21世紀の学術情報環境 最新動向 · 21世紀の学術情報環境 最新動向...
TRANSCRIPT
21世紀の学術情報環境最新動向
2019年2月22日
STM協会、ジャパン・チャプター
インダストリアル・アドバイザー
三木 律子
RA21、アクセス信頼性の拡充
SCHOLIX、情報エコシステム支援
STMのご紹介
• グローバル学術出版の声を代弁
• 事業者団体の創設は1968年
• メンバーは、23か国150社強
• すべてのタイプのSTM出版社がメンバー参加
– 非営利、大学出版、商業出版社
– 社会科学や人文科学も含む
– 規模も多彩、大から小、新規スタートアップ及び事業体のない出版者
– オープン・アクセスも購読契約タイプも
• メンバーの10%はアジア・環太平洋から、大半は中国と日本から
• 毎年世界中で出版する学術論文の67%はSTMメンバーの出版による、現在10,000のジャーナル出版者のうち、5,000の出版者のジャーナルがScopusに搭載
STM: International Association of Scientific, Technical and Medical Publishers国際科学(S)技術(T)医学(M)出版社協会
https://www.stm-assoc.org/about-stm/50th-anniversary/
STM常設委員会とそれぞれの課題
指針及び提案・唱道活動
知的所有権
標準化及び技術
アウトリーチ
広報活動
その他活動として、国際イベントや研修活動さらに詳細な情報は、STMウェブサイトをご参照ください
STMと日本
STM海外広報活動計画の一環としてSTMジャパン・チャプター・グループが立ち上げられた
• 日本での広報・研修の活動支援
• JST、日本学術振興協会、文科省等研究資金提供者との継続的対話
• 研究資金提供者と連携して、公開セミナーや研修コースの実施(年一回)
日本に関する、日本語訳付きのSTMウェブサイトをご参照ください
www.stm-assoc.org/stm-international/stm-japan/
2019年STMイベント「アジアの未来」を開催2019年6月6日 於香港
メンバー以外の方も歓迎、是非ご参加ください
詳細はSTMウェブサイトをご参照ください
RA21:Resource Access for the 21st CenturySTMとNISO(米国情報標準化機構)との共同事業
Simple, Trusted Access –
Anywhere, Anytime, on Any Device
簡単で信頼できるアクセス認証 ーいつでも、どこでも、どんなデバイスからでも
RA21アクセス認証の目標
主要関係グループ横断的に、アクセス手順を最適化
主要関係グループには、契約企業や大学、図書館、ソフトウエア取引者、学術等出版社、政府系連合体
ネットワーク・セキュリティや利用者のプライバシー保護を確保しながら、IPアドレス認証によらない、利用者体験を提供
ユーザによるセットアップ無し接続ネットワークやログイン場所を問わない個人のプライバシーを守りながら、利用者がコンテンツにアクセスできる環境を作る
RA21の必要性は急速拡大
キャンパス等外から
もっと使いやすいコンテンツ・アクセスを求めて
企業/キャンパスネットワーク外からの学術コンテンツやサービスへのアクセスは加速度的に急増
現在日常生活に浸透している、GoogleやFacebookやLinkedInの利用者体験と比べると、出版社が提供しているキャンパス外アクセス認証手順は時代遅れの感が強い
もっと使いやすいキャンパス外アクセスを求めて、 RA21が時代遅れのIP認証の代替策立案の第一歩として活動開始
Jan
-12
May
-…
Sep
-12
Jan
-13
May
-…
Sep
-13
Jan
-14
May
-…
Sep
-14
Jan
-15
May
-…
Sep
-15
Jan
-16
May
-…
Sep
-16
Jan
-17
May
-…
Sep
-17
Mobile Traffic in Visits
• VPN/Proxy Servers
キャンパス外アクセスの認証方法1 of 3
• デバイスペアリング
• VPN/Proxy
キャンパス外アクセスの認証方法2 of 3
• Device Pairing
• Google’s Campus-Activated Subscriber Access (CASA)
• VPN/Proxy
キャンパス外アクセスの認証方法3 of 3
現在のキャンパス外アクセス認証方法の課題点
• Device Pairing
• CASA (Google)
• VPN/Proxy
現状は、
すべての認証方法が結局所属組織のIPアドレス認証に依存
しかも、事前設定が必要
キャンパス等外アクセス方法の技術的改善策…
技術的な改善策として、Shibboleth による横断認証
(SAML Security Assertion Markup Language)
–多面的信頼を確保
–成熟した技術
–学術情報プロバイダーに広く利用、支援されている
–学術機関でも広く採用、配備されている
– クラウドで提供されるソフトウエアの利用増とともに、ますます多くの企業のお客様にも、利用されている、但し、Shibbolethその他類似品やビジネス向けチャットのSlack
を利用している企業の場合
利用者のため、RA21が始動
利用者が所属組織を以って、認証してもらうまでの手順は、大変煩雑で、わかり難いたとえば、⚫ サーチボックスの場所がわかりにくい⚫ 所属組織名称リストが長い
⚫ 出版者サイト毎に設定を繰り返さなければならないことがある
さらに、
認証後コンテンツ閲覧までのクリック数が多いことがある
RA21協業体制及び行動計画と進捗
IP認証によらない、新しいアクセス解決策の推奨を目指す横断的協業体制:
+ソフトウエアベンダー+図書館
+GakuNin RDM等管理基盤運営担当者+出版者+サービスプロバイダー
1. 可能性ある解決策案を識別しテスト - 完了
2. NISO推奨指針に則り、ベストプラクティスを推奨-進行中
3. 事後段階では、必要な中央インフラを動かすことができるメ
ンバーを選別し、ライブ・サービスを企画 - 進行中
2016年後半の立上げ以来、60の異なる組織の個人参加者
20
GEANTGlaxoSmithKline PharmaceuticalsHarvardHighwire PressHypothes.isIEEEInformed Strategies LLCInternet2Institute of Physics PublishingJISCJohns Hopkins UniversityKTH Royal Institute of TechnologyLiblynxMITMyUniDysNISONovartisOCLCOpen UniversityORCIDOpitcal Society of AmericaOxford University Press ProquestRinggold
RA21参加者
AbbVie PharmaceuticalsAmerican Medical Association / JAMAAmerican Chemical SocietyAmerican University American Psychological AssociationAssociation of Research Libraries American Society of Civil EngineersAtypon SystemsBASFBibliotheksservice-ZentrumBrill PublishersBrown UniversityCentre for Agriculture and BioscienceCarnegie Mellon UniversityClarivate AnalyticsCambridge University PressCopyright Clearance CenterDenver UniversityEBSCO Information ServicesEduservElsevier PublishingEmerald Publishing GroupErasumus University RotterdamETHZ
Roche Holding AGGSage PublicationsSilverchair Information SystemsSpringer NatureSTMSUNETSwitchTaylor & Francis GroupThieme Medical PublishersTilburg UniversityUC DavisUniversiti Putra MalaysiaUniversity at BuffaloUniversity of BathUniversity of NottinghamUniversity of SurreyWileyWolters Kluwer Publishing
Corporate Subscriber 企業 X5
Academic Subscriber 学術機関 X19
Software/Service Provider ソフトウエア/サービスプロバイダー X17
Publisher 出版者 X19
RA21調査プロジェクトの構造
異なる環境基盤の違いを調査する2つの技術パイロット
(SMAL/ブラウザー vs クラウド技術)学術機関の認証簡素化を目指す
縦3つ、横2つの横
断的調査プロジェクト構造では、そのメンバーが重複されている
ユーザ体験
P3W
プライバシー保護とセキュリティ
Corporate Pilot
WAYF Cloud
企業ニーズの調査パイロット
RA21調査プロジェクトの進捗状況
Corporate Pilot
WAYF Cloud
パイロット作業完了、報告書公開済み
昨年10月のOUTSELL契約者向け業界分析レポートによれば、RA21は高い評価を受けている
ユーザ体験
P3W
プライバシー保護とセキュリティ
Corporate Pilot
WAYF Cloud
RA21 vs. “アクセス・ブローカー”
RA21解決策と“アクセス・ブローカー”ツールとの対比表を公開
大半の場合、個人のユーザ・アカウント作成が必要プライバシー上のリスクあり
学術機関での学術横断認証管理の長年の実施経験を通じて、ユーザに匿名の選択肢を提供
多くの場合、ユーザの所属機関でのユーザ名とパスワードの写しを記録、保管セキュリティ上のリスクあり
ユーザの所属機関でのユーザ名とパスワードは、必ずそのユーザの所属機関のみが見ることできる.
多くの場合、有料サービス 購読契約している機関には無料提供
アクセス・ブローカーによっては、ソフトウエア/サービス・プロバイダーが出版者サイト横断的に利用者の行動や検索習慣について分析できるようにしている場合がある.
分散化した横断認証モデルのため、出版者サイト横断的にユーザ行動をたどる仕組を提供していない
研究情報探索作業の前に、必ずユーザ本人によるインストールと設定が必要ユーザが管理するすべての端末へのインストールが必要
ソフトウエアの追加導入もユーザ本人による設定も一切不要いつでも、どこでも、どんな端末からでも、学術資源への簡単なアクセスを確実に提供
“アクセス・ブローカー” RA21
“アクセス・ブローカー”:CASA、Kopernio、Anywhere Access等
ユーザ体験
RA21はユーザ体験チャレンジに始まり、ユーザの体験評価こそすべて
“You have to start with the customer experience and work your way back to technology.”— Steve Jobs
RA21ユーザ体験チャレンジチャレンジ目標
認証とアクセスの使い勝手の良さをユーザ体験の認識として2倍改善する
学術コンテンツへのユーザ・アクセスにおいて、
最大の利便性とセキュリティを両立
大半の研究情報探索の流れ キャンパス内
RA21ユーザ体験チャレンジチャレンジ目標
認証とアクセスの使い勝手の良さをユーザ体験の認識として2倍改善する
学術コンテンツへのユーザ・アクセスにおいて、最大の利便性とセキュリティとを両立
大半の研究情報探索の流れ キャンパス外
RA21ユーザ体験チャレンジ
チャレンジ目標認証とアクセスの使い勝手の良さをユーザ体験の認識として2倍改善する
学術コンテンツへのユーザ・アクセスにおいて、
最大の利便性とセキュリティを両立
大半の研究情報探索の流れ
キャンパス内外
合法的横断認証とユーザ・プライバシー
保護の両立
ユーザ・プライバシー保護の仕組み
User: 12345Role: Student
User: 56789Role: Student
User: 55555Role: Student
出版者にはユーザの所属組織のみを開示、ユーザを識別することはできない
Reporting: ChemStudent
Reporting: ChemStudent
Reporting: ChemStudent
ログインの場所は、出版者サイトでなくユーザの所属組織サイトOSU : Ohio State University
RA21ユーザ体験アプローチユーザ体験は、そのユーザの役割、たとえば、学生、研究者、図書館員等によって、体験が異なるので、ユーザの役割から始まる
その役割毎に作業の流れを調査し、その調査結果に基づきプロトタイプを作成、ユーザテストを行う
50超のユーザテスト:
5か国の院生6名、学部学生13名、大学研究者/図書館員11名、医師研究者(NHS)1名が主たるユーザ体験プロトタイプを評価企業研究者評価は進行中
ユーザテスト参加国は、ドイツ、米国、メキシコ、フィリピン、英国、(中国)
ユーザの役割 作業の流れ プロトタイプ ユーザテスト
ユーザ体験が推奨する認証の流れ
31
所属組織からのアクセスを画面上アイコンの明示で繰り返し求める
所属組織は自由に、賢く検索できる+所属組織名称、略称やメールアドレスで簡単に検索+先行打鍵マッチングやURL表示
その後のアクセスでは、
前回選択された
所属組織を記憶
1 2 3
ユーザ体験プロジェクトの主な発見
• いろいろな論文を使って仕事するとき、同じ方法で全文へアクセスしたい
• 多すぎるアクセス選択肢の表示はユーザの作業効率のスローダウンの要因となり、アクセス選択肢配置の分散はさらなる効率ダウンにつながる
• ユーザが認証で使うのは、メールアドレスやアカウントでなくユーザの所属組織名称を使うことが多い
• 企業ユーザは日常仕事の流れに沿って、多くの場合何にアクセスできるかを熟知しているので、一般的な誘導の効果は小さい。所属組織名称による事前設定ボタンが推奨される
ユーザ体験プロジェクトに対する前向きなユーザ評価
• プロジェクト・ユーザは体験を概ね成功と評価
• 大半の学術機関参加者が自分の体験を振り返り、「使いやすい」または「大変使いやすい」と評価
• ユーザは繰り返される「求められる行動」アイコンにすぐ気が付いた
• ユーザ体験は期待どおりのものであった
実行プラン:利用者機関がしなければならないこと
• いずれかの学術認証連合に参加している場合、追加設定は不要、さらにユーザはログイン手順に慣れているのでトレーニングも不要
• 学術認証連合に参加していない場合、日本では、国立情報学研究所オープンサイエンス基盤研究センターのGakuNin RDM (RDA;Research Data Management)のサービスを利用して、ユーザ認証同定、さらにユーザへの周知と研修が必要
• 現在、3,000万の個人を識別される5,000超の利用者機関が参加
実行プラン:出版者とサービスプロバイダーがしなければならないこと
• 下記の共通アイコンを表示、ユーザが
所属組織によりアクセス認証を求める
ようにする
• ユーザ認証維持サービスを実現し、
下記いずれかの方法により、ユーザ認
証探索サービスを実現する1.中央探索サービスを受入れ導入する
2.NISO推奨指針に則り確立された
ガイドラインに従い、ユーザ認証探索
サービスをローカルで独自開発する
実行プラン: 中央インフラ及びサービスの提供
ユーザ認証の長期維持サービス、そして中央探索サービスのための長期本部機能を模索中
現在、多様な関係グループを代表する非営利組織コンソーシアムによる管理のための複数の選択肢を調査研究中
本部機能要件• 集中インフラ機能の提供と維持
• 出版者や購読契約者への支援と周知
• 信用のための法律体制
評価基準• 出版者や図書館員や認証連合等から中立であると認知されていること
• 一週7日一日24時間、インフラを支援することができること
• 高度に利用可能な重大インフラの運用経験があること
• グローバル規模での支援が可能であり、前向きであること
• 財務上長期継続可能であること
RA21の進捗状況と今後
• ベストプラクティスを確立し、NISO推奨指針に従い公開する
–最終ユーザテスト中-
• 引き続き、RA21ユーザ体験を最適化し、プロトタイプを作成し、テストする
• 最近招集されたユーザ体験専門家の拡大グループのフィードバックも加え、
確実に出版者の賛同を得る
• ベストプラクティス推奨案を作成中であり、NISO批准手続きに則り、今四半期に
公開レビューを実施予定
• プロジェクトの後段階として、必要な中央インフラを稼働させることができる
プロジェクトメンバーを確認する
–進行中
• RA21ユーザ体験を支援するために必要な集中インフラ/サービスを実現することがで
きるいくつかの組織候補と協議検討中
RA21 2019年行動計画
第一四半期
•ユーザ体験プロジェクト終了
•推奨書を作成
• NISO推奨指針に則り、公開レビューを実施
第二四半期
•中央インフラの管理とライブ・サービス体制を確立
2019年後半
•出版者がRA21推奨プラクティスのサービスの準備を開始
SCHOLIX
SCHOlarly LInk Exchange
SCHOLIX誕生の必然性
オープン・サイエンス(研究推進)• 研究データの再利用により、研究時間や資源を節約し、効率的に研究
• データ・セキュリティの強化とデータ消失リスクの最小化
研究倫理(研究公正)• 研究の再現性の確立• 研究データや研究記録の正確性、完全性、信頼性の保障
学術情報マーケット動向• 学術情報業界への多種多様なベンダーの参入
⇒ 市場の混乱?
STMとSCHOLIX
STMのオープン・サイエンス戦略的目標のひとつ
STMのオープン・サイエンス戦略的目標
1. すべての研究成果やその成果物へのアクセスと利用をもっと容易にする2. オープン・サイエンスを実行することにより、学術コミュニケーション・プロセ
ス全体を容易にする
3. 研究プロセスの中で、 STMの重点項目は質と信用と完全性である
4. 簡単で直感的なユーザ体験を提供する
SCHOLIXとは、国際科学会議(ICSU-WDS)承認の下、
RDA(Research Data Alliance)主導のイニシアティブ
RDA
2013年活動開始立上げメンバーは、EC、米国国立科学基金、米国標準技術局、豪州革新省ワーキング・グループ(WG)方式によるDataCite等多くの大規模国際データイニシアティブと協働して、データインフラの開発と実施のために、WDS等と短期(18ヶ月)のWGを頻繁に立上げ
SCHOLIXフレームワークに含まれるのは、1)符号化及び交換プロトコルの基準、2)ガイドラン3)選択肢4)概念及び情報モデル
SCHOLIXSCHOlarly LInk Exchange
SCHOLIXにおけるSTMの役割
• 研究データと出版文献との普遍的リンク付けに関わる参照体制の運用を目的とする
• オープン・サイエンスを容易にし、データ共有における出版社の確実な協働を目指している
• STMの役割としては、実施や実施支援ための後方支援を増強する
• 主たる参画メンバーはエルゼビア社とシュプリンガーネイチャー社
データと文献間の情報交換相互運用の現状
出版社
出版者
インデクシングサービス
データセンタ―
研究者
研究
機関
資金
提供者
データと文献間の情報交換相互運用ためのすべての関係者に唯一無二の相互参照サービスの
実現を求めて
研究者
研究
機関
資金
提供者
出版社
出版者
インデクシングサービス
データセンタ―
SCHOLIXの目標
リンク情報エコシステム実現のための
方針及び実践的ガイドライン
出版社
出版者
インデクシングサービス
データセンタ―
SCHOLIXにより開発着手されたサービス
データと文献間の情報が集まる集積ポイントであり、それぞれのSCHOLIXハブの役割を果たしながら、SCHOLIXフレームワークに則りサービス開発に着手
• Crossref、データセンター・ハブとして
• DataCite、リポジトリ・ハブとして
• OpenAIRE、ジャーナル・ハブ
ご清聴ありがとうございました