ケータイ小説
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先日、書店で本を探して歩いていたところ、「携
帯小説コーナー」などと書かれた棚を見かけまし
た。(☞の画像は携帯小説とは関係ありません。アメリカの
本屋で買ってきた「The Pictorial K
ey to the Tarot
(タロット図
解)」という本です。)
携帯小説というのは、どうも横書きで印刷された
新しいジャンルの小説ということで、最近何かと話
題になっているようです。話だけは聞いていました
が、実物を目にするのは初めてです。どんなものな
のか、実際に手にとって、ページを開いてみまし
た。小
説だと思って開いた本が横書きになっていると
いうのは、思っていた以上に衝撃的でした。
そもそも、いまさら日本語で横書きなどというも
のは珍しいものでもなく、書籍においても解説書の
類などはほとんどが横書きです。パソコンの画面上
では横書きが当たり前で、このブログのように縦書
きで読めるものなどほとんどありません。
それなのに、なぜか横書きに印刷された携帯小説
だけには違和感があるのです。おそらく、私の中で
「小説は縦書き」という強い固定観念があったから
でしょう。一種のカルチャーショックのようなもの
です。子供のころから本が大好きで、たくさんの
(縦書きの)小説を読んでいましたからね。
小説が横書きになったからといって、それだけな
らその価値が薄れたり、まったく別のジャンルの文
学になったりということはないと思います。なぜな
ら、欧米をはじめ、おそらく日本以外のほとんどす
べての国では、小説は横書きで書かれることが当た
り前のことであって、横書き以外で小説を読むこと
なども考えられないことだからです。外国の小説が
日本の小説より劣っているなどということはありえ
ないでしょう。
私自身もアメリカに留学経験があるので、現地で
語学学校に通っているときに宿題で英語の小説(も
ちろん横書き)を一冊読まされたこともありました
し、書店に行けば当然全ての本が横書きで、一見す
ると何かの解説書かと思った本が実は小説だったと
か、そういうこともよくありました。慣れないと何
の本なのかよくわからないのです。
結局、縦書きに慣れ親しんだ日本人にとっては、
横書きだと単に受け止め方が変わってしまう(違和
感がある)というだけのことであって、携帯小説も
横書きだから特別だということではないのです。英
語で書かれた本と同じだと思えば、そんなものかと
すぐに納得できます。
私が感じたような、ちょっとしたカルチャー
ショックから来る「新鮮さ」は、若い人たちにとっ
ては心地よく、逆に年配の人たちにとっては受け入
れがたいものとなり、賛否両論が激しくぶつかり合
うような話題性を生み出しているということなので
はないでしょうか。
もっとも、携帯小説の特徴は単に横書きだという
だけではありません。文章の書き方もインターネッ
ト文化から生まれた独特のものがあり、従来の小説
と呼ばれていたものとは明らかに文体が異なるもの
もあるようです。ただ、それはたまたま今そういう
ものが注目されているだけのことであって、いずれ
は、小説という大きなジャンルの中の一般的な表現
形態のひとつとして、ごく普通に受け入れられてい
くものだと思います。
しかし、これを機に、日本語の「横書き化」の大
きな波が押し寄せてきたのは確かです。
縦に書かれたものを横にしたからといって読めな
くなるわけでもありません。本は横書きでも売れる
し、縦にする必然性もほとんどないと多くの人が考
えています。(日本語を縦に書くことに意味がない
わけではありません。)
縦書きの小説が売れなくなって、横書きの小説ば
かり売れるようになれば、商売をする方だって縦書
きの本など作ろうとはしなくなってしまうでしょ
う。売
れるものしか作られないのです。それが、文化
というものです。
このまま横書きの本ばかりが増えて、縦書きの本
が減っていったら、いずれは、縦に書くことが伝統
芸能のように、一般の人には無縁のものとなってし
まうかもしれません。
はたして、それで良いのでしょうか?
言葉を縦に読めるということはすばらしいことで
す。この日本の大切な文化を、このまま欧米化の波
にまかせて失ってしまっても良いのでしょうか?
そうやって、今まで日本人は、どれだけのものを
失ってきたことか。
気づいたときにはもう手遅れだなんてことには
なってほしくないですね。
私自身は文章を横に書くことにはまったく抵抗は
ありませんが、日本語ならやっぱり、縦書きの方が
好きですね。
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20
08
©
アポロのタロット占い -
横書きの携帯小説について否定的な立場で批判
しているようなブログでも、そのブログの記事自
体が横書きになっていたら全然説得力がないと思
うのですが……。批判するなら、まず自分が縦書
きにしなさい!