2012-12...
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京都大学 地球環境学舎 生徒会 「概念屋」
課題・レポートなどの参考としてご利用ください。ただしコピペはだめです。引用・参照する場合は下記著者情報を記載してください。
著者:山本泰弘(京都大学大学院 地球環境学舎 修士2年)[email protected]
【新概念:スマートアイランド現象】
スマートシティ化が特定区域でのみ進展し、そこ以外の領域への影響が限定されること。
スマートシティ化には巨額の投資が必要であり、その主体は必然的に大企業に限られる。そして投資対象は
それに値する好条件地区(大都市近郊の未開発地)に限られる。それらに該当する区域ではモデル的スマー
トシティが実現し高所得者が居住することになるが、状況によってはスマー
トシティ化が一定領域に限定され事実上のゲーテッドコミュニティが現れる
かもしれない。
都市のスマート化の波及範囲を特定区域・階層から広げ、より広範な地
域・人々がその恩恵を受けられるようにすること、いわば「スマートシェア」が
課題である。
<解説>
「スマートシティ」とは、先端的な機器やシステムを導入して、電力や熱その他のエネルギーを極めて効率的
に供給・消費したり、極めてムダの少ない交通や物流を可能にしたりする次世代型都市のことです。日本を代
表する大企業の本拠地である、福岡県北九州市、愛知県豊田市、神奈川県横浜市をはじめとした地域でつ
くられ始めています。
これらの地域なら大企業が力を入れてスマートシティづくりを進めてくれますが、普通の地域では、今のところ
そのような大胆な投資は困難です。環境面でも経済面でも、本来は日本中のそれぞれの地域がスマート化
するのが望ましいですが、もしかするとスマートシティがわずかな点のようにのみ存在することになるかもしれま
せん。これを海に浮かぶ孤島にたとえて、「スマートアイランド現象」と表しました。
さらに、大企業の投資によってできたスマートシティのモデルが、多くの地域や人々のくらしに広がっていくこと
がこれからの課題と考え、「スマートシェア」という言葉もつくってみました。
――――― 参考文献
・日経 BP社『Smart City Week 2012 会場速報』 http://expo.nikkeibp.co.jp/scw/2012/report/
・今関 雅巳「電子行政:キーワード - スマートシティ とは」、日経 BP社『ITpro』、2012年 9月 12日。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20120906/421044/
・NEC「スマートシティ」、『Wisdom』、2010年 8月 6日。 http://www.blwisdom.com/word/key/001434.html
京都大学 地球環境学舎 生徒会 「概念屋」
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著者:山本泰弘(京都大学大学院 地球環境学舎 修士2年)[email protected]
【新概念:政策資源】
「革新的エネルギー・環境戦略」(“2030 年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入す
る。”)や、野田首相の所信表明演説で用いられて普及した「政策資源」。実はこの言葉、しっかりと定義され
ているわけではない。
「政策“という”資源」と、「政策“のための”資源」という 2 通りの解釈ができる。上記の 2 つの例では「政策とい
う資源」のニュアンスが強いが、かつての例では「政策を行うための具体的なもの(資金、設備、労力やノウハ
ウ)」が示されていた。
私は「政策資源」についてこう考える。
政策は、そもそも議会(国会や地方議会)の決定がないと始まらない。基本的
に議会で決定された任務や範囲に従って、省庁や自治体が仕事をする。政
策は正統性を持つのは議会の機能があるからであり、議会のその機能の資源
になっているのは選挙で測られる民意である。よって、根源的な政策資源の
一つは民意である。
他方、省庁や自治体は、職員を雇い、物やサービスを購入して政策に関す
る仕事を行う。それらは資金があるから可能なことである。予算案を議会決
定しても、その分の資金が実在しなければ、政策は実施しえない。よって、根
源的な政策資源の一つは資金である。
「民意」と「資金」の 2つが、根源的な政策資源であると言える。
<解説>
これまで、政策を行うためには有限の資源が必要で、それをより多様な(納税や投票以外の)方法で調達しよ
うという考え方はあまりなされてこなかったのではないでしょうか。財政危機が現実化し、人々の政策に対する
要求が高まっていく今後、この考えが重要になってくるでしょう。
なおアル・ゴアさんも、「不都合な真実」のしめくくりで“政治的意志は再生可能な資源だ”と言っています。
――――― 参考文献
・国家戦略室 エネルギー・環境会議「革新的エネルギー・環境戦略」、2012年 9月 14日。
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120914/20120914_1.pdf
京都大学 地球環境学舎 生徒会 「概念屋」
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著者:山本泰弘(京都大学大学院 地球環境学舎 修士2年)[email protected]
【新概念:奉公主義】
社会の内部的公平性や既存の財の分配を志向する考え方に対し、社会の対外的競争力や国力拡充を志
向する考え方のこと。対象の官民を問わず、"公(国家社会)のために奉仕する"イメージ。ときに個々人(特に
社会的弱者)の福祉を抑制することもやむなしとする。英訳 Servism。
現状、寄附やボランティア、利他的非営利活動などは前者の考えに共感する人が主体となる傾向が強い。し
かし、この奉公主義に基づいて個人の資源を公共に提供する、という動きを引き出す余地が大いにある。例
えば科学技術開発、能力開発・教育、起業促進などについて寄附・出資・スキル提供などで参画することが
その行動にあたる。
社会的テーマに、政府や議会を通すのと異なるルートで関与する人々の幅や規模を拡大する上で、この考え
の受け皿となる施策を調えることが課題と言える。