平成29年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) - jpo.go.jp平成29年度...

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平成29年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) 有機EL装置 平成30年2月 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 知財動向班 電話:03-3581-1101(内線:2155)

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平成29年度

特許出願技術動向調査報告書(概要)

有機EL装置

平成30年2月

特 許 庁

問い合わせ先

特許庁総務部企画調査課 知財動向班

電話:03-3581-1101(内線:2155)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

●長寿命化 ●カラー化 ●発光効率向上 ●高画質化 ●大型化 ●小型化 ●フレキシブル化 ●コスト削減

●成膜方法・装置

●封止方法・装置

●パターニング法・装置

●表面処理方法・装置

●熱・光処理方法・装置

●製造または処理の

条件、雰囲気

●製造ライン

●その他の製造方法

●検査・試験

●TFTの製造方法

●発光部材料

●電極材料

●端子・配線・

駆動回路(素子内)材料

●絶縁体・誘電体

●基板・封止材料

用途・応用分野

素子用材料 製造方法

課題

●発光層の構造 ●正孔注入・輸送層の構造 ●電子注入・輸送層の構造

●電極・端子・配線・駆動回路の構造 ●絶縁体・誘電体の構造

●基板の構造 ●封止構造 ●光学部材の構造 ●発光方式

●微小共振構造 ●直列接続された素子

素子構造

●照明用 ●中小型ディスプレイ用

●大型ディスプレイ用

●フレキシブルディスプレイ用

ガラス基板

円偏光板

カソード(金属電極)

電子輸送層(ETL)

発光層(EML)正孔輸送層(HTL)アノード(透明電極)

封止樹脂

TFT

要素技術

●その他の用途

第1章 有機 EL 装置の技術の概要

有機 EL 装置は、高輝度、高コントラストが実現可能な次世代ディスプレイとして期待さ

れ、また、高効率な照明としての用途も見込まれており、既に実用化の段階に入り社会的

にも注目されているため、技術開発動向の最新事情を整理・把握する必要がある。また、

かつて日本がリード役として牽引してきた技術ではあるが、近年、韓国や中国などの台頭

が目覚ましく、その動向についても注視していく必要がある。

このような背景の下、この報告書は、有機 EL 装置に関する特許動向を調査し、技術革新

の状況、技術競争力の状況と今後の展望について検討することを目的としている。

なお、特許出願技術動向調査では、平成 17 年度に同様の調査を実施したことがある。

有機 EL 装置の技術俯瞰図を図 1-1 に示す。本調査の調査範囲は、要素技術として、有機

EL 装置の素子用材料、素子構造、製造方法とした。

図 1-1 有機 EL 装置の技術俯瞰図

出典:各種の資料を基に MCR が図式化

素子用材料としては、発光部材料(発光材料(低分子材料・高分子材料、蛍光材料・り

ん光材料、ホスト材料・ゲスト材料など)、正孔注入・輸送材料、電子注入・輸送材料)、

電極材料、端子・配線・駆動回路(素子内)材料、絶縁体・誘電体、基板・封止材料など

がある。素子構造としては、発光層の構造、正孔注入・輸送層の構造、電子注入・輸送層

の構造、電極・端子・配線・駆動回路の構造、基板・封止構造(フレキシブル化を含む)、

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

光学部材の構造などがある。製造方法としては、成膜方法(蒸着法、湿式法など)、封止方

法、パターニング方法、表面処理方法、熱・光処理、製造または処理の条件、雰囲気、製

造ライン(ロール to ロールを含む)などがある。製造装置に関する特許は、製造方法に含

めて調査した(これ以降は、製造方法・装置と記載する)。

なお、駆動回路については、素子内に作製された駆動回路の材料や構造、製造方法を調

査対象とし、駆動回路に信号を送って制御する技術は調査対象外とした。

有機 EL 装置の用途・応用分野としては、大きく分けてディスプレイ分野と照明分野があ

る。自発光である有機 EL ディスプレイは、液晶ディスプレイで使われるバックライトが必

要なく、薄くしたり曲げたりすることが可能である。また、液晶ディスプレイではバック

ライトを全て遮ることによって「黒色」を表示するが、有機 EL ディスプレイでは点灯させ

ない場合が「黒色」であるため、明暗比を大きくすることが可能である。有機 EL ディスプ

レイの鮮やかさの要因の一つは、黒色の表現力といわれている。照明用途としての特徴は、

化合物半導体を使った LED 照明が点発光であるのに対して、有機 EL 照明は面発光であるこ

とである。また、太陽光に近い自然な光であり、紫外線を含まず、ブルーライトが少ない

ため、目に優しい照明といわれている。さらには、有機 EL 照明の心理的・生理的効果につ

いても研究されており、心拍数減少による休息効果があるとする研究成果 1もある。

有機 EL 装置の技術的課題としては、長寿命化(低電圧駆動、水分・酸素対策など)、カ

ラー化(RGB 塗り分け方式、カラーフィルター方式など)、発光効率向上(内部量子効率向

上、光取り出し効率向上など)、高画質化(高精細化、高輝度化、視認性向上など)、大型

化、小型化、フレキシブル化、コスト削減(歩留り向上、製造工程の簡略化、材料コスト

削減など)がある。

1 NEDO「次世代材料評価基盤技術開発」平成 29 年度実施方針(平成 28 年度(委託)事業内容)

(http://www.nedo.go.jp/content/100862758.pdf、2018 年 1 月 22 日閲覧)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第2章 市場環境調査

有機 EL 装置が初めて製品として市場に出たのは、1997 年にパイオニアから発売された

車載用 FM 文字多重レシーバー「GD-F1」とされている 1。その後、2001 年には NEC 製携帯

電話 FOMA「N2001」のメインディスプレイに採用され、さらには、2007 年にはソニーから

世界初の 11 型有機 EL テレビ「XEL-1」が発売されるなど、1990 年代後半から 2000 年代に

おける有機 EL 装置の製品化は、日本企業の独壇場であった。

現在では、スマートフォンなどの中小型ディスプレイは、韓国のサムスンの市場シェア

が大きく、55 インチ以上の大型ディスプレイでは、韓国の LG ディスプレイが世界の大多

数のテレビメーカーに有機 EL パネルを供給している。

照明分野については、期待は大きいものの、まだ市場規模は小さい。

第1節 市場規模推移と将来予測

1.有機 EL ディスプレイ分野

大型ディスプレイについて、テレビ用の有機 EL ディスプレイと液晶ディスプレイ(LCD)

の世界市場数量/金額の推移予測を図 2-1 に、中小型ディスプレイについて、スマート

フォン用の有機 ELディスプレイと LCDの世界市場数量/金額の推移予測を図 2-2に示す。

テレビ用ディスプレイについては、2017 年において数量・金額ともに有機 EL よりも

LCD が圧倒的に大きく、これは 2024 年においてもやや差が縮まるものの継続すると予測

されている。

図 2-1 テレビ用の有機 EL ディスプレイと LCD の世界市場数量/金額の推移予測

出典:IHS マークイット

1 パイオニア(株)報道資料(1997 年 9 月 30 日)

(http://pioneer.jp/corp/news/press/1997/0930-1.html、2018 年 1 月 22 日閲覧)

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2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024

単位:100万枚 数量

LCD OLED

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2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024

単位:10億ドル 金額

LCD OLED

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

スマートフォン用ディスプレイについては、2017 年において数量は LCD の方が 2 倍以

上多いが、金額は有機 EL と LCD が近くなっており、2018 年にも逆転すると予測され、

数量も徐々に近づくと予測されている。

図 2-2 スマートフォン用の有機 EL ディスプレイと LCD の世界市場数量/金額の推移予測

出典:IHS マークイット

2.照明分野

有機 EL 照明装置世界市場規模推移/予測(個数、金額)を図 2-3 に示す。2015 年の

実績でおよそ 50 万個、50 億円の市場と見積もられており、市場規模は 2020 年にかけて

個数・金額ともに大きく増加すると予測されている。

図 2-3 有機 EL 照明装置世界市場規模推移/予測(個数、金額)

出典:富士キメラ総研 2017LED 関連市場総調査

大型ディスプレイ、中小型ディスプレイ、照明を比較すると、2015 年の金額ベースの

市場規模は、それぞれ約 450 億円、約 1 兆 1,200 億円、約 50 億円と中小型ディスプレイ

が圧倒的に大きいことが分かる(1 ドル 112 円で計算)。

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2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024

単位:100万枚 数量

LCD OLED

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2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024

単位:10億ドル 金額

LCD OLED

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2015

(実績)

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(見込)

2017

(予測)

2018

(予測)

2019

(予測)

2020

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単位:100万個 個数

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2015

(実績)

2016

(見込)

2017

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2018

(予測)

2019

(予測)

2020

(予測)

単位:億円 金額

(年) (年)

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第2節 有機 EL 用部材、製造装置市場動向

有機 EL 部材市場全体推移/予測を図 2-4 に示す。2015 年の実績金額はおよそ 800 億

円と見積もられており、2022 年に向けて年々増加すると予測されている。部材の中では、

円偏光板、低分子発光材料、封止材の金額比率が大きくなっている。

図 2-4 有機 EL 部材市場全体推移/予測

出典:富士キメラ総研「2017 ディスプレイ関連市場の現状と将来展望(下巻)」

ディスプレイ製造装置の世界市場推移/予測を図 2-5 に示す。有機 EL ディスプレイと

LCD の製造装置の市場規模推移を見ると、2009 年までは大多数が LCD 用であったが、2010

年から有機 EL 用が増加し始め、2016 年から有機 EL ディスプレイの製造装置の市場規模

が大きくなると見積もられている。2016 年の有機 EL ディスプレイ製造装置の市場規模

は、およそ 6,160 億円と見られている(1 ドル 112 円で計算)。真空蒸着装置は、2016

年でキヤノントッキが 50%以上のシェアを持っている。

図 2-5 ディスプレイ製造装置の世界市場推移/予測

出典:IHS マークイット

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2015

(実績)

2016

(実績)

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2018

(予測)

2019

(予測)

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(予測)

2021

(予測)

2022

(予測)

単位:100万円

OLED用封止材

電子輸送材料(ETL)

高分子発光材料

低分子発光材料(EML)

正孔注入材料(HIL)

正孔輸送材料(HTL)

円偏光板

5 2 3 213 18 9 17 16 8

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'06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 '16 '17 '18 '19 '20

単位:億ドル

LCD

OLED

(年)

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3節 新製品、注目技術

この数年に発表された注目される新製品について以下にまとめる。

1.三つ折りにできるタッチディスプレイ式の有機 EL 装置(半導体エネルギー研究所)

Display Innovation 2014 にて半導体エネルギー研究所は三つ折りにできるタッチデ

ィスプレイ式の有機 EL ディスプレイを開発したと発表した。ディスプレイの曲がり度合

いを示す曲率半径は 5mm で、10 万回繰り返して曲げられる。画面サイズは三つ折りにし

た場合が 5 インチで、全て広げると 8.7 インチになる。曲げた状態でも広げた状態でも

タッチディスプレイを操作できる。スマートフォンなどでフレキシブル化のニーズは高

まっており、実用化に向けてスマートフォンメーカーなどへの提案が進められる。

2.画面から音が出る有機 EL テレビ(ソニー)

ソニーは CES2017 で「画面から音が鳴る」大画面テレビの A1E シリーズを発表した。

スピーカーの要らないテレビを実現した。その仕組みは、振動を生成する「アクチュエ

ーター」を、背面カバーガラスに密着させる形で左右に 2 基ずつ、合計 4 基を内蔵して

いる。入力された音声信号に合わせてフロントディスプレイを震わせ、音を鳴らす。低

域用にはテレビの背面にウーハーが設置され、正面からはスピーカーがないように見え

る。画面から音が出る「アコースティック・サーフェス」の効果として、音と映像を掛

け合わせてコンテンツに深く入り込む効果を演出できる。有機 EL 装置だからできる新し

い技術である。

3.透明有機 EL ディスプレイ(パナソニック)

IFA2016 のパナソニックブースにて「透明にできる」ことをどのように応用するかの

イメージが具体的に示された。キッチン、リビングまわりに応用することで、とても鮮

明なアプリケーションとして提案された。

リビングの飾り戸棚の中に透明有機 EL ディスプレイが埋め込まれており、通常は透明

な戸棚ガラスだが、電源を入れると、55 型のテレビになる。透明板を瞬時にテレビに変

えることができる。キッチンや家電製品に応用ができ、また、デジタルサイネージへの

応用も考えられ、市場の拡大が期待されている。

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4節 開発・実用化された技術・製品の一覧及びその年代ごとの推移

有機 EL 装置に関する開発・実用化された技術・製品の一覧とその年次推移を表 2-1

に示す。有機 EL 装置は、1997 年以降パイオニア、NEC、ソニーなど、日本企業が世界初

の機能を搭載した機種を多く製品化してきたことが分かる。

表 2-1 有機 EL 装置に関する開発・実用化された技術・製品の年次推移

年 開発と商品化

1987 年 イーストマン・コダック社で世界初の薄膜積層構造有機 EL を開発。

1990 年 ケンブリッジ大学により、高分子のポリパラフェニレンビニレン(PPV)の単層薄膜での有機 EL 発光が開

発される。

1993 年 白色有機 EL、山形大学、城戸淳二研究室によって開発される。

1997 年 パイオニア、FM 文字多重レシーバー「GD-F1」に単色有機 EL ディスプレイ搭載。

1998 年 プリンストン大学や南カリフォルニア大学により、りん光性有機 EL 発光材料が開発される。

1999 年 パイオニア、カーステレオ CD プレーヤ「DEH-P9000」に 4 色有機 EL ディスプレイ搭載。

2001 年

ソニー、低温ポリシリコン TFT(Thin Film Transistor)を用いたアクティブマトリクス型有機 EL ディスプレ

イの大画面化、及び高輝度・高精細化を実現する技術“TAC(Top emission Adaptive Current drive)”

を開発。

東芝、世界で初めてフルカラー26 万色を実現した有機 EL ディスプレイの開発に成功。

NEC、FOMA「N2001」携帯メインディスプレイにパッシブ駆動方式有機 EL ディスプレイを搭載。

2002 年

東芝松下ディスプレイテクノロジー、低温ポリシリコン TFT 技術を用いて、フルカラー17 型 XGA ワイド有

機 EL ディスプレイの開発に世界で初めて成功。

ドコモ、富士通「F504i」サブディスプレイに東北パイオニア製パッシブ駆動方式 4 色カラー有機 EL ディス

プレイを搭載。

2003 年 三洋電機とコダックの合弁会社(エスケイディスプレイ)が開発を進め、コダックのデジタルカメラ

「LS663」に 2 型アクティブ駆動(低温ポリシリコン TFT 駆動)フルカラー有機 EL ディスプレイ搭載。

2004 年 ソニー、PDA「クリエ PEG-VZ90」にアクティブ駆動 3.8 型フルカラー有機 EL ディスプレイ搭載。

2005 年 ソニー、デジタルオーディオプレーヤー「ウォークマン」にパッシブ駆動方式フルカラー有機 EL ディスプレ

イ搭載。

2006 年 BenQ-Siemens、携帯「S88」メインディスプレイにアクティブ駆動方式フルカラー2 型有機 EL ディスプレイ

搭載。

2007 年 ソニー、世界初の 11 型有機 EL テレビ「XEL-1」を発売。価格は 1,800$。

2008 年 コダック、デジタルフォトフレームに 7.6 型有機 EL 搭載。

サムスン電子とサムスン SDI は、OLED 事業会社「サムスンモバイルディスプレイ」を設立。

2010 年 ソニー、有機 EL テレビ「XEL-1」の生産停止。

サムスン、スマホ「GALAXY-S」に「スーパーAMOLED」を搭載、1,000 万台を販売。

2011 年

ソニー、携帯型ゲーム PSP2「PlayStaion Vita PCH-1000 シリーズヴィータ」に 5 型有機 EL ディスプレイ

を搭載。

サムスン、スマホ「GALAXY-SⅡ」に 4.3 型「スーパーAMOLED Plus」を搭載。

2013 年 LG 電子、サムスン電子の 2 社は、55 型有機 EL テレビを上市、その後サムスン電子は中止している。

2014 年 コニカミノルタ、世界で最効率な 139 ルーメン/W の有機 EL 照明パネルを開発。

2015 年 ソニー、パナソニックと JDI は有機 EL 事業会社「JOLED」を設立。

2017 年 ソニー、東芝、パナソニックが LG ディスプレイ製パネルを使用し 55 型、65 型の OLEDTV を発売。

アップル、「iPhoneX」に有機 EL ディスプレイ採用。

出典:各種情報を基に MCR が作成

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3章 政策動向調査

第1節 日本の政策動向

有機 EL 装置に関わる日本の政策動向として、内閣府、総務省、経済産業省、新エネル

ギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、その他の産学官連携の取組を以下に説明する。

1.内閣府の政策

(1)環境エネルギー技術革新計画

内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)により「エネルギー・環境イノ

ベーション戦略」(NESTI 2050)が取りまとめられた(2016 年 4 月)。CSTI が策定・改

訂した「環境エネルギー技術革新計画」に、有機 EL 装置を含む「革新的デバイス(情

報機器、照明、ディスプレイ)」分野が掲げられている。ここで示された技術ロードマ

ップを図 3-1 に示す。次世代高効率照明に有機 EL 照明があり、超低消費電力型シート

ディスプレイには有機 EL ディスプレイも含まれている。

図 3-1 革新的デバイス(情報機器、照明、ディスプレイ)の技術ロードマップ

(各技術の有する省エネルギーポテンシャルを最大限発揮させるため、革新的デバイスの開発と併せて、製品・サービス化及び社会実装を促進するための課題解決・実証などの推進が必要)

出典:総合科学技術・イノベーション会議「エネルギー・環境イノベーション戦略」(2016 年 4 月 19 日)

(http://www8.cao.go.jp/cstp/sonota/kankyoene/betten3-2.pdf、2018 年 1 月 22 日閲覧)より抜粋

(2)最先端研究開発支援プログラム(FIRST)

有機 EL 装置に関して、「スーパー有機 EL デバイスとその革新的材料への挑戦」とい

うテーマで、九州大学の安達千波矢教授を代表者とするプロジェクトが設定された。

この中で、世界最高性能の有機 EL デバイスを開発するとともに、大型照明、ディスプ

レイ等へ応用することを目指し、さらに将来的には、これらの機器の普及によって環

境に調和した省エネルギー社会を実現することを目指した。

2.総務省の情報通信関連事業

総務省情報通信審議会が推進する放送技術の研究開発に関し、放送方式と家庭用ディ

スプレイの変遷は図 3-2 のように示されている。フレキシブルディスプレイ(FLD)とし

ては、例えば柔軟性の高いシート型基板を用いた家庭用 8K 有機 EL シート型ディスプレ

イが挙げられている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 3-2 放送方式と家庭用ディスプレイの変遷

出典:NHK 放送技術研究所「4K・8K 放送の技術動向」(4K・8K に関する技術セミナー 2016 年 1 月 29 日)

(http://www.soumu.go.jp/main_content/000395030.pdf p39、2018 年 1 月 22 日閲覧)

3.経済産業省の政策

「エネルギー基本計画」(2010 年 6 月 18 日閣議決定)において、我が国の強みをいか

す成長分野での戦略として、「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦

略」が掲げられ、LED や有機 EL などの次世代高効率照明を 2020 年までに流通(フロー)

で 100%、2030 年までに在庫(ストック)で 100%普及させる目標を掲げ、「住宅・オフ

ィス等のゼロエミッション化を推進する」とした。

産業構造審議会産業技術分科会(2010 年 7 月、評価小委員会)では、新規研究開発事

業「次世代照明等の実現に向けた窒化物半導体等基盤技術開発」の中で、照明からの CO2

排出量削減に貢献するとともに、我が国の次世代照明産業の国際競争力強化を図るとし、

「有機 EL 照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」については、主に次の開発テー

マが挙げられた。

・光学干渉の影響を抑制して効率を向上させる光取り出し技術

・製造工程の高速化を図るプロセス制御技術

・有機 EL を構成する基板、透明電極、有機層等を高効率・高品質化かつ低コスト化す

る材料開発

4.新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の技術開発事業

(1)次世代材料評価基盤技術開発(旧次世代グリーン・イノベーション評価基盤技術

開発)(2010 年度~2016 年度)

有機 EL 材料の評価基盤技術開発が行われ、有機 EL 材料に関し、材料メーカー及び

材料を使って製品化を行うユーザーが共通して活用できる基準素子、性能評価、寿命

評価等、材料評価手法を確立することを目標に活動した。

有機 EL 材料に関わる感性評価(照明環境の生理的・心理的効果の評価)技術の開発

を含めて本技術開発事業が終了した後、本技術開発を主導した次世代化学材料評価技

術研究組合(CEREBA)は、一連の研究開発成果である「基準素子を活用した材料評価

基盤技術」が材料メーカー及びユーザーで実際に活用(実用化)されることを目指し

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

て活動を継続している。

(2)次世代大型有機 EL ディスプレイ基盤技術の開発(グリーン IT プロジェクト)

(2008 年度~2012 年度)

地球温暖化対策として、大型化が進むディスプレイの低消費電力化も重要な課題で

あり、有機 EL ディスプレイは、低消費電力、高効率発光、広い視野角特性、高速応答

性、超薄型軽量化などを同時に実現する次世代ディスプレイ技術として期待されてい

る。

大型有機 EL ディスプレイの高生産性製造を実現するための低損傷電極形成技術・透

明封止技術・有機製膜技術開発に取り組み、製造プロセスに関わる基盤技術を確立し、

量産化することを目指した。

本プロジェクト終了後、各企業での実用化検討によって、2010 年代後半(2015~2020

年頃)に量産・実用化され、大幅な消費電力削減が実現することを目指している。

開発された低損傷大面積電極形成技術、大面積透明封止技術、大面積有機製膜技術

は、要素技術としても高いレベルにあり、大型有機 EL ディスプレイの実用化に大きく

貢献することが期待されている。各要素技術に関して、単独で実用化が図れるものに

ついては実用化が進行している。

(3)次世代照明等の実現に向けた窒化物半導体等基盤技術開発(次世代高効率・高品

質照明の基盤技術開発)(2009 年度~2013 年度)

照明は、家庭における消費電力の約 16%もの割合を占めており、白熱電球や蛍光灯

を LED や有機 EL による次世代照明に置き換えることによる、省エネルギー化を期待し

た。高効率・高品質、かつ低コストを実現する次世代照明の基盤技術開発として、蛍

光灯の約 2 倍の発光効率、かつ同程度の低コスト化を実現する次世代照明に必要な技

術の開発を目指した。

本技術開発の成果に基づく LED 照明及び有機 EL 照明を、一般照明のみならずフレキ

シブル照明や高輝度照明分野等の新規市場創出に向けて、2014 年度から実用化・製品

化することが予定された。

(4)有機発光機構を用いた高効率照明技術の開発(2007 年度~2009 年度)

高効率であるとともに低コスト化を踏まえた高演色性の有機 EL 照明光源の早期実

用化が望まれ、高演色化技術及び製造プロセス技術を確立する研究開発を行う。この

技術開発により、有機 EL 照明の早期実用化を図り、民生部門の省エネルギー化の促進

を目指した。

本プロジェクト終了後 6年目における実用化に向けた関連企業の取組は、上市 1社、

製品化 1 社、研究・開発継続中 1 社の状況である。

5.産学官連携の取組

(1)第三世代有機 EL 発光材料(TADF)の実用化を推進する産学官連携

上記の内閣府の FIRST の支援で開発した TADF の実用化を目指し、九州大学を中心と

する技術開発型ベンチャーの株式会社 Kyulux、九州大学 OPERA、公益財団法人福岡県

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

産業・科学技術振興財団(ふくおか IST)、有機光エレクトロニクス実用化開発センタ

ー(i3-OPERA)、公益財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT)、福岡市産学連携交流

センター(FiaS)は、有機光エレクトロニクスの産業化に向けた産学官連携拠点とし

て、先端材料における我が国の国際競争力強化に寄与している。

(2)山形県における産学官連携の取組

山形県では、市場性・将来性が期待される有機 EL を核とした有機エレクトロニクス

関連産業の集積を図り、その一大集積地を形成することを目的に、県内産学官のトッ

プによる「山形県有機エレクトロニクス産業集積会議」を設置し、全体方向性を協議

しながら有機 EL の産業化関係の事業を推進している。

また、山形大学発のベンチャー企業である株式会社フラスクは、山形大学において

研究開発された有機 EL 及び有機半導体材料の最先端技術をいかし、事業化につなげる

ための活動を行っている。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第2節 諸外国の政策動向

1.米国の政策

米国における有機 EL 装置関連の政策は、エネルギー省(DOE)による有機 EL 照明、国

防総省(DOD)によるフレキシブル表示装置への支援が中心であった。特に後者は、軍用

途向けを目的とするものであり、過去にアリゾナ州立大学の Flexible Display Center

に 5 年間で 5,000 万ドルを支援して製造方法の研究が行われた。

DOE の有機 EL 照明産業振興策を表 3-1 に例示する。同省は、固体照明の製品開発プロ

ジェクト「DOE Solid-State Lighting Program」で革新的な LED 及び有機 EL 技術の開発

を推進している。

表 3-1 DOE が支援する最近の有機 EL 研究開発プロジェクト

プロジェクト名 主要メンバー

Advanced Light Extraction Structure for OLED Lighting Pixelligent Technologies, LLC

Eliminating Plasmon Losses in High-Efficiency White Organic Light Emitting

Devices for Lighting Applications University of Michigan

Enhanced Light Extraction From Low-Cost White OLEDs (WOLEDs)

Fabricated on Novel Patterned Substrate Iowa State University

Integrated Plastic Substrates for OLED Lighting Sinovia Technologies

Light Extraction for OLED Lighting with 3-D Gradient Index Pixelligent Technologies, LLC

Low-Cost Corrugated Substrates for High-Efficiency OLEDs North Carolina State University

OLED Lighting Substrate and Encapsulation System for Breakthrough Cost

Reductions OLEDWorks, LLC

R2R Production of Low-Cost Integrated OLED Substrate with Improved

Transparent Conductor and Enhanced Light Outcoupling MicroContinuum, Inc.

Stable and Efficient White OLEDs Based on a Single Emissive Material Arizona State University

Stable, High-Efficiency White Electrophosphorescent Organic Light Emitting

Devices by Reduced Molecular Dissociation University of Michigan

Understanding, Predicting, and Mitigating Catastrophic Shorts for Improved

OLED Lighting Panel Reliability Pennsylvania State University

出典:OFFICE of ENERGY EFFICIENCY & RENEWABLE ENERGY

(https://energy.gov/eere/ssl/listings/oled-rd-projects、2018 年 1 月 22 日閲覧)の公開情報を

基に MCR が作成

2.欧州の政策

欧州における有機 EL 装置関連の政策は、有機 EL 照明に対する支援が中心となってい

る。支援は各国別に行われるものと EU 全体の研究支援制度であるフレームワークプログ

ラム(FP)を通して行われるものがある。例えば、FP 支援によるものでは、有機 EL 照

明で 100 lm/W の効率、10 万時間以上の寿命を目指す「OLED100.eu プロジェクト」(2008

年〜2011 年)に 3 年間で約 2,000 万ユーロが支援された。その後の EU(FP7)支援によ

る有機 EL 照明の開発プロジェクトを表 3-2 に例示する。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 3-2 EU 支援の主な有機 EL 照明開発プロジェクト

プロジェクト 期間 メンバー 概 要

IMOLA 2011 年 11 月~

IMEC、TNO/Holst Centre、フィリップステクノロジー、NXP セミコンダクターズ、Hanita Coating RCA、Henkel Electronic Materials、Centro Ricerche Plast-optica、ザグレブ大学

インテリジェントマネージメント機能つき大面積 OLED 照明モジュールの実現。主な課題:センサー、アプリケーションインテリジェンス、駆動電子回路、配電、集積、小型化

Clean4Yield

2012 年 5 月~ 2015 年 4 月

TNO/Holst Centre、Coatema Coating Machinery、Dr. Schenk Industrie messtechnik、DuPont Teijin Films、 デンマーク工科大学、ほか

大面積 OLED 照明パネルの製造コスト低減化 (ロール to ロールラインなど)

IM3OLED

2011 年 10 月~ 2014 年 3 月

TNO/Holst Centre、Phillips、Fluxim、Kintech、チューリッヒ大学、ロシア科学アカデミー

150lm/W までの OLED 開発や設計を支援する 2 次元と 3 次元の分子レベルから大面積パネルまでの範囲の解析計算ソフトの開発

・IMOLA:Intelligent light Management for OLED on foil Application(http://www.imola-project.eu/)

・Clean4Yield:Contamination and defect control for increased yield for large scale R2R production

of OPV and OLED(http://cordis.europa.eu/result/rcn/174103_en.html)

・IM3OLED:Integrated Multidisciplinary & Multiscale Modeling for OLED

(http://cordis.europa.eu/result/rcn/157047_en.html)

出典:各種関連情報を基に MCR が作成、URL はいずれも 2018 年 1 月 22 日閲覧。

3.中国の政策

「中国製造 2025」(2015 年 5 月/国務院)の重点分野技術ロードマップを構成する「新

材料」分野には「新型ディスプレイ材料」が挙げられており、有機 EL 装置に関しては、

印刷ディスプレイを 2020 年までに、60 インチレベルの 4K2K ハイビジョン向け OLED デ

ィスプレイ技術を開発し、2025 年までに、100 インチレベルの 8K4K 超高解像度向け

AMOLED ディスプレイ技術を開発するとしている。また、フレキシブルディスプレイを

2020 年までに、解像度 300ppi、曲げ径<1 ㎝の中小型 AMOLED ディスプレイ技術を開発

し、2025 年までに 100 インチレベルの丸められる 8K4K ディスプレイと折り畳み可能な

中小型ディスプレイ技術を開発するとしている。

中国における有機 EL 技術分野に関連する近年の政策を表 3-3 に例示する。

表 3-3 中国における有機 EL 技術分野に関連する近年の主な政策

政策・計画の名称 公布・管理機関 公布時期 有機 EL に関する取組

国家半導体照明プロジェクト

科学技術部

2003 年

・有機 EL 照明材料の開発が、新材料技

術分野の重大プロジェクトとして進めら

れる。

半導体照明科学技術発展“十二

五”特定プロジェクト計画 2012 年 7 月

・有機 EL 照明光源の開発プロジェクトで

有機 EL の要素技術開発を更に支援

2014~2016 年新型ディスプレイ

産業イノベーション発展行動計画

国家発展改革委

員会、工業和信

息化部

2014 年 10 月

・有機 EL パネルのバックプレーン、蒸着

や封止などの重要技術の飛躍的進歩

・有機 EL 発光材料など重要な材料技術

や設備の国産化推進

輸入を奨励する技術と製品目録

(2015 年版) 国家商務部 2015 年 8 月

・有機 EL パネル、セット材料等の製造技

術と専用設備の設計製造技術

・フレキシブルディスプレイ製造技術と専

用設備の設計製造技術

第 13 次 5 カ年計画

(2016 年~2020 年)

国家発展改革委

員会 2016 年

・有機 EL 等による新型ディスプレイ産業

(含、印刷法等の重要技術開発)の支援

出典:各種関連情報を基に MCR が作成

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

2011 2012 2013 2014 2015 2016

Others

Display

(百万ウォン)

(年度)

4.韓国の政策

韓国の電子情報デバイス分野(半導体、ディスプレイ、LED/照明など)関連産業省に

おける産業基盤技術開発事業費予算の推移において、近年、ディスプレイ産業に対する

政府支援額は急激に減少しており、2015 年度のディスプレイ分野に対する支援予算は、

全体(952 億ウォン)の 21%に相当する 195 億ウォンにすぎず、2016 年度には 549 億ウ

ォンの 17%(93 億ウォン)に下落すると予測されている(図 3-3)。

韓国では、国家の支援というより、企業が有機 EL ディスプレイ産業を主導していると

見られる。一方で、有機 EL 照明関係では、有機 EL 照明クラスター造成事業を推進して

いる。

図 3-3 韓国における電子情報デバイス関連産業に関する産業基盤技術開発事業費予算の推移

出典:関連情報を基に MCR が作成

5.台湾の政策

産業政策としての「産業高度化・転身行動プログラム」における「主力産業の強化」

では、台湾で欠けていたサプライチェーンの穴埋めに向け、例えば、有機 EL 封止材など

の FPD 用原材料、有機 EL 用プラズマ CVD などで、産業間協力や海外企業との提携、自主

開発支援を組み合わせることが図られた。

工業技術研究院(ITRI)では、有機 EL 照明に関して電子&光電子システム研究所にて、

自然光照明など次世代の有機 EL 照明の開発に取り組んでいる。

また、有機 EL ディスプレイに関しては、ディスプレイ技術センターにて、フレキシブ

ル有機 EL ディスプレイ技術について、以下の技術開発を進めている。

・折り曲げ可能なオンセル型タッチパネル組み込み有機 EL 技術

・巻き曲げ可能な有機 EL 技術

・Z-Fold 有機 EL 技術

また、壁掛けテレビ向けの超大型ディスプレイなどを印刷プロセスで量産する技術開

発も進められている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4章 特許動向調査

第1節 調査範囲と調査方法

1.調査対象とした特許出願

有機 EL 装置に関する特許出願動向について、全体動向調査、技術区分別動向調査、出

願人別動向調査、及び注目出願人の出願動向調査を行った。

(1)調査対象とした出願先国(地域)

今回調査した特許の出願先国(地域)は、日本、米国、欧州、中国、及び韓国(以

下、日米欧中韓と略すことがある)である。欧州への出願については、欧州特許条約

(EPC)に基づく欧州特許庁への出願だけでなく、EPC 加盟国のうちで下記の使用した

データベースに収録された出願先国への出願も対象とした。

(2)使用したデータベース

特許文献の検索に使用したデータベースは、Derwent World Patents Index(トムソ

ンロイター グローバル リソーシズの登録商標)(WPINDEX(STN)、以下 WPI とする)

である。また、書誌事項の入手には、Shareresearch(株式会社日立製作所の登録商標)、

及び Derwent Innovation を併用した。一次文献(pdf ファイル)の参照には、日本特

許については CKSWeb(中央光学出版株式会社の登録商標)を、外国特許については

Derwent Innovation、及び Google Patents の英文、あるいは翻訳英文を参照した。韓

国特許については、特許庁の中韓文献翻訳・検索システムを併用して分析した。

(3)調査対象期間

調査対象とした特許文献は、出願年(優先権主張年)を基準に、2010 年から 2015

年に出願されたものとした。登録についても同様に、出願年(優先権主張年)を基準

に、2010 年から 2015 年に出願されたものを調査対象とした。

(4)調査対象技術範囲

調査対象とした有機 EL 装置に関する技術の範囲は、第1章有機 EL 装置の技術の概

要の図 1-1 で示したとおり、以下の要素技術を含む。

①素子用材料 ②素子構造 ③製造方法・装置

(5)その他の留意事項

①ファミリー件数とは、国内国外を通じて、少なくとも一つの共通の優先権を持ち、

技術内容が完全または部分的に一致する関係を有する特許文献群を 1 件とカウン

トしたもの。これに対して、出願件数は、一つまたは複数の国(地域)へ出願し

た件数を合計したものである。

②出願人国籍(地域)は、日本国籍、米国籍、欧州国籍、中国籍、韓国籍及びその

他の国籍に分けて集計した。出願人国籍(地域)は、原則として筆頭出願人の住

所を基準とした。ただし、米国の公開特許公報のように出願人が明記されていな

い特許文献については、ファミリー特許の中に出願人が明記されたものがないか

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

を調査し、見付からない場合は筆頭発明者の住所で代用した。なお、香港(HK)

は中国籍に合算して集計した。

③出願人国籍(地域)別出願動向において、欧州国籍の出願とは、2017 年 10 月 20

日現在の EPC 加盟国である 38 か国の国籍の出願人からの出願とする。

④特許の出願先国によってデータベースに収録されるまでの時間差があるため、全

ての特許データが収録されている期間が各国で異なっている。このため、特に

2014 年以降は全データが取得されていない可能性があることに留意が必要であ

る。さらに PCT 出願については、国内段階へ移行するまでの期間が長く(国内段

階移行手続期間(国内書面提出期間):優先日から 30 か月以内)、国内書面提出期

間の経過後となる公表公報発行時期は、通常の国内出願の公開公報発行時期(出

願から 1 年 6 か月)より遅くなることに留意が必要である。

⑤登録件数の年次推移については、審査請求制度の有無、特許出願から審査請求ま

での期間、及び審査に掛かる期間が各国で異なることを念頭に置いて評価する必

要がある。

⑥出願人別出願件数上位ランキングの集計において、共同出願の場合は全ての出願

人をそれぞれカウントした。

2.調査方法

有機 EL 装置に関する日米欧中韓への特許出願を、特許データベース WPI で検索し、抽

出された特許文献の内容から、有機 EL 装置に関する発明が述べている課題、要素技術(素

子用材料、素子構造、製造方法・装置)の分類と、用途(応用分野)の分類を行った。

技術分類に当たって使用した技術区分表(抜粋)を表 4-1 に示す。

その発明が解決すべき課題としている技術テーマを、A.課題の技術区分表に沿って分

類した。課題を解決するための要素技術を、大きく B.素子用材料、C.素子構造、D.製造

方法・装置に分け、それぞれの下位分類を設定して分類した。製造装置に関連するもの

は、製造方法の中に一緒に分類した。

用途(応用分野)を強く意識している発明には、E.用途の分類を付与した。

技術分類に当たっては、課題については必ず一つ以上選択することとし、要素技術(素

子用材料、素子構造、製造方法・装置)についても必ず一つ以上選択することとした。

なお、使用した技術区分表は、平成 17 年度特許出願技術動向調査「有機 EL 素子」で

用いられた技術区分表を参考にして作成した。

表 4-1 技術区分表(抜粋)

A.課題

大分類 中分類 小分類

長寿命化 経時劣化防止 有機材料の化学的安定性向上

有機材料の耐熱性向上

低電圧駆動(低消費電力)

高耐電圧

チャージバランス向上

再結合領域の制御

不良部発生防止 非発光部発生防止

短絡防止

焼き付き防止

平坦化(膜厚の均一化)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大分類 中分類 小分類

水分・酸素対策

各層界面の安定性向上

層間剥離防止(密着性)

カラー化 RGB塗り分け方式 高輝度化

高色純度化(色再現性)

色バランス

カラーフィルター方式 高輝度化

高色純度化(色再現性)

色バランス

発光色 赤、緑、青、白、黄(橙)

発光効率向上 内部量子効率向上 三重項励起状態の利用

三重項-三重項消滅防止

濃度消光防止

有機材料純度の向上

チャージバランス向上

励起子の閉じ込め

キャリア注入効率の改善

キャリア輸送効率の改善

再結合確率向上

外部量子効率向上(光取出

効率向上)

表面(界面)反射の低減

部材の透明性改善

高開口率化

発光ドーパントの面配向

発光機構の解明

高画質化 高精細化

高輝度化

視認性向上 コントラスト向上

表示ムラ防止

クロストーク防止

色純度向上

応答性向上

視野角制御

視野角依存性解消

大型化 均一化・バラツキ低減

低消費電力

軽量化・薄型化

機械的強度の向上

小型化 低消費電力

軽量化・薄型化

機械的強度の向上

フレキシブル化 機械的強度の向上

水分、酸素の侵入防止

生産性向上

コスト削減 材料コスト削減

歩留り向上

工程の容易化

素子構造の簡素化

B.要素技術(素子用材料1)

大分類 中分類 小分類 細目

発光部材料 発光材料 低分子材料 蛍光材料

りん光材料

TADF

励起錯体

高分子材料 共役系材料

非共役系蛍光材料

非共役系りん光材料

発光層が量子ドットを含む

B.要素技術(素子用材料2)

大分類 中分類 小分類

発光部材料 正孔注入材料(陽極バッファ

層を含む)

低分子材料

高分子材料

無機材料

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大分類 中分類 小分類

正孔輸送材料・電子ブロック

材料

低分子材料

高分子材料

無機材料

電子輸送材料・正孔ブロック

材料

低分子材料

高分子材料

無機材料

電子注入材料(陰極バッファ

層を含む)

低分子材料

高分子材料

無機材料

エネルギーの関係

電極材料 陽極 有機物・導電性高分子

炭素材料

金属・合金

金属化合物

導電性塗料・ペーストなどの組成物

陰極 有機物・導電性高分子

炭素材料

金属・合金

金属化合物

導電性塗料・ペーストなどの組成物

端子・配線・駆動回

路材料

端子材料 有機物・導電性高分子

無機化合物

金属・合金

配線材料 有機物・導電性高分子

無機化合物

金属・合金

駆動回路材料 有機材料

結晶シリコン

アモルファスシリコン

酸化物

絶縁体、誘電体 隔壁、バンク(格子状絶縁層

を含む)

無機材料

有機材料

平坦化膜(衝撃吸収層を含

む)

無機材料

有機材料

基板・封止材料 基板材料 ガラス

金属

樹脂

セラミックス

半導体

フィルター カラーフィルター用材料

波長変換層材料

封止材料 フィルム封止材料

薄膜封止材料

乾燥剤を含む材料

ガラスによる封止

保護層、保護膜(カバー膜) 金属

ガラス

高分子材料

その他の材料

材料の製造、精製

C.要素技術(素子構造)

大分類 中分類

発光層の構造 積層構造

面内配置構造

混合物

正孔注入・輸送・電子ブロック層の構造 正孔注入層(陽極バッファ層を含む)

正孔輸送層・電子ブロック層

電子注入・輸送・正孔ブロック層の構造 電子注入層(陰極バッファ層を含む)

電子輸送層・正孔ブロック層

電極・端子・配線・駆動回路の構造 陽極の構造

陰極の構造

補助電極・集電帯

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大分類 中分類

端子の構造

配線の構造

駆動回路の構造

駆動の方式

絶縁体・誘電体の構造 隔壁、バンク(格子状絶縁層を含む)

平坦化膜(衝撃吸収層を含む)

基板の構造 リジッド基板構造

フレキシブル基板構造

ストレッチャブル基板構造

封止構造 フィルム封止構造

薄膜封止構造

中空封止構造

光学部材の構造 カラーフィルター

波長変換層

偏光フィルム、偏光板

無反射膜、黒色層

光散乱層

レンズ

プリズム

回折格子

多層干渉膜

反射部材

低屈折率層、高屈折率層

フォトニック結晶

発光方式 下面発光

上面発光

両面発光

透過型素子

その他の構造 冷却部材、放熱部材

実装、取付部材

センサー

タッチパネル

D.要素技術(製造方法・装置) E.用途(応用分野)

大分類 中分類 大分類

成膜方法・装置 乾式(蒸着法などを含む) 照明用

湿式(インクジェット法などを含む) 中小型ディスプレイ用

転写 大型ディスプレイ用

封止方法・装置 フィルム封止 フレキシブルディスプレイ用

膜封止 その他

中空封止

シール

パターニング法・装置 フォトリソ・エッチング

レーザー加工法

インクジェット法

ナノインプリンティング

表面処理方法・装置 光照射

活性ガス処理

プラズマ処理

親水化処理

疎水化処理

熱・光処理方法・装置

製造または処理の条件、雰囲気

製造ライン 乾式製造ライン(ロール to ロールを含む)

湿式製造ライン(ロール to ロールを含む)

その他の製造方法

検査・試験

TFT の製造方法 多結晶シリコン

アモルファスシリコン

有機 TFT

酸化物

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

1,239

1,398

1,625 1,682

1,833

1,430

0

500

1,000

1,500

2,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

日本国籍

4,516件

49.0%

米国籍

651件

7.1%

欧州国籍

1,475件

16.0%

中国籍

1,215件

13.2%

韓国籍

1,278件

13.9%

その他

72件

0.8%

合計9,207件

9,574 10,270

12,101

14,410

11,310

7,705

0

4,000

8,000

12,000

16,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計出願先国

(地域)

優先権主張2010-2015年日本への

出願

14,422件

22.1%

米国への

出願

15,269件

23.4%欧州への

出願

4,991件

7.6%

中国への

出願

14,201件

21.7%

韓国への

出願

16,487件

25.2%

合計65,370件

第2節 全体動向調査

1.PCT 出願動向

出願人国籍(地域)別 PCT 出願件数推移及び出願件数比率を図 4-1 に示す。PCT 出願

件数は、2010 年から 2014 年まで毎年増加している。出願人国籍(地域)別に見ると、

日本国籍が全体の 49.0%と半数近くを占めており、2010 年から 2015 年まで毎年最も多

い。

図 4-1 出願人国籍(地域)別 PCT 出願件数推移及び出願件数比率(PCT 出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

2.全体動向

出願先国(地域)別出願件数推移及び出願件数比率を図 4-2 に示す。出願先国(地域)

別では、韓国への出願が全体の 25.2%で最も多い。次いで、米国への出願が 23.4%、日

本への出願が 22.1%、中国への出願が 21.7%、欧州への出願が 7.6%となっている。年

次別に見ると、2010 年と 2011 年は日本への出願、2012 年、2014 年、2015 年は韓国への

出願、2013 年は中国への出願件数が最も多くなっている。

図 4-2 出願先国(地域)別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

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- 21 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日本での

登録

4,892件

23.0%

米国での

登録

7,537件

35.4%

欧州での

登録

738件

3.5%

中国での

登録

4,405件

20.7%

韓国での

登録

3,739件

17.5%

合計21,311件

日本 1,703 1,514 1,057 474 106 38

米国 1,553 1,571 1,628 1,774 830 181

欧州 245 204 171 73 40 5

中国 1,051 1,155 943 653 457 146

韓国 911 637 891 663 446 191

2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願先国

(地域)

出願年(優先権主張年)

優先権主張2010-2015年

日本国籍

10,991件

33.3%

米国籍

932件

2.8%欧州国籍

1,554件

4.7%

中国籍

6,401件

19.4%

韓国籍

12,089件

36.7%

その他

992件

3.0%

合計32,959件

4,088 4,531

5,766

7,604 6,189

4,781

0

2,000

4,000

6,000

8,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

出願先国(地域)別登録件数推移及び登録件数比率を図 4-3 に示す。出願先国(地域)

別では、米国での登録が全体の 35.4%で最も多い。次いで中国での登録が 20.7%、日本

での登録が 23.0%、韓国での登録が 17.5%、欧州での登録が 3.5%と続いている。

図 4-3 出願先国(地域)別登録件数推移及び登録件数比率(日米欧中韓での登録、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)調査時点で審査請求前や審査中の出願が存在するため、2015 年に近づくにつれて件数が減少することに

注意すること。

出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率を図 4-4 に示す。

出願人国籍(地域)別ファミリー件数は、韓国籍が 12,089 件(36.7%)で最も多く、次

いで日本国籍が 10,991 件(33.3%)、中国籍が 6,401 件(19.4%)と続いている。件数

推移としては、日本国籍は 2010 年から 2013 年は年間約 2,000 件で推移している。韓国

籍は、2010 年から 2013 年にかけて 2 倍以上に増えている。中国籍は 2010 年から 2013

年にかけて 7 倍以上に増加している。

図 4-4 出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

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- 22 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日本 11,658 426

807 183

1,248 100

米国 4,600 1,154 1,067 1,269 6,371 808

欧州 1,096 375

1,927 269

1,220 104

中国 2,919 461

818 6,414 2,905 684

韓国 2,743 504

743 170

12,244 83

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願先国

(地域)

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

日本 3,951 125

291 74

418 33

米国 2,338 552 393 496 3,305 453

欧州126 48

353 21 177 13

中国 1,062 118

285 1,929 742 269

韓国 518 36 62 60

3,042 21

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願先国

(地域)

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

出願先国(地域)別-出願人国籍(地域)別出願件数を図 4-5 に示す。日米欧中韓国

籍出願人とも、自国(地域)への出願件数が最も多い。韓国籍出願人が米国へ 6,300 件

以上出願しているのが注目される。

図 4-5 出願先国(地域)別-出願人国籍(地域)別出願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

出願先国(地域)別-出願人国籍(地域)別登録件数を図 4-6 に示す。日米中国籍出

願人は、自国での登録件数が最も多い。韓国籍と欧州国籍は、自国(地域)での登録件

数より米国での登録件数の方が多く、韓国籍出願人から出願されたものは米国で 3,300

件以上登録されている。

図 4-6 出願先国(地域)別-出願人国籍(地域)別登録件数(日米欧中韓での登録、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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- 23 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日本国籍

2,743件

16.6%

米国籍

504件

3.1%

欧州国籍

743件

4.5%

中国籍

170件

1.0%

韓国籍

12,244件

74.3%

その他

83件

0.5%

日本国籍

2,919件

20.6%米国籍

461件

3.2%

欧州国籍

818件

5.8%中国籍

6,414件

45.2%

韓国籍

2,905件

20.5%

その他

684件

4.8%

日本国籍

1,096件

22.0%

米国籍

375件

7.5%欧州国籍

1,927件

38.6%

中国籍

269件

5.4%

韓国籍

1,220件

24.4%

その他

104件

2.1%

日本国籍

4,600件

30.1%

米国籍

1,154件

7.6%

欧州国籍

1,067件

7.0%

中国籍

1,269件

8.3%

韓国籍

6,371件

41.7%

その他

808件

5.3%

日本国籍

11,658件

80.8%

米国籍

426件

3.0%

欧州国籍

807件

5.6%

中国籍

183件

1.3%

韓国籍

1,248件

8.7%

その他

100件

0.7%

日本への出願

14,422件

米国への出願

15,269件

中国への出願

14,201件

欧州への出願

4,991件

韓国への出願

16,487件

426件 807件

4,600件

1,067件

1,269件

6,371件

375件

1,220件

2,919件

461件

170件

2,905件

2,743件

743件

183件

504件

269件

1,248件

818件

1,096件

出願先国(地域)別-出願人国籍(地域)別出願件数収支を図 4-7 に示す。日本国籍

出願人の米欧中韓への出願件数は、米欧中韓国籍出願人が日本へ出願した件数より多い。

米国籍出願人の日欧中韓への出願件数は、日欧中韓国籍出願人が米国へ出願した件数よ

り少ない。欧州国籍出願人は、日本と韓国に対しては、欧州から出願する件数よりも日

韓から出願される件数の方が多く、米国と中国に対しては、欧州から出願する件数の方

が米中から出願される件数より多い。中国籍出願人は、米国に対しては中国から出願す

る件数の方が米国から出願される件数より多いが、日欧韓に対しては、中国から出願す

る件数より日欧韓から出願される件数の方が多い。韓国籍出願人は、日本に対しては、

韓国から出願する件数より日本から出願される件数の方が多いが、米欧中に対しては、

韓国から出願する件数の方が米欧中から出願される件数より多い。

図 4-7 出願先国(地域)別-出願人国籍(地域)別出願件数収支(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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- 24 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

企業

10,191件

92.7%

大学

110件

1.0%

研究機関

66件

0.6%

個人

17件

0.2%

共同出願

607件

5.5%

合計

10,991件

企業

750件

80.5%

大学

97件

10.4%

研究機関

3件

0.3%

個人

9件

1.0%

共同出願

73件

7.8%

合計

932件

企業

1,257件

80.9%

大学

37件

2.4%

研究機関

62件

4.0%

個人

15件

1.0%

共同出願

183件

11.8%

合計

1,554件

企業

4,612件

72.1%

大学

787件

12.3%

研究機関

141件

2.2%

個人

71件

1.1%

共同出願

790件

12.3%

合計

6,401件

企業

10,927件

90.4%

大学

408件

3.4%

研究機関

277件

2.3%

個人

81件

0.7%

共同出願

396件

3.3%

合計

12,089件

3.出願人属性別出願動向

出願人国籍(地域)別の出願人属性別ファミリー件数比率を図 4-8 に示す。企業から

の出願が多く、日本国籍と韓国籍が約 90%、米国籍と欧州国籍が約 80%、中国籍が約

70%となっている。米国籍と中国籍では、大学からの出願件数比率がやや多い。

図 4-8 出願人国籍(地域)別-出願人属性別ファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

(a) 日本国籍出願人 (b) 米国籍出願人 (c) 欧州国籍出願人

(d) 中国籍出願人 (e) 韓国籍出願人

4.2005 年から 2015 年の全体動向調査

今回の特許動向調査の調査対象期間が、出願年(優先権主張年)を基準として 2010

年から 2015 年と比較的短いことから、より長いスパンでの特許動向を把握するために、

2005 年から 2015 年までの出願人国籍(地域)別動向を検索によって調査した。

検索式は、本調査で使用したものを用いた。出願人国籍は、第一優先権主張国で代用

した。なお、文献の詳細解析を行っていないため、本調査の対象外の技術を含んでいる

可能性がある。

日米欧中韓への出願の合計の出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリ

ー件数比率を図 4-9 に示す。ファミリー件数合計は、2005 年から 2011 年まで小幅の変

動で推移しており、2012 年以降に急増している。出願人国籍(地域)別に見ると、日本

国籍が 26,234 件(41.8%)で最も多く、韓国籍が 19,525 件(31.1%)で続いている。

出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移は、2005 年から 2011 年までは各国籍(地域)

とも小幅の変動で推移し、2012 年から韓国籍と中国籍のファミリー件数が増加している。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日本国籍

12,847件

38.4%

米国籍

2,526件

7.6%欧州国籍

1,868件

5.6%

中国籍

3,654件

10.9%

韓国籍

11,395件

34.1%

その他

1,156件

3.5%

合計33,446件

3,100

2,835 2,700 2,916 3,039

3,360

3,506

3,978 4,050

2,632

1,330

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

登録件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2005-2015年

日本国籍

26,234件

41.8%

米国籍

3,624件

5.8%欧州国籍

3,239件

5.2%

中国籍

8,408件

13.4%

韓国籍

19,525件

31.1%

その他

1,780件

2.8%

合計62,810件

5,218

4,721 4,394 4,677 4,642

4,841

5,339

6,726

8,693

7,264 6,295

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2005-2015年

図 4-9 出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

日米欧中韓での登録件数の合計の出願人国籍(地域)別登録件数推移及び登録件数比

率を図 4-10 に示す。一つのファミリーに対して、複数の国(地域)で登録されることが

あり、それらを全てカウントしているため、図 4-9 と図 4-10 を比較する際には注意が必

要である。

登録件数合計は、2005 年から 2009 年に出願されたものは 3,000 件前後で推移してい

るが、その後、徐々に増加している。出願人国籍(地域)別に見ると、日本国籍が 12,847

件(38.4%)で最も多く登録されており、韓国籍が 11,395 件(34.1%)となっている。

ファミリー件数比率より、韓国籍の登録件数比率がやや大きくなっている。

図 4-10 出願人国籍(地域)別登録件数推移及び登録件数比率(日米欧中韓での登録、出願年(優先権主張年):2005-2015 年)

注)調査時点で審査請求前や審査中の出願が存在するため、2015 年に近づくにつれて件数が減少することに

注意すること。

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- 26 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

素子用材料

18,283件

37.1%

素子構造

19,785件

40.1%

製造方法・装置

11,267件

22.8%

長寿命化

13,130件

26.5%

カラー化

3,800件

7.7%

発光効率向上

10,802件

21.8%

高画質化

6,652件

13.4%

大型化

1,909件

3.9%

小型化

937件

1.9%

フレキシブル化

2,136件

4.3%

コスト削減

8,784件

17.7%

上記に属さない

課題

1,399件

2.8%

第3節 技術区分別動向調査

1.技術区分別ファミリー件数推移及び出願人国籍(地域)別ファミリー件数

(1)課題と要素技術のファミリー件数比率

課題と要素技術のファミリー件数比率を図 4-11 に示す。特許出願における課題は、

長寿命化に関する特許が 26.5%を占めており最も多い。次いで発光効率向上が 21.8%、

コスト削減が 17.7%と続いている。課題を解決するための要素技術は、素子構造が

40.1%で最も多く、次いで素子用材料、製造方法・装置の順である。

なお、一つのファミリーについて必ず一つ以上の課題と要素技術を選択することと

し、複数の課題や要素技術が選択された場合は、それぞれをカウントした。このため、

図 4-11 の件数の合計は、全体のファミリー件数の合計より多くなっている。

図 4-11 課題と要素技術のファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

(a)課題 (b)要素技術

(2)課題別ファミリー件数推移及び出願人国籍(地域)別ファミリー件数

課題の大分類別ファミリー件数推移を図 4-12に示す。全体のファミリー件数が 2010

年から 2013 年にかけて増加していることに対応して、各課題はおおむね同様に増加し

ている。2010 年の件数に対する 2013 年の件数の増加率は、フレキシブル化が約 2.8

倍、カラー化が約 2.5 倍、発光効率向上が約 2.3 倍となっている。

課題の大分類別の出願人国籍(地域)別ファミリー件数を図 4-13 に示す。全体のフ

ァミリー件数に対応して、韓国籍と日本国籍が多く中国籍がこれに続くものが多い。

細かく見ると、日本国籍と韓国籍は長寿命化に関する件数が最も多く、より有機 EL

装置の実用化に向けた課題が多くなっている。中国籍は発光効率向上が最も多く、カ

ラー化も多いことから発光材料の研究に注力していると考えられる。米国籍、欧州国

籍は、件数は少ないものの発光効率向上が最も多い。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

長寿命化 1,767 1,831 2,298 2,839 2,518 1,877

カラー化 445 618 644 1,096 573 424

発光効率向上 1,215 1,456 1,953 2,785 1,946 1,447

高画質化 774 894 1,086 1,429 1,382 1,087

大型化 299 285 343 393 326 263

小型化104 121 142

194 176 200

フレキシブル化 186 199 338 516 484 413

コスト削減 1,211 1,296 1,659 1,885 1,532 1,201

上記に属さない課題 172 198 231 261 295 242

2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願年(優先権主張年)

優先権主張2010-2015年

技術区分

長寿命化 4,641 267 600 2,145 5,159 318

カラー化 1,134 103 171

1,402 881 109

発光効率向上 2,887 397 636 3,007 3,585 290

高画質化 2,418 114 155

1,037 2,671 257

大型化 747 44 53

239 768 58

小型化 313 31 22 145

384 42

フレキシブル化 607 73 58

388 933 77

コスト削減 2,996 197

366 1,742 3,245 238

上記に属さない課題 520 43 90 182

516 48

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

技術区分

図 4-12 課題の大分類別ファミリー件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

図 4-13 課題の大分類別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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- 28 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

素子用材料 5,978 593 982

4,420 5,883 427

素子構造 6,711 508

860

3,840 7,117

749

製造方法・装置 4,338 288 408

1,546 4,435 252

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

技術区分

2,291

2,541

3,252

4,402

3,309

2,488 2,329

2,645

3,268

4,614

3,887

3,042

1,569 1,644

2,138

2,394

2,014

1,508

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

2010 2011 2012 2013 2014 2015

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

素子用材料

素子構造

製造方法・装置

優先権主張2010-2015年

(3)要素技術別ファミリー件数推移及び出願人国籍(地域)別ファミリー件数

要素技術別ファミリー件数推移を図 4-14 に示す。どの要素技術もおおむね全体のフ

ァミリー件数の増減を反映しており、特徴的な動きは見られなかった。

図 4-14 要素技術別ファミリー件数推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

要素技術別の出願人国籍(地域)別ファミリー件数を図 4-15 に示す。日本国籍、韓

国籍、その他の国籍は素子構造に関する出願が最も多いが、米国籍、欧州国籍、中国

籍は素子用材料が最も多い。中国籍は、発光効率向上の課題が多い(図 4-13)ことか

ら、発光材料の開発に注力していると推測される。

図 4-15 要素技術別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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- 29 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

発光部材料 2,390 383 657 2,757 3,217

187

電極材料 499 36 92

639 411 31

端子・配線・駆動回路材料 599 35 49 176

514 46

絶縁体、誘電体 438 12 18 110

326 16

基板・封止材料 2,224 146 192

1,166 1,773 164

その他の材料185 14 20 64 133 14

材料の製造、精製53 10 27

447 168 12

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

技術区分

(4)技術区分別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数

素子用材料の大分類別の出願人国籍(地域)別ファミリー件数を図 4-16 に示す。い

ずれの国籍(地域)も発光部材料が最も多い。中国籍は、材料の製造・精製が他の国

籍(地域)より多い。

図 4-16 素子用材料の大分類別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

発光部材料の下位分類について、出願人国籍(地域)別ファミリー件数を図 4-17

に示す。全般的に、韓国籍のファミリー件数が多いが、高分子材料については、韓国

籍よりも中国籍や日本国籍の件数が多い。また、TADF は日本国籍が多い。

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

蛍光ホスト材料 310 38

66 218 423 30

蛍光ドーパント材料 179 30

62 116 210 16

蛍光材料一般 85 13 32 215 127 12

りん光ホスト材料 471 90 112 527 996

46

りん光ドーパント材料 449 145 117 463 405

41

りん光材料一般 92 23 39

116 85 5

TADF 99 24 21 29 40 2

励起錯体 63 7 12

86 30

低分子材料一般 68 11 19

79 185 1

共役系材料 95 15

58 207 33 9

非共役系蛍光材料22 9 25 5 1

非共役系りん光材料31 1 11 28 4

高分子材料一般 54 4 25

53 17 2

発光層が量子ドットを含む 50 11 15

100 97 6

発光材料一般 52 11 18

59 96 10

低分子材料 176 9 41

130 604 9

高分子材料 86 8 11 34 23 2

無機材料 51 4 4

78 33

正孔注入材料(陽極バッファ

層を含む)一般

27 3 5 14 25

3

低分子材料 415 45

127 363 1,193 32

高分子材料 154 12 42

35 41 4

無機材料21 2 10

52 20 2

正孔輸送材料・電子

ブロック材料一般

23 5 11 30 44 2

低分子材料 402 56 117 373 796 46

高分子材料 68 6 28 35 14 4

無機材料36 2 9

67 34 3

電子輸送材料・正孔

ブロック材料一般

20 1 8 22 25 2

低分子材料 144 7 33

100 375 11

高分子材料 39 1 5 7

8 1

無機材料 58 2 3

143 39 3

電子注入材料(陰極

バッファ層を含む)一般

23 1 14 17 3

エネルギーの関係 152 35 41

73 164 14

発光部材料一般 49 11 18

55 152 8

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

技術区分

蛍光材料

低分子材料

発光材料

電子注入材料

(陰極バッファ層を含む)

高分子材料

正孔輸送材料・

電子ブロック材料

電子輸送材料・

正孔ブロック材料

りん光材料

正孔注入材料

(陽極バッファ層を含む)

図 4-17 発光部材料の技術区分別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

発光層の構造 1,082 138 202 1,114 1,497 207

正孔注入・輸送・電子

ブロック層の構造210

25 56 301 379

18

電子注入・輸送・正孔

ブロック層の構造200

20 43 316 266

21

電極・端子・配線・

駆動回路の構造2,400 147 268 1,426 3,001 302

絶縁体・誘電体の構造 739 21 47

249 894 59

基板の構造 557 54 67

317 688 64

封止構造 979 66

113 675 1,138 113

光学部材の構造 1,660 117 200 753 1,405 149

発光方式 363 22 35

295 449 44

微小共振構造 103 9 8 69

148 11

直列接続された素子を

基板上に配置

20 4 6 6 7 4

その他の構造 651 74 130 301 952 115

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

技術区分

素子構造の大分類別出願人国籍(地域)別ファミリー件数を図 4-18 に示す。素子構

造の大分類の中では、いずれの国籍(地域)も電極・端子・配線・駆動回路の構造が

最も多く、日本国籍は光学部材の構造が 2 番目に多いが、他の国籍(地域)は発光層

の構造が 2 番目に多い。

図 4-18 素子構造の大分類別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

カラーフィルター 377 14 5

116 230 32

波長変換層 69 13 23 120 71 15

偏光フィルム、偏光板 344 14 7

51 327 20

無反射膜、黒色層 101 2 4

70 204 15

光散乱層 324 27 71 213 233 28

レンズ 149 16 22 35 81 11

プリズム 35 1 4 7

11 2

回折格子 38 2 2 8

12

多層干渉膜 12 2

10 15 2

反射部材 168 13 33 110 161 20

低屈折率層、高屈折率層 183 34 50 104 177 15

フォトニック結晶4 6 6

10 3

光学部材の構造一般 238 16 23 64 199 29

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

技術区分

光学部材の構造の中分類別の出願人国籍(地域)別ファミリー件数を図 4-19 に示す。

日本国籍は、カラーフィルター、偏光フィルム、偏光板、光散乱層など、多くの項目

で最も件数が多い。

図 4-19 光学部材の構造の中分類別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

成膜方法・装置 2,306 159 222 722 2,041 79

封止方法・装置 290 26 36

301 488 51

パターニング法・装置 533 40 61

178 425 24

表面処理方法・装置 220 11 18

78 168 9

熱・光処理方法・装置 421 21 38

125 321 21

製造又は処理の条件、

雰囲気316

17 24 87 172

7

製造ライン 276 20 19 38

314 11

その他の製造方法 825 48 53

241 1,150 77

検査・試験 220 5 20 32

238 9

TFTの製造方法 486 31 26

180 561 35

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

技術区分

製造方法・装置の大分類別の出願人国籍(地域)別ファミリー件数を図 4-20 に示す。

製造方法・装置の中で最も件数が多い成膜方法・装置については、日本国籍が最も多

く出願している。

図 4-20 製造方法・装置の大分類別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

蒸着法 674 39 38 356 1,199 26

スパッタ法 144 2 8

62 78 3

CVD法 99 19 8 26

129 5

ALD法 39 9 15 12

42 3

OVJP法2 8 8

OVPD法7 1 10 2 9

乾式一般 35 3 9 27

39 1

印刷法 238 14 34

43 45 6

インクジェット法 334 20 28

54 127 10

スプレー法 46 5 9 11

41 1

塗布法 625 20

42 112 133 15

電着法11

1 1 6

不溶化の技術 47 2 3 4 2 2

低分子材料の可溶化 40 8 12 19 21 3

湿式一般 163 12

45 53 75 6

LITI法19 4 3 5

144 1

その他の転写法11 2 12 1

転写一般 65 6 3 14

50 6

成膜方法・装置一般 37 5 7 12

99 1

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

技術区分

乾式

湿式

転写

成膜方法・装置の小分類別の出願人国籍(地域)別ファミリー件数を図 4-21 に示す。

成膜方法・装置の中で件数が多い蒸着法は韓国籍が多く、塗布法は日本国籍が多い。

日本国籍は、印刷法、インクジェット法などの湿式が他の国籍(地域)より多い。

図 4-21 成膜方法・装置の小分類別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

室内外照明 184 14 20 20 20 8

移動体用照明 25 4 14 7

装飾用 35 4 7 5 4 2

携帯照明用 15 4 3 1 1 1

特殊用途(医療用)11 3

16 10 8 1

照明用一般 683 45 125 87 86 31

スマートフォン・タブレット用 242 21 7

26 132 15

パソコン用 160 15 6 8

32 5

ヘッドマウント用 63 1 2 4 11 2

車載用 63 1

16 6

23 1

デジタルカメラ用

136 5 2 1

17 1

中小型ディスプレイ用一般 692 43 39 198 690 57

民生用テレビ 164 7 4

6 56

2

業務用モニター 11

1 3

広告用28 2 7 3 8 1

大型ディスプレイ用一般 583 38 31 188 650 50

モバイル(ロール型)6

3 13

ウエアラブル12

3 7

12

1

大型テレビ4 1 2 4

車載用5 2

フレキシブル

ディスプレイ用一般96

5 324 101

4

レーザー5 1 3

1

プリンターヘッド 503 1 1

FAX1

その他一般 11410

18 23 235

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願人国籍(地域)

優先権主張2010-2015年

技術区分

照明用

その他

大型ディスプレイ用

フレキシブルディスプレイ用

中小型ディスプレイ用

用途の下位分類別の出願人国籍(地域)別ファミリー件数を図 4-22 に示す。照明用

は、日本国籍に次いで欧州国籍が多く、韓国籍は比較的少ない。

図 4-22 用途の中分類別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日本国籍

5,978件

32.7%

米国籍

593件

3.2%

欧州国籍

982件

5.4%

中国籍

4,420件

24.2%

韓国籍

5,883件

32.2%

その他

427件

2.3%

合計18,283件

2,291 2,541

3,252

4,402

3,309

2,488

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

日本国籍

99件

46.0%

米国籍

24件

11.2%

欧州国籍

21件

9.8%

中国籍

29件

13.5%

韓国籍

40件

18.6%

その他

2件

0.9%

合計215件

5

8

21

44

71 66

0

20

40

60

80

0

20

40

60

80

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

2.技術区分別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率

素子用材料に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比

率を図 4-23 に示す。全体の動向(図 4-4)より中国籍の比率が高く、特に 2013 年のフ

ァミリー件数が多い。

図 4-23 素子用材料に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

素子用材料の細目分類である TADF に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移

及びファミリー件数比率を図 4-24 に示す。2010 年から 2014 年にかけて大きく増加して

いる。日本国籍のファミリー件数比率が 46.0%と半数近くを占めている。

図 4-24 TADF に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日本国籍

6,711件

33.9%

米国籍

508件

2.6%

欧州国籍

860件

4.3%

中国籍

3,840件

19.4%

韓国籍

7,117件

36.0%

その他

749件

3.8%

合計19,785件

2,329

2,645

3,268

4,614 3,887

3,042

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

日本国籍

1,660件

38.7%米国籍

117件

2.7%

欧州国籍

200件

4.7%

中国籍

753件

17.6%

韓国籍

1,405件

32.8%

その他

149件

3.5%

合計4,284件

429

620

794

1,053

778

610

0

200

400

600

800

1,000

1,200

0

200

400

600

800

1,000

1,200

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

素子構造に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率

を図 4-25 に示す。全体の動向(図 4-4)とほぼ同様の傾向を示している。

図 4-25 素子構造に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

素子構造の大分類である光学部材の構造に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件

数推移及びファミリー件数比率を図 4-26 に示す。全体の動向(図 4-4)より日本国籍の

比率がやや大きくなっている。

図 4-26 光学部材の構造に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

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- 38 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日本国籍

929件

30.7%

米国籍

75件

2.5%

欧州国籍

85件

2.8%中国籍

458件

15.1%

韓国籍

1,447件

47.8%

その他

35件

1.2%

合計3,029件

371

447

620 731

502

358

0

200

400

600

800

0

200

400

600

800

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

日本国籍

1,356件

59.5%

米国籍

76件

3.3%

欧州国籍

144件

6.3%

中国籍

270件

11.9%

韓国籍

393件

17.3%

その他

39件

1.7%

合計2,278件

427

334

458

375 395

289

0

100

200

300

400

500

0

100

200

300

400

500

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

製造方法・装置の大分類である成膜方法・装置の中の乾式に関する出願人国籍(地域)

別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率を図 4-27 に示す。韓国籍が 47.8%と半

数近くを占めている。

図 4-27 成膜方法・装置の乾式に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

製造方法・装置の大分類である成膜方法・装置の中の湿式に関する出願人国籍(地域)

別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率を図 4-28 に示す。日本国籍によるファミ

リー件数が 2010 年から 2015 年まで毎年最も多く、全体の 59.5%を占めている。

図 4-28 成膜方法・装置の湿式に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

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- 39 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日本国籍

922件

63.4%米国籍

68件

4.7%

欧州国籍

178件

12.2%

中国籍

120件

8.2%

韓国籍

125件

8.6%

その他

42件

2.9%

合計1,455件

260 296

264

271 230

134

0

100

200

300

400

500

0

100

200

300

400

500

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

日本国籍

764件

42.2%

米国籍

44件

2.4%欧州国籍

40件

2.2%

中国籍

196件

10.8%

韓国籍

713件

39.4%

その他

52件

2.9%

合計1,809件

247 249

332 399 337

245

0

100

200

300

400

500

0

100

200

300

400

500

2010 2011 2012 2013 2014 2015

合計

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計出願人国籍

(地域)

優先権主張2010-2015年

用途の大分類である大型ディスプレイ用に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件

数推移及びファミリー件数比率を図 4-29 に示す。全体の動向(図 4-4)とほぼ同様の傾

向を示している。

図 4-29 大型ディスプレイ用に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

用途の大分類である照明用に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びフ

ァミリー件数比率を図 4-30 に示す。日本国籍が全体の 63.4%を占めている。次いで欧

州国籍が 12.2%となっている。

図 4-30 照明用に関する出願人国籍(地域)別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

注)2014 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していない

可能性がある。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4節 出願人別動向調査

1.出願人別ファミリー件数上位ランキング(全体)

出願人別ファミリー件数上位ランキングを表 4-2 に示す。上位 21 者中ディスプレイメ

ーカーが 7 者、材料・部材メーカーが 7 者、照明メーカーが 3 者である。ディスプレイ

メーカーでは、韓国のサムスンディスプレイと LG ディスプレイが 1、2 位、中国の BOE

が 5 位に入っており、研究開発に注力していることがうかがえる。日本はディスプレイ

メーカーの JOLED とジャパンディスプレイが 10 位以内に入っている。材料・部材メーカ

ーでは、日本の住友化学、富士フイルム、凸版印刷、大日本印刷、三菱ケミカル、出光

興産が 20 位以内に入っており、日本の材料・部材メーカーが研究開発に注力しているこ

とがうかがえる。上位 21 者中、14 者が日本国籍である。

表 4-2 出願人別ファミリー件数上位ランキング(全体)(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 サムスンディスプレイ(韓国) 4,553

2 LG ディスプレイ(韓国) 2,680

3 オーシャンキングライティング(中国) 2,081

4 コニカミノルタ 1,279

5 BOE(中国) 1,051

6 半導体エネルギー研究所 915

7 JOLED 708

8 パナソニック 662

9 ジャパンディスプレイ 508

10 キヤノン 506

11 住友化学 473

12 LG ケミカル(韓国) 460

13 富士フイルム 430

14 凸版印刷 426

15 セイコーエプソン 412

16 大日本印刷 387

17 オスラム(ドイツ) 375

18 三菱ケミカル 349

19 出光興産 342

20 ソニー 307

20 AU オプトロニクス(台湾) 307

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- 41 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

素子用材料に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキングを表 4-3 に示す。

材料メーカーだけでなく、ディスプレイメーカーが上位に入っている。日本の材料メー

カーの住友化学、富士フイルム、出光興産が 10 位以内に入っている。

表 4-3 素子用材料に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 サムスンディスプレイ(韓国) 1,861

2 オーシャンキングライティング(中国) 1,826

3 LG ディスプレイ(韓国) 977

4 コニカミノルタ 864

5 半導体エネルギー研究所 554

6 BOE(中国) 401

7 LG ケミカル(韓国) 368

8 住友化学 359

9 富士フイルム 334

10 出光興産 321

TADF に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキングを表 4-4 に示す。今回調

査したファミリー件数上位ランキングで唯一、大学がトップになっている。日本の出願

人が 5 位までを占めており、9 位(12 者)までに各国の大学、材料メーカーが入ってい

る。

表 4-4 TADF に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 九州大学 33

2 キューラックス 22

2 コニカミノルタ 22

4 半導体エネルギー研究所 21

5 出光興産 15

6 ユニバーサルディスプレイ(米国) 12

7 サムスンディスプレイ(韓国) 11

8 清華大学(中国) 8

9 アリゾナ州立大学(米国) 7

9 サイノラ(ドイツ) 7

9 メルクパテント(ドイツ) 7

9 ティエンマ・マイクロエレクトロニクス(中国) 7

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- 42 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

素子構造に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキングを表 4-5 に示す。サ

ムスンディスプレイ(韓国)、LG ディスプレイ(韓国)のファミリー件数が多い。9 位ま

では全体のランキング(表 4-2)と同じ出願人と順位である。10 位にオスラム(ドイツ)

が入っている。

表 4-5 素子構造に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 サムスンディスプレイ(韓国) 3,205

2 LG ディスプレイ(韓国) 2,194

3 オーシャンキングライティング(中国) 1,191

4 コニカミノルタ 895

5 BOE(中国) 882

6 半導体エネルギー研究所 594

7 JOLED 525

8 パナソニック 503

9 ジャパンディスプレイ 447

10 オスラム(ドイツ) 321

光学部材の構造に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキングを表 4-6 に示

す。サムスンディスプレイ(韓国)、LG ディスプレイ(韓国)のファミリー件数が多い。

5 位までは全体のランキング(表 4-2)と同じ出願人と順位である。6 位から 10 位に日

本の材料・部材メーカーが入っている。

表 4-6 光学部材の構造に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 サムスンディスプレイ(韓国) 497

2 LG ディスプレイ(韓国) 446

3 オーシャンキングライティング(中国) 275

4 コニカミノルタ 228

5 BOE(中国) 187

6 大日本印刷 140

7 三菱ケミカル 107

8 パナソニック 105

9 富士フイルム 100

10 凸版印刷 97

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

成膜方法・装置の乾式に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキングを表

4-7 に示す。サムスンディスプレイ(韓国)のファミリー件数が最も多い。上位に韓国

の製造装置のメーカーが入っている。日立製作所が 6位、シャープが 10位に入っている。

SFA エンジニアリング(韓国)は FPD 製造装置のメーカーである。

表 4-7 成膜方法・装置の乾式に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 サムスンディスプレイ(韓国) 486

2 SUNIC システムズ(韓国) 199

3 LG ディスプレイ(韓国) 178

4 オーシャンキングライティング(中国) 139

5 SFA エンジニアリング(韓国) 91

6 日立製作所 90

7 コニカミノルタ 85

8 大日本印刷 82

9 BOE(中国) 79

10 シャープ 65

成膜方法・装置の湿式に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキングを表

4-8 に示す。凸版印刷のファミリー件数が最も多い。上位に日本の製造装置のメーカー

や材料メーカーが入っている。

表 4-8 成膜方法・装置の湿式に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 凸版印刷 188

2 コニカミノルタ 163

3 JOLED 124

4 セイコーエプソン 120

5 サムスンディスプレイ(韓国) 115

6 住友化学 111

7 LG ディスプレイ(韓国) 92

8 三菱ケミカル 77

9 パナソニック 76

10 BOE(中国) 55

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

照明用に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキングを表 4-9 に示す。コニ

カミノルタのファミリー件数が最も多い。4 位のオスラム(ドイツ)以外は日本の企業

で占められている。上位 10 者に韓国企業が入っていないのはこのランキングのみである。

表 4-9 照明用に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 コニカミノルタ 188

2 半導体エネルギー研究所 131

3 パナソニック 125

4 オスラム(ドイツ) 64

5 東芝 48

6 カネカ 44

6 三菱ケミカル 44

8 パイオニア 39

9 東芝ライティングアンドテクノロジー 37

10 NEC ライティング 29

大型ディスプレイ用に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキングを表

4-10 に示す。サムスンディスプレイ(韓国)のファミリー件数が最も多い。上位 10 者

中 7 者が日本の企業となっている。

表 4-10 大型ディスプレイ用に関する出願の出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 サムスンディスプレイ(韓国) 378

2 LG ディスプレイ(韓国) 217

3 半導体エネルギー研究所 104

4 JOLED 99

5 BOE(中国) 92

6 コニカミノルタ 56

7 ジャパンディスプレイ 50

8 凸版印刷 42

9 パナソニック 41

10 ソニー 38

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- 45 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

2.出願先国(地域)別-出願人別出願件数上位ランキング

出願先国(地域)別の出願人別出願件数上位ランキングを表 4-11 に示す。日本への出

願では半導体エネルギー研究所、米国と韓国への出願ではサムスンディスプレイ(韓国)、

欧州への出願では LG ディスプレイ(韓国)、中国への出願ではオーシャンキングライテ

ィング(中国)が 1 位となっている。サムスンディスプレイと半導体エネルギー研究所

が、日米欧中韓への出願でそれぞれ 10 位以内に入っている。サムスンディスプレイは米

国へ 4,000 件以上出願しており、自国への出願件数とほぼ同数で、突出して多い。

表 4-11 出願先国(地域)別-出願人別出願件数上位ランキング(全体)(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

日本への出願 米国への出願 欧州への出願

順位 出願人名 出願

件数

順位 出願人名 出願

件数

順位 出願人名 出願

件数

1 半導体エネルギー研究

所 1,217

1 サムスンディスプレイ

(韓国)

4,446 1 LG ディスプレイ(韓国) 469

2 コニカミノルタ 1,028

2 半導体エネルギー研究

1,031 2 オスラム(ドイツ) 431

3 サムスンディスプレイ

(韓国) 647

3 LGディスプレイ(韓国) 1,019 3 サムスンディスプレイ

(韓国)

401

4 JOLED 628 4 BOE(中国) 737 4 メルクパテント(ドイツ) 349

5

パナソニック 542

5 JOLED 524 5 ケンブリッジ ディスプ

レイ テクノロジーズ(イ

ギリス)

160

6 ジャパンディスプレイ 518

6 ユニバーサルディスプ

レイ(米国)

382 6 住友化学 159

7 キヤノン 509 7 ジャパンディスプレイ 379 7 LG ケミカル(韓国) 106

8 セイコーエプソン 449

8 メルクパテント(ドイ

ツ)

271 8 BOE(中国) 105

9 住友化学 437 9 サムスン電子(韓国) 264 9 半導体エネルギー研究所 104

10 凸版印刷 417

10 キヤノン 239 10 ユニバーサルディスプレ

イ(米国)

97

中国への出願 韓国への出願

順位 出願人名 出願

件数

順位 出願人名 出願

件数

1 オーシャンキングライ

ティング(中国)

2,083 1 サムスンディスプレイ

(韓国)

4,487

2 サムスンディスプレイ

(韓国)

1,426 2 LGディスプレイ(韓国) 2,664

3 BOE(中国) 1,030 3 LG ケミカル(韓国) 568

4 LGディスプレイ(韓国) 733 4 半導体エネルギー研究

512

5 AUオプトロニクス(台

湾)

287 5 サムスン電子(韓国) 275

6 エバーディスプレイオ

プトロニクス(上海)

(中国)

273 6 チェイル・インダスト

リーズ(韓国)

249

7 半導体エネルギー研究

253 7 SFC(韓国) 246

8 チャイナスターオプト

エレクトロニクス(中

国)

247 8 SUNIC システムズ(韓

国)

236

9 メルクパテント(ドイ

ツ)

225 9 メルクパテント(ドイ

ツ)

224

10 LG ケミカル(韓国) 196 10 トサン(韓国) 222

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- 46 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第5節 注目出願人の出願動向調査

1.注目出願人の選定

市場における特徴的な位置付け、出願件数上位、及び特徴的な技術を保有していると

いう観点で、以下の出願人に注目した。なお、ユニバーサルディスプレイグループは、

ユニバーサルディスプレイ(米国)の出願(286 ファミリー)と子会社で知財の管理を

担当している UDC アイルランドの出願(158 ファミリー)を合算している。

(1)ディスプレイメーカーの注目出願人

・サムスンディスプレイ(韓国)

・LG ディスプレイ(韓国)

・BOE(中国)

・JOLED

・ジャパンディスプレイ

・シャープ

(2)照明メーカーの注目出願人

・コニカミノルタ

・オーシャンキングライティング(中国)

(3)材料メーカーの注目出願人

・LG ケミカル(韓国)

・ユニバーサルディスプレイグループ

(ユニバーサルディスプレイ(米国)+UDC アイルランド(アイルランド))

・住友化学

・出光興産

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- 47 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

サムスンディスプレイ 647 4,446 401 1,426 4,487

LGディスプレイ136

1,019 469 733 2,664

BOE45

737 105

1,030 54

JOLED 628 524 14 157 42

LGケミカル140 153 106 196

568

ユニバーサルディスプレイ

グループ333 466

124 136 212

住友化学 437 185 159 182 166

出光興産 268 203 85 108 126

コニカミノルタ 1,028 190 65 71 81

オーシャンキングライティング40 40 40

2,083

シャープ202 210 13 120 41

ジャパンディスプレイ 518 379 2 106 116

日本 米国 欧州 中国 韓国

出願先国(地域)

優先権主張2010-2015年

出願人

2.[出願先:日米欧中韓]注目出願人別-出願先国(地域)別出願件数

注目出願人別-出願先国(地域)別出願件数を図 4-31 に示す。多くの出願人は、自国

への出願件数が最も多く次いで米国への出願件数が多い。サムスンディスプレイ(韓国)

は、自国への出願件数と同様に米国への出願件数がある。

図 4-31 注目出願人別-出願先国(地域)別出願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010-2015 年)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

871

741 778

860

959

827

0

400

800

1,200

0

200

400

600

2011 2012 2013 2014 2015 2016

合計

論文件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計研究者所属機関

国籍(地域)

論文発表2011-2016年

日本国籍

391件

7.8% 米国籍

338件

6.7%

欧州国籍

815件

16.2%

中国籍

1,668件

33.1%

韓国籍

924件

18.3%

その他

900件

17.9%

合計5,036件

第5章 研究開発動向調査

第1節 調査範囲と調査方法

有機 EL 装置に関する論文発表動向から見た研究開発動向について、論文データベース

Scopus を用いて調査対象論文を検索、抽出し、全体動向調査、技術区分別動向調査、及

び研究者所属機関・研究者別動向調査を行った。調査対象の論文誌は、アドバイザリー

ボードの議論を踏まえてサイトスコア 1が高いことを条件に、また調査対象論文は被引

用回数が多いことを条件に選定した。2011 年~2016 年に発行された論文誌に掲載された

論文を調査対象とした。

具体的には、2015 年のサイトスコアが 2.0 以上の論文誌を 110 誌(論文数 4,341 件)、

サイトスコアが提供されていないが重要と考えられる論文誌(Digest of Technical

Papers SID International Symposium など)を 7 誌(論文数 878 件)、及びサイトスコ

アは 2.0 以下であるが重要と考えられる論文誌を 1 誌(Journal of Applied Physics、

論文数 112 件)の合計 118 誌、さらに 118 誌には含まれないが被引用回数が 50 回以上の

論文 13 件を加えて、合計 5,344 件の論文を調査対象とした。

第2節 全体動向調査

研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数推移及び論文発表件数比率を図 5-1 に示

す。有機 EL 装置関係の論文は、2011 年から 2016 年にかけて多少の増減があるもののコ

ンスタントに発表されており、2015 年に 959 件でピークを示している。研究者所属機関

国籍(地域)別に見ると、中国籍の研究機関の論文が 1,668件で最も多く、全体の約 33.1%

を占めており、2011 年から 2015 年まで年々増加している。次いで韓国籍が 18.3%、欧

州国籍が 16.2%となっている。日米国籍の研究機関の論文はそれぞれ 7.8%、6.7%と比

較的少ない。日米欧韓国籍の研究機関の論文発表件数は、2011 年~2016 年にかけて大き

な変動は見られない。その他の研究機関国籍(地域)からの論文発表が 900 件あるが、

このうち台湾籍が 458 件と約半数を占めており、日米国籍より多くの論文を発表してい

る。

図 5-1 研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数推移及び論文発表件数比率(論文誌発行年:2011-2016 年)

1 Scopus を提供するエルゼビアが 2016 年 12 月から提供を開始した論文誌別の被引用回数の多さを示す指

標。過去 3 年分の当該雑誌に載った論文の被引用回数の総合計をその間の論文件数で割った数値。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

長寿命化

1,323件

15.5%

カラー化

2,072件

24.3%

発光効率向上

3,329件

39.0%

高画質化

815件

9.5%

大型化

142件

1.7%

小型化

21件

0.2%

フレキシブル化

257件

3.0%

コスト削減

435件

5.1%

上記に属さない

課題

142件

1.7%

素子用材料

4,173件

56.2%素子構造

2,058件

27.7%

製造方法・装置

1,200件

16.1%

第3節 技術区分別動向調査

1.課題と要素技術の論文発表件数比率

課題と要素技術の論文発表件数比率を図 5-2に示す。課題では、発光効率向上が 39.0%

で最も多い。特許動向では多かった長寿命化とコスト削減は、それぞれ 15.5%、5.1%

と比率が下がっている。要素技術では、素子用材料が 56.2%を占めており最も多い。特

許動向では、素子構造が 40.1%で最も多い(図 4-11)ことと比較すると、特徴的な差異

である。

なお、課題と要素技術は一つの論文にそれぞれ一つ以上を選択している。複数選択す

ることがあるため、各項目の合計は、集計対象論文数より多くなっている。

図 5-2 課題と要素技術の論文発表件数比率(論文誌発行年:2011-2016 年)

(a)課題 (b)要素技術

2.技術区分別-研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数

課題の大分類別研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数を図 5-3 に示す。全体の

発表件数を反映して中国籍の発表件数が多いが、大型化とフレキシブル化は韓国籍の方

が多くなっている。

要素技術別の研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数を図 5-4 に示す。いずれの

国籍(地域)も素子用材料>素子構造>製造方法・装置の順であるが、中国籍の素子用

材料の発表件数が特に多い。中国籍だけを見ると、発表された論文の 63.3%が素子用材

料(全体では 56.2%、図 5-2)となっている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

長寿命化 93 71 177 464 258 260

カラー化 112 107 248 908 353 344

発光効率向上 236 218 536 1,183 584 572

高画質化 58 44 100 279 173 161

大型化15 11 21 21

47 27

小型化2 3 6 4 6

フレキシブル化34 27 30

54 78 34

コスト削減27 40

98 121 74 75

上記に属さない課題11 9 32 36 14 40

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

研究者所属機関国籍(地域)

論文発表2011-2016年

技術区分

素子用材料 315 264 646 1,503 716 729

素子構造 147 139 288 584 502 398

製造方法・装置 112 90 237 288 254 219

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

研究者所属機関国籍(地域)

論文発表2011-2016年

技術区分

図 5-3 技術区分(課題)別-研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数(論文発表年:2011-2016年)

図 5-4 技術区分(要素技術)別-研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数(論文発表年:2011-2016 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

蛍光ホスト材料 20 4 18 109 35 35

蛍光ドーパント材料 11 2

23 73

33 35

蛍光材料一般 21 17 41

164

23 71

りん光ホスト材料 27 22 57

266

154 96

りん光ドーパント材料 26 31 90 294

110 106

りん光材料一般 17 36 50 122 41 34

TADF 57 8 19 65 25 16

励起錯体 3 1

5 10 6 4

低分子材料一般 5 12 18 42 9 18

共役系材料 16 32 76 108 22 59

非共役系蛍光材料1

11 13 4 3

非共役系りん光材料1 1

10 30 2

11

高分子材料一般 9 20 54 57 23 37

発光層が量子ドットを含む 3 8 13 5 18 12

発光材料一般 6 8 15 26 7 20

低分子材料 6 7 6 29 20 14

高分子材料 4 5 10 15 11 14

無機材料 6 7 16 27 14 21

正孔注入材料(陽極バッファ

層を含む)一般5 4 7 3

1

低分子材料 17 11 31 100 43 52

高分子材料 6 7 21 10 14 19

無機材料 3 6 5 9 4 9

正孔輸送材料・電子

ブロック材料一般6 9 6 8

低分子材料 21 11 19 102 31 33

高分子材料1

3 6 12 2

5

無機材料 5 2

3 17 2

7

電子輸送材料・正孔

ブロック材料一般

1 3 7 11 4 7

低分子材料 10 2

6 25 5 13

高分子材料 6 6 9 5 7

無機材料 6 4 12 19 9 9

電子注入材料(陰極

バッファ層を含む)一般3

1 3 10 5 4

エネルギーの関係 10 10 19 80 20 27

発光部材料一般 4 3 12 11 3 6

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

研究者所属機関国籍(地域)

論文発表2011-2016年

技術区分

蛍光材料

低分子材料

発光材料

電子注入材料料

(

陰極バッファ層を含む)

高分子材料

正孔輸送材料

・電子ブロック材料

電子輸送材料

・正孔ブロック材料

りん光材料

正孔注入材料

(

陽極バッファ層を含む)

素子用材料の大分類である発光部材料の下位分類別研究者所属機関国籍(地域)別論

文発表件数を図 5-5 に示す。中国籍のりん光ドーパント材料に関する発表件数が特に多

い。日本国籍の中では TADF が最も多い。

図 5-5 発光部材料の技術区分別-研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数(論文発表年:2011-2016 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

発光層の構造 43 44 94 316 136 165

正孔注入・輸送・電子

ブロック層の構造7 10 14 43 25 28

電子注入・輸送・正孔

ブロック層の構造9 5 11 37 16 20

電極・端子・配線・

駆動回路の構造55 51 89 144 200 147

絶縁体・誘電体の構造2 2

4 1

9 5

基板の構造 12 13 16 20 31 15

封止構造 9 1

12 11 32 10

光学部材の構造 23 26 57 55 103 57

発光方式 10 8 31 62 40 18

微小共振構造 4 8 19 25 18 11

直列接続された素子を

基板上に配置

1

その他の構造 10 11 30 27 33 29

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

研究者所属機関国籍(地域)

論文発表2011-2016年

技術区分

素子構造の大分類別研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数を図 5-6 に示す。発

光層の構造は中国籍の発表件数が最も多いが、電極・端子・配線・駆動回路の構造、光

学部材の構造は韓国籍が最も多い。

図 5-6 素子構造の大分類別-研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数(論文発表年:2011-2016 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

蒸着法 18 8 15 30 16 28

スパッタ法 5 1 5 6 16 8

CVD法 2 2 4 2 4 2

ALD法 1 1 8 7 7 2

OVJP法 2 1

OVPD法 2 1 1 1

乾式一般 3 3 1

印刷法 5 6 10 4 9 1

インクジェット法 6 3 7 6 3 3

スプレー法 2 1 2 2 4 1

塗布法 9 8 16 34 23 29

電着法 1

不溶化の技術 2 2 2 2 1

低分子材料の可溶化 3 2 10 26 12 13

湿式一般 16 15 46 70 35 29

LITI法 1 5 6

転写一般 3 1 3 1 4 2

その他の転写法 1 1 3 1

成膜方法・装置一般 4 3 8 5 3 5

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

研究者所属機関国籍(地域)

論文発表2011-2016年

技術区分

乾式

湿式

転写

製造方法・装置の大分類である成膜方法・装置の下位分類別研究者所属機関国籍(地

域)別論文発表件数を図 5-7 に示す。発表件数が多い項目である蒸着法、塗布法、湿式

一般でいずれも中国籍が最も多い。

図 5-7 成膜方法・装置の技術区分別-研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数(論文発表年:2011-2016 年)

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第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4節 研究者所属機関・研究者別動向調査

1.研究者所属機関別論文発表件数上位ランキング

研究者所属機関別論文発表件数上位ランキングを表 5-1 に示す。20 位まで全て大学と

研究機関である。20 位までの国籍(地域)別研究者所属機関数は、中国籍 8、韓国籍 6、

台湾籍 3、日本国籍 2、欧州国籍 1 となっている。

表 5-1 研究者所属機関別論文発表件数上位ランキング(論文発表年:2011-2016 年) 順位 研究者所属機関 発表件数

1 吉林大学(中国) 250

2 華南理工大学(中国) 228

3 国立台湾大学(台湾) 170

4 檀国大学校(韓国) 146

5 国立清華大学(台湾) 140

6 蘇州大学(中国) 138

7 中国科学院長春応用化学研究所 高分子物理与化学国家重点実験室(中国) 122

8 成均館大学校(韓国) 121

9 九州大学 104

10 ソウル大学校(韓国) 95

11 慶熙大学校(韓国) 93

12 南京郵電大学(中国) 89

13 KAIST(韓国) 87

14 ドレスデン工科大学(ドイツ) 84

15 武漢大学(中国) 81

16 高麗大学校(韓国) 72

17 山形大学 69

17 国立成功大学(台湾) 69

19 香港浸会大学(中国) 67

20 電子科技大学(中国) 65

2.研究者別論文発表件数上位ランキング

研究者別論文発表件数上位ランキングを表 5-2 に示す。10 位までの国籍(地域)別内

訳は、中国籍 7 名、韓国籍 1 名、日本国籍 2 名、欧州国籍 1 名となっている。

表 5-2 研究者別論文発表件数上位ランキング(論文発表年:2011-2016 年) 順位 研究者(所属機関) 発表件数

1 Lee, J. Y.(檀国大学校、成均館大学校、韓国) 173

2 安達 千波矢(九州大学) 128

3 Cao, Y.(華南理工大学、中国) 112

4 Ma, D.(中国科学院長春応用化学研究所 高分子物理与化学国家重点実験室、中国) 101

5 Leo, K.(ドレスデン工科大学、ドイツ) 75

6 Liao, L.-S.(蘇州大学、中国) 68

7 Yang, C.(武漢大学、中国) 60

8 Peng, J.(華南理工大学、中国) 58

8 Huang, W.(南京郵電大学) 58

10 城戸 淳二(山形大学) 57

10 Duan, L.(清華大学、中国) 57

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第4部

第5部

資料編

第6部

第6章 総合分析と提言

第1節 調査・分析結果のまとめと総括

1.現状分析

(1)全体動向について

[特許動向]

特許出願については、日本国籍のファミリー件数は、2005 年から 2011 年にかけて

優勢であったが、2012 年以降、韓国籍、中国籍出願人が件数を急増させ、日本国籍の

ファミリー件数を圧倒している(図 4-4、図 4-9、図 4-10)。

特許出願人別上位ランキング 10 者については、2005-2009 年と 2010-2015 年を比較

すると、2005-2009 年において、既に韓国企業のサムスンディスプレイがトップであ

ったが、上位には日本企業のセイコーエプソンやソニーがいた。しかし、2010-2015

年では、韓国企業のサムスンディスプレイがトップを維持し、LGディスプレイが 2位、

さらに中国企業のオーシャンキングライティング、BOE が 3、5 位で上位となり、韓国

企業、中国企業は、ランキングにおいて日本企業よりも優位な状況にある(表 4-4-44

(本) 1)。

このような特許出願の動向から、2005 年から 2011 年にかけては、日本企業が活発

に研究開発を行っていたが、2012 年以降は、韓国企業、中国企業がより活発に研究開

発を行っていることがうかがえる。

[研究開発動向]

研究者所属機関国籍(地域)別論文発表件数についても、中国、韓国、欧州、日本

国籍の順であり、特に中国籍が 2011 年から 2015 年にかけて急増しており研究開発が

活発化していることがうかがえる(図 5-1)。

[市場動向]

有機 EL 装置の市場は、ディスプレイ市場と照明市場で構成されどちらも今後大きく

拡大していくと予測されるものの、照明市場はまだ十分に立ち上がっているとは言い

難く、現時点ではディスプレイ市場が有機 EL装置の主要な市場である(図 2-1、図 2-2、

図 2-3)。

有機 EL ディスプレイ市場は、大型(例.テレビ用パネル)、中小型(例.スマート

フォン用パネル)のいずれについても、特許出願件数で優勢な韓国企業が独占してい

ることが分かる(図 2-1-4(本))。また、有機 EL ディスプレイメーカーの国別基板投

入能力世界推移/予測からは、韓国とともに中国が製造を強化していることが読み取

れる(図 2-1-6(本))。

[発光部材料]

発光部材料の動向を見ると、低分子発光材料メーカー別世界市場シェアでは、日本

の関係会社 3社で、重量ベースで、約 45%の世界シェアを有している(図 2-2-10(本))。

低分子発光材料に関する特許出願人別ファミリー件数上位ランキングでは、コニカ

ミノルタが 3 位、出光興産が 4 位、半導体エネルギー研究所が 5 位、SFC が 7 位に入

1 この要約に掲載されていない図表については、図表番号の後に(本)と表記する。これらの図表は本編を

参照されたい。

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要約

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第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

っている(表 4-4-7(本))。

電子輸送材料メーカー別世界市場シェアでは、発光層に用いられる低分子材料でシ

ェアの高い日本企業は、電子輸送材料でも約 17%のシェアを取っている(図 2-2-12

(本))。

電子輸送材料に関する特許出願人別ファミリー件数上位ランキングでも出光興産が

4 位、SFC が 5 位、コニカミノルタが 7 位に入っている(表 4-4-13(本))。

以上のことから、発光部材料の全体動向としては、低分子発光材料及び電子輸送材

料のいずれについても、日本企業は世界市場において有力な立場にあり、特許出願件

数にもそのことが反映されていると言える。

[光学部材]

光学部材の動向を見ると、日米欧中韓への特許ファミリー件数では、カラーフィル

ター、偏光フィルム、偏光板、光散乱層は、日本国籍の出願が一番多い(図 4-19)。

有機 EL 素子用円偏光板のメーカー別世界市場シェアでは、日本企業が、約 83%のシ

ェアがある(図 2-2-4(本))。また、偏光フィルム、偏光板に関する特許ファミリー

件数上位ランキングでは、上位 10 者中 6 者が日本企業である(表 4-4-24(本))。

以上のことから、光学部材の全体動向としては、日本企業は突出して優位な立場に

あり、特に、偏光要素が強いことが読み取れる。

[製造方法・装置]

製造方法・装置の動向を見ると、日米欧中韓への特許ファミリー件数では、成膜方

法・装置、パターニング法・装置、その他の製造方法で、日本国籍と韓国籍のファミ

リー件数が多く、成膜方法・装置、パターニング法・装置では日本国籍が一番多い(図

4-20)。また、市場シェアにおいても、蒸着装置でキヤノントッキなどが大きなシェア

を有している(第2章第2節)。

現在の有機 EL ディスプレイパネルの生産拠点の中心は韓国であるが、今後、中国で

も製造強化の動きがある。

以上のことから、製造方法・装置の全体動向としては、日本は製造方法・装置の提

供については優位な立場にあるが、それが実際に使われる場所は、韓国、中国がメイ

ンであると言うことができる。

(2)韓国、中国籍出願人の出願先動向について

[韓国籍出願人の動向]

出願先国(地域)別の出願人国籍(地域)別の出願件数では、各国籍(地域)出願

人ともに、自国(地域)の次に米国への出願件数が多いところ、韓国籍出願人は特に

米国への出願を重視している。韓国籍出願人の日本への出願件数は、米国への出願件

数の約 1/5 である(図 4-5、図 4-7)。また、米国への出願人別出願件数上位ランキン

グでも、サムスンディスプレイ(1 位)、LG ディスプレイ(3 位)、サムスン電子(9

位)の韓国企業が入っており、特にサムスンディスプレイの出願件数は突出している

(表 4-11)。

韓国籍出願人は、米国市場の大きさと、米国での訴訟、損害賠償に備えるため、米

国への出願に傾斜していると思われる。

なお、発光部材料に関しては、韓国籍出願人は、米国への出願を重視しているもの

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

の、日本への出願件数は、米国への出願件数の約 1/3 であり、日本にもある程度重点

を置いていることが読み取れる(図 4-3-55(本))。これは、日本の材料メーカーとの

競争を意識した結果であると思われる。

[中国籍出願人の動向]

中国籍出願人は自国への出願を重視している(図 4-5)。中国籍出願人は、韓国籍出

願人ほどには米国への出願を重視していない。自国市場が大きく、そこが主戦場であ

るため自国に注力していると思われる。

素子用材料については、2010 年から 2013 年にかけて中国籍の特許出願ファミリー

件数が急増している(図 4-23)。

製造方法・装置に関しても、中国籍の特許出願ファミリー件数が、2010 年から 2013

年にかけて増加しており、素子用材料だけでなく、製造方法・装置にも注力している

ことが読み取れる(図 4-3-86(本))。

中国籍出願人は、他国(地域)出願人と比べ、大学からの出願の比率が大きい(図

4-8)。素子用材料の論文発表件数においても、中国籍研究者の発表件数が全体の約 3

分の 1 を占めており 2012 年から 2015 年にかけて増加している(図 5-3-21(本))。

(3)照明分野について

有機 EL 照明装置のメーカー別世界市場シェアでは、韓国企業が約 70%とシェアが

極めて高い(図 2-1-8(本))。韓国企業は、有機 EL ディスプレイの製造技術を既に獲

得しており、かかる製造技術を有機 EL 照明装置へ応用可能な状況にあったことから、

照明市場に参入していく技術的障壁が高くはなく、それが現時点での高い市場シェア

に反映していると考えられる。

用途別出願人国籍(地域)別ファミリー件数では、照明用は、日本国籍のファミリ

ー件数が最も多い(図 4-22、図 4-30)。照明用に関する特許出願人別ファミリー件数

上位ランキングでは、10 者中 9 者が日本企業であり(表 4-9)、コニカミノルタ、POLD

等が、照明向けの開発に注力している。

照明用途に関する特許の課題では、長寿命化、発光効率向上、コスト削減が重視さ

れている(図 4-3-116(本))。

2.個別要素技術について

(1)素子用材料

素子用材料の日米欧中韓への特許ファミリー件数では、発光部材料、基板・封止材

料のファミリー件数が多く、増加傾向にある(図 4-3-14(本))。

発光部材料、基板・封止材料に関する国籍(地域)別ファミリー件数では、韓国籍、

中国籍、日本国籍のファミリー件数が多い(図 4-16、図 4-3-23(本))。

また、ファミリー件数は少ないが増加率が大きい技術として、材料の製造・精製が

ある(図 4-3-14(本))。材料の製造・精製に関する国籍(地域)別ファミリー件数で

は、中国籍の件数が多く、注力していることが読み取れる(図 4-16)。

[発光部材料]

発光部材料の日米欧中韓への特許ファミリー件数推移に着目する。

低分子材料では蛍光材料(第一世代発光材料)とりん光材料(第二世代発光材料)

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

がコンスタントに出願されているが、TADF(第三世代発光材料)のファミリー件数が

近年増加している(図 4-3-16(本)、図 4-24)。

蛍光材料とりん光材料に関する日米欧中韓へのファミリー件数では、中国籍、韓国

籍が多く、中国、韓国では第一世代及び第二世代発光材料が研究開発の中心であると

考えられる(図 4-17)。もっとも、米国での登録件数に着目すると、蛍光材料、りん

光材料での日本国籍の登録件数は多いことから、これらの発光材料については日本に

まだ優位性があると考えられる(図 4-3-19(本))。りん光材料では、青色発光材料の

課題のファミリー件数が多い(図 4-3-64(本)、図 4-3-108(本))。

TADF に関する日米欧中韓へのファミリー件数では、日本国籍の件数が多く、日本は

第二世代から第三世代の発光材料に研究開発の軸足を移していると考えられる(図

4-17、図 4-24、表 4-4、表 4-6-3(本))。TADF は、研究者所属機関国籍(地域)別論

文発表件数でも、日本国籍の論文発表が多い(図 5-5)。

発光部材料の高分子材料に関する日米欧中韓へのファミリー件数では、日本国籍と

中国籍の件数が多い(図 4-17)。

有機 EL では基礎研究の果たす役割は大きく、九州大学、山形大学など世界をリード

する研究機関において、有機 EL 材料研究を始めとして先進的な研究開発がされている

(表 5-1、表 5-5-1(本))。

[基板・封止材料]

基板・封止材料の出願では、日本国籍のファミリー件数が最も多い(図 4-16、図

4-3-74(本))。

特に、封止材料の日米欧中韓への特許ファミリー件数に着目すると、課題の長寿命

化の中で、水分・酸素対策が大きな比率を占めており、その中でフィルム封止材料と

薄膜封止材料のファミリー件数が 2010年から 2013年にかけて増加している(図 4-13、

図 4-3-5(本)、図 4-3-22(本)、図 4-3-36(本))。

[駆動回路材料]

駆動回路材料の日米欧中韓への特許ファミリー件数では、酸化物に関するファミリ

ー件数が多く、酸化物に関しては、日本国籍のファミリー件数が多い(図 4-3-24(本)、

図 4-3-25(本))。

(2)製造方法・装置

成膜方法・装置に関する日米欧中韓への特許ファミリー件数推移を見ると、乾式の

蒸着法が 2010年から 2013年にかけてファミリー件数が増加している。湿式の印刷法、

インクジェット法、塗布法は 2010 年から 2013 年でほぼコンスタントに出願されてい

る(図 4-3-42(本))。技術区分別-出願人国籍(地域)別ファミリー件数では、蒸着

法では韓国籍の件数が多い一方で、印刷法、インクジェット法、塗布法では日本国籍

の件数が多い(図 4-21)。

特許の課題(大分類)と要素技術(製造方法・装置)のクロス集計では、湿式と比

べて乾式の方がコスト削減の課題のファミリー件数が大きいことから、乾式ではコス

ト削減がより重要な課題であると認識されている。また、発光効率向上の課題は、湿

式で重要視され、大型化の課題は、乾式で重要視されている(図 4-3-114(本)、図

4-3-115(本))。

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

[湿式法]

湿式に関する出願人別ファミリー件数上位ランキングについては、日本国籍出願人

が上位を占める(表 4-8)。

湿式に関する技術項目として、不溶化の技術は、湿式で多層構造を形成する場合に

下層を溶解させない技術であり、低分子材料の可溶化は、低分子材料を湿式に適用す

る技術であるところ、いずれについても日本国籍のファミリー件数が多い(図 4-21、

図 4-3-89(本))。

さらに、湿式に関するコスト削減に関して詳細に分析するために、特許の課題(コ

スト削減)と要素技術(製造方法・装置-成膜方法・装置)のクロス集計を取った。

印刷法、インクジェット法、塗布法では、工程の容易化一般、製造工程簡略化、歩留

り向上の課題のファミリー件数が多い。湿式製造ラインでは、ロール to ロールのファ

ミリー件数が多く、スループット向上、工程の容易化一般、歩留り向上の課題のファ

ミリー件数が多い(図 4-3-114(本))。ロール to ロールの出願では、日本国籍のファ

ミリー件数が多い(図 4-3-92(本)、表 4-4-32(本))。

(3)素子構造

素子構造の日米欧中韓への特許ファミリー件数では、電子注入・輸送・正孔ブロッ

ク層の構造、基板の構造、光学部材の構造に関する件数が増加傾向にある(図 4-3-26

(本))。上記三つの技術項目の中でも特に光学部材の構造に関しては、日本国籍のフ

ァミリー件数が多い(図 4-19、表 4-6)。

[光学部材]

光学部材の構造の中分類別特許ファミリー件数推移を見ると、偏光フィルム、偏光

板、光散乱層、光学部材の構造一般が、2010 年から 2013 年にかけてファミリー件数

が増加している(図 4-3-38(本))。光学部材の構造の出願人国籍(地域)別ファミリ

ー件数では、日本国籍が、カラーフィルター、偏光フィルム、偏光板、光散乱層、光

学部材の構造一般で一番多い(図 4-19、図 4-26、図 4-3-82(本)、図 4-3-83(本))。

光学部材と一体の開発が可能なタッチパネルの特許ファミリー件数推移を見ると、

2011 年から 2014 年にかけて日本、中国、韓国籍のファミリー件数が増加している(図

4-3-85(本))。

新規な素子構造として発光方式の透過型素子の件数が、2011 年から増加している

(図 4-3-84(本))。

3.新規アプリケーションについて

用途に関する中分類別-出願人国籍(地域)別特許ファミリー件数では、韓国籍、中

国籍の出願は、中小型ディスプレイ用や大型ディスプレイ用などの従来型ディスプレイ

の用途に集中しているのに対して、日本国籍の出願は、照明用、パソコン用、ヘッドマ

ウント用、車載用、デジタルカメラ用等多様な用途への出願がある(図 4-22)。日本で

は、従来型ディスプレイ開発だけではなく新規アプリケーションに向けて開発が行われ

ていることが読み取れる。

[フレキシブル化]

課題に関する大分類別特許ファミリー件数推移では、フレキシブル化が、2010 年から

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第4部

第5部

資料編

第6部

2013 年にかけて約 2.8 倍と大きく件数を増加させている(図 4-12)。要素技術に関する

中分類別特許ファミリー件数推移では、フレキシブル基板構造が 2011 年から 2014 年に

かけて増加している(図 4-3-32(本)、図 4-3-79(本))。

フレキシブル化に対応して、水分・酸素の透過を防ぐバリア性とともに、曲げたとき

の密着性、耐応力性等の特性を向上させるための基板材料や封止材料の開発については、

日本国籍の特許出願が多く先行している(図 4-3-21(本)、図 4-3-23(本)、図 4-3-75

(本)、図 4-3-79(本))。

以上に述べた統計データの分析結果を基にして、次節では、有機 EL 装置について、我

が国の技術的優位性を課題とともに特定し、今後、目指すべき研究開発、技術開発の方

向性を主に事業戦略及び知財戦略の観点から提言として示す。

第2節 提言-日本が取り組むべき課題、目指すべき研究開発、技術開発の方向性

1.日本の技術的優位性は何か

・有機 EL はパネルが全てではない

有機 EL 素子を薄膜トランジスタ(TFT)を用いて駆動させるアクティブマトリックス

方式の有機 EL ディスプレイ(AMOLED)は、液晶に代わる次世代ディスプレイの本命とし

て期待され、我が国では、2000 年代前半に国内の主要電機メーカーがこぞって有機 EL

事業に本格参入し、有機 EL ディスプレイの開発が加速され、2007 年には世界初の有機

EL テレビがソニーから発売されるなど隆盛を極めていたが、2008 年に世界連鎖的に発生

した金融危機(リーマンショック)を端緒として外部環境が大きく変化し、有機 EL パネ

ル製造に対する巨額投資が見送られて、ほとんどの企業がパネル事業から撤退した。

現在日本において、アクティブマトリックス方式の有機 EL パネル開発を行っているの

は、JOLED(中型パネル、印刷方式)や JDI(小型パネル、蒸着方式)などの小数が残る

のみであり、大型パネル開発を目指す日本企業は存在してない 1。

日本の状況とは正反対に、韓国は有機 EL パネル開発に勢いを増しており、日本の材料

メーカーと提携を結び、製造装置などの設備導入も日本から行うことで量産体制を整え

ており、有機 EL テレビ用の大型パネルは LG から、iPhone などのスマートフォン用の小

型有機 EL パネルはサムスンから、ほぼ独占的に供給されているのが現状である 2。

このように有機 EL のパネル開発については、韓国に先行されている状況にあり、いず

れは中国も有機 EL パネルの製造を本格的に行うことが予測されており、資金調達力の差

も勘案すると、残念ながら日本の有機 EL パネル生産技術力に関する地位の低下は今後も

続くものと思われる。

しかしながら、もとより有機 EL はパネル産業だけでなく、材料、部材、製造装置、駆

動系など裾野が広く、日本として大規模投資を必要とするパネル製造に直接手を出さな

くても、それを支える材料、部材、製造装置などで引き続き日本のプレゼンスを大きく

示すことができれば我が国の有機 EL 産業は健全に発展しているといえる。

1 AMOLED 開発を中心とした有機 EL 興亡史については、本編を参照。 2 AMOLED 開発を巡る韓国、中国の動向については、本編を参照。

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第4部

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資料編

第6部

特に、有機 EL テレビについては、単に入力情報を視覚情報として忠実に出力するだけ

でなく、人間の知覚感性に訴えかけることでその強み(奥行き感、コントラスト感、階

調表現力)を引き出すことが可能となることから、パネル自体が画質の全てを決めるの

ではなく、同じパネルを用いても、高画質エンジンによる映像の見せ方(「絵作り技術」)

で差別化を図り価値を付けることが重要である。その点において日本のテレビメーカー

は最高水準にあり、そのブランド力をいかして完成品から収益を上げるビジネスが成立

している 1。

今後、有機 EL 装置市場は、有機 EL ディスプレイ、有機 EL 照明ともに大きく伸びてい

くことが期待され、特に有機 EL ディスプレイの市場は、金額、数量ともに伸びしろが大

きく最も重点を置くべき市場である(図 2-1、図 2-2)。たとえ有機 EL パネル生産が韓国・

中国にシフトしても、彼らの生産力が更に成長すれば、市場が一層拡大し、それらを支

える上流部門(材料、部材、製造装置など)に還元されるという正方向の循環が生まれ

ることを意味するので、我が国にとってはむしろポジティブな評価をすべき一面もある。

・材料、部材、製造方法/装置における独自の強み

我が国は、有機 EL 材料や関連部材、製造方法/装置の開発・供給の面においては、依

然として技術開発力は十分にあり、有機 EL を支える根幹技術においてリードしている

(図 4-16、図 4-19、図 4-20)。

パネルの供給主体がいかに変遷しようとも、我が国は、これまで独自に開発した高水

準の基礎技術を丁寧に守り発展させ、それらの技術を組み合わせ、次なる材料、部材、

製造方法/装置を縷々開発していくという実直かつ確実な基本姿勢(持続的イノベーシ

ョン)をこれからも貫くべきである。

以下は、具体的提言を構成する技術要素について、我が国が独自の強みを有する分野

ごとに、その要点を課題や展望も含めてまとめたものである。

①材料分野

有機 EL 装置において、発光材料を中心とする有機 EL 材料の開発は最重点分野であ

り、これらの材料の組合せが製造レシピとなり、有機 EL 事業全体を大きく左右すると

いっても過言ではない。サムスンディスプレイのスマートフォン向け有機 EL パネルに

しても、LG ディスプレイの大型有機 EL テレビ向けパネルにしても、それらの躍進を

陰ながら支えるのは日本の材料メーカーである。一般に材料開発は実用化されるまで

少なくとも 10 年は掛かるといわれ、一旦デバイス中に採用されれば、後続組からの参

入障壁が高く継続的に利益をもたらすものであるから、先行者利益を多く期待できる。

我が国は元来この分野において高い技術ポテンシャルがあり、基礎研究でも世界をリ

ードしていることから、今後も高い水準で優位性を確保できると予測される(図 4-16、

図 4-23)。

1 例えば、ソニーが 2017 年に発売した有機 EL テレビは、LG ディスプレイ製有機 EL パネルを採用している

が、画面自体を振動させて映像全体から広がる音を作り出しており、液晶テレビではバックライトの存在

などにより構造上困難であった仕様を有機 EL テレビにおいて実現し、さらに独自性を出している。

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資料編

第6部

(発光材料)

発光材料については、発光効率の低い蛍光材料から内部量子効率 100%のりん光材

料に開発及び生産がシフトしているものの、青色のりん光材料については、他の発光

色と比べて高い三重項励起準位を必要とするため発光寿命が短く、ドーパントのみな

らずワイドバンドギャップを有するホスト材料も専用に開発する必要がある。特許出

願動向を見ても、他の色と比べて青色発光材料の開発を課題とするものが多く、今後

もその進展が期待される(図 4-17、図 4-3-19(本)、図 4-3-64(本)、図 4-3-108(本))。

また、現在供給されているりん光発光材料は、イリジウムなどの希少金属を含む有

機金属化合物が用いられていることから高価な材料であり、より安価で効率の高い材

料が求められる。

九州大学の安達教授らの開発した熱活性化遅延蛍光(TADF:Thermally Activated

Delayed Fluorescence)材料は、発光材料の一重項励起準位と三重項励起準位の差を

0.1eV 以下とすることで、従来では不可能であった三重項から一重項への高効率な逆

エネルギー移動(逆項間交差)を安価な芳香族有機化合物を用いて実現するものであ

り、蛍光材料でも内部量子効率 100%を実現する第 3 世代の有機 EL 発光材料として期

待されている。TADF 関連の特許出願及び研究開発については圧倒的に日本が先行して

いる(図 4-24、表 4-4、図 5-5)。

(塗布用材料)

現在の有機 EL 材料は、低分子の蒸着材料を主力としているが、大幅なコストダウン

が可能な湿式法に適した材料の研究が進められている。特許出願動向を見ると、我が

国は、分子設計に多様性があり、印刷用インク化により適した高分子材料の開発に注

力していることが読み取れる(図 4-3-70(本)、表 4-4-11(本))。また、塗布法で多

層構造を形成する場合に下層を溶解させないための材料の出願や低分子材料の可溶化

に関する出願も他国に比べ多くされている(図 4-21)。

(封止材料)

有機 EL 装置の最も大きな課題は長寿命化であり、その中で水分・酸素対策が最も大

きな比率を占めており、有機 EL 装置においては封止技術の改良が重要なテーマである

といえる(図 4-13、図 4-3-5(本))。これまでガラス板封止や缶封止等の中空封止構

造が多用されてきたが、パネルの薄膜化、大型化、フレキシブル化の要求から膜封止

やフィルム封止の開発がされている。また膜封止の主流な材料は SiN であるが、これ

を超える封止材料の開発が急務とされている。特許出願動向を見ると、中空封止構造

の出願に比べ膜封止やフィルム封止の出願が増加している(図 4-3-22(本)、図 4-3-36

(本))。また基板・封止材料の分野での出願は日本が最も多く、(図 4-16、図 4-3-74

(本))、フィルム封止材料では、他国(地域)の 2 倍以上の出願がされており技術的

優位性を保っている(図 4-3-23(本))。

(TFT 用材料)

有機 EL 素子は電流駆動型の素子であるため、高い移動度を持つ TFT が要求される。

そのため、現状では LTPS を用いた TFT と IGZO 系酸化物を用いた TFT が有望視されて

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第5部

資料編

第6部

いる。LTPS は、小型、中型のディスプレイにおいて多用されているが、大型ディスプ

レイに適用した場合、LTPS の製造装置は基板サイズ G6 までには適用できるものの、

それより大きい基板サイズには対応していないため、コスト面の問題を解決する見通

しが立たない。一方、IGZO 系酸化物 TFT については、a-Si TFT の製造ラインがそのま

ま利用でき、基板サイズ G8 以上にも展開可能であることから、コスト面の問題を解決

できる見通しがある。また、IGZO 系酸化物 TFT は、プロセス温度が低く樹脂基板上に

形成できる点において有利とされている。IGZO 系酸化物は日本発の技術であり、IGZO

系酸化物を用いた TFT の主要な特許は日本が保有している。そして酸化物半導体の出

願の多くは日本からされており、技術的優位性を保っている(図 4-3-25(本))。

②部材分野

(光学部材)

有機 EL パネルにおいては、材料、素子構造、光取り出し構造、封止構造の一体開発

が必要であるが、コントラスト改善用の円偏光板や色純度改善用のカラーフィルター

は、パネルへの後付けが可能である。日本は、液晶表示装置において偏光板等の光学

部材で高い市場シェアを示し、かつ他を圧倒する高い技術力を誇ってきた。そして液

晶表示装置で培われた当該技術が有機 EL 装置に適用され、現在有機 EL の市場におい

ても光学部材は高いシェアを誇っている(図 2-2-4(本))。また有機 EL 装置用のほと

んどの光学部材に関する出願は日本が最も多く、技術的優位性を保っている(図 4-19、

図 4-26、図 4-3-82(本)、図 4-3-83(本)、表 4-6)。

(フレキシブル部材)

有機 EL 装置は、液晶表示装置や LED と比べてフレキシブル化が容易であり、この特

性を最大限に利用することにより新たな市場が形成されることが予想されている。そ

のため高効率、長寿命であるとともに、高いフレキシブル特性を有する装置の開発が

行われている。特許出願動向を見ると、他の課題と比べフレキシブル化の課題が急増

しており、フレキシブル装置への高い期待がうかがえる(図 4-12、図 4-3-62(本))。

そして、日本からフレキシブル基板の出願が多くされているとともに(図 4-3-79(本))、

フレキシブル化で必要となるフィルム封止材料では、他国(地域)の 2 倍以上の出願

がされている(図 4-3-23(本))。

(入力部材)

現状の有機 EL 装置では、タッチセンサをパネルの外に設ける方式が採用されている。

このため、パネルへのタッチセンサの後付けが可能であり、上記光学部材同様、日本

の部材技術の強みを発揮することができる。またタッチパネルは光学部材との一体開

発も可能であり、この点においても日本は強みを発揮することが期待できる。現在有

機 EL 表示装置用のタッチパネルの出願は、2011 年から 2014 年にかけて日中韓で増加

している(図 4-3-85(本))。

③製造方法/装置分野

有機 EL 装置は異種材料を薄膜で積層した構造を有するため、その成膜方法としては、

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資料編

第6部

真空環境で材料を加熱、気化させて各層を形成する蒸着方式が主に採用されている。

また、水分・酸素対策のために必要な封止も重要な製造プロセスであり、成膜工程か

ら封止工程までを真空、低湿度の環境下で連続一貫して行うことが求められている。

韓国勢が現在供給している有機 EL ディスプレイパネルは、小型(サムスンディスプ

レイ)、大型(LG ディスプレイ)を問わず真空蒸着法を用いて製造されている。これ

らの製造プロセスでは、日本の製造装置が主に利用されており(第2部第3章有機 EL

製造装置市場(本))、製造装置ベンダーが有するノウハウが歩留り向上のための鍵を

握ることになる。日本の製造装置は、これらのノウハウがハード本体に具現化され、

例えば、基板搬送機構などの精度が高く、技術上のトラブルに対応する支援体制も充

実しており、システム全体として安定した品質が保証されるので、製造装置の分野で

も我が国独自の強みが発揮されている。

④湿式法

有機発光材料は、水分や紫外線などに非常に弱いため、半導体や液晶ディスプレイ

で採用されているフォトリソグラフィ技術を用いて高精細のパターニングを行うこと

ができない。フルカラーの有機 EL パネル製造では、RGB 画素ごとに塗り分けることが

理想であり、現時点では、高精度かつ高精細のシャドウマスクを用いた蒸着方式に頼

らざるを得ない。

しかしながら、このようなマスク蒸着方式では、基板の大型化・薄膜化に伴い、基

板とマスクとの位置合わせを高精度に行う必要があり、これがマスク蒸着方式による

RGB 塗り分けパネルの大型化を難しくする大きな課題である(図 4-3-113(本)、図

4-3-115(本))。

今後、有機 EL 装置のより一層の大型化を実現するには、従来の蒸着法をベースとし

た製造方法ではコスト面で限界があり、湿式法をベースとした製造方法を確立するこ

とが重要である(図 4-3-115(本))。これまでの特許出願の動向を見ても、蒸着法に

重点を置く韓国と比べて、我が国はインクジェット法を始めとして各種湿式プロセス

の開発にも重点を置いて先行している(図 4-21、図 4-28、表 4-8)。

元来、有機 EL 素子の有機層はアモルファス膜で良いことから、容易に湿式法で成膜

することができ、現在のところ、有機 EL ディスプレイについては、RGB 発光部の微細

パターニング形成のためにインクジェット法が高精度かつ大型化の観点から有力視さ

れており、有機 EL 照明については、ダイコート法などが有力である。

湿式法は、下層溶解、膜厚制御、残留溶剤などの発光効率の低下につながる課題が

残るものの、真空プロセスを用いずに大気圧レベルで製造することからコストを大幅

に削減できるとともに、フレキシブル基材との親和性が高いことから有機 EL が有する

本来の特性を最大限にいかすことができ、低コストかつ高付加価値のアイテムを提供

することが可能となる(図 4-3-113(本)、図 4-3-115(本))。

⑤摺り合わせ技術

日本のエンジニアは元来、複合的な技術を最適化して組み合わせる「摺り合わせ」

が得意である。特に、有機 EL 装置の製造においては、各パーツをモジュール化して単

純組立てを行うのではなく、材料特性、部材(積層構造、光取り出し構造、封止構造)、

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本編

目次

要約

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第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

生産プロセスなどに関するパラメータを同時に制御しながら全体調整する必要がある。

有機 EL 装置は摺り合わせ技術の依存度が高い製品であり、日本の技術的優位性はこ

のような摺り合わせの場面においても表れている。

⑥有機 EL 照明

有機 EL 照明装置は、演色性に優れ、目に優しい面発光、フレキシブル化による自由

な形状、発熱が少ない、軽量である等、LED 照明装置にはない優れた特長がある。

これまではガラス基板上に形成されたリジッドな照明装置が市場において主流であ

ったが、今後は、樹脂基板上に形成されたフレキシブルな照明装置へシフトしていく

と予想される。有機 EL 照明を用途とする特許出願は我が国の独壇場であり、今後の新

規アプリケーションの登場により市場が拡大すると、日本企業が強みを発揮する場面

が多くなると予測される(図 2-1-8(本)、図 4-22、図 4-30、表 4-9)。

特に、山形大学の城戸教授等が開発したマルチ・フォトン・エミッション構造は、

電荷発生層を介して発光ユニットを直列に積層する技術であり、発光ユニットを複数

段積層して電流効率(輝度)をほぼ積層倍にし、高輝度と長寿命の両立を可能とする

ものである。

有機 EL 照明は、現在のところ、美術館や博物館といった展示施設における照明や、

商品を自然な色の光で照らす店舗照明が用途の中心であるが、フレキシブル性やシー

スルー性を積極利用して、自動車、航空機、鉄道車両などへの用途や住宅用途に拡大

することが期待されている(図 4-22、図 4-3-79(本)、図 4-3-84(本))。

2.有機 EL バリューチェーンのバスタブ曲線化

有機 EL 事業は、川上(材料・部材・製造装置の開発・供給)、川中(パネル開発・製

造)、川下(製品のマーケティング・販売)というバリューチェーンから成るが、我が国

の有機 EL 産業は、川上から川下までをほぼ自前で一貫して行うフルセット・垂直統合型

のビジネスモデルにより事業を進めようとして、川中の量産場面において大きな壁にぶ

つかった。

このような従来型のビジネスモデルは、有機 EL 装置を液晶ディスプレイなどと同列に

FPD の範疇で捉え、過去の成功体験に基づいて、特に川中のパネル開発・製造において

最大の付加価値を生み出そうとするものである。

しかしながら、パネル開発・製造においては、今後、韓国・中国・台湾の間で熾烈な

コスト削減競争が繰り広げられることが予想され、川中領域の収益性はますます相対的

に低下し、有機 EL バリューチェーンの収益性を表す曲線はバスタブのような形状になる

と予測される(「スマイルカーブ化」ともいわれている)。

今後、日本企業が有機 EL 開発競争において収益の最大化を図るには、従来型のビジネ

スモデルに固執してバスタブ曲線の底にある川中領域において重点事業戦略を立てるよ

りも、バスタブ曲線の左側・右側にある川上・川下領域において収益を上げるように事

業ポートフォリオを組み替えることが求められる。

もっとも、このことは川中領域(パネル開発・製造)を無視することを意味するので

はなく、川中は川下からのユーザーニーズや仕様水準にハード面で応えるとともに、川

上に対して製造プロセス上の技術的課題を発信するという重要な橋渡し役を担うもので

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第6部

あるから、日本企業が川中領域から完全に手を引いてしまうような状態は避けるべきで

ある。

有機 EL の研究開発、技術開発の方向性を示すに当たっては、このようなバスタブ曲線

化したバリューチェーンを意識して事業戦略を策定することの重要性が強調されるべき

である。すなわち、以下に示すように、バリューチェーンの川上、川中、川下領域の順

で事業戦略を具体的に提言し、併せて有機 EL の知財戦略をまとめて提言する。

なお、各提言についての詳細な説明は、本編に記載されており、併せて参照されたい。

提言1《川上事業戦略~技術的優位性の維持・発展~》

・持続的イノベーションを通じて事業全体の主導権を握る。

我が国は材料・部材・製造装置などの有機 EL を支える根幹技術において優位性を確保して

おり、今後も持続的なイノベーションにより更なる技術水準の向上を目指すべきである。

発光材料については、「熱活性化遅延蛍光(TADF)材料」の基礎技術を発展させ、ゲスト、

ホスト材料とも広がりのある分子設計で新規材料を探索していくべきである。

光学部材については、今後も日本の高い市場シェアを維持し、これまで培った強みをいか

して、より高機能化、フレキシブル化、機能複合薄型化に向けた技術改良を推進すべきであ

る。

製造装置の分野では、設備導入時だけではなく、設備本格稼働段階においても継続的に関

与し、製造レシピのソリューション化を通じて、長期にわたってベンダー側利益が発生する

ようなノウハウ管理メカニズムを構築することが重要である。

・融合研究・産学連携により社会実装化を目指す。

材料開発が大きな要素となる有機 EL では、大学などの研究機関における先進的な基礎研究

が果たす役割は大きい。有機 EL 材料は「有機半導体」としての特性に注目して研究開発が行

われており、その分子設計やゲスト・ホスト材料の組合せ等については、有機材料化学から

のアプローチと物性物理学からのアプローチが交錯する領域において、学際的な協働を通じ

た融合研究の重要性が強調されるべきである。また、大学発ベンチャーも、産学間の橋渡し

役として期待されている。

有機 EL 産業界は、このような大学や大学発ベンチャーからの先端技術の目利きを行い、将

来有望な技術シーズを取り込んで独自技術と摺り合わせて、社会実装することが求められる。

提言2《川中事業戦略~Game Changer としての湿式パネル開発~》

・過当競争に埋没しない特色ある事業展開により主役交代に期待する。

多大な投資を必要としない湿式をベースとした生産プロセスの開発を他国に先駆けて実現

すべきである。

ただし、湿式をベースとした生産プロセスについては、有機 EL 装置の一部分が蒸着法に頼

らざる得ない現時点では、大量生産により大幅なコストダウンを期待するのは現実的ではな

く、むしろ、現時点では、蒸着法と湿式法との棲み分けを認識しつつ、少量でも多品種にオ

ンデマンドで対応できるという湿式の強みをいかし、実績を積み重ねていくことが大事であ

る。

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第6部

湿式型プロセスは我が国が先行開発しており、日本の得意な“摺り合わせ技術”を基にし

て最適設計し、その核心部分をソリューション化してライセンスすることにより主導権を握

れば、パネル生産の覇権争いに大幅な変動が生じる可能性を秘めており、川中領域において

優先して注力すべきものである。

提言3《川下事業戦略》

・有機 EL のマーケティング

有機 EL のマーケティングでは、顧客に対して単に技術力の向上をアピールするだけではな

く、その価値をブランディングし、プレミアム感に結び付くビジネスモデルを提案する力が

求められる。

市場拡大には、FPD 製品として単独でハード供給するアプローチから、未来の生活スタイ

ルに埋め込まれたシステムとして提案するアプローチへ移行すべきである。

・有機 EL の価値 ~Visual Flexible Interface~

今後の有機 EL は、フレキシブルデバイスとしてのハード面と IT のソフト面を融合させた

システム化がポイントとなり、人と物と情報をつなげる Visual Flexible Interface(VFI)

としての価値を重視すべきである。設計自由度の高さ(フリーフォーム性、薄型軽量性)を

最大限にいかし、人間の視覚感性を刺激しコミュニケーション環境の進化をもたらす VFI 実

現システムが提案されるべきである。

・有機 EL 照明 Design Driven Innovation により新しい光空間を提案する。

有機 EL 照明では、リジッド装置からフレキシブル装置へシフトして、日本企業が強みを発

揮する場面が多くなると予測される。さらに、フラットパネルを単に曲げるのではなく、三

次元形状に合わせた 3D 有機 EL 照明についても、湿式法などの生産技術の向上に伴って、そ

の登場が期待される。

コスト、寿命を改善し、LED 照明にはない優れた特長をいかしながら、アプリケーション

領域が広がるように Design Driven Innovation を通じて、多様な価値観を持つ業種と協働し

つつ美的側面を追求して、新しい光空間の提供がなされるべきである。

提言4《有機 EL 知財戦略》

・川上分野の知財戦略

有機 EL 材料、部材、製造装置など、他国と比べて技術的優位性を有している川上分野では、

各技術要素の特性に応じて知的財産権の保護を強化すべきである。

材料、部材の分野では、化合物や構造に関する特許権の取得を通じて保護強化を図るのが

最適であり、今後も特許出願を積極的に行い、幅広く権利取得すべきである。

製造装置の分野では、製造ノウハウが核心要素であり、一般に特許出願という手法には馴

染まず秘匿管理される場面が多い。製造装置の設備導入時だけではなく、本格稼働段階にお

いても継続的に関与し、長期にわたってベンダー側利益が発生するようなノウハウ管理メカ

ニズムを構築することが求められる。そのためには、以下で述べる一体化ソリューションの

提供を通じて、当該ソリューションの中で絶えず技術革新を起こすことにより、製造装置ユ

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第6部

ーザーのベンダー依存度を高めるようにすべきである。

・一体化ソリューションの提供

従来のように材料、部材、製造装置、生産プロセスを別々に開発提供するのではなく、こ

れらを一体化したソリューションの提供が重要である。例えば、材料メーカー、部材メーカ

ーと協働して、材料(化学構造、組成、純度、その精製方法などは秘匿化すべきである)、部

材、生産プロセスなど、できるだけ多くの技術要素に係る相互依存パラメータをパッケージ

化してソリューションとして商品開発を行い(コア領域の設定)、技術開発力のない弱小のパ

ネルメーカーにもパッケージ商品を提供してビジネスチャンスを与えることにより、コア領

域の周辺に多くのパートナーを引き寄せ、コア領域の内部でパッケージをバージョンアップ

して、コア領域から周辺領域に対して影響力を行使することにより、有機 EL 事業全体をコン

トロールできるようにすべきである。そのためには、コア領域に関与する協働チームの知的

財産権を整理、一括管理し、その対価を協働チームのメンバーに継続的に配分できるように

すべきである。

・大学発特許の質・量面での充実化

大学などの基礎研究から生まれた有機 EL の技術シーズについては、学術論文発表だけに

とどまらずに特許出願につなげるように研究者の意識改革を行うことが重要である。また、

有機 EL 関連研究プロジェクト終了後の特許出願・維持状況、権利行使状況等についてはその

現状を把握して、費用負担の限界などの問題点を整理し、将来有望な有機 EL 技術に対する支

援の在り方について検討がなされるべきである。