4.コンバイン事故の特徴- 54 - Ⅳ.機種別事故の特徴...

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- 51 - Ⅳ.機種別事故の特徴 4.コンバイン事故の特徴 (1)コンバインの主な事故 図は「農作業事故の対面調 査」事例49件の事故様態分析 の結果を図式化したもので す。 ①移動・走行中(特に、バ ック時に転落・転倒) ②つまり除去(エンジンを 止めずに) ③修理・整備・点検中(コ ンバインは、カバーを取 ると回転物だらけ) ④手こぎ中(巻き込まれ) その他、台車への積み込み 中の事故、車高が高くなっての乗降時の事故、ラジエーターのオーバーヒート時の事故などが起 こっています。 (2)コンバインの主な事故とその対策 最近のコンバインは、どん どん大型化しています。その ためオペレーターから見えな い死角も拡大しています。特 に、収穫の隅刈り時にバック して畦を乗り越えて転落、道 路からはみ出しての転落など 重大事故が起こっています。 また、コンバインはカバー をとると、回転物だらけです。 詰まり除去、整備点検中は、 必ずエンジンを止めることが 原則です。 さらに、手こぎでの事故は、 稲の正しい投げ込み方法や、 きちんとした服装の徹底で防ぐことが出来ます。 4.コンバイン事故の特徴 手こぎ 14.3% つまり 除去 20.4% つまり 移動・ 走行 34.7% 移動 移動 修理・整備・点検中 16.8% つまり コンバインの事故原因・概要 農作業事故の対面調査 49件 つまり つまり 19 コンバインの事故様態と安全対策 つまり除去 (20.4%) 事故様態分析では 手こぎ (14.3%) 移動・走行 (34.7%) 整備中 (16.8%) 2詰まったら エンジンを切る 第4に 手こぎ位置、足場を安定に ②巻き込まれ注意 1①移動時、特にバック時注意 ②他者は、作業中近づかない 第3に 整備の基本を 安全マニュアルは 農作業事故の対面調査 2011201449上記で全体の86.2

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Page 1: 4.コンバイン事故の特徴- 54 - Ⅳ.機種別事故の特徴 4.コンバイン事故の特徴 手こぎの稲が、後もう少 しで終わると思い、手元か ら目線を離したら、手が巻

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Ⅳ.機種別事故の特徴 4.コンバイン事故の特徴

(1)コンバインの主な事故

図は「農作業事故の対面調

査」事例49件の事故様態分析

の結果を図式化したもので

す。

①移動・走行中(特に、バ

ック時に転落・転倒)

②つまり除去(エンジンを

止めずに)

③修理・整備・点検中(コ

ンバインは、カバーを取

ると回転物だらけ)

④手こぎ中(巻き込まれ)

その他、台車への積み込み

中の事故、車高が高くなっての乗降時の事故、ラジエーターのオーバーヒート時の事故などが起

こっています。

(2)コンバインの主な事故とその対策

最近のコンバインは、どん

どん大型化しています。その

ためオペレーターから見えな

い死角も拡大しています。特

に、収穫の隅刈り時にバック

して畦を乗り越えて転落、道

路からはみ出しての転落など

重大事故が起こっています。

また、コンバインはカバー

をとると、回転物だらけです。

詰まり除去、整備点検中は、

必ずエンジンを止めることが

原則です。

さらに、手こぎでの事故は、

稲の正しい投げ込み方法や、

きちんとした服装の徹底で防ぐことが出来ます。

4.コンバイン事故の特徴

手こぎ

14.3%

つまり除去

20.4%

つまり

移動・

走行

34.7%

移動

移動

修理・整備・点検中16.8%

つまり

コンバインの事故原因・概要

農作業事故の対面調査 49件

つまり

つまり

19

コンバインの事故様態と安全対策

つまり除去(20.4%)

事故様態分析では

手こぎ(14.3%)

移動・走行(34.7%)

整備中(16.8%)

第2に 詰まったらエンジンを切る

第4に ①手こぎ位置、足場を安定に②巻き込まれ注意

第1に ①移動時、特にバック時注意②他者は、作業中近づかない

第3に 整備の基本を

安全マニュアルは

農作業事故の対面調査2011~2014年 49件上記で全体の86.2%

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Ⅳ.機種別事故の特徴 4.コンバイン事故の特徴

(3)典型的なコンバイン事故

コンバインで稲刈りをする場合、

最初に周回する際に、各隅で隅刈

りをしますが、十分に余裕を持っ

て隅刈りをすることが大切です。

狭い範囲で無理に方向転換して、

バック時に畦を乗り越えて転落す

るという事故が起こっています。

特に、畦が低かったり軟弱だっ

たりすると、バックした時、畦に

乗り上げたことが分からず、その

まま乗り越えての事故が起こって

います。 十分余裕のある隅刈り

が必要です。

圃場を目指して走行していたが、予

定の圃場に入る曲がり角を通過してし

まった。そこでバックして、さらにそ

のまま曲がり角を曲がったつもり。と

ころが、曲がるのが早く、道をはみ出

し横転。

その際、本人は投げ出され、コンバ

インの下敷きになることはなかった。

このように、バック走行中は、後ろ

は全く死角となり、誘導者をつけるか、

Uターンして、前進で進入するかをし

なければなりません。

①移動・走行中の事故

4m下に転落

三角形の圃場の角刈り中、後進時に、畦を乗り越え4m下に墜落。落ちたときオペレーターは飛ばされ、コンバインの下敷きになることは無かった。打撲、擦過傷。

男性・64歳

事例1:隅刈り時にバックして、畦を乗り越え転落

道路を走行して圃場に向かう際、予定の圃場に曲がる場所を通過してしまった。そこで、バックで進入路に入ろうとして早く曲がりすぎて、道路をはみ出し横転、本人投げ出される。

事例2:バックで進入路に入ろうとして、道路をはみ出し横転

コンバインのバック走行は、「死角」の中、勘に頼らず、確実な運転を

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Ⅳ.機種別事故の特徴 4.コンバイン事故の特徴

秋作業終了後、エンジンを

かけ、こぎ胴を回転させなが

ら整備していた。たまたま、

フィードチェーンのテンショ

ン部分に巻き付いた藁があり、

簡単に取れると思い藁を引っ

張ったところ、逆に引っ張ら

れ、巻き込まれて指先を切っ

てしまった。

藁といえども条件によって

は、キツく巻き付いてこの事

例のように巻き込まれる場合

がある。クラッチを切る、あ

るいはエンジンを止めての作

業が必須。

こぎ胴を開けたまま、右手

に注油器を持って、注油。右

の方にばかり気を取られ、左

手に注意が行っていなかった。

こぎ胴近くに置いていた左

手が、一瞬に巻き込まれてし

まった。

注油は、回転しながらする

ことが多いが、コンバインの

場合、目的の部分のみならず、

他の部位も回転することに注

意。

②つまり除去中の事故

巻き付いた藁を取ろうとして

藁は簡単に取れると思ったが、指が巻き込まれた

事例:巻き付いた藁を引っ張ろうとして、逆に手が巻き込まれた

③整備・点検・修理中の事故

エンジンをかけたまま、こぎ胴を回転させたまま、右手に注油器を持って、藁搬送チェーンに注油。左手はこぎ胴の近くに置いていたが、注意が逸れ、こぎ胴に左手が巻き込まれ。左手第2~4指骨折・挫滅創。

事例:右手で藁搬送チェーンに注油中、左手がこぎ胴に巻き込まれた

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Ⅳ.機種別事故の特徴 4.コンバイン事故の特徴

手こぎの稲が、後もう少

しで終わると思い、手元か

ら目線を離したら、手が巻

き込まれた。

たまたま、いつもしてい

るピッタリした手袋が濡れ

ていたので、3Lのブカブ

カの手袋をしていたので、

最初、チェーンにくい込ま

れたときは分からなかっ

た。「しまった」と思った

時は、もう遅かった。

図の左のようにコンバ

インに体をコンバインの

フィードチェーンに接す

るように投げ込むと、稲

をチェーンに供給すると

き、チェーンに引き込む

姿勢となり、手も巻き込

まれ易い。

一方、右の図ように体

とフィードチェーンの間

に稲を投げ込むと、稲を

チェーンに向かって押し

出す方向となり、引き込

まれにくい。

男性・63歳

手こぎ中、もう少しで終わると思い残りの稲の山を見て、手元から目線が離れ、その時手が巻き込まれた。また、いつもは、手にしっかりフィットした薄手のゴム手をするのであるが、たまたまそのゴム手が濡れていたので、3Lの大きいダブついた手袋をしていた。そのため巻き込まれた最初は、気がつかなかった。巻き込まれに気がつき抜こうとした時はしっかり搬送チェーンに手が食い込まれてしまっていた。

④手こぎ中、巻き込まれての事故

手こぎ中、巻き込まれない、稲の入れ方

× ○

稲をフィードチェーンに引き込む方向

稲をフィードチェーンに押し込む方向

手こぎをする場合、左のようにフィードチェーンに引き込む方向では、手も一緒に引き込まれる可能性が大きい。右のように投げ入れ、フィードチェーンに押し込むようにすると、巻き込まれにくい。

手こぎをする時、ブカブカの手袋(軍手など)、袖口がバタバタは危険