2) redd mrv - maff.go.jp...forestry master plan for20 0-2031(2001) ⑪ national sustainable...

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社会・多国間基金、②ボランタリー市場、③コンプライアンス市場のいずれかで受け取 る考えがあるとしている(UN-REDD2013)。 1-1-5-5 REDD+MRV システム 1) ミャンマーの森林の定義 ミャンマーの森林の定義は、FAOの定義に沿ったものである。具体的には、森林面積 最小が0.5ha、樹冠投影率が最低10%、樹高を最低2mの土地を森林としている(UN- REDD2013)。ミャンマーでは森林を大きく2つに分けており、それぞれ閉鎖林(樹幹投 影率40%以上)と疎林(樹幹投影率10%以上40%未満)である。 またUN-REDD2013)では、「森林減少」を森林が他の土地利用に転換され、かつ樹 幹投影率が10%未満になったことであり、「森林劣化」は森林が負の影響を受け、樹林 の質が下がった森林であるが、樹幹投影率が10%以上であったものを指す。 一方、自然環境から見たミャンマーの森林タイプは、高地常緑林、常緑林、混交落葉 林、乾燥林、落葉フタパガキ科林、海岸・湿地林の6つに大分類される(1-1-5-8照) 。なかでも混交落葉林が全森林の約39%を占めている。 1-1-5-8:ミャンマーの主な植生タイプ 出典:MOECAF (2016) 2) 国家森林モニタリングシステムを含む REDD+の MRV(測定・報告・検証)システム 2015 年、UN-REDD プログラムにおいて、国家森林モニタリングシステム(NFMS)策定 のためのアクションプラン Development of a National Forest Monitoring System for 168

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社会・多国間基金、②ボランタリー市場、③コンプライアンス市場のいずれかで受け取

る考えがあるとしている(UN-REDD2013)。

1-1-5-5 REDD+のMRVシステム 1)ミャンマーの森林の定義 ミャンマーの森林の定義は、FAOの定義に沿ったものである。具体的には、森林面積

最小が0.5ha、樹冠投影率が最低10%、樹高を最低2mの土地を森林としている(UN-REDD2013)。ミャンマーでは森林を大きく2つに分けており、それぞれ閉鎖林(樹幹投

影率40%以上)と疎林(樹幹投影率10%以上40%未満)である。 またUN-REDD(2013)では、「森林減少」を森林が他の土地利用に転換され、かつ樹

幹投影率が10%未満になったことであり、「森林劣化」は森林が負の影響を受け、樹林

の質が下がった森林であるが、樹幹投影率が10%以上であったものを指す。 一方、自然環境から見たミャンマーの森林タイプは、高地常緑林、常緑林、混交落葉

林、乾燥林、落葉フタパガキ科林、海岸・湿地林の6つに大分類される(図1-1-5-8参照) 。なかでも混交落葉林が全森林の約39%を占めている。

図1-1-5-8:ミャンマーの主な植生タイプ 出典:MOECAF (2016)

2)国家森林モニタリングシステムを含む REDD+のMRV(測定・報告・検証)システム

2015 年、UN-REDD プログラムにおいて、国家森林モニタリングシステム(NFMS)策定

のためのアクションプラン ” Development of a National Forest Monitoring System for

168

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Myanmar”が策定された(MOECAF and UN-REDD 2015b)。アクションプランの策定は、

UN-REDD の中でも主に FAO 主導で実施されたものであるが、このアクションプランに

基づいて、国家森林モニタリングシステム(NFMS)を策定し、1サイクルの測定と報告を 4

年間程度かけて行う予定である(同上)。作業としては、衛星画像による森林資源の把握、

国家森林資源調査、UNFCCC への報告、データ検証のために必要な情報、現場レベルで

のモニタリングシステムが挙げられる。作業としては大きく 2期に分けられる。

(1) 前期(1-2 年):計画の設計およびデータ収集とその分析に多くの時間を費やす予定であ

る。キャパシティビルディングは 4 年間をかけて行うが、特にこの 2 年間で集中して

行う。 (2) 後期(3-4 年):前期で設計した計画の実施と収集したデータの分析に時間を費やす

予定である。4年間でNFMSの計画・実施の一通りを行う予定である。

REDD+ロードマップにおいて、NFMSに関する業務は主にコンポーネント6の「国家

森林モニタリングシステムの開発」で実施するが、コンポーネント5の「REL/RLの開発」

と連携して実施する予定である。これら2つのコンポーネントは、「国家森林モニタリン

グシステム・REL/RL」TWGで一体となっている。

図1-1-5-9:ミャンマーのNFMSの構成図

1-1-5-6 土地の所有、管理、利用に関する法令等 1)ミャンマーの主要な森林関連法制度 ミャンマーの主な森林関連法制度は、以下のとおりである(アジア航測2016)。

① Forest law (1992) ② Protection of wildlife and wild plants and conservation of natural areぉlaw(1994)

③ Myanmar Forest Policy (1995) ④ Rules of Forest Law (1995) ⑤ Community forestry instructions (1995) ⑥ National forestry action plan (1995)

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⑦ Format and guidelines for district forest management plans (1996)⑧ Myanmar Agenda 21 (1997)⑨ National code of forest harvesting practices in Myanmar (2000)⑩ Forestry Master Plan for200-2031(2001)⑪ National Sustainable Development Strategy (2009)⑫ National Biodiversity Strategy and Action Plan( 2011)⑬ Environmental Law (2012)

また、森林法とコミュミティ林業令(CFI)については、2017年1月現在の時点で改正

の手続きが取られ、すでに草案が完成している。

2)ミャンマーにおける森林の法的区分とその権限 天然資源環境保全省・森林局が所轄する森林は、永久林地(Permanent Forest Estate)

と呼ばれる国有林である。永久林地は、①保全林(Reserved Forest)②公共保護林

(Protected Public Forest)③保護区(Protected Area System)の 3つに分けることができ

る(UN-REDD2013)。 ①保全林(Reserved Forest):主に林産物の生産を目的とした森林。 森林法の下で、

村での生産活動やコミュニティの林業に使うことができる。 保全林の多くが、土地

分類を変更せずに、小規模農家や村落によって農業生産に転換されている。 多くの

地域で、地図上の森林区域と実際の土地利用が一致しない状況になっている。

②公共保護林(Protected Public Forest):森林法と野生生物保護・地全地域保全法によ

って規定されている。保全林とは異なり、自然資源の保護を目的としている。

③保護区(Protected Area System):2012年 9月現在、33か所の陸地と 3か所の水域

に保護区が設置されている。

前述のとおり INDC では、2030 年までに保全林(Reserved Forest)と公共保護林

(Protected Public Forest)の面積を国土面積の 30%に、保護区(Protected Area System)の面積を国土面積の 10%に引き上げる目標を掲げている。

また、農業灌漑省が管轄する「無主地・休耕地・未墾地管理法」(2012)では、無主地・

休耕地・未墾地の土地の管理は農業灌漑省であるが、生育する樹木の管理は森林局が権限

を持つと規定された(井上 2015)。これらの土地は森林であった土地が何らかの理由で

森林ではなくなった場合が多い。このカテゴリーの土地に森林を植えることで、その権限

は森林局に異動し、コミュニティ林業を展開することが可能となる(同上)。

3)森林マスタープラン ミャンマーでは2001年に今後30年の森林マスタープランを策定している。同プランで

は、森林局が主導して、2030年までに、現在国土面積の0.06%であるコミュニティ・フォ

レストリーによる森林管理面積を1%まで増加させ、森林減少率を低減する計画となって

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いる。これによって、薪炭材4.13 million m³ /年(=薪炭材需要の25%)をコミュニティーフ

ォレストから供給することとしている。 またミャンマーでは森林法とコミュニティ林業指針が現在修正作業中であり、2017 年

に新たな法制度が構築される予定である。2 つの法律ともに、テークホルダーコンサルテ

ーションを経ており、多くのステークホルダーの意向をくみ取りつつ、作成を経たことに

なる。

4)コミュニティフォレストリー令(CFI)の改定の動向とREDD+へのインプリケーション 2017年1月のミャンマー森林局職員からの聞き取りによると、CFIは、政府職員だけで

はなく、NGO、市民社会団体なども加わったグループを設置(Community Forestry Networking Group)し、その中で度重なるステークホルダーコンサルテーションを実施し

たということである。このイニシアティブは2012年ごろより、RECOFTCの協力を得て実

施しているとのことである。これらプロセスを経て、CFIの草案が2016年に完成したとの

ことである。 新たに策定されたCFI草稿案では、森林の新たな価値であるエコシステムサービスそし

て炭素蓄積の重要性についても明記されている。また以下の各事項についても明記されて

いる。①コミュニティの権利、②補償を受ける権利、③CFメンバーによる管理権、④CFリーダーの人数、⑤女性リーダー選定の推奨、⑤コミュニティベースのエコツーリズムの

推奨、CF実施のキャンセルなどである。 4考えられる。

1-1-5-7 REDD+のセーフガードに関する法令等 2017年1月UN-REDDのミャンマープロジェクト職員からの聞き取りより、ミャンマー

におけるREDD+のセーフガード体制・制度設計は、REDD+ロードマップのもと、主に

UNEPが中心となって支援を進めることとなっている。REDD+ロードマップで策定され

た6つのコンポーネントのうち、コンポーネント2「ステークホルダーコンサルテーショ

ンと参加」およびコンポーネント4「実施体制とセーフガード」に含まれる。各コンポー

ネントの主な業務は下記のとおりである(三菱リサーチ&コンサルティング力石様聞き取

りより2017)。

コンポーネント2

ステークホルダーの把握とコンサルテーション強化

国家FPICガイドラインの開発

コンポーネント4

運営組織体制の構築

補制度枠組みの採択と強化

資金枠組みの構築

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REDD+社会環境せーうガードシステムの構築 セーフガードに関する検討はセーフガードTWGによって進められることになる。2013

年に策定されたロードマップに、セーフガードシステム(組織構築、セーフガード情報シ

ステム、関連政策や法律の特定、苦情処理メカニズム、実施プロセスと手順)の確立に向

けたステップが示されている。REDDプラスにおける利益配分の方法については、新たに

設置される資金・利益配分TWGによって検討が進められる予定であるが、このTWGは2017年1月現在、まだ設置されていない状況である。 ITTOによって実施されたREDD+プロジェクト「Capacity building for developing REDD+ activities in the context of sustainable forest management」の一環として、 ”Social & Environmental Safeguards for REDD+ Programme in Myanmar”が策定された(ITTO and MOECAF, 2015)。このガイドラインは、市民団体と民間企業との共同体であるClimate, Community and Biodiversity Alliance(CCBA)によって策定される“REDD+ Social & Environmental Standards(REDD+ SES)”を参考として策定されたものである。2017年1月の森林局での聞き取りによると、このガイドラインの策定プロセスは、森林局職員な

ど政府職員や援助機関など関連ステークホルダーによるコンサルテーションワークショッ

プでの議論の結果を取りまとめたものである。 1-1-5-8 実施中の REDD+プログラム等 ミャンマー国内において、本格的な REDD+実証活動や REDD+プロジェクトは、まだ

進められていないのが実態である。援助機関による初期段階の REDD+プロジェクトや特

定の目的を進めるために進められているREDD+関連プロジェクトがある。 1)韓国森林サービス(KFS) プロジェクト名:Mitigation of Climate Change Impacts through Restoration of Degraded

Forests and REDD-Plus Activities in Bago Yoma Region, Myanmar 実施場所:Bago管区Yedashe, Bago Yoma 地域 森林劣化の回復及び植林活動を通じた気候変動緩和の取組を実施する予定である。バ

ゴーヨマ地域の7,000haを対象にKFSの資金により、VCS(VM0007)/CCBS案件を

形成中である。韓国人専門家は常駐せず、森林局・森林研究所(FRI)との契約ベー

スで実施している。プロジェクトは2016年に開始されたが、2017年1月現在、米国

Terra Globalが社会経済調査等の実施中である。

2)国際熱帯木材機関(ITTO) プロジェクト名 : Capacity building for developing REDD+ activities in the context of

sustainable forest management

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実施場所 : Bago管区Oktwin Township, Taungoo郡。

REDDプラス国家戦略の準備及びBago Yoma地域のチーク林における堅牢なMRVシス

テム構築を目的に、REDDプラス活動の設計・実施に係る関係者の能力強化を実施し

た。またREDD+SESを使ったセーフガード構築を実施した。対象地面積は

1,064,939haで、予算総額は572千米ドルであった(森林総合研究所REDD研究開発セ

ンター2016)。

3) 国際総合山岳開発センター(ICIMOD) プロジェクト名:

実施場所:シャン州(予定) ICIMODが資金拠出するREDD+ Himalaya Initiativeの一環として、 2016-2019年で案

件を実施している。活動対象地は、シャン州を想定している。SG関連(FPIC),生物

多様性関連、ドライバー分析、デモ活動、職員のキャパビルを実施する予定である。

4) アジア航測株式会社

プロジェクト名:途上国森林劣化対策整備事業

実施場所:シャン州タウンジー郡、バゴー管区イェダシー、マンダレー管区モゴー地

林野庁補助金として、途上国森林劣化対策整備事業を 3年間実施。

1-1-5-9 参照レベルの策定状況

1)RELの策定・検討状況

2017 年 1 月現在、ミャンマーでは参照レベル(REL)の策定はまだ行われておらず、

検討段階である。2015 年、UN-REDD プログラムにおいて、REL 策定のためのアクショ

ンプラン” Forest (Emissions) reference Level action plan for Myanmar”が策定された

(MOECAF and UN-REDD 2015a)。アクションプランの策定は、UN-REDDの中でも主

に FAO 主導で実施されたものであるが、このアクションプランに基づいて、REL の策定

を行う予定である。森林局としては、UNFCCC に対して REL 情報提出を 2018 年 1 月ま

でに行いたいと考えている。

ミャンマーREDD+ロードマップによると、REL策定には 1990年、2000年、2005年、

2010 年の衛星画像データを用いて過去の土地利用変化を解析することとなっていた

(UN-REDD2013)。しかしながら 1990 年のデータはデジタル化されておらず、このデ

ータは使うことができない(MOECAF and UN-REDD 2015a)。2017 年現在、森林局では

2005 年、2010 年、2015 年の異なる 3 時点の衛星画像データをもとに REL を策定する方

向である(アジア航測小野様聞き取りより 2017)。

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2005年の衛星画像はLANDSAT(5および7)であるが、画像分析の際の幾何補正に用

いた地形図が古い地形図であった。また、2010 年の衛星画像はインドの IRS を用いてい

るが、幾何補正には同時期の Landsatを用いて行っており、これら 2時点間の幾何補正の

用いた地図は異なるものであった。さらにミャンマーンは標高の高い山もあり位置ズレが

起こりやすい環境にある。このように 2時点間に用いた衛星画像が異なること、幾何補正

に用いた地図が異なることがあり、さらに地形上の問題もあり、正確な土地利用変化を出

すことが非常に困難な状況にある(アジア航測小野様聞き取りより 2017)。

2)プロジェクトレベルにおける RELの策定・検討状況 2017年 1月現在、REL策定・検討を伴う段階まで到達したREDD+プロジェクトが存在

しない状況である(1-1-5-8 参照)。このため国レベルと準国レベルやプロジェクトレベルと

の調整等はまだ未確定である。

引用文献

アジア航測 (2016) 平成 27年度途上国森林劣化対策整備事業報告書、アジア航測株式会社、

神奈川県川崎市 アジア航測 (2015) 平成 26年度途上国森林劣化対策整備事業報告書、アジア航測株式会社、

神奈川県川崎市 FAO (2015) Global Forest Resources Assessment 2015. FAO Forestry Paper No. 1. The Food

and Agricultural Organization of the United Nations (FAO). Rome. 井上真(2015)アジアの森林利用・管理の仕組み:ミャンマー、「グリーンパワー」2015.

1号、pp.26-27 ITTO and MOECAF(2015) Social & Environmental Safeguards for REDD+ Programme in

Myanmar, Nay Pyi Taw, Myanmar. Kyaw Tint, Oliver Springate-Baginski and Mehm Ko Ko Gyi (2011) Community Forestry in

Myanmar: Progress & Potentials.MOECAF,93pp. MOECAF and UN-REDD (2015a) Forest (Emissions) Reference Level Action Plan for

Myanmar, Nay Pyi Taw, Myanmar. MOECAF and UN-REDD (2015b) Development of a National Forest Monitoring System for

Myanmar, Nay Pyi Taw, Myanmar. MOECAF (2016) Website of MOECAF

http://www.fdmoecaf.gov.mm%2Fmmchm%2Findex.php%2Fecosystems-habitats%3Fshowall%3D1%26limitstart%3D&bvm=bv.149397726,d.dGc&psig=AFQjCNFgDyVCB1ci7IsbkqzqgViE8hfMVA&ust=1489576887755801 (2016年 10月 14日アク

セス)

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MONREC(2016) Myanmar Climate Change Strategies and Action Plan, Republic of the Union of Myanmar, Nay Pyi Taw, Myanmar.

Myanmar Times (2016a) One-year logging ban proposed, Myanmar Times dated on 5th May 2016.

Myanmar Times (2016b) Logging ban in effect for Bago mountains over next decade, Myanmar Times dated on 6th June 2016.

森林総合研究所 REDD 研究開発センター(2016)平成 27 年度 REDD プラスへの取組動向

Country Report :ミャンマー連邦共和国、森林総合研究所 The Republic of the Union of Myanmar (2015) Myanmar's Intended Nationally Determined

Contribution-INDC, 16pp. UN-REDD(2013) Myanmar REDD+ Readiness Roadmap, Myanmar REDD+ Programme,

NayphiTaw, Myanmar.

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1-1-6 コスタリカ 1-1-6-0 森林の概況 1) 国の森林資 コスタリカは、中央アメリカ南部に位置し、北はニカラグア、南東はパナマと国境を

接している。国土面積は511万haである。これは世界陸地面積の0.03%だが、その中に

全世界の生物種の4.8%が生息しており、生物多様性の高い国と位置づけられている[1]。 2015 年において、コスタリカは国土の約 52%が森林であり、その内訳は、一次林また

は天然林が約 67%、二次林は約 26%、そして林業用地を含む植林地が約 9%となって

いる[2]。2013 年の認可を受けた森林伐採量は約 48 万 m3、その約半分が、チーク

(Tectona grandis)とメリナ(Gmelina arborea)が占め、その他の林業用樹種として

は、ローレル(Cordia alliodora)、シプレス(Cupressus lusitanica)、Bombacopsis quinata、ユーカリ(Eucalyptus sp) 、Vochysia guatemalensis 等が挙げられる[3]。 コスタリカの森林は、全国に分布しているが、天然林は中部山岳から大西洋側により

分布し、西部の太平洋側と北部には二次林が分布する(図 1-1-6-1)。2013 年~2014年にかけて実施された第 1 回国家森林インベントリー(National Forest Inventory: NFI)の結果を表 1-1-6-1 に示す。

図 1-1-6-1 2013/4 年のコスタリカ土地利用区分 出典:[4]

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表 1-1-6-1 コスタリカの森林タイプ別面積とその割合(2013 年)

土地被覆タイプ 面積 [ha] 国土面積に対す

る割合(%) 森林面積に対す

る割合(%) 成熟林(1 次林または天

然林) 1,81,893 31.0 59.2

二次林 702,366 13.7 26.1 産業用プランテーション 74,627 1.5 2.9 マングローブ 37,419 0.7 1.3 パーム林 46,834 0.9 1.7 落葉樹林 234,164 4.6 8.8 牧草地 1,231,948 24.1 -(非森林区分) 高山植生 10,253 0.2 -(非森林区分) 非森林 694,756 13.6 -(非森林区分) 雲・影 496,802 9.7 - 合計 5,111,063 100.0 100.0 出典:[5] 1) 森林被覆と質の歴史的変化 コスタリカでは、1950 年代から主に農地や牧草地への大規模な森林土地利用転換が始

まり、森林被覆率は、1970 年代後半から 1980 年代にかけて 21%まで低下した[2]。森

林減少率のピークは 1980 年代で 50,947ha/年であったが、1990 年代には減少率は低下

し、38,277 ha/年を示した[6]。以降、森林政策の転換や社会・経済構造の変化等により、

森林被覆率は回復傾向を示す。同国は、ラテンアメリカ諸国において、森林被覆率の

増加傾向にある数少ない国の一つであり、近年その森林被覆率の動向は安定している

[2]。 コスタリカ環境・エネルギー省(2016)によると、森林減少率は 14,657.49 ha/年 (1996 年~2009 年)から 8,148.20 ha/年 (2010 年~2013 年)に減少し、その期間

中に、7,539,269 tCO2e (1,884,817 tCO2e/年)の CO2 排出量の削減を達成したと推

定される[7]。一方で、1986 年以降に造成された森林における森林減少は 16,304.07 ha/年(1996 年~2009 年)から 21,277.40 ha/年 (2010 年~2013 年)と増加傾向を示

し、1,619,463 tCO2e(404,866 tCO2e/年)の排出があったと推定される。結果として、

1996 年から 20009 年の期間と比較して、2010 年から 2013 年にかけての森林減少の低

下によって、5,882,845 tCO2(1,470,711 tCO2/年)の排出削減を達成したと推定され

る[6] 。 2) 直接・間接要因 森林減少のピークは 1980 年代であり、その後 1997 年から 2008 年にかけて、コスタ

リカの森林は、減少傾向から増加に移行した。特に 2010 年以降、天然林における森林

減少は減少傾向を示し、その被覆率は明らかに増加している。この背景には、以下の

ような森林政策転換の他、様々な社会・経済プロセスが挙げられる[2,4,6–10]: • 1986 年に改訂された森林法により、森林利用から保全への方針転換が明確になっ

た。改訂森林法により、天然林の他の土地利用への転換が禁止されたほか、環境

サービスに対する支払い(Payment for Environmental Services / Pago de Servicios Ambientales:PSA スペイン語略称)が持続的なプログラムとして実施

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され、私有地の森林保全活動に対する経済的インセンティブが制度化された。

1997 年~2013 年にかけて約 4.8 千万 USD の資金が PSA に投資され、約 100 万

ha の森林が保全されたと推定される; • 保護区制度の強化と面積の拡大方針により、2016 年時点で 166 の保護区が設立、

国土の約 26%(森林地の約 50%)が法的に保護される。同時に、保護区内におけ

る土地保有権と利用規定についても法の執行と監督が強化され、違法伐採の発生

頻度が減少する; • 1990 年以降、経済基盤の変化が活発化し、農業等に依存した経済構造から建設、

サービス業やツーリズム等の産業の多角化が進む。1990 年以降、自然資源を活用

したエコツーリズムが促進され、コスタリカの保護区を訪れる外国人旅行者の数

は 2009 年には 60 万人達し、1999 年に比べ 3 倍以上となった; • 1980 年初め以降、経済、教育機会等から地方から都市部への人口移転が非常に活

発化し、その結果、森林土地利用変化の主要因であったバナナ、アフリカン・パ

ーム、牧畜等の農業産業への地方労働力の低下が発生した; • チリとの自由貿易協定により安い輸入材が入るようになったこと、また林業から

森林保護への政策転換のため、林業セクターが著しく衰退した。木材生産は 1980年代から 90 年代にかけてピークを迎え、2000 年代初めには衰退の傾向を示した。

1991 年には林業セクターの GDP に対する割合は、0.39%であったが、2015 年は

0.17%である。2015 年の農畜業の GDP に占める割合は訳 9%である。

一方で、地域別にみると森林減少は発生しており、そうした地域では、肉乳牛飼育や

輸出用フルーツ(バナナ、パイナップル、メロン等)の生産、トウモロコシ栽培、稲

作、バイオ燃料となる Piñera の生産が森林減少の要因として挙げられる。とくに、沿

岸湿地帯やマングローブ林で農地開発が進んでいるほか、北東部の Barra del Corolado等は、ニカラグアとの国境沿いであることも影響し、農業への土地利用転換のプレッ

シャーが高いと考えられる。収益性の高い稲作への転換リスクは国内最大の湿地であ

る南東部の National Terraba-Sierpe にも見られる。こうした森林減少のほとんどが非

保全地域における私有地の比較的若い二次林で発生しており、保全地域や先住民族居

留地では森林減少のリスクは比較的少ないといわれる[7]。また、大西洋側のリモン市

では大規模な港湾の整備が進んでおり、陸路の整備も検討されていることからも、今

後は大西洋側の地域では開発の圧力が増加することが予測される 1 。 1-1-6-1 気候変動対策及び REDD+に関する所掌及び実施体制 1) 気候変動 コスタリカの国レベルの気候変動対策は、環境とエネルギー分野を管轄する環境・エ

ネルギー省(Ministry of Environment and Energy / Ministerio de Ambiente y Energía:MINAE スペイン語略称)が責任機関として進められる。環境・エネルギー省のもと、

以下が主要機関として挙げられる: • 気候変動対策局(Climate Change Department / Dirección de Cambio Climático:

DCC スペイン語略称):環境・エネルギー省の下、気候変動行政の責任機関とし

て機能する。気候変動国家行動計画の調整の他、UNFCCC のフォーカルポイント

の役割を行う。

1 Vera Violeta Montero Castro 氏, Mariana Jiménez 氏 (SINAC)聞き取り調査(2016 年 10 月)

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• エネルギー対策局(Energy Sector Department / Dirección Sectorial de Energía:DSE スペイン語略称):環境・エネルギー省の下、エネルギー政策・行政を担当。

国家エネルギー計画の作成を担当する。 • 国 家 気 候 機 関 ( National Meteorological Institution / Instituto Meteorológico

Nacional:IMN スペイン語略称)環境・エネルギー省の下、気候変動に関わる科学

的情報の収集と分析を行い、気候変動シナリオや GHG インベントリー、国別報告

書及び隔年報告書(Biennial Reports)の作成を担当する。国連気候変動に関する

政府間パネル(IPCC)のフォーカルポイントの役割を担う。

REDD+準備段階の取組は、環境・エネルギー省のもと、国家森林融資基金(National Forestry Financing Fund / Fondo de Financiamiento Forestal de Costa Rica :FONAFIFO スペイン語略称)が責任機関となって進められる。一方で、森林や環境行

政に関しては、FONAFIFO 以外の政府機関も関連する。表 1-1-6-2 に森林に関する主

要機関とそれらの REDD+に関する役割を取りまとめる。 表 1-1-6-2 コスタリカの REDD+準備・実施に関連する政府機関 機関名 担当 REDD+に関する役割 環境・エネルギー省

(MINAE) • コスタリカの環境・エネ

ルギー行政を担当する省

庁 • 森林行政も管轄

• FCPF ER プログラムの実施

決定等を含む高次な REDD+政策決定

• REDD+実行委員会に参加 国家森林融資基金

(FONAFIO) • PSA(生態系サービス支

払い)プログラムの実施

機関であり、森林法

(1996 年)により設立 • FONAFIFO は MINAE の

機関であるが、その理事

会には、森林セクターの

多様ステークホルダーの

代表が参加する

• REDD+戦略の開発を担当 • FCPF プログラムの実施責任

機関 • REDD+ドナー(FCPF、UN-

REDD プログラム等)との連

絡・調整 • REDD+セーフガードのデザ

インと実施 • REDD+ステークホルダー

2の

調整 国家保全地域システ

ム庁(SINAC) • 生物 多様性法( 1998

年)により、野生動物

局、国家林業局(State Forestry Administration)と国立

公園サービス(National Parks Service)を統合

し、MINAE の機関とし

て設立される。 • 森林を含む自然資源管

理・保全行政を担当する

機関 • 森林火災対策や違法伐採

対策を担当

• 森林インベントリーの作成 • 排出係数の開発 • 国家森林モニタリングシステ

ムの開発と実施 • REDD+戦略、計画、政策の

実施

2 コスタリカの REDD+ステークホルダーは以下に特定される-先住民族グループ;小・中規模生産者;

政府機関;民間企業;大学機関及び NGO

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国家地理・環境情報

センター(National Center of Geo-environmental Information :CENIGA)

• 環境に関する情報を統合

管 理 す る た め に 、

MINAE の独立専門機関

として 2001 年に設立

(Decreto No. 29540) • 国家環境情報システム

(SINIA)を運営・管理 • 国家土地モニタリングシ

ステムの設計を担当

• FONAFIFO と 協 力 し て

REDD+セーフガード情報シ

ステム(SIS)を設計(SISは、SINIA 内に構築される予

定) • 測定、報告・検証(MRV)の

特に RV を担当

農業畜産省

(Ministry of Agriculture and Livestock :MAG)

• 畜産、農業及び水産関連

を担当する省庁 • 国としての適切な緩和行

動(NAMA)コーヒー、

NAMA 牧畜の準備と実

施を担当

• REDD+実行委員会に参加

出典:[7,9] 2) REDD+ REDD+の実施に当たっては、それぞれの管轄権の中で、SINAC、FONAFIFO、

CENIGA の 3 機関が協力して実施することが予定される。特に、FONAFIFO は

REDD+フォーカルポイントとして機能し、REDD+準備を進めるために 2012 年に

REDD+事務局(Secretario de REDD+)を設置した。同年には、多様なステークホル

ダーグループが参加する REDD+実行委員会(Comité Ejecutivo REDD+)も設立され、

現在も FONAFIFO を中心に REDD+実施に係る体制構築が図られる(図 1-1-6-2)。

図 1-1-6-2 コスタリカ REDD+組織体制 出典:[11] • REDD+事務局(Secretario de REDD+):2012 年に FONAFIFO 内に設立され、

REDD+の準備実施担当機関として機能。REDD+国家戦略の策定や、コンサルテ

ーション計画の開発、セーフガードの開発、参照レベル(FREL/FRL)の策定を担

当; • REDD+実行委員会(Comité Ejecutivo REDD+):環境・エネルギー省令(Decreto

Ejecutivo 37352)によって 2012 年に設立。実行委員会という名称であるが、実

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際は、REDD+コンサルテーションとして機能する。環境・エネルギー省、農業・

畜産省、国家銀行等の政府機関の他、先住民族グループ、木材産業団体、市民団

体の代表が参加し、ステークホルダーの参加を確保し、REDD+の開発に関わる多

様なテーマの支援を行う; • FONAFIFO 専門委員会(予定):FONAFIFO と SINAC の局長級からなる委員会で、

FONAFIFO による FCPF ER プログラムと REDD+国家戦略の実施を監督、支援す

るために設立予定。現在は、FONAFIFO の長官がその役割を果たす; • セクター間コミッション(予定):REDD+の分野横断的課題や他のセクターとの

調整を図るために多様な省庁の参加からなるコミッションの設置を予定。またそ

の下に、REDD+の技術的テーマを取り扱うワーキンググループを設置する予定。 3) 準国レベル コスタリカでは、気候変動は環境・エネルギー省の責任と調整により、国レベルで計

画、実施が進められる。REDD+についても同様で、FONAFIFO による国全体の取り

組みが原則方針となっている 3。2017 年 1 月時点において、準国レベルにおける

REDD+体制は構築されておらず、その予定もないと考えられる。 なお、コスタリカの地方行政区分は 7 県(Provincia)、81 郡(Canton)、470 区(Distrito)から構.成されている。県知事は大統領により任命され、1998 年に県レベ

ルの行政府が廃止されてからは、県単位は地理上の区分及び国政選挙における選挙区

としての役割だけとなった[10]。一方で、森林行政に関しては、全国に 11 の保護区行

政区画が設けられ(図 1-1-6-3)、それぞれの地域に SINAC の地域事務所が責任機関

として設立される。また、SINAC の地方事務所に FONAFIFO の出先機関が併設され、

PSA 制度の事務手続きが行われていることからも、REDD+の実施においては自治体で

はなく、保護区行政単位が機能する可能性もある。

図 1-1-6-3:コスタリカの保護区行政区分 出典:SINAC 提供資料(2016)

3 María Elena Herrera 氏(REDD+事務局 / FONAFIFO)聞き取り調査(2016 年 10 月)

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1-1-6-2 気候変動対策としての REDD+の活用に関する法令等 1) INDC/NDC 及び国家気候変動戦略 (1) INDC/NDC 環境・エネルギー省により、INDC は 2015 年 9 月 30 日に国連気候変動枠条約

(UNFCCC)に提出された(2016 年 10 月 4 日にパリ協定批准)。気候変動緩和目標と

して、以下の目標が示される[12]: • 2℃目標(産業革命以降の全球平均気温上昇を 2℃未満に抑制する)の達成を目的

に、2030 年までに最大で 9,374,000tCO2 の正味の GHG 排出削減を行い、年間、

一人当たりの正味排出量を 2030 年までに 1.73 tCO2、2050 年まで 1.19 tCO2、

2100 年までに-0.27 tCO2とする; • 2030 年まで毎年 170,500 トン排出削減を行い、GHG 排出量を BAU 比で 44%削

減、2012 年比で 25%の削減を目指す。 上記目標を達成するための緩和方針のオプションとしては、エネルギー需要と GHG排出の削減(エネルギー効率改善、低炭素開発)、エネルギー供給の脱炭素化、産業界

の最終エネルギー利用における燃料転換(建設、交通、産業セクター等)、炭吸収源の

強化(土地利用の改善、再植林)が挙げられる。さらに農業・林業及びその他の土地

利用(Agriculture, Forestry and Other Land Use:AFOLU)セクターにおいては、策定

中・または実施中の NAMA コーヒー及び牧畜、国家 REDD+戦略が、緩和目標達成の

ための主要なツールとして位置づけられる。 (2) コスタリカ国家気候変動戦略 コスタリカの気候変動対策の根幹をなすのは、国家気候変動戦略(National Climate Change Strategy / Estratégia Nacional de Cambio Climático:ENCC)である。環

境・エネルギー・通信省(Ministry of Environment, Energy and Telecommunication / Ministerio de Ambiente, Energia y Telecomunicacion: MINAET)4により 2008 年制

定に策定され、2021 年までにカーボン・ニュートラルな経済の実現を目的とする主

要な国家戦略と位置付けられる[13]。緩和方針として 8 つのセクター(エネルギー、

産業、運輸、土地利用変化、ツーリズム、農業と畜産、廃棄物管理、水資源管理)を

特定し、セクター毎に排出削減に関する機会の開発を計画に挙げる。また再植林等に

よる森林炭素貯蔵の強化、排出削減補償支払いプログラム、自主的炭素市場、クリー

ン開発メカニズム(CDM)等の国際スキームの活用を示す。 (3) 国家開発計画 2015-2018(National Development Plan / Plan Nacional de

Desarrollo:PND) 国家計画・経済政策省(Ministry of National Planning and Political Economy / Ministerio de Planificación Nacional y Política Económica:Mideplan)によって 2014年に策定された現行の国家開発計画 2015-2018 では、気候変動とリスク管理は 4 つの

戦略的要素の一つとして考慮され、カーボン・ニュートラル政策が持続的開発を達成

するための政策として位置づけられる[14]。同計画の中で、REDD+は GHG 排出削減プ

ログラムの一つとして位置づけられ、2015 年~2018 年の間に 7,664,930tCO2 の排出

削減が目標として記される。

4 環境・エネルギー・通信省(MINAET)は、2013 年に環境エネルギー省(Ministry of Environment and

Energy/ Ministerio de Ambiente, Energia:MINAE スペイン語略称)として省庁編成

182

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(4) 国別報告書(National Communication: NC) コスタリカ政府はこれまで国別報告書を 3 回 UNFCCC に提出しており、特に第 3 次国

別報告書の中で REDD+を気候変動緩和策として明確に位置づけている。コスタリカの

国別報告書における REDD+の位置づけを示す(表 1-1-6-3)。

表 1-1-6-3 コスタリカ国別報告書における REDD+の位置づけ 国別報告書 REDD+の位置づけ 第 1 次(2000 年

11 月 18 日) 森林セクターは、“土地利用変化と林業”として緩和政策・方針の一環

として位置づけられる。環境サービスに対する支払い(PSA)、私有

地での林業経営の持続性、保護区の強化が方針として示される。

REDD+提案以前のため、REDD+の概念はない。 第 2 次(2009 年

10 月 7 日) 第 1 次同様、森林セクターは、“土地利用変化と林業”として緩和政

策・方針の一環として位置づけられる。REDD は、UNFCCC の目標

を達成するための新たな資金メカニズムとして位置づけられる。 第 3 次(2014 年

12 月 11 日) REDD+は、コスタリカの緩和政策・方針の一環として明確に位置づけ

られる。REDD+制度の進捗について記される。 出典:[8,15,16]

2) 森林セクター及び REDD+の活用に関する法令等 (1) 国家森林開発計画 2011-2020(Plan Nacional de Desarrollo Forestal:PNDF

スペイン語略称) 森林セクターは、国家気候変動戦略(ENCC)が緩和に関して取り上げるセクターの

1 つである。本セクターの最も重要な政策・計画文書として、国家森林開発計画が 10年ごとに策定される。現行の国家森林開発計画 2011-2020 は、2011 年に環境・エネ

ルギー・通信省 によって策定され、7 つの主要戦略と 23 の戦略的目標から構成され

る(表 1-1-6-4)。その中で REDD+(REDD という記載)は、主要戦略の一つである

気候変動の緩和の主要ツールとして位置づけられ、国際動向の検証や、外部資金を活

用した REDD+実施に向けた準備が明確に示されている。 表 1-1-6-4 国家森林開発計画(PNDF)2011-2020 の 7 主要戦略と 23 戦略目標

1. 森林利用のポテンシャルに基づく森林土地利用計画 1.1. 森林土地利用計画のためのガバナンス・モデルを促進する 1.2 森林生態系と土地利用に関する詳細かつ最新の情報を整備する 1.3. 森林行政に関する効果的かつ透明性を確保するためのメカニズムを促進する 1.4. 土地利用計画を通じランドスケープの統括的な管理に貢献する 2. 森林の持つ社会・経済・環境的価値を考慮した、森林セクターの位置づけの強化 2.1 森林セクターの持つ文化・環境・経済的価値を促進する 2.2 官・民による森林セクターの国際的な森林に関する対話への参加を確保する 3. 森林セクターの競争力強化 3.1 国内・国際市場における、森林生態系サービスに由来する製品の生産性と競争

力を確保するための条件を整備する 3.2 森林セクターにおける企業、組織の管理能力と競争力の強化を図る 3.3. 製品とサービスに関する革新性と知見を生み出し、活用する 3.4 森林の利用と意思決定に関する効果的かつ利用可能な公的情報プラットフォー

ムを構築する 3.5 森林産物の流通とサプライチェーンに関するメカニズムを強化する 4. 森林セクターへの投資の促進と、持続的林業活動強化

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4.1 持続的に管理された森林に由来する製品とサービスの供給と消費のための条件

を確保する 4.2 森林セクターへの長期的投資を促進するための簡易な基準と法的枠組みの開発 4.3 森林を管理・保全するために必要な資源を確保する 4.4 森林活動の社会・経済・環境へのインパクトをモニター・評価する 5. 森林制度・行政機関の調整と効率化

5.1 森林に関する行政・法的・技術的体系を強化する 5.2 森林行政と関連するその他セクターとの連携を強化する 5.3 森林に係る組織間の効果的な調整メカニズムを強化する 5.4 森林生態系に関する多様なセクター間の効果的調整機能を強化する 6. 森林生態系サービスに関する生産・産業・販売を強化する革新的かつ持続的な資金

戦略の策定と実施6.1 森林生態系サービスを利用した製品・サービスの生産、産業、販売を強化する

ためのメカニズムを開発・実施する 6.2. 長期的な資金メカニズムを確保し、多様化させる 6.3. FONAFIFO と国家銀行制度の森林セクターへの資金メカニズムとしての条件を

整える 7. 気候変動の緩和・適応を目的とする持続的森林管理の促進

7.1 気候変動適応とカーボン・ニュートラルを目指す緩和のための主要戦略として

持続的森林管理を促進する 出典:[17]

(2) 国家 REDD+戦略 REDD+国家戦略は FONAFIFO に設置された REDD+事務局によって策定が進められ、

FCPF 準備基金がそのプロセスのための主要な資金源となっている。 2015 年 9 月に国

家 REDD+戦略ドラフト版が策定され、一般に公開された 5。予算が確保でき次第、ス

テークホルダーコンサルテーション実施を行う。最終版は MINAE の大臣による承認が

想定されている 6。国家 REDD+戦略ドラフト版では、REDD+の基本方針として、既

存の森林・環境政策を通じて国レベルで実施することが前提となっており、SINAC の

進める違法伐採対策や森林火災対策、また FONAFIFO の生態系サービスへの支払い

(PES)が挙げられる[9]。同 REDD+戦略ドラフトと FCPF 炭素基金の ER プログラム

によって、REDD+基本 6 政策と 24 の行動計画が示される(表 1-1-6-5)

表 1-1-6-5 コスタリカの REDD+基本政策と行動計画 1. 国有・民有林を統合的に管理し、REDD+の MRV を構築

1.1 保全林内外の森林火災に関する管理戦略の実施と資金強化を図る 1.2 森林減少・劣化対策及び合法材の流通・販売管理に関するプログラムの実施

と資金強化を図る 1.3 国家森林モニタリングシステムを強化する 1.4 保全地域と国家自然財産(PNE)の統合的戦略を開発する 1.5 国家保全地域システム強化に貢献する 1.6 保全と PNE のレジリエンス改善とのシナジーを構築する

5 国家 REDD+戦略(コンサルテーション用ドラフト 2015 年 9 月 30 日)(西語):

http://www.forestcarbonpartnership.org/sites/fcp/files/2015/October/8-Costa%20Rica%20Borrador%20de%20la%20Estrategia%20Nacional%20REDD+Spanish%20v%2030%20Sept.pdf

6 María Elena Herrera 氏(REDD+事務局 / FONAFIFO)聞き取り調査(2016 年 10 月)

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1.7 森林減少・劣化の直接・間接的要因に対する行動のための実施計画を開発・

実施する 2. ステークホルダーの完全で調和のとれた参加と融合を促進 2.1 先住民族居留地における森林開発計画を策定する 2.2 REDD+実施に関する紛争解決メカニズムを開発・強化する 2.3 アグロフォレストリー農家の REDD+への参加を促すメカニズムを構築する 3. 官民の能力強化を図り林業セクター競争力向上 3.1 REDD+に関連する PNDF 政策の実施に貢献する 3.2 持続的農業・アグロフォレストリーの促進と理解に関する政策を強化する 4. 法的安定性を促進し、土地所有・炭素権の明確化と規制に関するメカニズムを強化

する 4.1 先住民族居留地における土地所有と炭素権について取り組む 4.2 特別管理地区(Áreas Bajo Regímenes Especiales:ABRE)における土地所

有と炭素権について取り組む 4.3 公的セクターの土地所有と炭素権について取り組む 4.4 特別管理地区(ABRE)の境界設定・土地利用に関する基準の整合性を図る 5. REDD+活動による便益を得られるよう全てのアクターの参加機会を拡大 5.1 国有地における森林区分・土地利用を整理する 5.2 森林とアグロフォレストリーに関する資金メカニズムの競争力強化を図る 5.3 REDD+便益分配システムの資金源の拡大と強化を行う 5.4 国有地における植林事業を強化する 6. 利用可能な技術、方法論、政策と一致した、参加、セーフガード情報システム、環

境・社会配慮フレームワーク(ESMF)等の確保 6.1 セーフガード情報システム(SIS)を開発・検証・運営する 6.2 ESMF を実施する 6.3 MRV と他のモニタリング方法論の整合性を図る 6.4 ジェンダーへの配慮、若者グループや他の関連グループの参加を確保する

出典:[7,9] コスタリカの REDD+国家方針は、REDD+のスコープ 5 つを含む。しかしながらモニ

タリング制度と利用可能なデータなどの理由から、2016 年に UNFCCC に提出した参

照レベルは、森林と非森林の変化のみを対象としている。当面は森林減少と森林炭素

の増加の 2 つのスコープに焦点を当てるが、モニタリング精度やデータの向上ととも

に、段階的に REDD+のスコープを増やすことが考えられる[4]。なお、コスタリカの

REDD+の正式な開始時期は 2010 年となっているが[9]、1996 年の森林法の制定以降森

林保護が強化され、また PSA 制度が開始されたことから、1997 年~ 2010 年の期間の

森林減少に対する努力と結果を考慮する。このことから、UNFCCC に提出した参照レ

ベルには 2 つの参照時期がある[4]:①(1997-2009)を評価するための参照レベルは

1986-1996;②(2010-2025)を評価するための参照レベルは 1997-2009。 (3) FCPF 炭素基金 Emision Programme(ER)プログラム コスタリカの REDD+を実施する上でもっとも重要な資金源は FCPF 炭素基金の

Emission Reduction(ER)プログラムである。FCPF との調整は FONAFIFO がフォー

カルポイントとなり、環境・エネルギー省の監督のもと進められる。以下にコスタリ

カ ER プログラムの概要を示す[6]: • 地理的範囲:全国(ココ島を除く)

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• 排出削減量上限: 1200 万トン CO2e 排出削減 • 支払い上限:6300 万ドル • 炭素価格(仮):5 米ドル/tCO2 • 対象期間: 2016~2025 年 • 対象活動: 森林減少(森林から非森林への転換)の抑制、森林炭素ストック

の増大(非森林から森林への転換) 2016 年 6 月に開催された第 14 回 FCPF 炭素基金会合にて、コンゴ民主共和国ととも

に、ER プログラムが世界で初めて承認され、2017 年に支払いに関する交渉が開始さ

れる予定である。しかしながら、提案されている炭素価格(5 米ドル/tCO2)では、

REDD+の実施コストを下回るという懸念から、コスタリカ政府の合意は非常に難しい

と考えられる 7 。

1-1-6-3 準国以下の REDD+プロジェクトの実施に関する法令等 REDD+に関する戦略、計画等は環境・エネルギー省の監督の下、FONAFIFO によって

策定が行われる。コスタリカの REDD+は国レベルのアプローチがとられており、準国

レベル以下での実施は想定されておらず、また REDD+プロジェクト実施に際して明

確な許可制度はない[18]。 一方で、REDD+の実施に際し、特に私有地における森林炭素保全・増加や、便益分配

制度(Benefit Distribution System:BDS)に関しては、既存の環境サービスに対する

支払い(PSA)制度が重要な要素として挙げられる。1996 年の森林法により開始され

た PSA 制度は、永続的な国家プログラムであり、森林所有者(先住民族居留地を含む)

の森林生態系サービス保全活動を促進する目的に、4 つの生態系サービスを対象として

いる:(1) 気候変動緩和;(2)水源涵養;(3)ランドスケープ景観;(4)生物多

様性保全。様々なタイプの森林保全活動に対して経済的インセンティブが設定されて

いる(表 1-1-6-6)。 1997 年~2003 年にかけて約 4.8 千万米ドルの資金が PSA に投資され、約 100 万 haの森林が保全されたと推定される。その資金源として国家予算(燃料税、水道料金)

の他、これまでには世界銀行のローンや、ドイツ国際協力公社(Gesellschaft fur Internationale Zusammenarbeit : GIZ ) 及 び 地 球 環 境 フ ァ シ リ テ ィ ( Global Environmental Facility:GEF)による資金供与を受けた。

7 María Elena Herrera 氏(REDD+事務局 / FONAFIFO)聞き取り調査(2016 年 10 月)

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表 1-1-6-6:生態系サービスへの支払い(PSA)プログラム(2016 年版)

出典:[19] FONAFIFO は、森林所有者と PSA 契約を行い、そのタイプに基づき支払いを行う。契

約の中で、PSA による排出削減量または炭素蓄積増加量の権利は FONAFIFO に移転さ

れる仕組みとなっている(図 1-1-6-4)。炭素の計算は、森林保全 PSA の場合は、

Holdridge の Life Zone に基づく森林植生タイプによる面積当たりの炭素蓄積量を算定

し、植林やアグロフォレストリーPSA の場合は、樹種に基づいて算定される 8。ただ

し、FONAFIFO により評価が行われ、外部機関による認証・検証は行われない。

図 1-1-6-4 PSA の模式図:支払いと炭素権の移行

FONAFIFO の報告によると、2016 年 1 月 1 日~9 月 30 日にかけて計 171,569ha の土

地と森林保全 PSA(5 年間の森林減少防止)の契約を結び、これにより合計

78,433,141tCO2(面積当たり 457.2tCO2/ha) の排出削減が見込まれる 9。

8 Gilmar Navarrete Chacón 氏(FONAFIFO)聞き取り調査(2016 年 11 月) 9 Gilmar Navarrete Chacón 氏(FONAFIFO)聞き取り調査(2016 年 12 月)

タイプ(modality) 支払い総額 支払い期間 契約期間

早生樹種による森林再生 123,343 円/ha 5年間 10年間

中生樹種による森林再生 141,774 円/ha 5年間 16年間

在来種を使った森林再生 212,662 円/ha 5年間 16年間

天然更新 20,416 円/ha 5年間 5年間

アグロフォレストリーシステム 木1本あたり174 円 5年間 5年間

在来種を使ったアグロフォレストリーシステム

木1本あたり258 円 5年間 5年間

木材伐採用の植林地におけるアグロフォレストリーシステム

木1本あたり258 円 5年間 5年間

森林保全 31,870 円/ha 5年間 5年間

水源涵養 39,838 円/ha 5年間 5年間

森林管理 24,899 円/ha 5年間 5年間

187

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1-1-6-4 REDD+における市場メカニズムの活用に関する法令等 コスタリカの気候変動政策は、炭素市場を含む多様な資金メカニズムの活用を支持す

る。しかしながら、パリ協定の実施が始まる 2020 年以降については、国家排出削減量

目標に対する各セクターの責任と調整や国際炭素価格等、不確定な要素が大きく、炭

素クレジットの国際移転を伴うメカニズムの活用については明確ではない10。また

REDD+による排出削減量・吸収量増加の用途に関する決定は、FONAFIFO ではなく環

境・エネルギー大臣等による高度な政治決定によると考える。 ただし、2020 年以前に REDD+により達成された排出削減・吸収量(tCO2)の海外へ

の販売について、FONAFIFO は肯定的である。UNFCCC に提出した森林排出参照レベ

ル/森林参照レベル(REL/ RL)では、2 つの参照時期(1997-2009 年を評価するための

参照レベルは 1986-1996;2010-2025 を評価するための参照レベルは 1997-2009)を

設定している。1997-2009 年の排出削減・吸収量は古いクレジットと捉えられ、比較

的低価格の設定を考慮する。しかしながら、2010 年以降の排出削減・吸収量について

は、ER プログラムで設定されている炭素価格(5 米ドル/tCO2e)では、コスタリカ政

府は合意しないと考えられる 11。さらには FCPF 炭素基金の資金には 2 つのトランチ

(Tranches)、排出削減(ER)の移転が発生しない様式も考慮されることから[20]、コスタリカにおける ER プログラムの実施と排出削減の移転についてはその動向を確認

する必要がある。

これまでの市場メカニズムを活用した取り組みであるが、1996 年に、ノルウエーのエ

ネルギー企業共同体と共同で再植林・森林保全プロジェクト(Costa Rica / Norway Reforestation and Forest Conservation AIJ Pilot)を実施し[21]、コスタリカ政府機関

(Costa Rican Office on Joint Implementation :OCIC)により認証された 20 万 tCO2の炭素権を、ノルウエーのエネルギー企業共同体に売却した[22]。

国内炭素市場に関しては、2013 年の MINAE 省令「自主的炭素市場の管理と運営に関

する環境・エネルギー省・省令 No.37926」により、自主的炭素市場(MDVCR)を国

内に設立した[8,23,24]。環境・エネルギー省の気候変動局が事務局として機能し、炭

素の売買や排出削減補償支払い、認証活動等の炭素市場の運営管理のために、炭素委

員会(Junta de Carbono)が設立された。省令は、コスタリカ補償ユニット(UCC)

と呼ばれる炭素クレジットの発行や取引についてガイドラインを提供する。炭素クレ

ジットの発行は国内で実施される持続可能な森林管理、エネルギーの効率化、革新的

技術等の排出削減プロジェクトを対象とし、炭素委員会に認められた専門家によるプ

ロジェクトの妥当性確認と結果の検証が行われる。このクレジットは移転不能であり、

購入した個人や法人は、第 3 者に販売、または移譲することは出来ない。なお、購入

は、コスタリカ国内の個人や法人だけでなく、海外の個人や法人も可能である。ただ

し法令 No.37926(66 条)では、コスタリカのクレジット取引所または二国間同意を通

じてと規定される[24]。 この国内自主的炭素市場制度を通じて、3 つの PSA プロジェクト(カリブ地域、グア

ナカステ、及び北部地域で実施される早・中生樹種による再植林)からの炭素クレジ

10 Gilebrt Canet 氏 (環境・エネルギー省)、María Elena Herrera 氏(REDD+事務局 / FONAFIFO) 聞き

取り調査(2016 年 10 月) 11 María Elena Herrera 氏(REDD+事務局 / FONAFIFO) 聞き取り調査(2016 年 10 月)

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ットの販売が FONAFIFO により実施される。FONAFIFO は、コスタリカ国内の団体

や個人(及びコスタリカ国内に事務所を持つ海外の法人)に対して、7.5 米ドル/ tCO2e で販売する[25]。2012 年の開始から、その販売クレジット量は増加傾向にあり、

2016 年には約 3 万 tCO2e(約 23 万米ドル)が販売された(表 1-1-6-7)。 表 1-1-6-7 国内炭素市場で販売された PSA 森林炭素クレジット量 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015

年 2016 年

取引量

(tCO2e) 3903.7 10648.7 13144.7 25501.0 30068.6

販売額(米

ドル) 29277.75 79865.25 98585.25 191257.5 225514.5

出典:FONAFIFO 提供資料(2017 年) 販売された炭素ユニットはあくまで国内向けの移転不能なクレジットであり、海外の

市場を通じた販売は行われないことから、販売後もコスタリカ政府の排出削減目標に

利用される仕組みとなっている 12。炭素クレジットを購入した個人・法人は、MINAEの発行するカーボン・ニュートラルのマークを商品やサービスにつけることができる。

さらにカーボン・ニュートラルのマークは、コスタリカツーリズム制度(Instituto Costarricense de Turismo (CST))の持続的なツーリズム認証プログラムの認証や、政

府機関の実施する入札制度にて考慮される。 1-1-6-5 REDD+の MRV システム 1) 森林の定義 コスタリカの森林法改訂版(1996 年)では、森林の条件として以下の条件が示されて

いる: 面積(2ha 以上);樹幹率(70%以上);林分密度(胸高直径 15cm 以上の木

が ha あたり 60 本以上)[26]。しかしながら、REDD+に関しては、異なる条件が適用

される。UNFCCC に提出された FREL/FRL、及び FCPF ER プログラムでは、以下の

森林条件が適用される:面積(1ha 以上);森林被覆率(30%以上);樹高(5m 以上)

[4,7]。この定義は、国家 GHG インベントリーおよび A/R CDM のための定義と同様で

あり、REDD+に適用された森林条件(特に面積と被覆率の値)は、ランドサット衛星

を用いた森林モニタリングにおける森林判別精度(森林と非森林の区別)が影響する

と考えられる。また REDD+に関連して、以下の定義が定められる[4]: • 一次林または天然林(primary forest):1986 年以前から成立している森林; • 二次林(secondary forest): 1985 以前には非森林地であった新しい森林。1985/6

年時点で二次林であった森林も含まれる。 2) 国家森林モニタリングシステム 国家森林モニタリング制度は、環境・エネルギー省の管轄の下、SINAC、FONAFIFO、

CENIGA により開発が進められる。特に、国家環境情報プラットフォーム(SINIA)13

を管理する CENIGA は、モニタリングに関する方法論や基準に関する開発プロセスの

調整の役割を果たす。

12 Carmen Roldán Chacón 氏(FONAFIFO)聞き取り調査(2017 年 1 月): 13 コスタリカ国家環境情報プロットフォーム(Sistema Nacional de Información Ambiental - SINIA Costa

Rica):http://www.sinac.go.cr/ceniga/

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第 1 回国家森林インベントリーは、GIZ の技術・資金協力(REDD/CCAD-GIZ)を受け

て、2013~2014 年にかけて SINAC により実施された。2.4km 間隔のグリッドに沿っ

て全国土に 10116 プロット(20mx50m)を設定し、システマティック・サンプリング

に基づき、森林タイプごとに誤差 15%で必要な 300 プロットにおいて実際に森林計測

を実施した[4]。次回の NFI は、2017 年に開始され、以後 5 年ごとに、毎年 20%のプ

ロットを実際に測定していく予定である。

また、REL/RL 策定のために、被覆率の変化を測定するためのプロトコルの開発が行わ

れ、Landsat 画像の解析に基づき、ココ島を除く全国土(513 万 ha )を対象に、被覆

率マッピング(1985/6 年、1991/92 年、1997/98 年、2000/01 年、2007/08 年、

2011/12 年、2013/14 年)が行われた。森林は 5 カテゴリ(湿潤雨林、湿潤林、乾燥林、

マングローブ、パーム林 14)と 1987 年時点の森林とその後できた 2 次林に区分され、

非森林は、農地(1 年生・多年生作物)、牧草地、居住地、湿地、その他(高山植生、

裸地)に区分され、解析された[3]。FCPF ER プログラム文書によると、面積データの

モニタリングは 2 年ごとに実施するとしている。

森林、農地を含む詳細な土地利用変化をモニタリングする制度は開発中である。土地

利用モニタリングに関連して、FONAFIFO は、米国森林局(United Stats Forest Service:USFS)の支援を受け、高解像度衛星画像ラピッドアイを使った技術開発が

進められる 。

3) REDD+ MRV システムの特徴

NFMS で示したよう、構築中の REDD+モニタリングは、森林・非森林の変化しか捉え

ておらず(閾値は被覆度 30%)、REDD+の 5 つの活動全てには対応していない。

REDD+の MRV は、SINAC が管轄する環境情報プラットフォーム(SINIA)に統合さ

れ、セーフガード情報システムとともに管理される予定である。さらに、FONAFIFOは REDD+による炭素レジストリーシステム開発を民間機関である MARKIT15に受注す

ることを検討中である 16。一方で、セクション 2.4.1 で述べた国内炭素市場(MDVCR)

の MRV 制度や、環境・エネルギー省により開発中の国家気候変動メトリックス制度

(National Climate Change Metric System :SINAMECC スペイン語略称)との整合性

に関する検討も必要である。

また環境・エネルギー省の気候変動局は、炭素レジストリー制度の開発を進めており、

REDD+や NAMA コーヒーや NAMA 牧畜の AFOLU セクターやエネルギー、交通、固

形物廃棄分野、含む全てのセクターからの排出削減・吸収に関する情報が統合的に管

理される予定である 。

4) REDD+ MRV システムと国家 GHG インベントリーの関係

REDD+に適用されている森林の定義や REL/RL の土地区分は、国家 GHG インベント

リーにおける定義と区分が適用されている。さらに、REL/RL 策定のための面積データ

やエミッション・ファクターは、GHG インベントリー(2005、2010、2012 年)の再

14 森林の 5 カテゴリは Holdridge の Life Zone(23 区分) に基づき区分している15 MARKIT は、炭素や生物多様性に由来するクレジットのレジストリー構築を行う企業であり、VCS レジストリーシステム提供者の一つである: http://www.markit.com/product/registry

16 María Elena Herrera 氏(REDD+事務局 / FONAFIFO)聞き取り調査(2016 年 10 月)

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計算に使われた。しかしながら、REDD+の MRV 制度と GHG インベントリーとの整合

性を図るには、REL/RL の中身(参照時期、カーボンプール、活動)と GHG インベン

トリーの違いを検討する必要がある[7]: 対象時期:GHG インベントリーは 2005、2010、2012 年の時点であるが、

REL/RL は 1986~2009 年(UNFCCC)、1998~2011 年(FCPF ER プログラム)

を参照する。 カーボンプール:1997 年以降の森林バイオマス燃焼による CH4 と N2O の排出

(森林から森林の変化)は GHG インベントリーに含まれるが、REL/RL には含ま

れない 。これら排出についてのデータは REL/RL にて考慮するには不足している。 植林地(森林から森林への変化):2014 年の情報に基づき、2012 年の GHG イン

ベントリーには植林地における炭素変化量が含まれる。しかしながらこの森林か

ら森林の炭素蓄積量の変化は REL/RL には含まれない。 伐採木材産品:2012 年の GHG インベントリーには、国家統計情報の伐採木材量

データを用いて、森林から森林への炭素変化量を含める。一方で、REL/RL は森林

から森林への変化を含めていない。また、伐採木材量の情報は 2011~2013 年の間

しかなく、REL/RL の算定には不十分である。 REDD+活動のモニタリングは FONAFIFO と SINAC がそれぞれの管轄に基づき実施す

ることが予定されるが、モニタリング方法論等については、SINIA を管理する

CENIGA と、国家 GHG インベントリーを担当する IMN が協力を行い、国家インベン

トリーとの整合性が図られる[4]。 5) 準国レベルの REDD+ MRV REDD+は国レベルでの実施が方針であることから、準国レベルにおける MRV 制度の

構築は予定されていない。 1-1-6-6 土地の所有、管理、利用に関する法令等 1) 森林所有と利用権 所有権のタイプによって、政府機関の所有する森林(約 130 万 ha)と私有林(100 万

ha)の 2 つに分けられる[2]。森林の利用については、森林法(1996 年改正)によって、

森林は農地や住宅地等へ土地利用転換できないと定められる。私有地における森林資

源を利用するためには、森林所有者は、森林管理計画の策定・提出および SINAC によ

る承認が必要である。 自然保護管理のために、全国に 166 の保全地域が設定され、国土の約 26%(森林地の

約 50%)がカバーされる(図 1-1-6-5)。なお、保全地域内には私有地も存在し、国有

地と私有地が混在する保全地域や、そのほとんどが私有地からなる保全地域もある。

保全地域内の私有地では、該当する保全地域区分それぞれの規則で定められた活動を、

SINAC の認可のもと行うことが出来る。保全地域に指定された地域の土地利用につい

ては、環境基本法、生物多様性法で定められており、保全地域内では環境保全に貢献

する取組しかしてはならないという方針となっている。

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図 1-1-6-5:コスタリカの保全地域 参照:SINAC 提供資料(2016 年) 保全地域は 9 区分に分かれており、全てを SINAC が管理する。9 区分のうち、国立公

園、生物学的保護区と野生動物保全地域を除いては、管理のコンセプトはあるが各区

分内の細かい規制は実質的には存在しない。国立公園、生物学的保護区の利用が最も

厳しく、これら地域の利用は科学的調査、教育活動及びエコツーリズムに限られ、違

法活動による森林減少の発生はもっとも少ない[7] 。また海岸から幅 200m の地帯は全

て保全地域に指定され、このうち海岸から 50m までは国有地であり、一切の活動が禁

止されている。 先住民族法(1977 年)により、24 の先住民族居留地が定められた(図 1-1-6-6)。居

留地は、全部で約 37.4 万 ha(国土の 6.6%)、その 72%が森林である[27]。同法によ

り、先住民族居留地では公的な登録簿に基づき、先住民族コミュニティの自治権が認

められており、先住民族の意思決定機関としての役割をはたす先住民族開発組織

(Asociación de Desarrollo Indígena:ADI) が、各居留地に設立された。 コスタリカの先住民族は 8 のエスニックグループから構成され、人口は約 64,000 人、

全人口の訳 1.7%と規模は小さい[2]。8 つのグループは、Cabècar、 Bribri、Brunca (Boruca) 、 Guaimí (Nagebe) 、 Huetar 、 Guatuso (Maleku) 、 Térraba (Teribe) 、Chorotegas である。Cabècar と Bribri が 2 つの大きなエスニックグループであり、先

住民族全体の約 60%を占める。またほとんどの先住民族がスペイン語を話す他、60%がそれぞれの言語も話すといわれる。先住民族法により、先住民族居留地における土

地の所有は、先住民族のみに限られており、非先住民の所有は認められない。また居

留地内の資源の商業利用は禁止されており、先住民族による伝統的・文化的な活動が

可能となっている[27,28]。

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先住民族居留地問題として、居留地内に非先住民族が侵入し、森林から農地への転換

や、土地の違法な転売が行われる。この問題はほとんどの先住民族居留地にて起来て

いるといわれる 17。

図 1-1-6-6 コスタリカにおける先住民族居留地 出典:REDD+事務局提供資料(2016 年) 2) 土地権の取得プロセス 私有地における森林の売買および分割して売却することは認められており、私有林の

所有については、外国人・法人による所有も可能である。一方で、PSA 契約期間中の

土地の売買は出来ないことになっている。また、国立公園等の保全地域内にある私有

地を分割することは認められないほか、先住民族居留地における土地権の譲渡や売却

は禁じられている。 3) 森林管理システムの特徴 1986 年に改訂された森林法(Ley Forestal N° 7575)により、国有地の森林伐採や、私

有地における森林の他の土地利用への転換が禁止され、森林利用から保全への管理方

針が強化された。上述したよう(セクション 2.3)、森林法によって、森林の提供する

生態系サービスとして、(1)気候変動緩和、(2)水源涵養、(3)ランドスケープ景

観、(4)生物多様性保全、の 4 つのタイプが認識され、私有地の森林保全活動に対す

る経済的インセンティブとして、PSA が持続的な国家プログラムとして制度化された。

また、森林保護促進のため、政府は、森林保護について一定の条件を満たす森林所有

者に対して森林保護証書(Certifcado para la Conservacion del Bosque:CCB)を発行

し、税制優遇を設定した。

17 Elena Florian 氏(CATIE)聞き取り調査(2016 年 10 月)

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4) 森林所有権と REDD+プロジェクト 保全地域内・外によって森林の利用・管理は大きく異なり、私有地であっても保全地

域内である場合、その利用は該当する保全区分のルールに従い、非常に制限される。 保全地域外の私有地での木材伐採には、農業技術大学(Colegio de Ingenieros Agrónomos de Costa Rica:CIAgro)に登録された林業技師(Regente Forestal)によ

って証明された森林管理計画が必要とされ、伐採された木材の運搬にも政府機関の認

可を取る必要がある。政府から管理計画策定のための資金支援があるものの、小規模

森林所有者にとっては、コストの問題が指摘される 18。また、森林の約 1/4 が二次林

であるが、これまでの森林セクターの法整備では二次林管理・経営を規定しておらず、

利用が出来なかった。気候変動緩和の観点からも二次林管理への関心が国内外で高ま

っている。 保全地域内の区分と数、及び面積を表 1-1-6-8 に示す。希少種の保全等の保全目的の強

い国立公園と生物学的保護区(Biological reserve)に存在する私有地は政府(SINAC)

が買い取る方針であり、野生動物保護区では土地所有者と参加型管理の方針をとって

いる 19。 表 1-1-6-8:保全地域の区分と面積

区分 数 面積(ha) 国立公園(National Park) 28 629,394 生物学的保護区(Biological reserve) 8 21,634 森林保護区 (Forest reserve) 9 216,277 保護区 (Protected zone) 31 157,213 野生動物保護区 (Wildlife refuges) 71 237,553 完全自然保護区 (Absolute natural reserve) 2 1,355 湿地(Wetland) 13 3,910 その他 4 21,811 出典:SINAC 提供資料 (2016) 5) 森林所有権と REDD+プロジェクト コスタリカは国土も小さいことから、政府の見解として、準国・プロジェクトによる

実施を想定しておらず、準国・プロジェクトレベルの REDD+を規定する法制度はない。

しかしながら、PSA の制度は私有地における森林炭素の保全と増加を促進し、また

REDD+の将来の便益分配システム(BDS)の一部だと位置づけられることから、

REDD+実施に関する法制度だと捉えることが出来る。上述(セクション 2.3)したよ

う、PSA と契約を行った土地の炭素権は FONAFIFO に移転される仕組みとなっている。 1-1-6-7 REDD+のセーフガードに関する法令等 1) セーフガード及びセーフガード情報システムの開発 (1) コスタリカ政府の方針 コスタリカ政府は、FCPF の支援を受け国家 REDD+戦略の策定を進めていることから、

世界銀行の規定するセーフガード政策・手順(Strategic Environmental and Social Assessment:SESA)及び環境・社会管理フレームワーク(Environmental and Social 18 Ronnie de Camino 氏(CATIE)聞き取り調査(2016 年 10 月) 19 Vera Violeta Montero Castro 氏, Mariana Jiménez 氏 (SINAC)聞き取り調査(2016 年 10 月)

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Management Framework:ESMF)を適用している。つまり、セーフガード制度の構

築と実施に関するコスタリカの方針として、UNFCCC にて合意されたセーフガード

(REDD+カンクンセーフガード、セーフガード情報システム:SIS)及び世界銀行の

セーフガード政策と、国内法的枠組みとの一貫性の整理と制度化が挙げられる。表 1-1-6-9 に各 REDD+カンクンセーフガードに対してコスタリカ政府がどのような対応・

方針であるかをとりまとめる。 表 1-1-6-9 コスタリカにおける REDD+カンクンセーフガードに関する方針

出典:[7] セーフガード及びセーフガード情報システム(SIS)に関するこれまでの主な活動を以

下に示す[7,11,28]: • 2011 年から SESA を実施し、ステークホルダーグループの特定、及びステークホ

ルダーにより REDD+実施に係る潜在的リスクや便益が検討される • 2014 年~2015 年に環境・社会リスクの管理ツールである ESMF の構築 • 2015 年に FONAFIFO により SIS のデザイン文書(Diseño de un sistema de

información país sobre las salvaguardas de REDD: normativa , institucionalidad , información e indicadores)が策定、一般に公開される

• セーフガード実施および SIS 構築に関する機関(FONAFIFO、CENIGA、SINAC)

の調整を進める • セーフガード指標の検討(22 指標を検討)

(2) SESA と ESMF 世界銀行 FCPF による支援の枠組みの中、FONAFIFO は 2011 年 5 月にステークホル

ダーグループを集め、国レベルの SESA を実施した。国家 REDD+戦略初期案を提示す

UNFCCC カンクンセーフガード コスタリカの対応と方針

(a) 国家森林プログラムや関連する

国際条約及び国際合意を補完

し,かつ一貫性を保った活動

REDD+は、国家開発計画、国家森林開発計画

(PNDF)、及び地域開発と森林プログラムの一

部として位置づけられる PNDF は生物多様性、気候変動、砂漠化防止の国

際条約に対応する (b) 透明かつ効果的な国家森林ガバ

ナンス REDD+は、法的枠組みに基づき構築が進めら

れ、他の制度と調整や透明性が図られる コスタリカの森林制度は、REDD+に関する記

録、REL や MRV の透明性を促進する (c) 先住民や地域住民の知見や権利 REDD+コンサルテーション及び ESMF にて対応 (d) ステークホルダー(特に先住民

や地域住民)の効率的な参 REDD+コンサルテーション及び ESMF にて対応

(e) 天然林の保全及び生物多様性保

全 新たな資金制度の開発 先住民族グループや、小・中規模アグロフォレス

トリーに対応した PSA の強化 天然林・二次林管理に関する指標の開発 多様性を伴う林業の促進

(f) 反転の防止 森林減少ドライバーを抑制する活動促進を目的

に金融セクターの参加を促進 MRV にて対応

(g) 排出移転の抑制 MRV にて対応

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るとともに、ステークホルダーグループがそれぞれの意見や提案を行うためのプラッ

トフォームを設けた。参加したステークホルダーグループとして、先住民族グループ、

小・中規模の森林・アグロフォレストリー農家 、林業・製材、政府・公的機関、大学

及び NGO 等の市民グループが挙げられる。 SESA には 24 全ての先住民族居留地の代表者が参加し、REDD+実施に関して考慮す

べき、また対応すべき重点課題として、以下が特定された:土地所有権;先住民族に

対する PSA の強化;保護地域と先住民族居留地のオーバーラップ;森林に関する先住

民族コスモビジョンと REDD+国家戦略の整合性の確保;先住民族の REDD+のモニタ

リングと評価への参加。REDD+事務局は、先住民族グループとのコミュニケーション

を円滑かつ効果的にするために、先住民族グループの中から中間者(Mediadores Culturales)を 200 人ほど任命し、トレーニングを実施した。また、コンサルテーショ

ンプロセス(2013 年)を通じ、5 つの先住民族居留地グループ(地域に基づくブロッ

ク)を形成し、先住民族の参加を促すための制度を構築した(図 1-1-6-7)。

図 1-1-6-7:5 つの先住民族居留地グループ(地域に基づくブロック)形成 出典:[28] ESMF は 2014~2015 年にかけて FONAFIFO によって構築が進められた。SESA を通

じて特定された社会・環境インパクトの検証が行われ、対応・管理指針と SIS に組み

込まれる指標の検討が始まった。また、ESMF によって特定されたステークホルダー

グループに対する長期コンサルテーションプロセス、能力強化のための方針、社会・

環境インパクトに対応し管理するための体制整備・構築するための手順が示された。

ESMF 実施に関する FONAFIFO の役割としては、REDD+戦略実施全般と資金管理、

情報管理、PSA、利益配分システム、ESMF を含むセーフガード実施、ステークホル

ダーへのコンサルテーションが挙げられる。また、SINAC の役割としては、国家森林

インベントリー、法制度を遵守した行動・活動の実施、民間の参加、保全地域管理が

挙げられる。

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(3) セーフガード情報システム(SIS) SIS は REDD+事務局と CENIGA が協力して開発中である。2015 年 6 月に REDD+事務局は、SIS の開発に関するデザイン文書を策定、公開した 20。SIS デザイン文書に

よると、SIS は CENIGA が管理する国家環境情報システム(SINIA)内に構築される。

SIS に使われるセーフガードのモニタリング指標については、REDD+事務局が中心と

なり、開発・検討中であり 22 の指標案が同文書で示された。指標には、CENIGA との

協力の下、国家森林開発計画 2011-2020 で定められた、開発計画のインパクトを評価

するための指標や、既存のデータベース(SINIA のデータベース、FONAFIFO の PSAデータベース、SINIA の保全地域に関するデータベース等)の活用と整合性が検討され

る。 (4) REDD+ に 関 す る 苦 情 処 理 制 度 ( Feedback and Grievance Redress

Mechanism:FGRM) REDD+苦情処理制度(FGRM)は、現在構築中である。REDD+事務局が REDD+コン

サルテーションを実施したことからも、現在は、REDD+事務局でステークホルダーか

ら REDD+に関する質問等を受け付けている(電話及び E メール) 21 。一方で、

CENIGA では、森林を含む環境全般に関する、市民社会からの苦情統合制度(Sistema Integrado de Trámite y Atención de Denuncias Ambientales :SITADA)を管理してお

り、どのような苦情があったか等の情報を公開している 。FGRM の対応は REDD+事務局が果たすべき責任であるが、情報公開等については、将来的に SITADA 統合され

ることも考えられる。 2) SIS の要素 環境基本法によって、政府の責任として、環境に関する指標を備えた情報システムの

管理と運営が定められ、環境・エネルギー省の下に設置された CENIGA が国家環境情

報システム(SINIA)を開発・管理・運営を行う。現在開発中の SIS も SINIA に組み込

まれることになっている。公的な環境情報制度の一部として、透明でアクセス可能な

SIS の構築が図られる。 REDD+事務局によると、SIS の要素として、人材、制度、データ、作業に関する技術

的プロトコル、情報リソース、コミュニケーション、資源があげられる[28]。その中で

も特に課題になるのは、既存の制度を活用して持続的に運営、情報の提示を行うこと

であり、他機関との調整と協力が重要となる。特に関連性のあるモニタリング制度に

ついて表 1-1-6-10 に示す。 表 1-1-6-10 SIS に関連する既存のモニタリング制度

20 SIS の 開 発 に 関 す る デ ザ イ ン 文 書 ( http://www.fonafifo.go.cr/proyectos/finalizados/SIS-

RED_propuesta.pdf) 21 Natalia Diaz Zamora 氏 (REDD+事務局/FONAFIFO)聞き取り調査(2016 年 10 月)

モニタリング制度 担当機関 SIS との関連性 状況 国家土地利用モニタ

リ ン グ シ ス テ ム

(SIMOCUTE)

CENIGA 全ての土地利用変化のモニタリング

制度(反転、排出の移転) USFS の 支 援

を受けて構築

中 コ ス タ リ カ 保 全 地

域・コリドーの生態

系モニタリングプロ

グラム(PROMEC)

SINAC 保全地域及びコリドーの生物多様

性、生態系サービスに関するモニタ

リング制度(天然林の保全及び生物

多様性保全、生態系サービス)

制度、組織、

指標、方法論

等は構築され

たが、未実施

197

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3)REDD+プロジェクトにおけるセーフガードへの対処や関連情報の取扱に関す

る法令、計画、制度等 準国・プロジェクトレベルの REDD+の取り組みはない。 1-1-6-8 実施中の REDD+プログラム等 コスタリカの REDD+は FONAFIO の主導の下、国レベルのアプローチがとられており、

その結果に基づく支払いに向けて、FCPF 炭素基金 ER プログラムが国レベルで準備さ

れる。こうした中、準国レベル以下での実施は想定されておらず、VCS 等の自主的基

準を活用した REDD+プロジェクトも実施されていない。 1-1-6-9 参照レベルの策定状況 1) 国レベル 国家 FREL/FRL は FONAFIFO の調整の下、REDD+事務局によって策定され、環境・

エネルギー省の名で 2016 年 1 月に UNFCCC に提出された。なお、FREL/FRL 策定に

は、GIZ、USFS、UN REDD プログラムの技術支援の他、コンサルタントして民間の

Carbon Decision や AGENTA が参加した。 UNFCCC に提出された FREL/FRL は、ココ島を除く大陸に帰属する全国土(513 万

ha )をカバーする国レベルとなっている。コスタリカの方針は、REDD+のスコープ 5つを考慮するが、提出された FREL/FRL は、森林から非森林への変化と、非森林から

森林への変化による排出量または吸収量のみを対象とする。7 時点の Landsat 画像

(1985/86 年、1991/92 年、1997/98 年、2000/2001 年、2007/2008 年、2011/12、2013/14 年)を解析し、参照時期における森林減少による排出量平均と森林炭素蓄積量

の増加による吸収量の平均を算出する。なお、森林は、Holdridge の Life Zone(23 区

分) に基づいたタイプ(湿潤雨林、湿潤林、乾燥林、マングローブ、パーム林)、及

び 1987 年時点の森林(一次林)とその後成立した二次林に区分され、非森林は、農地

(一年生・多年生作物)、牧草地、居住地、湿地、その他(高山植生、裸地)に区分

される。 排出係数は、上記森林タイプごとの成長モデルによる炭素蓄積量に基づき算定される。

地上・地下バイオマス以外にも、リター、枯死木、伐採木材産品、および森林火災に

よる CH4 と N2O が含まれるが、土壌炭素は含まれない。 なお、コスタリカの REDD+の正式な開始時期は 2010 年となっているが、1996 年の森

林法の制定以降、PSA 制度が開始され、森林保護が強化されたこともあり、1997 年~ 2010 年の期間の森林減少に対する努力と結果を考慮し、UNFCCC に提出した森林排

22 大澤正喜氏(JICA 専門家)聞き取り調査(2016 年 10 月)

PES の社会インパク

ト評価手法の開発 JICA(FONAFIFO、SINACへの支援)

PES の影響のモニタリング手法及

びデータ解析システム(社会・環境

的便益、ステークホルダーの参加、

先住民族の権利、生物多様性の保全

等)

JICA によって

策 定 さ れ 、

CENIGA が 構

築しているデ

ータベースに

組み込むこと

が検討されて

いる22

198

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出参照レベルは 2 つの参照時期に分かれる:①1997-2009 年を評価するための参照レ

ベルは 1986-1996 年;②2010-2025 年を評価するための参照レベルは 1997-2009 年。 提案されている参照レベルを取りまとめる(表 1-1-6-11)。1996~2009 年、2010~2025 年の 2 期間を比較すると年平均 CO2 排出量は 14,293,949tCO2/年から

4,025,136tCO2/年に 72%減少している。つまり森林の減少は大幅に軽減していること

になる[3]。 表 1-1-6-11 UNFCCC に提出された FREL/FRL(単位:tCO2/年) 1996~2009 年の参照レベル

(参照期間 1986~1996 年): 2010~2025 年の参照レ

ベル(参照期間 1997~2009 年):

一次林の減少による排出 14,375,724 6,243,928

二次林の減少による排出 2,070,829 2,006,889

新規植林による森林炭素蓄

積量の増加 -2,152,603 -4,225,681

炭素蓄積量の年間変化量 14,293,949 4,025,136

注) •一次林(primary forest)とは 1986 年以前から成立している森林、二次林

(secondary forest)とは 1985 以前には非森林地であった新しい森林を示す 出典:[4] 2) 準国レベル 準国レベル及びプロジェクトレベルの FREL/FRL 策定の予定はない 3) 国及び準国レベルの参照(排出)レベルとの関係や調整方法 FCPF ER プログラムの FREL/FRL も策定されるが、UNFCCC に提出された国レベル

の FREL/FRL とは、対象地域、対象活動、炭素プール、アプローチは同じであり、参

照期間だけが異なる(表 1-1-6-12)。 表 1-1-6-12 UNFCCC と FCPF ER プログラムに提出された FREL/FRL

出典:[4,7] *本調査は、JICA事業「REDD+推進のための外部資金を活用した協力可能性にかかる情報

収集・確認調査」におけるコスタリカ1次調査(2016年10月13日~29日)を通じて収集し

た情報を基に作成した。

参照時期 対象時期 FREL/FRL (tCO2/年)

UNFCCC に提

出された FREL/FRL

1986~1996 年 1996~2009 年 14,293,949 1997~2009 年 2010~2025 4,025,136

FCPF ER プロ

グラムの FREL/FRL

1998 年~2011 年 2012 年~2025年

3,385,759

199

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Naciones Unidas sobre Cambio Climático (西語); 2009. 17. コスタリカ環境・エネルギー・通信省 Plan Nacional de Desarrollo Forestal 2011-2020(西語); 2011. 18. 森林総合研究所 REDD研究開発センター REDD プラスへの取組動向 Country Report 平成 26 年度 コ

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聞き取り調査先リスト

• Alvaro Aguilar Díaz氏 (CENIGA) • Gilebrt Canet氏 (環境・エネルギー省)

200

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• Lucio Pedroni氏 (Carbon Decision) • María Elena Herrera氏, Ricardo Ulate氏, Natalia Diaz Zamora氏 (REDD+事務局/FONAFIFO) • Mauricio Chacon Navarro氏 (農業・畜産省)Michael Schlönvoigt氏、Patricia Ruiz氏 (GIZ Costa Rica) • Muhammad Ibrahim氏、Bastiaan Louman Lider氏、Elena M. Florian氏、Ronnie de Camino氏

(CATIE) • Oscal Sancehz氏、Carmen Roldán Chacón氏、Gilmar Navarrete Chacón氏(FONAFIFO) • Vera Violeta Montero Castro氏, Mariana Jiménez氏 (SINAC ) • 大澤正喜氏(JICA専門家)

201

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1-1-7 チリ

1-1-7-0 森林の概況

1) 国の森林資源

チリは、北から南までの総延長が約 4,630km に及び、西部の太平洋との海岸線、東部

のアンデス山脈、北部のアタカマ砂漠によって囲まれる。その地理的特徴から、北部

の砂漠・乾燥地帯、中部の温帯森林地帯、南部のパタゴニア地帯のほか、太平洋に面

した沿岸部海洋性気候と東部のアンデス山脈地域等、多様な植生と自然環境を有する。

国土の 23%が森林(天然林及び人工林)に覆われ、27%が牧草地または灌木地となっ

ている(表 1-1-7-1)。主な森林資源が温帯林であること、さらには、雪原・氷河地域

や砂漠気候帯の無植生地域が分布すること等、熱帯の REDD+実施国にはない自然的特

徴を有している。 表 1-1-7-1:チリの土地利用分布

土地利用タイプ 面積(ha) 割合(%) 都市‐産業地域 356.987 0.5 農業用地 3.326.387 4.4 牧草・灌木地 20.511.976 27.1 天然林 14.316.822 18.9 林業プランテーション 3.046.904 4.0 混成林 157.143 0.2 湿地 3.592.803 4.7 無植生地域 24.561.440 32.5 雪原・氷河地域 4.158.575 5.5 湖沼 1.346.207 1.8 不明 283.198 0.4 計 75.658.442 100

出典:[1] チリの行政区分は、南北にかけて計 15 の省から構成されるが、その内、北部の砂漠・

乾燥地帯の位置する 4 省を除く 11 省に森林は分布する(図 1-1-7-1)。 チリでは林業セクターが中南米の中でも特に盛んであり、1986 年~2005 年の間には

GDP の約 7.7%を占めた[2]。林業プランテーションは約 300 万 ha(森林の約 17%)を

占め、主に中部のマウレ州、ビオビオ州、アラウカニア州に集中(約 80%)する[1]。林業用プランテーション樹種の約 6 割がラジエーター松、3 割がユーカリ種から構成さ

れ[3]、これら樹種による大規模プランテーションは、生物多様性や山火事の課題の他、

いくつかの地域では先住民族と土地権利に関して課題を有する。天然林は森林面積の

約 82%を占め、主に中・南部地域に分布する[4]。天然林の分類については、植生タイ

プに基づき、Supreme Decree No.259(1980 年)によって 12 区分が定められる(表 1-1-7-2)。 主要な森林資源が集中すること、利用可能なデータが整備されていること、また森林

資源へのプレッシャーから、マウレ州、ビオビオ州、アラウカニア州、ロス・リオス

202

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州、ロス・ラゴス州の 5 州 1の天然林が政府による REDD+実施の対象地として選定さ

れた(図 1-1-7-2)。これら 5 州の総面積の 35%が天然林である[5]。上記 REDD+対象

5 州では、12 の森林区分の内 11 の森林タイプが存在、全体の 41%の天然林が分布する

(表 1-1-7-2)。

図 1-1-7-1:チリの森林植生区分と分布(出典:[1])

図 1-1-7-2:REDD+対象 5 州(出典:[4]) 1 これら 5 州は UNFCCC に提出された森林参照排出レベル/森林参照レベル(REL/RL)、及び FCPF 炭素基

金の排出削減プログラム(以下 ER プログラム)の対象地域である。

203

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表 1-1-7-2:チリの森林タイプと分布

森林タイプ REDD+ 対象 5 州 (ha)

国土全体 (ha) REDD+対象 5 州

/国土全体(%) Sclerophyllous 71,521 1,354,193 5% Evergreen 1,551,618 3,502,349 44% Roble (Nothofagus obliqua)-Hualo (Nothofagus glauca)

175,697 220,456 80%

Cordilleran Cypress (Austrocedrus)

59,848 62,874 95%

Lenga Beech (Nothofagus pumilio)

906,740 3,621,207 25%

Robre (Nothofagus alpine)-Coihue (Nothofagus dombeyi)

1,602,588 1,602,588 100%

Araucaria 253,339 253,399 100% Coihue (Nothofagus dombeyi) Rauli (Nothofagus alpina)-Tepa (Laureliopsis philippiana)

841,703 841,703 100%

Alerce (Fitzroya cupressoides) 216,130 216,130 100% Coihue de Magallanes (Nothofagus betuloides)

130,839 1,9999,354 7%

Guaitecas Cypress (Pilgerodendron)

43,170 579,966 7%

Palma Chilena 0 15,085 0% 区分なし 47,151 0% 計 5,853,388 14,269,672 41%

参照:[4,5] 2) 森林被覆と質の歴史的変化 16 世紀末に始まったスペインによる植民地化とともに、木材資源(中部)、および鉱

山資源(北・中部)の開発が始まり、農業と牧畜活動も開始された。植民地化そして

1818年の国家の成立と開発によって 1550年には 1.84千万 haあったと推定される天然

林は、1999 年にはその 56%に減少した[6]。特に南部パタゴニアのアイセン州では、

1937 年の開拓を促進するアイセン植民地化法によって、開拓者は広大な土地所有権が

ただで入手出来ることになり、当時手つかずであった原生林が火入れと大規模な放牧

によって減少した[7]。 チリ経済の基盤を支えてきた鉱山開発は、20 世紀中旬まで森林減少の主要な原因に挙

げられる[8]。また、1950 年以降の産業化時代には、早生樹を使った産業造林が盛んに

なり、天然林の伐採が進んだ。1973 年~1990 年にかけての軍事独裁政権下では、森林

を含む土地と資源の民営化進み[9]、さらに 1974 年に制定されたチリの林業セクターの

基礎となる法的枠組を示した Decree Law 701 によって、天然林跡地の産業用植林地造

成コストに対して補助金が支給されることになり、天然林から松やユーカリ樹種を使

った植林地への転換がより活発化した[10]。また、Decree Law 701 は林業セクターに

対し税制優遇措置を導入し[11]、こうした政府の方針もあり、林業産業全体は著しい成

長を示した:セルロース分野(年間 10.3%の成長)、製紙分野(5%)、カートン

(11%)、製板(9%)[2]。 チリの林業セクターは、2 つのグループ: Angelini グループ(Celulosa Arauco と Constitución のオーナー)と Matte グループ(CMPC のオーナー)によって大きなシェ

204

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アが占められる。Angelini グループは 500,000ha の植林地を含め 800,000ha の森林を

所有し[6]、Matte グループは植林地 502,000 ha を含め、718,000ha に及ぶ森林と土地

を所有する 2。これら 2 グループは国内にある 8 つのセルロース工場の内 6 つを所有す

るほか[6]、林業セクター生産の約 8 割を占めるという報告もある[12,13] 。 林業セクターは安定しており、1990 年~2010 年にかけて林業プランテーションは 170万 ha から 240 万 ha に増加した[11]。また、1990 年代以降、森林資源の持続的管理が

進み、天然林の森林減少率は0.1%から0.2%に間に収まり、結果、全体の森林被覆率は

増加傾向を示した[14]。一方で、天然林については、森林火災や薪生産のために劣化の

問題が挙げられる(1-1-7-0 3)参照)。チリの南部では冬季に特に薪の使用が増える

が、その多くが非持続的に管理された森林から、または違法に天然林から採取された

といわれる[14]。天然林の保全と持続的な利用を進めるために、15 年間にわたる議論

の末、天然林の回復と持続的林業の促進に関する法令(Law No 20.283)(以下天然林

法)が 2007 年に国会で承認され、2008 年に発行された。 3) 直接・間接要因 FCPF 炭素基金排出削減プログラム(Emission Reduction Programme:ER-P)準備の

ために REDD+対象地である 5 省において行われた森林減少、劣化の直接的原因の分析

結果を表 1-1-7-3 に取りまとめる。 表 1-1-7-3:REDD+対象 5 州における森林減少・劣化の直接的原因

直接的原因 森林減少・劣化、森林炭素

蓄積量非増加 重要度 不確実性

森林火災 森林減少・劣化 とても高い 低い

非持続的利用(木材、薪炭、

非木材林産物) 森林減少・劣化、森林炭素 とても高い とても高い

家畜飼育 森林減少・劣化 高い とても高い

林業プランテーション 森林減少 高い 低い

農業・牧畜用地の拡大 森林減少 中 低い

都市の拡大 森林減少 中 低い

気候変動・砂漠化・干ばつ 森林劣化、森林炭素 中 とても高い

参照:[5] チリでは、森林火災による森林劣化の被害が大きく、2003 年~2015 年の間に、毎年約

6000件の森林火災が報告され、平均して 60,000haの森林が毎年被害を受けると言われ

る(その内、70%が REDD+の対象とする省で発生)[5]。国家森林コーポレーション

(National Forest Corporation / Corporación Nacional Forestal:CONAF スペイン語略

称)の統計(2015 年)によると、森林火災の 57%以上が事故・過失によって発生、

26%が故意、自然発生(例:落雷)は 0.2%だと推定される[15]。なお、2017 年 1 月~2月(乾季)に中部‐南部の 7 州にかけて歴史的に大規模な森林火災が発生し、CONAF 2 CMPC: http://www.cmpccelulosa.cl/CMPCCELULOSA/interior.aspx?cid=500&leng=en

205

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の報告によれば、年間平均の約 10 倍の面積に相当する 587,000ha が被害を受けたと推

定される 3。 また、南部地方においては、冬季の薪の需要が非常に高く、持続的でない薪の生産と

消費は森林劣化の原因の一つに挙げられる[1]。国家統計情報によると、2001 年には、

薪は国内で約 2 千万 m3 消費され、国内で 3 番目のシェアを占めるエネルギー源として

位置づけられる[16]。薪の半分が天然林、残り半分が植林地に由来するが[5]、天然林由

来のほとんどが違法に伐採されたか材からか、非持続的生産されたと推定される[14]。国内には、持続的に生産され、乾燥度合い等の品質管理された薪を証明する国家薪認

証制度(National Firewood Cerfitication System: SNLC:スペイン語略称)が 2003 年に

制度化されたが、その価格と地方の貧困問題、そして薪市場の管理課題(薪は誰でも

生産・販売することができ、品質を管理する法令はない)から、証明された薪の普及

率は高くない。 その他の主な森林減少・劣化の原因には、不適切な家畜飼育や産業用の単一樹種によ

る植林が天然林の減少や劣化の原因として挙げられる[1,4,5]。これらの直接的原因に関

する間接的原因分析の結果を表 1-1-7-4 に取りまとめる。 表 1-1-7-4:REDD+対象 5 州における森林減少・劣化の間接的要因

間接的原因 影響 重要度 不確実性 政策的課題 森林減少・劣化・森林炭

素 とても高い 中

知識の不足、自然資源の文化

的価値が経済的価値に反映さ

れていない

森林減少・劣化・森林炭

素 とても高い とても高い

開発政策の課題 森林減少・劣化・森林炭

素 高い 中

薪炭材市場問題(品質管理、

法遵守の欠如) 森林劣化 高い 低い

地方の貧困と経済的機会の欠

如 森林減少・劣化・森林炭

素 高い 中

法執行の不備 森林減少・劣化・森林炭

素 中 中

森林セクターの低い生産性と

機会コスト 森林減少・劣化・森林炭

素 中 低い

天然林を利用した経済モデル

の欠如 森林減少・劣化 中 中

細分化した土地所有権に関連

した紛争と問題 森林減少・森林炭素 中 中

参照:[5] 3 この大規模な森林火災による REDD+の影響(ER プログラムによる排出削減量)は、2017 年 2 月の時点

で世界銀行 FCPF と協議中である。なお、火災による森林被害の 60~70%が私有地の林業プランテーショ

ンで発生し他と推定されるが、ER プログラムは天然林を対象としていることから、この林業プランテー

ションの延焼による GHG 排出ガス排出は計上されないことも考えられる_聞き取り調査:Osvaldo Quintanilla 氏、CONAF(2017 年 2 月)

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1-1-7-1 気候変動対策及び REDD+に関する所掌及び実施体制

1) 気候変動

気候変動政策は、2010 年に設立された環境省(Ministry of Environment / Ministerio de Medioambiente)が管轄する。気候変動は、環境省が取り扱う 5 つの課題の一つとして

位置づけられ、同年に気候変動局(The Office of Climate Change / Departamento de Cambio Climático:DCC スペイン語略称)が設立された。DCC は、国連気候変動枠組

条約(United Nations Framework Convention on Climate Change: UNFCCC)及び国連

気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)

のフォーカルポイントであり、クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism:CDM)の指定国家担当機関として機能する。DCC は気候変動行政を担当

し、国家戦略や国家 GHG インベントリーの策定、セクターとの調整を行う。 気候変動問題や自然資源管理に関するする高次な意思決定レベルでの省庁間調整は、

持続性に関する省庁評議会(Consejo de Ministros para la Sustentabilidad:CMS スペ

イン語略称)を通じて図られる[17]。CMS は大統領に対して政策提案を行う機能も果

たし、約束草案(Intended Nationally Determined Contribution:INDC)策定のための

調整機関となった。環境省が事務局を務め、以下の省庁が参加する: 農務省(Ministery of Agriculture / Ministros de Agricultura) 保健省(Ministry of Health / Ministeio de Salud) 経済・開発・観光省(Ministry of Economy, Development and Tourism / Ministerio

de Economía, Fomento y Reconstrucción) エネルギー省(Ministry of Energy / Ministerio de Energía) 公共事業省(Ministry of Public Works / Ministeio de Obras Públicas) 住宅開発省(Ministry of Housing and Urban Planning / Ministerio de Vivienda y

Urbanismo) 運輸通信省(Ministry of Transport and Communications / Ministerio de Transportes

y Telecomunicaciones) 鉱業・計画省( Ministry of Mining and Planning / Minisyterio de Minería y

Planificación) 2) REDD+ チリの REDD+の取り組みは、2016 年 11 月に策定された国家気候変動・植生資源戦略 (National Strategy of Climate Change and Vegetation Resources / Estrategia nacional de Cambio Climatico y Recursos Venetales:ENCCRV スペイン語略称)の一部として

位置づけられ、農務省の下、森林行政全般および国の保護区となる国家野生保全地域

システム(SNASPE スペイン語略称)を担当する CONAF4によって準備が進められる。

CONAF は UNFCCC の REDD+フォーカルポイントとして機能する。CONAF の中では、

気候変動・環境サービス局 (Climata Change and Environmental Services Unit / Unidad de Cambio Climatico y Servicisos Mefdioambientales: UCCSA スペイン語略称)が ENCCRV の責任機関として、REDD+も担当する。 4 CONAF は 1970 年に再造林コーポレーション(Reforestation Corporation / Corporación de Reforestación)として設立され、1972 年に CONAF と名称を変えた。農務省の下部に位置づけられ、CONAF の長官は大

統領により任命されるが、その法的位置づけは、公的機関ではなく、政府予算を執行する民間機関となっ

ている。

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ENCCRV の実施のための体制は現在構築中である。高次政策レベル、戦略策定レベル、

実施レベルから構成され、非森林セクター(主に農業・家畜分野)と森林ステークホ

ルダーとの調整が図られる(図 1-1-7-3)

図 1-1-7-3:ENCCRV 実施に係る組織的体制(予定) 参照:[1] ENCCRV の最高意思決定の場は、気候変動問題や自然資源管理に関するする高次な意

思決定メカニズムである CMS であり、基本的にこのレベルで省庁間の調整が図られる。

また CONAF の最高意思決定メカニズムである CONAF 評議会(Consejo Directivo de CONAF)が戦略決定や専門的課題に関する意思決定を行う。農務省大臣が理事長を務

め、CONAF 長官、農業・畜産局(SAG)5長官、農業開発局(INDAP)6長官のほか、

環境省、生産促進コーポレーション(CORFO) 7、民間セクター(農林業分野)、

CONAF 雇用者代表が含まれる。国家気候変動専門家技術グループ(National Technical Group of Experts on Climate Change / Grupo Técnico Nacional de Expertos en Cambio Climático:GTNE スペイン語略称)は、政府機関、民間コンサルタント、NGO、先住

民族コミュニティ、大学機関による専門家グループで、ENCCRV 実施に際し専門的助

言を提供するほか、参加と透明性を確保するためのグループとして設置が予定される

[1]。 ENCCRV 及び REDD+の準備、実施、運営は CONAF の気候変動・環境サービス局

(UCCSA)が中心となる。表 1-1-7-5 に関連する部局を取りまとめる。

5 農業・畜産局(National Service of Agriculture and Livestock / Nacional del Servicio Agrícola Ganadero: SAG):農務省の下部組織で農業及び畜産生産の促進・管理を行う。 6 農業開発局(Institute for Agriculrural Development / Instituto de Desarrollo Agropecuario: INDAP):農務省の下部組織で、小規模・家族経営農家に対して支援を行う。 7 生産促進コーポレーション(Production Development Corporation / Corporación de Fomento de la Producción de Chile:CORFO): 経済・開発・観光省の下部組織で、国内の生産・投資活動を促進する

ため民間セクターを支援する。

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