3次元建築cad導入でbim戦略を加速 “付加価値創造型の建築...

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株式会社 安井建築設計事務所 活用事例 Revit ® Architecture 3次元建築CAD導入でBIM戦略を加速 “付加価値創造型の建築設計事務所”を めざす BIMは、建築設計事務所の仕事を単発的なも のから継続的なものへと変化させるもので もあるのです。一度つかんだ顧客を放さず、 建設後の接触の過程で、新たなビジネスチャ ンスが生まれる可能性も出てくるでしょう。 ─ 株式会社 安井建築設計事務所 代表取締役社長 佐野 吉彦 氏 株式会社 安井建築設計事務所 代表取締役社長 佐野 吉彦 氏 BIM:技術はクリア、思想に関心 2次元CADや紙図面が主流だった日本の建築設計事務所で、本格 的な3次元CADの導入が始まりつつある。これは、3次元CADに よって仮想的な建物を作り、意匠設計や実施設計、設計図書の作成 などを行うことで建設におけるすべてのプロセスを効率化できる 「ビルディング インフォメーション モデリング(BIM)」に建築業界 が大きく期待しているためだ。そんな中、安井建築設計事務所は 3次元建築CADを導入し、先進的な取り組みを行っている。 安井建築設計事務所 代表取締役社長 佐野 吉彦 氏は、「以前は、 BIMを実現するテクノロジー要素について議論が交わされていま したが、いまでは建設プロセス全体を統合する手法や思想に、関心 が移ってきています。つまり、現場で活用できる技術が整ったこと で、本質的な話ができるようになったわけです」と話す。佐野氏は、 このことを米国建築家協会(AIA)の全国大会に参加した際に肌で 感じた。こうした建築家の関心の高まりが、同社のBIMへの取り組 みを強力に後押しする。 「3次元CADがリアルなパースを作るためのツールとして考えら れていたのは昔の話。いまでは建設プロセスを統合し、業務全体の 効率化を図るために、経営者が積極的に関与し、導入を指揮してい く設計、施工の基幹システムという性格に変わりつつあるのです」 (佐野氏) 安井建築設計事務所にとって、Revitの導入は、紙の製図を2次元 CADに切り替えたときよりハードルが低かったという。2005年 春に「Autodesk Revit Building(Revit Architectureの旧製品名)」 をテスト導 入し、2 0 0 6 年 に は B I M 対 応 の 3 次 元 C A D「 R e v i t Architecture」を導入。2007年10月には、設計者の7割に対する 講習を完了させた。 「社内利用ではすでに、企画提案や基本設計での活用はほぼ完成 の域に達しています。3年以内には施工に直結するほとんどの実施 設計で使えるようにする計画です」(佐野氏)

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  • 株式会社 安井建築設計事務所活用事例

    Revit® Architecture

    3次元建築CAD導入でBIM戦略を加速“付加価値創造型の建築設計事務所”をめざす

    BIMは、建築設計事務所の仕事を単発的なも

    のから継続的なものへと変化させるもので

    もあるのです。一度つかんだ顧客を放さず、

    建設後の接触の過程で、新たなビジネスチャ

    ンスが生まれる可能性も出てくるでしょう。

    ─ 株式会社 安井建築設計事務所代表取締役社長佐野 吉彦 氏

    株式会社 安井建築設計事務所 代表取締役社長 佐野 吉彦 氏

    BIM:技術はクリア、思想に関心

    2次元CADや紙図面が主流だった日本の建築設計事務所で、本格

    的な3次元CADの導入が始まりつつある。これは、3次元CADに

    よって仮想的な建物を作り、意匠設計や実施設計、設計図書の作成

    などを行うことで建設におけるすべてのプロセスを効率化できる

    「ビルディング インフォメーション モデリング(BIM)」に建築業界

    が大きく期待しているためだ。そんな中、安井建築設計事務所は

    3次元建築CADを導入し、先進的な取り組みを行っている。

    安井建築設計事務所 代表取締役社長 佐野 吉彦 氏は、「以前は、

    BIMを実現するテクノロジー要素について議論が交わされていま

    したが、いまでは建設プロセス全体を統合する手法や思想に、関心

    が移ってきています。つまり、現場で活用できる技術が整ったこと

    で、本質的な話ができるようになったわけです」と話す。佐野氏は、

    このことを米国建築家協会(AIA)の全国大会に参加した際に肌で

    感じた。こうした建築家の関心の高まりが、同社のBIMへの取り組

    みを強力に後押しする。

    「3次元CADがリアルなパースを作るためのツールとして考えら

    れていたのは昔の話。いまでは建設プロセスを統合し、業務全体の

    効率化を図るために、経営者が積極的に関与し、導入を指揮してい

    く設計、施工の基幹システムという性格に変わりつつあるのです」

    (佐野氏)

    安井建築設計事務所にとって、Revitの導入は、紙の製図を2次元

    CADに切り替えたときよりハードルが低かったという。2005年

    春に「Autodesk Revit Building(Revit Architectureの旧製品名)」

    をテスト導入し、2006年にはBIM対応の3次元CAD「Revi t

    Architecture」を導入。2007年10月には、設計者の7割に対する

    講習を完了させた。

    「社内利用ではすでに、企画提案や基本設計での活用はほぼ完成

    の域に達しています。3年以内には施工に直結するほとんどの実施

    設計で使えるようにする計画です」(佐野氏)

  • 〒104-6024 東京都中央区晴海1-8-10 晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーX 24F

    〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪MTビル2号館3F

    TEL : 0570-064-787(オートデスク インフォメーション センター)

    オートデスク株式会社 www.autodesk.co.jp

    BSD205-0807(B)

    ※Autodesk、Revitは、米国Autodesk,Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。その他記載の会社名、ブランド名および商品名は各社の商標または登録商標です。※記載事項は、予告なく変更することがございます。予めご了承ください。©2008 Autodesk, Inc. All rights reserved.

    Revitの活用で“付加価値創造型”のビジネスを

    3次元CADやBIMの導入による効果は付加価値の

    創造̶̶。安井建築設計事務所は、3次元CADと

    BIMの導入によって、建築の専門家でない顧客とビ

    ジュアルな3次元画像を見ながら話を進められる

    ようにすることが、より深い信頼関係の構築に結び

    つくと期待している。

    「世の中には安ければ売れる商品もありますが、建

    築は単なるハコではありません。顧客に夢を持って

    もらえたり、安心を感じてもらえたりできれば、そ

    の部分こそわれわれの付加価値になるはずです」

    (佐野氏)

    また、オフィスや商業施設、工場などを建てる顧客

    は、建築を「利益を生むための手段」であると考え

    る傾向が強い。こうした顧客に対してBIMのデー

    タを提示すれば、建設時に顧客が建築物から利益

    を生み出せるかどうかを詳細に検討することがで

    きる。

    さらに、BIMは建物が存在する限り継続的にバー

    ジョンアップを繰り返すため、顧客の戦略に応じて

    メンテナンスしていくことも可能だ。

    「BIMは、建築設計事務所の仕事を単発的なものか

    ら継続的なものへと変化させるものでもあるので

    す。一度つかんだ顧客を放さず、建設後の接触の過

    程で、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性も

    出てくるでしょう」(佐野氏)

    フロントローディングに最適

    建築基準法の改正もあり、設計事務所は、確認申請

    の時点で徹底的に絞り込んだ設計をまとめきる「フ

    ロントローディング」が重視される。安井建築設計

    事務所では、3次元CADやBIMを使って設計プロセ

    スを短期化し、早期の顧客合意と設計図書の整合

    性を確保することで、フロントローディングへの対

    応に大きな効果を発揮すると考えている。

    また、建築が複雑化するにつれて、それをチェック

    する役所側にも高度な建築知識が要求されるよう

    になったいま、3次元によるわかりやすさは大きな

    魅力になる。実際に、米国では米国政府調達庁

    (GSA)が3次元モデルによって設計データを提出

    することが義務づけられることになるなど、海外で

    は3次元モデルによる設計の意思疎通は広がりを

    見せている。

    安井建築設計事務所では、こうした動きと歩調を合

    わせながら、3次元CAD、BIMの活用を進めていく

    計画だ。

    導入製品/ソリューション●Revit Architecture

    導入目的●BIMアプローチへの対応●建設プロセスの効率化

    導入ポイント●BIMの実現を経営戦略に位置付けた

    国内先進ユーザ

    導入効果●企画提案や基本設計でのBIM活用

    今後の展開●3年以内に実施設計で活用

    会社概要

    株式会社 安井建築設計事務所

    本   社:大阪府大阪市中央区島町2-4-7

    代 表 者:代表取締役社長 佐野 吉彦

    設   立:1951年1月16日(創設:1924年4月1日)

    資 本 金:8,000万円

    従業員数:298人(2008年4月現在)

    事業概要:建築の設計監理、土木の設計監理、

    都市の設計管理、

    マネジメント・コンサルタント業務、

    コンピュータ業務 他

    城南学園第二学舎:平成20年2月竣工 撮影:エスエス大阪

    実施設計図面作成

    基本設計図面作成

    安井建築設計事務所が掲げるフロントローディングのイメージ