下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

130
ラノベやエンタメ系小説新人賞の 下読みをしていて感じる 微妙な文章のパターンと なるべくそうならないための試案 1

Upload: ichishi-iida

Post on 02-Aug-2015

102 views

Category:

Education


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

ラノベやエンタメ系小説新人賞の 下読みをしていて感じる 微妙な文章のパターンと なるべくそうならないための試案

1

Page 2: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

※ここでは、 基礎ができていないひとを前提にしています。

基本ができていれば、問題のクリアのしかたは増えますから、やっていいことは当然増えます。 例外があることは承知のうえで あえて言い切っていることに留意ください。

2

Page 3: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

3

・めざすべき文章とは? ・中身のメドをつけてから、伝え方を考える ・全体の構造をつかむことから始まる ・段落などミクロにおいても構造の理解が大事 ・ピンぼけ文章の特徴と対策

・小説と映像の違いを知り、映像化しやすい小説をめざす ・距離感がつかめない、ぼやけた文章の特徴と対策 ・かけあいがだるい文章の特徴と対策

目次

Page 4: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

一次選考で落ちちゃう原稿あるある… 位置関係がわからない、風景が思い浮かばない 誰がしゃべってるかわからない 同じことばのくり返しが多い 序盤がだるい キャラクターが平板 いちいち地味 辞書をひかないとわからない言い回しが多すぎる 誰がどう戦っているのかわからない かけあいがかったるい 版面が真っ黒 擬音、オノマトペがあまりにも多すぎる 4

Page 5: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

めざすべき文章とは?

5

Page 6: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

キャラの感情の動きや物語に 集中できる文章 つっかからず、 するっと入ってくる文章 言いかえると…

6

もちろんジャンルによって異なるが、共通していえるのは

Page 7: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

7

中高生でもわかる文章 がひとつの理想 (あくまで私見です。 読みやすく、わかりやすく書けるに こしたことはない、ということ。 なお、ジャンルにもよります。 たとえば純文学はこのかぎりではありません)

Page 8: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

8

○中高生でもわかる文章 ×子どもっぽい文章 格調高い文章をめざしたいきもちは わかりますが、 読みやすくわかりやすいものを 書けるひとがやってこそ、だと思います。 書き慣れていないひとほど、

もってまわった言い回しや、ひとりよがりな表現を好むものです……

Page 9: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

9

たとえば、ドラクエやポケモンのストーリーは、おもしろいが小学生でもわかる言い回しで構成されている。ようは、そういうこと 対象読者(想定読者)のなかで いちばん年齢が低く、読書量が少なく、 飽きっぽくミーハーなひとを想像しながら 書けたほうが、読者に親切 ※繰り返しますが、絶対に、ではありません。 ケースバイケースではありますが、できることなら、ということです。 そのジャンル、その設定が要求する文体は確実にあります。 ただそのなかではもっとも伝わりやすい書き方を選んだほうがいい とは思います。

Page 10: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

一次でよくみる文章の特徴:ポイント

10

・難解 文章がむずかしい かっこつけすぎている →辞書を引かないと読めない言葉遣いの多用は微妙 とくにラノベでは、 アタマをよさそうに見せることに 過度に力を入れる必要はない

Page 11: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

中二病、見得、ごまかしの例文

11

形而上学のような残響を伴い冒涜的なまでに巨きな存在が蠢き――存在の根底から城を根刮ぎ薙ぎ払う――

Page 12: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

中二病、見得、ごまかしの例文

12

形而上学のような残響を伴い冒涜的なまでに巨きな存在が蠢き―存在の根底から城を根刮ぎ薙ぎ払う

・画数が多く読めない漢字。 抽象的な表現。謎の比喩。 ダーシ使いすぎ

Page 13: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

中二病、見得、ごまかしの例

13

■設定では… ×精神疾患の犯罪者

安易に精神病者を殺人者や事件の犯人にしたがる書き手がままみられますが、書き方に相当気をつけないと差別表現になります。 注意してください。

Page 14: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

中二病、見得、ごまかしの例: 構成面

14

・誰視点かわからない思わせぶりな回想、断章の挿入 →わかりにくすぎるのはマイナス。

基本的に読者は1回しか読んでくれないし、書き手ほど一言一句に注意を払って読んではいないと思って書いたほうが無難。

Page 15: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章を難解にしないためには

15

簡単な言い回しに言いかえ

Page 16: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

どうしても雰囲気が欲しいときには…

16

・段落の最初はやさしく、 続く文章で凝るor ・専門用語の前後に つらなる文章でやさしく説明

Page 17: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

夢枕獏『魔獣狩り』 伊丹の身体が跳躍し、激しい蹴りが、横から美空の頭部を襲った。登山靴を履いたままだというのに、おそるべきバネであった。

身を沈め、それを頭上すれすれで美空は躱した。美空の髪の毛が、数本、ちぎれて飛んでいた。蹴りの風圧が、ざっと美空の髪の毛を揺すった。着地する伊丹を、こんどは美空の蹴りが襲う。

17

■まず動きの概要を段落文頭で説明。 次にディティールを描写 ・1文は短く ・1文に主語はひとつ ・1文に動作は1つか2つまで

Page 18: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

専門用語の前後には最低限説明を入れる

18

・技は、細剣カテゴリで最初に習得できる単発突き攻撃《リニアー》だ

・高難度クエストの報酬である現在の愛剣《アニールブレード》がかなり重いので…

川原礫『ソードアート・オンライン プログレッシブ001』(電撃文庫)より

Page 19: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

19

What 目指すべきところ

・するっと入ってくる、文章でつっかからない ・物語やキャラの感情の動きに集中できる

Where どこが問題?

①難解 ②書きすぎ ③もつれ、もたつき

④ぼやけ

文章がむずかしい かっこつけすぎている

序盤だるい 設定・ウンチク過多 余計な部分がある 版面真っ黒

1文が3行以上 くりかえしが多い かけあいがだるい

視点が定まってない 位置関係が不明瞭 発話者がわからない 風景が浮かばない キャラが平板

Why なぜそうなっているのか?

中二病 見得 ごまかし

もったいない 設定厨 自己愛

急ぎ・焦り 無自覚な手癖 ボケかツッコミが単純すぎる

自分だけわかってる 作品構築が曖昧 脳内映像、脳内音響に無自覚

How どうすれば直る?

読者を具体的にイメージする わかりやすく言いかえ

割り切る 冒頭を圧縮 本筋以外を削除

行を区切る 検索して削除 キャラ演出を理解する ツッコミもひねる

視点定める 位置関係を描写 口調を特徴付ける 副詞を削り具体化 キャラづくりを深める

Page 20: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

20

・めざすべき文章とは? ・中身のメドをつけてから、伝え方を考える ・全体の構造をつかむことから始まる ・段落などミクロにおいても構造の理解が大事 ・ピンぼけ文章の特徴と対策

・小説と映像の違いを知り、映像化しやすい小説をめざす ・距離感がつかめない、ぼやけた文章の特徴と対策 ・かけあいがだるい文章の特徴と対策

Page 21: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

問題設定

21

なぜ書き慣れていないひとの文章は混乱しがちなのか?

Page 22: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

問題設定

22

何を書きたいのか、 何を書くべきなのか、 考えながら書いている。 &一度書いたものを捨てない。 だから、ぐちゃっとなる

Page 23: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

23

・中身 ・伝え方 →中身のメドをつけてから、 伝え方を考えるほうがラク (一回書いてから、書き方を直す)

文章体験のおもしろさ=中身×伝え方

Page 24: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

24

・おもしろいと信じる内容を

・どんな順番で、どこに力を入れ、どれ程の情報量で語るか →書き手が内容の全体像を 理解できてないものを うまく伝えるのは むずかしい…

文章体験のおもしろさ=中身×伝え方

Page 25: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章がこんがらないようにするには

25

・全体の構造を意識する ・これから書く分の目安を置く ・ざっと書き上げる ・見直して細部を詰める

Page 26: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

全体の構造をつかむには

26

もちろん、 いきなり 全体がわかるはずがない… 書きながらわかってくるもの

Page 27: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

全体の構造をつかむための心がまえ

27

とはいえ、全体の構造を つかむには?

Page 28: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

全体の構造をつかむための具体策

28

第一稿を書くときには、自由な連想のおもむくままにするのがよい。アイディア、状況、登場人物などを、奔放に、自由長さでドンドン書きまくるのだ。こうして削除すべき材料ができあがる。削除が重要なのは、それによってはじめてデザイン効果が得られるからなのだ。

『ミステリーの書き方』(講談社文庫)より、ヘレン・マクロイ(ミステリー作家)

Page 29: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

29

一回書けば 全体は見える 直すことを前提で書く

全体の構造をつかむための具体策

Page 30: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

30

・目安をつけ書きあげる (中身をつくる創造行為)

↓ ・中身を整理し直し、推敲 (伝え方を吟味、工夫)

全体の構造をつかむための具体策

Page 31: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

全体の構造をつかむ

31

全体の構造がわかっていないと 起こりがちな問題

枚数オーバー。 でも削れない。

Page 32: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

32

ところで、「削除できる」とはどういう意味だ

ろう。それは、構造を傷つけることなく取り除くことができるということだ。(中略)ある文章を退屈と思うようであれば、削るべきである。

『ミステリーの書き方』(講談社文庫)より、ヘレン・マクロイ(ミステリー作家)

全体つかむ→いらないところを削る

Page 33: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

33

「削除できる」とは、構造を傷つけることなく取り除くことができるということ。ある文章を退屈と思うようであれば、削るべき。 →誰が何してどうなるどんな話なのか? 物語やキャラのキモ、へそは何か? 根幹がわかっていれば、枝葉は削れる

『ミステリーの書き方』(講談社文庫)より、ヘレン・マクロイ(ミステリー作家)

全体つかむ→いらないところを削る

Page 34: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

34

整理し直すと、 足りなかったところ、 足した方がいいところも見える そこは改めて足す必要あり

Page 35: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

35

構造を傷つけずに増減させるには ・簡単な表や文章に整理し直す ・優先順位をつける ・割り切る 捨てられない、削れないのは 自己愛が強い証拠

その作品に対して客観的に見られていないという可能性がある

全体つかむ→魅せるために増減

Page 36: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

推敲の具体策

36

①機械的に一ページあたりの削るべき文字数、あるいは行数を決めてしまう

②これが無くても物語の構造に支障はないだろうかと問いかけながら読む

『ミステリーの書き方』(講談社文庫)より、ヘレン・マクロイ(ミステリー作家)

Page 37: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

推敲の具体策

37

まず最初に削るべきは物語の出だしの部分である。ほとんどのアマチュア作家は、物語は最初から始めるのではなく、中間から始めなければならないということを理解していない。幕が上がる前に、既に多くのことが起こっていなければならないのだ。

『ミステリーの書き方』(講談社文庫)より、ヘレン・マクロイ(ミステリー作家)

Page 38: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

冒頭部分の書き方 冒頭部はなぜ大事なのか? 読者が最初に読むところ →印象が決まる →→序盤がだるいと損をする 38

Page 39: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

どんな話かわからない ・設定が長々語られる ・朝起きて学校行くまでが延々

・主人公やヒロインが中々出てこない ・やたら長い謎の回想、断章

39

冒頭部でよくやるミス…

Page 40: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

冒頭部分の書き方:何をするパート? ジャンルを伝える

+ 続きを読みたいと思わせる ・主人公とパートナーでツカむ ・話を起こす

40

Page 41: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

・主人公がどんな外見、性格、能力、動機、感情にあるのかという特徴を示す

・主人公が置かれた状況を説明し、困難に遭遇する ・パートナーと最初の関係性を築く ・後戻り不能な重要イベントが起きる ・やらねばならないことができる →次のフェーズ(承)へ移行 できればここまでを50p前後で完了させる

41

ラノベ/エンタメ小説の冒頭部(起)でやった方がベターなこと

Page 42: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

冒頭部分を直すだけで 作品の印象はかなり変わる あとは 冒頭部分を直す要領で 全体に手を入れていけばOK

42

Page 43: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

何をどうしたいか=構造の理解が大事

43

ここまでは 物語全体に関わる話 ここからは 段落や一文ごとの話

Page 44: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

44

・めざすべき文章とは? ・中身のメドをつけてから、伝え方を考える ・全体の構造をつかむことから始まる ・段落などミクロにおいても構造の理解が大事 ・ピンぼけ文章の特徴と対策

・小説と映像の違いを知り、映像化しやすい小説をめざす ・距離感がつかめない、ぼやけた文章の特徴と対策 ・かけあいがだるい文章の特徴と対策

Page 45: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

構造の理解が足らないと

45

・文章がもつれ、もたつく 何を言っているのかわからない 1文が3行以上 くりかえしが多い

Page 46: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

どこが問題?もつれ、もたつき

46

何を言っているのかわからない

起承転結や、情景・人物・心理・会話・行動などの 情報の出し方、順番が 整理されていない

Page 47: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

どこが問題?→なぜ?→どうすれば?

47

・先にポイントをおさえる ・肉付けする ・本当にそれがベストか吟味 こうすると行き先を見失わない

Page 48: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

どこが問題?→なぜそうなる?

48

なぜ長文化、反復が起こるか

・考えながら、思いついた順にことばをつらねている ・時間がなくて焦っている ・無自覚な手癖

Page 49: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

具体的な打ち手

印刷して見返すクセと時間をつくる 手癖を検索機能で矯正する(後述)

49

Page 50: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

一文が長くなるのを防ぐには…

・意味の重複を見つけたら削る ・1文は1行か2行と決める ・無内容な修辞、強調を入れない

・形容詞や副詞、あいまい表現を増やさない

50

Page 51: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

仕事をする営業マンの人が営業を行うさいに欠かせない重要で大切な技術は →営業マンに欠かせない技術は 短く言い切るクセをつける

51 野村正樹『会社勤めをしながら3年間で作家になる方法』より

一文が長くなっているよくある例

Page 52: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

52

・めざすべき文章とは? ・中身のメドをつけてから、伝え方を考える ・全体の構造をつかむことから始まる ・段落などミクロにおいても構造の理解が大事 ・ピンぼけ文章の特徴と対策

・小説と映像の違いを知り、映像化しやすい小説をめざす ・距離感がつかめない、ぼやけた文章の特徴と対策 ・かけあいがだるい文章の特徴と対策

Page 53: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

どこが問題?→なぜ?

53

・ぼやけ

視点が定まっていない、位置関係が不明瞭、発話者がわからない、風景が浮かばない →作品構築が曖昧 脳内映像、脳内音響に無自覚

Page 54: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

どこが問題?→なぜ?→どうすれば?

54

・ぼやけ

作品構築が曖昧 →視点を定める 位置関係を描写 口調を特徴付ける 副詞や曖昧表現を削り具体化

Page 55: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

視点を定める

戦闘シーンに入ると視点がめちゃくちゃな原稿が多い →カメラ位置、カットを意識

ややこしい戦闘シーンとかなら絵や図にしてから文章にするくらいしたほうがいいかもしれない…

55

Page 56: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

映像のシナリオの書き方: 文章を書き慣れていないひとはチェックリストがわりに使ってみてもいいかもしれない

■シーン(ショット) 空間と時を明確に指定すること ・映像にする場所を明確に指示する ・展開するストーリーの時間帯を指示

・展開するストーリーに必要な登場人物や背景を指示すること ■ト書き カメラが何をとらえるかを記述すること 56 金子満『シナリオライティングの黄金則』(ボーンデジタル)を参考

Page 57: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

漫画、映像にしやすい小説

57

○行動と会話で物語が動く ×文体、心理描写だけで勝負

○絵にすると映える。感情表現が誇張、デフォルメされている ×地味

○規制にひっかからない ×度をこえたエログロ、反社会的

Page 58: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

心がまえ:漫画、映像にしやすい小説

58

ただし、どうがんばっても 小説と映像は違う

Page 59: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

小説と映像の違い ・絵、動きがない(視角) ・音が出ない(聴覚) ・時間芸術じゃない Ex.「ギャー!」ドガーン! と擬音を乱発するとまぬけ ※使うな、ということではない

59

Page 60: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

小説と映像の違い ・絵、動きがない(視角) ・音が出ない(聴覚) ・時間芸術じゃない →特撮、魔法少女、アイドルもの、

バンドものを小説でやるのが難しい理由

60

Page 61: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

小説と映像の違い →映像では有効だが、小説では表現がむずかしいことの例

『クワガタ! カマキリ! バッタ! ガータガタガタキリバッ! ガタキリバッ!』

毛利亘宏『小説仮面ライダーオーズ』(講談社)より 61

Page 62: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

小説と映像の違い

・文字でアイドルや特撮でよくある「名乗り」を表現すると「つくりもの」感が出すぎて興ざめする

・決めポーズも表現するのは難しい

62

Page 63: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

小説と映像の違い せいぜい一言で言える ・二つ名、あだ名 “調子の詠み手”(

『灼眼のシャナ』)“肉”(『僕は友達が少ない』) ・決め台詞、口癖

「その幻想をぶち殺す」(『とある魔術の禁書目録』)

63

Page 64: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

・絵、動きがない ・音が出ない →戦闘をもりあげるツールは言葉だけ!

64

小説と映像の違い

Page 65: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

・絵、動きがない(視角) ・音が出ない(聴覚) →自分の頭の中だけで絵が動き、音が鳴ってないか? 読者は書いてあること しかわからない

65

小説と映像の違い

Page 66: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

戦闘シーン描写の注意 戦闘描写でよく見るミス ・ポエムになってる ・誰がしゃべってるのか混乱 ・乱発される比喩と擬音に?と思う ・挿入された設定の解説が長い..

66

Page 67: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

戦闘シーン描写の注意 描写でよく見るミス回避策 ・冷静な時に読み返す。人称確認 ・口調と性格に特徴をつける ・上下左右前後の「動き」を表現

・設定解説は1頁まで。あとは会話に混ぜる 67

Page 68: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

68

・めざすべき文章とは? ・中身のメドをつけてから、伝え方を考える ・全体の構造をつかむことから始まる ・段落などミクロにおいても構造の理解が大事 ・ピンぼけ文章の特徴と対策

・小説と映像の違いを知り、映像化しやすい小説をめざす ・距離感がつかめない、ぼやけた文章の特徴と対策 ・かけあいがだるい文章の特徴と対策

Page 69: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

距離感がつかめない原稿 →場所、距離感を具体的に ・何歩、メートルなどを記述 ・曖昧表現に頼らない

69

ぼやけた文章を直すには

Page 70: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

初心者がやりがちな曖昧表現

せいぜい五、六本の木があるにすぎないように思えた →五、六本の木がある

70 中条省平『小説の解剖学』を参考

Page 71: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章をぼけさせる曖昧表現

せいぜい、ように、思えた、だいたい、おおよそ、そういえば、だったかもしれない、気がした、みたいだ、だろう

71 中条省平『小説の解剖学』を参考

Page 72: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

初心者がやりがちな曖昧表現

言いきるクセをつける

72

Page 73: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

初心者多用の形容詞、副詞、接続詞

少し とても たぶん しかし なんとなく →検索かけて多ければ削る

73

Page 74: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

もし強調したいのであれば…

「多数の人」から直すとして… ×ありえないほどきわめて多数の △米俵にある米粒と同じくらいの数 ○西武ドームを埋めつくす4万もの →ビジュアルイメージや数字を伴う具体化をする

74

Page 75: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

もし強調したいのであれば… △米俵にある米粒と同じくらいの数

なぜ比喩表現が△なのか? ・文章が長ったらしくなる

・正確に表現できないことをごまかすための比喩で、結局イメージが伝わってこないことがある →比喩にたよらず書けるようになったほうがいい(特に初心者は) →比喩を使うなら、短く、簡潔に

75

Page 76: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

ぼやけをなくすほかの方法… 五感や感情を書く →緊迫感や痛みを表現

・視覚ばかりに焦点を当てて触覚、聴覚、味覚、嗅覚、喜怒哀楽は忘れられがち

76

Page 77: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

77

・めざすべき文章とは? ・中身のメドをつけてから、伝え方を考える ・全体の構造をつかむことから始まる ・段落などミクロにおいても構造の理解が大事 ・ピンぼけ文章の特徴と対策

・小説と映像の違いを知り、映像化しやすい小説をめざす ・距離感がつかめない、ぼやけた文章の特徴と対策 ・かけあいがだるい文章の特徴と対策

Page 78: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

どこが問題?→なぜ?

78

かけあいがだるい →原因は3つ

・日本語のテンポが悪い ・キャラの口調・特徴が弱い ・かけあいのひねりが弱い

Page 79: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

79

かけあいがだるい →打ち手は3つ

・会話の削るポイントを理解 ・キャラの口調をいじる ・ボケかツッコミをひねる

どこが問題?→なぜ?→どうすれば?

Page 80: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

80

・「~~と言った」「○○が言った」は削る ・せりふを読めばわかる情報を入れない 「わかった」と彼は承諾した→「わかった」

・誰がしゃべっているのか書かなくてもわかるように口調や性格を特徴づける

日本語(会話)をもたつかせない作法

Page 81: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

どこが問題?→なぜ?

81

かけあいがだるい ・キャラの口調・特徴が弱い →口調や性格を特徴づけてもかったるい場合もあるが…これはなぜか?

Page 82: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

82

キャラクター マトリックス 過去 現在

近未来 (その巻終了までの変

化)

スペック (外見、能力)

性格 (character)

内面、本心 (mind,will,desire)

課題,障害,葛藤 (mission,conflict)

変化を起こす

行動、イベント

過去→現在 「話のきっかけ」

現在→近未来

キャラが一面的だから飽きる

ここしか

見せない、変化ない

Page 83: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

①序盤:圧倒的に突き抜けたツカミのインパクトを見せる

この作品らしさを象徴する特徴を見せる。見た目と能力や、能力と性格のあいだにギャップがあるところを見せる(○○だけど××)。突出した何かを披露する(○○で1番の××)。かっこいい・かわいい。強い・すごい。強い願望や悩み、倫理感がある。とんでもないことに巻き込まれ、読者に喜怒哀楽や恐怖など強い感情を呼び起こす。

--ここから下の(中盤~終盤)の印象チェンジも描く-- ②中盤:隠れていた意外な面を次々に明かしていく

ヒロインとの関わりや、敵との戦いのなかで、凄さだけでなく弱さやもろさ、悩みを見せていく。あるいはバカな面を見せる。どうしてこんな人物になったのかという意外な過去の事件を明かし、印象を変える。困難を経験するなかでヒロインと自己開示をしあい、接近する。ただ巻き込まれている状態から変化し、自分ごととして真剣に取り組むようになる。

③終盤:最大のコンフリクトに打ち克ち、ツカミの状態から変化し、成長する

今までで最大の敵・障害に自ら立ち向かい、本心を明かし、感情を吐き出し困難を乗り越え、わだかまりを解消する。目的を達成する

83

ラノベで比較的有効なキャラクターの演出手順

Page 84: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

かけあいのひねりがないと思うとき…

84

経験則では…… ・ボケ、ツッコミにひねりがない ・ツッコミ後の解説が余計

このへんは確実に笑いに対するセンスもある。後天的にどうにもできない場合もある

Page 85: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

85

・めざすべき文章とは? ・中身のメドをつけてから、伝え方を考える ・全体の構造をつかむことから始まる ・段落などミクロにおいても構造の理解が大事 ・ピンぼけ文章の特徴と対策

・小説と映像の違いを知り、映像化しやすい小説をめざす ・距離感がつかめない、ぼやけた文章の特徴と対策 ・かけあいがだるい文章の特徴と対策

Page 86: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

86

What 目指すべきところ

・するっと入ってくる、文章でつっかからない ・物語やキャラの感情の動きに集中できる

Where どこが問題?

①難解 ②書きすぎ ③もつれ、もたつき

④ぼやけ

文章がむずかしい かっこつけすぎている

序盤だるい 設定・ウンチク過多 余計な部分がある 版面真っ黒

1文が3行以上 くりかえしが多い かけあいがだるい

視点が定まってない 位置関係が不明瞭 発話者がわからない 風景が浮かばない キャラが平板

Why なぜそうなっているのか?

中二病 見得 ごまかし

もったいない 設定厨 自己愛

急ぎ・焦り 無自覚な手癖 ボケかツッコミが単純すぎる

自分だけわかってる 作品構築が曖昧 脳内映像、脳内音響に無自覚

How どうすれば直る?

読者を具体的にイメージする わかりやすく言いかえ

割り切る 冒頭を圧縮 本筋以外を削除

行を区切る 検索して削除 キャラ演出を理解する ツッコミもひねる

視点定める 位置関係を描写 口調を特徴付ける 副詞を削り具体化 キャラづくりを深める

Page 87: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

応用編

87

Page 88: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章術・応用編

1.純・文章作法 2.構成、キャラ、設定も関わる文章表現

88

Page 89: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

1.純・文章作法

■序盤でとくに気をつけてほしいこと ・ジャンルと主役がパッとわかるように

・シチュエーション説明は丁寧に、わかりやすく ・主人公の能力と行動原理をハッキリ描く

89

Page 90: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

序盤でとくに気をつけてほしいこと

90

・ジャンルと主役がパッとわかるように

・シチュエーション説明は丁寧に、わかりやすく ・主人公の能力と行動原理をハッキリ描く

Page 91: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

ジャンルと主役がパッとわかるように

91

読者は「どんな人物が主役の、どんなジャンルの話なのか」がわからないとストレス。

バトルものになるなら最初から戦ってた方が「そういうものか」とわかりやすい。 ラブコメでも同様。早く伝える。 「ノンジャンルの作品です」と言われても、

読む側からしたら無数の選択肢がある中、わざわざよくわからないものは選ばない

Page 92: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

ジャンルと主役がパッとわかるように

今までにある話とどこが違うのか? (この作品の特色) が序盤を読んだだけでわかるように。

どんな物語なのか、これ読んだらどんな気持ちになれそうなのか予感させ、示唆するような親切設計がベター

92

Page 93: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

キャラの登場時に読者が知りたいこと

・どんなキャラなのか? 見た目、話し方、容姿、行動の特徴。何をする話なのか? ・この話にとってどれくらい重要なのか? ・主人公に対しどんな感情を抱いている? ・何がしたいキャラなのか? 好き嫌い/動機/行動原理は何なのか?(謎なら謎でもよいが、謎とわかるように示す) →主要キャラなら「こいつのこともっと見たい、知りたい!」という興味を抱かせることが重要。 付き合う価値がないと思われたら投げられる 93

Page 94: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

キャラの口調:チェックリスト

どこか1ページを選んで、登場人物の名前を隠し、セリフを読んでみる。名前を隠しても、誰がしゃべっているかわかるだろうか?

しゃべり方だけで、誰が話しているか区別できるだろうか? ブレイク・スナイダー『SAVE THE CATの法則』(フィルムアート社)211p,221p

94

Page 95: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

序盤でとくに気をつけてほしいこと

95

・ジャンルと主役がパッとわかるように

・シチュエーション説明は丁寧に、わかりやすく ・主人公の能力と行動原理をハッキリ描く

Page 96: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

序盤なのに情報量が多いとつまずく

読者は設定が頭に入ってないので、あまりカタカナの地名やキャラ名を並べないほうが読みやすい

96

Page 97: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章術・応用編

1.純・文章作法 2.構成、キャラ、設定も関わる文章表現 ・ツカミのインパクト ・クライマックスの盛り上がり ・主人公たちの動機 ・そのほか

97

Page 98: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章表現と設定は密接に結びついている

どうも文章が…と思うときに考えられる背景

①文章があまりうまくないので中身が伝えられていない

②設定がおとなしいので、文章力はあるのにキャラクターが立ってこない

②に問題があるケースも多い

98

Page 99: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

もっとメリハリを ぼやっとしたキャラが多く、もったいなく思うことがよくある

・登場時に外見や性格など、基本的な情報をしっかり描き込む ・もっともっとギャップを

意外感、ツッコミどころがあった方がかわいげが出る。知りたくなる ・もっと活躍するキャラに

99

Page 100: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

ツカミのインパクトにあたる特徴・能力をつくる

すごいやつ、尖ったやつ、感情表現が激しいやつなど、特性のあるキャラがベター。 読者の感情を揺さぶる起伏を。

無個性でプレーン、淡々とした主人公はうけない。 男性の書き手には、ヒロインには自分の理想を投影するのに、なぜか主人公は自分の分身みたいに書いてしまう人がけっこういる。主人公も人々の理想を体現する部分をもっていた方が主役然とする。

100

もっと活躍するキャラに

Page 101: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

参考:皆川亮二『ARMS』の主人公

高槻涼 地元の高校に通う、普通の高校生。

身のまわりにあるもので武器や罠などをすぐに作れるサバイバルの達人。

(MyFirstWIDE版キャラクター紹介より) 全然「普通」じゃない! だからいい 101

Page 102: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

ツカミの部分で行うこと

・舞台設定(主人公が置かれたシチュー絵ション)とジャンルの説明

・主人公とパートナーの紹介。どんな能力があって、何をする人たちなのか。 ・登場人物同士の出会いのシーン

・事件を起こして読者の気を引く。これからさきに「やること」を示す。

102

Page 103: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

主人公とパートナーの出会いのシーンで書くべきこと

ふたりを対比し、関係づけること ・客観的な「外見」や能力の描写:すごい! すごい!かっこいい!かわいい!などと思わせる、気を惹くキャラがエンタメではベター

・各々の特徴的な「行動」:こういうやつか ツカミになるインパクトのある動作を

・主観的なお互いの「印象」:何こいつ! 相手について、どう思ってるか。

・それぞれの「感情」 相手に対してに限らず、何を感じているか

103

Page 104: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

恋愛要素がある物語での出会いの描写

気になるんだけどストレスも感じる相手を設定するといいかもしれない。何も衝突が起こらないとドラマが動かない。 感情を揺れ動かすものにひとは反応する。 感情を激しく描いて「伝染」させるべし。 例.少女漫画や韓流ドラマでは、オラオラ系の

イケメンとそれに振りまわされるヒロインが最悪の感情からスタートして、紆余曲折を経て結ばれる (憎み合ってるけど序盤に事故でキスするとか)

104

Page 105: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章術・応用編

1.純・文章作法 2.構成、キャラ、設定も関わる文章表現 ・ツカミのインパクト ・クライマックスの盛り上がり ・主人公たちの動機 ・そのほか

105

Page 106: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

クライマックスを盛り上げる

①主人公をめいっぱい活躍させる

真の能力覚醒なり、ビジュアル的にもハデな、爽快感のある行動をさせる ②パートナーの重大な秘密、過去を明かす

思わず共感してしまうような意外かつシリアスな過去を明かす ③設定面のサプライズ この世界or能力は、こう見えていたけど実はこうだったのだ!という仕掛けを作る 106

Page 107: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

クライマックスを盛り上げるには…

クライマックス“まで”の布石も重要

107

Page 108: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

クライマックス(まで)の盛り上げ方

・承終わり=転の直前で、いきなり危険度をアップする

その前段階では「見せかけの勝利」=主人公が望むものすべてを手に入れた気になっているが、一転して絶不調の状態に追い込まれる。死の匂いが漂う

・「結」はオープニングと対(正反対)になり、本物の変化が起きたことを見せる

ブレイク・スナイダー『SAVE THE CATの法則』を参考に作成

108

Page 109: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

クライマックスでは… ・バトルにもっと緊張感を

主人公たちの能力に代償が必要だとか「負けそうになることもある」という感じがほしい。

・ライバル、倒すべき敵は明確な方がいい。そいつとこちらの能力差も明確に。 ・ラストバトルをもっと粘っこく

動機がある敵と戦ったほうがいい。言葉と言葉の闘いもあると盛り上がる。 109

Page 110: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

バトル、クライマックスの展開での注意

直接、物理的に戦闘する方がよい。

主人公がクライマックスの盛り上がりに間接的にしか関われないと、すっきりしない。 例.マネージャーなど「応援する」立

場。バトルものなのに主人公の戦闘能力・指揮能力が皆無

110

Page 111: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

・最初に出した主人公の能力が最後までずっと同じ力で、全然印象が変わらない

・キャラの心情は変わるが能力変化や世界設定への印象変化が起こらない

・逆に、世界の謎や魔法の秘密についてはどんどんサプライズがあり新しい面が見えてくるが、主人公やヒロインの心理状態や関係性は序盤から変化・成長しない

111

気をつけてほしいこと

Page 112: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章術・応用編

1.純・文章作法 2.構成、キャラ、設定も関わる文章表現 ・ツカミのインパクト ・クライマックスの盛り上がり ・主人公たちの動機 ・そのほか

112

Page 113: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

主人公たちの動機を掘り下げよう

・何がしたいの? ・何でこういう行動してるの?

・そんな大事なこと、それだけの理由で決めちゃっていいの? ・流されてない?(主体性がない) と感じるキャラが多い

113

Page 114: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

ゴール ゴール

スタート スタート

主人公は何がしたいのか?

コンフリクト コンフリクト

ゴール(目的)は何なのか?

Page 115: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

ゴール ゴール

スタート スタート

コンフリクト コンフリクト

強い動機がある中で巻き込まれるなら

早くゴールに向かわなきゃいけないのに!

Page 116: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

スタート スタート

コンフリクト コンフリクト

強い動機がないのに巻き込まれると

どこに向かってるんだ???

Page 117: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

動機に関するwhereとwhy

なぜ動機の掘り下げが甘くなってしまうのか? どこに問題があるのか? 117

Page 118: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

118

キャラクター名 過去 現在 近未来 (その巻終了までの変化)

スペック (外見、能力)

性格 (character)

内面 (mind,will,desire)

課題、障害 (mission,conflict)

変化を起こす

イベント

過去→現在 「話のきっかけ」

現在→近未来

微妙なキャラのよくある特徴

過去がない。現在から先しかない

過去の 原体験 がないと なぜ今

この行動するの?が

弱くなる

Page 119: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

119

・冒頭の①属性の提示(ツカミ) 能力や役割と外見、能力と性格のGAP ・中段の②隠されていた多面性の提示 性格と内面GAP、外見変化、本音の吐露 過去(秘密)の開示 ・終盤の③時間経過を伴う変化/成長 過去と現在、始まりと終わりの変化

キャラ演出:3段階のGAP、意外性、変化をつくる

Page 120: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

葛藤や過去をもっと掘り下げてほしい

印象が最初と最後で変わるように

パッと見は楽しそうな人物なら、パッと見と違う側面を出して印象を変えていく。 終始良い子だと表層的な関係に見える

「本当はこう思ってた」「実はこうだった」という意外感ほしい。もっと「落とす」ところを。 何が課題、弱点なのかハッキリ描く

120

Page 121: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

動機を明確にするには過去を掘る

・「過去→現在」の変化とその理由を作る ・現在の動機/行動原理の背景に、過去の出来事とのつながりを設定する

主人公が何かに巻き込まれたとき、決断を迫られたときに「どうしてそんなことをするのか」の納得感が高まる

121

Page 122: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

微妙な原稿で散見される男女関係……

最初から最後まで波風立たず進む →仲よすぎ。もっと中盤に二人のコンフリクトを。

関係がバラバラになるイベントを配置し、そのままクライマックスのバトルに突入、再び協力関係が戻る。とかにしたほうが熱い展開になる。心情的な変化、成長もつくりやすい。 山、波、揺らぎをつくろう。

122

Page 123: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章術・応用編

1.純・文章作法 2.構成、キャラ、設定も関わる文章表現 ・ツカミのインパクト ・クライマックスの盛り上がり ・主人公たちの動機 ・そのほか

123

Page 124: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

感情移入は…

感情が描かれないと 移入のしようがない。 登場人物達の感情を 意識的に書き込んだほうがいい or察することができるように書く 124

Page 125: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

恋愛ではどんなときに嬉しいと思うか? ・自分のことを想ってくれていることがわかったとき ・相手が嫉妬してくれたとき ・相手が自分のために何かしてくれたとき

・ランクが高いと思っている相手よりも優位に立てたとき(男の場合)

125

Page 126: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

社会心理学の原理「影響力の武器」 ■返報性:恩恵を受けたら報いたいと感じる →好かれる、いいことされる ■好意:好意をもつ相手ほど賛同したくなる →好かれる ■権威、希少性:専門家に指示を仰ごうとする 手に入れにくいものほど求めたがる →偉い、凄い、一番、みたいな異性から好かれると嬉しい

ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』を参考 126

Page 127: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

恋愛ではどんなときに嬉しいと思うか? ・自分のことを想ってくれていることがわかったとき ・相手が嫉妬してくれたとき ・相手が自分のために何かしてくれたとき

・ランクが高い相手よりも優位に立てたとき

→逆をやれば嫉妬や不安が発生する 波風が立つ

127

Page 128: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

出る必然性のないキャラがいると文章がごちゃっとする

・キャラが多くて消化しきれてないケース

1冊でちゃんと掘り下げられるのはメイン1~2人なので、中心人物を決めたうえで他のキャラが絡む形式にした方が良い ・マスコットキャラがいらない子のケース

行動をともにするやつがいるなら、そいつがいないと困るイベントが何かしら発生しないと、出る必然性を感じられない

128

Page 129: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

登場キャラの性格が似てる

意識的に差をつけよう

・いい人すぎると、盛り上がらない 敵はみんな悪者、味方は全員いいやつ、だと居心地悪い。こちらサイドにも嫉妬や見得、不安を持たせた方が人間くさくなる

・もっと衝突させる 「違い」があるから大なり小なりぶつかる。ぶつからないのは、差がないから。

129

Page 130: 下読みをやっていて気になる文章のパターンとその対策

文章を読みやすくするには訓練しかない

TIPSの紹介や細かい話が多くなりましたが…

・文章を読みやすく、わかりやすくするには、書いて、直して/直されてを繰り返すしかない

・文章のことだけを考えていても気持ちいい文章にはならない。人物やイベントを工夫しないと、文章だけがうまくても、結局つまらない文章になる(エンタメの場合)。

130