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2.4.3 誘電体の静電エネルギー(4.4.3 Energy in Dielectric Systems)
真空中の電荷系の静電エネルギーはW =
!02
!E2d" (2.129)
で与えられる.この表式は,誘電体を含む系のエネルギーの記述にそのまま用いることは出来ない.この節では誘電体を含む電荷系の静電エネルギーを表す式を導出する.
コンデンサーに蓄えられているエネルギー
!
+Q
!Q
V
図 2.30: 誘電率 !の誘電体で充たされた平行版コンデンサー.
極板間に誘電体が充たされているコンデンサーを考える(図 2.30).電気容量 C のコンデンサーに電荷 Qが蓄えられているときの静電エネルギーは
W =1
2CV 2 (2.130)
となる.この表式は誘電体があっても無くても変わらない.なぜなら電気容量の定義により極板間のポテンシャル差は V = Q/C であり,従って
W =
! Q
0
" q
C
#dq =
1
2
Q2
C=
1
2CV 2 (2.131)
となるからである.ところで,一様な誘電体が満たされたコンデンサーの電気容量は,誘電体が無いときの電気容量と比較して C = !rCvac であったから,静電エネルギーは
W =1
2!rCvacV
2 (2.132)
となる.したがって,ポテンシャル差が V であるときのエネルギーを誘電体が無いときと比較すると
W = !rWvac (2.133)
!r の因子だけ増大する.極板間のポテンシャル差が同じであれば極板間に生じる電場も同じであるから,この結果は誘電体系のエネルギーが
W =!02
!!rE
2d" =1
2
!D ·Ed" (2.134)
となることを示唆する.以下では,実際に (2.134)式が誘電体系の静電エネルギーを表すことを導こう.
静電場のエネルギー
!
q!
)
図 2.31: 誘電体系に自由電荷を運んでくる仕事を求める.
59
誘電体系の静電エネルギーを求めるために,物質が空間的に固定されているとして,ここに自由電荷を運んで来るための仕事を考える(図 2.31).今,自由電荷密度が !f であるとする.ここに微少量の自由電荷を運んで来たことによって自由電荷密度が !f +!!f に変化したとしよう.この変化に伴って物質の分極が変化して,拘束電荷の分布にも変化が生じる.しかし我々が興味を持っているのは自由電荷になされる仕事である.これは
!W =
!(!!f )V d" (2.135)
で与えられる.ここで ! ·D = !f , !!f = ! · (!D) を用いると(!Dは自由電荷分布の変化に伴うDの変化)
!W =
![! · (!D)]V d" (2.136)
となる.この式に! · [(!D)V ] = [! · (!D)]V + [(!D)] ·!V (2.137)
を用いると
!W =
!{! · [(!D)V ]" [(!D)] ·!V }d" =
!{! · [(!D)V ] + [(!D)] ·E}d" (2.138)
となる.ここで第一項目は発散定理より!{! · [(!D)V ]d" =
"(!DV ) · da (2.139)
となるが,積分領域を全空間にとれば表面積分は消える.したがって,このような微小な変化を実現するためになされる仕事は
!W =
!(!D) ·Ed" (2.140)
である.物質が線形誘電体である場合を考えるとD = #Eであるから
1
2!(D ·E) =
1
2!(#E ·E) = #(!E) ·E = (!D) ·E (2.141)
である.よって微小仕事は!W = !
#1
2
!D ·Ed"
$(2.142)
となる.これより,自由電荷をゼロから最終的な配置まで運んで来るためになされる全仕事は
W =1
2
!D ·Ed" (2.143)
となる.これが系の静電エネルギーである.先に述べたように,この表式は真空中の静電場のエネルギーの表式 (2.129)とは異なっている.ここで,(2.129)式と (2.143)の物理的な意味の違いについて考察しよう.(2.129)式は全ての電荷を無限遠
から運んできて,最終的な電荷分布を形成するために必要な仕事を表している.このとき,全ての電荷とは自由電荷も拘束電荷も両方含む.一方,(2.143)は分極していない物質が置かれているところに自由電荷を運んで来る仕事を表している.この場合,自由電荷分布の変化に従って誘電体の分極も変化する.従って,この場合は電荷を運んで来るだけでなく誘電体を分極を作り出すためにも仕事がなされる.ちなみに,(2.143)式は一見すると誘電率を含まないので一般的な物質に対して成り立つように見えるか
も知れないが,実際にはこの式が成り立つのは物質が線形誘電体であるときだけであることに注意しよう.(2.140)式までは一般的な物質に対して成り立つ式であるが,そこから (2.143)を導出する際には線形性を用いた関係式 (2.141)を使っているからである.
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2.4.4 誘電体に働く力(4.4.4 Forces on Dielectrics)
導体が電場から力を受けるように,誘電体にも電場による力が働く.なぜなら,電場によって誘電体に分極が生じて,それに伴って生じる拘束電荷が電場によって力を受けるからである.自由電荷が存在する場合,誘電体中の拘束電荷は反対符号の自由電荷に引きつけられる.そこで,以下の例題を考えよう.
例題:図 2.32のように,平行版コンデンサーの極板間に部分的に誘電体が挿入されているとする.極板の幅を w,長さを lとして,極板間の距離を dとする.極板に ±Qの電荷が帯電しているとき,誘電体にどのような静電気力が働くであろうか?
図 2.32:
解答:今までは,極板の面積が十分に大きければ電場は極板間では一様であり極板の外側ではゼロであるとした.しかし,もしも本当にそうであれば電場は極板に垂直であるから,誘電体には力は働かないはずである.しかし,実際には図 2.33のように極板の端付近に電場が非一様な領域 (fringing region)が存在する.多くの場合,端の効果は小さいとして無視するのだが,今の問題では端の効果が重要となる.(実際,電場がコンデンサーの端で不連続にゼロになることはあり得ない.もしもそうであれば図 2.33に示された平曲線上でEを線積分してもゼロにならない.)以下では,端における非一様な電場 (fringing field)が誘電体をコンデンサー内部に引き込むように働くことを示そう.図 2.34に示すように,極板間に挿入された誘電体には分極が生じ,そのために誘電体の上下表面には拘束電荷が生じる.これらの拘束電荷は電場によって力を受ける.もしも電場が一様であれば,正負の拘束電荷に働く力は打ち消し合うので誘電体には正味の力は働かない.しかし,極板の端付近では電場が非一様になるので力は完全には打ち消し合わない.図 2.34に示すように,正味の力は誘電体をコンデンサー内部に引き込むように働く.端の領域の非一様な電場を正確に求めるのは非常に困難であるため,誘電体に働く力を具体的に求めるの
は難しい問題のように思われるかも知れない.しかし,実際には非一様な部分の電場を求めることなしに誘電体に働く力を計算することができる.W を系のエネルギーとしよう.誘電体を微小距離 dxだけ外側に押し出したときのエネルギーの変化は,系になされた仕事に等しい
dW = !Fdx (2.144)
ここで F は誘電体が電場から受ける力であり,xを増加させる向きを正とする.したがって,誘電体に働く静電気力は
F = !dW
dx(2.145)
で与えられる.
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図 2.33:
+ + ++++
! ! ! ! ! !
F+
F!+Q
!Q
図 2.34:
ここで,コンデンサーに蓄えられたエネルギーは
W =1
2CV 2 =
1
2
Q2
C(2.146)
であるので,極板の電荷 Qを一定に保ったまま誘電体が動くとすると,
F = !dW
dx=
1
2
Q2
C2
dC
dx=
1
2V 2 dC
dx(2.147)
となる.今の場合,静電容量は長さ xの平行板コンデンサーと長さ l ! xの誘電体が詰まった平行板コンデンサーを並列につないだ場合に相当する(図 2.35).それぞれのコンデンサーの静電容量は
C1 =!0wx
d, C2 =
!w(l ! x)
d(2.148)
なので,全体としての静電容量は
C = C1 + C2 =!0wx
d+!0!rw(l ! x)
d
=!0w
d[x+ !r(l ! x)] =
!0w
d[!rl + (1! !r)x]
=!0w
d(!rl ! "ex) (2.149)
となる.よってdC
dx= !!0"ew
d(2.150)
であるからF = !!0"ew
2dV 2 (2.151)
を得る.マイナス符号より,力は xを減少させる向きに働き,したがって誘電体をコンデンサーに引き込む.ここで注意しなければならないのは,dW/dxを計算する際に V 一定として微分してしまうと
F = !1
2V 2 dC
dx(2.152)
となって (2.147)とは逆符号の答えが出てきてしまうことである.現実的にはコンデンサーを電源につなぐことによって電位を一定に保つことは可能であるが,その場合は誘電体が動くとき電荷が移動するため,電源も仕事をするのである.したがって,なされた仕事を表す正しい式は (2.144)ではなく
dW = !Fdx+ V dQ (2.153)
となる.ここで V dQは電源によってなされた仕事である.これより,
F = !dW
dx+ V
dQ
dx= !1
2V 2 dC
dx+ V 2 dC
dx=
1
2V 2 dC
dx(2.154)
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l ! xx
d!
1! 2!
)図 2.35: 部分的に誘電体が挿入されたコンデンサーを,二つのコンデンサーを並列につないだものと見なす.
となり,(2.147)と同じ答えが得られる.(実際,コンデンサーが電源につながれているか否かによってコンデンサーが受ける力が変わることはあり得ない.力を計算する際にはコンデンサーが孤立していてQが一定であるとした方が簡単なだけである.)先にも述べたように,誘電体に働く力は極板の端付近の不均一な電場によるものであるにも関わらず,端
付近の電場について何も知ることなく力を求めることができた.これは,極板端付近に蓄えられている静電エネルギーが誘電体が動いても変化せず,変化するのはコンデンサー内部の電場が一様な領域に蓄えられたエネルギーであることを意味する.
別解:実は,仕事を考えなくても力を直接計算することによっても同じ答えを導くことはできる.電場中の双極子モーメントが受ける力が F = (p ·!)Eであったことを思い出せば,誘電体全体に働く力は
F =
![P(r) ·!]E(r)d! (2.155)
である.先ほどの考察により力が働くのは x方向であることがわかっているので F = F x̂ とすれば
F =
!(P(r) ·!)Ex(r)d! = "
!(P ·!)
"V
"xd! (2.156)
である.ここでポテンシャルの微分の順番を入れ替えて
!"V
"x=
"
"x(!V ) = " "
"xE (2.157)
とすればF =
!P ·""E
"x
#d! (2.158)
となる.ここでは線形誘電体を考えているので,誘電体内部では分極はP = #0$eEである.誘電体外部ではもちろん,P = 0である.誘電体の大きさがコンデンサーの大きさに等しいとして,誘電体の左端の x座標を x = X とすると,誘電体が存在する領域は
X # x # X + l, 0 # y # d, 0 # w # z (2.159)
と表すことができる.このとき (2.158)式は
F = #0$e
! X+l
Xdx
! d
0dy
! w
0dzE ·
""E
"x
#=#0$e
2
! X+l
Xdx
! d
0dy
! w
0dz
"
"x(E2) (2.160)
となる.xについての積分を実行すると
F =#0$e
2
! d
0dy
! w
0dz[E2(X + l, y, z)"E2(X, y, z)] (2.161)
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となる.ここで誘電体の左端が十分にコンデンサー内部にあればそこでの電場はほぼ一様で,電場の大きさは E = V/dである.また,右端が十分にコンデンサーの外部にあればそこでの電場は小さいので無視してよい.x = X および x = X + lにおける電場の大きさは
E(X, y, z) ! V/d, E(X + l, y, z) ! 0 (2.162)
とできる.これより
F = "!0"ewd
2
!V
d
"2
= "!0"ew
2dV 2 (2.163)
を得る.これは仕事を用いて計算した結果と一致する.(2.158)式の積分区間を (2.159)式に制限する代わりに,誘電体が空間の一部分のみに存在することを電気
感受率 "e の r依存性に押し込めることもできる.つまり,"e(r)を
"e(r) = "e!(x"X)!(X + l " x)!(y)!(d" y)!(z)!(w " z) (2.164)
と置いて積分区間は全空間とする.ただし !(x)は階段関数である.すると
F = !0
#"eE ·
!#E
#x
"d$ =
!02
#"e
#
#x(E2)d$ = "!0
2
##"e
#xE2d$ (2.165)
となる.最後の式変形は部分積分を行い,無限遠方では電場が存在しないことを用いた.ここで d!(x)/dx =
%(x)を使うと
#
#x"e(x, y, z) = "e[%(x"X)" %(x"X " l)]!(y)!(d" y)!(z)!(w " z) (2.166)
よって (2.165)式は
F = "!0"e
2
# d
0dy
# w
0dz[E2(X, y, z)]"E2(X + l, y, z)] (2.167)
となり (2.161)と全く同じ結果を得る.以上の方法でも最終的には電場が一様であると近似して計算するので,非一様な電場を実際に計算する必
要は無い.もちろん,最初から電場が一様であるとしてしまうと正しい答えは得られない.途中までは電場が非一様であるとして計算を進めたのだが,積分を実行してしまうと結局,誘電体の両端の位置における電場の値のみが必要となることがわかる.
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