については、肯定的な回答が多かったが、総合的な満足度、

ねらいの達成度、今後の実践活動での役立ち度、教員の関わり方については、肯定的な評価が高く

ない結果となった。

評価結果の原因として考えられるのは、学生が、P1から続く課題別 meeting での指導や中間発

表等のステップを踏んで,プランをより良くするための討議を意図したものであるとの理解が不十

分であったことが考えられる。

したがって、改善の方向性としては、心の教育総合研究の位置づけについて,院生と教員の共通

理解を図ると同時に、一人あたりの発表の時間の確保や、人数を分けたり,形式を変えるなど工夫

による教員からのきめ細かい指導の実現が考えられる。さらに、教員全員の出席の確保等,教職大

学院のしくみ自体に関わる課題もある。また、学生評価を課題研究のステップごとに行うなど、よ

り具体的な改善課題を発見できるしくみが必要である。

どのコースの課題研究についても、21 年度も継続して取り組む専門職大学院GPや科研を活用

して、課題研究のあり方をはじめ、課題研究の内容と進め方、そして教員の指導体制や指導技術の

向上を検討する必要がある。特に、課題研究は、他の科目群に比べて、各コースの教員間の連携強

化やチームワークが欠かせない科目であるとの認識が必要であると思う。

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1.「実習」のカリキュラムレベル改善

評価結果を受けて、実習の手引きを改訂すると同時に、4コースの実習の流れを整理し、学生を

中心に、いつ、誰が、何をするかを明確にした。下図は、学校経営コースのインターンシップ(実

習)を中心とした2年間の流れである。

活動概要 大学指導教員 学生 実習先

1

構想段

インターンシップの概

要理解

実習先への趣旨説明

1

準備段

インターンシップでの

学習項目や注すべき課

題の焦点化

2

計画段

インターンシップの個

別計画作成

実施段

インターンシップの実

評価段

インターンシップの報

告・振り返り

2

活用段

学校改善プラン・教育

行政改善プランの作

成・発表

3.理論と実践の統合を促進する「実習」「課題研究」

実習個別計画の作成指導

実習個別計画の検討・決定

インターシップセミナーによる指導

メンター(校長等)からの指導

インターンシップ記録作成・報告

実習成果の改善プランへの活用指導

改善プランの指導

改善プランの概要報告

改善プランの中間報告

改善プランの発表と評価

実施のための環境整備

実習個別計画の打ちあわせ

個別指導

実習先訪問による関係づくり

実習先訪問による趣旨説明

課題解決のための貢献

インターンシップ評価書作成・報告

実習先訪問による趣旨説明と関係づくり

実習の趣旨説明

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2.「課題研究」のカリキュラムレベルでの改善によるFD

評価結果を受けて、共通基礎科目や専門科目との関係を整理し、「課題研究」を中心とした「学

びのプロセス」を作成した。下図は、学校経営コースのものである。

(1)学びのプロセスによる各種科目の統合

4月~7月 【現状分析】現任校・教育委員会の現状把握と分析

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

7月 【課題発見】現任校・教育委員会の課題発見・整理

~組織活性化・危機管理・人材育成等~

(6)

(7)

(8)

1月~2月 【課題形成】現任校・教育委員会の改善チャート作成・発表

9月~10月 【課題解決策検討】現任校や教育委員会でのインターンシップ

2月 【課題解決策提案】学校改善プラン・教育行政改善プランの開発・発表

●共通基礎科目(8科目)

●専門科目(3科目)

●自学自習/相互啓発

●個別指導/グループ指導

●専門科目(2科目)

●自学自習/相互啓発

●個別指導/グループ指導

●学校経営事例研究・

教育行政事例研究(1)

~20 学校・教育委員会~

●フィールドワーク

●学校経営事例研究・

教育行政事例研究(3)

~20 学校・教育委員会~

●学校経営事例研究・

教育行政事例研究(4)

~20 学校・教育委員会~

●専門科目(1科目)

●自学自習/相互啓発

●個別指導/グループ指導

●学校経営事例研究・

教育行政事例研究(2)

~20 学校・教育委員会~

●共通基礎科目(2科目)

●専門科目(4科目)

●自学自習/相互啓発

●個別指導/グループ指導

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(2)シラバス作成による目標と内容の明確化(学校経営コース事例)

課題研究テーマ 課題研究の内容 課題研究の目標

優れた学校経営事例

研究(1)

【事例校】

M2が実施した優れた学校経営事

例校を題材に、学校経営の把握を

行う。

学校経営の全体像把握と、事例

校の分析・考察により、学校経

営を構成する要素と成功要因を

理解する

1

期 現任校描写演習

【現任校】

現任校の現状を、客観的に記述(描

写)する。

現任校の現状を客観的に記述す

ることで、現任校の課題や学校

経営のポイントを把握する

優れた学校経営事例

研究(2)

【事例校】

優れた学校経営を実践している学

校を対象に、学校経営の分析を行

う。

学校経営組織の情報収集から現

状把握、分析考察、そして現任

校適用の一連の流れを体得し、

学校改善の手の打ちどころとス

トーリーを理解・習得する。

1

フィールドワーク

【事例校】

特色ある経営をしている教育委員

会や学校を訪問し、教育委員会活

動や学校経営の分析を行う。

特色ある学校や教育委員会を視

察し、学校経営や教育委員会の

優れた取り組みと今後の課題を

把握する。

M1現任校事例研究

【事例校】

M1の現任校描写に対して、その学

校の現状や課題を把握し、解決の

方向性の分析・考察・助言を行う。

学校の課題や学校経営のポイン

トを把握する。また、1 年次に

学習した理論や実践との統合を

はかる。

2

優れた学校経営事例

研究(3)

【事例校】

1 年次に実施した優れた学校経営

事例を教材に、その学校の現状把

握や分析考察について、M1にア

ドバイスする。

学校経営の成功要因と課題をよ

り深く理解・習得する。また、

自分自身の 1 年間の成長を実感

する。

インターンシップ

【現任校】

現任校での管理職インターンシッ

プにより、現任校の現状把握や課

題を再確認し、学校改善にむけた

具体的方法の検証を行う。

現任校の課題に、主体的に取り

組める資質・能力を育成すると

ともに、学校改善のための課題

発見・計勢力を開発する。

優れた学校経営事例

研究(4)

【事例校】

P1が研究する優れた学校経営事

例に対して、学校の現状把握や分

析・考察、そして今後の学校経営

の方向性を研究する。

優れた学校経営の自分なりの枠

組みづくりをするともに、学校

の今後の打つ手を考察する力を

形成する。

2

学校改善プラン作成

【現任校】

これまでの授業や演習で学んだ成

果を統合し、学校改善プランを作

成し、学校長に提案し、評価を受

ける。

現任校の校長等の前で発表する

ことで、改善プランの効果性や

実現可能性を確認する。

Page 11: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

3.「実習」や「課題研究」における各種の授業方法の開発によるFD

「実習」や「課題研究」の実験的試行を通じて、理論と実践を融合するため、学校の課題に直結

した「実践的事例研究」の方法を開発した。

(1)「ケースメソッド」を参考にした「実践的事例研究」

一般的な事例研究には、シカゴ大学で開発された「ケーススタディ」と、ハーバード大学で生まれた

「ケースメソッド」がある。ケーススタディは、比較的短い事例で、想定される正解(最適解)がある

のに対し、ケースメソッドは、唯一の正解を求めるのではなく、おかれた状況を分析することで、その

成功・失敗要因を考察する。さらに、ケーススタディは、第 3者の立場で事例に臨むのに対し、ケース

メソッドは、当事者として事例を検討する。すなわち、状況把握から分析・考察を行うにとどまらず、

「かかる状況下におけるトップの意思決定(次の一手)は?」を検討することが大切である。

ケースメソッドは、ハーバード大学のエドウィン・F・グレイ教授が考えたもので、マネジメントス

クールや企業内で総合的な経営能力の開発を目的に活用されるようになった。日本では、慶応大学のビ

ジネススクールや野村マネジメントスクール等が、企業から選抜・派遣された経営幹部候補者に対する

有効な教育手法として活用がはじまり、現在では、経営大学院(MBA)をはじめ各専門職大学院で広

く実施されている。

今回開発した「実践的事例研究」はケースメソッドに近いが、これまでのように過去の事例だけを扱

うのではなく、過去の経過を含めた現在の学校状況を題材に行う事例研究であるところに特徴がある。

(2)「実践的事例研究」の効果

①「実践的」な課題研究に向けた改善

「実践的事例研究」では、優れた取り組みをしている学校を扱うが、学校での取り組みはその時々の断面

でみるものではなく、時系列(時間軸)の把握・検討が欠かせない。そのため、かつての優れた取り組み実

践の「その後」について検証し、その成功・失敗要因を検討することで、理論と実践の統合の効果性の向上

を図る。

②「リアル」な課題研究に向けた改善

通常のケースメソッドで行われるペーパー(文字媒体)による事例研究では、当該学校の実情を理解しに

くい面があり、また、聞きたい、知りたい点を十分に把握できないことも多い。そこで、課題研究を「現地」

で行うことで、その不十分な点を補うことで、より「リアル」なものとし、理論と実践の統合の効果性の向

上を図る研究を行う。

(3)実施した「課題研究」「実習」の試行実施の内容と評価

●平成 20 年度

(点数は4件法での評価:4:そう思う3:少しそう思う2:あまりそう思わない1:全くそう思わない)

行先 評価項目 評価

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 2.5

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

3.4

五ヶ瀬町

フィールドワーク

(20 年 9 月)

【課題研究】

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 2.5

Page 12: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

3.3

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 3.5

①カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 3.4

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

3.7

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 2.3

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

3.4

兵庫県教育委員会

(20 年 11 月)

【課題研究】

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 3.6

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 3.8

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

3.8

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 3.3

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

3.5

福知山市立

惇明小学校

(20 年 12 月~1月)

【実習】

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 3.9

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 3.5

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

2.9

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 2.4

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

2.9

神戸市立

六甲アイランド高校

(21 年 1 月)

【実習】

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 4.0

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 4.0

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

4.0

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 3.7

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

3.7

鈴鹿市立神戸小学校

(21 年 1 月)

【課題研究】

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 4.0

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 3.6

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

3.4

田辺市立東陽中学校

(21 年 1 月)

【課題研究】

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 3.2

Page 13: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

3.4

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 3.7

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 3.8

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

3.9

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 3.6

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

3.8

三朝町立西小学校

(21 年 2 月)

【課題研究】

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 3.8

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 3.7

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

3.8

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 3.7

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

3.8

三朝町立南小学校

(21 年 2 月)

【実習】

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 3.6

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 3.8

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

3.8

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 3.8

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

4.0

鳥取県立倉吉東高校

(21 年 2 月)

【課題研究】

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 4.0

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 3.0

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

2.8

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 2.6

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

3.2

鳥取県教育委員会

(21 年 2 月)

【課題研究】

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 3.4

①本カリキュラムは、あなたにとって満足のいくものでしたか。 2.9

②本カリキュラムは、ねらい(特色ある学校や教育委員会を視察し、

学校経営や教育委員会の優れた取り組みと課題を把握する)を達成

できましたか。

3.3

兵庫県立高校

学校評価

(21 年 2 月)

【課題研究】

③本カリキュラムは、学校改善プラン作成に役立ちそうですか。 3.1

Page 14: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

④本カリキュラムは、将来の学校管理職や教育委員会幹部としての

資質・能力の育成に役立ちそうですか。

3.1

⑤本カリキュラムに対する教員の指導は適切でしたか。 3.1

●平成 21 年度

行先 内容

福井市立至民中学校

(21 年 10 月)

【課題研究】

先進的な実践に関する研究発表会(教科センター方式)に参加し、学校の取

り組みについて、学校の当事者と議論する。教員は、議論のコーディネート

を行うと同時に、新しい取り組みについての理論的な解説と実践への橋渡し

を行う。

京都市立御池中学校

(21 年 11 月)

【課題研究】

先進的な実践に関する研究発表会(小中一貫)に参加し、学校の取り組みに

ついて、学校の当事者と議論する。教員は、議論のコーディネートを行うと

同時に、新しい取り組みについての理論的な解説と実践への橋渡しを行う。

兵庫県立千種高等学校

(22 年 1 月)

【課題研究】

先進的な実践に関する研究発表会(中高一貫)に参加し、学校の取り組みに

ついて、学校の当事者と議論する。教員は、議論のコーディネートを行うと

同時に、新しい取り組みについての理論的な解説と実践への橋渡しを行う。

磐田市立神明中学校

(21 年 10 月)

【実習】

学生の実習校で、モデルとなる授業研究や校内研修会を実施し、学校の課題

解決に貢献すると同時に、学生の実習の充実を支援する。教員は、コーディ

ネートを行うと同時に、今回の取り組みについての理論的な解説と実践への

橋渡しを行う。

福井県私立高等学校

(21 年 10 月)

【実習】

学校の第三者実習を学生ともに行い、学校評価の進め方のポイントを指導す

るとともに、実習でのレディネス向上を図る。教員は、コーディネートを行

うと同時に、今回の取り組みの理論的な解説と実践への橋渡しを行う。

(評価は 2009 年度末に実施中)

(4)公開授業・合同授業によるFD

行先 内容

鳴門教育大学

(21 年 7 月)

【課題研究】

課題研究を鳴門教育大学と互いに参観し、事後検討を行う。教員は、コー

ディネートを行うと同時に、授業の進め方を議論する。

上越教育大学

(21 年 12 月)

【課題研究】

課題研究を鳴門教育大学と互いに参観し、事後検討を行う。教員は、コー

ディネートを行うと同時に、授業の進め方を議論する。

五ヶ瀬町教育委員会

(21 年 11 月)

【課題研究】

課題研究を題材として取り扱う教育委員会で実施し、関係者(教育委員会・

学校教職員・議員・市民等)とのディスカッションを行う。教員は、コー

ディネートを行うと同時に、授業の進め方を議論する。

Page 15: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

4.教員の授業改善・FD

(1)授業改善・FD活動のポイント

課題研究や実習の試行をもとに、授業改善・FD活動のポイントを整理した。

(左)自己評価

(右)学生評価 項目 授業改善・FD活動のポイント

5 4 3 2 1

レディネス確保

当該時限の課題研究の内容の理解と現場で

の活用が円滑に行えるレベルにするための

事前学習や事前課題提示を行ったか。

課 題 研 究 構 造

課題研究全体のねらいを明確に伝え、当該

時限の課題研究全体での位置づけを明確に

したか。

課 題 研 究 内 容

当該時限の到達目標を目指し、それに沿っ

た内容を過不足なく提供。その内容の到達

目標に応じた方法となったか。

教 材 教 具

当該時限の内容の到達目標に向けて、学生

の理解・習得を促進するための効果的・効

率的な場や教材教具の提供・活用はできた

か。

理 論 理 解

当該時限で扱う各項目について、背景にあ

る理論部分の説明と、発展的な学習を促進

するための情報提供はできたか。

現 場 活 用

当該時限の内容を学生の学校現場に転移さ

せるためのメタファー(比喩・例話)やキ

ーワード提示は十分だったか。

学 習 集 団

課題研究の場(空間)での学生の反応や活

動に対する適切な対応、グループダイナミ

クスを活用した理解促進や演習の介入は適

切だったか。

授 業 技 術

課題研究における学生の理解促進ため、教

員と学生との適切な各種コミュニケーショ

ン(情報発信、情報受信、KR、創造的対

話等)をはかったか。

(2)授業評価表

課題研究や実習の試行をもとに、授業評価表を3つのパターンで作成した。

Page 16: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

(1) 教育委員会と連携した学校の第三者評価実習

教育委員会と連携し、管内の小学校で本学教員を主査とした現職学生チームを編成し、学校の第

三者評価実習を実施した。その後も、同種の依頼が他の教育委員会からも来ており、今後は、学

生の実習校での実施を検討し、実習の新たな方法として今後も活用する。

●事前に学校の資料の読み込み

●当日の第三者評価スケジュール 7:30~ 7:50 登校風景視察

7:50~ 8:00 体力作り(縄跳び)視察 8:00~ 8:10 朝の活動視察

8:10~ 8:15 職員室であいさつ 8:15~ 8:25 朝読書視察

8:25~ 8:40 朝の会視察 8:40~ 9:25 1時限視察 9:30~10:15 2時限視察 10:15~10:35 青空タイム視察(二色リレー) 10:35~11:20 3時限視察 11:25~12:10 4時限視察 12:10~12:55 合同給食視察(多目的ホールで一緒に給食) 12:55~13:15 児童との対話等 13:15~13:40 休憩 13:40~13:55 そうじの視察(たてわり班で特別教室) 13:55~14:05 ドリルタイム視察 14:05~14:50 校長ヒアリング 14:55~15:40 教頭ヒアリング 15:40~15:55 帰りの会視察(3・4年、5・6年) 15:55~16:25 教職員ヒアリング 16:25~16:30 終わりのあいさつ 16:30~ 校区視察

●第三者評価報告書作成

●学校のHPで講評

4.「実習」「課題研究」の新しいタイプ

Page 17: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

(2)学生の実習校での研究授業と校内研修施

学生の現任校で、実習中に教員と学生チームが訪問し、学生の公開授業をもとに、モデルとな

るような事後研修を実施し、管理職や主任の教員を交えて、校内での職能開発の推進を検討する。

今後も学生の実習校での実施を検討し、実習の新たな方法として今後も活用する。

Page 18: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

(3)「課題研究」の新しい進め方のモデル

①学校経営(教育行政)事例の読み込み基礎演習

情報収集

【Data】

事例研究する学校や教育委員会につい

て、現P2のレポートや、P2からの

ヒアリング等により調査(情報収集)

する。

現状把握

【Information】

収集した情報を整理し、当該校や教育

委員会の現状を把握する。

分析・考察

【Intelligence】

事例研究した学校経営や教育行政のポ

イントや発見、気づきを整理し、管理

職の資質や手法を分析する。また、事

例を分析した感想と、さらに聞いてみ

たいこと(質問)を準備する。

【事後】

適用・転移

【Apply】

事例研究の結果、成功要因について、

現任校や教育委員会への改善に役立つ

と思われる事項を整理する。

【事後】

個人研究 専門雑誌や報告書等に掲載されている

事例を読み、各自で、現任校や教育委

員会の現状把握と課題分析をする。

また、後期の事例研究の学校や教育委

員会の候補を探索する。

● 事後の発展学習

関心を持った点について、発

展的学習や相互学習を行う。

●発表

課題研究時に、個人発表・執

筆者質疑応答・意見交換をす

る。【発表事例参照】

Page 19: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

②現任校描写演習

情報収集

【Data】

現任校について、各種データ・資

料や自分自身の経験やヒアリン

グをもとに、現任校の客観的な特

徴や事実を洗い出す。

描写【現状把握】

【Information】

客観的な特徴や事実を整理し、他

人にわかるようにまとめ、現任校

の現状を把握する。

解釈【分析・考察】

と課題形成から課題

解決

【Intelligence】

現任校の現状把握(描写)を解釈

し、課題を抽出する。可能であれ

ば、現時点の改善方向についての

考えを付記する。

【事後】

事例研究校の準備

【次へのつなぎ】

現任校の課題を中心に、現任校へ

の改善に役立つと思われる優れ

た学校経営事例校を選択する。

*描写

実際の状態・情景を、出来るだけ客観的に写し表すこと。(新明解国語辞典)

*解釈

客観的な特徴や事実をもとに、現任校の教員であった自分の考え方で、それらの意味を理解するこ

と。

*課題形成から課題解決

解釈した事柄をもとに、問題点や課題を抽出し、改善の方向性や改善方策を例示する。

●事後の関連学習

現任校の課題解決に役立つ

領域の学習を各自行う。

●発表

課題研究時に、個人発表・

質疑応答・意見交換する。

【発表例目次参照】

Page 20: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

③ 学校経営(教育行政)事例研究の実践演習

情報収集

【Data】

当該校について、各種データや訪

問ヒアリング等により調査(情報

収集)する。

現状把握

【Information】

収集した情報を整理し、他人が読

んでわかるようにまとめ、当該校

の現状を把握する。

分析・考察

【Intelligence】

何故、当該校は成果があげたか、

成功要因について、持論を展開す

る。また、当該校の次なる課題(一

手)は何かについて提言する。

適用・転移

【Apply】

当該校の研究の結果、成功要因に

ついて、現任校への改善に役立つ

と思われる事項を整理する。

補足・発展

【Grow】

当該校の改善に役立つキーワー

ド(例:女性管理者、民間人校長

等)について深堀りの学習をし、

成果を補足的に整理しておく。

● 関連学習

分析・考察の新しい視点

を学習する。

● 発展学習

現任校へのヒントを充

実させるために、さらに

発展的に学習する。

Page 21: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

1 専門職大学院GP・第 1WGの目指すもの

今回のGPでは、まず第 1 に、「実習」「課題研究」をPDCAサイクルで回すことにより、不

断の改善を可能にする評価システムをつくった。第 2 に、「実習」「課題研究」の現状分析や評価

システム運用、「実習」「課題研究」の実験的試行により、①教職大学院の共通基礎科目・専門科

目等との有機的連携を図るカリキュラム面の改善、②「実習」「課題研究」の内容・進め方等、授

業面の改善、③現状分析・評価システム・実験的試行等により、教職大学院教員の指導技術向上

等のFDに取り組んだ。そして第 3 には、①②の成果として、他のタイプ専門職大学院(法科大

学院や経営大学院等)にはみられない、実習を行う学生の現任校や連携協力校、また教育委員会

との「互恵システム」の構築を目指した。

2 教職大学院と学校・教育委員会の互恵システムの全体像

5.教職大学院と学校・教育委員会の互恵システムの構築

教育委員会

実習校

メンター

他の学校

派遣学生

教職大学院の各種資源(教員・他の学生)

カリキュラム

実習・課題研究

短期的互恵

中期的互恵

長期的互恵

Page 22: 1.「実習」「課題研究」の評価システムの開発 · 課題解決に役立つ提案や 具体的行動ができました か。 (2)実習では、学生は、 貴校の課題解決に役立つ

3 教職大学院と学校・教育委員会の互恵システムの内容

互恵 教職大学院が実習校や教育委員会に提供する貢献

短期的互恵

(実習時)

●派遣学生が、「実習」「課題研究」を通じて、実習校のメンターに貢献する。

(→各種改善提案等)

●派遣学生が、「実習」「課題研究」を通じて、実習校の課題解決に貢献する。

(→校内研修、研究授業のモデル実施等)

●派遣学生が、「実習」「課題研究」を通じて、教育委員会の各種活動に貢献す

る。

(→市内の学校の現状調査・ヒアリング等)

中期的互恵

(2年間)

●派遣学生が、教職大学院での学びを通じて、実習校の課題解決に貢献する。

(→2年間の成果「例:学校改善プラン」、各科目での成果物「例:危機管理マ

ニュアル・教職員育成計画提案」等の還元)

●教職大学院の教員や学生が、教職大学院での学びを通じて、実習校の課題解

決に貢献する。

(→校内研修、研究授業のモデル実施等)

●教職大学院の教員や学生が、教職大学院での学びを通じて、実習校以外の学

校や教育委員会の課題解決に貢献する。

(→他校の第三者評価の実施と報告、他校の校内研修等)

長期的互恵

(修了後も

含む)

●修了学生が、所属する学校や教育委員会の課題解決に貢献する。

(→修了後の勤務)

●教職大学院の教員が、実習校の課題解決に貢献する。

(→校内研修、学校評議員等)

●教職大学院の教員が、実習校や他校(教育委員会)の課題解決に貢献する。

(→教育委員会主催の研修出講、各種委員就任、学校の第三者評価実施等)