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平成22年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) ゴルフクラブ及びゴルフボール 平成23年4月 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 技術動向班 電話:03-3581-1101(内線2155)

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平成22年度 特許出願技術動向調査報告書(概要)

ゴルフクラブ及びゴルフボール

平成23年4月

特 許 庁

問い合わせ先

特許庁総務部企画調査課 技術動向班 電話:03-3581-1101(内線2155)

- 1 -

グリップ

ヘッド

シャフト

打ち出し角

ボール初速

弾道

インパクト

ヘッド速度・軌道

スピン量

第1章 ゴルフクラブ及びゴルフボールの技術概要

本調査は、今や国際的に大きなスポーツ産業となっており、2016 年のリオデジャネイロ・

オリンピック、及び 2020 年のオリンピックの正式種目に採用されることが決定され、注目を

浴びているゴルフのクラブ及びボールに関するものである。

ゴルフでは、ボールの飛びを決める要素として、インパクト後の「ボール初速、打ち出し

角、スピン量」の 3 つがあり、これらは飛びの初期 3 要素と呼ばれている。飛びの 3 要素の

イメージ図を図 1-1 に示す。この中でも、特に、ボール初速をいかに高めるかの観点で技術

開発が進められてきている。また、飛翔中にボールに働く「揚力、抗力」も、飛距離を決め

る主要な要素となっており、解析が進められている。

図 1-1 飛びの 3 要素のイメージ図

ゴルフクラブは、ボールを打つために使用される用具であり、図 1-2 に示すように、ヘッ

ド、シャフト、グリップの 3 つの部分から構成されている。

図 1-2 ゴルフクラブの構成

ヘッド :ゴルフクラブの先端のボールを打つ部分で

あり、ヘッドの重量や構造等がボールの飛

びに大きく影響する。

シャフト:ゴルフクラブのヘッド部と手で持つグリッ

プ部をつなぐ部分であり、ゴルファーの動

きをヘッドに伝える大きな役割がある。

グリップ:ゴルフクラブを握りやすくするために付け

られた握り部分であり、インパクトの衝撃

を和らげる等の役割がある。

本調査の技術俯瞰図を図 1-3 に示した。今回の調査対象は、ゴルフ用品の中の「ゴルフク

ラブ」と「ゴルフボール」の二つを合わせた「ゴルフ用具」である。

- 2 -

<ゴルフ産業、関連産業>

ゴルフ小売市場

ゴルフ場市場

ゴルフ用品市場(クラブ、ボール、ウェア、シューズ、グローブ、キャ

ディバッグ)

快適性

・打球音(快音)・打球感(柔らかな打感)・フィーリング(スイングのしやすさ)

ゴルフクラブ ゴルフボール

・多層化技術(構成と機能)・表面構造(ディンプル)設計技術・架橋技術・塗装、着色技術

<ヘッド>・反発性能・低重心化技術・軽量化技術・接合技術・偏肉設計・薄肉化技術・フェース溝設計

<シャフト>・剛性(しなり)制御・軽量化技術・打球時のねじれ減少

<グリップ>・グリップ感

 低コストデザイン 耐久性

材料技術、製造技術、設計・評価技術(シミュレーション技術、CAD技術)

より遠くへ、より正確に飛ばし、止める!!

図 1-3 ゴルフクラブ及びゴルフボールの技術俯瞰図

この調査では、図 1-3 の技術俯瞰図に対応した技術区分を設定し、特許及び製品カタログ

の技術区分別動向解析を行っている。技術区分の中で大分類の構成を表 1-1 に示した。

表 1-1 技術区分大分類の構成 大分類 構成

1.ゴルフクラブ ・ゴルフ競技に使用されるクラブであり、大きく分けてヘッド、シャフト、グリップの 3 つの構成部分から成る。

2.ゴルフボール ・ゴルフ競技に使用されるボールであり、大きく分けてコア部分とそれを被覆するカバー部分から成る。ゴル

フボールの種類としては、大きく分けて糸巻きボールとソリッドボールに分類される。また、ソリッドボール

は、構成要素から 1 ピースボール、2 ピースボール、3 ピースボール等に分類される。

- 3 -

第2章 ゴルフクラブ及びゴルフボールの特許動向調査

第1節 全体動向調査

本調査の特許検索は、WPINDEX1)(STN)を用いたが、1990 年~1996 年までの日本特許につい

ては、PATOLIS(パトリス社の登録商標)2)の検索で補完した。調査期間(優先権主張年 1990

~2008 年)における日本、米国、欧州3)、中国及び韓国への出願件数総数はノイズ除去後で

18,090 件であった。出願人国籍別の出願件数推移を図 2-1 に示した。各国への出願件数合計

は、2002 年までは増加傾向を示しているが、2003 年以降、緩やかな減少に転じている。出願

件数比率では、日本国籍(全体の 50.8%)が一番多く、次いで米国籍(同 36.8%)となって

おり、日米両国で 9 割弱の出願件数比率を占めている。調査期間を前期(1990 年~1999 年)

と後期(2000 年~2008 年)の 2 期に分けた結果では、日本の出願件数の割合は、前期よりも

後期が減少しているのに対し、「その他」の地域の出願件数(多くが台湾から)は、前期に比

べ後期の出願件数の割合がほぼ倍増している。

なお、特許の公開制度が国・地域により異なり、またデータベースへの収録に時間がかか

るので、2010 年での検索では、2007 年以降の出願分が全て含まれていない可能性があり、特

許出願件数推移の解析では注意を要する。

出願先国別に出願人国籍別の出願件数を基に出願件数収支を解析した結果を図 2-2 に示し

た。日本への出願件数は全体で 7,705 件(全体の 42.6%)、日本国籍出願人による出願件数

比率が 83.6%と多かった。米国への出願件数は全体で 7,157 件(全体の 39.6%)、米国籍出

願人による出願件数比率は61.2%、また欧州への出願件数は全体で1,909件(全体の10.6%)、

米国籍出願人による出願件数比率は 51.9%であった。中国、韓国への出願件数はそれぞれ 656

件(全体の 3.6%)、663 件(全体の 3.7%)とかなり少なかった。

日本は、米国への出願件数は多いが、欧州への出願件数は少ない。一方、米国は、日本と

欧州にほぼ同数出願しており、日本市場だけでなく欧州市場も重視していると推察される。

1)WPI:Thomson Reuters 社提供の世界 41 ヶ国+2 特許機関発行の特許出願を収録したデータベース

2)PATOLIS:日本特許庁より公開された公開公報等を収録したパトリス社のデータベース

3)欧州への出願とは、オーストリア、ベルギー、スイス、チェコ、ドイツ、デンマーク、スペイン、フィ

ンランド、フランス、イギリス、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ポ

ルトガル、ルーマニア、スウェーデン、スロバキア、ノルウェーへの出願、及び EPC 出願とする。

- 4 -

415 431508

776

664

831

1,012

1,1281,028

1,2701,234

1,380

1,2011,0941,0901,061

987

852

1,128

0

300

600

900

1,200

1,500

1,800

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願人国籍

優先権主張1990-2008年

日本国籍9,187件50.8%

中国籍58件0.3%

米国籍6,661件36.8%

欧州国籍535件3.0%

韓国籍491件2.7%

その他1,158件

6.4%

合計18,090件

4,738件46.6%4,449件56.2%

3,875件38.1%

2,786件35.2%

266件2.6%269件3.4% 49件0.5%9件0.1% 386件3.8%

105件1.3% 855件8.4%

303件3.8%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1990-1999年 2000-2008年

出願件数比率

50.6 53.6 55.745.2

54.2 57.4 61.3 62.157.2 55.8 56.0 54.7

45.6 43.0 45.6 43.3 43.6 42.7 41.3

37.836.9 35.2

44.136.4

35.6 30.1 30.135.1 35.9 33.8 35.1

44.1

37.8 33.2 36.3 37.9 41.9 44.1

5.16.5 4.5 5.0

5.9 5.7 4.15.1 4.9

4.6 5.3 4.5 4.1 4.3 4.9 5.513.0 11.6 11.9 10.8 8.0 6.6

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願

数比

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

願件

図 2-1 出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率(全期間、期間別) (日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 5 -

日本国籍6,438件83.6%

中国籍0件0.0%

米国籍945件12.3%

欧州国籍49件0.6%

韓国籍44件0.6%

その他229件3.0%

日本国籍2,018件28.2%

中国籍17件0.2%

米国籍4,377件61.2%

欧州国籍103件1.4%

韓国籍64件0.9%

その他578件8.1%

日本国籍440件23.0%

中国籍5件0.3%

米国籍991件51.9%

欧州国籍362件19.0%

韓国籍12件0.6%

その他99件5.2%

その他243件37.0%

韓国籍16件2.4%

欧州国籍12件1.8%

米国籍194件29.6%

中国籍36件5.5%

日本国籍155件23.6%

日本国籍

136件20.5%

中国籍0件0.0%

米国籍154件23.2%

欧州国籍9件1.4%

韓国籍355件53.5%

その他9件1.4%

日本への出願7,705件

米国への出願7,157件 欧州への出願

1,909件

中国への出願656件

韓国への出願663件

2,018件

945件

440件

49件

17件

194件

0件

9件

12件

5件

12件

64件

154件

103件

991件

155件0件

44件

136件

16件

図 2-2 出願先国別出願人国籍別出願件数収支(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 6 -

日本国籍1,038件25.6%

中国籍0件0.0%

米国籍2,790件68.9%

欧州国籍137件3.4%

韓国籍26件0.6%

その他60件1.5%

合計4,051件

155

121146

302

144

240

205

287 285 296269

333

205 203

170186

138

107

259

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願人国籍

優先権主張1990-2008年

45.235.5

44.536.8

52.1

37.1 34.1 38.3

24.9

13.122.3

17.8

6.9 5.4

25.118.2

31.2

6.5

45.255.4

50.057.0

43.1

60.862.4 57.5

70.584.9

73.074.0

87.7 88.8

64.570.6

66.1

87.0 96.3

8.34.9 4.2 7.4 4.8

5.47.6

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

0

50

100

150

200

250

300

350

特許出願件数に関し、日本、米国、欧州の三極に注目して三極全てに出願された特許出願

件数(三極コア出願件数)を調査した。三極コア出願は、出願人が世界への事業展開を考え

る上で重視している特許出願と考えられ、図 2-3 には日米欧三極へ出願された全出願(公報

単位)に対する出願人国籍別の出願件数推移と出願件数比率を示した。

三極コア出願件数は 4,051 件で日米欧への全出願件数 16,771 件の 24.2%である。米国籍

の三極コア出願件数が 2,790 件と日本国籍の 1,038 件の 3 倍弱にのぼり、全体の割合が約 7

割と非常に高くなっているのは、図 2-2 で見られるように、米国籍出願人は、欧州へは日本

と同じくらい出願しており、欧州市場も重視する立場を反映しているためと考えられる。

図 2-3 三極コア出願件数推移と出願件数比率(三極コア出願、出願年(優先権主張年):1990年~2008 年)

- 7 -

  その他韓国中国欧州米国日本

その他 1,929 1,267 197 894

392

パター164 127

598 1,054 201 10

18ユーティリティ 2

15

ウェッジ85 7 3 337

1,056アイアン 40 476214670

38840ウッド34 90

2,114 1,283

出願人国籍

種類

その他韓国中国欧州米国日本

その他 980 75139 33 21

その他21 2

377 775

941ピースボール

26

マルチピースボール

1,0945 29 7

897

5832ピースボール

1 10 2523

糸巻きボール 259 61

出願人国籍

種類

ソリ

ッドボー

  米国 欧州 中国 韓国 その他

3293502,3353,387ボール

584854,3265,800 1,126398クラブ

日本

出願人国籍

第2節 技術区分別動向調査

全特許文献について技術区分別の解析を行った。

図 2-4 に、ゴルフクラブ及びゴルフボールの技術区分について出願人国籍別の出願対象比

較分析結果を示した。ゴルフクラブ及びゴルフボールの技術区分に関して、日米欧中韓その

他国籍出願人ともゴルフクラブに関する出願件数がゴルフボールよりも多い。ゴルフクラブ

の「その他」地域では、台湾からの出願が多い。

ゴルフクラブの種類では、全般的に、ウッドに関する出願件数が多い。日米の比較では、

日本ではアイアンに関する出願件数がウッドに続いて多いが、一方、米国ではパターに関す

る出願件数が 1,054 件と日本の 598 件に比べかなり多く、米国パター製品競争力を押上げる

一因となっていると考えられる。「その他」として、クラブの種類を限定しない「シャフト」、

「グリップ」及びそれらに用いられる部材のものが多かった。

ゴルフボールの種類では、ほとんどが日米両国から出願されているが、日米とも 3 ピース

以上のマルチピースボールに関する出願件数が一番多い特徴がある。

図 2-4 技術区分別出願人国籍別出願件数([大分類]) (日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 8 -

 

米国 欧州 中国 韓国 その他

1

日本

その他 31 20 5 1 4 5

その他 9147 87 7

638接着・接合・組立 28350 10 34424

シミュレーション・評価技術

120 1 2295

6成形加工法 13456 196260 10

63その他 6 13 2235

表面処理 132 21 2411

14複合化 2 382 19

177その他 1168 256

42材質 112 179 13 2 13

17その他 146 882 13

1 89722228182振動抑止

形状・構造 173 8 57 6344324

860構造 571 99 4 88 94

140 30 15 47527材質

1 23137 7146その他 9

2993,491 643230352,871構造

1,209 25316 29690材質 41

4 621220102256表面処理

出願人国籍

ッド

ャフト

グリ

ップ

製造方法

設計・評価

図 2-5 に、ゴルフクラブの項目について出願人国籍別の分析結果を示した。出願人国籍に

関係なく、ゴルフクラブでは、「ヘッド」に関する出願件数が多く、その中でも「構造」に関

する出願件数が多い。次いで、ヘッドの「材質」に関する出願件数が多い。日米では、ヘッ

ドの構造・材質に続いてシャフトの「構造」に関する出願件数が多い。また、日本では、素

材開発に関係したヘッドやシャフトの材質に関する出願が多く、米国では、グリップの材質

や構造に関する出願が日本よりも多い特徴がある。一方、台湾からの出願が多いその他地域

では、出願件数の割に製造方法に関する出願が多く、台湾でのゴルフクラブ OEM メーカーの

取組を反映していると考えられる。

図 2-5 技術区分別出願人国籍別出願件数(ゴルフクラブ) (日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 9 -

7 1 9 23

46 83 9 2 21

32 83 4 3 17

112 110 13 1 2 56

10 4 8 41

9 1 8

10 3 5 1

60 11 5 2 2 13

29 127

27 8 2 10

4 22

21 5 4

7 1 2 23

15 8 9

61 8 45

139 9 21 10

39 58 8 5 4

7 1 29 14

11 1 6

2 9 13

8 2 6 14

16 16 2

14 1 5 33

4 29

4 5 2 2

98 74 3 1 1 44

6 4 14 44

1

65 96 3 2 12

8 1 4

142 83 2 2 54

13 1 37

1 10 15 117

3 4

13 10

63 54 3 3 16

1 3 4 61

6 2

137146その他

振動抑止その他

緩衝材

振動抑止材

82173表面処理その他

その他韓国中国欧州米国日本

40金属メッキ

イオンプレーティング

塗装

1922,144構造その他 1,728 455

表面研磨

53514501 89重心配置その他

357474 99異種材料使用による重心配

184116厚み分布による重心配置

6187ライ角

141830フェースその他 471

ロフト角 195

フェース角

155フェース溝 89

158フェース多層化 117 32

171231フェース面厚み分布

232168 10体積

6375材質その他

添加剤

166161樹脂

76193繊維強化樹脂(FRP)その他

ガラス繊維強化樹脂(GFRP)

炭素繊維強化樹脂(CFRP)

236金属その他 170

1127繊維強化金属(FRM)

タングステン

亜鉛(合金)

アルミニウム(合金)

50マグネシウム(合金)

チタン(合金) 217552

1924黄銅

マレージング鋼 8

軟鉄

ステンレス 226 145

6パーシモン

出願人国籍

金属

材質

構造

表面処理

振動抑止

FRP

ェー

重心配置

図 2-6 には、ゴルフクラブヘッドの項目について出願人国籍別の分析結果を示した。ゴル

フクラブのヘッドでは、日米とも「構造」に関する出願件数が多い。ヘッドの材質では、「チ

タン」が、構造では、「フェース」と「重心の配置」の出願件数が多い。日米の比較では、日

本の方が、ヘッド材質「チタン」、ヘッド構造「フェース」に関する出願が多い。「金属その

他」では、ステンレスや軟鉄等とは異なる鉄系材料、黄銅以外の銅合金が多かった。「構造そ

の他」では、打球感の向上やスイートエリアの拡大を目的とした部材配置等に関するものが

多かった。

図 2-6 技術区分別出願人国籍別出願件数(ゴルフクラブヘッド)(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 10 -

82

77

13

469 74

68 42

276 52

221 40

186 36

428 82

1

1713 8146その他

17 1 6表面処理その他

13 3金属メッキ

115

9イオンプレーティング

145 5塗装

その他韓国中国欧州米国日本

表面研磨

4 6970480構造その他

13 75重心の配置

11 1313層構成

7 4 19多層化

12 9 21材質その他

611 5添加剤

22 10 24炭素繊維強化樹脂

113アルミニウム

1 332722スチール

12木製

出願人国籍

材質

構造

表面処理

図 2-7 には、ゴルフクラブシャフトの項目について出願人国籍別の分析結果を示した。ク

ラブシャフトでは、日米とも「構造」に関する出願が多いが、日本では、炭素繊維強化樹脂

に関する出願がかなり多い特徴がある。「材質その他」では、金属繊維、アルミナ繊維、アラ

ミド繊維等の炭素繊維以外の材料を用いた複合材料等が多かった。「構造その他」では、ゴル

フクラブのシャフトの形状やヘッドとの接合構造等が規定されたものが多かった。

図 2-7 技術区分別出願人国籍別出願件数(ゴルフクラブシャフト)(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 11 -

 米国 欧州 中国 韓国 その他

9

日本

22102490その他

53その他

12 1複合化 36

731シミュレーション技術

・評価技術

29糸巻き工程

35 2その他 68

4 6 13459その他

58145 1処理工程

1 3164 4成形加工 280

2810293384配置(パターン)、配列、数 3

4248 21352形状 9

9 1 249その他

213274塗料 255

16材質 1,213 6798

3

形状・構造 420 46768

中間層 635 804 8 12 3

その他 68 69 3 1 5

10材質1,049

14 8945

形状・構造 764 4 2474

出願人国籍

コア

カバー

ィンプル

製造方法

設計・評価

図 2-8 には、ゴルフボールの項目について出願人国籍別の分析結果を示した。

日米とも、コアとカバーの「材質」に関する出願件数が多いが、特に、日本では、カバー

の材質に関する出願が最も多く、アイオノマー樹脂やポリウレタン素材開発に関連した特許

が多い特徴がある。一方、米国では、「材質」以外にコアやカバーの「形状・構造」やコアの

「中間層」に関する出願件数も多く、幅広い観点からの権利化を図っている特徴がある。

図 2-8 技術区分別出願人国籍別出願件数(ゴルフボール) (日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 12 -

0

200

400

600

800

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

ヘッド シャフト グリップ 製造方法 設計・評価 その他

日本国籍5,800件47.6%

中国籍58件0.5%

米国籍4,326件35.5%

欧州国籍485件4.0%

韓国籍398件3.3%

その他1,126件

9.2%

合計12,193件

280338

377

518 513572

665722

622

793720

864 871814 808 779

685

581

671

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

1,100

1,200

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願人国籍

優先権主張1990-2008年

50.7 53.849.3

37.5

48.753.0 54.9

59.3 59.8 57.5 53.6 53.644.9 41.6 40.7 41.0 38.3 35.3

39.4

38.2 34.639.8

48.8

40.437.2 34.9 29.6 29.1

29.231.4 29.6

39.2

33.6 32.6 32.7 37.6 43.941.1

5.0 8.3 6.17.1 4.5 4.2

4.4 5.6 4.6

4.2

4.0 6.6 6.95.1

6.96.0

5.7 4.2 6.4 5.8 4.2 5.3 6.2 5.9 6.0 6.9 8.5 8.617.7 15.5 15.7 14.5 11.4 9.3

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

[大分類 1]ゴルフクラブについて出願人国籍別出願件数の推移を解析した。出願件数は

12,193 件で、出願件数推移と出願件数比率を図 2-9 に示した。出願件数推移は 2003 年頃ま

で増加傾向を示していたが、2004 年頃から減少が続いている。日本国籍出願人の出願が全出

願件数の 47.6%と半分弱を占めており、次いで米国が続いている。また、台湾を中心とした

その他の地域からの出願が、欧州、中国及び韓国からの出願よりもかなり多い特徴がある。

図 2-9 技術区分別-出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率([大分類 1]ゴルフクラブ) (日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

図 2-10 に、ゴルフクラブ技術区分別の出願件数の推移を示した。ヘッドに関する出願件数

が一番多く、2003 年頃まで出願件数が増加傾向で推移していたが、2004 年頃から出願件数の

減少傾向が見られる。また、シャフト等のほかの項目については、大きな変動が見られない。

図 2-10 ゴルフクラブ技術区分別出願件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 13 -

0

10

20

30

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

パーシモン ステンレス 軟鉄 黄銅

チタン(合金) 金属その他 繊維強化金属(FRM) 繊維強化樹脂(FRP)

0

20

40

60

80

100

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

パーシモン ステンレス 軟鉄 黄銅

チタン(合金) 金属その他 繊維強化金属(FRM) 繊維強化樹脂(FRP)

図 2-11(a)にウッドの材質に関する出願件数推移、図 2-11(b)にアイアンの材質に関す

る出願件数推移をそれぞれ示した。ウッドのヘッド材質では、チタン合金に関する出願件数

が一番多く、続いて繊維強化樹脂(FRP)の出願が多い。2001 年頃にゴルフクラブヘッドの

チタン適用に関する開発が活発に行われたと考えられる。

アイアンについては、ステンレスやチタン等の金属に関する出願が多く、特に大きな推移

の変化が見られない。

図 2-11(a) ウッドに関するゴルフクラブヘッド材質の出願件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

図 2-11(b) アイアンに関するゴルフクラブヘッド材質の出願件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

図 2-12 に、日本と米国籍出願人のクラブヘッドの材質(チタン合金と FRP)に関する出願

件数の推移を示した。チタン合金の肉薄フェース設計による高反発化等の進展に伴い、各種

チタン合金の検討が行われ、特に、日本において 2001 年頃から特許出願が急増した。2003

年頃に素材面でのチタン合金の検討が一段落し、その後出願が大きく落ち込んでいると考え

られる。一方、FRP については、2002 年から 2004 年にかけて日本からの出願が多い。

米国でも、チタン合金と FRP に関する出願が 2002 年前後に多い。

- 14 -

0

20

40

60

80

100

120

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

チタン合金(日本)

チタン合金(米国)

FRP(日本)

FRP(米国)

0

50

100

150

200

250

300

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

  ヘッド体積   フェース   重心配置

図 2-12 日本と米国籍のクラブヘッドの材質(チタン(合金)と FRP)に関する出願件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

図 2-13 に、ゴルフクラブヘッドの構造(体積、フェース、重心配置)に関する出願件数の

推移を示した。ヘッドの構造(体積、フェース、重心配置)では、フェースの出願が 2000

年以降増大している。一方、重心配置の出願は 2002 年頃から増大している。

図 2-13 ゴルフクラブヘッドの構造に関する出願件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 15 -

その他32件0.5%

韓国籍93件1.6%欧州国籍

50件0.8%

米国籍2,335件39.6%

中国籍0件0.0%

日本国籍3,387件57.4%

合計

5,897件

13593

131

258

151

259

347

406 406

477514 516

330

280 282 282302

271

457

0

200

400

600

800

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願人国籍

優先権主張1990-2008年

50.4 52.7

74.0

60.9

72.867.2

73.567.0

53.2 53.260.0 56.2

46.7 46.7

60.0

50.058.5 59.3

45.4

37.0

45.2

22.1

34.5

23.2 32.0 21.0 31.0

44.3 45.737.7 42.8

52.1 48.8

35.046.8

38.7 37.4

50.6

5.2

5.2

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

0

100

200

300

400

500

600

[大分類 2]ゴルフボールの出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率を図 2-14 に示した。

合計出願件数は 5,897 件で、この技術区分においても調査期間を通して日本国籍出願人によ

る出願件数が最も多かった。2002 年頃までは出願件数の増大が見られたが、2003 年に大きく

減少している。出願件数比率では日本国籍出願人が 57.4%で、次いで米国の順となった。出

願件数比率は、日米が大半を占めている。

図 2-14 技術区分別-出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率(ゴルフボール) (日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 16 -

0

100

200

300

400

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

コア(芯) カバー(最外層) ディンプル 製造方法 設計・評価 その他

0

100

200

300

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

コア(日本)

コア(米国)カバー(日本)

カバー(米国)

ゴルフボール技術区分別について出願件数の推移を解析し、図 2-15 に示した。コアとカバ

ーに関する出願件数が多い。1990 年代半ばからコアとカバーに関する出願件数が急増してい

たが、2003 年頃に減少が見られる。また、ディンプルに関する出願件数は、2000 年頃に増加

している。

図 2-15 ゴルフボール技術区分別出願件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

図 2-16 に、日本と米国国籍出願人のゴルフボールのコアとカバーに関する出願件数の推移

を示した。日米とも 1990 年代半ばから 2002 年頃にかけてコアとカバーに関する出願件数の

増大が見られるが、コアとカバーとも 1990 年代半ばから米国の方が日本よりも出願件数が多

くなっている。

図 2-16 日本と米国籍のゴルフボールのコアとカバーに関する出願件数推移 (日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 17 -

0

20

40

60

80

100

120

140

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

アイオノマー樹脂 ポリイソプレン ポリウレタン ポリアミド系エラストマー

0

20

40

60

80

100

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

アイオノマー(日本)

アイオノマー(米国)

ポリウレタン(日本)

ポリウレタン(米国)

ゴルフボールカバーの材質について出願件数の推移を解析し、図 2-17 に示した。カバーの

材質では、当初はアイオノマー樹脂に関する出願件数が多かったが、1990 年代後半からポリ

ウレタンに関する出願件数が増加し、2000 年にブリヂストンスポーツがソリッドボールでは

初めてカバー材にポリウレタンを採用したこともあって、2001 年を中心にポリウレタンに関

する出願が急増した。2003 年頃にカバー材にポリウレタンを使用する特許マップがほぼ完成

し、その後出願が大きく減少したと考えられる。最近、また増加傾向で推移している。

図 2-17 ゴルフボールカバーの材質に関する出願件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

図 2-18 に、日本と米国籍出願人のゴルフボールのカバー材質(ポリウレタンとアイオノマ

ー樹脂)に関する出願件数の推移を示した。日本では、1990 年代はアイオノマー樹脂が、2000

年に入ってからはポリウレタンの出願が多い。米国では件数は少ないが日本と同様の出願傾

向を示している。

図 2-18 日本と米国籍のゴルフボールのカバー材質(ポリウレタンとアイオノマー)に関する出願件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 18 -

 

6

36

19 11

48

1

パターアイアンウッド

その他 4 3 5

添加剤 1 2 2

1皮

合成ゴム・エラストマー 4 105

添加剤 1

2天然ゴム 1

添加剤 15 4 3

7その他 12 14

58炭素繊維強化樹脂 230

スチール 5 10 1

材質その他 61 25 55

1319154炭素繊維強化樹脂(CFRP)

アルミニウム 1

147樹脂 58 108

27 8179繊維強化樹脂(FRP)その他

48ガラス繊維強化樹脂(GFRP)

62 48タングステン 17

52101184金属その他

21 13繊維強化金属(FRM)

31亜鉛(合金)

71 12 6マグネシウム(合金)

13 237黄銅

43アルミニウム(合金) 144

22 4マレージング鋼

492 31141チタン(合金)

66軟鉄

172 106ステンレス

11パーシモン

クラブ種類

金属

FRP

ッド材質

ャフト材質

グリ

ップ材質

図 2-19 に、ゴルフクラブの種類と材質との相関関係を示した。ウッド、アイアン、パター

ともヘッド材質に関する特許が多い。ウッドのヘッド材質として、チタン合金に関するもの

が一番多い。アイアンのヘッド材質では、チタン合金、ステンレス、金属その他に関する出

願が多い。パターのヘッド材質では、樹脂に関する出願が多い。

図 2-19 ゴルフクラブ種類と材質の相関関係(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 19 -

  その他糸巻き 1ピース 2ピース マルチピース

3042シミュレーション技術・

評価技術

6743 15複合化

15 17014271成形加工 5

3 24 141222処理工程

11634 74形状 412

糸巻き工程 29

395 2569597形状・構造

316 468103配置、配列、数 107

24913 33塗料 24

48582846999材質

1,287 6767中間層

421 2866468形状・構造

3491,05621890材質 101

ボール種類

コア

カバー

ディンプル

製造方法

設計・評価

ゴルフボールの種類とコア、カバー、ディンプル、製造方法、設計・評価との相関関係を

図 2-20 に示した。「マルチピースボール」では、コアの材質と中間層、カバーの材質と形状・

構造に関する出願件数が多い特徴がある。また、ボールの種類を限定していない「その他」

では、ディンプルに関する出願が多い特徴があり、空力特性を向上させるボール表面の加工

には、ボールの種類を限定しないで出願していると考えられる。

図 2-20 ゴルフボールの種類とコア、カバー、ディンプル、製造方法、設計・評価との相関関係(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 20 -

  構造

(全体

構造

(フ

ェー

構造

(

重心

表面処理

振動抑止材・緩衝材

その他

材質

構造

表面処理

その他

材質

形状・構造

その他

成形加工法

複合化

接着・接合・組立

その他

シミ

ュレー

ョン・評価技術

その他

その他

2 1 2 1 2

2 3 1

5 38 14 4 27 33 8 8 7 5

6 4 2 2 1

14 8 4 5 22 2 16 5

15 6 37 1 5 9 1 3 8 5 2

17 6 19 7 24 6 13 5 1

2 37 2 8 5 13 1 39 7 6 9

18 24 1 6 2 20 2 39 2 6 1

10 18 5 8 20 19 11 27 3 15 29 8 2

10 29 11 22 6 1 1

7 7 2 32 10 18 5 4 2

1 6 16 4 13 13 3 32 12 1 1

3 22 39 1 2 1 12 6 16 32 20

15 31 26 17 13 14 13 14 9 12 2 1

38 20 5 4 14 27

22 12 13 1 1 13 19 1

1 5 1 7 3 3 1 6

2 13 15 4 10 4

20 13 27 3 15 4 5 4

17 4 14 1 1 6 9 18 1 7 2 2

8 18 31 15 2 6 10 31 14

22 2 39 2 1 16 24 14

3 8 4 15 6 13 2 2 1

38 16 23 5 16 2 22 7 3 10 20 5

15 5 5 11 1 13 10 2 2 10 2 4 7 2

29 31 2 1 10 1 3 2 4 1

材質

21131311 74 2 1上級者向けクラブの提供

393 1031ジュニア向けクラブの提供

51 8118 4 66112その他 19

18 14 3123 16女性向けクラブの提供

727 157 3 1 3材料コスト 7

99 44 447一般向けクラブの提供 5

4135240679283125 21 11 2330生産性(加工性) 76 3

48516 328 7 4118慣性モーメント 1

409 18 1932350332反発係数 94

17 987 40その他 62 8 55 57

11885246210 3162 19 4 15軽量化 1 95

104調節性(重心、打点等) 71 525 50 3 2544 62 66

4219 94 29269表面特性(耐傷付性、耐摩擦性) 103 78

812627しなり(撓み)特性 7 106 403

機械的強度、硬度 362 1330245446 141 319 140 311

17その他 71 97314 11760 162 6641 146 57 48 54113 53

678937調節性(交換) 193 34

84調節性(角度) 13 248 43 22 42 59

125調節性(長さ) 8

69601171098916695159177 35外観・質感・把握性 166410 36

96打撃音 257 644 13165

478 103 33 346 49 137 67飛行方向の安定性 517 45 57139 1,344

4446169562834835スイングの安定性・正確性 607 1517208117

スイートエリア拡大 358 8 4218188103

42172122389飛距離の長さ 389 2938309873

5919141飛距離(着地点)の安定性 317 1 10111

102304117スピンコントロール

解決手段

課題

機能

物性

経済性

市場

ヘッド シャフト グリップ 製造方法 設計・評価

ゴルフクラブ及びゴルフボールに関する特許について、「技術的課題」、「解決手段」の 2

要素でマトリクス調査を行い、ゴルフクラブについては図 2-21 に、ゴルフボールについては、

図 2-22 に示した。

ゴルフクラブでは、技術的課題として、「飛行方向の安定性」及び「飛距離の長さ」に関す

る出願件数が多く、その解決手段として、クラブヘッドの「構造」に関するものが多い。

図 2-21 ゴルフクラブの技術的課題と解決手段の一覧(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

ゴルフボールでは、技術的課題として、「飛距離の長さ」や「耐久性」に関する出願件数が

多く、その解決手段として、カバーの「形状・構造」やコアの「材質」に関するものが多い。

- 21 -

  中間層

形状・構造・その他

材質

形状・構造

塗料

その他

形状

その他

成形加工

糸巻き工程

表面処理工程

複合化

その他

その他

その他

6

1 1 1

5 9 6 4

9 2 1

1 4

4 8 2 19

10 1 1 4 4 2

2 16 5 2 54 17 34 1

4 4 4 34 2 13 2 7 1 2

4 14 6 1 2 30

10 23 2 32 19 7 22

27 32 42 2 7 3 2 2 4 37

3 21 1 26 28 1

20 8 12 21 5 9 2 24

1 2 2 1 1 5 3

18 6 7 2 34 5 1 4

6 27 3 1 1 1 12

1 1 6

24 1 42 10 9 4 4 1 2

14 38 50 3 2 20 8 3

3 1 3 5 6

シミ

ュレー

ョン・評価技術

配置

、配列

、数

材質

599135020 811 1上級者向けボールの提供

51 24ジュニア向けボールの提供

2 17 42その他 2

6 110 121510 55女性向けボールの提供

425 11 17材料コスト 2

11 113 826一般向けボールの提供 14

42 26 220790201剛性調整

29140108 8 25117生産性(加工性) 7 47

1 929 10その他 61 44

742474129524890 16 15 3 7耐久性 3

120172 547 54 2 7353反発特性 84

スピンコントロール 127 220 204 120 15482

17 91939223表面特性(耐傷付性、耐摩擦性)

476734917その他 59 7259

打撃音 194 330539208 64

2視認性・識別性・ファッション性 8 4213 101103

5231飛行方向の安定性 22 428 67

着地後の転がり(ラン)の抑制 16 4 6 1022

79飛行中の安定性 34 38 5 862

49291337375736 449飛距離の長さ 901655 5

52 89 116飛距離(着地点)の安定性 34 1056 411

解決手段

課題

機能

物性

経済性

市場

コア カバー ディンプル 製造方法

設計・評価

図 2-22 ゴルフボールの技術的課題と解決手段の一覧(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

- 22 -

日本国籍

378件54.8%

中国籍

1件0.1%

米国籍205件

29.7%

欧州国籍

33件4.8%

韓国籍

22件

3.2%

その他51件

7.4%

合計690件

37

20 20

30

23

45

4946

25

52

41

45

3331

55

31 31

27

49

0

10

20

30

40

50

60

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願人国籍

優先権主張1990-2008年

174件50.6%204件59.0%

117件34.0%88件25.4%

25件7.3%8件2.3%1件0.3%

7件2.0%15件4.3%

21件6.1% 30件8.7%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990-1999年 2000-2008年

出願件数比率

54.1

75.0

50.060.0

43.535.6

42.9 43.5

56.061.2

69.2

56.1 57.8 54.5

41.9

67.3

51.6

64.555.6

32.4

25.0

30.0

36.7

34.8 46.7 32.737.0

28.028.6

28.8

24.4

40.0

18.235.5

16.4

19.4

19.4

25.9

13.5

10.0 17.44.4

6.1

10.9 8.04.1

9.7

6.78.0

9.1

6.5

19.4 11.110.0

4.3 6.716.3

6.5 6.117.1 18.2

12.9 14.59.7

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

数比

0

10

20

30

40

50

60

第3節 注目研究開発テーマの動向調査

ゴルフクラブ及びゴルフボールの注目研究開発テーマとして、委員会での議論などを踏ま

えて次の 4 件を選択してその動向を調査した。

・A: ゴルフシャフトの剛性(しなり)最適化による飛び性能の向上

・B: 各個人に最適なゴルフクラブの提供

・C: 高性能ゴルフボールの開発

・D: 個人のレベル・ニーズに合ったゴルフボールの開発

【注目研究開発テーマ A:ゴルフシャフトの剛性(しなり)最適化による飛び性能の向上】

は、ゴルフクラブにおいては、クラブヘッドの反発係数や体積等の制約があり、ヘッド以外

によって飛び特性を向上させる取組が求められており、ゴルフシャフトのしなり特性最適化

による飛び性能向上の研究開発が行われている。クラブシャフトによる飛び特性の向上とし

て、シャフトのしなり特性を引き出すための剛性制御により、シャフトの反発特性を高め、

る取組が行われている。

【注目研究開発テーマ A:ゴルフシャフトの剛性(しなり)最適化による飛び性能の向上】

では、ゴルフクラブの技術的課題「物性(しなり特性)」と技術的課題「物性(飛距離の長さ)」

に注目して分析した。調査期間(優先権主張年 1990 年~2008 年)における特許出願件数は

690 件であった。出願人国籍別の出願件数推移、及び出願人国籍別の出願件数比率を図 2-23

に示した。特許出願件数推移では、1990 年代半ばからの出願が多い。

調査期間における出願人国籍別出願件数比率では日本 54.8%、米国 29.7%である。 図 2-23 【注目研究開発テーマ A:ゴルフシャフトの剛性(しなり)最適化による飛び性能の向

上】の出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

注)検索条件:【大分類:クラブ】×(【技術的課題:物性「しなり特性」】×【解決手段:シャフト】+【技

術的課題:物性「飛距離の長さ」】×【解決手段:シャフト】)

- 23 -

その他171件

7.5%

韓国籍71件

3.1%

欧州国籍

84件3.7%

米国籍

985件

43.0%

中国籍

5件

0.2%

日本国籍

973件

42.5%

合計

2,289件

37

68

8897 97

5872

8672

175 175

197

138 143153

170 166

141

156

0

50

100

150

200

250

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願人国籍

優先権主張1990-2008年

598件41.0%375件45.1%

629件43.1%356件42.8%

39件2.7%

45件5.4%5件0.3%0件0.0% 63件4.3%

8件1.0% 124件8.5%47件5.7%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1990-1999年 2000-2008年

出願件数比率

32.438.2

61.4

27.8

51.5

36.2 40.3 43.051.4 52.6

58.346.9 45.2 42.8 39.9

34.0 31.8 34.9 31.9

32.4

52.9

31.8

60.8

39.2

53.4 47.2 45.3 31.935.9

32.0

37.145.2

32.6 37.1

35.9

54.159.0

53.9

18.9

5.9 4.56.2 6.2 8.3

8.3 4.6

4.6

5.9

4.37.0 14.4

4.316.25.2 5.2 4.2

9.3 6.9 6.4 5.7 8.6 5.1

19.613.3

9.2 7.1 4.2 7.1

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

0

50

100

150

200

250

【注目研究開発テーマ B:各個人に最適なゴルフクラブの提供】は、女性やシニア層等は

成年男子と違って、ゴルフクラブを振るパワー等が異なるため、個人個人に合ったクラブの

選定が望ましいと考えられ、各個人に最適なゴルフクラブの開発が進められている。これに

合わせ、アタッチメントの組合せによる一人一人に最適なゴルフクラブを提供するための製

品開発の展開が進んでいる。例えば、各個人に最適な形状・重量のヘッドや最適な長さのシ

ャフトの提供が行われたり、シャフトの中心線に対するボールが当たる面のフェースとの傾

斜角度であるロフト角やシャフトの中心線と地面のなす角度であるライ角、フェースの角度

を自由に調整できる機能を搭載したゴルフクラブが開発されており、今後の動向が注目され

ている。

【注目研究開発テーマ B:各個人に最適なゴルフクラブの提供】では、ゴルフクラブの技

術的課題「市場」と機能「調節性」に注目して分析した。調査期間(優先権主張年 1990 年~

2008 年)における特許出願件数は 2,289 件であった。出願人国籍別の出願件数推移、及び出

願人国籍別の出願件数比率を図 2-24 に示した。特許出願件数推移では、2000 年頃から出願

件数が増加している。出願人国籍の比率では米国籍出願人の出願件数比率が 43.0%と高く、

日本 42.5%と続いている。

図 2-24 【注目研究開発テーマ B:各個人に最適なゴルフクラブの提供】の出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008年)

注)検索条件:【大分類:クラブ】×【技術的課題:市場+機能・調節性(交換、長さ、角度、重心、打点等】

- 24 -

日本国籍

455件

74.3%

中国籍

0件

0.0%

米国籍

123件

20.1%

欧州国籍

6件

1.0%

韓国籍

19件

3.1%その他

9件

1.5%

合計

612件

7

0

36

2320

6266

61 59

69

25 27 25

18

10

26 26

49

3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願人国籍

優先権主張1990-2008年

14.3

47.2

91.3 90.082.3

62.172.1 71.4

79.7 78.384.0

70.464.0

83.3

100.0 96.2

76.957.1

100.0

36.1

8.7 10.0

31.8

27.9 28.6 13.6 20.316.0

25.9

20.0

11.115.4

9.7

4.8 4.5 6.816.0

5.6 7.7

28.6

16.7

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

数228件69.7%

227件79.6%

78件23.9%45件15.8%

6件1.8%6件1.8% 13件4.6%9件2.8%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1990-1999年 2000-2008年

出願件数比率

【注目研究開発テーマ C:高性能ゴルフボールの開発】は、飛んできちんと止まる高性能

なゴルフボールの開発を目指して、ゴルフボールの多層構造化と各層に最適な新素材を適用

する方向での研究開発が行われている。また、理想的な弾道で飛ばし、最適なアプローチを

可能とするためにディンプルの構造面での最適化が行われている。

【注目研究開発テーマ C:高性能ゴルフボールの開発】では、技術的課題「機能(飛距離の

長さ、飛行方向の安定性、着地後の転がりの抑制、スピンコントロール)」に着目して分析し

た。調査期間(優先権主張年 1990 年~2008 年)における特許出願件数は 612 件であった。

出願人国籍別の出願件数推移、及び出願人国籍別の出願件数比率を図 2-25 に示した。特許出

願件数推移では、1990 年代半ばから出願件数が大きく増加している。出願人国籍の比率では、

日本国籍出願人の出願件数比率が 74.3%と最も高く、米国 20.1%と続いている。

図 2-25 【注目研究開発テーマ C:高性能ゴルフボールの開発】の出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率(全期間、期間別)(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990年~2008 年)

注)検索条件:【大分類:ボール】×【技術的課題:機能・飛距離の長さ】×【技術的課題:機能・(飛行方

向の安定性+着地後の転がりの抑制+スピンコントロール)】

- 25 -

その他

0件

0.0%

韓国籍

0件

0.0%

欧州国籍

1件

0.4%

米国籍

20件7.6%

中国籍

0件

0.0%

日本国籍

242件92.0%

合計

263件

3

0

6

26

14

19

9

36

18

64

17 18

34

24

1411

22

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願人国籍

優先権主張1990-2008年

158件92.4%84件91.3%

13件7.6%7件7.6% 1件1.1%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1990-1999年 2000-2008年

出願件数比率

66.7

100.0 100.0

83.3

100.0 100.094.7

88.9

63.6

80.6 77.8

100.0 100.094.1 94.4

100.0 100.0 100.0

33.3

5.311.1

36.4

19.4 22.2

5.9 5.616.7

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

【注目研究開発テーマ D:個人のレベル・ニーズに合ったゴルフボールの開発】は、個人

のレベル等に合ったゴルフボールを提供するものである。ヘッドスピードやスイング特性等

の個人の技能レベル・プレースタイルに応じて、飛距離や飛行の安定性・スピンコントロー

ル・剛性・耐久性・視認性等に関して各個人のニーズが多様化する傾向にあり、今後は、そ

のような個人のレベル・ニーズに応じたゴルフボールの開発が一層進むと考えられる。

【注目研究開発テーマ D:個人のレベル・ニーズに合ったゴルフボールの開発】では、技術

的課題「市場」に着目して分析した。調査期間(優先権主張年 1990 年~2008 年)における

特許出願件数は 263 件であった。出願人国籍別の出願件数推移、及び出願人国籍別の出願件

数比率を図 2-26 に示した。出願人国籍の比率では、日本国籍出願人の出願件数比率が 92.0%

と最も高く、米国 7.6%と続いている。出願件数には大きな変動はあるが、2004 年頃から増

加傾向で推移している。

図 2-26 【注目研究開発テーマ D:個人のレベル・ニーズに合ったゴルフボールの開発】の出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率(全期間、期間別)(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)

注)検索条件:【大分類:ボール】×【技術的課題:市場】

- 26 -

第3章 ゴルフクラブ及びゴルフボールの製品開発動向調査

特許出願動向の解析とともに、製品カタログからゴルフクラブ及びゴルフボールに関する

製品開発動向を調査した。調査対象企業は、日本企業 15 社(SRI スポーツ、キャスコ、グロ

ーブライド、セイコーエスヤード、ブリヂストンスポーツ、マルマン、ヤマハ、ヨネックス、

横浜ゴム、美津濃、本間ゴルフ、グラファイトデザイン、マミヤ・オーピー、三菱レイヨン、

藤倉ゴム工業)、米国企業 10 社(Acushnet、Callaway Golf、Cobra Golf、MacGregor、NIKE、

PING、SPALDING、TaylorMade、Wilson、True Temper)の合計 25 社とし、調査対象期間は、

カタログ発行年ベースで 1990 年から 2010 年とした。

ゴルフクラブ及びゴルフボール製品品目抽出の情報源としては、入手可能な各社発行カタ

ログ及び「ゴルフ用品総合カタログ」(ユニバーサルゴルフ社発行)を利用した。また、必要

に応じ各社の WEB 情報を活用した。これらの情報源を基に、各年のカタログに掲載された新

規品目を抽出し、ゴルフクラブ 6,447 件、ゴルフボール 568 件、合計 7,015 件をとりまとめ

た(表 3-1)。

なお、カタログに掲載されている品目数では、「各社カタログ」よりも「ゴルフ用品総合カ

タログ」の方が少ない傾向があるため、「ゴルフ用品総合カタログ」による新規品目の抽出で

は、少なく見積もられることがあることに留意する必要がある。

表 3-1 ゴルフクラブ及びゴルフボールの品目数(カタログ発行年:1990 年~2010 年) 製品分類 品目数

ゴルフクラブ 6,447

ゴルフボール 568

合計 7,015

カタログ情報を基にしたゴルフクラブ及びゴルフボールの開発の進展を図 3-1~図 3-4 に

まとめた。

ゴルフクラブでは、1990 年からゴルフクラブのヘッドにチタン材が使用されるようになっ

たことに伴い、クラブヘッドの大型化が可能となり、ヘッド大型化が進んだ。図 3-2 に、各

年におけるクラブヘッド体積の最大値の推移を示す。

一方、クラブヘッドフェース面の厚みを薄くする加工技術を駆使した高反発化の取組や、

クラウン部の厚みを薄くするとともに、炭素繊維強化樹脂等の軽量化素材を使用し、また、

ソール部にタングステン合金等の重い素材を装着することによる低重心化等の開発が進展し

ている。

シャフトの開発では、素材として軽量な炭素繊維強化樹脂が採用され、クラブヘッドの大

型化に合わせ、シャフトの長尺化等の進展が見られている。

一方、ゴルフボールでは、マルチピース化の進展が見らており、3 ピースあるいは 4 ピー

スのゴルフボールが製品化され、また、5 ピースボールも上市されている。ゴルフボールの

開発設計としては、コア部を柔らかく、外側に向かって硬くする外剛内柔の開発が行われて

いる。また、反発性能を向上させるため、ウレタンカバーの厚みを限りなく薄くし、コア部

の体積を増大させる取組が行われている。カタログにポリウレタンカバーの厚みが記載され

ているものを抽出し、各年における各社のカバー厚み最小値の推移を図 3-4 に示した。

- 27 -

ャフト

ッド

1990年        2000年         2010年

パーシモンヘッド期

メタルヘッド期

チタンヘッド採用

ヘッドの大型化

高反発ヘッド

部分肉厚フェース設計:フェース厚の肉薄化

による反発力増大

(マレージング鋼など

の高剛性材採用)

アジャストメント化

鍛造法:金属の高密度化

打感、打音の改良

深低重心化:・クラウン部にCFRPや薄化

高剛性材採用による軽量化

・ソール部にタングステン合金

などの重い素材を充填

カーボンシートの多次元配置炭素繊維強化複合材による軽量化

多次元織物

シャフトの長尺化

100

200

300

400

500

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

ッド体積

SRIスポーツ ブリヂストンスポーツ マルマン ヨネックス 横浜ゴム

美津濃 Acushnet MacGregor TaylorMade

ヘッド体積460cm3

(cm3)

2004年ヘッド体積の規制

図 3-1 カタログ情報を基にしたゴルフクラブ開発の進展(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

図 3-2 ゴルフクラブヘッド体積の推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

- 28 -

コア部:

柔らかい素材

コア径の増大

カバー部:

極薄肉化

ウレタンカバー搭載

1990年       2000年         2010年

極薄カバー化カバー厚みを極限まで薄く

し、コア径増大による飛距

離向上

マルチピース化

1986年 3ピース1997年 4ピース 2003年 5ピース

糸巻きボール

2ピースボール

外剛内柔設計の追求柔らかなコア:反発性能向上

カバーの硬さ:スピンコントロール

空力特性の向上・ディンプルの形状・数

・シームレス成形

0.5

0.4 0.4 0.4

0.3

0.8 0.8 0.8 0.8

0.6

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1990 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

カバー

層厚み

(mm

SRIスポーツ Acushnet Callaway Golf

図 3-3 カタログ情報を基にしたゴルフボール開発の進展(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

図 3-4 ゴルフボールポリウレタンカバー層厚みの推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

- 29 -

0

200

250

300

350

400

450

800

~19901991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

品目数

0

10

20

30

40

50

60

~19901991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

品目数

第1節 ゴルフクラブ及びゴルフボール品目数の推移

図 3-5(a) には、ゴルフクラブ、図 3-5(b)には、ゴルフボールの品目数の推移をそれぞれ

示した。なお、1990 年のカタログでは、新製品の判別が困難なため、1990 年における品目数

は、1990 年以前の品目数も含んでおり、ほかの年よりも多めに見積もられていることに留意

する必要がある。

ゴルフクラブでは、調査開始の一時期を除けば、1990 年代の品目数が年間 250 件前後から

2000 年以降の 300 件前後へと増加している。一方、ゴルフボールでは、絶対数はゴルフクラ

ブよりも少ないが、品目数は増加傾向で推移している。

図 3-5(a) ゴルフクラブ品目数推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

合計品目数:6,447 件

図 3-5(b) ゴルフボール品目数推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

合計品目数:568 件

- 30 -

71

708 634632536 326 303 269260187182 164

275444273106 44

ボール 92

144138 7

1111141221306012381119 6681

715クラブ 253202

69

SR

Iスポ

ーツ

キャ

スコ

グロ

ーブ

ライ

セイ

コー

スポ

ーツ

ライ

ブリ

ヂス

トン

スポ

ーツ

マル

マン

ヤマ

ヨネ

ック

横浜

ゴム

美津

本間

ゴル

グラ

ファ

イト

デザ

イン

マミ

ヤ・オ

ーピ

三菱

レイ

ヨン

藤倉

ゴム

工業

Acu

shnet

Callaw

ay G

olf

Cob

ra Golf

Mac

Greg

or

NIK

E

PIN

G

SPA

LD

ING

Taylo

rMad

e

Wils

on

Tru

e Tem

per

79

180 169 156 147

68 64 88

168 114 71 87

15732713 23105

54139121 11その他

5 23 40 19 19212 32110

4256232

327パター

29144312 11691434 3221472749 9 20ウェッジ

4736466 27 434465 125200

26134

18140 267 236

17 3071

21 1アイアン

13311 731211152131111214246101215 595

ユーティリティ

Tru

e Tem

per

Wils

on

Tay

lorM

ade

SPA

LD

ING

PIN

G

NIK

E

Mac

Gre

gor

Cob

ra G

olf

Calla

way G

olf

Acu

shn

et

藤倉

ゴム

工業

三菱

レイ

ヨン

マミ

ヤ・オ

ーピ

グラ

ファ

イト

デザ

イン

本間

ゴル

美津

横浜

ゴム

ヨネ

ック

ヤマ

マル

マン

ブリ

ヂス

トン

スポ

ーツ

セイ

コー

スポ

ーツ

ライ

グロ

ーブ

ライ

キャ

スコ

SR

Iスポ

ーツ

53 1342 30101

158

272

45

269

40

6487305255

35

151 6341 48 4

ウッド

種類

第2節 技術区分別動向調査

各社のカタログ及びユニバーサルゴルフ社「ゴルフ用品総合カタログ」に掲載された品目

について、技術区分別の解析を行った。

特許出願動向の技術区分別分析と同様に、ここではゴルフ用具の技術区分別動向の分析を

行った。特許出願動向(図 2-4)と同様に、品目数では、ゴルフクラブに関するものがゴル

フボールよりも多い(図 3-6)。

図 3-6 技術区分別-企業別品目数([大分類])(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

図 3-7 には、技術区分表のゴルフクラブの「種類」の項目について企業別の分析結果を示

した。ブリヂストンスポーツ、マルマン、美津濃等では、ウッドに関する品目数が多いが、

SRI スポーツや Acushnet、PING では、パターに関する品目数が多い特徴がある。

図 3-7 技術区分別-企業別ゴルフクラブ(種類)品目数(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

- 31 -

27 24 39 17

39 32

21

132127 11910577 62 5751 49 444139 38 36 2620 1916

28

1128984 836644 2824 242219 1815 15

38 22

111112231 3317樹脂

7

11 10 10 3 4 941937

115繊維強化樹脂(FRP)

1145111335 420金属その他

1繊維強化金属(FRM)

452749 111037

141タングステン

SR

Iスポ

ーツ

キャ

スコ

グロ

ーブ

ライ

セイ

コー

スポ

ーツ

ライ

ブリ

ヂス

トン

スポ

ーツ

マル

マン

ヤマ

ヨネ

ック

横浜

ゴム

美津

本間

ゴル

グラ

ファ

イト

デザ

イン

マミ

ヤ・オ

ーピ

三菱

レイ

ヨン

藤倉

ゴム

工業

Acu

shnet

Callaw

ay G

olf

Cob

ra Golf

MacG

regor

NIK

E

PIN

G

SPA

LD

ING

TaylorM

ade

Wilso

n

Tru

e Tem

per

2亜鉛(合金)

2281734

811438アルミニウム(合金)

7マグネシウム(合金)

1146チタン(合金)

135黄銅3276112 3 23

マレージング鋼22172 1 1

軟鉄114151144

ステンレス

2 3 4 17 302014

パーシモン

ッド材質

39 31 30 24 51

1419783 72 57 5444 3931

42 51 27

321211 14樹脂

19 2215 7 1 111013 15繊維強化樹脂(FRP)

7486428 3 13金属その他

1繊維強化金属(FRM)

2331814122613 1161515223タングステン

SR

Iスポ

ーツ

キャ

スコ

グロ

ーブ

ライ

セイ

コー

スポ

ーツ

ライ

ブリ

ヂス

トン

スポ

ーツ

マル

マン

ヤマ

ヨネ

ック

横浜

ゴム

美津

本間

ゴル

グラ

ファ

イト

デザ

イン

マミ

ヤ・オ

ーピ

三菱

レイ

ヨン

藤倉

ゴム

工業

Acus

hnet

Calla

way G

olf

Cobra

Golf

MacG

regor

NIK

E

PIN

G

SPA

LD

ING

TaylorM

ade

Wilson

True T

empe

r

亜鉛(合金)121 1 4

アルミニウム(合金)

2マグネシウム(合金)

182 14 8 13 7 3 9 5 1 2 5 142チタン(合金)

112112 1黄銅

63741422 1 15マレージング鋼

21211525 24172323412194ステンレス

3 15 5 12 23 21 4 7 1 20 7 25162091 78

6軟鉄

パーシモン

ッド材質

図 3-8(a)には、ウッドに関するゴルフクラブヘッド材質の品目数、図 3-8(b)には、ア

イアンに関するゴルフクラブヘッド材質の品目数について主要企業別の結果をそれぞれ示し

た。ウッドに関するヘッド材質では、特許の場合と同様、チタンが多い。セイコースポーツ

ライフ、ヤマハ、ヨネックス等は、チタン使用の割合が高い。一方、アイアンのヘッド材質

では、特許の場合と異なり、ステンレスが一番多く、次いでチタンが多い特徴がある。

図 3-8(a) ウッドに関する企業別ゴルフクラブヘッド材質の品目数(カタログ発行年:1990年~2010 年)

図 3-8(b) アイアンに関する企業別ゴルフクラブヘッド材質の品目数(カタログ発行年:1990年~2010 年)

- 32 -

0

50

100

150

~19901991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

パーシモン ステンレス 軟鉄 黄銅

チタン(合金) 金属その他 繊維強化金属(FRM) 繊維強化樹脂(FRP)

(件)

0

50

100

150

~19901991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

パーシモン ステンレス 軟鉄 黄銅

チタン(合金) 金属その他 繊維強化金属(FRM) 繊維強化樹脂(FRP)

(件)

図 3-9(a)にウッドに関するゴルフクラブヘッド材質の品目数の推移、図 3-9(b)にアイ

アンに関するゴルフクラブヘッド材質の品目数の推移をそれぞれ示した。ウッドのクラブヘ

ッドの材質では、1990 年代前半はステンレスを採用したものが多く、1990 年代半ばからチタ

ンを採用するものが多くなっている特徴がある。軽量素材のチタンを使用することにより、

ヘッドをより大きくする利点をいかしている。一方、アイアンのクラブヘッドの材質では、

ステンレスを採用したものが多い特徴がある。

図 3-9(a) ウッドに関するゴルフクラブヘッド材質の品目数推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

図 3-9(b) アイアンに関するゴルフクラブヘッド材質の品目数推移(カタログ発行年:1990年~2010 年)

ゴルフクラブヘッドの「構造」について品目数の推移を解析し、図 3-10 に示した。ヘッド

の構造では、ヘッドの重心配置に特徴のある品目数が多く、特に 2002 年頃で急増している。

低重心、深重心によるクラブヘッドスピードの向上と弾道の適正化により飛び改善の試みが

成されていると考えられる。

- 33 -

0

50

100

150

~19901991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

  ヘッド体積   フェース多層化   フェース面厚み分布

  フェース溝   重心配置

(件)

9

42 37 43 7 17 10 20 18 23 11 16

41 55 24 42 6 21 34 8

8 9

13その他

19マルチピース

4 21 342ピース

111ピース

2 17糸巻き

Wilso

n

Taylo

rMade

SPA

LD

ING

NIK

E

Callaw

ay Golf

Acush

net

本間

ゴル

美津

横浜

ゴム

マル

マン

ブリ

ヂス

トン

スポ

ーツ

キャ

スコ

SRIス

ポー

種類

18 37 19 19 19

58 25

85 37 96 71 24 34 39 27

38 16

83 38 105 17 71 27 34 25 38

1 1成形加工

31その他

1 5 10 9 5配置、配列、数

713147形状

103

4その他

Wilso

n

Taylo

rMade

SP

ALD

ING

NIK

E

Callaw

ay Golf

Acush

net

本間

ゴル

美津

横浜

ゴム

マル

マン

ブリ

ヂス

トン

スポ

ーツ

キャ

スコ

SR

Iスポ

ーツ

122塗料

1 2 2形状・構造

21615

214156材質 37

5その他

1 4 10 3 1中間層 16

6 5

131形状・構造14 16

材質 52

コア

カバー

ィンプル

製造

方法

図 3-10 ゴルフクラブヘッド(構造)に関する品目数推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

図 3-11 には、ゴルフボールの「種類」について企業別の分析結果を示した。「種類」では、

特許の場合と異なり、2 ピースボールはマルチピースボールと同程度に多い特徴がある。概

して、米国企業の方が 2 ピースボール品目数の割合が多い。また、図 3-12 には、ゴルフボー

ルの「コア(芯)、カバー(最外層)、ディンプル、製造方法」の項目について、企業別の分

析結果を示した。特許の場合と同様に、コアとカバーとも材質に特徴のあるものが多い。

図 3-11 技術区分別-企業別ゴルフボール(種類)品目数(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

図 3-12 技術区分別-企業別ゴルフボール(コア、カバー、ディンプル、製造方法)品目数(カ

タログ発行年:1990 年~2010 年)

- 34 -

0

10

20

30

40

~19901991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

アイオノマー樹脂 ポリウレタン

0

5

10

15

20

~19901991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

アイオノマー樹脂 ポリウレタン

図 3-13 に、ゴルフボールカバーの「材質」について品目数の推移を示した。カバーの材質

では、アイオノマー樹脂を採用した品目数が主に採用されているが、特許は 2003 年以降にア

イオノマー樹脂に関する出願が減少しているのに対し、アイオノマー樹脂を採用した品目数

は全体を通して増加傾向である。また、カバー材質としてのポリウレタンは、主にマルチピ

ースボールのカバー材として使用されているが、Acushnet から 1993 年と 1996 年にそれぞれ

1 品ずつ糸巻きボールのカバーとしてポリウレタンを使用したゴルフボールが上市されてい

る。図 3-14 に 2 ピースボールに対するカバー材質に関する品目数の推移を示した。2 ピース

ボールでは、ポリウレタンをカバーとして使用するものは見受けられなかった。一方、図 3-15

にマルチピースボールに対するカバー材質に関する品目数の推移を示すが、マルチピースボ

ールのカバー材質として、アイオノマー樹脂とポリウレタンがほぼ同程度に使用されている

ことが分かる。

図 3-13 ゴルフボールカバー材質別品目数推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

図 3-14 ゴルフボール(2 ピースボール)カバー材質別品目数推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

- 35 -

0

5

10

15

20

~19901991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

アイオノマー樹脂 ポリウレタン

0

5

10

15

20

25

~ 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

女性用クラブの割合

(

%

)

図 3-15 ゴルフボール(マルチピースボール)カバー材質別品目数推移(カタログ発行年:1990年~2010 年)

第3節 注目製品開発テーマの動向調査

【注目製品開発テーマ: 各個人、特に女性に最適なゴルフクラブの提供】について、企業

別に女性用とされているゴルフクラブの品目数を調査した。品目数としては 916 件であり、

ゴルフクラブ全体 6,447 件の 14.2%を占める。図 3-16 に、各年におけるゴルフクラブ全体

に対する女性用ゴルフクラブの割合を示した。若干の変動はあるが、ほぼ 10 数%の割合で推

移している。

図 3-16 【注目製品開発テーマ A: 各個人、特に女性に最適なゴルフクラブの提供】の全体に対する割合の推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)

- 36 -

第4章 ゴルフクラブ及びゴルフボールの政策動向調査

ゴルフクラブ及びゴルフボールに直接関係する産業政策は見受けられないので、ゴルフに

関する取組やゴルフ業界の動向等を例としてまとめる。

第1節 主要国の産業界の取組動向

1.日本産業界の取組動向

(1)ゴルフ市場活性化行動計画に関する検討会(経済産業省)

ゴルフ市場の問題点解決への提言として、求められる 3 つの視点(時間軸、ターゲット軸、

実施主体の軸)と 5 つの対策(シニア層対策、ミドル層対策、女性層対策、ジュニア層対策、

ゴルフ無関心層対策)についてまとめられている。

(2)ゴルフ市場活性化委員会

ゴルフ業界団体を中心に 2004 年 11 月に設立され、「(新しくゴルフを)始めよう、(いつま

でもゴルフを)続けよう、もっとゴルフを」のスローガンのもとに、ゴルフ需要の創造・市

場活性化策の継続実施によりゴルフ市場の健全な成長の実現を目指す活動が展開されている。

(3)健康サービス産業創造

経済産業省では、社会の高齢化を産業発展のチャンスとする総合的なサービス産業政策を

展開しようとしており、高齢化に伴い、国民のニーズは健康な長寿社会の実現であり、ヘル

スケアと同時に社会参加などによる生き甲斐を確保する取組が行われる予定である。

2.米国産業界の取組動向

米国のゴルフ振興活動の例としては世界ゴルフ財団(WGF:World Golf Foundation)が母

体となって 1999 年に開始された「Golf 20/20」がある。WGF の活動目的はゴルフ振興のため、

ゴルファーの育成、プレー頻度増進とゴルフの伝統を守り伝えることにある。新規ゴルファ

ーの開拓プログラム、ジュニアゴルファー育成プログラム、女性ゴルファー開拓プログラム

の 3 つの柱があり、新しい層の顧客を開拓しようとしている。

活動内容:

「Play Golf America」:「Golf 20/20」の最初のゴルフ業界活動として始められたもので、新

規ゴルファー及びプレー頻度の低いゴルファーをゴルフに誘い込むための活動である。

「Get Golf Ready」:米国ゴルフ業界が 2009 年から実施している成人ゴルファー参入促進策

で、全米 1,000 以上のゴルフコースが参加している。最終年の 2013 年までに 5,000 施設の登

録を目指し、ゴルファー70 万人、約 580 万ラウンドの追加を目的としている。

3.欧州産業界の取組動向

英国では全英ゴルフ産業協会(BGIA:British Golf Industry Association)の主導で、2007

年に英国におけるあらゆる年齢層や地域における人々のゴルフへの参加を促す試みが開始さ

れたが、このゴルフ育成活動に Acushnet、Callaway Golf、PING、TaylorMade-Adidas の 4

社は基金を拠出している。

BGIA は、ゴルフ企業からの資金援助を受け、学校や青少年クラブ等をとおして全ての年齢

層の人にゴルフを紹介するプログラムや青少年クラブが家族でゴルフに参加することを後押

しするプログラム、また、若い人たちが将来にわたってゴルフを継続して続けられるような

プログラムを策定する等の具体的なゴルフ振興活動に着手している。

- 37 -

4.アジア産業界の取組動向

中国はゴルフ用品の生産地域としてゴルフ産業に貢献してきた。中国ゴルフ協会によると

中級から普及グレードのゴルフクラブ、バッグ、ウェア、ボールの約 80%が中国で生産され

ている。

表 4-1 に、主要国のゴルフに関連する取組動向・ゴルフ振興策について代表的な例をまと

めた。

表 4-1 主要国のゴルフに関連する取組動向・業界のゴルフ振興策等 日本 米国 欧州・アジア

1986 バブル経済始まり

1987 ・第四次全国総合開発計画(四全総)

・総合保養地域整備法(リゾート法)→ゴルフ場

建設の促進

1990 ・通産省サービス産業課「スポーツビジョン 21」

・農薬による環境汚染や自然破壊の心配から

ゴルフ場開発の中止を求める声が高まり、地

方自治体のゴルフ場開発規制が強化

欧州:第 3 次フレームワーク(FP3)

1991 バブル経済崩壊

1993 中国:科学技術進歩法

1994 欧州:第 4 次フレームワーク(FP4)

1996 第 1 期科学技術基本計画

1997 ・中国:科学技術基本法改正

・中国:土地利用制限の中でゴルフ場建設

規制

1998 21 世紀の国土のグランドデザイン(五全総) 欧州:第 5 次フレームワーク(FP5)

2000 業界が新規顧客開拓を目的に

「GOLF 20/20 プロジェクト」開始

2001 第 2 期科学技術基本計画

2002 ・産業発掘戦略

・日本ゴルフ協会「Golf21」を発表、業界へ市場

活性化策を連携・実施すべきと提言

・欧州:第 6 次フレームワーク(FP6)

・韓国:科学技術基本計画

・韓国:ナノ素材技術開発事業

2003 ・ナノテクノロジービジネス推進協議会発足

・国土総合開発法が実質的廃止

・経済産業省サービス産業課「ゴルフ市場活性

化行動計画検討会報告書」

21 世紀ナノテクノロジー研究開

発法

2004 ・新産業発掘戦略

・ゴルフ市場活性化委員会設立

「イノベート・アメリカ」国家イノベ

ーション戦略報告

・中国:土地利用制限の中でゴルフ場建設

中止

2005 ナノサイエンスとナノテクノロジーに関する欧

州行動計画 2005-2009

2006 第 3 期科学技術基本計画 米国競争力イニシアティブ ・中国:国家中長期科学技術発展計画

・中国:土地利用制限の中でゴルフ場建設

禁止

・韓国:国家研究開発事業中長期発展戦略

2007 米国競争力法 ・欧州:第 7 次フレームワーク(FP7)

・競争力イノベーションイニシアティブ

・全英ゴルフ産業協会(BGIA)主導で 4 社が

基金を供出し「ゴルフ育成(Grow Golf)」キ

ャンペーン実施

2008 ・韓国:第 2 次科学技術基本計画

・中国:北京オリンピック開催

2009 全米ゴルフ産業振興活動「Get

Golf Ready」開始

- 38 -

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

クラブ

ボール

(米)高反発クラ

ブ規制の先行導入

ボールをラージサイ

ズに統一(1988年)

高反発クラブ規制

を全てのプレー

ヤーに適用

飛距離のテスト装

置や制限値の改定

クラブフェースの溝

規制を2010年施行と

発表

第2節 ゴルフ用具に関する規制

ゴルフルールは USGA(United States Golf Association:米国ゴルフ協会)及び R&A(Royal

and Ancient Golf Club of Saint Andrews:全英ゴルフ協会)によって慣例的に 4 年に 1 回

見直しが行われている。表 4-2 に、ゴルフクラブ及びゴルフボールに関連する規制の変遷に

ついて代表的なものをまとめた。

表 4-2 ゴルフクラブ、ゴルフボールに関する規制の変遷 JGA(日本ゴルフ協会、R&A 傘下)

JGGA(日本ゴルフ用品協会)

USGA(全米ゴルフ協会) R&A(全英ゴルフ協会)

1988 ボールがラージサイズに統一され、重量が 45.93 グラム以

下、直径 42.67 ミリ以下などの基準が決定

同左 同左

1992 「クラブの基本構造材が金属の場合、クラブのフェースに

物を嵌め込んだり付着してはならない」という項目が削

除。

同左 同左

1996 JGGA:チタン合金製クラブヘッドに関する材質表示基準

を制定

1998 高 反 発クラブ規 制(SLE

ルール)を先行導入

2002 高反発クラブ規制の 2008 年導

入を発表

2003 男子ツアーに高反発クラブ規制を適用 ・全英オープンで規制を適用

・傘下の地域を含め、トップレベ

ルのプロ競技については米ル

ールに足並みを揃えるよう推奨

2004 ・パター以外のクラブの長さを最大 48inch に制限

・ウッドクラブのヘッドサイズを最大 460cc に制限

・ボールの標準総合飛距離のテスト装置や制限値を改定

2006 主催 16 競技で高反発クラブ規制

2008 ・高反発クラブ規制を全てのプレイヤーに適用

・ゴルフクラブのヘッドとシャフトが取り換え易い設計の着

脱式が解禁

同左 同左

2010 クラブフェ-スの溝の容積と縁の鋭さに関する規制がプロ

ツアー(トッププロフェッショナルレベル)で適用

同左 同左

注)■■■■:4年に1度のゴルフルール改正年

第3節 その他

図 4-1 に、ゴルフクラブやゴルフボールの規制と特許出願件数の関係について代表的な例

をまとめた。

図 4-1 ゴルフクラブ・ゴルフボール規制と特許出願件数の関係

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2007 2008 2009

売上高

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1,200

1,800

2,400

3,000

3,600

4,200

4,800(億円)(百万US$)

0

1,000

2,000

3,000

4,000

2007 2008 2009

出荷金額

日本 米国

(億円)

第5章 ゴルフクラブ及びゴルフボールの市場環境調査

2000 年に入ってからのゴルフの世界市場は、年率 2%程度の拡大基調にあったが、ここ数

年は横ばいないしは縮小傾向がみられる。図 5-1 に、2007 年~2009 年における世界のゴルフ

用品市場規模の推移を示す。ゴルフ用品は、ゴルフクラブ、ゴルフボール、キャディバッグ、

グローブ、シューズである。特に 2008 年~2009 年においてはいわゆる「リーマンショック」

に端を発する経済危機の影響が顕著で、2007 年に 48 億 US$(約 3,840 億円)であった世界市

場が 39 億 US$(約 3,120 億円)まで縮小している。その後の世界経済の回復に伴い、ゴルフ

市場は再び成長に転じると見られ、2015 年末までには 65.8 億 US$(約 5,260 億円)にまで拡

大すると期待されている。

図 5-1 世界のゴルフ用品市場規模の推移(2007 年~2009 年)

出典:KONCEPT ANALYTICS 社「Golf Market Report: 2010 Edition」より抜粋

図 5-2 に、日米のゴルフ用品市場規模の推移を示す。米国のゴルフ用品市場は日本よりも

規模が大きいが、両国とも 2009 年は 2008 年よりも減少傾向で推移している。

図 5-2 日米のゴルフ用品市場規模の推移(2007 年~2009 年)

出典:KONCEPT ANALYTICS 社「Golf Market Report: 2010 Edition」、(株)矢野経済研究所「2009 年版 ゴ

ルフ産業白書」より一部抜粋

注)1$=80 円で換算

注)2009 年の日本市場規模は予測値(2009 年 7 月現在)

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1,000

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2007 2008 2009

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クラブ ボール

(億円)(百万US$)

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1,200

1,500

クラブ(全体) ウッド ユーティリティ アイアン パター ボール

出荷額

2007年 2008年 2009年(予測)

(億円)

図 5-3 に、ゴルフクラブ及びゴルフボールの市場規模(推計値)を示す。2007 年にはクラ

ブで約 30 億 US$(約 2,400 億円)、ボールで約 8 億 4 千万 US$(約 672 億円)であった市場規

模が、2009 年ではそれぞれ 25 億 US$(約 2,000 億円)、6 億 8 千万 US$(約 544 億円)まで縮

小したと推定される。

図 5-3 ゴルフクラブ及びゴルフボールの世界市場規模推移(2007 年~2009 年、推計値)

出典:KONCEPT ANALYTICS 社「Golf Market Report: 2010 Edition」のデータを基に推計

ゴルフ産業に対する世界経済危機の影響は日本においても顕著で、2009 年の日本における

ゴルフ用品の総出荷額(輸出含む)は、前年比約 13%減の 2,772 億 9 千万円と大きく縮小す

るとされている(2009 年の出荷額は予測値)。特に輸出は大きく落ち込み、2009 年のトータ

ル輸出金額は対前年比 60%とされている。

国内のクラブ(ウッド、ユーティリティ、アイアン、パター)及びボールの 2007 年~2009

年の出荷額推移を図 5-4 に示す。

図 5-4 ゴルフクラブ及びゴルフボールの国内出荷額推移

出典:(株)矢野経済研究所「2009 年版 ゴルフ産業白書」

注)2009 年は予測値(2009 年 7 月現在)

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1,500

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

ゴルフ参加人口

(万人)

0

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2,000

3,000

4,000

2007 2008 2009

ゴルフ人口

(万人)

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300

400

500

600

2007 2008 2009年

ゴルフ人口

(万人)

図 5-5 に、2001 年~2009 年におけるゴルフ(コース)参加人口の推移を示す。2001 年か

ら 2007 年にかけてゴルフ人口の減少傾向が続いていたが、2008 年から回復傾向が見られ、

直近では 960 万人台となっている。

図 5-5 ゴルフ(コース)参加人口の推移(2001 年~2009 年)

出典:公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書 2010」より作成

米国におけるゴルフ人口は、2005 年の約 3,000 万人から減少傾向を示し、2009 年には約

10%減の 2,710 万人になっている(図 5-6)。

図 5-6 2007 年~2009 年の米国ゴルフ人口推移

出典:KONCEPT ANALYTICS 社「Golf Market Report: 2010 Edition」より作成

図 5-7 に、中国のゴルフ人口の推移を示す。中国におけるゴルフ人口は、2010 年には 680

万人に達すると推計されている。

図 5-7 2007 年~2009 年の中国ゴルフ人口推移

出典:KONCEPT ANALYTICS 社「Golf Market Report: 2010 Edition」より作成

- 42 -

第6章 調査結果の分析

第1節 特許動向分析の総括

1.全体動向調査

調査期間(1990 年~2008 年)におけるゴルフクラブ及びゴルフボールの特許出願件数(図

2-1)は 18,090 件であった。

日米欧中韓への特許出願について、出願件数推移を見ると(図 2-1)、2002 年までは、国内

外の特許出願件数は増加傾向を示しているが、2003 年以降、緩やかな減少に転じている。経済

環境がよくない中でのゴルフ用具の需要低迷と関連がある可能性がある。出願件数比率では、

日本国籍(全体の 50.8%)が一番多く、次いで米国籍(同 36.8%)となっており、日米両国

で 9 割弱の出願件数比率を占めている。出願件数の推移では、日本の出願件数の割合は、出願

前期(1990 年~1997 年)よりも、後期(1998 年~2008 年)が減少しているのに対し、その他

の地域(特に台湾)では、前期に比べ後期の出願件数の割合がほぼ倍増している(図 2-1)。

日本、米国、欧州の三極コア(日本、米国、欧州の三極いずれにも出された出願:公報単

位)への特許出願件数は 4,051 件で、2003 年以降減少傾向を示している(図 2-3)。この傾向

も、市場の需要動向の低迷と関連していると推察される。

2.技術区分別動向調査

技術区分別の出願件数解析を行った。

ゴルフクラブ及びゴルフボールの技術区分に関して、日米欧中韓その他国籍出願人とも「ゴ

ルフクラブ」に関する出願件数が「ゴルフボール」よりも多い(図 2-4)。

ゴルフクラブの種類に関しては、日本、米国籍出願人とも「ウッド」に関する出願件数が

最も多い。次いでクラブの種類を限定しない「その他」となっている(図 2-4)。また、日米

の比較では、日本では「その他」に続いてアイアンに関する出願件数が多いが、米国ではパ

ターに関する出願件数が「その他」に続いて多い特徴がある(図 2-4)。

ゴルフクラブのヘッドでは、日米とも「構造」に関する出願件数が多い。ヘッドの材質で

は、「チタン」が、構造では、「フェース」と「重心の配置」の出願件数が多い。日米の比較

では、日本の方が、ヘッド材質「チタン」、ヘッド構造「フェース」に関する出願が多い。(図

2-5、図 2-6)。

ゴルフボールの種類に関しては、3 ピース以上のマルチピースボールに関する出願件数が

一番多く、2 ピースボールに関する出願件数も多い。また、糸巻きボールやソリッドボール

に限定しない技術に関する出願件数が多い特徴がある(図 2-4)。

ゴルフボールのコアに関して、日本では、ブタジエンゴムの材質と形状・構造に関する出願

が多いが、米国では、形状・構造と中間層及びアイオノマー樹脂に関する出願が多い特徴があ

る。

ゴルフボールの項目について、日本国籍出願人はカバーの「材質」に関する出願件数が最

も多いが、米国ではコアの「材質」に関する出願が多くなっている(図 2-8)。

- 43 -

3.注目研究開発テーマの動向調査

注目研究開発テーマとして、【A:ゴルフシャフトの剛性(しなり)最適化による飛び性能の

向上】、【B:各個人に最適なゴルフクラブの提供】、【C:高性能ゴルフボールの開発】、【D:個人

のレベル・ニーズに合ったゴルフボールの開発】の 4 テーマを選択し、解析した。

【A:ゴルフシャフトの剛性(しなり)最適化による飛び性能の向上】では、特許出願件数

は 690 件であり、日本からの出願件数比率が 54.8%、米国からの出願件数比率が 29.7%であ

る(図 2-23)。特許出願件数推移では、1990 年代半ばからの出願が多い。

【B:各個人に最適なゴルフクラブの提供】では、特許出願件数は 2,289 件であり、米国籍

出願人の出願件数比率が 43.0%と高く、日本 42.5%と続いている(図 2-24)。特許出願件

数推移では、2000 年頃から出願件数が増加している。

【C:高性能ゴルフボールの開発】では、特許出願件数は 612 件であり、日本国籍出願人の

出願件数比率が 74.3%と最も高く、米国 20.1%と続いている(図 2-25)。特許出願件数推移

では、1990 年代半ばから出願件数が大きく増加している。

【D:個人のレベル・ニーズに合ったゴルフボールの開発】では、特許出願件数は 263 件で

あり、日本国籍出願人の出願件数比率が 92.0%と最も高く、米国 7.6%と続いている(図 2-26)。

第2節 製品開発動向分析の総括

1.全体動向調査

ゴルフクラブ及びゴルフボールの製品開発動向を調査した。調査対象期間は、カタログの

発行年ベースで 1990 年から 2010 年とし、入手可能な各社カタログ、「ゴルフ用品総合カタロ

グ」(ユニバーサルゴルフ社発行)から新規品目を抽出し、ゴルフクラブ 6,447 件、ゴルフボ

ール 568 件、合計 7,015 件をとりまとめた。

ゴルフクラブでは、1990 年代の品目数が年間 250 件前後から 2000 年以降の 300 件前後へ

と増加している。一方、ゴルフボールでは、絶対数はゴルフクラブよりも少ないが、品目数

は増加傾向で推移している(図 3-5(a)、図 3-5(b))。

2.技術区分別動向調査

ゴルフクラブの種類では、ブリヂストンスポーツ、美津濃、マルマン等では、ウッドに関

する品目数が多いが、SRIスポーツやAcushnet、PINGでは、パターに関する品目数が多い特徴

がある(図3-7)。

ウッドに関するヘッド材質では、特許の場合と同様、チタンに関するものが多いが、繊維

強化樹脂に関するものはそれほど多くない特徴がある(図 3-8(a))。一方、アイアンのヘッ

ド材質では、特許の場合と異なり、ステンレスに関するものが一番多く、次いで軟鉄に関す

るものが多い特徴がある(図 3-8(b))。この理由として、アイアンでは、チタンよりもステ

ンレスや軟鉄が好んで使われることが要因になっている。

ゴルフボールの種類では、特許の場合と異なり、2ピースボールはマルチピースボールと同

程度に多い特徴がある(図3-11)。この理由として、コストパフォーマンスに優れる2ピース

ボールが市場において一定の評価を得ていることが考えら、各社は2ピースボールの新製品を

上市している。

- 44 -

ゴルフボールのコア、カバー、ディンプル、製造方法の分類では、各企業ともコア、カバ

ーの材質に関するものが多い(図 3-12)。

カバーの材質では、特許の場合と異なり、アイオノマー樹脂に関する品目数が多い特徴が

ある(図 3-13)。

第3節 政策動向分析の総括

ゴルフクラブ及びゴルフボールに関する産業界の取組動向について、日米欧及びアジアの

状況を調査した。

日本においては、ゴルフ市場の問題点解決への提言を行うゴルフ市場活性化行動計画に関

する検討会(経済産業省)、ゴルフ業界団体が中心となってゴルフ需要の創造・市場活性化策

の継続実施によりゴルフ市場の健全な成長の実現を目指す活動を展開しているゴルフ市場活

性化委員会、社会の高齢化を産業発展のチャンスとする総合的なサービス産業政策を展開し

ようとしている健康サービス産業創造(経済産業省)等のゴルフ活性化の取組が行われてい

る。

米国では、ゴルフ振興のため、ゴルファーの育成、プレー頻度増進とゴルフの伝統を守り

伝え、新しい層の顧客を開拓しようとしている世界ゴルフ財団による「Golf 20/20」の取組

がある。

欧州では、全英ゴルフ産業協会がゴルフ企業からの資金援助を受け、学校や青少年クラブ

等をとおして全ての年齢層の人にゴルフを紹介するプログラムや青少年クラブが家族でゴル

フに参加することを後押しするプログラム、また、若い人たちが将来にわたってゴルフを継

続して続けられるようなプログラムを策定する等の具体的なゴルフ振興活動に着手している。

第4節 市場環境分析の総括

・世界のゴルフ用具市場動向

2000 年に入ってからのゴルフの世界市場は、年率 2%程度の拡大基調にあったが、ここ数

年は横ばいないしは縮小傾向が見られる。特に 2008 年~2009 年においてはいわゆる「リー

マンショック」に端を発する経済危機の影響が顕著で、2007 年に 48 億 US$(約 3,840 億円)

であった世界市場が 39 億 US$(約 3,120 億円)まで縮小している。その後の世界経済の回復

に伴い、ゴルフ市場は再び成長に転じると見られ、2015 年末までには 65.8 億 US$(約 5,260

億円)にまで拡大すると期待されている。

・日本のゴルフ用具市場動向

ゴルフ産業に対する世界経済危機の影響は日本においても顕著で、2009 年の日本における

ゴルフ用品の総出荷額(輸出含む)は、前年比約 13%減の 2,772 億 9 千万円と大きく縮小す

るとされている。特に輸出は大きく落ち込み、2009 年のトータル輸出金額は対前年比 60%と

されている。

2008 年のウッド国内出荷市場は、数量ベースで 258 万本(対前年比 92.1%)、金額ベース

- 45 -

で 542 億円(対前年比 91.9%)となり、ゴルフ用品市場における「花形商品」であるドライ

バー市場の慢性的な需要減退により大幅な縮小基調にて推移している。

2008 年のユーティリティ国内出荷市場は 55 億 7 千万円(対前年比 112.1%)、アイアン国

内出荷市場は 417 億円(対前年比 90.5%)、パター国内出荷市場は好調に推移し、78 億円(対

前年比 122.3%)となっており、パターが高い成長を記録している。

2008 年のゴルフボール国内出荷市場は、223 億円(対前年比 97.4%)と微減にて推移して

いる。2009 年は 212 億 2 千万円(対前年比 95.2%)と、2008 年に続きマイナスにて推移す

ることが予想される。

・ゴルフ人口の動向

日本では、2001 年から 2007 年にかけてゴルフ人口の減少傾向が続いていたが、2008 年か

ら回復傾向が見られ、直近では 960 万人台となっている。米国におけるゴルフ人口は、2005

年の約 3,000 万人から減少傾向を示し、2009 年には約 10%減の 2,710 万人に推移している。

一方、アジアの状況として、中国では、近年の経済発展に伴い、ゴルフ人口・ゴルフ市場の

拡大が見られ、ゴルフ市場が形成されつつある。中国におけるゴルフ人口は、2010 年には 680

万人に達すると推計されている。

第5節 日本の国際競争力・他国との比較について

1.ゴルフクラブ及びゴルフボールの製品開発について

従来、ゴルフボールを真直ぐに遠くに飛ばすために、チタン合金をヘッドに使用したゴル

フクラブの大型化、ゴルフクラブの反発係数向上の取組、ゴルフボールのマルチピース化等

の製品開発が精力的に行われてきたが、飛び過ぎを規制するため、2008 年にゴルフクラブの

反発係数が 0.83 以下と決められており、限られた条件の中でいかに飛距離を伸ばすかの技術

開発がポイントになっている。ゴルフクラブのヘッドの開発では、フェース面にマレージン

グ鋼や超高張力鋼等を適用し、フェース面の薄化やタングステン合金を挿入した低重心化の

取組が行われている。

ゴルフボールでは、ボールのマルチピース化が進み、さらには、カバーの厚みを 0.3mm ほ

どの極限まで薄くし、コア部分の体積を増大させ、反発力を増すことによる飛距離の向上を

目指した開発が活発に行われている。

また、一方では、コストパフォーマンスに優れる 2 ピースボールが市場で一定の評価を得

ており、機能向上と低価格化のバランスを考慮した製品開発が必要になっている。

2.日本の産業競争力について

ゴルフクラブの素材として、今や欠かすことの出来ない存在となっているチタン合金と炭

素繊維強化樹脂の開発において、日本は高い産業競争力を持っている。

日本では、鋳造クラブヘッドや鍛造クラブヘッドに多く使われているチタン合金に関して、

多くの特許が出願されており、多くの知見を蓄積している。また、美津濃が 1990 年に初めて

ウッドのヘッドにチタン合金を使用したゴルフクラブを製品化する等、日本企業がチタンヘ

ッドのゴルフクラブの開発を先導し、これらの知見を基に優れたゴルフクラブの開発が行わ

- 46 -

れている。

一方、炭素繊維強化樹脂の開発では、航空機産業の要求に応える形で、わが国の炭素繊維

の開発が進められてきたが、優れた開発力と製造技術のレベルの高さからこの分野でもわが

国は不動とも言える地位を固めており、この技術をゴルフクラブのシャフト等に適用し、競

争力のある製品開発が進められている。

特許の塊とも言われているゴルフボールでは、日本の特許出願件数が 3,387 件と米国の

2,335 件を大きく引き離しており、高い技術開発力につながっていると考えられる(図 2-12)。

一方、ゴルフクラブのパターでは、特許の出願件数では、米国が日本よりも多く(図 2-4)、

また、販売数量でも米国企業が上位を独占するなど、パターに関して、日本の競争力強化が

今後の課題になると考えられる。

3.日本の技術開発力、製品開発力について

日本の金属加工技術を背景に、扱いにくかったチタン金属をゴルフクラブのヘッドに適用

する技術を確立し、クラブヘッドの大型化の端緒を作った。また、優れたゴム製造技術を基

に、3 ピース以上のマルチピースボールの開発や製品化等、日本の企業は優れた製品開発技

術を保有している。今後、国際的な競争力確保に向け、これらの開発・技術力を活かした戦

略が求められる。

- 47 -

第7章 提言

日本のゴルフ市場規模の低下が予測される中、最大市場である米国市場をはじめとして、

今後の大きな需要拡大が期待されるアジア市場や欧州市場を含めた、海外への展開を従来以

上に推進する必要があるが、中国などへの海外展開は米国企業が先行しているといわれてい

る。このような状況において、日本のゴルフメーカーが海外展開するにあたっては、ブラン

ド価値を高めたゴルフ用具を展開する必要があると考えられる。

ブランド価値を高めた製品開発には、先駆的な技術をベースとした製品開発力が必要であ

る。日本のゴルフクラブ及びゴルフボールの特許出願件数は 9,187 件と全出願件数の約半分

を占め、米国の 6,661 件や欧州の 535 件よりもかなり多く(図 2-1)、高い技術開発力を発揮

しており、また、チタン合金や炭素繊維強化樹脂等を使用したゴルフクラブや 3 ピースボー

ルを始めとしたマルチピースボールの開発等の先駆的な製品開発を行い、日本は先駆的な技

術開発において世界をリードしている(表 7-1、表 7-2、表 7-3、図 7-1、図 7-2)。今後も、

先駆的な技術開発力を維持、強化することで、ブランド価値の高いゴルフ用具を展開するこ

とが望まれる。

表 7-1 出願人国籍別ゴルフクラブヘッド材質(チタン、CFRP)出願件数

出願人国籍 ヘッド材質

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

チタン(合金) 552 217 1 10 15 117

炭素繊維強化樹脂(CFRP) 98 74 3 1 1 44注)図 2-6 から抜粋

表 7-2 出願人国籍別ゴルフクラブシャフト材質(CFRP)出願件数

出願人国籍 シャフト材質

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

炭素繊維強化樹脂(CFRP) 428 82 22 0 10 24注)図 2-7 から抜粋

表 7-3 出願人国籍別マルチピースボール出願件数

出願人国籍 ボールの種類

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

マルチピースボール 1,094 897 5 0 29 7

【提言1】

日本のゴルフ市場規模の低下が予測される中、海外への展開を従来以上に推進する必

要があるが、日本のゴルフメーカーが海外展開するにあたっては、ブランド価値を高め

たゴルフ用具を展開する必要があると考えられる。

ブランド価値を高めたゴルフ用具を展開するにあたり、日本が世界をリードしている

先駆的な技術開発力を維持・強化し、加えて、付加価値を高めたゴルフ用具の開発力を

強化することが望まれる。

- 48 -

0

20

40

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80

100

120

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

出願件数

チタン合金(日本)

チタン合金(米国)

FRP(日本)

FRP(米国)

9

42 37 43 7 17 10 20 18 23 11 16

41 55 24 42 6 21 34 8

8 9

13その他

19マルチピース

4 21 342ピース

111ピース

2 17糸巻き

Wilso

n

Taylo

rMade

SPA

LD

ING

NIK

E

Callaw

ay Golf

Acush

net

本間

ゴル

美津

横浜

ゴム

マル

マン

ブリ

ヂス

トン

スポ

ーツ

キャ

スコ

SRIス

ポー

種類

図 7-1 日本と米国籍出願人のクラブヘッドの材質(チタン合金と FRP)に関する出願件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)(図 2-12 再掲)

図 7-2 技術区分別-企業別ゴルフボール品目数(カタログ発行年:1990 年~2010 年) (図 3-11 再掲)

また、ゴルフ用具のブランド価値を高めるにあたり、飛距離やコントロール性等のゴルフ

用具本来の機能を高めことに加えて、打球音や打球感等の最適化及び外観等の向上などの感

性に訴える付加的な機能を向上させることも、戦略として重要である。特許出願において打

球音、打球感及び外観等を技術的課題とした出願は、飛距離やコントロール性等の性能を技

術的課題とした出願に対して少ない(表 7-4、表 7-5)。今後は、ゴルフ用具本来の機能向上

に加えて、付加価値を高めたゴルフ用具の開発力を強化することで、ゴルフ用具のブランド

価値の更なる向上への取組が望まれる。

表 7-4 ゴルフクラブの技術的課題と課題に対する解決手段の総数

技術的課題(機能) 解決手段総数

飛距離の長さ 2,530

飛行方向の安定性 3,450

外観・質感・把握性 1,779

打撃音 681注)図 2-21 から抜粋

- 49 -

表 7-5 ゴルフボールの技術的課題と課題に対する解決手段の総数

技術的課題(機能) 解決手段総数

飛距離の長さ 3,936

スピンコントロール 1,326

視認性・識別性・ファッション性 346

打撃音 828注)図 2-22 から抜粋

ゴルフ用具の技術的な進歩に伴い、飛び過ぎやプレーの容易性が問題とされ、ゴルフ用具

の規則が見直されることとなり、ゴルフクラブのヘッド体積やヘッドの反発係数等が制限さ

れてきている(表 4-2)。このため、ゴルフクラブヘッドについては、飛び性能以外の技術的

課題、例えば、打球音、打球感の最適化といった感性に訴える高付加価値製品の開発が今後、

注目されるところである。

一方、遠くに飛ばしたいというユーザーニーズが多いため、ゴルフ規則の枠内でゴルフ用

具の性能向上を図るためには、ゴルフクラブヘッドだけでなくゴルフクラブシャフトのしな

り特性向上の技術開発や取組が求められている。また、きっちりとボールを止めたいという

ユーザーニーズに対し、スピン性能を向上させる技術の開発が必要と考えられる。

ゴルフ用具の性能を向上させるには、構造を改善するほか、素材を改善するというアプロ

ーチが挙げられる。また、ユーザーニーズを満たす構造を実現するためには、ゴルフ用具を

微細に加工する必要があることから、素材の特性を考慮して加工技術を開発する必要がある。

素材による開発として、ゴルフクラブのヘッドの素材として現在、最も注目されているチ

タン合金では、日本は強みを発揮しており、チタン合金を用いたゴルフクラブヘッドに関す

る特許出願件数が 552 件と米国の 217 件よりもかなり多い(表 7-6)。日本のゴルフシャフト

のしなり特性向上に関する特許出願件数は、378 件と米国の 205 件より優位に立っている(図

7-3)。ゴルフシャフトの炭素繊維強化樹脂に関する特許出願件数も 428 件と米国の 82 件より

もかなり多くなっている(表 7-2)。さらに、スピン性能を向上させるために、ポリウレタン

樹脂を用いたゴルフボールカバーの特許出願件数も、452 件と米国の 307 件よりも多くなっ

ている(表 7-3)。

【提言2】

ゴルフ用具は、今後もゴルフ用具のルール規制の枠内での開発が進められるが、一方、

使用者の遠くに飛ばしたい、きっちりとボールを止めたいニーズを満たす製品開発が望

まれており、規則の枠内でユーザーニーズを満たすため、用具の構造を改善するだけで

なく、新規素材の発掘や素材の最適加工技術を駆使したゴルフ用具の開発が必要とされ

る。このため、素材メーカーや加工メーカー、さらには、基礎研究を担う大学や公的機

関との緊密な連携によるゴルフ用具の開発が望まれる。

- 50 -

日本国籍

378件

54.8%

中国籍

1件

0.1%

米国籍

205件

29.7%

欧州国籍

33件

4.8%

韓国籍

22件

3.2%

その他

51件

7.4%

合計690件

37

20 20

30

23

45

4946

25

52

41

45

3331

55

31 31

27

49

0

10

20

30

40

50

60

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願人国籍

優先権主張1990-2008年

表 7-6 日米出願人国籍別ゴルフクラブヘッド材質出願件数及びクラブ関連総数に対する割合 出願人国籍

日本 米国 材質 件数 比率(%) 件数 比率(%)

パーシモン 6 0.1 6 0.1 ステンレス 226 3.9 145 3.4 軟鉄 63 1.1 54 1.2 マレージング鋼 13 0.2 8 0.2 黄銅 24 0.4 19 0.4 チタン(合金) 552 9.5 217 5.0 マグネシウム(合金) 50 0.9 13 0.3 アルミニウム(合金) 142 2.4 83 1.9 亜鉛(合金) 8 0.1 1 0 タングステン 65 1.1 96 2.2 繊維強化金属(FRM) 27 0.5 11 0.3 金属その他 236 4.1 170 3.9 炭素繊維強化樹脂(CFRP) 98 1.7 74 1.7 ガラス繊維強化樹脂(GFRP) 4 0.1 5 0.1 繊維強化樹脂(FRP)その他 193 3.3 76 1.8 樹脂 161 2.8 166 3.8 注)図 2-6 から抜粋

図 7-3 【注目研究開発テーマ A:ゴルフシャフトの剛性(しなり)最適化による飛び性能の向上】の出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1990 年~2008 年)(図 2-23 再掲)

表 7-7 出願人国籍別ゴルフボールカバー材質(ポリウレタン)出願件数

出願人国籍 カバー材質

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

ポリウレタン 452 307 2 0 0 0

一方、「立命館経営学 第 48 巻, 第 4 号, p217-244(2009 年)」に記述されているように、

米国では、チタン合金を、軍事用や航空宇宙分野においては活発に研究開発しているが、ス

ポーツ用品等の民生用の展開は限定的であるといわれている。また、ゴルフシャフト等に使

用される炭素繊維強化樹脂では、日本は、優れた開発力と製造技術のレベルの高さから、日

本の世界シェアは 7 割と競争力が高く、この分野で不動ともいえる地位を固めている。

- 51 -

0

1,000

2,000

3,000

4,000

2007 2008 2009

売上高

日本 米国

(億円)

0

300

600

900

1,200

1,500

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

ゴルフ参加人口

(万人)

以上のとおり、日本のゴルフメーカーは、素材の開発において優位に立っており、素材技

術、加工技術を蓄積しているといえる。また、日本の素材メーカーや加工メーカーは、優れ

た開発力を有しているといえる。そこで、今後、日本のゴルフメーカーが高性能ゴルフクラ

ブやゴルフボールの開発を効率的に推進するためには、世界的に高い技術を有する日本の素

材メーカーや加工メーカーとの連携による開発の取組が望ましいと考えられる。さらには、

基礎研究を担う大学や公的機関と製品開発を推進する企業との有機的な連携での効率的な取

組が求められる。

日本のゴルフ用品市場規模は 1,400 億円弱と米国の約 2,800 億円と比較してかなり小さい

のが現状であり、この要因の一つとして、日本のゴルフ人口が 900 万人強と、米国の 2,700

万人強に比べてかなり少ないことが挙げられる(図 7-4、図 7-5、図 7-6)。

図 7-4 日米のゴルフ用品市場規模の推移(2007 年~2009 年)(図 5-2 再掲)

図 7-5 ゴルフ(コース)参加人口の推移(2001 年~2009 年)(図 5-5 再掲)

【提言3】

ゴルフ用具産業競争力強化に向けたゴルフ参加者の拡充が必要とされ、シニア、ジュ

ニア及び女性にそれぞれ適したゴルフ用具を提供する等の個人個人に合ったゴルフ用

具の新たな製品開発が望まれる。

また、新規プレーヤーの参加を促す取組として、ゴルフをより身近にする仕組み作り

等にゴルフ業界全体が連携して取組むことが望まれる。

- 52 -

0

5

10

15

20

25

~ 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

カタログ発行年

女性用クラブの割合

(

%

)

0

1,000

2,000

3,000

4,000

2007 2008 2009

ゴルフ人口

(万人)図 7-6 2007 年~2009 年の米国ゴルフ人口推移(図 5-6 再掲)

ゴルフ用具産業の競争力強化には、ゴルフ人口の拡大が不可欠であると考えられるが、日

本では、少子高齢化が進む中で、現在のゴルフ人口を支えている団塊世代の退職や高齢化に

伴い、ゴルフ人口の減少が予測されている。このような状況において、ゴルフ人口の減少を

少しでも食い止め、さらに、新規プレーヤーの参加を促すための取組として、シニア、ジュ

ニア及び女性にそれぞれ適したゴルフ用具を提供することが挙げられる。

製品開発動向調査では、女性プレーヤー向けのゴルフクラブの品目数の割合が全体の1割

強を占めており(図 7-7)、また、シニア向けやジュニア向けのゴルフ用具も一般に販売され

ている。一方で、個人個人に合ったゴルフ用具に関する特許の出願動向を見ると、技術的課

題として「市場」に関するものが、ゴルフクラブでは 200件(ゴルフクラブの出願全体の 1.6%)、

ゴルフボールでは 263 件(ゴルフボールの出願全体の 4.5%)であり、市場の品目数の割合

に対して少ない(図 2-21、図 2-22)。これらの結果から、シニア、ジュニア及び女性向けの

ゴルフ用具は、一般向けの製品技術を転用したものが多いと考えられ、真に個人個人に合っ

たゴルフ用具には開発の余地が残されていると推測される。そのような個人個人に合ったゴ

ルフ用具の開発には、各ユーザー層のニーズを的確に把握する必要があり、そのような開発

の結果として、ゴルフ人口の減少を食い止め、新規プレーヤーの参加を促す鍵となる可能性

がある。

図 7-7 【注目製品開発テーマ A: 各個人、特に女性に最適なゴルフクラブの提供】の全体に対する割合の推移(カタログ発行年:1990 年~2010 年)(図 3-16 再掲)

また、ゴルフ競技が 2016 年のリオデジャネイロ・オリンピック大会の正式種目に採用され

ることが決定され、各方面の関心も高まっている折、(1)ゴルフ市場活性化行動計画に関す

る検討会、(2)ゴルフ市場活性化委員会でのゴルフを身近にする取組(第4章第1節参照。)

- 53 -

をより一層推進し、ゴルフ人口を拡大させることが望まれる。

このように、ゴルフ用具産業の活性化には、ゴルフ用具開発のハード面だけでなく、ゴル

フに親しみ、参加しやすいソフト面からの仕組み作りを図る等、ゴルフ業界全体が連携して

取組むことが望まれる。