4アスレティック・リハビリテーションとトレーニ …...199...

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─ 199 ─ 性の向上を図るとともに、スポーツ活動を行 う上で必要な走る、跳ぶ、投げるといった基 本的な動作の習得をする時期、第4段階を競技 復帰の最終段階の「復帰期」として、競技特性 を踏まえ、実際の競技動作をシュミレーショ ンしたトレーニングが主体となる時期、第 5 段階を復帰後の「再発予防」のための筋力や 巧緻性の保持を図る時期の 5 つの時期に分け ている (表6) ───────────────────── 【文 献】 1)川野哲英:トレーナーサイドからみたアスレティックリハ ビリテーション.スポーツ外傷・障害とリハビリテーショ ン(福林徹編)、文光堂,1994 2) 福林徹:アスレティックリハビリテーション-理論と実 際-、日本臨床スポーツ医学会誌、7(3):201-207, 1999 3)福林徹、筒井廣明、星川吉光:アスレティックリハビリテ ーション総論.アスレティックトレーナーテキスト(日本 体育協会編)、日本体育協会,2003 4)山本利春:陸上競技におけるグランドでのリハビリテーシ ョン.整形外科アスレティックリハビリテーション実践マ ニュアル(福林 徹編)、全日本病院出版会,1998 5)山本利春:筋力評価とスポーツ復帰-WBIを中心にして-. スポーツ外傷・障害とリハビリテーション(福林 徹編)、 文光堂,1994 6)山本利春:リハビリテーション・トレーニング.トレーニ ング科学ハンドブック(トレーニング科学研究会編)、朝 倉書店,1996 7)山本利春:種目特性とリハビリテーション(総論).アス レティックトレーナーテキスト(日本体育協会編)、日本 体育協会,2003 8)福林徹:ドクターサイドからみたアスレティックリハビリ テーション.アスレティックリハビリテーションマニュア ル,pp1-5,2006 競技者の現在持っている運動能力が把握でき、 かつゴールするのに必要な能力が具体的に設 定できればこれを細分化し、短期、中期、長 期などの目標を設定できる。これによって目 標に見合ったリハビリテーションプログラム を具体的に作成することができる。プログラ ム作成にあたっては安全性と効率性を重視し、 安全でしかも効率の上がるプログラム作成を 競技者にわかりやすく説明していく必要があ る。リハビリテーション中は特に患部の疼痛 と腫脹に注意し、もし少しでも疼痛や腫脹が 増悪するようならばプログラムを中止、ない し変更する必要がある。リハビリテーション の評価は週単位など定期的に行い、与えられ た目標に競技者の運動能力が到達していれば 次の目標に向かってそのままプログラムを進 めるが、もし目標に達していないか、途中疼 痛や腫脹のためトレーニングを中断せざるを 得なかった場合、再度短期、中期、長期の目 標を設定し、再スタートしていく必要がある。 2)段階的に期分けしたリハビリテーショ ン・プログラム アスレティック・リハは受傷からの時期に より、何段階かに分けて考えると便利である。 福林は第1段階を「保護期」として、患部の腫 脹や可動域制限を配慮しながら疼痛の出ない 範囲で関節の拘縮を除き、筋の萎縮を防ぐた めの運動を行う時 期、第2段階を「訓 練・前期」として、 関節可動域の改善と 筋力トレーニングを 積極的に行い、運動 を行うための基本的 な筋力や柔軟性など の身体能力を獲得す る時期、第 3 段階を 「訓練・後期」として、 質的・量的にもより 高い負荷での筋力 (荷重レベル、伸張 性、持久性など)の 強化や協調性、巧緻 4アスレティック・リハビリテーションとトレーニング計画 表6段階的リハビリテーションの概要 目標 場所 方法 使用器具 第1段階 保護期 第2段階 訓練前期 第3段階 訓練後期 第4段階 復帰期 第5段階 再発防止 筋力強化 巧緻性の改善 協調性の改善 スピードの増強 パワーの増強 瞬発力 実戦経験 筋力の保持 巧緻性の保持 競技特性に応じて 等張性 マシン フリーウエイト トレーニング室 フリーウエイトマシン バランスボード 競技特性に応じて ジョギング バランストレ 等張性 ランニング アジリティ ジャンプ 部分的実戦練習 リハビリ室 コート グラウンド コート グラウンド トレーニング室 筋力強化 関節安定化 持久力保持 自転車エルゴメータ トレッドミル チューブ OKC、CKC 等張性 スクワット リハビリ室 腫脹の除去 関節可動域の改善 筋萎縮の改善 ホットパック バイブラバス クライオセラピー マットトレ 等尺性 リハビリ室

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Page 1: 4アスレティック・リハビリテーションとトレーニ …...199 性の向上を図るとともに、スポーツ活動を行 う上で必要な走る、跳ぶ、投げるといった基

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性の向上を図るとともに、スポーツ活動を行う上で必要な走る、跳ぶ、投げるといった基本的な動作の習得をする時期、第4段階を競技復帰の最終段階の「復帰期」として、競技特性を踏まえ、実際の競技動作をシュミレーションしたトレーニングが主体となる時期、第5段階を復帰後の「再発予防」のための筋力や巧緻性の保持を図る時期の5つの時期に分けている(表6)。─────────────────────【文 献】1)川野哲英:トレーナーサイドからみたアスレティックリハ

ビリテーション.スポーツ外傷・障害とリハビリテーション(福林 徹編)、文光堂,1994

2) 福林徹:アスレティックリハビリテーション-理論と実際-、日本臨床スポーツ医学会誌、7(3):201-207,1999

3)福林徹、筒井廣明、星川吉光:アスレティックリハビリテーション総論.アスレティックトレーナーテキスト(日本体育協会編)、日本体育協会,2003

4)山本利春:陸上競技におけるグランドでのリハビリテーション.整形外科アスレティックリハビリテーション実践マニュアル(福林 徹編)、全日本病院出版会,1998

5)山本利春:筋力評価とスポーツ復帰-WBIを中心にして-.スポーツ外傷・障害とリハビリテーション(福林 徹編)、文光堂,1994

6)山本利春:リハビリテーション・トレーニング.トレーニング科学ハンドブック(トレーニング科学研究会編)、朝倉書店,1996

7)山本利春:種目特性とリハビリテーション(総論).アスレティックトレーナーテキスト(日本体育協会編)、日本体育協会,2003

8)福林徹:ドクターサイドからみたアスレティックリハビリテーション.アスレティックリハビリテーションマニュアル,pp1-5,2006

競技者の現在持っている運動能力が把握でき、かつゴールするのに必要な能力が具体的に設定できればこれを細分化し、短期、中期、長期などの目標を設定できる。これによって目標に見合ったリハビリテーションプログラムを具体的に作成することができる。プログラム作成にあたっては安全性と効率性を重視し、安全でしかも効率の上がるプログラム作成を競技者にわかりやすく説明していく必要がある。リハビリテーション中は特に患部の疼痛と腫脹に注意し、もし少しでも疼痛や腫脹が増悪するようならばプログラムを中止、ないし変更する必要がある。リハビリテーションの評価は週単位など定期的に行い、与えられた目標に競技者の運動能力が到達していれば次の目標に向かってそのままプログラムを進めるが、もし目標に達していないか、途中疼痛や腫脹のためトレーニングを中断せざるを得なかった場合、再度短期、中期、長期の目標を設定し、再スタートしていく必要がある。2)段階的に期分けしたリハビリテーション・プログラム

アスレティック・リハは受傷からの時期により、何段階かに分けて考えると便利である。福林は第1段階を「保護期」として、患部の腫脹や可動域制限を配慮しながら疼痛の出ない範囲で関節の拘縮を除き、筋の萎縮を防ぐための運動を行う時期、第2段階を「訓練・前期」として、関節可動域の改善と筋力トレーニングを積極的に行い、運動を行うための基本的な筋力や柔軟性などの身体能力を獲得する時期、第3段階を「訓練・後期」として、質的・量的にもより高い負荷での筋力(荷重レベル、伸張性、持久性など)の強化や協調性、巧緻

4アスレティック・リハビリテーションとトレーニング計画

表6●段階的リハビリテーションの概要

目標 場所 方法 使用器具

第1段階 保護期

第2段階 訓練前期

第3段階 訓練後期

第4段階 復帰期

第5段階 再発防止

筋力強化 巧緻性の改善 協調性の改善

スピードの増強 パワーの増強 瞬発力 実戦経験

筋力の保持 巧緻性の保持

競技特性に応じて

等張性 マシン フリーウエイト

トレーニング室

フリーウエイトマシン バランスボード

競技特性に応じて

ジョギング バランストレ 等張性

ランニング アジリティ ジャンプ 部分的実戦練習

リハビリ室 コート グラウンド

コート グラウンド トレーニング室

筋力強化 関節安定化 持久力保持

自転車エルゴメータ トレッドミル チューブ

OKC、CKC 等張性 スクワット

リハビリ室

腫脹の除去 関節可動域の改善 筋萎縮の改善

氷 ホットパック バイブラバス

クライオセラピー マットトレ 等尺性

リハビリ室