24 孔内ィベメの泯用事例 - web-gis.jp ·...

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全地連「技術フォーラム2012」新潟 孔内の用事例 神保 啓 1. はじめに 調査では、採取段階では回転お び圧縮等の影響受け、観察には現位置の位置情報 失ってい。また、写真撮影段階では標準貫入試験 区間やの側部おび裏側は撮影不可であため、情 報量が低下す問題があ。 一方、水平載荷試験や現場透水試験等の原位置試験に おいて、事前に孔内の仕上がや止水状確認すこ とができば、試験の精度向上が待できと考 え。 こは孔壁で撮影解析すこと で解決できが、は高価であうえ、 専門の撮影技術者が必要なため、適用は比較的大規模な 地質調査に限場合が多い。 このため近年比較的小規模な地質調査でも安価に使用 でき孔内の開発適用性の検討が、社団人全 国地質調査業協会連合会内に「新創出提案 型事業 汎用型の及と地質調査の標 準化」委員会において進めてい。 発表では、この委員会の中で著者が現場撮影行っ た事例紹介行う。 2.機器概要 孔内は市販の水中に、撮影度や方位 判別すためのや可とう管等追加して構成した 地質調査機器であ、当社では復建技術 社製の機用いて撮影した。(図-1) 孔内は安価で簡便に使用でき利点す。 ただし、度方位の計さないため、計 誤差として度±0.2m 程度、方位±20°程度考慮し、 撮影画像扱う必要があ。 孔内の撮影範囲はの前方(垂直孔であ ば下方)であ。って孔内で撮影した画像「前 方視画像」と呼称してい。 前方視画像は、視認範囲が広く孔壁全体の観察行う ことが容であ。さに動画の機能用い て抽出した静止画、解析資料として扱うことができ ため、画像処理の負担が少ない。 3.撮影事例 ・岩盤の亀裂状況を確認した事例 写真-1 は砂防の基礎調査であ。亀裂 の発達す岩盤であことは写真かも明確であ が、前方視画像用すことで、開口幅や方位孔壁 の目視で確認すことができた。 ・トンネル背面の空洞調査 既設の覆工背面の状確認すため、垂直方 向に行い、覆工背面の空状画 像で直接確認し(写真-2)、空おび地山状直接確 認した。 写真-1 前方視画像に岩盤撮影事例 写真-2 前方視画像に覆工背面の空と地山の状 -1 孔内概要 24

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全地連「技術フォーラム2012」新潟

孔内カメラの活用事例

㈱キタック 神保 啓

1. はじめに

ボーリング調査では、コア採取段階でコアは回転およ

び圧縮等の影響を受け、観察時には現位置の位置情報を

失っている。また、コア写真撮影段階では標準貫入試験

区間やコアの側部および裏側は撮影不可であるため、情

報量が低下する問題がある。

一方、水平載荷試験や現場透水試験等の原位置試験に

おいて、事前に孔内の仕上がりや止水状況を確認するこ

とができれば、試験データの精度向上が期待できると考

えられる。

これらは孔壁をボアホールカメラで撮影解析すること

で解決できるが、ボアホールカメラは高価であるうえ、

専門の撮影技術者が必要なため、適用は比較的大規模な

地質調査に限られる場合が多い。

このため近年比較的小規模な地質調査でも安価に使用

できる孔内カメラの開発・適用性の検討が、社団法人全

国地質調査業協会連合会内に「新マーケット創出・提案

型事業 汎用型ボアホールカメラの普及と地質調査の標

準化」委員会において進められている。

本発表では、この委員会の中で著者が現場撮影を行っ

た事例紹介を行う。

2.機器概要

孔内カメラは市販の水中カメラに、撮影深度や方位を

判別するためのリールや可とう管等を追加して構成した

地質調査機器であり、当社では㈱復建技術コンサルタン

ト社製の機材を用いて撮影した。(図-1)

孔内カメラは安価で簡便に使用できる利点を有する。

ただし、深度・方位の計測センサーを有さないため、計

測誤差として深度±0.2m 程度、方位±20°程度を考慮し、

撮影画像を扱う必要がある。

孔内カメラの撮影範囲はカメラの前方(垂直孔であれ

ば下方)である。よって孔内カメラで撮影した画像を「前

方視画像」と呼称している。

前方視画像は、視認範囲が広く孔壁全体の観察を行う

ことが容易である。さらに動画のキャプチャ機能を用い

て抽出した静止画を、解析資料として扱うことができる

ため、画像処理の負担が少ない。

3.撮影事例

・岩盤の亀裂状況を確認した事例

写真-1 は砂防ダムの基礎調査ボーリングである。亀裂

の発達する岩盤であることはコア写真からも明確である

が、前方視画像を活用することで、開口幅や方位を孔壁

の目視で確認することができた。

・トンネル背面の空洞調査

既設のトンネル覆工背面の状況を確認するため、垂直方

向にボーリングを行い、覆工背面の空洞状況をカメラ画

像で直接確認し(写真-2)、空洞および地山状況を直接確

認した。

①①①① ②②②②

① ②

写真-1 前方視画像による岩盤撮影事例

写真-2 前方視画像による覆工背面の空洞と地山の状況 図-1 孔内カメラ概要

【24】

全地連「技術フォーラム2012」新潟

一方、覆工側部では(写真-3)、コアからトンネル覆工背

面に 30~20cm 程度の空洞があり、支保工はごく一部しか

ないように見える。しかし前方視画像からは、覆工背面

にすぐ支保工が確認できた。よってコアリングにより支

保工がずれて採取されているために、空洞が大きく見え

ていると判断できた。

・濁水を置換して撮影した事例

すべり面周辺の亀裂状況を確認する目的で、孔内洗浄

を行った後、透明泥剤を用いて孔内水を孔底から置換し

て撮影を行った。透明度はやや劣るが亀裂の状況を確認

するのに十分な画像を得られた。

・揚水試験において止水状況を確認した事例

ボーリングコアで亀裂の密着した区間において多くの

揚水量が確認された。そこでケーシングの止水状況を確

認するためにカメラを挿入したところ、写真-5に示すよ

うに、ケーシングビットと地山の間から多量の漏水が確

認され、現位置試験の異常データに対する迅速な検証を

おこなうことができた。

・変状した水中構造物の撮影事例

水上の湖岸のブロック張工に変状が発生したため、末

端部が水面下に位置する地すべりの可能性が疑われた。

そこで湖面より湖底のブロック張工に沿って下方にカメ

ラを降下させつつ撮影を行った。その結果写真-6に示す

ように、湖底で張ブロックが散在しているのを確認した。

よって水面下で構造物が破損している可能性が高いと判

断し、変状状況に応じた調査計画を立案できた。

4.4.4.4.おわりにおわりにおわりにおわりに

孔内カメラは、ボアホールカメラと比較して安く入手

することができ、必要な機能さえ有していれば部品を購

入して自作が可能である。また、現場での設置も容易で

ある、このため他にも次のような活用が考えられる。

・ボーリングオペレータが掘削中の孔壁状況を知り、コ

ア採取時の機械操作に利用する。

・地質調査において、ボーリング孔壁の状態を確認し、

コア判定・地下水判定の精度を上げる。

・孔内水平載荷試験等の現位置試験前にボーリング孔壁

の状態を確認し、ジャミングを防止するために利用す

る。

・セメンテーション後に再掘進した孔壁の状況を確認す

る。

・浮遊物の移動方向および速度から、岩盤を通る亀裂水

の流向流速測定を行う。

・ボーリング孔を利用した岩盤の連通試験で、孔壁のど

の亀裂から気体や液体が出てくるのかを目視確認し、

亀裂の連続度を評価する。

・ノンコアボーリングにおいて、地質状況を確認する(ア

ンカーの定着地盤確認等)。

ただし注意点として孔内カメラは計測センサーを持た

ず、深度と方位の数値は2章で示した計測誤差を含むこと

から、データを取り扱う際には注意が必要である。

今後、多くの現場で本カメラを利用した事例を蓄積す

る計画であり、課題に応じた撮影方法の提案およびその

評価を行っていきたいと考えている。

参考文献参考文献参考文献参考文献

1)山下智士・太田保(2009):超簡易型ボアホールカメ

ラの開発,日本応用地質学会平成21年度研究発表会講

演論文集

コアによる支保工の場所

写真-3 トンネル覆工背面の支保工の状況

写真-4 透明泥水で置換した孔内の前方視画像

写真-5 ケーシングビットからの漏水

写真-6 湖底に確認された張りブロックの前面