量子情報勉強会(9) epr
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● 次章以降繰り返し登場するテーマ
非古典性
● 量子力学と古典物理学の本質的相違を納得するためにBellの不等式について議論しよう
2.6 EPRとBellの不等式
Bellの不等式について論じる前に…
古典力学● 対象物は、観測とは無関係に存在する
量子力学● 観測しない粒子は、観測と無関係に存在する物
理的性質を持っていない● 物理的性質は、システムを観測した結果生まれ
る● 可能な測定結果の確率を規定するルールを与え
る
多くの物理学者特にEinsteinは、自然界の新たらしい見方を拒絶
→
EPR論文というもので、思考実験を提案した。
EPRの議論(1)彼らは、「実在の要素」と名づけたものに興味を持つ
→
如何なる実在の要素も完全な物理学理論で表現されなければならない
ゴール● 量子力学に含まれてない実在の要素を指摘
→量子力学が完全な物理学理論でないことを示す
EPRの議論(2)方法
● 物理的性質に対する十分条件と主張するものを実在の要素として導入する
=
測定直前にその性質が持つ値を確実に予想できる
EPRの議論(3)● 互いに遠く隔たったAliceとBobがqビットのもつれ
対を各々持っている● Aliceは、 軸方向のスピン測定(=観測量 の
測定)を行う
● Aliceが測定で+1(-1)を得る
● Bobは同様の測定で、-1(+1)を得ると予想できる
⇒EPRの基準によれば実在の要素
完全な物理理論によって表さなければならない
v→
σ→→
•v
EPRの議論(4)しかし量子力学は、各々測定結果の確率をどう計算すれば良いかを示すに過ぎない。
また、全ての単位ベクトル に対して、
を示すように意図された基本的要素を含んでいない。
EPRは、なので、量子力学は不完全だと主張した
しかし、自然は、EPRに勝った
v→
σ→→
•v
EPRが正しいかの検証に用いることができる実験によるテストが提案された。
→自然は量子力学に従っていることが実験的に確かめられた
Bellの不等式を用いたEPRの検証(1)
自然の働きを我々の常識で解析する
→量子力学的解析を行い、この結果が、
常識の解析と一致しない
ことを示す
→実際に実験を行って、正しいのは、我々の常識か自然の働きかを調べる
Bellの不等式を用いたEPRの検証(2)
CharlieAlice
BobCharlieは、AliceとBobに粒子を送る
Bellの不等式を用いたEPRの検証(3)
Alice
Alice(Bob)はどちらかの装置で粒子を測定
ただし、予めどちらかの測定をするか決めてなくて、粒子を受け取ってからランダムに決める
実験装置1実験装置1
実験装置2
※ 測定は、物理的性質PQとPRに関するものであり、 測定結果は、+1か-1のうち1つであるとする。
Bellの不等式を用いたEPRの検証(4)
AliceQ=±1R=±1
Q:性質PQに対する値
BobS=±1T=±1
実験のタイミングは、AliceとBobが同時に行う。
→
Aliceが行う測定がBobの測定を乱すことはない
Bellの不等式を用いたEPRの検証(5)
QS + RS + RT - QT = (Q + R)S + (R – Q)T = ± 2という計算から、
( ) ( )( )∑ −++=−++ qtrtrsqstsrqpQTRTRSQSE ,,,
( )∑ ×≤ 2,,, tsrqp
2= (2.222)
Bellの不等式を用いたEPRの検証(6)一方、
式(2.222)と(2.224)を比べると以下のBellの不等式が得られる。
( ) ( ) ( ) ( ) ( )∑ ∑ ∑ ∑−++=−++qrst qrst qrst qrst
qttsrqprttsrqprstsrqpqstsrqQTRTRSQSE ,,,,,,,,,,,,
( ) ( ) ( ) ( )QTERTERSEQSE −++= (2.224)
( ) ( ) ( ) ( ) 2≤−++ QTERTERSEQSE(2.225)
Bellの不等式を用いたEPRの検証(7)
これまでの話に量子力学を持ち込もう
Bellの不等式を用いたEPRの検証(8)
Alice
Bob
Charlie
21001 −=ϕ
第1qビット
第2qビット
Bellの不等式を用いたEPRの検証(9)彼らは、以下の観測量の測定を行う
2122, XZSZQ −−== (2.227)
2122, XZTXR −== (2.228)
Bellの不等式を用いたEPRの検証(10)
前ページの観測量に対する平均値を量子力学の記号<・>で書く
したがって、
21
21
21
21 ;;; −==== QTRTRSQS (2.229)
22=−++ QTRTRSQS (2.230)
Bellの不等式を用いたEPRの検証(11)
(2.225)と(2.230)の結果が異なる。
→実験は、(2.230)の結果を支持した。
→
これは何を意味するのか?
Bellの不等式を用いたEPRの検証(12)
式(2.225)の証明において疑わしい仮定
1.物理的性質PQ,PR,PS,PTが、観測とは独立に存在する確定した値を持つという仮定(実在性)
2.Aliceが行う測定がBobの測定に影響しないという仮定(局所性)
→2つ合わせて局所実在性
局所実在性は、自然の動きに関して直感的にもっともな仮定
→しかし、量子論的には上記の仮定が間違っていることを示す
Bellの不等式のこの話から学ぶべきものは何か?
● 物理学者にとって最も重要な教えは、
自然の動きに関して物理学者が根強く持っている常識的直感が間違っている
● 量子力学を直感的に良く理解しようとするならば、
我々の自然観から、
局所性と実在性のいずれか一方
または、両方
を取り除かねばならない。
● 量子計算、量子情報の分野が、Bellの不等式から学ぶもの
もつれを問題と結びつけることによって、
古典情報では想像できなかった新しい可能性の世界を開くことができる
もつれが基本的に自然の新しリソースで、本質的に古典的リソースを超えるもの