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1 生物薬剤学講座 児玉庸夫 3年次前期 専門科目群Ⅰ (必修科目) 2単位 医療薬剤学Ⅰ 6回目

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生物薬剤学講座

児玉庸夫

3年次前期 専門科目群Ⅰ(必修科目) 2単位

医療薬剤学Ⅰ6回目

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医療薬剤学Ⅰは医薬品の有効性と安全性を基礎から理解するための学問

有効性 安全性

医薬品

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講義の内容(1)

• 第1回 薬物の生体内運命

• 第2回 薬物の副作用(薬物有害反応)(小テスト)

• 第3回 薬物の循環系移行と排泄(小テスト)

• 第4回 薬物の投与方法と経口投与製剤(小テスト)

• 第5回 薬物の吸収と影響因子(1) (小テスト)

• 第6回 薬物の吸収と影響因子(2) (小テスト)

• 第7回 薬物の運命、副作用(薬物有害反応)、及び吸収のまとめと演習(中間テスト)

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講義の内容(2)

• 第8回 薬物の生体内分布(小テスト)

• 第9回 薬物の体液中での存在形態と分布容積(小テスト)

• 第10回 薬物代謝と薬効(小テスト)

• 第11回 薬物の排泄(小テスト)

• 第12回 薬物の相互作用(小テスト)

• 第13回 演習

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第6回 薬物の吸収と影響因子(2)

• 非経口投与後の薬物吸収について、部位別に説明できる。薬物の吸収に影響する因子を列挙し、説明できる

• 薬剤師国家試験

医2A-b、吸収

医2A-f、薬物動態の変動要因

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医薬品には目的に応じた剤形と投与経路がある

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吸入

舌下錠

バッカル錠

坐剤

内用剤

肝臓

崩壊→分散→溶解

消化管

組 織

作用部位

腎臓

糞中排泄

尿中排泄

代 謝

非経口投与された薬物の主な吸収部位

血 液

調剤臨薬動

口腔、鼻、肺眼、膣

直腸

経皮

筋注・皮下注

膣錠

点眼

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鼻吸入:局所作用又は全身作用を期待

局所作用アレルギー性鼻炎など

全身作用ペプチド性医薬品

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鼻からの薬物吸収(1)• 鼻腔内への薬物投与は、アレルギー性鼻炎など

局所作用を目的として、外用剤で投与されることが多い

• 全身作用を目的としたペプチド性医薬品は、経口投与により大きく代謝を受けるため、鼻腔粘膜を利用して、外用剤で投与される(酢酸デスモプレシン:デスモプレシン点鼻液(中枢性尿崩症)、酢酸ブセレリン:スプレキュア点鼻液(子宮内膜症、子宮筋腫)、酢酸ナファレリン:ナサニール点鼻液(子宮内膜症、子宮筋腫) )

• 酢酸デスモプレシンはペプチド性薬物であるが、鼻粘膜から吸収されるため、点鼻剤として中枢性尿崩症の治療に用いられている わ生薬

新薬

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鼻からの薬物吸収(2)

• 鼻腔粘膜からの薬物吸収は、一般にpH分配仮説に従う受動拡散(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す

• 経口投与と異なり、肝臓での初回通過効果を回避できる

• 分子量1000程度までの薬物が、吸収される

わ生薬新薬

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口腔からの薬物吸収(1)• 口腔粘膜に適用される剤形として、舌下錠(内用

薬)、バッカル剤(内用薬) 、及びトローチ剤(外用薬)があり、全身作用又は局所作用の目的で投与される

• 口腔粘膜を透過した薬物は、粘膜下組織の静脈を経て全身循環に移行する

• 口腔粘膜からの薬物吸収は、一般にpH分配仮説に従う受動拡散(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す

• 口腔粘膜から吸収された薬物は、肝臓を経ることなく直接、全身循環に到達するため、肝初回通過効果を回避できる

わ生薬新薬

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口腔からの薬物吸収(2)

• 舌下錠は全身作用を目的として、舌下に適用し、口腔粘膜から薬物を速やかに吸収させる

• 肝初回通過効果の回避と、迅速な薬効発現が期待される(ニトログリセリン(狭心症発作)、硝酸イソソルビド(狭心症発作)) わ生薬

新薬

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口腔からの薬物吸収(3)• バッカル剤(内用薬)は、局所作用を目的

として投与されている(ストレプトキナーゼ、アズレンスルホン酸、キモトリプシン)

• バッカル剤(内用薬)は、頬と歯肉の間ではさみ、徐々に薬物を放出させて口腔粘膜から吸収される

わ生薬新薬

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口腔からの薬物吸収(4)• トローチ剤(外用薬)は、口中で徐々に溶

解または崩壊させて、口腔・咽頭粘膜における殺菌、収斂、消炎など局所作用を目的として投与されている

わ生薬新薬

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口腔からの薬物吸収(5)• 局所作用を目的とする薬剤に、口腔粘膜付着錠(トリア

ムシノロンアセトニド:アフタッチ錠)、口腔内噴霧型粘膜付着剤(プロピオン酸ベクロメタゾン:サルコートカプセル)がある

• 全身作用を目的とする薬剤に、口腔内貼付錠(ニトログリセリン:バソレーターRB錠、硝酸イソソルビド:ニトロフィックス錠)、舌下錠(ニトログリセリン)がある。

• 禁煙補助剤のニコチンガム(ニコレット)は、全身作用を目的として口腔粘膜からニコチンを吸収させるための製剤である

• ニトログリセリンは初回通過効果が大きいため、非経口投与製剤が使用されている

• ニトログリセリンの舌下錠は、口腔粘膜から速やかに吸収させることを目的とした錠剤である わ生薬

新薬

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肺からの薬物吸収(1)• 肺からの薬物吸収は肺胞で行われ、良好

である

• 肺からの薬物吸収には、吸入剤(エアゾール剤、ドライパウダー剤)あるいは噴霧剤が利用される

• 10μm以上の粒子は、鼻腔から気管内で沈着され、肺胞に到達できない

わ生薬新薬

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肺からの薬物吸収(2)• 肺からの薬物吸収は、一般に脂溶性に依

存した受動輸送(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す。一部に、ペプチドトランスポーター(共輸送による二次性能動輸送)などの担体輸送機構も介在する

• 肺から吸収された薬物は、胃腸管、肝臓での初回通過効果を回避することができる

わ生薬新薬

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肺からの薬物吸収(3)• 局所作用を目的とする薬剤に、気管支喘

息用吸入剤がある(但し、薬物は気管支に留まる)

わ生薬新薬

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直腸からの薬物吸収(1)• 坐剤による直腸からの薬物吸収は、pH分配仮

説に従う単純拡散により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す

• 直腸粘膜からの薬物の吸収はpH分配仮説に従うので、酸性薬物はpkaが小さいほど吸収されにくい

• 坐剤による直腸下部で吸収された薬物は、門脈を経由せずに全身循環に移行するため、肝臓での初回通過効果を回避することができる

• 坐剤を利用した直腸内投与は、経口投与が困難な患者や乳児にも薬物投与ができる利点がある わ生薬

新薬

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直腸からの薬物吸収(2)• 全身作用を目的とした坐剤に、抗炎症鎮

痛薬(ジクロフェナクナトリウム:ボルタレン坐剤など)、鎮痛解熱薬(アセトアミノフェン:アンヒバ坐剤など)、抗悪性腫瘍薬(テガフール:フトラフール坐剤など)などがある

• 局所作用を目的とする坐剤に、痔疾患治療薬(シコンエキス・アミノ安息香酸エチル・塩酸ジブカインなど配合剤:ボラギノールN坐剤、トリベノシド・リドカイン配合剤:ボラザG坐剤など)などがある わ生薬

新薬

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膣からの薬物吸収(1)• 膣粘膜からの薬物吸収は、脂質溶解拡散

に加え、水性細孔を介した拡散に依存した受動輸送(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す。

• 膣から吸収された薬物は、胃腸管、肝臓での初回通過効果を回避することができる

わ生薬新薬

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膣からの薬物吸収(2)• 全身作用を目的とした薬剤に、ホルモン補

充療法(エストリオール:ホーリンV膣錠(更年期障害))などがある

• 局所作用を目的とする薬剤に、膣カンジダ症治療薬(ミコナゾール:フロリード膣錠、クロトリマゾール:エンペシド膣錠、硝酸イソコナゾール:アデスタンG膣錠)などがある

わ生薬新薬

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眼からの薬物吸収(1)

・点眼により結膜嚢に投与された薬物は、吸収されずに前眼部に作用する場合、主に角膜から吸収されて眼球内部に移行する場合、強膜を介して眼球深部へ吸収される場合、結膜から全身循環へ移行する場合がある

点眼

わ生薬

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眼からの薬物吸収(2)• 脂溶性薬物の角膜を介した透過は良好で

あるが、水溶性薬物では制限を受ける

• 点眼された薬物は涙液で希釈され、大部分が1~2分のうちに鼻涙管に排泄される(鼻涙管に排泄された薬物の一部は、消化管に移行し吸収される)

わ生薬新薬

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眼からの薬物吸収(3)• 局所作用を目的とする薬剤に、アレルギー

性結膜炎治療薬(フマル酸ケトチフェン:ザジテン点眼液など)、結膜炎治療薬(フルオロメトロン:フルメトロン点眼液など)、緑内障治療薬(マレイン酸チモロール:チモプトール点眼液、ラタノプロスト:キサラタン点眼液など)、白内障治療薬(ピレノキシン:カタリン点眼液など)などがある

わ生薬新薬

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皮膚からの薬物吸収(1)• 皮膚の角質層は、一般組織に比べて細胞間隙

で占められる割合が多く、さらにこの細胞間隙は層状の脂質二重膜によって満たされ、薬物吸収のバリアとしての役割を果たしている

• 表皮の最も外側は角質層とよばれ、薬物の皮膚透過過程の律速部位となる

• 薬物の皮膚透過は、薬物、基剤、皮膚それぞれの物理化学的特性によって決定され、これら相互の関係を調節することで、経皮吸収の改善が図られる

• 薬物の皮膚透過は、受動輸送(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す

わ生薬新薬

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皮膚からの薬物吸収(2)• 皮膚は、真皮上部に血管、リンパ管が走っ

ているので、皮膚を透過してきた薬物はここで全身循環に移行する

• 皮膚から吸収された薬物は、胃腸管、肝臓での初回通過効果を回避することができる

わ生薬新薬

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D・K・⊿CL (1)

J :薬物の単位面積当たりの吸収(透過)速度P :皮膚透過係数D :皮膚内での薬物拡散係数K :皮膚と基剤間の分配係数(皮膚/基剤間分配係数)

L :角質層の厚さ⊿C :膜の両側の薬物濃度差(シンク条件では基剤中薬物濃度)

薬物の皮膚での透過過程は、脂質への溶解拡散に従う。(2)式より、皮膚透過係数(P)は、薬物の脂溶性、すなわち、油/水分配係数に比例することが判る

J=

わ生薬新薬

皮膚からの薬物吸収(3)

D・KL (2)P=

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皮膚からの薬物吸収(4)

皮膚での薬物は、角質層を通過する経皮膚吸収(細胞内ルート、細胞間ルート)、及び毛孔・汗腺等を通過する経付属器官吸収を受ける。汗腺や毛穴などの付属器官では、角質層実質に比べ薬物が著しく透過しやすいが、有効面積は少ないため、吸収の寄与率は低い

わ生薬新薬

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皮膚からの薬物吸収(5)

脂溶性薬物は、経皮膚吸収(細胞間ルート)により、角質細胞の細胞間隙の脂質部(親油性領域)を通って吸収される

わ生薬新薬

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皮膚からの薬物吸収(6)

水溶性薬物は、経皮膚吸収(細胞内ルート)の角質細胞の実質-細胞間隙の親水性領域、細胞間隙脂質二重層の水に富んだ部分(親水性領域) 、あるいは経付属器官ルート(親水性領域)を経て吸収される

わ生薬新薬

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・全身作用を目的とした薬剤に、狭心症、更年期障害、気管支喘息、癌性疼痛などの治療、禁煙補助を目的とするものなどがある

・局所作用を目的とする薬剤に、消炎・鎮痛、湿疹・皮膚炎の治療を目的とするものなどがある

皮膚からの薬物吸収(7)

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皮膚からの薬物吸収(8)• 基剤として、水溶性の有機溶媒を用いると、

皮膚中の薬物濃度が高まる

• 密封療法(ODT)により、薬物の吸収性が向上する

• 製剤添加物に経皮吸収促進剤を使用することにより、薬物の皮膚透過が高まる

• 経皮吸収治療システム(TTS)は、全身作用を期待して経皮投与する薬物について、皮膚からの吸収を制御するものである(ニトログリセリン:ニトロダームTTS、ニコチン:ニコチネルTTSなど) わ生薬

新薬

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注射部位(筋肉内注射、皮下注射)からの薬物吸収(1)

・皮下注射や筋肉内注射では、投与された薬物が直接、全身循環に移行する・筋肉内注射は、筋層内に薬液が注入される・皮下注射は、皮膚と筋層の間の皮下組織(脂肪組織と結合組織)に薬液が注入される

わ生薬新薬

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注射部位(筋肉内注射、皮下注射)からの薬物吸収(2)

• 皮下注射の吸収速度は、筋肉内注射の吸収速度に比べて遅い

• 皮下注射もしくは筋肉内注射された薬物は、投与部位に分布する毛細血管や毛細リンパ管から吸収されるため、吸収率は100%近くになり、投与された薬物が全身循環に移行した割合を示すバイオアベイラビリティ(生物学的利用能、Fで示される)は高い

• 注射部位の組織壊死などを避けるため、皮下注射は通例等張の水溶液で、薬液量は1mL以下が望ましいが、5mL程度まで可能である。筋肉内注射は、水溶液、油溶液、懸濁液で、薬液量は通例4mL以下である

わ生薬新薬

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注射部位(筋肉内注射、皮下注射)からの薬物吸収(3)

• 筋肉内注射もしくは皮下注射された水性注射剤の場合、吸収性に対する薬物の油/水分配係数の影響は少なく、注射投与部位での拡散速度は薬物の分子サイズに依存するため、分子量が大きくなるほど吸収は遅い

• 分子量の大きな薬物は(分子量が5000以上)、毛細血管壁の通過が困難なため(血管内皮細胞の間隙を通過しにくい)、一部はリンパ系に移行する(吸収される)

わ生薬新薬

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注射部位(筋肉内注射、皮下注射)からの薬物吸収(4)

• 筋肉内注射もしくは皮下注射された組織中での拡散速度や毛細血管の透過速度に比べて、血流速度が小さい場合には、投与部位からの吸収速度は血流速度の影響を受ける(例えば、歯科用塩酸プロカイン注と塩酸エピネフリンを併用すると、血流速度が低下するためプロカインの吸収が遅延し、局所麻酔効果が持続する)

わ生薬新薬

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注射部位(筋肉内注射、皮下注射)からの薬物吸収(5)

• 注射部位で、薬物と組織タンパクが結合すると、薬物吸収が遅延することがある(ジアゼパム:セルシン注の筋肉内注射など)

• 皮下注射や筋肉内注射は、薬物の吸収速度を減少させると作用の持続化が可能となる(インスリンの各種皮下注射では、溶解度が異なる微細結晶を懸濁させ、溶解過程を吸収の律速にすることで、異なる作用時間が得られる)

わ生薬新薬

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注射部位(筋肉内注射、皮下注射)からの薬物吸収(6)

• 油性注射液は、注射部位にデポ(液溜り)を形成し、組織中に薬物を徐々に放出して作用が持続する。水への移行性が少ない薬物は、リンパ系が主な吸収経路になりうる(黄体ホルモンのカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン:プロゲデポー注、エナント酸テストステロン:エナルモンデポー注など)

• 油性懸濁液は、薬物の物性によって放出のプロセスが異なる

わ生薬新薬

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注射部位(筋肉内注射、皮下注射)からの薬物吸収(7)

• 作用の持続化を目的として、生体内分解性高分子からなるマトリックスに薬物を分散させ、皮下注射される製剤が開発されている。前立腺癌治療薬(酢酸リュープロレリン:リュープリン注) は、皮下注射されると、生体内分解性高分子(乳酸・グリコール酸重合体)の分解に伴ってリュープロレリンが約1カ月間にわたり、一定速度で組織中に放出される

わ生薬新薬

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第6回講義の結論(1)

• 鼻腔粘膜からの薬物吸収は、一般にpH分配仮説に従う受動拡散(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す

• 鼻腔粘膜からの薬物吸収は、経口投与と異なり、肝臓での初回通過効果を回避できる

• 鼻腔粘膜からの薬物吸収は、分子量1000程度までの薬物が、吸収される

わ生薬新薬

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第6回講義の結論(2)

• 口腔粘膜を透過した薬物は、粘膜下組織の静脈を経て全身循環に移行する

• 口腔粘膜からの薬物吸収は、一般にpH分配仮説に従う受動拡散(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す

• 口腔粘膜からの薬物吸収は、肝臓での初回通過効果を回避できる

わ生薬新薬

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第6回講義の結論(3)

• 肺からの薬物吸収は肺胞で行われ、良好である

• 肺からの薬物吸収は、一般に脂溶性に依存した受動輸送(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す。一部に、ペプチドトランスポーター(共輸送による二次性能動輸送)などの担体輸送機構も介在する

• 肺から吸収された薬物は、胃腸管、肝臓での初回通過効果を回避することができる

わ生薬新薬

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第6回講義の結論(4)

• 坐剤による直腸からの薬物吸収は、pH分配仮説に従う単純拡散により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す。

• 坐剤による直腸下部で吸収された薬物は、門脈を経由せずに全身循環に移行するため、肝臓での初回通過効果を回避することができる

• 坐剤を利用した直腸内投与は、経口投与が困難な患者や乳児にも薬物投与ができる利点がある

わ生薬新薬

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第6回講義の結論(5)

• 膣粘膜からの薬物吸収は、脂質溶解拡散に加え、水性細孔を介した拡散に依存した受動輸送(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す。

• 膣から吸収された薬物は、胃腸管、肝臓での初回通過効果を回避することができる

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第6回講義の結論(6)• 点眼により結膜嚢に投与された薬物は、吸収さ

れずに前眼部に作用する場合、主に角膜から吸収されて眼球内部に移行する場合、強膜を介して眼球深部へ吸収される場合、結膜から全身循環へ移行する場合がある

• 脂溶性薬物の角膜を介した透過は良好であるが、水溶性薬物では制限を受ける

• 点眼された薬物は涙液で希釈され、大部分が1~2分のうちに鼻涙管に排泄される(鼻涙管に排泄された薬物の一部は、消化管に移行し吸収される) わ生薬

新薬

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第6回講義の結論(7)• 皮膚の角質層は、薬物吸収のバリアとしての役

割を果たしている• 皮膚での薬物は、角質層を通過する経皮膚吸収

(細胞内ルート、細胞間ルート)、及び毛孔・汗腺等を通過する経付属器官吸収を受ける。付属器官では、角質層実質に比べ薬物が著しく透過しやすいが、有効面積は少ないため、吸収の寄与率は低い

• 薬物の皮膚透過は、受動輸送(単純拡散)により、濃度が高い方から低い方へ透過する下り坂輸送を示す

• 皮膚から吸収された薬物は、胃腸管、肝臓での初回通過効果を回避することができる

• 薬物の皮膚での透過過程は、脂質への溶解拡散に従い、皮膚透過係数(P)は、薬物の脂溶性、すなわち、油/水分配係数に比例する

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第6回講義の結論(8)• 皮下注射の吸収速度は、筋肉内注射の吸収速

度に比べて遅い

• 皮下注射もしくは筋肉内注射された薬物では、バイオアベイラビリティ(生物学的利用能、Fで示される)は高い

• 筋肉内注射もしくは皮下注射された水性注射剤の場合、吸収性に対する薬物の油/水分配係数の影響は少なく、注射投与部位での拡散速度は薬物の分子サイズ(分子量)に依存する

• 筋肉内注射もしくは皮下注射された組織中での拡散速度や毛細血管の透過速度に比べて、血流速度が小さい場合には、投与部位からの吸収速度は血流速度の影響を受ける

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