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くわみす病院だより 62 2017 1 1 2017 年ごあいさつ 副院長光永隆丸 新年、明けましておめでとうございます。昨年は熊本地霙が起こり、私もそうですが皆 様も忘れられない年となったのではないかと思います。避難所からは人はいなくなりま したが、自宅を離れ、仮設住宅や公営住宅で暮らす被災者が約4 l 千人に上り、これは県 民の43 人に 1 人が「仮住まい」をいまだ続けているという状況です。復典は始まったばか りであり、まだ長い時間がかかります。私たちも医療機関として被災者の皆様の健康支 援、生活再建への支援をできる限り続けていきたいと考えています。健康に留意され希 望の持てる復興への取り組みを力を合わせて進めて行きましょう 。 地震もそうですが、日本や世界の状況もまた激震が走っているのではないでしょう か。地裳は断層の大きなズレから発生しますが、今の世の中の状況は、国民の生活や願い と政治との大きなズレがその原因になっているのではないでしょうか。一向に良くなら ない暮らし、少子化は改善されず、超蘭齢社会が進行するなかで貧困や格差が益々広 がっています。特に医療や福祉、年金までも削減され将来への希望が持てない状況と なっているのではないでしょうか。私たちは今回の地震の中で全国から多くの支援(医 200 名以上、職員 1000 名以上)をもらいました、そういった中で助け合うことの素晴ら しさ、人の優しさ、思いやりを実感することができました。自分だけが、自分の国だけが 豊かであればいい幸福であればいいと考えるなら、いつになっても世の中は良くならず 対立が進み、格差が進み弱者が益々追い詰められていく社会になるのではないでしょう か。一人一人がお互いを思いやり、弱いひとにこそ目を向け助け合っていくことが、政治 にも私たち一人ひとりにも必要なことではないでしょうか。 2017 年も様々なことで激震 が起こるかもしれません、地震もどこで起こるか油断できません、備えが必要です。平和 な社会も憲法も知らないうちに変わってしまう危険もあります。そうならないために 2017 年はしっかり備えを進めて行きましょう。今年もよろしくお願い致します。

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くわみす病院だより 第62号 2017年1月1日

2017年ごあいさつ 副院長光 永 隆 丸

新年、明けましておめでとうございます。昨年は熊本地霙が起こり、私もそうですが皆

様も忘れられない年となったのではないかと思います。避難所からは人はいなくなりま

したが、自宅を離れ、仮設住宅や公営住宅で暮らす被災者が約4万l千人に上り、これは県

民の43人に1人が「仮住まい」をいまだ続けているという状況です。復典は始まったばか

りであり、まだ長い時間がかかります。私たちも医療機関として被災者の皆様の健康支

援、生活再建への支援をできる限り続けていきたいと考えています。健康に留意され希

望の持てる復興への取り組みを力を合わせて進めて行きましょう 。

地震もそうですが、日本や世界の状況もまた激震が走っているのではないでしょう

か。地裳は断層の大きなズレから発生しますが、今の世の中の状況は、国民の生活や願い

と政治との大きなズレがその原因になっているのではないでしょうか。一向に良くなら

ない暮らし、少子化は改善されず、超蘭齢社会が進行するなかで貧困や格差が益々広

がっています。特に医療や福祉、年金までも削減され将来への希望が持てない状況と

なっているのではないでしょうか。私たちは今回の地震の中で全国から多くの支援(医

師200名以上、職員1000名以上)をもらいました、そういった中で助け合うことの素晴ら

しさ、人の優しさ、思いやりを実感することができました。自分だけが、自分の国だけが

豊かであればいい幸福であればいいと考えるなら、いつになっても世の中は良くならず

対立が進み、格差が進み弱者が益々追い詰められていく社会になるのではないでしょう

か。一人一人がお互いを思いやり、弱いひとにこそ目を向け助け合っていくことが、政治

にも私たち一人ひとりにも必要なことではないでしょうか。2017年も様々なことで激震

が起こるかもしれません、地震もどこで起こるか油断できません、備えが必要です。平和

な社会も憲法も知らないうちに変わってしまう危険もあります。そうならないために

2017年はしっかり備えを進めて行きましょう 。今年もよろしくお願い致します。

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第62号 2017年1月1日 くわみす病院だより

第1回H本HPHカンファレンスに参加して

HPH (Health Promoting Hospital)とは、健康増進活

動拠点病院の略で、WHO(世界保健機関)が1988年に

開始した国際的な病院のネットワークです。当院では、

2015年12月にネットワークに加盟し健康増進活動を

行っています。

今回、そのネットワークの第1回日本HPHカンファ

レンスが2016年10月8日に東京で開催され、放射線科の

園井係長と地域医療部の斉藤が参加しました。

カンファレンスでは、記念講演や各施設での取り組

みについて報告会があり、当院は「熊本地震とHPH活

動」と題し園井係長が報告し ました。熊本地震発災後、

院内災害対策事務局長補佐として奮闘した園井係長

は、職員も地域も守る活動として、職員のメンタルヘ

ルスに取り組んだこと、震災後に地域や友の会会員さ

ん宅訪問を行ったこと、避難所の健康チェックや足浴

訪問を行ったことなどを報告しました。

座長の長野県佐久総合病院の院長先生から、 「日常的

に健康増進活動をするということは、医療者にと って

地域医療部斉藤 信子

は当たり前のことであるが、職員も被災した中で、職員

も地域をも守った取り組みは感銘を受けた。どこの医

療機関も実践するべきである。」と評価され優秀賞に選

ばれました。報告では、若干緊張した閲井係長でした

が、この取り組みが評価されたのは、職員の頑張りが

あったことと、全国からの支援、そして友の会会員のカ

があってこそと感想を述べました。

園井係長による発表の様子

賞状

優秀賞

くり*イ▲讀噸

","-'-心棗'"'、

SD H social determinants of health 健康0)社会的決定災因

生まれた家庭や就いた職業で健康に格差が生じてい

ることをご存知でしょうか。WHO(世界保健機関)は

同じ国の中であっても、社会環境から影響を受けて健

康格差が存在すること、健康格差は、人々が成長し、生

活し、労働し、老いていく環境と、既存の保健医療シス

テムが原因となって生じると報告しています。社会環

境とは、「保険医療、学校、教育へのアクセス、労働と休

養、家庭、コミュニテ ィ、町や市などで、豊かな人生を送

れるチャンスの不公平とによ って生じている。」とも

報告しています。

では、格差を生んでいるSDH(健康の社会的決定要

地域医療部濱陽子

因)とはどんなものでしょうか ?所得や家族状況・友

人知人とのつながり (社会的ネ ットワーク)など「個人

の社会 ・経済要因」と、国の施策や職場・コミュニティ

での人とのつながりの豊かさ (ソーシャルキ ャピタ

ル)など「環境としての社会要因」があります。

日本ではどのようなSDHがあるのでしょうか?全

日本民医連が2012-2013年に行った40歳以下の2型糖

尿病の患者さんの調査研究では、糖尿病網膜症は、貧

困など社会経済的状況が低い人ほど有病率が高いこと

がわかりました。低学歴ほど網膜症の有病率が高く、治

療費が公費負担となる生活保護世帯の方がそれ以外の

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くわみす病院だより

涵 環境際関係 バ

職場 ・コミュニティソーシャル ・キャピタル

学歴 ・所得

空社会的一家族・婚姻状況

ネットワーク 社会的サポート

芦閤麟行動 繹習慣臓器・組織

弓~ ミクロ

健康の決定因子の階層構造

【健康格差、どんな報告がある?】

・地域の平均所得が100万円増えると無歯顎(歯が0本)は減少

・男性の肥満による死亡リスクは低所得者で約2倍高くなる

・地域の人とのサポートが豊かだと高齢者のうつ割合が減る

• 笑わない人は、脳卒中リスクが1.6倍増える

• 独居男性はひとりで食事をしていると2.7倍うつになりやすい

・3年間で歩く人が増えたまちほど、転倒が減少する

第62号 2017年1月1日

•東日本大震災前の地域の結びつきがPTSD(心的外傷後ストレス障害)発症を4分の3に抑制

方よりも、また、正規労働者よりも非正規労働者の方

が、既婚者よりも未婚者の方が、有病率が高い結果とな

りました。社会階層と健康政策提言ワーキンググルー

プの研究では、低所得世帯では子どもが入院する割合

が高いこと、所得格差が多い都道府県では、子どもが

低体重で生まれるリスクが高く、どの地域、どの家庭

に生まれたかに よって、将来の病気のリスクが左右さ

れている可能性があると報告しています。また、 15歳

の時に家族の所得が低かった人は、その後低学歴、貧

困になるリスクが高く、成人後の幸福感と主観的健康

感も低い傾向あることが明らかになりました。子ども

の貧困のその後の人生への影響は非常に大きいと報

告しています。

(日本老年学的評価研究JAGESの発表より)

では、どうしたら健康格差をなくすことができるの

でしょうか?WHOはさまざまな提案をしています

が、その中の一つは国民皆健康保険を挙げ、更に支払い

能力に関係なく全ての人が保健医療サービスをうけら

れるようにすると提案しています。また、前出のワー

キンググループは人間関係を豊かにすること、地域や

職場のコミュニティの絆を大切にすることなど提案し

ています。

身近なこととして、例えばどの市町村に住んでいて

も低負担で受診ができるよう「子ども医療費助成の拡

充」や友の会の班会や地域サロン、地域の行事参加など

周囲の人との絆を強めることも健康格差をなくすこと

の一つではないでしょうか。

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第62号 2017年 1月1日 くわみす病院だより

市民公開講座

なぜ絲齢者は肺炎になりやすいのか~飲み込みにくさ、むせやすさから起こる肺炎のメカニズム~

会場の様子

2016年12月23日くまもと県民交流館パレアで「なぜ

高齢者は肺炎になりやすいのか?」というテーマの市

民公開講座を開催しました。

高齢者は加齢とともに体のさまざまな機能が低下し

てきます。噛む力や飲み込む力が弱くなったり、唾液の

分泌が減ったりします。食べるときに飲みにくい、すぐ

誤慮にならん体操を紹介する高峰言語聴覚士

栄養サポートチーム坂本 恭子

にむせるなどの症状が起こってきます。このような状

態を「摂食・照下障害」と言われます。

このような状態になると、食べ物や唾液が肺に入り

やすくなり、それが原因となり「誤照性肺炎」がおこり

ます。これの原因とリスクを理解し予防していくため

に様々な観点から学習しました。

記念講演では「お口の健康管理で誤照性肺炎を予防

しよう」というテーマで益城インプラントセンター共

愛歯科医院の園田隆紹先生よりお話しいただきまし

た。誤感性肺炎の予防は、日本の死亡事故の中で最も多

い窒息を予防することにも繋がり、そのためには高齢

になってもしっかり食事できる口腔機能の維持管理が

重要であることが学べました。

玉名地域医療センターの前田圭介先生には「高齢者

の誤燕性肺炎を予防する栄養ケア」というテーマでお

話しいただきました。誤燕性肺炎を予防するためには

口腔ケアとともに、食べる物• 量や筋肉量を維持する

ためのケアを含む「栄養ケア」を行い、摂食照下機能低

肺機能相談コーナー

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くわみす病院だより 第62号 2017年1月1日

口腔ケア用品コーナー

下を防ぐことが重要であることが学べました。

学習講演では最初に当院の高峰言語聴覚士が「誤燕

にならん体操」をご紹介いたしました。この体操は顔や

首の筋肉の緊張を解いたり鍛えたりすることで誤唖の

予防に繋がるというもので、食事の前に準備運動とし

て行うのが効果的です。会場の皆さんと 一緒に体操を

しました。

続いて、当院歯科の鳥山歯科衛生士より普段プロが

行っている口腔ケアを「スポンジブラシ・保湿ジェル ・

舌ブラシ」を使用し誰でも簡単にできる方法としてご

紹介いたしました。特に汚れやすい部位や見落としや

すい部位などコツと基本をしっかりおさえて要介護者

の方の負担を減らし時間の短縮になるように工夫され

ていました。

最後に私坂本が、管理栄養士の立場から「飲み込みや

すくむせにくい食事」についてご紹介させていただき

ました。高齢者は加齢とともに食べ物を噛む力や飲み

込む力が低下します。その状態に合わせた食べ物や食

べ方が必要です。料理本来の味わいを生かしつつ柔ら

かく加熱する、切り方を変える、そしてとろみをつける

など一人ひとりの飲み込む力に合わせて調理すること

が大切です。

日本の死亡原因の上位にある誤照性肺炎は今後高齢

者の数の増加とともに増えていくと予想されますが、

i:;

会場の風景。皆さん、真剣に講演を聴かれていました。

手前から順に園田先生、池上院長、前田先生、川上総師長

口腔ケアや栄養ケアと合わせて食べる前の体操や飲み

込みやすい食事を取り入れることで予防することがで

きることを本講座で学ぶことができました。各分野の

専門家が一般の方にわかるように噛み砕いてお話しし

ていただいたのでとても分かりやすかったです。今後

も誤燕性肺炎の患者さんを減らすことやより多くの人

に知ってもらえるようにより 一層の努力を継続して

いきたいと思います。

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第62号 2017年1月1日 くわみす病院だより

心臓リハビリテーションが始まりました

くわみず病院は2016年8月に「心大血管リハビリテー

ション I」の施設基準を取得いたしました。これによっ

て、慢性心不全・末梢動脈閉塞性疾患などの慢性疾患

や狭心症• 開胸術後・大血管疾患の患者さんにも、入

院及び外来でのリハビリテーションができるようにな

りまた。

治療 ・リ ハビリテーションは、心臓リハ認定医、心臓

リハ指導士(理学療法士)、看護師、薬剤師、管理栄養士

など多職種が携わり、運動療法、服薬指導、栄養指導、

日常生活指導など行います(これを「包括的リハビリ

テーション」といいます)。

運動処方においては、心肺運動負荷試験(CPX)の設

備を導入し、高齢者やハイリスクの患者さんでも利用

できる最新型の運動負荷装置を採用しました。この検

査を実施することで、最適且つ安全で効果的な訓練(運

動療法)の実施に役立てています。

「心臓を患ったら安静に」と心身ともに閉じこもりが

ちになりそうですが、実際に運動療法を継続すること

によって息切れや胸部症状が改善され、今まで苦手

だった運動に自信が持てるようになります。

理学療法士(心臓リハ指導士) 阪口 明

心臓リハピリテーションは、「からだ」も「こころ」も

強く豊かにすることが出来るんです!

“運動療法で治療効果を最大限に発現する!!”これこ

そが心臓リハビリテー ションで最も大切なことです。

心疾患や動脈疾患でお悩みのかたにお役に立てるよう

に、包括的リハビリテーションに取り組んでまいりま

す。どうぞお気軽に循環器内科までお問い合わせ下さ

い。

〈心臓リハピリテーションプログラム〉

1回あたり 1時間程度(3単位)で実施します

入院では週5-6日、期間は2週間程度です

外来では週3回程度(発症から150日間は医療保険適

用)、維持期には在宅運動療法へと移行していきます

1¥- I —Ill•• I I "-

心肺運動負荷試験装置 自転車エルゴメーターによる有酸素運動

新CT導人から現在までの報告

以前に病院だよりで今年の7月末から稼働を開始し

た新CTの大きな特徴として、冠動脈CT(心臓)を述べ

させていただきました。

それから約半年が経ち、現在まで約50件冠動脈の検

査を実施致しました。

そのうち約1割の方がカテーテル検査・治療へと繋

ぐことができ ました。

CT検査とカテーテル検査が連携することで、血管の

狭窄を早期発見• 早期治療が可能となりました。

今後も患者さんに とって、より良い検査・より 高画

質な画像を提供できるように研鑽を重ねていきます。

~

放射線科嶋田 敬 介

狭窄 *同じ場所です*

カテーテル画像 冠動脈CT画像

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くわみす病院だより 第62号 2017年1月1日

福島被災地視察・支援連僻行動に参加して…「福島の今を知る」

東日本大震災• 福島原発事故から5年9か月が過ぎよ

うとしています。

震災から5年以上が経過した福島では、未だに8万人

を超える県民が県内外に避難を強いられています。「原

発事故関連死」も「直接死」を超え、「原発さえなければ

…」と深い無念の思いで自らの命を絶ってし まう自殺

者も今も増え続けています。福島原発から2キロ圏内

では、3.11以降、時がとまりゴーストタウンの様になっ

ている町並みは、主のいない家や草も木も咲いている

花もまるで泣いているようでした。

「窓から入ってくるすがすがしい風や澄み切った空

気のにおいをかいだり、母と子が公園で遊んだり、福島

ではありふれた幸せが根こそぎ奪われ、福島の人達に

とって幸せは望むものでなく取り戻すものになってし

まった」その被災地の方々の苦しみや哀しみ不安は私

まるで時が止まったかのように当時の姿を見せる住宅(浪江町)

請戸(うけど)小学校の教室 福島第一原発

ーヲ

看護総師長 川上 和美

達の想像をはるかに超えます。福島第1原発では、「事故

を収束させるために」と先が見えない中で高線量の放

射線を浴びながら働いている労働者も多くいます。そ

れなのに国は「原発は完全にコントロールされてい

る」と謳い収束宣言までしました。マスコミによる福

島に関する報道も少なくなり、福島の事を忘れ風化さ

せていく状況は水俣病と同じです。加害者が被害者を

切り捨て、被害を小さく見せようとする社会は、一人

一人の生き る権利や尊い命を奪っていきます。

私達は熊本地震によって甚大な被害を受けました。

もし、そこに津波があり原発事故が起きていたら…そ

う考えるだけで背筋の凍る思いがします。熊本地震を

体験した私達だからこそ、福島の現状を知り、福島の人

達へ思いを馳せ、一人一人の「心の復興」をめざし、と

もに取り組んでいかなければならないと思いました。

富岡町の中学校(震災当時、卒業式の練習中であった)

住宅地におかれた汚染ゴミ

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第62号 2017年1月1日 くわみす病院だより

~こころひとつ一歩前に~みなし仮設住民の「つながる広場」に参加

12月18日(日曜日)益城町で開催された「みなし仮設

居住者」の交流イベント[つながる広場]にくわみず病

院も参加しました。

12月19日の新聞の発表では、民間賃貸の「みなし仮設

住宅」で暮らす熊本県民は約2万8千人。益城町住民のみ

なし仮設入居者世帯数1300戸(町内に残っているのは

約300戸、残る1000戸は熊本市を中心に菊陽町や合志市

など県内22市町村に分散)だそうです。

今回の「つながる広場」のイベントは益城町住民1300

戸を対象 とし、市民団体「こころをつなぐよか隊ネ ッ

ト」とグリーンコープ災害支援センター、熊本学園大学

の災害ボランティアグループが主となって開催され約

400人の参加がありました。

当日は支援物資の配布や炊き出し、踊りや歌、プロに

よるアコーデイオン演奏などイベントも盛りだくさん

で、みなさん楽しいひとときを過ごされていました。

くわみず病院は「健康相談コーナー」として、体組成

計による脂肪量 ・筋肉量• 基礎代謝量などを測定し体

内年齢チェックや血圧測定など行いながら健康状態や

気になること等の相談を受けました。相談を受ける中

で「あちこちで工事を遅くまでやっているので眠れな

い」「なかなか解体も進まず、先がみえない。いろいろと

考えると眠れない。睡眠薬なしでは眠れない」「仮設の

アパートは狭いけど住むところがあるだけでも十分か

な」「平日は仕事、土日は自宅の解体作業の手伝いで疲

看護総師長 川上和美

れがたまっている、休む暇が

ない」「震災後、体重が6kgも

減ってしま った。食欲が出な

い」中には、 「小川から来た。仮

設がみつからず身寄りも友達

もいない遠い場所しかみつか —

らなかった。今日久しぶりに

みんなに逢えて嬉しかった。

普段は寂しい。早く益城に帰体組成測定の様子

りたい」など、相談者の殆どの

方が様々な不安を口にしました。話をしながら表情が

曇ってしまう方、目に涙を浮かべる方もおられ、震災

による被災者の抱える問題や心身に与える影響を強

く感じました。生活再建に向けても時間の経過ととも

に前に進める方とそうでない方との格差も生じてい

く現状もあります。

被災者の一人一人の『心の復興』に向けて大切なこと

①「生活再建」: 総合的にとらえる視点②「健康維持」

③「コミュニティーの再建」④「社会の中での役割の回

復[仕事]」です。

被災者への支援はこれからが重要となります。私達

は医療者として『地域を守る』病院の理念のもと、これ

からも必要な支援の手を差し伸べ続けたいと思いま

す。

もちつき大会復活!!

12月10日土曜日に以前ば恒例行事だった「くわみず

病院もちつき大会」を行いました。4月の地震から8か

月、職員や地域の方々に少しでも元気になってもらい

たい、という想いからでした。

もちつきをほとんど経験した事のない若手職員を中

心に手探りで準備を始めましたが、健康友の会にもご

協力いただき無事に当日を迎えることができました。

当日は晴天に恵まれ暖かかったため、た くさんの患

者さんや地域の方、ぼっぼ保育園の園児が参加してく

れました。友の会や職員家族からも予想以上の方々が

手伝いに駆け付けてくれました。もちつきが始まると、

もちをつく人、丸める人、食べる人、買って帰りたい人

とかなり賑わい、もちのつきあがりが追い付かないほ

4階病棟 竹丸 恵子

どでした。終始、皆さんの活気とすてきな笑顔があふれ

ていました。つきたてのおもちのおいしさに、大変な一

年だったことを一瞬でも忘れて楽しんでいただけた

のではないでしょうか。

たくさんの方の応援のおかげ

で41kgのもち米は予定より早く

なくなってしまいました。来年

はもっとたくさんの方が楽しめ

る様、さらに内容を充実してい

きたいと思います。

当日ご参加していただいた

方々本当に有り難うございまし

た。 おいしいお餅ができました

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くわみす病院だより 第62号 2017年1月1日

熊本・京都合圃ポートフォリオ検討会報告

京都民医連の先生方と

10月1日、熊本や京都で家庭医プログラムで研修して

いる専攻医や指導医、初期研修医その他スタッフたち

がくわみず病院に集まり、ポートフォリオ検討会を行

いました。約4時間にわたり、専攻医が準備した5つの

ポートフォリオについて活発なデイスカッションが行

われました。

なかなかインスリン治療を続けてくれない患者に対

し、たびたび自宅を訪問するうちに患者が心を開き、そ

の心が変容し、治療に協力的になった症例の報告があ

りました。単なるレポートであれば、患者の血糖値がい

医局福原明

くつで、インスリンを何単位使用し、最終的に血糖値

どうなったという事実だけで終わります。自宅でイン

スリンをうってくれないのはなぜだろう、家族はどの

ような形で関わっているのだろう、どうすればこの人

の思いに寄り添いかつ治療に前向きになってくれる

のだろう、という思考過程や経験、省察はレポートに

は含まれません。逆にこのような経験や省察を凝集さ

せた形でまとめたのがポートフォリオです。

くわみず病院からは光永顕彰先生、分山博文先生が、

京都からは小林真一先生を含め3名の先生方がレベル

の高いポートフォリを提示していただきました。京都

協立病院、熊大や人吉医療センターなど指導医の先生

方からはさまざまな質問があり、さらによい家庭医療

研修を行うためのアドバイスもなされました。

家庭医療が、患者に寄り添い全人的医療を目指して

きたくわみず病院の理念にまさに合致したものである

ことを再認識するとともに、家庭医療のレベルは高く、

家庭医の育成にはもっともっと力を注がなければなら

ないことを痛感する一日となりました。

研修報告

r研修医東雲芳朗医師J医師国家試験から早いもので1年9か月経

ちました。くわみす病院で研修を始めた頃は、

右も左もわからす、あらゆることが真新しく、そ

れでも仕事を一つすつ覚えて前進する日々でした。去年10月からは外部病院研修として、南

の徳之島へ発ち、以後、奄美→鹿児島→福岡と渡り歩いて、現在の長崎・上戸町病院まで渡り歩いてきました。

この間、本当にいろいろなことがありました。特に熊本地震の衝撃は今も忘れられません。ちょうど鹿児島生協病院で夜間外来をして

いる最中でした。携帯電話から嗚る警報音、テレビの地震速報、続く

余震…大学時代に過こした熊本が大変なことになっている!しかし、当時の私にはまだまだ支援に行けるだけの能力はなく、非常にやきもきしておりました。

鹿児島の先生方からは「熊本は、くわみすは大丈夫なのか?」と訊

かれ、病院の現状を逐一報告する役目に仰せつかっておりました。上

戸町の先生からは「君をしっかりと育てることが、熊本の災害復興に対する支援にもなる」という言葉を頂きました。同じ民医連で協働す

る者同士、被災した熊本への想いはかなり強固だと感じました。さて、来年1月からは菊陽病院での精神科研修を経て、ついに3

月よりくわみす病院に戻って参ります。微々たるものですが、震災の影響がまだ残る熊本で、さまざまな先生方から学び培ったことを活

かして医師としてお世話になります。

Q

r研修医吉田豊医師 J初期研修医1年目として始めに配属された

くわみす病院にて、四肢末端が冷汗湿潤になり

ながら研修していた日々がつい昨日のことにように鮮明に思い出されます。今あらためて暦

を見てみると、すでに2016年もあと20日で終わろうとしており、私の初期研修医も順調にいけばあと3ヶ月足

らすで終了、という段階まできていることが信じられません。この原稿を書いている12月現在、長崎の五島列島福江島にある健友会ふ

れあい診療所にて、長崎健友会理事長でもある宮崎幸哉医師の指

導のもと研修しております。研修内容は、診療所での外来、往診のみ

ならす、訪問看護同行、五島市長寿介護課職員とともにミニディ参

加などバリエーションに富んでおり、そのいすれもが、大変意義深いものです。しかも訪問看護等では、2次離島である奈留島、久賀島などにも行くため、島民の生活に様子もかいま見たり、さらには教会な

どの観光地にも行ったりでき半分観光気分で研修しております。将来熊本民医連で働く予定の初期研修医にもぜひおすすめしたい研修です。私は3年目以降、くわみす病院、もしくは菊陽病院にてお世

話になる予定ですが、初期研修で学んだことをフルに生かしてがんばろうと思いますので、今後ともこ指導こ鞭撻の程宜しくお願い致

します。

Page 10: 2017年ごあいさつ 副院長光永隆丸houwakai.sub.jp/kuwa17jan.pdfくわみす病院だより 第62号 2017年1月1日 的 2017年ごあいさつ 副院長光永隆丸 新年、明けましておめでとうございます。昨年は熊本地霙が起こり、私もそうですが皆

第62号 2017年1月1日 くわみす病院だより

熊本地裳の際、くわみず病院の医療を支えて下さった全国の医師の方々

11月4日 11月9日 11月10日 11月15日

11月17日 11月22日 11月25日 11月29日

12月1日 12月6日 12月14日 12月19日

ト院長O独り言⑥我が家IC:やっcきにゃんちゃけ姫{ひと月半ほど前に我が家に子猫がやってきた。車にひかれた

母猫に守られて辛うじて助かった彼女は、親切な方に拾われ

て、からだを拭いてもらい、動物病院を何度も受診し、大切に大

切に育てられて、生後3か月目くらいに我が家にやってきた。

名前は、ベル。痩せこけた彼女を不憫に思い、フランス語の

美しいという意味で「ベル」という名前をつけた。ところが、この

ベルは、なかなかのやんちゃ姫。猫は家につくというが、3日目

には2階に上り我が家の部屋という部屋を点検し始めた。すぐ

に私のお気に入りの真っ白い布製の椅子とソファーの下の床

暖房の上を自分の定謳に決めて、冬の一日をぬくぬくと過こす

ょうになったのである。ベルは、人間の子供のように家にある

なんでもないもの、例えば宅急便の紐とか耳かき、箸置きなど

の小物を転がして、引っ張って、引き回して長い時間遊ぶ。家に

帰ってみると、テーブルの上の物は無残にも床の上に落ちてい

る。「ベル、だめよ」と叱ると、怒られたことがわかるのか、さ一つ

と隠れてしまう。

子猫は、忘れやすい。しばらくすると、また舞い戻って、小物を

,rヽ

物色しては、転がし始める。ベルの鳴き声は珍しく、ニャオンと

かニャンではなく、秋の虫の音のように鳴く。

短音の「ミッ、ミッ」と小さく鳴くので、首輪の鈴の音がなけれ

ばどこにいるのかわから ..... -

ないことがある。ベルは、

食いしん坊で私たちの食

事を食べたがるが、子猫

の餌以外はやらないよう

にしているため、食事の時

間は交代でベルのお守り

をすることとなった。

つまり、我が家はこの

1 kgちょっとの生き物に見

事に振り回されているの

である。

大人しくポーズをとるペル

~