2009年ベスト本『ザッポスの奇跡』を読んで学んだこと
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第1回mixbeat showcaseで話した資料TRANSCRIPT
2010/04/11KOUNO Takeshi.
2009年ベスト本
『ザッポスの奇跡』を読んで学んだこと2009年ベスト本
『ザッポスの奇跡』を読んで学んだこと
mixbeat showcase /act.01
• 河野武 / KOUNO Takeshi– 1974年7月3⽇⽣まれ。⽴命館大学経済学部卒。
コミュニケーション・デザイナー。企画屋。– 1997年、ニフティ⼊社。2001年にニフティ退職後、
フリーランスとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワン専務取締役兼COOを務める。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社マーケティング担当執⾏役員を務める。現在は、ブックオフオンライン株式会社取締役のほか、数社の顧問・アドバイザーを務める。
– 近著に「そんなんじゃクチコミしないよ。」がある。– 個人でもcrossreview、clipmailなどを運営。– mixbeat創設者、初代塾⻑。
自己紹介
今日の内容
『ザッポスの奇跡』から、ザッポスという会社の興味深い「事実」や「発言」を抜き出して再構成し、最後に自分なりの「考察」を加える
まずは本の抜粋
企業文化が原動力
ザッポスは何の会社か
『ザッポスは、たまたま、○○○を販売しているにすぎない、サービス・カンパニーです。靴、ハンドバッグ、衣類、メガネ、時計、アクセサリー、(そして、いずれは世界中のありとあらゆるものを)』(サイト上の案内)
にとっての顧客サービス
ザッポスにとっての顧客サービス
「ザッポスでは、顧客サービスを『コスト』として捉えていません」
「コンタクトセンターの電話対応は、むしろ、またとないブランディング機会だと考えています。五分、あるいは十分間というまとまった時間を、顧客が、何にも邪魔されずに私たちの言うことに神経を集中して耳を傾けてくれる、そんなチャンスが他にありますか?」
「顧客が、ザッポスと話すために、向こうから進んで電話をかけてきてくれる。そんな貴重な時間を、ザッポスでは『カスタマー・フォー・ライフ』、つまり『一生涯お付き合いできる関係」をクリエイトするために利用しているのです。それは、コストの無駄遣いではなく、『意義ある投資』です」
(以上すべてCEO、トニー=シェイ)
ザッポスにとっての顧客サービス
• 送料無料、返品も自由– 「送料も返品も無料。しかも、返品は何回でもOK」
はザッポスが最初• ザッポスは最初から型破りだった
• 翌⽇配送– リピート顧客に対しては無料で翌⽇配達する(通常
は5〜7⽇間)「サプライズ・アップグレード」• 全顧客を対象にしないところに利益について考えている
• 扱う商品は90万アイテム– 当初はドロップシッピングだったが、いまは全在庫
• 24時間365⽇営業のコンタクトセンター– メール、電話、ライブチャット、Twitter ……
ザッポスの電話注⽂の⽐率は5%以下。でも24時間365⽇、電話を受け付けている。
ザッポスにとっての顧客サービス
ザッポスにとっての顧客サービス
「これらすべては、勿論、かなりお金がかかることです。でも、顧客サービスをないがしろにする余裕は、僕たちにはないのです」(CFO、アルフレッド=リン)
のコンタクトセンター
ザッポスのコンタクトセンター
「ザッポスでは、『カスタマー・サービス』は部門名ではありません。むしろ、会社全体の基盤が、『カスタマー・サービス』なのです」(CEO、トニー=シェイ)
ザッポスのコンタクトセンター
• マニュアルがないコンタクトセンター– 400名規模ですべて社員
• このへんは雇用に対する価値観のちがいもあると思う(解雇が簡単とか)
– サービス・ポリシーを超えて対応してOK• 返品、返⾦、特別配達、クーポンの発⾏などス
タッフの権限で何をしてもいい• ザッポスに在庫がない場合、競合サイトを検索し
て、案内する– 電話の処理時間を計測しない– 売上ノルマもない– トークスクリプトもない
ザッポスのコンタクトセンター
「お客さんは『何をしてくれたか』は覚えていないかもしれない。でも、『どんな気持ちにさせてくれたか』は決して忘れない」(CEO、トニー=シェイ)
ザッポスのコンタクトセンター
「顧客をハッピーにするために、『自分が』必要だと判断するあらゆることを、『自分の』裁量で実行する権限が私たちには与えられています。それは世の中を良くする、意義ある仕事です」(CLT社員)
ザッポスのコンタクトセンター
「ザッポスのCLT社員は、もし仮に顧客が求めている靴が、ザッポスに無かった場合に、必ず他社のサイトを最低三個はチェックして、その靴を入手できるところがないかどうか調べるように、教育されています」「顧客は他社から買ってしまうかもしれませんが、それでいいのです。顧客満足が得られさえすれば。顧客はその経験から、『次はまたザッポスに来よう』と思うでしょうから」(いずれもCEO、トニー=シェイ)
ザッポスのコンタクトセンター
「Eメールだって、ザッポスのは特別だ。」「普通の会社のEメールは、用件を述べるだけで、誰が書いたって同じだ。でもザッポスは違う。ザッポスでは、社員の一人ひとりが、『自分色』を表現することを奨励している。知らせなきゃいけない用件は勿論書くけれど、そのほかに、書く人独自の挨拶を入れてみたり、顧客と以前に電話やEメールで話した内容に触れるように心がける。一人ひとりの『味』を出すことが大切なんだ」(CLT社員)
ザッポスのコンタクトセンター
「普通のコンタクトセンターでは、オーダー処理でも返品処理でも、とにかく一刻も早く仕事を終わらせて、次のコールに行かなくちゃと思います。だけど、ザッポスでは、顧客についてできるだけ深く知ろうとします。もし電話越しに犬の吠える声が聞こえたら、『どんな犬ですか?』と聞きます。そうすることが奨励されているんです。『パーソナル(ひとりの人間として)、かつエモーショナルな(心に触れる)つながりを築くこと』が一番のゴールだと、トニーはいつも言っています」(CLT社員)
のコア・バリュー
ザッポスのコア・バリュー
「まず、サービスを中核とした企業文化を築いて、育むこと。そうすれば、成果は後からついてきます」(CEO、トニー=シェイ)
ザッポスのコア・バリュー
「すべては、コア・バリューから始まる」(CFO、アルフレッド=リン)
ザッポスのコア・バリュー
http://about.zappos.com/our-unique-culture/zappos-core-values
ザッポスのコア・バリュー
1. サービスを通して、WOW(驚嘆)を届けよ。顧客を、同僚を、取引先を、パートナーを、そして、投資家を驚嘆させる会社でありたい。
2. 変化を受け入れ、その原動力となれ。競合の先を行くためには、常に変化している会社でなくてはならない。
3. 楽しさと、ちょっと変わったこと、をクリエイトせよ。個性を大事に、楽しく、革新的な会社でありたい。「はみ出す」ことを恐れるな!
4. 間違いを恐れず、創造的で、オープン・マインドであれ。未開拓の可能性、解決策を模索する会社でありたい。
5. 成長と学びを追求せよ。社員一人ひとりが、常に向上する姿勢が、会社の成長につながる。
6. コミュニケーションを通して、オープンで正直な人間関係を構築せよ。お互いに心から信頼できる人間関係を築くためには、コミュニケーションが鍵。
7. チーム・家族精神を育てよ。「同僚」を超えるつながりを築く。そうすれば、どんな問題も課題も、力をあわせて乗り越えることができる。
8. 限りあるところからより大きな成果を生み出せ。現状に甘んじることなく、常に「より良い結果」を目指す会社でありたい。
9. 情熱と強い意思を持て。常に、「できる」という姿勢で万事に取り組む会社でありたい。
10.謙虚であれ。すべての人を尊重する会社でありたい。自分がして欲しいと思う通りに、他者にも接すること。
ザッポスのコア・バリュー
• コア・バリューの作成プロセス– ⼀年以上かけて成⽂化– いまあるカルチャーの実像を知ること
• 『ザッポスらしい人』や『ザッポス的』な⾏動や特性について話し合う
• 約半年間、共通項を⾒つける作業– 社員全員を巻き込む
• 経営陣とマネジャーで考えた37項目に対してフィードバックを募り、10個に絞り込む
の採用
ザッポスの採用
「まず、適切な人材をバスに乗せる」(ジェームズ=コリンズ『ビジョナリーカンパニー2』)
ザッポスの採用
• 適正な人物のフィルタリング– 会社説明会をリトマス試験紙に
• 強烈な⽂化を打ち出すことで、求職者に自問自答してもらう
• 最初に社内ツアーでさまざまな歓迎をする– 採用申込書
• 迷路やクロスワード・パズルがある• 氏名や住所など⼀般的な項目に紛れて、ザッポス
のコア・バリューに関連した質問がいくつかちりばめられている
– 「ふたりの人をランチに招待できるとしたら、誰を招くでしょうか。そして、その理由は?(現在、過去、実在、架空を問わない)」
ザッポスの採用
• スキル・フィットとカルチャー・フィット– ザッポスの採用試験にはスキル・フィット・
インタビューとカルチャー・フィット・インタビューの二種類の面談がある• スキル・フィット・インタビューは人材を募集し
ている各機能部門(IT部門やMD部門、経理部門など)の雇用担当者によって⾏なわれ「技能」を評価する
• カルチャー・フィット・インタビューは人事部によって⾏なわれ「⽂化適性」を評価する
• スキル・フィットにいくら適合していても、カルチャー・フィットに適合しなければ、採用されない(カルチャー・ファースト)
の研修
ザッポスの研修
• トレーニングの内容– ザッポス社員が⼊社直後に経験するトレーニ
ングは4週間で、コアバリューについて学ぶ座学に2週間、コールセンターでの研修(電話対応)が2週間
– ケンタッキーの倉庫で⾏われる1週間の研修は、⼊社1年目のある時点で、社員がある程度ザッポスに定着したことが確認された時点で⾏われる
ザッポスの研修
• 研修は月曜から⾦曜まで、7時から16時まで⾏なわれる– 研修の初⽇は新⼊社員とトレーナー、採用
チーム、配属先部署のマネジャー、会社役員が⼀堂に会して、親交を深めるところから始まる• 期待していることを態度で⽰す
• 欠席、遅刻は許されない– よほどの事情がない限り、⼀回でも欠席や遅
刻があるとその場で失格となる
ザッポスの研修
• 研修の内容– 座学ではコア・バリューについてのプレゼン
テーションやディスカッションが⾏なわれる• ⼀般的な座学(講義を聴き、ノートを取る)では
ない• 座学の講師は社員から自由にボランティアで募る• 教える社員の側にもいい経験になる(教えること
で学べることがある)– カスタマー対応の練習も⾏なう
• コールセンターでの研修では実際にトレーナーがそばについて実際に顧客対応をする
ザッポスの研修
「トレーニングの目的は、社員の一人ひとりに『自分がお客さんだったら、どうして欲しいか』を考えさせること。そして『自分の判断に基づき、責任を持って行動する』よう仕向けること」「特に『こうしたらいい』という指導はしません。むしろ、『どうしたらベストだと思うか』を問うようにしています。みんな最初は、『三〇ドルのクーポンをあげたら��』とか恐る恐るです。でも、『じゃあ、そ
うしたら!』と励ますことによって、いずれは各自が自信をもって行動できるようになる」(CLT社員)
ザッポスの研修
• インキュベーション期間– CLT部門の社員にはさらに3週間のインキュ
ベーション(孵化)期間がある– 研修終了後から新人社員には自由裁量権が与
えられている• ただし完全なフリーではなく、インキュベーショ
ンの期間中はマンツーマンのモニタリングを受ける
• メンターがモニタリングして、どこを改善できるか(どうしたら、よりザッポス風のサービスを提供し、お客さまにWOWを与えることができるのか)というコーチングをする
ザッポスの研修
• 採用辞退ボーナス– 第⼀週を終えた時点で、採用を辞退すると
2000ドルもらえる– 面接をくぐり抜けてしまった不適格な社員を
排除するトラブルなく仕組み• 「お⾦のため」に働く人間はザッポスには不適格
– ボーナスを受け取って辞める人間は1%程度• 言い換えれば採用時点で99%の精度とも言える
のソーシャルメディアマーケティング
ザッポスのソーシャルメディアマーケティング
http://about.zappos.com/our-unique-culture/zappos-core-values
ザッポスのソーシャルメディアマーケティング
http://about.zappos.com/our-unique-culture/zappos-core-values
ザッポスのソーシャルメディアマーケティング
• 顧客とのパーソナル、かつエモーショナルな関係を築くためのツール
• 500人もの社員がTwitterをやっている– 強制ではなく社員の自主性による任意の活動– ガイドラインはない– 業務時間中の利用を奨励している
• 12種類のブログをやっている– スタッフブログは月100本以上の記事が更新
• 社員のインタビューや社内イベントの様子を伝える記事も
– YouTubeも積極的に利用
ザッポスのソーシャルメディアマーケティング
• 「メディア・プランニング」から「ピープル・プランニング」へ– ザッポスでは顧客であり、社員である「人」
がメディア• 「人にかけるリソースのROIは測定不可能だ、と指摘する人がいます。ですが、マスメディア広告のROIを測定できるかというと、それは疑問です。メディア・プランニングに多大な投資をする会社もあれば、ザッポスのように、ピープル・プランニングに投資する会社もある。考え方の違いですね」(ユーザーエクスペリエンス担当ディレクター、ブライアン=カルマ)
ここから考察
なぜザッポスは社員を自由に振る舞わせることができるのか?
経営陣の覚悟と正しい現状認識
• 社会の変化– モノが満たされる
• 「ほしいものがほしいわ」– 価格競争の限界
• 中国製品、PB商品• 「何を買うか」から「どこで買うか」「誰から買
うか」へ– 最高、最安、最愛
– ネットの普及• 透明性の高い世の中に• 隠し事はできない、絶対にバレる
– どうせ社員やアルバイトから漏れる
24時間365日ずっと
ザッポスの『中の人』という自覚があればいい
でも、どうやって?
かなりしっかり設計されている
• 慎重な採用と迅速な解雇– 企業⽂化にあわない人間は即解雇
• コア・バリューの徹底– すべてが⼀貫している– みんなで作ったので初動がうまくいった
• 返報性の原理– 公式サイトで社員のTwitterアカウントを公開
• 信頼という名のプレッシャー– 他店の在庫を調べるのも返報性の原理– 家族意識
• 家族は裏切れない
かなりしっかり設計されている
• 慎重な採用と迅速な解雇– 企業⽂化にあわない人間は即解雇
• コア・バリューの徹底– すべてが⼀貫している– みんなで作ったので初動がうまくいった
• 返報性の原理– 公式サイトで社員のTwitterアカウントを公開
• 信頼という名のプレッシャー– 他店の在庫を調べるのも返報性の原理– 家族意識
• 家族は裏切れない 意外とここが大きいんじゃないかな
社内の多次元の繋がり
社内の多次元の繋がり
同期
社内の多次元の繋がり
メンター
社内の多次元の繋がり
チーム
社内の多次元の繋がり
アンバサダー
社内の多次元の繋がり
裏切れない人がたくさん
助けられた人、助けた人、遊んだ人、同じ経験をした人、いい意味での相互監視ネットワークが社内に構築されている
この本のテーマをあえてまとめるなら、こんなところ
カルチャーを創造できればルールをゼロにできる
どっちのやり方がリスクマネジメント的に正しいんだろう?
ルールを徹底して会社を統制すること
カルチャーを創り自由にやらせること
thank you!
• ご清聴ありがとうございました• 感想や相談はこちらまでお願いします
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Special thanks to�
ISHIZUKA Shinobu【超オススメ本】ザッポスの奇跡 | smashmedia
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