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1 大阪の社会福祉 第750号(毎月1回発行) 「大阪の社会福祉」は共同募金分配金を活用して発行しています。 2017.11 750 CONTENTS 社会福祉 法  人 大阪市社会福祉協議会 http://www.osaka-sishakyo.jp 10 23 26 66 使市社協 99 使

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1 大阪の社会福祉 第750号(毎月1回発行) 「大阪の社会福祉」は共同募金分配金を活用して発行しています。

発行 : 社会福祉法人 大阪市社会福祉協議会  編集・発行人 : 壺阪 敏幸  [毎月1回発行]〒543-0021 大阪市天王寺区東高津町12-10(大阪市立社会福祉センター内) Tel.06-6765-5601 Fax.06-6765-5605 http://www.osaka-sishakyo.jp

2017.11

750

C O N T E N T S

港区 地域一丸の見守りをめざして独自のマッピングを推進

元気通信 旭区 新森地域から 新森ふれあいデー

シカゴの社会福祉 視察研修参加者レポート④

〈特集〉「ずっと住み続けたいまちづくりのために」

 4つの事業が連携し、地域包括ケアを推進

住之江区 「防災ママカフェ&防災パーティ」で

     子育て世代と地域をつなぐ

平野区 人がつながり、子どもの笑顔が輝く地域に

はじめまして!こんにちは♪

 認定NPO法人 サービスグラント

  地域を支えるNPO・地域団体を応援します

238

57〜

6 2

 最近不愉快なこと

が続いている。昨夜

も犬の散歩に出かけ

たら、自転車の人が

スーパーのレジ袋に入ったご

みを、公園に放り投げていっ

た。エッと思うまもなく、自

転車は走り去っていった▼地

下鉄に乗って、6人がけのシ

ートに4人で座っている人の

前に立っても、知らん顔。タ

ーミナルで降りて、満員の列

をゆるゆると歩いていたら、

後ろからきた若者が、ぶつか

ったのに謝りもせず、通り過

ぎていく。さらに、歩きスマ

ホの女性には正面から当たら

れた▼いったいこの世はどう

なっているんだと思う。周囲

を配慮することができない若

者が増えている。年を重ねて、

自分が怒りっぽくなっている

のかも知れないと一応は思っ

た。が、そればかりではない

ように思う▼世間では高齢者

の犯罪が増えているらしい。

貧困で無銭飲食などを繰り返

す人もいるだろうが、私と同

様不満がたまって、暴力事件

を起こす人も増えている▼気

が回らない若者たちの増えて

いる社会、怒りっぽくなって

トラブルを起こす高齢者のあ

ふれる社会。世界中で起こっ

ている無差別テロに近い状況

が、私たちの周囲にも普通に

あふれているのかも。�

(石)

社会福祉法  人 大阪市社会福祉協議会 http://www.osaka-sishakyo.jp

 市社協は10月23日、大阪国際

交流センターを会場に大阪市社

会福祉大会を開催し、約120

0人の来場があった。

 第1部では、NHK大相撲解

説者の舞の海秀平さんによる

「小よく大を制す」と題した講

演がおこなわれた。

 第2部の式典では、市社協の

宮川晴美副会長による「開会の

ことば」に続き、主催者を代表

して、乾繁夫会長からあいさつ

がおこなわれた(写真)。

 人口減少社会の日本において

は、さまざまな福祉課題が山積

しており、大阪市域においても

生活困窮や虐待、子どもの貧困

など従来の枠組みでは解決でき

ない課題がたくさんあるが、戦

後、昭和26年に市社協が設立さ

れ、66年にわたる

これまでの経験値

をもって、地域や

行政、社会福祉施

設と一体となって

多様な福祉課題へ

対応し、社協の使

命を果たしていき

たいと述べた。

 その後、多年に

わたり地域福祉の

推進に尽力され、

市社協

その功績が顕著な社協役員やボ

ランティア、また、大阪市民の

福祉の向上に長年にわたり功績

のあった社会福祉施設・団体従

事者などに対し、市長および市

社協会長から表彰状・感謝状が

延べ99団体・612人に贈呈さ

れた。

 中田浩副会長により朗読され

た「大会宣言文案」(要約)で

は、「制度の狭間にある人など

への支援や、災害時の要支援者

の支援体制の構築も喫緊の課題

と言える。市社協は区社協と一

層連携しながら住民の方々と手

を携え、地域福祉を推進する中

核的な役割を果たし、地域共生

社会の実現をめざしていく。本

大会の開催にあたり、地域の人

びとの厚い信頼に応え『一人ひ

とりの人権が尊重

され、誰もが自分

らしく安心して暮

らすことができ

る、やさしさとぬ

くもりのある福祉

によるまちづく

り』を推進する」

と宣言し、満場の

拍手で原案どおり

採択され、大会は

幕を下ろした。

大阪市社会福祉大会

社協の使命を再確認

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2017年(平成29年)11月 2

港 区

旭区 新森地域から「みんな仲良く」をモットーに

新森ふれあいデー 10月14日、

土曜授業の

日。講堂に

集まってき

た新森小路

小学校の子

どもたち

は、舞台上

の見慣れぬ

お琴に興味

津々。何がはじまるのか、子

どもたちはワクワクドキド

キ。そこに現れたのが、盲目

の琴演奏者、竹内一さん。昭

和63年には日本箏そうきょく曲連盟主催

コンクールで優秀賞を受賞し

たこともある実力者である。

この日は、子どもや地域の人

たちが楽しく過ごす「新森ふ

れあいデー」の一環として演

奏を披露するため、同小学校

を訪れた。まずは、お正月に

誰もが聞いたことのある、有

名な曲「春の海」から演奏が

はじまると、子どもたちは静

かに聞き入っ

た。竹内さんが

琴用にアレンジ

した人気アニメ

の曲や校歌を演

奏すると、子ど

もたちは口々に

歌い出し、講堂

いっぱいに元気

な歌声が響き渡った。

 このほか「新森ふれあいデ

ー」では、地元の新森地域で

活躍する人や区社協の登録ボ

ランティアが協力し、子ども

たちは各教室で、手話、昔遊

び、畳づくり、尺八、バイオ

リン、手品などの鑑賞や体験

をして、楽しいひとときを過

ごした。また、新森商店会な

どと協力し、10月の1週間を

「新森スペシャルウィーク」

と銘打ち、新森ふれあいデー

のほか、こども絵画展覧会や

新森まつりなども開催。

 新森校下社会福祉協議会の

宮本正路会長は「とにかく、

みんなで仲良くやろうと思っ

たのが、このイベントの原点

です。縁があって同じ地域に

暮らしている私たちは言わば

運命共同体。災害など、いざ

という時に一致団結するため

にも、子どもたちとふれあう

機会を増やし、つながりを強

くしたいと思いまし

た」と話す。

 学校や地域、商店

会などが一体となっ

て、「みんな仲良

く」をモットーとし

たまちづくりが着実

に進んでいる。

琴の音色に自然と口ずさむ

 地域で見守り活動を担う団体

同士の連携促進をねらいとし

て、港区民生委員児童委員協議

会と港区地域ネットワーク委員

会の合同研修会「地域における

見守り活動のこれから」が、9

月8日、港区民センターで開催

された。

 基調講演として、大阪教育大

学教育学部の新崎国広教授が登

壇。国の政策動向に触れたうえ

で、ご近所のお節介さんの目配

り・気配り・心配りこそが今後

ますます重要となると強調した。

 後半は、地域での取組み事例

を紹介。港区社協では、見守り

活動を担う団体同士が集まる場

を設けて、地域ごとの“マッピ

ング”を推進している。その手

順は、民生委員の担当地区を区

分け(赤線)した地図上に、区

社協が要援護者名簿により把握

している高齢者(赤点)、障が

い者(緑点)の情報、さらには

地域で気にかけている人

(青点)の情報を落とし

込む。そこへ見守りの担

い手である民生委員(赤

テープ)、地域役員(黄

テープ)、区独自の見守

り協力事業者(青テー

プ)を加えるというも

の。区社協の堀健一郎副

主幹は「各団体の見守り

方の違いを知るととも

に、見守られる人・見守

る人を確認し、地域全体

で見守りのあり方を考え

る出発点に」と、その期

待効果を説明した。

 実際に取り組んだ地域

での反応はどうか。「も

ともと民生委員と地域ネ

ットワーク委員の連携が

密だったが、マッピングを通し

て新たな気づきがあった」と築

港地区民生委員児童委員協議会

の磯中ミツ子委員長。作業を通

して、見守り対象者が多い集合

住宅での居場所の必要性や、見

守り協力事業者の新規開拓も話

し合われたという。

 南市岡地域では、支援が必要

な人の情報をまとめた町会ごと

の名簿がすでにあったため、そ

れに情報を追加する形で、町会

単位でのマッピングを採用。南

市岡地域活動協議会の松井信樹

理事長は「個人情報の詰まった

マップは取扱いに注意すべきだ

が、安心できるまちづくりには

欠かせない」と語った。

 新崎教授は「マップを完成さ

せることより、過程を通じた関

係づくりが大切」と総括。地域

一丸の見守りに向けて、具体的

な取組みのイメージを、区全体

で共有する機会となった。

スライドを用いてマッピングの具体的な手順を紹介

築港地域磯中さん

南市岡地域松井さん

地域一丸の見守りをめざして

独自のマッピングを推進

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3 大阪の社会福祉 第750号(毎月1回発行) 「大阪の社会福祉」は共同募金分配金を活用して発行しています。

全国各地でオープニングセレモニー開催

 そこは鮮や

かなグリーン

の壁に大きく

「ucan

(ユーキャ

ン)」と示さ

れた児童福祉

施設で、歩道

側のフェンス

沿いには、か

わいい赤い花

がきれいに手入れされていました。と

ても児童福祉施設には見えず、周りの

建物とも一線を画しています。

 この施設は、今から約150年前、

1869年の南北戦争による戦災孤児

の施設として始まりました。シカゴ大

火などの苦難を乗り越えながら、20

02年に現在の名称となり、2015

年には、児童に関わる家族支援も含め

てさまざまな支援をおこなう施設とし

て現在の場所に設置されました。関連

施設も含めてイリノイ州全体では、7

00人のスタッフがいると聞き、スケ

ールの大きさが伺えます。

 この施設では6~18歳の子どもが約

70人、性別と年齢別に分かれて生活し

ています。グループ全体としては教

育、心理療法、居住支援、里親支援、

グループホームの紹介、精神科受診、

就労支援など、さまざまな業務がおこ

なわれています。

 シカゴは殺人事件の件数が2016

年は800件と、ニューヨークとロサ

ンゼルスの合計より上回り、そ

のような社会で生活する子ども

たちが、反社会的グループから

離れ、安全に生活する困難さは

想像を超えるものがあると言え

ます。そこで、ucanでは反

社会的グループへの働きかけを

実施していて、そのため教会や

警察との協力も不可欠とのこと

でした。

 今回の見学時には、二人の少

年がインタビューに応じてくれました。

まっすぐ前を見つめる少年と、落ち着

きなくそわそわした様子の少年。前者

の少年は、12歳で友人が殺人事件を犯

し、15歳のときには兄が銃で殺される

など、ここでは未成年であっても簡単

に銃が手に入るなど、救いが見えない

現実を語りましたが、二人は「この施

設に来て変わったことは?」との質問

に、「落ち着ける(その方法を教えて

くれる)、活発でいられる、成長して

いると感じられる」と答えました。将

来の夢など語る表情はまだまだ幼さが

見え隠れし、銃社会の被害者となった

彼らはまだ救われた側の子どもなのか

も知れないと考えさせられました。

 少年たちへのインタビューの前に

は、職員のストレスマネジメントにつ

いて丁寧な説明がありました。生きる

か死ぬかのような過酷な経験をしてき

た子どもたちと向き合い続けるため

に、それらは大変重要な手続きに思え

ました。

視察研修参加者レポート④

社会福祉法人 聖家族の家 大西 裕さん

子どもたちと         向き合い続ける

児童福祉施設ucan

第71回

赤い羽根共同募金運動

大阪市社協職員が

街頭募金活動

 赤い羽根共同募金運動が、10

月1日から始まり、オープニン

グセレモニーが、なんばウォー

ク・クジラパークでおこなわ

れ、大阪府共同募金会の乾繁夫

会長、高岡武副会長、大阪府・

市の代表者などが共同募金運動

への協力を呼びかけた。

 次に、厚生労働大臣のメッセ

ージがANAグループ客室乗務

員の松野恵さんから伝達され、

乾会長が披露。また、共同募金

受配者の代表として、社会福祉

法人いずみ野福祉会・泉南デイ

ホーム布藤(ふとう)恭子施設

長から寄付者(府民)に向け、

ありがとうメッセージが伝えら

れた。

 その後、今年の記念バッジデ

ザインを制作した大中圭子さん

による開始宣言があり、街頭募

金および啓発活動がスタート。

募金箱を手に通行人に募金協力

を呼びかけた。

 共同募金運動は、来年3月31

日まで全国各地で取り組まれる。

善意にこころがあたたまりました

左から松野さん、乾会長、大中さん、高岡副会長

 市社協職員22人が10月2日の

夕刻、天王寺区上本町6丁目交

差点周辺で、街頭募金をおこな

った。市社協が実施する多くの

事業に共同募金の配分金があて

られていることを踏まえ、財

源・資金の大切さ、募金者の思

いを再認識するため、平成16年

からこの活動を続けている。こ

の日は13,469円の募金が

集まり、大阪府共同募金会を通

じ、福祉事業に活用される。

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2017年(平成29年)11月 4

「ずっと住み続けたいまちづくりのために」

4つの事業が連携し、地域包括ケアを推進

特 集市 社 協大阪市地域支援事業研修会「区において自分たちができること」をテーマに

それぞれの立場で活発な意見を交わした

お世話型ではなく

自立支援型の

ケアマネジメントを

 団塊の世代(約800万人)

が75歳以上となる2025年

(平成37年)以降、国民の医療

や介護需要がさらに増加するこ

とが見込まれています。202

5年を目途に、高齢者の尊厳の

保持と自立生活支援の目的のも

とで、可能な限り住み慣れた地

域で、自分らしい暮らしを人生

の最期まで続けることができる

よう、医療・介護・予防・住ま

い・生活支援が一体的に提供さ

れる「地域包括ケアシステム」

の構築が求められています。

 平成27年度の介護保険法改正

では、消費税財源も活用しなが

ら地域支援事業を充実し、新た

に包括的支援事業に①在宅医

療・介護連携の推進②認知症施

策の推進③地域ケア会議の推進

④生活支援サービスの体制整備

に係る事業が位置づけられまし

た。

 大阪市においても、各区で上

記4事業を推進しています(平

成29年9月現在時点で①④は一

部の区で未実施)。

 各々の事業における取組みや

解決すべき課題には重なり合う

部分も多いことから、4事業の

連携は重要であり、役割をうま

く分担しながら事業を推進して

いく必要があります。そこで、

9月19日、市内で初めてとなる

福祉局、健康局の枠を超えた4

事業合同の研修が開催され、各

事業の担当者のほか、区役所の

担当部署の職員がオブザーバー

で参加し、総勢146人が集ま

りました。

菱谷文彦課長

 まずは、大阪府福祉部の高齢

介護室介護支援課・菱谷文彦課

長が登壇。豊富なデータを用い

て「地域包括ケアシステムや地

域支援事業について」と題して

講演しました。

 「大阪府は、被保険者一人あ

たりの介護費が全国一高いとい

うデータがあります。それに

は、要介護認定率が高く、認定

者自体が多いことが影響してい

ます。そして、全国平均との差

の約6割は、軽度者に分類され

る『要支援1・2』です。要支

援になる主な原因は、関節疾

患、骨折・転倒、高齢による衰

弱です。これらの重症化を食い

止めるには、自立支援型ケアマ

ネジメントが必要」と菱谷課長

は強調します。

 「自立支援型ケアマネジメン

ト」とは、根本的な原因にアプ

ローチし、本人の望む生活の実

現をめざすものです。従来のケ

アマネジメントは目標があいま

いであったり、課題解決を意識

したものでなかったり、「困り

事に対して介護サービスを提供

する」いわば「お世話型」でし

た。それを改め、「自立支援型

ケアマネジメント」を浸透させ

るには、「ケアマネジャーに対

して研修などをおこなうだけで

なく、地域ケア会議で個別に対

応していくことも重要」と菱谷

課長。「このことは、本人のQ

OL(quality�of�life

:生活の

質)の向上に貢献するだけでな

く、財政的にも大きな効果が期

待できる」と語りました。

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5 大阪の社会福祉 第750号(毎月1回発行) 「大阪の社会福祉」は共同募金分配金を活用して発行しています。

団体や組織などの

連携・協働を促して

地域の思いを形にする

人々のつながりを大切に

それぞれの視点から

課題解決に貢献

安藤努さん

上田利久さん

黒田和子さん

長谷川安伸さん

 次に、4事業から一人ずつ登

壇し、事例報告がおこなわれま

した。

 東淀川区認知症強化型地域包

括支援センター・認知症施策推

進担当の安藤努さんは、「地域

分析と認知症支援ネットワーク

の広がりについて」報告しまし

た。同区の認知症初期集中支援

チーム(ほほえみオレンジチー

ム)では、キャラバンメイト連

絡会の有志の方が開催している

巡回式のカフェ「オレンジドー

ナツ」に参画し、認知症の方と

そのご家族がリラックスできる

場づくりをめざしています。

 また、地域のサロン活動へ定

期的に参加。「当事者やご家族、

地域の方々と顔の見える関係が

構築でき、相談につながってい

ます」と安藤さん。活動・事業

を通して出会った人々や機会を

大切にし、そこからひと手間、ふ

た手間かけて広げてみようと心

がけているそうです。安藤さん

は地域包括ケアに関わる支援者

が、少しずつ手を伸ばして力を

合わせていきたいと語りました。

 東成区医師会の在宅医療・介

護連携支援コーディネーターの

黒田和子さんは、「地域ケア会

議(個別ケース会議)を通じた

連携について」、近隣トラブル

を引き起こした80歳代の独居女

性の事例を通して説明。その高

齢者は金銭管理ができず、認知

症が疑われましたが、診断を受

けていませんでした。そこで、

地域ケア会議を開催することと

なり、黒田さんは会議での話し

合いを受けて認知症の検査が受

けられる病院の情報を提供した

り、医師との連携についての助

言などをおこないました。会議

をきっかけに、新たに認知症初

期集中支援チームも支援のネッ

トワークに加わり、役割分担を

して支援した結果、今でも地域

の人々に見守られながら自宅で

暮らしているそうです。

 看護師でもある黒田さんは、

自らの役割を「医療職とのつな

ぎ役として、地域ケアを担う人

たちとの調整をすること」であ

ると語ります。

 住之江区社協の長谷川安伸さ

んは、「生活支援コーディネー

ターの取組み状況について」発

表。生活支援コーディネーター

として多様な地域資源との協働

をすすめる長谷川さんが、具体

的な事例をいくつかあげて報告

しました。

 リハビリテーションの専門性

を活かして地域に貢献したい森

ノ宮医療大学と、運動ができる

教室の立ちあげを望んでいた地

域の人々を結びつけた事例で

は、同大学が地域のために考案

した「もりもり元気体操」を用

いた体操教室が区内3地域でス

タートしました。「自立運営や

取組み継続のための担い手発

掘・育成を並行してサポートし

たのがポイントです」と長谷川

さん。

 東成区北部地域包括支援セン

ター・管理者の上田利久さんは

「東成区包括的支援事業4事業

連絡会の取組みについて」報告

しました。

 東成区では、各事業が同時期

に同じようなイベントをおこな

って互いに重なっている、事業

ごとの会議に参加するメンバー

が同じであるが連動していな

い、といった理由から平成28年

11月に同連絡会を発足。上田さ

んは「各事業担当者と区役所が

同じ目標や計画を共有できるよ

うになった。さらに担当者が替

わっても、人間関係の構築がス

ムーズになり、これまでの流れ

を継続できる」と連絡会のメリ

ットを解説。さらに連絡会での

話し合いから、リハビリテーシ

ョン職と連携した体操教室の取

組みや複合的な課題を抱える世

帯への支援に向けたプロジェク

トにつながっていることを報告

しました。◇ 

 ◇  ◇

 その後は、区の中でより良い

連携のために、自身ができるこ

と、またはそのための課題など

について意見交換。区ごとに分

かれたテーブルでは活発な議論

がおこなわれ、有意義な時間と

なりました。

 最後に、菱谷課長から各々の

取組みの特徴、意義について改

めてコメントがあり、「自らの

担当分野については詳しいので

すが、隣の部署の仕事内容につ

いて知らないことが多い。問題

や課題は相互に関連しているの

で、お互いの領域に視野を広げ

ましょう」と助言し、締めくく

りました。

4事業の内容事業名 内容

1 在宅医療・介護連携推進事業 在宅療養が必要な高齢者を支える医療と介護の「橋渡し役」をおこなう。

2 認知症初期集中支援推進事業 認知症が疑われる人に対して専門チームで支援し、状態に応じた医療や介護サービスにつなぐ。

3 地域包括支援センター運営事業 高齢者に関する相談窓口。虐待の対応等の権利擁護業務や地域とのネットワークづくりをすすめる。

4 生活支援体制整備事業地域における生活支援・介護予防サービスの開発等を支援することにより、生活支援の充実及び高齢者の社会参加を推進する。

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2017年(平成29年)11月 6

「防災ママカフェ&防災パーティー」で

子どもの命を守れるのは

ママしかいない

人と人とのつながりこそ

最大の防災

子育て世代と地域をつなぐ

 9月7日・19日の2日間、住之江区まちづくりセンター、区

社協、子ども・子育てプラザ、NPO法人、区役所など共催で

「防災ママカフェ&防災パーティー」が開催された。会場の

「すみのえ舞昆ホール」には、約40組の親子、地域の役員など

100人を超える参加があり、防災を学び、語り合った。この

動きは、地域福祉活動において「子育て世代」というこれまで地

域活動に関わりの薄かった層との接点をつくる一歩となった。

 第1回は、「子どものいのち

を守れるママになろう」と題し

て(社)スマートサバイバープ

ロジェクト特別講師のかもんま

ゆさんが講演した。かもんさん

は、東日本大震災の経験をきっ

かけとして、全国135箇所、

6800人以上の人に東北・熊

本で被災したママたちの体験談

や防災ノウハウを伝えてきた。

 被災の現実、とりわけ避難所

の環境にショックを受けた人も

少なくないだろう。並んでも物

資が当たるとは限らない。離乳

食はないなど食料確保の問題を

はじめ、不衛生な環境、男女共

同トイレを夜間に使う時の不安

など。行政の対応を待っている

だけでは、災害弱者は救われな

い。意識改革の必要性と子ども

たちへの防災教育が大切だと訴

えた。

 「『地震=恐い』とタブー視

するのではなく、地球が生きて

いる以上、地震からは逃がれら

れない認識を持つこと。南海ト

ラフは、もう1万5000年動

かずエネルギーを溜めている。

子どもたちにもそれを伝える。

『長い間、緊張していると動き

たくなるでしょ。地球も同じ』

という風に」。この話を聞いた

ある子どもは、1週間後に熊本

で被災したが、「ママ、これは

地球がちょっと動いただけだよ

ね」とパニックに陥ることはな

かったという。

 このほか、「地震は準備ので

きる災害」だとして、備蓄や家

具の固定、室内の安全地帯を知

ること、1日生き延びるための

防災ポーチづくりなど実践的な

アイデアを紹介した。講演は映

像と実話で非常にリアリティが

あり、参加者は熱心に聞き入っ

ていた。

 第2回は、防災パーティとい

うテーマで、前半は甲南女子大

学人間科学部の鈴木大介准教授

を講師に、同じ地域に暮らす

方々のトークセッション。「パ

ーティとはもともと仲間という

意味。防災を切り口にして地域

の人々が仲間になれるようにと

いう願いを込めています。町ぐ

るみで子どもを支えるという動

きの第一歩になれば」とプログ

ラムの主旨を紹介。身近な校区

に住むママ・パパたちと地域の

方8~10人でテーブルを囲み、

生活基盤を共有しながらそれぞ

れの想いや体験を交換しあった。

 最初に、テーブルの中央に広

げられた地域の地図を囲んで、

町の風景を思い出しながらお気

に入りスポットをお互いに紹

介。会場全体が和み、それぞれ

の距離が近づいた。

 次に、一人ひとりが知ってい

る「防災・備災についての町の

あれこれ」を共有。避難所の位

置など安心につながる情報、崩

れやすいブロック塀など危険に

つながる情報などが話された。

古くから地域に住むシニアが身

ぶり手振りで熱心に自らの知識

を披露する姿も見られ、災害時

の避難経路の確認もテーブルご

とにおこなわれた。

 最後に、それぞれの視点での

避難所への思いを交換した。鈴

木先生は「今、小さな地域の中

での支え合い、助け合いが注目

されている。緊急時にまず対応

してくれるのは身近に暮らす

人」と話し、締めくくった。

 今回、イベントを共催したN

PO法人ママふぁん関西の戎

(えびす)多麻枝さんは「ママ

たちは防災に関心があっても情

報に触れることが難しく、防災

訓練などの取組みを知らない人

が多いので、こういう場を増や

していきたい。非常時に人を救

えるのは奇跡ではなく、普段か

らの準備と対応力。人と人との

つながりが最大の防災です」と

話した。

 まちづくりセンターの小出泰

生主査によると、参加したマ

マ・パパからは、「地域の役員

さんと知り合えてよかった」

「お手伝いできることをしてい

きたい」などの感想が、また地

域の役員からは、「ママ・パパ

たちが熱心で話せてよかった」

「情報を届けたり受入れの工夫

が必要」などの感想が寄せられ

たとのこと。「防災は、みんな

の共通テーマ。今後は小地域で

展開して、防災を入口に、若い

世代にはさまざまな地域活動や

それを支えている人を、地域の

役員には若い世代の人や考えを

知ってもらい、人と人とのつな

がりがひろがる機会をつくりた

い」と展望を語った。

カフェ風の会場には、だっこひもで子どもとともに参加する姿も

住民同士が情報を共有しあったトークセッション

住之江区

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7 大阪の社会福祉 第750号(毎月1回発行) 「大阪の社会福祉」は共同募金分配金を活用して発行しています。

人がつながり、子どもの笑顔が

輝く地域に

地域福祉研修会

平野区

風をよむ

 SOSを出せない人たち、

近くに支えてくれる人がいな

い人たちのことを他人事では

なく、我が事として考える人

が社会の中に増えていくこと

は誰もが望むことである。

 国は、こうした社会の実現

をめざして、地域共生社会実

現本部(2016年7月設

置)の地域力強化検討会にお

いて「我が事・丸ごと」の

「地域共生社会」の実現に向

けた議論を進めてきた。

負担を感じ、結果として、活

動に協力しなくなってしまう

と述べている。そのため、ロ

スは、地域のペースを大切に

することの重要性を説き、地

域がやりやすいと感じるペー

スで活動を進めていくことが

何よりも求められるとした。

 今後は、市町村レベルでの

「我が事・丸ごと」の地域共

生社会の実現に向けた検討が

始まると考えられるが、その

際に「地域のペースを大切に

する」という視点を持って進

めることができるか。その視

点が不十分だと、住民にとっ

ては押しつけられた「我が

事」になるかもしれない。

(参考文献)マレー・ロス著

/岡村重夫訳(1968)

『コミュニティ・オーガニゼ

ーション―理論・原則と実際

―』全国社会福祉協議会。

 しかしながら、地域力強化

検討会が出した最終のとりま

とめ(2017年9月)にあ

るように「我が事」の意識は

誰かに押しつけられて持てる

ものではない。地域での支え

合いが大事であることは誰も

が認めるが、いざそれを自分

のこととして求められると、

多くの人たちはまず尻込みし

てしまうのではないだろう

か。

 日本の地域福祉実践に大き

な影響を与えたマレー・ロス

(Murray�G

.Ross,

1910

―2000)は、地域の課題

を住民が主体となって解決し

ていく過程においては、住民

に対して、住民自身及び住民

自身の行動様式の変化、つま

り文化全体の変化を求めるも

のでもあるとした。したがっ

て、その変化に対応するに

は、当然のことながら多くの

時間を要し、無理やりに推し

進められたとすると、住民は

 平野区では、子どもの居場所

づくりなどの取組みが広がって

いるなか、9月14日、地域でい

かに子どもを見守り、育んでい

けるかをテーマにした地域福祉

研修会が平野区民ホールを会場

に開催された。講師は、大阪市

子ども子育て支援会議専門委

員、やお地域まちづくりアドバ

イザーなど数々の社会貢献活動

をされている大阪大谷大学・農のう

野の

寛ひろ治はる教授。平野区で活躍中の

民生委員・児童委員、町会役

員、地域福祉活動コーディネー

ターなど90人を超える参加者が

集い、立場の異なる方々が共通

のテーマを考える機会となった。

 農野教授の講演は、平野区の

概要、小学生児童数の推移、ひ

とり親家庭の数、居場所と人材

確保をテーマに地道な地域活動

をおこなっている他県の事例な

どのスライドを映しながら進

行。ボランティアなど活動を同

じくする人たちが集える場の大

切さと、「生(なま)のコミュ

ニケーション」の価値に言及し

た。穏やかな語り口ながら、会

場との積極的なやりとりを交え

ての話は示唆に富み、特に「子

どもたちをお客さまにせず、自

ら学び、行動する機会を提供し

つつ、地域の行事や取組みにど

んどん巻き込もう」という提案

は多くの参加者に貴重なヒント

となったようだ。

 研修会を担当した平野区社協

の下出義継さんは、「地域福祉

活動では、高齢者の見守り支援

などが中心におこなわれている

が、今回の研修会を機に支援の

幅がさらに広がれば。そのため

に、今回参加いただいた方々を

はじめとした地域福祉活動をし

ている方々と情報共有などを通

じてパイプを太くし、連携をす

すめ、活動する分野を増やして

いきたい」と語った。

地域のペースを大切にする

大阪市立大学大学院 生活科学研究科 講師 鵜うのうら浦

直子

フロアの参加者からも地域での実践や思いを発信

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2017年(平成29年)11月 8

発行

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嶋 善

Tel.06-6765-5601 Fax.06-6765-5605 http://w

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11月発

行(毎

月1回

発行

)大阪の社会福祉

vol750

報告

善 意 銀 行 平成29年7月16日~平成29年10月15日の預託・払出は次のとおりです

預  託 払  出<物品>住友生命福祉文化財団から「いずみホール夢コンサート」鑑賞券55枚▶サントリーホールディングス株式会社から「大阪文化芸術フェス2017 キックオフ公演」鑑賞券19枚

<金銭>平成29年度ありがとう応援資金として大阪市内3団体へ89万5454円▶社会事業施設団体支援助成金として大阪市社会事業施設協議会加盟6団体に162万円▶大阪市成年後見支援センターへ325万円▶帝塚山まつりへ30万円▶大阪救護施設合同文化事業運営委員会へ3万円<物品>大阪市内7区社会福祉協議会へ「いずみホール夢コンサート」鑑賞券55枚▶社会福祉法人みおつくし福祉会 南さくら園・大阪市社会福祉協議会へ「大阪文化芸術フェス2017 キックオフ公演」鑑賞券19枚

 大阪市生活支援体制整備(生

活支援コーディネーター配置)

事業が24区ですすめられる。

 生活支援コーディネーターは

高齢者が住み慣れた地域で暮ら

し続けるために、地域資源の開

発や関係者間のネットワーク構

築などをおこなう。

 同事業は、平成27年8月から

3区(港区・鶴見区・住之江

区)でモデル的に実施され、平

成28年9月から5区(此花区・

東成区・生野区・東住吉区・平

野区)においても新たに実施。

 平成29年10月から、残りの16

区についても事業が拡充され、

区社協が受託し、取組みをすす

めていく。

 サービスグラントは、2005年から日本における「プロボノ」の草分けとして活動する中間支援型NPO(他のNPOや地域団体を支援するNPO)です。「プロボノ」は、ラテン語の「pro�bono�publico」という「公共善のために」を意味する言葉を語源としており、仕事で培ったスキルや経験を活かした社会貢献活動のことを指しています。 サービスグラントのNPO支援の特徴は、具体的な成果物を支援先に届けること、期間を定めてチームで取り組むプロジェクト型であることです。NPOや地域団体が解決したい課題に合わせ、支援メニ

ューは、課題整理や事業計画の提案など全部で20種類。1チーム5~6人でプロジェクトに取り組み、期間は1~6ヶ月程度とさまざまです。 これまでにサービスグラントに登録したボランティア(プロボノワーカー)は関西を中心に約3600人、プロジェクト数は574件(2017年10月時点)になり、社会や地域の課題に関心を寄せる企業人とNPO・地域団体との新しい出会いを創出し続けています。 参加したプロボノワーカーからは「参加

をきっかけに地域で役に立ちたいと思うようになり、自身の住んでいた地域のイベントやボランティア参加につながった」といった声が、また支援を受けた団体からは「団体の説明がしやすくなり、会員数が1.5倍になりました」といった声が寄せられています。 今年から大阪府内で高齢者の介護予防、生活支援に取り組んでいる団体を応援する「大阪ええまちプロジェクト」が始まりました。移動支援やコミュニティカフェを運営する団体など、17団体の次なる一歩をプロボノで支援する取組みをウェブサイト

(http://eemachi.pref.osaka.lg.jp)で発信しています。組織運営などでお悩みをお持ちの団体の皆さまからの個別相談も受け付けています。お気軽に、お問い合わせください。

NPO法人のご紹介

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地域を支えるNPO・地域団体を応援します認定NPO法人サービスグラント

団体とプロボノワーカーの初顔合わせミーティング

 住所 〒550-0005 大阪市西区西本町2-4-10-201 Tel 06-6210-4832 Fax 06-6125-3315 HP http://servicegrant.or.jp

【文 化】

両手の親指と4本の間を交差させ、

※〈文化〉は漢字「文」の字形を利用した手話と言われる。

組み換える。