2015...いdlcoを混合した軽油を用いて、部材影響、インジェクタデポジット(内部及び噴孔)影響を...

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Japan Petroleum Energy Center News 一般財団法人石油エネルギー技術センター ホームページアドレス http://www.pecj.or.jp/ 編集・発行 一般財団法人石油エネルギー技術センター 105-0001 東京都港区虎ノ門4丁目 3番9号 住友新虎ノ門ビル TEL 03-5402-8500 FAX 03-5402-8511 2015.5 CONTENTS ■ 特集 ◎「JATOPⅡ成果発表会開催」 _ ________________________________ __1 ◎技術報告 「ペトロリオミクス技術開発への取り組み」 _________ __9 ◎調査報告 「アジアを中心とした石油製品需給動向と 主要な製油所プロジェクトに関する調査」 __________ 15 ■ トピックス 「当センターホームページで 事故事例の検索を使いやすく改良しました」___________________30 1 特集 平成27年3月9日(月)、イイノホールにおいて、「JATOP Ⅱ成果発表会」が開催されました。 この発表会は、JATOP Ⅱ事業の成果を広く皆様に公開・普及することを目的に実施されたもので、 当日は関係官庁、大学、企業、研究機関などから 340 名の方々に参加いただきました。 JATOP とは、Japan_Auto_Oil_Program の略で、経済産業省のご支援の下、将来の自動車・燃 料における技術課題の解決を目指した、自動車業界と石油業界の共同研究事業であり、JATOP Ⅰ (平成 19 年度~平成 23 年度)に引き続いて、平成 24 年度より 3 か年計画で JATOP Ⅱ事業を 実施してきました。 平成 26 年度は、本事業の最終年度にあたり、これまでの成果を公開する場として成果発表会 を開催いたしました。 発表会では、冒頭に主催者を代表して、当センター専務理事の中野賢行よりご挨拶申し上げま した。 引き続き、ご来賓として経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油精製備蓄課長の竹谷厚 様より、挨拶をいただきました。 成果発表会は、表 1 に示すように 5 部構成にて実施いたしました。第 1 部は主催者とご来賓の 挨拶を行い、第 2 部では JATOP Ⅱの実施背景を説明するとともに、日本の燃料需給とエネルギー 政策に関しての講演をいただきました。第 3 部は「活動報告セッション(1)」として分解系軽油 留分の自動車燃料利用に関する研究成果発表、第 4 部では「活動報告セッション(2)」として大 気研究の成果発表を行いました。最後に第 5 部では、JATOP Ⅱ全体の方向性と成果の審議機関 である「自動車及び燃料研究委員会」の委員長を務めていただいた東京工業大学理事・副学長(現: 独立行政法人製品評価技術基盤機構理事長)の辰巳敬様に「JATOP Ⅱの総括と次期への期待」と 題して 3 年間の総括と今後の研究に関して講演をいただきました。 「JATOPⅡ成果発表会開催」

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  • Japan Petroleum Energy Center News

    一般財団法人石油エネルギー技術センターホームページアドレス http://www.pecj.or.jp/

    編集・発行 一般財団法人石油エネルギー技術センター〒105-0001 東京都港区虎ノ門4丁目 3番9号 住友新虎ノ門ビルTEL 03-5402-8500 FAX 03-5402-8511

    2015.5

    CONTENTS■ 特集 ◎「JATOPⅡ成果発表会開催」___________________________________1 ◎技術報告 「ペトロリオミクス技術開発への取り組み」___________9 ◎調査報告 「アジアを中心とした石油製品需給動向と       主要な製油所プロジェクトに関する調査」__________15■ トピックス 「当センターホームページで 事故事例の検索を使いやすく改良しました」____________________30

    1

    特集平成 27年 3月 9日(月)、イイノホールにおいて、「JATOPⅡ成果発表会」が開催されました。

    この発表会は、JATOPⅡ事業の成果を広く皆様に公開・普及することを目的に実施されたもので、

    当日は関係官庁、大学、企業、研究機関などから 340名の方々に参加いただきました。

    JATOP とは、Japan_Auto_Oil_Program の略で、経済産業省のご支援の下、将来の自動車・燃

    料における技術課題の解決を目指した、自動車業界と石油業界の共同研究事業であり、JATOPⅠ

    (平成 19 年度~平成 23年度)に引き続いて、平成 24年度より 3か年計画で JATOP Ⅱ事業を

    実施してきました。

    平成 26年度は、本事業の最終年度にあたり、これまでの成果を公開する場として成果発表会

    を開催いたしました。

    発表会では、冒頭に主催者を代表して、当センター専務理事の中野賢行よりご挨拶申し上げま

    した。

    引き続き、ご来賓として経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油精製備蓄課長の竹谷厚

    様より、挨拶をいただきました。

    成果発表会は、表 1に示すように 5部構成にて実施いたしました。第 1部は主催者とご来賓の

    挨拶を行い、第 2部では JATOPⅡの実施背景を説明するとともに、日本の燃料需給とエネルギー

    政策に関しての講演をいただきました。第 3部は「活動報告セッション(1)」として分解系軽油

    留分の自動車燃料利用に関する研究成果発表、第 4部では「活動報告セッション(2)」として大

    気研究の成果発表を行いました。最後に第 5部では、JATOP Ⅱ全体の方向性と成果の審議機関

    である「自動車及び燃料研究委員会」の委員長を務めていただいた東京工業大学理事・副学長(現:

    独立行政法人製品評価技術基盤機構理事長)の辰巳敬様に「JATOPⅡの総括と次期への期待」と

    題して 3年間の総括と今後の研究に関して講演をいただきました。

    「JATOPⅡ成果発表会開催」

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    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    表 1 JATOP Ⅱ成果発表会プログラム(敬称略)

    1._ 挨拶

    _ (1)主催者挨拶:_ 10:00 ~ 10:10

    _ _ 中野_賢行(一般財団法人石油エネルギー技術センター_専務理事)

    _ (2)来賓挨拶:_ 10:10 ~ 10:20

    _ _ 竹谷_厚(経済産業省_資源エネルギー庁_資源・燃料部_石油精製備蓄課長)

    2._ JATOPⅡ実施の背景

    _ (1)JATOPⅡ実施の背景と意義:_ 10:20 ~ 10:35

    _ _ 斉藤_吉則(一般財団法人石油エネルギー技術センター_自動車・新燃料部)

    _ (2)日本の燃料需給とエネルギー政策:_ 10:35 ~ 11:00

    _ _ 赤松_徹也(経済産業省_資源エネルギー庁_資源・燃料部_石油精製備蓄課課長補佐)

    3._ 活動報告セッション(1)

    _ 座長:小川_英之(自動車・燃料専門委員会(北海道大学教授))

    _ (1)JATOPⅡにおける自動車・燃料研究の意義と今後の課題:_ 11:00 ~ 11:25

    _ _ 大聖_泰弘(自動車・燃料専門委員会(早稲田大学教授))

    _ (2)分解系軽油留分の自動車燃料としての利用の背景とねらい:_ 11:25 ~ 11:45

    _ _ 野村_守(ディーゼル車将来燃料WG)

    _ (3)信頼性評価チーム報告:金子_タカシ(ディーゼル車将来燃料WG)_ 11:45 ~ 12:25

    _ 【昼食】_ 12:25 ~ 13:25

    _ (4)性能・排ガスチーム報告:野村_守(ディーゼル車将来燃料WG)_ 13:25 ~ 14:05

    _ (5)JATOPⅡにおける自動車・燃料研究の成果と課題:_ 14:05 ~ 14:25

    _ _ 金子_タカシ(ディーゼル車将来燃料WG)

    _ 【休憩】_ 14:25 ~ 14:35

    4._ 活動報告セッション(2)

    _ 座長:坂本_和彦(大気専門委員会(埼玉県環境科学国際センター_総長))

    _ (1)JATOPⅡにおける大気研究の意義:_ 14:35 ~ 14:55

    _ _ 若松_伸司(大気専門委員会(愛媛大学教授))

    _ (2)大気研究WG報告:_ 14:55 ~ 15:45

    _ _ 森川_多津子 /柴田_芳昭(大気研究WG)

    5._ 総括と挨拶

    _ 座長:塩路_昌宏(自動車及び燃料研究委員会(京都大学教授))

    _ (1)次期自動車・燃料研究について:_ 15:45 ~ 15:50

    _ _ 脇田_光明(一般財団法人石油エネルギー技術センター_自動車・新燃料部)

    _ (2)JATOPⅡの総括と次期への期待:_ 15:50 ~ 16:05

    _ _ 辰巳_敬(自動車及び燃料研究委員会(東京工業大学理事・副学長))

    _ (3)閉会挨拶:_ 16:05 ~ 16:10

    _ _ 餅田_祐輔(一般財団法人石油エネルギー技術センター_常務理事)

    なお、所属及び役職名は、発表会開催時点のものです。

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    図 1 発表会場と中野専務理事挨拶

    1.JATOPⅡ実施の背景

    全体の活動報告に先立ち、当センター自動車・新燃料部より、JATOPⅡ実施の背景と意義につ

    いて説明が行われました。

    JATOPⅡでは、図 2に示すような自動車・燃料研究と大気研究のテーマを設定し、平成 24年

    度から 3年間にわたって研究を行ってきました。

    また、この研究プロジェクトを推進するにあたって、委員会及びワーキンググループ(WG)

    を設置し、議論を行ってきました。すなわち、個々のテーマに対して、関連業界の専門家からな

    るWGを設置し、具体的な試験計画や試験結果についての議論を行ってきました。これらの研究

    成果は、研究領域ごとに学識経験者からなる自動車・燃料専門委員会及び大気専門委員会に報告

    され、技術的なアドバイスを受けて、研究進捗に役立ててきました。プログラム全体の方向性及

    び成果の最終的な審議は、学識経験者及び関連業界の有識者からなる自動車及び燃料研究委員会

    にて行ってきました。研究推進体制を図 3に示します。

    _

    図 2 JATOP Ⅱの研究概要

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    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    図 3 JATOP Ⅱ研究推進体制

    2.活動報告

    研究テーマごとに各WGから研究成果について報告されました。以下に各WGの報告概要を紹

    介いたします。なお、当日の発表資料は当センターのホームページに掲載されています。

    http://www.pecj.or.jp/japanese/jcap/jatop2/index_jatop2.html

    (1)自動車・燃料研究ディーゼル車将来燃料WGの活動成果は、以下の 4つのパートに分けて報告されました。

    ① 分解系軽油留分の自動車燃料としての利用の背景とねらい

    ② 信頼性評価チーム報告

    ③ 性能・排ガスチーム報告

    ④ JATOPⅡにおける自動車・燃料研究の成果と課題

    本WGは、分解系軽油留分(特に LCO留分)を利用した燃料について、ディーゼル車の各種

    性能に及ぼす影響検討を行い、実用上の課題を把握するとともに市場への導入拡大に資する技術

    的知見を得ることを目的として活動してきました。

    LCOは、接触分解装置で減圧軽油もしくは常圧残油を分解することで得られる軽油留分であり、

    直留軽油と比較して、セタン価が低く、芳香族分が多く、発熱量が大きいのが特徴です。そこで、

    LCO混合による燃料性状の変化が車両・エンジン性能に及ぼす影響を明らかにするために、図 4

    に示す評価を実施しました。

  • 5

    図 4 LCO が車両に及ぼす影響評価

    信頼性評価チームからは、脱硫 LCO(DLCO)及びDLCOを混合した軽油の酸化安定性と部材、

    インジェクタデポジット影響について検討した結果が報告されました。図 5に示すようにDLCO

    を 326℃でカットすると、軽質DLCO(L-DLCO)には酸化されやすいナフテノベンゼン類が多

    く、重質DLCO(H-DLCO)には酸化抑制物質の多環芳香族が多く存在することがわかりました。

    そして、DLCOの酸化安定性は、酸化されやすい物質と酸化抑制物質のバランスで決まることが

    明らかになりました。また、酸化抑制物質の少ない L-DLCOと L-DLCOよりも酸化抑制物質の多

    いDLCOを混合した軽油を用いて、部材影響、インジェクタデポジット(内部及び噴孔)影響を

    評価したところ、酸化抑制物質を多く含むDLCOはインジェクタデポジット生成への影響は小さ

    く、酸化抑制物質の少ない L-DLCOの場合でも必要に応じて酸化防止剤を添加すれば問題がない

    ことが確認されました。

    図 5 DLCO の酸化安定性

    性能・排ガスチームからは、DLCOの混合による排出ガス・燃費、DPF 負荷、始動性・運転

    性・白煙への影響について検討した結果が報告されました。DLCOの混合増により、エンジン出

    口の排出ガス中の炭化水素、PM等の増加が見られましたが、排出ガス後処理装置出口の排出ガ

    スへの影響は小さいことを確認しました。ただし、この結果から後処理装置の負荷増大の懸念が

    生じました。例えば、図 6に示すように後処理装置のDPF に捕捉した PMは強制的に燃焼させ

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    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    てDPFを再生する必要があります。したがって、エンジン出口の PMの増加によりDPFへの負

    荷が増大する懸念があります。そこで、DPF負荷影響について評価を行いました。その結果を図

    7に示します。DLCOの混合増により、燃料のセタン価が低下し芳香族分が増加するとDPF差圧

    の増加速度が増して、DPF再生への負荷は徐々に大きくなりました。特にセタン価50を下回る(芳

    香族分 30vol% 程度を超える)と、DPF再生への負荷は増大し、セタン価 43(芳香族分 40vol%

    程度)ではDPFがうまく再生されない重大な不具合が生じる可能性があることを確認しました。

    始動性・運転性の評価結果は、始動時間・加速時間に違いは認められませんでした。一方、白煙は、

    低温での加速時に増加する傾向が見られましたが、セタン価向上剤の添加により、減少すること

    が示唆されました。

    _

    図 6 DPF の PM 捕捉と再生

    図 7 PM 堆積・DPF 再生を繰返した際の差圧挙動と DPF のイメージ

    以上の検討結果より、ディーゼル車将来燃料WGの活動成果として、「DLCO の混合によ

    り、軽油のセタン価は低下し芳香族分が増加する。2号軽油でセタン価 50を下回る(芳香族分

    30vol% を超える)と、DPFへの負荷が増大する傾向が見られ、セタン価 43(芳香族分 40vol%

    程度)では、DPFがうまく再生されない重大な不具合が生じる可能性がある」ことを明らかにす

    ることができました。そして、自動車に不具合が生じないことを前提に、2号軽油でセタン価 50

    を下回る(芳香族分 30vol% 程度を超える)レベルまで、更にDLCOの活用増を図るためには、

    DPFへの負荷増大に関して、燃料、自動車双方の対策による検討が必要であることがわかりまし

    た。

    (2)大気研究大気研究WGより、PM2.5 の発生源寄与度解析や将来推計に必要な三次元大気シミュレーショ

    ンモデルの精度向上に向けた、3つの検討結果について報告されました。

  • 7

    ① 大気モデル / インベントリ2010 年度の大気モデルで再現性を確認した後、2020 年度将来推計を三次元大気シミュレー

    ションモデルを用いて実施しました。2020 年度の PM2.5 濃度は、2010 年度と比較して 10%

    減少しました。成分別にみると、NOx 排出量の減少により、硝酸イオン濃度は減少しましたが、

    O3 濃度の増加によってSOA(二次生成有機エアロゾル)濃度は増加しました(図 8)。

    _

    図 8 年平均濃度の変化(東京都足立区綾瀬)

    ② 大気観測(ア)PM2.5 高濃度時の成分解析

    高濃度日のPM2.5 の組成を把握するため、2013 年 7月から、東京都世田谷区野毛にお

    いて、PM2.5 のサンプリングを継続的に実施し、成分解析を行いました。都市部沿道の高

    濃度日の成分解析においては、夏季・春季は硫酸イオンが主要因、冬季は有機炭素(OC)、

    硝酸イオンが主要因であることがわかりました。今後、大気モデルの課題であるOC、有

    機エアロゾル(OA)の過小評価の改善につなげていく予定です。

    (イ)PM2.5 圏外流入分 /圏内生成分解析

    JATOP、国立環境研究所、常時観測局の 14地点の観測結果を用いて、都市部と郊外の

    硫酸イオンの圏外流入分 /圏内生成分の割合を求めました。図 9に示すように硫酸イオ

    ンの 6~ 8割は圏外流入分でした。また、圏内生成分は内陸部よりも都心部の方が多い

    ことがわかりました。

    _

    図 9 関東圏での PM2.5 圏外流入分 / 圏内生成分の観測結果

    *__一次粒子とは、

    「自動車や工

    場から排出さ

    れる人為発生

    源からの粒子」

    及び「土壌、海

    塩粒子や火山

    灰などの自然

    発生源からの

    粒子」をいいま

    す。

    *__二次粒子とは、

    「大気中のガス

    状物質(前駆

    物質)が反応

    して発生する

    粒子」をいいま

    す。

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    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    (ウ)関東圏での成分分布比較

    関東圏の観測結果について成分分布の比較を行いました。境界地点の硫酸イオンは 5

    ~ 6割を占め、OCのほとんどが水溶性有機炭素であることがわかりました。また、御岳

    山では非水溶性有機炭素の割合が多く、近傍発生源の影響が示唆されました。また、内

    陸部は炭素成分と硝酸イオンの寄与が 5割であることがわかりました。この結果から、

    PM2.5 組成は空間的な変動が大きく、二次粒子生成の解明には空間 /地域の広がりや組成

    の違いの把握が必要であることが示唆されました。

    ③ 二次粒子生成メカニズム解明植物由来のVOCの1つであるモノテルペン類のO3 酸化反応によるSOA生成能をスモッグ

    チャンバシステムで実験し、大気モデルに使われている SOA生成能と比較しました。図 10

    に示すように 10μg/m3 以下の低濃度域での SOA生成能は大気モデルの SOA生成能よりも

    高いことがわかりました。今回の実験結果を大気モデルに反映することで、SOA計算値過小

    評価の改善が期待されます。

    _

    図 10 モノテルペン類の SOA 生成能比較(@ 25℃)

    3.まとめ

    成果発表会の最後に、「自動車及び燃料研究委員会」辰巳敬委員長より「JATOPⅡの総括と次

    期への期待」と題して、講演をいただきました。講演の中で、国が政策的に支援する補助金事業

    の下、将来の自動車・燃料における技術課題の解決に向けて自動車業界と石油業界が協力して対

    応し、成果を挙げたことを評価されました。また、今後も両業界の理解と協力をもって更なる課

    題の解決に取り組み、将来の自動車利用における安全・安心を担保し、国民の利益につなげるこ

    とを要望されました。

    当センターとしては、平成 27年度以降も自動車業界と石油業界の協力体制の下、新たな課題

    に挑戦することができるよう事業を推進してまいります。今後も、皆様のご支援、ご協力をお願

    い申し上げます。

  • 9

    1.はじめに

    ペトロリオミクスは、超多成分複雑系である重質油の物性や反応性をその成分分子の化学構造

    と組成に基づいて解析・予測しようとする新規な科学技術パラダイムです。世界的にも未だ黎明

    期にあるペトロリオミクス技術をいち早く確立して新規な石油精製技術の開発や装置運転の最適

    化に有効活用することで、我が国産業競争力の強化に資することが期待されています。

    ペトロリオミクスの基盤技術は、石油を詳細に分析してその化学構造と組成を分子レベルで解

    明する「詳細組成構造解析技術」、石油の反応を分子レベルで解析・予測する「分子反応モデリン

    グ技術」、ビッグデータであるペトロリオミクス情報(石油の構造・組成・物性・反応性に関する

    あらゆる情報)を高度に解析して精製技術開発に有用な知見を抽出するための「ペトロインフォ

    マティクス技術」の三つで構成されています。当センターではこれらの基盤技術の開発を推進す

    ると共に、それらを石油精製プロセスにおける具体的な課題に適応してそれを解決するための技

    術開発として、「アスファルテン凝集制御技術」と「新規 RDS(重油直接脱硫装置)適応技術」

    の二つの適応技術開発にも取り組んでいます。更に、ペトロリオミクス基盤技術開発が実現した

    後、その技術を実証研究に繋げるために必要な先導的要素技術の調査も並行して推進しています。

    これらの技術開発計画を図 1に示します。

    本稿では、主に平成 26年度の技術開発成果の中からトピックスをご紹介します。

    23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

    基盤技術開発

    適応技術開発

    詳細組成構造解析

    ペトロインフォマティクス

    分子反応モデリング

    アスファルテン凝集制御技術

    新規RDS適応技術先導的適応技術

    分離技術

    機器分析

    データ解析

    手法確立

    要素モデル

    プロセスモデル

    新規ツール

    データベース

    統合・体系化

    高速化装置開発・条件確立高精度分離方法考案

    定量性向上超高分解能測定FT-ICR-MS

    導入

    新規化学式JACD解析コア構造解析構造分布視覚化

    構造属性ベース分子ベース

    QSRR・コーキング

    LCO水素化・RDSLGO-HDS

    高速反応実験HTE導入JKMT導入

    物性推算・新規ランピング・流動反応連成

    全石油分子DB・研究情報管理システムPIP-LAN

    JACD実用化JACD考案PIP概念設計

    技術調査

    図 1 ペトロリオミクス技術の開発計画

    特集 技術報告「ペトロリオミクス技術開発への取り組み」

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    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    2.技術開発トピックス

    (1)詳細組成構造解析詳細組成構造解析では、多種多様な重質油分子をその構造タイプ毎に分画するための高精度分

    離技術、分画試料の分子組成を把握するための機器分析技術、分析データを解析して化学構造を

    同定し定量的な組成を決定するためのデータ解析技術が必要であり、それらの技術確立を目標と

    して開発を進めて来ています。

    ここでは平成 24 年度と平成 25 年度に引き続き開発を進めてきた統合視覚化ツール(CSV)

    をご紹介します。詳細組成構造解析では FT-ICR-MS の測定データについて精密質量の較正、誤

    差解析、分子式によるピークの帰属を行い、1試料あたり数千~数万の石油分子の組成情報を得

    ます。その際、微小なものも含めてピーク数が膨大であること、質量数が僅差のピークが多く含

    まれること、そのため例えばメタル化合物の同定では複雑な同位体ピークの解析が必要になるこ

    と等から、装置付属のデータ解析ソフトや市販のデータ解析ツールを用いても適切に解析できな

    い場合も多くあります。そのため、当センターではこれらの高度なデータ解析を実現するための

    ソフトウエアとしてCSV(Composition_and_Structure_Visualizer)を独自に開発しました。CSV

    のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を図 2に示します。CSVではこれらの機能に

    加えて分画試料データの統合や、解析結果である多数の成分の組成・構造分布を直感的に理解で

    きるように表示するための「炭素数 - 不飽和度プロット(図2内右下)」や「ヘテロクラス分布の

    円グラフ」等の視覚化機能も実現しました。

    図 2 独自開発した FT-ICR-MS データの統合・視覚化ツール(CSV)

  • 11

    (2)分子反応モデリング分子反応モデリングでは、「原料油の分子組成のモデル化」-「反応ネットワークの構築」-

    「反応速度論モデルの作成と実行」という一連のモデリング手法を確立します。更に、多数の反

    応速度パラメータを系統的に推算する定量的構造反応性相関(QSRR)などの要素モデルの作成、

    LGO-HDSや RDSといった精製装置のプロセスモデルの作成も行っています。また併せて、分子

    反応モデリングのために必要となる反応実験データを網羅的かつ迅速に取得可能な高速反応実験

    装置(HTE)を用いた実験技術の確立も進めています。

    ここではRDSプロセスモデル開発のための反応解析についてご紹介します。残油には数千~数

    万の分子が含まれています。RDSでは個々の分子が数種類の反応を経て他の分子に変換されてい

    くため、通常の分子反応モデリングの手法を適応すると、取り扱うべき成分数と反応パスの数は

    それぞれ数万、数十万に上ります。このような大規模なモデルを構築・実行・解析・編集するこ

    とは通常のPCレベルでは困難であり、実用的ではありません。そこで当センターでは、RDSモ

    デルの開発にはデラウエア大学で開発された分子反応モデリングの一手法であるARM(Attribute_

    Reaction_Modeling)を採用しました。

    ARMでは個々の分子の反応を直接方程式化する代わりに、分子を一旦その構成要素である縮合

    環コア(以下、「コア」と記述)、側鎖、架橋といった構造属性(Attribute)に分割し、これらの

    構造属性毎の反応モデルをサブモデルとして連成することで系全体の反応を方程式化します。こ

    れにより反応モデルの規模を適切な範囲に抑制し、通常の PC環境でも実行できる実用的なモデ

    ルを構築することが可能となります。RDS原料油の分析例で分子数は 13000 に上りましたが、

    コアの種類は 650程度に収まりました。モデルの規模は取り扱う成分数に対して指数関数的に大

    きくなるため、ARMを用いることでモデルのサイズを大幅に低減できる見込みです。

    平成 26年度は、3種類の構造属性のうち先ずコアのサブモデルを構築するために、HTE実験

    の原料油と生成油の詳細構造解析を行い、コアの反応解析を行いました。図 3にコアの反応ネッ

    トワークの中から「芳香環数+ナフテン環数 =2」の部分のみを抜粋して示します。ナフテンの開

    環や分解反応が顕著でない通常の RDS反応条件ではこの反応ネットワークは閉じていると考え

    られ、実際そのような解析結果を得ることができました。反応ネットワークの他の部分について

    も反応実験と原料油の分析データに基づいた定量的な解析を行い、コアのサブモデルを完成させ

    ています。今後側鎖と架橋についても同様に解析・モデル化を進め、最終的にはそれらを連成さ

    せたRDSモデルを完成させる予定です。

    図 3 RDS 反応ネットワークの一部

    (「芳香環数+ナフテン環数 =2」となるコア構造のネットワーク)

  • 12

    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    (3)ペトロインフォマティクスペトロインフォマティクス技術開発では、ペトロリオミクス情報を蓄積・検索・解析するため

    のデータベース(DB)システムや、ペトロリオミクス情報を変換・活用するための新規ツール

    の開発に取り組んでいます。またペトロリオミクス情報を最大限有効活用して画期的な石油技術

    の開発に繋げるためには、詳細組成構造解析や分子反応モデリングも含めた基盤技術全体を統合

    して技術プラットフォーム化する必要があるため、これをペトロインフォマティクス・プラット

    フォーム(PIP)と名付けて、その開発も進めています。

    ここではPIPと、その一部であるDBシステムについてご紹介します。PIPの主要な課題として、

    多岐に亘り且つ膨大な量のペトロリオミクス情報を、効果的・効率的に処理すること、及びペト

    ロリオミクス情報を分子の組成・構造・物性・反応性情報を極力維持したままプロセスシミュレー

    タやCFDに入力可能なデータに変換することなど、が挙げられます。これらの課題を解決する

    ための技術がDBシステムと新規ツールであり、詳細組成構造解析や分子反応モデリングといっ

    た他の基盤要素技術と併せたPIP 全体の構成イメージを図 4に示します。

    _

    要素技術を繋げるための共通データ様式(新規化学式)

    詳細組成構造解析• 分離技術• 機器分析• データ解析

    分子反応モデリング• モデリング手法• 各種モデル構築• 高速反応実験

    DBシステム• ペトロリオミクス情報

    管理システム• 全石油分子DB

    従来技術• プロセスSim• 数値流動解析

    新規ツール• 物性推算• ランピング

    ペトロリオミクス情報管理システム 全石油分子データベース

    サンプル情報 実験情報 石油分子の構造・物性知財情報 各種文書

    図 4 ペトロインフォマティクス・プラットフォーム(PIP)の構成イメージ

    DBシステムはプラットフォーム全体の要でもあり、全てのペトロリオミクス情報や技術にア

    クセスするためのゲートウエーの役割も担っています。このDBシステムは、最先端のペトロリ

    オミクス研究に関する膨大な情報を収集・蓄積したデータバンクであるペトロリオミクス情報管

    理システム(J-Note)と、石油に含まれる全ての成分の分子構造と物性を紐付けた化学データベー

    スである全石油分子データベース(ComCat)から成ります(図 5)。J-Note については、既に主

    要な情報管理モジュールの開発を終えており、実運用を行いながらそのブラッシュアップを進め

    ています。ComCat については、数千万件以上の石油分子の構造・物性データを作成・登録する

    ためのプログラム開発を終えており、今後これらのプログラムを使ってDBの構築を進めて行く

    予定です。

    要素技術を繋げるための共通データ様式(新規化学式)

    詳細組成構造解析• 分離技術• 機器分析• データ解析

    分子反応モデリング• モデリング手法• 各種モデル構築• 高速反応実験

    DBシステム• ペトロリオミクス情報

    管理システム• 全石油分子DB

    従来技術• プロセスSim• 数値流動解析

    新規ツール• 物性推算• ランピング

    ペトロリオミクス情報管理システム 全石油分子データベース

    サンプル情報 実験情報 石油分子の構造・物性知財情報 各種文書

    図 5 ペトロリオミクス情報管理システム(左)と全石油分子データベース(右)

  • 13

    (4)アスファルテン凝集制御技術アスファルテン凝集は、石油産業の上流(原油生産)・中流(輸送・備蓄)・下流(精製)各部

    門において管の閉塞や触媒の失活といった様々な問題の主原因の一つであり、そのコントロール

    は極めて重要です。しかしアスファルテンの凝集挙動は非常に複雑であるため、これまではそれ

    を定量的に予測し制御する方法が確立されていませんでした。そこで、「アスファルテン凝集制御

    技術の開発」では、先端的な実験技術を駆使してアスファルテンの凝集メカニズムを解明し、重

    質油の溶解・凝集・析出を定量的に予測できるモデルを作成すること、及びそのモデルを活用し

    て石油精製に関わる諸問題を解決することを目的として研究開発を実施しています。

    ここでは、先端的な実験技術を駆使したアスファルテン凝集メカニズムの解明についてご紹介

    します。アスファルテン凝集体の大きさはナノメートル(1nm=10-9m)のオーダーであり、そ

    の大きさや形をX線小角散乱やレイリー散乱を使って観察しました。また凝集体内部の分子の積

    層構造は X線回折を使って、凝集分子の運動性はNMRスピン緩和を用いて調べました。何れも

    300℃、10MPa といった高温高圧まで含めた様々な条件で実験しており、濃度や溶媒の種類によ

    る凝集構造の違いも把握しました。さらにこれらの結果と分子動力学(MD)法を用いた理論計

    算の結果を比較して、様々な条件におけるアスファルテンの凝集度を定量的に予測できる指標(凝

    集指数:AI)にまとめました。アスファルテン分子と凝集構造の例としてMD計算のスナップショッ

    トを図 6に示します。

    図 6 アスファルテン分子(左上)とその凝集体の構造

    今後このAI をベースとして、超多成分系である重質油の溶解・凝集・析出現象を総合的に解析・

    予測できるモデルを構築する予定です。

    (5)新規RDS適応技術RDS装置は、常圧蒸留塔の残渣油を水素化処理して重油やRFCC(残油流動接触分解)装置の

    原料油を製造します。RFCCは安価な重質油を高付加価値な石油製品に転換でき国内の多くの製

    油所で基幹装置として稼働していますので、RDSで製造する脱硫重油を RFCC原料として適し

    たものにすることは非常に重要です。本適応技術開発では、RDSにおける反応と流動を詳細に把

    握しそれらを適切にコントロールすることを目指した「流動反応連成シミュレーション技術」と、

    十分な脱メタル率と脱残炭率を達成できる高活性な RDS触媒の開発を目指した「触媒設計技術」

    の開発に取り組んでいます。ここでは「触媒設計技術」開発における高速反応実験装置(HTE)

    を用いた検討についてご紹介します。

  • 14

    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    反応原料には、残炭の原因成分と考えられる重質油中の極性レジン分(Po)と多環レジン分 (PA)

    を用い、レジン分の反応において中間体の一つとして考えられる 3環以上芳香族成分 (3A+) も併

    せて検討しました。これらの成分を、本事業において開発した大量分画処理装置を用いて重質油

    から回収し 1.3 重量%となるようデカリンに溶解して原料油を調整し、市販触媒システムを充填

    した 16本のHTE反応器に通油しました。図 7に各反応器出口生成油の写真を示し、対応する反

    応器の触媒充填状態を写真の上部に図示します。

    原料油 生成油

    #1 #2 #3 #4

    280℃

    #5 #6 #7 #8

    320℃

    #9 #10 #11 #12

    360℃

    #13 #14 #15 #16

    320℃

    3A+

    Po

    PA

    図 7 HTE 反応試験結果

    未反応状態では 3A+は茶色、Po、PAは褐色~黒色であり、水素化反応の進行に伴い着色が薄

    くなっていく様子が観察できています。色の変化は残炭原因物質である Po、PAから非原因物質

    である 3A+、2A、1A、Sa へと変化していることを示しています。3A+は低温で速やかに無色へ

    と変化するのに比べて PAは高温になるまで色の変化が小さく、360℃でようやくサンプルは無

    色になっています。これはPAが 3A+ よりも反応性が低いことを表しており、これら反応性の違

    いがCCRへの寄与の大小と相関していると考えられます。今後生成油の詳細分析を行い、定量

    的な反応解析を進め、その結果を触媒設計技術の開発に反映させる予定です。

    3.おわりに

    本事業は、5年間に亘る開発期間のうち既に 4年間を終了して、最終年度に入っています。冒

    頭で述べた通りペトロリオミクスは新規な科学技術パラダイムであり、その技術確立と有効活用

    により石油精製技術の高度化に大きく貢献することが期待されています。一方で世界的にも未だ

    黎明期の技術であり、事業開始当初はその技術体系はもとより個々の要素技術についても確立さ

    れているものはほとんど何も無い状態でした。そのような中で基盤及び適応技術開発のグランド

    デザインを作成し、全ての開発アイテムについて目標とマイルストーン、及び成果イメージを明

    確にしました。このグランドデザインを踏まえながらこれまで順調に開発を進めて来ており、様々

    な機会を捉えてその成果を発信し国内外から多くの反響を頂いています。最終年度は、全ての技

    術開発アイテムを予定通り完成させると共に、それらを統合してペトロインフォマティクス・プ

    ラットフォーム(PIP)として体系化すること、及び開発した基盤技術と適応技術を実証技術開

    発の中で活用してペトロリオミクス技術の有用性を検証することを目指して取り組んで参ります。

  • 15

    1.調査の目的

    近年の石油製品需要の一般的な傾向として、OECD先進諸国では漸減、アジアや中東等の非

    OECD諸国では増加する傾向が、今後も継続すると見られ、特に中国、インドは将来とも、世界

    の需要を牽引していくものと予想されています。

    石油製品需要の傾向を油種別に見ますと、世界的な環境規制の流れから、規制対象となる硫黄

    分の含有率の高い重質燃料からより低い軽質燃料への需要シフトの動きは、今後も続くことが確

    実視され、中でもディーゼル、軽油、ジェット燃料等、中間留分の需要増は、ガソリンのそれを

    遥かに凌駕するとの予測が一般的です。

    供給サイドでは、上記の製品需要構造の変化に対応して、需要急増中の新興国を中心に製油所

    の新増設が続く一方、需要減が見込まれる先進国、特に欧州等では、製油所の統廃合や、油槽所・

    ターミナル等への転換等、処理能力の削減に向けた動きが目立っています。

    これらの動きに加え、先進国・新興国の別を問わず、製油所処理能力が国内需要を超えている

    国では、2通りの戦略的アプローチが見られます。1つは、付加価値の高い石化製品等への生産

    シフト、もう1つは、当然ながら石油製品輸出です。

    このような世界的な石油情勢の中で、我が国の石油・石油化学産業は、従来のパターンでの国

    内製品需要の伸びは期待し難い状況とされ、事業の海外展開を検討することは、更なる成長の

    可能性を探る上で不可欠です。変転目まぐるしい世界の石油・石化産業の事業環境の中では、需

    給への影響が大きいと思われる変動要因、特に米国のシェール革命などによる石油、天然ガス、

    NGL、石油製品等の需給や、船舶用燃料の硫黄分規制など環境問題を背景とした製品品質の動向

    等に着目し、今後の製品需給を予測・分析するとともに、世界中の製油所に関連するプロジェク

    ト等の情報を収集して、我が国石油産業の新たなビジネスチャンスの可能性について考察するこ

    とを目的に本調査を実施しました。

    本調査の実施に当たっては、世界の原油、石油製品需給の現状、将来の需給予測や、各国エネ

    ルギー政策、及び注目すべき製油所プロジェクト等に関する基本的な情報を米国のコンサルタン

    ト会社Nexant 社から購入しました。また、そのほか、必要な情報について当センターが各種の

    情報源から情報収集しました。

    特集 調査報告「アジアを中心とした石油製品需給動向と主要な製油所プロジェクトに関する調査」

  • 16

    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    2.調査の内容及び結果

    2-1 基本ケースのマクロ経済学的推測(1)経済成長本調査の方法論における主な想定は、周期的に強い時期と弱い時期がある経済の成長性が石油

    化学製品の需要、及び低いレベルではありますが石油製品の需要を形成するというものです。経

    済成長は周期性を持つと推測され、各ピーク間に8年の間隔があります。本調査では経済周期を

    組み込みつつ、発表されている予測の長期トレンドに関する見解を勘案して、長期的経済動向に

    関する見通しを作成しました。短期を除いて、将来の好不況の時期は不確実ですが、それでも経

    済周期により石油精製業及び石油化学産業の持続可能性(特に不況期間中の)に関する主な洞察

    が得られます。

    本調査の基本ケース経済見通しでは、過去数年間の不景気の後、実施された政府政策が成功して

    世界の成長が次第に加速される場合のシナリオを想定しています。世界の経済活動は、2015 年に

    予想される新たなピークに向けて強まっていると推測されます。2030 年までの長期的な経済成長

    のトレンドは、過去の平均に近い年平均およそ 3.3%と思われます。アジア、中東、アフリカの開

    発途上諸国が世界経済の回復を主導すると予想され、世界平均を十分に上回る成長率を達成する見

    込みです。西洋諸国の経済も回復し始めますが、国家の負債の規模を是正するための構造改革によ

    り一部市場で回復が遅れる可能性があり、欧州でそのリスクが最も高くなっています(図1)。

    0.0

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    NorthAmerica

    LatinAmerica

    WesternEurope

    Middle East Africa Asia Central &EasternEurope

    Comp

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    2000-2013 2013-2030

    図1 世界の地域別の景気動向見通し(GDP の年間実質変化)

    (2)人口増加2014 年の世界人口は 70億人をわずかに上回ると推定され、2000-14 年の間に年平均 1.2%

    増加しました。アジア地域が世界人口のおよそ 56%を占め、世界で最も人口の多い2ヶ国、中国

    とインドが含まれています(図2)。

    世界人口は主に開発途上国における人口増加が推進力となり、2030 年までに 82億人以上に増

    加すると予想されます。しかし、世界の人口増加率は現在から2030年までの間に毎年およそ1.0%

    ずつ減少する見込みです。人口増加率は地域によって相当異なり、中東とアフリカが最も増加率

    が高く、中欧及び東欧では人口が減少すると思われます(図3)。

  • 17

    North America7%

    Latin America7%Western Europe

    6%Middle East

    5%

    Africa13%Asia

    56%

    Central & Eastern Europe

    6%

    図2 世界の人口分布 – 2014 年

    -0.5

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    NorthAmerica

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    Middle East Africa Asia Central &EasternEurope

    Comp

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    h Rate

    2000-2013 2013-2030

    図3 世界の人口増加の傾向

    (3)将来の原油価格(図4)中間原油価格シナリオは、2016 年のブレント原油価格が 2010-2014 年の期間中の平均価格

    に近い安定状態のトレンド価格に達すると想定しています。ブレント価格は$100(2014 年恒常

    ドル)/bbl で実質的に安定を維持します。

    高原油価格シナリオは、2016 年までに原油価格が 2008 年上半期に達成された記録的高価格

    近くに達すると想定しています。ブレント原油価格は $140(2014 年恒常ドル)/bbl の安定し

    たトレンド価格になります。

    低原油価格シナリオは、2016 年までに価格が 2005-2007 年の期間中の平均価格近くで安定

    価格に達すると想定しています。ブレント原油価格は $70(2014 年恒常ドル)/bbl で安定する

    と推定されます。

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    250

    1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030History Medium High Low

    Cuur

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    ScenariosActual

    図4 原油価格のシナリオ(ブレント、FOB 北海)

  • 18

    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    2-2 原油価格シナリオの想定(1)原油価格の最近の展開原油価格は 2014 年7月以降大きく下落し、現在の価格は過去5年間の価格及び石油/石油化

    学部門への最近の投資評価の際に使用された価格を大幅に下回っています。

    原油価格は、比較的安定した期間が続いた後、2014年下半期中に急落しました。図5に示すよ

    うに、月平均ブレント原油スポット価格は 2014年7月までの1年間、比較的安定していました。

    以降、ブレント原油の価格は直近のピークである 2014 年6月の $115/bbl を 50%以上下回り、

    2011-14年の平均ブレント原油価格およそ$110/bblを相当に下回る$50/bbl未満に下落しました。

    原油価格の最近の下落を推進した主な要因として以下が挙げられます。

    ▪_ 米国及びカナダで原油生産が増加し、米国の石油輸入必要量が大幅に減少した。

    ▪_ _リビアやイラクなどの供給源から入手可能な原油量が増加し、ISIS がイラクの原油輸出を著

    しく妨害する懸念が減少した。

    ▪_ 以下の原因による世界需要の鈍化:

    _ -_ _中国経済の多くの部門にわたる大幅な能力過剰により、中国が追求してきたエネルギー

    集約型の経済開発が少なくとも一時的に休止したため、中国の経済成長が鈍化し、不確

    実性が増大した。

    _ -_ 欧州の景気動向の軟化により、石油需要が次第に減少している。

    ▪_ 米国の金融情勢及び通貨市場の心理に起因する、米ドルの大幅な上昇。

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    Bren

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    図5 過去の平均月間ブレント原油価格

    (2)将来の原油価格およそ $100/bbl という原油価格(本調査の中間原油価格シナリオ)は本調査の基本ケース市

    場見通しに関して、またビジネスチャンスの将来の景気動向を評価する上で、妥当な価格環境と

    考えられます。この見解は、現在の価格下落が需要の根本的な変化ではなく主として原油の供給

    過剰によることを勘案しています。この点を考慮すると、是正のための対応が予想されるため、

    原油市場が均衡のとれた状況に達するまでの、低い原油価格が持続する期間は限られていると思

    われます。

    現在の石油市場の状況に基づき、また現在の供給過剰を勘案すると、価格回復に関しては以下

    の2つのシナリオが考えられます。

    ▪_ 2015-2017 年:供給の短期的減少により、価格はおよそ$60/bbl まで回復する。

    ▪_ _2017-2020 年:現在の生産投資削減が効果を現し、また需要の伸びの回復により、およそ

    $100/bbl レベルまでさらに回復する。

  • 19

    従って、総合すると、中間原油価格シナリオが長期プロジェクト評価のための適切なトレンド

    ベースと考えられますが、向こう 3-5 年は価格がそのレベルを下回るリスクがあることも認識し

    ておかなければなりません。

    2-3 原油の需要世界の石油精製能力は、製品需要の増加に歩調を合わせて相当に増加する見込みです。本調査

    の予想では、新規精製能力の大部分が石油消費国に立地すると思われます。そのため、本調査期

    間(2013 年から 2030 年まで)にわたり推定される精製能力増加分 2,100 万 BPD(バレル/日)

    のおよそ 48%は、アジア太平洋地域に存在する見込みです(図6)。

    製油所処理量の地域的パターン、従って原油需要のパターンは、歴史的に製油所処理能力の増

    加と並行しています。アジアで予想される精製能力の伸びを反映して、この地域の原油需要が将

    来の世界の原油需要に最も大きく寄与すると思われます。

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    1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030

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    No. America So. America Africa W. Europe E. Europe Middle East Asia Pacific

    Actual Forecast

    図6 世界の精製能力(百万 BPD)

    原油需要に関する予想の要点は以下の通りです。

    ▪_ _アジア太平洋地域は本調査期間にわたり原油需要で優勢を占め、2030 年には総需要増加分

    の 46%に相当すると思われる。その結果、アジア太平洋地域が世界の原油需要に占める割合

    は、2013 年のおよそ 33%に比べて、2030 年までにおよそ 36%に達する見込みである。

    ▪_ _中東の精製能力増加の見込みと東欧の製油所稼働率の劇的な改善により、中東と東欧では原

    油需要の大幅な伸びが予想される。

  • 20

    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

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    NorthAmerica

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    EasternEurope

    Africa Middle East Asia Pacific

    2005 2013 2020 2030

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    Per D

    ay

    図7 原油の純貿易量(百万 BPD)

    アジアの原油輸入必要量は本調査期間にわたり劇的な増加が予想され、不足分の大半は中東が

    供給しますが、アフリカと南米の寄与が次第に重要性を増すと思われます(図7)。中国の原油輸

    入量の増加は、アジア地域の将来の原油輸入量増加分の半分以上を占める見込みです。

    北米の輸入必要量は減少を続け、南米の輸出は増加すると思われます。その結果、西半球では

    2015 年まで均衡のとれた純貿易状況が予想されます。このような原油貿易の地域的変化は原油

    価格に顕著な影響を及ぼし、西半球で生産される原油の価格はブレント原油価格に対して低迷を

    続ける見込みです。

    2-4 石油製品の需給予想(1)世界の石油製品の概要主な石油製品の世界の年間需要は 2000-2013 年の間におよそ 1,130 万 BPD増加し、増加分

    のおよそ 51%をディーゼル/軽油が占め、ガソリンとディーゼル/軽油を合わせると 73%を占

    めました。石油製品の世界の需要は 2000-2013 年の期間中に平均 1.5%/年の割合で増加し、将

    来的には 2013-2030 年の間に 1.5%/年の割合で増加すると予想されます。本調査の予想では、

    予想期間中に LPG、ナフサ、及びディーゼル/軽油の需要は平均を上回る伸びを示しますが、残

    渣燃料油の需要は減少すると思われます。2030 年の全製品の合計需要は 2013 年レベルをおよ

    そ 28%上回る見込みです。将来の需要増加においてはディーゼル/軽油が優勢で、需要増加分の

    42%を占めると思われます(図8)。

    世界の発展途上地域で最も高い伸びが予想されます。将来の増加においてはアジアが優勢で、

    将来の需要増加分の絶対量のおよそ 49%を占めると思われます。

  • 21

    (2)

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    LPG Naphtha Gasoline Kero/Jet Fuel Diesel/Gas oil Residual Fuel

    図8 製品需要の増加量、2013-2030 年(百万 BPD)

    (2)原油精製能力の現状と増強計画世界の石油精製能力は最近、1980 年代の以前の最高記録を上回りました。世界の精製能力は

    2013 年におよそ 9,320 万 BPDでしたが、2014 年には 9,440 万 BPDに達し(図9)、アジアと

    北米が世界の石油精製能力のおよそ55%を占めると推定されます。アジアでは2000-2013年に最

    大の精製能力急増があり、同期間の年平均成長率は北米のおよそ0.5%に対して2.7%に達しました。

    石油製品需要の増加に合わせて精製能力も相当な増加が予想され、消費国で最も多くの新規精

    製能力の追加が発生する見込みです。つまり、2030 年末までに予想されるおよそ 1,000 万 BPD

    の精製能力追加はアジアで発生すると思われます。加えて、中東でもおよそ 420 万 BPDの製油

    所能力追加が予想されます。この2地域を合わせると、この期間中の世界の製油所能力追加分の

    70%近くを占めると思われます(図 10)。

    世界の製油所稼働率は 2005 年におよそ 86%でピークに達しましたが、急激な石油精製能力

    増加と、経済動向の低迷で石油製品需要が鈍化するにしたがって減少しました。2009 年までに、

    稼働率は景気下降により 81%を下回るレベルまで減少しました。その後 2010 年に 82%まで回

    復し、過去3年にわたってやや増加しています。将来、世界の製油所稼働率は 84%をわずかに上

    回るトレンドラインに達すると予想されますが、石油製品需要増加と精製能力の追加により年ベー

    スで変動する見込みです(図9)。

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    Refining Capacity Throughput Operating Rate

    図9 世界の石油精製能力と稼働率

  • 22

    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    China32%

    Saudi Arabia11%

    India10%

    Brazil8%

    Indonesia5%

    Iran4%

    Mexico4%

    Vietnam3%

    Iraq3%

    Others20%

    図 10 主要国の製油所生産能力追加分、2020-2030 年

    2017 年末までの世界の製油所稼働率のトレンドは、2013-2017 年に見込まれている確定した

    製油所処理能力追加分を勘案しています。確定した処理能力追加分により、世界中の製油所の原

    油蒸留能力は同期間にわたりおよそ 720 万バレル/日(BPD)増加すると予想されます。しか

    し、およそ 130万 BPDの精製能力の廃止により、純蒸留能力増加分は 590万 BPDになります。

    2013-2017 年のこの純蒸留能力増加分のうちおよそ 79%がアジア及び中東で発生し、中国だけ

    で合計のおよそ 40%を占めると思われます。

    (3)世界の石油製品の供給前述のように、将来の石油製品供給量の増加ではアジア及び中東の製油所処理能力増加が優

    勢になると思われます。この2地域を合わせると 2030 年の製品増加分の 62%を占める予想で

    す。アジアと北米は現在、石油製品の主要生産地域であり、2013 年総供給量のそれぞれ 30%と

    27%を占めています。両地域は 2030 年も引き続き二大供給源であり続けますが、アジアの生産

    能力増加により両地域の差が拡大し続け、2030 年の総供給量に占める割合は北米の 23%に対し

    てアジアは 32%近くに達する見込みです。西欧は現在、三番目に大きな供給源として 14%を占

    めますが、2030 年には 12%に減少すると予想されます。本予想期間中の 2030 年までに、石油

    製品の総供給量に占める割合が 15%に増加する見込みの中東は、西欧を追い越すと思われます。

    (4)石油製品の世界の純貿易量図 11~ 13は主な石油製品全ての純貿易量を地域別に示した全体像で、中東、東欧、北米は継

    続的に過剰で、アジア、西欧、南米では供給不足が示唆されます。アフリカはこの先、ほぼ均衡

    のとれた純貿易量となると予想されます。生産地域と消費地域それぞれにおいて新規精製能力が

    追加される可能性があるため、将来の貿易の流れを予想する場合には幾分かの不透明性が存在し

    ます。全てを考慮して、向こう 20年間にわたり必要な新規生産能力の大部分は、全体的な供給

    コストの低減につながることから消費地域に位置すると思われます。

  • 23

    図 11  世界の地域別貿易

    石油製品貿易量

          (百万 BPD)

    (0.6)

    (0.4)

    (0.2)

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    NorthAmerica

    SouthAmerica

    Africa WesternEurope

    EasternEurope

    Middle East Asia

    2013 2020 2025 2030S3_02380.001.01.xlsx\F3.4

    (2.5)

    (2.0)

    (1.5)

    (1.0)

    (0.5)

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    NorthAmerica

    SouthAmerica

    Africa WesternEurope

    EasternEurope

    Middle East Asia

    2013 2020 2025 2030S3_02380.001.01.xlsx\F3.5

    (6)

    (5)

    (4)

    (3)

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    (1)

    0

    1

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    4

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    NorthAmerica

    SouthAmerica

    Africa WesternEurope

    EasternEurope

    Middle East Asia

    2013 2020 2025 2030S3_02380.001.01.xlsx\F3.2

    図 12 世界のガソリン貿易

           (百万 BPD)

    図 13 世界の中間留分貿易

           (百万 BPD)

  • 24

    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    本予想期間中の各地域における主な製品の傾向を以下に述べます。

    ▪_ _北米は、米国シェールガス資源の開発による LPG輸出量の増加が主な推進力となり、石油製

    品の純輸出が増加する予想である。この地域は引き続きガソリンの最大の輸入地域であり続

    けるが、自動車燃料効率の改善義務と輸送用代替燃料の増加により米国の石油製品需要が減

    少するため、輸入量の減少が予想される。また北米は引き続きディーゼル/軽油の重要な純

    輸出地域であり、残渣燃料の純輸出量が増加する見込みである。

    ▪_ _南米は、主要な不足製品であるディーゼル/軽油の輸入増加が見込まれるため、引き続き石

    油製品の重要な純輸入地域であると予想される。本予想期間にわたり灯油/ジェット燃料の

    純輸入量も増加するが、ガソリンの純輸入量はほぼ変わらないと思われる。

    ▪_ _アフリカは、LPG、ナフサ、及びそれより少なめではあるが残渣燃料の過剰増大により、石

    油製品の小規模な純輸出地域になると思われるが、ガソリン、ディーゼル/軽油、灯油/ジェッ

    ト燃料の純輸入必要量は多めの傾向になる予想である。

    ▪_ _西欧は、ディーゼル/軽油の不足増大により、石油製品の重要な純輸入地域であり続けると

    予想される。ここは本予想期間にわたりディーゼル/軽油の最大の輸入地域であり、一方、

    灯油/ジェット燃料の輸入量は減少、ナフサの輸入必要量は比較的変わらないと思われる。

    ▪_ _東欧は、ディーゼル/軽油及び灯油/ジェット燃料の過剰増大により、引き続き石油製品の

    重要な純輸出地域であると予想される。またこの地域は残渣燃料の重要な純輸出地域である

    が、今後さらに製油所アップグレードへの投資が行われるにつれて、この輸出量は減少する

    見込みである。

    ▪_ _中東は、現在、LPG、ナフサ、灯油/ジェット燃料の主要輸出地域である。この地域は製油

    所生産能力の増加により現在の製品余剰が増大し、均衡のとれたディーゼル/軽油貿易状況

    から重要な輸出地域に移行するにつれて、石油製品の最大の純輸出地域になると予想される。

    ▪_ _アジアは、製油所生産能力が最も大きく増加するにもかかわらず、供給増加が需要の伸びに

    追いつけないために、貿易赤字は現在のレベルから大幅に増大する見込みである。アジアは

    今後もLPG、ナフサ、残渣燃料の最大の純輸入地域であり続けると予想される。さらに、ディー

    ゼル/軽油及び灯油/ジェット燃料は現在過剰だが、本予想期間の終わりまでに不足に転じ

    ると思われる。

  • 25

    2013 年の主要な石油製品の貿易の流れを図 14に示します。

    North America

    FSU

    AsiaMiddle East

    Africa

    Europe

    LPG

    Naphtha

    Gasoline

    Jet/Kerosene

    Diesel/Gas Oil

    Fuel Oil

    North America

    FSU

    AsiaMiddle East

    Africa

    Europe

    LPG

    Naphtha

    Gasoline

    Jet/Kerosene

    Diesel/Gas Oil

    Fuel Oil

    South America

    図 14 世界の石油製品貿易の流れ、2013 年

    2030 年に予想される主な石油製品の貿易の流れを図 15に示します。

    North America

    FSU

    AsiaMiddle East

    Africa

    Europe

    LPG

    Naphtha

    Gasoline

    Jet/Kerosene

    Diesel/Gas Oil

    Fuel Oil

    North America

    FSU

    AsiaMiddle East

    Africa

    Europe

    LPG

    Naphtha

    Gasoline

    Jet/Kerosene

    Diesel/Gas Oil

    Fuel Oil

    South America

    図 15 世界の石油製品貿易の流れ、2030 年

  • 26

    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    2-5 日本の石油産業にとっての海外でのビジネスチャンス我が国の石油産業にとって海外ビジネスの成功要因としては、以下のものが挙げられます。

    ①世界的規模のプラントでのビジネス

    ②供給不足の市場でのビジネス

    ③成長市場の中でのビジネス

    ④自由市場でのビジネス

    ⑤石油精製と石油化学の統合ビジネス

    2-6 製油所プロジェクトを有する企業戦略本調査で検討した、主要な製油所プロジェクト投資を計画している会社の主な戦略を以下に要

    約します。

    ▪_ _ペトロナス_–_マレーシアの経済変革プログラム(Economic_Transformation_Program)を推

    進し、アジアの化学製品市場における立場を強化する。

    ▪_ _シノペック/ペトロチャイナ_–_石油精製能力を拡大し、中国における石油製品需要の伸びと

    歩調を合わせる。

    ▪_ _インディアン・オイル_–_精製能力を拡大し、成長するインド市場におけるシェアを維持する

    とともに、石油製品の生産を通じて製品範囲を拡大する。

    ▪_ PTT_–_中核ビジネスを成長させ、タイ国外に多角化する。

    ▪_ _プルタミナ(インドネシア)_–_精製能力を拡大し、ガソリン及びディーゼルの輸入量を削減

    する。

    ▪_ ペトロベトナム_–_精製能力を拡大し、ガソリン及びディーゼルの輸入量を削減する。

    ▪_ _サウジアラムコ_–_サウジアラビア及び他の諸国における精製能力の所有分を 800万 BPD近

    くまで増やし、また自社の製油所プロジェクトを大型石油化学複合施設と統合して、2020

    年までに世界有数のエネルギー/化学製品統合企業になる。

    ▪_ _クウェート・ペトロリアム_–_クウェートの精製能力を拡大し、製油所と石油化学事業の統合

    を最大化する。石油製品施設を統合した大規模な製油所複合施設及びクウェート産炭化水素

    の確実な販路を提供する投資機会を優先させて、高成長の国際市場に投資する。

    ▪_ _エクソンモービル_–_多様な市場状況の中で業界リーダーとしての立場を維持し、他のエクソ

    ンモービル事業との統合を活用する。

    ▪_ バレロ_–_北米が持つ資源の有利性を利用できるように投資する。

    ▪_ _エコペトロール(コロンビア)_–_重質油処理能力を増やし、ガソリン及びディーゼルの品質

    を改善する。

    ▪_ _ペトロブラス_–_増加しつつあるブラジル産原油の処理能力を増強し、ディーゼル輸入をなく

    すか激減させる。

    主要な製油所プロジェクトへの投資を計画している上記の会社は、ほぼ全てが国営石油会社で

    す。

    また、これら企業の具体的な製油所関連プロジェクトに関して、表1にまとめました。

  • 27

    世界

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  • 29

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    3.まとめ

    (1)需給予測の前提◦_ 2030 年までの世界の経済成長率は IMFの値に基づき 3.3%と想定しました。

    ◦_ 世界の人口は 2030 年までに 82億人以上に増加すると予測しました。

    ◦_ 将来の原油価格は$100/BBL が適切なトレンドと考えました。

    (2)原油の生産と需要◦_ _世界の原油の生産量は 2030 年まで年平均 1.2%で伸び、現在の 7,700 万 BPDから 9,400

    万 BPDにまで増加すると思われます。

    ◦_ アジアが原油の需要増の中心で、総需要増加量の 46%を占めると予測されます。

    (3)石油製品の需要◦_ _2030 年の石油製品需要は 2013 年レベルを 28%上回って、現在の 8,000 万 BPDから1億

    200万 BPDまで増加すると予測されます。

    ◦_ _ディーゼル/軽油の需要の伸びが最も大きく、年平均 1.8%で、2030 年までに 900 万 BPD

    以上需要が増加します。

    ◦_ _アジアがディーゼル/軽油の需要増加分の 49%を占めます。また、残渣燃料の輸入が継続

    します。

    (4)原油価格下落の影響◦_ _世界全体にはプラスの影響を及ぼしていて、GDPの伸びを 0.3 ~ 0.7%押し上げると見込ま

    れます。

    ◦_ _石油輸入国、特に新興国ではエネルギー支出の減少、新規プロジェクトへの資源配分増等で

    プラスの効果が表れています。

    ◦_ 産油国は原油価格が低い環境下では国家歳入が急減しています。

  • 30

    Japan Petroleum Energy Center News2015.5

    当センターでは、製油所の安全安定運転を支援するため、国内及び海外の事故情報を「デイリー海外石油情報�