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世界初の浮体式ウィンドファームへの挑戦 石原 孟, 山口 敦, 東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤学専攻 丸紅株式会社(プロジェクトインテグレータ)、東京大学(テクニカ ルアドバイザー)、三菱商事株式会社、三菱重工業株式会社、 ジャパンマリンユナイテッド株式会社、三井造船株式会社、新日 鐵住金株式会社、株式会社日立製作所、古河電気工業株式会 社、清水建設株式会社及び、みずほ情報総研株式会社からなる コンソーシアムは、経済産業省からの委託事業として浮体式洋 上ウィンドファーム実証研究事業を推進している。 本実証研究事業は、2012年から開始している第1期実証研究事 として2MWダウウィンド型浮体風力発電設備1MW風車搭載コンパクトセミサブの建造 2013年5月下旬に完成したコンパクトセミサブ浮体は、中央のセ ンターカラム、3本のサイドカラム、3本のブレース、甲板デッキビ ームおよびボンツーンビームから構成され、2MW風車を支持し ている。コンパクトセミサブ浮体は、喫水が浅く、建造、曳航に優 れており、サイドカラム底部にあるフーティングバラストタンクによ り浮体の喫水が制御される特徴を持っている。 2013 6 27 日、2 MW風車搭載コンパク トセミサブ浮体が千葉 県三井造船㈱千葉事 業所ドックを出渠し、福 島県に向けて曳航が 開始され7 1 日小名 浜港に入港した。小名 浜港にて試運転調整 実証研究海域に係 コンパクトセミサブ浮体、サブステーションの曳航 と、世界初となる25MVA浮体式洋上サブステーション及び、海底 ケーブルを設置します。第2期として、7MW浮体式洋上風力発電 設備2基を新設の予定である。 2013年6月下旬、コンパクトセミサブ浮体に2MWダウンウィンド 型の浮体式洋上風車が搭載された。3節に分割された48.5mのタ ワーを据え付け、ナセルを搭載した後、39mのブレードが取付け られ 直径約80mの浮体式洋上風車の建方が完了した その後 実証研究海域に係 留された。 また2013711 日、 サブステーションが神 奈川県JMU㈱磯子工 場ドックを出渠し、直接 福島県沖の実証研究 実施海域に曳航され、 10 月に係留作業が完 了した。 20135月、実証研究実施海域にコンパクトセミサブ浮体および サブステーションを係留するアンカーおよび係留チェーンの設置 を行った後、アンカーの把駐力試験を実施した。また、6月上旬、 陸上変電所のある広野海岸にて沖合の作業船より海底ケーブ ルの引き込みを海岸まで実施後、作業船は実証研究実施海域 に向けて海底ケーブルを敷設した。 られ直径約80mの浮体式洋上風車の建方が完了したその後 、小名浜で試運転調整を行った後、実証研究実施海域に曳航さ れ、201311月に発電を開始した。 アンカー、係留チェーンおよび海底ケーブルの敷設 観測・予測技術の開発 サブステーションの建造 水槽実験 2013年4月に、2MW風車搭載コンパクトセミサブ浮体の縮尺模 型による水槽実験を行った。風、波および流れの複合外力に対 する動揺特性データを収集すると共に、発電時における最適制 御の検証も実施した。浮体動揺の水槽実験と今後実証研究実施 海域での実測データとの比較検証を行い、浮体式洋上発電シス 動揺解析 高度化を行う 20136月下旬に完成したサブステーションの上部ハル甲板上に は気象観測用タワーおよびヘリポートが取り付けられ、上部ハル 内には世界初の浮体式洋上変電設備が設置されています。下部 ハルにコンクリートを充填することにより重心を低くし垂直状態で の建造・曳航を可能にした。また、コブ、中間ハル、下部ハルをも つユニークな浮体形状を利用して、波による浮体動揺を低減する とを可能にした 動揺解析ルの高度化を行うとを可能にした201311月に運転開始して以来、1年近くの運転を行ってきて いる。風況に関して201312月は、当初想定風速が8.3m/s対して、実測風速が7.9m/sであり、発電に関して201312月は 、当初の想定設備利用率が44.62%に対して、実測設備利用率 43.2%であり、ほぼ想定通りである。 浮体式風力発電所の運転実績 洋上観測 サブステーション上の観測タワーに設置した風向計、風速計、甲 板上のライダーにより気象データを収集すると共に、ミドルハル上 部に設置した海象計、流速計により海象データを計測している。 また、甲板上に加速度計、GPS、ジャイロを設置し、計測した動 揺データを用いて気象・海象観測データの補正方法を開発する。 福島沖実証研究実施海域の厳しい気象・海象条件に対応すべき 、サブステーションに搭載された変電設備に対して傾き試験およ び振動試験を実施して、性能評価を行った。また、実証研究実施 海域の海象条件に対して今回開発された世界最大の66Vライ ザーケーブルの挙動解析シミュレーションおよびライザーケーブ ルの引留装置強度試験などの性能評価を行って安全性を確認し 201311月福島浮体式洋上ウィンドファーム第1期工事は完了 し発電を開始した。第1期工事の成果は以下の通りである。 送変電設備システムの性能試験 1. 2MW風車搭載コンパクトセミサブやサブステーションに設置し た観測機器からの気象・海象データを収集すると共に、解析を 開始した。 2. 工事中に例年にない数の台風に襲われたり、係留索が海中に 落ちてしまうなどの困難な事態に直面した、全ての技術的問題 を解決し、予定通り、第1期工事を完了した。また、第2期工事 ではフローティングクレーンを利用した係留索の接続を行わな いなど、第1期工事で得た技術的知見は第2期工事に反映され ている 参考文献 本研究は、経済産業省の受託業務で得られた研究成果である。 ここに関係者の皆様に感謝の意を表する。 ている3. 1期工事の完了後、約1年が経過したが、2MW風車搭載コン パクトセミサブも、世界初のサブステーションも順調に運転して いる。 参考文献 [1] 福島洋上風力コンソーシアムホームページ, http://www.fukushima-forward.jp/pdf/pamphlet3.pdf

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世界初の浮体式ウィンドファームへの挑戦

石原 孟, 山口 敦, 滝 滋

東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤学専攻

丸紅株式会社(プロジェクトインテグレータ)、東京大学(テクニカルアドバイザー)、三菱商事株式会社、三菱重工業株式会社、ジャパンマリンユナイテッド株式会社、三井造船株式会社、新日鐵住金株式会社、株式会社日立製作所、古河電気工業株式会社、清水建設株式会社及び、みずほ情報総研株式会社からなるコンソーシアムは、経済産業省からの委託事業として浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業を推進している。

本実証研究事業は、2012年から開始している第1期実証研究事業として、2MWのダウンウィンド型浮体式洋上風力発電設備1基

概 要 2MW風車搭載コンパクトセミサブの建造

2013年5月下旬に完成したコンパクトセミサブ浮体は、中央のセンターカラム、3本のサイドカラム、3本のブレース、甲板デッキビームおよびボンツーンビームから構成され、2MW風車を支持し

ている。コンパクトセミサブ浮体は、喫水が浅く、建造、曳航に優れており、サイドカラム底部にあるフーティングバラストタンクにより浮体の喫水が制御される特徴を持っている。

2013 年 6 月 27 日、 2MW風車搭載コンパク

トセミサブ浮体が千葉県三井造船㈱千葉事業所ドックを出渠し、福島県に向けて曳航が開始され7月1日小名浜港に入港した。小名浜港にて試運転調整後 実証研究海域に係

コンパクトセミサブ浮体、サブステーションの曳航

業 、 ダウ ウィ 浮体 洋 風力発電設備と、世界初となる25MVA浮体式洋上サブステーション及び、海底ケーブルを設置します。第2期として、7MW浮体式洋上風力発電設備2基を新設の予定である。

2013年6月下旬、コンパクトセミサブ浮体に2MWダウンウィンド型の浮体式洋上風車が搭載された。3節に分割された48.5mのタワーを据え付け、ナセルを搭載した後、39mのブレードが取付けられ 直径約80mの浮体式洋上風車の建方が完了した その後

後、実証研究海域に係留された。

また2013年7月11日、

サブステーションが神奈川県JMU㈱磯子工

場ドックを出渠し、直接福島県沖の実証研究実施海域に曳航され、10月に係留作業が完了した。

2013年5月、実証研究実施海域にコンパクトセミサブ浮体および

サブステーションを係留するアンカーおよび係留チェーンの設置を行った後、アンカーの把駐力試験を実施した。また、6月上旬、

陸上変電所のある広野海岸にて沖合の作業船より海底ケーブルの引き込みを海岸まで実施後、作業船は実証研究実施海域に向けて海底ケーブルを敷設した。

られ、直径約80mの浮体式洋上風車の建方が完了した。その後

、小名浜で試運転調整を行った後、実証研究実施海域に曳航され、2013年11月に発電を開始した。 アンカー、係留チェーンおよび海底ケーブルの敷設

観測・予測技術の開発 サブステーションの建造

水槽実験2013年4月に、2MW風車搭載コンパクトセミサブ浮体の縮尺模

型による水槽実験を行った。風、波および流れの複合外力に対する動揺特性データを収集すると共に、発電時における最適制御の検証も実施した。浮体動揺の水槽実験と今後実証研究実施海域での実測データとの比較検証を行い、浮体式洋上発電シスム 動揺解析 デ 高度化を行う

2013年6月下旬に完成したサブステーションの上部ハル甲板上に

は気象観測用タワーおよびヘリポートが取り付けられ、上部ハル内には世界初の浮体式洋上変電設備が設置されています。下部ハルにコンクリートを充填することにより重心を低くし垂直状態での建造・曳航を可能にした。また、コブ、中間ハル、下部ハルをもつユニークな浮体形状を利用して、波による浮体動揺を低減するとを可能にした

結 論

テムの動揺解析モデルの高度化を行う。 ことを可能にした。

2013年11月に運転開始して以来、1年近くの運転を行ってきている。風況に関して2013年12月は、当初想定風速が8.3m/sに対して、実測風速が7.9m/sであり、発電に関して2013年12月は、当初の想定設備利用率が44.62%に対して、実測設備利用率が43.2%であり、ほぼ想定通りである。

浮体式風力発電所の運転実績

洋上観測

サブステーション上の観測タワーに設置した風向計、風速計、甲板上のライダーにより気象データを収集すると共に、ミドルハル上部に設置した海象計、流速計により海象データを計測している。また、甲板上に加速度計、GPS、ジャイロを設置し、計測した動揺データを用いて気象・海象観測データの補正方法を開発する。

福島沖実証研究実施海域の厳しい気象・海象条件に対応すべき、サブステーションに搭載された変電設備に対して傾き試験および振動試験を実施して、性能評価を行った。また、実証研究実施海域の海象条件に対して今回開発された世界最大の66kVライ

ザーケーブルの挙動解析シミュレーションおよびライザーケーブルの引留装置強度試験などの性能評価を行って安全性を確認した

2013年11月福島浮体式洋上ウィンドファーム第1期工事は完了し発電を開始した。第1期工事の成果は以下の通りである。

送変電設備システムの性能試験 1.2MW風車搭載コンパクトセミサブやサブステーションに設置し

た観測機器からの気象・海象データを収集すると共に、解析を開始した。

2.工事中に例年にない数の台風に襲われたり、係留索が海中に落ちてしまうなどの困難な事態に直面した、全ての技術的問題を解決し、予定通り、第1期工事を完了した。また、第2期工事

ではフローティングクレーンを利用した係留索の接続を行わないなど、第1期工事で得た技術的知見は第2期工事に反映されているた。

参考文献

謝 辞

本研究は、経済産業省の受託業務で得られた研究成果である。ここに関係者の皆様に感謝の意を表する。

ている。3.第1期工事の完了後、約1年が経過したが、2MW風車搭載コン

パクトセミサブも、世界初のサブステーションも順調に運転している。

参考文献

[1] 福島洋上風力コンソーシアムホームページ,http://www.fukushima-forward.jp/pdf/pamphlet3.pdf